JP2004005732A - 決済システムおよび決済処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の課題は、顧客が保有する債券を担保として預かった金融機関が、この債券に基づいて中央銀行から日中OD枠を享受し、顧客が、その債券に基づいて、該日中OD枠を、金融機関の仲立ちの下、見かけ上利用できるようにすることである。
【解決手段】 本発明は、顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とするスキームを実現するシステムである。
【選択図】 図2
【解決手段】 本発明は、顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とするスキームを実現するシステムである。
【選択図】 図2
Description
本発明は、日本銀行が提供する日本銀行金融ネットワークシステムに参加する金融機関の決済システムに関する。また、本発明は、この決済システムに含まれる口座管理システムに関する。
中央銀行は、一般に、その国の決済システムに必要なインフラストラクチャーの提供を行っている。具体的には、我が国の中央銀行たる日本銀行は、電子ベースの決済システムである日本銀行金融ネットワークシステム(以下「日銀ネット」という。)を提供している。日銀ネットは、日本銀行とその取引先金融機関との間の資金や国債の決済をオンライン処理することを目的として構築されたネットワークシステムである。例えば、我が国における金融機関相互間の資金の移転や振替は、実際には各金融機関が日本銀行に開設している当座預金口座を通じて行われる。つまり、日銀ネットによる当座預金取引では、参加者は、自己の営業所等に設置した端末機から取引データを入力することにより、自らの当座預金口座から相手方の当座預金口座へ資金の振替を日本銀行に請求し、日本銀行がこの当座預金口座間の振替を処理する。
また、ある企業や個人が他の企業や個人に対して代金の支払い等さまざまな目的で資金を送る場合、金融機関に赴いて受取人の預金口座への送金または振り込み手続等を行うことが多い。このような国内における業務を国内為替業務と呼んでいる。そして、国内為替業務を通じて金融機関相互間に発生した債権・債務は、前述の日本銀行の当座預金口座を通じて決済されることになる。
また、ある企業や個人が他の企業や個人に対して代金の支払い等さまざまな目的で資金を送る場合、金融機関に赴いて受取人の預金口座への送金または振り込み手続等を行うことが多い。このような国内における業務を国内為替業務と呼んでいる。そして、国内為替業務を通じて金融機関相互間に発生した債権・債務は、前述の日本銀行の当座預金口座を通じて決済されることになる。
このような金融機関相互間における為替取引の多くは、全国銀行データ通信システム(以下「全銀システム」という。)を通じて行われる。全銀システムは、センターと加盟金融機関とが通信回線で接続され、センターは仕向金融機関から受信した為替通知を被仕向金融機関に送信するだけでなく、このような為替取引を集計し、加盟金融機関ごとに為替貸借額を算出し、その結果を全加盟金融機関および日本銀行に送信する。そして、日本銀行は、所定時刻に各加盟金融機関の当座預金口座にネット為替決済額を入金または引き落とすことにより、各金融機関の為替貸借額を決済している。
ところで、現在、各金融機関は、日本銀行から日中当座貸越枠(以下「日中OD枠」という。)を供与することができないが、日銀ネット決済のRTGS(Real Time Gross Settlement)化の実施とともに、日本銀行に当座預金口座を保有する金融機関は、日中OD枠を日本銀行から享受できるようになる。日中OD枠とは、RTGS化後における取引先(日本銀行に当座預金口座を保有する金融機関)の円滑な資金決済を可能にするという観点から、実行日の終業日を返済期限とする当座貸越を取引先に対して供与するものである。より具体的には、日中OD枠とは、予め定められた担保の価額の範囲内で利用可能として、その原因となる取引の種類や実行タイミングを問わず、当座預金残高が支払金額に対して不足する場合において、当座貸越を取引先に対して実行可能にしたものである。
一方、金融機関以外の一般企業は、日本銀行に当座預金口座を有しないため、RTGS化の実施後であっても、日本銀行の日中OD枠を利用することができない。従って、生命保険会社や損害保険会社等のような一般企業は、潤沢な資金力を背景に金融市場から調達した社債や国債等の債券を大量に保有している場合が多いが、これら債券をさらに有効に活用することができない。かかる場合に、このような一般企業も、これら債券を日本銀行に担保として差し入れて日本銀行から日中OD枠を直接確保するスキームがあれば望ましいが、このようなスキームを実現することは国家全体の金融政策に絡む問題であるため事実上不可能である。
そこで、本発明の課題は、顧客(受託先)が保有する債券を担保として預かった金融機関が、この債券に基づいて中央銀行から日中OD枠を享受し、もって金融機関の日中流動性を確保できるようにするとともに、顧客が、その債券に基づいて、中央銀行から享受される日中OD枠を、金融機関の仲立ちの下、見かけ上利用できるようにすることである。
また、本発明の課題は、顧客が金融機関に債券を差し入れて、中央銀行から享受する金融機関の日中OD枠を見かけ上利用する場合に、顧客が金融機関から日中OD枠の範囲内で融資を受けた際、その融資に対して時間単位で課金できるようにすることである。
上記課題を解決するための発明は、以下のように特定される。
本発明の第1の要旨は、金融機関が、顧客が保有する債券を担保として預かり、前記債券を日本銀行に担保差入れすることにより享受される当座貸越枠分を、前記顧客の口座に対する当座貸越枠として割り当てることである。これにより、金融機関は、金融機関の日中流動性を確保できるようにするとともに、顧客が、その債券に基づいて、日本銀行から享受される日中当座貸越枠を、金融機関の仲立ちの下、見かけ上利用できるようになる。
また、本発明の第2の要旨は、顧客の口座の資金残高の推移に基づく貸越残高について当座貸越枠ごとに課金額を算出し、前記算出したそれぞれの課金額の総額を、前記顧客の口座に対して課金することである。
さらに、本発明の第3の要旨は、顧客の口座を親口座と子口座とからなる階層的な口座として構成し、当座貸越枠の変動を親口座で管理し、実際の入出金を子口座で管理するようにしたことである。
