JP2003534804A - トランスフェクションの改良方法 - Google Patents

トランスフェクションの改良方法

Info

Publication number
JP2003534804A
JP2003534804A JP2002500735A JP2002500735A JP2003534804A JP 2003534804 A JP2003534804 A JP 2003534804A JP 2002500735 A JP2002500735 A JP 2002500735A JP 2002500735 A JP2002500735 A JP 2002500735A JP 2003534804 A JP2003534804 A JP 2003534804A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
cells
transfection
nucleic acid
vector
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002500735A
Other languages
English (en)
Inventor
ハート、スティーブン、ルイス
Original Assignee
アイシーエイチ プロダクションズ リミテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from GB0013090A external-priority patent/GB0013090D0/en
Priority claimed from GB0013089A external-priority patent/GB0013089D0/en
Application filed by アイシーエイチ プロダクションズ リミテッド filed Critical アイシーエイチ プロダクションズ リミテッド
Publication of JP2003534804A publication Critical patent/JP2003534804A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/87Introduction of foreign genetic material using processes not otherwise provided for, e.g. co-transformation
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/51Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
    • A61K2039/53DNA (RNA) vaccination

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 コンフルエントな細胞、または互いに接触し、非ウイルス性レセプターを標的とするベクターを用いる核酸を有する他の分裂が遅いまたは非分裂性の細胞は、細胞−細胞の連結を分断する薬剤、特にEGTAの同時使用によって改変することができる。ベクターは特に、(i)核酸、特に、興味ある配列をコードする核酸、(ii)インテグリン結合成分、特に、インテグリンを標的とするペプチド、(iii)ポリカチオン性の核酸結合成分、特にオリゴリジン、及び(iv)脂質成分、特に、DOPE、DOTMA、DOSPAまたはその組合せからなる、インテグリンを標的とするトランスフェクションベクター複合体である。トランスフェクションの改良方法の多くの適用について詳述する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本願発明は、細胞をトランスフェクトする改良方法に関する。
【0002】 用語「トランスフェクション」は、本願明細書において、核酸の細胞への導入
を表すために使用される。核酸はいずれを起源とするものでもよく、レシピエン
ト細胞も原核生物のものでも真核生物のものでもよい。
【0003】 遺伝子治療及び遺伝子ワクチンは、アンチセンス治療のように、種々の状態の
治療及び/または予防のための興味深い可能性を提供する技術である。このよう
な技術には、興味あるDNAの標的細胞への導入が要求される。未だに、十分なDNA
を特定の標的細胞へ移入する能力が、遺伝子治療、アンチセンス治療及び遺伝子
ワクチンの発展に対する主要な制限の1つである。ウイルス及び非ウイルス性の
DNA輸送系が提案されている。幾つかの場合には、RNAがDNAの代わりに用いられ
る。
【0004】 レセプター仲介の遺伝子輸送は、生理的な細胞プロセス,DNAを内在化させる
(internalise)ためのレセプター仲介のエンドサイトーシスを利用する非ウイ
ルス性の遺伝子移入方法である。例として、インシュリンレセプターを標的とす
るベクター(たとえば、Rosenkranz et al., Experimental Cell Research 199,
323-329 (1992)参照)、アシアログリコプロテインレセプター(たとえば、Wu
& Wu, Journal of Biological Chemistry 262, 4429-4432 (1987), Chowdhury e
t al., Journal of Biological Chemistry 268, 11265-11271 (1993)参照)、及
びトランスフェリンレセプター(たとえば、Ciriel et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 88, 8850-8854 (1991)参照)などがある。さらにベクターの例として
、神経芽腫細胞上のレセプターを標的とするモノクローナル抗体(Yano et al.,
2000)、葉酸結合リポソーム(Reddy & Low 2000, Reddy et al. 2000)、肝細
胞を標的とするためのガラクトース(Han et al. 1999, Bettinger et al. 1999
)及び肝細胞に対するアシアログリコプロテイン(Wu et al. 1991)などがある
【0005】 レセプター仲介の非ウイルスベクターは、ウイルス性ベクターに優る幾つかの
利点を有する。特に、それらに病原性がない点である。それらは、遺伝子輸送を
特定の細胞タイプに向けさせることを可能とし、封入される核酸分子の大きさに
限定されない。遺伝子発現は、核酸成分複合体がそのまま、エンドソームから細
胞質に放出され、そして核膜を通過し、核転写機構に到達して初めて成就する。
しかしながら、トランスフェクション効率は一般に、核酸成分のエンドゾームの
分解、核酸が核に入り損なうこと及び約150nmより大きい凝集物のクラスリン被
覆小胞からの排除のため、ウイルス性ベクターに比べて劣っている。
【0006】 インテグリンは、幾つかの異なったα及びβサブユニットからなるヘテロダイ
マーの膜タンパク質のスーパーファミリーである。それらは、細胞の細胞外マト
リックスへの接着、細胞−細胞相互作用及びシグナルトランスダクションにとっ
て重要である。インテグリン仲介の細胞加入は、ティパノソーマ・クルジ(Typa nosoma cruzi )(Fernandez et al., 1993)、アデノウイルス(Wickham et al.
, 1993)、エコウイルス(echovirus)(Bergelson et al., 1992)及び口蹄疫
ウイルス(Logan et al., 1993)、及び腸病原体・偽結核エルジニア菌(Isberg
, 1991)を含む多くの細胞内病原体による細胞の接着及び加入に利用される。卵
−精子の融合もまたインテグリン仲介である。偽結核エルジニア菌の浸潤−イン
テグリン仲介の内在化プロセスの集中的な研究によって、効率的な細胞加入に対
して、インテグリン−結合リガンドは、高結合親和性及び無極性の分布を有する
ものであることが実証された(Isberg, 1991)。インテグリン仲介の内在化プロ
セスは、直径1〜2マイクロメーターのバクテリア細胞の内在化を許容する食作
用様プロセスによって進行する(Isberg, 1991)。そのため、非ウイルス性ベク
ターのインテグリンへのターゲッティングは、病原体による細胞の感染を最少と
するプロセスに細胞をトランスフェクトする潜在能力を有し、レセプター仲介の
エンドサイトーシスにおけるクラスリン被覆小胞に負う大きさの限定を回避する
【0007】 インテグリン仲介のベクターの更なる利点は、インテグリンレセプターに対す
る膨大な数のペプチドリガンドが記載されていることであり、天然のタンパク質
リガンド由来の配列を含み(Verfaille, 1994; Wang, 1995; Staatz, 1991; Pie
rschbacher, 1984; Massia, 1992, Clements et al. 1994 & Lu et al., 1993)
、またはファージディスプレーライブラリーから選択される(Koivunen et al.
1995; 1993; 1994; O’Neil et al. 1992; Healy et al. 1995; Pasqualani et
al. 1995)ことである。
【0008】 保存されたアミノ酸配列アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)は、
多くの、しかし全てではない天然のインテグリン結合リガンド、例えば細胞外マ
トリックスタンパク質及びウイルスキャプシドの進化学的に保存された特徴であ
る。ペプチド、特に環状RGDドメインを含有するものもまた、インテグリンに結
合する。環状RGDドメインを含有するペプチドは、直鎖状ペプチドよりも高い親
和性でインテグリンに結合するので、ベクターに対する特に適したリガンドであ
る(Koivunen et al. 1995)。Hartらは以前、約900nmの長さのfd糸状ファージ
小胞の主要被覆タンパク質サブユニット中に呈示される環状RGDペプチドの複数
のコピーは、組織培養中の細胞により効率的に、インテグリン仲介の様式で内在
化されることを実証している(Hart et al., 1994)。そのファージ小胞はおそ
らく、それらの大きさによってエンドサイトースされた(endocytosed)小胞か
ら放出されるように、食作用様プロセスによって内在化されたのであろう(Hart
et al., 1994)。インテグリン標的レセプターは有することが見出されている
【0009】 環状RGD含有ペプチドGGCRGDMFGCGG[K]16[SEQ.ID.NO.:1]は、プラスミド
DNAとの複合体形成のための16のリジン尾部とともに合成される(Hart et al.,
1995)。顕著なレベルのインテグリン仲介の遺伝子発現は、上皮細胞系において
、ベクターGGCRGDMFGCG[K]16[SEQ.ID.NO.:2](Hart et al., 1995)及び
ベクターGGCRGDMFGC[K]16[SEQ.ID.NO.:3](WO96/15811)を用いて行われ
た。同類のペプチド[K]16GACRGDMFGCA[SEQ.ID.NO.:4]は、N末端に16のリ
ジンドメインを有し、そのプロトタイプのペプチド(WO96/15811及びHart et al
., 1997)より合成が容易であり、より良いトランスフェクションレベルを生み
出した。インテグリン仲介の遺伝子発現は一般に、約1〜10%のレベルで行われ
た。トランスフェクションメディウム中のクロロキン(chloroquine)の存在は
、試験された、全てではないが幾つかの細胞系においてトランスフェクションを
幾分、増大させた。
【0010】 WO98/54347は、インテグリン結合成分、ポリカチオン性核酸結合成分及び脂質
成分を含む混合物を記載し、また、 (i)核酸、特に興味ある配列をコードする核酸、 (ii)インテグリン結合成分、 (iii)ポリカチオン性核酸結合成分、及び (iv)脂質成分、 からなる複合体を記載する。当該複合体がトランスフェクションベクターである
。用語「インテグリン標的ベクター」、「インテグリン標的複合体」及び「イン
テグリン標的ベクター複合体」は、以後、同意語として、WO98/53437及び本願明
細書に記載される複合体を表すために使用される。
【0011】 驚くべきことに、WO96/15811に記載されるオリゴリジン/ペプチド/DNA複合
体中の脂質成分の封入が、WO98/53437に記載される複合体を提供し、DNAのトラ
ンスフェクションレベルを約1〜10%から約50〜ほぼ100%まで増加させること
が観察された。トランスフェクションレベルが劇的に増加するばかりでなく、過
去の経験に反してその増加は、内皮,上皮及び腫瘍細胞系を含む、試験された全
ての細胞系において観察された。
【0012】 しかしながら、試験された全ての細胞系が、トランスフェクションのための慣
用条件下でトランスフェクトされた、即ち、細胞はサブ・コンフルエント(sub-
confluent)であった。カチオン性リポソームを使用する効率のよい形質転換の
ために、また、ペプチドに基づく形質転換システムを使用するときに、有糸分裂
が必要となることが報告されている(Wilke, 1996; Tseng 1999; Brunner 2000
)。コンフルエントな細胞、及び/または、アフィジコリン(aphidicolin)な
どのDNAポリメラーゼ阻害剤で処理された細胞は非有糸分裂であり、ポリカチオ
ン性ベクターとでは低効率のトランスフェクトである。細胞の主な律速段階は、
トランスフェクトされた核酸の核への輸送であると考えられている。核酸の細胞
質を経由する核への輸送は遅く、核膜の孔は非常に小さくてトランスフェクトさ
れた核酸が素早く入り込むことができない。サブ・コンフルエントな培養は、そ
の中で細胞が分裂しており、トランスフェクションのために使用されるべきもの
と一般的に受け入れられている。WO98/54347のトランスフェクション複合体との
トランスフェクションを、コンフルエントである、即ち、非有糸分裂として有効
な細胞系を用いて行った。以前に、サブ・コンフルエントな培養に対して高い有
効性が認められたトランスフェクション複合体を用いても、実際には、トランス
フェクションの効率は劇的に落ちる、例としてサブ・コンフルエントな培養で約
40〜50%であることから、コンフルエントな培養で約5%〜8%に減少したこと
を見出した。
【0013】 EGTA(エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N
’−テトラ酢酸)、カルシウムキレーター(Schmid RW & Reilly CN, Analytica
l Chemistry 29, 264, 1957)は従来、イン・ビトロにおけるレトロウイルスベ
クターの気道上皮細胞への遺伝子転移効率(Wang, 1998)、及びイン・ビボにお
けるレトロウイルス及びアデノウイルスのベクターのウサギ気管上皮への遺伝子
転移効率(Wang, 2000)を増大するものと記載されてきた。提案されるメカニズ
ムは、上記2つのウイルスで異なっているが、EGTAについて提案されている役割
は同一であって、上皮細胞の側底膜上へのウイルスレセプターの曝露である。
【0014】 しかしながら、カルシウムキレート剤EGTAの、ポリカチオン/DNA複合体を含
むベクターを用いるトランスフェクションを増大するための使用は、カルシウム
イオンがポリカチオン/DNA複合体による効率のよい形質転換については重要で
あることから、禁忌であるとされている(Haberland, 1999)。
【0015】 本願発明は、EGTAの、DNA、インテグリン結合成分、ポリカチオン性核酸結合
成分及び脂質成分からなるトランスフェクションベクターとの使用が、イン・ビ
トロ及びイン・ビボにおいて、ゆっくりと分裂する、または非分裂である、即ち
実質的に非有糸分裂の細胞であるコンフルエントな細胞のトランスフェクション
効率を増大するという驚くべき観察に基づくものである。我々は、2つの異なる
リポーター遺伝子を用いるイン・ビトロでの気道上皮細胞のトランスフェクショ
ン効率が約4倍増加し、マウス肺のイン・ビボでのトランスフェクションもまた
約4倍増加したことを見出した。
【0016】 当該観察は、カルシウムイオンは従来、ポリカチオン性ベクターを用いるトラ
ンスフェクションに対して重要であることが示されていたという事実から、さら
に、細胞は有糸分裂ではなかったという事実からみて、特に驚くべきものである
。カルシウムキレート剤EGTAの使用は、ハーバーランド(Haberland)の観察に
基づいて、トランスフェクションを減じ、増加しないと予測されていた。さらに
、及び別個に、導入された核酸の核へのアクセスの問題が未だ残っている。上記
に説明したように、非有糸分裂細胞のトランスフェクションにおける主な律速段
階は、トランスフェクトされた核酸の核への輸送であると考えられている。核酸
の細胞質を経由しての核への輸送は遅く、核膜の孔は非常に小さくてトランスフ
ェクトされた核酸が素早く入り込むことができない。Wang (1998)は、EGTAで処
理した分化上皮の増殖を促進するためにケラチノサイト成長因子(KGF)を用い
たことに注目すべきである。我々の研究において、このような薬剤は使用されな
かった。
【0017】 本願発明は、細胞、特に、互いに接触しているコンフルエントな細胞または他
のゆっくり分裂する細胞または非分裂性の細胞、即ち、核酸を有しているが実質
的に非有糸分裂である細胞をトランスフェクトする方法であって、細胞を、核酸
からなるレセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤
で処理することからなる上記方法を提供する。
【0018】 互いに接触しているコンフルエントな細胞または他のゆっくり分裂する細胞ま
たは非分裂性の細胞は、培養液、例えばイン・ビトロのコンフルエント培養液の
形でもよい。このような培養液を生産する方法は周知であり、イン・ビトロでコ
ンフルエントに成育し得る如何なる細胞を本願発明に従ってトランスフェクトし
てもよい。
【0019】 または、互いに接触しているコンフルエントな細胞または他のゆっくり分裂す
る細胞または非分裂性の細胞をイン・ビボでトランスフェクトしてもよい。コン
フルエントな、分化された、故に実質的に非分裂性の細胞からなり、かつ、トラ
ンスフェクションに抵抗性であることが認められている組織の特有の例が気道上
皮であり、嚢胞性線維症及び喘息に対する遺伝子治療の標的である。他の上皮及
び内皮の組織も、本願発明のトランスフェクションに対して特に適切な標的であ
る。
【0020】 本願発明の方法において分断されるべき細胞−細胞の連結は、隣接細胞間の連
結である。連結の的確な型は、如何なる組織、如何なる細胞の型でもよく、その
連結には、間隙ある連結(gap junction)、堅い連結(tight junction)及び粘
着性の連結(adherence junction)が含まれる。堅い連結は、上皮で認められ、
閉鎖帯としても知られている。堅い連結は、上皮細胞の側方先端縁に局在し、上
皮に渡る溶質の拡散を制御する主たる透過性バリアを生じさせる。堅い連結はカ
ルシウム依存性であり、膜貫通タンパク質、オクルジン(occludin、Anderson (
1995)及びMitric (1998)参照)によって形成される。粘着性の連結は、堅い連結
の直下に局在し、E−カドヘリン、細胞−細胞の接着の維持に必須のカルシウム
依存性接着分子によって形成される(Takeichi (1990)、Takeichi (1991)参照)
。本願発明の分断すべき細胞−細胞の連結は、いずれかの特定の組織におけるま
たはいずれかの特有の型の細胞間の連結に限定されない。分断され得る連結の例
には、イン・ビボのある型の組織、例えば上皮及び内皮組織において認められる
ものを含む。
【0021】 間隙ある連結及び堅い連結などの細胞−細胞の連結を分断し得る薬剤が知られ
ており、例として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)または特にEGTAなどのカル
シウムキレート剤及びカルシウム結合剤がある。EGTAは、EDTAよりもカルシウム
に対する特異性が高いので、一般的に好ましいと言える。また、イン・ビトロで
もイン・ビボでも細胞には寛容である。
【0022】 更なるアプローチは、間隙ある連結、堅い連結または粘着性の連結などでの細
胞−細胞の接着に関連する物質、例えばカドヘリンに対する抗体の使用である。
このような物質に対する抗体、特にモノクローナル抗体、例えば抗カドヘリンを
、細胞−細胞の連結を分断することができる薬剤として使用してもよい。
【0023】 細胞を、そのベクターを使用するトランスフェクションに対して通常の様式で
選択されるベクターと処理する。細胞−細胞の連結を分断する薬剤を、細胞を当
