JP2003518915A - アデノウイルスベクターを構築する増強された系 - Google Patents

アデノウイルスベクターを構築する増強された系

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Abstract

(57)【要約】 本発明において、少なくとも一つのヘッド-ヘッドITR接合部、異なるプラスミドにおけるリコンビナーゼ認識部位における部位特異的組み換えの結果、部位特異的リコンビナーゼを発現するように操作されたコトランスフェクトさせた宿主細胞において、高い効率で感染性ウイルスDNAの産生が起こるように存在するリコンビナーゼ認識部位、またはその両者のいずれかを含むウイルス、プラスミドまたはその両者を構築する。Cre酵素、FLP酵素、またはその両者の高い効率と特異性のために、同時に、それに付随してそれを除去するという問題が起こる野生型アデノウイルスを生成することなく、適切に操作されたプラスミドを容易に組み換えて、コトランスフェクトした293細胞において高い効率で感染ウイルスを生成することができる。CreまたはFLPの他のリコンビナーゼを用いること、およびloxまたはfrt部位以外のリコンビナーゼ認識部位を用いること、そして293細胞以外の細胞を用いることも開示されて、可能であると共に、部位特異的ベクター系を組み入れるキット、ワクチンのような組成物を用いるための、または遺伝子治療応用において用いられる組成物および方法が開示され、可能である。部位特異的組み換えと相同的組換えの両者の効率の増加は、少なくとも一つのヘッド-ヘッドITR接合部を含めることによって提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】関連出願の相互参照 本出願は、1999年3月5日に出願された同時係属特許出願番号第09/263,650号
および1999年10月8日に出願された同時係属特許出願番号第09/415,899号の一部
継続出願である。
【0002】発明の分野 本発明は、異物DNAを含んで発現するアデノウイルスベクターの効率的で信頼
できる構築方法、および哺乳類細胞への遺伝子移入、ワクチン、および遺伝子治
療にとって有用な方法に関する。本明細書に記述したベクター系は、同時継続出
願番号第08/250,885号に記載された2つのプラスミドpBHG系の改善および改変で
あり、その外国での同等物が、参照として本明細書に組み入れられる国際公開公
報第95/00655号として公表されており、それによって複製欠損ゲノムアデノウイ
ルスベクターおよびシャトルプラスミドが、それらがコトランスフェクトされる
細胞において相同的組み換えによって組み換えられる。本発明は、さらに、第09
/263,650号の系に対しても改善を示し、シャトルプラスミドにヘッド-ヘッドITR
接合部を挿入することによって、相同的または部位特異的組み換えメカニズムに
よらず、増強されたベクターレスキュー効率が得られる。
【0003】発明の背景 国際公開公報第95/00655号に記載のように、アデノウイルス(Ads)は、哺乳
類細胞発現ベクターとして用いることができ、生存した組み換えウイルスワクチ
ンとして、遺伝子治療、研究または哺乳類細胞におけるタンパク質産生のための
形質導入ベクターとして優れた可能性を有する。
【0004】 ヒトAdゲノムにおいて、初期領域1(E1)、E3、およびE4の上流の部位は、ア
デノウイルス組換え体を生成するために外因性DNA配列を導入するための部位と
して用いられている。E1またはE3における欠失を補足しなければ、最大で約2 k
bをAdゲノムに挿入して生存したウイルス子孫を生じることができる。E1領域は
、補足性の293細胞、またはE1を補足することが知られている他の細胞ではウイ
ルス複製にとって必要ではなく、5.0〜5.2 kbの範囲を有する条件的ヘルパー非
依存的ベクターを生成するために、この領域において約3.2 kbまでを欠失するこ
