JP2004024582A - 医用画像診断装置用マーカー、そのケース、及び、これらの使用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マーカー10は、細長円柱形の空洞部1aを有し、上面が開放された容器1と、容器1の開放された上面に嵌合するキャップ2とから構成されている。容器1とキャップ2とを互いに嵌合させた後、注射針を用いて弾性体からなるキャップ2外側から空洞部1a内へと突き通す。そして注射針の先端が空洞部1aに至った状態で、その針から空洞部1a内に造影剤溶液及び/又はRI溶液を注入する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT)、磁気共鳴映像装置(MRI)、核医学画像CT装置(SPECT)、ポジトロン断層撮影装置(PET)などの医用画像診断装置による異なる画像の位置合わせを行う際に用いられるマーカー、そのケース、及び、これらの使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療において、X線CT、MRI、SPECT、PETなどの身体の断面を撮像及び表示する医用画像診断装置を用いる診断法が普及している。例えば、X線CTとMRIとでは主として解剖学的構造、SPECTとPETとでは機能と代謝の情報が主として画像化され、各種疾患の診断、病態解明、治療効果の判定などに威力を発揮している。
【0003】
上述の医用画像診断装置から得られる画像は種類によって異なり、診断においては、異なる医用画像診断装置から得られた複数の画像を重ね合わせて表示することがある。かかる場合、各画像の位置関係を整合する必要がある。ところが各医用画像診断装置は独立しているため、各装置から出力される画像相互の3次元的位置関係は一致しない。そこで従来は、一般に、診断医が画像同士を見比べて経験や知識に基づいて位置合わせをしている。しかし、このような診断医の主観に頼った方法では画像の位置合わせを正確に行うことは非常に困難であり、各画像の位置がずれると正確な診断ができないという不都合が生じる。
【0004】
かかる不都合を解消するため、画像の位置合わせをコンピュータによって行うことが提案され、2つの画像を重ねて表示するソフトウェアが開発されている。コンピュータによる画像の位置合わせを行うためには、両画像に共通する特徴点を抽出するアルゴリズムが必要となる。ところが両画像に共通する特徴点が必ず存在するとは限らないため、各画像に確実に特徴点を付与する手段として、各医用画像診断装置によって検知されうる物質、即ちX線CT及びMRIでは造影剤、SPECT及びPETでは放射性同位元素(RI)が含まれるマーカーを体表面に人為的に取り付けることが試みられている。この場合マーカーを取り付けてから各医用画像診断装置での撮像を行い、得られた画像に形成された特徴点を用いて画像の位置合わせをする。
【0005】
市販されているマーカーとしては、米国特許第5368030号に記載された図7に示すようなものがある。このマーカー101は、下側に鍔のついたほぼ円筒状の外形を有しており、内部が封止された中空状態となった本体103と、本体103の上面を被覆する粘着シール105と、粘着性を有する本体103の下面を被覆する剥離紙107とを備えており、本体103内部に形成された円筒状空洞部103aにはX線CT又はMRIによって検知されうる造影剤を染み込ませた部材が含まれている。したがって、剥離紙107を剥がしてマーカー101を被験者の体表面に接着させてからX線CT又はMRIを用いて撮像すると、マーカー101の位置が表示された画像が得られる。他方、SPECT又はPETによる撮像を行う際には、粘着シール105を一旦剥がして円筒状空洞部103aの中央に形成された円柱状空洞部103bに放射性同位元素(RI)を含む部材を入れ、再度粘着シール105で円柱状空洞部103bに蓋をしてから被験者の体表面に接着させて撮像を行う。このようにして得られた画像は共に同じ位置にマーカーに起因した特徴点が表示されたものとなるので、この共通の特徴点を利用してコンピュータによる両画像の位置合わせを行うことが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した公報に記載のマーカーには、以下のような問題がある。まず、上述のマーカー101では、X線CT又はMRIによって検知されうる造影剤を染み込ませた部材と、SPECT又はPETによって検知されるRIを含む部材とが、本体103の円筒状空洞部103aと、この円筒状空洞部103a中央に形成された円柱状空洞部103bという形状が異なる別々の場所に封入される。このため、X線CT又はMRIによって得られた画像でのマーカー101に起因した特徴点の形状と、SPECT又はPETによって得られた画像でのマーカー101に起因した特徴点の形状とが異なってしまう。特徴点の形状が異なる場合、視覚によってだけでなくコンピュータによっても両画像の位置合わせを正確に行うのが困難である。
