JP2004003671A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
作用油圧制御の制御性が悪化し、油圧応答遅れが懸念される自動変速機において、当該応答遅れに伴うトルク変動を防止する。
【解決手段】
変速機の入力軸回転数および出力軸回転数を検出し、検出された入力軸回転数および出力軸回転数から変速機の実ギア比を求め、変速信号発生後かつイナーシャ相開始前の期間に、実ギア比を目標ギア比に保持するために変速機入力軸トルクを制御する期間を設ける自動変速機の制御装置および方法により解決する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気的にクラッチ作用油圧を制御しクラッチの解放,係合を実行する公知例として特開昭63−263248号公報に記載されたものがある。この公報には、シフトアップ時の解放側クラッチの作用油圧を制御する際、変速機の入力軸回転数(タービン回転数)を用い、この入力軸回転数が予め設定された前記入力軸回転数の目標値に追従するよう制御する方式が記載されている。この発明は、係合側クラッチの係合状態に応じて変化する前記入力軸回転数の変化に基づいて解放側クラッチの作用油圧がフィードバック制御されるため、安定した解放側クラッチ制御ができるように提案するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
当該公知例によれば、前記解放側クラッチの作用油圧を前記変速機入力軸回転数フィードバックで制御するため、フィードバック制御時にアクセルペダル踏み込によるエンジントルク上昇に伴う前記入力軸回転数の変化と前記解放側クラッチ解放に伴う前記入力軸回転数の変化との区別がつかず、前記作用油圧制御の制御性が悪化するといった課題が生じる。よって、変速時の解放側クラッチの解放タイミングずれによる変速ショック増大が避けられない。
【0004】
本発明は、前記のように作用油圧制御の制御性が悪化し、油圧応答遅れが懸念される自動変速機において、当該応答遅れに伴うトルク変動を防止することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
自動変速機の小型,軽量化及び制御性能向上の面からワンウェイクラッチを除去し、且つ電気的にクラッチ作用油圧を直接制御しクラッチの解放,係合を実行する変速機制御システムの確立が重要となってきている。前記システムでは、変速開始の指令信号が発生してから実際に変速するまでのクラッチ作用油圧を精度良く制御することが不可欠である。しかし、実際の車両では、大量生産に伴う変速機毎の機差,経年変化によるクラッチの摩耗及び油温変化に伴うクラッチ作用油圧の変化などに応じたマッチングが必要となり多くの工数を要していた。よって、何らかのセンサ信号を用いてクラッチ作用油圧の変化状態を検知し、この検知結果に基づいてフィードバック制御することが不可欠となる。しかし、1つの回転数のみを用いて前記フィードバック制御を実行した場合は、アクセルペダル踏み込によるエンジントルク上昇に伴う前記入力軸回転数の変化と前記解放側クラッチ解放に伴う前記入力軸回転数の変化との区別がつかず、前記作用油圧制御の制御性悪化による変速ショック増大が避けられない。
【0006】
本発明は、前記のように油圧応答遅れが懸念される自動変速機において、当該応答遅れに伴うトルク変動を防止するため、入力軸回転数および出力軸回転数から変速機の実ギア比を求め、変速信号発生後、少なくとも所定のクラッチを解放するまでの期間に、前記実ギア比を目標ギア比に保持するために変速機入力軸トルクを制御する期間を有する。
【0007】
好ましくは、前記クラッチトルクは、前記クラッチに作用する油圧を変化させることによって制御される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施例の構成図、図2は本発明の詳細ブロック図である。図1において、エンジン1は、本実施例においては4気筒エンジンである。このエンジン1には、点火装置2が設けられている。点火装置2は、エンジン1の気筒数に対応して4つの点火プラグ3を有している。エンジン1に空気を取り込むための吸気管4には、ここを通る空気の流量を調節する電子制御スロットル5,燃料を噴射する燃料噴射装置6および空気流量計7などの吸入空気量検出手段が設けられている。燃料噴射装置6は、エンジン1の気筒数に対応して4つの燃料噴射弁8を有している。また、前記燃料噴射弁8はエンジン1内のシリンダ(図示しない)に直接吹き込んでも良い。電子制御スロットル5とは、アクチュエータ9でスロットルバルブ10を駆動し空気流量を制御するものである。また、通常の自動車ではスロットルバルブ10とアクセルペダル(図示されていない)が機械式ワイヤ(図示されていない)で連結されており、一体一で動作する。
【0010】
エンジン1のクランク軸11にはフライホイール12が取り付けられている。フライホイール12には、クランク軸11の回転数、すなわちエンジン回転数
Neを検出するエンジン回転数検出手段13が取り付けられている。このフライホイール12と直結されているトルクコンバータ14は、ポンプ15,タービン16及びステータ17から成っている。タービン16の出力軸、つまり変速機入力軸18は、有段式変速機19と直結されている。ここでは、2つの摩擦係合装置22,23を係合,解放することにより変速が実行される、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチの有段式変速機19を例として説明する。変速機入力軸18には、変速機入力軸回転数(タービン回転数)Ntを測定する変速機入力軸回転数検出手段20が取り付けられている。有段式変速機19は、遊星歯車21,摩擦係合装置22,23から構成され、上記摩擦係合装置22,23を係合,解放することにより遊星歯車21の歯車比が変化して変速が実行される。これら摩擦係合装置22,23は、それぞれスプール弁26,27およびリニアソレノイド