とができる。培養細胞におけるウイルス複製にとって必須ではないE3領域では、
様々な大きさの欠失を利用して、4.5〜4.7 kbまでの範囲の非条件的ヘルパー非
依存的ベクターが生成される。E1とE3における欠失の組合せによって、約8 kb
までの外因性DNAの挿入が可能となるアデノウイルスベクターの構築と増殖が可
能となる。
【0005】 アデノウイルスベクターの構築は多くの方法において行うことができる。1つ
のアプローチは、許容細胞、通常293細胞であるがこれに限定しない細胞に、Ad
ゲノムの左端の一部を含み、最も一般的に外因性DNAによって置換されるE1配列
を有するシャトルプラスミドと、適した制限酵素によって左端近傍で切断される
ビリオンから単離されたDNAとをコトランスフェクトすることである。シャトル
プラスミドの重なり合うウイルスDNA配列とビリオンDNAとの相同的組換えの結果
、外因性DNAを含む組換えウイルスが産生される。この方法の短所は精製ウイル
スDNAを調製する必要がある点である。さらに、そのような方法は典型的に、ウ
イルスDNAの100%が切断されない場合、または制限切断によって生じた2つのウ
イルスDNA断片が再結合した場合のように、得られたベクター調製物への親ウイ
ルスの混入が起こる。
【0006】 もう一つの方法が最近記載されており(ハーディ、キタムラ、ハリス・スタン
シル、ダイ、フィップス(Hardy S., Kitamura M., Harris-Stansil T., Dai Y.
, Phipps ML.)、「Cre-lox組み換えによるアデノウイルスベクターの構築(Con
struction of adenovirus vectors through Cre-lox recombination)」、J. Vi
rol. 1997、3月;71(3):1842〜1849;同様に、ウイルスとヘルパー依存的ベク
ターの部位特異的組み換えを用いることに関連して、国際公開公報第97/32481号
も参照のこと)、この中には、293Cre細胞(Creリコンビナーゼを発現するよう
に操作されたCre細胞)の、フロックスされた(floxed)パッケージングシグナ
ル(Ψ)を含むアデノウイルスによる感染、およびITR、パッケージングシグナ
ルおよび発現カセットの後にlox部位を含むシャトルプラスミドによるトランス
フェクション、または精製脱タンパク質アデノウイルスDNAとシャトルプラスミ
ドによる293Cre細胞のコトランスフェクションを含む。その方法に従って、ウイ
ルスからパッケージングシグナルをCre媒介切除した後に、シャトルプラスミド
におけるlox部位との部位特異的組み換えを行えば、発現カセットを含む組換え
ベクターが生成される。しかし、Creの作用は100%効率的ではなく、得られたウ
イルス調製物はなおも親ウイルスが混入したままであり、混入している親ウイル
スを消失させるために293Cre細胞において継代しなければならない。この方法の
さらなる短所は、開始材料の一つとして感染性ウイルス、またはウイルスから抽
出したDNAを用いる必要がある点であり、このように、細菌プラスミドDNAのみを
含むキットと比較して営利目的での販売にとってあまり魅力的でない。さらに、
親ウイルスは、293細胞に存在するAdE1配列と組み換えを起こす可能性があり、
その結果、野生型パッケージングシグナルと野生型E1領域とを含むウイルスが生
成される。そのような組換え体ウイルスは、当初のベクターを過剰増殖させる性
質を有し、その結果、その後のベクター調製物への非弱毒E1発現Adsの混入が起
こる。
【0007】 アデノウイルスベクターを構築するために最も頻繁に用いられ、最も一般的な
方法は、「2プラスミド法」に基づいており(ベット、ハッダラ、プレベック、
およびグラハム(Bett, A.J., Haddara, W., Prevec, L., and Graham, F.L.)
