JP2003526372A - IgE抗体のFc領域の3次元モデルおよびその利用 - Google Patents

IgE抗体のFc領域の3次元モデルおよびその利用

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JP2003526372A JP2001567345A JP2001567345A JP2003526372A JP 2003526372 A JP2003526372 A JP 2003526372A JP 2001567345 A JP2001567345 A JP 2001567345A JP 2001567345 A JP2001567345 A JP 2001567345A JP 2003526372 A JP2003526372 A JP 2003526372A
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セオドア エス. ジャルデツキー,
ベス エイ. ワーツバーグ,
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、IgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域のような抗体の3次元モデル、ならびにこのようなモデルを生成する方法が含まれる。本発明はまた、増大した安定性および/または抗体レセプター結合活性を有するムテイン、ならびに(好ましくは本発明の3次元モデルから導出される情報を使用して)このようなムテインを作製する方法を含む。本発明のムテインをコードする核酸配列および本発明のムテインを生成するためのこれらの配列の使用もまた、本発明に含まれる。抗体に対する抗体レセプタータンパク質の結合を阻害する化合物の同定のための本モデルの使用もまた、含まれる。本発明はまた、このようなムテインおよび阻害性化合物の使用(例えば、診断およびアレルギーおよび他の異常な免疫応答から動物を防御する方法を含む)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は、Cε3およびCε4ドメイン(Fc−Cε3/Cε4、またはFc
−Ce3/Ce4、領域)を含むIgE抗体の定常領域の結晶および3次元(3
−D)モデルに関する。本発明はまた、アレルギーの診断および処置ならびに動
物におけるその他の免疫応答の調節において有用なムテインおよびインヒビター
を生成するためのそのモデルの使用に関する。
【0002】 (発明の背景) 抗体Fc−レセプター(FcR)は、免疫系の種々の細胞に、分泌抗体の特異
性をカップリングすることにより、免疫応答において重要な役割を演じている。
マクロファージ、肥胖細胞,好酸球、および好塩基球を含む多くの細胞型は、そ
れらの表面に膜結合FcRを発現する。抗体のFcRへの結合は、これら細胞に
抗原特異性を提供し、これら細胞は、活性化に際し、インターロイキン、炎症の
開始剤、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ヒスタミン、または細胞障害性
タンパク質のような免疫応答の細胞特異的メディエーターをさらに放出する。F
cRの養子特異性(adoptive specificity)は、これらレ
セプターを発現する種々の細胞型に、抗体抗原−認識部位の多様性をカップリン
グさせることによって、病原体放出に対し組み合わせのアプローチを可能にする
【0003】 FcRで開始する機構は、感染性疾患に対する正常免疫において、ならびにア
レルギー、抗体媒介腫瘍認識、自己免疫疾患、および免疫応答が異常である(す
なわち調節されていない)その他の疾患において重要である。トランスジェニッ
クマウスを用いた最近の実験は、FcRが免疫応答において鍵となるステップを
制御し、これには、抗体関連の細胞の細胞障害性および免疫複合体の形成にとも
なう炎症カスケードが含まれることを実証する;例えば、Ravetchら、1
998、Annu Rev Immunolo 16、421−432を参照の
こと。IgG(FcgRI、FcgRII、およびFcgRIII、集合的にF
cgRsとして知られる)を結合するレセプターは、種々の炎症性反応を媒介し
、B細胞活性化を調節し、そしてまた超過敏反応の引き金となる。高親和性Fc
εレセプター(IgEレセプターまたはFceRIとして知られる)は、肥胖細
胞の活性化およびアレルギー反応およびアナフィラキシー性ショックの開始に関
連している。FceRIα鎖(FcεRIα)についてのノックアウトマウスは
、FcgRsがなお肥胖細胞を活性化し得るが(例えば、Dombrowicz
ら、1997、J.Clin.Invest.99、915−925;Oett
genら、1994、Nature 370、367−370を参照のこと)、
IgE媒介アナフィラキシーを増大できない(例えば、Dombrowiczら
、1993、Cell 75、969−976を参照のこと)。FceRIはま
た、血小板および好酸球からの抗寄生反応の引き金となること、ならびにT細胞
の活性化のためのMHCクラスII提示経路中に抗原を送達することが示されて
いる;例えば、Gounniら、1994、Nature 367、183−1
86;Josephら、1997、Eur.J.Immunol.27、221
2−2218;Maurerら、1998、J.Immunol.161、27
31−2739を参照のこと。FceRIのβサブユニットは、遺伝的研究にお
いて喘息と関連している;例えば、Hillら、1996、Hum.Mol.G
enet.5、959−962;Hillら、1995、Bmj 311、77
6−779;Kimら、1998、Curr.Opin.Pulm.Med.4
、46−48;Maoら、1998、Clin.Genet.53、54−56
;Shirakawaら、1994、Nat.Genet.7、125−129
を参照のこと。人口の顕著な部分(約20%)がアレルギーによって影響されて
いる可能性があり、そして今世紀には、喘息の実質的増加が観察されている。F
ceRIへのIgE結合は、異なるアレルゲンに対する反応において不可欠な事
象であるので、FceRI阻害を狙う治療ストラテジーは、これら疾患の有用な
処置を提供し得る。例えば、IgEを標的とし、そしてレセプター結合をブロッ
クするモノクローナル抗体は、治療能力を示している;例えば、Heusser
ら、1997、Curr.Opin.Immunol.9、805−813を参
照のこと。
【0004】 FceRIは、肥胖細胞、好塩基球、好酸球、ランゲルハンス細胞および血小
板の表面上の、テトラマー(abg)またはトリマー(ag)の膜結合レセ
プターとして見出されている。FceRIのα鎖は、FcεRIαとも称され、
高親和性(約10−9〜10−10分子/リットル(M)のK)でIgE分子
を結合し、そして単一のC末端膜貫通アンカーの前の停止コドンの導入により、
172アミノ酸の可溶性IgE結合フラグメントとして分泌され得る;例えば、
Blankら、1991、E.J.Biol.Chem.266、2639−2
646を参照のこと。これは、172アミノ酸の可溶性IgE−結合フラグメン
トの分泌を記載する。ヒトFcεRIαタンパク質の細胞外ドメインは、免疫グ
ロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、そして7つのN連結グリコシル化
部位を含む。FcεRIαのグリコシル化は、レセプターの分泌および安定性に
影響するが、IgE結合には必要ではない;例えば、LaCroixら、199
3、Mol.Immunol.30、321−330;Letourneurら
、1995、J.Biol.Chem.270、8249−8256;Robe
rtson、1993、J.Biol.Chem.268、12736−127
43;Scarselliら、1993、FEBS Lett 329、223
−226を参照のこと。FceRIのβおよびγ鎖は、シグナル伝達モジュール
である。
【0005】 従前の研究者は、ヒトFcεRIαの核酸配列を開示している;例えば、19
90年10月9日に発行されたLederによる米国特許第4,962,035
号;1997年6月17日に発行されたKinetらによる米国特許第5,63
9,660号;Kochanら、1988、Nucleic Acids Re
s.16、3584;Shimizuら、1988、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 85、1907−1911;およびPangら、199
3、J.Immunol.151、6166−6174を参照のこと。ヒトFc
eRIβ鎖およびヒトFceRIγ鎖の核酸配列もまた報告されている;それぞ
れ、Kusterら、1992、J.Biol.Chem.267、12782
−12787;Kusterら、1990、J.Biol.Chem.265、
6448−6452を参照のこと。イヌFcεRIα、マウスFcεRIα、ラ
ットFcεRIα、ネコFcεRIαおよびウマFcεRIαタンパク質をコー
ドする核酸分子の核酸配列もまた報告されている;それぞれ、GenBank 登録番号D16413;Swiss−Prot登録番号P20489(コード
されるタンパク質配列を示す);GenBank登録番号J03606;199
8年6月25日に公開されたFrankらによるPCT公開番号WO98/27
208、本明細書ではWO98/27208と称される;および1999年8月
5日に公開されたWeberらによるPCT公開番号WO99/38974、本
明細書ではWO99/38974と称される、を参照のこと。さらに、FcεR
Iαタンパク質を用いてIgE抗体を検出する方法が、1998年6月4日に公
開されたFrankらによるPCT公開番号WO98/23964、本明細書で
はWO98/23964と称される;WO98/27208、前述;1998年
10月15日に公開されたFrankらによるPCT公開番号WO98/457
07、本明細書ではWO98/45707と称される;およびWO99/389
74、前述、において報告されている。WO98/23964、WO98/27
208、WO98/45707およびWO99/38974の各々はその全体が
本明細書に参考として援用される。
【0006】 FcεRIαまたはIgEいずれかの、これら個々のタンパク質の結合(すな
わちこれらの間の相互作用)に関与するアミノ酸を同定することを試みるための
変異誘発およびスワッピング技法の使用のいくつかの報告があり、他のIg−ス
ーパーファミリーメンバーに対する相同性を基にFcεRIαタンパク質をモデ
ルすることを試みることを報告し、そして同定化合物が見かけ上このような結合
を阻害することを報告する;例えば、Cookら、1997、Biochemi
stry 36、15579−15588;Hulettら、1994、J.B
iol.Chem.269、15287−15293;Hulettら、199
5、J.Biol.Chem 270、21188−21194;Mallam
aciら、1993、J.Biol.Chem.268、22076−2208
3;Robertson、1993、前述;Scarselliら、1993、
前述、McDonnellら、1997、Biochem.Soc.Trans
、25、387−392;McDonnellら、1996、Nat.Stru
c.Biol.3、419−426;1997年10月30日に公開されたCh
engらによるPCT公開番号WO97/40033;1993年1月19日に
発行されたGouldらによる米国特許第5,180,805号;1997年1
2月2日に発行されたGouldらによる米国特許第5,693,758号;1
996年1月25日に公開されたGouldらによるPCT公開番号WO96/
01643;1995年6月1日に公開されたGouldらによるPCT公開W
O95/14779を参照のこと。しかし、これらの参考文献のいずれも、Fc
εRIαタンパク質の単離された結晶または結晶に由来する3−Dモデルを記載
していない。
【0007】 FcRおよび抗体とのそれらの相互作用について知られていることにかかわら
ず、それらのリガンドに対する増大した親和性、改変された基質特異性、増加し
た安定性、および診断における使用のための増加した溶解度、アレルギーおよび
その他の異常免疫応答の処置および防止のような、改善された特徴をもつFcR
および抗体の必要性が存在する。また、動物において、アレルギーを防ぐか、ま
たは処置し、そしてその他の免疫応答を調節するために安全かつ効力のある化合
物が必要である。
【0008】 (発明の要旨) 本発明は、抗体の定常領域(Fc領域)の単離された結晶、このような結晶の
3次元(3−D)モデルおよびこのようなモデルの改変を含む。本発明はまた、
抗体ならびに抗体ムテインおよびその他の改変抗体に結合するFcRの能力を阻
害する化合物を含む。また、このような結晶、モデル、阻害性化合物、ムテイン
、およびその他の改変タンパク質を産生および使用する方法が、本発明に含まれ
る。したがって、本発明は、増加した安定性、FcRのIg結合ドメインに対す
る増加した親和性、改変された基質特異性、および制限されないで減少した凝集
を含む増加した溶解度のような、改良された機能を備えた抗体を含む。ムテイン
とも呼ばれるこのようなタンパク質は、アレルギーおよびその他の免疫応答異常
を検出するため、およびこのような異常から動物を保護するために有用である。
本発明はまた、動物をアレルギーから保護し(例えば、症状を、防ぎ、処置し、
低減する)、そして動物におけるその他の免疫応答を調節する、安全かつ効き目
のある阻害性化合物を提供する。
【0009】 本発明は、Cε3およびCε4ドメインを含むヒトIgEFc領域の3−Dモ
デルを含み、ここでこのモデルは、表1、表2または表3で特定される原子座標
を実質的に示す。本発明はまた、表1、表2または表3で特定される原子座標を
実質的に示すモデルの改変を含む3−Dモデルを含む。このようなモデルを生成
するための方法もまた本発明に含まれる。
【0010】 本発明はまた、Cε3およびCε4ドメインを含むヒトIgEFc領域の単離
された結晶を含む。
【0011】 本発明は、IgE抗体とFcεRIαタンパク質との間の結合を阻害する化合
物を同定する方法を含む。この方法は、本発明の3−Dモデル、特に、表1、表
2または表3で特定される原子座標を実質的に示すものを用いる工程を包含する
。このような方法を用いて同定された阻害性化合物もまた本発明に含まれる。こ
のような阻害性化合物を含む治療組成物、およびこのような治療組成物を用いて
動物をアレルギーから保護するか、またはその他の免疫応答を調節する(例えば
、動物を、その他の異常免疫応答から保護する)方法もまた本発明に含まれる。
【0012】 本発明はまた、FcRのFc結合ドメインに結合するムテインを含む。このよ
うなムテインは、配列番号2を含むタンパク質と比較して改良された機能を有し
ている。このような改良された機能の例は、増加した安定性、抗体のFcドメイ
ンに対する増加した親和性、改変された基質特異性、減少した凝集、および増加
した溶解度を含む。このようなムテインは、以下の工程を包含する方法により産
生される:(a)表1、表2、または表3で特定される原子座標を実質的に示す
3−Dモデルを分析する工程であって、特定のアミノ酸で置換された場合、この
タンパク質の改良された機能に影響し得る、このモデルにより提示されるタンパ
ク質の少なくとも1つのアミノ酸を同定する工程;および(b)このような改良
された機能を有するムテインを産生するために同定されたアミノ酸(単数または
複数)を置換する工程。本発明はまた、非改変IgEFc領域と比較して改良さ
れた機能を有するムテインを含む。
【0013】 化学的に改変されたIgEFc領域であるムテインもまた含まれる。本発明の
ムテインをコードする核酸分子、このような核酸分子を含む組換え分子および組
換え細胞、およびこのようなムテインを産生する方法もまた含まれる。このよう
なムテインを含む診断試薬および診断キット、このようなムテインを含む治療組
成物、およびアレルギーまたはその他の免疫応答から動物を検出または保護する
方法もまた含まれる。
【0014】 本発明はまた、IgEFc領域の機能を改善する方法を含み、この方法は、(
a)表1、表2、または表3で特定される原子座標を実質的に示す3−Dモデル
を分析する工程であって、特定のアミノ酸で置換された場合、このタンパク質の
機能の少なくとも1つを改良するこのタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を
同定する工程;および(b)この同定されたアミノ酸(単数または複数)を置換
する工程であって、この改良された機能の少なくとも1つを有するムテインを産
生する工程を包含する。
【0015】 (発明の詳細な説明) 本発明は、抗体のFc領域の単離された結晶、このような結晶の3−Dモデル
およびこのようなモデルの改変を含む。本発明はまた、抗体ならびにムテインお
よびその他の改変抗体に結合するFcRの能力を阻害する化合物を含む。本発明
に含まれるのはまた、このような結晶、モデル、阻害性化合物、ムテイン、およ
びその他の改変タンパク質を生成および使用する方法である。
【0016】 本発明は、IgE抗体(Fc−Cε3/Cε4)のCε3およびCε4ドメイ
ンを含むFc領域の単離された結晶、このような結晶の3−Dモデル、およびこ
のようなモデルの改変を含む。本明細書で用いるとき、用語「a」の実体または
「an」の実体は、その実体の1つ以上をいい;例えば、結晶またはモデルは、
1つ以上の結晶または1つ以上のモデルをそれぞれいう。従って、用語「a」(
または「an」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書では交
換可能に用いられ得る。用語「包含する(comprising)」、「含む(
including)」、および「有する(having)」は、交換可能に用
いられ得る。さらに、「からなる群から選択される」化合物は、以下のリスト中
の1つ以上の化合物をいい、この化合物の2つ以上の混合物、または組み合わせ
をも含む。
【0017】 本明細書で用いられるとき、FcεRIαタンパク質の細胞外ドメインは、細
胞の外側の環境に剥き出しており、しかもIgE抗体のFcドメインに結合する
FceRIα鎖の部分である。このような細胞外ドメインは、(a)成熟Fce
RIα鎖の最初のアミノ酸から、膜貫通領域の開始部の前の最後のアミノ酸を通
じて伸びるドメインである完全な細胞外ドメイン、または機能的に等価であるド
メインであって、ここで、このようなドメインは、D1およびD2ドメインを含
み、このようなFcεRIαタンパク質が天然に結合するIgE抗体に対して類
似の親和性を提示し、そして構造決定を可能にするに十分な品質を有する結晶を
するか、または(b)任意の細胞外ドメイン(a)のフラグメントであって、こ
こで、このフラグメントは、抗体のFcドメインに結合するその能力を保持する
。本明細書で用いられるとき、抗体に結合する、および抗体Fcドメイン(すな
わち定常領域)に結合するという用語は、交換可能に用いられ得る。なぜなら、
FcRが抗体のFcドメインに結合することが認識されるからである。FcεR
Iαタンパク質のような、FcR(すなわち抗体に結合し得るタンパク質)は、
完全長FcR(例えば、完全長FceRIα鎖)、またはその任意のフラグメン
トであり得、ここで、このフラグメントは抗体に結合する。同様に、抗体、また
はそのFc領域は、完全長抗体、またはその完全長Fc領域、またはFcRに結
合するその任意のフラグメントであり得る。1つの実施形態では、Fc領域はC
ε3およびCε4ドメインを含む。好ましくは、FcRは、少なくとも約10 リットル/モル(M−1)、より好ましくは少なくとも約10−1、そして
さらにより好ましくは少なくとも約1010−1の親和性(K)で抗体に結
合する。
【0018】 本発明は、いくつかの局面で驚きである。例えば、これは、IgE抗体のFc
−Cε3/Cε4領域の単離された結晶、そして、特に、結晶構造すなわち3−
Dモデルがそれから派生し得るに十分な品質の単離された結晶の最初の報告であ
る。このような結晶の生成は非常に困難かつ自明ではなく、そして他者により成
功することなく試みられていた。本発明者らは、そこから有用な結晶を作製する
ために好適なFc−Cε3/Cε4領域を発見する前、多くのアプローチを試み
た。首尾良く用いられるこのような最初の領域は、本明細書でPhFc−Cε3
/Cε41−222と称され、これは、Dorringtonら、1978、I
mmunol Rev 41、3−25の番号付けシステムを用い、ヒトIgE
Fc定常領域のアミノ酸330から547が続くアミノ末端の4つのアミノ酸
である、アラニン、アスパラギン酸、プロリンおよびシステインを含む。PhF
c−Cε3/Cε41−222は、本明細書では配列番号2に示される。PhF
c−Cε3/Cε41−222をコードする核酸分子の例は、本明細書では、n
hFc−Cε41−666と称され、この核酸配列は、配列番号1として参照さ
れる。実施例に記載のような方法を用い、昆虫細胞でPhFc−Cε3/Cε4 1−222 が産生されるとき、良好な結晶が生成されることもまた発見された。
結晶構造の解決もまた、実施例でより詳細に記載されるように非常に困難であっ
た。例えば、努力の一部として、約12,000のモデルが作成され、そしてプ
ログラムAmoreを用いる完全Molecular Replacement
サーチに用いられた(このことは、5台のSilicon Graphicsコ
ンピューターで約10日を要する)。
【0019】 Trichoplusia ni(Hi−5)細胞で産生されたPhFc−C
ε3/Cε41−222の結晶構造の決定は、表1、表2または表3に特定され
る原子座標を実質的に提示する3−Dモデルを生じた。本明細書では、アミノ酸
は、それらの標準的な3または1文字コードにより表され;例えば、本明細書に
その全体が援用される、Sambrookら、Molecular Cloni
ng:A Laboratory Manunal、Cold Spring
Harbor Labs Press、1989を参照のこと。
【0020】 このPhFc−Cε3/Cε41−222の3−Dモデルはまた、IgGのF
c領域の結晶構造について知られていることを考慮すれば、非常に驚きである。
このIgEのFc領域は、IgGのそれよりコンパクトである新規立体配座中に
存在する。このCε3ドメインはまた、IgGと比較してIgE中で互いにより
緊密であり(約22Åに比較して約13Å)、IgEFc構造について「閉鎖コ
ンフォメーション(closed conformation)」の記述子に至
る。この閉鎖コンフォメーションはまた、Jardetzkyらによる、199
9年11月4日に出願された米国特許出願第09/434,193中、およびJ
ardetzkyらによる、2000年5月11日に公開されたPCT公開WO
00/26246中に開示されているFcεRIα単独、ならびにそれらの全体
が本明細書に参考として援用される、米国特許出願第60/189,853号、
米国特許出願第09/434,193号、前述、WO00/26246、前述、
および60/189,853、前述に開示されているFcεRIαとFc−Cε
3/Cε4単独との間の複合体の結晶構造を考慮すれば驚きである。この複合体
中のFc−Cε3/Cε4の構造は、開放コンフォメーション(open co
nformation)であり、レセプター−結合コンフォメーションともいわ
れる。このレセプター−結合立体配座中の2つのCε3ドメイン間の距離は約2
3Åである。これら構造の類似性および差異の比較は、実施例および60/18
9,853、前述、においてより詳細に記載されている。表1、表2または表3
に特定される原子座標を実質的に提示するモデルの分析は、報告されている変異
誘発研究の適正な解釈および洗練のためのこのようなモデルの必要性を示す。こ
のようなモデルは、FcεRIαのIgEへの結合に直接的または間接的に影響
するアミノ酸間の区別を可能にし、そして変異誘発研究で同定されたアミノ酸お
よびアミノ酸セグメントがタンパク質のどこに位置するかを示す。本発明のモデ
ルを用いることにより、FcεRIαとIgEの相互作用を識別し得、それによ
って、ムテイン産生のために標的とするアミノ酸またはIgEのそのレセプター
への結合を阻害する化合物の開発のために標的とする領域を同定し得る。このよ
うなモデルはまた、IgEの閉鎖コンフォメーションを安定化する阻害性化合物
を設計する能力を導き、それによって、FcRに結合するその能力を低減する。
このようなモデルは、単独で、またはFcεRIα単独(US 09/434,
193、前述、およびWO00/26246、前述)またはFcεRIαとFc
−Cε3/Cε4単独(60/189,853、前述)との間の複合体のモデル
と組み合わせて用いられ得る。
【0021】 本発明の1つの実施形態は、IgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域の単離さ
