JP2004033210A - 癌診断に関する物および方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、患者における乳癌の存在または危険性を決定する診断ツールとして使用し得る複数の遺伝学的識別子(遺伝子セット:genesets)を提供する。本発明はまた、乳房腫瘍細胞をその分子サブグループに判別するために使用し得る遺伝子セットを提供する。
【効果】同定された遺伝子セットのそれぞれを使用して、乳房腫瘍細胞の診断及び判別に使用するカスタマイズされた特異的核酸マイクロアレイを作製することができる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌、特に乳癌を診断するための物および方法に関する。限定するわけではないが、本発明は、特に遺伝学的識別子(genetic identifiers)を用いて乳癌の存在または危険性を診断するための方法およびキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
乳癌は、世界中の女性の間で主な死亡原因および主な病気の1つである。乳癌発生の根底にある分子的および遺伝子的事象の理解、ならびに臨床スクリーニングプログラムの採用が急速に進んだにもかかわらず、残念ながらこの病気による罹患率および死亡率は依然として非常に高いレベルを維持し続けている。実際に世界の多くの地域において、乳癌は未だに、地方の女性人口において最も速く進行する癌のうちの1つである(Chiaら, 2000)。乳癌の診断および治療における1つの大きな難題は、乳癌が臨床上および分子上不均質(heterogeneity)であることである。個々の乳癌は、臨床的表象、病気の攻撃性、および治療応答において大きな変動を示し得ることが広く知られている(TavassoliおよびSchitt, 1992)。このことは、この臨床的実体が、実際に多くの異なる独特な癌のサブタイプの集団を表し得ることを示唆する。また乳癌は、臨床的挙動の変動に加え、異なる地域および人種の集団において発生率が極めて明確なパターンを示し得る。例えばコーカサス人の集団では、乳癌の大多数は、それぞれ平均および中間年齢が60歳および61歳の閉経後の女性において発生する(Giuliano, 1998)。これとは対照的に、アジア人の集団で行った研究では、40歳から始まる発病年齢の複峰性パターンが示される(Chiaら, 2000、[考察]を参照されたい)。従って、腫瘍生物学における1つの大きな問題は、遺伝的要因または環境的要因に基づいてこれらの地域的および人種的な差を説明すること、ならびにコーカサス人集団を用いて得られた研究結果が他の人種の集団にも同様に臨床的に当てはめられるか否かを確かめることである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近になって、DNAマイクロアレイを用いた発現プロファイリングが、腫瘍生物学の様々な面を研究するための非常に強力且つ用途の広いアプローチであることが分かった。乳癌についてのマイクロアレイを用いた過去の報告は、新規な腫瘍サブタイプの同定、または癌の既知のサブグループ間で異なる発現を示す遺伝子の同定に焦点が当てられていた(Perouら, 2000, Gruvbergerら, 2001, Hedenfalkら, 2001)。しかし、これらの研究は、主にコーカサス人集団から得たサンプルに主として焦点が当てられていたため、これらの報告に記載された知見が他の人種の集団の乳癌にも当てはまるか否かについては未解決である。分子プロファイリングが臨床的に現実に使用できるものとなる前に、他にも取り組まなければならない鍵となる多くの問題がある。例えば、ある機関による研究で規定された発現特徴と分子サブタイプが別の施設の別個の研究で独立して確認されたという報告は現時点においてほとんどない。しかしながら、異なった保健機関は、腫瘍サンプルの外科的操作、アレイ技術プラットフォームの選択、及び患者集団の母体等の、研究対象の腫瘍の発現プロファイルに影響し得る多くの点が異なる可能性があるため、こうした評価は明らかに重要である。更に、通常、長期間にわたって同じ腫瘍をサンプリングすることはできないため、これらのアプローチを用いて規定された異なるサブタイプが真に別個の生物学的な実体を表しているのか、あるいはこれらが臨床的展開の異なる段階にある同じ腫瘍クラスを表しているのか、明確でない場合がしばしばである。一例として、エストロゲン受容体陰性(ER−)の乳癌が乳房上皮組織のER−原(progenitor)細胞型に直接由来する生物学的実体を表すのか、あるいは元々はER+の状態から「進化」したのかに関して、この分野で現在矛盾する意見及びデータがある(Kuukasjarriら,
1996; Parl 2000; Gruvbergerら, 2001)。
【0004】
【課題を解決するための手段】
これらの問題を解決するために、本発明者等は、アジア人患者に由来する乳癌の大規模な発現プロファイリングプロジェクトに乗り出した。第一に、監督下及び非監督下のクラスタリング方法の組合せを用いて、本発明者等は、組み合わせて使用した時に、中国系患者における未知の乳房サンプルが正常であるか悪性であるかを識別するための「遺伝学的識別子」として機能する遺伝子の小さなセットを規定することができた。このような「遺伝学的識別子」の使用は、特定の患者集団の分子診断アッセイの開発において非常に有用である。第二に、主成分分析(PCA)を用いて、本発明者等は、正常な乳房組織の発現プロファイルの変動が腫瘍プロファイルの変動よりもかなり小さいことを示す。この知見は、最初の近似として正常な乳房組織を比較的一定な「基底状態」として考えることができ、そして個々の腫瘍に関連する広範に変動する発現プロファイルがおそらく、多くの異なる且つ非常に独特な腫瘍発生経路を介してこの「基底状態」から生じていることを示す、乳房腫瘍形成の現在のモデルを支持する。
【0005】
第三に、中国人患者からの一連の浸潤性乳癌の発現プロファイルを、主としてコーカサス人由来の患者サンプルを用いた公表された報告と比較することによって、本発明者等は、アレイ技術プラットフォームの選択を含むいくつかの研究間の方法論的差異にも関わらず、鍵となる遺伝子特徴及び分子サブタイプの多くが2つの患者集団間で非常に良く保存されており、発現に基くゲノミクスを用いて規定された分子サブタイプは実際に非常にはっきりしていることが示唆された。本発明者等の知る限りにおいて、これは乳癌について報告されたこの型の初めての機関相互(cross−institution)評価研究である。
【0006】
第四に、一連の腺管in−situ癌(腺管上皮内癌、またはDCIS)の発現プロファイルを研究することによって、本発明者等はまた、DCIS腫瘍がその浸潤性対応癌と関連する多くの「ホールマーク」のサブタイプ特異的発現特徴を発現することを見出した。DCIS癌は現在、通常の組織病理学によって検出し得る最も初期の非−浸潤性悪性病変を表しているため、これらの結果から、これらの研究で規定された分子サブタイプがおそらくは腫瘍形成の比較的初期の(すなわち浸潤前)段階に生じ、進化の異なる段階にある単一の癌のクラスであるというよりは、別個の生物学的実体を表していることが示唆される。
【0007】
乳癌の時間的進行の分子フレームワークを提供する他に、本発明者等の結果はまた、種々の保健機関での臨床における癌診断及び判別のために発現に基づくゲノム技術を使用する可能性を支持する。
【0008】
従って、極めて一般的に言うと、本発明は、特定の遺伝学的識別子を用いて患者における癌(特に乳癌)の存在または危険性を決定するための新しい診断アッセイを提供する。更に、本発明者らは、一連の乳癌のマルチ遺伝子識別子(multi−gene classifier)を決定した。
【0009】
第一の例において、本発明者等は、未知の乳房組織サンプルが正常であるか悪性であるかを予測するために組み合わせて使用し得る20遺伝子のセット(「遺伝学的識別子」)を決定した。
【0010】
(腫瘍及び正常乳房サンプルを識別し得る)この第一の遺伝子セットに加え、本発明者等はまた、腫瘍サンプルをサブタイプに判別する遺伝学的識別子として使用し得る他の遺伝子セットを決定した。このことは、研究の観点からだけでなく、最も適切な治療の実施を確実にするためにも、非常に重要である。
【0011】
従って、本発明者等は、乳癌の存在及び/または腫瘍のクラスを予測するために使用し得る、以下の遺伝子セットを決定した。
【0012】
1)表2に挙げられた遺伝子セットであって、組み合わせて使用した時、特にスポットされたcDNAマイクロアレイを用いて、使用者は、未知の乳房組織サンプルが正常であるか悪性であるかを予測することができる。
【0013】
2)更なる遺伝子のセット(表4a及び4b)であって、これも組み合わせて使用した時、正常及び腫瘍乳房組織サンプルを識別するために使用することができる。この遺伝子セットは、遺伝子チップ(例えばAffymetrix U133A Genechips)等の市販の技術プラットフォームを用いて得られる発現プロファイルに使用することがより好ましいが、1)に記載のスポットされたcDNAマイクロアレイ技術を用いて使用することもできる。
【0014】
3)表5aの遺伝子のセットは、組み合わせて使用した時、確認されている乳房腫瘍サンプルのエストロゲン受容体の状態を予測することができる。第二の遺伝子のセット(表5b)は、組み合わせて使用した時、確認されている乳房腫瘍サンプルのERBB2の状態を予測することができる。
【0015】
4)遺伝子のセット(表6)は、組み合わせて使用した場合に以下の5つのカテゴリー:Luminal、Basal、ERBB2、正常様、及びER−陰性サブタイプII、に従って乳房腫瘍サンプルの「分子サブタイプ」を予測するために使用し得る。本発明のこの実施形態において、本発明者等は2つの異なる型の判別アルゴリズム、すなわち(1)one−vs−all(OVA)サポートベクターマシン(SVM)、及び(2)遺伝学的アルゴリズム(GA/最尤判別(maximum likelihood discriminant)(MLHD))解析、を用いた。使用する判別アルゴリズムの型に依存して異なる遺伝子のセットを最適に使用する。従って、各部分について個別の遺伝子セットを以下に記載する。
【0016】
5)遺伝子のセット(表7)は、組み合わせて使用した場合にアジアの乳癌患者におけるluminalサブクラスを予測するために使用することができる。本発明者等は、「luminal」型の乳房腫瘍は、臨床的には関連する2つの別個のサブタイプであるLuminal AとLuminal Dに「分ける(split)」ことができることを決定した。従って遺伝学的識別子(表7)は、好ましくは腫瘍が天然で「luminal」であると正式に認識された後に使用する。このことは、当然ながら表6の多クラス予測子(multi−class predictor)を用いて達成できる。Luminal D腫瘍は非常に攻撃的な非−Luminal腫瘍、例えばERBB2及びBasalにも見られる特定の発現特徴と関連している。このことは、腫瘍のサブタイプを知ることが臨床的に重要であることを支持する。
【0017】
特定の遺伝子セット(遺伝学的識別子)の決定により、組織サンプルを、その組織中のこれらの遺伝子の発現パターンに従って(例えば腫瘍と正常とに)判別することができるようになる。例えば、第一の遺伝学的識別子(腫瘍vs正常)において、本発明者等は、正常細胞に比べて癌細胞中で通常アップレギュレートされている10個の遺伝子、および正常細胞に比べて癌細胞中で通常ダウンレギュレートされている10個の遺伝子を決定した。これらの特定の遺伝学的識別子の発現パターン(すなわちテストサンプル中におけるこれらの遺伝子の発現産物の合成レベル(composite levels))を研究することにより、そのサンプルを悪性または正常として判別することが可能となる。このように、これらの発現産物は、正常細胞と悪性細胞を区別するのに役立つ発現プロファイルまたは「フィンガープリント」を提供することができる。
【0018】
本発明の第1の態様において、乳癌細胞の核酸発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)前記乳癌細胞及び正常乳房細胞から発現産物を単離し、
(b)癌細胞および正常細胞の双方に対して表2から選択される複数の遺伝子の発現プロファイルを同定し、
(c)癌細胞および正常細胞の発現プロファイルを比較し、そして
(d)乳癌細胞に特徴的な核酸発現プロファイルを決定する、
ことを含む、上記方法が提供される。
【0019】
診断目的のためには、癌細胞に特徴的な(すなわち同等の正常細胞の発現プロファイルとは異なる)発現プロファイルを得ることが重要である。この第1の態様に従った方法により、本発明者等により乳癌細胞の「遺伝学的識別子」として同定された複数の遺伝子(表2を参照されたい)の発現プロファイルが決定される。
【0020】
遺伝学的識別子を含む個々の遺伝子の発現プロファイルは、独立したサンプル間で僅かに異なる。しかし本発明者等は、遺伝学的識別子を含むこれらの特定の遺伝子の発現プロファイルが、組み合わせて使用した時に、癌細胞中において、正常細胞中におけるものとは明らかに異なる特徴的な発現パターン(発現プロファイル)を示すことを見出した。
【0021】
幾つかの既知の腫瘍サンプルまたは正常サンプルから遺伝学的識別子の幾つかの発現プロファイルを作製することにより、正常サンプルおよび腫瘍サンプル両方のプロファイルのライブラリーを作製することが可能である。発現プロファイルの数が多ければ多いほど、より簡単に、診断アッセイにおいて対照として用いることができる信頼性のある特徴的な発現プロファイル標準(すなわち統計的偏差を含む)を作製することができる。このように、標準プロファイルは、複数の個々の発現プロファイルから案出し、且つ癌細胞もしくは正常細胞プロファイルのいずれかを表すように統計的偏差内で案出することができる。
【0022】
従って、本発明の第1の態様による方法は、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、表2から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る複数の結合メンバーと接触させて腫瘍細胞の第1発現プロファイルを作製し、
(b)正常乳房細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、段階(a)で使用する複数の結合メンバーと接触させて比較し得る正常乳房細胞の第2発現プロファイルを作製し、
(c)第1及び第2の発現プロファイルを比較して乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルを決定する、
ことを含む。
【0023】
発現産物は、好ましくはmRNAまたは前記mRNAから作製されるcDNAである。あるいは、発現産物は発現されたポリペプチドであってもよい。発現プロファイルの同定は、好ましくは表2に同定された遺伝子の発現産物を特異的に同定することができる結合メンバーを用いて行われる。例えば、発現産物がcDNAである場合、結合メンバーは、該cDNAに特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブである。
【0024】
好ましくは、発現産物または結合メンバーは、これら2つの成分の結合が検出できるように標識される。標識は好ましくは、その遺伝学的識別子を含む個々の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに基づいて発現プロファイルを決定するために、発現された産物の相対的レベル/量および/または絶対的レベル/量を検出することができるように選択される。言い換えると、結合メンバーは、発現産物の存在だけでなくその相対量(relative abundance)(すなわち利用可能な産物の量)も検出することができることが好ましい。
【0025】
核酸発現プロファイルの決定は、偽陽性および偽陰性を回避するために、コンピュータ処理し、予め設定したあるパラメータ内で行うこともできる。
【0026】
次にコンピュータにより、上記のように正常乳房細胞および悪性乳房細胞に特徴的な発現プロファイル標準を提供することができる。次に、診断方法として、決定された発現プロファイルを用いて、乳房組織サンプルを正常または悪性として判別することができる。
【0027】
従って、本発明の第2の態様において、正常乳房細胞および悪性乳房細胞の両方の複数の遺伝子(これらの遺伝子は表2から選択される)発現プロファイルを含む発現プロファイルデータベース(データキャリアに検索可能に保持される)が提供される。好ましくは、該データベースを構成する発現プロファイルは、第1の態様に従った方法によって作製される。