28,29(調圧装置)により制御される。また、有段式変速機19は出力軸
24と連結されており、出力軸24の回転数を検出する変速機出力軸回転数検出手段25が取付けられている。これらの部品で自動変速機30が構成されている。
【0011】
以上説明したエンジン1および自動変速機30の駆動のためのアクチュエータは、制御コントローラ31により制御される。制御コントローラ31には、スロットル開度θ,変速機入力軸回転数Nt,エンジン回転数Ne,変速機出力軸回転数No,変速機油温Toil,アクセルペダル踏み込み量α,加速度センサ信号G等が入力され制御に用いられる。制御コントローラ31内の目標エンジントルク演算手段32は、電子制御スロットル5,燃料噴射装置6および点火装置2への制御信号が出力される。
【0012】
次に、図1,図2に記載した制御ブロック図の内容について図3,図4を用いて説明する。図3は、本発明を用いた場合の2−3変速特性のタイムチャート、図4は解放側初期油圧指令値の特性図である。ここでは、解放側クラッチの作用油圧の制御方法について記述する。制御コントローラ31内では、まず、前記入力軸回転数Ntと前記出力軸回転数Noが回転比演算手段33に入力され、有段式変速機19の回転比gr、いわゆるギア比が演算される。また、前記入力軸回転数Nt,前記エンジン回転数Ne及び制御コントローラ31のトルクコンバータ特性記憶手段34に記憶されたトルクコンバータ特性、慣性モーメント記憶手段35に記憶されたエンジン側慣性モーメントが入力軸トルク演算手段36に入力され、有段式変速機19の入力軸トルクTtが演算される。一般的にこの入力軸トルクは(1)式により求まる。
【0013】
Tt=t(Nt/Ne)*{c(Nt/Ne)*Ne−I*dNe/dt}…(1)
t:トルクコンバータトルク比(Nt/Neの関数)
c:トルクコンバータポンプ容量係数(Nt/Neの関数)
I:エンジン慣性モーメント
前記入力軸回転数Nt,前記回転比gr,前記入力軸トルクTt及び変速指令信号発生手段37からの指令信号Ssが初期油圧指令値記憶手段38に入力され、目標の油圧指令値Ptが演算される。このPtは図4に示す解放側初期油圧指令値のテーブルにより求められる。あるいは、関数式(2),(3)を用いることもできる。
【0014】
It*dNt/dt+Cd*Nt=Tt−Tc …(2)
Tc=μ*R*N*(A*Pt−F) …(3)
It:エンジン,トルクコンバータ慣性モーメント
Cd:粘性抵抗係数
Tc:クラッチトルク
μ:クラッチ摩擦係数
R :クラッチ有効半径
N :クラッチ枚数
A :クラッチピストン受圧面積
F :クラッチ反力
上記2つの式から変速前の目標油圧指令値Ptは、前記入力軸回転数Nt変化がほとんど発生しないため慣性項が削除され、横軸Tt−k*Ntの関数で表すことができる。よって、上記2つの式の変速機特性(It,Cdなど)を予め取得し、記憶しておくことによりテーブルを用いることなくPtが求まる。これが図3の油圧安定域の制御であり、図2に記載した油圧安定時期演算手段39から一定のタイマ値が前記初期油圧指令値記憶手段38に入力され、前記タイマ値の期間、図4の関数式に応じてPtが演算される。つまり、前記安定域の解放側油圧指令値が初期油圧指令値である。これにより、前記安定域の期間にアクセルペダルが踏み込まれてもTt及びNtに応じて作用油圧が制御されるため、安定したクラッチ作用油圧によるトルク特性が得られる。
【0015】
次に、前記変速機が大量生産などにより機差が生じた場合の対処方法を説明する。これは、図3に示す解放確認域から油圧保持書換域までの期間である。つまり、前記初期油圧指令値は、あくまでも一つの変速機について求めた特性であり、生産ばらつきなどによる油圧ばらつきのある変速機では変速特性が合わなくなる。例えば、図3に記載したように前記初期油圧指令値に対し実際の油圧が低下していた場合、解放側クラッチが早期に解放されるため1速側に変速しエンジン側回転数上昇に伴うトルク低下のショックが発生(破線)する。また、前記初期油圧指令値に対し実際の油圧が大きい場合、解放側油圧の解放指令(図3黒丸時期)発生に対し実際の油圧変化遅れに伴うクラッチ解放遅れが生じ、4速側変速に伴うイナーシャ相初期のトルク低下ショックが発生(破線)する。よって、車両が作られた後の初期走行時に何らかの信号を用いて解放側クラッチの解放ぎりぎりの油圧を決定する必要がある。まず、前記確認域は、意図的に前記クラッチを解放する期間であり、図2に記載した所定値記憶手段40に記憶された所定値を図1及び図2に記載した補正油圧指令値演算手段41に入力し前記初期油圧指令値記憶手段38で求まった目標油圧指令値の補正量を演算する。ここでは、基本的に前記目標油圧指令値を除々に減少させ、前記解放側クラッチを解放するように制御する。しかし、前記所定値が大き過ぎると前記クラッチの解放が急激に実行され後述のフィードバック制御に悪影響を及ぼす。よって、なるべく短い時間、且つフィードバック制御開始時のトルク変動の少ない前記所定値を予めマッチングにより求め、前記所定値記憶手段40に記憶しておく。