JP2004025039A - 硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】硫化水素含有ガスから硫化水素を除去するにあたって、触媒の使用量を削減し、かつ触媒の活性を維持するとともに、安定した稼動が可能な湿式脱硫法を提供する。
【解決手段】芳香族化合物触媒を含むアルカリ性水溶液と硫化水素含有ガスとを接触させてアルカリ性水溶液中に硫化水素を回収した後、 硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させて、硫黄を沈殿させる硫化水素の除去方法において、超音波振動を付与しながら硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させる。
【選択図】 図1
【解決手段】芳香族化合物触媒を含むアルカリ性水溶液と硫化水素含有ガスとを接触させてアルカリ性水溶液中に硫化水素を回収した後、 硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させて、硫黄を沈殿させる硫化水素の除去方法において、超音波振動を付与しながら硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉ガス等の硫化水素含有ガスから硫化水素を除去する方法に関し、特に触媒の使用量を削減させることが可能な湿式脱硫方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種の乾留炉,加熱炉あるいは動力プラント等から排出される排ガスには、硫化水素(H2 S)を主とする硫黄化合物が含まれる。したがって、これらの排ガスを燃料や原料として再利用したり、あるいは大気に放散する前に、硫化水素を除去する必要がある。
【0003】
たとえば製鉄所に設置されるコークス炉から排出される排ガス(以下、 コークス炉ガスという)では、硫化水素の濃度は原料炭の特性に応じて変動するが、通常4〜7g/Nm3 である。そのためコークス炉には、コークス炉ガスから硫化水素を除去する脱硫設備が付設される。
これらの硫化水素を含有するガス(以下、 硫化水素含有ガスという)の脱硫方法は、湿式脱硫法と乾式脱硫法に大別される。特にコークス炉ガスのように大量に発生する硫化水素含有ガスの脱硫方法としては、一般にフマックス法,タカハックス法等の湿式脱硫法が広く採用される(社団法人日本芳香族工業会編,「芳香族及びタール工業ハンドブック」,昭和53年12月,P52〜53)。
【0004】
フマックス法やタカハックス法の脱硫設備は、吸収塔,再生塔およびその付帯設備で構成される。吸収塔は、硫化水素含有ガスとアルカリ性水溶液を向流に接触させて、硫化水素含有ガス中の硫化水素をアルカリ性水溶液に吸収させて除去する装置である。吸収塔内で生じるこのような反応は、一般に吸収反応と呼ばれる。なおアルカリ性水溶液には、吸収反応を促進する触媒が添加される。
【0005】
一方、 再生塔は、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液を空気に接触させて、硫黄を生成して沈殿させるとともに、アルカリ性水溶液と触媒を吸収塔で使用できる状態に再生する装置である。再生塔内で生じるこのような反応は、一般に再生反応と呼ばれる。
アルカリ性水溶液のアルカリ源として、アンモニア(NH3 ),水酸化ナトリウム(NaOH),炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )等が使用される。触媒は、フマックス法では芳香族ニトロ化合物であるピクリン酸(2,4,6−トリニトロフェノール)等を使用し、タカハックス法ではナフトキノンスルホン酸アンモニウムやナフトキノンスルホン酸ナトリウム等を使用する。
【0006】
たとえば、アルカリ性水溶液のアルカリ源としてアンモニアを使用する場合の吸収反応は下記の (1)式で表わされる。この場合は、アンモニア(NH3 )は水に溶解して水酸化アンモニウム(NH4 OH)となる。
NH4 OH+H2 S→NH4 HS+H2 O ・・・ (1)
このアルカリ性水溶液(すなわち水酸化アンモニウム水溶液)に添加する触媒としてピクリン酸を使用する場合の、アルカリ性水溶液の再生反応は下記の (2)式で表わされる。なお、ここではピクリン酸はR−NOと記す。
【0007】
NH4 HS+R−NO+H2 O→NH4 OH+S+R−NHOH ・・・ (2)
このようにして水酸化アンモニウム(NH4 OH)が再生され、かつ硫黄(S)が生成して沈殿する。このときR−NHOHは触媒としての活性を失っているが、下記の (3)式の反応も同時に進行するので、ピクリン酸(R−NO)が再生される。
【0008】
R−NHOH+1/2O2 →R−NO+H2 O ・・・ (3)
このようにピクリン酸は触媒として有効に機能するのみならず、再生して使用することが可能であることから、コークス炉ガス等の硫化水素含有ガスの脱硫設備で広く使用されている。
ピクリン酸の各々のニトロ基は、硫化水素との反応でアミノ基へ変化するまでの間に、ニトロソ基,オキシアミノ基からなる酸化還元サイクルを有する。各酸化還元サイクルは、再生塔内の酸化雰囲気中で2位(オルト),6位(オルト),4位(パラ)の順に硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液が空気に接触することによって硫黄を生成する反応を媒介する。
【0009】
