JP2004011707A - 真空断熱材、及び真空断熱材を用いた冷蔵庫、並びに真空断熱材芯材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空断熱材の芯材の厚み方向において、バインダーの濃度が異なることを特徴とする。
バインダーの濃度が小さい部分を設けることにより、固体熱伝導を小さくすることができ、断熱性能が向上する。更に、バインダー濃度が小さい部分の排気抵抗が小さくなるため、排気時の真空度を下がりやすくすることができ、真空断熱材の生産性が向上する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する分野】
本発明は、断熱を必要とするもの、例えば冷蔵庫、保温保冷容器、自動販売機、電気湯沸かし器、車両、及び住宅等の断熱材として使用可能な真空断熱材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
【0003】
一般的な断熱材として、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性を向上するためには断熱材の厚さを増す必要があり、断熱材を充填できる空間に制限があって省スペースや空間の有効利用が必要な場合には適用することができない。
【0004】
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材中に挿入し内部を減圧にして封止した断熱材である。
【0005】
真空断熱材の一例としては、特開昭63−187084号公報に開示されているように、プラスチック層と金属層の多重層フィルム袋内にガラス繊維からなる成形体を納入し、内部を真空排気したものがある。成形体のガラス繊維の個々の繊維は、フェノール型等のバインダーにより然るべく合着状態に互いに保持されている。また、特開平9−138058号公報に開示されているように、芯材として、グラスウール等の繊維質材を有機系バインダーを用いて固め成形したものを用いることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
芯材としてグラスウール等の繊維とバインダーを用いて成形した際、バインダーがガラス繊維全体にわたって分散し、繊維成形体の内部まで個々の繊維を合着状態にしてしまうと、芯材の固体熱伝導率が大きくなり、真空断熱材の断熱性能が悪化するという問題があった。
【0007】
更に、真空排気時に排気抵抗が大きくなり、真空断熱材内部の真空度が下がりにくいため、所定の断熱性能を得るには排気時間が長くなり、真空断熱材の生産性が悪化するという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなり、前記芯材がバインダーを用いて成形されたボード状成形体で、かつ厚み方向において前記バインダーの濃度が異なることを特徴とする真空断熱材である。
【0009】
バインダーの濃度が小さい部分を設けることにより、固体熱伝導を小さくすることができ、断熱性能が向上する。更に、バインダー濃度が小さい部分の排気抵抗が小さくなって真空排気が短時間でできるようになり、真空断熱材の生産性が向上する。
【0010】
このように、成形体の厚み方向においてバインダー濃度の異なる芯材を用いることにより、芯材剛性、断熱性能、生産性に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0011】
また、上記構成において、芯材の厚み方向における表面層のバインダー濃度が、内側の層よりも大きいことを特徴とする真空断熱材である。
【0012】
表面層のバインダー濃度を内側の層よりも大きくすることにより、上記効果に加え、表面の平面性が優れた芯材を得ることができ、外観的にも優れた真空断熱材を得ることができる。
【0013】
また、上記構成において、芯材が繊維材料からなることを特徴とする真空断熱材である。
【0014】
繊維材料を用いることにより、成形しやすくかつ固体熱伝導率の小さいという、成形性及び断熱性に優れた真空断熱材を得ることができるのである。
【0015】
また、上記構成において、バインダーが無機材料からなることを特徴とする真空断熱材である。
【0016】
バインダーに無機材料を用いることにより、バインダーからの経時的な発生ガスが少なくなり、真空断熱材の経時的断熱性能が向上する。
【0017】
また、上記構成において、バインダーがホウ酸、ホウ酸塩、或いはリン酸、リン酸塩、或いはそれらの加熱生成物のうち少なくともひとつを含むことを特徴とする真空断熱材である。
【0018】
上記物質はそれ自身でガラス状物質を形成するものもあり、無機繊維、特にガラス繊維と親和性がよくマイグレーションをおこしにくい。
【0019】
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に、本発明の真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる冷凍機器及び冷温機器である。
【0020】
外箱と内箱とからなる空間に、本発明の断熱性能に優れた真空断熱材を配置し、それ以外の空間に発泡断熱材を充填することにより、断熱性能に優れた冷凍機器及び冷温機器を得ることができるのである。
【0021】
また、本発明は、繊維材料を所定形状に積層して積層繊維を作製する積層ステップと、前記積層繊維の外面の少なくとも一面に水で希釈したバインダーを塗布する塗布ステップと、バインダーを塗布した積層繊維を100℃以下の温度で圧縮する第1の圧縮ステップと、圧縮した積層繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮する第2の圧縮ステップとを含むことを特徴とする真空断熱材芯材の製造方法である。
【0022】