【0007】
次に、上述のマーカー101を体表面に接着させると造影剤やRIが比較的体表面近くに位置することになるため、医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカー101とが必ずしも明確に分離されるとは限らない。そのため、せっかく特徴点検出のためにマーカーを装着させても特徴点を認識できないおそれがある。
【0008】
また、日本では、RIが封入されたマーカーをヒトに装着させたままRI管理区域外に出すことが法的にできない。したがって、X線CT又はMRIがRI管理区域外にある場合、SPECT又はPETによる撮像終了後にX線CT又はMRIを行うには一旦マーカーを体表面から取り外さなければならない。このため、画像の位置合わせ精度が低下してしまうおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の1つの目的は、異なる種類の医用画像診断装置を用いる場合であっても、コンピュータによる画像の位置合わせを高い精度で行うことを可能とする画像を得ることを可能とするマーカーを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカーとを明確に分離することを可能とすると共に、画像の位置合わせ精度の低下を防止することができる技術を提供することである。この目的は、後述するようなマーカーケースを用いることによって達成される。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、上述したような目的を達成すべく提供されたマーカー及びマーカーケースの使用方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1によるマーカーは、ある医用画像診断装置によって検知されうる造影剤溶液、及び、別の医用画像診断装置によって検知されうる放射性同位元素(RI)溶液の少なくともいずれか一方を保持するための空洞部を有する容器と、前記空洞部に連通した前記容器の開口部を封止するキャップとを備えていることを特徴とする医用画像診断装置用マーカー。
【0013】
上記構成によると、ある医用画像診断装置によって検知されうる造影剤溶液と別の医用画像診断装置によって検知されうるRI溶液とを、1つの容器の空洞部内に一緒に又は別の容器の空洞部内に分けて保持することができる。これらどちらの場合であっても、容器の空洞部の形状が同じであるので、複数の医用画像診断装置によって得られた画像におけるマーカーに起因した特徴点は同じ形状に描かれる。よって、異なる種類の医用画像診断装置を用いる場合であっても、コンピュータによる画像の位置合わせを高い精度で行うことが可能となる。
【0014】
なお、請求項1によるマーカーはそれ単独で用いることもできるし、後述の請求項5によるマーカーケースと共に用いることもできる。
【0015】
請求項2によるマーカーは、請求項1において、前記キャップが弾性体からなることを特徴とする。
【0016】
上記構成によると、キャップが弾性体からなるためにキャップ外側から容器の空洞部へと注射針などを突き通し、その注射針から空洞部内に各種溶液を注入することが可能になる。また、容器の空洞部内に空気が残留しないよう、注射針により空洞部内の空気を抜き取ることが可能となる。そして、キャップから注射針を抜き取っても、注射針の孔を介して溶液が外部に漏れ出すこともなく、外部から空気が入り込むこともない。
【0017】
請求項3によるマーカーは、請求項1又は2において、前記空洞部が一方向に延びた細長形状を有していることを特徴とする。
【0018】
医用画像診断装置のうち、SPECT及びPETの体積画素(ボクセル)は立方体であるが、X線CT及びMRIでは体軸方向の断面厚さがSPECT及びPETに比べて厚く、ボクセルが直方体である。このため、造影剤溶液及び/又はRI溶液を保持する空洞部が例えば球状であると、ボクセルが直方体であるX線CT及びMRIから得られる画像において特徴点が描かれないという問題が生じるおそれがある。しかし上記構成によると、容器の空洞部が一方向に延びた細長形状を有しているので、予めマーカーを所定の方向に配向しておくことにより、ボクセルが直方体のものであっても特徴点が画像に描かれないという問題を軽減することができる。