該ベクターと処理する前に使用してもよいが、細胞を当該薬剤及びベクターと同
時にまたは実質的に同時に処理する方が好ましい。
【0024】 細胞−細胞の連結を分断する薬剤は、当該連結を分断するのに有効な量で使用
される。イン・ビトロでの使用のためのEGTAの場合、EGTA濃度は約1mM以下、例
えば約0.5mMから1mMである。より高い濃度で使用してもよいが、毒性に関して
注意が払われるべきである。約1mMの濃度がイン・ビトロでの使用にとって通常
好ましい。イン・ビボでの使用にとって、EGTA濃度は、約25mMから200mM、例え
ば100mMであってもよい。200mMより高い濃度を使用してもよいが、この場合も高
濃度での毒性に関して注意を払うべきであり、例えば400mMは致死的となり得る
。約100mMの濃度が通常好ましい。
【0025】 細胞はイン・ビトロまたはイン・ビボでトランスフェクトされてもよい。イン
・ビトロでのトランスフェクションは、非分裂性の細胞を興味ある遺伝子または
アンチセンスDNAでトランスフェクトするために特に有用である。 このような細胞は、使用のために、例えば、患者への投与またはタンパク質生
産のために回収され得る。または、このような細胞は、そのコンフルエントな状
態、例えば、イン・サイツで、薬物試験のための疾患モデルとして使用され得る
。コンフルエントな細胞は、通常、非分裂性で、分化し得るものであるが、サブ
・コンフルエントな細胞である組織のより良いモデルにしばしばなり得ると考え
られる。 細胞は、マイクロウェルで、またはエアリキッドインターフェイス(air-liqu
id interface)などのより高性能のシステムを用いて、コンフルエントに成育さ
れ得る。コンフルエントな細胞を薬物試験のためのモデルとして使用するために
成育するための多くのシステムが開発されている。このようなシステムにおいて
細胞をトランスフェクトできることは大きな優位点である。
【0026】 コンフルエントな細胞及び他のゆっくり分裂するまたは非分裂性の細胞であっ
て、お互い接触し、分化した細胞含む細胞は、イン・ビボでトランスフェクトさ
れ得る。本願発明は、このようなトランスフェクション方法を提供し、また、細
胞−細胞の連結を分断する薬剤及び、特にコンフルエントな細胞、または他のゆ
っくり分裂するまたは非分裂性の細胞であって、お互いに接触している細胞、例
えば実質的な非有糸分裂の細胞のトランスフェクションのための製剤を製造する
、レセプターを標的とするベクターを提供する。
【0027】 このような細胞は、例えば、気管支及び肺上皮を含む、気道上皮のいずれかの
部分の細胞などの内皮または上皮細胞、及び角膜上皮を含む。気道上皮は、嚢胞
性線維症及び喘息のための遺伝子治療の重要な標的である。
【0028】 本願発明で使用し得るベクターは、特に、細胞表面レセプターを標的とするい
ずれかの非ウイルスベクターである。上記したように、多くのこのようなベクタ
ーが提唱されており、インシュリン、アシアログリコプロテイン及びトランスフ
ェリンを標的とするベクターを含む(上記参照)。ベクターの更なる例には、神
経芽腫細胞上のレセプターを標的とするモノクローナル抗体(Yano et al., 200
0)、葉酸結合リポソーム(Reddy & Low 2000, Reddy et al., 1999)、肝細胞
を標的とするためのガラクトース(Han et al., 1999, Bettinger et al., 1999
)及び肝細胞のためでもあるアシアログリコプロテイン(Wu et al., 1991)が
含まれる。ポリカチオン性の成分からなるベクターを使用することは優位点とな
り得る。
【0029】 インテグリンレセプターを標的とするベクター、特にWO96/15811に記述される
ベクター、及び特にWO98/54347及び本願明細書に記述されるトランスフェクショ
ンベクター複合体は、特に有利である。
【0030】 どのようなベクターが使用されても、核酸は、天然原料から得てもよく、また
、組換えによってまたは化学合成によって製造してもよい。それは例えば、核酸
ターゲッティング分子などの、特定の機能を有する分子を形作るために修飾され
てもよい。核酸はDNAでもRNAでもよい。DNAは、一本鎖でも二本鎖でもよい。核
酸は、遺伝子治療、遺伝子ワクチンまたはアンチセンス治療での使用に適したも
のであってもよい。核酸は、特別な遺伝子治療のための標的である遺伝子、即ち
、所望の遺伝子治療によるより新しい治療のための遺伝子、例えば、変異または
別の欠失を有する遺伝子または遺伝子欠失がある遺伝子または、存在しないもし
くは不充分な量で存在するもしくは過量で存在する遺伝子であって、その効果は
疾病または疾患の原因となる遺伝子であっても、または関連していてもよい。核
酸は、遺伝子ワクチンとしてまたはアンチセンス治療剤として機能することがで
きる分子であってもよい。核酸は、完全なコーディング配列であっても、対応す
るものであってもよく、またはコーディング配列の部分であってもよく、または
コントロールもしくは制御エレメントであってもよく、または遺伝子のコーディ
ング配列及びコントロールもしくは制御エレメントを含むその上流及び下流の非
翻訳配列から選択される全てのもしくは幾つかのエレメントからなる遺伝子配列
に対応するものであってもよい。
【0031】 または、核酸は市販品として利用できる、例えば産業的にまたは科学的に有用
である酵素などのタンパク質;医薬として有用な、例えば治療上または予防上、
薬剤またはワクチンとして利用できるタンパク質;または診断上有用な、例えば
ELISAでの使用のための抗原、をコードしていてもよい。市販品として有用なタ
ンパク質を生産することができる宿主細胞は、場合によっては「細胞工場」と呼
ばれる。
【0032】 適当な転写及び翻訳制御因子が一般的に提供される。遺伝子治療のために、核
酸成分は一般的に、プラスミドまたはベクター中の核酸挿入の形で呈示される。
しかしながら、幾つかの例においては、発現を達成するために核酸成分をベクタ
ーに編入する必要はない。例えば、遺伝子による予防接種及びアンチセンス治療
は、裸の(naked)核酸を用いて達成することができる。
【0033】 核酸は一般的に、DNAであるが、幾つかの場合、例えば癌の予防接種においてR
NAを用いることができる。核酸成分は、プラスミド成分または成分“D”として
以下に参照される。
【0034】 レセプターを標的とするベクターは、特にWO98/54347に記述されるインテグリ
ンを標的とする複合体、即ち、 (i)核酸、特に興味ある配列をコードする核酸、 (ii)インテグリン結合成分、 (iii)ポリカチオン性核酸結合成分、及び (iv)脂質成分 からなる複合体である。
【0035】 WO98/54347によれば、インテグリン結合成分とは、細胞表面に見出されるイン
テグリンに特異的に結合することができるあらゆる成分である。インテグリン結
合成分は、天然に生じるインテグリン結合リガンド、例えば細胞外マトリックス
タンパク質,ウイルスキャプシドタンパク質,細菌性タンパク質のインベーシン
(invasin),蛇毒のジスインテグリン(disintegrin)タンパク質またはこれら
のタンパク質のインテグリン結合フラグメントであってもよい。このようなイン
テグリン結合タンパク質及びそのフラグメントは、天然原料から、または組換え
技術によって得てもよいが、それらは大量に合成・精製するのは難しく、DNAま
たはRNAに直接、またはDNAまたはRNA結合のためのポリカチオン性因子への接合
を必要とし、イン・ビボで免疫原性である。
【0036】 インテグリン結合ペプチドを使用することは、特に合成,精製及び貯蔵の容易
さ、化学修飾の潜在能力及びイン・ビボでの潜在的な低免疫原性のため好ましい
。インテグリン結合ペプチドの例は、Verfaille,1994 #635、Wang,1995 #
645、Staatz,1991 #539、Pierschbacher,1984 #314、Massia,1992 #86
、Clementsら,1994及びLuら,1993、及びKoivunenら,1995、1993、1994、O’N
eilら,1992、Healyら,1995、及びPasqualaniら,1995に示されている。
【0037】 上記に示されたように、保存アミノ酸配列アルギニン−グリシン−アスパラギ
ン酸(RGD)を含有するペプチドは、高親和性でインテグリンに結合する。従っ
て、RGD配列からなるペプチドが特に有効である。インテグリンとペプチドリガ
ンドとの間の親和性は、RGDドメインの両側に位置するアミノ酸配列によって影
響を受ける。RGD配列からなる領域の全てまたは部分を包含する環状領域を有す
るペプチドにおいては、RGD配列の立体配置上の自由度が制限される。このよう
なペプチドは一般的に、直鎖状のものよりインテグリンレセプターに対して高い
親和性を有する。このような環状ペプチドが特に好ましい。環状ペプチドは、ペ
プチド中のRGD配列の両側に位置する2つのシステイン残基の供給によって、ゆ
えにジスルフィド形成を可能とすることによって形成される。システイン残基は
、RGD配列から1以上、例えば6残基までの残基によって、離されていてもよく
、また、好ましくは両システインがRGD配列の両端に直接近接していない方がよ
いが、直接RGD配列に近接させてもよい。更なる2つのシステイン残基が存在し
ていてもよく、2つのジスルフィド結合の形成を可能とする。
【0038】 ジスルフィド結合の形成による環状化を許容するアミノ酸配列の例は、CRGDMF
GC[SEQ.ID.NO.:5]である。この配列CRGDMFGCだけからなる、または構成分
とするペプチドが、本願発明によるインテグリン結合ペプチドとして優位に用い
られてもよい。配列CRGDMFGCからなる及び効果的なインテグリン結合リガンドで
あるペプチドの例は、ペプチドGGCRGDMFGC [SEQ.ID.NO.:6]、GGCRGDMFGCG
[SEQ.ID.NO.:7]、GGCRGDMFGCA [SEQ.ID.NO.:8]及びGACRGDMFGCA[
SEQ.ID.NO.:9]である。
【0039】 ペプチドGACDCRGDCFCA[SEQ.ID.NO.:10]は、RGDループを安定化するため
の2つのジスルフィド結合を形成する潜在能力を有する。このペプチド及び2つ
のRGD安定化ジスルフィド結合を形成する潜在能力を有する他のペプチドは、本
願発明によるインテグリン結合リガンドとして特に有用であると言える。
【0040】 しかしながら、全てのインテグリン結合ペプチドが保存されたRGD配列を含有
するわけではない。例えば、ペプチドGACRRETAWACA[SEQ.ID.NO.:11]及びG
ACRRETAWACG[SEQ.ID.NO.:12]は、インテグリン特異的なペプチドである。
配列CRRETTAWAC[SEQ.ID.NO.:13]からなる他のペプチドは、他の非RGDペプ
チド、特に2以上のシステイン残基の提供によるジスルフィド結合形成のための
潜在能力を有するものと同様に用いられてもよい。
【0041】 ペプチド配列は、既知のリガンドに基いて、例えば天然に生じるインテグリン
結合リガンドのインテグリン結合ドメインに基いて、またはインテグリンに結合
する既知のペプチドに基いて設計されてもよい。
【0042】 前記のように、インテグリンは、細胞表面に見出されるヘテロダイマーのタン
パク質ファミリーである。それらは、幾つかの異なったα及びβサブユニットか
らなる。多くのタイプの細胞に見出されるインテグリンもあり、また、より特異
的な、例えばα5及びαvインテグリンが一般的で、異なった範囲に見出されるも
のもある。インテグリン結合リガンドは、種々のインテグリンに対する親和性に
おいて様々に変化する。例えばGACRGDMFGCA[SEQ.ID.NO.:9](ペプチド1)
は、α5及びαvインテグリンに対して親和性を有するが、非特異的である(O’N
eilら,1992;Hartら,1997)。GACDCRGDCFCA[SEQ.ID.NO.:10](ペプチド
5)は、インテグリンαvに対して高親和性を有するが、αv特異的ではない(Koi
vunenら,1995;Hartら,1997)。しかしながら、GACRRETAWACG[SEQ.ID.NO.
:11](ペプチド6)は、保存されたRGD領域を含有していないが、α5β1特異的
である(Koivunenら,1995)。多くのインテグリン結合ペプチド及びそれらのイ
ンテグリン特異性を、下記の表に示す。
【0043】 ペプチド番号及び 配列 SEQ.ID.NO. インテグリン特異性 ペプチド1(αv,α5β1) GACRGDMFGCA SEQ.ID.NO.:9 ペプチド2(αv,α5β1) GACRGDMFGCGG SEQ.ID.NO.:15 ペプチド5(αv) GACDCRGDCFCA SEQ.ID.NO.:10 ペプチド6(α5β1) GACRRETAWACG SEQ.ID.NO.:12 ペプチド7(α4β1) GAGPEILDVPST SEQ.ID.NO.:16 ペプチド8(α4β1) GACQIDSPCA SEQ.ID.NO.:17 ペプチド9(α5β1) GACRRETAWACGKGACRRETAWACG SEQ.ID.NO.:18
【0044】 配列による上記した多くのペプチドにおいて、最初の2つの残基“GG”または
“GC”が存在し、スペーサーである。本願発明の好ましい態様は、修飾されたス
ペーサーがトランスフェクション効率を改善したという観察に基づくものである
【0045】 従って、本願発明の方法において、レセプターを標的とするベクターは、好ま
しくは、 (i)核酸、特に興味ある配列をコードする核酸、 (ii)インテグリン結合成分、 (iii)ポリカチオン性核酸結合成分、及び (iv)脂質成分、 からなる複合体であって、当該複合体において、インテグリン結合成分はインテ
グリン結合エレメント及びスペーサーエレメントからなり、当該スペーサーエレ
メントはジペプチドスペーサーGG(グリシン−グリシン)及びGA(グリシン−ア
ラニン)より長く及び/または疎水性である。
【0046】 このような好ましいスペーサーエレメントは一般的にペプチドであり、即ち、
アミノ酸残基からなる。アミノ酸は天然のものでも非天然のものでもよく、L−
またはD−立体配置を有していてもよい。
【0047】 好ましいスペーサーエレメントは、ジペプチドより長くてもよい。例えば、3
以上のアミノ酸、例えば4以上のアミノ酸、例えば5以上のアミノ酸、例えば10
以上までのアミノ酸を含んでいてもよい。アミノ酸は同じものでも異なるもので
もよいが、多数のリジン残基は、オリゴリジン配列が本願発明の複合体の好まし
いポリカチオン性核酸結合成分であるので、好ましいスペーサーにおいては避け
るべきである。
【0048】 当該好ましいスペーサーはジペプチドGG及びGAより疎水性であってもよい。例
えば、グリシン及びアラニンより疎水性であるアミノ酸を使用し得る。疎水性の
アミノ酸の例は周知であり、ε−アミノカプロン酸(amino hexanoic acid)を
含む。好ましいスペーサーは、ジペプチドGG及びGAより長いかもしくは疎水性で
あってもよく、またより長くかつ疎水性であってもよい。
【0049】 後者のタイプのスペーサーの例は、XSXGA[SEQ.ID.NO.:14](S=セリン
、A=アラニン及びX=ε−アミノカプロン酸)である。このスペーサーは高い疎
水性である。
【0050】 GAまたはGGのスペーサー、または上記した好ましいスペーサーは、一般的にイ
ンテグリン結合ペプチドのN−末端にある。
【0051】 多くの場合、上記の「インテグリン結合ペプチド」は、インテグリン結合ペプ
チドエレメント及びスペーサージペプチドGGまたはGCを含むこと(例えば、イン
テグリン結合エレメントCRGDMFGC[SEQ.ID.NO.:5]及びジペプチドスペーサ
ーGGからなるGGCRGDMFGC[SEQ.ID.NO.:6]を参照)が十分に認識されるであ
ろう。本願発明の好ましいスペーサーエレメントは、上記のペプチド中のGGまた
はGAスペーサーの代わりをする。
【0052】 例えば、インテグリン結合ペプチドは、次のCRGDMFGC[SEQ.ID.NO.:27]
、CRGDMFGCG[SEQ.ID.NO.:5]、CRGDMFGCA[SEQ.ID.NO.:28]、CDCRGDC
FCA[SEQ.ID.NO.:29]、CRRETAWACA[SEQ.ID.NO.:30]、CRRETAWAC[SE
Q.ID.NO.:13]、CRRETTAWAC[SEQ.ID.NO.:31]、CRRETAWACG[SEQ.ID
.NO.:32]、CRGDMFGCGG[SEQ.ID.NO.:33]、GPEILDVPST[SEQ.ID.NO.
:34]、CQIDSPCA[SEQ.ID.NO.:35]、CRRETAWACGKGACRRETAWACG[SEQ.ID
.NO.:36]を含む。更なる適したペプチドが例えばWO95/14714に記述されてい
る。
【0053】 好ましいスペーサーは、上記のペプチドのいずれかに、好ましくはその末端で
、連結していてもよい。用語「インテグリン結合成分」及び「インテグリン結合
ペプチド」及び本願明細書で用いられるいずれかの他の同様な用語は、本願明細
書に記述される全てのインテグリン結合成分を含み、スペーサーエレメントGG及
びGAをもつもの並びに好ましいスペーサーエレメントをもつものを含む。
【0054】 ポリカチオン性核酸結合成分は、DNAまたはRNAに結合する能力が保持されてい
るいずれかのポリカチオンである。例えば、4〜100のカチオン性モノマー、例
えば10〜20、特に約16のものが存在していてもよい。オリゴリジンが特に好まし
く、例えば、3〜100のリジン残基、例えば10〜20、例えば13〜19、例えば14〜1
8、例えば15〜17残基、特に16、17または18残基、特に[K]16(“K”はリジンを
示す)が好ましい。
【0055】 ポリカチオン性DNAまたはRNA結合成分は、インテグリン結合成分に、優位に結
合もしくは付着されてもよい。結合されたインテグリン結合成分/ポリカチオン
性DNAまたはRNA結合成分は、成分“I”として下記に参照される。例えば、ポリ
カチオン性DNAまたはRNA結合成分は、インテグリン結合成分に、例えば、オリゴ
リジンの場合はペプチド結合によって、化学的に結合されてもよい。ポリカチオ
ン性成分は、インテグリン結合成分の如何なる位置で結合していてもよい。イン
テグリン結合成分及びポリカチオン性DNAまたはRNA結合成分の好ましい組み合わ
せは、ペプチド結合を経てペプチド、例えば前記のペプチドに結合するオリゴリ
ジン、特に[K]16である。
【0056】 組合されたインテグリン結合成分/ポリカチオン性のDNAまたはRNA結合成分は
、本願明細書に定義及び記述されるインテグリン結合成分である、本願明細書に
定義及び記述されるポリカチオン性DNAまたはRNA成分であるポリカチオン性DNA
またはRNA結合部位に連結するかもしくは結合されたインテグリン結合部位を有
する成分である。
【0057】 脂質成分の使用は、試験される全てのペプチド及び全ての細胞のタイプに対し
てトランスフェクションを大きく増長するのに対して、試行されている他の増長
技術、例えばクロロキンは、試験された全てではなく、幾つかの細胞タイプにお
いて小規模にしかトランスフェクションを増長しないことがWO98/54347に記載さ
れている。
【0058】 脂質成分は、カチオン性リポソームであってもよいし、形成してもよい。脂質
成分は、カチオン性脂質及び膜を不安定化する及びフゾジェニックな(fusogeni
c)性質を有する脂質から選択される1以上の脂質、特にカチオン性脂質及び膜
を不安定化する性質を有する脂質との組み合わせであってもよいし、構成されて
いてもよい。
【0059】 好ましい脂質成分(“L”)は、中性脂質ジオレイルホスファチジルエタノー
ルアミンであるか構成分とし、本願では“DOPE”として参照される。DOPEは、時
には“フゾジェニックな”性質として参照される、膜を不安定化する性質を有す
る(Farhoodら,1995)。他の脂質、例えば中性脂質は、膜を不安定化する性質
、特にDOPEと同様な、膜を不安定化する性質を有し、DOPEの代わりに、または同
様に用いられてもよい。
【0060】 少なくとも1つの長鎖アルキル基を有する他のホスホリピド、例えば、ジ(ア
ルキル長鎖)ホスホリピドが用いられてもよい。ホスホリピドは、ホスファチジ
ル基、例えばホスファチジルアルカノールアミン基、例えばホスファチジルエタ
ノールアミン基から構成されていてもよい。
【0061】 さらに好ましい脂質成分は、本願では“DOTMA”として参照される、カチオン
性脂質・N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル−
アンモニウムクロライドであるかまたは構成される。DOTMAはカチオンの性質を
有している。他のカチオン性脂質を、DOTMAに付加して、またはDOTMAに対する選
