JP2004018895A - 薄膜製造装置、薄膜の製造方法および薄膜蒸着シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】密着性や膜質の優れた薄膜を安定して基材の表面に形成する装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段、プラズマ生成手段、および前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を少なくとも一つずつ備え、さらに前記プラズマと前記材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えた薄膜製造装置。
【選択図】 図1
【解決手段】内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段、プラズマ生成手段、および前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を少なくとも一つずつ備え、さらに前記プラズマと前記材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えた薄膜製造装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜製造装置、および薄膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜形成プロセスにおいて、イオン化した材料粒子を電界を用いて基材表面に加速し、密着性や膜質を改善する技術が、イオンプレーティング(例えば、特開平6−116719号公報)という名称で広く知られている。そして、イオン化した材料粒子を基材表面に加速する方法としては、(1)基材に電圧を印加する方法、(2)基材の背後に電圧を印加した電極を配置する方法、および(3)基材と材料供給部との間に電圧を印加したメッシュ状のグリッド電極を配置する方法などが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法においては、それぞれ下記のような課題があった。まず、前記(1)の方法では、導電性材料への成膜に適用が限られる。また、前記(2)の方法では、立体的な形状の基材への成膜に適用することが困難になる。また、前記(1)および(2)の方法共に、基材を導電性の部材で保持する場合はこれを装置筐体と電気的に絶縁する必要が有り、保持機構に回転、冷却および加熱などの機構を付加することを困難とする。さらに、前記(3)の方法では、グリッド電極に材料が付着し、目詰まりをおこすため、工業的な長時間の成膜に適用することが極めて困難である。
【0004】
そこで、基材の導電性および保持方法に制約されずに、イオン化した材料粒子を基材表面に加速する方法を実現するために、生成されたプラズマの電位を制御しながら成膜を行う方法および装置が特開2000−290771号公報で開示された。しかしながら、この方法および装置を用いて薄膜の形成を行うと、膜の膜厚、密着力のバラツキが生じるという問題があった。これは特に、基材を搬送しながら連続的に薄膜を形成する場合において顕著となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上述した問題点を解決するもので、密着性や膜質の優れた薄膜を安定して基材の表面に形成する装置および方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特開2000−290771号公報に記載の方法および装置の問題点について鋭意検討した結果、プラズマの電位がある値以上になると、プラズマと材料供給手段との間の電位差が大きくなり、プラズマのエネルギーが材料に流入して、材料供給量が不安定となることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段、プラズマ生成手段、および前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を少なくとも一つずつ備え、さらに前記プラズマと前記材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えた薄膜製造装置である。
【0008】
また本発明は、上記の薄膜製造装置を用いて、材料供給手段と基材保持手段との間の空間でプラズマを生成し、前記プラズマの電位をプラズマ電位制御手段を用いて所望の値になるように制御し、かつ前記プラズマ電位と材料保持具の表面との電位差の測定値が、所望の値になるように材料保持具の表面の電位を手動あるいは自動で制御して薄膜を形成する薄膜の製造方法である。
【0009】
また本発明は、上記の薄膜の製造方法により電気絶縁性シートに薄膜を蒸着させる行程を含む、薄膜蒸着シートの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の薄膜製造装置は、内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段およびプラズマ生成手段を少なくとも一つずつ備える。