【0019】
請求項4によるマーカーは、請求項1〜3のいずれか1項において、前記容器には、保持される造影剤溶液又はRI溶液の種類に応じた互いに異なる色が付されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成によると、保持される造影剤溶液又はRI溶液の種類に応じた互いに異なる色を容器に付することによって、容器内に保持された溶液の種類に関して操作者の注意を引きやすくなって、確実に所望の溶液が入った容器が用いられるようになるので、操作者によるミスを効果的に防止することができる。
【0021】
請求項5によるマーカーケースは、請求項1〜4のいずれか1項による医用画像診断装置用マーカーを支持するためのマーカーケースであって、前記医用画像診断装置用マーカーを所定位置に着脱可能に支持する支持部と、前記マーカーケースが接触面において人体と接触しつつ人体から脱落しないようにするための取り付け手段とを備えており、前記支持部の最も前記接触面に近い部分と前記接触面との間に、医用画像診断装置によって検知されにくい部分が存在するように構成されていることを特徴とするマーカーケース。
【0022】
上記構成によると、マーカーを着脱可能に支持するため、X線CT又はMRIがRI管理区域外にあるとき、SPECT又はPETによる撮像終了後にX線CT又はMRIを行う場合でも良好な画像の位置合わせ精度が得られる。つまり、マーカーケースを人体の接触面に取り付けたまま、SPECT又はPETによる撮像終了後にRI溶液が入ったマーカーをマーカーケースから取り外し、検査対象となるヒトがX線CT又はMRIのある場所に移動した後、造影剤溶液が入ったマーカーをマーカーケースに取り付ければ、体表面に対する2種類のマーカーの位置が移動するおそれが少なくなる。さらに、このマーカーケースを人体に接着したとき、マーカーの空洞部内に保持された溶液と人体接触面との間に医用画像診断装置によって検知されにくい部分が存在するようになるので、医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカーとが明確に分離される。したがって、マーカーによる特徴点を良好に認識することができ、マーカーを利用したコンピュータでの画像の位置合わせを効率よく行うことが可能となる。
【0023】
請求項6によるマーカーケースは、請求項5において、前記支持部の最も前記接触面に近い部分と前記接触面との間が含気部材からなることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、支持部の最も人体接触面に近い部分と接触面との間に、医用画像診断装置によって検知されにいという性質を持つ含気部材を用いることによって、各医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカーとを明確に分離させることができる。
【0025】
請求項7によるマーカーケースは、請求項5又は6において、前記取り付け手段が、剥離紙で被覆された粘着テープであることを特徴とする。
【0026】
上記構成によると、剥離紙で被覆された粘着テープを用いることによって、マーカーケースを人体から脱落しないように手軽に取り付けることが可能となる。
【0027】
請求項8によるマーカー及びマーカーケースの使用方法は、請求項1〜4のいずれか1項による第1の医用画像診断装置用マーカーの前記空洞部に造影剤溶液を注入するステップと、請求項1〜4のいずれか1項による第2の医用画像診断装置用マーカーの前記空洞部にRI溶液を注入するステップと、請求項5又は6によるマーカーケースを人体に取り付けるステップと、造影剤溶液が保持された前記第1の医用画像診断装置用マーカー、及び、RI溶液が保持された前記第2の医用画像診断装置用マーカーのいずれか一方を、人体に取り付けられた前記マーカーケースに支持させるステップと、前記マーカーケースに支持されたマーカーに係る医用画像診断装置による検査終了後、前記マーカーケースに支持された前記第1又は第2の医用画像診断装置用マーカーを取り外すステップと、前記第1及び第2の医用画像診断装置用マーカーの他方を、人体に取り付けられた前記マーカーケースに支持させるステップとを備えていることを特徴とする。
【0028】