【0028】
特定の遺伝学的識別子が分かっていれば、細胞の特定のテストサンプル中の遺伝子の発現パターンすなわちプロファイルを決定するための多くの方法を考案することが可能である。例えば、発現された核酸(RNA、mRNA)は、標準的な分子生物学的技法を用いて細胞から単離することができる。次に、表2に記載された遺伝学的識別子の遺伝子メンバーに対応する発現された核酸配列を、該発現された配列に特異的な核酸プライマーを用いてPCRで増幅することができる。発現され単離された核酸がmRNAである場合、これは、標準的な方法を用いてPCR反応のためにcDNAに変換することができる。
【0029】
プライマーは、増幅された核酸が同定できるように該核酸に標識を導入するのに便利である。理想的には、標識は、増幅後に存在する核酸配列の相対的な量または割合を示すことができ、これは元のテストサンプル中に存在する相対的な量または割合を反映する。例えば、標識が蛍光標識または放射性標識である場合、シグナルの強度は、発現された配列の相対的な量/割合、または絶対的な量さえも示す。各遺伝学的識別子の発現産物の相対的な量または割合は、テストサンプルの特定の発現プロファイルを確立する。このプロファイルを既知のプロファイルすなわち標準的発現プロファイルと比較することにより、そのテストサンプルが正常な乳房組織に由来するものであるか悪性乳房組織に由来するものであるかを決定することが可能である。
【0030】
あるいは、発現パターンまたはプロファイルは、遺伝学的識別子の発現産物(例えばmRNA、対応するcDNAまたは発現されたポリペプチド)に結合することができる結合メンバーを用いて決定することができる。発現産物または結合メンバーのいずれかを標識することにより、発現産物の相対的な量または割合を同定すること、および遺伝学的識別子の発現プロファイルを決定することが可能である。このように、発現プロファイルを既知のプロファイルすなわち標準と比較することにより、サンプルを正常または悪性として判別することができる。結合メンバーは相補的な核酸配列または特異的抗体であってもよい。このような結合メンバーを用いたマイクロアレイアッセイについて、以下にさらに詳細に記載する。
【0031】
本発明の第3の態様において、患者における乳癌の存在または危険性を決定するための方法であって、以下の段階:
(a)乳癌のおそれがあるか、または乳癌の危険性がある患者から得た乳房組織細胞から発現産物を取得し、
(b)前記発現産物を、表2において同定される1またはそれ以上の遺伝子に対応する発現産物の存在を検出し得る1またはそれ以上の結合メンバーと接触させ、そして
(c)乳房組織細胞からの発現産物の1またはそれ以上の結合メンバーに対する結合プロファイルに基づいて前記患者における乳癌の存在または危険性を決定する、
ことを含む、上記方法が提供される。
【0032】
患者は、好ましくはアジア系(例えば中国系)の女性である。
【0033】
乳癌の存在または危険性を決定する段階は、対象の乳房組織細胞からの発現産物の結合プロファイルを、腫瘍の存在または危険性に特徴的な、従来得られている他のプロファイルのデータベース及び/または従来決定されている「標準的」プロファイルと比較することができるコンピュータによって実施することができる。コンピュータは、対象のプロファイルと標準的プロファイルとの統計的類似性を報告するようにプログラムすることができ、それによって診断を行うことができる。
【0034】
上記のように、本発明者等は、乳房の正常細胞に対して癌細胞において異なる発現パターンを有する幾つかのキー遺伝子を同定した。これらの遺伝子は「遺伝学的識別子」を含有する。本発明者等は、これらの「遺伝学的識別子」に属する遺伝子の組み合わせの発現パターンが正常細胞と癌細胞を見分けるのに役立つことを示した(以下を参照されたい)。従って、乳房組織サンプル中における遺伝学的識別子の発現パターンを検出することにより、その細胞の状態(正常か悪性か)、およびその患者が乳癌を有するかまたはその発症のおそれがあるかを予測することが可能である。
【0035】
遺伝学的識別子を有する遺伝子は表2に記載されている。20個の遺伝子が示されており、そのうち10個が正常細胞に比べて癌細胞において一般に高いレベルで発現され、残りの10個は正常細胞に比べて癌細胞において一般に低いレベルで発現される。これらの遺伝子の示差的発現(differential expression)は、腫瘍生検および正常組織生検を用いて決定した。テストサンプル中におけるこれらの遺伝子の発現産物のレベルを検出することにより、正常細胞において見られる標準パターンすなわちプロファイルと比較して生成された発現プロファイル(すなわちこれらの発現の増減)に基づいて、細胞を正常または悪性として判別することが可能である。
【0036】
すなわち、本発明の更なる態様において、乳房組織のサンプルを正常または悪性として判別する方法であって、以下の段階:
(a)乳房組織サンプルの細胞から発現産物を取得し、
(b)前記発現産物を、表2から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させ、そして
(c)サンプルからの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基づいてサンプルを正常または悪性として判別する、
ことを含む、上記方法が提供される。
【0037】
乳房組織のサンプルは、好ましくはアジア系(例えば中国系)の女性から得たものである。
【0038】
先に記載したように、発現産物は、転写された核酸配列または発現されたポリペプチドであってもよい。転写された核酸配列はRNAまたはmRNAであってもよい。発現産物は、前記mRNAから作製されるcDNAであってもよい。
【0039】
結合メンバーは、好適なハイブリダイゼーション条件下で転写された核酸に特異的に結合することができる相補的な核酸配列であってもよい。典型的には、cDNAまたはオリゴヌクレオチド配列が用いられる。
【0040】
発現産物が発現されたタンパク質である場合、結合メンバーは、好ましくは発現されたポリペプチドに特異的な抗体、または抗体結合ドメインを含む分子である。
【0041】
結合メンバーは、当分野で公知の標準的手法を用いて、検出のために標識することができる。あるいは、テストされるサンプルから単離した後に発現産物を標識することができる。好適な検出手段は、照度計で検出することができる蛍光標識の使用である。他の検出手段としては、電気的シグナリングが含まれる。例えば、モトローラ社のe−センサーシステムは、2つのプローブ、すなわち自由に浮動する「捕捉プローブ」、および電極表面として機能する固体表面に付着させた「シグナリングプローブ」を有する。これらのプローブは両方とも、発現産物への結合メンバーとして機能する。結合が起こると、両プローブは互いに非常に近接し、これにより、検出可能な電気的シグナルが生成される。
【0042】
上記したように、結合メンバーは、遺伝学的識別子の発現産物の数を特異的に増幅するためのPCR(例えばマルチプレックスPCR(multi−plexed PCR)など)で使用するオリゴヌクレオチドプライマーであってもよい。増幅産物は次いでゲル上で分析できる。しかし好ましくは、結合メンバーは、固相支持体に固定された単一の核酸プローブまたは抗体である。次にこの固相支持体上に発現産物を通過させ、該発現産物を該結合メンバーに接触させることができる。固相支持体はガラス表面(例えば顕微鏡スライドやビーズ(Lynx)や光ファイバーなど)であってもよい。ビーズの場合、各結合メンバーを個々のビーズに固定した後、これらを溶液中の発現産物と接触させる。
【0043】
当技術分野では特定の遺伝子セットの発現プロファイルを決定するための様々な方法が存在し、これらを本発明に適用することができる。例えば既知の技法としては、ビーズベースのアプローチ(Lynx)または分子バーコード(Surromed)がある。これらの場合、個々に読取りが可能で且つ自由に浮動して発現産物との接触を容易にするビーズまたは「バーコード」に、各結合メンバーを結合させる。発現産物(標的)への結合メンバーの結合は溶液中で行われ、その後、タグ付けされたビーズまたはバーコードをデバイス(例えばフローサイトメーターなど)中に通過させて読取りを行う。
【0044】
発現プロファイルを決定する更なる既知の方法は、Illumina社により開発された計器装備、すなわち光ファイバーである。この場合、各結合メンバーを、光ファイバーケーブルの一方の端部の特定の「アドレス」に固定させる。結合メンバーに発現産物が結合すると、光ファイバーケーブルの他方の端部のデバイスにより読み取り可能である蛍光変化を引き起こすことができる。
【0045】
本発明者らは、固相支持体に固定された複数の核酸配列を含む核酸マイクロアレイを用いることに成功した。発現された遺伝子(例えばcDNAなど)を表す核酸配列をマイクロアレイ上に通過させることにより、乳房組織に由来する癌細胞および正常細胞からの発現産物に特徴的な結合プロファイルを作製することができた。
【0046】
本発明はさらに、乳房組織サンプルを悪性または正常として判別するための核酸マイクロアレイであって、複数の核酸配列を載せた固相支持体を含み、前記核酸配列は表2に同定された1またはそれ以上の遺伝子の発現産物に特異的に結合することができることを特徴とする、上記核酸マイクロアレイを提供する。サンプルが判別されれば、患者の乳癌の診断ができるであろう。好ましくは、固相支持体は表2において同定される少なくとも5種の遺伝子、より好ましくは少なくとも10種の遺伝子または少なくとも15種の遺伝子の発現産物と特異的にかつ独立して結合し得る核酸配列を収容する。最も好ましい実施形態において、固相支持体は表2において同定される20遺伝子全ての発現産物と特異的にかつ独立して結合し得る核酸配列を収容する。
【0047】
典型的には、高密度の核酸配列(通常はcDNAまたはオリゴヌクレオチド)を、固相支持体の非常に小さな別々の領域またはスポットに固定させる。固相支持体は多くの場合顕微鏡のスライドガラスまたはメンブレンフィルターであって、基質でコーティングされたもの(またはチップ)である。核酸配列は、通常はロボットシステムによって、コーティングされた固相支持体に運ばれ(またはプリントされ)、次に該支持体に固定化もしくは固定される。
【0048】
好適な実施形態において、サンプルに由来する発現産物を、典型的には蛍光標識を用いて標識した後、固定化された核酸配列と接触させる。ハイブリダイゼーション後に、高分解能レーザースキャナーなどの検出器を用いて蛍光マーカーを検出する。別の方法において、発現産物に非蛍光標識、例えばビオチンでタグ付けをすることができる。ハイブリダイゼーションの後、マイクロアレイを第1の非蛍光標識に結合する蛍光色素(例えばビオチンに結合する蛍光標識したストレプトアビジン)で「染色」することができる。
【0049】
遺伝子発現のパターン(発現パターンまたはプロファイル)を示す結合プロファイルは、デジタル画像形成ソフトウェアで各々のスポットから発せられるシグナルを分析することにより得られる。次に、実験サンプルの遺伝子発現パターンを対照のもの(すなわち正常組織サンプルからの発現プロファイル)と比較して、示差分析を行うことができる。
【0050】
上記したように、対照または標準は、正常細胞または悪性細胞に特徴的であると既に判断された1またはそれ以上の発現プロファイルであってもよい。これらの1またはそれ以上の発現プロファイルは、データベースの一部としてデータキャリア上に検索可能に保存することができる。これについては既に記載した。しかし、このアッセイ手順に対照を導入することも可能である。言い換えると、試験サンプルに、その試験サンプル中で遺伝学的識別子の発現レベルと比較すべき対照として機能し得る1またはそれ以上の「合成の腫瘍」の発現産物もしくは「合成の正常」の発現産物を「加える(spike)」ことができる。
【0051】
多くのマイクロアレイは、1つまたは2つの蛍光団を用いる。2色アレイでは、最も一般的に用いられる蛍光団はCy3(緑色チャンネル励起)およびCy5(赤色チャンネル励起)である。マイクロアレイの画像分析の目的は、各発現産物からハイブリダイゼーションシグナルを抽出することである。1色アレイでは、シグナルは、所与の標的についての(本質的には1つのサンプルにハイブリダイズしたアレイについての)絶対強度として測定される。2色アレイでは、シグナルは、異なる蛍光標識を有する2つの発現産物(例えばサンプルおよび対照(対照は別には「参照(reference)」として知られる))の比として測定される。
【0052】
本発明のマイクロアレイは、好ましくは複数の別個のスポットを含み、各スポットは1またはそれ以上のオリゴヌクレオチドを含み、各スポットは表2から選択される遺伝子の発現産物の異なる結合メンバーを表す。好ましい実施形態において、マイクロアレイは表2に記載された20個の遺伝子の各々を含む20個のスポットを含む。各スポットは複数の同じオリゴヌクレオチドを含み、各オリゴヌクレオチドはそれが表す表2の遺伝子の発現産物(例えばmRNAまたはcDNA)に結合することができる。
【0053】
本発明のさらに他の態様において、乳房組織サンプルを正常または悪性として判別するためのキットであって、表2において同定される1またはそれ以上の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る1またはそれ以上の結合メンバーと検出手段とを含むことを特徴とする、上記キットが提供される。
【0054】
好ましくは、該キットの1またはそれ以上の結合メンバー(抗体結合ドメインまたは例えばオリゴヌクレオチドなどの核酸配列)は、1またはそれ以上の固相支持体(例えばマイクロアレイもしくは光ファイバーアッセイ用の単一の支持体、またはビーズなどの複数の支持体)に固定される。検出手段は、好ましくは試験されているサンプルの発現産物を標識するための標識(放射性標識や色素、例えば蛍光体)である。また該キットは、試験されている発現産物の結合プロファイルを検出および分析するための手段も含み得る。
【0055】
あるいは結合メンバーは、PCRで増幅することができるように、表2において同定される遺伝子の発現産物に結合することができるヌクレオチドプライマーであっても良い。プライマーはさらに、検出手段、すなわちその増幅配列の同定および他の増幅配列に対するこれらの相対量の同定のために用いることができる標識を含み得る。
【0056】
また該キットは、試験サンプルの発現プロファイルと比較するためにデータキャリアに検索可能に保持された1またはそれ以上の標準発現プロファイルも含み得る。該1またはそれ以上の標準発現プロファイルは、本発明の第1の態様に従って作製することができる。
【0057】
本発明はさらに、アジア系患者における乳癌の存在または危険性の診断方法であって、
乳房組織サンプルを取得し、
該サンプルから発現産物を単離し、
該発現産物を標識し、
標識した該発現産物を表2から選択される複数の遺伝子を提示する複数の結合メンバーと接触させ、そして
標識した該発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基づいて上記患者における乳癌の存在または危険性を決定する、
ことを含む、上記診断方法を提供する。
【0058】
乳房組織サンプルは、乳房の切除生検または細針吸引物として得ることができる。
【0059】
この場合も、発現産物は、好ましくはmRNA、または前記mRNAから作製されたcDNAである。該結合メンバーは、好ましくはマイクロアレイまたはビーズである1またはそれ以上の固相支持体に固定されたオリゴヌクレオチドである(上記を参照のこと)。結合プロファイルは、好ましくは発現産物を標識するのに用いられる標識を検出することができる検出器により分析される。乳癌の存在または危険性の決定は、サンプルの結合プロファイルと対照の結合プロファイル(例えば標準発現プロファイル)とを比較することによって行うことができる。
【0060】
上記態様の全てにおいて、20個全ての遺伝学的識別子の発現産物に特異的に結合する(および核酸プライマーの場合は増幅する)ことができる結合メンバーを用いることが好ましい。これは、これら20個全ての遺伝子の発現レベルが、試験下の細胞に特異的な発現プロファイルを構成するからである。試験する遺伝子発現レベルの数が多いほど、発現プロファイルの判別はより信頼性の高いものとなる。従って、表2から選択される6個以上の遺伝子の発現レベルが評価されるのが好ましく、より好ましくは11個以上、さらに好ましくは16個以上、および最も好ましくは20個全ての遺伝子の発現レベルが評価される。
【0061】