【0011】
材料供給手段とは薄膜の材料を加熱あるいはスパッタすることにより基材方向へ輸送するものであり一般的に蒸着源またはスパッタ源と呼ばれるものである。材料の供給量の制御は一般的には蒸着源またはスパッタ源への電力供給量で行うことができる。薄膜の材料が、材料供給手段から加熱またはスパッタされ、プラズマ生成手段によりイオン化して、基材保持手段により保持される基材に高エネルギーの状態で蒸着する。
【0012】
また本発明の薄膜製造装置は、前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を備える。基材に電圧を印加する等でなく、プラズマの電位そのものを制御することにより、基材の材質や形態に制約されることなく、プラズマによる薄膜の形成が可能となる。
【0013】
本発明の薄膜製造装置はさらに、プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えることが重要である。そうすることで、プラズマの電位を大きくした場合でも、プラズマと材料供給手段との間の電位差をプラズマのエネルギーが材料に流入しない範囲内で制御できるため、材料供給量を安定にすることができ、ひいては安定した薄膜の形成が可能となる。プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段としては、例えばシングルプロープ法に基づく材料保持具の表面を基準電位とした測定系を採用することができる。
【0014】
また本発明の薄膜製造装置は、材料保持具の表面の電位を制御する手段を備えることが好ましい。材料保持具の表面の電位を制御する手段としては、例えば材料保持具の表面とアースとの間に接続された電圧可変直流電源を採用することができる。
【0015】
また本発明の薄膜製造装置は、プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を材料保持具の表面の電位を制御する手段にフィードバックする制御装置を備えることが好ましい。そうすることで、プラズマのエネルギーが材料に流入して材料供給量が不安定になることを気にすることなく、所望の密着性等を得るべくプラズマの電位の制御をすることが可能となる。
【0016】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が連続シートの搬送機構を備えていることが好ましい。連続シート体の搬送機構の例としては、巻き取り機構が挙げられる。連続シート体の搬送機構に往復機構を備えると多層膜などの成膜が容易となり、より好ましい。
【0017】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が接地されていることが好ましい。そうすることで、保持機構に回転、冷却および加熱などの機構を付加することが容易となる。基材保持手段が接地されている形態としては、内部を減圧可能な容器が接地されている場合に、その容器に基材保持手段を電気的に接触させる形態が、構造上単純でメンテナンスも容易であり好ましい。
【0018】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が基材を冷却する機構を備えていることが好ましい。基材を冷却する機構を備えることで、基材として例えば高分子フィルムのような高温下で変形、変質するようなものに対しても、変形、変質を防いで安定して表面に薄膜を形成することができる。基材を冷却する機構としては、例えば冷却キャンを採用することができる。
【0019】
次に、本発明の薄膜の製造方法は、本発明の薄膜製造装置を用いて、材料供給手段と基材保持手段との間の空間でプラズマを生成し、前記プラズマの電位をプラズマ電位制御手段を用いて所望の値になるように制御し、かつ前記プラズマ電位と材料保持具の表面との電位差の測定値が、所望の値になるように材料保持具の表面の電位を手動あるいは自動で制御して薄膜を形成する。プラズマと材料保持具の表面との間の電位差をもって制御することにより、プラズマの電位を大きくした場合でも、プラズマのエネルギーが材料に流入するのを防ぐことができるため、材料供給量を安定にすることができ、ひいては安定した薄膜の形成が可能となる。
【0020】
また、本発明の薄膜の製造方法は、材料の供給量、生成されるプラズマの電位を各々独立に所望の値になるように制御しながら薄膜を形成することが好ましい。これにより、形成する薄膜において所望の密着力、膜質、および膜厚を得るためにプラズマ電位と材料の供給量を制約なく独立に設定・変更することができる。ここで材料の供給量とは、材料供給手段からの材料の蒸発量またはスパッタ量である。
【0021】
また、本発明の薄膜の製造方法は、連続シートを搬送しながら薄膜を形成することが好ましい。そうすることにより、基材が連続的に供給されることから、大面積の薄膜を効率的に形成することが可能となる。
【0022】