上記構成によると、マーカーケースに順次異なる種類の溶液が保持されたマーカーを支持させ、その都度医用画像診断装置による撮像を行うようにすることで、RIが封入されたマーカーを装着したヒトをRI管理区域外に出すことができないというような規制がある場合でも、画像の位置合わせ精度を低下させることなく、複数の医用画像診断装置による効率的な撮像が実現できる。また、RIを人体近傍に長時間設置するのは健康上好ましくないが、RI溶液を封入したマーカーを人体に取り付けられたマーカーケースに支持させるステップを医用画像診断装置による撮像の直前に行うことで、このような不都合も回避できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
先ず、図1〜図3を参照しつつ、本発明に係る医用画像診断装置用マーカーの一実施形態について説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態におけるマーカーの容器1を示す。容器1は、全体として試験管のように、下面が閉鎖され且つ上面が開放された上下方向に細長な円筒形状である。そして容器1の内部において、後述のキャップが嵌合されるキャップ嵌合部1dと、X線CT及びMRIなどの医用画像診断装置によって検知されうる造影剤溶液、及び、SPECT及びPETなどの医用画像診断装置によって検知されうる放射性同位元素(RI)溶液の少なくともいずれか一方を保持する空洞部1aとが、上下方向に順に連通して形成されている。
【0031】
容器1には、後述のキャップを開口部1bから導入して係止するよう突出部1cが形成されている。この突出部1cから上側の円柱状の空間が上記のキャップ嵌合部1dであり、この突出部1cより下側の略円柱状の空間が上記の空洞部1aである。空洞部1aは上下方向に延びた細長形状を有し、その断面はキャップ嵌合部1dの断面よりも縮径され、突出部1cから下部にかけては一定の径であるが、その下部においてさらに容器1の底部の角に丸みを帯びさせるよう縮径されている。
【0032】
図2(a)〜(c)は、図1(a)〜(c)に示した本実施形態におけるマーカーの容器1に対応するキャップを示す。キャップ2は、図1(b)に示した容器1におけるキャップ嵌合部1dの径とほぼ同じ径を有する挿入部2cと、挿入部2cよりも若干大きな断面径を有する円柱状のヘッド2dとから構成される。
【0033】
挿入部2cの下面には、図1(b)に示した容器1の底部内側面とほぼ同形状の窪み2bが形成されている。そしてこの窪み2b近傍のキャップ2の下面2aが、図1(b)に示した容器1の突出部1cに当接するようになっている。
【0034】
図3は、図1(a)〜(c)及び図2(a)〜(c)にそれぞれ示した容器1及びキャップ2を嵌合させた状態を示す。本実施形態のマーカー10は、上述の容器1とキャップ2とから構成されている。このようにキャップ2で容器1の開口部1bを封止することで、容器1の空洞部1aが外部と完全に閉鎖される。
【0035】
ここで、キャップ2は例えばゴムなどの弾性体からなるのが好ましい。キャップ2を弾性体からなる場合、図3のようにキャップ2を容器1に嵌合させた後、例えば注射器などの器具を用いて、キャップ2のヘッド2dから容器1の空洞部1aへとその器具の針を突き通すことができる。そして注射針の先端が容器1の空洞部1aに至った状態で、その針から空洞部1a内に各種溶液を注入できる。さらに、注射針により容器1の空洞部1a内に空気が残留しないよう空洞部1a内の空気を抜き取ることができる。そしてこのようにキャップに注射針を突き通した後その注射針を抜き取っても、キャップ2に形成された針孔は弾性的に塞がり、その孔を介して溶液が外部に漏れ出すこともなく、外部から空気が入り込むこともない。
【0036】
なお、容器1の空洞部1a内に保持される造影剤溶液又はRI溶液の種類に応じて、例えば造影剤、RI溶液、及びこれらの混合溶液など、容器1を互いに異なる色に付するのが好ましい。これにより、容器1内に保持された溶液の種類に関して操作者の注意を引きやすくなって、確実に所望の溶液が入った容器が用いられるようになるので、操作者によるミスを効果的に防止することができる。
【0037】
以上に述べたように、本実施形態のマーカー10によると、ある医用画像診断装置によって検知されうる造影剤溶液と別の医用画像診断装置によって検知されうるRI溶液とを、1つの容器1の空洞部1a内に一緒に又は別の容器1の空洞部1a内に分けて保持することができる。これらどちらの場合であっても、容器1の空洞部1aの形状が同じであるので、複数の医用画像診断装置によって得られた画像におけるマーカー10に起因した特徴点は同じ形状に描かれる。よって、異なる種類の医用画像診断装置を用いる場合であっても、コンピュータによる画像の位置合わせを高い精度で行うことが可能となる。