択肢の1つとして用いてもよく、特にDOTMAに類似する性質を有するカチオン性
脂質であってもよい。このような脂質は、例えば3つの短鎖アルキル基と1つの
長鎖アルキル基によって置換された四級アンモニウム塩である。短鎖アルキル基
は、同じでも異なっていてもよく、メチル及びエチル基から選択されてもよい。
少なくとも1つ、そして3つまでの短鎖アルキル基がメチル基であってもよい。
長鎖アルキル基は、直鎖または分枝鎖、例えばジ(長鎖アルキル)アルキル基を
有していてもよい。
【0062】 もう1つの好ましい脂質成分は、本願では“DOSPA”として参照される、脂質
・2,3−ジオレイル−N−[2−(スペルミジンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジ
メチル−1−プロパンアミニウムトリフルオリドアセテート(2,3-dioleyloxy-N-
[2-(spermidinecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propanaminiumtrifluorido
-acetate)であるかまたは構成される。類似の脂質は、DOSPAに付加して、また
はDOSPAに対する選択肢の1つとして用いてもよく、特にDOSPAに類似する性質を
有するカチオン性脂質であってもよい。このような脂質は、例えばDOSPAの場合
とは異なった短鎖アルキル基を有する。
【0063】 好ましい脂質成分は、DOPE及び、例えば上記のような、1以上の他の脂質成分
からなる。特に好ましくは、DOPE及びDOTMAの混合物からなる脂質成分である。
このような混合物は、カチオン性のリポソームを形成する。DOPEとDOTMAとの等
モル混合物が、特に有効であることが見出されている。このような混合物は、一
般に“リポフェクチン(lipofectin)”として知られており、“Lipofectin”の
名称で市販され利用可能となっている。“リポフェクチン(lipofectin)”とい
う語は、本願においては通常、DOPEとDOTMAとの等モル混合物を示すのに用いら
れる。リポフェクチンと類似の性質を有する、カチオン性のリポソームである他
の脂質混合物を用いてもよい。リポフェクチンが特に有用であり、試験された全
ての細胞タイプにおいて有効である。
【0064】 さらに好ましい脂質成分は、DOPEとDOSPAとの混合物からなる。このような混
合物もまた、カチオン性のリポソームを形成する。重量比3:1のDOSPA:DOPE
の比であるDOPEとDOSPAとの混合物が、特に有効である。このような混合物は、
膜ろ過水において、“Lipofectamine”の名称で市販され利用可能となっている
。DOPE、DOTMA及びDOSPAからなる混合物、例えばリポフェクチンとリポフェクタ
ミンとの混合物を用いてもよい。
【0065】 他のカチオン性脂質、例えばDOTAP(Boehringer-Mannheim)及びTfxレンジ内
の脂質(Promega)が市販され利用可能となっている。DOTAPは、N−[1−(2,3−
ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフ
ェートである。Tfx試薬は、合成カチオン性脂質[N,N,N’ ,N’−テトラメチ
ル−N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,3−ジ(オレオイルオキシ)−1
,4−ブタンジアンモニウムヨーダイドとDOPEとの混合物である。全ての試薬が
同量のカチオン性の脂質成分を含有しているが、フゾジェニックな脂質,DOPEは
、異なった量含有している。
【0066】 しかしながら、リポフェクチン及びリポフェクタミンは、本願発明のLID複合
体における脂質成分として、DOPTA及びTfx剤よりも著しく効果的であると考えら
れる。
【0067】 想定されるインテグリン結合成分、ポリカチオン性DNAまたはRNA結合成分、ま
たは脂質成分の有効性は、本願明細書に記述される方法を用いて容易に決定され
る。
【0068】 上記のような、インテグリンを標的とするトランスフェクション複合体をトラ
ンスフェクションベクターとして使用するトランスフェクション効率は、脂質成
分:インテグリン結合成分:DNAまたはRNAの比率によって影響される。トランス
フェクトされる、如何なる特別なタイプの細胞に対する、選択された如何なる成
分の組合せに対しても、至適な比率が、成分を異なった比率で混合して、例えば
本願に記載されているような細胞タイプに対するトランスフェクション率を測定
するだけで決定できる。
【0069】 例えば、DNA成分(D)としてSV40プロモーター下のルシフェラーゼ(レポータ
ー遺伝子)をコードするプラスミドであるpGL2プラスミド、組み込まれるインテ
グリン結合成分/ポリカチオン性のDNA結合成分(I)としての[K]16GACRGDMFGCA
[SEQ.ID.NO.:20]([K]16−ペプチド1)及び脂質成分(L)としてのリポフ
ェクチン(DOPE:DOTMA 1:1のモル比)からなる組み合わせが成分の至適な
比率を見つけるために試験された。1μgのプラスミド(D)当り1μgのリポフ
ェクチン(L)及び4μgの[K]16−ペプチド(I)は、リポフェクチンを欠く複合
体よりも100倍活性であった。より多量のリポフェクチンの添加は、リポフェク
チンの用量依存的にトランスフェクション活性を減少させた。
【0070】 1μgのプラスミドDNAまたはRNA(核酸成分,D)当り4μgの[K]16−ペプチド
・インテグリン結合成分/ポリカチオン性のDNAまたはRNA結合成分(I)当り0.7
5μgのリポフェクチン(L)の至適トランスフェクション比率が、3つの異なっ
た細胞系、メラノーマ細胞,内皮細胞及び上皮細胞に対して見出された。その比
率は後に、他の異なった細胞系及び他のオリゴリジン−ペプチドに対して有効で
あることが見出された。0.75:4:1のL:I:D重量比は、0.5nmolリポフェクチン
:1.25nmol[K]16−ペプチド6:0.25pmolプラスミドpGL2制御のモル比に対応す
る。リポフェクチンが脂質成分として用いられているとき、0.75:4:1のL:I:
D重量比、または対応するモル比が好ましい。
【0071】 リポフェクチンがリポフェクタミン(DOPE/DOSPA)に置き換わる、成分の組
み合わせに対して、至適な比率は、12μgのリポフェクタミン:4μgの[K]16
ペプチド6:1μgのプラスミドDNAまたはRNAであることが見出された。12:4
:1のL:I:D重量比、または対応するモル比が、リポフェクタミン含有複合体
に対して適当である。他の系に対する至適な比率を、同じように決定することが
できる。
【0072】 リポフェクチン及びリポフェクタミンは、トランスフェクションを増大するの
に特に効果的であると考えられる。リポフェクチンは、ほんの極微量で十分であ
るという利点を有する。そのため、起こる可能性のあるあらゆる副作用が最少な
ものとなる。上記に示したように、リポフェクタミンを用いるときのL:I:Dの
至適な重量成分比は、12:4:1である。リポフェクチンを用いると、その至適
な比率は0.75:4:1のみである。
【0073】 上記のトランスフェクション複合体は、成分(i),(ii),(iii)及び(iv)を混合
することによって生産され得る。
【0074】 成分はどのような順番で混合されても構わないが、脂質成分を最後に加えない
方が一般的に好ましい。組み合わされたインテグリン結合成分/ポリカチオン性
DNAまたはRNA結合成分が存在する場合は、成分を次の順番で組み合わせることが
一般的に好ましい:脂質成分;組み合わされたインテグリン結合/ポリカチオン
性DNAまたはRNA結合成分;DNAまたはRNA成分、例えばリポフェクチン、オリゴリ
ジンペプチド成分、DNAまたはRNA成分の順。
【0075】 イン・ビボでEGTAとともに使用するため、以下のように成分を混合することが
好ましい:脂質成分をインテグリン結合/ポリカチオン性DNAまたはRNA結合成分
と混合する;当該DNAまたはRNAをEGTAと混合する;当該2つの混合物を混合する
【0076】 インテグリン結合成分、ポリカチオン性核酸結合成分及び脂質成分からなるト
ランスフェクション混合物は、上記の核酸含有トランスフェクション複合体を、
例えば混合など、核酸を当該混合物に混入させることによって製造することに使
用することができる。または、当該トランスフェクション混合物は、核酸成分の
代わりに、ポリカチオン性核酸結合成分、例えばタンパク質に結合できる他の成
分からなる複合体の製造に用いることができる。
【0077】 本願発明のトランスフェクション混合物の個々の成分が、そのトランスフェク
ション複合体に関連して各々上記されている。好ましい成分、好ましい成分の組
み合わせ、好ましい成分比及び好ましい混合する順番が、混合物及び複合体の製
造に関して、そのトランスフェクション複合体に関連して上記されている。
【0078】 トランスフェクション混合物は、好ましくは、脂質成分としてのDOPE及びDOMT
Aの等モル混合物(リポフェクチン)、及び組み合わされたインテグリン結合/
核酸結合成分としてのオリゴリジンペプチド、特に[K]16−ペプチドからなる。
好ましいリポフェクチン:オリゴリジンペプチドのモル比は、0.75:4である。
【0079】 上記に示したように、本願発明は、細胞特にコンフルエントな細胞または互い
に接触しているゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞に、核酸をトランスフェ
クトする方法であって、細胞をイン・ビトロまたはイン・ビボで、核酸からなる
レセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤と、トラ
ンスフェクションを達成するために適した条件下で接触することからなる方法を
提供する。
【0080】 本願発明はまた、宿主細胞特にコンフルエントな細胞または互いに接触してい
るゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞において核酸を発現するプロセスであ
って、宿主細胞をイン・ビトロまたはイン・ビボで、核酸からなるレセプターを
標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤と、トランスフェクシ
ョンを達成するために適した条件下で接触し、次いで細胞に核酸を発現させる条
件下で宿主細胞を培養することからなるプロセスを提供する。
【0081】 本願発明はまた、宿主細胞特にコンフルエントな細胞または互いに接触してい
るゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞においてタンパク質産生のためのプロ
セスであって、宿主細胞をイン・ビトロまたはイン・ビボで、タンパク質をコー
ドする核酸からなる、レセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を
分断する薬剤と、トランスフェクションを達成するために適した条件下で接触し
、宿主細胞をタンパク質産生に適した条件下で培養して、細胞にタンパク質を発
現させ、タンパク質を得ることからなるプロセスを提供する。タンパク質は宿主
細胞からまたは培養メディウムから得ることができる。
【0082】 本願発明はさらに、核酸をトランスフェクトされた、コンフルエントな細胞ま
たは互いに接触しているゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞を提供し、また
、このような細胞の子孫も提供する。
【0083】 本願発明はさらに、候補となる医薬製剤をテストするのに使用するための疾病
モデルであって、疾病モデルを創造するのに適した核酸をトランスフェクトされ
た、コンフルエントな細胞または互いに接触しているゆっくり分裂しているか非
分裂性の細胞からなる疾病モデルを提供する。
【0084】 本願発明はまた、(i)核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び(ii)
細胞−細胞の連結を分断する薬剤からなり、医薬的に適した担体と混合または結
合した医薬組成物を提供する。その組成物はワクチンでもよい。
【0085】 本願発明はまた、遺伝子における欠陥及び/または欠乏によって、ヒトまたは
非ヒト動物において生じる状態の治療または予防の方法であって、(i) 欠陥また
は欠乏を治すのに適した核酸からなる、レセプターを標的とするベクター及び(i
i)当該治療または予防に有効な量で細胞−細胞の連結を分断する薬剤を、ヒトま
たは非ヒト動物に投与することからなる方法を提供する。
【0086】 本願発明はまた、ヒトまたは非ヒト動物の治療的または予防的な免疫方法であ
って、(i)適当な核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び(ii)当該治
療的または予防的な免疫に有効な量で細胞−細胞の連結を分断する薬剤をヒトま
たは非ヒト動物に投与することからなる方法を提供する。
【0087】 本願発明はまた、ヒトまたは非ヒト動物のアンチセンス治療の方法であって、
(i)アンチセンス核酸からなる、レセプターを標的とするベクター及び(ii)当該
アンチセンス治療に有効な量で細胞−細胞の連結を分断する薬剤をヒトまたは非
ヒト動物に投与するアンチセンスDNAからなる方法を提供する。
【0088】 本願発明はまた、(i)核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び(ii)
細胞−細胞の連結を分断する薬剤の、遺伝子における欠損及び/または欠陥によ
るヒトまたは非ヒト動物において生じる状態の予防のための、ヒトまたは非ヒト
動物の治療的または予防的免疫のための、または、ヒトまたは非ヒト動物のアン
チセンス治療のための製剤の製造のための使用を提供する。
【0089】 非ヒト動物は、例えば哺乳動物、鳥、魚、そして特に、市販品として飼育され
た動物である。
【0090】 ベクター中のDNAまたはRNAの核酸は、意図された使用、例えば遺伝子治療、遺
伝子ワクチンまたはアンチセンス治療に適している。DNAまたはRNA及び引いては
そのベクターが、意図された目的のために有効な量で投与される。トランスフェ
クションを達成するため及び細胞にタンパク質を発現させるために適した条件は
周知である。適した条件は、例えば以下の例において記述される。
【0091】 上記の治療及び使用は、個々のベクター、薬剤または製剤を適当な様式で投与
することによって実施することができ、例えば投与は、気道上皮の場合などの局
所であってもよい。
【0092】 さらなる態様において、本願発明は、(i)核酸からなるレセプターを標的とす
るベクター及び(ii)細胞−細胞の連結を分断する薬剤からなるキットを提供する
【0093】 本願発明はまた、細胞−細胞の連結を分断する薬剤及び以下の品目:(a)イ
ンテグリン結合成分;(b)ポリカチオン性核酸結合成分及び(c)脂質成分から
なるキットを提供する。このようなキットは、(d)核酸または核酸の発現に適し
たプラスミドもしくはベクターをさらに含んでいてもよく、プラスミドまたはベ
クターは空かまたは核酸からなる。
【0094】 成分(a)〜(d)キットは、例えばインテグリンを標的とするトランスフェクショ
ンの複合体または上記される混合物に関連して上記されている通りである。
【0095】 キットは一般的に、好ましくは、例えば上記したような、好ましい成分比及び
成分を混合する好ましい順番を指示する説明書からなる。キットは、遺伝子治療
、遺伝子ワクチンまたはアンチセンス治療に使用することができる。または、宿
主細胞を、市販品として利用可能なタンパク質をコードする核酸でトランスフェ
クトするために、言い換えれば、いわゆる「細胞工場」を製造するために用いる
ことができる。
【0096】 本願発明のキットにおいて、好ましい成分を含む成分は、例えば本願発明の複
合体に関連して上記に示される通りである。
【0097】 本願発明はまた、コンフルエントな細胞または他の互いに接触しているゆっく
り分裂しているか非分裂性の細胞を、レセプターを標的とするベクターでトラン
スフェクトする効率を増大する方法であって、細胞−細胞の連結を分断する薬剤
で細胞を処理することからなる方法を提供する。
【0098】 各々の場合、ベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤が各々上記されて
いる。ベクターは非ウイルス性ベクターである。コンフルエントな細胞または他
の互いに接触しているゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞は本質的に非有糸
分裂性である。
【0099】 ベクターは特に、インテグリンを標的とするトランスフェクションベクター複
合体であり、上記及びWO98/53437に記載されるものであって、特にその好ましい
複合体の1つである。インテグリン結合成分は、好ましくは興味ある組織内で豊
富に発現されるインテグリンを標的とする。例えば、α5β1インテグリンは気管
支上皮細胞で豊富に発現されるので、α5β1インテグリンに指向したインテグリ
ン結合成分は、好ましくはこのような気道細胞のトランスフェクションに使用さ
れる。ポリカチオン性核酸結合成分は、好ましくは上記のようにオリゴリジンで
ある。脂質成分は、好ましくはカチオン性リポソームを形成でき、好ましくはDO
PE及び/またはDOTMAであるかまたは含む、例えばその等モル混合物、またはDOS
PAであるかもしくは含む、例えばDOPEとDOSPAの混合物、例えば1:3のDOPE:D
OSPA重量比の混合物である。成分間の比率は、成分の混合する順番と同様に、好
ましくは上記の通りである。
【0100】 細胞−細胞の連結を分断する薬剤は、特にカルシウム結合剤、特にEGTAであり
、または、細胞−細胞の接着に関連する物質、例えば抗カドヘリンに対する抗体
でもよい。
【0101】 遺伝子治療のための標的はよく知られており、遺伝子性の障害、例えば嚢胞性
線維症、種々の癌、感染、例えばウイルス感染、例えばHIVでの感染を含む。例
えば、p53遺伝子でのトランスフェクションは、癌治療について大きな可能性を
提供する。遺伝子ワクチンのための標的もよく知られており、天然原料由来のワ
クチンがヒトへの使用には非常に危険を伴うものであり、組換えワクチンが、例
えばB型肝炎ウイルス、HIV、HCV及び単純ヘルペスウイルスでは必ずしも有効で
ない病原体に対する予防接種を含む。アンチセンス治療のための標的も知られて
いる。さらに、遺伝子標的(targets for gene)治療及びアンチセンス治療は、
疾患の遺伝学的基礎の知識が増大するように、更なる遺伝子標的予防接種と同様
に提案され続けている。
【0102】 これらの標的の多くは、コンフルエントな細胞または他の互いに接触している
ゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞、即ち、本質的に非有糸分裂性である細
胞からなる組織である。本願発明は、トランスフェクション効率を増大し、それ
故治療の有効性を増大する。
【0103】 WO98/53437に記述の及び上記のトランスフェクションベクター複合体は内皮細
胞及び上皮細胞を含む種々の異なった細胞タイプ、及び腫瘍細胞をトランスフェ
クトすることが実証されている。ほとんどのプラスミドトランスフェクションベ
クターでのトランスフェクションに特に抵抗性の細胞タイプ、例えば神経芽腫細
胞、一次平滑筋細胞及び心筋細胞、及び造血細胞を含む、試験された全ての細胞
タイプのトランスフェクションが、本願発明のトランスフェクション複合体を用
いて、高効率で達成されている。これは、効率的な遺伝子治療,遺伝子による予
防接種及びアンチセンス治療を、細胞タイプに関する以前のような限定なしに可
能とする。例えば、癌治療のためのp53遺伝子を用いるトランスフェクションは
、大きな可能性を秘めているが、効率的なトランスフェクションが達成され得る
細胞タイプの範囲によって現在限定されている。本願発明は、コンフルエントな
細胞または他の互いに接触しているゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞をト
ランスフェクトするために使用されたとき、このようなベクターのトランスフェ
クション効率を増大し、それ故治療の有効性を増大する。
【0104】 神経芽腫細胞の効率的なトランスフェクションは、本願発明の複合体が、重大
な、子供における悪性である神経芽腫のワクチンとしてまたは治療に使用するこ
とができる。プラスミド仲介のトランスフェクションに特に抵抗性がある一次平
滑筋細胞及び心筋細胞の効率的なトランスフェクションは、筋肉及び循環系に影
響を与える疾患及び他の病理学的状態が現在、遺伝子治療によって治療され得る