しかし各酸化還元サイクルは、硫化水素に曝され続けることで、徐々に不可逆なアミノ基への還元を起こして触媒としての活性を失う。したがって吸収反応や再生反応の効率を維持するためには、ピクリン酸を吸収塔や再生塔に適宜供給する必要がある。その結果、 ピクリン酸の使用量が増加し、脱硫コストの上昇を招く。
【0010】
ピクリン酸が触媒としての活性を失う過程は、再生反応の効率に依存する。たとえば硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液を再生塔内でスプレーノズルから噴霧すると、落下する液滴は無重力状態に置かれ、液滴内部の酸素の拡散速度が著しく低下する。そのため液滴内部に酸素溶解量の低い液が残存したまま、表面近傍のみで平衡に達してしまう。したがって、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液の液滴に酸素が十分に溶解せず、再生反応の効率が低下する。その結果、 ピクリン酸が触媒としての活性を失うのである。
【0011】
そこで再生塔内に充填材,邪魔板,格子等を設置し、これに落下する液滴を衝突させることによって液滴を破壊して、再生反応を促進する技術が検討されている。つまり液滴を破壊することによって液滴の新しい表面を作り出し、液滴に溶解する酸素を増加させる。その結果、再生反応を促進することができる。
しかしフマックス法,タカハックス法等の湿式脱硫法で充填材,邪魔板,格子等を用いると、生成した硫黄が充填材,邪魔板,格子等に堆積して目詰まりが生じるので、これらを交換するために再生塔の稼動を停止しなければならない。
【0012】
また、通常の湿式脱硫法で吸収塔や再生塔のスプレーノズルから噴霧されるアルカリ性水溶液の液滴の直径は約2mm程度であるが、この液滴をさらに微細化して、液滴全体の表面積を増加することによって液滴に溶解する酸素量を増加させて、再生反応を促進することも検討されている。しかし液滴を微細化するためには、スプレーノズルの開口部の直径を縮小しなければならないので、目詰まりが生じやすくなり、吸収塔や再生塔の稼動に支障をきたす。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、硫化水素含有ガスから硫化水素を除去するにあたって、触媒の使用量を削減し、かつ触媒の活性を維持するとともに、安定した稼動が可能な湿式脱硫法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、芳香族化合物触媒を含むアルカリ性水溶液と硫化水素含有ガスとを接触させてアルカリ性水溶液中に硫化水素を回収した後、 硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させて、硫黄を沈殿させる硫化水素の除去方法において、超音波振動を付与しながら硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させる硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法である。
【0015】
前記した発明においては、好適態様として、硫化水素含有ガスが、コークス炉ガスであることが好ましい。
また、アルカリ性水溶液が、水酸化アンモニウム水溶液であることが好ましい。
また、芳香族化合物触媒が、ピクリン酸であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用する脱硫設備の例を模式的に示すフロー図である。吸収塔1内の上部にスプレーノズル3aが配設され、アルカリ性水溶液5を下方へ噴霧する。一方、 硫化水素含有ガス6が吸収塔1内の下部に供給されて上方へ上昇する。このようにして吸収塔1内でアルカリ性水溶液5と硫化水素含有ガス6とが向流となって接触する。
【0017】
本発明では、アルカリ性水溶液5のアルカリ源は、特定の物質に限定せず、従来から湿式脱硫法のアルカリ源として知られているアンモニア,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム等が使用できる。ただしコークス炉ガスに本発明を適用する場合は、コークス炉ガス中に含まれるアンモニアをアルカリ源として用いることができる。なお、アンモニア(NH3 )は水に溶解して水酸化アンモニウム(NH4 OH)となる。
【0018】
硫化水素含有ガス6とは各種の乾留炉,加熱炉,動力プラント等から排出される排ガスであり、通常は1体積ppm 〜5体積%程度の硫化水素(H2 S)を含有する。さらに、その他の硫黄化合物としてCOS,CS2 を含有する場合もある。硫黄化合物の他には、H2 ,N2 ,CO,CO2 ,CH4 あるいはC2 以上の炭化水素が含有される。本発明は、これらの種々の成分を含有する硫化水素含有ガス6に支障なく適用できる。ただし製鉄所内で多量に発生するコークス炉ガスの脱硫処理に本発明を適用すると、脱硫コスト削減および環境汚染防止の効果が得られる。
【0019】
コークス炉ガスの平均的な組成は、H2 :約50体積%,CH4 :約30体積%,CO:約7〜10体積%,C2 以上の炭化水素:約3〜5体積%,N2 :約2〜8体積%,CO2 :約2〜3体積%,NH3 :約1〜2体積%である。さらに硫化水素:約 0.2〜0.5 体積%,シアン化水素:約 0.1〜0.25体積%,有機硫黄(チオフェン,硫化カルボニル,二硫化炭素,メルカプタン等):約 0.2〜0.7 g/Nm3 ,ナフタリン:約1g/Nm3 ,ベンゼン類(ベンゼン,トルエン,キシレン):約30〜40g/Nm3 を含む。
【0020】