【0038】
また、医用画像診断装置のうち、SPECT及びPETのボクセル(体積画素)は立方体であるが、X線CT及びMRIでは体軸方向の断面厚さがSPECT及びPETに比べて厚く、ボクセルが直方体である。このため、溶液を保持する容器1の空洞部1aが例えば球状であると、ボクセルが直方体であるX線CT及びMRIから得られる画像において、特徴点が描かれないという問題が生じるおそれがある。しかし上記構成によると、容器1の空洞部1aが一方向に延びた細長形状を有しているので、予めマーカー10を所定の方向に配向しておくことにより、X線CTやMRIのようにボクセルが直方体のものであっても特徴点が画像に描かれないという問題を軽減することができる。
【0039】
以上、本発明に係る医用画像診断装置用マーカーの好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、マーカー10の容器1には各種溶液を保持するための空間1aが形成されておればよく、容器1の形状は上記実施形態のようなものに限定されない。つまり、マーカー10の容器1の形状は、角筒状であったり、上面及び下面に開口した円筒でその開口した上下にそれぞれキャップ2を嵌合するような構成であったりしてよい。そしてこの容器1に合わせて嵌合されるキャップ2の形状も様々であってよい。
【0040】
また、溶液を保持するためマーカー10の容器1内に形成された空洞部1aの形状は、本実施形態のように細長な円柱状に限定されず、細長ではない円柱状や球状であってもよい。
【0041】
また、本実施形態においてはマーカー10のキャップ2を容器1に嵌合した後容器1の空洞部1a内に注射器などで溶液を注入するものとしているが、キャップ2を容器1に嵌合する前に容器1の空洞部1a内に溶液を注入し、その後キャップ2で開口部1bを塞ぐようにしてもよい。
【0042】
また、上述したようにキャップ2は弾性体からなるのが好ましいが、これに限定されるものではない。またさらに、容器1を溶液の種類に応じて互いに異なる色に付するのが好ましいが、目印を付けるなどその他の手段により内に保持された溶液の種類を識別できるようにしてもよいし、各容器1が同色で種類の識別ができなくてもよい。
【0043】
なお、造影剤及び/又はRIがマーカー10内に溶液として直接注入されると記述しているが、これら物質を別の部材に染み込ませるなど様々な方法によってマーカー10の空洞部1a内に保持させてよい。
【0044】
次いで、図4(a),(b)を参照しつつ、図3に示したマーカー10を支持するためのマーカーケースの一実施形態について説明する。本実施形態のマーカーケース20において、上述したマーカー10をその細長方向が水平となるようにして上方から所定位置に着脱可能に支持できるよう、マーカー10の外形と略同形状且つそれよりも若干大きくマーカー10を十分に保持可能な凹部21aが直方体形のケース本体21上部に形成されている。またケース本体21の下面には、図4(b)に示すように、マーカーケース20が接触面において人体と接触しつつ人体から脱落しないようにするための粘着テープ22が接着されている。そして使用前の保管状態においては、粘着テープ22の粘着力を低下させないよう、粘着テープ22の下面はさらに剥離紙23で覆われている。
【0045】
また、本実施形態のマーカーケース20のケース本体21は例えば発砲スチロールのような含気部材からなるものとする。
【0046】
マーカーケース20を使用するときは、ケース本体21下面の粘着テープ22を覆う剥離紙23を取り外し、粘着テープ22の面を被検体であるヒトの体表面に貼り付ける。このように人体の体表面における特定位置にマーカーケース20を装着した後、使用する各医用画像診断装置に検知されうる物質を含む溶液が封入されたマーカー10を、その細長方向を水平にしてマーカーケース20上方から凹部21aに嵌合する。そしてマーカー10を装着したマーカーケース20を体表面に接着したまま医用画像診断装置による撮像を行い、撮像終了後にはマーカー10をマーカーケース20から取り外せるようになっている。
【0047】