、「初期領域1および3における挿入または欠失によるアデノウイルスベクター
を構築する効率的で柔軟な系(An efficient and flexible system for constru
ction of adenovirus vectors with insertions or deletions in early region
s 1 and 3)」、Proc. Natl. Acad. Sci. US 91:8802〜8806、1994を参照のこ
と)、それによって適した宿主細胞(典型的に293細胞)を、個々に感染性ウイ
ルスを産生することができないが、相同的組み換えによってトランスフェクトし
た細胞内で組み換えた場合、複製するウイルスを産生することができる2つのプ
ラスミドをコトランスフェクトさせる。このタイプの最も広く用いられるプラス
ミドは、参照として本明細書に組み入れられる、特許出願番号第08/250,885号お
よびPCR公開番号国際公開公報第95/00655号に記載されている。この系は、ごく
容易に調製されるプラスミドDNAを必要とし、最終的なベクター単離体を混入さ
せうる親ウイルスのバックグラウンドがないことから、成分としてウイルスまた
はウイルスDNAを用いる他の方法と比較して長所を有する。さらに、プラスミド
は、当業者によって生成することが容易で安価であるのみならず、保存および輸
送が容易であり、それらは営利目的での販売のために都合がよい(すなわち、特
にエタノール沈殿、または凍結乾燥させた場合、これらのベクターは販売のため
にコールドチェーンを必要としない)。しかし、この現在利用可能な系は、有用
性が証明されて広く用いられているが、相同的組み換えによるウイルス産生の効
率は低く、多様となりえて、当技術分野に熟練していなければ、系を必ずしも容
易に用いることができない。
【0008】 当技術分野において示されているように(アントン、およびグラハム(Anton,
M., and Graham, F.L.)、「Creリコンビナーゼタンパク質を発現するアデノウ
イルスベクターによって媒介される部位特異的組み換え:遺伝子発現を制御する
ための分子スイッチ(Site-specific recombination mediated by an adenoviru
s vector expressing the Cre recombinase protein:a molecular switch for
control of gene expression)」、J. Virol. 69:4600〜4606、1995)、そして
出願番号第08/486,549号に記載されているように、Ad感染細胞にCreリコンビナ
ーゼを供給すれば、Cre媒介部位特異的組み換えのための標的部位(lox P)を含
むウイルスDNA配列の切除または再配列を触媒することができる。
【0009】 そのような技術を、本発明においてシャトルプラスミドを含むヘッド-ヘッドI
TRと組みあわせると、相同的組み換えまたは部位特異的組み換え事象にかかわら
ず、ベクター産生の効率を増強することによってアデノウイルスベクター産生の
技術分野において長く必要とされてきた進歩を提供する。さらに、本特許は、fr
tとして知られる核酸部位を認識するFLPリコンビナーゼ(オゴーマン、フォック
ス、およびウォール(O'Gorman S., Fox D.T., and Wahl G.M.)、「哺乳類細胞
におけるリコンビナーゼ媒介遺伝子活性化と部位特異的組み込み(Recombinase-
mediated gene activation and site specific integration in mammalian cell
.)」、Science 251:1351〜1355、1991;セネコフ、ロスマイスル&コックス(
Senecoff J.F., Rossmeissl P.J., and Cox M.M.)、「酵母2μプラスミドのFL
PリコンビナーゼによるDNA認識(DNA recognition by the FLP recombinase of
the yeast 2μ plasmid.)」、J. Mol. Biol. 201:405〜421、1988)を、Creリ
コンビナーゼと類似のように用いてもよく、宿主細胞に「2プラスミド法」によ