上記製造方法により、表面層においては、塗布したバインダーが硬化し濃度の大きい層を形成し、内部は浸透した少量のバインダーがマイグレーションをおこさず表面層の内側で硬化する。したがって、厚み方向にバインダー濃度が異なり、強度的にも優れた芯材を得ることができるのである。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は、芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であり、前記芯材がバインダーを用いて成形されたボード状成形体であり、かつ厚み方向において前記バインダーの濃度が異なることを特徴とする真空断熱材である。
【0024】
前記芯材は、有機或いは無機繊維をボード化したもの、粉末を固形化しボード化したものなど、特に限定するものではない。
【0025】
例えば繊維材料をボード化した芯材では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、或いは木綿等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の合成繊維等の有機繊維など、公知の材料を使用することができる
また、粉末をボード化した芯材ではシリカ、パーライト、カーボンブラック等の無機粉末、或いは合成樹脂粉末等の有機粉末などを、繊維バインダー或いは無機や有機の液状バインダーにて固形化する等、公知の材料を使用することができる。
【0026】
また、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム等の発泡樹脂の粉砕物等、公知の材料を使用することができる。
【0027】
また、バインダーとしては、無機或いは有機バインダー等が使用可能であり、具体的には、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水ガラス、セッコウ、ホウ酸、酸化ホウ素、リン酸、ケイ酸ナトリウム、アルキルシリケート等の無機バインダー、或いはフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、或いは酢酸ビニル、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、或いは天然物接着剤等の有機バインダーであり、これらを混合して使用したり、或いはこれらを水或いは公知の有機溶媒で希釈して使用することも可能である。
【0028】
前記芯材材料へのバインダー付着方法としては、特に指定するものではないが、前記バインダー又はその希釈液を塗布又は噴霧したりして付着させる。
【0029】
具体的には、芯材材料をある程度成形した後にバインダーを噴霧し、その後加熱圧縮することにより、ボード状成形体の厚み方向に対してバインダー濃度の異なる成形体を得ることもできる。
【0030】
また、繊維材料であればその繊維化時にバインダーやその希釈液を噴霧し、ボードのある部分にはバインダー濃度の大きい繊維を、その他の部分にはバインダー濃度の小さい繊維或いはバインダーのない繊維を配置し、その後繊維積層体を圧縮加熱等により固形化させることにより、成形体の厚み方向に対しバインダー濃度の異なるボードを得ることも可能である。
【0031】
また、バインダー濃度の大きいボード状成形体とバインダー濃度の小さいボード状成形体を2枚以上組み合わせることにより、厚み方向に濃度の異なる芯材を得ることも可能である。
【0032】
バインダー濃度は、芯材に対しバインダーの固形分が20wt%以下となるようにバインダーを付着させることが望ましい。バインダー量が多くなると、バインダーからの発生ガスの増加や固体熱伝導率の増加が懸念され、真空断熱材の断熱性能に悪影響を及ぼすことが考えられるからである。
【0033】
バインダー濃度は、芯材の厚み方向において、少なくともある部分とある部分の濃度が異なっていればよく、バインダー濃度の小さい部分に固体熱伝導率、排気抵抗の低減、大きい部分にボードの剛性を付与するという効果をそれぞれもたせることを目的とするものである。
【0034】
特に、バインダー濃度が大きい部分は、芯材の少なくとも一方の表面層、或いは両面の表面層であることが好ましい。これは、真空断熱材にしたときに強度的に優れ、表面の平面性も良好となるからである。
【0035】
芯材の密度は100kg/m3〜400kg/m3となるように成形することが望ましく、また内部で密度が異なっていてもよい。
【0036】
密度が100kg/m3より小さいと成形体としての形状を保持しにくくなり、400kg/m3より大きくなると固体熱伝導率が大きくなり真空断熱材の断熱性能が悪化するからである。
【0037】
また、前記外被材とは少なくともガスバリア層及び熱融着層を有するものであり、必要に応じて表面保護層等を設けてもよい。
【0038】
前記ガスバリア層としては、金属箔、或いは金属、或いは無機酸化物、或いはダイヤモンドライクカーボン蒸着をしたプラスチックフィルム等を用いることができるが、気体透過を低減する目的で用いるものであれば、特に指定するものではない。
【0039】
上記金属箔としては、アルミニウム、ステンレス、鉄等の箔を用いることができるが、特に指定するものではない。
【0040】
また、前記金属等の蒸着を行う基材となるプラスチックフィルムの材料は特に指定するものではないが、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミドなどへの蒸着が好ましい。
【0041】
前記プラスチックフィルム上への金属蒸着の材料は、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、或いはそれらの混合物等特に指定するものではない。
また、前記プラスチックフィルム上への無機酸化物蒸着の材料は、シリカ、アルミナ等特に指定するものではない。
【0042】
また、熱溶着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、或いはそれらの混合体等を用いることができるが、特に指定するものではない。
【0043】
また、ガスバリア層の外面に表面保護層を設けることも可能である。
【0044】