以上に述べたように、本実施形態のマーカーケース20によると、マーカー10を着脱可能に支持するため、図6を参照して後に詳述する例のように、X線CT又はMRIがRI管理区域外にあるときSPECT又はPETによる撮像終了後にX線CT又はMRIを行う場合でも良好な画像の位置合わせ精度が得られる。つまり、マーカーケース20を被検者の接触面に取り付けたまま、SPECT又はPETによる撮像終了後にRI溶液が入ったマーカー10をマーカーケース20から取り外し、被検者がX線CT又はMRIのある場所に移動した後、造影剤溶液が入ったマーカー10をマーカーケース20に取り付ければ、体表面に対する2種類のマーカー10の位置が移動するおそれが少なくなる。
【0048】
また、マーカーケース20が各医用画像診断装置によって検知されにくい含気部材からなるので、マーカーケース20を人体に接着したとき、マーカー10の空洞部1a内に保持された溶液と人体接触面との間に医用画像診断装置によって検知されにくい部分が存在するようになる。これにより、医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカー10とが明確に分離されるので、マーカー10による特徴点を良好に認識することができる。したがって、マーカー10を利用したコンピュータでの画像の位置合わせを効率よく行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のマーカーケース20を構成する含気部材は、放射線の吸収が少ないという性質を持つことから、マーカー10の支持性能を劣化させることなく、上記のような撮像された画像上において体表面とマーカー10とを明確に分離させるという効果を得ることができる。
【0050】
また、マーカーケース20の下面に剥離紙23で被覆された粘着テープ22を用いることによって、マーカーケース20を人体から脱落しないように手軽に取り付けることが可能となっている。
【0051】
以上、本発明に係るマーカーケースの好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、マーカーケース20の形状は本実施形態では略直方体状であるが、体表面に取り付け可能であれば様々な形状であってよい。
【0052】
また、マーカー10をマーカーケース20の所定位置に着脱可能に支持するため、上述の実施形態ではケース本体21に凹部21aを施しているが、例えばケース本体21を凹部21aのない直方体としてその上面に粘着テープや他の固定具などを取り付けるなど、その他様々な構成により、マーカー10をマーカーケース20の所定位置に着脱可能に支持するようにしてよい。
【0053】
また、マーカーケース20が接触面において人体と接触しつつ人体から脱落しないようにするための手段として、上述の実施形態ではケース本体21下面に粘着テープ22を施しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
また、マーカーケース20に各種溶液を封入したマーカー10を支持させた状態で、マーカーケース20の人体の接触面と、マーカーケース20のマーカー10内の溶液における接触面に最も近い部分とが離隔されていればよい。したがって、本実施形態のようにマーカーケース20のケース本体21全てが含気部材からなる構成ではなく、少なくとも凹部21aの最も人体の接触面、即ちケース本体21の下面に近い部分と下面の接触面との間のみを含気部材からなる構成とし、この部分のみ各医用画像診断装置によって検知されにくくしてもよい。また、各医用画像診断装置に検知されにくい性質を持つ含気部材を用いるのが好ましいが、凹部21aの最も人体の接触面に近い部分とその接触面との間に各医用画像診断装置によって検知されにくい部分が存在するようにできれば、これ以外の材料を用いてもよい。
【0055】
次いで、図5(a),(b)は、上記のようにマーカー10が支持されたマーカーケース20を体表面に取り付けた状態で、それぞれ異なる2種類の医用画像診断装置によって撮像を行った場合に得られる画像の一例を示す。これら画像は人体の上腕部の横断面を撮像したものである。ここでは2つのマーカーケース20を用い、各マーカーケース20を診断対象断面の外周部における異なる位置に取り付けている。そしてマーカーケース20に支持されているマーカー10内の溶液が各医用画像診断装置に検知されることにより、両画像には診断対象となる上腕部断面と共に特徴点P1,P2が描かれる。
【0056】
このように2つの異なる医用画像診断装置から得られた図5(a),(b)の2つの画像を診断にあたって重ね合わせて表示するには、両画像の位置合わせを行う必要がある。そこで図5(a),(b)においてそれぞれ上腕部断面の画像と相対的に同じ位置に描かれている特徴点P1,P2を利用し、これら2点を一致させて位置合わせすることで、図5(c)のような合成画像を得ることができる。