すなわち、本発明は、顧客(受託先)の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される国債振替請求受付案内を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とする決済システムである。
より具体的には、本発明は、日本銀行が提供する日本銀行金融ネットワークシステムに参加する金融機関の決済システムであって、顧客ごとの日中当座貸越枠を管理可能な口座と、顧客から通信回線を介して顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付ける第1の受付手段と、顧客による前記債券の受渡し依頼に対して前記日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される前記債券残高の振替えに関する通知(整理番号通知)を受け付ける第2の受付手段と、前記担保差入れ指図と前記振替えに関する通知とを照合し、妥当であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により照合した結果、妥当であると判断される場合に、前記債券を前記日本銀行における自身の債券口座から日本銀行の担保口座に振り替えるために、前記日本銀行に対して担保差入れ依頼を行う依頼手段と、前記依頼手段により行った担保差入れ依頼に応答して、前記日本銀行によって発行される処理済み通知を受け付ける第3の受付手段と、前記処理済み通知を受け付けた場合に、前記顧客の専用口座に対する日中当座貸越枠を変更する変更手段とを、備えたことを特徴とする決済システムである。
ここで、前記決済システムは、前記自身の資金口座に対するミラー口座と、前記処理済み通知を受け付けた場合に、前記ミラー口座に対する日中当座貸越枠を変更する手段とをさらに備えたことを特徴とする。
また、本発明は、単位営業日における顧客の口座の資金残高の推移に基づく貸越残高について当座貸越枠ごとの部分積数値を算出し、前記算出した部分積数値に前記当座貸越枠ごとに設定された課金利率を乗じて部分課金額を算出し、前記算出した部分課金額を足し合わせて日中課金額を算出し、前記顧客の口座に対して前記算出した課金額を課金することを特徴とする決済システムである。
ここで、前記当座貸越枠は、有担保当座貸越枠、振込入金当座貸越枠、外国為替円決済当座貸越枠および無担保当座貸越枠の少なくとも1つであることを特徴とする。
また、前記決済システムは、前記貸越残高について前記当座貸越枠ごとの部分積数値を算出するに際し、設定された課金利率が低い当座貸越枠の順で前記貸越残高に該枠を当てはめて相殺していくことにより、前記部分積数値を算出することを特徴とする。
さらに、前記決済システムは、顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を行い、前記担保口座に振り替えられた債券残高に応じて前記顧客に割り当てた日中当座貸越枠を変更し、前記日中当座貸越枠の変更分に応じて前記有担保当座貸越枠を変更することを特徴とする。
さらにまた、前記決済システムは、前記顧客の口座に対して振込資金の振替処理が行われた場合に、前記振込資金の額に応じて前記振込入金当座貸越枠を変更することを特徴とする。この場合、前記振込資金の振替処理は、典型的には、全銀システム経由によって行われる。
また、前記決済システムは、所定の決済時点で、前記振込入金当座貸越枠分について資金化処理を行って前記資金残高に編入することを特徴とする。
さらに、前記決済システムは、前記資金残高の推移に基づく預入れ残高に対する積数値を算出し、前記算出した積数値と所定の利率とに基づいて利息額を算出し、前記顧客の口座に対して前記算出した利息額を入金することを特徴とする。
また、本発明は、顧客の口座の資金残高が所定の残高変動要因に基づいて変動した場合に、該変動後の資金残高と該変動した時刻とを対応付けた資金残高変動履歴として記録する第1の記録手段と、顧客の口座に対する当座貸越枠が所定の枠変動要因に基づいて変動した場合に、該変動後の当座貸越枠と該変動した時刻とを対応付けた当座貸越枠変動履歴として記録する第2の記録手段と、前記第1の記録手段によって記録された資金残高変動履歴と前記第2の記録手段によって記録された当座貸越枠変動履歴とに基づいて貸越残高に関する積数値を算出する第1の算出手段と、前記第1の算出手段によって算出された積数値と所定の課金利率とに基づいて日中課金額を算出する第2の算出手段と、前記第2の算出手段によって算出された日中課金額に基づいて前記顧客の口座に対して課金処理を行う課金手段と、を備えたことを特徴とする決済システムである。
ここで、前記第2の記録手段は、当座貸越枠ごとに当座貸越枠変動履歴を記録し、前記第1の算出手段は、前記当座貸越枠ごとの積数値を部分積数値として算出し、前記第2の算出手段は、前記部分積数値と前記当座貸越枠ごとに設定された課金利率とに基づいて部分課金額をそれぞれ算出し、前記算出した部分課金額を足し合わせて日中課金額として算出することを特徴とする。
また、本発明は、顧客ごとに口座を管理する口座管理システムを有する決済システムであって、前記口座管理システムは、親口座と該親口座に対して階層的に下位に位置する子口座とからなる顧客口座の口座データを記憶する口座データ記憶手段と、所定の資金残高変動要因を受け付けて、前記子口座の資金残高を管理する入出金管理手段と、所定の当座貸越枠変動要因を受け付けて、前記親口座の当座貸越枠を管理する当座貸越枠管理手段と、を備えたことを特徴とする決済システムである。
ここで、前記口座管理システムは、前記子口座の資金残高と前記親口座の前記当座貸越枠とに基づいて課金額を管理する課金管理手段をさらに備えたことを特徴とする。
また、前記口座管理システムは、前記資金残高変動要因に基づいて変動した資金残高と前記資金残高変動要因が生じた時刻とを対応付けた資金残高変動履歴を記録する第1の記録手段と、前記当座貸越枠変動要因に基づいて変動した当座貸越枠と該当座貸越枠変動要因が生じた時刻とを対応付けた当座貸越枠変動履歴を記録する第2の記録手段と、をさらに備え、前記課金管理手段は、前記資金残高変動履歴と前記当座貸越枠変動履歴とに基づいて、貸越残高に関する積数値を算出する第1の算出手段と、前記積数値と所定の課金利率とに基づいて日中課金額を算出する第2の算出手段と、前記日中課金額に基づいて前記親口座に対して課金処理を行う課金手段と、を備えたことを特徴とする。