れた結晶である。本明細書で用いられるとき、単離された結晶は、実験室で産生
されたタンパク質の結晶であり;すなわち、単離された結晶は個別に産生され、
そして天然においてインサイチュで見出される物ではない。当業者は、結晶を産
生する種々の技法があることを認識し、これには、制限されないで、ハンギング
またはシッティングドロップ方法を用いる蒸気拡散、オイル下の蒸気拡散、およ
びバッチ法を含む;例えば、Ducruixら編、1991、Crystall
ization of nucleic acids and protein
s;A practical approach、Oxford Univer
sity Press、およびWyckoffら編、1985、Methods
in Enzymology 11、49−185を参照のこと;各々の参考
文献はその全体が参考として援用される。結晶化条件は、タンパク質の固有の特
徴および溶液中のタンパク質の濃度に依存して調節し得、しかも結晶化を行うた
めに種々の沈殿剤を用い得ることもまた認識される;このような沈殿剤は、当業
者に公知である。好適な実施形態では、Fc−Cε3/Cε4領域の結晶は、ポ
リエチレングリコール(PEG)またはPEGモノメチルエーテルのような沈殿
剤を添加することによって溶液中に生成される。結晶を生成するために用いられ
るFc−Cε3/Cε4領域は、ネイティブなタンパク質の精製、タンパク質の
化学的合成、またはタンパク質の組換え産生を含む、種々の方法により生成され
得ることもまた注目すべきである。このようなタンパク質を組換えにより産生す
るために多くの細胞型が用いられ得るが、制限されずに、昆虫細胞、例えば、T
richoplusia niおよびSpodoptera fugiperd
aが好適であり、Trichoplusia ni細胞がより好適である。タン
パク質を産生するためのさらなる方法が以下に記載される。
【0022】 本発明の単離された結晶は、例えば、制限されないで、金、白金、水銀、セレ
ン、銅、および鉛のような重い原子の誘導体を含み得る。このような重元素は、
ランダムに導入され得るか、または本発明の3−Dモデルの知識に基づく様式で
導入され得る。本発明のさらなる結晶は誘導体化されない。1つの実施形態では
、本発明の単離された結晶は、IgE抗体のFcドメインへのFcεRIαタン
パク質の結合を阻害する化合物の存在下、IgE抗体のFcドメインに結合した
FcεRIαタンパク質の共結晶(co−crystal)である。本発明のさ
らなる結晶は、本発明のムテインであるタンパク質または本発明の3−Dモデル
により提示されるその他のタンパク質から生成される結晶を含む。
【0023】 本発明の単離された結晶は、Cε3ドメインを含むFc、またはCε3ドメイ
ンおよびCε4ドメインを含むFcのような、FcεRIαに結合する、任意の
適切なFc領域の結晶であり得る。適切なFc−Cε3/Cε4領域は、哺乳動
物Fc−Cε3/Cε4領域を含み、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ラットおよびマ
ウスFc−Cε3/Cε4領域が好適であり、そしてヒトFc−Cε3/Cε4
領域がなおより好適である。本発明の好適な結晶は、約4.5Åまたはそれより
高い解像度(すなわち、より小さな数がより高い解像度を意味する)までX線を
回折し、約4.0Åまたはより高い、約3.5Åまたはより高い、約3.25Å
またはより高い、約3Åまたはより高い、約2.5Åまたはより高い、約2.3
Åまたはより高い、約2Åまたはより高い、約1.5Åまたはより高い、および
約1Åまたはより高い解像度が、増加するにつれてより好適である。しかし、よ
り低い解像度のさらなる結晶は、これら構造の全体のトポロジー、例えば、結合
部位の位置または分子がレセプターまたは抗体に結合する場所を識別することに
おいて有用性を有し得ることが認識される。本発明の特に好適な単離された結晶
は、配列番号2のアミノ酸配列、または別の哺乳動物Fc−Cε3/Cε4領域
を示す本質的に等価な配列を有する。好適なのは、空間群P422に属する結
晶である。特に好適な結晶は、105.6Å×105.6Å×47.1Å、α=
β=γ=90゜のセル次元を有し、しかも結晶の非対称単位あたり1つのCε3
/Cε4鎖を含む空間群P422に属する結晶を含む。このような好適な結晶
は、好ましくは、約2.3Åの解像度までX線を回折する。
【0024】 本発明は、表1、表2または表3で特定される原子座標を実質的に提示するF
c−Cε3/Cε4領域の3−Dモデルを含む。本発明はまた、表1、表2また
は表3で特定される原子座標により実質的に提示されるモデルの改変を含む3−
Dモデルを含む。このような改変の各々は、Fcレセプタータンパク質に結合す
る抗体Fc領域を示す。Fc−Cε3/Cε4領域の3−Dモデルは、対応する
領域の実際の構造を予見する提示、またはイメージである。したがって、3−D
モデルは、原子レベルで領域の構造と機能との間の関係を探るため、および制限
されないで:増加した(すなわち促進された)安定性;増加したFcR結合活性
、例えば、FcRと抗体との間の会合速度を増加すること、および/またはそれ
らの間の解離速度を低減することによるか、または基質特異性を改変することに
より(例えば、特定種およびクラスのFc領域が別の種および/または別の抗体
クラスからの抗体結合部位に結合する能力を増大する)、例えば、FcRに対す
る親和性を増大することによる;および/または増加した溶解性(例えば、減少
した凝集)のような改良された機能を有するムテイン(すなわち、遺伝子的およ
び/または化学的に改変された抗体)を設計するために用いられ得るツールであ
る。しかし、タンパク質結晶の分析により派生するタンパク質の3−Dモデルが
このタンパク質の固有の構造と同一ではないことは当業者に周知である。例えば
、Brandenら、Introduction to Protein St
ructure、Garland Publishing Inc.、New
York and London、1991、特に、「このモデルが実際の結晶
に正確に決して対応しないのは驚きではない」と述べる277頁を参照のこと。
さらに、このモデルは、抗体のFc領域の実際の構造により緊密に対応するため
にさらなる洗練を受け得る。本発明の改変の例であるこのような洗練されたモデ
ルは、このモデルが示すタンパク質の構造および作用の機構のより良好な予見者
である。本発明の3−Dモデルの洗練は、当業者に公知の種々の方法で得られ得
るFc−Cε3/Cε4領域の改良されたモデルをいう。洗練は、より好適な程
度の解像度、好ましくは約4.5Å、より好ましくは約4Å、より好ましくは約
3.5Å、より好ましくは約3.25Å、より好ましくは3Å、より好ましくは
約2.5Å、より好ましくは約2.3Å、より好ましくは約2Å、より好ましく
は約1.5Å、そしてなおより好ましくは約1Åまで決定されたモデルを含み得
る。好適な洗練は、このような改良のための基礎として3−Dモデルを用いて得
られ得る。
【0025】 本発明の1つの実施形態は、表1で特定される(すなわち列挙される)原子座
標を実質的に示すFc−Cε3/Cε4領域の3−Dモデルである。
【0026】
【表1】 本発明の別の実施形態は、表2で特定される(すなわち列挙される)原子座標
を実質的に示すFc−Cε3/Cε4領域の3−Dモデルである。
【0027】
【表2】 本発明のさらに別の実施形態が、表3で特定される(すなわち列挙される)原
子座標を実質的に示すFc−Cε3/Cε4領域の3−Dモデルである。
【0028】
【表3】 本明細書中で使用される場合、原子座標は(本明細書中で構造座標または座標
とも呼ばれる)、タンパク質結晶または複合体結晶の原子によるX線回折で得ら
れたパターンに関連する数式から導出された数学的な座標である。この回折デー
タは、代表的には電子密度マップを計算するために使用される。この電子密度マ
ップは、結晶の単位セル中の個々の原子の位置を確立するために使用される。表
1、表2、または表3に特定化された原子座標を実質的に表すモデルは、文字通
りこれらの座標を表すモデルのみならず(例えば、座標の空間的な配向を変化す
ることによる)そのような原子座標の座標変換を表すモデルも含む。
【0029】 本発明はまた、表1、表2または表3に特定される原子座標を実質的に表す3
−Dモデルの改変である3−Dモデルを含む。本明細書中で使用される場合、改
変(本明細書中でモデル改変と呼ばれる)は、Fcレセプタータンパク質に結合
する抗体Fc領域を表すモデルである。モデル改変は、以下が挙げられるが、こ
れらに限定されない:表1、表2または表3に特定される原子座標を実質的に表
す3−Dモデルの精密化;表1、表2または表3に特定化される原子座標を有す
る抗体の任意のFcR結合フラグメントを表すモデル;他のFcCε3/Cε4
結晶に基づくモデル(例えば、実施例で開示された結晶にも基づくモデル);ホ
モロジーモデリング技術を使用して作製したモデルであって、別のFc領域のア
ミノ酸配列の全てまたは任意の部分を表1、表2または表3に特定化される原子
座標を実質的に表す3−Dモデルに組み込むか、またはFc−Cε3/Cε4の
アミノ酸配列の全体または任意の部分を別の抗体の3−Dモデルに組込んだ、モ
デル;および改変した機能を有するFc領域を表現する改変であって、好ましく
は非改変タンパク質と比較して改善された機能を有するムテインの設計に使用さ
れ得る改変。本明細書中で使用される場合、非改変タンパク質という用語は、ラ
ンダムまたは部位指向的(すなわち、標的化された)変異誘発を意図的に受けて
いないタンパク質をいう。理論に縛られないが、開放(レセプター結合)コンフ
ォメーションおよび閉鎖コンフォメーションの形成を可能するIgEのFc領域
のCε3鎖およびCε4鎖の可撓性もまた、他の動的コンフォメーションを導き
得ると考られており、この動的コンフォメーションの全ては、本発明に包含され
る。このような可撓性もまた、このレセプターに対するIgEの結合を阻害する
化合物の開発の同定のための標的である。1つの実施形態において、本発明のF
c領域の2つのCε3ドメイン間の距離は、約10Å〜約25Åの範囲にある。
別の実施形態において、本発明のFc領域の2つのCε3ドメイン間の距離は、
約20Å〜約40Åの範囲にあり、好ましくは、約20Å〜約30Åの範囲にあ
る。
【0030】 本発明のモデルは、以下を含むがこれらに限定されない様々な形態で表され得
る:このモデルが包含する全ての原子座標を列挙する工程、物理的な3−Dモデ
ルを提供する工程、このモデルをコンピュータスクリーン上に画像化する工程、
上記のモデルの画像を提供する工程、およびこのモデルの画像から座標のセット
を導く工程(例えば、画像から座標を抽出するか、または類似の免疫グロブリン
ドメインを、配列番号2を有するヒトFc−Cε3/Cε4222タンパク質に
導入し、そして類似のドメインを導くことになる)。物理的な3−Dタンパク質
は実体的であり、そしてこれらにはスティックモデルおよび空間充填モデルが挙
げられるが、これらに限定されない。「コンピュータスクリーン上にモデルを画
像化する」という句は、当業者に公知の適切なコンピュータハードウェアおよび
コンピュータソフトウェア技術を使用して、コンピュータスクリーン上で、モデ
ルを表現(描画)し、そしてこれを操作する能力をいう。このような技術は、例
えば、EvansおよびSutherland、Salt Lake City
、Utah、Biosym Technologies、San Diego、
CA、Tripos、Inc.およびMoleclar Simulation
Inc.を含む種々の供給源から入手可能である。「モデルの画像を提供する
」という句は、モデルの「ハードコピー」を作製する能力をいう。ハードコピー
は、動画および静止画の両方を含む。このモデルのコンピュータスクリーンイメ
ージおよび画像は、以下を含むがこれらに限定されない多くの形式で視覚化され
得る:電子密度マップ、リボン図、空間充填表現、α炭素トレース、トポロジー
図、原子間ベクトルの一覧、座標のφ/ψ/χによる角度表示、およびコンタク
トマップであり、これらのいくつかの例が本図面中にある。モデルの表示は全体
モデルまたはこれの部分モデルを包含し得る。モデルはまた、データベース形式
で表示され得る。
【0031】 本発明のモデルはまた、このモデル周囲の空間を規定する。このような空間は
モールド(mold)、またはアルファスペースとして表現され、これらを使用
してFcRおよび抗体の結合を阻害する化合物の形状を予測し得る。
【0032】 1つの実施形態において、本発明のモデルは、複合体中の対応するタンパク質
のアミノ酸の溶媒接触度を同定する。PhFc−Cε3/Cε41−222中の
アミノ酸の溶媒接触度は表4で示される。
【0033】
【表4】 本発明の別の実施形態として、PhFc−Cε3/Cε41−222にあるア
ミノ酸の溶媒接触度が表5で示される。
【0034】
【表5】 溶媒に接触可能である残基は、タンパク質の外表面上に提示されるアミノ酸と
して重要であり、抗体へのFcRの結合に関与し得、結合活性を増大されたタン
パク質の設計、または結合などを阻害する化合物の同定に有用である。さらに、
溶媒に接触可能な残基は、改善された機能を有する抗体のFc領域を産生するた
めの修飾に対する標的を提示し得る。このような分析によって、また複合体中の
タンパク質の内部または中心部において残基を同定し得る。このような残基はま
た、増大された安定性のような改善された機能を有するタンパク質を産生するた
めに標的にされ得る。
【0035】 本発明のモデルはまた、他の供給源からは得られないさらなる情報を提供する
。例えば、モデルは、結晶間の結晶接触を同定し、FcRと接触を実質的に形成
するアミノ酸を含むFcR結合ドメインの位置を予測する。表1、表2、または
表3中の座標を示すモデルの特に重要な領域は、IgE抗体Fc領域の2つのC
ε3/Cε4を含む鎖間のドメイン間の溝(すなわち、スペース、ギャップ)、
Fc領域のCε3とCε4ドメイン間のヒンジ、およびFcεRIαタンパク質
結合に関与するループ(例えばCε2とCε3間のリンカー、Cε3のBCルー
プ、Cε3のDEループ、およびCε3のFGループ)を含むが、これらに限定
されない。これらの部位は、実施例に詳細に記載され、薬物設計およびムテイン
産生のための標的部位を示す。
【0036】 本発明のモデルはまた、以下のFcεRIαタンパク質のいずれかの細胞外ド
メインに対するヒトIgE抗体Fc−Cε3/Cε4領域の親和性に少なくとも
等価な親和性を有するFcεRIαタンパク質に結合する抗体のFcドメインを
含む複合体を示す:ヒトFcεRIαタンパク質、イヌFcεRIαタンパク質
、ネコFcεRIαタンパク質、ウマFcεRIαタンパク質、マウスFcεR
Iαタンパク質、およびラットFcεRIαタンパク質。このようなモデルは、
ヒトFc領域、イヌFc領域、ネコFc領域、ウマFc領域、マウスFc領域ま
たはラットFc領域のFcεRI結合ドメインを示し得る。このようなモデルは
また、基質特異性が変化したFc領域を示し得、好ましくは、本発明のモデルに
基づいて設計される。
【0037】 本発明は、それぞれのクラスのFcレセプターに結合するFcドメインを示す
モデルを含む。タンパク質を自然に結合するクラス以外のクラスのFcレセプタ
ーに結合するよう設計された抗体のFc領域を示すモデルもまた含まれる。この
ようなクラスは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを含む。本発
明のモデルは、例えば、他の抗体のアミノ酸配列の全てまたはいずれかの部分を
表1、表2、または表3中の座標を実質的に示したような3Dモデルへ取り込む
ことで産生され得る。このような実施形態は、表1、表2、もしくは表3中の座
標または同様の構造(2つの抗体結合ドメイン(すなわちIgEに対するCε3
)の開放距離が、約10Å〜約25Åまたは約20Å〜約40Åの範囲である)
によって予測される構造に基づく配向(表面パックおよび曲がった角度)におい
て位置される任意のIgドメインを特異的にとりこむ任意のモデルを含む。従っ
て、Fc領域の開放コンフォメーションおよび閉鎖コンフォメーションの両方が
、本発明に含まれる。1つの実施形態において、本発明のモデルは、ヒトFcε
RIα結合ドメイン以外のFcεRIα結合ドメインの3Dモデルである。これ
らのタンパク質およびモデルは、ホモロジーモデルによって設計され得る。
【0038】 表1、表2、または表3中に特定される原子座標によって実質的に示される3
Dモデル上で、骨格原子を用いて重ね合わせる場合、本発明の好ましい改変モデ
ルは、10Å未満のタンパク質骨格原子の2乗平均平方根偏差を有する原子配置
を含む3D構造を有するモデルである。表1、表2、または表3中に特定される
原子座標によって実質的に示される3Dモデル上で、骨格原子を用いて重ね合わ
せる場合、好ましくはこのようなモデルは、8Å未満のタンパク質骨格原子の2
乗平均平方根偏差を有する原子配置を含む3D構造を有し、好ましくは7Å未満
、好ましくは6Å未満、好ましくは5Å未満、好ましくは4Å未満、好ましくは
3Å未満、好ましくは2Å未満、好ましくは1Å未満である。この実施形態にお
いて、このモデルは、FcRに結合するFc領域を示す。骨格原子は、モデルの
骨格(または、3Dフォールディングパターン)を形成する。このように、骨格
原子は、アミノ酸の基本部分(すなわち、窒素、炭素、α炭素、および酸素)で
ある。好ましいモデル改変は、デフォルトパラメータ、ショートカットを伴わな
い2つの配列間の最適なグローバルアライメントを用いるプログラムALIGN
を用いて決定されるように、ヒトIgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域と少な
くとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45
%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、
そしてさらにより好ましくは少なくとも約80%、のアミノ酸配列相同性を共有
するアミノ酸配列を有するFc領域を含む。本発明の好ましいモデルは、Fcε
RIα結合ドメイン(すなわち、FcεRIαタンパク質に結合する領域)を示
す。
【0039】 本発明の1つの実施形態は、以下の工程を含む方法によって生成されるヒトF
c−Cε3/Cε4領域の3Dモデルである:(a)ヒトFc−Cε3/Cε4
領域(例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質であるが、これに
限定されない)の結晶化;(b)結晶化タンパク質からX線回折データを収集す
る;および(c)好ましくはタンパク質のアミノ酸配列と組み合せて、X線回折
データからモデルを決定する。結晶形態の複合体は、当該分野で周知の種々の技
術を用いて産生し得る。本明細書で開示されるように、結晶化されるヒトFc−
Cε3/Cε4領域は、好ましくはこのような領域をコードする遺伝子を用いて
形質転換した組換え体昆虫細胞(例えば、それぞれのタンパク質を産生するよう
遺伝子的に設計されたバキュロウイルス)において産生される。Fc−Cε3/
Cε4領域の純度は、タンパク質の3Dモデルの決定を可能にする解像度に対す
るX線結晶学によって分析され得る結晶の産生を許容するのに十分でなければな
らない。好ましくは、解像度は、少なくとも約4.5Å(すなわち、4.4Åま
たはそれより良い)であり、より好ましくは少なくとも約4Å、より好ましくは
少なくとも約3.5Å、より好ましくは少なくとも約3.25Å、より好ましく
は少なくとも約3Å、より好ましくは少なくとも約2.5Å、より好ましくは少
なくとも約2.3Å、より好ましくは少なくとも約2Å、さらにより好ましくは
少なくとも約1.5Åである。このような純度を得るための方法は、当該分野で
周知である。
【0040】 本明細書に記載されるように、Fc−Cε3/Cε4領域を結晶化させる好ま
しい方法は、蒸発蒸留(vapor distillation)を用いる。特
に好ましい方法は、実施例に開示される。本発明はまた、当該分野で公知の複合
体を結晶化させることができる他の方法を含むことが理解されるべきである。
【0041】 いくつかのタンパク質の3Dモデルが決定されてきた;例えば、Blunde
llら、Protein Crystallography、Academic
Press、London、1976を参照。しかし、本明細書で議論される
ようにヒトIgEのFc−Cε3/Cε4領域の結晶構造の解明は、難しかった
。1つの実施形態において、結晶構造決定は、シンクロトロン放射を用いた高解
像度データを得ることを含む。例えば、Stanford Synchrotr
on Source Laboratory、Palo Alto、CA、また
はAdvanced Photon Source at Argonne N
ational Laboratories、Argonne、ILにおいてこ
のデータを収集し得る。このデータの収集のためのさらなる場所は、Brook
haven、NY、および日本を含むが、これらに限定されない。1つの実施形
態において、結晶を扱う天然原子および重原子由来の回折データは、電子密度マ
ップ中で精製されたタンパク質構造の最初のイメージを提供する。データ収集お
よび判読に関する詳細は、実施例の項において提供される。
【0042】 本発明の1つの実施形態は、表1、表2、または表3に挙げられる実質的配置
におけるタンパク質の配置されるアミノ酸表示(すなわち、表示アミノ酸)を含
むFc領域の3Dモデルを産生する方法である。すなわち、複合体の座標の知識
によって、当業者は、これらの座標を用いてのタンパク質のモデルを産生するこ
とが可能になる。表1、表2、または表3に特定される座標の基本的に単純な座
標変換によって示されるモデル(または、任意のモデル)は、従来開示されたよ
うな種々の方法において提示され得、そして本発明に含まれる。
【0043】 別の実施形態において本発明のモデルは、精密化されて、モデルの改変の例で
ある改善されたモデルが得られ、また改変モデルとして反映される。精密化方法
は、さらなるデータ収集および分析;凍結結晶からのデータの収集;溶解性分子
の構造への導入;2次構造の浄化;ならびにFcRと抗体もしくは阻害性化合物
間の結晶化された複合体、または結晶化FcRもしくは抗体のみの分析を含むが
、これらに限定されない。さらなるモデル精製の方法は、3Dモデルを分析して
置換がなされた場合、少なくとも1つの改善された機能を有するタンパク質を産
生するような、アミノ酸残基を予測する工程、すくなくとも1つのこのような置
換をもたらす工程、改変タンパク質の活性が予測に合うか否かを決定する工程、
そして必要な場合モデルを精製する工程を含む。改変が予測に合うか否かを決定
する方法は、改変タンパク質を産生し、そして改変タンパク質を用いてアッセイ
を実施して、このタンパク質が改善した機能(例えば、所望される活性、安定性
、および溶解特性)を呈するか否かを決定する工程を包含する。このような機能
を測定するためのアッセイは、当該分野で周知である;いくつかのこのようなア
ッセイは、本明細書で開示される。
【0044】 本発明の別の実施形態は、表1、表2または表3における座標で示されるヒト
IgE以外の抗体を示す改変された3Dモデルである。好ましくは、モデルにさ
れるタンパク質のアミノ酸配列は、公知である。このような場合、改変モデルは
、ホモロジーモデリングの技術を用いて、好ましくは他の抗体のアミノ酸配列の
全てまたは任意の部分を、表1、表2または表3の3Dモデルを示す座標中に取
り込むことによって(例えば、移植、オーバーレイまたは置換)作製されて改変
モデルを作製し得る。ホモロジーモデリングについての一般的技術はまた、分子
置換として呼ばれ、例えば、Greer、1990、Proteins:Str
ucture、Function、and Genetics 7、317〜3
34;Havelら、1991、J.Mol.Biol.217,1〜7;Sc
hifferら、1990、Proteins:Structure、Func
tion、and Genetics 8、30〜43;およびLattman
、1985、Methods Enzymol 115、55〜77において開
示される。しかし、このような技術は、本発明までにIgE抗体のFc領域に適
用されなかったので、利用できるIgEの任意のFc領域の3Dモデルがない。
したがって、ここで本発明は、抗体の多くの他の天然体および変異体の構造の溶
解を可能にする。
【0045】 1つの実施形態において、Fc領域のモデル(例えば、Cε3/Cε4領域で
あるがこれに限定されない)は、公開された図から3D座標を抽出することによ
って、または他のドメイン由来(ここで、抗体のFcR結合ドメインは、ヒトF
c−Cε3/Cε4222タンパク質に対して予測されるように配向する)の原
子を含む3Dモデルを構築することによって産生される。例えば、本発明のモデ
ルは、2つの公知のFcR結合ドメインをベントコンフォメーションに、ドメイ
ン間の距離が約10〜約25Åまたは約20〜約40Åになるよう配向すること