ってコトランスフェクトした2つのプラスミドのあいだでの組み換えによってAd
ベクターの構築は類似の効率となる。本開示に基づいて、当業者は、Creに対し
て類似の作用を示す他の部位特異的リコンビナーゼと同様に、本方法がCreリコ
ンビナーゼとその認識部位、およびFLPとその認識部位を用いることに限定され
ないこと、そしてFLPは、CreもしくはFLPリコンビナーゼに置換できること、ま
たはそのような酵素と組みあわせて用いることができることを認識するであろう
。同様に、本明細書に開示した実施例は、外因性DNAを「第一世代Ad」ベクター
のE1領域にレスキューする方法を記述するが、部位特異的組換えの標的部位は、
ウイルスゲノムの他の領域に容易に挿入でき、そして部位特異的組換えはその後
、E1以外のウイルスゲノムの他の領域の操作に利用できるために、これらの実施
例は、制限的に解釈されないと認識されるであろう。
【0010】発明の概要 本発明において、ヘッド-ヘッドITR接合部を含む、ウイルス、プラスミドまた
はその両者を構築し、そして選択的に上記のウイルスDNAはまた、異なるプラス
ミドにおけるlox P部位間の部位特異的組み換えによって、Creリコンビナーゼを
発現するように操作されたコトランスフェクトした宿主細胞において、高い効率
で感染性ウイルスDNAが産生されるように存在するlox P部位を含んでもよい。そ
のような細胞(293Cre細胞)は、この目的のために参照として本明細書に組み入
れられる、パークス、チェン、アントン、サンカー、ルドニッキ、およびグラハ
ム(Parks R.J., Chen L., Anton M., Sankar U., Rudnicki M.A., and Graham
F.L.、「新規ヘルパー依存的アデノウイルスベクター系:ウイルスパッケージン
グシグナルのCre媒介切除によるヘルパーウイルスの除去(A New helper-depend
ent adenovirus vector system:removal of helper virus by Cre-mediated ex
cision of the packaging signal)」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:13565
〜13570、1996)、および米国特許出願番号第08/473,168号およびPCT国際公開公
報第96/40955号に記載される、チェン、アントン、およびグラハム(Chen L., A
nton M., and Graham F.L.、「部位特異的リコンビナーゼCreを発現するヒト293
細胞株の産生と特徴付け(Production and characterization of human 293 cel
l line expressing the site-specific recombinase Cre)」、Somat. Cell and
Molec. Genet. 22:477〜488、1996)によって記述されている。Cre酵素の効率
と特異性は高いことから、適切に操作したプラスミドを容易に組み換えて、それ
を除去する問題を伴う親アデノウイルスの混入を同時に引き起こすことなく、コ
トランスフェクトした293細胞において、高い効率で感染性ウイルスを産生する
ことが可能である。
【0011】 本発明によって得られる組み換え効率の増強により、それによってシャトルプ
ラスミドにヘッド-ヘッドITR接合部が含まれ、部位特異的組換えが存在しない場
合でも、組み換えウイルスベクターの産生効率が増強する。
【0012】 本発明の一つの態様において、ヘッド-ヘッドITR接合がシャトルプラスミドに
含まれ、それによって、相同的組み換えまたは部位特異的組み換えによらず、組
み換えウイルスベクターの産生効率の増強が得られる。
【0013】 本発明のさらなる態様において、細胞酵素を通じての相同的組換えが、Cre、F
LP等のようなリコンビナーゼによる部位特異的組み換えによって置換され、個々
に非感染性である2つのDNAを結合させて感染性DNA分子が形成されるが、上記に
おいて部位特異的組換えの効率は、2プラスミド系のシャトルプラスミドにヘッ
ド-ヘッドITR接合部を含めることによって増強される。本明細書に開示の技術の
一つの応用は、E1に外因性DNAの挿入を有する「第一世代」ベクターの単離であ