上記装置の発明は、方法の発明としても成立する。すなわち、本発明は、顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とする決済方法であってもよい。
なお、本明細書において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されても良い。
本発明によれば、顧客が保有する債券を担保として預かった金融機関は、この債券に基づいて中央銀行から日中当座貸越枠を享受し、もって金融機関の日中流動性を確保できるようになる。また、顧客は、その債券に基づいて、中央銀行から享受される日中当座貸越枠を、金融機関の仲立ちの下、見かけ上利用できるようになる。
また、本発明によれば、顧客が自身の口座に設定している日中OD枠を利用した場合に、その日中OD枠の種類ごとに、それぞれの金利で課金を行うことができるようになる。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1の実施形態]
(前提)
本実施形態に係る決済システムを運用するための前提として、債券を保有する顧客と、その債券を預かる金融機関との間に、その債券について「無担レポ取引」を行う旨の契約が存在するものとする。無担レポ取引とは、債券の保有者(貸手)が借手に債券を貸し付け、合意された期間を経た後、借手が貸手に貸借債券と同種・同量の債券を返還する債券の消費貸借取引のうち、担保を必要としない取引である。この場合、その債券の名義は変更されることになる。顧客は、金融機関との間で、無担レポ取引により金融機関が借り入れた債券は、日中当座貸越用担保である旨を基本合意書の中で締結する。
(前提)
本実施形態に係る決済システムを運用するための前提として、債券を保有する顧客と、その債券を預かる金融機関との間に、その債券について「無担レポ取引」を行う旨の契約が存在するものとする。無担レポ取引とは、債券の保有者(貸手)が借手に債券を貸し付け、合意された期間を経た後、借手が貸手に貸借債券と同種・同量の債券を返還する債券の消費貸借取引のうち、担保を必要としない取引である。この場合、その債券の名義は変更されることになる。顧客は、金融機関との間で、無担レポ取引により金融機関が借り入れた債券は、日中当座貸越用担保である旨を基本合意書の中で締結する。
また、顧客が無担レポ取引によって金融機関に差し入れる債券は、国債若しくは一般債であるものとする。そして、この国債は、日本銀行が保有している各国債の口座間の振替で処理可能な「振決国債」、一般債は日本銀行が前記日中当座貸越枠の担保として受け入れる銘柄に限るものとする。
なお、以下の説明では、顧客をA社、金融機関をX銀行として説明する。
図1は、本発明に係る決済システムを運用するための全体スキームを説明するための図である。同図に示すように、中央銀行たる日本銀行1は、日銀ネット2を運営し、この日銀ネット2には、X銀行3およびA社4のコンピュータシステムが接続されている。日銀ネット2上では、各種データ(ファイル)は、NTCファイル伝送プロトコルなどに従って伝送される。X銀行およびA社は、また、一般ネットワーク5に接続され、相互に通信することができる。この一般ネットワーク5とは、上記日銀ネット以外のネットワークを意味するものであり、例えば、NTT(日本電信電話株式会社)が運営するISDN回線などを用いることができる。なお、日銀ネット2は、論理的には、国債の決済用参加者口座を司るネットワークと、資金決済用参加者口座を司るネットワークとが存在する。
図2は、本実施形態に係る決済システムの機能構成を示すブロックダイアグラムである。日本銀行1は、コンピュータシステムとして実現される国債系システム21、与信・担保システム22および当座預金口座システム23を有する。国債系システム21は、日銀ネット2の参加者それぞれの国債系口座を管理するものである。与信・担保システム22は、日銀ネット2の参加者の担保口座を管理するものである。国債系システム21は、外部の端末装置がシステムにログインする際にその認証処理を行うとともに、各種要求などに応じて債券口座相互間あるいは債券口座と与信・担保システム22の担保口座相互間で残高の決済を行うことができるように構成されている。当座預金口座システム23は、各金融機関の当座預金口座を管理するためのものである。日本銀行1の当座預金口座システム内に当座預金口座を開設することができるのは、所定の金融機関のみである。そして、ある金融機関について、債券口座システム21がその金融機関の債券口座から与信・担保システム22の担保口座に残高を移動すると、与信・担保システム22は、その旨を当座預金口座システム23に通知し、当座預金口座システム23は、その金融機関の当座預金口座の日中OD枠を、国債残高の移動に応じた分だけ変動させる。なお、より具体的には、日中OD枠は、国債残高に対して日本銀行が設定した掛け目を乗じた分だけ増減する。
X銀行3は、コンピュータシステムとして実現される当座預金決済システム24および勘定系システム25を有する。まず、当座預金決済システム24は、日本銀行1内に開設している自身の当座預金口座の内容と同一のミラー口座(以下「当座預金ミラー口座」という。)およびP/O(payment order)管理システム241を有する。当座預金ミラー口座は、リアルタイムで日本銀行1内の当座預金口座の残高を把握するためのものである。P/O管理システム241がP/Oを送信する前に、当座預金ミラー口座を参照することにより、自身の口座の残高チェックを行うことができるようになる。
また、勘定系システム25は、専用口座システム251および当座預金システム252を有し、これらに開設される顧客の口座を管理する。当座預金決済システム24内のP/O管理システム241は、A社内の端末装置26から受け付ける「担保差入れ指図」と、日本銀行1から受け付ける「国債振替請求受付案内」とを照合し、これらが妥当であると判断する場合には、A社に割り当てられる日中OD枠を変動させるように、専用口座システム251に指示を出力する。専用口座システム251は、この指示を受けて日中OD枠を変更する。すなわち、勘定系システム251は、顧客の依頼を受けて当該口座から出金処理を行う場合に、その出金金額が当該口座が保有する支払可能残高内であるか否かを判断し、残高内であれば現在の残高から減額し、出金する。支払可能残高とは、口座残高と日中OD枠との和であり、日中OD枠を増額するということは、そのまま支払可能残高を増額することを意味する。