によって産生され得る。別の実施例において、2つのIgドメイン間のヒンジを
表1、表2または表3中の座標によって特定される同様の様式において配向する
ことによりあるモデルが作製され得る。このようなモデルは、2つのIgドメイ
ン間(例えば、Cε3とCε4の間)のヒンジが表1、表2または表3中に挙げ
られる構造座標によって特定される様式において配向されるモデルと呼ばれる。
次いでこのモデルは、さらなる分子置換方法において使用され得る。このような
方法は、以下の工程を含む;(a)3つの回旋によってモデルを配向する;そし
て(b)1〜3方向にモデルを平行移動して、さらなるモデル改変を生じる。
【0046】 3Dモデルがホモロジーモデリングを用いて決定される適切な抗体は、IgE
、IgG、IgM、IgA、またはIgD抗体についてのFcRに結合するタン
パク質のような任意の哺乳動物抗体を含む。FcRに結合する好ましい抗体は、
ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、マウス、およびラット抗体を含む。本発明はまた、本
発明のモデルを産生するための他のIgドメインの使用を含む。
【0047】 本発明の1つの実施形態は、タンパク質が非改変タンパク質に比べて改善され
た機能を有する抗体のFc領域の3Dモデル、およびこのような改変モデルを産
生する方法である。このような改善された機能は、増大した活性、増大した安定
性および増大した溶解性を含むが、これらに限定されない。このような改変モデ
ルは、表1、表2または表3中に示される3Dモデルの座標の情報の分析に基づ
いて、少なくとも1つのアミノ酸の置換によって作製され得て、その結果、この
置換が改善した機能を有するタンパク質を誘導する。本明細書において使用され
るように、置換は、(1つ以上の)アミノ酸置換、挿入、欠損、反転および/ま
たは誘導体化(例えば、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、PEG改変、ビ
オチン化、およびタンパク質への他のリガンドまたは他の化合物の共有結合)を
いう。1つの実施形態において、合成化学的方法を用いて、フラグメントまたは
タンパク質の全体のいずれかを産生し、例えば、非天然アミノ酸または他の化合
物をFc領域の構造に導入する。例えば、本発明の構造に基づいて、FcR結合
活性を有するインタクトなタンパク質を産生することに関連し得る合成ペプチド
または大きなタンパク質を設計し得る。この構造は、これらのペプチドについて
の開始点および終点(例えば、表面に達し得るループ)を設計することを可能に
する。本発明に従い、置換または挿入されるアミノ酸は、天然アミノ酸または非
天然アミノ酸であり得、誘導体化アミノ酸を含む。改変される場合、改善された
機能を有するタンパク質を生じるタンパク質中の領域同定の方法は、以下に開示
される。
【0048】 本発明は、本発明の3Dモデルを使用し、FcRと抗体の間の結合を阻害する
化合物を同定する工程を含む。阻害性化合物を同定するのに3Dモデルを使う利
点は、モデルが抗体のFcRがFc領域(すなわち、抗体結合ドメイン)(また
抗体結合部位として示される)の部位およびFcR結合ドメイン(またFcR結
合部位として示される)に結合する部位を示すという点で多種多様なことである
。抗体結合部位およびFcR結合部位は、共にFcR:抗体相互作用部位を形成
する。このように、多数の潜在的阻害性化合物は、実験室でインビトロまたはイ
ンビボの研究を実施する必要なく、最初に分析され得る。本明細書で用いられる
場合、阻害性化合物を同定する方法は、以下を含むがこれらに限定されない:F
c領域の3Dモデルに基づく阻害性化合物の設計の方法、FcRへの抗体の結合
を実質的に阻害する化合物を同定するための潜在的な阻害剤である化合物を用い
てこのような3Dモデルを調査する方法、このような3Dモデルを用いてこのよ
うな結合を阻害する化合物を同定するために化合物データベースをスクリーニン
グする方法、およびこれらの組み合せ。3Dモデルを用いての適切な阻害性化合
物の設計、調査、またはスクリーニングするための方法は、当業者に公知である
。特に、このような方法を可能にする多数のコンピュータープログラムが存在す
る。例えば、ウィルソンらによって1995年12月28日に公開されたPCT
公開番号WO95/35367(本明細書において参考としてその全体が援用さ
れる)を参照のこと。
【0049】 阻害性化合物は、抗体のFcRへの結合を阻害する天然化合物または合成化合
物のいずれかであり得る。例は、以下を含むが、これらに限定されない;無機化
合物、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、
ペプチドまたは抗体の模倣物(例えば、抗体またはレセプターの結合部位の模倣
物)ならびに他の有機化合物。化合物は、競合的または非競合的な様式のいずれ
かで結合を阻害し得、結合部位においてかまたはアロステリックにかのいずれか
で相互作用し得る。阻害性化合物は、物理的または構造的に2つの存在間の結合
を阻害し得るようにFcRおよび/または化合物に関連し得るはずである。この
ように阻害性化合物は、好ましくは小さくそして効果的に結合または分裂を予防
する構造である。阻害性化合物は、1つまたは複数の工程において同定され得る
。例えば、抗体とFcR間の結合をある程度阻害することが最初に同定された化
合物は、特性を改善(例えば、より大きな有効性、安全性、可溶性等)するため
の化合物を設計、調査、またはスクリーニングするための手がかりとして用いら
れ得る。好ましい阻害性化合物は、動物に投与する場合に血清濃度が約1nM〜
約100μM、より好ましくは約10nM〜約10μMの濃度で有効である化合
物である。
【0050】 本発明の1つの実施形態は、IgE抗体とFcεRIαタンパク質の間の結合
を阻害する化合物を同定する方法である。このような方法は、表1、表2、また
は表3に特定される原子座標を実質的に示す3Dモデルを用いて、このような化
合物を同定する工程を含む。本発明は、IgE結合ドメインまたはIgE抗体の
レセプター結合ドメインに直接相互作用する阻害性化合物、およびこのような構
造に間接的に相互作用する化合物を含む。好ましくは、化合物は、少なくとも以
下の1つの領域に相互作用する:FcεRIα結合ドメイン、抗体Fc領域の2
つのCε3/Cε4ドメインの間の内部ドメインの溝領域、抗体FcのCε3ま
たはCε4ドメインの間のヒンジ領域、およびCε3またはCε4ドメインの領
域、閉じているかレセプター結合したFc−Cε3/Cε4コンフォメーション
の間での1Åより大きく変化する相対位置。Cε3ドメインにおける多くの残基
が、IgEの開いた形に比べて、IgEの閉じた形におけるCε4ドメインに有
意に近いことは注目されるべきである。理論に束縛されることはないが、Cε3
残基およびCε4残基に同時に(ただしIgEの閉鎖形態においてのみ)作用し
得る分子が潜在的な阻害因子であると考えられる。標的となる領域は、レセプタ
ーが結合したIgE構造と閉じたIgE構造を比較してそれぞれの距離の変化が
有意(すなわち、1Åより大きい)である2つのドメインにおける残基のセット
を含む。好ましくは、Fc−Cε3/Cε4領域の閉鎖形態のIgE構造の2つ
のCε3ドメインの間の距離は、約10〜25Åの範囲であり、より好ましくは
、10〜15Å、およびさらにより好ましくは、約13Åである。好ましい実施
形態において、阻害性化合物は、少なくとも以下の領域の1つである:Cε2お
よびCε3の間のリンカー(配列番号2のアミノ酸4、7、8、9、10、およ
び11);Cε3のBCループ(配列番号2のアミノ酸37、38、および39
);Cε3のDEループ(配列番号2のアミノ酸68、69、および70);C
ε3のFGループ(配列番号2のアミノ酸99、100、101、および102
);ドメイン間の溝部分を規定する(すなわち、隣接すること、形成すること)
ループ鎖;IgE−Fc領域の十分な構成的可撓性を調節すると考えられるCε
3のABヘリックス(配列番号2のアミノ酸20、21、22、23、および2
4);およびCε3のこのABヘリックス上にある領域(すなわち、ヒンジ部分
を構成、および配列番号2のアミノ酸17、18、および19(鎖Aの後)、ア
ミノ酸29、30、および31(鎖Bの後)、ならびにアミノ酸109、110
、および111(鎖Gの後)を含む領域)。阻害性化合物と作用する特に好まし
いアミノ酸は、以下:(a)配列番号2の位置4、7、8、9、10、11、1
7、18、19、20、21、22、23、24、29、30、31、37、3
8、39、68、69、70、99、100、101、102、109、110
、または111;および(b)(a)のこの残基のいずれかの約10Å内にある
表面残基。さらにより好ましい残基は、以下:(a)配列番号2の位置4、7、
8、9、10、11、37、38、39、68、69、70、99、100、1
01、または102の残基;(b)Cε3またはCε4ドメインの領域内の残基
であり、レセプターが結合したFc−Cε3/Cε4構造と閉じたFc−Cε3
/Cε4構造の間で1Åより大きい変化がある相対的位置;および(c)(a)
または(b)のこの残基のいずれかの約10Å内にある表面残基。上に示される
領域の少なくとも1つにあるような、実施例において同定されるさらなる残基は
、また好ましい。1つの好ましい実施形態は、閉じた構造からレセプターが結合
した構造または開いた構造に変換するIgE抗体の能力を阻害する化合物である
。このような重要な領域および残基を同定する能力は、本発明の1つのモデルの
見方にすぎない。1つの実施形態において、本発明の阻害性化合物は、任意の同
定された領域の少なくとも一部またはこれらの誘導体に対応するペプチド(例え
ば、ペプチド模倣物、またはペプチドを模倣した他の化合物)である。
【0051】 IgE抗体およびFcεRIαタンパク質の間の結合を阻害する化合物を同定
するための方法の1つの実施形態は、以下の工程を含む:(a)表1、表2、ま
たは表3に挙げられる原子座標、またはこれらの結合ドメインを実質的に示すモ
デルをコンピューター画面上で作る工程;(b)試験される化合物の空間的な構
造を作る工程;および(c)化合物がこのFcR結合ドメインと作用するか否か
を決定するために試験する工程であって、ここで、このような作用は、化合物が
IgE抗体のFcεRIαタンパク質への結合を阻害し得ることを示す。好まし
い実施形態において、工程(a)は、FcRに直接相互作用するモデルのFcR
結合ドメイン中の1つ以上のアミノ酸を同定する工程を含む。試験される好まし
い化合物は、1つ以上のこれらのアミノ酸に直接作用する。阻害性化合物が作用
するはずの好ましいアミノ酸は、本明細書に開示される。
【0052】 本発明はまた、本明細書に開示される方法にしたがって単離される阻害性化合
物を含む。例えば、保護因子(例えば、予防的または治療的な)として使用する
のに十分な量でこのような化合物を産生する方法は、当業者に公知である。任意
の適切なFc領域のモデルを産生するために本発明のモデル(すなわちモデル改
変)の使用の拡大およびこのようなFc領域に対する抗体の結合を阻害する化合
物を同定することは、本発明の範囲において明らかである。
【0053】 本発明の好ましい阻害性化合物、またはより効力のある阻害性化合物を産生す
るために用いられ得る誘導体は、飽和四環式炭化水素ペルヒドロシクロペンタノ
フェナントレン(perhydrocyclopentanophenanth
rene)または、これの誘導体である。このような化合物は、以下の式を有す
る構造を含み得る:
【0054】
【化2】
【0055】 このような化合物は、式の中に示されていない場合でも、任意の数の「R」基を
有し得ることが理解されるはずである。飽和四環式炭化水素ペルヒドロシクロペ
ンタノフェナントレンの例は、以下を含むが、これらに限定されない:イソプレ
ノイド、テルペン、胆汁酸、洗浄剤(例えば、CHAPSおよびCHAPSO)
、コレスタン、コール酸、コレステロール、アンドロゲン、エストロゲン、およ
び他のステロイド。好ましい阻害性化合物、またはより効力のある化合物を設計
するための誘導体として用いる化合物は、3−[3−(コラミドプロリル)ジメ
チルアンモニオ]−1−プロパン−スルホナート(CHAPS)または同様の環
構造を有する化合物である。FcεRIαタンパク質およびFc−Cε3/Cε
4領域中のアミノ酸とCHAPSの相互作用は、同書60/189,853にさ
らに詳細に記載される。
【0056】 1つの実施形態において、本発明の阻害性化合物は、二価または他の多価化合
物であり、この化合物は、高い親和性を有する2つのCε3/Cε4ドメインと
相互作用するか、またはドメイン間の溝に結合するのに十分大きい(例えば、イ
ンビボで選択されるペプチド、ペプトイド、核酸、類似の分子、そのミメトープ
(mimetope)のような高分子であるが、これらに制限されない)。
【0057】 本発明はまた、抗体(特に、IgE抗体)のFc領域の改変された形態を合理
的に設計し、かつ構築するための本発明の3−Dモデルの使用を含み、この抗体
のFc領域の改変された形態は、1つ以上の改良された機能(例えば、IgE抗
体の未改変Fc領域と比較して増加した活性、増加した安定性および増加した安
定性であるが、これらに限定されない)を有する。本発明のムテインは、全長タ
ンパク質およびそのようなタンパク質のフラグメント(すなわち、短縮バージョ
ン)を含む。
【0058】 本発明の1つの実施形態は、FcRのFc結合ドメインに結合するムテインを
含むFc領域である。このようなムテインは、配列番号2を含むタンパク質と比
較して改良された機能を有する。このような改良された機能の例としては、増加
した安定性、FcRに対する増加した親和性、変化した基質特異性および増加し
た溶解性が挙げられるがこれらに限定されない。このようなムテインは、以下の
工程を包含する方法によって産生され得る:(a)表1、表2または表3におい
て特定される原子座標を実質的に示す3−Dモデルを分析して、このモデルによ
って示されるタンパク質の少なくとも1つアミノ酸(特定のアミノ酸によって置
換される場合に、このタンパク質の改良された機能をもたらす)を同定する工程
;および(b)同定したアミノ酸を置換して、改良された機能を有するムテイン
を産生する工程。座標の知識は、例えば、疎水性コアまたはその表面における特
定の残基を標的化すること、特定の特性(例えば、高い安定性、高い親和性、変
化した基質特異性または他の所望な特性(すなわち、改良された機能))につい
て、次いで選択され得る改変体の利用可能なセットを産生することを可能にする
。この座標のない場合、非常に多数の改変体を分析しなければならない(例えば
、約1011のオーダーの可能性)。対照的に、この構造は、例えばファージデ
ィスプレイまたは他の方法によって所望の特性を選択するために、最も関連した
残基を選ぶのを可能にする。好ましい実施形態において、1つ以上のアミノ酸の
置換は、タンパク質の3−D構造を実質的に破壊しない;つまり、改変されたタ
ンパク質、すなわちムテインはなお、FcRに結合し得る。好ましいムテインは
、FcεRIαタンパク質に結合するIgE抗体のFcドメインであるが、本発
明はまた、FcRの他のクラスに対するムテイン結合も含む。
【0059】 1つの実施形態において、本発明のムテインは、その未改変対応部分と比較し
て増加した安定性を有する。本明細書中で使用される場合、増加した安定性とは
、例えば、より高いかまたはより低い温度に対して、より酸性のまたは塩基性の
pHに対して、より高いかまたはより低い塩濃度に対して、酸化および/または
還元に対して、他の化学分解の形態に対して、ならびにタンパク質分解に対して
、未改変Fc領域と比較してさらに耐性であるムテインの能力をいう。増加した
安定性はまた、保管の間(すなわち、より長い貯蔵寿命を有する)または使用の
間(すなわち、反応条件下でより長い半減期を有する)のいずれかの長い期間に
、未改変タンパク質よりも安定である、本発明のムテインの能力をいい得る。本
発明のムテインはまた、アンフォールディングの減少したエントロピーを示し得
、それによってタンパク質を安定化する。増加した安定性は、当業者に公知の種
々の方法を用いて測定され得る:例としては、以下の決定が挙げられるがこれら
に限定されない:融解温度、熱変性、圧力変性、アンフォールディングのエンタ
ルピー、タンパク質の自由エネルギーまたは例えば、尿素、塩化グアニジウム、
チオシアン酸グアニジウムなどのカオトロピズム薬剤の存在下での安定性。本発
明の好ましいムテインは、未改変Fc領域の融解温度よりも実質的に高い融解温
度を有する。好ましくは、ムテインの融解温度は、対応する未改変タンパク質の
融解温度よりも、少なくとも約1℃高く、そしてより好ましくは、約10℃高い
。対応する未改変タンパク質の活性pH領域よりも、少なくとも約1 pH単位
高いおよび/または低いpH領域にわたる結合活性を有するムテインもまた好ま
しい。
【0060】 本発明の別の実施形態は、その未改変対応部分と比較して、FcRに対する増
加した親和性を示すムテインである。本明細書中で使用される場合、増加した親
和性を有するムテインは、その未改変対応部分よりも、高い親和性定数(K
または低い解離定数(K)を示すFc領域である。このようなより高い親和性
定数は、ムテインとFcRとの間の会合速度(k)を増加させ、そして/また
はムテインとFcRとの間の解離速度(k)を減少させることによって達成さ
れ得る。本発明の好ましいムテインは、約3.3×10−10モル/リットル(
M)より小さいかまたは等しいKと当量な、少なくとも約3×10リットル
/モル(M−1)のFcRについてのKを有する。より好ましくは、少なくと
も約2×1010−1、そしてなおさらに好ましくは、少なくとも約1×10 11−1のFcRについてのKを有するムテインである。少なくとも約1×
10リットル/モル−秒のFcRについてのkを有するムテインおよび3×
10−5/秒より小さいかまたは等しいFcRについてのkを有するムテイン
もまた好ましい。より好ましくは、少なくとも約3×10リットル/モル−秒
、そしてなおさらに好ましくは、1×10リットル/モル−秒のFcRについ
てのkを有するムテインである。約1×10−5/秒より小さいかもしくは等
しいか、またはなおより好ましくは、3×10−4/秒より小さいかまたは等し
いFcRについてのkを有するムテインもまた好ましい。好ましいFcRは、
FcεRIαである。このような結合定数を測定する方法は、当業者に周知であ
る;例えば、Cookら、1997,同書(これは、ヒトFcεRIαタンパク
質のヒトIgEへの結合に関する以下の値を報告している:3.5(±0.9)
×10−1−1のka1;8.6(±3.5)×10−1−1のk a2 ;1.2(±0.1)×10−2−1のkd1;3.2(±0.8)×1
−5−1のkd2;2.0×10−1のKA1;2.9×10−1 のKA2)を参照のこと。
【0061】 本発明の別の実施形態は、その未改変対応部分と比較して変化した基質特異性
を示すムテインである。変化した基質特異性を示すムテインは、その未改変対応
部分による通常の結合よりも異なる型の抗体クラスまたは抗体種に関して、Fc
Rに増加した親和性で結合するムテインである。1つの実施形態において、変化
した基質特異性を有するヒトFc−Cε3/Cε4領域のムテインは、別の哺乳
動物のIgE抗体(例えば、イヌIgE抗体、ネコIgE抗体、ウマIgE抗体
、マウスIgE抗体またはラットIgE抗体であるが、これらに限定されない)
に結合するレセプターに、増加した親和性で結合するFc領域である。別の実施
形態において、変化した基質特異性を有するヒトFc−Cε3/Cε4領域のム
テインは、別のクラス(例えば、IgG、IgM、IgAまたはIgD(IgG
が好ましい))の抗体についてFcレセプターに、増加した親和性で結合するF
c領域である。このようなムテインはまた、変化した種の基質特異性を示す。ム
テインが変化した基質特異性を示すか否かを決定する方法は、当業者に周知であ
る。
【0062】 本発明のなお別の実施形態は、その未改変の対応部分と比較して増加した溶解
性を示すムテインである。このようなタンパク質は、凝集体をほとんど形成しな
いようである。ムテインが増加した溶解性を示すか否かを決定する方法は、当業
者に周知である。
【0063】 本明細書中に開示されるように、表1、表2または表3において実質的に座標
を表す3−Dモデルは、改良された機能を有するムテインを生成するための(例
えば、改変するために標的を同定して、改変された機能を有するムテインを得る
ための)戦略を決定する際に有利である。標的の例としては、FcεRIαタン
パク質と直接的にかまたは間接的に相互作用するFc−Cε3/Cε4領域の標
的領域が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】 本発明に従って、改良された機能を有するムテインは、本発明の3−Dモデル
の分析から得られる情報に基づいて少なくとも1つアミノ酸を置換して、改良さ
れた機能を有するムテインを生成する工程を含有する方法によって生成され得る
。例えば、ヒトFc−Cε3/Cε4領域の構造の認識は、改良された機能に影
響を与える置換、挿入、欠失、転化および/または誘導体化の予測および生成を
許容することによって、タンパク質の合理的設計および改変された形態の構築を
許容する。つまり、本発明の3−Dモデルの分析は、アミノ酸残基が重要であり
、そして例えば、アミノ酸がタンパク質に損害を与えることなしに変化されるよ
うに情報を提供する。アミノ酸置換を行う際に、類似の原子数を有し、かつ目標
がこのような相互作用を意図的に変化させることではない限り、塩架橋、疎水性
相互作用および水素結合の保存を可能にするアミノ酸置換の使用が好ましい。ヒ
トFc−Cε3/Cε4領域の3−D構造は、大きな欠失が特にタンパク質の種
々のドメイン間の関係および大部分の構造が結晶中に十分に整理されているとい
う観察に起因して、望まれなくてもよいことを示唆する。
【0065】 タンパク質の機能を改良し得る1つのアミノ酸置換がその機能を実質的に改良
し得るが、1つより多くのアミノ酸置換がこの置換の数および配置に依存して累
積的に変化を生じ得ることが理解されるべきである。例えば、タンパク質の安定
性を実質的に増加し得る1つのアミノ酸置換は、その改変したタンパク質の融解
温度を約1℃増加し得るが、約5から約6の置換は、得られるタンパク質の融解
温度を約10℃増加し得る。
【0066】 本発明に従って、Fc領域の3−Dモデルが、当業者に公知の技術を使用して
分析されて、溶媒に対してモデル内に示されるアミノ酸の接近性を決定し得る。
このような情報は、例えば、表4または表5に提供される。
【0067】 多数の方法が、本発明のムテインを生成するために使用され得る。1つの方法
は、以下の工程を包含する:(a)表1、表2または表3に特定化される座標を
実質的に示す3−Dモデルを分析して、モデル化したタンパク質の少なくとも1
つのアミノ酸(このアミノ酸は、特定化したアミノ酸により置換される場合、改
良された機能に影響をもたらす)を同定する工程;および(b)同定したアミノ
酸を置換して、改良された機能を有するムテインを生成する工程。1つの実施形
態において、ムテインを生成する方法は、以下の工程を包含する:(a)ヒトF
c−Cε3/Cε4領域のモデルの重要な領域を、未改変Fc−Cε3/Cε4
領域と比較した改良された機能を有するFc領域のアミノ酸配列と比較して、改
良された機能を有するFc領域の少なくとも1つのアミノ酸セグメントを同定す
る工程であって、このアミノ酸セグメントは、このモデルによって示されるFc
−Cε3/Cε4領域に取り込まれた場合、Fc−Cε3/Cε4領域に改良さ
れた機能を与える工程;および(b)Fc−Cε3/Cε4領域にこのセグメン
トを取り込み、それによって改良された機能を有するムテインを提供する工程。
別の実施形態において、タンパク質を生成する方法は、以下の工程を包含する:
(a)ヒトFc−Cε3/Cε4領域を表すモデルを使用して、変異誘発によっ
て無作為化され得る残基の3−D配置を同定し、改良された機能が選択され得る
分子のライブラリーの構築を可能にする工程;および(b)改良された機能を有
する変異誘発されたライブラリーの少なくとも1つのメンバーを同定する工程。
1つの例において、ムテインは、以下の工程を包含する方法によって生成され得
る:(a)そのタンパク質のモデルを分析することによって同定されるようなF
c−Cε3/Cε4領域の標的(例えば、FcR結合ドメイン)をコードする核
酸分子の無作為な変異誘発を実施する工程;(b)このような変異誘発した核酸
分子をファージディスプレイライブラリーにクローニングする工程(ここで、こ
のファージディスプレイライブラリーはこの標的を発現する);および(c)改
良された機能を有する標的(例えば、FcRに対する増加した親和性を示すFc
R結合ドメイン)を発現するライブラリーの少なくとも1つのメンバーを同定す
る工程。上記のように、このモデルは、このモデルの非存在下において達成され
得ない簡単な様式におけるこの技術の使用を可能にする。これらの方法が、本発