このようにして吸収塔1内で、上方から落下するアルカリ性水溶液5の液滴と下方から上昇する硫化水素含有ガス6とが向流となって接触し、吸収反応が進行する。その結果、硫化水素含有ガス6から硫化水素(H2 S)が除去された精製ガス7が吸収塔1の上部から回収される。なお、アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用する場合の吸収反応は (1)式で表わされる。
【0021】
NH4 OH+H2 S→NH4 HS+H2 O ・・・ (1)
アルカリ性水溶液5には、吸収反応を促進するための触媒を添加する。本発明では、触媒として芳香族化合物触媒を用いる。その理由は、芳香族化合物触媒は吸収反応を促進する効果が顕著であり、かつ後述する再生反応で触媒としての活性を失った後、空気と接触させて活性を復活できるからである。なお、芳香族化合物触媒の中でも比較的安価なピクリン酸を使用するのが好ましい。
【0022】
ピクリン酸を使用する場合は、その濃度が0.01質量%未満では、触媒としての効果が発揮されない。一方、 2質量%を超えると、吸収反応を促進する効果が飽和し、添加量の増加に起因して脱硫コストの上昇を招く。したがって、 ピクリン酸の濃度は0.01〜2質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、触媒として活性状態にあるピクリン酸が 0.1質量%以上存在するのが一層好ましい。
【0023】
本発明では、アルカリ性水溶液5が各種の無機塩を含有しても、吸収反応に支障はない。たとえば硫化水素含有ガス6としてコークス炉ガスの脱硫処理を行なう場合は、コークス炉ガス中にロダン塩(チオシアン酸塩)を80〜150 g/liter ,チオ硫酸塩を10〜80g/liter ,硫酸塩を10〜50g/liter 程度含有するが、吸収塔1内で吸収反応は支障なく進行する。
【0024】
アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用する場合は、アンモニア(NH3 )の濃度が 0.1質量%未満では吸収反応が十分に進行しない。一方、 30質量%を超えると、吸収反応を促進する効果が飽和する。したがって、 アンモニア濃度は 0.1〜30質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、より好ましくは10〜30質量%である。
【0025】
また、水酸化アンモニウム水溶液を用いてコークス炉ガスの吸収反応を進行させる場合には、アンモニア濃度は、吸収反応の温度,コークス炉ガスの性状,水酸化アンモニウム水溶液とコークス炉ガスとの体積比に応じて適宜設定する。
この場合の吸収反応の温度は、0〜100 ℃の範囲内が好ましい。ただしアンモニア溶解度の関係から低温ほど好ましく、通常は50℃以下である。コークス炉ガスの圧力は、常圧付近である。水酸化アンモニウム水溶液とコークス炉ガスとの体積比(水酸化アンモニウム水溶液/コークス炉ガス)は、 0.001〜0.1 の範囲内が好ましい。水酸化アンモニウム水溶液のpHは、7超〜12以下の範囲内とするのが好ましい。
【0026】
このようにして硫化水素(H2 S)を吸収したアルカリ性水溶液5は、吸収塔1の下部からポンプ8aを介して再生塔2へ送給される。図1中の矢印f1 は、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
再生塔2内の上部にスプレーノズル3bが配設され、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液5を下方へ噴霧する。一方、 空気9が再生塔2内の下部に供給されて上方へ上昇する。このようにして再生塔2内でアルカリ性水溶液5と空気9とが向流となって接触し、再生反応が進行する。
【0027】
その結果、硫黄(S)がアルカリ性水溶液5から除去されて、アルカリ性水溶液5が再生される。たとえばアルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用し、芳香族化合物触媒としてピクリン酸を使用する場合の、水酸化アンモニウム(NH4 OH)の再生反応は (2)式で表わされる。ここではピクリン酸をR−NOと記す。
【0028】
NH4 HS+R−NO+H2 O→NH4 OH+S+R−NHOH ・・・ (2)
再生反応によって生成した硫黄(S)は、アルカリ性水溶液5とともにスラリー状態となってポンプ8bを介して、その一部が吸収塔1へ循環し、残部が固液分離装置10へ送給される。図1中の矢印f2 は吸収塔1へ循環するアルカリ性水溶液5の流れる方向、矢印f3 は固液分離装置10へ送給されるアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
【0029】
固液分離装置10でスラリー状のアルカリ性水溶液5から分離された固体の硫黄11は、固液分離装置10から排出される。一方、固体の硫黄11を除去したアルカリ性水溶液5は、再生塔2へ循環する。図1中の矢印f4 は再生塔2へ循環するアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
再生塔2内では (2)式で示すようなアルカリ性水溶液5の再生反応と同時に、空気9中の酸素によって芳香族化合物触媒の再生反応も進行する。たとえば芳香族化合物触媒としてピクリン酸を使用する場合の、ピクリン酸の再生反応は (3)式で表わされる。
【0030】
R−NHOH+1/2O2 →R−NO+H2 O ・・・ (3)