また、本発明の薄膜の製造方法は、薄膜を形成する基材が電気絶縁性シートであることが好ましい。電気絶縁性シートとしては、表面のシート抵抗が10−8Ω/□以上のものが好ましく、酸化物や高分子などの材料から成り、特に導電性を付与する工夫をしていないものが好ましい。シートの形状や大きさには特に制約はなく、板または帯でも良い。
【0023】
また、本発明の薄膜の製造方法は、電気絶縁性シートとして、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、またはこれらのいずれかを含む積層体もしくはポリマーアロイを用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明の薄膜の製造方法は、薄膜の材料として、第1イオン化エネルギーが11.3eV以下である元素を含むものを用いることが好ましい。そうすることで材料のイオン化が容易になり、安定してプラズマ生成およびプラズマ電位制御ができる。例えばアルミニウムがこれに該当する。
【0025】
以下に、本発明の望ましい実施の形態の一例を図を用いて説明する。ただし、本発明の実施の形態は図に示す態様のみに限定りされるものではない。
【0026】
図1に、本発明を用いた薄膜製造装置で連続シート体を基材としてその表面に薄膜を形成している様子の概略を示す。排気機構5により減圧可能な真空容器1内に装着された連続シート体のロール2は張力と速度を制御されて巻き取りローラー20に巻き取られている。基材の保持はキャン19とガイドローラー21の組み合わせで行い、キャン19は連続入れ替えが可能な冷媒18によって冷却され、アース9に接続されている。
【0027】
真空容器1内には、電子銃10および材料保持具11を備える材料供給部12、プラズマ7を生成するためのプラズマ生成用電極6、およびプラズマ7の電位を制御するためのプラズマ電位制御用電極4、さらにプラズマと材料保持具表面との間の電位差を測定するためのプローブ8が配置されている。プローブは材料保持具を基準電位としたプラズマ電位測定器16に接続されている。プラズマ生成用電極6およびプラズマ電位制御用電極4は、各々プラズマ生成用電源17およびプラズマ電位制御用電源15に接続されている。また、搬送機構22の直下には材料蒸気23の進路を遮ることができる開閉可能なシャッター3が備えられている。
【0028】
プラズマ生成用電極6とプラズマ電位制御用電極4はともに冷却水を内部に通すなどして冷却を行う方がプラズマ発生時に高温となる場合に、安定してプラズマ生成およびプラズマ電位制御ができるのでよい。
【0029】
材料保持具11の表面とアース11との間には電圧可変直流電源13が接続されており、電圧可変直流電源13とプラズマ電位測定器16との間には検出した電位差が所望の値になるように電圧可変直流電源からの出力電圧を制御する制御装置14が接続されている。
【0030】
図1のような薄膜製造装置を用いると、生成されるプラズマの電位を所望の値に制御しながら、材料供給量を不安定にすることなく独立に所望の値に制御することが可能になり、密着性や膜質の優れた薄膜を安定して基材の表面に形成できる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本説明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
(測定方法)
(1)膜厚のばらつき
形成したアルミニウム膜に対して、その膜厚を光学濃度法で10カ所測定した。測定位置は、蒸着開始点を0mとして、50mから100mおきに幅方向の中央部とした。光学濃度から膜厚を導出する際、吸収係数は20とおいた。
【0033】
(2)密着力
膜厚を測定したのと同じ10カ所について、JIS6472で定められている引き剥がし試験により薄膜と基材との界面の密着力を測定した。
【0034】
(実施例1)
図1に示した基本構造の装置を用いて薄膜の形成を行った。基材は厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、材料は純度99.99%のアルミニウムとした。薄膜形成開始までの手順は以下のとおりである。まず、真空容器1内を排気した後、シャッター3を閉じた状態で電子銃10を作動して材料を蒸発させた。その後、プラズマ生成用電源17として最大出力10kWのRF電源を投入電力5kWで作動してプラズマ7を発生させて、さらにプラズマ電位制御用電源15を電圧10Vの条件で作動させた後にシャッター3を開けて薄膜の形成を開始した。プラズマ生成用電極6とプラズマ電位制御用電極4は、φ1cmの銅製のパイプとし薄膜形成時にパイプ内に冷却水を流して該電極を冷却した。フィルムの搬送については、シャッター3が開くときに、搬送速度が350m/分になるようにした。また、膜形成中にプローブ8、電圧可変直流電源13、および制御装置14を用いて、プラズマ7と材料保持具11の表面との間の電位差が5V以内になるようにした。アルミニウム膜の目標厚みは30nmとした。
【0035】
アルミニウム膜の膜厚の標準偏差を求めたところ、表1のように標準偏差は0.151と均一な値であった。また密着力は平均241.9N/mだった。
