JP2004018968A - 化学気相成長方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機金属化合物ガスをイオン化し基板照射する化学気相成長方法で、有機金属化合物の分子量が大きく、構成元素数が多い分子をイオン化する時、熱電子照射やプラズマによる方法では生成有機金属イオンの種類は多く、様々な分子量なので、電場または磁場による加速減速により速度が一様でなく、堆積膜質が悪くまた効率が悪いのでその改良。
【解決手段】イオン化した試薬ガスを原料ガスである有機金属化合物ガスと混合することでMO化合物ガスをイオン化し、目的の有機金属化合物イオンを質量分離し、速度制御して基板に照射する化学気相成長方法と装置の提供。
【選択図】 図1
【解決手段】イオン化した試薬ガスを原料ガスである有機金属化合物ガスと混合することでMO化合物ガスをイオン化し、目的の有機金属化合物イオンを質量分離し、速度制御して基板に照射する化学気相成長方法と装置の提供。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は基板上への膜作製に用いる化学気相成長(CVD)法に関するものである。特に有機金属化合物を原料に用いた有機金属化学気相成長(MOCVD)法に関するものである。産業上の応用は、例えば、電気デバイスまたは電子デバイスに用いるための薄膜または厚膜作製である。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気デバイスならびに電子デバイスに用いるための薄膜作製プロセスの一つとして化学気相成長(CVD)法が知られている。特に原料ガスに有機金属(MO)化合物を用いたMOCVD法が、最近の多様化するデバイス開発において有効な薄膜作製プロセスとして注目されている。
MOCVD法は原料であるMOガスを成膜室中で加熱された基板上に供給し、基板上もしくは基板近傍における熱分解反応によりMO化合物を分解させることで、基板上に所望の膜を堆積させるものである。
近年のデバイス多様化によりプロセス条件の制限が厳しくなる傾向があり、特に基板加熱温度が制限されることが多い。このような場合、基板近傍にプラズマもしくは光を照射することによりMOの分解反応を助長し、より低い基板温度で所望の膜を得ることができるプラズマCVD法もしくは光CVD法が広く用いられている。
CVD法により低い基板温度で所望の膜を得る別の方法として、原料ガスをイオン化し収束することで原料化合物イオンビームを形成し基板に照射するものがある。
特許第3015892号によると、メチルシランをイオン化して得られるシラエチレンイオン(SiH2CH2 +)、メチルシリレンイオン(SiHCH3 +)及びシリルメチレンイオン(SiH3CH+)から選ばれた少なくとも一種のイオンを含むイオンビームを形成し、基板に照射することで、より低い基板温度(600〜1300℃程度)で結晶性の良好な炭化ケイ素膜が得られることが示されている。メチルシランのイオン化方法としてはフリーマン型イオン発生装置を用いた例が示されている。
【0003】
CVD原料ガスのうち、メチルシランやトリメチルアルシンなど、比較的分子量の小さい原料ガスをイオン化する場合、熱電子照射およびプラズマによって生ずるイオンの種類は数種類に限られる。例えば、上記メチルシランの場合、イオン化して得られるイオンはシラメチレンイオン、メチルシリレンイオン、シリルメチレンイオンおよびメチルシリセニウムイオンの4種類がほとんどである。よって生じたイオンを電場もしくは磁場で質量分離する場合においても、また加速減速する場合においても、これら4種のイオンのいずれか少なくとも1種に関して条件を設定すればよい。
【0004】
一方、毒性の少ない原料を用いて不純物の少ない膜を得る方法として、トリメチルアルシンをイオン化して基板に照射する方法が特開平1−260813に示されている。トリメチルアルシンのイオン化方法は熱電子照射によるものとプラズマによるものが例示されている。
【0005】
近年のデバイス開発においては、酸化物高温超電導体ならびに酸化物強誘電体など、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、希土類金属元素を構成元素に持つ物質の膜作製開発が進められている。アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、希土類金属元素の化合物をCVD法により基板上に堆積させる場合、それらの原料ガスとしてベータジケトン錯体または金属アルコキシドなどの有機金属(MO)化合物ガスが用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの化合物は上記メチルシランなどと比較して分子量が大きく分子中の構成元素数も多い。そのためベータジケトン錯体または金属アルコキシドなどのMO化合物ガスをメチルシランなどと同様に熱電子照射やプラズマでイオン化した場合、生成されるイオンの種類は多岐にわたる。そのためMOイオンの質量は多岐にわたり、電場または磁場を用いた質量分離器により質量分離する場合において困難が生ずる。また質量分離せずに多数のイオンを電場または磁場により加速減速する場合、質量の異なるイオンに一定の電場または磁場を与えたときの加速度が異なり、基板へのイオン照射制御が困難である。そのため、MOイオン種が多種存在し、それぞれの速度も異なるため、基板上における堆積過程が一様でなくなり、イオン照射する形のCVDの利点である、比較的低温で結晶性良好かつ低不純物の膜を得ることが難しい。
またそのように生成されたMOイオンのいくつかは多数の炭素化合物基が脱離した形となり、もはや気体として安定でなくなり、気相中で他の分子と化合して固化または粉体化してしまう場合がある。固化もしくは粉体化したMOイオンはもはや基板上の膜作製には関与せず無駄となり効率が悪い。
したがって本発明の目的は、MO化合物ガスをイオン化し基板照射することで目的の膜を堆積させる化学気相成長方法および装置において、原料供給量に対する膜堆積効率が高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために下記発明に達成した。
【0008】
[1] 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化し、イオン化した前記試薬ガスを原料となる有機金属化合物ガスと混合することで前記有機金属化合物ガスをイオン化し、磁場または電場を用いた質量分離により、高濃度の有機金属イオン流を基板に照射することで目的の膜を基板上に形成する化学気相成長方法。
【0009】
[2] 前記試薬ガスがメタン、イソブタン、アンモニアのいずれかであることを特徴とする[1]記載の化学気相成長方法。
【0010】
[3] 前記イオン化した試薬ガスとの混合により、前記有機金属化合物ガスを本来の分子にH+がひとつ付加した形の+1価イオンに変化させる、または有機金属化合物ガスを本来の分子からH+がひとつ脱離した形の+1価イオンに変化させる、またはその両方の変化を生じさせることを特徴とする[1]乃至[2]記載の化学気相成長方法。
【0011】
[4] 前記原料となる有機金属化合物が金属のベータジケトン錯体であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0012】
[5] 前記原料となる有機金属化合物がジピバロイルメタンをその構成分子に含むことを特徴とする[4]記載の化学気相成長方法。
【0013】
[6] 前記原料となる有機金属化合物が金属アルコキシドであることを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0014】