水酸化アンモニウム水溶液を用いてコークス炉ガスの吸収反応を進行させる場合には、再生塔2内に供給する水酸化アンモニウム水溶液と空気9の体積比(水酸化アンモニウム水溶液/空気)は、0.01〜0.2 の範囲内が好ましい。
本発明では、再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与する。超音波振動を付与する手段は、特定の構成に限定しないが、図1に示すように超音波振動子4を再生塔2の側壁に取り付けるのが好ましい。こうして再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与することによって、液滴の表面が常時更新される。その結果、空気9中の酸素が液滴に溶解しやすくなり、 (3)式に示すような芳香族化合物触媒の再生反応が促進される。アルカリ性水溶液5の液滴に付与する超音波振動は、20kHz 以上が好ましい。
【0031】
なお図1には、超音波振動子4を側壁の外面に取り付ける例を示したが、側壁の内面に取り付けても同様の効果が得られる。
つまり本発明では、再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与して、芳香族化合物触媒の再生反応が促進するので、触媒としての活性を維持して、その使用量を削減できる。ただし芳香族化合物触媒を再生して循環使用する間に触媒としての活性を不可逆的に失うので、 芳香族化合物触媒を再生塔2内に適宜補充するのは避けられない。しかし、そのような芳香族化合物触媒の補充の頻度を削減できる。
【0032】
しかも再生塔2内に充填材,邪魔板,格子等を設置する必要はないので、これらの目詰まりの問題も発生せず、再生塔2の稼動を安定して維持できる。また、既設のフマックス法やタカハックス法の再生塔2に超音波振動子4を取り付けることによって本発明を適用できるので、大幅な設備改造を行なわず芳香族化合物触媒の使用量を削減できる。
【0033】
【実施例】
本発明の効果を確認するために、実験装置を用いて酸化還元電位(以下、ORPという)を測定した。つまりORPは、アルカリ性水溶液5の再生状態を示すために広く採用されている指標であり、測定値は脱硫時には負,再生時には正に変動する。図2は、ORPを測定するための実験装置を模式的に示す断面図である。
【0034】
ORPを測定するにあたって、図2に示すように、アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液500ml をガラス製反応器12に収容し、さらに芳香族化合物触媒としてピクリン酸を 0.4質量%添加した。このガラス製反応器12を超音波振動容器13内に収納した。こうしてガラス製反応器12内の水酸化アンモニウム水溶液5を30℃に保持し、ガス吹込み管14を介して水酸化アンモニウム水溶液5中に硫化水素含有ガス6を吹込みながら、排気管15から排出し、水酸化アンモニウム水溶液5に硫化水素を吸収させる吸収反応を進行させた。硫化水素含有ガス6の流量は 200ml/分,吹込み時間は2時間とし、硫化水素含有ガス6中の硫化水素濃度は2体積%であった。
【0035】
次いで、硫化水素含有ガス6の吹込みを停止し、ガス吹込み管14を介して水酸化アンモニウム水溶液5中に空気9を吹込みながら、排気管15から排出した。このとき超音波振動容器13を振動させて、水酸化アンモニウム水溶液5に超音波振動を付与し、水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応を進行させた。空気9の流量は 100ml/分,吹込み時間は2時間とした。
【0036】
水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応の進行中にORP測定装置16を用いて水酸化アンモニウム水溶液5のORP値を測定した。これを発明例とする。
一方、比較例として、図2の実験装置を用いて発明例と同様にして吸収反応を進行させた後、超音波振動容器13を使用せずに水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応を進行させて、ORP値を測定した。その他の実験条件は発明例と同じであるから説明を省略する。
【0037】
水酸化アンモニウム水溶液5へ空気9の吹込みを開始してからORP測定値が上昇するまでの所要時間を比べると、発明例が90分であったのに対して、比較例では 110分であった。したがって本発明を適用することによって、再生反応が促進されることが確かめられた。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、硫化水素含有ガスから硫化水素を除去するにあたって、芳香族化合物触媒の再生反応を促進してその使用量を削減し、かつ触媒としての活性を維持するとともに、脱硫設備を安定して稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を適用する脱硫設備の例を模式的に示すフロー図である。
【図2】
ORP測定の実験装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 吸収塔
2 再生塔
3a スプレーノズル
3b スプレーノズル
4 超音波振動子
5 アルカリ性水溶液
6 硫化水素含有ガス
7 精製ガス
8a ポンプ
8b ポンプ
9 空気
10 固液分離装置
11 固体硫黄
12 ガラス製反応器
13 超音波振動容器
14 ガス吹込み管
15 排気管