ことを実証している。このような状態の1つが再狭窄である。バルーン血管形成
後、30〜50%の場合にプラークが再形成される。血管壁での細胞増殖を防ぐ遺伝
子を、本願発明の複合体を用いて、再狭窄を減少させるために導入することがで
きる。
【0105】 造血細胞は、プラスミド仲介のトランスフェクションに特に抵抗性であるもう
1つの細胞タイプである。本願発明の複合体を用いるトランスフェクションの効
率は、60%を超えるが、造血細胞に関連する疾患、例えば白血病及び骨髄幹細胞
異常の、遺伝子治療、遺伝子による予防接種及びアンチセンス治療を現在可能な
ものとしている。例えば、サイトカイン遺伝子のトランスフェクションを、アジ
ュバント免疫療法に用いることができる。
【0106】 本願発明の複合体は、細胞内輸送のための、及び抗ウイルス及び癌治療を可能
とする、アンチセンスオリゴヌクレオチドの送達のための効率的なベクターであ
ることが証明されている。
【0107】 さらに、本願発明の複合体は、慣用のベクターを用いるのが困難な、非常に大
きなDNA分子、例えば125kbより大きいDNAの細胞内輸送に有効であることが証明
されている。これによって人工の染色体の細胞への導入が可能となった。
【0108】 高レベルでのトランスフェクションがイン・ビボで実証されており、本願発明
の複合体の遺伝子治療,アンチセンス治療及び遺伝子による予防接種への利用性
を確認している。
【0109】 全ての場合で、本願発明は、コンフルエントな細胞または他の互いに接触して
いるゆっくり分裂しているか非分裂性の細胞が処理されたとき、トランスフェク
ション効率を増大し、それ故治療の有効性を増大する。
【0110】 気道の、例えば気管支上皮のトランスフェクションは、例えば嚢胞性線維症及
び喘息の遺伝子治療のための利用を証明する。角膜内皮のトランスフェクション
は、例えば緑内障における角膜または角膜器官の移植に影響を与える眼疾患の治
療のための利用性を実証する。本願発明は、トランスフェクション効率を増大し
、それ故このような上皮及び内皮の組織の治療の有効性を増大するのに特に有用
である。
【0111】 増大されたトランスフェクションレベルは、本願発明の方法を、望むタンパク
質を生産することができる宿主細胞、いわゆる「細胞工場」の製造に特に適した
ものとする。長期間の生産のため、導入された核酸が宿主細胞のゲノムに編入さ
れるにせよ、されないにせよ、安定に維持されることが好ましい。そのことは直
ぐに確認され得る。既に示されているように、このように生産されたタンパク質
の範囲は広く、特定の及び産業上の利用のための酵素、治療及び予防において使
用するためのタンパク質、ワクチンにおいて使用するための免疫原及び診断に使
用するための抗原を含む。
【0112】 コンフルエントな細胞は、例えば上皮または内皮の組織の、例えば薬物をテス
トするのに使用するための組織モデルとして用いることができる。本願発明のこ
のような細胞の有効なトランスフェクションを達成する能力は、コンフルエント
な細胞培養の疾病モデルとしての潜在的な使用を大きく増やす。このようなトラ
ンスフェクトされた細胞培養は、薬物テストにおける使用として、本願発明の一
部である。
【0113】 従って、本願発明は、疾病の組織モデルにおける薬物をテストする方法を提供
し、その組織モデルは、コンフルエントな細胞を核酸で、その細胞を核酸からな
るレセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤と接触
させることにより、トランスフェクトすることによって得られるトランスジェニ
ックのコンフルエント細胞からなる。
【0114】 本願発明は、高効率のトランスフェクションを可能とする高効率の標的化ベク
ターを可能とするレセプターを標的とするベクターで特に有用である。好ましい
態様において、ベクターは4つの規格単位(modular)エレメント;オリゴリジ
ン,特に[K]16、DNAまたはRNA結合エレメント;高親和性インテグリン結合ペプ
チド、例えば本願明細書に記載されているペプチド;DNAまたはRNA配列であって
、プラスミド中でもよく、ウイルス性のプロモーター及び増幅するエレメントに
よって制御されてもよい;カチオン性リポソームDOTMA/DOPE(リポフェクチン
)からなる。カチオン性リポソーム製剤DOTMA/DOPEとオリゴリジン−ペプチド
/DNAまたはRNA複合体との組み合わせは、効能ある組み合わせである。または、
DOPE/DOSPA製剤は、DOTMA/DOPE製剤の代わりに、または加えて使用することが
できる。複合体形成に関連する可変部、及びLID複合体によるトランスフェクシ
ョン様式の至適化が実証されている。加えて、アトミックフォースマイクロスコ
ピー(atomic forces microscopy)による分析が、複合体の構造を評価するため
に実行されている。
【0115】 至適なLIDトランスフェクション複合体の形成において最も重要な可変部は、
3つの成分の比率及びそれらの混ぜ合わせる順番であると考えられる。同じ組成
物が、試験される全ての細胞系に対して至適であると考えられる。
【0116】 本願発明の複合体の作用メカニズムは、予想されない高レベルのトランスフェ
クション、及びその高効率でトランスフェクトされ得る、驚くべき広範囲の細胞
のために、未だに解明されていない。
【0117】 しかしながら、本願発明の結果としてなされた以下の観察は、脂質成分の役割
が、オリゴリジン−ペプチド/DNAまたはRNA複合体によって仲介されるトランス
フェクション効率を増大することであることを示す。
【0118】 LID(リポフェクチン/[K]16−ペプチド/プラスミド)複合体でのトランスフ
ェクションレベルは、同じ仕込み比率で調製されたLKD(リポフェクチン/[K]16 /プラスミド)複合体またはLD(リポフェクチン/プラスミド)複合体でのもの
より、3〜6倍高かった。これは、インテグリン−ターゲッティング部位、つま
りペプチドが、これらの複合体のトランスフェクション効率における重要な因子
であることを示す。
【0119】 至適化されたLIDトランスフェクション複合体は、LD複合体での至適なトラン
スフェクションに必要なリポフェクチンのたった1/7しか含有されていない。[K]16 −ペプチドがない至適なLID複合体においてと同じ、[K]16−ペプチド/−プラ
スミドに対するリポフェクチンの比率を含有する低比率のLD複合体でのトランス
フェクションは、必ずしも全ての細胞をトランスフェクトするわけではない。こ
れは、LID複合体におけるリポフェクチンの役割が、インテグリン受容体結合ペ
プチドによって仲介されるトランスフェクションを増大することであることを支
持している。
【0120】 さらに、我々は、LID及びID複合体の両方が、同じ大きさの球体粒子を形成す
ることを見出した。しかしながら、至適なLD複合体が、幾つかの管関連(tubule
-associated)粒子をもつ管状の(tubular)ネットワークを形成し、LID及びID
のトランスフェクションからの、異なったタイプの細胞相互作用及びトランスフ
ェクション機構を示唆している。
【0121】 プラスミドDNAまたはRNAのインテグリン−ターゲッティングオリゴリジンペプ
チドのオリゴリジンエレメントによる縮合、及びその複合体のカチオン性の帯電
は、リポフェクチンと会合したとき、高レベルの発現につながり、インテグリン
ターゲッティング部位、即ちペプチドは無関係である。LKD複合体とのトランス
フェクション実験は、LID複合体と同じ順番で、同じ仕込み比率で混合し、LDま
たはKD複合体より効率的であった。オリゴリジンエレメント及び組み合わされた
インテグリン結合成分/ポリカチオン性DNAまたはRNA結合成分Iのインテグリン
ターゲッティングペプチドドメインの相対的重要性の寄与を評価するため、LID
複合体によるトランスフェクションは、[K]16及び[K]16インテグリンターゲッテ
ィングペプチド6、[K]16GACRRETAWACG[SEQ.ID.NO.:21]の割合の範囲を含
んで調製される。トランスフェクション発現データは、[K]16ペプチド6の増加す
る量が、[K]16、及びインテグリン−ターゲッティング(リガンド結合)ドメイ
ン、即ちペプチド6の量への用量依存性に代わる、複合体でのより高い効率性を
示す。
【0122】 至適なトランスフェクション複合体を形成するために一緒に混合される成分の
比率はまた、リポフェクチン仲介の増幅の可能な機構に関して情報を提供する。
リポフェクチンのDOTMAエレメントはカチオン性であり、複合体の活性を増幅す
るが、DOPEは、エンドゾーム膜を不安定化する能力を有し(Farhood et al.,19
95)、プラスミドDNAまたはRNAのエンドゾームの放出を増大する。LID複合体の
成分は、定まった至適比で一緒に混合される。形成される粒子はまた、これらの
エレメントを同じ比率で含有すると推定される。そのため、プラスミドDNAまた
はRNAからの3nmolの負のチャージは、[K]16−ペプチドからの約21nmolの正のチ
ャージと会合する。しかしながら、リポフェクチンは、さらなる0.25nmolの正の
チャージしか提供しない。これは、予想に反して、リポフェクチンのLID複合体
における増幅効果は、関連するチャージではなく、DOPE成分の膜不安定化効果に
関連し得ることを示唆する。
【0123】 作用機構の次に示す理論に限定されないが、トランスフェクションプロセスの
初期段階の次に示すモデルは、本願明細書に記載される観察に基くものであり、
LID複合体によるトランスフェクションの驚くべき、そして予想できないほど高
い有効性を説明するために提案され、その高い有効性は調査された全ての細胞タ
イプにおいて見出される。
【0124】 複合体は、リポフェクチン、オリゴリジン−ペプチド及びプラスミドDNAまた
はRNAのランダムな会合によって静電的に形成される。オリゴリジン−ペプチド
の相対的に高い比率は、プラスミド分子当りのインテグリン−ターゲッティング
リガンドの高比率を確保する。1以上のプラスミドを含有し、何千ものオリゴリ
ジン−ペプチドと会合し、そのため非常に高濃度のインテグリン−ターゲッティ
ングリガンドを含有する粒子が形成される。リポフェクチンをオリゴリジン−ペ
プチドと混合し、その後プラスミドDNAまたはRNAを添加することによって、3つ
の成分全てを含有する複合体が形成される。その粒子は、高密度のリガンドのた
め、細胞表面のインテグリンに対して高アビディティ(avidity)を有し、結合
して、貪食プロセスによって内在化される(Hart et al.,1994)。その小胞は
融合してエンドソームを形成し、酸性条件下、粒子内に含有されるDOPEエレメン
トがエンドソーム膜の不安定化及びその後のプラスミドの細胞質への放出を仲介
する。リポフェクチンを欠く、貪食された粒子は、エンドソーム内で分解される
。インテグリン−ターゲッティング部位を欠く粒子は、細胞結合及び内在化にお
いてより低い効率である。オリゴリジン−ペプチドのリポフェクチン及びオリゴ
リジン([K]16)エレメントは両方とも、LID複合体の相対的な有効性に寄与する
が、オリゴリジン/ペプチド成分のインテグリン−ターゲッティング能力は、複
合体の至適なターゲッティング及び内在化にとって重要であると考えられる。
【0125】 嚢胞性線維症(CF)は、白色人種における最も一般的な単一遺伝子の疾患であ
る。罹患率は主として肺の疾病と関連する。CFは嚢胞性線維症膜貫通コンダクタ
ンス制御タンパク質(CFTR)、塩素イオンの分泌を仲介する細胞膜チャンネルを
コードする遺伝子における変異によって引き起こされる。CFTR遺伝子転移による
気管支細胞におけるこのような欠損の是正は、生化学的輸送欠損を是正し、それ
故肺疾患を是正することとなる。臨床試験は今までのところ鼓舞するデータを生
み出しているが、より効果のある非毒性ベクターに対する必要性に焦点が当てら
れている。
【0126】 本願発明によれば、上記ペプチド6からなるインテグリンを標的とするトラン
スフェクションベクター複合体は、α5β1を標的とするペプチドであるが、16リ
ジンからなるオリゴリジン、即ち、K16(成分I);リポフェクチン(成分L)
;及びリポーター遺伝子(成分D)に連結され、トランスフェクションのために
EGTAと共に使用された。サブ・コンフルエントな正常かつCF上皮細胞系は、緑蛍
光リポート遺伝子(green fluorescent report gene)でトランスフェクトされ
、40〜50%のトランスフェクション効率が達成された。その後細胞は、コンフル
エントな単層で培養され、より密接な気道構造が形成された。予期されたように
、トランスフェクション効率は、コンフルエントな細胞について劇的に減少し、
約5%に過ぎなかった。コンフルエントな細胞とEGTAとの共処理は、トランスフ
ェクション効率を20〜30%に回復させる。サブ・コンフルエントな細胞の同じEG
TA処理はトランスフェクション効率に影響を与えず、EGTAとの処理またはトラン
スフェクションプロセス自身がコンフルエントな単層における有糸分裂の割合を
増大するという実証はなかった。そのため、ベクターは、EGTAと処理したとき、
ずっと良い効率で、コンフルエントな細胞または他の互いに接触しているゆっく
り分裂しているか非分裂性の細胞をトランスフェクトする。その処理は、コンフ
ルエントな細胞のトランスフェクション効率を、サブ・コンフルエントな急速に
分裂する細胞で認められる効率の約半分に回復する。
【0127】 更なる研究によって、緑蛍光タンパク質とルシフェラーゼリポーター遺伝子の
両方を使用するイン・ビトロの気道上皮細胞のトランスフェクション効率は約4
倍に増大され、ルシフェラーゼリポーター遺伝子を使用するマウス肺のイン・ビ
ボのトランスフェクションもまた約4倍増大されたことが示された。DNAポリメ
ラーゼの阻害、それ故アフィジコリンでの有糸分裂によって、増大されたトラン
スフェクション効率が有糸分裂での増大とは関連しないことが示された。
【0128】 上記に説明したように、増大されたトランスフェクション効率が、細胞−細胞
の連結を分断する薬剤の使用から生じ、有糸分裂での増大には関連しないという
我々の観察は、驚くべきものであり、非ウイルス性ベクターで処理されたコンフ
ルエントな細胞で観察される低トランスフェクション効率がこのような細胞中に
存在する核膜の機能であるという定説に反するものである。
【0129】 分裂している細胞において、核は有糸分裂の間、プラスミドDNAに接近可能と
なり、それ故障壁ではない。コンフルエントな細胞はゆっくり分裂するか非分裂
性であり、それ故本質的に非有糸分裂性である。このような細胞において核はプ
ラスミドDNAの核機構への接近を防ぐために障壁を形成する。コンフルエントな
細胞間の細胞−細胞の連結を分断する薬剤の使用は、外側膜上に曝露されるレセ
プターの有効性を増大し、レセプターを標的とするベクターの結合及び取込みを
増大する。核障壁理論が正しければ、ベクターの結合、それ故DNAの取込みを単
に増大することは、DNAはコンフルエントな細胞中の核障壁を通過できないので
、トランスフェクション効率を増大しないであろう。我々の結果は、有糸分裂は
細胞−細胞の連結を破壊する薬剤での処理によって増大されないことを示す。従
って及び定説に反して、コンフルエントな細胞内の核は、トランスフェクション
を限定する障壁として作用していない。さらに、カルシウム結合剤EGTAがトラン
スフェクション効率を増大するという我々の知見は、カルシウムイオンがポリカ
チオン性複合体による効果的なトランスフェクションにとって重要であるという
従来の教理に反する。
【0130】 以下の非限定的な例は、本願発明を詳説する。例1〜14は、インテグリン結合
トランスフェクションベクター複合体およびその使用と関連する。例15及び16は
、イン・ビトロ及びイン・ビボでのコンフルエントな細胞のトランスフェクショ
ンを詳説する。例はその付随する図を参照する。
【0131】 以下の非限定的な例は、本願発明を詳説する。「材料及び方法」の節は、他に
特定されなければ、全ての例に関連する。例1〜12は、トランスフェクション複
合体の産生を詳説し、及び、比較例として、分裂している細胞のトランスフェク
ションを詳説する。例13〜15は、非分裂性及び/またはコンフルエントな細胞の
トランスフェクションを詳説する。
【0132】 (例)材料及び方法 細胞系 細胞系COS−7(サル腎上皮細胞)は、10%ウシ胎児血清(FCS)、L−グルタミ
ン,ペニシリン及びストレプトマイシンを付加した、ダルベッコの修飾イーグル
培地(DMEM;Life Technologies,Paisley,U.K.)でメインテインした。ECV3
04(自然形質転換ヒト臍静脈内皮細胞)は、199培地(DMEM;Life Technologies
,Paisley,U.K.)で成育した。HT1080線維肉腫細胞及びA375Mメラノーマ細胞
は、DMEM及び10%FCS中でメインテインした。IMR2神経芽腫細胞は、DMEM F12栄
養ミックス(Nutrient Mix)(Life Technologies)で成育した。細胞系は全て
、5%CO2水飽和雰囲気の37℃インキュベーターで成育した。
【0133】ペプチド合成 ペプチド6の配列,GACRRETAWACGは、ファージディスプレーライブラリー(Koi
vunen et al.,1995)からのα5β1特異性ペプチドに基く。オリゴリジン−ペプ
チド[K]16GACRRETAWACGは、以下のように合成した。
【0134】 保護アミノ酸及びプレロードした(preload)Gly−Wangレジン(resin)は、C
albiochem−Novabiochem(Nottingham,U.K.)から取得した。溶媒及びHBTU
[2-(1H-benzotriazol-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate
]は、Perkin−Elmer Applied Biosystems,U.K.から取得した。ペプチドは、M
odel 431A updated Applied Biosystems Solid Phase Synthesiserにおいて、0.
1mmolのプレロードしたGly−Wangレジン(Calbiochem−Novabiochem,Nottingha
m,U.K.)上で、基本的なフィードバックモニタリングサイクル、及びカップ
リング試薬としてHBTUを用いて合成した。9−フルオレニルメチルオキシ−カル
ボニル(9-fluorenylmethyloxy-carbonyl)は、一時的なα−アミノ酸保護のた
めに用いた。側鎖の保護基は、Lys及びTrpに対してはテトラ−ブチルオキシカル
ボニルであり、Cysに対してはトリチル(trityl)、Argに対しては2,2,5,7,8−
ペンタメチルクロマン−6−スルフォニル(2,2,5,7,8-pentamethylchroman-6-su
lphonyl)、Gluに対してはテトラ−ブチルエステル及びThrに対してはテトラ−
ブチルエーテルであった。ペプチドのレジンからの切断及び脱保護は、ペプチジ
ル(peptidyl)−レジンを10mlトリフルオロ酢酸,0.25mlエタンジチオール(et
hanedithiol),0.25mlトリイソプロピルシランを含有する混合物10mlと20℃、
2時間処理することによって行った。ペプチドは、氷冷ジエチルエーテルを用い
て沈殿し、その後、微細に焼結されたガラスフィルターロートを通して、軽く吸
引してろ過した。ペプチド沈殿物は、10%酢酸/水溶液に溶解し、凍結乾燥した
。粗ペプチドは、逆相HPLC及びmatrix assisted laser desorption ionisation
time of flight mass spectroscopyによって分析した。粗ペプチドの精製度は、
逆相HPLCで約70%であり、Finnegan LaserMatを用いたマス分析は、MH+イオンと
して3331.5の分子量を示し、MH+イオンとしての計算による分子量3331.46と非常
によく一致していた。
【0135】 オリゴリジン−ペプチド1:[K]16GACRGDMFGCA及びオリゴリジン−ペプチド5:
[K]16GACDCRGDCFCAは、Zinsser Analytic(Maidenhead,U.K.)から取得した
【0136】プラスミドDNA プラスミドpGL2はルシフェラーゼレポーター遺伝子(Promega,Madison,WI,
U.S.A.)を含有し、及びpCMVβはβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子(C
lontech,Palo Alto,California,U.S.A.)を含有し、大腸菌DH5aで成育さ
れ、細菌のアルカリ溶解後、Qiagenレジンカラム(Qiagen Ltd.,Crawley,U.