[7] 生成される有機金属化合物イオンの平均的な分子量をMとしたとき、基板に照射される前記有機金属イオンの質量選択が、0.95Mから1.05Mの範囲内で行われることを特徴とする[1]乃至[6]の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0015】
[8] 前記試薬ガスの平均的な分子量をRとしたとき、基板に照射される有機金属イオンの質量選択が、2R以上の範囲内で行われることを特徴とする[1]乃至[6]の何れか記載の化学気相成長方法。
【0016】
[9] 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化する手段と、イオン化した試薬ガスと目的の膜の原料となる有機金属化合物ガスと混合することで有機金属化合物ガスをイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする化学気相成長装置。
【0017】
[10] 複数の有機金属化合物に対して、それぞれ1組以上の、有機金属化合物をイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする[9]記載の化学気相成長装置。本発明の方法で生成されたMOイオンは、本来のMO化合物に水素一原子が付加もしくは脱離した1価の正イオンとなり、その分子量は本来のMO化合物のものより水素一原子分だけ増加または減少したものになる。
もしくは、生成されたMOイオンは、水素以外の特定の分子が本来のMO化合物に付加もしくは脱離した形となり、その分子量は本来のMOイオンのものより付加または脱離する特定分子の分子量だけ変化したものになる。
付加する分子種ならびにイオンの価数および符号はMO化合物の種類ならびに試薬ガスの種類による。よってMO化合物ならびに試薬ガスの選択により特定の質量範囲のMOイオンを効率よく生成することができる。その際、気体として安定な分子イオンを生成するようにMO化合物および試薬ガスを選定する。
このような方法により、質量選択で基板照射される全分子中のMOイオン濃度を上昇させ、電場または磁場によるMOイオンの加速減速を一様にすることができる。その結果、成膜効率の高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることができ、上記課題を解決することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の化学気相成長方法の実施の形態について図1を用いて説明する。
まず、メタン、イソブタン、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素など、水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも1種類を構成元素に持つ試薬ガスをイオン化する。このときの試薬ガスのイオン化方法は特に限定はないが、熱電子照射によるもの、プラズマによるものなどが好ましく用いられる。その条件は公知の方法が利用できるが、例えば熱電子照射の方法では、加熱されたフィラメントから発せられる熱電子をMO化合物ガスに照射し、MO化合物ガスをイオン化するものである。このときのチャンバー内の圧力は10−6torrから10torrの範囲である。
【0019】
次にイオン化された試薬ガスイオンをMO化合物ガスと混合する。このとき、試薬ガスイオンは特定のイオンを選択的に効率よくMO化合物ガスと混合させるために、電場による正負イオンの分離、電場または磁場によるイオン質量選択、またはその両方を行ってもよい。
【0020】
このときの試薬ガスの量はMO化合物ガスに対してモル比で同量または数倍程度導入してもよい。
【0021】
MO化合物としては金属のベータジケトン錯体、金属アルコキシドなどが考えられる。ベータジケトン錯体とは金属にベータジケトンが配位した有機金属化合物である。ベータジケトンとしては、ジピバロイルメタン(dpm)、アセチルアセトン(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)などがあげられる。金属アルコキシドは金属にアルコキシル基が結合したもので、金属にメトキシル基が結合した金属メトキシド、金属にイソプソポキシル基が結合した金属イソプロポキシドなどがあげられる。
【0022】
金属元素としては、Li,Na,K,Pb,Ca,Sr,Ba,Cu,Bi,Y,Sc,La等希土類金属元素、Ti,Zr,Hfなどが用いられる。
【0023】
本発明において用いる有機金属化合物(MO化合物)は、金属に1つ以上のベータージケトン錯体、特にジピバロイルメタン(dpm)が結合している金属dpm錯体、さらには金属アルコキシドである。この金属dpm錯体は、例えば、Mmを一価金属元素としてMm(dpm)で表されるもの、Diを二価金属元素としてDi(dpm)2で表されるもの、Trを三価金属元素としてTr(dpm)3で表されるもの、Ttを四価金属元素としてTt(dpm)4で表されるもの、および、Ttを四価金属元素、ORをアルコキシル基としてTt(dpm)2(OR)2で表されるものなどである。
【0024】
一価金属元素Mmとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられる。二価金属元素Diとしては、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、銅(Cu)等が挙げられる。三価金属元素Trとしては、ビスマス(Bi)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の希土類金属等が挙げられる。四価金属元素Ttとしては、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。アルコキシル基ORとしては、メトキシル基、イソプロポキシル基、エトキシル基、ターシャリーブトキシル基等が挙げられる。
【0025】
本発明において用いる有機金属化合物、具体的には、Pb(dpm)2、Ti(O−iC3H7)4、Li(dpm)、Ba(dpm)2、Y(dpm)3等が挙げられる。
【0026】
MO化合物は、所望の成膜速度が得られるのに必要な量のMO化合物を気化させるような温度に適宜設定すれば良いが、例えばTi(O−iC3H7)4の場合、30〜70℃に加熱することで蒸気圧を高くし、ガス化することができる。また、ヘリウム、ネオン及びアルゴンガスなどの不活性ガスを輸送ガスとして用いることで、ガス化したMO化合物をMOイオン化室2に導入してもよい。
【0027】
試薬ガスイオンはMO化合物ガスと混合され、試薬ガスイオンとMO化合物ガスが会合した際に、MO化合物に水素イオンが付加する、またはMO化合物から水素イオンが脱離する、またはMO化合物に特定の分子イオンが付加または脱離することにより、特定の質量範囲のMO化合物イオンが生成される。上記のいずれのイオン化反応が起こるかは試薬ガスおよびMO化合物ガスの組み合わせによる。組み合わせが決まれば主として起こるイオン化反応が決まる。
【0028】
MO化合物の水素イオン付加または脱離、または特定の分子イオンの付加により生成されるMOイオンは導入されたMO化合物同様、気体として安定である。また、MO化合物からの特定の分子イオンの脱離により生成されるMOイオンは、脱離分子イオンの分子量が大きくなく、MOイオンの分子量が本来のMO化合物に比べて大きく減少しなければ気体として安定である。そのため、MOイオンは固化または粉体化することなく、気体として基板上に供給することができる。
【0029】