明のムテインを生成するための本発明の他のモデルを用いてもまた使用され得る
こともまた注意のこと。
【0068】 本発明は、本発明の3−Dモデルの分析に基づいた、多数の方法を包含し、本
発明のムテインを生成するためにこのモデルによって表されるタンパク質の少な
くとも1つのアミノ酸残基を置換する(すなわち、付加、除去、置換、反転、誘
導化)。このような方法は、以下の工程を含むがこれらに限定されない:(a)
少なくとも1つの非強制ループ中の少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程;
(b)アミノ末端のアミノ酸残基をカルボキシル末端のアミノ酸残基に連結する
工程;(c)少なくとも1つのアミノ酸部位を誘導化に適したアミノ酸で置換す
る工程;(d)タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸対をシステイン対で置換
して、タンパク質を安定化するジスルフィド結合の形成を可能にする工程;(e
)FcεRIα結合ドメインの少なくとも1つのアミノ酸を置換して、IgE
Fc領域と対応するFcRとの間の親和性を増加させる工程;(f)タンパク質
の少なくとも1つのアミノ酸をあるアミノ酸で置換して、それによって、この置
換がこのタンパク質のアンフォールディングのエントロピーを減少させる、工程
;(g)タンパク質の少なくとも1つのアスパラギンおよびグルタミンを、置換
されるよりも脱アミノ反応を受けにくいアミノ酸で置換する工程;(h)少なく
とも1つのメチオニン、ヒスチジンまたはトリプトファンを、置換されるよりも
酸化反応または還元反応を受けにくいアミノ酸で置換する工程;(i)タンパク
質の少なくとも1つのアルギニンを、置換されるよりもジカルボニル化合物改変
を受けにくいアミノ酸で置換する工程;(j)タンパク質機能を減少させるのに
十分な還元糖と反応を受けやすいタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を、こ
の反応を受けにくいアミノ酸で置換する工程;(k)タンパク質の少なくとも1
つのアミノ酸をこのタンパク質の内部コアの安定性を増加し得るアミノ酸で置換
する工程;(l)タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を少なくとも1つのN
連結グリコシル化部位で置換する工程;(m)タンパク質の少なくとも1つのN
連結グリコシル化部位を、N連結グリコシル化部位を含有しない少なくとも1つ
のアミノ酸で置換する工程;ならびに(n)タンパク質の少なくとも1つのアミ
ノ酸をこのタンパク質の凝集を減少させるアミノ酸で置換する工程。本発明のム
テインは、PCT WO00/26246、同書(本明細書中にその全体が参考
として援用されるこのような方法は、本発明のFc−Cε3/Cε4ムテインに
適用され得る)において開示されるものと類似の方法および原理を用いて生成さ
れ得る。
【0069】 アミノ酸置換は、以下を含む当業者に公知の組換えDNA技術を用いて実行さ
れ得る:部位指向型変異誘発(例えば、オリゴヌクレオチド変異誘発、無作為的
変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)−補助変異誘発、ギャップ−環状
部位指向型変異誘発(gapped−circle site−directe
d mutagenesis)または所望のタンパク質(例えば、ヒトFcεR
Iαタンパク質であるが、これに限定されない)をコードする核酸分子の化学的
合成法、引き続く適した発現系(好ましくは、昆虫、哺乳動物、細菌、酵母、昆
虫または哺乳動物発現系)における変異遺伝子。例えば、Sambrookら、
同書を参照のこと。
【0070】 本発明のムテインが、改変していないアミノ酸を含み得ることが理解されるべ
きである。なぜなら、これらのアミノ酸は、タンパク質の機能にネガティブに影
響を与えるからである。このようなアミノ酸は、本発明の3−Dモデルを用いて
同定され得る。
【0071】 本発明のモデルの使用を拡張して、任意の適切なFcRまたは他のIgドメイ
ン含有タンパク質に対する改変のモデルを生成し、かつこの改変を作製して、所
望の機能を有するムテインを生成することが、本発明の範囲内であることもまた
理解されるべきである。
【0072】 抗体ムテインは、診断用途および治療用途を含むがそれらに限定されない種々
の用途を有する。例えば、ムテインを使用して、抗体レセプタータンパク質を発
現する細胞を、画像化し得る(例えば、肥満細胞癌、喘息および他の病状を検出
するためか、または例えば、誘導化IgEの放射免疫療法を用いて抗体レセプタ
ータンパク質を発現する癌を処置するためのインビボ画像化についてのNMR−
特異的標識など)。ムテインはまた、アトピー性個体において(例えば、一工程
のFACS分析のためのタグを用いて)FcR発現をモニタリングするためにか
、またはアトピー性個体においてIgEをモニタリングするために使用され得る
。ムテインはまた、インヒビターとしてかまたは毒素IgE−Fc融合タンパク
質として使用されて、FcR発現細胞を標的化し、それらを殺す(例えば、肥満
細胞腫瘍または重度のアレルギーにおいて)。また、低い親和性のIgEレセプ
ター(FceRII)結合に影響を与えるが、FceRI結合に影響を与えない
ムテインが、設計または選択され得る。
【0073】 本発明はまた、本発明のムテインをコードする核酸分子ならびにこのような核
酸分子を含む組換え分子および組換え細胞を含む。このようなタンパク質を生成
する方法はまた、本明細書中に開示される。
【0074】 本発明はまた、本発明の3−Dモデルによって同定されるような以下の新規な
構造物を含む。IgEとFcεRIαとの間の直接的な相互作用を示す好ましい
構造物は、FcεRIα結合ドメイン、上記抗体Fc領域タンパク質の2つのC
ε3/Cε4ドメイン間のドメイン間の溝、上記抗体Fc領域のCε3とCε4
ドメインとの間のヒンジ、およびCε3またはCε4ドメインの領域、閉鎖Fc
−Cε3/Cε4コンフォメーションとレセプター結合Fc−Cε3/Cε4コ
ンフォメーションとの間で1Åより大きく変化する相対的な位置。好ましい組成
物は、Cε2とCε3との間のリンカー、Cε3のBCループ、Cε3のDEル
ープおよびCε3のFGループ、ドメイン間の溝を規定するループおよび鎖、C
ε3のABヘリックスならびに上記Cε3のABヘリックスの上にわたる領域。
本発明はまた、このような組成物をコードするための核酸分子を含む。
【0075】 本発明はまた、以下からなる群から選択される単離されたFc−Cε3/Cε
4タンパク質を含む:(a)配列番号2からなるタンパク質;および(b)(a
)のタンパク質に構造的に相同な単離されたタンパク質。ここで前記(b)のタ
ンパク質は、FcεRIαタンパク質に結合する。昆虫細胞中で生成されるこの
ようなタンパク質もまた、本発明に含まれる。1つの実施形態において、Fc−
Cε3/Cε4タンパク質は、ヒトFc−Cε3/Cε4タンパク質、イヌFc
−Cε3/Cε4タンパク質、ネコFc−Cε3/Cε4タンパク質、ウマFc
−Cε3/Cε4タンパク質、マウスFc−Cε3/Cε4タンパク質またはラ
ットFc−Cε3/Cε4タンパク質である。本発明はまた、このようなタンパ
ク質をコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含む組換え分子、組
換え細胞および組換えウイルスを含む。このような核酸分子、組換え分子、組換
えウイルスおよび組換え細胞を用いてこのようなタンパク質を生成する方法もま
た含まれる。
【0076】 本発明はまた、本発明のタンパク質(未改変のタンパク質、このようなタンパ
ク質内の新規の構造物およびムテインを含むがこれらに限定されない)をコード
する単離された核酸分子を含む。本明細書中で使用される場合、タンパク質をコ
ードする単離された核酸分子は、その自然環境から取り出された核酸分子である
。従って「単離された」か、核酸分子が精製された程度までを反映しない。単離
された核酸分子は、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAのいずれかの
誘導体であり得る。
【0077】 本発明のムテインをコードする核酸分子は、これまで開示された組換えDNA
技術を用いて、または化学合成によって、親タンパク質遺伝子(例えば、改変さ
れていないまたは既に改変されたタンパク質コード遺伝子、またはその部分)の
変異によって生成され得る。得られたムテイン核酸分子は、当業者に公知の組換
えDNA技術(例えば、PCR増幅またはクローニング(例えば、Sambro
okら、同書を参照のこと))、または化学合成によって増幅され得る。ムテイ
ンはまた、未改変のタンパク質をコードする核酸分子またはムテインをコードす
る遺伝子により発現されるタンパク質の化学改変により生成され得る。
【0078】 本発明のタンパク質は、種々の方法(組換えタンパク質の生成および回収なら
びに化学合成を含む)で生成され得る。1つの実施形態では、本発明のタンパク
質は、タンパク質を生成するのに有効な条件下でタンパク質を発現させ得る細胞
を培養し、そしてこのタンパク質を回収することによって生成される。培養に好
ましい細胞は、このタンパク質を発現させ得る組換え細胞であり、この組換え細
胞は、本発明の1つ以上の核酸分子で宿主細胞を形質転換することによって生成
される。宿主細胞への核酸分子の形質転換は、核酸分子が細胞に挿入され得る任
意の方法によって達成され得る。形質転換技術としては、トランスフェクション
、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸
着、およびプロトプラスト融合が挙げられるが、これらに限定されない。組換え
細胞は、単細胞のままであっても、または成長して組織、器官、または多細胞生
物になってもよい。本発明の形質転換された核酸分子は、染色体外のままであり
得るか、または発現されるそれらの能力が保持される様式で宿主細胞の染色体内
の1つ以上の部位に組み込まれ得る。
【0079】 形質転換するのに適切な宿主細胞は、形質転換され得る任意の細胞が挙げられ
る。宿主細胞は、形質転換されていない細胞または少なくとも1つの核酸分子で
既に形質転換された細胞のいずれかであり得る。本発明の宿主細胞は、本発明の
タンパク質を内因的に(すなわち、天然に)生成し得るが、しかし、このような
細胞は、好ましくない。本発明の宿主細胞は、本発明の核酸分子で形質転換され
た場合、本発明のタンパク質を生成し得る任意の細胞(細菌細胞、酵母細胞、他
の真菌類細胞、昆虫細胞、動物細胞、および植物細胞を含む)であり得る。好ま
しい宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞が
挙げられ、そしてより好ましい宿主細胞としては、Escherichia細胞
、Bacillus細胞、Saccharomyces細胞、Pichia細胞
、Trichoplusia細胞、Spodoptera細胞、および哺乳動物
細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は、Trichoplusia ni
細胞およびSpodoptera frugiperda細胞であり、T.ni
細胞が特に好ましい。
【0080】 組換え細胞は、好ましくは、1つ以上の転写制御配列を含む発現ベクターに作
動可能に連結された本発明の核酸分子を含む組換え分子で宿主細胞を形質転換す
ることにより生成される。句「作動可能に連結された」とは、核酸分子が宿主細
胞に形質転換された場合に発現され得るような様式で、発現ベクターにこの分子
が挿入されることをいう。本明細書中で使用されるように、発現ベクターは、宿
主細胞を形質転換し、この宿主細胞内で複製し、そして特定された核酸分子の発
現を行い得るDNAベクターまたはRNAベクターである。発現ベクターは、原
核生物または真核生物のいずれかであり得、そして代表的には、ウイルスまたは
プラスミドである。本発明の発現ベクターとしては、本発明の組換え細胞(細菌
細胞、酵母細胞、他の真菌類細胞、昆虫細胞、動物細胞、および植物細胞を含む
)において機能する(すなわち、遺伝子発現を指向する)任意のベクターが挙げ
られる。本発明の好ましい発現ベクターは、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、お
よび哺乳動物細胞において遺伝子発現を指向し得る。
【0081】 本発明の核酸分子は、宿主細胞に適合性であり、かつ核酸分子の発現を制御す
る調節制御配列(例えば、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハ
ンサー、終結配列、複製起点、および他の調節制御配列)を含む発現ベクターに
作動可能に連結され得る。特に、本発明の組換え分子は、転写制御配列を含む。
転写制御配列は、転写の開始、延長、および終結を制御する配列である。特に重
要な転写制御配列は、転写開始を制御する配列(例えば、プロモーター配列、エ
ンハンサー配列、オペレーター配列、およびリプレッサー配列)である。適切な
転写制御配列としては、本発明の組換え細胞の少なくとも1つで機能し得る任意
の転写制御配列が挙げられる。このような種々の転写制御配列は、当業者に公知
である。好ましい転写制御配列としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、およ
び哺乳動物細胞において機能する配列が挙げられる。
【0082】 組換えDNAの技術の使用が、例えば、宿主細胞中の核酸分子コピー数、それ
らの核酸分子が転写される効率、生じる転写物が翻訳される効率、および翻訳後
修飾の効率を操作することによって形質転換された核酸分子の発現を改良し得る
ことは、当業者によって理解され得る。本発明の核酸分子の発現を増加させるた
めに有用な組換え技術としては、核酸分子の高コピー数のプラスミドへの作動可
能な連結、この核酸分子の1つ以上の宿主細胞染色体への組み込み、ベクター安
定性配列(vector stability sequence)のプラスミ
ドへの付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハ
ンサー)の置換または改変、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、
シャイン‐ダルガーノ配列)の置換または改変、宿主細胞のコドン用法に対応す
る本発明の核酸分子の改変、転写を不安定化する配列の欠失、および発酵の間一
時的に組換え細胞増殖を組換えタンパク質産生から切り離す制御シグナルの使用
が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の発現された組換えタンパク質
の活性は、このようなタンパク質をコードする核酸分子を断片化、修飾、または
誘導体化することによって、改変され得る。
【0083】 本発明に従って、組換え細胞を使用して、このようなタンパク質を産生するの
に効率的な条件下で、このような細胞を培養することによってタンパク質を産生
し、そしてそのタンパク質を回収し得る。タンパク質を産生するのに効率的な条
件としては、タンパク質産生を可能にする適切な培地、バイオリアクター、温度
、pHおよび酸素条件が挙げられるが、これらに限定されない。適切な培地とは
、本発明の細胞が、培養される場合、タンパク質を産生し得る任意の培地をいう
。効果的な培地としては、代表的に、同化性糖質源、窒素源およびリン酸源なら
びに適切な塩、無機質、金属および他の栄養素(例えば、ビタミン)を含む水性
培地である。培地は、複合栄養素を含み得るか、または規定される最小培地であ
り得る。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター(バッチ、フェッド・バ
ッチ(fed−batch)、細胞リサイクル、および連続ファーメンター(c
ontinuous fermentor)が挙げられるが、これらに限定され
ない)において培養され得る。培養はまた、振とうフラスコ、試験管、マイクロ
タイターディッシュ、およびペトリ皿中でも行われ得る。培養は、組換え細胞に
適した温度、pH、および酸素含有量で行われる。このような培養条件は、当業
者に周知である。
【0084】 産生に使用されるベクター系および宿主系に依存して、生じたタンパク質は、
組換え細胞内に残存し得るか;発酵培地に分泌され得るか;2つの細胞膜間の間
隙(例えば、E.coli中のペリプラズム間隙)に分泌され得るか;または細
胞膜またはウイルス膜の外表面上に保持され得るかのいずれかである。句「タン
パク質の回収」は、単純にタンパク質を含む全発酵培地を収集することであり、
そして分離または精製のさらなる工程を意味する必要はない。本発明のタンパク
質は、種々の標準的タンパク質精製技術(例えば、アフィニティークロマトグラ
フィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水的相互作用クロ
マトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、クロ
マトフォーカシングおよび差次的可溶化を含むが、これらに限定されない)を用
いて、精製され得る。
【0085】 本発明はまた、本発明のFc領域に選択的に結合する単離された(すなわち、
自然環境から取り出された)抗体を含む。本明細書中で使用される場合、用語「
選択的に結合する」は、本発明のFc領域に優先的に結合するための本発明の抗
体の能力をいう。結合は、当該分野において標準的な種々の方法(例えば、酵素
イムノアッセイ(例えば、ELISA)、イムノブロットアッセイなど)を使用
して、測定され得る;例えば、Sambrookら(同書)を参照のこと。本発
明の単離された抗体は、体液(例えば、血清を含むが、これに限定されない)中
の抗体、または異なる程度で精製された抗体を含み得る。本発明の抗体は、ポリ
クローナルであってもよいし、モノクローナルであってもよい。このような抗体
の機能的等価物(例えば、抗体フラグメントおよび遺伝子操作された抗体(単鎖
抗体または1を超えるエピトープに結合し得るキメラ抗体を含む))もまた、本
発明に含まれる。抗体は、当業者に公知の方法を使用して産生され得る。本発明
の抗体を産生する好ましい方法は、(a)抗体を産生するために有効量の本発明
のタンパク質を動物に投与する工程および(b)抗体を回収する工程を包含する
。別の方法において、本発明の抗体は、本発明のタンパク質を産生するための以
前に開示されているような技術を使用して、組換え的に産生される。定義される
タンパク質に対して惹起される抗体は、このような抗体が、診断アッセイにおけ
る干渉または治療的組成物で使用される場合の副作用を他に引き起こし得る他の
物質に対する抗体を実質的に混入していないので、有利である。
【0086】 本発明の抗体は、本発明の範囲内である種々の潜在的用途を有する。このよう
な用途の例は、WO98/27208(同書)(例えば、24頁を参照のこと)
において開示される;このような用途は、その全体が本明細書中において参考と
して援用される。
【0087】 本発明のFc領域は、抗体に結合するFc領域の少なくとも部分および二次分
子(基質に結合されないFc領域と少なくとも同程度有効な様式で、抗体レセプ
ター部分が抗体に結合するような様式で、キメラ分子を基質に結合させ得る)を
含むキメラ分子を含み得る。適切な二次分子の例としては、免疫グロブリン分子
の部分または基質上に固定され得る適切な結合パートナーを有する別のリガンド
(例えば、ビオチンおよびアビジン、または金属結合タンパク質および金属(例
えば、His)、または糖結合タンパク質および糖(例えば、マルトース))を
含む。
【0088】 本発明は、動物におけるアレルギーの診断および処置ならびに他の免疫応答の
調節のための本発明のFc領域、それに対する抗体、および阻害的化合物の使用
を含む。
【0089】 1つの実施形態は、以下の治療的化合物の少なくとも1つを含む治療的組成物
である:本発明の阻害的化合物、本発明のムテイン、または本発明の抗体。また
、動物をアレルギーまたは他の異常な免疫応答から保護する方法も含まれる。こ
のような方法は、本発明の治療的組成物を動物に投与する工程を包含する。本明
細書中で使用される場合、動物をアレルギーまたは他の異常な免疫応答から保護
する本発明の治療的組成物の能力は、この組成物がアレルギーまたは他の異常な
免疫応答を、例えば、処置、改善または予防する能力をいう。治療的組成物の全
般的特徴ならびにこのような治療的組成物を産生および使用するための方法は、
例えば、WO98/27208(同書)(例えば、39〜47頁を参照)中に開
示され;このような組成物および方法は、本明細書中においてその全体が参考と
して援用される。WO98/27208(同書)に開示される組成物および使用
は、ネコのFcεRIαタンパク質に関するが、これらはまた、本発明の治療的
組成物にも適用可能であることも留意されるべきである。本発明の治療的組成物
は、それらが本発明の3−Dモデルの分析に由来し得、そして改良された機能(
例えば、効力および安全性)を有するので、有利である。
【0090】 別の実施形態は、本発明のムテインを含む診断試薬である。本明細書中で使用
される場合、診断試薬は、動物におけるアレルギーまたは他の異常免疫応答を検
出するために使用されるムテインを含む組成物である。また、(a)アレルギー
もしくは他の異常免疫応答、またはそれらに対する感受性を動物において検出す
るため(本発明のムテインを含む診断試薬の使用を含む)、および(b)IgE
またはFcR結合アッセイの性能を高めるため、の方法(インビボの方法および
インビトロの方法を含む)も本発明に含まれ、上記方法は、本発明のムテインを
アッセイに組み込む工程を包含する。診断試薬の一般的特徴ならびにこのような
診断試薬を産生および使用するための方法は、例えば、WO98/27208(
同書)(例えば、2〜39頁を参照)中に開示され;このような試薬および方法
は、本明細書中においてその全体が参考として援用される。WO98/2720
8(同書)に開示される試薬および使用は、ネコのFcεRIαタンパク質に関
するが、これらはまた、本発明の診断試薬、キット、および検出方法にも適用可
能であることも留意されるべきである。本発明のムテインは、このような適用に
おいて、抗体に対するそれらの増強された親和性、改変された特異性、増強され
た可溶性および/または増強された安定性、例えば、別の反対の条件における使
用を可能にすること、および延長される貯蔵寿命の理由から、有利である。
【0091】 以下の実施例は、例示の目的のために提供され、そして本発明の範囲を制限す
ることを意図されない。
【0092】 (実施例) (実施例1) この実施例は、本発明の結晶およびモデルの産生および分析を記載する。Fc
−Ce3/Ce4残基の番号付は、Dorringtonら、(同書)の慣例に
従うことが留意されるべきである。
【0093】 可溶性IgEの、その高親和性レセプター(FcεRI)への結合は、アレル
ギー応答および抗寄生生物免疫に関連する事象のカスケードにおいて、必要不可
欠な工程である1−3。抗原によるレセプター結合型IgEの架橋は、エフェク
ター細胞活性へ導く細胞内シグナル伝達事象を誘発する。この実施例は、Fc
εRIに結合するヒトIgE−Fcドメイン(Cε3およびCε4)の2.3Å
結晶構造の溶液を記載し、これの座標は表1に開示される。IgE−Fc結晶構
造は、IgG−Fc構造と比較する場合、Cε3ドメインの大きい(約15°)
三次再配列を表し、IgE−Fcは、FcεRIに結合する。遊離のIgE−F
cは、Cε3ドメインを「閉鎖」形状に密接に近接して配置するさらにコンパク
トな配置を採用して、レセプター結合ループを妨害する。このIgE−Fcのコ
ンフォメーション変化は、Cε3ドメイン内に位置する3つの順応性のあるセグ
メントによって媒介されていて、ドメイン間の結合ループによるものではない。
IgE−Fcのこの「閉鎖」構造は、異なる抗体のクラスのエフェクタードメイ
ンにおける新規のコンフォメーション変化についての可能性を際立たせ、そして
アレルギーおよび喘息の処置のための治療化合物の設計についての新規な方法を
提案する。
【0094】 抗体Fcドメインの細胞性抗体レセプターとの相互作用は、種々の抗体レパー
トリーを、免疫系の多くのエフェクター細胞に結合する。抗体サブクラス(Ig
E、IgGおよびIgA抗体を含む)に対して特異的なFcレセプターは、造血
系の細胞の重複しているが個別のサブセットで見出され、それによって免疫応答
の個別の機構を誘引(trigger)し得る1、4、5。IgE媒介免疫反応
は、寄生生物感染、アレルギーおよび喘息に関連している。
【0095】 IgE抗体は、2つのFabおよび3つの定常ドメイン(Cε2、Cε3、C
ε4)の二量体によって形成される1つのFcからなる。IgG分子と比較する
と、IgEは、IgGのリンカー領域に取って代わる更なる定常ドメイン(Cε
2)を有し、一方IgEの Cε3およびCε4ドメインはIgGのCγ2およ