上記の遺伝学的識別子(表2)は、マイクロアレイ(または他の類似の技術)がこの目的のために特別に作製されたスポットされたcDNAマイクロアレイ技術のために特に好ましい。しかしながら、本発明者等は、表2において同定される遺伝子を含有する特別なチップを作製する苦労をするよりは、本発明を市販の遺伝子チップを使用できるように改変することができることを認識している。このことを考慮して、本発明者等は更なる遺伝学的識別子(表5aまたは5b)を同定した。これは上記のマイクロアレイ技術を用いて使用することができるが、市販の遺伝子チップ、例えばAffymetrix U133A Genechipsで使用することもできる。
【0062】
従って、上記の本発明の態様はまた、表2の代わりに表4aまたは4bの遺伝子セットを用いて実施することができ、更にこれらはAffymetrix U133A Genechips等の市販の遺伝子チップで、または上記のマイクロアレイ技術を用いて使用することができる。
【0063】
本発明者等はまた、エストロゲン受容体(ER)状態に基いて乳房腫瘍を判別するために用いることができる、更なる遺伝子のセット(表5a)を同定した。このことは、ER+腫瘍はホルモン療法(例えばタモキシフェン)で治療でき、ER−腫瘍は典型的により攻撃的であり、治療に対して抵抗性であることから、臨床的に重要である。
【0064】
同様に、本発明者等はまた、ERBB2+状態に基いて乳房腫瘍を判別するために用いることができる、更なる遺伝子のセット(表5b)を同定した。ERBB2+腫瘍は典型的に非常に攻撃的であり、臨床的予後が悪いことから、乳房腫瘍のERBB2+状態を知ることも臨床的に重要である。ERBB2+腫瘍はハーセプチン(Herceptin、抗癌剤)による治療の候補でもある。
【0065】
表5a及び5bに挙げる遺伝子セットは、Affymetrix U133A Genechipsを用いて乳房腫瘍サンプルのセットに対して発現プロファイルを作製することによって決定した。一連の統計的アルゴリズムを用いてER+ vs ER−サンプル並びにERBB2+ vs ERBB2−サンプルで異なって発現している遺伝子のセットを同定した。従って、本発明は更に、ER及びERBB2状態に従って乳房腫瘍を判別する方法において使用し得る遺伝子セットを提供する。
【0066】
従って本発明の更なる態様において、ER及び/またはERBB2状態に従って乳房腫瘍を判別する方法であって、以下の段階:
a)腫瘍細胞から発現産物を取得し、
b)該発現産物を、表5から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させ、そして
c)サンプルからの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基いてER及び/またはERBB2状態によって腫瘍細胞を判別する、
を含む方法が提供される。
【0067】
本発明の第1の態様と同様に、複数の結合メンバーは好ましくは核酸配列であり、より好ましくは固相支持体に固定された核酸配列、例えば核酸マイクロアレイである。核酸配列はオリゴヌクレオチドプローブであっても、またはcDNA配列であっても良い。
【0068】
腫瘍細胞は、表5において同定される遺伝子の発現に基き、そのER及び/またはERBB2状態に従って判別することができる。表5は、ER+またはERBB2+腫瘍においてアップレギュレートされているか(+)、またはダウンレギュレートされている(−)ものとして各遺伝子を同定する。この情報を元に、対象の乳房腫瘍細胞がER−若しくはER+のいずれであるか、及び/またはERBB2+若しくはERBB2−のいずれであるかを決定することができる。
【0069】
本発明の全ての態様と同様に、決定された遺伝子セット(表6bを除く表2〜7)から選択された複数の遺伝子は実際の数が変動し得る。本発明を実施するためには、少なくとも5遺伝子、より好ましくは少なくとも10遺伝子を使用することが好ましい。当然ながら、公知のマイクロアレイ及び遺伝子チップ技術によって多数の結合メンバーを利用することが可能になる。従って、より好ましい方法は、各遺伝子セットにおける全遺伝子を提示する結合メンバーを使用することであろう。しかしながら、当業者であれば、これらの遺伝子の一部を省略することができ、それでもこの方法を信頼でき、かつ統計的に正確なやり方で実施することができることが認識できるであろう。多くの場合、それぞれの遺伝子セットにおける遺伝子の少なくとも70%、80%、または90%を提示する結合メンバー使用することが好ましいであろう。
【0070】
本発明の更なる態様において、分子サブタイプに基いて乳房腫瘍細胞を判別する方法であって、以下の段階:
(a)腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表7=6から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させ、そして
(c)腫瘍細胞からの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基いてその分子サブタイプについて腫瘍細胞を判別する、
を含む、上記方法を提供する。
【0071】
分子サブタイプは好ましくはLuminal、ERBB2、Basal、ER−タイプII及び正常/正常様である。これらのサブタイプは以下の記載において規定する。
【0072】
実際には、判別すべき腫瘍サンプルの発現プロファイルは表6に記載の遺伝子セットを用いて決定する(表6aまたは6bは使用する判別アルゴリズムの型に依存する)。第二に、発現プロファイルを、「基準」(対照)プロファイルのデータベースと比較する。ここで、各「基準」(対照)プロファイルは、その特定の分子タイプに属する「平均的」腫瘍に対応する。この場合、正常及び腫瘍、あるいはER+及びER−を単に有するというよりは、「基準」プロファイルは5つの別個のサブタイプに対応するであろう。第三に、好適な判別アルゴリズムを用いることによって、未知の腫瘍サンプルを、発現プロファイルが良く合致する特定のサブタイプに割り当てることができる。
【0073】
複数の結合メンバーが表6aからの複数の遺伝子の発現産物に結合し得るものとして選択される場合、使用する結合メンバーの数はテストの信頼性を左右するであろう。言い換えると、表6aにおいて同定される遺伝子の全てに特異的にかつ独立して結合し得る結合メンバーを使用する必要はないが、使用する結合メンバーの数が多いほど、テストの結果が良好である。従って、「複数」によって、上記の遺伝子の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、及び更に好ましくは少なくとも90%を意味する。
【0074】
本発明の更に別の態様において、乳房腫瘍細胞をLuminal Aまたはluminal Dサブタイプのいずれかに更に判別する方法であって、以下の段階:
(a)腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表7から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させ、そして
(c)腫瘍細胞からの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基いてその分子サブタイプについて腫瘍細胞を判別する、
を含む、上記方法を提供する。
【0075】
好ましくは、この方法は、「luminal」であると既に判別された乳房腫瘍細胞から得た発現産物について実施する。
【0076】
表6bに挙げた遺伝子セットについて、遺伝子セットの全遺伝子を判別に使用することが好ましい。遺伝子数が少なくなると信頼性のある結果が得られる可能性が低くなる。このために遺伝学的アルゴリズムアプローチによってこの遺伝子セットを選択する。
【0077】
本発明者等は、乳癌の危険性を診断及び/または予測するために使用することができ、更に、特にアジア系の女性について乳癌の型を判別するために使用することができる、多数の遺伝学的識別子(表2〜7)を提供した。
【0078】
これらの遺伝学的識別子の提供によって、例えば核酸マイクロアレイのような診断ツールをオーダーメイド(custom made)し、腫瘍を予測、診断、またはサブタイピングするために使用することが可能となる。更に、こうした診断ツールを、診断ツール(例えばマイクロアレイ)を使用して得た発現プロファイルを決定し、使用した特定の遺伝学的識別子に依存する正常vs腫瘍及び/または分子サブタイプに特徴的な「標準的」発現プロファイルとそれを比較するためにプログラミングされたコンピュータと組み合わせて使用することができる。その際に、コンピュータは患者における腫瘍の存在またはタイプを診断するために使用し得る情報を使用者に提供するだけでなく、同時に、コンピュータが「標準的」発現プロファイルを決定する更なる発現プロファイルを得、そしてその独自のデータベースを更新することができる。
【0079】
従って、本発明によって、表2〜7において同定される遺伝子セットに対応するプローブを含有する特定のチップ(マイクロアレイ)を作製することが初めて可能となる。アレイの実際の物理的構造は様々であり、2次元の固体基盤に付けられたオリゴヌクレオチドプローブから、「バーコード」のような特有の標識で個々に「タグ付け」された自由に浮動するプローブまでのものがある。
【0080】
特殊化したマイクロアレイによって決定された種々の乳房組織の発現プロファイルからなる、種々の生物学的判別(例えば正常、腫瘍、分子サブタイプ等)に対応するデータベースを作製することができる。このデータベースを次にプロセスし、解析して、最後には(i)データベース中の各発現プロファイルに対応する数値データ、(ii)その特定の判別のための規範的プロファイルとして機能する「標準的」プロファイル、及び(iii)「標準的」プロファイルに対する個々のプロファイルの観察された統計学的変動を示すデータ、を含むようにすることができる。
【0081】
実際には、患者のサンプルを評価するために、(切除生検または細針吸引を介して得られた)患者の乳房細胞の発現産物をまず単離し、その細胞の発現産物を特殊化されたマイクロアレイを用いて決定する。患者のサンプルを判別するために、患者のサンプルの発現プロファイルを上記のデータベースに対して照会する(queried)。照会は直接的または間接的に行うことができる。「直接的」なやり方は、患者の発現プロファイルをデータベース中の個々の他の発現プロファイルと直接比較し、どのプロファイル(そしてどの判別)と最も良い合致をするかを決定するものである。あるいはまた、照会は、より「間接的に」行うことができる。例えば、患者の発現プロファイルをデータベース中の「標準的」プロファイルに対して単に比較することができる。「標準的」プロファイルは多くの個々のプロファイルの集合を表すため、間接的アプローチの利点は、これら「標準的」プロファイルがずっとデータ集約的でなく、次いで本発明に従ってキットの一部を形成し得る(すなわちマイクロアレイと関連した)比較的安価なコンピュータシステムに保存できることである。直接的アプローチでは、多くの個々のプロファイルを保存しなければならないので、データキャリアはずっと大きな規模(例えばコンピュータサーバー)となるであろう。
【0082】
患者の発現プロファイルを標準的プロファイル及び予め決定された集団内での統計学的変動と比較すること(間接的アプローチ)によって、患者の発現プロファイルが「標準的」規範プロファイルといかに合致するかについて「信頼値」を出すことも可能である。この値は判別の信頼性について、例えば解析を繰り返すべきか否かについての貴重な情報を臨床医に提供するだろう。
【0083】
上記のように、データベース上に患者の発現プロファイルを保存することも可能であり、これらをいつでも使用してデータベースを更新することができる。
【0084】
本発明の態様および実施形態を例として添付の図面を参照して以下に説明する。更なる態様および実施形態は当業者には自明であろう。本明細書中に記載される全ての文献は、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0085】
【発明の実施の形態】
[材料および方法]
乳房組織サンプル
国立がんセンター組織保存機関(NCC Tissue Repository)より、当該機関の「保存および倫理委員会(Repository and Ethics Committees)」から適正な承認を受けてから、一次乳房組織を入手した。一般に、腫瘍を外科手術により切除するときは、腫瘍組織全体とそれに対応する正常組織とが同時に採取される。外科手術により切除した後、手術室でそのサンプルをすぐに大雑把に解剖し、液体窒素中で瞬間冷凍した。次に、シンガポール総合病院の病理部により腫瘍の状態が組織学的に確認された。処理を行うまでサンプルを液体窒素中で保管した。あるインド系患者から得た、腫瘍サンプルおよびそれに対応する正常サンプルからなる1つの組合せを除き、他の全てのサンプルは中国系患者から得た。本報告で使用した組織サンプルのDCIS状態の確認は、アーカイブサンプルの通常のH & E染色、並びに発現プロファイリングのために処理された実際のサンプルの直接クリオセクション(cryosection)の双方で行った。
【0086】
サンプルの調製およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
Affymetrix Genechipsを用いたハイブリダイゼーションでは、Trizol試薬を用いて組織からRNAを抽出し、Qiagen Spin Columnで精製し、製造者の説明書に従ってAffymetrix Genechipハイブリダイゼーションを行った。それぞれのスポットしたcDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションに対し、1回の線形増幅後の全RNA(2〜3μg)を用いた(Wangら, 2000)。スポットされたcDNAマイクロアレイハイブリダイゼーションについて、全ての乳房サンプルを、市販されている標準的なmRNA基準プール(Strategene)を同様に増幅したものと比較した。様々な製造元(Incyte, Research Genetics)から得たcDNAクローンを用い、cDNAマイクロアレイを標準的な手法(DeRisiら, 1997)に従って作製した。特に断らない限り、サンプルはCy3色素を用いて蛍光標識し、基準物はCy5で標識した。ハイブリダイゼーションはAffymetrix U133A Genchipsを用いて実施した。ハイブリダイゼーション後、CCD採用マイクロアレイスキャナ(Applied Precision, Inc.)を用いてマイクロアレイ画像を取り込んだ。
【0087】
データ処理および分析
スポットされたcDNAマイクロアレイのデータについて、個々のマイクロアレイに対応する蛍光強度を集中Oracle 8iデータベースにアップロードした。様々なデータセットの確立および遺伝子検索は、標準的なSQLクエリーを用いて行った。プログラムXcluster (Stanford)を用いて階層的クラスタリングを行い、プログラムTreeview(Eisenら, 1998)を用いて視覚化を行った。腫瘍データセットおよび正常データセットに含まれる異常値(outlier)遺伝子を同定するために、正常データセットの全アレイの90%および腫瘍データセットの全アレイの80%にわたって3倍を超えるレギュレーションを一貫して示したアレイエレメントを選択した。Golubら(1999)で用いられた類似性測度概念を用いて相関分析を行った。簡潔に説明すると、正常/腫瘍クラス区分に対応する類似性測度を遺伝子毎に算出した後、これらの遺伝子をこれらの類似性値に従って降順にソートした。クラス区分に対するこれらの正および負の相関によりソートした後、各クラスから上位10個の遺伝子を選択して、後のクラスタ分析で使用した。幾つかの相関変数からなる遺伝子発現マトリクスを「より少ない」数の非相関変数(主成分)に一次変換することにより、主成分分析(PCA)を行った。部分線形空間に含まれるデータセットについては、データはあまり多くの情報を失いすぎることなく且つデータ表示が簡単になるように、「圧縮」してもよい。第一の主成分がそのデータの中の最大変数となり、各後続成分が残りの変数の一部となる。
【0088】