16 ORP測定装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉ガス等の硫化水素含有ガスから硫化水素を除去する方法に関し、特に触媒の使用量を削減させることが可能な湿式脱硫方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種の乾留炉,加熱炉あるいは動力プラント等から排出される排ガスには、硫化水素(H2 S)を主とする硫黄化合物が含まれる。したがって、これらの排ガスを燃料や原料として再利用したり、あるいは大気に放散する前に、硫化水素を除去する必要がある。
【0003】
たとえば製鉄所に設置されるコークス炉から排出される排ガス(以下、 コークス炉ガスという)では、硫化水素の濃度は原料炭の特性に応じて変動するが、通常4〜7g/Nm3 である。そのためコークス炉には、コークス炉ガスから硫化水素を除去する脱硫設備が付設される。
これらの硫化水素を含有するガス(以下、 硫化水素含有ガスという)の脱硫方法は、湿式脱硫法と乾式脱硫法に大別される。特にコークス炉ガスのように大量に発生する硫化水素含有ガスの脱硫方法としては、一般にフマックス法,タカハックス法等の湿式脱硫法が広く採用される(社団法人日本芳香族工業会編,「芳香族及びタール工業ハンドブック」,昭和53年12月,P52〜53)。
【0004】
フマックス法やタカハックス法の脱硫設備は、吸収塔,再生塔およびその付帯設備で構成される。吸収塔は、硫化水素含有ガスとアルカリ性水溶液を向流に接触させて、硫化水素含有ガス中の硫化水素をアルカリ性水溶液に吸収させて除去する装置である。吸収塔内で生じるこのような反応は、一般に吸収反応と呼ばれる。なおアルカリ性水溶液には、吸収反応を促進する触媒が添加される。
【0005】
一方、 再生塔は、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液を空気に接触させて、硫黄を生成して沈殿させるとともに、アルカリ性水溶液と触媒を吸収塔で使用できる状態に再生する装置である。再生塔内で生じるこのような反応は、一般に再生反応と呼ばれる。
アルカリ性水溶液のアルカリ源として、アンモニア(NH3 ),水酸化ナトリウム(NaOH),炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )等が使用される。触媒は、フマックス法では芳香族ニトロ化合物であるピクリン酸(2,4,6−トリニトロフェノール)等を使用し、タカハックス法ではナフトキノンスルホン酸アンモニウムやナフトキノンスルホン酸ナトリウム等を使用する。
【0006】
たとえば、アルカリ性水溶液のアルカリ源としてアンモニアを使用する場合の吸収反応は下記の (1)式で表わされる。この場合は、アンモニア(NH3 )は水に溶解して水酸化アンモニウム(NH4 OH)となる。
NH4 OH+H2 S→NH4 HS+H2 O ・・・ (1)
このアルカリ性水溶液(すなわち水酸化アンモニウム水溶液)に添加する触媒としてピクリン酸を使用する場合の、アルカリ性水溶液の再生反応は下記の (2)式で表わされる。なお、ここではピクリン酸はR−NOと記す。
【0007】
NH4 HS+R−NO+H2 O→NH4 OH+S+R−NHOH ・・・ (2)
このようにして水酸化アンモニウム(NH4 OH)が再生され、かつ硫黄(S)が生成して沈殿する。このときR−NHOHは触媒としての活性を失っているが、下記の (3)式の反応も同時に進行するので、ピクリン酸(R−NO)が再生される。
【0008】
R−NHOH+1/2O2 →R−NO+H2 O ・・・ (3)
このようにピクリン酸は触媒として有効に機能するのみならず、再生して使用することが可能であることから、コークス炉ガス等の硫化水素含有ガスの脱硫設備で広く使用されている。
ピクリン酸の各々のニトロ基は、硫化水素との反応でアミノ基へ変化するまでの間に、ニトロソ基,オキシアミノ基からなる酸化還元サイクルを有する。各酸化還元サイクルは、再生塔内の酸化雰囲気中で2位(オルト),6位(オルト),4位(パラ)の順に硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液が空気に接触することによって硫黄を生成する反応を媒介する。
【0009】
しかし各酸化還元サイクルは、硫化水素に曝され続けることで、徐々に不可逆なアミノ基への還元を起こして触媒としての活性を失う。したがって吸収反応や再生反応の効率を維持するためには、ピクリン酸を吸収塔や再生塔に適宜供給する必要がある。その結果、 ピクリン酸の使用量が増加し、脱硫コストの上昇を招く。
【0010】
ピクリン酸が触媒としての活性を失う過程は、再生反応の効率に依存する。たとえば硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液を再生塔内でスプレーノズルから噴霧すると、落下する液滴は無重力状態に置かれ、液滴内部の酸素の拡散速度が著しく低下する。そのため液滴内部に酸素溶解量の低い液が残存したまま、表面近傍のみで平衡に達してしまう。したがって、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液の液滴に酸素が十分に溶解せず、再生反応の効率が低下する。その結果、 ピクリン酸が触媒としての活性を失うのである。
【0011】
そこで再生塔内に充填材,邪魔板,格子等を設置し、これに落下する液滴を衝突させることによって液滴を破壊して、再生反応を促進する技術が検討されている。つまり液滴を破壊することによって液滴の新しい表面を作り出し、液滴に溶解する酸素を増加させる。その結果、再生反応を促進することができる。