試薬イオンおよび脱離分子イオンと混合状態であるMOイオンは、電場または磁場を用いた質量分離器5を通過させることにより選択される。
MOイオンは特定の質量範囲であるので、MOイオンのみを通過させるように質量分離器5を設定することで、試薬イオンや脱離分子イオンなど、基板上の膜形成に関与しないイオンを除去し、基板照射されるイオンビーム中のMOイオン濃度を高くすることができる。
【0030】
または、一般的に試薬イオンおよび脱離分子イオンはMOイオンと比較して分子量が小さいので、試薬イオンまたは脱離イオンの分子量以下の質量を通過させないように質量分離器を設定することでもMOイオンを選択することができる。試薬ガスはイオン化反応時に2分子が結合した形になることがあり、その2分子結合イオンの分子量をMOイオン以外のイオンの最大値と仮定して、それ以下のイオンを除去するように設定することでも、効率よくMOイオンを選択することができる。
【0031】
MOイオンを質量分離器5に導入する前に、電場または磁場により正負のイオンを予め分離してもよい。また、正負イオン分離されたイオンを加速するために、MOイオンを質量分離器に導入する前に電場または磁場によりイオンを予め加速する。また、質量分離器により選択されたMOイオンが所望の速度にて、MOイオンビームとして基板上に照射されるように、質量分離器5通過後に電場または磁場によるイオンの加速減速を行ってもよい。
【0032】
分離されたMOイオンは特定の質量範囲にあるため、電場または磁場によるイオンの加速減速により、速度分布が小さい、均質なMOイオンビームを形成することができる。
【0033】
これらの方法により濃度の高い均質なMOイオンビームを効率よく生成し、基板に照射することで、比較的低温度の基板加熱(例えば300〜500℃程度)で結晶性良好かつ不純物の少ない膜を形成することができる。
【0034】
本発明の化学気相成長装置の実施の形態について図1および図2を用いて説明する。
【0035】
メタン、イソブタン、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素など、水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも1種類を構成元素に持つ試薬ガスを導入してイオン化し、試薬イオンを生成するための試薬ガスイオン化室1が設置される。試薬ガスイオン化室1でのイオン化方法は、任意のイオン化法でよく、熱電子放射やプラズマなどを用いてもよい。
【0036】
試薬ガスイオン化室1に接するように、試薬ガスイオンとMO化合物ガスを混合し、MOイオンを生成するためのMOイオン化室2が設置される。試薬ガスイオン化室1とMOイオン化室2が接する部分に正負イオンを分離するグリッドを配備してもよい。
【0037】
MOイオン化室2内壁はMOイオンと同符号の電位に保たれており、MOイオン出口にはMOイオンと同電位に保たれた選択グリッド3が配備される。またその先には選択グリッドを透過したイオンを加速するための、MOイオンと逆符号の電位に保たれた加速グリッド4が配備される。
【0038】
選択グリッド3、加速グリッド4の先に、電場または磁場でイオンの質量を分離する質量分離器5が配置される。適当な電場または磁場を設定することでイオンの質量分離を行い、所望の質量範囲のイオンを選択透過させることができる。
【0039】
質量分離器5の出口の先に、MOイオンを所望の速度に加速減速するための加速減速器6が設置され、その延長上に基板8を設置できるように成膜室7が配備される。
【0040】
複数のMO化合物ガスを用いて膜形成を行う場合、図2に示すように、それぞれのMO化合物に対して、1組以上のMOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6が設置されてもよい。それぞれのMOイオンは個別のMOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6により、それぞれのMOイオンに対して最適な条件で、イオン化、質量選択ならびに加速減速が行われる。このとき、試薬ガスイオン化室1はそれぞれのMOイオン化室2に対して個別に設置してもよいし、複数のMOイオン化室2に試薬イオンを供給するように設置してもよい。
【0041】
【実施例】
実施例1
次に本発明の第1の実施例について図1を用いて説明する。
試薬ガスとしてイソブタンを用い、試薬ガスイオン化室1にてフィラメントからの熱電子放出によりイソブタンをイオン化する。このときの以下に示すイオン化反応によりtert−C4H9 +イオンが生成される。
【0042】
iso−C4H10 → tert−C4H9 + + 1/2H2
MO化合物ガスとして鉛のジピバロイルメタネート(dpm)錯体であるPb(dpm)2を用いた。Pb(dpm)2は容器中で130℃に加熱され、昇華したPb(dpm)2ガスはアルゴンガスを輸送ガスとしてMOイオン化室2に導入する。この際の、アルゴンガスの流量は100sccmであった。
試薬ガスイオン化室1で生成された+1価のtert−C4H9 +イオンは、正の電位に保持したグリッドの細孔を通ってMOイオン化室2に導入導入される。(導入するtert−C4H9 +イオンの流量は100sccmであった。)
そこで試薬イオンであるtert−C4H9 +イオンとPb(dpm)2が混合され反応し、tert−C4H9 +イオンからH+イオンがPb(dpm)2に移り、Pb(dpm)2H+イオンが生成される。このイオンは本来のMO化合物分子同様、気体として安定であるので、イオン化反応による固化や粉体化がなく、効率よくイオン流を生成することができる。
【0043】
Pb(dpm)2は分子式PbC22H38O4で書き表される。それぞれの元素の平均的質量数は、Pbが207、Cが12、Hが1、Oが16であるので、Pb(dpm)2の平均の分子量は573である。それぞれの元素の自然に存在する同位体の質量数範囲は、Pbで204から208、Cは12から13、Hが1から2、Oが16から18である。これらの値から、Pb(dpm)2の取りうる分子量の最大値は642、最小値は570となる。H+イオンの付加により、Pb(dpm)2がイオン化されると、その平均分子量は574、最大分子量は644、最小分子量は571となる。
しかしながら、13Cの存在比は1%程度であり、2H、17O,18Oの存在比は1%以下であるので、実際のPb(dpm)2H+の分子量分布は図3にしめすように、平均分子量から±10の範囲でほぼ網羅される。よって質量分離器5により、平均分子量±10の範囲のみ選択し、成膜室に導入して、基板に照射すればよい。
本実施例で用いる質量分離器5は、磁場による荷電粒子の運動により質量分離を行うものである。質量分析装置に用いられている質量分離器5と比較して分解能を低くしているため、設定された質量/価数(m/z)の±2%程度の範囲はほとんどすべて選択される。つまりm/zを500と設定した場合、m/zが490から510の範囲の粒子が選択される。質量分離器は四重極型など、電場または飛行時間により質量分離を行うものを用いてもよい。
このように選択されたPb(dpm)2H+イオンは加速減速器6によりさらに加速され、イオンビームが形成される。このイオンビームを、加速エネルギー100エレクトロンボルトで、基板8に照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化鉛膜を得ることができる。
【0044】
実施例2
次に本発明の第2の実施例について図1を用いて説明する。
上記第一の実施例と同様の装置において、試薬ガスとしてメタン(CH4)を用い、MO化合物としてチタンのアルコキシドの一種であるチタンイソプロポキシド(Ti(O−i−C3H7)4)を用いた。