びCγ3ドメインに相同的である。インタクトIgEおよびFcフラグメントは
、高い親和性(K約10−9〜10−10)でFcεRIのα鎖に結合してお
り、変異誘発の研究は、Cε3ドメイン残基がレセプターへの結合に関与してい
ることを実証した6〜11。このことは、IgE−Fc:FcεRIα複合体の
結晶学的研究と矛盾しない。IgE−Cε2ドメインは、IgE−Cε3/Cε
4ドメインの構築物がレセプターに結合する高い親和性を保持しているので、レ
セプター結合に対して重要であると考えられていない。
【0096】 結晶学的研究のためのタンパク質を入手するために、C末端IgE−Fcドメ
イン(Cε3/Cε4)を昆虫細胞内で発現させ、そして方法の節に記載される
ように精製した。高エネルギーシンクロトロンX線源を使用して2.3Åまで回
折するのではなく、実験室のX線源を使用して弱く回折する結晶を得た。IgE
−Fc Cε3/Cε4構造を、2つの免疫グロブリンドメインに関するコアモ
デルの約12,000の異なるコンフォメーション変化を用いて、2つのドメイ
ン間の結合ループに近い中心に位置された約3本の軸を回転させることによって
ドメインの方向を変化させる自動化分子置換検索法(automated mo
lecular replacement search strategy)
によって解明した。コース(角度3°での)検索によって、より微細なドメイ
ンの回転によりさらに精度をあげた1つの有望な解答を得た。この構造を、何回
かの精製に供し、そして電子密度マップを省くシュミレーションされたアニーリ
ング複合体に組み込ませ、表6に示される最終的な統計を得た。Rフリー(Rf
ree)およびR因子はそれぞれ、2.3Åの解像度に対して良い構造を有する
【0097】 IgEのCε3/Cε4ドメインに関する全体的な構造を、図1aおよび2a
に示す。2つの免疫グロブリンドメインは、抗体定常ドメインのC1セットに属
し、そして、それぞれ図1b、2bおよび1c、2cに示されるレセプター結合
IgE−Fcドメインおよびレセプター結合IgG−Fcドメインの構造に個別
に類似している。鎖間ジスルフィドがこの領域において生じ、生化学的に形成す
ることが示され得る事実にも関わらず、N末端残基〜V336(Cε2/Cε3
リンカー)に対する密度は、IgG−Fc構造中で観測されない。FcεRIを
結合させる際に、Cε2/Cε3リンカーを電子密度マップにおいて整列(or
der)し、視覚化する(例えば、60/189,853を参照のこと)。Ig
G−Fcと同様に、重鎖二量体のCε3ドメインは、いかなる鎖間結合をも形成
せず、一方Cε4ドメインは、大規模な二量体境界面(interface)を
形成し、約1860Åの表面積を覆い隠す。IgEのN394で見出された保
存された炭化水素は、Cε3ドメインCε4ドメインとの間のキャビティを充填
し、二量体境界面を横切る制限された接触を作製する。IgG−Fc構造と対照
的に、IgEの炭化水素を除去し得、そしてFcεRIへの結合を保持する
【0098】 IgE−Fc結晶構造は、Fcドメイン対する新規でありかつコンパクトな閉
鎖コンフォメーションを表す。互いに関しそしてドメインCε4ドメインに関す
る2つのCε3ドメインの相対的な配置は、実質的にIgG−Fcまたはレセプ
ター結合型IgG−Fc構造と異なる(図1)。Cε3/Cε4の角度は、Ig
G−FcのCγ2/Cγ3ドメイン間でかまたはレセプター結合型IgE−Fc
について見出されるより鋭い(図1)。遊離IgE−Fcは、そのより短い全体
の高さ(図1a、約7Å)によって示されるようにIgG−Fcの65×64×
36Å(図1c)およびレセプター結合型IgE−Fcの容積(図lb)と比較
して、58×63×40Åの全容積を有し、よりコンパクトである(例えば、6
0/189,853)を参照のこと。IgE−Fc構造内のC3ドメインはまた
、図2に示されるループ残基間の距離によって示されるように、互いにより密接
に接近する。Cε3またはCγ2 Igドメインの鎖A中の第1残基間の距離を
、容易に比較し、ループの柔軟性(flexibility)に起因する距離に
おける差異を最小にし得る。IgG(図2c)において、この距離は約22Åで
あり(IgG構造間でいくらか変化する)、レセプター結合型IgE−Fc(図
2b)において、この距離は約23Åであり、一方閉鎖IgE(図2a)におい
て、この距離は約13Åである。全体的に、レセプター結合型IgEおよびIg
G−Fc構造は、非結合のIgE−Fc構造よりも、互いにより密接に共通して
いる。
【0099】 IgG−Fc構造におけるコンフォメーションの差異を留意してきたけれども 12、13 、これらは、レセプター結合および閉鎖IgE−Fc構造に対して観
測される程大きくはない。図3は、本明細書中において観測される閉鎖IgE−
Fc構造と共に、9つの異なるIgG構造の重ね合わせ(superposit
ion)を示す。IgE−Fcは、観測されたIgG−Fc構造内の動きの幅を
有意に超えて位置する。レセプター結合型IgE−Fcおよび閉鎖形態のIgE
−Fcの重ね合わせを図3に示し、観測される大きなコンフォメーション変化を
実証する。Cε3のABヘリックスおよびドメイン間リンカー残基は、開放およ
び閉鎖IgEコンフォメーションの重ね合わせによって示されるように(図3)
、Cε4ドメインに関して相対的に固定されたままである。IgG−Fcコンフ
ォメーションの最大の差異は、配列において65%同一であるヒトとマウスIg
G−Fc構造との比較において見出され、潜在的にコンフォメーションの差異の
いくつかを説明する12。対照的に、本明細書中で比較するIgE−Fc構造は
、同一な配列の分子についてのコンフォメーションの大きな柔軟性を実証する。
【0100】 IgE−Fcのコンフォメーションの差異の分析を図4aに示し、その中でD
ynDomプログラムを使用して閉鎖形態と開放形態との比較を行ったl4。D
yndomは、異なるコンフォメーション状態におけるタンパク質に対して半硬
質ドメインとして動く残基を分類し、IgEドメイン運動についてのドメイン間
螺旋軸およびヒンジ残基を同定する。開放形態および閉鎖形態を関係づける約1
5°の回転および0.6Å変換(translation)を伴って、IgEの
たわみ運動(bending motion)の軸を図4a中の矢印によって示
す。2つのドメイン間のたわみは、ドメイン間領域(残基436〜440)中で
は起こらず、むしろCεドメイン自体の中で起こる。ヒンジを構成する残基は、
Cε3−ABヘリックス上に位置し、アミノ酸342〜344(鎖Aの後)、3
54〜356(鎖Bの前)、および434〜436(鎖Gの後)を含み、そして
これを図4aにおいて淡紫色で強調する。
【0101】 IgG−およびIgE−Fcドメイン内の見かけの柔軟性における差異に関す
る構造の原理は、DynDomによって同定される3つのペプチドセグメントに
おけるヒンジの運動の可能性を考慮すると、単に2つの免疫グロブリンドメイン
間のリンカーアミノ酸における配列の差異に基づくのではない。ドメイン間リン
カー領域およびABヘリックスは、閉鎖IgE−Fc構造および開放IgE−F
c構造の比較で相対的に固定化されたままである(図1cおよび4a)。ABヘ
リックスのC末端における小さな構造変化は、IgE−Cε3と比較してIgG
−Cγ2配列中の1残基の挿入を説明し、そしてこれらは、IgE中のヒンジ領
域の部分ではない(図4b)。IgEおよびIgGの両方において、Cε3また
はCγ2のAおよびBのβ鎖は、切り離され、そしてABヘリックスの一端上に
水素結合せず、そしてIgE結合が集中しているようにみえるこの領域中に存在
する(図4aおよび図4b)。IgG−Fc構造とIgE−Fc構造との比較は
、Cε3/Cε4境界面から外側へのIgE−Fc ABヘリックスの位置内の
協調的なシフトを示し、これはIgE−Fc構造におけるより大きな回転自由度
を説明し得る(図4b)。閉鎖IgE−Fc構造において、ABヘリックスの直
後のヒンジ残基(アミノ酸354〜356)は、重なったIgG−Fc ABヘ
リックスと立体的に衝突する(図4b)。このように、IgE−Fcに関して本
明細書中で観察される閉鎖コンフォメーションは、IgG−Fc ABヘリック
スの位置ゆえに、IgG−Fcに対して近づきにくくなり得る。さらなる残基も
また、IgGおよびIgEにおけるコンフォメーションの差異に寄与し得る(例
えば、A鎖におけるIgG中のP257/P258の代わりにIgEにおけるR
342/P343の変化、およびIgE−ABヘリックスの始まりにおけるP3
54の存在)。IgG中の2重プロリン配列に接近しやすいφ/ψ角度における
差異は、IgG−Fcsの開放の形状をさらに安定化する。ヒトIgE−Fcと
対照的に、マウスおよびラットの配列は、この2重プロリンモチーフを含む。プ
ロリンに対するR342の変異が溶液技術によって測定されるような開放形状を
安定化するか否か、およびこの変異がIgEレセプターに対する結合親和性に影
響するか否かを試験することは興味深い。
【0102】 閉鎖IgE−Fc構造において観測される大きなコンフォメーション変化は、
FcεRIと相互作用するCε3ドメインの頂部(top)でループを新たに方
向付ける。図4cは、遊離IgE−Fc中のCα炭素原子対とレセプター結合型
IgE−Fcとの間の距離を比較することによって、これらのコンフォメーショ
ン差異を定量化する。FcεRIを結合することに関与するループをグラフ上で
強調し、これらの領域がIgE−Fcの結合形態と遊離形態との間で10〜14
Å動くことを観測した。回転軸がCε3ドメイン基部の近くに位置するので(図
4a)、Cε3β鎖中のアミノ酸に対応するこのプロットにおいて、漸増Cα変
位(displacement)の勾配が見られ得る。このプロットにおけるピ
ークは、最も大きな変位を示す、Cε3ドメインの頂部でのループに相当する(
図4c)。Cε3ドメインにおけるAB−ヘリックスは、図3中で示されるドメ
イン運動と同様に、この分析によってCε4ドメインに構造的に連結されるよう
である。
【0103】 IgE−Fcレセプター結合ループの10〜14Åの運動は、これらのループ
が「閉鎖」形態で不完全に位置し、レセプター結合表面と相互作用することを示
唆する。図5aおよび5bは、結合型および遊離型についてのCε3ドメインの
FcR−結合ループの表面表示を示す。この内部ヒンジについてのCε3ドメイ
ンの回転は、このレセプター結合表面を新たに方向づける。開放レセプター結合
形態においては、Cε3ループを曝し、そしてCε2ドメインに対するN末端リ
ンカー残基と合わせ、FcεRIの広くかつ凸型の表面と相互作用する冠様構造
を形成する。対照的に、閉鎖Fcコンフォメーションにおいて、レセプター結合
ループをIgE−Fcの二価元素軸(diad axial)をお互いに交差す
る方向へ新たに方向付け、レセプターの結合を受け入れ得ないより狭い内部ドメ
インギャップを形成する。IgGのCγ2ドメインと「開放」形態のIgEのC
ε3ドメインを分ける比較的大きな空間は、閉鎖IgE−Fcにおいて、よりい
っそう大きな裂け目となる(図5a)。
【0104】 溶液中のIgE−Fcコンフォメーションは動的(dynamic)であり得
、そして全範囲のCε3コンフォメーション移動度は確立されていない。しかし
ながら、溶液におけるIgEコンフォメーションの生物物理学的研究は、IgG
抗体と比較した場合、IgEコンフォメーションのよりコンパクトなモデルを以
前に提唱した。IgE−Fc(Cε2/Cε3/Cε4)の3つのドメイン構築
物の中性子散乱研究は、溶液における、IgG−Fcのドメイン構築物よりもよ
りコンパクトな構造と矛盾しない15。さらに、インタクトIgEについてN末
端からC末端までの距離はまた、蛍光エネルギー移動(約71Å)によって測定
され、そして溶液中の抗体に対するたわみコンフォメーションを示唆し、IgG
と比較した場合、より少ないヒンジ媒介柔軟性を有する16、17。これらの研
究はまた本明細書中で報告される結晶構造に観測されるよりコンパクトなIgE
−Fcコンフォメーションと矛盾しない。
【0105】 IgE−Fcにおけるこの観察されたコンフォメーションの可撓性は、IgE
生物学的機能の独特の局面のために重要であり得る。IgE−Fc自由度は、F
cεRIとの誘導一致相互作用を可能にし得、高親和性結合に寄与するか、また
は低親和性IgEレセプター(FcεRII)との相互作用においてもまた重要
であり得る(図6)。FcεRIIは、3つのレクチンドメインのうち2つを介
してIgE−Fcと相互作用をすると考えられる三量体C型レクチンである18 。IgG抗体は、この独特の抗体−レセプター相互作用におけるIgE−Fcコ
ンフォメーション変化についての潜在的な生物学的な役割と一致して、対応する
レクチン様レセプターと相互作用をしない。最終的に、この閉鎖IgE−Fcコ
ンフォメーションの観察は、IgE−FcεRI相互作用の新しいインヒビター
の設計のためのテンプレートを提供する(図6)。(直接的な競合部位または間
接的なアロステリック部位のいずれかでの)低分子の結合による閉鎖IgE−F
cコンフォメーションの安定化は、レセプターの結合を遮断し得(図6)、Ig
E媒介アレルギー疾患の処置のための治療的インヒビターの新しいクラスを導く
。インビトロにおいて選択されたペプチドがIgG−Fcのヒンジ領域と結合す
るという最近の知見は、FcεRI結合を遮断するために閉鎖IgE−Fcヒン
ジと選択的に結合するペプチドの設計を示唆する19
【0106】 (方法) (ヒトIgE−Fcの発現および結晶化) IgE−Fc Cε3/Cε4を、Pharmingen baculogo
ld発現系を使用して昆虫細胞において発現させた。簡単には、Cε3/Cε4
ドメインをコードするDNAを、pACgp67発現ベクターおよび確立された
方法によって産生される組換えウイルス中にサブクローニングした。IgE−F
c Cε3/Cε4タンパク質発現と、レセプターベースのELISAアッセイ
によってモニターし、そしてタンパク質を、従来の技術(イオン交換、ゲル濾過
およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ)によって、感染したT.ni細
胞の上清(10〜20リットル)から精製した。このFc構築物は、残基D33
0で開始するネイティブ配列の上流に、4つのアミノ酸(ADPC)を含むN末
端配列(ADPCDSN)をコードする。このシステインは、天然のIgE−F
c cys328由来の1つの残基と置換されるが、単離されたIgE−Fcの
95%より多くで分子内ジスルフィド結合を形成する。
【0107】 精製されたIgE−Fcを、1.32cm−1(mg/mL)−1のe280
nmを使用して、10mMのTris(pH8.0)中で10mg/mlに濃縮
した。結晶を、懸滴方法を使用して、0.5mlのタンパク質および5mlの沈
殿剤(25mM酢酸ナトリウム、pH4.6、33%(w/v)ポリエチレング
リコール4000)を混合することによって得た。結晶は、室温で1〜3日間成
長し、そしてこの結晶は、塩またはPEG濃度ならびに温度における小さな変化
に敏感だった。結晶を、25mM酢酸ナトリウムpH4.6、37%PEG40
00中に収集し、そして凍結保護物質(収集緩衝液および15%(v/v)エチ
レングリコール)に、液体窒素中に急速凍結する前に、約30秒間移した。結晶
は、セルの大きさがa=b=105.6Å、c=47.1Åおよびα=β=γ=
90°である空間群P422に属し、そして結晶の非対称単位につき1つのC
ε3/Cε4鎖を含む。
【0108】 (結晶構造の決定および精製) IgE−Fc結晶由来のデータは、最初は不定に異方性であったが、結晶を、
誘導体スクリーニングのために使用する重原子(白金、水銀および他の金属を含
む)で処理した場合、実質的に改良された。これらの知見に基づいて、結晶を、
凍結およびデータ収集する前に1mMの塩化銅(II)で処理した。ネイティブ
の結晶からの最初の回析が、約3.0Åの解像度に限定され、そしてしばしば分
割した格子を示したけれども、銅処理結晶は、少なくとも2.3Åの解像度で、
ほとんど異方性の格子の問題を伴わずに回析した。この改良は、凍結前のIgE
−Fc N末端残基中の残留遊離システインの酸化(5%未満)に起因し得る。
データをMar300イメージングプレートシステムを使用するSSRLビーム
ライン7−1で、およびMarCCDディテクターを使用するAdvanced
Photon Source DND−CAT5Idビームラインで、これら
の結晶から収集した。ネイティブおよび誘導体のデータを処理し、そしてプログ
ラムのHKL一式を使用して積分した。
【0109】 個々のIgドメインおよび、とりわけIgG−Fc構造の重ね合わせを含む、
IgG−Fc構造に基づくIgEの種々のモデルを使用する、分子置換(MR)
方法によって結晶構造を解析する最初の試みは失敗した。MR探査を、Amor
e、CNS/XPLORおよびEPMRを用いて実行したが成功しなかった。重
原子探査を、広い範囲の化合物(27)、濃度(0.1〜20mM)およびpH
範囲(4.6〜8.5)を使用して実行したが、よい振る舞いの同形の誘導体は
生じなかった。
【0110】 MR探査は、この探査モデルと比較してIgE−Fcについての変化したコン
フォメーションに起因して失敗する可能性があったので、Cε4に対する屈曲、
湾曲およびCε3回転角度の系統的な探索を行った。この探査のために、インタ
クトなマウスモノクローナル抗体(PDBコード1IGT)20の結晶構造由来
のCγ2およびCγ3ドメインを使用した。これらのドメインを切断して非相同
ループおよび側鎖を除去し、IgE−Fc構築物において222残基の代わりに
144残基を有するモデルを提供した。この2つのドメインは、起点にCγ2/
Cγ3リンカー残基を配置し、z軸の周りで屈曲回転を可能にするようにCγ2
およびCγ3が向けられるように翻訳された。X、YおよびZの周りの3つの回
転を、Cγ2ドメインに適用し、一方、CCP4一式21由来のプログラムls
qkabを使用して、Cγ3を固定したままにした。およそ12000のモデル
を、自動的に作製し、そして、プログラムAmore21を使用する完全な分子
置換探査において使用し、5つのシリコングラフィックスコンピューターで、約
10日間かかった。このモデルは、それぞれの回転において3°の増分で、出発
モデルの周りを−30〜+40度の角度範囲でカバーした。有望な開始探査溶液
を、探査範囲を制限して回転段階サイズを0.5度の増分に減少させることによ
って、精密化した。この細密な探査は、38%の相関係数および15〜4Å解像
度のデータを有する489%のR因子を有するモデルを提供する。このモデルを
、剛体精密化に供し、そしてシミュレートしたアニーリングする複合省略図(c
omposit omit map)を、プログラムCNS22の使用によって
3Åの解像度までを計算した。解釈可能な密度は、探査モデルから省略された領
域において観察され、そしてこのモデルにおける誤差は容易に同定され得た。モ
デル構築および精密化を、プログラムO23およびCNS22を使用して続けた
。0〜2.3Åの解像度のデータ全てについての現在の精密化統計を、表6に集
める。
【0111】
【表6】
【0112】 (参考文献) 1.Kinet、Annu Rev Immunol 17、931〜972(
1999)。 2.Metzger、Immunol Rev 125、37〜48(1992
)。 3.Suttonら、Nature 366、421〜428(1993)。 4.Daeron、Annu Rev Immunol 15、203〜234
(1997)。 5.Ravetchら、Annu Rev Immunol 16、421〜4
32(1998)。 6.Weetallら、Immunol 145、3849〜3854(199
0)。 7.Nissimら、Embo J 10、101〜107(1991)。 8.Basuら、J Biol Chem 268、13118〜13127(
1993)。 9.Henryら、Biochemistry 36、15568〜15578
(1997)。 10.Prestaら、J Biol Chem 269、26368〜263
73(1994)。 11.Sayersら、Biochemistry 37、16152〜161
64(1998)。 12.Harrisら、J Mol Bil 275、861〜872(199
8)。 13.Harrisら、Adv Immunol 72、191〜208(19
99)。 14.Haywardら、Proteins 30、144〜154(1998
)。 15.Beavilら、Biochemistry 34、14449〜144
61(1995)。 16.Zhengら、Biochemistry 30、9125〜9132(
1991)。 17.Zhengら、Biochemistry 31、7446〜7456(
1992)。 18.Shiら、Biochemistry 36、2112〜2122(19
97)。 19.DeLanoら、Science 287、1279〜1283(200
0)。 20.Harrisら、Nature 360、369〜372(1992)。 21.Collaborative Computational Proje
ct、Acta Cryst、D50、760〜763(1994)。 22.Brungerら、Acta Crystallogr D Biol
Crystallogr 54、905〜921(1998)。 23.Jonesら、Acta Crystallogr A 47、110〜
119(1991)。
【0113】 (実施例2) この実施例は、実施例1に記載するモデルのさらなる精製を記載する。Fc−
Cε3/Cε4(本明細書中において、またFc Cε3−Cε4として参照さ
れる)の残基の番号付けは、Dorringtonら(同書)の決まりに従うこ
とに注意すべきである。
【0114】 IgE抗体は、抗寄生生物免疫応答、ならびにアレルギーおよび喘息の炎症反
応を媒介する。この実施例は、2.3Å解像度までのヒトIgE−Fc Cε3
−Cε4ドメインの結晶構造の解明を記載し、(その座標は)表2および表3に
開示される。このIgE−Fc結晶構造は、Fcドメインについて新規の閉鎖コ
ンフォメーションを明らかにする。例えば、この構造は、関連するIgG−Fc
構造、およびその高い親和性レセプターFcεRIと結合したIgE−Fc結合
と比較した場合、N末端Cε3ドメインの大きな転位を明らかにする。このIg
E−Fcは、極めて近接し2つのCε3ドメインを配置する、より小型の閉鎖コ
ンフォメーションをとり、ドメイン間のキャビティのサイズを減少し、そしてF
cεRI結合部位の部分を覆い隠す。このコンフォメーションの可撓性を可能に
し得るCε3−Cε4ドメイン間の境界面の独特の構造特徴が同定される。Fc
ドメインの可撓性は、IgEが、その両方のレセプター、すなわちFcεRIお
よびFcεRIIと最適な相互作用を形成することを可能にし得る。IgE−F
cのこの構造は、アロステリックに作用してレセプター結合を遮断する分子の設
計を含む、抗アレルギー処置のための新しいストラテジーを示唆する。
【0115】 (A.背景) この抗体のレパートリーの機能的多様性は、抗原特異的結合部位の作製および
これらの特異的結合部位の免疫系の異なるエフェクター機構への結合の両方を包
含する。抗体中においては、これら2つの機能的な役割は、Fab領域およびF
c領域というこのタンパク質の分離可能な部分において見出される。2つの抗原
結合部位は、抗体のFab領域中に含まれ、これは抗体の重鎖を介してFcエフ
ェクタードメインと共有結合する(Harrisら、1999;Padlan、
1994)。このFcドメインは、下流のエフェクター機能の活性化についての
特異性を提供し、そして抗体の重鎖の定常ドメインのみに由来する。B細胞発達
の間のアイソタイプスイッチは、5つの主なクラスまたはアイソタイプ:IgA
、IgD、IgE、IgGおよびIgMに分類される、異なる重鎖の定常領域に
連結する、同一の抗原特異性を有する免疫グロブリンを産生する。異なるFcア
イソタイプは、細胞性レセプターまたは可溶性タンパク質と異なるセットと相互
作用し、特定の防御機構を開始する。エフェクター機構が、特定の病原、感染の
物理的位置、および免疫応答の異なる段階に適用される。Fc関連エフェクター
機構としては、貪食作用、細胞性細胞傷害の開始、ならびに炎症経路、補体の活
性化および抗体産生のフィードバック調節が挙げられる(Daeron、199
7;Kinet、1999;RavetchおよびClynes、1998)。
【0116】 IgE抗体は、そのFcドメインを介して、免疫系の2つの細胞性レセプター
(FcεRIおよびFcεRII(CD23))と相互作用する。IgE抗体は
、マスト細胞、好塩基球および好酸球の表面上にある、高親和性レセプター(す
なわち、FcεRI)と結合する(Kinet、1999;Metzger、1
992)。レセプター結合IgEによる多価抗原の結合は、レセプター凝集を引
き起こし、細胞活性を誘発する。マスト細胞上で、これはヒスタミン、炎症媒介
物および血管拡張剤の放出を誘導する。環境アレルゲンに対するマスト細胞反応