しかしフマックス法,タカハックス法等の湿式脱硫法で充填材,邪魔板,格子等を用いると、生成した硫黄が充填材,邪魔板,格子等に堆積して目詰まりが生じるので、これらを交換するために再生塔の稼動を停止しなければならない。
【0012】
また、通常の湿式脱硫法で吸収塔や再生塔のスプレーノズルから噴霧されるアルカリ性水溶液の液滴の直径は約2mm程度であるが、この液滴をさらに微細化して、液滴全体の表面積を増加することによって液滴に溶解する酸素量を増加させて、再生反応を促進することも検討されている。しかし液滴を微細化するためには、スプレーノズルの開口部の直径を縮小しなければならないので、目詰まりが生じやすくなり、吸収塔や再生塔の稼動に支障をきたす。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、硫化水素含有ガスから硫化水素を除去するにあたって、触媒の使用量を削減し、かつ触媒の活性を維持するとともに、安定した稼動が可能な湿式脱硫法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、芳香族化合物触媒を含むアルカリ性水溶液と硫化水素含有ガスとを接触させてアルカリ性水溶液中に硫化水素を回収した後、 硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させて、硫黄を沈殿させる硫化水素の除去方法において、超音波振動を付与しながら硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させる硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法である。
【0015】
前記した発明においては、好適態様として、硫化水素含有ガスが、コークス炉ガスであることが好ましい。
また、アルカリ性水溶液が、水酸化アンモニウム水溶液であることが好ましい。
また、芳香族化合物触媒が、ピクリン酸であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用する脱硫設備の例を模式的に示すフロー図である。吸収塔1内の上部にスプレーノズル3aが配設され、アルカリ性水溶液5を下方へ噴霧する。一方、 硫化水素含有ガス6が吸収塔1内の下部に供給されて上方へ上昇する。このようにして吸収塔1内でアルカリ性水溶液5と硫化水素含有ガス6とが向流となって接触する。
【0017】
本発明では、アルカリ性水溶液5のアルカリ源は、特定の物質に限定せず、従来から湿式脱硫法のアルカリ源として知られているアンモニア,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム等が使用できる。ただしコークス炉ガスに本発明を適用する場合は、コークス炉ガス中に含まれるアンモニアをアルカリ源として用いることができる。なお、アンモニア(NH3 )は水に溶解して水酸化アンモニウム(NH4 OH)となる。
【0018】
硫化水素含有ガス6とは各種の乾留炉,加熱炉,動力プラント等から排出される排ガスであり、通常は1体積ppm 〜5体積%程度の硫化水素(H2 S)を含有する。さらに、その他の硫黄化合物としてCOS,CS2 を含有する場合もある。硫黄化合物の他には、H2 ,N2 ,CO,CO2 ,CH4 あるいはC2 以上の炭化水素が含有される。本発明は、これらの種々の成分を含有する硫化水素含有ガス6に支障なく適用できる。ただし製鉄所内で多量に発生するコークス炉ガスの脱硫処理に本発明を適用すると、脱硫コスト削減および環境汚染防止の効果が得られる。
【0019】
コークス炉ガスの平均的な組成は、H2 :約50体積%,CH4 :約30体積%,CO:約7〜10体積%,C2 以上の炭化水素:約3〜5体積%,N2 :約2〜8体積%,CO2 :約2〜3体積%,NH3 :約1〜2体積%である。さらに硫化水素:約 0.2〜0.5 体積%,シアン化水素:約 0.1〜0.25体積%,有機硫黄(チオフェン,硫化カルボニル,二硫化炭素,メルカプタン等):約 0.2〜0.7 g/Nm3 ,ナフタリン:約1g/Nm3 ,ベンゼン類(ベンゼン,トルエン,キシレン):約30〜40g/Nm3 を含む。
【0020】
このようにして吸収塔1内で、上方から落下するアルカリ性水溶液5の液滴と下方から上昇する硫化水素含有ガス6とが向流となって接触し、吸収反応が進行する。その結果、硫化水素含有ガス6から硫化水素(H2 S)が除去された精製ガス7が吸収塔1の上部から回収される。なお、アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用する場合の吸収反応は (1)式で表わされる。
【0021】
NH4 OH+H2 S→NH4 HS+H2 O ・・・ (1)
アルカリ性水溶液5には、吸収反応を促進するための触媒を添加する。本発明では、触媒として芳香族化合物触媒を用いる。その理由は、芳香族化合物触媒は吸収反応を促進する効果が顕著であり、かつ後述する再生反応で触媒としての活性を失った後、空気と接触させて活性を復活できるからである。なお、芳香族化合物触媒の中でも比較的安価なピクリン酸を使用するのが好ましい。
【0022】
ピクリン酸を使用する場合は、その濃度が0.01質量%未満では、触媒としての効果が発揮されない。一方、 2質量%を超えると、吸収反応を促進する効果が飽和し、添加量の増加に起因して脱硫コストの上昇を招く。したがって、 ピクリン酸の濃度は0.01〜2質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、触媒として活性状態にあるピクリン酸が 0.1質量%以上存在するのが一層好ましい。