K.)において、製造者の取扱い説明書によって精製した。イソプロパノールで
沈殿させたDNAペレットは、70%エタノールで洗浄後、水またはTEバッファ(10m
MTris−Cl,pH8.0及び1mMEDTA)に溶解した。
【0137】 プラスミド溶液の分光光度計による測定は、プラスミド濃度(A260)及び精製
度(A260/A280比)を評価するために使用した。プラスミド溶液は、1mg/mlの
濃度に調製し、4℃で貯蔵した。
【0138】トランスフェクション複合体の形成 細胞は、24ウェルプレートにウェル当り5×104細胞で種付けし、その後完全
成長培地で37℃、一晩インキュベートした。翌日、トランスフェクション複合体
は、次に示すストック溶液から作成した:OptiMEM(Life Technologies,Paisle
y,U.K.)、リポフェクチン(カチオン性脂質N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-
N,N,N-trimethylammonium chloride(DOTMA)及び中性脂質dioleoyl phosphatid
ylethnolamine(DOPE)の等モル混合物で、Life Technologies,Paisley,U.K
.から“Lipofectin”として取得される)(1mg/ml)、pGL2−コントロール(
1mg/100ml)及び[K]16/インテグリン−ターゲッティングペプチド1,5または6
(0.1mg/ml)において全て調製された。
【0139】 複合体は通常、3つの成分で作製した:オリゴリジン−ペプチド(I),プラ
スミドDNAまたはRNA(D)及びリポフェクチン(L)を、種々の成分と共に自動ピ
ペットで混合した。混合物LIDは、同じ方法で、至適な重量比0.75:4:1(L:
I:D)で作製した。両タイプの混合物は、少なくとも30分間、凝固させたままに
した後、OptiMEMで0.5ml当り1マイクログラムDNAの濃度に希釈した。成長メデ
ィウムは、各ウェルから除去した後、0.5mlのトランスフェクション複合体を加
えた。その後、プレートはインキュベーターに戻して、4〜6時間置いた。その
後、トランスフェクションメディウムは除去し、1mlの完全成長メディウムに置
換した。トランスフェクトされた細胞は、48〜72時間、インキュベートした後、
レポーター遺伝子活性についてアッセイした。
【0140】ルシフェラーゼアッセイ pGL2で形質転換した細胞は、PBSで2回洗浄し、血清を除去した後、100μlのレ
ポーター溶解バッファ(Promega,Madison,WI,U.S.A.)を各ウェルに添加
し、40℃で15〜30分間靜置した。その後、細胞は、黄色のマイクロピペットチッ
プでばらばらにすることによって取り除いた。その後、細胞の無い溶解物は、ル
シフェラーゼアッセイキット(Promega,Madison,WI,U.S.A.)を用い、そ
の製造者の取扱い説明書に従って、調製し、アッセイした。総光放射は、LKB125
1ルミノメーター(Labtech,Uckfield,U.K.)において60秒間測定した。次に
、各サンプルのタンパク質濃度をタンパク質アッセイ試薬(BioRad,Hercules,
CA,U.S.A.)で決定し、ルシフェラーゼの酵素活性は、ミリグラムタンパク
質当りの相対的光ユニット(RLU/mg)という表現で表した。
【0141】Lac Zアッセイ β−ガラクトシダーゼ活性は、X−galで染色することによって検出した。PBS
で洗浄後、細胞は、PBS中0.5%グルタルアルデヒドの添加によってプラスチック
プレートに40℃で20分間固定化した。ウェルはPBSで洗浄し、細胞はX−galを用
いて、37℃で6時間まで染色した。
【0142】アトミックフォースマイクロスコピー(AFM) トランスフェクション複合体のアトミックフォースマイクロスコープ分析は、
以前記載(Wolfert & Seymour,1996)したように、NanoScope II(Digital Ins
truments,Santa,Barbara,U.S.A.)の部品,AFM−2を用いて行った。リポ
フェクチンを有する及び有さない、[K]16−ペプチド6/pGL2のトランスフェクシ
ョン複合体は、全ての成分に対する希釈剤として、水をOptiMEMの代わりに用い
る点を除いて、上記のように調製した。
【0143】例1 :種々の量のリポフェクチン(DOTMA/DOPE)のトランスフェクションにお
ける効果 トランスフェクション複合体は、上記「材料及び方法」の項で記載したように
調製した。その複合体は、OptiMEM低血清組織培養メディウム中0.1mg/mlのオリ
ゴリジン−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA)の溶液を、OptiMEM中1〜10μg/100μ
lの濃度範囲のリポフェクチン(上記DOTMA/DOPEカチオン性リポソーム)溶液と
混合することによって作製した。最後に、適当量のpGL2−コントロールプラスミ
ドDNA(0.1mg/ml)を添加し、繰り返してピペッティングすることによって混合
した。各成分の混合比は、μgDNA当り4μgオリゴリジン−ペプチドで一定である
が、リポフェクチンの比率は、μgDNA当り1〜10μgに変化させた。ECV304細胞は
、上記のように複合体でトランスフェクトし、48時間インキュベートした後、上
記のようにルシフェラーゼ発現についてアッセイした。その結果は、図1に示す
【0144】 マイクログラムプラスミド当り1μgリポフェクチン及び4μgオリゴリジン−
ペプチドで形成された複合体は、リポフェクチンを欠く複合体よりほぼ100倍活
性であった。より多量のリポフェクチンの添加は、リポフェクチンの用量依存的
に、トランスフェクション活性を減少した。
【0145】 同様な結果が、[K]16−ペプチド6で得られた。
【0146】例2 :種々の量のリポフェクチンの、3つの異なった細胞系における形質転換に
対する効果 次に、LIDトランスフェクション複合体におけるリポフェクチンの至適量をさ
らに正確にするため、3つの異なった細胞系A375M(メラノーマ細胞)、COS−7
(サル腎臓上皮細胞)及びECV304(ヒト臍静脈内皮細胞)を用いて実験を行った
【0147】 トランスフェクション複合体は、例1に記載したように作製したが、より狭い
範囲のリポフェクチン量を用いた。リポフェクチン/オリゴリジン−ペプチド/
DNA複合体は、一定量の[K]16−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA)(4μg)及びpG
L2(1μg)プラスミドDNA、及びある範囲のリポフェクチン量(1〜2.5マイク
ログラム)で調製した。複合体は、A375M、COS−7及びECV304細胞をトランスフ
ェクトするために使用し、次に、それらの細胞は、ルシフェラーゼ発現分析のた
めに2日後、回収した。
【0148】 結果は、図2に示す。各々の場合において、至適なトランスフェクション比は
、マイクログラムプラスミドDNA当り0.75μgのリポフェクチンにピークがあった
。この成分量の組み合わせは、この後の全ての例で維持した。
【0149】 L:I:Dの重量混合比0.75:4:1は、モル比0.5nmolリポフェクチン:1.25nm
olオリゴリジン−ペプチド1:0.25pmol pGL2コントロールに相当する。各成分の
モルチャージは、リポフェクチン1モル当り0.5モルの正のチャージ、モル[K]16
−ペプチド1当り17モルの正のチャージ及びモルpGL2(6kb)当り12,000モルの
負のチャージである。そのため、至適なトランスフェクション複合体において、
プラスミドからの3nmolの負のチャージは、オリゴリジン−ペプチド1からの21n
molの正のチャージ及びリポフェクチンからの0.25nmolの正のチャージと混合す
る。それゆえ、ID複合体における正対負のチャージ約7:1のチャージ比は、リ
ポフェクチンからの0.25nmolの正のチャージの、高効率のLIDトランスフェクシ
ョン複合体への加入によってほとんど変化しない。そのため、LID複合体のトラ
ンスフェクション効率における改善は、チャージと関連していないようである。
【0150】例3 :複合体成分を混合する順番の影響 至適なLIDトランスフェクション複合体の製造手順を決定するため、複合体成
分を種々の順番で加えることによって作成した複合体を用いて、トランスフェク
ションを行った。全ての組み合わせは、同量及び濃度の成分を用いて調製した(
1μg pGL2プラスミドDNA、0.75μgのリポフェクチン及び4μgのオリゴリジン
−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA))。トランスフェクションは、ECV304細胞で
行い、ルシフェラーゼ活性は、上記のように評価した。
【0151】 結果は、図3に示し、DはプラスミドベクターpGL2を表し、Iは[K]16−ペプチ
ド1及びLはリポフェクチンを表す。発現データは、LIDを混合する順番が至適で
あることを示す。顕著なこととして、リポフェクチンが添加される最後の成分で
あった組み合わせは、最も効果が少なかった。混合する順番、LIDは、全ての後
のトランスフェクション実験に利用する。
【0152】例4 :トランスフェクション率 細胞は、例1及び2で記載されたように、LIDを混合する順番であるが、pGL2
の代わりにプラスミドベクター(成分D)としてpCMVβを用いて調製した至適化
されたオリゴリジン−ペプチド/リポフェクチン/pCMVβ複合体でトランスフェ
クトした。細胞は、上記のように、β−ガラクトシダーゼ活性についてX−galで
染色した。多くの細胞タイプA375M,COS−7及びECV304は、オリゴリジン−ペプ
チド/DNA複合体のみで達成される1〜10%に比べて、50〜100%のトランシフェ
クション効率を示した。これは、トランスフェクション効率における非常に顕著
な改善を表している。
【0153】例5 :リポフェクチンでの増幅と別のオリゴリジン−ペプチドでの増幅との比較 別のインテグリン−ターゲッティングオリゴリジン−ペプチドの効果を比較す
るため、2セットの複合体は、プラスミドpGL2及び以下に示すもののうちの1つ
で形成した: オリゴリジン−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA,pep1), オリゴリジン−ペプチド5([K]16GACDCRGDCFCA,pep5), オリゴリジン−ペプチド6([K]16GACRRETAWACG,pep6),及び[K]16。 あるセットの複合体はまた、リポフェクチン(lip)を含有し、あるものはリポ
フェクチンを有していなかった。プラスミドpGL2を、重量比4:1のリポフェク
チン及び[K]16リジン−ペプチド1と共に含有するコントロール複合体を調製した
【0154】 各複合体は、細胞系をトランスフェクトするために用い、ルシフェラーゼ発現
を決定した。複合体は、(lip)と共にリポフェクチンなしに作製した。至適化
された複合体は、比較のために実施した。全てのオリゴリジン−ペプチドは、同
じ至適化されたチャージ比及び混合する順番で、リポフェクチン及びプラスミド
DNA(KLD)と共に混合した。
【0155】 結果は、図4に示す。KLD複合体は、通常KDまたはLD複合体より良好なトラン
スフェクション剤であるけれども、LID複合体は、KLD複合体より3〜6倍のルシ
フェラーゼ発現レベルを発生させた。オリゴリジン−ペプチド5を含有するLID複
合体からの発現レベルは、オリゴリジン−ペプチド1またはオリゴリジン−ペプ
チド6を含有するものより2倍低く、これは、異なっているインテグリンレセプ
ターのペプチド親和性を反映していると言える。LID複合体のトランスフェクシ
ョン増幅は、試験された全てのペプチドで観察され、そのうちの2つ(ペプチド
1及び5)は、保存されたRGD配列を含有し、そのうちの1つ(ペプチド6)は含有
していない。
【0156】例6 :特異性 インテグリン特異性を実証するため、LID複合体は、一定量のプラスミドpGL2
−コントロール及びリポフェクチン、及び [K]16−ペプチド6及び[K]16の、ある
範囲の組み合わせで調製した。[K]16で40μgとする、1、5、10、20、35、39μ
gの[K]16−ペプチドからなる、計40μgの[K]16−ペプチドを用いた。
【0157】 トランスフェクションは、例1に記載したように実施し、ルシフェラーゼアッ
セイは、48時間後に実施した。結果は、図5に示す。トランスフェクション効率
は、オリゴリジン−ペプチド6の量の増加とともに、明らかに指数関数的な増加
を示し、そのため有効なインテグリン結合リガンドの量に用量依存の応答を示し
た。従って、両方の16−リジンドメイン、及びリポフェクチン成分が、それ自身
、トランスフェクションを仲介することができる一方、個々に及び[K]16/リポ
フェクチンの組み合わせにおいて、最も高い効率のトランスフェクションは、有
効なインテグリン結合リガンドの量に直接比例する。
【0158】例7 :アトミックフォースマイクロスコピー アトミックフォースマイクロスコピー実験は、4μgの[K]16ペプチド6及び1
μgのpGL2−コントロールプラスミドDNA(ID複合体)を混合することによって形
成される構造を決定し、比較するために実施した。LID複合体は、[K]16−ペプチ
ド6(4μg)/リポフェクチン(0.75μg)/DNA(1μg)から、至適なトラン
スフェクション結果を生じるように示されたLIDの順番で形成した。リポフェク
チン/DNA複合体(LD)は、2つの異なった比;マイクログラムのpGL2当り5μg
のリポフェクチンという至適なトランスフェクション比及びマイクログラムのプ
ラスミド当り0.75μgのリポフェクチンという、LID複合体に用いるのと同じ比で
実施した。
【0159】 結果は、図6に示す。ID複合体は、オリゴリジン−ペプチド6及びプラスミドD
NAで構成されているが、2つの成分を混合する15分間内で、最初にAFMによって
検査した。複合体は、雲母のカバーガラス上で約200nmの直径を有する低多分散
系の粒子を形成した。コンピューターで生じた輪郭地図は、形成された粒子が不
均整の円錐形であることを明らかにした。AFMによって評価されたLID複合体は、
ID複合体と同様な大きさで形状の粒子を形成した。付加的なリポフェクチンは、
明らかに、粒子を分離しない。しかしながら、5:1の比で形成されたLD複合体
は、管(tube)と会合する臨時の粒子との管のネットワークのようであった。し
かしながら、より低い比率(0.75:1)で形成されたLD複合体は、短い管構造で
あった。このより低い比率で形成されたLD複合体は、トランスフェクション実験
で不活性であった。
【0160】 上記のように形成したLID複合体はまた、一晩放置後、AFMによって分析した。
粒子は今回、約50〜100nmの直径をもつ、より小さい大きさであり、粒子が圧縮
していたことを示していた。コンピューターで生じたコンピューター地図は、こ
れらの粒子が均等な円錐構造であることを表していた。錐体を測定し、それらの
体積を算出した。そして、粒子が溶液中で自由であるときに形成すると予想され
る球体は、直径20〜60nmであると算出された。pGL2を用いるトランスフェクショ
ン実験において、一晩、水中で形成した緊密な粒子は、用事調製した複合体の約
2倍高いルシフェラーゼ発現結果を生じた。
【0161】例8 :神経芽腫細胞のトランスフェクション 3つの異なったヒト神経芽腫細胞系、SHSY−5Y,KELLY及びIMR−32、及び1つ
のマウス神経芽腫細胞系、Nb2Aのトランスフェクションは、上記の材料及び方法
の章、及び例に記載したように、[K]16−ペプチド6,リポフェクチン及びリポー
ター遺伝子としてルシフェラーゼまたはGFPを含有するLID複合体を用いて至適化
した。
【0162】 次に、この3つのヒト神経芽腫細胞系及びCOS−7細胞は、リポーター遺伝子の
代わりに、2つの異なったIL−12発現ベクターの1つをもつ、同じLID複合体を
用いてトランスフェクトした。1つのベクターは、IL−12の2つの鎖、p35及びp
40の融合タンパク質を発現する(Flexi−12;Andersonら,1997)。この融合は
、CMVプロモーターによって制御される。第2のIL−12発現系は、2つのレトロ
ウイルス構築物MFGS−p35及びMFGS−p40からなり、インターロイキン−12(IL−
12)の2つの分離した鎖をコードするレトロウイルスプラスミド構築物である。
両遺伝子とも、レトロウイルスの長い末端リピート(LTRs)によって制御される
。ベクターは、Mary Collins教授,UCL,ロンドンから取得した。
【0163】 分泌されたIL−12発現は、トランスフェクション48時間後、ELISAによってモ
ニターした。トランスフェクトした細胞が、図7に見るように、高レベルのサイ
トカインを分泌することが見出された。Flexi−12構造が最も効率的であった。
【0164】 これらの結果は、本願発明のトランスフェクション系が、神経芽腫、重要な幼
児期悪性腫に対するワクチンにおける使用、また他の癌に対するワクチンに適し
ていることを実証する。
【0165】例9 :一次平滑筋細胞及び心筋細胞のトランスフェクション ラットの一次平滑筋細胞(大動脈平滑筋細胞)及び心筋細胞の組織培養は、標
準的な方法(Blank et al.,1988)に従って調製した。至適なLID比及び混合す
る順番において、リポフェクチン、[K]16−ペプチド6及びリポーター遺伝子とし
てのGFPからなるLID複合体は、上記の材料及び方法の章及び例において記載した
ように調製した。組織培養は、LID複合体で、上記の材料及び方法の章において
記載したようにトランスフェクトした。GFP発現細胞の蛍光発光イメージは、50
%を上回るトランスフェクション効率を実証した。
【0166】 一次平滑筋細胞及び心筋細胞は、ほとんどの他の非ウイルス性ベクターを用い
るプラスミド仲介のトランスフェクションに対して特に抵抗性を示した。対照的
に、本願発明のトランスフェクション複合体は、50%を上回るトランスフェクシ
ョン効率を達成し、ゆえに、その複合体の、平滑筋及び心筋を含む筋肉に影響す
る疾患の治療に対する利用性を実証した。
【0167】例10 :高分子量構築物でのトランスフェクション 種々の大きさの構築物は、本願発明のトランスフェクション複合体と共に輸送
され得る。線維芽細胞培養は、材料及び方法の章に記載したように、[K]16−ペ
プチド6,リポフェクチン及び130kBのDNA構築物からなるLID複合体でトランスフ
ェクトした。複合体は、至適な比率及び混合する順番のLID成分からなり、上記
の方法及び材料の章、及び例に記載したように調製した。トランスフェクション
は、2〜3%の効率で達成した。
【0168】 本願発明の複合体を用いる、増幅したインテグリン仲介のDNAの内在化と関連
した細胞プロセスは、エンドサイトーシスより貪食作用に密接に関連し、ゆえに
、非常に大きなDNA分子を含有する複合体の輸送に特に適している。
【0169】例11 :アンチセンスDNAでのトランスフェクション トロンビンは、ヒト肺線維芽細胞の増殖を刺激する。トロンビン処理したヒト
肺線維芽細胞(HFL−1細胞)は、トロンビンに対する応答において53%拡大する
。トロンビンとの処理の24時間前に、HFL−1細胞は、上記の材料及び方法の章、
及び例において記載したように調製された至適な比率及び混合する順番で、[K]1 6 −ペプチド6、リポフェクチン及び、トロンビンレセプターPAR−1に指向性の20
量体のアンチセンスオリゴヌクレオチドからなるLID複合体と処理した。アンチ
センスオリゴヌクレオチド含有複合体は、4時間、細胞と接触させた。複合体と
の処理の開始から24時間後、トロンビンとの処理を実行した。
【0170】 トロンビン誘導の増殖は、LID複合体との前処理によって、76%±12%まで減
少した。トロンビンではなくて、アンチセンス含有複合体で処理した細胞は、図
8に見られるように、増殖しなかった。
【0171】 この結果は、本願発明の複合体の、アンチセンス療法に要求されるように、例
えば抗ウイルス及び抗癌療法ためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの効率的な
細胞内輸送への利用性を実証した。
【0172】例12 :造血細胞のトランスフェクション 造血細胞は、ほとんどのプラスミド仲介ベクターでのトランスフェクションに
特に抵抗性を示す。
【0173】 LID複合体は、上記の材料及び方法の章及び例に記載したように、リポフェク
チン及び[K]16−ペプチド6を用いて調製し、α5β1インテグリンを、及びリポー
ター遺伝子としてのpEGFP−N1(Promega)を標的とする。複合体は、[K]16−ペ
プチド6の代わりに[K]16−ペプチド8([K]16−ペプチドGACQIDSPCA SEQ.ID.N
O.:21)を用いて同様に調製し、α4β1インテグリンを標的とする。複合体は
、上記の材料及び方法の章及び例に記載したように、成分を至適な比及び混合す
る順番で混合することによって調製した。
【0174】 4つの異なった造血細胞系(HL60、PLB985、TF1及びU937)は、以下の修飾を
加えて、材料及び方法の章に記載したようにトランスフェクトした:トランスフ
ェクション前に、細胞を処理しないか、またはTF1細胞に対してGm−CSF(10ng/m
l)もしくは他の3つの細胞系に対してホルボールミリスチン酸(PMA)で処理し
た。pEGFP−N1を含有するLID複合体でのトランスフェクションは、蛍光活性化セ
ルソーターで測定したように、全ての4つの系において60%以上のトランスフェ
クション効率を生じた(図9参照)。
【0175】 これらの結果は、本願発明のトランスフェクション複合体の、例えば白血病及
び骨髄幹細胞障害の遺伝子治療などの造血細胞に関連する遺伝子治療のための利
用性を実証した。この事実は、上記で指摘したように、造血細胞がプラスミド仲
介のほとんどのベクターでのトランスフェクションに特に抵抗性であるため、特
に有用である。
【0176】例13 :コンフルエントなヒト気道上皮細胞の、EGTA存在下、イン・ビトロでのト
ランスフェクション細胞培養 ヒト気道上皮(HAE)細胞、タイプHEAO−は、80%で24ウェルプレートに接種
した。細胞は、Life Technologies(Paisley,U.K.)から購入した修飾イーグ
ル培地(MEM)に10%ウシ胎児血清(FCS)及び2mML−グルタミンを付加した培
地で成育し、コンフルエントな細胞の培養産物を形成した。同じ細胞のサブ・コ
ンフルエントな培養産物もまた調製した。
【0177】リポーター遺伝子 使用されるリポーター遺伝子は、緑蛍光タンパク質(GFP)リポーター遺伝子
及びルシフェラーゼリポーター遺伝子であった。GFPリポーター遺伝子は、プラ
スミドpEGFP-N1の形で使用し、Clontechから購入した。ルシフェラーゼリポータ
ー遺伝子は、発現ベクターpCI(Promega, Southampton, England)に挿入された
ホタルルシフェラーゼ遺伝子(Luc)から構成される構築体pCILucの形で使用し
た。
【0178】ペプチド これらのイン・ビトロ実験のために、ペプチド12,[K]16−XSXGACRRETAWACG(
X:εアミノカプロン酸)SEQ.ID.NO.:26を使用した。オリゴリジンペプチド
成分Iは、インテグリンα5レセプターを標的とするインテグリン標的ペプチドC
RRETAWACGとスペーサーXSXGA(X:εアミノカプロン酸)及びオリゴリジン[K]16 とからなり、配列[K]16−XSXGACRRETAWACG(Zinsser Analytic, Maidenhead, UK
)を与える。
【0179】トランスフェクションベクター/EGTA複合体 トランスフェクションベクター複合体は、材料及び方法の節の記述に従って調
製した(例15も参照)。複合体は、ペプチド4μg、リポフェクチン0.75μg及び
リポーター遺伝子1μgを用いて調製した。全ての成分及びベクター複合体は、O
ptiMEM(Life Technologies, Inc.)において構成した。水溶液100mMの濃度のEG
TA(Sigma)を、トランスフェクションベクター複合体プレパレーションに、ベ
クター複合体の1/100の容積で加え、最終EGTA濃度1mMを与えた。
【0180】トランスフェクション EGTA/ベクター複合体混合物を培養液に加え、そして2日後にその培養産物を
回収した。対照として、培養液をOptiMEM培地のみで処理し、トランスフェクシ
ョンベクター複合体とEGTAなしで処理した。
【0181】 有糸分裂が結果に影響したか否か調査するためにトランスフェクションを、DN
Aポリメラーゼαを阻害し、細胞のG1からS期への転換を妨げるアフィジコリンの
存在下で実行した。細胞分裂を抑えるために、アフィジコリン(Sigma, Poole,
Dorset, England)を細胞培養液に、トランスフェクションの24時間前、1〜20
μg/mlの濃度範囲で加え、実験の残りの時間中細胞が回収されるまでメインテイ
ンした。
【0182】 ルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いるトランスフェクションレベルは、材
料及び方法の節の記述に従って測定した。GFPリポーター遺伝子の場合には、細
胞の回収後、蛍光活性化細胞ソーティング(fluorescence activated cell sort
ing, FACS)によって蛍光を放つ細胞の数の定量について分析した。
【0183】 GFPリポーター遺伝子を用いる得られた結果を以下の表2に示す。