流量100sccmのCH4は試薬ガスイオン化室1でフィラメントからの熱電子照射によりイオン化され、以下の反応によりCH5 +イオン、およびC2H5 +イオンが生成される。
【0045】
CH4 → CH4 +*, CH3 +*, CH2 +*
CH4 +* + CH4 → CH 5 + + CH3 +*
CH3 +* + CH4 → C 2 H 5 + + H2
チタンイソプロポキシドは50℃で保温容器中に保持され、容器中で蒸発したチタンイソプロポキシドガスは流量100sccmのアルゴン輸送ガスによりMOイオン化室2に導入される。
【0046】
試薬ガスイオン化室1で生成された試薬イオンである+1価のCH5 +イオンおよびC2H5 +イオンは、正の電位に保持したグリッドの細孔を通ってMOイオン化室2に導入導入される。そこで試薬イオンとチタンイソプロポキシドが混合され反応し、チタンイソプロポキシドにH+が一つ付加したTi(O−i−C3H7)4H+、Hが一つ脱離したTi(O−i−C3H7)3(OC3H6)+、およびTi−O結合が切れて(O−iーC3H7)が一つ脱離したTi(O−iーC3H7)3 +イオンが生成される。これらのイオンは本来のMO化合物分子同様、気体として安定であるので、イオン化反応による固化や粉体化がなく、効率よくイオン流を生成することができる。
Ti(O−i−C3H7)4H+イオンの平均分子量はチタンイソプロポキシド本来の平均分子量より1だけ大きく285、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+は本来の平均分子量より1だけ小さく283、Ti(O−iーC3H7)3 +は本来の平均分子量より59だけ小さく225である。
【0047】
質量分離器5にてこの3種のイオンを効率よく選択するよう設定する。上記3種のイオンの分子量の±10%範囲はそれぞれ、257から314、255から311、および203から248である。この範囲をすべて包含するように203から314までの質量分離器5の質量範囲を設定する。このような比較的広い質量範囲の設定には磁場に分布を持たせる、または質量分布により発散したイオンを特定の範囲で再収束させる方法が用いられる。またはパルス的に生成されるイオンに対して、飛行時間により質量範囲を選択する方法を用いてもよい。
【0048】
このように選択されたTi(O−i−C3H7)4H+、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+およびTi(O−iーC3H7)3 +イオンは加速減速器6によりさらに加速され、イオンビームが形成される。このイオンビームを加速エネルギー100エレクトロンボルトで基板8に照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化チタン膜を得ることができる。
【0049】
実施例3
次に本発明の第3の実施例について図4を用いて説明する。
上記実施例2において、質量分離器5にてTi(O−i−C3H7)4H+、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+およびTi(O−iーC3H7)3 +イオンを効率よく選択するために、試薬イオンを除去することでMOイオンを選択するように設定する。
【0050】
試薬ガスであるCH4の平均分子量は16である。試薬ガスのイオン化により生成されたCH5 +およびC2H5 +イオンの平均分子量はそれぞれ17および29である。この他に平均分子量31のC2H7 +イオンも生成されているため、分子量31以下のイオンを除去するように設定する。目安として本来の試薬ガスの平均分子量の2倍以下のイオンを除去するように設定すればよい。
【0051】
イオン分離の方法として、本実施例ではイオン飛行時間による分離を用いている。MOイオンが生成され、加速グリッド4においてイオンが加速電圧により加速される。この加速電圧印加をパルス的に行う。パルス電圧により加速されたイオンはその質量により速度が異なるため、必要なイオンが到達する時刻にのみ、質量分離器5出口または加速減速器6出口もしくは基板8前方に設置されたシャッター10を開き、不必要なイオンの到達時刻にはシャッター10を閉じるように、加速電圧パルスと同期させたシャッター操作を行うように設定する。
【0052】
この方法により、分子量32以下のイオンを除去し、それ以上の分子量のイオンのみを基板8に加速エネルギー100エレクトロンボルトで照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化チタン膜を得ることができる。
【0053】
実施例4
次に本発明の第4の実施例について図2を用いて説明する。
図2に示すように、成膜装置には2組の試薬ガスイオン化室1、MOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6が設置されている。第1の試薬ガスイオン化室1には流量100sccmのイソブタンが導入されイオン化され、第1のMOイオン化室2には流量100sccmのアルゴン輸送ガスによって輸送されるPb(dpm)2が導入されイオン化される。第1のMOイオン化室2で生成されたMOイオンは第1の質量分離器5により、Pb(dpm)2の平均分子量573に対して±10の範囲で質量分離を行い、加速されて基板8に照射される。第2の試薬ガスイオン化室21にはメタンが導入されイオン化され、第2MOイオン化室22にはチタンイソプロポキシドが導入されイオン化される。第2のMOイオン化室22で生成されたMOイオンは第2の質量分離器25により、203から314の範囲で質量分離を行い、加速されて基板8に照射される。2種類のイオンビームを同時にそれぞれ加速エネルギー100エレクトロンボルトで基板8上に照射し、一方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)チタン酸鉛膜を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明により、MO化合物ガスをイオン化し基板照射することで目的の膜を堆積させる化学気相成長方法および装置において、MO化合物供給量に対する膜堆積効率が高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【図3】Pb(dpm)2の分子量の分布を示す図である。
【図4】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 試薬ガスイオン化室
2 MOイオン化室
3 選択グリッド
4 加速グリッド
5 質量分離器
6 イオン加速減速器
7 成膜室
8 基板
9 ヒーター
10 シャッター
11 排気系
21 試薬ガスイオン化室
22 MOイオン化室
23 選択グリッド
24 加速グリッド
25 質量分離器
26 加速減速器
【発明の属する技術分野】
本発明は基板上への膜作製に用いる化学気相成長(CVD)法に関するものである。特に有機金属化合物を原料に用いた有機金属化学気相成長(MOCVD)法に関するものである。産業上の応用は、例えば、電気デバイスまたは電子デバイスに用いるための薄膜または厚膜作製である。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気デバイスならびに電子デバイスに用いるための薄膜作製プロセスの一つとして化学気相成長(CVD)法が知られている。特に原料ガスに有機金属(MO)化合物を用いたMOCVD法が、最近の多様化するデバイス開発において有効な薄膜作製プロセスとして注目されている。