【0036】
【表1】
【0037】
(比較例1)
図1の装置態様において、プローブ、電圧可変直流電源、プラズマ電位測定器および制御装置を接続をせず、材料保持具11を真空容器を介してアースに接続する他は実施例1と同様にして薄膜を形成した。
【0038】
形成したアルミニウム膜に対して膜厚の標準偏差およびアルミニウム膜とフィルムとの界面の密着力を測定したところ、表2のように測定位置1,4,7,10において、膜厚が大きな値をとり、膜厚の標準偏差は0.375であった。また密着力も測定位置1,4,7,10においては他の測定位置より小さい値となった。密着力の平均は199.3N/mであった。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明により、膜厚が均一で基材との界面の密着が強い薄膜を安定して基材表面に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜製造装置および薄膜の製造方法の一例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
1:真空容器
2:連続シート体のロール
3:シャッター
4:プラズマ電位制御用電極
5:排気機構
6:プラズマ生成用電極
7:プラズマ
8:プローブ
9:アース
10:電子銃
11:材料保持具
12:材料供給部
13:電圧可変直流電源
14:制御装置
15:プラズマ電位制御用電源
16:プラズマ電位測定器
17:プラズマ生成用電源
18:冷媒
19:キャン
20:巻き取りローラー
21:ガイドローラー
22:連続シート体の搬送機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜製造装置、および薄膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜形成プロセスにおいて、イオン化した材料粒子を電界を用いて基材表面に加速し、密着性や膜質を改善する技術が、イオンプレーティング(例えば、特開平6−116719号公報)という名称で広く知られている。そして、イオン化した材料粒子を基材表面に加速する方法としては、(1)基材に電圧を印加する方法、(2)基材の背後に電圧を印加した電極を配置する方法、および(3)基材と材料供給部との間に電圧を印加したメッシュ状のグリッド電極を配置する方法などが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの方法においては、それぞれ下記のような課題があった。まず、前記(1)の方法では、導電性材料への成膜に適用が限られる。また、前記(2)の方法では、立体的な形状の基材への成膜に適用することが困難になる。また、前記(1)および(2)の方法共に、基材を導電性の部材で保持する場合はこれを装置筐体と電気的に絶縁する必要が有り、保持機構に回転、冷却および加熱などの機構を付加することを困難とする。さらに、前記(3)の方法では、グリッド電極に材料が付着し、目詰まりをおこすため、工業的な長時間の成膜に適用することが極めて困難である。
【0004】
そこで、基材の導電性および保持方法に制約されずに、イオン化した材料粒子を基材表面に加速する方法を実現するために、生成されたプラズマの電位を制御しながら成膜を行う方法および装置が特開2000−290771号公報で開示された。しかしながら、この方法および装置を用いて薄膜の形成を行うと、膜の膜厚、密着力のバラツキが生じるという問題があった。これは特に、基材を搬送しながら連続的に薄膜を形成する場合において顕著となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上述した問題点を解決するもので、密着性や膜質の優れた薄膜を安定して基材の表面に形成する装置および方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特開2000−290771号公報に記載の方法および装置の問題点について鋭意検討した結果、プラズマの電位がある値以上になると、プラズマと材料供給手段との間の電位差が大きくなり、プラズマのエネルギーが材料に流入して、材料供給量が不安定となることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段、プラズマ生成手段、および前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を少なくとも一つずつ備え、さらに前記プラズマと前記材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えた薄膜製造装置である。
【0008】
また本発明は、上記の薄膜製造装置を用いて、材料供給手段と基材保持手段との間の空間でプラズマを生成し、前記プラズマの電位をプラズマ電位制御手段を用いて所望の値になるように制御し、かつ前記プラズマ電位と材料保持具の表面との電位差の測定値が、所望の値になるように材料保持具の表面の電位を手動あるいは自動で制御して薄膜を形成する薄膜の製造方法である。