【0184】表2 トランスフェクション剤 サブ・コンフルエントな細胞 コンフルエントな細胞 対照(ベクターなし) 0.3% 0.7% ベクター、EGTA無添加 44.6% 8.9% ベクター、EGTA添加 45.7% 32.4% ベクター、EGTA、 24.8% 24.4% アフィジコリン
【0185】 図10は、ベクターとEGTA存在下でトランスフェクトされた蛍光を放つ細胞の数
での増加におけるEGTAの影響(図10B)を、示されたベクターのみ(図10A)と
比較して明確に示す。
【0186】 これらの結果は、トランスフェクションベクター複合体がサブ・コンフルエン
トな細胞を効率的にトランスフェクトする間は、コンフルエントな細胞のトラン
スフェクション効率が非常に低いことを示す。しかしながら、EGTAの存在は、コ
ンフルエントな細胞のトランスフェクションレベルを4倍増大するが、サブ・コ
ンフルエントな細胞のトランスフェクションの効率に影響しない。
【0187】 ブロモデオキシウリジン(BrdU)ラベリングは細胞増殖の評価を可能とする。
BrdUキットは、Zymed Laboratories, Inc., South San Francisco, California,
U.S.A.から購入できる。BrdUをトランスフェクション剤と同時に細胞に加え、
実験の残りの間中細胞の回収までメインテインした。サブ・コンフルエントな及
びコンフルエントなHAE細胞のBrdUラベリングの結果を以下の表3に与える。
【0188】表3 サブ・コンフルエントな細胞 コンフルエントな細胞 対照 0.7% 0.5% BrdU 44.4% 7.1% BrdU+EGTA 25.1% 6.5% BrdU+アフィジコリン 1.3% 5.3%
【0189】 これらの結果、及びアフィジコリン存在下でのトランスフェクションについて
表2に示される結果は、EGTAとの処理もトランスフェクションプロセス自身も、
コンフルエントなHAE細胞における有糸分裂の割合を増大しないことを実証する
【0190】 我々は本来、GFPの代わりにルシフェラーゼリポーター遺伝子を用いて同じ結
果を得ていた。トランスフェクションは、上記の通りに調製されたトランスフェ
クションベクターを、上記の通りに構築体pCILucと共に、そしてEGTAあり及びな
しで用いて実行した。ルシフェラーゼアッセイは、回収された細胞の細胞なしの
抽出物において、Promegaから得たキットを用いてAnthos Lucy 1 光度計(Lumin
ometer)を使用して行った。GFPでの実験のように、ルシフェラーゼレベルは、E
GTAなしで行ったトランスフェクションと比較して、EGTAで処理したコンフルエ
ントな細胞において約4倍増大した。
【0191】 EGTAの存在が有糸分裂非存在下でトランスフェクションを増大するという発見
は、有糸分裂が効率的なトランスフェクションに必要であるという従来の知見に
反する。
【0192】 ウイルスベクター及びEGTAを用いたイン・ビトロのトランスフェクションの従
来の報告は、(20分間の)EGTAとのプレ・インキュベーションがベクターの添加
前に必要であることを示した(Wang, 1998)。我々は、インテグリンを標的とす
るトランスフェクションベクター複合体でのトランスフェクション前での細胞の
EGTAとのプレ・インキュベーションが、EGTAなしでの結果と同様であることを見
出した。我々は、最良の結果がEGTA及びベクターを細胞に適用する前に混合する
ときであることを見出した。
【0193】 従来報告されていた結果(Wang, 1998)との更なる違いは、Wangが、それ自身
が緊密な細胞連結の分断を促進することが知られている水などの低張液でのEGTA
の使用を記述していることである。我々は、等張の緩衝液OptiMEMの使用が成功
したことを見出した。
【0194】 我々はまた、抗カドヘリンIgGをEGTAの代わりに上記のトランスフェクション
ベクター複合体とで使用したとき、コンフルエントなHAE細胞におけるイン・ビ
トロでのトランスフェクションの増大を観察した。抗カドヘリンIgGは、Serotec
から購入し、ベクターの添加の1時間前に50μg/mlで適用した。これによって、
コンフルエントな細胞におけるルシフェラーゼ活性の5〜10倍の増大をもたらす
が、サブ・コンフルエントな細胞は増大を示さなかった。これらの結果は、増大
がレセプターの増大した利用性から生じ、驚くべきことに細胞分裂は必要でない
という我々の理論を裏付ける。
【0195】例14 :マウス肺の、EGTA存在下、イン・ビボでのトランスフェクション プロトコールは、投与されるべきベクターの最終容量を最少にするという重要
性のため、例13に記述されるイン・ビトロ実験のためのプロトコールと異なる。
【0196】 脂質(リポフェクチン)(1mg/ml)及びペプチド6(GACRRETAWACG)(1mg/m
l)を、1つのチューブで混合し、リン酸バッファ生理食塩水(PBS)中のpCILuc
プラスミドDNA(1mg/ml)及びEGTAを別のチューブ内で一緒に混合し、そして2
つのチューブの内容物を、最終比率が1μgDNAに対して0.75μg脂質であり、100
mMEGTA(または対象としてEGTAなし)の最終濃度になるように混合する。プロト
コールを繰り返し、400mMの最終EGTA濃度を有するベクター複合体を与えた。
【0197】 各マウスは、50μlの容量で8μgのプラスミドDNAを受けた。ベクター/EGTA
混合物を、ラットについての例9に記述されるように、マウスに気管内点滴注入
によって投与した。
【0198】 点滴注入に続く1、3及び7日に、マウスを頚部脱臼して屠殺し、肺を下大静
脈を通してヘパリン化したPBSで血液がなくなるまで還流した。細胞溶解緩衝液
(Promega, Southampton, England)を各肺に添加した(4μl/mg)。そして、
組織を2回、氷上で各回30秒間ホモジナイズした(Polytron PT10-35, Philip H
arris, Nottingham, England)。肺ホモジネートを10,000xg、4℃で10分間遠
心し、そして上清20μlをルシフェラーゼアッセイ緩衝液(Promega)100μlに添
加し、ルミネッセンスをルミノメーター(TD-20/20; Steptech Instruments, St
evenage, England)で測定した。全ての結果を3回繰り返し、平均を算出した。
【0199】 溶解産物(lysate)中の総タンパク質濃度を、タンパク質アッセイキット(Bi
o-Rad, Hemel Hempstead, Herts, England)を用い、ウシ血清アルブミンを標準
として用いて測定した。ルシフェラーゼ活性を、肺溶解産物の各サンプルからバ
ックグランドを差し引いて比較光単位(relative light unit, RLU)で表現し、
mgタンパク質当りに規準化した。結果を図11に示した。
【0200】 図11に示されるように、100mMEGTA存在下で、トランスフェクションを約4倍
増大した。しかしながら、400mMは多くの場合に致死的であることを示した。
【0201】例15 (方法及び材料)気道上皮細胞 ヒト気道上皮細胞系、正常細胞系1HAEo-及びCF細胞系2CFSMEo-が本研究にお
いて使用された。2CFSMEo-細胞を不死化し、SV-40T抗原形質転換細胞は、Dr D
. Gruenert, UCSFから得た。1HAEo-細胞は、上皮細胞の形態学的及び機能的性
質を保持し、多くの他の研究において使用されている(Boussat et al.(2000),
Cozens et al.(1992a)参照)。2CFSMEo-細胞は、ΔF508異型接合の粘膜下上皮
細胞である(Canonico et al.(1996), Cozens et al.(1996)参照)。両細胞系を
、37℃、95%空気及び5%CO2の湿雰囲気下、10%ウシ胎児血清、2mML−グル
タミン、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを付加したイー
グルの最少必須培地(MEM)(Sigma, Poole, UK)で75cm2培養フラスコ中でメイ
ンテインした。細胞を、ポア・サイズ0.4μm及び直径12mmのトランスウェルイン
サート(transwell insert)(Costar, Bucks, UK)に、105細胞/0.5ml/インサ
ートの密度で接種し、十分にコンフルエントになるまで約3日、成長するままと
した。その後、先端部の培地を除去し、成長培地を基底外側的に(basolateraly
)加えて、細胞を空気−液体表層で成長させた。コンフルエントな細胞を、さら
に10〜14日間成育し、オーム計(EVOM; World Precision Instruments, Stevena
ge, UK)で経上皮抵抗(transepithelial resistance)がトランスフェクション
前に300Ω・cmを超えるまでモニターした。免疫蛍光研究のために、細胞を、24ウ
ェルプレート中のカバースリップ(coverslip)に105細胞/ml/ウェルの密度で接
種し、十分にコンフルエントになるまで約10〜14日間成長するままにした。コン
フルエントな状態及び緊密な連結の達成もまた、オクルジン(occludin)の蛍光
検出、緊密な連結の構造的及び機能的成分によって決定した(以下に詳述)。サ
ブ・コンフルエントな増殖している細胞を、トランスフェクションに先立って成
長培地で3日未満の間細胞を成育することによって調製した。
【0202】プラスミッドDNA 3つの異なるプラスミドDNA対照を本研究で使用した。プラスミドpCI-Luxを、
ルシフェラーゼ遺伝子をpGL3対照(Life Technologies, Paisley, UK)から真核
細胞発現ベクターpCI(Promega, Southampton, UK)にサブクローンすることに
よって調製した。プラスミドpCIK-LacZは、細胞質−局在化バクテリアβガラク
トシダーゼ遺伝子を含有し、Dr. Steve Hyde(Oxford)から得た。プラスミドpE
GFPは市販されていた(CLONTECH Laboratories UK Ltd., Hampshire, UK)。こ
れらの遺伝子の全てがCMVプロモーターによって作動した。プラスミッドを、大
腸菌DH5αで増幅し、アルカリで溶解し、エンドトキシンのないキット(Qiagen,
Crawley, UK)を用いて調製した。DNAを70%エタノールで洗浄し、水に溶解し
た。DNAの濃度は、A260でのその吸光度によって分光光度計で決定し、純度をA26 0 / A280の比で評価した。
【0203】細胞のイン・ビトロでのトランスフェクション 「LID複合体」及び以下「LIDベクター」と称するトランスフェクションベクタ
ー複合体を、例1で記述される手法と同様な手法で調製した。簡潔には、LIDベ
クター複合体の3つの成分のストック溶液を最初に調製した。プラスミドDNA(
成分D)を細胞培養培地OptiMEM(Life Technologies, Paisley, UK)中に0.01
μg/μlの濃度で希釈した。オリゴリジン−ペプチド成分Iは、インテグリンを
標的とするペプチドCRRETAWACGからなり、インテグリンα5レセプターを標的と
し、スペーサーXSXGA(X:εアミノカプロン酸)及びオリゴリジン[K]16とから
なり、配列[K]16−XSXGACRRETAWACG(Zinsser Analytic, Maidenhead, UK)を与
える。ペプチド成分IをOptiMEM中に0.1mg/mlで溶解した。脂質成分Lはリポフ
ェクチン、市販のカチオン性脂質N-[1-(2,3-ジオレイロキシ)プロピル]-n,n,n-
トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)と中性脂質ジオレイルホスファチ
ジルエタノールアミン(DOPE)(Life Technologies, Paisley, UK)との等モル
混合物であり、商品から1mg/mlで使用した。複合体は、3つの成分:リポフェ
クチン(L)、ペプチド(I)及びDNA(D)を約3:1の+/=電荷比に該当す
る0.75:1.94:1の最適化重量比において穏やかに混合することによって作成し
た。そして、複合体は、希釈する前に室温で30分放置して、トランスウェル内で
OptiMEM0.3ml中または24ウェルプレートで0.5ml中DNA1μgの最終濃度に希釈し
た。細胞は、複合体と共に37℃、4時間インキュベートし、続いて、成長培地で
、トランスジーン発現のアッセイのために回収する前24〜48時間さらに培養した
【0204】トランスフェクションの増大 コンフルエントな上皮細胞においてトランスフェクションの効率を増大するた
めに、EGTA(Sigma, Poole, UK)、トリプシン/EDTA(Sigma, Poole, UK)、水
及びマウス抗ヒトE−カドヘリン抗体(Serotec Ltd, Oxford, UK)を含めて幾
つかの薬剤をテストした。細胞をEGTA、水及びEGTAを有するトリプシン/EDTAで
の前処理の効果を比較することによって最初に実行され、前処理なしにLIDベク
ターに定式化された。コンフルエントな細胞を、37℃で20〜30分間、2mM EGTA
、トリプシン/リッター−EGTA、水、PBSまたは対照としてのOptiMEMそれぞれ0.
02g/リッターと共にプレ・インキュベートした。そして、細胞を、OptiMEMで2
度洗浄し、LID複合体またはEGTAで製剤化されたLID(以下に詳述)で上記のよう
に4時間、トランスフェクトした。抗E−カドヘリンのトランスフェクションに
おける効果をテストするため、コンフルエントな細胞を、2、10及び50μg/mlの
増加された濃度で4℃、60分間プレ・インキュベートし、続いてそれぞれ同じ濃
度の抗E−カドヘリンまたは対照としてのマウスIgGの存在下でLID複合体との4
時間のトランスフェクションを行った。
【0205】 増大の実験のほとんどは、EGTA−剤形化プロトコール(LID+EGTA)を用いて
実行され、その実験においては、EGTAを2mMの最終濃度でLID複合体を含有するO
ptiMEMに加えた。OptiMEMは、慣用の培地の半分のレベルである0.9mMCaCl2を含
有する。EGTAは最初、PBS(pH7.3)に溶解し、200mMのストック溶液を作製した
。LID複合体を調製後、EGTAストック溶液を複合体に加えて2mMの最終濃度とし
た。トランスフェクションインキュベーションをEGTA存在下で行ったが、4時間
後に完全な成長培地と交換した。EGTAの細胞の連結への影響を経上皮抵抗を測定
することによってモニターし、EGTAへの曝露後約10分間と同じくらい早く経上皮
抵抗は減少し、EGTAの除去後約16〜18時間で回復した(データは示さず)。
【0206】ルシフェラーゼについての発光定量(luminometric)アッセイ pCI−ルシフェラーゼとのトランスフェクションの24時間後、細胞をPBSで洗浄
し、100μlのリポーター溶解緩衝液(Reporter Lysis Buffer)を加えることに
よって溶解し、マイクロピペットチップを用いて手でそぎ落とすことによってプ
レートから取り出した。細胞を除いた溶解物を、2000rpmで4℃、5分間遠心分
離によって調製した。ルシフェラーゼの活性は、ルシフェラーゼアッセイキット
(Promega, Southampton, UK)を用いてLucy-1プレート−リーディング分光計(
Anthos, Salzburg, Austria)で評価した。各サンプルのタンパク質濃度をプロ
テインアッセイ試薬(BioRad Laboratories, Hertfordshire, UK)を用いて595n
mでの吸光度を測定することによって決定し、ルシフェラーゼの比活性をミリグ
ラムタンパク質当りの比較光ユニット(relative light unit)として表現した
(RLU/mgタンパク質)。
【0207】緑蛍光タンパク質のフローサイトメトリーによるトランスフェクション効率 pEGFPでトランスフェクトした細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTAで消
化することによって回収し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。そして、細
胞を、FACSソーターEPICS XL(Beckman Coulter Inc, Buckinghamshire, UK)を
用いて蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって分析した。EGFPについての
蛍光は525±20nmの波長で測定した。10,000の細胞を、高蛍光細胞の割合を決定
し、非トランスフェクトの対照細胞の蛍光を差し引くことによって、EGFP陽性細
胞の割合について検査した。
【0208】細胞増殖のアッセイ 細胞増殖は、5−ブロモ−2’−デオキシ−ウリジン(BrdU)を、モノクロー
ナル抗体を用いる免疫蛍光染色によって検出される細胞DNAに組入れることによ
って評価した。BrdUラベリング試薬及びモノクローナルマウス抗BrdUを含有する
BrdUラベリング及び検出キット(Roche, Basel, Switzerland)を使用した。コ
ンフルエントな細胞は、トランスフェクション効率の分析のためのpEGFPを含有
するEGTA製剤化LIDでトランスフェクションし、対照群は、同じプロトコールで
はあるが、細胞増殖の分析のためのトランスフェクション培地中に10μMBrdUで
トランスフェクションした。細胞は、4時間のトランスフェクションインキュベ
ーションの間中BrdUの存在下でメインテインし、その後24時間インキュベーショ
ンしてトランスフェクション時期の間に複製する全ての細胞を標識化した。その
後、BrdU処理した細胞をPBSで洗浄し、トリプシン/EDTAを用いて回収し、50mM
グリシン緩衝液、pH2.0中70%エタノールに20℃で30分間固定した。キット中に
提供されるインキュベーション緩衝液で1:10に希釈した初期の抗体、マウス抗
BrdUを細胞に加えて60分間、37℃でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、
第2層の抗体、テキサスレッド標識ウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories, Pe
terborough, UK)で37℃、30分間インキュベートし、その後、上記詳述したよう
にフローサイトメトリーによって575±20nmの波長で分析した。幾つかの実験に
おいて、アフィジコリン、細胞周期のS期を阻害する細胞−増殖インヒビターを
細胞に加えてトランスフェクション効率における効果を観察した。アフィジコリ
ンをトランスフェクション前24時間、成長培地(10μg/ml)に加えて4時間のト
ランスフェクションの間中メインテインし、その後、細胞を回収するまで24時間
インキュベートした。
【0209】LIDベクターのEGTA処理細胞への結合 EGTAの細胞結合における効果は、フルオレッシン(FITC)標識ペプチドで調製
したLID複合体でのトランスフェクションによって決定した。ペプチド−12は、
ラベリングキット(Calbiochem, San Diego, USA)からFITCで標識化し、その解
説書に従い、PBS中で一晩、透析することによって精製した。FITC−結合ペプチ
ド−12のプラスミドDNAと複合体を形成する能力は、DNAの電気泳動移動が、上記
したように(Hart et al., 1995)カチオン性ペプチドとの複合体を形成するこ
とによって遅れるという減速度(retardation)テストによって決定した。トラ
ンスウェル中のコンフルエントな細胞は初めに、OptiMEM中2mMEGTAと共に37℃
、30分間インキュベートして緊密な連結を分断し、その後4℃、20分間冷却した
。FITC−標識化ペプチド−12で調製したLID複合体もまた、結合アッセイのため
に4℃に冷却した。その後細胞は、先端に加えられたLID−FITCで4℃、60分間
トランスフェクトし、複合体は細胞表面に結合するのみで、インターナリゼーシ
ョンは起こらない(Chu et al.(1999), Cornelissen et al.(1997), Im et al.(
1986)参照)。LID複合体の表面結合は、細胞を1μg/mlクリスタルバイオレット
(Sigma, Poole, UK)と共に4℃、10分間インキュベートし、表面結合LID複合
体の蛍光を消滅することによって、内在化されたLIDから更に区別した(Ma et a
l.(1997), Van Amers & Van Strijp(1994)参照)。その後、蛍光粒子の平均数は
、10のランダムな顕微鏡視野でカウントし、EGTA処理または未処理細胞から得ら
れたデータ間で比較を行った。
【0210】BrdU、β−ガラクトシダーゼ及びオクルジンの免疫蛍光 二重蛍光ラベリングを観察するため、(細胞増殖のアッセイにおいて上記する
ように)β−ガラクトシダーゼ−トランスフェクトされたBrdU−標識化細胞は、
50mMグリシン緩衝液pH2.0中70%エタノールで−20℃、30分間固定した。その後
細胞は、2つの最初の抗体、1:200のウサギ抗β−ガラクトシダーゼ(Chemico
n International Inc, Harrow, UK)及び1:10のマウス抗BrdU(BrdU Labellin
g and Detction Kit; Roche, Basel, Switzerland)の混合物と共にインキュベ
ートし、続いてFITC結合ヤギ抗ウサギIgG及びテキサスレッド標識化ウマ抗マウ
スIgG(Vector Laboratories, Peterborough, UK)の混合物と共にインキュベー
トした。その後トランスウェル挿入物は、プラスティックホルダーから削り取り
、水性マウント剤(mountant)でガラススライド上にマウントした。EGTAの緊密
な連結への効果を観察するため、EGTA処理された細胞は、PBSで1:10に希釈さ
れた、緊密な連結のタンパク質オクルジンに対するウサギポリクローナル抗体(
Zymed, San Francisco, USA)で免疫染色した。抗体は、ヒトオクルジンのC末
端150アミノ酸に特異的であり、多くの他の研究で使用された(Jou et al.(1998
), Martin-Padura et al.(1998)参照)。トランスウェル上のコンフルエントな
細胞は、OptiMEM中2mMEGTAで37℃、30分間インキュベートし、メタノール中で
4℃、20分間固定した。PBSで洗浄し、細胞は、抗オクルジンで60分間免疫染色
し、続いてフルオレッシン標識化ヤギ抗ウサギIgG(Vector Laboratories, Pete
rborough, UK)で37℃、30分間インキュベートした。その後挿入物を削り取り、
Vectashieldでスライド上にマウントした。イメージを観察し、トランスウェル
については倒立型(inverted)蛍光顕微鏡(Olympus IX70, Olympus Optical Co
mpany, London, UK)及び削り取られた挿入物については共焦点顕微鏡(Leica T
CS SP, Exton, PA, USA)で捕えた。
【0211】 示された全てのデータは、少なくとも3つの独立した実験の代表であり、三つ
組みの細胞培養を、発光分析及びフローサイトメトリー分析に用いた。
【0212】 (結果)トランスフェクション効率を増加する異なる薬剤の比較 気道上皮細胞の全てのトランスフェクションは、1HAEo−及び2CFSMEo−の両
細胞において並行して行い、類似の結果が大部分の実験での両細胞のタイプにお
いて観察された。サブ・コンフルエントな細胞のLIDベクターでのトランスフェ
クションの予備的な実験において、GFPトランスジーン発現が、FACS分析によっ
て決定されるように、約45%1HAEo-細胞(図11A)及び56%2CFSMEo-細胞(図
11B)において観察された。しかしながら、十分にコンフルエントな細胞は、ト
ランスジーン陽性の細胞の割合が両細胞タイプにおいて約7%に落ちた(図11C
及び図11D)ことから、トランスフェクションにずっと抵抗性であった。
【0213】 コンフルエントな細胞の低いトランスフェクション効率は、1)側底表面上のレ
セプターの有効性の欠如、または2)低速の細胞増殖及びプラスミドDNAの核膜を
通しての核への移入の不可に起因する可能性がある。第1の仮定は、コンフルエ
ントな上皮細胞を、細胞連結を分断することが知られている2つの薬剤、EGTA及
び抗カドヘリンモノクローナルIgGで処理して、ウイルスベクターについて既に
報告されているように遺伝子転移を増加する(Wang et al. J Virol(1998); 72:
9819-9826及びWalters et al.(1999)参照)ことによって試行した。第1のプロ
トコールにおいて、コンフルエントな細胞は、トランスフェクション前に2mMEG
TAと共にインキュベートし、続いてOptiMEMで2回洗浄し、その後通常通りにLID
ベクターでトランスフェクトした。第2のプロトコールにおいて、LID複合体は
、同じ溶液中2mMEGTAで製剤化し(LID+EGTA)、ベクター及びEGTAの両方が細
胞に同時に加えられた。トランスフェクトされた細胞のルシフェラーゼアッセイ
において、EGTA前処理のプロトコールは、トランスフェクションの増大を提供せ
ず、その一方、LID+EGTA処理は、EGTAが全くない条件での対照のトランスフェ
クションの、ルシフェラーゼトランスジーン発現における8倍の増加を示した(