MOCVD法は原料であるMOガスを成膜室中で加熱された基板上に供給し、基板上もしくは基板近傍における熱分解反応によりMO化合物を分解させることで、基板上に所望の膜を堆積させるものである。
近年のデバイス多様化によりプロセス条件の制限が厳しくなる傾向があり、特に基板加熱温度が制限されることが多い。このような場合、基板近傍にプラズマもしくは光を照射することによりMOの分解反応を助長し、より低い基板温度で所望の膜を得ることができるプラズマCVD法もしくは光CVD法が広く用いられている。
CVD法により低い基板温度で所望の膜を得る別の方法として、原料ガスをイオン化し収束することで原料化合物イオンビームを形成し基板に照射するものがある。
特許第3015892号によると、メチルシランをイオン化して得られるシラエチレンイオン(SiH2CH2 +)、メチルシリレンイオン(SiHCH3 +)及びシリルメチレンイオン(SiH3CH+)から選ばれた少なくとも一種のイオンを含むイオンビームを形成し、基板に照射することで、より低い基板温度(600〜1300℃程度)で結晶性の良好な炭化ケイ素膜が得られることが示されている。メチルシランのイオン化方法としてはフリーマン型イオン発生装置を用いた例が示されている。
【0003】
CVD原料ガスのうち、メチルシランやトリメチルアルシンなど、比較的分子量の小さい原料ガスをイオン化する場合、熱電子照射およびプラズマによって生ずるイオンの種類は数種類に限られる。例えば、上記メチルシランの場合、イオン化して得られるイオンはシラメチレンイオン、メチルシリレンイオン、シリルメチレンイオンおよびメチルシリセニウムイオンの4種類がほとんどである。よって生じたイオンを電場もしくは磁場で質量分離する場合においても、また加速減速する場合においても、これら4種のイオンのいずれか少なくとも1種に関して条件を設定すればよい。
【0004】
一方、毒性の少ない原料を用いて不純物の少ない膜を得る方法として、トリメチルアルシンをイオン化して基板に照射する方法が特開平1−260813に示されている。トリメチルアルシンのイオン化方法は熱電子照射によるものとプラズマによるものが例示されている。
【0005】
近年のデバイス開発においては、酸化物高温超電導体ならびに酸化物強誘電体など、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、希土類金属元素を構成元素に持つ物質の膜作製開発が進められている。アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、希土類金属元素の化合物をCVD法により基板上に堆積させる場合、それらの原料ガスとしてベータジケトン錯体または金属アルコキシドなどの有機金属(MO)化合物ガスが用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの化合物は上記メチルシランなどと比較して分子量が大きく分子中の構成元素数も多い。そのためベータジケトン錯体または金属アルコキシドなどのMO化合物ガスをメチルシランなどと同様に熱電子照射やプラズマでイオン化した場合、生成されるイオンの種類は多岐にわたる。そのためMOイオンの質量は多岐にわたり、電場または磁場を用いた質量分離器により質量分離する場合において困難が生ずる。また質量分離せずに多数のイオンを電場または磁場により加速減速する場合、質量の異なるイオンに一定の電場または磁場を与えたときの加速度が異なり、基板へのイオン照射制御が困難である。そのため、MOイオン種が多種存在し、それぞれの速度も異なるため、基板上における堆積過程が一様でなくなり、イオン照射する形のCVDの利点である、比較的低温で結晶性良好かつ低不純物の膜を得ることが難しい。
またそのように生成されたMOイオンのいくつかは多数の炭素化合物基が脱離した形となり、もはや気体として安定でなくなり、気相中で他の分子と化合して固化または粉体化してしまう場合がある。固化もしくは粉体化したMOイオンはもはや基板上の膜作製には関与せず無駄となり効率が悪い。
したがって本発明の目的は、MO化合物ガスをイオン化し基板照射することで目的の膜を堆積させる化学気相成長方法および装置において、原料供給量に対する膜堆積効率が高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために下記発明に達成した。
【0008】
[1] 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化し、イオン化した前記試薬ガスを原料となる有機金属化合物ガスと混合することで前記有機金属化合物ガスをイオン化し、磁場または電場を用いた質量分離により、高濃度の有機金属イオン流を基板に照射することで目的の膜を基板上に形成する化学気相成長方法。
【0009】
[2] 前記試薬ガスがメタン、イソブタン、アンモニアのいずれかであることを特徴とする[1]記載の化学気相成長方法。
【0010】
[3] 前記イオン化した試薬ガスとの混合により、前記有機金属化合物ガスを本来の分子にH+がひとつ付加した形の+1価イオンに変化させる、または有機金属化合物ガスを本来の分子からH+がひとつ脱離した形の+1価イオンに変化させる、またはその両方の変化を生じさせることを特徴とする[1]乃至[2]記載の化学気相成長方法。
【0011】
[4] 前記原料となる有機金属化合物が金属のベータジケトン錯体であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0012】
[5] 前記原料となる有機金属化合物がジピバロイルメタンをその構成分子に含むことを特徴とする[4]記載の化学気相成長方法。
【0013】
[6] 前記原料となる有機金属化合物が金属アルコキシドであることを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0014】
[7] 生成される有機金属化合物イオンの平均的な分子量をMとしたとき、基板に照射される前記有機金属イオンの質量選択が、0.95Mから1.05Mの範囲内で行われることを特徴とする[1]乃至[6]の何れかに記載の化学気相成長方法。
【0015】
[8] 前記試薬ガスの平均的な分子量をRとしたとき、基板に照射される有機金属イオンの質量選択が、2R以上の範囲内で行われることを特徴とする[1]乃至[6]の何れか記載の化学気相成長方法。
【0016】
[9] 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化する手段と、イオン化した試薬ガスと目的の膜の原料となる有機金属化合物ガスと混合することで有機金属化合物ガスをイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする化学気相成長装置。
【0017】
[10] 複数の有機金属化合物に対して、それぞれ1組以上の、有機金属化合物をイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする[9]記載の化学気相成長装置。本発明の方法で生成されたMOイオンは、本来のMO化合物に水素一原子が付加もしくは脱離した1価の正イオンとなり、その分子量は本来のMO化合物のものより水素一原子分だけ増加または減少したものになる。
もしくは、生成されたMOイオンは、水素以外の特定の分子が本来のMO化合物に付加もしくは脱離した形となり、その分子量は本来のMOイオンのものより付加または脱離する特定分子の分子量だけ変化したものになる。
付加する分子種ならびにイオンの価数および符号はMO化合物の種類ならびに試薬ガスの種類による。よってMO化合物ならびに試薬ガスの選択により特定の質量範囲のMOイオンを効率よく生成することができる。その際、気体として安定な分子イオンを生成するようにMO化合物および試薬ガスを選定する。