は、アレルギー、ぜん息、およびアナフィラキシーの病理と関連がある(Tur
nerおよびKinet、1999)。FcεRIによる好酸球の活性化は、寄
生生物感染に対する防御機構を提供し(Gounniら、1994;Kinet
、1999)、一方樹状細胞のFcεRIは、MHCクラスII抗原提示経路中
にIgE結合抗原を送達し得る(Maurerら、1998)。IgE抗体はま
た、より低い親和性レセプターであるFcεRIIと相互作用し、このレセプタ
ーは抗原提示、細胞傷害、およびIgE産生の調節に関する(Suttonおよ
びGould、1993)。FcεRIがIgE、IgGおよびIgA抗体に特
異的な抗体レセプターのファミリーと相同性である一方、FcεRIIは、タン
パク質の異なる構造的なクラスに属し、そしてIgE系と独特に関連する。
【0117】 IgEは、ヒト化抗IgEモノクローナル抗体を使用するぜん息についての現
在の治療的アプローチの標的である(Chang、2000;Jardieuお
よびFick、1999)。IgE−Fcに対する抗体は、レセプター結合を遮
断し、レセプター活性化レセプター活性化および発現レベルにおける減少を誘導
し、そしてIgE血清レベルにおける減少を誘発する。IgE−Fcの構造研究
は、抗IgE治療を改良すること、そして多種多様なアトピー疾患の処置のため
のインヒビターを設計することへの新しい経路を提供し得る。
【0118】 IgEは、εアイソタイプの2つの重鎖と関連する2つの抗体軽鎖を含む。こ
れらの重鎖の3つのC末端定常ドメイン(Cε2、Cε3およびCε4)は、二
量体化してFcエフェクタードメインを形成する。IgGと比較して、IgE抗
体はさらなる定常ドメインCε2を有する(図7a)。このCε3およびCε4
ドメインは、IgG−Fc Cγ2ドメインおよびCγ3ドメインと相同性であ
り、それぞれヒトIgEとIgG1との間に32%の配列同一性がある(図7b
)。インタクトなIgEおよびIgE−Fcフラグメント(Cε2−Cε4、C
ε3−Cε4)の両方は、FcεRIへ高親和性(K約10−9〜10−10 M)で結合し、そして変異誘発研究は、この相互作用の媒介(Basuら、19
93;Henryら、1997;Nissimら、1991;Prestaら、
1994;Weetallら、1990)ならびにFcεRIIへの結合(Sh
iら、1997;SuttonおよびGould、1993)にCε3ドメイン
残基を関連付けた。IgE−Fc Cε3−Cε4は、両方のFcεRI(Ba
suら、1993;Henryら、1997;Yongら、1995)およびF
cεRII(Shiら、1997)と結合したままであり、構造研究のための最
小の構築物を示唆する。
【0119】 抗体Fcドメインの結晶学的研究は、以前にIgGクラスに限定されており、
Fc−エフェクター機能における配列および構造多様性の役割について多くの謎
を開放する。
【0120】 (B.構造決定) ヒトIgE−FcのC末端ドメイン、すなわちCε3−Cε4(図7)を、方
法に記載されるように昆虫細胞で発現させた。このIgE−Fc Cε3−Cε
4タンパク質は、3つの潜在的なN結合糖質結合部位を含むが、しかしN371
およびN394の2つのみがインビボでグリコシル化される(Basuら、19
93;Youngら、1995)。エンドグリコシダーゼ消化、トリプシンペプ
チドの質量分析、および変異分析によるFc糖質の特徴付けは、高マンノース糖
質がN394に結合していることを示し、このN394はFcドメイン中の保存
グリコシル化部位である。両方の脱グリコシル化IgE−Fc(Basuら、1
993)および高マンノースIgE(GranatoおよびNeeser、19
87)がFcεRIへの高い結合親和性を保持すると言えども、脱グリコシル化
IgE−Fcは、凝集傾向を有し、このことにより脱グリコシル化IgE−Fc
は結晶学的研究についての質の悪い候補となる(Basuら、1993)。
【0121】 このIgE−Fcを、精製して均質化および結晶化した。結晶は、セルの大き
さがa=b=105.6Å、c=47.1Åである空間群P422に属する。
この結晶は、非対称範囲で単一のIgE−Fc鎖(二量体分子の半分)を含み、
この分子二量体の軸は結晶学的ダイアドに沿って位置する。この結晶は、シンク
ロトンX線供給源を使用して、X線2.0Åを回折する。種々のIgG−Fcモ
デルを使用する分子置換探査は成功せず、重原子探査もまた成功しなかった。こ
のIgE−Fc Cε3−Cε4構造を、2つのIgドメインについてのコアモ
デル約12,000個の異なるコンフォメーション改変体を使用する、自動化分
子置換探査によって、体系的にCε3およびCε4ドメインモデルに関する角度
を変化させて解析した。データ収集および精密化統計は、表7に示される。現在
のRfreeおよびRworkは、2.3Å解像度に対してそれぞれ27%およ
び24.2%であり、である。このタンパク質の10アミノ末端残基(鎖間のジ
スルフィドを含む)および4つのC末端残基についての密度は存在しない。さら
に、Cε4 ABループについての密度は乏しい。
【0122】
【表7】
【0123】 (C.IgE構造の説明) IgEのCε3ドメインおよびCε4ドメインは、Ig定常ドメインのC1セ
ットに属する(Murzinら、1995)。IgEのCε3ドメインおよびC
ε4ドメインは、個々にIgGのCγ2ドメインおよびCγ3ドメインにそれぞ
れ相同性であるが、IgE−FcおよびIgG−Fcの構造に基づいた配列アラ
イメントは、二次構造におけるいくつかの変化を明らかにする(図7b)。Ig
Eと比較して、IgGは、CγABへリックスのすぐ後に隆起を形成する単一の
残基挿入(IgG1中のI253)を含む。このIgE Cε3ドメインは、C
’鎖を欠失し、そしてCε4ドメインは、Cγ3中のABヘリックスの代わりに
、不十分に並んだABループを有する。2つのプロリン(P381およびP45
4)は、水素結合能力の変更によってこれらの二次構造の破壊に寄与し得る。
【0124】 IgE−Fcのリボン図を、図8に示す。IgG−Fcにおけるように、Ig
E−Fcの上側ドメイン(Cε3)は、いかなる直接のタンパク質:タンパク質
接触をも形成しない。この保存された糖質結合部位(N394)は、Cε3ドメ
インの間のキャビティに面する。観察された電子密度が、この部位でのグリコシ
ル化と一致する一方、密度の乏しい質は、糖質のモデル化を不可能にする。この
モデルに糖質残基を含むことは、Rfreeを減少せず、または電子密度マップ
を改良もしなかった。しかし、この電子密度は、糖質残基がお互いFc二量体軸
の近くで接触し、Cε3ドメインの間の狭い間隙の底を形成することを示唆する
。このCε4ドメインは、二量体境界面を横切って広範な接触を形成し、約1,
860Åを隠す。単鎖のCε3ドメインとCε4ドメインとの間に形成された
14の原子接触(4Å未満)が872Åを隠し、そして二量体において全部で
1,744Åをその上に隠す。
【0125】 この領域における鎖間のジスルフィドの形成にも関わらず、V336に対して
N末端側の残基(Cε2−Cε3リンカー領域)についての電子密度が観察され
ない。これらのCε2−Cε3リンカー残基は、FcεRIとの複合体において
整列しており(Garmanら、2000)そしてこれらの残基のいくつかは、
レセプターと相互作用する。Cε2ドメインの非存在が、遊離FcにおけるCε
2−Cε3リンカーの乱れに寄与し得るが、FcεRIに対するリンカー残基の
非対称結合は、可撓性が機能的に重要であることを示唆する。
【0126】 (D.IgE−Fcは新規のコンフォメーションを適用とする) IgE−Fc Cε3−Cε4ドメインの結晶構造は、抗体エフェクタードメ
インについての新規の閉鎖コンフォメーションを明らかにする(図8)。遊離I
gE−Fcにおいて、このCε3−Cε4ドメイン間の角度は、相同なIgG−
Fcドメインの間(Deisenhoferら、1976;Harrisら、1
999)か、またはFcεRI結合IgE−Fc(開放コンフォメーション、G
armanら、2000)において観察される角度よりも鋭い。お互いに関して
、およびCε4ドメインに対しての2つのCε3ドメインの相対配置の両方が、
変更される。閉鎖構造において、IgE−Fc Cε3ドメインは、共により近
接し、そしてわずかにお互いに関して回転する。Cε3ドメインおよびCγ2ド
メインの平面図は、ドメイン間ギャップにおける相違を例示する(図8b)。I
gE−Fcにおいて、Cε3 Aストランドの第1残基の間の距離は、たったの
13Åである。レセプター結合IgE−Fcにおいて、この距離は23Åまで増
加し、これはIgG2a−FcにおけるCγ2ドメインの間で観察される22Å
と類似する(Harrisら、1997)。このCε3ドメインは、お互いによ
り近接するよう接近するだけでなく、Cε4ドメインともより近接に位置する。
例えば、Cε3ドメインの頂点(DEループにおける残基T396)は、Cε4
ドメインの頂点(残基S491)から23Åである。IgG2aにおける対応す
る残基間の距離は33Åであり、そしてレセプター結合IgE−Fc(開放形態
)において、この距離は31Åである。従って、開放形態と閉鎖形態との間の変
化において、それぞれのCε3ドメインの頂点は、二量体軸を横切って他のCε
3ドメインに向かって10Å移動し、そして同じ鎖のCε4ドメインに向かって
8Å移動する。IgEのより上側のドメイン(Cε3)のより下側ドメイン(C
ε4)への近接な接近は、IgG−Fcと比較して、IgE−Fcの全体の高さ
を約7Å減少する。このIgE−Fcコンフォメーション変化は、IgG−Fc
結晶構造の間で観察されるどの相違よりもかなり大きい。IgG−Fcの6つの
結晶構造は、IgG−Fcの単鎖の9つの異なる知見を提供する(これらの3つ
の構造において、その2本の鎖は、結晶学的対称性によって同一であるように制
約される)。これらの9つのIgG−Fc鎖(それらのCγ3ドメインを介して
整列する)は、Cγ2位置のファミリーとしてIgG−Fcコンフォメーション
可変性を明らかにする(図9a)。この閉鎖構造において、このIgE Cε3
ドメインは、観察されるIgG−Fcコンフォメーションの範囲から遠く外側に
位置する。FcεRIと結合する場合、Cε3ドメインとCε4ドメインとの間
の角度が増加し、そしてこのCε3ドメインは、IgG Cγ2ドメインについ
ての観察された位置に接近する。IgG−Fcにおける構造的変化のいくつかは
、配列の相違に起因し得る。ヒトIgG構造が、約95%の配列同一性を共有し
、そしてマウスの構造が約67%の同一性を有する一方、IgG Cγ2位置に
おける最も大きい相違は、約64%の同一性を共有するヒト構造とマウス構造と
の間で起こる(Harrisら、1999)。しかし、最も大きいコンフォメー
ション変化は、配列が同一である。IgE−Fcの開放形態と閉鎖形態との間で
生じ、このことは、IgE−Fcの固有の可撓性を示す。
【0127】 (E.IgE−FcおよびIgG−Fcコンフォメーション可撓性の分析) IgE−Fcコンフォメーション変化は、開放コンフォメーションおよび閉鎖
コンフォメーションにおける2つのIgドメインに関する軸によって示され得る
。プログラムDynDom(HaywardおよびBerendsen、199
8)は、この軸について、約13°の回転および1Åの移動を規定する(図9b
中の矢印)。驚くべきことに、この軸はCε3−Cε4リンカー領域(436〜
440)中に位置しないが、むしろCε3−Cε4ドメイン境界線の近く、Cε
3ドメインそれ自体の中に位置する。コンフォメーションの変化を媒介するヒン
ジ残基は、Cε3 ABヘリックスの両方の末端に(残基343〜345および
残基351〜352)、ならびにCε3−Cε4リンカー領域(残基435〜4
36)に近接して位置する。観察されたIgG−Fc構造のいずれも、このよう
な大きな程度の可撓性を示さない。同じFcの2つのCγ2ドメインがそのCγ
3ドメインに関して異なる配向を示す3つのIgG−Fc構造が解析された(1
FC1(Deisenhofer、1981)、1IGY(Harrisら、1
998)および1IGT(Harrisら、1997))。この構造の変化は同
じFcで生じるので、配列の変化に起因する相違は排除される。それぞれの構造
について、DynDom分析は、この2つの配座異性体の間で6〜7°の移動を
示すCγ2−Cγ3境界面付近の軸を同定する(図9c)。この軸の方向は、お
互いと、およびIgE−Fcの方向と異なり、そしてこの軸の方向は、Cγ2の
別個の移動(例えば、横から横へ(side−to−side))を示す。しか
し、IgG運動のいずれも、IgE−Fcにおいて見られる開放から閉鎖へのコ
ンフォメーション変化に対応しない。このヒンジ軸の異なる位置およびIgG−
Fcによって示される大いにより小さな範囲の運動は、Igドメインの可撓性が
複数の因子に関与することを示唆する。
【0128】 IgE−Fcの閉鎖コンフォメーションと開放コンフォメーションとの間での
Cα配位における変化を、図9dにプロットする。この変化は、FcεRI(G
armanら,2000)に対して非対称的に結合する2つのFc鎖に対して、
わずかに異なる。Cε3 ABヘリックス(344〜352)およびドメイン間
リンカー(436〜440)は、Cε4ドメインに対して固定されたまま比較的
残存するが、Cε3 EFヘリックス残基(406〜413)は、4ÅまでのC
α移動を示す(図9a)。位置的な変化は、ヒンジから離れるにつれてより大き
くなり、Cε3残基の最大の変位は、FcεRIに結合するBC(363〜36
8)、DE(393〜395)およびFG(422〜428)ループにおけるF
cの頂部で観察された(図9b)。これらのループにおける残基は、開放コンフ
ォメーションと閉鎖コンフォメーションとの間で、7〜16Å移動する(図9c
)。大きな差異はまた、Cε2−Cε3リンカーに隣接したAストランドにおい
て観察される。
【0129】 (F.IgE−Fc炭水化物) IgEおよびIgGの両方において、保存された炭水化物付着部位は、上部ド
メイン(それぞれ、Cε3およびCγ2)の間のキャビティと向かい合う。炭水
化物残基は、この構造中に含まれていないが、約5個の炭水化物部分についての
部分的な電子密度が、保存されたN394部位で観察され得、これはコア(−G
lcNAcMan)の後で2つのアームに分枝する。IgGにおいてのように
、炭水化物の電子密度は、タンパク質の内面に沿って存在し、溶媒から疎水性残
基を遮蔽する(IgE残基Y339、L359、V361)。しかし、炭水化物
は、溶媒から隔離されない。IgEにおいて、N394に付着した炭水化物は、
ネイティブな条件下でエンドグリコシダーゼによって取り除かれ得る。このこと
は、この領域が、溶液中において少なくとも一過的に接近可能であることを示唆
する(Basuら,1993)。
【0130】 炭水化物は、FcεRIへの高親和性結合のために必要とされない。このこと
は、炭水化物が、IgE−Fcのコンフォメーションに有意には影響を及ぼさな
いことを示唆する。IgAのグリコシル化は同様に、Fc−レセプター結合のた
めに必要とされない(Mattuら,1998)。対照的に、IgGにおける保
存されたN結合型付着部位(IgG1におけるN297)での炭水化物の存在は
、Fcレセプター結合活性を維持するために重要である(Jefferisら,
1998)。哺乳動物、酵母および昆虫細胞において生成される、IgGのコア
グリコシル化(−GIcNAcMan)が、この炭水化物機能のために十分
であるようである(Jefferisら,1998)。IgGの機能研究および
生物物理学的研究により、炭水化物部分は、Fc構造に対して限られた局所的な
効果のみを有することが示されている(Jefferisら,1998)。グリ
コシル化IgG−Fcおよび無グリコシル化(aglycosylated)I
gG−Fcと、モノクローナル抗体のパネルとの比較は、検出可能なエピトープ
の差異を示さなかった。このことは、全体的な構造変化が生じなかったことを示
唆する(Walkerら,1989)。H−NMRを使用して、IgG−Fc
の構造に対するグリコシル化の影響を研究した。ヒスチジン共鳴を、グリコシル
化IgG−Fcおよび非グリコシル化IgG−Fcにおいてモニターした(Lu
ndら,1990;Matsudaら,1990)。モニターされた5個のヒス
チジンのうち、保存されたグリコシル化部位付近の1つのみ(Cγ2 BCルー
プにおけるH268)が、局所的な環境における任意の変化を報告した。Cγ2
−Cγ3ドメイン界面のヒスチジンは、いかなる構造的差異も検出しなかった。
IgE−Fc:FcεRI結晶構造に基づき、保存されたグリコシル化部位を含
むCγ2 BCループおよびDEループは、FcγR相互作用において直接的に
関与することが予期される(Garmanら,2000)。これらのループにお
ける局所的な構造変化は、レセプター結合に影響を及ぼし得る。
【0131】 (G.ドメイン間界面での構造的変化) IgG−Fc(Cγ2−Cγ3)およびIgE−Fc(Cε3−Cε4)の両
方のドメイン間界面は、Fc機能に重要であり、そしてこの界面における構造的
差異は、Fcドメインの可撓性に影響を及ぼし得る。4つのタンパク質が、Ig
Gのこの領域に結合する:新生児Fcレセプター(Burmeisterら,1
994)、リウマチ因子(Corperら,1997)、プロテインA(Dei
senhofer,1981)およびプロテインG(Sauer−Erikss
onら,1995)。IgEのこの領域に対するタンパク質の直接的な結合は、
示されていない。FcεRIIについての結合部位は、Cε3の外面に広範にマ
ッピングされた(Shiら,1997;SuttonおよびGould,199
3)が、FcεRI結合部位は、この界面に対して遠位であり、そしてCε3の
BC、DEおよびFGループ、ならびにCε2−Cε3リンカーを含む(Gar
manら,2000;Henryら,1997;Prestaら,1994)。
しかし、Cε3−Cε4ドメイン界面の残基は、FcεRIとの直接的な接触を
形成しないという事実にも関わらず、この領域における変異は、FcεRI結合
に対して著しい効果を有し得る。例えば、IgE Cε3 ABヘリックス残基
を、IgG Cγ2 ABヘリックス残基で置換することは、単一のアミノ酸変
異(F329A)(Prestaら,1994)と同様に、結合を破壊する。こ
のことは、Cε3−Cε4ドメイン界面の相互作用が、機能的なFcを維持する
において重要であることを示唆する。ABヘリックス(Cε3またはCγ2にお
ける)は、IgEおよびIgGの両方におけるFcドメイン間での大半の原子接
触(4Å以内の原子)を媒介する(図7a)。ABヘリックスは、隣接残基およ
び上部ドメインのEFヘリックス中の残基と接触する。ABヘリックスはまた、
より下部のIgドメイン(Cε4またはCγ3)のC、FおよびGストランド、
ならびにFGループにおける残基と接触する。ドメイン間接触を媒介する際のA
Bヘリックスの中心的役割にも関わらず、ABヘリックス残基は、IgEとIg
Gとの間で保存されていない。このヘリックスのわずか1残基のみ(εD347
、γD262)が不変である(図7b)。さらに、ABヘリックスに接触する残
基の大半は、IgEとIgGとの間で保存されていない。ABヘリックス残基に
よってなされる接触パターンは、IgEとIgGとにおいて相違する。IgEに
おいて、ABヘリックスによってなされる接触の大半は、開放コンフォメーショ
ンにおける下部(Cε4)ドメイン(15/21)の残基に対してである(図1
0a)。わずか1つの接触が、閉鎖形態におけるEFヘリックスに対してなされ
、そして2つのさらなる接触が、開放コンフォメーションにおいて形成される(
破線)。IgGでは、ABヘリックス接触の大半(12/21)は、同じCγ2
ドメイン内の他の残基に対してであり、9つは、下部のCγ3ドメインに対して
接触する。Cγ2 ABヘリックスは、EFヘリックスに対して広範な接触を形
成する。2つの残基(特に、V263およびH329)は、Cγ2ドメイン内に
おける9つの接触のネットワークを形成する。IgGドメイン間界面に固有の2
つの著しい構造的特徴が存在する(図9a、10d)。IgG Cγ2 ABヘ
リックスの後への単一残基(イソロイシン266)の挿入は、ヘリックスの末端
に明らかな隆起を形成する。このイソロイシンは、隣接残基と共に、IgGの表
面上に浅いポケットの部分を形成する(図10d)。IgGにおける第二の差異
は、ABヘリックスに向かい合うEFヘリックスにおける保存されたヒスチジン
(H329)の存在である。このヒスチジンは、種および亜類型にわたってIg
Gにおいて完全に保存されているが、他のIgアイソタイプでは見いだされない
。ヒスチジン329は、I266および隣接残基によって形成されるポケットに
対して5つの原子接触を形成する(図10d)。H329によってなされる接触
は、すべてのIgG−Fc構造(ABヘリックスが、下部のIgドメインにもは
や接触せず、かつCγ2−Cγ3ドメイン界面から離れるようにシフトした、高
度に歪曲されたFab−Fcヒンジ欠失IgGを含む(Guddatら,199
3))において維持される。非グリコシル化IgG−Fcにおいて、IgG H
329のH共鳴は不変である(Lundら,1990;Matsudaら,1
990)。このことは、これらの相互作用の保存を示唆する。
【0132】 対照的に、IgEにおいて対応する残基(T407)は、開放形態においてA
Bヘリックスと2つの接触をなし(図10a、10c)、そして閉鎖形態では、
わずか1つのみの接触をなし、かつABヘリックスから離れるように移動する(
図9a、10a〜c)。ラットおよびマウスのIgE配列において、T407は
、アラニンによって置換される。このことは、これら側鎖の相互作用の保存が重
要ではないことを示唆する。
【0133】 他のCγ2ドメイン残基に対してIgG ABヘリックスにより形成される広
範な接触、およびABヘリックスに対するEFヘリックス残基H329の密接な
充填は、IgG Cγ2−Cγ3界面を識別する。IgGでは、ABヘリックス
は、下部(Cγ3)ドメインよりも上部(Cγ2)ドメインと、より密接に結合
される。対照的に、IgE界面は、下部Cε4ドメイン残基とCε3 ABヘリ
ックス残基の広範な相互作用によって特徴付けられ(図10a)、そしてEFヘ
リックスとの接触は制限される。IgE Cε3およびIgG Cγ2の両方に
おいて、AおよびBストランドは分離し、そしてABヘリックスのいずれの側で
も水素結合を形成せず、ABヘリックスの位置付けにおける幾分の可撓性を許容
する。しかし、この可撓性は、Cγ2 ABとEFヘリックスとの広範な相互作
用によって、IgGに制限され得る。IgEでは、Cε3 ABとEFヘリック
スとの間でなされる制限された接触によって、このヘリックスが独立して移動す
ることを可能にし得る。
【0134】 (H.FcεRI結合部位に対するコンフォメーション変化の効果) IgE−Fc構造の大きなコンフォメーション変化は、高親和性レセプター(
FcεRI)と相互作用するCε3ドメインにおけるループを再配向する。Fc
εRI結合ループの大きな移動は、これらが、レセプターと相互作用するために
閉鎖IgE−Fc構造において不十分にしか位置付けられないことを示唆する。
図11は、開放Fc構造および閉鎖Fc構造の分子表面描写を示す(レセプター
結合残基は、マゼンタで強調表示される)。開放形態では、レセプター結合ルー
プが露出され、そして結合残基は、FcεRIと相互作用するために利用可能な
、大きな凹表面を提示する。閉鎖形態では、これらのループは、部分的に不明瞭
であり、そしてIgE−Fc二分子軸にわたり互いに向き合い、レセプターの結
合を収容し得ない2つのCε3ドメイン間に狭いギャップのみを残す。Cε3
BC、DE、およびFGループは、閉鎖コンフォメーションにおいてほぼ接近不
能であるが、V336に対してN末端の無秩序なCε2−Cε3リンカー残基は
、閉鎖IgE−Fc構造においてさえ、レセプターとの最初の相互作用を形成し
得る。リンカー残基に対するレセプターの結合は、Fcのコンフォメーションを
、結合ループを露出する開放形態へとシフトさせ得る。
【0135】 (I.IgE−Fcコンフォメーションの可撓性についての構造的基礎) IgE−Fc構造は、Fc−レセプター結合およびヒト疾患における治療的介
入について暗示する、抗体エフェクタードメインの新規なコンフォメーションを
明らかにする。閉鎖IgE−Fcの構造は、抗体アイソタイプのエフェクタード
メインが、アイソタイプ特異的な生物学的機能に関連する構造的特徴を進化させ
てきたことを示唆する。IgE−Fcの可撓性に影響を及ぼし得る構造的特徴と
しては、ヒンジ残基の位置およびパッキング(packing)、ならびにCε
3−Cε4ドメイン界面での特異的相互作用(例えば、Cε3 ABヘリックス
の位置および接触)が挙げられる。コンフォメーションにおける変化に潜在的に
作用し得る他の因子(例えば、特定の結晶パッキング環境、複合糖質に代わる高
マンノースの存在、またはCε2ドメインの欠失)が、考えられてきた。本発明
はまた、非対称性ユニットにおいて両方とも閉鎖形態にある2つのIgE−Fc