表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが利用でき、更に外側にナイロンフィルムなどを設けると可とう性が向上し、耐折り曲げ性などが向上する。
【0045】
以上のようなフィルムをラミネートして用いる。
【0046】
また、外被材として鉄板、ステンレス板、亜鉛板等の金属板を用いた金属容器を使用してもよい。
【0047】
また、外被材の袋形状は、四方シール袋、ガゼット袋、L字袋、ピロー袋、センターテープシール袋等、特に限定するものでない。また、金属板を直方体に成形して用いる等の方法がある。
【0048】
また、更に真空断熱体の信頼性を向上させる場合は、ガス吸着剤や水分吸着剤等のゲッター物質を使用することも可能である。
【0049】
また、前記真空断熱材の製造方法は、まず外被材を作製し、その後外被材中に芯材を挿入し内部を減圧し封止してもよく、或いは、減圧槽中に芯材とロール状或いはシート状のラミネートフィルムからなる外被材を設置し、ロール状或いはシート状の外被材を芯材に沿わした状態にしてから外被材を熱融着することにより真空断熱材を作製してもよく、或いは、芯材を挿入した外被材内を直接減圧にして外被材開口部を封止することにより真空断熱材を製造する、或いは金属板で成形した容器にボード状の芯材を挿入し、真空ポンプと前記金属容器とを管で結んで容器内を減圧とし、その後管を封止し切ることにより真空断熱材とする等の方法があるが、特に指定するものではない。
【0050】
また、芯材は外被材挿入前に水分乾燥を行ってもよく、また外被材挿入時に吸着剤を一緒に挿入してもよい。
【0051】
また、本発明は、芯材が繊維材料からなることを特徴とする真空断熱材である。
【0052】
繊維材料は公知のものを使用できるが、圧縮加熱の際の耐熱性の点から、好ましくは無機繊維がよい。
【0053】
無機繊維は、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の無機繊維を使用できる。
【0054】
また、その繊維径は特に指定するものではないが、好ましくは0.1μm〜10μmがよい。
【0055】
また、本発明は、バインダーがホウ酸、ホウ酸塩、或いはリン酸、リン酸塩、或いはそれらの加熱生成物のうち少なくともひとつを含むことを特徴とする真空断熱材である。
【0056】
上記物質としては、ホウ酸系化合物として、ホウ酸、メタホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウムの各水和物或いは無水物等のホウ酸ナトリウム類、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸リチウム類、ホウ酸マグネシウム類、ホウ酸カルシウム類、ホウ酸アルミニウム類、ホウ酸亜鉛類、過ホウ酸塩類、アルキルホウ酸、ボロキシン誘導体等がある。
【0057】
或いはリン酸系化合物としては、リン酸、五酸化二リン等の酸化リン、或いはリン酸塩として第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩等であり、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等がある。
【0058】
これらのうち、好ましくはガラス形成物、或いは水溶性物質であり、例えばホウ酸、メタホウ酸、酸化ホウ素、ホウ砂、或いはリン酸、第一リン酸アルミニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等である。
【0059】
以上のようなものを1種、或いは2種以上混合、或いはその他のバインダーを混合、或いはそれらを希釈して成形体のバインダーとして用い、芯材を作製する。
【0060】
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に本発明の真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる冷凍機器及び冷温機器である。
【0061】
例えば冷蔵庫に適用した場合、冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間の外箱側又は内箱側に真空断熱材を貼付しその他の空間に樹脂発泡体を充填する、或いは真空断熱体と発泡樹脂体とを一体発泡した断熱体を冷蔵庫の外箱と内箱の間の空間に配設する、或いはドア部に同様に使用する、或いは仕切板に使用する等特に指定するものではないが、機械室と内箱との間、或いは冷凍室の周囲に前記真空断熱材を用いることは、特に断熱効率に優れ、低電力量で冷蔵庫を運転できるのである。
【0062】
また、樹脂発泡体とは、例えば硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームやスチレンフォームなどを使用することができるが、特に指定するものではない。
【0063】
また、例えば硬質ウレタンフォームを発泡する際に用いる発泡剤としては、特に指定するものではないが、オゾン層保護、地球温暖化防止の観点から、シクロペンタン、イソペンタン、n−ペンタン、イソブタン、n−ブタン、水(炭酸ガス発泡)、アゾ化合物、アルゴン等が望ましく、特に断熱性能の点からシクロペンタンが特に望ましい。
【0064】
また、冷凍機器及び冷温機器に使用する冷媒は、フロン134a、イソブタン、n−ブタン、プロパン、アンモニア、二酸化炭素、水等、特に指定するものではない。
【0065】
また、冷凍機器及び冷温機器は、動作温度帯である−30℃から常温で断熱を必要とする機器の代表として示したものであり、例えば保冷車や電子冷却を利用した冷蔵庫等にも使用できる。また自動販売機などの、より高温までの範囲で温冷熱を利用した冷温機器を指す。また、ガス機器或いはクーラーボックス等、動力を必要としない機器も含むものである。
【0066】
更には、パソコン、ジャーポット、炊飯器等にも使用することも可能である。
【0067】