A社は、コンピュータシステムとして実現される端末装置26および日銀用端末装置(日銀直結端末)27を有する。端末装置26は、ネットワーク5を介してX銀行のP/O管理システム241との間で相互に通信可能に構成されている。また、日銀用端末装置27は、日銀ネット2に接続されており、日本銀行1内に設けられたシステムとの間で相互に通信可能に構成されている。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る決済システムの動作を説明する。
まず、A社は、X銀行との間で特定の国債について無担レポ取引で約定したものとする。オペレータの操作に基づき、A社の端末装置26は、当該国債の「担保差入指図」をP/O管理システム241に送出するとともに(図2中(1))、日銀用端末装置27は、日銀ネット2を介して当該国債の「国債受渡依頼」を日本銀行1の国債系システム21に送出する(図2中(2))。図3(a)は、担保差入指図のデータ例を示す図である。
国債系システム21は、「国債受渡依頼」を受け付けると、当該国債残高の振替を行う。つまり、国債系システム21は、A社口座からX銀行口座に国債を振り替える(図2中(3))。これにより、当該国債の名義がX銀行のものとして扱われることになる。国債系システム21は、この振替が完了すると、日銀ネット2を介して「国債振替請求受付案内」をX銀行のP/O管理システム241に送出する(図2中(4))。図3(b)は、国債振替請求受付案内のデータ例を示す図である。
P/O管理システム241は、端末装置26で受け付けた「担保差入指図」と「国債振替請求受付案内」とを比較照合し、その妥当性を判断する。具体的には、P/O管理システム241は、担保差入指図に含まれる顧客コード番号に基づいて特定される顧客と、国債振替請求受付案内に含まれる日銀ネットコードに基づいて特定される顧客とが一致するか否かを確認すると同時に、国債の銘柄コード、額面金額および発行日など各項目の一致も確認する。なお、P/O管理システム241は、セキュリティを確保するため、顧客ごと設定されたパスワード情報および発信元電話番号情報などに基づいて確認・認証を行うように構成してもよい。P/O管理システム241は、その照合の結果、当該取引が有効であると判断する場合には、日本銀行1の国債系システム21に「担保差入依頼」を送出する(図2中(5))。図3(c)は、担保差入依頼のデータ例を示す図である。
国債系システム21は、この「担保差入依頼」を受け付けると、すでにA社からX銀行口座に振り替えられた国債を、与信・担保システム22の担保口座に振り替える(図2中(6))。与信・担保システム22は、X銀行の担保口座に残高が振替えられた旨を当座預金口座システム23に通知する(図2中(7))。これにより、日本銀行1は、X銀行の当座預金口座に割り当てられる日中OD枠を増枠することになる。与信・担保システム22は、担保口座に振り替えた旨をX銀行に通知するため、「整理番号通知」をP/O管理システム241に送出する(図2中(8))。図3(d)は、整理番号通知のデータ例を示す図である。
P/O管理システム241は、この「整理番号通知」を受け付けると、専用口座システム251のA社専用口座の日中OD枠を増枠するとともに(図2中(9))、日本銀行1内の当座預金口座と同一の内容となるように、ミラー口座の内容を変更する(図2中(10))。
以上のように、本実施形態によれば、顧客であるA社が保有する国債を担保として預かった金融機関であるX銀行は、この国債に基づいて日本銀行から日中OD枠を享受することができるようになる。従って、X銀行は、この日中OD枠のうち、当該国債に基づいて増枠された分について日中流動性を確保できるようになる。
また、本実施形態によれば、A社が、無担レポ取引により、その保有する国債をX銀行に引き渡すことにより、A社は、日本銀行から享受される日中OD枠を、X銀行の仲立ちの下、見かけ上利用できるようになる。これにより、A社は、保有する国債を有効に活用することができるようになる。
[第2の実施形態]
本実施形態は、顧客が自身の口座に設定している日中OD枠を利用した場合に、その日中OD枠の種類ごとに、それぞれの課金利率(金利)で課金を行うことを特徴とするものである。また、本実施形態は、上記日中OD枠を効率的に管理するため、顧客の口座を階層的に構成することを特徴とするものである。
本実施形態は、顧客が自身の口座に設定している日中OD枠を利用した場合に、その日中OD枠の種類ごとに、それぞれの課金利率(金利)で課金を行うことを特徴とするものである。また、本実施形態は、上記日中OD枠を効率的に管理するため、顧客の口座を階層的に構成することを特徴とするものである。
図4は、本実施形態に係る勘定系システム251の機能構成を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、勘定系システム251は、口座データベース(以下「口座DB」という。)41、入出金管理部42、当座貸越枠管理部(以下「OD枠管理部」という。)43、履歴データベース(以下「履歴DB」という。)44、および課金管理部45を有する。
口座DB41は、顧客ごとに設定された口座を管理するものであり、それぞれの口座は、親口座と、該親口座に対して階層的に下位に位置づけられる少なくとも1つ以上の子口座とから構成される。口座DB41は、これら階層的な口座を、例えばポインタによって管理する。親口座は、資金残高、各種OD枠に与えられた枠値(上限値)が記憶される。親口座の資金残高と各種OD枠値との総和が、当該口座の支払可能残高になる。子口座は、例えば組織別、勘定別というように、適宜設定され、それぞれの子口座に対する実際の入金または出金取引による資金残高が記憶される。図5は、親口座と子口座の内容を示す図である。本例では、親口座の当座貸越枠は、有担保OD枠、振込入金OD枠、外国為替円決済OD枠(以下「外為円決OD枠」という。)および無担保OD枠が設けられている。ここで、有担保OD枠とは、顧客から担保債券を受け入れ、当該債券を日本銀行に再差入れすることにより銀行が供与を受ける日中当貸枠を顧客専用口座に設定するOD枠をいう。上記実施形態で説明した日中OD枠は、これに該当する。また、振込入金OD枠とは、顧客が専用口座に入金した全銀システム経由での受取資金を見合いに設定するOD枠であり、外為円決OD枠とは、顧客が専用口座に入金した外為円決済システム経由での受取資金を見合いに設定するOD枠であり、無担保OD枠とは、銀行が無担保で顧客専用口座に設定するOD枠である。すべての子口座の資金残高の総和が、親口座の資金残高である。親口座と子口座との関係は、例えば、親口座aで示される日中OD枠値が100で、子口座a1の資金残高が+300である場合、子口座a2の資金残高は△400まで許容されるというように、関係付けられている。そして、子口座a2から△400を出金したとすると、親口座の資金残高は、△100となる。