る。そのような応用は、pBHGloxΔE1,3(図1、その改変板および同等物を参照
)ならびにヘッド-ヘッドITR接合部、パッケージングシグナル、発現カセット、
およびloxまたはその他のリコンビナーゼ認識部位を含む様々なシャトルプラス
ミドのような一連のプラスミドを利用する。もう一つの応用は、ある意味におい
て鏡像である。pFG173loxのようなプラスミドを用いて、配列をウイルスDNAの右
端、E3部位、またはE3の右側の部位にレスキューする。この後者の技術の最も重
要な適用は、E3のすぐ右側に位置するfibre遺伝子に変異をレスキューすること
であるかも知れない(図9)(fibreは、細胞受容体に結合するための主なリガ
ンドであるために重要である)が、同様に、E4遺伝子(fibreと右ITRのあいだに
存在する)に変異、欠失、挿入およびその他の改変をレスキューすることが可能
であり、またはこの方法を用いて外因性DNAのインサートをE3(図11においてpFG
173loxに関して記載したようなプラスミドのコトランスフェクション)にレスキ
ューする。プラスミドpFG173loxは、fibreを欠失しているが、E4配列も同様に、
fibreと共に、またはfibreの代わりに欠失させうることに注意すること。また、
lox部位をAdゲノムの他の位置に挿入してfibreまたはE4の遺伝子の他に他のウイ
ルス遺伝子において操作された変異のレスキューを可能にする、または他の部位
へのDNAインサートのレスキューも可能であることにも注目すること。
【0014】 本発明のさらなる態様において、DNA-TP複合体を利用して、Cre-lox組換えの
ような部位特異的組み換えによらず、ヘッド-ヘッドITR媒介組み換えの高い効率
をDNA-TPの高い感染性と組みあわせる。ヘッド-ヘッドITR媒介相同的組み換え、
またはCre媒介組み換えによるヘッド-ヘッドITR媒介組み換え、による感染性ウ
イルスのレスキューは、相同的組み換え単独と比較して驚くほど効率が高く、ほ
とんどの応用にとってウイルスベクターを産生するため、およびウイルスゲノム
に変異を導入するために適切と思われる以上であり、さらに高い効率が望ましい
または必要である特定の応用があるかも知れない。当業者は、ビリオンDNAを抽
出して二本鎖Ad DNA分子のそれぞれの鎖の5'末端に通常結合する末端タンパク質
(TP)を無傷のままに残す方法によって精製すると、アデノウイルスDNAの感染
度は100倍まで高くなることを承知している(シャープ、ムーア、ハバティ(Sha
rp P.A., Moore C., Haverty J.L.)、「アデノウイルス5 DNAタンパク質複合体
の感染度(The infectivity of adenovirus 5 DNA-protein complex)」、Virol
ogy 1976 12月;75(2):442〜456、シナデュライ、シナデュライ、グリーン(Ch
innadurai G., Chinnadurai S., Green M.)、「アデノウイルス2型DNAおよびDN
Aタンパク質複合体の感染度の増強(Enhanced infectivity of adenovirus type
2 DNA and a DNA-protein complex)」、J. Virol. 1978、4月;26(1):195〜
199)。カセットのレスキューに関して、二プラスミド系は十分に効率的以上で
あり、特にヘッド-ヘッドITR媒介組み換えに関して本明細書において証明された
効率の約10倍増強、またはCre-lox媒介組み換えとカップリングさせた場合のヘ
ッド-ヘッドITR媒介組み換えの場合では本明細書において証明された効率の約10
0倍増強(相同的組み換え単独に対して)を認め、その結果ほとんどの目的にと
って好ましいであろう。しかし、例えば、fibre変異のライブラリを開発したい
場合のように、さらにより高い効率が必要である場合がある(異なる多数のウイ
ルス−多ければ多いほどよい)。そうすれば、DNA-TPを調製するという雑用は価
値があるものとなり、当業者によって行われるであろう。このように、本発明の
一つの局面は、シャトルプラスミドにおけるヘッド-ヘッドITR接合部によって媒
介される増強された組換えと、Cre-lox組換えを伴う、または伴わずに、アデノ