【0023】
本発明では、アルカリ性水溶液5が各種の無機塩を含有しても、吸収反応に支障はない。たとえば硫化水素含有ガス6としてコークス炉ガスの脱硫処理を行なう場合は、コークス炉ガス中にロダン塩(チオシアン酸塩)を80〜150 g/liter ,チオ硫酸塩を10〜80g/liter ,硫酸塩を10〜50g/liter 程度含有するが、吸収塔1内で吸収反応は支障なく進行する。
【0024】
アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用する場合は、アンモニア(NH3 )の濃度が 0.1質量%未満では吸収反応が十分に進行しない。一方、 30質量%を超えると、吸収反応を促進する効果が飽和する。したがって、 アンモニア濃度は 0.1〜30質量%の範囲内を満足するのが好ましい。なお、より好ましくは10〜30質量%である。
【0025】
また、水酸化アンモニウム水溶液を用いてコークス炉ガスの吸収反応を進行させる場合には、アンモニア濃度は、吸収反応の温度,コークス炉ガスの性状,水酸化アンモニウム水溶液とコークス炉ガスとの体積比に応じて適宜設定する。
この場合の吸収反応の温度は、0〜100 ℃の範囲内が好ましい。ただしアンモニア溶解度の関係から低温ほど好ましく、通常は50℃以下である。コークス炉ガスの圧力は、常圧付近である。水酸化アンモニウム水溶液とコークス炉ガスとの体積比(水酸化アンモニウム水溶液/コークス炉ガス)は、 0.001〜0.1 の範囲内が好ましい。水酸化アンモニウム水溶液のpHは、7超〜12以下の範囲内とするのが好ましい。
【0026】
このようにして硫化水素(H2 S)を吸収したアルカリ性水溶液5は、吸収塔1の下部からポンプ8aを介して再生塔2へ送給される。図1中の矢印f1 は、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
再生塔2内の上部にスプレーノズル3bが配設され、硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液5を下方へ噴霧する。一方、 空気9が再生塔2内の下部に供給されて上方へ上昇する。このようにして再生塔2内でアルカリ性水溶液5と空気9とが向流となって接触し、再生反応が進行する。
【0027】
その結果、硫黄(S)がアルカリ性水溶液5から除去されて、アルカリ性水溶液5が再生される。たとえばアルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液を使用し、芳香族化合物触媒としてピクリン酸を使用する場合の、水酸化アンモニウム(NH4 OH)の再生反応は (2)式で表わされる。ここではピクリン酸をR−NOと記す。
【0028】
NH4 HS+R−NO+H2 O→NH4 OH+S+R−NHOH ・・・ (2)
再生反応によって生成した硫黄(S)は、アルカリ性水溶液5とともにスラリー状態となってポンプ8bを介して、その一部が吸収塔1へ循環し、残部が固液分離装置10へ送給される。図1中の矢印f2 は吸収塔1へ循環するアルカリ性水溶液5の流れる方向、矢印f3 は固液分離装置10へ送給されるアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
【0029】
固液分離装置10でスラリー状のアルカリ性水溶液5から分離された固体の硫黄11は、固液分離装置10から排出される。一方、固体の硫黄11を除去したアルカリ性水溶液5は、再生塔2へ循環する。図1中の矢印f4 は再生塔2へ循環するアルカリ性水溶液5の流れる方向を示す。
再生塔2内では (2)式で示すようなアルカリ性水溶液5の再生反応と同時に、空気9中の酸素によって芳香族化合物触媒の再生反応も進行する。たとえば芳香族化合物触媒としてピクリン酸を使用する場合の、ピクリン酸の再生反応は (3)式で表わされる。
【0030】
R−NHOH+1/2O2 →R−NO+H2 O ・・・ (3)
水酸化アンモニウム水溶液を用いてコークス炉ガスの吸収反応を進行させる場合には、再生塔2内に供給する水酸化アンモニウム水溶液と空気9の体積比(水酸化アンモニウム水溶液/空気)は、0.01〜0.2 の範囲内が好ましい。
本発明では、再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与する。超音波振動を付与する手段は、特定の構成に限定しないが、図1に示すように超音波振動子4を再生塔2の側壁に取り付けるのが好ましい。こうして再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与することによって、液滴の表面が常時更新される。その結果、空気9中の酸素が液滴に溶解しやすくなり、 (3)式に示すような芳香族化合物触媒の再生反応が促進される。アルカリ性水溶液5の液滴に付与する超音波振動は、20kHz 以上が好ましい。
【0031】
なお図1には、超音波振動子4を側壁の外面に取り付ける例を示したが、側壁の内面に取り付けても同様の効果が得られる。
つまり本発明では、再生塔2内を落下するアルカリ性水溶液5の液滴に超音波振動を付与して、芳香族化合物触媒の再生反応が促進するので、触媒としての活性を維持して、その使用量を削減できる。ただし芳香族化合物触媒を再生して循環使用する間に触媒としての活性を不可逆的に失うので、 芳香族化合物触媒を再生塔2内に適宜補充するのは避けられない。しかし、そのような芳香族化合物触媒の補充の頻度を削減できる。