また、本発明は、繊維材料を所定形状に積層して積層繊維を作製するするステップと、積層繊維の外面の少なくとも一面に水で希釈したバインダーを塗布する塗布ステップと、バインダーを塗布した積層繊維を100℃以下の温度で圧縮する第1の圧縮ステップと、圧縮した積層繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮する第2の圧縮ステップとを含むことを特徴とする真空断熱材芯材の製造方法である。
【0068】
すなわち、繊維材料を所定の形状になるように積層し、積層した繊維の外面に水で希釈したバインダーを塗布する。このとき、積層繊維の一面、或いは両面、或いは全表面等任意の外面に水で希釈したバインダーを塗布する。
【0069】
その後、バインダーを塗布した積層繊維を100℃以下の温度で圧縮するが、これは水分の蒸発しにくい常温圧縮の方が好ましい。
【0070】
また、バインダーの水希釈液の塗布量では、特に指定するものではないが、好ましくは、繊維材料100重量部に対し50重量部以上300重量部以下が好ましい。
【0071】
これは、50重量部より少ないと水溶液が積層繊維の内部に浸透しにくく、300重量部より多いと、この後の加熱圧縮工程で余分な水分が液体状態で流出し、それと共にバインダーも流出するためバインダーにロスが発生するからである。
【0072】
その後、100℃以上の温度で加熱圧縮するが、これは水分を蒸発させること、及びバインダーを硬化させることが目的であり、バインダー硬化温度以上で加熱することが望ましい。
【0073】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0074】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における真空断熱材の断面図、図2は本発明の実施の形態1における真空断熱材の芯材の断面図である。
【0075】
図1及び図2において、1は真空断熱材であり、芯材2を外被材3中に挿入し、内部を減圧として密封し、真空断熱材1としている。4は成形体で、平均繊維径5μmのグラスウールを所定形状になるまで積層して成形したもので、5はバインダーである。
【0076】
バインダー5は、グラスウール100重量部に対し、水ガラス10重量部を水90重量部に溶解し、水ガラス水溶液100重量部としたものを使用する。
【0077】
この水ガラス水溶液を噴霧装置にて成形体4の両表面に噴霧し、その後450℃の熱風循環炉の中で20分間プレスし、厚さが15mm、密度が200kg/m3の芯材2を得た。
【0078】
芯材2の中心層はバインダー5が少なく、表面層に近いほど多量のバインダー5が硬化しているのが確認できた。
【0079】
外被材2は、2枚のラミネートフィルムを三方シールにて製袋している。
【0080】
前記2枚のラミネートフィルムのうち、1枚は熱融着層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと称す)が50μm、ガスバリア層として厚み15μmのエチレン?ポリビニルアルコール共重合体フィルム(以下EVOHと称す)に膜厚500Åのアルミ蒸着を形成したフィルムと、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと称す)に500Åのアルミ蒸着を形成したフィルムをアルミ蒸着面同士貼り合わせたフィルムからなり、熱融着層のLLDPEとガスバリア層のEVOHをドライラミネートしている。また、他の1枚は、熱融着層は厚み50μmのLLDPE、その上にガスバリア層として厚み6μmのアルミ箔、更に保護層として厚み12μmのナイロン、最外層として厚み12μmのナイロンにより構成されている。
【0081】
真空断熱材1の作製は、芯材2を140℃の乾燥炉で1時間乾燥した後、外被材3中に挿入し、内部を3Paまで減圧し封止した。
【0082】
以上のような真空断熱材1の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0022W/mKであった。また、経時信頼性を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年経過条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.016W/mKであった。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態1に対して、芯材のバインダー及び成形方法を変更した。その他の形態は実施の形態1と同様である。
【0084】
図3及び図4はそれぞれ本発明の実施の形態2における真空断熱材の芯材の断面図である。図3において、バインダー5Aは、グラスウール100重量部に対し、ホウ酸3重量部を水97重量部に溶解し、ホウ酸水溶液100重量部としたものを使用する。
【0085】
このホウ酸水溶液を噴霧装置にて成形体4の両表面に噴霧し、それを一度常温でプレスする。その後350℃の熱風循環炉の中で20分間プレスし、厚さが15mm、密度が200kg/m3の芯材2Aを得た。
【0086】
芯材2Aは中心層もわずかなバインダー5Aにより結着しており、表面層に向けてバインダー量が増大していることが目視で確認できた。
【0087】
以上のような真空断熱材1の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0020W/mKであり、厚みは1mm圧縮されて14mmとなり、密度は214kg/m3となった。このとき、真空断熱材の状態での芯材の各寸法を測定した後、真空断熱材を解体して芯材重量を測定し、その結果から密度を計算してもよい。
【0088】
また、経時信頼性を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年経過条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.012W/mKであった。
【0089】
実施の形態1記載の真空断熱材と比較して、バインダーをホウ酸としたこと、及び加熱圧縮前に常温プレスしていることから、芯材内部にもバインダーが残留しているため芯材内部の剛性が向上するとともに全体の強度が向上した。
【0090】