Affymetrix Genechipsについては、市販のソフトウェアプログラム(GenedataRefiner)を用いて未加工の遺伝子チップ(Raw Genechip)スキャンの品質を調整し、中枢データ保存機関(central data storage facility)に寄託した。全サンプルで発現のない遺伝子(すなわち「A」コール)を除くことによって発現データをフィルタリングし、log2変換にかけ、そして全ての残りの遺伝子及びサンプルをメディアン中心化させることによって正規化した。次いでGenedata Expressionistソフトウェア解析パッケージを用いるか、または通常の表計算ソフトアプリケーションを用いてデータ解析を行った。図1で使用した1796遺伝子の非監督下のデータセットは、良く測定されたサンプル全てにわたって>1の標準偏差(SD)を示す遺伝子を選択することによって確立した。CLUSTERプログラムを用いて平均結合(average−linkage)階層クラスタリングを行い、結果をTREEVIEW(9)を用いて表示した。マイクロアレイの有意性解析(SAM)は、本質的にTusherら(2001)(10)に記載のようにして、fold−changeカットオフを2とし、適切なδ値を用いて遺伝子の偽発見率(FDR)を5%(0.05)に抑えて行った。
【0089】
共通内在性遺伝子セット( CIS )の作製
U133A Genechip Probe Set及びPerouら(2000)で規定された「内在性」データセットの双方で共通の遺伝子を以下の方法で選択した:456個のcDNAクローンからなる最初の「内在性」セットから、Stanford Source データベース(Unigene Build 156)を用いて428個を特異的なUnigeneクラスターに割り当てることができた。次いでこの数は重複した遺伝子を除くことで403遺伝子に減少した。このリストを用いて次にU133A Genechipプローブセットに照会し(queried)、292個、すなわち最初の「内在性」セットの72.5%が合致した(特有の(unique)遺伝子のみをカウント)。
【0090】
[結果]
非監督下のクラスタリングを用いた正常乳房検体および腫瘍乳房検体の区分け
本発明者等は、約13,000個のエレメントから構成されるcDNAマイクロアレイを用いて、主に中国系人種の患者から得た大雑把に解剖した乳房組織検体26個(腫瘍14個、正常12個)からなるセットの遺伝子発現プロファイルを作製した([材料および方法]を参照されたい)。ハイブリダイゼーションおよびスキャンを行ったところ、およそ8,000個のアレイエレメントがバックグラウンドレベルを有意に超える蛍光シグナルを示すことが分かり、これらのエレメントを後の分析に使用した。まず本発明者等は、幾つかの一般に用いられているデータフィルタ(例えば少なくとも4〜5個のアレイで少なくとも3倍のレギュレーションを示す遺伝子を選択する)に基づく非監督下のクラスタリング法(Perouら, 1999、Wangら, 2000を参照されたい)を行った結果、図1に示すアレイクラスタグラムが得られることを見出した。具体的には、サンプルセットを、各グループが腫瘍検体および正常検体の混合物からなる2つの大きなグループに分けた。しかし、本発明者等は、各グループ内において、腫瘍組織と正常組織とが明確に独立した下位分枝に有効に分けられることを見出した。非監督下のクラスタリングを用いて腫瘍組織と正常組織とを分けることができるという分析結果は、腫瘍サンプルと正常サンプルを有効に区別することができる特定の遺伝子が存在し得ることを示している。しかし、非監督下のデータセットが大きい場合、これらの遺伝子は、正常サンプルと腫瘍サンプルを相関デンドグラムの下位分枝としてしか区別することができず、第一次のクラス分けのレベルでは区別できないことも明らかである。また他の乳癌発現プロファイリングプロジェクト(Perouら, 2000)においても同様の知見が報告されており、このことは、全体的なトランスクリプトソームのレベルでは、他の遺伝子の発現レベルが、腫瘍/正常クラス分け([考察]を参照されたい)に関与する遺伝子によってコードされる情報に「優先する」ことがあり得ることを示している。
【0091】
正常サンプルと腫瘍サンプルとを判別するための異常値遺伝子セットの使用
本発明者等の研究の主な目的の1つは、診断上または治療上の可能性が大きな遺伝子または遺伝子のサブセットを同定することである。臨床的に利用するためには、未知の乳房組織サンプルが第二次ではなく第一次のクラス分けのレベルで正常であるかまたは悪性であるかを正確に予測することができる部類の遺伝子を同定することが必要である。これらの遺伝子セットすなわち「遺伝学的識別子」を同定するために、いくつかの監督下の学習法(近隣分析や人工ニューラルネットワーク)が過去に示されている(Golubら, 1999, Khanら, 2001)。しかし、本発明者等はやや異なる方法、すなわち高い再現性を示す異常値遺伝子の使用に注目した方法を用いて、これらのエレメントを同定した。この方法論では、異なるクラスに属するサンプルをまず別個のデータセットとして確立する。次に、各グループの中で、全てまたはほぼ全てのアレイで一貫してアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子(異常値遺伝子)を同定する。次に、これらの別々の「異常値グループ」を組合わせた後、組合わされた遺伝子セットについて、2つのクラスを区別できる能力を、標準的なクラスタリング法を用いて評価する。
【0092】
本発明者等は、正常集団および腫瘍集団の両方の異常値遺伝子サブセットをまず確立した。蛍光団標識により導入され得る偏りを回避するために、各グループに5つの「逆の」発現プロファイル(サンプルと基準RNA集団とを逆に標識したもの)も含めた。この分析により、正常グループについて60個の高い再現性を示す「異常値」遺伝子および腫瘍グループについて75個の遺伝子(全てのまたはほぼ全てのアレイで一貫してアップレギュレートまたはダウンレギュレートされたもの)を同定した(図2)。正常および腫瘍異常値セットのクロス比較により、両方のセットに共通する幾つかの遺伝子が明らかとなり(表1)、これは、最終的に108個の遺伝子からなる組合せ異常値遺伝子セット(COGと呼ばれる)とされた。
【0093】
次にCOGを用いて26個の乳房組織サンプルをクラスタ化した。図1に示した大規模クラスタグラムに比べ、本発明者等は、COGに示される遺伝子を用いたクラスタリングが、腫瘍サンプルおよび正常サンプルの大部分を2つの主分枝に有効に分けられることを見出した(図2a)。判別ミスは2つであった。具体的には、1個の正常サンプルおよび1個の腫瘍サンプルが間違えて割り当てられ、前者のケースでは遺伝子発現値の質の確認によりこのサンプルが幾つかのいわゆる「欠測」値(クラスタグラム中のグレーのバー)と関連していたことがわかり、これによりこのサンプルが誤って判別されたものと思われる。それでも、サンプルの大部分は正確にグループ分けされており、このことは、あるデータセットについて、「異常値分析」が、異なるクラス間における識別用遺伝子を同定するための簡単且つ有効な方法となり得ることを示している。
【0094】
乳房組織における正常クラスと腫瘍クラスのクラス区分のための最小遺伝学的識別子の定義
最初のデータセットから得た遺伝子の数を大幅に削減(8,000から108に)しているにもかかわらず、COGに含まれるエレメントの数は依然として、行い得る診断アッセイの一部としてその全てを含めて実行するには多すぎる。理想的には、診断用遺伝子セットは、i)最小数のエレメントからなり、ii)予測精度が高く、およびiii)問題となるクラス区分に対して正および負の相関を有する遺伝子の混合物でなければならない。組合せ異常値遺伝子セットを最も有用なエレメントにさらに縮小するために、本発明者等は相関分析を用いて、腫瘍/正常クラス区分に最も高い相関性を有するCOG中の遺伝子を、同定およびランク付けした([材料および方法]を参照されたい)。次に最も高い正および負の相関性を有する10個の遺伝子の各々について、乳房サンプルを正確に判別する能力を評価した。本発明者等は、20個の遺伝子からなるこの最小セット(「遺伝学的予測因子」と呼ぶ)が、正常サンプルおよび腫瘍サンプルの全てを正確に判別することを見出した(図2bおよび表2)。「遺伝学的予測因子」を構成する遺伝子は、乳房および腫瘍の生物現象に関与することがわかっている遺伝子と、腫瘍形成におけるその役割がまだ報告されていないその他の遺伝子([考察]を参照されたい)との混合物である。
【0095】
20 個の遺伝子からなる「遺伝学的識別子」の予測能力
この時点までに行われた全ての分析は、26個の乳房サンプルからなる同じ「トレーニングセット」に対して行われたため、20エレメントの遺伝子セットの予測能力に目を向けたものではなかった。この「遺伝学的予測因子」の頑健性を評価するために、本発明者等は、Golubら(1999)の方法に従い、最小予測因子について、さらなる22個の乳房サンプルからなる未実験の「テストセット」(このうち12個のサンプルは腫瘍サンプルであり、残り10個は非悪性であった)を判別する能力についてテストした。トレーニングセットに対しても同様にテストし、彼等は該20個の遺伝子からなる遺伝学的予測因子もまた全く正確に未実験のセットを判別することができることを見出した(図3b)。このように、所与の乳房サンプルが正常であるか悪性であるかを予測する「遺伝学的予測因子」の能力は、それを作製するのに用いたトレーニングセットに対して限定されるものではない。むしろ、この遺伝子セットに含まれるエレメントの数は、最小限ではあるが、これに予測値をもたらす上で十分な感度と有用性を示すものである。
【0096】
正常乳房組織と腫瘍乳房組織との間の全体的な変動レベルを評価する
乳癌は、臨床経過、病気の攻撃性および薬物療法に対する応答における様々な変動によって臨床的に特徴付けられる。これらの表現型の大きな変動と一致するように、個々の乳癌がその全体的な遺伝子発現パターンにおいて大きな変動を呈し得るということが見出された(Perouら, 2000)。これらの大きな変動を説明する1つの一般的な仮説は、これらの変動を複数の独立した腫瘍形成経路の結果として考えることである。しかし、正常な乳房組織もまた環境およびホルモンに対して感受性が高く、さらに、特定の患者における正常な乳房組織の特定の状態はしばしば様々な人口統計学的要因(例えば年齢)、更年期状態、および薬歴などに依存する。したがって、腫瘍において観察される発現状態のある一定量の変動が非悪性乳房組織においても同様に示されることも、形式上はあり得る。本発明者等のデータセットは正常サンプルおよび悪性サンプルの両方からなるので、正常サンプルおよび腫瘍サンプルの固有の変動性を互いに比較することができた。この比較を行うために、全部で22個の非悪性検体および26個の腫瘍検体について、全部で8,000個の遺伝子の発現マトリクスに対して主成分分析法(PCA)を用いた。PCAを用いて、本発明者等は全遺伝子セットを一連の識別可能な「成分」(各成分は一次データセットにおいて、有限量の遺伝子発現変動を示すものである)に減らした。このデータで観察された変動が複数の原因(内在性の生物学的変動、および実験的に導入された変動、例えばサンプルの採取、ハイブリダイゼーション、標識条件等における差異など)から生じたものであると仮定した。しかし、正常サンプルおよび腫瘍サンプルは本実験において全く同じように採取、処置および処理されるので、実験条件および取扱いによる変動は、両グループ間で等しく共有される。したがって、腫瘍グループおよび正常グループの変動の差は、内在性の生物学的変動に起因している可能性が最も高いと思われる。
【0097】
本発明者等は、正常データセットと腫瘍データセットにおいて観察された変動量を、これらの主成分に対してプロットした(図4)。これらの2つのデータセットを効果的に比較するために、各成分をそのデータセット中の第1成分に対して標準化し、データセットの全体的な変動が各後続主成分と共にどのように「減衰」するのかを示すグラフを得た(慣例的に、第1主成分は通常そのデータセットにおいて最大変動を示すエレメントを示すために利用される)。本発明者等は、一般に、腫瘍データセットに該当する全ての成分が正常データセットにおける関連の成分に比べて一貫して高い変動を示す、という分析結果を得た。このデータは、正常な乳房サンプルの遺伝子発現プロファイルが腫瘍プロファイルに比べて有意に「静的な」すなわち「変化しない」ものであることを示し、これは、腫瘍において観察される遺伝子発現の大きな変動が、複数の腫瘍形成経路から生じる乳癌の結果であるという仮説を支持するものである。
【0098】
別個の人種集団にわたる乳癌の分子サブタイプの保存
次いで本発明者等はAffymetrix Genechipsを用い、中国人患者から単離された56の浸潤性乳癌及び6の正常乳房組織をプロファイリングした。生の発現プロファイルスキャンを、1ラウンドの品質管理、データフィルタリング及びプロセシング(物質と方法欄参照)にかけ、非監督下の(unsupervised)階層クラスタリングアルゴリズムを用い、転写の類似性に基いて正規化されたプロファイルを互いに順位付けた。全サンプルの少なくとも70%について良く測定され、サンプルについて(高い標準偏差値を有することによって反映されるように)考慮すべき転写変動を示す遺伝子から構成される1796遺伝子のデータセットを用いて、本発明者等はサンプルの大多数は特定の病理組織学的パラメーターに相関し得る数種の識別できる群に分けられることを観察した。例えば、ER+腫瘍の多くは共に群をなし((S1)バー、図5a)、ERBB2+/ER−サンプルも同様であった((S3)バー)。正常乳房サンプルも、個々のメンバーが互いに非常に高い相関を示す識別可能な群を形成し、腫瘍と比較して、正常乳房組織における転写の変動は少ないことが示唆された。しかしながら、多くのサンプルが監視なしでのクラスタリングアルゴリズムによって正確に分けられなかった(灰色のバー)。このような「混合クラスタリング」の結果は、正常乳房上皮組織、リンパ球性浸潤物、及び反応性癒着(desmoplastic)組織等の原組織サンプル中の非悪性成分に起因する「ノイズ」によるものであり得る。先に記載したように、cDNAマイクロアレイプラットフォームを用いて同様の観察が得られており、この現象が技術−プラットフォームに依存するものでないことが示唆される。
【0099】
本研究の目的の一つは、これまで公開された研究で規定されている分子サブタイプ及び関連する発現特徴が別個の患者集団でも検出できるか否かを決定することであった。本発明者等は、発現の結果を、米国及びノルウェーの患者から得られた一連の乳癌検体について同様の解析が行われたランドマークとも言える研究であるPerouら(2000)の結果と関連付けることに注力した。簡単に言えば、彼等の研究及びそれに続く同グループの報告(Sorlieら、2001)において、著者等は浸潤性乳癌は、転写変動が主として悪性腫瘍成分のために起こっている遺伝子を集めた「内在性」遺伝子セットに基いて、少なくとも5種の別個の分子サブタイプに分類できることを決定した。特定のサブタイプそれぞれの「ホールマーク」要素を示す特定の発現特徴を表1にまとめている(このデータセットを今後Stanford研究という)。Stanford研究と本発明者等の仕事の間には、例えばサンプル操作プロトコル、患者集団、及び発現アレイプラットフォーム(Stanford研究における2色cDNAマイクロアレイvs本発明者等の研究における1色Genechips、並びにアレイプローブ配列の差異)等、方法論及び実験設計において種々の違いがある。独立した機関(Stanford及び本発明者等)からの2つの別個の乳癌発現データセットを入手できたことから、本発明者等は、これらの相違に関わらず、一機関の実験で規定された分子サブタイプが実際に十分確固としたものであり、別の機関の研究で検出できるものであるか否かを調べることができた。
【0100】
この解析を実施するために、本発明者等はまず、Stanford研究によって規定された「内在性」セットに属する遺伝子に相当するAffymetrix U133A Genechip上のプローブを同定した(材料と方法の項参照)。Stanfordの「内在性」セットで見出された403個の特有の遺伝子のうち、292遺伝子、すなわち内在性セットの72.5%がGenechipアレイ上でも見出された。本発明者等は以降この遺伝子の重複セットを「共通内在性セット」(CIS)という。重要なことは、このCISはStanford研究において転写がサブタイプを識別するのに有用であると報告されている「ホールマーク」遺伝子の多くをなおも含んでおり、CISを用いてStanfordの腫瘍を再クラスタリングすることで、完全な内在性セットを用いて得られたものと非常に近いグループ分けをすることができたことである(データは示さない)。本発明者等の研究において浸潤性癌をCISに基いて再クラスタリングすると、分離パターンにおいて著しい改善が観察され、いまや全ての癌のサンプルが非常に明確なクラスに分けることができる。次いで本発明者等は研究で規定された分子サブタイプをStanford研究によって発見されたもの(Luminal A、Luminal B/C、Basal、正常様、及びERBB2+)(Perouら、2000; Sorlieら、2001)と比較することを行った。