【0009】
また本発明は、上記の薄膜の製造方法により電気絶縁性シートに薄膜を蒸着させる行程を含む、薄膜蒸着シートの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の薄膜製造装置は、内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段およびプラズマ生成手段を少なくとも一つずつ備える。
【0011】
材料供給手段とは薄膜の材料を加熱あるいはスパッタすることにより基材方向へ輸送するものであり一般的に蒸着源またはスパッタ源と呼ばれるものである。材料の供給量の制御は一般的には蒸着源またはスパッタ源への電力供給量で行うことができる。薄膜の材料が、材料供給手段から加熱またはスパッタされ、プラズマ生成手段によりイオン化して、基材保持手段により保持される基材に高エネルギーの状態で蒸着する。
【0012】
また本発明の薄膜製造装置は、前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を備える。基材に電圧を印加する等でなく、プラズマの電位そのものを制御することにより、基材の材質や形態に制約されることなく、プラズマによる薄膜の形成が可能となる。
【0013】
本発明の薄膜製造装置はさらに、プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えることが重要である。そうすることで、プラズマの電位を大きくした場合でも、プラズマと材料供給手段との間の電位差をプラズマのエネルギーが材料に流入しない範囲内で制御できるため、材料供給量を安定にすることができ、ひいては安定した薄膜の形成が可能となる。プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段としては、例えばシングルプロープ法に基づく材料保持具の表面を基準電位とした測定系を採用することができる。
【0014】
また本発明の薄膜製造装置は、材料保持具の表面の電位を制御する手段を備えることが好ましい。材料保持具の表面の電位を制御する手段としては、例えば材料保持具の表面とアースとの間に接続された電圧可変直流電源を採用することができる。
【0015】
また本発明の薄膜製造装置は、プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を材料保持具の表面の電位を制御する手段にフィードバックする制御装置を備えることが好ましい。そうすることで、プラズマのエネルギーが材料に流入して材料供給量が不安定になることを気にすることなく、所望の密着性等を得るべくプラズマの電位の制御をすることが可能となる。
【0016】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が連続シートの搬送機構を備えていることが好ましい。連続シート体の搬送機構の例としては、巻き取り機構が挙げられる。連続シート体の搬送機構に往復機構を備えると多層膜などの成膜が容易となり、より好ましい。
【0017】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が接地されていることが好ましい。そうすることで、保持機構に回転、冷却および加熱などの機構を付加することが容易となる。基材保持手段が接地されている形態としては、内部を減圧可能な容器が接地されている場合に、その容器に基材保持手段を電気的に接触させる形態が、構造上単純でメンテナンスも容易であり好ましい。
【0018】
また本発明の薄膜製造装置は、基材保持手段が基材を冷却する機構を備えていることが好ましい。基材を冷却する機構を備えることで、基材として例えば高分子フィルムのような高温下で変形、変質するようなものに対しても、変形、変質を防いで安定して表面に薄膜を形成することができる。基材を冷却する機構としては、例えば冷却キャンを採用することができる。
【0019】
次に、本発明の薄膜の製造方法は、本発明の薄膜製造装置を用いて、材料供給手段と基材保持手段との間の空間でプラズマを生成し、前記プラズマの電位をプラズマ電位制御手段を用いて所望の値になるように制御し、かつ前記プラズマ電位と材料保持具の表面との電位差の測定値が、所望の値になるように材料保持具の表面の電位を手動あるいは自動で制御して薄膜を形成する。プラズマと材料保持具の表面との間の電位差をもって制御することにより、プラズマの電位を大きくした場合でも、プラズマのエネルギーが材料に流入するのを防ぐことができるため、材料供給量を安定にすることができ、ひいては安定した薄膜の形成が可能となる。
【0020】
また、本発明の薄膜の製造方法は、材料の供給量、生成されるプラズマの電位を各々独立に所望の値になるように制御しながら薄膜を形成することが好ましい。これにより、形成する薄膜において所望の密着力、膜質、および膜厚を得るためにプラズマ電位と材料の供給量を制約なく独立に設定・変更することができる。ここで材料の供給量とは、材料供給手段からの材料の蒸発量またはスパッタ量である。
【0021】