入出金管理部42は、図示しないP/O管理システム241から資金残高変動要因を受け付けて、指定される子口座の資金残高を更新する。資金残高変動要因とは、例えば、入金トランザクションおよび出金トランザクションである。すなわち、入出金管理部42は、入金トランザクションを受け付けると、そのトランザクションで指定される子口座に対して入金処理を行い、また、出金トランザクションを受け付けると、そのトランザクションで指定される子口座に対する親口座の支払可能残高を参照し、取引(出金)可能であることを確認した後、その子口座から出金処理を行う。これにより、子口座の資金残高は変動することになる。入出金管理部42は、また、入金または出金トランザクション(資金残高変動要因)により、特定の子口座の資金残高を更新した(変動させた)場合、その変動時刻、入金あるいは出金額、変動前後の資金残高を履歴DB44に出力する。
OD枠管理部43は、P/O管理システム241からOD枠変動要因を受け付けて、指定される親口座のOD枠を更新する。OD枠変動要因には、例えば、日本銀行の担保口座に残高を振り替えることにより日本銀行から発行される日中OD枠の変更に関する整理番号通知に基づくOD枠変更指示や、顧客の全銀システム経由で一般預金口座に振り込まれた資金についての専用口座に対する振替指示がある。すなわち、OD枠管理部43は、日本銀行に対する担保差入れに基づく日中OD枠変更指示を受け付けると、当該変更指示で指定される親口座の有担保OD枠を増枠し、担保返戻に基づく日中OD枠変更指示を受け付けると、有担保OD枠を減枠する。同様に、OD枠管理部43は、専用口座に対する全銀システム経由による受取資金の振替指示を受け付けると、当該振替指示で指定される親口座の振込入金OD枠を振替資金に応じて変更する。
また、OD枠管理部43は、所定の決済時点において、振込入金OD枠や外為円決OD枠の資金化処理を行う。すなわち、OD枠管理部43は、ある口座について、所定の決済時点における振込入金OD枠値や外為円決OD枠値を当初これらのOD枠の見合い資金が振り替えられた子口座の資金残高にそれぞれ振り替える。子口座への振替は、特定の子口座のみについて行っても良いし、それぞれの子口座に按分してもよい。所定の決済時点とは、例えば、外為円決OD枠については営業日の14:30、振込入金OD枠については営業日の16:15などというように予め定められる。OD枠管理部43は、また、OD枠変動要因により、特定の親口座のOD枠を更新した(変動させた)場合、その変動時刻、変動したOD枠の種類、変動前後のOD枠値を履歴DB44に出力する。
履歴DB44は、資金残高変動要因により資金残高の変動が生じた場合に、その変動時刻、入金あるいは出金額、変動前後の資金残高を資金残高変動履歴として記録する。また、履歴DB44は、OD枠変動要因によりいずれかのOD枠値の変動が生じた場合に、その変動時刻、変動したOD枠の種類、変動前後のOD枠値をOD枠変動履歴として記録する。なお、変動前の資金残高またはOD枠値は、直前の記録を参照することにより取得するようにしてもよい。
課金管理部45は、履歴DB44に記録された資金残高変動履歴およびOD枠変動履歴に基づいて、単位営業日における貸越残高についてOD枠ごとの金利を計算し、その金利分を当該口座に対して課金するものである。すなわち、課金管理部45は、ある口座の単位営業日における資金残高の推移に基づく貸越残高について、各種OD枠ごとの部分積数値を算出し、この部分積数値に各種OD枠ごとの金利を掛けて部分課金額を算出し、これらの部分課金額の総額を当該口座に課金する。積数値とは、営業開始時から営業終了時までの貸越残高を時間tで積分した値である。口座への課金は、親口座に対して行われる。課金管理部45は、例えば、1日の営業が終了後、上記課金処理を実行する。
図6は、本実施形態に係る入出金管理部42の動作を説明するためのフローチャートである。同図において、まず、入出金管理部42は、入金または出金トランザクションを受け付けると(STEP601のYes)、そのトランザクションで指定された子口座に対する入金または出金処理を行う(STEP602)。次に、入出金管理部42は、その変動時刻、入金あるいは出金額、変動前後の資金残高を履歴DB44に出力する(STEP603)。入出金管理部42は、営業終了時であるか否かを判断し(STEP604)、営業終了でないと判断する場合にはSTEP601に戻る。
図7は、本実施形態に係るOD枠管理部43の動作を説明するためのフローチャートである。同図に示すように、OD枠管理部43は、営業終了時まで、日中OD枠変更指示の有無、専用口座への振替の有無または振込決済時間か否かを監視する。すなわち、OD枠管理部43は、有担保OD枠あるいは無担保OD枠の変更指示を受け付けると(STEP701のYes)、親口座の有担保OD枠を変更し(STEP702)、その変動時刻、有担保OD枠である旨、変動前後のOD枠の値を履歴DB44に出力する(STEP703)。また、OD枠管理部43は、専用口座への全銀システム経由による受取資金の振替指示を受け付けると(STEP704のYes)、親口座の振込入金OD枠を振替金額に応じて更新し(STEP705)、その変動時刻、振込入金OD枠である旨、変動前後のOD枠の値を履歴DB44に出力する(STEP706)。さらに、OD枠管理部43は、振込決済時間であると判断する場合には(STEP707のYes)、親口座の振込入金OD枠分の資金化処理を行う(STEP708)。そして、OD枠管理部43は、営業終了時であるか否かを判断し(STEP709)、営業終了でないと判断する場合にはSTEP701に戻る。