ウイルスDNA-TP複合体の高特異性感染度とを組みあわせることを含む。
【0015】 本発明のさらなる態様において、Cre-loxをFLP-frtと組みあわせる。例えば、
本開示に基づいて、当業者は、Cre-loxによって調節される分子スイッチを含む
カセットをレスキューするためにFLP-frt系を利用すること、またはその逆が可
能である。Cre発現カセットをレスキューするためにFLP-frt系を用いることがで
きるが、ベクターレスキューのためにCre-lox系を用いて、これを行うことはそ
うでなければ難しい、または実現不可能であろう。本発明に関してCreを発現す
る293細胞を利用することができ、FLPを発現する293細胞を本発明に関して利用
することができ、そしてCreとFLPとを発現する293細胞も本発明に関して利用で
きるため、本発明は、部位特異的組換えによるウイルスゲノムの操作に関して当
業者に対して多くの選択肢を提供する。このように、さらなる部位特異的リコン
ビナーゼを利用することによって、柔軟性が増加し、Adベクターのデザインおよ
び構築において利用できる選択肢の数が増加する。さらに、当業者は部位特異的
リコンビナーゼを発現する宿主細胞に対するコトランスフェクションによって他
のゲノムを同様に組み換えることができることを容易に認識するように、当業者
は、DNAの操作のために部位特異的組み換えを用いることが、アデノウイルスDNA
の操作に限定されないことを認識するであろう。
【0016】 したがって、本発明の目的は、相同的組み換え、またはCreリコンビナーゼの
ような、しかしこれに限定しない部位特異的リコンビナーゼによって触媒される
部位特異的組み換え、に基づくか否かによらず、ヘッド-ヘッドITR接合部を供給
することによってウイルスのレスキューが増強される、ウイルスベクターを単離
するための非常に効率がよく、信頼性が高く、単純な方法を提供することである
【0017】 本発明のさらなる目的は、ウイルスゲノムにおける所望の位置にウイルス遺伝
子の変異またはその他の改変を導入する単純な方法を提供するために、Cre-lox
媒介組み換え、FLP-frt媒介組み換え、またはその両者の有無によらず、ヘッド-
ヘッドITR構築物および既知の2つのプラスミドベクター産生系を利用すること
である。
【0018】 本発明のさらなる目的は、それによってアデノウイルスクローニングベクター
が開発される単純で有効な系を提供することである。
【0019】 本発明のさらなる目的は、相同的または部位特異的組み換えに依存し、そして
販売のためのコールドチェーンを必要としない、ワクチンおよび遺伝子治療応用
のためにアデノウイルスベクターを効率的に産生するためのキットを提供するこ
とである。
【0020】 本発明のさらなる目的は、それによって、Cre-lox媒介組み換えの有無によら
ず、ヘッド-ヘッドITR媒介組換えの高い効率を、アデノウイルス-TP複合体を利
用する場合に得られる感染度の増強と組みあわせる系を提供することである。
【0021】 本発明のさらなる目的は、完全な開示および添付の請求の範囲を読むことによ
って明らかとなるであろう。
【0022】好ましい態様の詳細な説明 本発明の一つの態様は、抗生物質抵抗性遺伝子と宿主細胞における上記のプラ
スミドの複製のための複製開始点とを含み、Cre、FLPまたは類似のリコンビナー
ゼのような部位特異的リコンビナーゼによって認識されうる、そしてそれらによ
って作用しうる配列を選択的に含む環状改変ヒトアデノウイルスゲノムをさらに
含む、細菌プラスミドを提供する。上記の細菌プラスミドは、通常野生型Ad DNA
の左端に存在し、ウイルス複製にとって必須である、パッケージングシグナルの
ようなウイルスDNA配列が欠失しているために、感染性アデノウイルスを産生す
ることができないようにデザインされる。または、感染性ウイルスの形成は、得
られたウイルスDNAの全体的な大きさがAdビリオンのパッケージング上限を超え
るような(約38 kb)DNA(「スタファーDNA」)の挿入によって防止してもよい
。Ad配列からのpIX配列の欠失は、pIX遺伝子産物を発現する補足細胞を用いなけ
れば、パッケージング限度のサイズ限度をより厳密にする。選択的に、E3からの