更に、芯材2Aの厚み方向のバインダー濃度分布を分析した。
【0091】
一例として下記の方法を示す。
【0092】
まず、図4に示すように、芯材2Aの表面層を厚み方向に表裏1mmを分割してスキン層6とし、内側の層までの残りを3分割して、そのうちの外側の2層を中間層7、また最内の層を中心層8とする。
【0093】
スキン層6,中間層7、中心層8からそれぞれ1gずつ採取して細かくちぎり、各試料1gずつに純水100mlを加え、軽く振り混ぜたのち、15分間の超音波浴にてバインダーを溶出させ、その溶出液をろ過する。そのろ液中のホウ素溶出量を、ICP発光分光分析法(セイコーインスツルメンツ製シーケンシャル型ICP発光分光分析装置SPS4000使用)にて求めた。
【0094】
結果を(表1)に示す。試料1g当たりからの溶出量は、スキン層6からは各3190μg、中間層7からは各2050μg、中心層8からは995μgとなった。
【0095】
これをすべてバインダー分のホウ酸(もしくは焼成後の酸化ホウ素)分とすると、全バインダー量に占める各層の割合は、上下のスキン層6にそれぞれ27.8%、上下の中間層7にそれぞれ17.9%、中心層8には8.7%となる。
【0096】
【表1】
【0097】
また、比較としてグラスウール4からのホウ素溶出量を求めるため同様の試験を行った結果、182μgとなった。
【0098】
この値をスキン層6,中間層7,中心層8からのホウ素溶出量の値から差し引いて計算すると、各層1gあたり、スキン層6には全バインダー量の28.5%、中間層7には17.7%、中心層8には7.7%、逆側の中間層7に17.7%、その表側のスキン層にスキン層6に28.5%の割合でバインダーが含有されている。
【0099】
【表2】
【0100】
このとき、比較としたボード焼成前のグラスウールがなければ、前者の方法のようにボードのみからのホウ素溶出量を求めてバインダー量としてもよい。
【0101】
以上のようなバインダー濃度分布の数値は一例であり、この値が厚み方向に異なっていればよく、更に好ましくは芯材の表面層のバインダー濃度が内側よりも大きい方がよい。
【0102】
また、例えば前記スキン層6が中心層8のバインダー濃度よりも大きければよく、中間層7はスキン層6の濃度よりも大きい、或いは中間層7は中心層8の濃度よりも小さいというような分布でもよい。
【0103】
また、芯材の分割比率も特に規定するものでもない。
【0104】
また、これは、真空断熱材作製前の芯材、および作製後に真空断熱材を解体して取り出した芯材のどちらにでも適用できる。
【0105】
更に、上記の分析方法は一例であり、バインダー量の分布がわかれば特に分析方法を指定するものではない。芯材の断面を目視でみたときにバインダーの濃度が異なっていることがわかればそれでもよい。
【0106】
(実施の形態3)
実施の形態2に対して、芯材をボード状成形体の多層構造としたもので、その他の形態は実施の形態2と同様である。
【0107】
図5は本発明の実施の形態3における真空断熱材の芯材の断面図である。図5において、芯材2Bはほぼ同じ厚さの3枚のボード状成形体からなっている。
【0108】
そのうち2枚は、平均繊維径5μmのグラスウールを所定形状になるまで積層した成形体に、バインダー5Bとして、グラスウール100重量部に対し、ホウ酸5重量部を水95重量部に溶解し、ホウ酸水溶液100重量部としたものを使用する。
【0109】
このホウ酸水溶液を噴霧装置にて成形体の両表面に噴霧し、それを一度常温でプレスする。その後350℃の熱風循環炉の中で20分間プレスし、厚さが5mm、密度が230kg/m3の成形体4B1を得た。
【0110】
もう1枚は、平均繊維径5μmのグラスウールをバインダーは使用せずに350℃にて圧縮加熱したもので、厚さが5mm、密度が220kg/m3の成形体4B2を得た。
【0111】
これら3枚のボード状成形体を、外側がホウ酸を用いた成形体4B1、内側にグラスウールのみを用いた成形体4B2を重ね、芯材2Bとする。
【0112】
以上のような真空断熱材1の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0019W/mKであった。また、経時信頼性を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年経過条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.014W/mKであった。
【0113】
表面層にホウ酸バインダーつきのボード状成形体を、中間層にグラスウールのみのボード状成形体を用いたことにより、中間層にバインダーがないことから固体熱伝導率が小さく断熱性能に優れた芯材を得ることができた。
【0114】
(実施の形態4)
図6は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の断面図である。
【0115】
9は冷蔵庫、10は冷蔵庫を形成する断熱箱体、1Aは真空断熱材である。真空断熱材1Aは実施の形態2に示したものと同様の構成である。
【0116】
断熱箱体10は、鉄板をプレス成形した外箱11とABS樹脂を真空成形した内箱12とがフランジを介して構成される箱体内部にあらかじめ真空断熱材1Aを配設し、真空断熱材1A以外の空間部を、硬質ウレタンフォーム13にて発泡充填したものである。硬質ウレタンフォーム13は、発泡剤としてシクロペンタンを使用している。
【0117】
断熱箱体10は、仕切板15にて区切られており、上部が冷蔵室16、下部が冷凍室17となっている。仕切板15にはダンパ18が取り付けられている。
【0118】
冷蔵庫内には蒸発器19が配置され、圧縮機20、凝縮器21、キャピラリチューブ22とを順次環状に接続し、冷凍サイクルを形成する。冷凍サイクル内には冷媒であるイソブタンが封入されている。
【0119】
蒸発器19は冷蔵室16及び冷凍室17の2カ所に設け、それらを直列にまた並列に繋ぎ冷凍サイクルを形成してもよい。
【0120】