図8は、本実施形態に係る課金管理部45の動作を説明するためのフローチャートである。課金管理部45は、営業終了後、所定のタイミングで起動される。課金管理部45は、まず、履歴DB44を読み出して、資金残高の推移に基づいてその積数値Sを算出する(STEP801)。課金管理部45は、算出した積数値Sのうち、有担保OD枠の部分積数値S1を算出し(STEP802)、当該部分積数値S1に対して有担保OD枠に設定されている課金利率r1を乗じて、有担保OD枠についての日中課金X1を算出する(STEP803)。
次に、課金管理部45は、振込入金OD枠の部分積数値S2を算出し(STEP804)、当該部分積数値S2に対して振込入金OD枠に設定されている課金利率r2を乗じて、振込入金のOD枠についての日中課金X2を算出する(STEP805)。次に、課金管理部45は、無担OD枠の部分積数値S3を算出し(STEP806)、当該部分積数値S3に対して無担保OD枠に設定されている課金利率r3を乗じて、振込入金のOD枠についての日中課金X3を算出する(STEP807)。そして、課金管理部45は、それぞれのOD枠についての日中課金Xiの総和して日中課金Xを算出し(STEP808)、算出した日中課金Xを親口座に対して課金する(STEP809)。
次に、本実施形態に係る日中課金の例を図9を用いて説明する。同図において、横軸は時間(9:00〜19:00)、縦軸は資金残高を示している。また、太線は資金残高の推移を示し、S1は有担保OD枠、S2は振込入金OD枠、S3は無担保OD枠を示している。これらの値は、変動時刻とともに履歴DBに記録される。縦軸の値が0以下の部分は貸越残高であり、9:00から19:00までの間の貸越残高に対してそれぞれのOD枠を考慮した日中課金が計算されることになる。
1) 9:00(営業開始時)
資金残高が0、有担保OD枠がa1、無担保OD枠がa2であったとする。
資金残高が0、有担保OD枠がa1、無担保OD枠がa2であったとする。
2) 10:00
振り込み資金が営業店の一般預金口座から専用口座に振り替えられ、振込入金OD枠がd1だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd1だけ増加する。ただし、この時点では、資金残高は増加しない。
振り込み資金が営業店の一般預金口座から専用口座に振り替えられ、振込入金OD枠がd1だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd1だけ増加する。ただし、この時点では、資金残高は増加しない。
3) 11:30
日本銀行からの担保差入済であることを表す整理番号通知により、有担保OD枠がd2だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd2だけ増加する。
日本銀行からの担保差入済であることを表す整理番号通知により、有担保OD枠がd2だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd2だけ増加する。
4) 13:20
振り込み資金が営業店の一般預金口座から専用口座に振り替えられ、振込入金OD枠がd3だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd3だけ増加する。ただし、この時点では、資金残高は増加しない。
振り込み資金が営業店の一般預金口座から専用口座に振り替えられ、振込入金OD枠がd3だけ増枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd3だけ増加する。ただし、この時点では、資金残高は増加しない。
5) 15:30
担保返戻依頼により、有担保OD枠がd4だけ減枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd4だけ減少する。
担保返戻依頼により、有担保OD枠がd4だけ減枠される。これにより、当該顧客の支払可能残高がd4だけ減少する。
6) 16:15
振込入金OD枠の資金化が行われ、その時点の振込入金OD枠分だけ資金残高が増加(貸越残高が減少)する。資金化により、振込入金OD枠は0になる。
振込入金OD枠の資金化が行われ、その時点の振込入金OD枠分だけ資金残高が増加(貸越残高が減少)する。資金化により、振込入金OD枠は0になる。
7) 19:00(営業終了時)
すべての取引が終了する。
すべての取引が終了する。
課金管理部45は、縦軸0と太線(資金残高の推移線)とで囲まれた領域のうち、貸越残高の領域について日中課金を行う。つまり、課金管理部45は、0以下の多角形領域について、有担保OD枠、振込入金OD枠および無担保OD枠それぞれの部分積数値(面積値)を算出し、その部分積数値のそれぞれに金利を乗じた額を総和して日中課金額を算出する。なお、資金残高が0以上の領域(預入れ残高)については、利息を付与するようにしてもよい。
また、上述の例では、外為円決OD枠については説明を省略したが、外為円決OD枠についても決済時間が振込入金OD枠の場合と異なる以外、同様である。
以上のように、本実施形態によれば、顧客が自身の口座に設定している日中OD枠を利用した場合に、その日中OD枠の種類ごとに、それぞれの課金利率(金利)で課金を行うことができるようになる。また、本実施形態によれば、上記第1の実施形態で説明した担保差入による日中OD枠の増加分についても日中課金を行うことができるようになる。さらに、本実施形態によれば、資金残高がプラスである領域について日中付利を行うこともできる。さらにまた、本実施形態によれば、顧客の口座を階層的に構成しているので、上記日中OD枠を子口座間で相互利用することができるようになる。
[第3の実施形態]
本実施形態は、上記第1の実施形態で説明した国債の代わりに、一般債を用いた場合の一例である。本実施形態では、担保となるべき一般債券を取り扱う登録機関において、その一般債の名義を顧客から金融機関に移転登録し、金融機関の債券保有残高分を日本銀行の担保口座に振り替えることにより日中当座貸越枠(日中OD枠)を変更する。
(前提)
本実施形態に係る決済システムを運用するための前提として、債券を保有する顧客と、その債券を預かる金融機関との間に、その債券について「無担レポ取引」を行う旨の契約が存在するものとする。顧客は、金融機関との間で、無担レポ取引により金融機関が借り入れた債券が、日中当座貸越用担保である旨を基本合意書の中で締結する。
本実施形態は、上記第1の実施形態で説明した国債の代わりに、一般債を用いた場合の一例である。本実施形態では、担保となるべき一般債券を取り扱う登録機関において、その一般債の名義を顧客から金融機関に移転登録し、金融機関の債券保有残高分を日本銀行の担保口座に振り替えることにより日中当座貸越枠(日中OD枠)を変更する。