【0057】
次いで、図6を参照しつつ、本発明に係るマーカー10及びマーカーケース20の使用方法の一例について説明する。この例ではSPECT及びX線CTという2つの異なる医用画像診断装置を用い、RI管理区域内にてSPECTによる撮像を行った後、RI管理区域外にてX線CTによる撮像を行うものとする。
【0058】
SPECTではRI、X線CTでは造影剤がそれぞれ検知されるので、先ず2つのマーカー10a,10bを用意して、1つのマーカー10aにはRI溶液、他方のマーカー10bには造影剤をそれぞれ注射器で注入する。また両装置における撮像前には、上述したマーカーケース20を被検者の体表面に予め取り付けておく必要がある。
【0059】
次に、2つのマーカー10a,10bのうちRI溶液が保持されたマーカー10aを、被検者の体表面に取り付けられたマーカーケース20に支持させる。そしてSPECTによる撮像後、RI管理区域外に至る前に、マーカー10aをマーカーケース20から取り外す。マーカー10aを取り外した後は、造影剤溶液が保持された他方のマーカー10bをマーカーケース20に支持させる。このマーカー10bを支持したマーカーケース20が体表面に取り付けられたまま、被検者はRI管理区域外に移動し、X線CTによる撮像が行われる。
【0060】
なお、被検者の体表面に取り付けられたマーカーケース20は、2つの異なる医用画像診断装置を用いた撮像が行われる間、取り外されることなく同じ位置にあって、体表面に対する2種類のマーカー10の位置が移動しないようにされている。
【0061】
以上に述べたマーカー及びマーカーケースの使用方法によると、マーカーケース20に順次異なる種類の溶液が保持されたマーカー10を支持させ、その都度医用画像診断装置による撮像を行うようにすることで、RIが封入されたマーカー10を装着したヒトをRI管理区域外に出すことができないというような規制がある場合でも、画像の位置合わせ精度を低下させることなく、各医用画像診断装置による効率的な撮像が実現できる。
【0062】
本発明は、異なる2種類以上の医用画像診断装置を用いて撮像を行う場合において、RI溶液を封入したマーカー10を装着した被検者がRI管理区域外に出る必要があるときにマーカーの交換を行って、RIの管理規制の問題を回避しようとするものである。したがって上述の例ではSPECT及びX線CTの2種類の医用画像診断装置を用いているが、他様々な医用画像診断装置の取り合わせが考えられる。
【0063】
また、RIを人体近傍に長時間設置するのは健康上好ましくないが、医用画像診断装置による撮像の直前に、RI溶液を封入したマーカー10を人体に取り付けられたマーカーケース20に支持させることで、このような不都合を回避することもできる。
【0064】
また、上述の例においてX線CTによる撮像がRI管理区域内で行われる場合は、例えばSPECにより検知されるRI溶液とX線CTにより検知される造影剤溶液とを混合して同一のマーカー10内に注入して被検者に装着させることで、マーカー10を取り替えるという作業を省略してよい。この場合、用いるマーカー10は1つのみでよく、上述のようにRI溶液と造影剤溶液とをそれぞれ封入した2つのマーカー10を用意する必要もない。
【0065】
【発明の効果】
請求項1によると、マーカーに起因した特徴点は同じ形状に描かれるので、異なる種類の医用画像診断装置を用いる場合であっても、コンピュータによる画像の位置合わせを高い精度で行うことが可能となる。
【0066】
請求項2によると、キャップを介した容器の空洞部への溶液注入や空気の抜き取りが可能になる。
【0067】
請求項3によると、各医用画像診断装置のボクセルの形状に違いがあっても、特徴点が画像に描かれないという問題を軽減することができる。
【0068】
請求項4によると、確実に所望の溶液が入った容器が用いられるようになる。
【0069】
請求項5によると、医用画像診断装置によって撮像された画像上において体表面とマーカーとが明確に分離されるため、マーカーによる特徴点を良好に認識することができる。
【0070】
請求項6によると、請求項5と同様の効果が得られると共に、マーカーの支持性能を劣化させることもない。
【0071】
請求項7によると、マーカーケースを人体から脱落しないように手軽に取り付けることが可能となる。
【0072】