また、冷蔵庫9にはドア体14が取り付けられており、ドア体14の内部に真空断熱材1Aが配設され、真空断熱材以外の空間部は硬質ウレタンフォーム13にて発泡充填されている。
【0121】
このように構成された冷蔵庫の消費電力量を測定したところ、真空断熱材を装着しない冷蔵庫よりも25%低下しており、断熱効果を確認した。
【0122】
(比較例1)
図7は本発明の比較例における真空断熱材の断面図、図8は本発明の比較例における真空断熱材の芯材の断面図である。
【0123】
31は真空断熱材であり、芯材32を外被材33に挿入し、内部を減圧として密封し、真空断熱材31としている。
【0124】
外被材33の材料構成は実施の形態1にて使用した外被材3と同じであり、三方シールにて製袋し、外被材33としている。
【0125】
芯材32は、平均繊維径5μmのグラスウール34の繊維化後に繊維表面にバインダー35が均一に付着するように噴霧する。バインダー水溶液はグラスウール100重量部に対し、バインダーとしてフェノール樹脂10重量部を水90重量部に溶解し、フェノール水溶液100重量部としたものを使用する。
【0126】
このバインダー付き原綿を、所定密度になるように積層し、その後200℃の熱風循環炉の中で密度が200kg/m3となるように20分間プレスする。
【0127】
芯材32を140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、外被材32中に挿入し、内部を3Paまで10分間減圧し封止した。
【0128】
以上のような真空断熱材31の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0030W/mKであった。
【0129】
また、経時信頼性を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年経過条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.021W/mKであった。
【0130】
実施の形態1と比較して、バインダーとしてフェノール樹脂を用いたこと、及びボード内で均一硬化していることから、初期、経時性能共に悪化する。
【0131】
(比較例2)
比較例1における芯材32のバインダーを変更して真空断熱材31を作製した。
【0132】
芯材32は、平均繊維径5μmのグラスウールの繊維化後に繊維表面にバインダーが均一に付着するように噴霧する。バインダーはグラスウール100重量部に対し、バインダーとしてホウ酸3重量部を水97重量部に溶解し、ホウ酸水溶液100重量部としたものを使用する。
【0133】
このバインダー付き原綿を、所定密度になるように積層し、その後350℃の熱風循環炉の中で密度が200kg/m3となるように20分間プレスする。
【0134】
芯材32を140℃の乾燥炉で1時間乾燥し、外被材32中に挿入し、内部を3Paまで10分間減圧し封止した。
【0135】
以上のような真空断熱材31の熱伝導率は、平均温度24℃にて0.0025W/mKであった。
【0136】
また、経時信頼性を確認するため加速試験による断熱材の劣化を評価したが、10年経過条件での熱伝導率は平均温度24℃にて0.015W/mKであった。
【0137】
実施の形態2と比較して、バインダーを均一硬化させたことから、初期性能が悪化すると共に、排気時間も長時間必要になった。
【0138】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、芯材と、この芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であり、芯材がバインダーを用いて成形されたボード状成形体であり、かつボード状成形体の厚み方向においてバインダーの濃度が異なることを特徴とする真空断熱材である。
【0139】
これにより芯材は、バインダー濃度が大きい部分に芯材の剛性をもたせるとともに、バインダーの濃度が小さい部分を設けることにより、固体熱伝導を小さくすることができ、断熱性能が向上する。更に、バインダー濃度が小さい部分の排気抵抗が少なくなって真空排気が短時間でできるようになり、真空断熱材の生産性が向上する。
【0140】
このように、成形体の厚み方向においてバインダー濃度の異なる芯材を用いることにより、芯材剛性、断熱性能、生産性に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0141】
また、芯材の厚み方向における表面層のバインダー濃度を、内側の層よりも大きくすることにより、上記の効果に加え、表面の平面性に優れた芯材を得ることができ、外観的にも優れた真空断熱材を得ることができる。
【0142】
また、成形体に繊維材料を用いることにより、成形体を形成しやすくかつ固体熱伝導率の小さいという、成型性、断熱性に優れた真空断熱材を得ることができる。
【0143】
また、バインダーに無機材料を用いることにより、バインダーからの経時的な発生ガスが少なくなり、真空断熱材の経時的断熱性能が向上する。
【0144】
また、バインダーとしてホウ酸、ホウ酸塩、或いはリン酸、リン酸塩、或いはそれらの加熱生成物のうち少なくともひとつを含むものであり、上記物質はそれ自身でガラス状物質を形成するもので、無機繊維、特にガラス繊維と親和性がよくマイグレーションをおこしにくい。
【0145】
したがって、例えば繊維をボード状に形成した後、表面にバインダーを塗布して圧縮加熱することにより成形体を得る方法では、表面層においては、塗布したバインダーが硬化し濃度の大きい層を形成し、内部は浸透した少量のバインダーがあまりマイグレーションをおこさず内部で硬化する。
【0146】
したがって、厚み方向に対してバインダー濃度の異なる成形体を得ることができ、かつ成形体の内側の層でも少量のバインダーが硬化した、強度的にも優れた芯材を得ることができる。
【0147】
また、本発明は、外箱と、内箱と、この外箱と内箱によって形成される空間に、発泡断熱体と真空断熱材をする冷凍機器及び冷温機器でり、外箱と内箱とからなる空間に、本発明の断熱性能に優れた真空断熱材を配置し、それ以外の空間に発泡断熱材を充填することにより、断熱性能に優れた冷凍機器及び冷温機器を得ることができるのである。