また、本発明の薄膜の製造方法は、連続シートを搬送しながら薄膜を形成することが好ましい。そうすることにより、基材が連続的に供給されることから、大面積の薄膜を効率的に形成することが可能となる。
【0022】
また、本発明の薄膜の製造方法は、薄膜を形成する基材が電気絶縁性シートであることが好ましい。電気絶縁性シートとしては、表面のシート抵抗が10−8Ω/□以上のものが好ましく、酸化物や高分子などの材料から成り、特に導電性を付与する工夫をしていないものが好ましい。シートの形状や大きさには特に制約はなく、板または帯でも良い。
【0023】
また、本発明の薄膜の製造方法は、電気絶縁性シートとして、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、またはこれらのいずれかを含む積層体もしくはポリマーアロイを用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明の薄膜の製造方法は、薄膜の材料として、第1イオン化エネルギーが11.3eV以下である元素を含むものを用いることが好ましい。そうすることで材料のイオン化が容易になり、安定してプラズマ生成およびプラズマ電位制御ができる。例えばアルミニウムがこれに該当する。
【0025】
以下に、本発明の望ましい実施の形態の一例を図を用いて説明する。ただし、本発明の実施の形態は図に示す態様のみに限定りされるものではない。
【0026】
図1に、本発明を用いた薄膜製造装置で連続シート体を基材としてその表面に薄膜を形成している様子の概略を示す。排気機構5により減圧可能な真空容器1内に装着された連続シート体のロール2は張力と速度を制御されて巻き取りローラー20に巻き取られている。基材の保持はキャン19とガイドローラー21の組み合わせで行い、キャン19は連続入れ替えが可能な冷媒18によって冷却され、アース9に接続されている。
【0027】
真空容器1内には、電子銃10および材料保持具11を備える材料供給部12、プラズマ7を生成するためのプラズマ生成用電極6、およびプラズマ7の電位を制御するためのプラズマ電位制御用電極4、さらにプラズマと材料保持具表面との間の電位差を測定するためのプローブ8が配置されている。プローブは材料保持具を基準電位としたプラズマ電位測定器16に接続されている。プラズマ生成用電極6およびプラズマ電位制御用電極4は、各々プラズマ生成用電源17およびプラズマ電位制御用電源15に接続されている。また、搬送機構22の直下には材料蒸気23の進路を遮ることができる開閉可能なシャッター3が備えられている。
【0028】
プラズマ生成用電極6とプラズマ電位制御用電極4はともに冷却水を内部に通すなどして冷却を行う方がプラズマ発生時に高温となる場合に、安定してプラズマ生成およびプラズマ電位制御ができるのでよい。
【0029】
材料保持具11の表面とアース11との間には電圧可変直流電源13が接続されており、電圧可変直流電源13とプラズマ電位測定器16との間には検出した電位差が所望の値になるように電圧可変直流電源からの出力電圧を制御する制御装置14が接続されている。
【0030】
図1のような薄膜製造装置を用いると、生成されるプラズマの電位を所望の値に制御しながら、材料供給量を不安定にすることなく独立に所望の値に制御することが可能になり、密着性や膜質の優れた薄膜を安定して基材の表面に形成できる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本説明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0032】
(測定方法)
(1)膜厚のばらつき
形成したアルミニウム膜に対して、その膜厚を光学濃度法で10カ所測定した。測定位置は、蒸着開始点を0mとして、50mから100mおきに幅方向の中央部とした。光学濃度から膜厚を導出する際、吸収係数は20とおいた。
【0033】
(2)密着力
膜厚を測定したのと同じ10カ所について、JIS6472で定められている引き剥がし試験により薄膜と基材との界面の密着力を測定した。
【0034】
(実施例1)
図1に示した基本構造の装置を用いて薄膜の形成を行った。基材は厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、材料は純度99.99%のアルミニウムとした。薄膜形成開始までの手順は以下のとおりである。まず、真空容器1内を排気した後、シャッター3を閉じた状態で電子銃10を作動して材料を蒸発させた。その後、プラズマ生成用電源17として最大出力10kWのRF電源を投入電力5kWで作動してプラズマ7を発生させて、さらにプラズマ電位制御用電源15を電圧10Vの条件で作動させた後にシャッター3を開けて薄膜の形成を開始した。プラズマ生成用電極6とプラズマ電位制御用電極4は、φ1cmの銅製のパイプとし薄膜形成時にパイプ内に冷却水を流して該電極を冷却した。フィルムの搬送については、シャッター3が開くときに、搬送速度が350m/分になるようにした。また、膜形成中にプローブ8、電圧可変直流電源13、および制御装置14を用いて、プラズマ7と材料保持具11の表面との間の電位差が5V以内になるようにした。アルミニウム膜の目標厚みは30nmとした。