【0101】
Luminalサブタイプ:この群の癌は全て従来の免疫組織化学でER+であった。Stanford研究では管腔(luminal)腫瘍の少なくとも2つの群、Luminal A及びLuminal B/Cが規定された。後者はより悪い臨床的予後と関連している(Luminal B及びC腫瘍は、報告によると2つの別個の群に分けることが困難であるため、一つの群として取り扱う(Sorlieら、2001))。Stanford研究と異なり、本発明者等は、Stanford研究のLuminal Aサブタイプに非常に近いはっきりしたLuminal分子サブタイプの存在も観察した。このサブタイプはER及び関連遺伝子(GATA3、HNF3a、及びX−box結合タンパク質1等)の高レベルの発現によって特徴付けられる(バー(S1))。しかしながら本発明者等は、Stanford研究によって規定されたLuminal B/Cサブタイプがその患者集団中にも存在するか否かを、B/CサブタイプがER関連遺伝子の中程度のレベルの発現と関連しており、かつluminal Cサブタイプが高レベルの「新規」遺伝子クラスターも発現しているという双方の基準に基いて、明確に決定することはできなかった。本発明者等はまた、(Luminal B/Cと同様に)ER−関連遺伝子、及び(Luminal Cと同様に)「新規」クラスターに見られる遺伝子を中程度に発現(バー(S2))する点で、luminal A癌と別個の第二のluminalサブクラス(ER+/ERBB2+)の存在を観察した。しかしながら、このサブクラスはERBB2関連遺伝子も高レベルで発現し、luminal C癌はERBB2遺伝子クラスターを低レベルで発現するため、Stanford研究によって規定されたluminal C癌とは別個である可能性が高い。総合すると、本発明者等の結果は、Luminal A腫瘍(図5における「Luminal」)は種々の患者集団にわたって共通して見られるはっきりした分子サブタイプを構成することを示している。反対に、luminal B/C及びER+/ERBB2+サブタイプは、その存在が人種特異性、サンプル操作プロトコル、あるいはアレイ技術における差異によってより顕著に影響され得るより弱い変異型を示し得る。
【0102】
図5に示すように、Luminalカテゴリー(サブタイプS1)に属する腫瘍はCISに基くと転写的に見かけ上均一である。このサブタイプに属する腫瘍が更に細分化され得るか否かを決定するために、本発明者等は従来の報告で組織の細胞増殖状態を示すことが示されていた別個の遺伝子のセットを用いてより大きなLuminal腫瘍群を再クラスタリングした(Sorlieら、2001)。
【0103】
これらの「増殖遺伝子」に基いて、本発明者等はLuminal腫瘍が2つの別個のタイプ、すなわち「純粋な」lumnal A及び本発明者等がLuminal Dサブタイプと呼ぶもう一つのサブタイプに分けることができることを見出した(図9a)。Luminal A/D細分化は臨床的に意味があると思われる。なぜなら「増殖遺伝子」に基いてより多様な腫瘍のセットを再クラスタリングすることによって、臨床的に攻撃的な腫瘍を示すもの(Basal、ERBB2及びLuminal D)、及び臨床的により従順な腫瘍を示すもの(Luminal、正常/正常様)の2つに大きく分けられる(図9b)。
【0104】
Basal−様:basal分子サブタイプはStanford研究において高レベルの2つの発現特徴:I)ケラチン5及び17等の哺乳類の基底上皮のマーカー、及びII)「新規」クラスターに属する遺伝子によって特徴付けられるものとして報告された。Stanford研究と同様に、本発明者等もまた類似の発現特徴に関連するbasalサブタイプを観察し(バー(S4))、basal分子サブタイプも非常にはっきりしていることが示された。しかしながら、更に本発明者等はStanford研究で記載された発現特徴の何れとも関連しないもう一つのサブタイプ(バー(S5))の存在も検出した。
【0105】
正常乳房様:「正常−様」サブタイプは正常の乳房組織にも高度に発現している遺伝子クラスターの発現と関連しており、four and a half LIMドメイン1、アクアポリン1、及びアルコールデヒドロゲナーゼ2(クラスI)β等の遺伝子を含んでいる。本発明者等の研究における腫瘍の多くはまた正常乳房組織と共に群をなしており、この発現特徴を示した(バー(S6))。従って「正常様」分子サブタイプも明らかなサブタイプであると考えることができる。
【0106】
ERBB2+:Stanford研究はまた、ERBB2関連遺伝子の高レベルの発現(カラムE)、「新規」クラスターの中程度のレベルの発現(カラムB)、及びER−関連遺伝子の発現がないこと(カラムA)によって特徴付けられる腫瘍である最後のERBB+サブタイプを規定した。本発明者等の研究でも類似のERBB2+サブタイプが明瞭に存在していた(バー(S3))。発現データと一致して、本発明者等は次にこの分子サブタイプに属する腫瘍は従来の免疫組織化学によって同様に全てERBB2+であることを確認した。
【0107】
要約すると、Stanford研究によって規定された5つの分子サブタイプのうち、本発明者等は独自の患者集団で少なくとも4つのサブタイプを明確に検出した(luminal A、basal様、正常乳房様、及びERBB2+)。本発明者等は、CISにおける遺伝子を用いた本発明者等の研究では1つの特定のサブタイプ(luminal B/C)が存在するか否かを明確に決定することができず、以前には報告されていなかった2つの更なるサブタイプ(ER+ERBB2+及びER−サブタイプII)の存在の可能性も検出した。Stanford分子サブタイプの大半(4/5)が本発明者等の研究でもはっきりと検出できたという知見によって、施設間での多くの方法論的差異に関わらず、発現に基くゲノミクスによって規定された分子サブタイプは異なる患者集団間で非常に強力で保存されていることが示唆された。
【0108】
腺管上皮内癌( DCIS )の癌は浸潤癌分子サブタイプのホールマーク発現特徴を発現する
これまでの結果から、分子的に類似の乳癌のサブタイプが別個の人種集団にわたって実際に生じており、検出できることが示される。しかしながら、これらの研究の限界の1つは、長期間にわたって同じ癌のプロファイリングをすることが非常に困難であることが多いことである。従って、しばしば提起される疑問の1つは、これらの分子的変種が真に別個の生物学的実体であるサブタイプを表しているのか、あるいは進化の異なる段階にある単一もしくは2〜3のサブタイプを反映しているに過ぎないのか、ということである。それぞれ「個別の起源」及び「進化」仮説と呼ばれるこれら2つの異なる理論(図6e)は臨床診断及びその後の段階分け(staging)及びモニタリングで異なる意味を有するため、乳癌の場合にこれらの提案されたメカニズムの何れであるかを決定することは重要である。不運なことに、いずれの仮説でも図5に示すものと類似の結果となることが予測されるため、あるひとつの時点でサンプリングされた浸潤癌を研究することのみでこれら2つのモデル間の識別を行うことは不可能である。
【0109】
従来の組織病理学において、腺管上皮内癌(またはDCIS)は浸潤性乳癌の主たる前駆状態であると認識されており、最も初期には形態学的に検出可能な悪性非浸潤性乳房病変を示すようである。しかしながら、その悪性状態に関わらず、DCIS癌はまた多くの点で浸潤癌とは別個のものである。臨床的には、DCIS癌は浸潤癌とは異なるものとして扱われ(DCISのケースは補助的に(adjuvent)放射線療法を伴うかまたは伴なわずに主として外科的治療される)(Harrisら、1997)、DCIS及び浸潤癌はまた特殊な癌の型の分類において実質的に異なっている(Barnesら、1992、Tanら、2002)。このような差異から、DCISの症例は悪性であるが、いくつかの点で分子的にもより進行した浸潤癌と別個のものであり得る可能性が挙げられた。本発明者等は、「個別の起源」及び「進化」仮説を、一連のDCIS癌をプロファイリングし、そのプロファイルを対応する浸潤癌と比較することによって調べることができると推論した。「個別の起源」仮説が真実であれば、「初期の」癌を示すDCIS癌は、全てではないにしても多くの、より成熟した浸潤性対応癌と関連するホールマーク発現特徴を発現するはずである。あるいはまた、「進化」仮説が正しいとすると、DCISプロファイルが浸潤性対応癌に対するよりも互いにより近い類似性を有することが期待され得る。本発明者等は、処理された実際のサンプルの通常のH & E染色並びに凍結低温切片(cryosection)の双方を用いて病理学者によって組織病理学的状態が確認された12のDCIS組織サンプルを得た(図2a及びb)。次にDCISサンプルの発現プロファイルを作製し、浸潤性対応癌と比較した。出発データセットとしてCISを用い、本発明者等はDCISサンプルが種々の浸潤癌サンプルの中で別個のカテゴリーに分けられることを見出した。具体的には、5種のDCISサンプルがLuminalサブタイプに、4種がER−/ERBB2+サブタイプに、2種がER+/ERBB2+サブタイプに、そして1種が「正常乳房様」サブタイプに分類された。重要なことには、各サブタイプにおいて、DCIS癌のそれぞれがその特定の分子群ホールマーク発現特徴をはっきりと発現していることが見出された。興味あることに、basalまたはER−サブタイプII分子サブタイプにクラスタリングされるDCISサンプルは見られず、このことは、これらのサブタイプがDCISの要素なしに(あるいは非常に一時的に有するのみで)発達し得るという以前に提案された理論と一致している(Barnesら、1992)。これらの結果から、乳癌の腫瘍形成のDCIS段階においてさえ別個の乳癌分子サブタイプが存在することが示唆され、サブタイプが、おそらくは異なる腫瘍形成経路を介して生じる真に別個の生物学的実体を示すという仮説(「個別の起源」仮説)が支持される。
【0110】
正常 /DCIS/ 浸潤癌の移行に関連する遺伝子は乳房腫瘍形成における共通の初期事象として Wnt シグナリングの脱調節に関係し、 Luminal A 及び ERBB2 +癌は類似の浸潤プログラムを示す。
哺乳動物の腫瘍形成は2つの主な段階に大きく分けられる:第一に、正常乳房上皮組織が種々の細胞経路のまとまった(concerted)脱調節を介して悪性状態に形質転換される(Hahn及びWeinberg、2002)。第二に、浸潤癌に進行するために、更にいくつかの、周辺の基底膜の浸透、癌の隣接した正常支質(stroma)への浸潤、及び腫瘍への栄養補給及び維持のための内皮血管の形成供給を含む、更なる生物学的サブプログラムが行われる必要がある(Hanahan及びWeinberg、2000)。乳癌の分子的不均一性を考慮すると、この分野における重要な疑問は、これら2つの鍵となる段階を調節する遺伝子的プログラムがサブタイプ特異的であるのか、あるいは全ての乳癌サブタイプで共有されているのか、その程度についてである。
【0111】
正常乳房組織、DCIS癌、及びそれらの浸潤性対応癌間で発現レベルが有意に異なる遺伝子を同定するために、本発明者等は、従来の報告で異なって調節されている遺伝子を同定するために用いられた強力な統計的方法論である、マイクロアレイの有為性解析(SAM)を用いた(Tusherら、2001)。本発明者等はluminal及びERBB2+癌を研究することに注力した。なぜなら研究で用いたDCISサンプルのほとんどがこれらの2つの分子サブタイプに属していたためである。まず、DCIS癌が、浸潤癌のホールマークの多くを発現しているにも関わらず、なおも浸潤癌とは転写的に別個であるという仮説を試験し、確認した。本発明者等は5つのluminal DCIS癌を5つのluminal浸潤癌と比較し、2倍のカットオフ基準と5%の偽発見率(FDR)を用いて、有意に調節されている222遺伝子が存在することを決定した。対照的に、2つの群にランダムに分布している浸潤性luminal A癌のみを比較した対照解析では、これらの厳格な条件下で有意に調節されている遺伝子を同定することはできなかった。同様の結果は、ERBB2+サブタイプに属するDCIS及び浸潤癌についても得られており(データは示さない)、有意な転写的差異がLuminal A及びERBB2+サブタイプに属するDCIS及び浸潤癌間に存在することが示された。
【0112】
次にSAMを用い、luminal A及びERBB2分子サブタイプの双方について正常/DCIS及びDCIS/浸潤の移行のいずれかの間に有意に調節されている遺伝子を同定した(FDR=5%)。結果を図8aに示す。全体で、luminal Aサブタイプについては正常/DCIS移行の間にアップレギュレートされている遺伝子よりもより多数の遺伝子が有意にダウンレギュレートされており(705遺伝子でダウン vs 245遺伝子でアップ)、一方DCIS/浸潤の移行については発現の減少よりも多くの遺伝子で発現が有意に上昇した(56遺伝子でダウン vs 277遺伝子でアップ)。同様に、ERBB2サブタイプについては、正常/DCIS移行の間に367遺伝子が有意にダウンレギュレート、275遺伝子がアップレギュレートされており、DCISから浸潤癌への移行の間には113遺伝子がダウンレギュレート、294遺伝子がアップレギュレートされていた。
【0113】
以下に表4、5、6及び7の遺伝子セットをいかにして決定したかについての概要を示す。
【0114】
正常乳房サンプル及び腫瘍乳房サンプルを識別し得る「遺伝学的識別子」
方法論:
データセット:95の乳房組織サンプル(11の正常サンプル及び84の腫瘍サンプル)
段階1:各サンプルのデータを、およそ5000の蛍光単位の各発現プロファイルをメディアンに集中させることで正規化した(Genechip技術を用いて蛍光単位(0〜65535)によって各遺伝子の発現量を測定する)。
【0115】
段階2:強度フィルターを適用して強度値が200〜100,000の範囲にある遺伝子のみを保持させる。
【0116】
段階3:「重要値」フィルターを適用して正常もしくは腫瘍または双方に少なくとも70%存在する(すなわち通常約200の最小閾値以上)遺伝子を選択保持させる。
【0117】
段階4:統計的T−テストを実施し、信頼度p<0.00001で正常と腫瘍で異なって発現する遺伝子を選択する。この結果507遺伝子を選択した。
【0118】
段階5:507遺伝子から、高倍率変化フィルターを適用して正常及び腫瘍サンプル間で発現に大きな差異(2.5倍以上)を示した遺伝子を選択する。この結果、49遺伝子(腫瘍の方が高発現)及び81遺伝子(正常の方が高発現)をそれぞれ同定した。これらの遺伝子を表4aに挙げる。
【0119】
段階6:130遺伝子(49遺伝子と81遺伝子)を、未知の乳房サンプルを腫瘍群または正常群のいずれかに割り当てることができる重要度の順に遺伝子をランク付けするために、支持ベクター機構による遺伝子ランキングを用いてランキングした。この実施により、正常と腫瘍を正確に予測できる遺伝子の小サブセットが得られた。上位32遺伝子で、約1%の誤判別であった。結果を表4bに示す。
【0120】
段階7:上記32遺伝子のセットを、leave−one−outクロスバリデーション(LVO CV)テスト法を用いて正常及び腫瘍サンプルの判別における予測正確性について調べた。誤判別は観察されなかった。
【0121】
サポートベクターマシン( SVM )遺伝子ランキング
このアプローチを用い、未知のサンプルを特定の群に割り当てることができる重要性に従ってデータセット中の遺伝子をランク付けする。典型的にはデータセット中のサンプルを(75%)のトレーニングセットと(25%)のテストセットに分ける。2つのクラス(例えばER+対ER−)を分離する最大マージン超平面(hyperplane)をトレーニングセットのために算出する。
【0122】
「m」個の遺伝子がセット中に存在するとして、最大マージン超平面の式は
[式中、Wiは重量であり、Giは変数(遺伝子)を示す。]
である。
【0123】
種々の上位「N」個の重量(重量は判別における遺伝子の重要性を示す)に対応する遺伝子を用い、テストセット中の全サンプルのクラスを予測する。予測の規則は上位N個の遺伝子のセットを変えるごとに作製する。上記の操作を100回繰り返し、遺伝子のランク及び誤判別の率を平均化する。
【0124】
乳房腫瘍サンプルのエストロゲン受容体の状態及び ERBB2 受容体の状態を予測し得る「遺伝学的識別子」
方法論:
データセット:55種の浸潤性乳癌サンプル。個々の腫瘍をIHC(免疫組織化学)に基いて以下の群に割り当てた。
【0125】