次に、フィードバック域では、図1及び図2に記載した目標回転比設定手段42に記憶された前記有段式変速機19の目標回転比と前記回転比演算手段33で求めた実際の回転比とに偏差が生じた場合にクラッチ作用油圧のフィードバック制御が開始される。前記目標回転比は、前記変速指令信号発生手段37で得られた変速の種類毎に選択され、且つ前記変速指令信号が発生した時期に設定され、前記補正油圧指令値演算手段41に入力される。そして、前記フィードバック制御での前記偏差がゼロあるいは所定値になった時前記フィードバック制御を終了し、その時の目標油圧指令値を書換可能なメモリに記憶しておく。また、油圧応答遅れが懸念される自動変速機では、前記応答遅れに伴うトルク変動を防止するため、フェールセイフとしてトルク制御応答性の高い点火時期のフィードバック制御を併用する必要がある。これは、図2の前記目標エンジントルク演算手段32に詳しく記載した。点火時期制御に関しては、一般的に用いられているものであり、基本燃料噴射幅演算手段43から駆動回路の処理47は説明を省略する。但し、空燃比が大きい、いわゆるリーンバーンエンジンで点火時期リタード制御を実行すると失火が生じ、目的とする前記トルク変動抑制が困難であり、燃料量制御(空燃比制御)あるいは空気量制御による前記フェールセイフを実行する必要がある。次に、図3に記載した油圧保持書換域で、上記フィードバック域終了時に前記メモリに記憶された前記目標油圧指令値を保持する。この値が解放側クラッチが解放しないぎりぎりの油圧指令値であり、この値に応じて図2に記載の初期油圧書換手段48により前記初期油圧指令値記憶手段38の初期油圧指令値を書き換える。この場合、前記補正油圧指令値演算手段41で求められた補正油圧指令値を前記メモリに記憶しておき、前記メモリ内の前記補正油圧指令値のみを書き換えることも可能である。
【0016】
その後、図3の変速機出力軸トルクが低下する黒丸の時期、つまり締結側クラッチの締結開始時期を認識して解放側クラッチの目標油圧指令値をステップ的に低下させ前記解放側クラッチの解放を実行する。
【0017】
以上記載した目標油圧指令値は、それぞれ図1及び図2に記載した調圧指令発生手段49に入力され、前記リニアソレノイド28,29を駆動する信号に変換され出力される。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、油圧応答遅れが懸念される自動変速機において、当該応答遅れに伴うトルク変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の構成図。
【図2】本発明の詳細ブロック図。
【図3】2−3変速特性のタイムチャート。
【図4】解放側油圧指令値の特性図。
【符号の説明】
1…エンジン、19…有段式変速機、22…摩擦係合装置(摩擦係合装置)、28…リニアソレノイド、30…自動変速機、32…目標エンジントルク演算手段、33…回転比演算手段、36…入力軸トルク演算手段、38…初期油圧指令値記憶手段、41…補正油圧指令値演算手段、42…目標回転比設定手段。
Claims (2)
- エンジンに連結された自動変速機の所定のクラッチを係合解放することにより変速を実行し、前記変速する際に前記クラッチのクラッチトルクを制御する自動変速機の制御装置であって、
変速機の入力軸回転数および出力軸回転数を検出し、
検出された前記入力軸回転数および前記出力軸回転数から変速機の実ギア比を求める機能を有し、
変速信号発生後、少なくとも前記所定のクラッチを解放するまでの期間に、前記実ギア比を目標ギア比に保持するために変速機入力軸トルクを制御する期間を有する自動変速機の制御装置。 - 請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記クラッチトルクは、前記クラッチに作用する油圧を変化させることによって制御される自動変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003192543A JP2004003671A (ja) | 2003-07-07 | 2003-07-07 | 自動変速機の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003192543A JP2004003671A (ja) | 2003-07-07 | 2003-07-07 | 自動変速機の制御装置 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP34710396A Division JP3555367B2 (ja) | 1996-12-26 | 1996-12-26 | 自動変速機の制御装置及びその方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004003671A true JP2004003671A (ja) | 2004-01-08 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003192543A Withdrawn JP2004003671A (ja) | 2003-07-07 | 2003-07-07 | 自動変速機の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004003671A (ja) |
-
2003
- 2003-07-07 JP JP2003192543A patent/JP2004003671A/ja not_active Withdrawn
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