【0035】
アルミニウム膜の膜厚の標準偏差を求めたところ、表1のように標準偏差は0.151と均一な値であった。また密着力は平均241.9N/mだった。
【0036】
【表1】
【0037】
(比較例1)
図1の装置態様において、プローブ、電圧可変直流電源、プラズマ電位測定器および制御装置を接続をせず、材料保持具11を真空容器を介してアースに接続する他は実施例1と同様にして薄膜を形成した。
【0038】
形成したアルミニウム膜に対して膜厚の標準偏差およびアルミニウム膜とフィルムとの界面の密着力を測定したところ、表2のように測定位置1,4,7,10において、膜厚が大きな値をとり、膜厚の標準偏差は0.375であった。また密着力も測定位置1,4,7,10においては他の測定位置より小さい値となった。密着力の平均は199.3N/mであった。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】
本発明により、膜厚が均一で基材との界面の密着が強い薄膜を安定して基材表面に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜製造装置および薄膜の製造方法の一例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
1:真空容器
2:連続シート体のロール
3:シャッター
4:プラズマ電位制御用電極
5:排気機構
6:プラズマ生成用電極
7:プラズマ
8:プローブ
9:アース
10:電子銃
11:材料保持具
12:材料供給部
13:電圧可変直流電源
14:制御装置
15:プラズマ電位制御用電源
16:プラズマ電位測定器
17:プラズマ生成用電源
18:冷媒
19:キャン
20:巻き取りローラー
21:ガイドローラー
22:連続シート体の搬送機構
Claims (13)
- 内部を減圧可能な容器内に、材料保持具を有する材料供給手段、基材保持手段、プラズマ生成手段、および前記プラズマ生成手段で生成されたプラズマの電位を制御する手段を少なくとも一つずつ備え、さらに前記プラズマと前記材料保持具の表面との間の電位差を測定する手段を備えた薄膜製造装置。
- 材料保持具の表面の電位を制御する手段を備た請求項1に記載の薄膜製造装置。
- プラズマと材料保持具の表面との間の電位差を材料保持具の表面の電位を制御する手段にフィードバックする制御装置を備えた請求項2に記載の薄膜製造装置。
- 基材保持手段が連続シートの搬送機構を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜製造装置。
- 基材保持手段が接地されている請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜製造装置。
- 基材保持手段が基材を冷却する機構を備えている請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜製造装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜製造装置を用いて、材料供給手段と基材保持手段との間の空間でプラズマを生成し、前記プラズマの電位をプラズマ電位制御手段を用いて所望の値になるように制御し、かつ前記プラズマ電位と材料保持具の表面との電位差の測定値が、所望の値になるように材料保持具の表面の電位を手動あるいは自動で制御して薄膜を形成する薄膜の製造方法。
- 材料の供給量と生成されるプラズマの電位とを各々独立に所望の値になるように制御しながら薄膜を形成する請求項7に記載の薄膜の製造方法。
- 連続シートを搬送しながら薄膜を形成する請求項7または8に記載の薄膜の製造方法。
- 薄膜を形成する基材が電気絶縁性シートである請求項7〜9のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
- 電気絶縁性シートとして、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、またはこれらのいずれかを含む積層体もしくはポリマーアロイを用いる請求項10に記載の薄膜の製造方法。
- 薄膜の材料として、第1イオン化エネルギーが11.3eV以下である元素を含むものを用いる請求項7〜11のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
- 請求項7〜12のいずれかに記載の薄膜の製造方法により電気絶縁性シートに薄膜を蒸着させる工程を含む、薄膜蒸着シートの製造方法。
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- 2002-06-13 JP JP2002172428A patent/JP2004018895A/ja active Pending
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