このような方法により、質量選択で基板照射される全分子中のMOイオン濃度を上昇させ、電場または磁場によるMOイオンの加速減速を一様にすることができる。その結果、成膜効率の高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることができ、上記課題を解決することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の化学気相成長方法の実施の形態について図1を用いて説明する。
まず、メタン、イソブタン、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素など、水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも1種類を構成元素に持つ試薬ガスをイオン化する。このときの試薬ガスのイオン化方法は特に限定はないが、熱電子照射によるもの、プラズマによるものなどが好ましく用いられる。その条件は公知の方法が利用できるが、例えば熱電子照射の方法では、加熱されたフィラメントから発せられる熱電子をMO化合物ガスに照射し、MO化合物ガスをイオン化するものである。このときのチャンバー内の圧力は10−6torrから10torrの範囲である。
【0019】
次にイオン化された試薬ガスイオンをMO化合物ガスと混合する。このとき、試薬ガスイオンは特定のイオンを選択的に効率よくMO化合物ガスと混合させるために、電場による正負イオンの分離、電場または磁場によるイオン質量選択、またはその両方を行ってもよい。
【0020】
このときの試薬ガスの量はMO化合物ガスに対してモル比で同量または数倍程度導入してもよい。
【0021】
MO化合物としては金属のベータジケトン錯体、金属アルコキシドなどが考えられる。ベータジケトン錯体とは金属にベータジケトンが配位した有機金属化合物である。ベータジケトンとしては、ジピバロイルメタン(dpm)、アセチルアセトン(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)などがあげられる。金属アルコキシドは金属にアルコキシル基が結合したもので、金属にメトキシル基が結合した金属メトキシド、金属にイソプソポキシル基が結合した金属イソプロポキシドなどがあげられる。
【0022】
金属元素としては、Li,Na,K,Pb,Ca,Sr,Ba,Cu,Bi,Y,Sc,La等希土類金属元素、Ti,Zr,Hfなどが用いられる。
【0023】
本発明において用いる有機金属化合物(MO化合物)は、金属に1つ以上のベータージケトン錯体、特にジピバロイルメタン(dpm)が結合している金属dpm錯体、さらには金属アルコキシドである。この金属dpm錯体は、例えば、Mmを一価金属元素としてMm(dpm)で表されるもの、Diを二価金属元素としてDi(dpm)2で表されるもの、Trを三価金属元素としてTr(dpm)3で表されるもの、Ttを四価金属元素としてTt(dpm)4で表されるもの、および、Ttを四価金属元素、ORをアルコキシル基としてTt(dpm)2(OR)2で表されるものなどである。
【0024】
一価金属元素Mmとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等が挙げられる。二価金属元素Diとしては、鉛(Pb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、銅(Cu)等が挙げられる。三価金属元素Trとしては、ビスマス(Bi)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の希土類金属等が挙げられる。四価金属元素Ttとしては、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。アルコキシル基ORとしては、メトキシル基、イソプロポキシル基、エトキシル基、ターシャリーブトキシル基等が挙げられる。
【0025】
本発明において用いる有機金属化合物、具体的には、Pb(dpm)2、Ti(O−iC3H7)4、Li(dpm)、Ba(dpm)2、Y(dpm)3等が挙げられる。
【0026】
MO化合物は、所望の成膜速度が得られるのに必要な量のMO化合物を気化させるような温度に適宜設定すれば良いが、例えばTi(O−iC3H7)4の場合、30〜70℃に加熱することで蒸気圧を高くし、ガス化することができる。また、ヘリウム、ネオン及びアルゴンガスなどの不活性ガスを輸送ガスとして用いることで、ガス化したMO化合物をMOイオン化室2に導入してもよい。
【0027】
試薬ガスイオンはMO化合物ガスと混合され、試薬ガスイオンとMO化合物ガスが会合した際に、MO化合物に水素イオンが付加する、またはMO化合物から水素イオンが脱離する、またはMO化合物に特定の分子イオンが付加または脱離することにより、特定の質量範囲のMO化合物イオンが生成される。上記のいずれのイオン化反応が起こるかは試薬ガスおよびMO化合物ガスの組み合わせによる。組み合わせが決まれば主として起こるイオン化反応が決まる。
【0028】
MO化合物の水素イオン付加または脱離、または特定の分子イオンの付加により生成されるMOイオンは導入されたMO化合物同様、気体として安定である。また、MO化合物からの特定の分子イオンの脱離により生成されるMOイオンは、脱離分子イオンの分子量が大きくなく、MOイオンの分子量が本来のMO化合物に比べて大きく減少しなければ気体として安定である。そのため、MOイオンは固化または粉体化することなく、気体として基板上に供給することができる。
【0029】
試薬イオンおよび脱離分子イオンと混合状態であるMOイオンは、電場または磁場を用いた質量分離器5を通過させることにより選択される。
MOイオンは特定の質量範囲であるので、MOイオンのみを通過させるように質量分離器5を設定することで、試薬イオンや脱離分子イオンなど、基板上の膜形成に関与しないイオンを除去し、基板照射されるイオンビーム中のMOイオン濃度を高くすることができる。
【0030】
または、一般的に試薬イオンおよび脱離分子イオンはMOイオンと比較して分子量が小さいので、試薬イオンまたは脱離イオンの分子量以下の質量を通過させないように質量分離器を設定することでもMOイオンを選択することができる。試薬ガスはイオン化反応時に2分子が結合した形になることがあり、その2分子結合イオンの分子量をMOイオン以外のイオンの最大値と仮定して、それ以下のイオンを除去するように設定することでも、効率よくMOイオンを選択することができる。
【0031】
MOイオンを質量分離器5に導入する前に、電場または磁場により正負のイオンを予め分離してもよい。また、正負イオン分離されたイオンを加速するために、MOイオンを質量分離器に導入する前に電場または磁場によりイオンを予め加速する。また、質量分離器により選択されたMOイオンが所望の速度にて、MOイオンビームとして基板上に照射されるように、質量分離器5通過後に電場または磁場によるイオンの加速減速を行ってもよい。
【0032】
分離されたMOイオンは特定の質量範囲にあるため、電場または磁場によるイオンの加速減速により、速度分布が小さい、均質なMOイオンビームを形成することができる。
【0033】
これらの方法により濃度の高い均質なMOイオンビームを効率よく生成し、基板に照射することで、比較的低温度の基板加熱(例えば300〜500℃程度)で結晶性良好かつ不純物の少ない膜を形成することができる。
【0034】
本発明の化学気相成長装置の実施の形態について図1および図2を用いて説明する。
【0035】