分子を含む、IgE−Fcの第2結晶形態の溶液を含む。これらの5つのIgE
−Fc鎖はすべて、類似したコンフォメーションをとる。このことは、閉鎖コン
フォメーションが、特定の結晶パッキング力によって影響されないことを示す。
【0136】 保存された付着部位での異なる炭水化物構造が、観察されたIgE−Fcのコ
ンフォメーション変化の程度に影響を及ぼし得るのか否かは、依然として確証さ
れていない。IgGの生化学的研究は、上記で考察したような、Fcドメインの
全体的な三次元配置を維持するにおける、保存された炭水化物の制限された構造
的役割を示唆している。IgE−Fc(FcεRIα結合)の機能的研究は、保
存された炭水化物の重要な役割に対して反論しているが、異なるIgE−Fc糖
形態(glycoform)の構造的研究は、この問題を解決し得る。
【0137】 生化学的研究および生物物理的研究は、IgE−Fc Cε2ドメインが、本
明細書で解析されたCε3−Cε4構造とは別個の構造的ユニットを形成するこ
とを示している。Cε2−Cε3リンカーは、タンパク質分解性消化に対して感
受性であり(Perez−MontfortおよびMetzger,1982)
、そしてFcεRIを結合する際に非対称性のコンフォメーションをとる(Ga
rmanら,2000)。このことは、Cε2−Cε3リンカーが、接近可能で
ありかつ可撓性であることを示唆する。IgE−Fc中におけるCε2ドメイン
の存在または非存在は、FcεRI結合の結合定数または熱力学的パラメーター
(ΔG°、ΔH°、ΔS°、およびΔCp°)を有意には変更しない(Keow
nら,1998)。従って、レセプターへの結合様式は、インタクトなIgE−
FcおよびIgE−Fc Cε3−Cε4に類似している可能性がある。あわせ
ると、これらの結果は、Cε2ドメインが、Cε3ドメインの構造またはコンフ
ォメーションに対してほとんど影響を有さないことを示唆する。
【0138】 IgE Cε3−Cε4ドメイン界面の構造的特徴は、IgG Cγ2−Cγ
3ドメイン界面と比較して、IgE−Fcのコンフォメーションの可撓性を可能
にしているようである。第1ドメイン(Cε3またはCγ2)のABヘリックス
は、Fc構造における大半のドメイン間接触を媒介し、そして5つの異なる抗体
クラスのわたり、配列において保存されていない。ABヘリックスと、2つのF
c Igドメインとのパッキング接触は、抗体アイソタイプにわたって有意に相
違し得、潜在的にFcのコンフォメーション、可撓性および機能に影響を及ぼす
。異なる抗体クラスのFcドメインに関するコンフォメーションの可撓性範囲は
、アイソタイプ特異的なエフェクター機能の進化に関連付けられ得る。IgG構
造のより制限された可撓性は、FcγRおよび相補体(C1q)の相互作用のた
めの構造的要件における類似性を反映し得る。
【0139】 他の実験的証拠によって、IgEは溶液中で湾曲したコンフォメーションをと
り、そしてコンフォメーション変化が、FcεRIへの結合に際して生じ得るこ
とが示唆された。これらの実験の設計および解釈は、本発明の特定のIgE−F
cコンフォメーション変化を予測し得なかった。FcεRIへのIgE−Fcの
結合(Keownら,1998)は、比較的大きな熱容量変化(ΔCp°=−8
15cal/mol K)によって特徴付けられ、これは部分的に、IgE−F
cコンフォメーション変化によって引き起こされ得る。対照的に、IgG−Fc
のその相同な低親和性レセプター(FcγRIII)への結合は、より小さな熱
容量変化(ΔCp°=−360cal/mol K)を示す。蛍光エネルギー移
動実験によって、IgEのN末端とC末端との間の距離の平均は、わずか約70
Å(IgEが、代表的な抗体のYまたはT形態の平面から有意に湾曲する場合に
のみ可能である距離)であることが示された(Zhengら,1991)。中性
子散乱研究によって、インタクトなIgE−Fc(Cε2−Cε4)は、このド
メインの線状配置が可能とするよりも、有意により緻密な形状を有することが示
された(Beavilら,1995)。このことは、湾曲がIgE−Fc領域内
において生じることを示唆する。IgE−Fc結晶構造は、Cε2−Cε3リン
カー領域でのインタクトなIgEの湾曲の解釈を支持し、そして中性子散乱デー
タの分析のためのより良好なモデルを提供し得る。IgE可撓性の実験的試験が
、ここで、この構造に基づいて開発され得る。
【0140】 (J.IgE−Fcコンフォメーションの可撓性についての生物学的および治
療的意味) IgE−Fcにおけるコンフォメーションの可撓性は、IgEの生物学的機能
の固有の局面のために重要であり得る。IgE−Fc可撓性は、FcεRIとの
誘導されたフィット相互作用(induced−fit interactio
n)を可能にし得ることで高親和性結合に寄与し、かつ低親和性IgEレセプタ
ーであるFcεRIIとの相互作用のために重要であり得る(図12)。Fcε
RIIは、三量体C型レクチンであり、これは、その3つのレクチンドメインの
うちの2つを通してIgE−Fcと相互作用すると考えられる(Shiら,19
97)。IgG抗体は、対応するレクチン様レセプターを有さない。このことは
、IgE−Fcコンフォメーションの可撓性が、この固有の抗体−レセプター相
互作用のために重要であり得ることを示唆する。
【0141】 IgE−Fcについての閉鎖コンフォメーションの存在および開放形態が、高
親和性レセプターに結合するという証明(Garmanら,2000)は、Ig
E:FcεRI相互作用のインヒビターの設計のための新たなストラテジーを示
唆する(図12)。IgE−Fcを結合しかつFcεRIとの相互作用をブロッ
クするモノクローナル抗体は、アレルギーおよびぜん息の処置のためのこのアプ
ローチの治療的可能性を示した(Chang,2000;Jardieuおよび
Fick,1999)。直接的に競合部位または間接的にアロステリック部位の
いずれかでの分子の結合による、閉鎖IgE−Fcコンフォメーションの安定性
は、レセプター結合をブロックし得、IgE媒介性アレルギー疾患の処置のため
の新たなクラスの治療的インヒビターをもたらす。IgE Cε3−Cε4ドメ
イン界面は、IgG−Fcについて示されたような(DeLanoら,2000
)、レセプター結合のアロステリックインヒビターとして作用する可能性を有す
る、インビトロで選択される小リガンドの結合に対する標的を提供し得る(図1
3)。IgE−Fcの閉鎖コンフォメーションは、アトピー性疾患を軽減するた
めの新たな経路の探索および生物学的なエフェクター機構におけるFcドメイン
の可撓性の機能的役割の探索のための基礎を提供する。
【0142】 (K.方法) (1.ヒトIgE−Fcの発現および精製) 昆虫細胞からのIgE−Fcの発現、精製および特徴付けを、実施例1に記載
のように実施した。
【0143】 (2.結晶化および結晶の処理) 精製されたIgE−Fcを、1.32cm−1(mg/ml)−1のε280 nm を用いて、10mM Tris(pH8.0)中において10mg/mlに
濃縮した。結晶を、0.5μlタンパク質および0.5μl沈殿剤(25mM酢
酸ナトリウム、pH4.6、33%ポリエチレングリコール[PEG]4000
)を混合することによって、拡散蒸着法を使用して懸滴において成長させた。結
晶は、22℃で1〜3日間成長され、そして塩またはPEGの濃度および温度に
おける小さな変化に対して感受性であった。結晶を、25mM酢酸ナトリウム、
pH4.6、37%PEG 4000中に収集し、素早く(30秒未満で)凍結
保護物質溶液(収集溶液+15%(v/v)エチレングリコール)に移し、そし
て液体窒素中において急速冷却した。結晶は、空間群P422(a=b=10
5.6Å,c=47.1Å)に属し、そして1非対称性ユニットあたり1つのC
ε3−Cε4鎖を含む。結晶を、より高いpH収集溶液に連続的に移して、金属
結合およびレドックス化学を容易にした。広範囲の化合物(27)、濃度(0.
1〜20mM)およびpH範囲(4.6〜8.5)での重原子スクリーニング(
約100条件)は、同型誘導体も異常誘導体も生じなかった。しかし、水銀また
は白金で処理された結晶は、ネイティブな結晶よりも良好に回折された。これら
の観察に基づき、結晶を、冷却およびデータ収集の前に1mM塩化銅(II)で
処理した。ネイティブな結晶は、シンクロトロン源を使用して約2.8Å解像度
で回折され、そして強い異方性を示し、そして時折、開裂された格子を示した。
銅で処理された結晶は、少なくとも2.0Å解像度に回折され、ほとんどまたは
全く異方性を有さなかった。本発明者らおよび他者ら(Basuら,1993)
は、IgE−Fcの小さな画分が鎖間ジスルフィドを形成しないことを観察した
。銅IIは、ジスルフィドに対して残存する遊離システインを酸化した可能性が
ある。
【0144】 (3.データ収集、分子置換および精製) データを、Mar300画像化プレートシステムを使用するSSRLビームラ
イン7−1(wtcu1)、およびMarCCD検出器を使用するAdvanc
ed Photon Source DND−CAT 5IDビームライン(w
tcu3)において、銅処理結晶から−160℃で収集した。このデータを、H
KLプログラムパッケージソフト(OtwinowskiおよびMinor,1
997)を使用して処理および集積した。AMoRe(Collaborati
ve Computational Project,1994),CNS/X
PLOR(Bruingerら,1998)およびEPMR(Kissinge
rら,1999)を用いる最初の分子置換(MR)検索は、IgG−Fc構造に
基づく種々のIgEモデル(個々のIgドメインおよび7個のIgG構造を組み
込む複合モデルを含む)を使用して失敗した。次いで、Cε4と比較して屈曲し
、湾曲し、かつ回転した角度のCε3の組織的な調査を行った。ループおよび非
相同性側鎖を短縮化(truncate)することによってインタクトなIgG
構造(マウスIgG2a,PDBエントリー1IGT(Harrisら,199
7))から誘導されたCγ2−Cγ3ドメインからモデルを構築し、222残基
のIgE−Fcについての144残基モデルを得た。このモデルのCγ2−Cγ
3リンカー領域をその基点に配置し、Z軸の周りで屈曲を生じさせるようにCγ
2およびCγ3を配向付けた。Cγ3を固定したまま、X、YおよびZ周辺での
回転をCγ2ドメインに適用した(3°工程)。約12,000モデルをプログ
ラムlsqkab(Collaborative Computational
Project,1994)で自動的に生成し、そして結晶(crystal
)wtcu1からの15〜4Åのデータを用いる完全AMoRe(Collab
orative Computational Project,1994)検
索に使用した(表7)。このモデルは、出発IgG2a構造の周りで−30〜+
40度の角度範囲にわたった。単一分解(single solution)(
出発構造から約17°)が見出され、そして1.0°の回転増分を使用する局所
的研究によって改善された。より微細な研究により、38%の相関係数および4
8.9%のRfactorを有する分解を生じた。シミュレートされたアニーリ
ング複合体欠損電子密度マップ(simulated−annealing c
omposite−omit electron density map)へ
のモデル構築および精製のサイクルを、プログラムO(Jonesら,1991
)およびCNS(Brungerら,1998)を使用して、結晶wtcu3か
らのより高度な解像度のデータを用いて継続した。精製を、|F|>0および異
方性バルク溶媒補正を使用して、30〜2.3Åからのすべてのデータに対して
実施した。Rfreeを減少した精製工程のみを受容した。このモデルは、残基
336〜543を含み、そしてこの構築物において存在するN末端の10残基お
よびC末端の4残基を欠失する。レセプター結合ループ(Cε3 BC、DEお
よびFGループ)は、他の残基の大半よりも、弱い密度および高いB因子を有す
る。Cε4 ABループについての密度は特に貧弱であり、そしてこのループを
立体的にモデル化した。すべての残基が、N481を例外として、ラマチャンド
ランプロットの受容領域内に存在した。しかし、Gly、AlaまたはSer残
基を欠失する密着回転(tight turn)内のこの残基には、良好な密度
が存在する。いくつかの密度は、N394部位で観察された炭水化物についてで
あったが、炭水化物を構築する試みは、Rfreeも電子密度マップも改善せず
、そしてそのため、これをモデルには含めなかった。N371部位に付着した炭
水化物について、電子密度は存在しない。現在の精製統計を、表7にまとめる。
図を、プログラムMOLSCRIPT(Kraulis,1991),GRAS
P(Nichollsら,1991)およびRaster 3D(Merrit
tおよびBacon,1997)を使用して作成した。
【0145】 (L.参考文献)
【0146】
【表8】
【0147】
【0148】
【0149】 本発明の種々の実施形態を詳細に記載したが、これらの実施形態の改変および
適応が当業者に思い浮かぶことは明らかである。しかし、このような改変および
適応は、添付の特許請求の範囲に示されるように、本発明の範囲内であることが
明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、非結合IgE−Fc、レセプター結合IgE−FcおよびIgG−F
cの構造の側面図の比較を示す。N末端ドメインを、青色で示す。図1aは、I
gE−FcのCε3−Cε4ドメインの閉鎖形態を示す。図1bは、IgE−F
cのCε3−Cε4ドメインの開放形態を示す。図1cは、非結合IgG−Fc
を示す。
【図2】 図2は、非結合IgE−Fc、レセプター結合IgE−FcおよびIgG−F
cの構造(N末端ドメイン)の平面図の比較である。βストランドは、A〜Gで
表示され、そして、各Fcの構造についてAストランドの第1残基間に線が引か
れている。閉鎖IgEコンフォメーションにおいて、この距離は、13Åであり
、この開放形態において、この距離は、23Åであり、そして、IgG−Fcの
構造において、この距離は、22Åである。図2aは、IgE−FcのCε3−
Cε4ドメインの閉鎖形態を示す。図2bは、IgE−FcのCε3−Cε4ド
メインの開放形態を示す。図2cは、非結合IgG−Fcを示す。
【図3】 図3は、開放IgE−Fcの構造(濃青色)および閉鎖IgE−Fcの構造(
赤色)を有する、9個の結晶学的に独立したIgG−Fcの構造(灰色/青色)
の重ね合わせを示す。IgGおよびIgEのFcの構造を、C末端のドメイン(
Cγ2またはCε3)からのCα炭素を用いて重ね合わせた。IgG−Fcの構
造を、PDBファイル(1IGT、1FC1、1FC2、1FCC、1IGYお
よび1ADQ)から用いた。1MCOヒンジ欠損抗体の構造は、これがタンパク
質構造の全体にわたって異常なドメインの対形成を示すので、この分析には含め
なかった。星印を、IgE−FcのBCループ中の残基366の隣に配置する。
【図4a】 図4aは、結合IgE−Fcと遊離IgE−Fcとの間の構造の差異を特徴付
けるドメインの運動のDynDom分析を示す。Fc(c3/c4単量体)の2
分の1を、暗赤色の線で示される屈曲の軸を有する閉鎖コンフォメーションにお
いて示す。DynDomを用いて、その軸の位置を決定し、そしてその角度の変
化を算出した。ヒンジ残基(343〜345、351〜352、および435〜
436)を、淡紫色で縁取った。Fcの開放形態および閉鎖形態の両方において
相対的に固定されたままである残基は、Cε4ドメインの全体、ドメイン間リン
カー、およびCε3のABヘリックスを含む。Cε3ドメインにおける残基は、
セミリジッド(semi−rigid)ドメインとして移動する。
【図4b】 図4bは、Cε3/Cε4およびCγ2/Cγ3の境界面で残基の接写を示す
。IgG−Fc(赤色)(pdbファイルの1IGT由来)および閉鎖IgE−
Fc(青色)を、C末端ドメイン(Cγ3またはCε4)における残基を用いて
重ね合わせた。ここで留意すべき点は、ドメイン間の境界面から離れたIgE−
Fcヘリックスの置換(青色の円柱)およびIgG−FcヘリックスへのCε3
残基の密接なアプローチである。両ドメインとのABヘリックスの相互作用は、
異なる抗体のFcドメインの移動度の全範囲を決定し得る。
【図4c】 図4cは、遊離状態の結晶構造およびレセプター結合結晶構造におけるIgE
−Fcの両鎖について観察された残基置換のグラフを示す。一方の鎖を赤色の円
で示し、他方の鎖を青色のひし形で示す。各構造におけるアミノ酸残基間のCα
の距離を、2つのCε4ドメインのアライメントに基づいて2つの構造を重ね合
わせた後、算出した。結合しているレセプターに関連したループを、黄色で示し
て強調し、そしてこのループは、遊離形態において約6〜14Å移動する。「N
」は、Cε3のAストランド残基を示し、「C」は、カルボキシ末端であり、「
L」は、規則正しく並んでいないCε4のABループを同定し、そして「X」は
、結晶接触に起因する差異を同定する。
【図5a】 図5aは、閉鎖IgE−Fcの構造(左)および開放IgE−Fcの構造(右
)におけるCε3およびCε4ドメイン(平面図)の表面表示を示す。レセプタ
ー結合残基を、マゼンタ色で示し、そしてこれは、Cε3のBC、DEおよびF
Gループ由来である。
【図5b】 図5bは、図5aで記載されたCε3およびCε4ドメインの側面図を示す。
【図6】 図6は、レセプター結合および構造ベースのインヒビター設計におけるIgE
コンフォメーション変化についての潜在的役割を図示する。IgE分子の開放形
態は、この複合体の結晶構造によって示されるように、高親和性レセプター(F
cεRI)と相互作用し得る。IgEはまた、低親和性レセプターに結合し、こ
れは、C型レクチンドメインの三量体(FcεRII)である。FcεRIIは
、この図の上方左手の部分示されるように、IgE構造の閉鎖形態と潜在的に相
互作用し得る。レクチンドメインを青色で示し、一方、IgE−FcのCε3ド
メインを黄色で示す。3つのこれらのレクチンドメインのうちの2つだけが、I
gEと相互作用すると考えられる。IgE相互作用の3つの異なるクラスのイン
ヒビターをまた、この図の左手側に示す。1つのクラスは、開放IgEに結合し
、そしてFceRI結合部位に対して競合し得る(競合、下方左側)。別のクラ
スは、Ce3/Ce4ヒンジ付近のIgE領域に結合し、そして閉鎖形態のIg
Eを安定化し得る。従って、FceRIの結合を間接的に阻害する(アロステリ
ックインヒビター、中央左側)。第3のクラスのインヒビターは、IgEのFc
eRI結合領域と相互作用し得るが、閉鎖形態のIgEを安定化し、FceRI
結合の競合インヒビターおよびコンフォメーションインヒビターの両方として機
能する(コンフォメーションインヒビター、中央左側)。
【図7】 図7Aは、IgG抗体およびIgE抗体の一般構造を示す。両抗体は、2つの
アイソタイプ特異的重鎖および2つの軽鎖(H)を含む。Fabドメイン
は、重鎖および軽鎖の成分の両方を含むが、Fcドメイン(ピンク色の陰影部分
)は、独占的に軽鎖由来である。IgE−Fcは、IgG−Fcと比較して付加
ドメイン対(Cε2)を含む。IgEのCε3−Cε4ドメインは、IgGのC
γ2−Cγ3ドメインに対して相同である。図7Bは、ヒトIgE−FcのCε
3−Cε4の、結晶構造を解析した4つのIgG−Fcの配列との立体構造に基
づいた配列アライメントを示す。IgEの2次構造を、βストランドについての
矢印およびαヘリックスについてのリボンを用いて示す。色のついた帯は、ヒン
ジ残基(青色)、FcεRI結合ループ(ピンク色)および炭水化物接着部位(
緑色の点)を示す。この配列アライメント内で、保存された残基を淡青色の陰影
で示し、一方、IgGとIgEとの間の構造的差異(2次構造における挿入、欠
失、変化)を黄色で強調する。さらに、完全に保存されたCγ2のABヘリック
スのヒスチジン残基(Igg1におけるH310、IgG2aにおけるH329
)およびIgEにおける対応残基(スレオニン409)をそれぞれ、黄色および
ピンク色で示す。(配列の上の)IgEのナンバリングは、Dorringto
nおよびBennichに従う。ヒトIgG1のナンバリングを、配列の真下に
付す。マウスIG2a(1IGT)のPDBナンバリングを、下部に斜体で示す
(ここで留意すべき点は、このナンバリングシステムにおいて欠損が存在するこ
とである)。
【図8】 図8Aは、非結合IgE−Fc、レセプター結合IgE−FcおよびIgG−
Fcの構造の側面図の比較を示す。N末端のドメインを、青色で示す、図8Bは
、非結合IgE−Fc、レセプター結合IgE−FcおよびIgG−Fcの構造
(N末端のドメイン)の平面図の比較である。βストランドは、A〜Gで表示さ
れ、そして、各Fc構造について、Aストランドの第1残基間に線が引かれてい
る。閉鎖IgEコンフォメーションにおいて、この距離は13Åであり、開放形
態において、この距離は23Åであり、そしてIgG−Fc構造において、この
距離は22Åである。
【図9】 図9Aは、開放IgE−Fcの構造(濃青色)および閉鎖IgE−Fcの構造
(赤色)を有する、9個の結晶学的に独立したIgG−Fcの構造(灰色/青色
)の重ね合わせを示す。IgGおよびIgEのFcの構造を、C末端のドメイン
(Cγ2またはCε3)からのCα炭素を用いて重ね合わせた。IgG−Fcの
構造を、PDBファイル(1IGT、1FC1、1FC2、1FCC、1IGY
および1ADQ)から用いた。星印を、IgE−FcのBCループ中の残基36
6の隣に配置する。ここで留意すべき点は、ドメイン間の境界面から離れたIg
E−Fcヘリックスの置換、閉鎖コンフォメーションにおけるIgE−FcのE
Fヘリックスの移動、ならびにIgG残基挿入部位でのIgG−FcのABヘリ
ックスおよびIgG−FcのEFヘリックスの密接なアプローチである。図9B
は、IgG−FcのDynDom分析を示す。Fcの一方の鎖のステレオ図(閉
鎖コンフォメーション)を、矢印で示される回転軸とともに示す。ヒンジ残基(
343〜345、351〜352、および435〜436)をシアン色で縁取っ
ている。セミリジッドドメインとして移動するCε3ドメイン残基を、赤色で示
す。Fcの開放形態および閉鎖形態の両方で相対的に固定されたままの残基を青
色で示す。図9Cは、3つのIgG−Fc構造のDynDom分析を示す。回転
軸ならびにIgG2a構造のCαトレース上のマウスIgG1(1IGY)(シ
アン色)、マウスIgG2a(1IGT)(紫色)、およびヒトIgG1(1F
C1)(ピンク色)についてのヒンジ残基を有するステレオ図を示す。図9Dは
、IgE−Fcの閉鎖コンフォメーションと開放コンフォメーションとの間のC
αの座標における変化を示す。一方の鎖を赤い円で示し、もう片方の鎖を青色の
ひし形で示す。レセプター結合ループを、ピンク色で示して強調し;ヒンジ残基
をシアン色で示す。「N」は、Cε3のAストランド残基を示し、「C」は、カ
ルボキシ末端、「L」は、規則正しく並んでいないCε4のABループを同定し
、そして「X」は、結晶接触に起因する差異を同定する。
【図10】 図10Aは、ABヘリックス残基9IgEのCε3またはIgGのCγ2によ
ってなされた接触を図示する。ABヘリックスおよびEFヘリックスの残基を、
灰色のらせんホイールで示し、一方、より低ドメイン(Cε3またはC4)の残
基を、下に示す(青色の楕円中に青色で記されている)。上部ドメイン接触(C
ε3またはCγ2に対する)は、EFヘリックスにおける残基およびABヘリッ
クスに直ぐに隣接する残基を含む。より低ドメイン接触(Cε4またはCγ3に
対する)は、C,C’、FおよびGのβシートストランドならびにFGループか
らの残基を含む。IgE−Fcの開放形態においてのみ形成される接触を、青色
の破線で示し;閉鎖形態においてのみ形成される単一接触を、赤線で示す。Ig
Gにおける保存されたH329によってなされた接触を、青色の実線で示す。完
全に保存されたEFヘリックスのH329残基およびABヘリックスの直後の突
出部を形成する挿入残基I266を、黄色で示す。図10Bは、閉鎖IgE−F
cにおけるEFヘリックス残基T407のABヘリックスとの相互作用の表面表
示を示し、一方、図10Cは、開放IgE−Fcにおけるこれと同様の相互作用
を示す。図10Dは、IgG−Fcにおける対応残基(保存されたH329)の
、Cγ2のABヘリックスのC末端での突起物とのパッキング相互作用の表面表
示を示す。
【図11】 図11Aは、閉鎖IgE−Fcの構造(左)および開放IgE−Fcの構造(
右)におけるCε3およびCε4ドメインの分子の表面表示(側面図)を示す。
レセプター結合残基を、マゼンタ色で示し、そしてこれはCε3のBC、DEお
よびFGループ由来である。図11Bは、図11Aに記載されるCε3およびC
ε4ドメインの平面図を示す。
【図12】 図12は、Fcレセプター結合および構造ベースのインヒビター設計における
IgEの可撓性について可能性のある役割を示す。Cε3ドメインを、異なるコ
ンフォメーション状態(開放状態(ピンク色)および閉鎖状態(黄色))に対応