a)エストロゲン受容体(ER)状態:35のER陽性サンプルと20のER陰性サンプル
b)c−erbB−2(ERBB2)状態:21のERBB2陽性サンプルと34のERBB2陰性サンプル。
【0126】
段階1:a)ER+対ER−腫瘍、及びb)ERBB2+対ERBB2−サンプル間で異なって発現する遺伝子を同定するための遺伝子選択。3種の独立した遺伝子選択技法を使用した。
【0127】
・マイクロアレイの有為性解析(SAM) 「偽発見率」、すなわち、特定の遺伝子が異なって発現していると誤ってされる見込み、を評価するための発現データのランダムな置換を使用する統計的技術(Tusherら、2001)。遺伝子は次いで、上記段階6で使用したランキングと類似であるそれらの「相対的差異」によってランク付けされる。上位100種の有意な遺伝子を選択した。
【0128】
・ノイズに対するシグナル(S2N)戦略を使用し、遺伝子をそれらのクラス識別(class distinction)(ER+/ER−またはERBB2+/ERBB2−)との相関に基いてランク付けした(Golubら、1999)。上位100種の遺伝子を選択した。
【0129】
・サポートベクターマシン(SVM)ランキング戦略を使用し、乳癌サンプルを正しいクラスに割り当てる上での重要性に従って遺伝子をランクした(下記参照)。最適の遺伝子セット(最も高い正確さを有するもの)を選択した。
【0130】
段階2:共通遺伝子セット(CGS):3種の独立した解析から得た遺伝子をプールし、3種の方法全てで選択された共通の遺伝子を選択した。従ってこれらの遺伝子は方法に依存するものではなく、乳癌サンプルのERまたはERBB2状態を予測する「遺伝学的識別子」として使用するのに十分強力である。
【0131】
結果:
・ER判別のために、CGSは25の特有の遺伝子を含有する(18個がアップレギュレート、7個がダウンレギュレート)
・ERBB2判別のために、CGSは26の特有の遺伝子を含有する(19個がアップレギュレート、7個がダウンレギュレート)
それぞれのCGSに属する遺伝子を表5に挙げる。最後に、腫瘍の判別のための各CGSの正確性を、LVO CVテストを用いて評価した。使用した判別アルゴリズムはサポートベクターマシン(SVM)であった。クロスバリデーションの誤り率(error rate)はER判別では7.286%(総体的正確性は92%)であり、ERBB2判別では6.26%(総体的正確性は93%)である。
【0132】
乳房腫瘍サンプルの分子サブタイプを予測し得る「遺伝学的識別子」
方法論
データセット:種々のサブタイプに属する腫瘍の発現プロファイルをAffymetrixU133A Genechipsを用いて作製した。各サブタイプを特徴付けるホールマーク発現特徴は上記した通りである。
【0133】
a)Luminal(19)
b)ERBB2(19)
c)Basal(7)
d)ER陰性タイプ2(5)
e)正常及び正常様(12)
A. One−vs−all サポートベクターマシンアプローチを用いた判別のための最小遺伝子セットの同定
段階1:各サンプルのデータを、各発現プロファイルをおよそ1000の蛍光単位にメディアン集中させることで正規化させた(Genechip技術を用い、蛍光単位(0〜65535)によって各遺伝子の発現量を測定する)。
【0134】
段階2:「重要値」フィルターを適用して全サンプルにわたり少なくとも70%(すなわち通常約200の最小閾値以上)存在する遺伝子を選択した。
【0135】
段階3:5種の異なるデータセットを、上記の群の一つを抜き、残りの4群を組み合わせることで作製した(すなわち「one−vs−all」)。
【0136】
段階4:5データセットのそれぞれに対し、群間で最小で2倍の変化を示す遺伝子を選択した(平均の比率を使用して2群間の変化を算出した)。
【0137】
結果は以下の通りである。
【0138】
段階5:サポートベクターマシンによる遺伝子ランキング解析を5データセットのそれぞれに対して実施し、未知の乳房サンプルを適切なクラス(ERまたはERBB2状態、上記参照)に割り当てる上での重要性の順に遺伝子をランク付けした。
【0139】
データセット1、3、4、及び5に対し、3%の誤判別率の遺伝子セットを選択した。データセット2(ERBB2対残り)の場合、全46遺伝子の使用により最小で9.7の誤り率が得られた。従って予測セットで全46遺伝子を使用した。予測セットを表6に示す。
【0140】
段階6:サンプルを1つのデータセットに全て組み合わせ、種々の予測セットを使用してone vs allクロスバリデーション解析を実施した。75:25(トレーニング:テスト)ランダムスプリットの100回の独立した繰り返しを用い、その結果、総体的なクロスバリデーションの誤り率は5.25%(総体正確度94%)であった。
【0141】
B.遺伝学的アルゴリズム/最尤判別( Maximum Likelihood Discriminant )( GA/MLHD )アプローチを用いた判別のための最小遺伝子セットの同定
GA/MLHDアプローチは、Aで記載したOVA SVMの代替法として使用し得る別の判別アルゴリズムである(Ooi及びTan、2003)。
【0142】
段階1:サンプルを以下のクラスに分類した。
【0143】
次いで、全サンプルにわたり最大の標準偏差(SD)を示す遺伝子を選択することによって1000遺伝子の不完全な(truncated)データセットを確立した。
【0144】
段階2:表4に記載のクラス分けに基いて62の乳癌サンプルに対してGA/MLHDアルゴリズムを24回実施した。GA/MLHDによって選択された予測セットの正確性はクロスバリデーション及び独立した試験研究によって評価した。
【0145】
GA/MLHDの特徴の詳細:
(a)クロスオーバー率:0.7、0.8、0.9、1.0
(b)変異率:0.0005、0.001、0.002、0.0025、0.005、0.01
(c)均一なクロスオーバー
(d)選択:stochastic均一サンプリング
(e)予測セットサイズの範囲:Rmin=1及びRmax=80
予測セット当たり13から17遺伝子の範囲のサイズを有する30の最適な予測セットを得た。それぞれの予測セットは62サンプル中1個のエラーの判別精度であった(誤り率:1.61%、相対的判別精度98%)。30の予測セット中10個でLuminal−Aサンプルである980221Tを正常サンプルと誤判別した。他の20の予測セットでは、19がERBB2+サンプルの990262TをER−サブタイプIIサンプルと誤判別し、1の予測セットは同じ990262TサンプルをBasalタイプサンプルと誤判別した。最適予測セットのうちの2つを表6bに示す。
【0146】
アジアの乳癌集団における Luminal D サブクラスの同定
主にコーカサス人集団で行った以前の乳癌発現プロファイリング研究から、ESR1、GATA3、及びLIV−1等のエストロゲン受容体関連遺伝子の高発現によって特徴付けられる「luminal」サブタイプの存在が明らかとなった。更に、これらの「luminal」癌は更に少なくとも2つの更なるサブタイプ、Luminal A及びLuminal B/Cに分けることができた。Luminal A腫瘍はER関連遺伝子を非常に高いレベルで発現し、Luminal B/C癌はER遺伝子クラスターを中間レベルで発現する。更に、luminal C腫瘍はまた「新規」遺伝子クラスターを高レベルで発現する。Luminal B/C腫瘍はLuminal A腫瘍よりも臨床的により悪い予後を示すことが見出されており、これらのサブタイプが臨床的に関連することが議論される。
【0147】
シンガポールで行われた中国人患者から得られた乳癌での同様の研究によって、luminal Aサブタイプはアジアの患者集団にも存在することが確認された。しかしながら、luminal B/Cサブタイプは検出されなかった。この違いの裏にある理由は、2つの研究間の方法論の差異による可能性があるが、あるいは患者集団で真に異なっている可能性もある。
【0148】
本発明者等がコーカサス人での研究を注意深く検討したところ、Luminal C腫瘍はそのメンバーが細胞増殖に関与する高レベルの遺伝子クラスターとも関連することが明らかとなった。対照的に、この「増殖クラスター」はLuminal A腫瘍では発現が低い。この「増殖クラスター」のこの高い発現レベルはまた、臨床的に攻撃的なERBB2+及びbasal(ER)サブタイプに属する腫瘍でも同様に見られるため、「増殖クラスター」における遺伝子の高発現は、Luminal C腫瘍と関連する臨床的に悪い予後に機能的に関わっている可能性がある。従って、luminal B/Cサブタイプはアジアの乳癌集団では観察されないが、本発明者等は、この「増殖」クラスター中の遺伝子を、アジアの集団で見られる従来均質なLuminal A腫瘍を別個のluminalサブタイプに分けるために使用することもできるという仮説を立てた。
【0149】
結果
Affymetrix U133A Genechip 上での「増殖クラスター」関連遺伝子の同定
本発明者等の研究において、市販されているAffymetrix U133A Genechipを用いていくつかの乳房腫瘍の発現プロファイルを得た。次いで本来の「増殖」クラスターメンバーに対応する遺伝子をGenechipから選択した。本来の「増殖クラスター」を含む65遺伝子から、本発明者等は36(55%)がGenechipアレイ上にも存在することを決定した。
【0150】
アジアの Luminal 腫瘍集団における「 Luminal D 」サブタイプの発見
本発明者等は次に、この36遺伝子セットを用いて、従来の解析においてLuminal Aサブタイプに同質に割り当てられていた腫瘍群を再度クラスタリングした。図1に示すように、36遺伝子セットによって、腫瘍は36遺伝子セットの低レベル及び高レベルの発現によってそれぞれ特徴付けられる2つの大きな群にはっきりと分けられた。前者の群は以下、真の「Luminal A」サブタイプといい、後者の群は、その発現プロファイルがこれまで同定されたサブタイプと異なるため、「Luminal D」という。
【0151】
36 遺伝子セットの高レベルの発現は他の攻撃的腫瘍サブタイプでも観察される
Luminal D腫瘍がLuminal A腫瘍よりも臨床的により攻撃的であるか否かを決定するために、本発明者等は次に、36遺伝子の「増殖クラスター」のみを用いてより多数の攻撃的腫瘍を再度クラスタリングすることによって、このクラスターの高レベル発現が攻撃的腫瘍でも観察されるかどうかを決定した。図2に示すように、Luminal D腫瘍をERBB2+及びBasalサブタイプの腫瘍と混合し、Luminal A腫瘍を正常及び「正常様」腫瘍と混合した。この結果より、Luminal D腫瘍はより攻撃的な腫瘍とある種のhallmarkを共有する場合があり、Luminal Dサブタイプは臨床的に関連があり得ることが示唆される。
【0152】
A. Luminal D サブタイプのための「遺伝学的識別子」
本発明者等は次いでLuminal Dサブタイプのための「遺伝学的識別子」の開発に取りかかった。この戦略において、「遺伝学的識別子」は、例えば表5及び6に示す他の「遺伝学的識別子」によって天然でLuminalとして既に特性付けられている腫瘍にのみ適用されるべきである。
【0153】
段階1:Luminal Aとして既に特性付けられた19の腫瘍に対する一連の発現プロファイルを、およそ1000個の蛍光単位のそれぞれの発現プロファイルをメディアンに集中させることで正規化した。
【0154】
段階2:全てのサンプルにわたって少なくとも70%(すなわち通常約200の最小閾値以上)存在する遺伝子が選択されるように「重要値(Valid value)」フィルターを適用した。
【0155】
段階3:サンプルをよりはっきりと分けるために、次に主要成分解析(Principal Component Analysis(PCA))により、36の増殖遺伝子セットを用いてLuminal A及びDサブグループを確かめた。
【0156】
段階4:Luminal A(12サンプル)とLuminal D(7サンプル)のグループ分けを用い、2つの群の間で最小で2倍の変化(fold change)を示した発現プロファイルから遺伝子を選択した(平均(means)の比率を用いて2群間の変化を算出した)。この解析で111のこうした遺伝子を同定した。
【0157】
段階5:次に111遺伝子のデータセットに対してSVM遺伝子ランキング解析を行い、管腔(luminal)乳癌サンプルをLuminal AまたはLuminal Dサブタイプに割り当てる上での重要性の順に遺伝子をランク付けした。上位45遺伝子が最も低い誤り率を与えた(約12%)。18遺伝子がLuminal Dでアップレギュレートされており、27遺伝子がluminal Dでダウンレギュレートされていた。遺伝子を表7に示す。
【0158】
段階6:次に45遺伝子の遺伝学的識別子の正確性を1個抜きクロスバリデーション(leave one out cross validation)を用いて評価した。誤判別は観察されなかった。
【0159】
[考察]
ポストゲノム時代の目立った課題の1つは、様々なゲノム配列決定プロジェクトによって生成された膨大な量の生配列データを、健康管理および病気の治療の改善といった用途に生かすことである。これらの新しい情報源が利用可能となることによって大変革がもたらされ得る1つの領域は、分子診断分野の領域であり、この分野では従来の組織病理学に加えて、一連の有用な分子マーカーに基づく組織の病理学的判別が行われている。重要なことは、分子レベルでのアプローチの1つの利点は、分子データに基づく判別の分離能が、伝統的な光学顕微鏡によるアプローチによってはこれまで発見されなかった臨床的に関連性のある病気のサブタイプを検出するのに十分な感度を有し得ることである(Ashら, 2000, Bittnerら, 2000)。
【0160】
しかし、分子診断の可能性を十分に実現させるまでには、幾つかの課題に直面し、それを克服しなければならない。まず最初に、多くの一般的な病気にとって、問題となる関連する疾患サブクラスを区別することができる重要な有用遺伝子を同定しなければならない。第2に、臨床アッセイの一部として実用的に利用できるように、これらの遺伝子は、全体として依然高い予測精度をもたらす最小セット(「遺伝学的識別子」)に削減されなければならない。第3に、多くの病気の臨床的性質は異なる人種グループおよび集団の間で大きく異なり得るので、特定の患者集団に対するこれらの「遺伝学的識別子」の適度な使用限界を定めることが必要である。
【0161】
これらの問題に対処するために、本発明者等はアジア系患者から得られた乳房組織の大規模な発現プロファイリングプロジェクトに着手した。以前の報告は、主にコーカサス系患者から得たサンプルの使用に焦点を当てており(Perouら, 2000、Gruvbergerら, 2000、Hedenfalkら, 2000)、これらの研究から得た知見が他の人種集団に当てはまるか否かを決定することが必須である。これは特に、これらの異なる人種グループ間において乳癌の疫学的差異および臨床学的差異として与えられる。コーカサス人集団の場合、乳癌の大多数は閉経後の女性に発生する傾向がある。しかし、シンガポールや日本では、1年あたりの乳癌発生症例の絶対数は米国の約1/3であり、これらの集団における乳癌発生率は二峰性であり、乳癌の大部分を占める最初のピークは40歳前後の閉経前の女性で発生する(Chiaら, 2000)。この最初のピークの後に、約55〜60歳で第2のピークが現れる。アジア系集団において乳癌が早期に発生するのは、早期検出によるものではなさそうである。なぜなら、これらの国々における乳癌検診プログラムは西側諸国に比べてまだ比較的新しいからである。これらの観察結果を説明する上での1つの可能性としては、これらのグループにおいて見出される乳癌が、特定の遺伝的または環境的な差異により生じる別々の異質なサブタイプを示し得ることがある。例えば、中国系女性におけるエストロゲンおよびプロゲステロンのレベルはコーカサス人に比べてかなり低い傾向があることが知られている(Lippman, 1998)。
【0162】