【0032】
しかも再生塔2内に充填材,邪魔板,格子等を設置する必要はないので、これらの目詰まりの問題も発生せず、再生塔2の稼動を安定して維持できる。また、既設のフマックス法やタカハックス法の再生塔2に超音波振動子4を取り付けることによって本発明を適用できるので、大幅な設備改造を行なわず芳香族化合物触媒の使用量を削減できる。
【0033】
【実施例】
本発明の効果を確認するために、実験装置を用いて酸化還元電位(以下、ORPという)を測定した。つまりORPは、アルカリ性水溶液5の再生状態を示すために広く採用されている指標であり、測定値は脱硫時には負,再生時には正に変動する。図2は、ORPを測定するための実験装置を模式的に示す断面図である。
【0034】
ORPを測定するにあたって、図2に示すように、アルカリ性水溶液5として水酸化アンモニウム水溶液500ml をガラス製反応器12に収容し、さらに芳香族化合物触媒としてピクリン酸を 0.4質量%添加した。このガラス製反応器12を超音波振動容器13内に収納した。こうしてガラス製反応器12内の水酸化アンモニウム水溶液5を30℃に保持し、ガス吹込み管14を介して水酸化アンモニウム水溶液5中に硫化水素含有ガス6を吹込みながら、排気管15から排出し、水酸化アンモニウム水溶液5に硫化水素を吸収させる吸収反応を進行させた。硫化水素含有ガス6の流量は 200ml/分,吹込み時間は2時間とし、硫化水素含有ガス6中の硫化水素濃度は2体積%であった。
【0035】
次いで、硫化水素含有ガス6の吹込みを停止し、ガス吹込み管14を介して水酸化アンモニウム水溶液5中に空気9を吹込みながら、排気管15から排出した。このとき超音波振動容器13を振動させて、水酸化アンモニウム水溶液5に超音波振動を付与し、水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応を進行させた。空気9の流量は 100ml/分,吹込み時間は2時間とした。
【0036】
水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応の進行中にORP測定装置16を用いて水酸化アンモニウム水溶液5のORP値を測定した。これを発明例とする。
一方、比較例として、図2の実験装置を用いて発明例と同様にして吸収反応を進行させた後、超音波振動容器13を使用せずに水酸化アンモニウム水溶液5の再生反応を進行させて、ORP値を測定した。その他の実験条件は発明例と同じであるから説明を省略する。
【0037】
水酸化アンモニウム水溶液5へ空気9の吹込みを開始してからORP測定値が上昇するまでの所要時間を比べると、発明例が90分であったのに対して、比較例では 110分であった。したがって本発明を適用することによって、再生反応が促進されることが確かめられた。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、硫化水素含有ガスから硫化水素を除去するにあたって、芳香族化合物触媒の再生反応を促進してその使用量を削減し、かつ触媒としての活性を維持するとともに、脱硫設備を安定して稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を適用する脱硫設備の例を模式的に示すフロー図である。
【図2】
ORP測定の実験装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 吸収塔
2 再生塔
3a スプレーノズル
3b スプレーノズル
4 超音波振動子
5 アルカリ性水溶液
6 硫化水素含有ガス
7 精製ガス
8a ポンプ
8b ポンプ
9 空気
10 固液分離装置
11 固体硫黄
12 ガラス製反応器
13 超音波振動容器
14 ガス吹込み管
15 排気管
16 ORP測定装置
Claims (4)
- 芳香族化合物触媒を含むアルカリ性水溶液と硫化水素含有ガスとを接触させて前記アルカリ性水溶液中に硫化水素を回収した後、 前記硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と酸素とを接触させて、硫黄を沈殿させる硫化水素の除去方法において、超音波振動を付与しながら前記硫化水素を吸収したアルカリ性水溶液と前記酸素とを接触させることを特徴とする硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法。
- 前記硫化水素含有ガスが、コークス炉ガスであることを特徴とする請求項1に記載の硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法。
- 前記アルカリ性水溶液が、水酸化アンモニウム水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法。
- 前記芳香族化合物触媒が、ピクリン酸であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の硫化水素含有ガスの硫化水素除去方法。
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- 2002-06-26 JP JP2002185409A patent/JP2004025039A/ja active Pending
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