するよう色付けし;Cε4ドメインを灰色で示す。IgE分子の開放形態は、高
親和性レセプター(FcεRI)に結合し得る。低親和性レセプター(FCεR
II)は、未同定コンフォメーションのIgE−Fc(緑色)に結合する三量体
C型レクチンである。IgE:FcεRI相互作用のインヒビターの3つの潜在
的クラス(結合部位競合インヒビター、結合部位コンフォメーションインヒビタ
ー、およびアロステリックコンフォメーションインヒビター)を示す。
【図13】 図13は、IgE−Fcヒンジ付近の潜在的薬物結合部位を図示する。仮想薬
物(緑色)を、ヒンジキャビティの内側に示す。キャビティ周辺の残基としては
、以下が挙げられる:R342、P343、S344、P345、L348、W
410、I411、K435、T436、R440、P471、E472、D4
73、E529。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/15 C12N 1/19 4H045 1/19 1/21 1/21 7/00 5/10 C12P 21/02 C 7/00 G01N 33/15 Z C12P 21/02 33/53 D G01N 33/15 M 33/53 33/566 23/20 33/566 C12N 15/00 ZNAA // G01N 23/20 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW Fターム(参考) 2G001 AA01 BA18 CA01 LA01 RA02 4B024 AA01 AA11 BA61 CA02 DA02 EA04 HA01 4B064 AG26 CA19 CC24 DA01 DA13 4B065 AA90X AA90Y AB01 BA02 CA44 CA46 4C084 AA17 NA14 ZB132 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA40 DA75 EA20 EA50 FA74

Claims (69)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3次元モデルであって、該モデルは、以下: (a)Cε3ドメインおよびCε4ドメインを含むヒトIgE Fc領域(Fc
    −Cε3/Cε4)の3次元モデルであって、ここで該モデルが、実質的に表1
    、表4および表5からなる群より選択される表に特定化される原子座標を表す、
    3次元モデル;および (b)該(a)のモデルの改変体を含む3次元モデルであって、ここで、該改変
    が、FcεRIαタンパク質に結合する抗体Fc領域を表す、3次元モデル、 からなる群より選択される、3次元モデル。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、該モデルが、以
    下: 該モデルが包含する全原子の座標を列挙する工程、 物理学的3次元モデルを提供する工程、 該モデルをコンピュータスクリーン上で画像化する工程、 該モデルの画像を提供する工程、および 該モデルの画像に基づいて座標のセットを導く工程、 からなる群より選択される方法によって表される、モデル。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、前記モデルが、
    表2および表6からなる群より選択される表に列挙される前記タンパク質のアミ
    ノ酸残基の溶媒接触度を同定する、モデル。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、該モデルが、F
    cεRIαタンパク質の細胞外ドメインに対するヒトIgE抗体のFc−Cε3
    /Cε4領域の親和性と少なくとも等価である親和性で、FcεRIαタンパク
    質に結合する抗体を表し、該FcεRIαタンパク質は、ヒトFcεRIαタン
    パク質、イヌFcεRIαタンパク質、ネコFcεRIαタンパク質、ウマFc
    εRIαタンパク質、マウスFcεRIαタンパク質、およびラットFcεRI
    αタンパク質からなる群より選択される、モデル。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、該モデルが、抗
    体のFc−Cε3/Cε4領域を表現し、該抗体が、ヒトIgE抗体、イヌIg
    E抗体、ネコIgE抗体、ウマIgE抗体、マウスIgE抗体、およびラットI
    gE抗体からなる群より選択される、モデル。
  6. 【請求項6】 前記モデルが、ヒトIgE以外のIgE抗体のFc−Cε3
    /Cε4領域の3次元モデルを含む、請求項1に記載のモデル。
  7. 【請求項7】 前記モデルが、前記他のIgE抗体のFc−Cε3/Cε4
    領域のアミノ酸配列の全てまたは任意の部分を前記ヒトFc−Cε3/Cε4領
    域の3次元モデルに組込むことによって作製される、請求項6に記載のモデル。
  8. 【請求項8】 前記モデルが、FcεRIα結合ドメインを表す、請求項1
    に記載のモデル。
  9. 【請求項9】 請求項1に記載のモデルであって、該モデルが、以下: (a)ヒトIgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域を結晶化する工程; (b)該結晶化した領域からX線回折データを収集する工程;および (c)該領域の該データおよびアミノ酸配列から該モデルを決定する工程 を包含する方法によって作製される、モデル。
  10. 【請求項10】 前記Fc−Cε3/Cε4領域が、配列番号2のアミノ酸
    配列を有する、請求項9に記載のモデル。
  11. 【請求項11】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、該モデルが、
    表1、表4および表5からなる群より選択される表に特定化される原子によって
    実質的に表現される3次元モデルと重ね合わせた場合に、10Å未満のタンパク
    質骨格原子の平方自乗平均偏差を有する原子座標を含む3次元構造を有する、モ
    デル。
  12. 【請求項12】 前記改変が、配列番号2のアミノ酸配列を有するIgE
    Fc領域と少なくとも約30%のアミノ酸配列相同性を共有する抗体Fc領域を
    含む、請求項1に記載のモデル。
  13. 【請求項13】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、該モデルが、
    改善された機能を有するIgE Fc領域を表し、 該改善された機能が、以下: 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域の安定性と比較して、
    増大した安定性、 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域のFcεRIαに対す
    る親和性と比較して増大したFcεRIαタンパク質に対する親和性、 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域のヒトFcεRIαに
    対する親和性と比較して改変された基質親和性、および 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域の可溶性と比較して増
    大した可溶性、 からなる群より選択された改善された機能を有する、モデル。
  14. 【請求項14】 前記モデルが、FcεRIαタンパク質とIgE抗体との
    間の選択的結合のインヒビターを同定するために使用される、請求項1に記載の
    モデル。
  15. 【請求項15】 前記モデルが、FcεRIαタンパク質とIgE抗体のF
    c−Cε3/Cε4領域との間の結晶接触を同定する、請求項1に記載のモデル
  16. 【請求項16】 請求項1に記載のモデルであって、前記抗体のFc領域の
    Cε3ドメインおよびCε4ドメインが、表1、表4および表5からなる群より
    選択される表によって特定化される構造座標によって特定化されるような様式で
    配向される、モデル。
  17. 【請求項17】 請求項1に記載のモデルであって、ここで、以下: 前記抗体のFc領域の2つのCε3/Cε4ドメイン間にあるドメイン間の溝
    、 該抗体のFc領域のCε3ドメインとCε4ドメインとの間にあるヒンジ、
    およびFcεRIα結合に関連するループからなる群より選択される構造が、表
    1、表4、および表5からなる群より選択される表で特定化される構造座標によ
    り特定化される様式で配向される、モデル。
  18. 【請求項18】 請求項17に記載のモデルであって、前記FcεRI結合
    ループが、Cε2とCε3との間のリンカー、Cε3のBCループ、Cε3のD
    EループおよびCε3のFGループからなる群より選択される、モデル。
  19. 【請求項19】 前記2つのCε3ドメイン間の距離が、約10Å〜約25
    Åの範囲にある、請求項1に記載のモデル。
  20. 【請求項20】 前記2つのCε3ドメイン間の距離が、約13Åである、
    請求項1に記載のモデル。
  21. 【請求項21】 ヒトIgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域の3次元モデ
    ルの作製方法であって、該方法は、該領域のアミノ酸を表1、表4および表5か
    らなる群より選択される表に特定化される原子座標で実質的に表す工程を包含す
    る、方法。
  22. 【請求項22】 請求項21に記載の方法であって、該モデルが、以下: 該モデルが包含する全原子の座標を列挙する工程、 物理的3次元モデルを提供する工程、 該モデルをコンピュータスクリーン上で画像化する工程、 該モデルの画像を提供する工程、および 該モデルの画像に基づいて座標のセットを導く工程、 からなる群より選択される方法によって表される、方法。
  23. 【請求項23】 ヒトFcεRIα結合ドメイン以外のFcεRIα結合ド
    メインの3次元モデルの作製方法であって、該ヒトFcεRIα結合ドメインが
    、 表1、表4および表5からなる群より選択される表に特定化される原子座標を実
    質的に表す3次元モデルによって表され、該方法がホモロジーモデリング工程を
    包含する、方法。
  24. 【請求項24】 請求項23に記載の方法であって、該方法が、前記他のF
    cεRIα結合ドメインのアミノ酸の少なくとも一部を、表1、表4および表5
    からなる群より選択される表に特定化される原子座標を実質的に表す前記3次元
    モデルに組み込む工程であって、該他のFcεRIα結合ドメインのモデルを作
    製する工程を包含する、方法。
  25. 【請求項25】 請求項23に記載の方法であって、該方法が、2つのCε
    3ドメイン間の距離が約10Å〜約25Åの範囲にあるように前記免疫グロブリ
    ンドメインを配向する工程を包含する、方法。
  26. 【請求項26】 ヒトIgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域の単離された
    結晶。
  27. 【請求項27】 前記領域が配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項2
    6に記載の結晶。
  28. 【請求項28】 前記結晶が、空間群 spacegroupP422に
    属する、請求項26に記載の結晶。
  29. 【請求項29】 請求項26に記載の結晶であって、該結晶が、105.6
    Å×105.6Å×47.1Å、α=β=γ=90°の寸法のセルを有し、そし
    て該結晶の非対称単位当たり1つのCε3/Cε4鎖を含む、結晶。
  30. 【請求項30】 前記Fc−Cε3/Cε4領域が昆虫細胞において生成さ
    れる、請求項26に記載の結晶。
  31. 【請求項31】 前記結晶が約2.3Åの解像度でX線を回折する、請求項
    26に記載の結晶。
  32. 【請求項32】 ヒトIgE抗体のFc−Cε3/Cε4領域の単離された
    結晶を生成するための方法であって、該方法は、蒸着を包含する、方法。
  33. 【請求項33】 前記Fc−Cε3/Cε4領域が配列番号2のアミノ酸配
    列を有する、請求項32に記載の方法。
  34. 【請求項34】 請求項32に記載の方法であって、前記結晶が、105.
    6Å×105.6Å×47.1Å、α=β=γ=90°の寸法のセルを有するs
    pacegroupP422からなる群より選択される空間群に属する、方法
  35. 【請求項35】 前記Fc−Cε3/Cε4領域が昆虫細胞で生成される、
    請求項32に記載の方法。
  36. 【請求項36】 前記結晶が約2.3Åの解像度でX線を回折する、請求項
    32に記載の方法。
  37. 【請求項37】 単離されたFc−Cε3/Cε4タンパク質であって、 該タンパク質は、以下: (a)配列番号2からなるタンパク質;および (b)(a)のタンパク質と構造的に相同な単離されたタンパク質からなる群
    より選択される、ここで、該(b)のタンパク質がFcεRIαタンパク質に結
    合する、Fc−Cε3/Cε4タンパク質。
  38. 【請求項38】 前記タンパク質が、昆虫細胞で生成される、請求項37の
    タンパク質。
  39. 【請求項39】 請求項37のタンパク質であって、該Fc−Cε3/Cε
    4タンパク質が、ヒトFc−Cε3/Cε4タンパク質、イヌFc−Cε3/C
    ε4タンパク質、ネコFc−Cε3/Cε4タンパク質、ウマFc−Cε3/C
    ε4タンパク質、マウスFc−Cε3/Cε4タンパク質およびラットFc−C
    ε3/Cε4タンパク質からなる群より選択される、タンパク質。
  40. 【請求項40】 請求項37に記載のタンパク質をコードしている核酸配列
    を含む、核酸分子。
  41. 【請求項41】 請求項40に記載の核酸配列を含む、組換え分子。
  42. 【請求項42】 請求項40に記載の核酸配列を含む、組換えウイルス。
  43. 【請求項43】 請求項40に記載の核酸配列を含む、組換え細胞。
  44. 【請求項44】 請求項43に記載の組換え細胞を培養する工程を包含する
    、タンパク質を産生するための方法。
  45. 【請求項45】 IgE抗体とFcεRIαタンパク質との間の結合を阻害
    する化合物を同定するための方法であって、該方法は、ヒトIgEのFc−Cε
    3/Cε4領域の3次元モデルを使用して、該化合物を同定する工程を包含し、
    ここで、該モデルが、表1、表4および表5からなる群より選択される表により
    特定化される原子座標を実質的に表す、方法。
  46. 【請求項46】 請求項45に記載の方法であって、ここで、前記化合物が
    、 前記FcεRIα結合ドメイン、前記抗体Fc領域の2つのCε3/Cε4ドメ
    インの間にあるドメイン間の溝、該抗体のFc領域のCε3ドメインとCε4ド
    メインとの間にあるヒンジ、およびCε3ドメインまたはCε4ドメインの領域
    からなる群より選択される該モデルの領域と相互作用し、ここで、該Cε3ドメ
    インまたはCε4ドメインの領域の相対的な位置が、閉鎖Fc−Cε3/Cε4
    コンフォメーションとレセプター結合Fc−Cε3/Cε4コンフォメーション
    との間で1Åを超えて変化する、方法。
  47. 【請求項47】 前記Fc−Cε3/Cε4領域の2つのCε3ドメイン間
    の距離が約10Å〜約25Åの範囲にある、請求項46に記載の方法。
  48. 【請求項48】 前記Fc−Cε3/Cε4領域の2つのCε3ドメイン間
    の距離が約13Åである、請求項46に記載の方法。
  49. 【請求項49】 請求項45に記載の方法であって、ここで、前記化合物が
    、Cε2とCε3との間のリンカー、Cε3のBCループ、Cε3のDEループ
    、およびCε3のFGループ、ドメイン間の溝を規定するループまたはストラン
    ド、Cε3のABヘリックスおよび、該Cε3のABヘリックスの上部に存在す
    る領域からなる群より選択される前記モデルの領域と相互作用する、方法。
  50. 【請求項50】 請求項45の方法であって、ここで、 前記化合物が、以下: (a)第4位,7位、8位、9位、10位、11位、17位、18位、19位
    、20位、21位、22位、23位、24位、29位、30位、31位、37位
    、38位、39位、68位、69位、70位、99位、100位、101位、1
    02位、109位、110位および111位からなる群より選択される配列番号
    2における位置を有する残基;および (b)該(a)の残基のうちいずれかの約10Å内にある、表面の残基、 からなる群より選択されるアミノ酸と相互作用する、方法。
  51. 【請求項51】 請求項45の方法であって、ここで、前記化合物が、以下
    : (a)第4位,7位、8位、9位、10位、11位、37位、38位、39位
    、68位、69位、70位、99位、100位、101位および102位からな
    る群より選択される配列番号2における位置を有する残基; (b)Cε3ドメインまたはCε4ドメインの領域中の残基であって、ここで
    、該Cε3ドメインまたはCε4ドメインの領域の相対的な位置が、閉鎖Fc−
    Cε3/Cε4コンフォメーションとレセプター結合Fc−Cε3/Cε4コン
    フォメーションとの間で1Åを超えて変化する、残基;および (c)該(a)または(b)の残基のうちのいずれかの約10Å内に存在する
    、表面残基、 からなる群より選択されるアミノ酸と相互作用する、方法。
  52. 【請求項52】 前記化合物が閉鎖コンフォメーションからレセプター結合
    コンフォメーションへ変換するIgE抗体の能力を阻害する、請求項45に記載
    の方法。
  53. 【請求項53】 前記閉鎖コンフォメーションが、Fc−Cε3/Cε4領
    域を含み、該Cε3ドメイン間の距離が約10Å〜約25Åの範囲にある、請求
    項52に記載の方法。
  54. 【請求項54】 前記レセプター結合コンフォメーションが、Fc−Cε3
    /Cε4領域を含み、該Cε3ドメイン間の距離が約20Å〜約30Åである、
    請求項52に記載の方法。
  55. 【請求項55】 請求項45に記載の方法であって、該方法が、以下: (a)前記モデル、または前記Fc−Cε3/Cε4領域のFcεRIα結合
    ドメインのモデルを、コンピュータスクリーン上に生成する工程; (b)試験される化合物の空間的構造を生成する工程;および (c)該化合物が該FcεRIα結合ドメインと相互作用する否かを決定する
    試験を行う工程であって、このような相互作用によって該化合物が前記FcεR
    Iαに対するIgE抗体の結合を阻害し得ることを示す、工程、 を包含する、方法。
  56. 【請求項56】 請求項45の方法であって、ここで、前記方法が、該化合
    物を同定するために3次元モデルを使用する工程をさらに包含し、該3次元モデ
    ルが、ヒト高親和性FcεRIαタンパク質の細胞外ドメインの3次元モデル、
    およびヒト高親和性FcεRIαタンパク質の細胞外ドメインとヒトIgE抗体
    のFc−Cε3/Cε4領域との複合体の3次元モデルからなる群より選択され
    る、方法。
  57. 【請求項57】 前記阻害性化合物が、前記モデルで予測された空間の少な
    くとも1つの領域に対応する構造を有する、請求項45に記載の方法。
  58. 【請求項58】 前記阻害性化合物が、四環式炭化水素ペルヒドロシクロペ
    ンタノフェナントレンである、請求項45に記載の方法。
  59. 【請求項59】 請求項45に記載の方法であって、ここで、該阻害性化合
    物が、以下の構造式: 【化1】 を含む、方法。
  60. 【請求項60】 請求項45に記載の方法であって、ここで、3−[3−(
    コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパン−スルホナート(CH
    APS)をリードとして使用して、該阻害性化合物を同定する、方法。
  61. 【請求項61】 請求項45に記載の方法であって、ここで、 前記阻害性化合物が、2つのCε3/Cε4ドメインと相互作用する二価化合
    物、およびドメイン間の溝に結合するに十分に大きい化合物からなる群より選択
    される、方法。
  62. 【請求項62】 請求項45に記載の方法に従って同定された阻害性化合物
  63. 【請求項63】 請求項62に記載の阻害性化合物を含む治療組成物。
  64. 【請求項64】 アレルギーから動物を防御する方法であって、該方法は、
    請求項62の阻害性化合物を該動物に投与する工程を包含する、方法。
  65. 【請求項65】 FcεRIαタンパク質のIgE結合ドメインに結合する
    ムテインであって、ここで、該ムテインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むF
    c−Cε3/Cε4タンパタンパク質に比較して改善された機能を有し、ここで
    、該改善された機能が、以下: 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域の安定性に比較して増
    大した安定性、 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域のFcεRIαの親和
    性と比較してFcεRIαタンパク質に対する増大した親和性、 配列番号2のアミノ酸配列を含むIgE領域のヒトFcεRIαに対する親和
    性と比較して改変された基質親和性、および 配列番号2のアミノ酸配列を含むヒトIgE Fc領域の可溶性に比較して増
    大した可溶性、 からなる群より選択され、ここで、 該ムテインが、以下: (a)表1、表4、および表5からなる群より選択された表に特定化される原
    子座標を実質的に表す3次元モデルを分析して、該モデルにより表される該Fc
    −Cε3/Cε4タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸を同定する工程であっ
    て、該Fc−Cε3/Cε4タンパク質は、特定のアミノ酸により置換された場
    合に該Fc−Cε3/Cε4タンパク質の改善された機能をもたらす、工程;お
    よび (b)該同定されたアミノ酸を置換して、該改善された機能を有するムテイン
    を生成する工程、 を包含する方法によって生成される、ムテイン。
  66. 【請求項66】 Fc−Cε3/Cε4領域を含む抗体の機能を改善するた
    めの方法であって、該改善された機能が、増大した安定性、増大したFcεRI
    αタンパク質のIgE結合ドメインに対する親和性、改変された基質特異性、お
    よび増大した可溶性、からなる群より選択され、 該方法が、以下: (a)表1、表4、および表5からなる群より選択された表に特定化される原
    子座標を実質的に表現する3次元モデルを分析して、少なくとも1つのFc−C
    ε3/Cε4領域のアミノ酸を同定する工程であって、該Fc−Cε3/Cε4
    領域は、特定のアミノ酸により置換された場合に該Fc−Cε3/Cε4領域の
    改善された機能をもたらすモデルにより表現される、工程;および (b)該同定されたアミノ酸を置換して、該改善された機能の少なくとも1つ
    を有するムテインを生成する工程、 を包含する、方法。
  67. 【請求項67】 組成物であって、該組成物が、FcεRIα結合ドメイン
    、抗体Fc領域の2つのCε3/Cε4ドメインの間にあるドメイン間の溝、抗
    体のFc領域のCε3ドメインとCε4ドメインとの間にあるヒンジ、およびC
    ε3ドメインまたはCε4ドメインの領域からなる群より選択され、ここで、該
    Cε3ドメインまたはCε4ドメインの領域の相対的な位置が、閉鎖Fc−Cε
    3/Cε4コンフォメーションとレセプター結合Fc−Cε3/Cε4コンフォ
    メーションとの間で1Åを超えて変化する、組成物。
  68. 【請求項68】 請求項67に記載の組成物であって、ここで、 該組成物は、以下: Cε2とCε3との間のリンカー、Cε3のBCループ、Cε3のDEループ、
    およびCε3のFGループ、ドメイン間の溝を規定するループまたはストランド
    、Cε3のABヘリックスおよび、該Cε3のABヘリックスの上部に存在する
    領域からなる群より選択される、組成物。
  69. 【請求項69】 請求項67のタンパク質をコードする単離された核酸分子
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