請求項8によると、RI管理規制の問題がある場合でも、画像の位置合わせ精度を低下させることなく、複数の医用画像診断装置による効率的な撮像が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る医用画像診断装置用マーカーの一実施形態における容器を示す上面図である。(b)は、図1(a)の容器の縦断面図である。(c)は、図1(a),(b)の容器の下面図である。
【図2】(a)は、図1(a)〜(c)の容器に対応するキャップを示す上面図である。(b)は、図2(a)のキャップの縦断面図である。(c)は、図2(a),(b)のキャップの下面図である。
【図3】図1(a)〜(c)に示した容器と図2(a)〜(c)に示したキャップとが嵌合した医用画像診断装置用マーカーを示す縦断面図である。
【図4】(a)は、図3の医用画像診断装置用マーカーを支持するためのマーカーケースの一実施形態を示す外観斜視図である。(b)は、図4(a)の縦断面図である。
【図5】(a),(b)は、本発明に係る医用画像診断装置用マーカー及びマーカーケースを用いてそれぞれ異なる医用画像診断装置による撮像を行った場合に得られる画像の一例を示す概略図である。(c)は、図5(a),(b)を重ね合わせた画像を示す概略図である。
【図6】本発明に係る医用画像診断装置用マーカー及びそれを支持するためのマーカーケースの使用方法についての一例を示す説明図である。
【図7】従来技術における医用画像診断装置用マーカーを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 容器
1a 空洞部
1b 開口部
2 キャップ
10 マーカー(医用画像診断装置用マーカー)
20 マーカーケース
21 本体
21a 凹部(支持部)
22 粘着テープ(取り付け手段)
23 剥離紙
Claims (8)
- ある医用画像診断装置によって検知されうる造影剤溶液、及び、別の医用画像診断装置によって検知されうる放射性同位元素(RI)溶液の少なくともいずれか一方を保持するための空洞部を有する容器と、
前記空洞部に連通した前記容器の開口部を封止するキャップとを備えていることを特徴とする医用画像診断装置用マーカー。 - 前記キャップが弾性体からなることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置用マーカー。
- 前記空洞部が一方向に延びた細長形状を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像診断装置用マーカー。
- 前記容器には、保持される造影剤溶液又はRI溶液の種類に応じた互いに異なる色が付されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医用画像診断装置用マーカー。
- 請求項1〜4のいずれか1項による医用画像診断装置用マーカーを支持するためのマーカーケースであって、
前記医用画像診断装置用マーカーを所定位置に着脱可能に支持する支持部と、前記マーカーケースが接触面において人体と接触しつつ人体から脱落しないようにするための取り付け手段とを備えており、
前記支持部の最も前記接触面に近い部分と前記接触面との間に、医用画像診断装置によって検知されにくい部分が存在するように構成されていることを特徴とするマーカーケース。 - 前記支持部の最も前記接触面に近い部分と前記接触面との間が含気部材からなることを特徴とする請求項5に記載のマーカーケース。
- 前記取り付け手段が、剥離紙で被覆された粘着テープであることを特徴とする請求項5又は6に記載のマーカーケース。
- 請求項1〜4のいずれか1項による第1の医用画像診断装置用マーカーの前記空洞部に造影剤溶液を注入するステップと、
請求項1〜4のいずれか1項による第2の医用画像診断装置用マーカーの前記空洞部にRI溶液を注入するステップと、
請求項5〜7のいずれか1項によるマーカーケースを人体に取り付けるステップと、
造影剤溶液が保持された前記第1の医用画像診断装置用マーカー、及び、RI溶液が保持された前記第2の医用画像診断装置用マーカーのいずれか一方を、人体に取り付けられた前記マーカーケースに支持させるステップと、
前記マーカーケースに支持されたマーカーに係る医用画像診断装置による検査終了後、前記マーカーケースに支持された前記第1又は第2の医用画像診断装置用マーカーを取り外すステップと、
前記第1及び第2の医用画像診断装置用マーカーの他方を、人体に取り付けられた前記マーカーケースに支持させるステップとを備えていることを特徴とするマーカー及びマーカーケースの使用方法。
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