メタン、イソブタン、アンモニア、一酸化炭素、一酸化窒素など、水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも1種類を構成元素に持つ試薬ガスを導入してイオン化し、試薬イオンを生成するための試薬ガスイオン化室1が設置される。試薬ガスイオン化室1でのイオン化方法は、任意のイオン化法でよく、熱電子放射やプラズマなどを用いてもよい。
【0036】
試薬ガスイオン化室1に接するように、試薬ガスイオンとMO化合物ガスを混合し、MOイオンを生成するためのMOイオン化室2が設置される。試薬ガスイオン化室1とMOイオン化室2が接する部分に正負イオンを分離するグリッドを配備してもよい。
【0037】
MOイオン化室2内壁はMOイオンと同符号の電位に保たれており、MOイオン出口にはMOイオンと同電位に保たれた選択グリッド3が配備される。またその先には選択グリッドを透過したイオンを加速するための、MOイオンと逆符号の電位に保たれた加速グリッド4が配備される。
【0038】
選択グリッド3、加速グリッド4の先に、電場または磁場でイオンの質量を分離する質量分離器5が配置される。適当な電場または磁場を設定することでイオンの質量分離を行い、所望の質量範囲のイオンを選択透過させることができる。
【0039】
質量分離器5の出口の先に、MOイオンを所望の速度に加速減速するための加速減速器6が設置され、その延長上に基板8を設置できるように成膜室7が配備される。
【0040】
複数のMO化合物ガスを用いて膜形成を行う場合、図2に示すように、それぞれのMO化合物に対して、1組以上のMOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6が設置されてもよい。それぞれのMOイオンは個別のMOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6により、それぞれのMOイオンに対して最適な条件で、イオン化、質量選択ならびに加速減速が行われる。このとき、試薬ガスイオン化室1はそれぞれのMOイオン化室2に対して個別に設置してもよいし、複数のMOイオン化室2に試薬イオンを供給するように設置してもよい。
【0041】
【実施例】
実施例1
次に本発明の第1の実施例について図1を用いて説明する。
試薬ガスとしてイソブタンを用い、試薬ガスイオン化室1にてフィラメントからの熱電子放出によりイソブタンをイオン化する。このときの以下に示すイオン化反応によりtert−C4H9 +イオンが生成される。
【0042】
iso−C4H10 → tert−C4H9 + + 1/2H2
MO化合物ガスとして鉛のジピバロイルメタネート(dpm)錯体であるPb(dpm)2を用いた。Pb(dpm)2は容器中で130℃に加熱され、昇華したPb(dpm)2ガスはアルゴンガスを輸送ガスとしてMOイオン化室2に導入する。この際の、アルゴンガスの流量は100sccmであった。
試薬ガスイオン化室1で生成された+1価のtert−C4H9 +イオンは、正の電位に保持したグリッドの細孔を通ってMOイオン化室2に導入導入される。(導入するtert−C4H9 +イオンの流量は100sccmであった。)
そこで試薬イオンであるtert−C4H9 +イオンとPb(dpm)2が混合され反応し、tert−C4H9 +イオンからH+イオンがPb(dpm)2に移り、Pb(dpm)2H+イオンが生成される。このイオンは本来のMO化合物分子同様、気体として安定であるので、イオン化反応による固化や粉体化がなく、効率よくイオン流を生成することができる。
【0043】
Pb(dpm)2は分子式PbC22H38O4で書き表される。それぞれの元素の平均的質量数は、Pbが207、Cが12、Hが1、Oが16であるので、Pb(dpm)2の平均の分子量は573である。それぞれの元素の自然に存在する同位体の質量数範囲は、Pbで204から208、Cは12から13、Hが1から2、Oが16から18である。これらの値から、Pb(dpm)2の取りうる分子量の最大値は642、最小値は570となる。H+イオンの付加により、Pb(dpm)2がイオン化されると、その平均分子量は574、最大分子量は644、最小分子量は571となる。
しかしながら、13Cの存在比は1%程度であり、2H、17O,18Oの存在比は1%以下であるので、実際のPb(dpm)2H+の分子量分布は図3にしめすように、平均分子量から±10の範囲でほぼ網羅される。よって質量分離器5により、平均分子量±10の範囲のみ選択し、成膜室に導入して、基板に照射すればよい。
本実施例で用いる質量分離器5は、磁場による荷電粒子の運動により質量分離を行うものである。質量分析装置に用いられている質量分離器5と比較して分解能を低くしているため、設定された質量/価数(m/z)の±2%程度の範囲はほとんどすべて選択される。つまりm/zを500と設定した場合、m/zが490から510の範囲の粒子が選択される。質量分離器は四重極型など、電場または飛行時間により質量分離を行うものを用いてもよい。
このように選択されたPb(dpm)2H+イオンは加速減速器6によりさらに加速され、イオンビームが形成される。このイオンビームを、加速エネルギー100エレクトロンボルトで、基板8に照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化鉛膜を得ることができる。
【0044】
実施例2
次に本発明の第2の実施例について図1を用いて説明する。
上記第一の実施例と同様の装置において、試薬ガスとしてメタン(CH4)を用い、MO化合物としてチタンのアルコキシドの一種であるチタンイソプロポキシド(Ti(O−i−C3H7)4)を用いた。
流量100sccmのCH4は試薬ガスイオン化室1でフィラメントからの熱電子照射によりイオン化され、以下の反応によりCH5 +イオン、およびC2H5 +イオンが生成される。
【0045】
CH4 → CH4 +*, CH3 +*, CH2 +*
CH4 +* + CH4 → CH 5 + + CH3 +*
CH3 +* + CH4 → C 2 H 5 + + H2
チタンイソプロポキシドは50℃で保温容器中に保持され、容器中で蒸発したチタンイソプロポキシドガスは流量100sccmのアルゴン輸送ガスによりMOイオン化室2に導入される。
【0046】
試薬ガスイオン化室1で生成された試薬イオンである+1価のCH5 +イオンおよびC2H5 +イオンは、正の電位に保持したグリッドの細孔を通ってMOイオン化室2に導入導入される。そこで試薬イオンとチタンイソプロポキシドが混合され反応し、チタンイソプロポキシドにH+が一つ付加したTi(O−i−C3H7)4H+、Hが一つ脱離したTi(O−i−C3H7)3(OC3H6)+、およびTi−O結合が切れて(O−iーC3H7)が一つ脱離したTi(O−iーC3H7)3 +イオンが生成される。これらのイオンは本来のMO化合物分子同様、気体として安定であるので、イオン化反応による固化や粉体化がなく、効率よくイオン流を生成することができる。
Ti(O−i−C3H7)4H+イオンの平均分子量はチタンイソプロポキシド本来の平均分子量より1だけ大きく285、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+は本来の平均分子量より1だけ小さく283、Ti(O−iーC3H7)3 +は本来の平均分子量より59だけ小さく225である。
【0047】
質量分離器5にてこの3種のイオンを効率よく選択するよう設定する。上記3種のイオンの分子量の±10%範囲はそれぞれ、257から314、255から311、および203から248である。この範囲をすべて包含するように203から314までの質量分離器5の質量範囲を設定する。このような比較的広い質量範囲の設定には磁場に分布を持たせる、または質量分布により発散したイオンを特定の範囲で再収束させる方法が用いられる。またはパルス的に生成されるイオンに対して、飛行時間により質量範囲を選択する方法を用いてもよい。