図12A)。しかしながら、LID+EGTAの製剤形態がサブ・コンフルエントな細胞
をトランスフェクトするのに使用されたとき、EGTAなしでトランスフェクトした
対照細胞に比べて、トランスジーンルシフェラーゼ活性において何ら差はなかっ
た(図12B)。第3の実験において、細胞は、トランスフェクションの前とその
間の両方で抗E−カドヘリンと処理した。トランスジーン発現における顕著な増
加が、抗E−カドヘリンなしのまたはマウスIgG対照の存在下でのトランスフェ
クションと比べて、抗E−カドヘリン存在下でトランスフェクトしたコンフルエ
ントな細胞において濃度依存的に観察された(図12C)。同じ方法で処理したサ
ブ・コンフルエントな細胞においては顕著な差は認められなかった(図12D)。
【0214】 それ故、2つの薬剤、EGTA及び抗E−カドヘリンは、コンフルエントな上皮細
胞へのLID仲介の遺伝子転移を増大することを示したが、どちらもサブ・コンフ
ルエントな細胞のトランスフェクション効率に影響を与えなかった。コンフルエ
ントな細胞だけが影響を受け、両薬剤とも緊密な連結の完全性に影響を与えるこ
とが知られていることから、これらの結果は、トランスフェクション効率が、結
合及び後のベクターの取り込みを減少させる、側底表面に対するレセプターの制
限によってコンフルエントな細胞において減少するという仮説を支持した。しか
しながら、このことは、EGTA処理が細胞分裂の速度を増加することによってトラ
ンスフェクション効率に影響し得るという可能性を排除するものではない。有糸
分裂の速度は、ほとんどのプラスミド仲介ベクター系のトランスフェクション効
率に影響する主因子である。
【0215】EGTAのトランスフェクション及び細胞増殖における効果 EGTA処理が細胞増殖を促進することによってトランスフェクションを増大する
ことができるという仮説をテストするため、トランスフェクションは、コンフル
エントな及びサブ・コンフルエントな1HAEo-細胞においてLID+EGTAベクター製
剤形態で行った。トランスフェクション効率は、GFPリポーター遺伝子でトラン
スフェクトした細胞の割合から決定するが、増殖速度は、フローサイトメトリー
によるBrdU編入の免疫検定によって決定した。実験は、フローサイトメトリーに
よる蛍光分析のための互換性の固定剤が見出すことができないことから、それぞ
れ別個に行った。
【0216】 細胞は、pEGFP(A)またはpEGFP+EGTA(B)またはpEGFP+EGTA及びアフィ
ジコリン(C)でトランスフェクトした。トランスフェクションと並行として、
細胞は、BrdU(D)またはBrdU+ECTA(E)またはBrdU+ECTA及びアフィジコリ
ン(F)で標識化した。
【0217】 コンフルエントな細胞は、EGTA非存在下、GFPトランスジーンを発現する約8
%の細胞のみとでは、LIDによって不十分にしかトランスフェクトされなかった
(図13A)。しかしながら、コンフルエントな細胞のLID+EGTA製剤形態でのト
ランスフェクションは、コンフルエントな細胞のトランスフェクション効率をほ
ぼ4倍、約31%まで増加した(図13B)。しかしながら、細胞増殖の速度は、Br
dUラベリングによって明らかなように、EGTA処理によって影響されず、EGTA処理
の前(図13D)及び後(図13E)約6〜7%で変化のないままであった。対照的
に、サブ・コンフルエントな細胞のLID+EGTAトランスフェクションは、トラン
スフェクション効率を増加せず、トランスジーン陽性細胞はEGTA陰性(図14A)
及びEGTA陽性(図14B)トランスフェクションの両方において約44〜45%であっ
た。EGTA処理は、サブ・コンフルエントな細胞の増殖をEGTA陰性群での約43%(
図14D)からEGTA陽性群での約24%まで減少したが、このことはトランスフェク
ション速度には影響を与えなかった(図14E)。
【0218】 これらの結果は、LIDベクターの2mMEGTAとの製剤形態は、コンフルエントな
上皮細胞のトランスフェクションを大きく増大し、この増大は増加した細胞増殖
とは関連しないことを示した。これらの観察についての考えられる説明は、EGTA
処理がLID結合及びその後の取込を、側底表面上にレセプターを曝露することに
よって増大する、及び、その後LIDベクターは非分裂性細胞をトランスフェクト
できるというものである。
【0219】非分裂性の細胞のLID+EGTAトランスフェクション 実験は、LIDベクターが非有糸分裂の細胞を、BrdU及びアフィジコリン、細胞
周期阻害剤の存在下、1HAEo-をトランスフェクトすることによってトランスフ
ェクトした(Jiang et al. Hum. Gene Ther. 1998; 9:1531-1542.参照)。トラ
ンスフェクションのEGTA増大は、アフィジコリンの存在下でさえ観察されたが、
BrdU編入によって示される細胞増殖速度は、コンフルエントな細胞での5%のみ
(図13F)及びサブ・コンフルエントな細胞での7%(図14F)であった。アフ
ィジコリンで処理したコンフルエントな及びサブ・コンフルエントな細胞の両方
のLID+EGTAトランスフェクション速度は、コンフルエントな細胞について23%
(図13C)及びサブ・コンフルエントな細胞について24%(図14C)でほぼ同一
であった。これらの結果は、コンフルエントな細胞のトランスフェクションを支
持し、LIDベクターが非分裂性細胞を細胞分裂の速度より少なくとも4倍高い効
率でトランスフェクトすることを示した。このデータは、LIDベクターが非分裂
性の細胞をトランスフェクトするという仮説と一致する。
【0220】 この提言を更にテストするため、細胞は、β−ガラクトシダーゼリポーター遺
伝子をコードするプラスミドを含有するLID+EGTAでBrdU存在下、トランスフェ
クトし、その後細胞は、免疫蛍光顕微鏡検査によって分析して、BrdUで標識され
、リポーター遺伝子を発現する細胞を検出した。LID+EGTAでトランスフェクト
したサブ・コンフルエントな細胞の二重免疫蛍光イメージは、高レベルの増殖を
示した。β−ガラクトシダーゼリポーター遺伝子を発現する細胞の多くはまた、
分裂する細胞の優先的なトランスフェクションを示すBrdUについて陽性であった
。このような二重染色された細胞は、図15Aで見ることができ、1例は「g/r」
と記される。しかしながら、コンフルエントな細胞の間で、bot増殖頻度及びト
ランスフェクション効率はずっと低かった(図15B)。コンフルエントな細胞の
EGTA処理は、しかしながら、β−ガラクトシダーゼ陽性細胞の比率を顕著に増加
したが(図15Cにおける不規則な形状の染色された細胞、1例を「赤」と記す)
、BrdUラベリングによって明らかな増殖速度は低いままであった。赤く染色され
た細胞はほとんどなかった(図15C中の丸い染色された細胞を参照)。多くのト
ランスジーン陽性サブ・コンフルエントな細胞は、二重ラベリングによって明ら
かなように増殖している細胞であったが、コンフルエントな細胞を発現するトラ
ンスジーンのほとんどは、BrdUによって標識化されなかったことから非増殖性で
あった(図15A及び図15C)。
【0221】EGTA処理されたコンフルエントな細胞へのLID結合 EGTAは、増大された細胞増殖によってトランスフェクションを増大するわけで
はないから、LIDトランスフェクションの増大は、ベクターの側底表面上に曝露
されたレセプターへの増大された細胞結合と関連し得る。この提言は、FITC結合
ペプチドで調製された蛍光標識化LID複合体の結合を研究することによってテス
トされる。FITC−LID複合体の細胞との4℃でのインキュベーションは、エンド
サイトーシスによる細胞インターナリゼーションを阻害し、蛍光シグナルと結び
付いている細胞のほとんどクリスタルバイオレット処理によって消滅したという
観察によって確認された。クリスタルバイオレットクエンチング法は、内在化さ
れた蛍光材と表面に結合する蛍光材との間の区別化を可能とする。LID複合体結
合効率における顕著な差異は、トランスフェクトされたコンフルエントな細胞に
おいてEGTAのあるとなしとの間で観察された。FITC標識したLID複合体を表すほ
んの少しの散在した点は、EGTA処理なしの細胞に結合した(図16E)が、EGTA存
在下では、LID粒子の結合は大きく増加した(図16F)。
【0222】 コンフルエントな細胞の側底表面上でのレセプターの曝露は、LIDベクターの
増加した結合を可能とすることになる。このことは、OptiMEM中2mMEGTAによっ
て細胞の緊密な連結の崩壊を必要であろう。図16は、EGTA処理の効果を表すコン
フルエントな1HAEo-細胞の顕微鏡写真を示した。左側カラムのイメージ(A、
C、E、G)はEGTA処理前の細胞を表し、右側カラム(B、D、F、H)はEGTA
処理後の細胞である。それらは、コンフルエントな生細胞(A、B:x400、慣
用の倒立型顕微鏡)、緊密な連結タンパク質オクルジンについての免疫蛍光(C
、D:x400、投影イメージ、共焦点(cofocal)顕微鏡)、LID複合体の細胞表
面への結合(E、F:x100、倒立型共焦点顕微鏡)及びトランスジーンpEGFPの
発現(G、H:x100、慣用の倒立型顕微鏡)の典型的な形態の代表的なイメー
ジである。コンフルエントな細胞は、通り抜けられない細胞シートが形成される
までトランスウェル挿入物上で成長させた(図16A)。緊密な連結は、オクルジ
ンについての陽性免疫蛍光染色によって示されるように細胞間で明確に限定され
た(図16C)。これらの条件下では、細胞表面に結合したLID粒子はほとんどな
く(図16E)、ほんの少数の細胞しかトランスジーンEGFPを発現しなかった(図
15G)。しかしながら、EGTAとの処理後、コンフルエントな細胞は丸くなり、互
いの間に空間を残した(図16B)。EGTAは、オクルジンについての免疫蛍光の壊
れた線によって明らかなように、緊密な連結を分断した(図16D)。そして、細
胞表面に結合するLID複合体のより多くの粒子(図16F)及びその後により多く
の細胞がEGFPでトランスフェクトされた(図16H)。
【0223】ディスカッション 多くの因子が気道上皮細胞への遺伝子転移の効率に影響するが、細胞の極性及
び増殖速度が主な律速因子の2つである。それ故、細胞の連結の修飾及び細胞増
殖の誘導は、ウイルス性及び非ウイルス性両方のベクターで研究された(Bals e
t al.(1999))。これらの結果は、細胞の連結の完全性をEGTAで崩壊し、ベクタ
ーの結合を増加した後、非ウイルス性LIDベクターを有するコンフルエントな気
道上皮細胞への遺伝子転移の顕著な増大を実証した。EGTA増大トランスフェクシ
ョンは、結合における結果としての増加と関連し、トランスフェクションの増大
が観察された。より重要なことは、トランスフェクション効率における4倍の増
加が達成されるが、BrdUラベリングによって表される細胞増殖の速度は約7%で
影響のないままであった。加えて、アフィジコリンの存在下、コンフルエントな
及びサブ・コンフルエントな細胞においてトランスフェクションが行われたとき
、EGTAとの製剤形態のLIDベクターでのトランスフェクションは、両方の場合に
おいて、EGTAなしのトランスフェクションより約3倍高い少なくとも23%の細胞
において観察された。ほとんどのトランスジーン陽性のコンフルエントな細胞が
非増殖性であるという二重蛍光によって得られる事実と共に、現結果は、LIDベ
クターが非増殖性の気道上皮細胞を比較的高効率でトランスフェクトすることを
示す。
【0224】 コンフルエントな気道上皮細胞はほぼ完全に有糸分裂静止性である。本例にお
いて明らかなように、増殖性のBrdU標識細胞はサブ・コンフルエントな細胞にお
いて約43%の割合を占めるが、コンフルエントな細胞においてはほんの7%であ
った。減少した細胞増殖は、有糸分裂中の細胞(BrdU陽性)がBrdU陰性細胞より
ずっとトランスジーンを発現する可能性が高いというFasbender(Fasbender et
al.(1997))によって、及び成長が抑制された細胞がより低効率でトランスフェ
クトされたというWilke(Wilke et al.(1996))によって報告されているように
、低効率のトランスフェクションという結果であろう。本研究はまた、トランス
フェクションがコンフルエントな細胞においてサブ・コンフルエントな細胞より
ずっと非効率的(8%対44%)であったことが示された。それ故、細胞増殖速度
を増加することは、新たに接種された細胞をトランスフェクトする(Fasbender
et al.(1997))ことによって、または細胞増殖を成長因子で促進する(Wang et
al.(1998))ことによって観察されるように、気道上皮細胞への遺伝子転移を増
大するであろう。
【0225】 しかしながら、細胞増殖の促進は、ウイルス性ベクターを用いる気道上皮細胞
への効率的な遺伝子転移に対して不十分である(Wang et al.(1998))。Wang及
び共同研究者は、気道上皮細胞の分裂速度がケラチノサイト成長因子で促進する
ことによって約50%に増加したけれども、ウイルス性ベクターが先端(apical)
膜に適用されたときトランスフェクトされた細胞はなく、DNAが基底表面に適用
されたときのみ遺伝子転移が観察されたことを報告した(16)。それ故、現存の
ほとんどのベクターが効率的な遺伝子転移を得るには、側底レセプターに近づく
ことが決定的なものであろう。EGTAは、LIDベクターの側底レセプターへの接近
を促進するのに非常に効果的であり、低毒性でトランスフェクション効率を増大
することが見出されている(Wang et al.(1998), Bals et al.(1999), Chu et a
l.(1999)参照)。本例において、我々は、LIDベクターとEGTAの製剤形態をとり
、LIDベクターを先端表面に適用することによって、コンフルエントな非増殖性
気道上皮細胞を比較的高効率でトランスフェクトした。
【0226】 一致して、低い細胞増殖速度は、カチオン性脂質ベクターによる気道上皮への
遺伝子転移を制限することが報告されている(Wilkie et al.(1996)参照)。し
かしながら、BrdU陽性細胞はよりトランスフェクトされやすいけれども、トラン
スジーンを発現する細胞の大多数は増殖性ではなかった(Fasbender et al.(199
7)参照)。Matsuiはまた、BrdU陽性細胞が細胞集落(cell cluster)の至る所に
散在したが、リポソーム−DNAでのトランスフェクションは細胞がより増殖性で
あったクラスター辺縁でより頻繁に起こったことを報告した(Mitsui et al.(19
97))。対照的に、本例で得られた結果は、多くのトランスフェクトされたサブ
・コンフルエントな細胞が増殖性であったけれども、EGTA−製剤形態のLIDベク
ターでトランスフェクトされたコンフルエントな細胞のほとんどが非増殖性の細
胞であった。以上をまとめると、遺伝子転移が高増殖速度によって容易となり得
るという理解と共に、他方、増殖の状態は、ある非ウイルス性のベクターが、あ
る細胞タイプをトランスフェクトするのに必要な因子とはなり得ないことを示唆
された。DNA/ポリエチレンイミン複合体の幾つかの細胞系の細胞質へのマイク
ロインジェクションは、同量の裸のDNAと比較してより高発現のトランスジーン
を生じた(Palard et al.(1998)参照)。DNA/ポリリジン複合体のヒト線維芽細
胞への投与は、DNAのみと比較してより高い割合の細胞発現を導く(Zauner et a
l.(1999)参照)。さらに、Vitielloは、共焦点顕微鏡によって細胞核におけるDN
A及びポリリジンの共局在を見出したように、ポリリジンが核ターゲッティング
活性を有したであろうことを示唆した(Vitiello et al.(1996)参照)。これら
全てのデータは、幾つかのポリカチオンが、ある細胞タイプにおけるDNA複合体
の核取込を容易に成し得ることを示唆し、多くの非増殖性細胞が我々のLIDベク
ターによってトランスフェクトされたという事実を部分的に説明した。しかしな
がら、このことは、確信的な結論を得るには特にイン・ビボでのより集中的な研
究を必要とするものである。
【0227】 まとめとして、本例において表される結果は、合成非ウイルス性ベクターLID
を、緊密な連結を一時的に分断させるカルシウムキレーターEGTAのアジュバント
と共に用いる非増殖性のヒト気道上皮細胞への効率的な遺伝子転移が、LID複合
体の結合を増加することを確証する。細胞増殖の誘導はEGTA処理によっては観察
されず、トランスジーン陽性の細胞のほとんどが非増殖性であった。このことは
、LIDベクターの非増殖性細胞をトランスフェクトする能力及びヒト呼吸器疾患
の遺伝子治療におけるその使用を示す。
【0228】 (参考文献)
【図面の簡単な説明】
【図1】 種々の量のリポフェクチン(DOTMA:DOPE)の、リポフェクチン、オリゴリジ
ン−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA[SEQ.ID.NO.:22])及びプラスミドpGL2
からなる複合体を用いるECV304細胞のトランスフェクションの増幅における影響
を示す。
【図2】 種々の量のリポフェクチンの、リポフェクチン、オリゴリジン−ペプチド1([
K]16GACRGDMFGCA)及びプラスミドpGL2からなる複合体を用いる、A375M、COS−7
及びECV−40細胞のトランスフェクションの増幅における影響を示す。
【図3】 リポフェクチン(L),オリゴリジン−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA)(I)
及びプラスミドpGL2(D)からなる複合体の成分を混合する順番の、ECV40細胞の
トランスフェクションの増幅における影響を示す。
【図4】 プラスミドpGL2及びオリゴリジン−ペプチド1([K]16GACRGDMFGCA,pep1)ま
たはオリゴリジン−ペプチド5([K]16GACDCRGDCFCA[SEQ.ID.NO.:20],pep
5)またはオリゴリジン−ペプチド6([K]16GACRRETAWACG[SEQ.ID.NO.:21]
,pep6)または[K]16(K16)を含有し、リポフェクチン(lip)があるものとな
いものの複合体、及びプラスミドpGL2を、リポフェクチン:[K]16リジン−ペプ
チド1が重量比4:1(Lipo4対1)で含有する複合体の、リポフェクチンによ
るトランスフェクチンの増幅の比較を示す。
【図5】 インテグリン結合リガンドのアベイラビリティにおける、リポフェクチン、オ
リゴリジン−ペプチド6([K]16GACRRETAWACG)及びプラスミドpGL2を含有する複
合体の用量依存性を示す。
【図6】 種々の複合体の構造を示すものであり、アトミックフォースマイクロスコピー
を用いて決定されるように、その複合体は、次に示す、プラスミドDNA(プラス
ミドpGL2)、オリゴリジン−ペプチド([K]16−ペプチド6)及びリポフェクチン
;A:[K]16−ペプチド6及びプラスミドpGL2;B:[K]16−ペプチド6,リポフェク
チン及びプラスミドpGL2;C:リポフェクチン及びプラスミドpGL2、至適な比率
;D:リポフェクチン及びプラスミドpGL2、次善の比率、の種々の組み合わせで
形成される。
【図7】 COS−7細胞及び神経芽細胞系IMR−32,KELLY及びSHSY−5Yの、リポフェクチン
,オリゴリジン−ペプチド6([K]16GACRRETAWACG)及びIL−12の2つのドメイン
(MFGS−IL12)またはCMVプロモーター下の融合遺伝子,Flexi−12を含有する1
つのプラスミドをコードする2つのレトロウイルスプラスミド構築物の1つを含
有する複合体でのトランスフェクションの48時間後のIL−12の発現レベルを示す
【図8】 アンチセンスオリゴヌクレオチド(AS)でのトロンビンレセプター(PAR−1)
へのトランスフェクションの、ヒト胎児性肺線維芽細胞(HFL−1細胞)のトロン
ビン誘導増殖における効果を示す。
【図9】 造血細胞系HL60、PLB985、TF1及びU937の、リポフェクチン、そのレポーター
遺伝子pEGFP−N1及び [K]16−ペプチド6(pep6)または[K]16−ペプチド8(GGCR
GDMFGCA[SEQ.ID.NO.:8],pep8)を含有するLID複合体でのトランスフェク
ションの、無処理の細胞と比較した効果を示す。GFPポジティブ細胞の割合は、
蛍光活性化セルソーターを用いて決定された。
【図10】 GFP(緑蛍光タンパク質)がコンフルエントなヒト気道上皮細胞をトランスフ
ェクトしたことを示す。図10Aは、EGTA非存在下でトランスフェクションベクタ
ー複合体によってトランスフェクトされた細胞を示す。図10Bは、EGTA存在下で
のトランスフェクションを示す。
【図11】 リポーター遺伝子としてルシフェラーゼを用いるイン・ビボでのマウス肺のト
ランスフェクションにおけるEGTAの効果を示す。結果は、EGTAなし、100mMEGTA
及び400mMでのトランスフェクションについてmg肺タンパク質当りのRLUで与えら
れる。
【図12】 サブ・コンフルエントな(A、B)及びコンフルエントな(C、D)1HAEo-
細胞(A、C)及び2CFSMEo-細胞(B、D)におけるpEGFPでのトランスフェク
ションにおけるフローサイトメトリー分析を示す。サブ・コンフルエントな細胞
において高効率が観察されたが、細胞がコンフルエントになると劇的に減少した
【図13】 トランスフェクションにおけるEGTA(A、B)及び抗E−カドヘリン(C、D
)の効果の発光計量分析を示す。コンフルエントな(A)及びサブ・コンフルエ
ントな(B)1HAEo-細胞が、EGTAでの前処理後(EGTA)またはEGTA存在下(LID
+EGTA)、LID複合体でトランスフェクトされた。EGTA前処理(EGTA)もしくはE
GTAなしでの対照トランスフェクション(OptiMEM)と比較して、顕著な増大効果
がEGTAと共に編入されたLIDベクターを有するコンフルエントな細胞において観
察されたが、サブ・コンフルエントな細胞では観察されなかった(LID+EGTA)
。トランスジーンルシフェラーゼ活性における顕著な増加がまた、抗体なしのト
ランスフェクション(LIDとして標識)(p<0.05)またはIgG対照の存在下(LI
D+IgGとして標識)と比較して、3つの異なる濃度で抗E−カドヘリンとインキ
ュベートしたコンフルエントな2CFSMEo-細胞(C)において観察された。また
、抗E−カドヘリンもしくはIgG対照の存在下でトランスフェクトされたサブ・
コンフルエントな細胞(D)においては顕著な差異は観察されなかった。
【図14】 コンフルエントな1HAEo-細胞でのトランスフェクション効率(A−C)及びB
rdU編入(D−F)におけるEGTA効果のフローサイトメトリー分析を示す。細胞
は、pEGFP(A)またはpEGFP+EGTA(B)、またはpEGFP+EGTA及びアフィジコ
リン(C)でトランスフェクトした。トランスフェクションと並行して、細胞は
、BrdU(D)またはBrdU+EGTA(E)、またはBrdU+EGTA及びアフィジコリン(
F)で標識した。8.6%の細胞がトランスジーンEGFP(A)を発現した。EGTAは
その効率を31.7%まで増加し(B)、この増大効果は、アフィジコリン存在下で
も観察され、EGFP陽性細胞は23.6%の割合を占めた(C)。一方、EGTAは、BrdU
編入の比率がコンフルエントな細胞で7.1%(D)、EGTA存在下で6.5%(E)、
及びEGTA及びアフィジコリンの存在下で5.3%であり、細胞増殖に影響を与えな
かった。
【図15】 サブ・コンフルエントな1HAEo-細胞:トランスフェクション効率(A−C)
及びBrdU編入の比率(D−F)におけるEGTA効果のフローサイトメトリー分析を
示す。細胞は、図13に表すコンフルエントな細胞におけるのと同じように処理し
た。トランスフェクション効率はサブ・コンフルエントな細胞において44.5%の
高さであった(A)。45.6%の類似の効率がEGTA存在下で観察され(B)、24.8
%もの細胞がアフィジコリン存在下でトランスフェクトされた(C)。増殖を促
進する代わりに、EGTAは、サブ・コンフルエントな細胞においてBrdU編入率を減
少させ、BrdU陽性細胞の比率は43.0%(D)からEGTA処理後、約23.9%(E)に
減少した。7.8%の細胞がアフィジコリン存在下でBrdUで標識された(F)。
【図16】 サブ・コンフルエントな(A)及びコンフルエントな(B、C)1HAEo-細胞
における、トランスジーンβガラクトシダーゼ(緑の細胞質染色によって示され
るトランスジーン発現、異常な形態)及びBrdUラベリング(赤の核染色によって
示される、より小さく丸い形態)についての二重免疫蛍光を示す。図15Aに表さ
れるように、サブ・コンフルエントな細胞のほとんどがBrdUで標識され、それら
の多くが同時にトランスジーンを発現した(丸くなった形態を含有する異常な形
態)。ほんの少しのコンフルエントな細胞もβ−ガラクトシダーゼについて陽性
ではなく、少量しかBrdUで標識されなかった(B)。EGTA処理後、より多くの細
胞がトランシジーンを発現したが(図15C参照)、それらの増殖状態は、BrdUラ
ベリングの変化しない割合によって明らかなように、ほとんどの細胞が赤く染色
されず、影響を受けなかった。
【図17】 EGTA処理の効果を示すコンフルエントな1HAEo-細胞の顕微鏡写真を示す。左
側カラムのイメージ(A、C、E、G)はEGTA処理前の細胞を示し、右側カラム
(B、D、F、H)はEGTA処理後の細胞である。それらは、生コンフルエントな
細胞の典型的な形態の代表的なイメージ(A、B:x400、慣用の倒立型顕微鏡
)、緊密な連結タンパク質オクルジンについての免疫蛍光(C、D:x400、投