【0148】
また、本発明は、繊維を所定形状になるように積層するステップと、積層した繊維の外面の少なくとも一面に水で希釈したバインダーを塗布するステップと、バインダーを塗布した積層繊維を100℃以下の温度で圧縮するステップと、圧縮した積層繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮するステップとを含むことを特徴とする真空断熱材芯材の製造方法である。
【0149】
上記製造方法のように、繊維を所定形状に積層し、その積層した繊維の少なくとも一面にバインダーを塗布し、それを100℃以下すなわち水分蒸発以下の温度にて一度圧縮することにより表面層はバインダー濃度が大きく内部はバインダー濃度が小さい状態にし、その後100℃以上の温度で圧縮加熱して水分を蒸発させることにより、厚み方向にバインダー濃度が異なり、しかも成形体内部でも少量のバインダーが結着した芯材を得やすく、強度的にも優れた芯材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における真空断熱材の断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるボード状芯材の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における真空断熱材の芯材の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における真空断熱材の芯材の断面図
【図5】本発明の実施の形態3における真空断熱材の芯材の断面図
【図6】本発明の実施の形態4における冷蔵庫の断面図
【図7】本発明の比較例における真空断熱材の断面図
【図8】本発明の比較例における真空断熱材の芯材の断面図
【符号の説明】
1 真空断熱材
2 芯材
3 外被材
4 グラスウール
5 バインダー
6 スキン層
7 中間層
8 中心層
9 冷蔵庫
11 外箱
12 内箱
13 硬質ウレタンフォーム
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、繊維材料をボード状に成形してなる芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の無機バインダー濃度を、内側の層よりも大きくしたことを特徴とする真空断熱材である。
バインダーの濃度が小さい部分を設けることにより、固体熱伝導を小さくすることができ、断熱性能が向上する。更に、バインダー濃度が小さい部分の排気抵抗が小さくなって真空排気が短時間でできるようになり、真空断熱材の生産性が向上する。また、表面層のバインダー濃度を内側の層よりも大きくすることにより、芯材剛性、表面の平面性が優れた芯材を得ることができ、外観的にも優れた真空断熱材を得ることができる。また、芯材に繊維材料を用いることにより、成形しやすくかつ固体熱伝導率の小さいという、成形性及び断熱性に優れた真空断熱材を得ることができる。また、バインダーに無機材料を用いることにより、バインダーからの経時的な発生ガスが少なくなり、真空断熱材の経時的断熱性能が向上する。
また、芯材は、表面層にバインダーつきのボード状成形体を、中間層にバインダーがないボード状成形体を用いた多層構造としたのである。
表面層にバインダーつきのボード状成形体を、中間層にバインダーがないボード状成形体を用いたことにより、中間層にバインダーがないことから固体熱伝導率が小さく断熱性能に優れた芯材を得ることができる。
【発明の実施の形態】
本発明は、繊維材料をボード状に成形してなる芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の無機バインダー濃度を、内側の層よりも大きくしたことを特徴とする真空断熱材である。
例えば繊維材料をボード化した芯材では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、或いは木綿等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の合成繊維等の有機繊維など、公知の材料を使用することができる。
また、無機バインダーは、具体的には、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水ガラス、セッコウ、ホウ酸、酸化ホウ素、リン酸、ケイ酸ナトリウム、アルキルシリケート等の無機バインダーであり、これらを混合して使用したり、或いはこれらを希釈して使用することも可能である。
前記2枚のラミネートフィルムのうち、1枚は熱融着層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと称す)が50μm、ガスバリア層として厚み15μmのエチレン−ポリビニルアルコール共重合体フィルム(以下EVOHと称す)に膜厚500Åのアルミ蒸着を形成したフィルムと、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETと称す)に500Åのアルミ蒸着を形成したフィルムをアルミ蒸着面同士貼り合わせたフィルムからなり、熱融着層のLLDPEとガスバリア層のEVOHをドライラミネートしている。また、他の1枚は、熱融着層は厚み50μmのLLDPE、その上にガスバリア層として厚み6μmのアルミ箔、更に保護層として厚み12μmのナイロン、最外層として厚み12μmのナイロンにより構成されている。
【発明の効果】
以上のように、本発明は、繊維材料をボード状に成形してなる芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の無機バインダー濃度を、内側の層よりも大きくしたことを特徴とする真空断熱材である。