本発明者等の分析で用いた発現プロファイルのレパートリーを最大限に多様化するために、多種多様な人口統計学的および臨床的背景を持つ患者から得たサンプル、ならびに様々な悪性度および外観の腫瘍を選択した。第一に、本発明者等は、おそらく臨床的に有用な最も基本的な区別、すなわち所与のサンプルが「正常」か「悪性」かを識別するための乳癌における「遺伝学的識別子」を同定した。この区別は現在、従来の組織病理学を用いて有能な病理学者によって実施されているが、迅速な診断が必要とされる場合や、病理学者にすぐに依頼できない場合等の臨床状況では、こうした分子アッセイが利用できることは有用であろう。正常及び腫瘍データセットの双方において非常に再現性のある「異常値(outlier)」遺伝子に焦点をあてることによって、本発明者等は比較し得るサンプル量のトレーニングセット及びナイーブなテストセットの双方で未知の乳房サンプルが正常であるか悪性であるかを一見して正確に予測し得る20遺伝子の最小セットを同定した。更に、主要成分解析を用いて、正常乳房サンプルの発現プロファイルが対応する腫瘍プロファイルよりもずっと変化が少ないらしいことを示すことができた。乳癌研究の分野において、驚くべきことに、DNAマイクロアレイ法により提供される比較的偏りの少ない方法を用いて正常組織と腫瘍組織を区別するという問題を直接とりあげている文献報告が実際には比較的少ない。ある主な研究において、正常乳房組織の発現プロファイルが、非監督下のクラスタリング法(Perouら, 2000)を用いて互いに共分離するのに十分似ていることが見出された。しかし、その報告において研究者等は、正常サンプルが、腫瘍サンプルとは異なる独立した分枝として分離されるのではなく、「基底」または「筋上皮」を起源とする哺乳動物の上皮細胞から生じた様々な腫瘍クラスの中で分離されることも見出した。この結果は、おそらくはこのサブクラスの正常組織および腫瘍において発現される遺伝子の類似性のために、単に非監督下の方法論を用いて正常乳房組織と腫瘍乳房組織を区別することが慣用的でないことを示している。しかし、これは乳癌のゲノム学の問題であると思われ、他の組織型には当てはまらないかもしれない。例えば、非監督下のクラスタリングは正常な大腸サンプルと悪性大腸サンプルとを区別することができると思われる(Alonら, 1999)。この1つの理由は、APC/β−カテニン経路の混乱により主に生じる大腸癌は、遺伝子的に見て乳癌に比べより均一であるためである。
【0163】
20個の遺伝子からなる「遺伝学的識別子」に含まれる遺伝子は、多くの異なるカテゴリーに属する。アポリポ蛋白Dなどの遺伝子は、乳房の生物現象において周知の最終分化遺伝子であり、MAGED2が、原発性乳癌においては過剰発現されるが正常な哺乳動物組織や乳癌細胞系においては過剰発現されない遺伝子として以前に単離された(Kurtら, 2000)。他の遺伝子では、α−3/β−1インテグリンのα−3サブユニットを産生するITA3が、哺乳動物の腫瘍転移に関係することが分かっている(Moriniら, 2000)。インテグリンのシグナル伝達をRas/ERK経路につなげるCAV1タンパク質もまた、潜在的な腫瘍抑制遺伝子として過去に同定されている(Waryら, 1998、Weichenら, 2001)。このことは、該タンパク質が、正常な乳房組織においては発現されるが腫瘍においては発現されないことを説明するものである。乳房および腫瘍の生物現象における役割が公知の遺伝子の他に、腫瘍形成におけるその役割がはっきりしていないかまたは分かっていない別の興味深い遺伝子が同定された。例えば、凝固カスケードにおけるその役割が良く知られているトロンビンは、腫瘍細胞の増殖を抑制することが最近になって示され、このことは、トロンビンが正常乳房サンプルにおいては発現されるが腫瘍乳房サンプルにおいては発現されないことを説明している(Huangら, 2000)。他の例としては、酵母において細胞の増殖および分離において不可欠な役割を担うS.セレビシエ(S. cerevisiae) PWP2遺伝子のヒト相同体が挙げられる(Shafaatianら, 1996)。
【0164】
アジアの集団における乳癌分子サブタイプの多様性に関する洞察を深めるために、本発明者等は浸潤性乳癌及びDCIS癌双方の一連の発現プロファイルを作製・解析した。この仕事の目的は、別の乳癌発現データセットを用いたStanford研究で規定された分子サブタイピングのスキームを評価しようとすることであった。本発明者等の発現プロファイルを、主としてコーカサス人由来の患者サンプルを用いて行った既に公表されている研究と比較することによって、本発明者等は分子サブタイプ及びホールマーク発現特徴の大部分が2つのシリーズにおいて強力に保存されていることを見出した。同様の評価的研究が前立腺癌について最近報告されているが(Rhodesら、2002)、乳癌についてこうした比較解析が行われたのは本報告が最初である。2つの集団間で分子サブタイプが保存されていることは、研究間に存在する多くの方法論の差異を考えるとより驚くべきことである。例えば、一つの興味ある知見は、アレイ技術プラットフォームの差異にも関わらず双方のシリーズで類似のサブタイプを検出する本発明者等の能力であった。種々のゲノム発現技術からデータを統合する可能性に関する分野で現在矛盾するデータが存在することから、この結果は顕著である。例えば、Rhodesら(2002)において、スポットされたcDNAアレイからの前立腺癌発現データは、オリゴヌクレオチドアレイのデータと類似の結果であったことが報告されている。反対に、スポットされたアレイ及びオリゴヌクレオチドアレイで測定した細胞系の発現プロファイルを比較した最近の別の報告では、研究間での相関性が非常に乏しいことが報告されている(Kuoら、2002)。本発明者等の結果から、問題となるサブタイプの区別が自然界で非常に強力である限りにおいて、異なる技術プラットフォームから得られたデータを実際に比較することができることが示唆された。本発明者等の結果からは、アジアとコーカサス人の集団間の乳癌における疫学的差異(Discussionの冒頭参照)に関わらず、人種間で乳癌は非常に分子的に類似の第一次近似であることも示唆される。
【0165】
本発明者等はまた、DCIS癌が多くのサブタイプ特異的遺伝子発現特徴を強く発現することを見出し、これらの分子サブタイプがこの浸潤前段階においても識別できることが示唆される。従って、これらのサブタイプは進化する癌のクラスを示す可能性は低く、異なる腫瘍形成起源を有し得る別個の生物学的実体である。(本研究で報告されたような)DCIS癌におけるサブタイプ特異的発現特徴の発現に関わらず、DCIS癌が浸潤癌と別個のものであり得るこの分野における他の証拠がある。例えば、過去の報告で、核異型度の低いDCIS腫瘍の大半が長い臨床的な進化を経て浸潤癌に到ることが示されており(Pageら、1982;Betsillら、1978;及びRosenら、1980)、浸潤性になる前に更なる遺伝子的事象が生じる必要があることが示唆されていた。更に、組織病理学的研究から、浸潤癌のケースと比較してDCISにおいてERBB2+癌がずっと高く現れ、DCIS癌 vs 浸潤癌における腫瘍の型の組織病理学的区別で考慮すべき差異があることが見出された(Barnesら、1992)。しかしながら、この観察がER−ERBB2−癌がDCIS要素を欠くことを意味するものと解釈すべきであるのか、あるいはERBB2+癌が次第にERBB2−状態に進化するのか、については明らかでなかった。本発明者等の研究におけるDCIS癌の分類から、ERBB2+癌は既に多くのERBB2+の浸潤性ホールマークを発現することから、前者が正しいことが示唆される。
【0166】
最後に、luminal A及びERBB2+サブタイプに属する正常、DCIS、及び浸潤癌の発現プロファイルを統合することによって、本発明者等は、正常、DCIS、及び浸潤癌の移行の間に共通してサブタイプ特異的な方法で制御された遺伝子のセットを規定することができた。最終的な結論を出す前に、更なる実験によってこれらの解析の結果が明確に支持される必要があるが、多くの興味深い観察が得られた。本発明者等は、Wntシグナリング経路の多くの要素が正常→DCISの移行の間に双方のサブタイプについて共通して制御されていることを見出した。このことは、乳癌の発癌において重要な共通の事象としてWntシグナリングの脱調節があることを意味している。以前の報告で、ヒトの乳癌の発癌にWnt経路が関与していることは報告されていたが(Smalleyら、2001)、これが初期の事象であるのか後期の事象であるのかについてはそれ程明らかではなかった。本発明者等の結果から、前者の可能性がより高いことが示唆される。第二に、2つのサブタイプ間でDCISから浸潤性の段階に制御される遺伝子の驚くべき共通性から、細胞浸潤、癒着反応、支質再造形等の基礎となる遺伝子的プロセスの多くが非常に一般的なものであり、種々の乳癌サブタイプにわたって共有され得るものであることが示唆される。最後に、本発明者等の結果から、ERBB2+腫瘍はイオン関連プロセスにより依存しており、一方Luminal A腫瘍は慢性的な代謝ストレス状態にあり得ることから、双方の癌のサブタイプは代謝的に非常に差異を示すものであることも示唆される。これらの結果は極めて重要であり、例えば、Luminal A腫瘍の代謝的負荷の増加によってER+腫瘍がER−腫瘍よりも放射線感受性が高い理由が説明でき(Villalobosら、1996)、ERBB2+受容体によって調節される腫瘍細胞の運動性においてカルシウムシグナリングが役割を果たしている可能性がある(Feldner及びBrandt、2002)。
【0167】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、正常乳房サンプルおよび腫瘍乳房サンプルの非監督下の区分け(unsuprvised partitioning)を示す。個々の発現プロファイルを標準的データ選択フィルターにかけ(明細書を参照されたい)、得られたデータマトリックス(約800のアレイ標的を含む)を階層的クラスタリングを用いて判別した。正常サンプル(「xxxN」)に下線を引き、腫瘍サンプル(「xxxT」)には引いていない。数値は各サンプルに関するNCC組織の貯蔵番号を表す。デンドグラム分枝(dendogram branch)は生物学的サンプル間の類似性の程度を示す。正常サンプルおよび腫瘍サンプルは別々に分かれている(ただしデンドグラムの第2レベルのみである)。このデータセットを選択するために用いたデータフィルターに若干変更を加えても、非常に類似したデンドグラムが得られた(P. Tan、未公表の観測結果)。
【図2】図2は、組合せ異常値遺伝子セット(Combined Outlier Genesets, COG)を用いた正常サンプルおよび腫瘍サンプルの区分けの改良を示す。(A)正常(左)および腫瘍(右)サンプルの独立した異常値遺伝子セットを定義した。各クラスタグラムはアレイ標的(行)×生物学的サンプル(列)からなるマトリクスからなり、明るい灰色はアップレギュレーションを、暗い灰色はダウンレギュレーションを表す(選択基準については材料および方法を参照されたい)。正常サンプルの異常値遺伝子セットは60個の遺伝子からなり、腫瘍サンプルの異常値遺伝子セットは75個の遺伝子からなる。異常値遺伝子セットの確立に用いられる具体的な正常サンプルおよび腫瘍サンプルは各クラスタグラムの下に記載されている。下線をしたサンプル番号は逆のハイブリダイゼーション(reciprocal hybridization)を示す。ここでは、腫瘍/正常サンプルはCy5で標識し、基準サンプルはCy3で標識した。(B)COGを用いた正常および腫瘍サンプルの区分け。COGを含む108個のユニークなアレイ標的を用いて、標準的な階層的クラスタリングを用いて図1からの腫瘍サンプルおよび正常サンプルを分離した。図1に対比して、ここでは、正常サンプル(xxxN)および腫瘍サンプル(xxxT)の区分け(division)は、2つの判別ミスを有する第1段階のクラス区分けとして観察される。
【図3】図3は、最小の20エレメントの遺伝学的識別子を用いた正常サンプルおよび腫瘍サンプルの区分けを示す。腫瘍/正常クラスの区別に最も関連が深かったCOG(表2)からの20個のアレイ標的を用いて、(A)図1および図2bからのトレーニングセットおよび(B)10個の正常サンプルおよび12個の腫瘍サンプルからなる未実験のテストセットを分離した。両方の場合において、第一段階のクラス区分けのレベルでの正常サンプルおよび腫瘍サンプルの正確な分離を観察することができる。
【図4】図4は、正常サンプルおよび腫瘍サンプルにおける発現プロファイルの変動の比較を示す。図3aおよび図3bのサンプルの組合せ(合計48サンプル)を用いて、独立した正常データセットおよび腫瘍データセットを確立した。PCAを用いて、これらのデータセットの中の約8000アレイ標的からなる全遺伝子発現マトリックスを、基本的な主成分まで減らした。第1成分に正規化した各成分の分散の程度(正規化固有値)をy軸で表し、主成分の数をx軸で表す。ここで、各セットの第1成分は1であるため、第2成分から始まっている。情報の「減衰(decay)」率を観察するために、各データセットの成分を分散の降順に示す。腫瘍に比べ、正常サンプルは一貫して、これらの成分全てにおいて低い情報減衰率を示す。
【図5a】図5は、種々の遺伝子セットを用いた階層クラスタリングによって解析した、56種の癌及び6種の正常組織を含む62のサンプルの遺伝子発現パターンを示す。遺伝子発現の差異に基いてサンプルを6つのサブタイプに分けた(legend)。それらは、Luminal(S1)、ERBB2+/ER+(S2)、ERBB2+/er−(S3)、Basal様(S4)、ER陰性サブタイプII(S5)、及び正常/正常様(S6)である。(a)1796遺伝子のデータセットを用いた非監督下の階層クラスタリングを示す。灰色の下線はLuminal及びERBB2+/ER+の混合サンプルを含むクラスターを示す。
【図5b】図5は、種々の遺伝子セットを用いた階層クラスタリングによって解析した、56種の癌及び6種の正常組織を含む62のサンプルの遺伝子発現パターンを示す。遺伝子発現の差異に基いてサンプルを6つのサブタイプに分けた(legend)。それらは、Luminal(S1)、ERBB2+/ER+(S2)、ERBB2+/er−(S3)、Basal様(S4)、ER陰性サブタイプII(S5)、及び正常/正常様(S6)である。(b)「共通内在性遺伝子セット」(CIS、292遺伝子)を用いた半監督下の(semi−supervised)階層クラスタリングを示す。
【図5c】図5は、種々の遺伝子セットを用いた階層クラスタリングによって解析した、56種の癌及び6種の正常組織を含む62のサンプルの遺伝子発現パターンを示す。遺伝子発現の差異に基いてサンプルを6つのサブタイプに分けた(legend)。それらは、Luminal(S1)、ERBB2+/ER+(S2)、ERBB2+/er−(S3)、Basal様(S4)、ER陰性サブタイプII(S5)、及び正常/正常様(S6)である。(c)CISを用いた完全クラスターダイアグラムを示す。クラスタグラムの右側の濃淡を付けたバーは遺伝子クラスターA−E(表3)を示し、(A)ERを含むLuminal上皮遺伝子、(B)「新規」遺伝子、(C)Basal上皮遺伝子、(D)正常乳房様遺伝子、(E)ERBB2−関連遺伝子である。
【図6】図6(a)−(e)は、本研究で用いたDCISサンプルの代表的な例を示す。2つのサンプルを(a)/(b)及び(c)/(d)に示す。各サンプルのDCIS状態を、発現プロファイリングのために処理した実際のサンプルのパラフィンH & E切片の試験((a)及び(c)、HE)、並びに凍結低温切片(cryosection)((b)及び(d)、FS)の双方で確認した。(e)乳癌の発達の「個別の起源」及び「進化」説を示す。「個別の起源」仮説は異なる分子サブタイプの癌は異なる腫瘍形成経路を介して生じ、従って個別の生物学的実体を構成するということを提案する。「進化」仮説は、異なる分子サブタイプは単一(または2〜3の)癌のクラスが表現型の発達の異なる段階にある結果として生じるということを提案する。1つの時点で得られる進行した浸潤癌を研究するのみで2つの仮説を識別することはできない。
【図7】図7は、DCISサンプルが進行した癌のサブタイプのホールマーク遺伝子を発現することを示す。DCISサンプルは暗い縦線として示す。CIS遺伝子セットに基いて、12のDCISサンプルのうち6つがERBB2+群内に集まり(S2及びS3)、5サンプルがLuminal群内にあり、1サンプルが正常−様の群内にあった。クラスタグラムの右側の濃淡を付けたバーは図5に示すように同じ遺伝子クラスターを示す。(A)ERを含むLuminal上皮遺伝子、(B)Basal上皮遺伝子、(C)正常乳房様遺伝子、(D)ERBB2。
【図8】Luminal A及びERBB2+腫瘍サブタイプについて経路特異的でかつ重複した遺伝子の概要を示す。「U」はアップレギュレートされている遺伝子を示し、「D」はダウンレギュレートされている遺伝子を示す。例えば、正常/DCIS(Luminal)転移の間に、245遺伝子がアップレギュレートされ、705遺伝子がダウンレギュレートされている。太字の数は2つの遺伝子セット間で重複している遺伝子である。a)偽発見率(FDR)5%に基く結果を示す。b)最も顕著に制御されている上位100個の特有の遺伝子のみを比較した場合の結果を示す。