【0048】
このように選択されたTi(O−i−C3H7)4H+、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+およびTi(O−iーC3H7)3 +イオンは加速減速器6によりさらに加速され、イオンビームが形成される。このイオンビームを加速エネルギー100エレクトロンボルトで基板8に照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化チタン膜を得ることができる。
【0049】
実施例3
次に本発明の第3の実施例について図4を用いて説明する。
上記実施例2において、質量分離器5にてTi(O−i−C3H7)4H+、Ti(O−i−C3H7)3(OC3H6)+およびTi(O−iーC3H7)3 +イオンを効率よく選択するために、試薬イオンを除去することでMOイオンを選択するように設定する。
【0050】
試薬ガスであるCH4の平均分子量は16である。試薬ガスのイオン化により生成されたCH5 +およびC2H5 +イオンの平均分子量はそれぞれ17および29である。この他に平均分子量31のC2H7 +イオンも生成されているため、分子量31以下のイオンを除去するように設定する。目安として本来の試薬ガスの平均分子量の2倍以下のイオンを除去するように設定すればよい。
【0051】
イオン分離の方法として、本実施例ではイオン飛行時間による分離を用いている。MOイオンが生成され、加速グリッド4においてイオンが加速電圧により加速される。この加速電圧印加をパルス的に行う。パルス電圧により加速されたイオンはその質量により速度が異なるため、必要なイオンが到達する時刻にのみ、質量分離器5出口または加速減速器6出口もしくは基板8前方に設置されたシャッター10を開き、不必要なイオンの到達時刻にはシャッター10を閉じるように、加速電圧パルスと同期させたシャッター操作を行うように設定する。
【0052】
この方法により、分子量32以下のイオンを除去し、それ以上の分子量のイオンのみを基板8に加速エネルギー100エレクトロンボルトで照射し、他方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)酸化チタン膜を得ることができる。
【0053】
実施例4
次に本発明の第4の実施例について図2を用いて説明する。
図2に示すように、成膜装置には2組の試薬ガスイオン化室1、MOイオン化室2、選択グリッド3、加速グリッド4、質量分離器5、加速減速器6が設置されている。第1の試薬ガスイオン化室1には流量100sccmのイソブタンが導入されイオン化され、第1のMOイオン化室2には流量100sccmのアルゴン輸送ガスによって輸送されるPb(dpm)2が導入されイオン化される。第1のMOイオン化室2で生成されたMOイオンは第1の質量分離器5により、Pb(dpm)2の平均分子量573に対して±10の範囲で質量分離を行い、加速されて基板8に照射される。第2の試薬ガスイオン化室21にはメタンが導入されイオン化され、第2MOイオン化室22にはチタンイソプロポキシドが導入されイオン化される。第2のMOイオン化室22で生成されたMOイオンは第2の質量分離器25により、203から314の範囲で質量分離を行い、加速されて基板8に照射される。2種類のイオンビームを同時にそれぞれ加速エネルギー100エレクトロンボルトで基板8上に照射し、一方で成膜室7内に流量100sccmの酸素を導入することにより、比較的低温度の基板加熱(400℃)で、結晶性良好であり、かつ不純物の少ない(不純物含有量1%以下)チタン酸鉛膜を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明により、MO化合物ガスをイオン化し基板照射することで目的の膜を堆積させる化学気相成長方法および装置において、MO化合物供給量に対する膜堆積効率が高い、比較的低温の基板加熱温度で結晶性良好な、不純物の少ない膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【図3】Pb(dpm)2の分子量の分布を示す図である。
【図4】本発明の化学気相成長方法および装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 試薬ガスイオン化室
2 MOイオン化室
3 選択グリッド
4 加速グリッド
5 質量分離器
6 イオン加速減速器
7 成膜室
8 基板
9 ヒーター
10 シャッター
11 排気系
21 試薬ガスイオン化室
22 MOイオン化室
23 選択グリッド
24 加速グリッド
25 質量分離器
26 加速減速器
Claims (10)
- 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化し、イオン化した前記試薬ガスを原料となる有機金属化合物ガスと混合することで前記有機金属化合物ガスをイオン化し、磁場または電場を用いた質量分離により、高濃度の有機金属イオン流を基板に照射することで目的の膜を基板上に形成する化学気相成長方法。
- 前記試薬ガスがメタン、イソブタン、アンモニアのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の化学気相成長方法
- 前記イオン化した試薬ガスとの混合により、前記有機金属化合物ガスを本来の分子にH+がひとつ付加した形の+1価イオンに変化させる、または有機金属化合物ガスを本来の分子からH+がひとつ脱離した形の+1価イオンに変化させる、またはその両方の変化を生じさせることを特徴とする請求項1乃至2記載の化学気相成長方法。
- 前記原料となる有機金属化合物が金属のベータジケトン錯体であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の化学気相成長方法。
- 前記原料となる有機金属化合物がジピバロイルメタンをその構成分子に含むことを特徴とする請求項4記載の化学気相成長方法。
- 前記原料となる有機金属化合物が金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の化学気相成長方法。
- 生成される有機金属化合物イオンの平均的な分子量をMとしたとき、基板に照射される前記有機金属イオンの質量選択が、0.95Mから1.05Mの範囲内で行われることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の化学気相成長方法。
- 前記試薬ガスの平均的な分子量をRとしたとき、基板に照射される有機金属イオンの質量選択が、2R以上の範囲内で行われることを特徴とする請求項1乃至6の何れか記載の化学気相成長方法。
- 水素、炭素、窒素、酸素のうち少なくとも一種を構成元素に含む試薬ガスをイオン化する手段と、イオン化した試薬ガスと目的の膜の原料となる有機金属化合物ガスと混合することで有機金属化合物ガスをイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする化学気相成長装置。
- 複数の有機金属化合物に対して、それぞれ1組以上の、有機金属化合物をイオン化する手段と、磁場または電場または飛行時間によりイオンを質量により分離選択する手段と、有機金属イオンを加速または減速またはその両方を行い基板に照射する手段を有することを特徴とする請求項9記載の化学気相成長装置。
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