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、繊維材料からなる芯材と、少なくともガスバリア層と熱融着層とを有するラミネートフィルムからなり前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材は、繊維材料を積層した多層構造の成形体で、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の繊維材料には無機バインダーがついており、内側の層の繊維材料には無機バインダーがついてないか前記表面層よりも濃度の小さい無機バインダーがついていることを特徴とする真空断熱材である。
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間の前記外箱側または前記内箱側に、本発明の真空断熱材を貼付し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる冷蔵庫である。
外箱と内箱とからなる空間の前記外箱側または前記内箱側に、本発明の断熱性能に優れた真空断熱材を配置し、それ以外の空間に発泡断熱材を充填することにより、断熱性能に優れた冷蔵庫を得ることができるのである。
【発明の実施の形態】
本発明は、繊維材料からなる芯材と、少なくともガスバリア層と熱融着層とを有するラミネートフィルムからなり前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材は、繊維材料を積層した多層構造の成形体で、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の繊維材料には無機バインダーがついており、内側の層の繊維材料には無機バインダーがついてないか前記表面層よりも濃度の小さい無機バインダーがついていることを特徴とする真空断熱材である。
例えば繊維材料からなる芯材では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、或いは木綿等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の合成繊維等の有機繊維など、公知の材料を使用することができる。
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間の前記外箱側または前記内箱側に、本発明の真空断熱材を貼付し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる冷蔵庫であり、断熱性能に優れている。
発泡断熱材としては、例えば硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームやスチレンフォームなどを使用することができるが、特に指定するものではない。
また、冷蔵庫に使用する冷媒は、フロン134a、イソブタン、n−ブタン、プロパン、アンモニア、二酸化炭素、水等、特に指定するものではない。
【発明の効果】
以上のように、本発明は、繊維材料からなる芯材と、少なくともガスバリア層と熱融着層とを有するラミネートフィルムからなり前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなる真空断熱材であって、前記芯材は、繊維材料を積層した多層構造の成形体で、前記芯材の固体熱伝導率と排気抵抗が低減でき真空断熱材にしたときの強度が良好になるように、前記芯材の表面層の繊維材料には無機バインダーがついており、内側の層の繊維材料には無機バインダーがついてないか前記表面層よりも濃度の小さい無機バインダーがついていることを特徴とする真空断熱材である。
また、本発明は、外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間の前記外箱側または前記内箱側に、本発明の真空断熱材を貼付し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填してなる冷蔵庫であり、外箱と内箱とからなる空間の前記外箱側または前記内箱側に、本発明の断熱性能に優れた真空断熱材を配置し、それ以外の空間に発泡断熱材を充填することにより、断熱性能に優れた冷蔵庫を得ることができるのである。
Claims (7)
- 芯材と、前記芯材を覆い内部を減圧した外被材とからなり、前記芯材がバインダーを用いて成形されたボード状の成形体で、かつ厚み方向において前記バインダーの濃度が異なることを特徴とする真空断熱材。
- 芯材の表面層のバインダー濃度が、内側の層よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の真空断熱材。
- 芯材が繊維材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の真空断熱材。
- バインダーが無機材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項記載の真空断熱材。
- バインダーがホウ酸、ホウ酸塩、或いはリン酸、リン酸塩、或いはそれらの加熱生成物のうち少なくともひとつを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項記載の真空断熱材。
- 外箱と、内箱とを備え、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に真空断熱材を配置し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填し、前記真空断熱材が請求項1から請求項5のうちいずれか一項記載のものであることを特徴とする真空断熱材を用いた冷凍機器及び冷温機器。
- 繊維材料を所定形状に積層して積層繊維を作製する積層ステップと、前記積層繊維の外面の少なくとも一面に水で希釈したバインダーを塗布する塗布ステップと、バインダーを塗布した前記積層繊維を100℃以下の温度で圧縮する第1の圧縮ステップと、圧縮した前記積層繊維を100℃以上の温度で加熱圧縮する第2の圧縮ステップとを含むことを特徴とする真空断熱材芯材の製造方法。
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