【図9a】a)Luminal Dサブタイプの発見を示す。従来の均質な一連のLuminal A腫瘍(図5及び7においてCISによってサブタイプS1として同定されている)を、「増殖クラスター」関連遺伝子に基く階層クラスタリングによって再度グループ分けした。2つの大きな群が観察され、それぞれ「増殖クラスター」の低レベル(Luminal A)及び高レベル(Luminal D)の発現を示す。
【図9b】b)他の攻撃的腫瘍タイプにおいても高レベルの36遺伝子の「増殖クラスター」が観察される。Luminal D(17サンプル中15、サンプル番号の下の暗いバーで示す)、Basal(ER−)及びERBB2+veサンプルは全て36遺伝子の「増殖クラスター」を強く発現し(クラスタグラムの下のバー、左の枝)、Luminal A(1つの境界にあるケースを除いた全て)、正常様及び正常は低レベルの発現を示す。明るい灰色/白はアップレギュレーションを示し、暗い灰色/黒はダウンレギュレーションを示す。
Claims (66)
- 乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)該乳房腫瘍細胞及び正常乳房細胞から発現産物を単離し、
(b)腫瘍細胞及び正常乳房細胞双方の発現産物を、表2から選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させて腫瘍細胞及び正常細胞双方についてこれらの遺伝子の発現プロファイルを作製し、
(c)腫瘍細胞及び正常細胞の発現プロファイルを比較し、そして
(d)乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、表2から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る複数の結合メンバーと接触させて腫瘍細胞の第1発現プロファイルを作製し、
(b)正常乳房細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、段階(a)で使用する複数の結合メンバーと接触させて比較し得る正常細胞の第2発現プロファイルを作製し、
(c)第1及び第2の発現プロファイルを比較して乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳房腫瘍細胞に特徴的な核酸発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)第1の乳房腫瘍細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、表2から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る複数の結合メンバーと接触させて第1の発現プロファイルを作製し、
(b)少なくとも第2の乳房腫瘍細胞からの発現産物で段階(a)を繰り返して少なくとも第2の発現プロファイルを作製し、
(c)少なくとも第1と第2の発現プロファイルを比較して乳房腫瘍細胞に特徴的な標準的核酸発現プロファイルを作製する、
を含む、上記方法。 - 結合メンバーが、表2から選択される5種以上の遺伝子に特異的にかつ独立して結合し得るものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 結合メンバーが表2に挙げる遺伝子それぞれに特異的にかつ独立して結合し得るものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 発現産物がmRNAまたはcDNAである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 結合メンバーが核酸プローブである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 発現産物がポリペプチドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 結合メンバーが抗体結合ドメインである、請求項8に記載の方法。
- 結合メンバーが標識されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 発現産物が標識されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 個体における乳癌の存在または危険性を決定する方法であって、以下の段階:
(a)乳癌のおそれがあるか、または乳癌の危険性がある個体から得た乳房組織の細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表2において同定される複数の遺伝子に対応する発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)乳房組織の細胞からの発現産物の1以上の結合メンバーに対する結合プロファイルに基いて該個体における乳癌の存在または危険性を決定する、
を含む、上記方法。 - 結合メンバーが表2において同定される少なくとも5種の遺伝子に対応する発現産物に結合し得るものである、請求項12に記載の方法。
- 結合メンバーが表2において同定される遺伝子のそれぞれに対応する発現産物に結合し得るものである、請求項12または13に記載の方法。
- 上記個体における乳癌の存在または危険性の決定を、対象の乳房組織細胞からの発現産物の結合を乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルと比較することによって行う、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 乳房腫瘍細胞に特徴的な上記発現プロファイルが請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって作製される、請求項15に記載の方法。
- 個体がアジア系である、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 乳房腫瘍細胞に特徴的な核酸発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)該乳房腫瘍細胞及び正常乳房細胞からの発現産物を単離し、
(b)腫瘍細胞及び正常乳房細胞双方の発現産物を、表4aから選択される複数の遺伝子の発現産物と特異的に結合し得る複数の結合メンバーと接触させて腫瘍細胞及び正常細胞双方の該遺伝子の発現プロファイルを作製し、
(c)腫瘍細胞及び正常細胞の発現プロファイルを比較し、そして
(d)乳房腫瘍細胞に特徴的な核酸発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳房腫瘍細胞に特徴的な核酸発現プロファイルの作製方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、表4aから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る複数の結合メンバーと接触させて腫瘍細胞の第1発現プロファイルを作製し、
(b)正常乳房細胞から発現産物を単離し、該発現産物を、段階(a)で使用する複数の結合メンバーと接触させて比較し得る正常乳房細胞の第2発現プロファイルを作製し、
(c)第1及び第2の発現プロファイルを比較して乳房腫瘍細胞に特徴的な発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 該複数の遺伝子が表4bから選択される、請求項18または19に記載の方法。
- 少なくとも5個の遺伝子が表4aから選択される、請求項19に記載の方法。
- 少なくとも20個の遺伝子が表4aから選択される、請求項19に記載の方法。
- 該複数の遺伝子が少なくとも表4bに記載の遺伝子を含む、請求項19に記載の方法。
- 発現産物がmRNAまたはcDNAである、請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
- 結合メンバーが核酸プローブである、請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
- 発現産物がポリペプチドである、請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
- 結合メンバーが抗体結合ドメインである、請求項26に記載の方法。
- 結合メンバーが標識される、請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
- 発現産物が標識される、請求項18〜27のいずれか1項に記載の方法。
- 個体における乳癌の存在または危険性を決定する方法であって、以下の段階:
(a)乳癌のおそれがあるか、または乳癌の危険性がある個体から得た乳房組織細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表4aにおいて同定される複数の遺伝子に対応する発現産物に結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)該乳房組織細胞からの発現産物の1以上の結合メンバーに対する結合に基いて該個体における乳癌の存在または危険性を決定する、
を含む、上記方法。 - 少なくとも5個の遺伝子が表4aから選択される、請求項30に記載の方法。
- 少なくとも20個の遺伝子が表4aから選択される、請求項30に記載の方法。
- 該複数の遺伝子が少なくとも表4bに同定された遺伝子である、請求項23に記載の方法。
- 上記個体における乳癌の存在または危険性の決定を、対象の乳房組織細胞からの発現産物の結合を乳房腫瘍細胞に特徴的な発現産物と比較することによって行う、請求項30〜33または請求項24のいずれか1項に記載の方法。
- 乳房腫瘍細胞に特徴的な上記発現プロファイルを請求項18〜29のいずれか1項に記載の方法によって作製する、請求項34に記載の方法。
- 乳癌の存在または危険性の決定を、腫瘍細胞を正常細胞からそれぞれの発現プロファイルによって識別するアルゴリズムを用いて計算する、請求項30〜35のいずれか1項に記載の方法。
- 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表2から選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表4aから選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表4bから選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表5から選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表6aから選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表7から選択される1以上の遺伝子の発現産物に特異的な複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 乳癌の存在及び/または型に特徴的な標準的発現プロファイルを決定するために複数の遺伝子発現プロファイルを取得する方法であって、以下の段階:
a)複数の乳房腫瘍サンプルから細胞を取得し、
b)該細胞を破砕して遺伝子発現産物を暴露し、
c)該遺伝子発現産物を、表6bにおいて同定される遺伝子の発現産物に特異的にかつ独立して結合し得る複数の結合メンバーと接触させ、そして
d)複数の乳房腫瘍サンプルのそれぞれについて該発現産物の該結合メンバーへの結合に基いて乳癌の存在及び/または型に特徴的な遺伝子発現プロファイルを決定する、
を含む、上記方法。 - 更に上記複数の乳房腫瘍サンプルから得られる複数の発現プロファイルを含有するデータベースを作製する段階を含む、請求項37〜43のいずれか1項に記載の方法。
- 更に複数の発現プロファイル間の統計的変化を決定する段階を含む、請求項37〜43のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項37または45に記載の方法によって作製される、乳癌に特異的な発現プロファイルまたは乳癌の型を含むデータベース。
- 発現プロファイルが核酸発現プロファイルである、請求項46に記載のデータベース。
- 発現プロファイルがタンパク質発現プロファイルである、請求項46に記載のデータベース。
- エストロゲン受容体(ER)の状態に基いて乳房腫瘍細胞を判別する方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表5aにおいて同定される遺伝子に相当する発現産物に結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)該乳房腫瘍細胞からの発現産物の1以上の結合メンバーへの結合に基いてER状態によって乳房腫瘍を判別する、
を含む、上記方法。 - ERBB2の状態に基いて乳房腫瘍細胞を判別する方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表5bにおいて同定される遺伝子に相当する発現産物に結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)該乳房腫瘍細胞からの発現産物の1以上の結合メンバーへの結合に基いてERBB2状態によって乳房腫瘍を判別する、
を含む、上記方法。 - 分子サブタイプに基いて乳房腫瘍細胞を判別する方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表6aにおいて同定される複数の遺伝子に相当する発現産物に結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)該腫瘍細胞からの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基いてその分子サブタイプについて腫瘍細胞を判別する、
を含む、上記方法。 - 上記結合メンバーが表6aに挙げる少なくとも5種の遺伝子に特異的かつ独立して結合し得るものである、請求項51に記載の方法。
- 上記結合メンバーが表6aに挙げる少なくとも20種の遺伝子に特異的かつ独立して結合し得るものである、請求項51に記載の方法。
- 上記結合メンバーが表6bに挙げる少なくとも遺伝子に特異的かつ独立して結合し得るものである、請求項51に記載の方法。
- 分子サブタイプがLuminal、ERBB2、Basal、ER−タイプII及び正常/正常様から選択される、請求項51〜54のいずれか1項に記載の方法。
- Luminal サブクラスに基いて乳房腫瘍細胞を判別する方法であって、以下の段階:
(a)乳房腫瘍細胞から発現産物を取得し、
(b)該発現産物を、表7において同定される複数の遺伝子に相当する発現産物に結合し得る結合メンバーと接触させ、そして
(c)該腫瘍細胞からの発現産物と結合メンバーとの結合プロファイルに基いてLuminal サブタイプについて腫瘍細胞を判別する、
を含む、上記方法。 - 上記腫瘍細胞が、請求項51〜55のいずれか1項に記載の方法によってLuminal分子サブタイプとして予め判別されている、請求項56に記載の方法。
- LuminalサブクラスがLuminal DまたはLuminal Aである、請求項56または57に記載の方法。
- 表4aから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表4bから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表5aから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表5bから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表6aから選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表7から選択される複数の遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 表6bに示す遺伝子の発現産物に特異的かつ独立して結合し得る複数の結合メンバーを含む診断ツールであって、該複数の結合メンバーが固相支持体に固定されている、上記診断ツール。
- 上記結合メンバーがcDNAまたはオリゴヌクレオチドである、請求項59〜65のいずれか1項に記載の診断ツール。
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