(前提)
本実施形態に係る決済システムを運用するための前提として、債券を保有する顧客と、その債券を預かる金融機関との間に、その債券について「無担レポ取引」を行う旨の契約が存在するものとする。顧客は、金融機関との間で、無担レポ取引により金融機関が借り入れた債券が、日中当座貸越用担保である旨を基本合意書の中で締結する。
また、顧客が無担レポ取引によって金融機関に差し入れる債券は、一般債であるものとする。そして、この一般債は、債券決済ネットワーク上で取引可能かつ日本銀行が日中当座貸越枠に対する担保として受け入れる債券であるものとする。
図10は、本実施形態に係る決済システムの機能構成を示すブロックダイアグラムである。登録機関5は、一般債の名義の移転および/または登録処理を行うものである。また、A社4は、債券決済ネットワークに接続され、登録機関5のシステムとの間で相互に通信可能に構成された債券決済用端末装置27’を有する。なお、その他の構成については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る決済システムの動作を説明する。
まず、A社は、X銀行との間で特定の一般債について無担レポ取引を約定したものとする。オペレータの操作に基づき、A社の端末装置26は、当該一般債の「担保差入指図」をP/O管理システム241に送出するとともに(図10中(1))、債券決済用端末装置27’は、債券決済ネットワークを介して当該一般債の「移転登録指図」を登録機関5に送出する(図10中(2))。図11(a)は、担保差入指図のデータ例を示す図である。
登録機関5は、「移転登録指図」を受け付けると、当該一般債の名義移転登録を行う。つまり、登録機関5は、当該一般債券の名義をA社からX銀行に移転登録する(図10中(3))。登録機関5は、この名義移転登録が完了すると、債券決済ネットワークを介して「手続終了通知」をX銀行のP/O管理システム241に送出する(図10中(4))。
P/O管理システム241は、端末装置26から受け付けた「担保差入指図」と「振替済通知」とを比較照合し、その妥当性を判断する。P/O管理システム241は、その照合の結果、当該取引が有効であると判断する場合には、日本銀行1に「担保差入依頼」を送出する(図10中(5))。図11(b)は、担保差入依頼のデータ例を示す図である。「担保差入依頼」受付後、日本銀行1はX銀行とともに署名捺印済の質権設定登録請求書を登録機関5に持ち込むものとする。
登録機関5は、この質権設定登録請求書を受け付けた後、A社からX銀行に名義移転登録された一般債に対して質権を設定し、担保口座に振り替える(図10中(6))。与信・担保システム22は、X銀行の担保口座に残高が振り返られた旨を当座預金口座システム23に通知する(図10中(7))。これにより、日本銀行1は、X銀行の当座預金口座に割り当てられる日中OD枠を増枠することになる。与信・担保システム22は、担保口座に振り替えた旨をX銀行に通知するため、「整理番号通知」をP/O管理システム241に送出する(図2中(8))。図11(c)は、整理番号通知のデータ例を示す図である。
P/O管理システム241は、この「整理番号通知」を受け付けると、専用口座システム251のA社専用口座の日中OD枠を増枠するとともに(図2中(9))、日本銀行1内の当座預金口座と同一の内容となるように、ミラー口座の内容を変更する(図10中(10))。
以上のように、本実施形態によれば、顧客であるA社が保有する一般債を担保として預かった金融機関であるX銀行は、この一般債に基づいて日本銀行から日中OD枠を享受することができるようになる。従って、X銀行は、この日中OD枠のうち、当該一般債に基づいて増枠された分について日中流動性を確保できるようになる。
また、本実施形態によれば、A社が、無担レポ取引により、その保有する一般債をX銀行に引き渡すことにより、A社は、日本銀行から享受される日中OD枠を、X銀行の仲立ちの下、見かけ上利用できるようになる。これにより、A社は、保有する一般債を有効に活用することができるようになる。
[その他の実施形態]
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。例えば、上記機能実現手段の動作をシーケンシャルに説明したが、特にこれにこだわるものではない。従って、動作に矛盾が生じない限り、処理の順序を入れ替えまたは並行動作するように構成しても良い。
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。例えば、上記機能実現手段の動作をシーケンシャルに説明したが、特にこれにこだわるものではない。従って、動作に矛盾が生じない限り、処理の順序を入れ替えまたは並行動作するように構成しても良い。
1…日本銀行
2…日銀ネット
3…金融機関
4…顧客
21…国債系システム
22…与信・担保システム
23…当座預金口座システム
24…当座預金決済システム
25…勘定系システム
26…端末装置
27…日銀専用端末
2…日銀ネット
3…金融機関
4…顧客
21…国債系システム
22…与信・担保システム
23…当座預金口座システム
24…当座預金決済システム
25…勘定系システム
26…端末装置
27…日銀専用端末
Claims (16)
- 顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される国債振替請求受付案内を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とする決済システム。
- 日本銀行が提供する日本銀行金融ネットワークシステムに参加する金融機関の決済システムであって、
顧客ごとの日中当座貸越枠を管理可能な口座と、
顧客から通信回線を介して顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付ける第1の受付手段と、
顧客による前記債券の受渡し依頼に対して前記日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される前記債券残高の振替えに関する通知を受け付ける第2の受付手段と、