影されたイメージ、共焦点顕微鏡)、LID複合体の細胞表面への結合(E、F:
x100、倒立型共焦点顕微鏡)及びトランスジーンpEGFPの発現(G、H:x100
、慣用の倒立型顕微鏡)である。コンフルエントな細胞は非透過性の細胞シート
を形成する(A)。緊密な連結は、オクルジンについての免疫蛍光によって示さ
れるように、細胞の周囲に明確に限られていた(C)。これは、LIDベクターの
ほんの少しの粒子を細胞表面に結合させるだけであり(E)、ほんの少数の細胞
しかトランスジーンEGDPを発現しなかった(G)。EGTAでの処理後、コンフルエ
ントな細胞は丸くなった(B)。オクルジンについての免疫蛍光の崩れた線によ
って表されるように、緊密な連結は分断され、ずっと多くのLID複合体粒子が細
胞表面に結合し(F)、結果的に、より多くの細胞がトランスジーンEGFPを発現
した(H)。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12P 21/02 C12N 5/00 B (31)優先権主張番号 60/287,410 (32)優先日 平成13年5月1日(2001.5.1) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE ,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB, GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,I N,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC ,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD, MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,P L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK ,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG, US,UZ,VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 AA20 CA01 CA11 DA02 EA04 GA13 HA20 4B064 AG01 CA10 CA19 4B065 AA90X AB01 BA05 CA44 4C084 AA13 MA01 NA14 ZB262 4C086 AA01 AA02 EA16 MA01 MA04 NA14 ZB26

Claims (31)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンフルエントな細胞または互いに接触している他の分裂が
    遅いもしくは非分裂性の細胞を核酸でトランスフェクトする方法であって、核酸
    からなるレセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤
    と細胞を、トランスフェクションを奏するのに適した条件下で接触させることか
    らなる上記方法。
  2. 【請求項2】 細胞は上皮細胞または内皮細胞である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 細胞−細胞の連結を分断することができる薬剤はカルシウム
    結合剤またはカルシウムキレート剤である請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 カルシウム結合剤またはカルシウムキレート剤はEGTAである
    請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 EGTAは、イン・ビトロで1mM以下の、例えば約0.5〜1mM、
    特に約1mM、またはイン・ビボで25〜200mM、例えば100mMの濃度で使用される請
    求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 細胞−細胞の連結を分断することができる薬剤は細胞接着に
    関連する物質に指向する抗体である請求項1または2に記載の方法。
  7. 【請求項7】 細胞接着に関連する物質に指向する抗体は抗カドヘリンであ
    る請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 細胞−細胞の連結を分断することができる薬剤は、同時また
    は実質的に同時にベクターとして使用される請求項1〜7のいずれか一項に記載
    の方法。
  9. 【請求項9】 ベクターは、細胞表面レセプターを標的とする非ウイルス性
    ベクターである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 ベクターは、インシュリン、アシアログリコプロテインま
    たはトランスフェリンのレセプター、または神経芽腫細胞上のレセプターを標的
    とし、リポソームに結合した葉酸であるまたは肝細胞を標的とするガラクトース
    である請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 ベクターはインテグリンレセプターに対して標的となる請
    求項9記載の方法。
  12. 【請求項12】 ベクターは、(i)核酸、(ii)インテグリン結合成分、特に
    インテグリン結合ペプチド、(iii)ポリカチオン性核酸結合成分、特にオリゴリ
    ジン、及び(iv)脂質成分、特にDOPE、DOTMA、DOSPAまたはその組合せ、からなる
    インテグリンを標的とするトランスフェクションベクター複合体である請求項11
    記載の方法。
  13. 【請求項13】 ポリカチオン性核酸結合成分は、10〜20の、特に16、17ま
    たは18のリジン残基を有するオリゴリジンである請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 インテグリン結合成分はインテグリン結合ペプチドである
    請求項12または13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 ペプチドは、保存的なアミノ酸配列アルギニン−グリシン
    −アスパラギン酸(RGD)からなる請求項14記載の方法。
  16. 【請求項16】 インテグリン結合ペプチドは、1以上のジスルフィド結合
    を形成し、それによって環状ペプチドを形成する少なくとも2つのシステイン残
    基を有する請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 【請求項17】 インテグリン結合ペプチドは、以下の配列:CRGDMFGC(配
    列番号27);CRGDMFGCG(配列番号5);CRGDMFGCA(配列番号28)、CDCRGDCFCA
    (配列番号29);CRRETAWACA(配列番号30);CRRETAWAC(配列番号13);CRRET
    TAWAC(配列番号31);CRRETAWACG(配列番号32);CRGDMFGCGG(配列番号33)
    ;GPEILDVPST(配列番号34);CQIDSPCA(配列番号35)及びCRRETAWACGKGACRRET
    AWACG(配列番号36)、の1つから構成されるまたは含む請求項13記載の複合体
  18. 【請求項18】 インテグリン結合ペプチドは、グリシン−グリシン(GG)
    、グリシン−アラニン(GA)である、またはスペーサーGG及びGAより長く及び/
    またはより疎水性であるスペーサーエレメントからなる請求項13〜17のいずれか
    一項に記載の方法。
  19. 【請求項19】 スペーサーエレメントはXSXGAであり、Sはセリン、Gはグ
    リシン、Aはアラニン及びXはε−アミノカプロン酸である請求項18記載の方法。
  20. 【請求項20】 宿主細胞、特にコンフルエントな細胞または互いに接触し
    ている他の分裂が遅いもしくは非分裂性の細胞において核酸を発現するプロセス
    であって、宿主細胞をイン・ビトロまたはイン・ビボで、核酸からなるレセプタ
    ーを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を分断する薬剤と、トランスフェ
    クションを奏するのに適した条件下で接触させ、その後宿主細胞を、細胞が核酸
    を発現するのを可能とする条件下で培養することからなる上記プロセス。
  21. 【請求項21】 宿主細胞、特にコンフルエントな細胞または互いに接触し
    ている他の分裂が遅いもしくは非分裂性の細胞においてタンパク質を生産するプ
    ロセスであって、宿主細胞をイン・ビトロまたはイン・ビボで、タンパク質をコ
    ードする核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び細胞−細胞の連結を
    分断する薬剤と、トランスフェクションを奏するのに適した条件下で接触させ、
    宿主細胞を、細胞がタンパク質を発現するのを可能とする条件下で培養し、細胞
    にタンパク質を発現させ、及びタンパク質を得ることからなる上記プロセス。
  22. 【請求項22】 核酸でトランスフェクトされた、コンフルエントな細胞ま
    たは互いに接触している他の分裂が遅いもしくは非分裂性の細胞、及び、またこ
    のような細胞の子孫。
  23. 【請求項23】 候補医薬製剤をテストするのに使用する疾病モデルであっ
    て、疾病モデルを創造するのに適した核酸でトランスフェクトされた、コンフル
    エントな細胞または互いに接触している他の分裂が遅いもしくは非分裂性の細胞
    からなる上記疾病モデル。
  24. 【請求項24】 (i)核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び(ii
    ) 細胞−細胞の連結を分断する薬剤を、医薬品に適した担体との混合または結合
    として含む医薬組成物であって、ワクチンでもよい上記組成物。
  25. 【請求項25】 遺伝子における欠陥及び/または欠乏によってヒトまたは
    非ヒトの動物において生じる状態の治療または予防のための方法であって、ヒト
    または非ヒトの動物に(i)欠陥または欠乏を治すのに適した核酸からなるレセプ
    ターを標的とするベクター及び(ii) 細胞−細胞の連結を分断する薬剤を投与す
    ることからなる上記方法。
  26. 【請求項26】 ヒトまたは非ヒトの動物の治療的または予防的な免疫のた
    めの方法であって、ヒトまたは非ヒトの動物に(i)適当な核酸からなるレセプタ
    ーを標的とするベクター及び(ii) 細胞−細胞の連結を分断する薬剤を投与する
    ことからなる上記方法。
  27. 【請求項27】 ヒトまたは非ヒトの動物のアンチセンス治療のための方法
    であって、ヒトまたは非ヒトの動物に(i)アンチセンス核酸からなるレセプター
    を標的とするベクター及び(ii) 細胞−細胞の連結を分断する薬剤をアンチセン
    スDNA投与することからなる上記方法。
  28. 【請求項28】 遺伝子における欠陥及び/または欠乏によってヒトまたは
    非ヒトの動物において生じる状態の予防のため、ヒトまたは非ヒトの動物の治療
    的または予防的な免疫のため、またはヒトまたは非ヒトの動物のアンチセンス治
    療のための製剤を製造するための(i)核酸からなるレセプターを標的とするベク
    ター及び(ii)細胞−細胞の連結を分断する薬剤の使用。
  29. 【請求項29】 (i)核酸からなるレセプターを標的とするベクター及び(ii
    )細胞−細胞の連結を分断する薬剤からなるキット。
  30. 【請求項30】 細胞−細胞の連結を分断する薬剤及び以下の品目、(a)イ
    ンテグリン結合成分、(b)ポリカチオン性核酸結合成分、及び(c)脂質成分からな
    るキットであって、さらに(d)核酸かまたは核酸の発現のために適したプラスミ
    ドもしくはベクターであって、空かまたは核酸を含むプラスミドまたはベクター
    を含んでいてもよい上記キット。
  31. 【請求項31】 ベクターは請求項12〜19のいずれか一項に定義されるもの
    である、請求項20〜30のいずれか一項に記載のプロセス、細胞、疾病モデル、医
    薬組成物、方法、使用またはキット。
JP2002500735A 2000-05-30 2001-05-30 トランスフェクションの改良方法 Pending JP2003534804A (ja)

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
GB0013090.6 2000-05-30
GB0013090A GB0013090D0 (en) 2000-05-30 2000-05-30 Intergrin-targetting vectors having enhanced transfection activity
GB0013089.8 2000-05-30
GB0013089A GB0013089D0 (en) 2000-05-30 2000-05-30 Improved methods of transfection
US28741001P 2001-05-01 2001-05-01
US60/287,410 2001-05-01
PCT/GB2001/002396 WO2001092543A2 (en) 2000-05-30 2001-05-30 Improved methods of transfection

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003534804A true JP2003534804A (ja) 2003-11-25

Family

ID=27255741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002500735A Pending JP2003534804A (ja) 2000-05-30 2001-05-30 トランスフェクションの改良方法

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP1285081A2 (ja)
JP (1) JP2003534804A (ja)
AU (2) AU2001258659A1 (ja)
CA (1) CA2410419A1 (ja)
WO (2) WO2001092543A2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002097116A2 (en) * 2001-05-30 2002-12-05 The Scripps Research Institute Delivery system for nucleic acids
AR037756A1 (es) * 2001-12-17 2004-12-01 Bayer Corp Anticuerpo que inhibe la actividad del factor de las celulas precursoras y su uso para el tratamiento del asma.
FR2860236B1 (fr) * 2003-09-25 2006-01-06 Theraptosis Peptides possedant notamment une activite anti-angiogenique et leurs applications en therapeutique
AU2009206212B2 (en) 2008-01-24 2014-01-16 Board Of Supervisors Of Louisiana State University And Agricultural And Mechanical College Lytic domain fusion constructs and methods of making and using same
WO2017212007A1 (en) * 2016-06-09 2017-12-14 Curevac Ag Cationic carriers for nucleic acid delivery
US11478552B2 (en) 2016-06-09 2022-10-25 Curevac Ag Hybrid carriers for nucleic acid cargo

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2067183A1 (en) * 1989-09-27 1991-03-28 Lee L. Rubin Compositions for cell adhesion inhibition and methods of use
CA2131620A1 (en) * 1992-03-20 1993-09-30 Louis C. Smith A dna transporter system and method of use
US5981478A (en) * 1993-11-24 1999-11-09 La Jolla Cancer Research Foundation Integrin-binding peptides
AUPM747694A0 (en) * 1994-08-16 1994-09-08 Commonwealth Scientific And Industrial Research Organisation Delivery of nucleic acids and peptides
US5846782A (en) * 1995-11-28 1998-12-08 Genvec, Inc. Targeting adenovirus with use of constrained peptide motifs
US6051429A (en) * 1995-06-07 2000-04-18 Life Technologies, Inc. Peptide-enhanced cationic lipid transfections
WO1997033605A1 (en) * 1996-03-15 1997-09-18 Yale University Human occludin, its uses and enhancement of drug absorption using occludin inhibitors
US6210707B1 (en) * 1996-11-12 2001-04-03 The Regents Of The University Of California Methods of forming protein-linked lipidic microparticles, and compositions thereof
GB9711115D0 (en) * 1997-05-29 1997-07-23 Inst Of Child Health Integrin-targeting vectors having enhanced transfection activity
WO1999018792A1 (en) * 1997-10-10 1999-04-22 Johns Hopkins University Gene delivery compositions and methods
EP1053342A2 (en) * 1998-02-09 2000-11-22 Genzyme Corporation Nucleic acid delivery vehicles
US6448390B1 (en) * 1998-05-20 2002-09-10 The University Of Tennessee Research Corporation Stable envelope proteins for retroviral, viral and liposome vectors and use in gene drug therapy
AU4417000A (en) * 1999-04-15 2000-11-02 Glaxo Group Limited Novel pharmaceutical composition suitable for gene therapy

Also Published As

Publication number Publication date
CA2410419A1 (en) 2001-12-06
WO2001092543A2 (en) 2001-12-06
WO2001092542A8 (en) 2003-12-24
WO2001092542A2 (en) 2001-12-06
AU2001260467A1 (en) 2001-12-11
AU2001258659A1 (en) 2001-12-11
WO2001092542A3 (en) 2003-05-30
EP1285081A2 (en) 2003-02-26
WO2001092543A3 (en) 2002-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11998635B2 (en) Targeted extracellular vesicles comprising membrane proteins with engineered glycosylation sites
JP4293292B2 (ja) トランスフェクション活性を有するインテグリン−ターゲッティングベクター
Pichon et al. Histidine-rich peptides and polymers for nucleic acids delivery
Perales et al. An evaluation of receptor‐mediated gene transfer using synthetic DNA‐ligand complexes
Mahato Non-viral peptide-based approaches to gene delivery
US7244704B2 (en) Peptide scaffolds for transfer of molecules into eukaryotic cells
Zhang et al. Macropinocytosis is the major pathway responsible for DNA transfection in CHO cells by a charge-reversal amphiphile
US6372720B1 (en) Liposome fusion and delivery vehicle
US20050163832A1 (en) Intracellular delivery of therapeutic agents
Cryan et al. Increased intracellular targeting to airway cells using octaarginine-coated liposomes: in vitro assessment of their suitability for inhalation
Welser et al. Gene delivery using ternary lipopolyplexes incorporating branched cationic peptides: the role of peptide sequence and branching
Gilot et al. Cationic lipids derived from glycine betaine promote efficient and non‐toxic gene transfection in cultured hepatocytes
JP2003534804A (ja) トランスフェクションの改良方法
Nakamura et al. Delivery of condensed DNA by liposomal non-viral gene delivery system into nucleus of dendritic cells
WO2015135432A1 (zh) 靶向脂质体的制备及其应用
US20040014217A1 (en) Methods of transfection
EP1007549B1 (en) Compositions and methods for highly efficient transfection
Norton et al. Methods for DNA introduction into mammalian cells
Smith et al. Gene therapy in heart disease
Midoux et al. Peptide-based gene delivery systems
WO2000012114A1 (en) Peptide scaffolds for transfer of molecules into eukaryotic cells
US20030100496A1 (en) Compositions and methods for highly efficient transfection
Larsen Non-viral gene delivery: An inside-out approach
Smith et al. DNA DELIVERY SYSTEMS BASED ON SYNTHETIC PEPTIDES