前記担保差入れ指図と前記振替えに関する通知とを照合し、妥当であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により照合した結果、妥当であると判断される場合に、前記債券を前記日本銀行における自身の債券口座から日本銀行の担保口座に振り替えるために、前記日本銀行に対して担保差入れ依頼を行う依頼手段と、
前記依頼手段により行った担保差入れ依頼に応答して、前記日本銀行によって発行される処理済み通知を受け付ける第3の受付手段と、
前記処理済み通知を受け付けた場合に、前記顧客の専用口座に対する日中当座貸越枠を変更する変更手段とを、備えたことを特徴とする決済システム。 - 前記決済システムは、
前記自身の資金口座に対するミラー口座と、
前記処理済み通知を受け付けた場合に、前記ミラー口座に対する日中当座貸越枠を変更する手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の決済システム。 - 単位営業日における顧客の口座の資金残高の推移に基づく貸越残高について当座貸越枠ごとの部分積数値を算出し、前記算出した部分積数値に前記当座貸越枠ごとに設定された課金利率を乗じて部分課金額を算出し、前記算出した部分課金額を足し合わせて日中課金額を算出し、前記顧客の口座に対して前記算出した課金額を課金することを特徴とする決済システム。
- 前記当座貸越枠は、有担保当座貸越枠、振込入金当座貸越枠、外国為替円決済当座貸越枠および無担保当座貸越枠の少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の決済システム。
- 前記決済システムは、
前記貸越残高について前記当座貸越枠ごとの部分積数値を算出するに際し、設定された課金利率が低い当座貸越枠の順で前記貸越残高に該枠を当てはめて相殺していくことにより、前記部分積数値を算出することを特徴とする請求項5記載の決済システム。 - 前記決済システムは、
顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を行い、前記担保口座に振り替えられた債券残高に応じて前記顧客に割り当てた日中当座貸越枠を変更し、
前記日中当座貸越枠の変更分に応じて前記有担保当座貸越枠を変更することを特徴とする請求項5記載の決済システム。 - 前記決済システムは、
前記顧客の口座に対して振込資金の振替処理が行われた場合に、前記振込資金の額に応じて前記振込入金当座貸越枠を変更することを特徴とする請求項5記載の決済システム。 - 前記決済システムは、
所定の決済時点で、前記振込入金当座貸越枠分について資金化処理を行って前記資金残高に編入することを特徴とする請求項5記載の決済システム。 - 前記決済システムは、
前記資金残高の推移に基づく預入れ残高に対する積数値を算出し、前記算出した積数値と所定の利率とに基づいて利息額を算出し、前記顧客の口座に対して前記算出した利息額を入金することを特徴とする請求項4記載の決済システム。 - 顧客の口座の資金残高が所定の残高変動要因に基づいて変動した場合に、該変動後の資金残高と該変動した時刻とを対応付けた資金残高変動履歴として記録する第1の記録手段と、
顧客の口座に対する当座貸越枠が所定の枠変動要因に基づいて変動した場合に、該変動後の当座貸越枠と該変動した時刻とを対応付けた当座貸越枠変動履歴として記録する第2の記録手段と、
前記第1の記録手段によって記録された資金残高変動履歴と前記第2の記録手段によって記録された当座貸越枠変動履歴とに基づいて貸越残高に関する積数値を算出する第1の算出手段と、
前記第1の算出手段によって算出された積数値と所定の課金利率とに基づいて日中課金額を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段によって算出された日中課金額に基づいて前記顧客の口座に対して課金処理を行う課金手段と、を備えたことを特徴とする決済システム。 - 前記第2の記録手段は、当座貸越枠ごとに当座貸越枠変動履歴を記録し、
前記第1の算出手段は、前記当座貸越枠ごとの積数値を部分積数値として算出し、
前記第2の算出手段は、前記部分積数値と前記当座貸越枠ごとに設定された課金利率とに基づいて部分課金額をそれぞれ算出し、前記算出した部分課金額を足し合わせて日中課金額として算出することを特徴とする請求項11記載の決済システム。 - 顧客ごとに口座を管理する口座管理システムを有する決済システムであって、前記口座管理システムは、
親口座と該親口座に対して階層的に下位に位置する子口座とからなる顧客口座の口座データを記憶する口座データ記憶手段と、
所定の資金残高変動要因を受け付けて、前記子口座の資金残高を管理する入出金管理手段と、
所定の当座貸越枠変動要因を受け付けて、前記親口座の当座貸越枠を管理する当座貸越枠管理手段と、
を備えたことを特徴とする決済システム。 - 前記口座管理システムは、
前記子口座の資金残高と前記親口座の前記当座貸越枠とに基づいて課金額を管理する課金管理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項13記載の口座管理システム。 - 前記口座管理システムは、
前記資金残高変動要因に基づいて変動した資金残高と前記資金残高変動要因が生じた時刻とを対応付けた資金残高変動履歴を記録する第1の記録手段と、
前記当座貸越枠変動要因に基づいて変動した当座貸越枠と該当座貸越枠変動要因が生じた時刻とを対応付けた当座貸越枠変動履歴を記録する第2の記録手段と、をさらに備え、
前記課金管理手段は、
前記資金残高変動履歴と前記当座貸越枠変動履歴とに基づいて、貸越残高に関する積数値を算出する第1の算出手段と、
前記積数値と所定の課金利率とに基づいて日中課金額を算出する第2の算出手段と、
前記日中課金額に基づいて前記親口座に対して課金処理を行う課金手段と、を備えたことを特徴とする請求項13記載の決済システム。 - 顧客の債券に関する担保差入れ指図を受け付けるとともに、日本銀行に設けられた前記顧客の債券口座から前記金融機関自身の債券口座に債券残高が振り替えられることにより前記日本銀行から発行される振替済み通知を受け付けて、前記金融機関自身の債券口座に振り替えらた債券残高を前記日本銀行の担保口座に振り替えるための担保差入れ依頼を前記日本銀行に送り、前記担保口座に振り替えた債券残高に応じて前記顧客の口座に割り当てた日中当座貸越枠を変更することを特徴とする決済方法。
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