配列のような、特定のさらなるウイルスDNA配列を欠失してもよく、これはいず
れにせよ、感染性ウイルスの形での上記ウイルスゲノムの複製を許容する細胞に
おいて、ウイルスゲノムの複製を防止することなくウイルスゲノムから省略する
ことができる。
【0023】 本発明のもう一つの態様は、Ad5ゲノムの左端から少なくとも約340塩基対、ヘ
ッド-ヘッド末端反復配列(本明細書において省略語で「hthITR」と呼ぶ)、お
よびそのパッケージングシグナル配列、選択的にプロモーター、選択的にタンパ
ク質をコードする外因性DNA、選択的にポリアデニル化シグナル、および選択的
にlox部位(loxP、lox511、lox514、loxPsymを含むがこれらに限定しない様々な
lox部位が既知であり、これらの部位のいずれかを言及する場合には他のlox部位
の言及も含まれる)、またはFLPリコンビナーゼによって認識されるFLPのような
部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含む、第二の細菌プラスミドを提供するこ
とである。プロモーター、外因性遺伝子およびポリアデニル化シグナルは、本明
細書において集合的に「発現カセット」と呼ぶ。293Cre細胞に、上記シャトルプ
ラスミドと本発明の第一の態様のプラスミドとをコトランスフェクトさせると、
上記のプラスミドのあいだで組換えが起こり、上記の発現カセットは、相同的組
み換えまたは上記のCreリコンビナーゼの作用によって感染性ウイルスベクター
の中にレスキューされる。シャトルプラスミドに存在するhthITRは、意外にも、
相同的組み換えによる、または部位特異的リコンビナーゼによる組み換えまたは
その両者にかかわらず、組み換えレベルおよび組換えウイルスのレスキューを有
意に増強することが判明した。
【0024】 「細菌プラスミド」という用語は、当業者は、相同的組み換えまたはCreリコ
ンビナーゼを用いる場合のような部位特異的組み換えによって、他のタイプのDN
Aを等しい効率で組み換えることができることを認識しているため、制限的に解
釈されないと理解すべきである。例えば、Creリコンビナーゼは、酵母細胞に発
現されて、Adゲノムを有する酵母人工染色体(YAC's)において高い効率の組換
えを可能にし、または同様に細菌においても、Ad配列を有するコスミドまたはバ
クテリオファージゲノムのあいだでのCre媒介組換えを可能にする。同様に、哺
乳類細胞におけるCreの発現は、二つまたはそれ以上の感染性Adベクターのあい
だ、Adベクターと細菌プラスミド、アデノウイルスゲノムと直鎖状のDNA断片等
のあいだでの効率的な組換えを可能にするために用いることができる。
【0025】 本発明の第三の態様は、Creリコンビナーゼ酵素を提供するヒト細胞株のよう
な哺乳類細胞株を提供する。または、Creは、適した細胞においてCreタンパク質
を発現するAd5由来ベクターによって提供してもよく、またはCreはCreをコード
する第三のプラスミドによって提供してもよく、または選択的にCreは、二プラ
スミドレスキュー系において用いられる上記のhthITRを含むシャトルプラスミド
を含む二つのプラスミドの一つに挿入した発現カセットから発現させることが可
能である。または、Creを他の種、例えば細菌または酵母において発現させて、
上記の種における組換え型Adゲノムの組み換えおよび産生を可能にすることがで
きる。または、Creは、インビトロで上記の細菌プラスミドの組み換えに関して
多様な種における発現からの純粋または粗タンパク質抽出物として提供すること
ができる。当業者は、Creの代わりに類似の組み換え事象を触媒することができ
るその他のリコンビナーゼ系が利用できることを認識し、例えば、酵母のFLPリ
コンビナーゼはFRT標的部位を認識して組み換え、したがって、Creおよびそのlo
xP標的部位を参考にして本明細書に記載したものと類似の機能を提供すると予想
されるが、これらに限定されると解釈されない。
【0026】 本発明の第四の態様は、fibreをコードする領域のような、しかしこれらに限
定しないウイルスDNAのセグメントがlox P部位に隣接する、アデノウイルスDNA
を含むアデノウイルスまたはプラスミドを提供する。
【0027】 本発明の第五の態様は、fibreをコードする領域のような、しかしこれらに限
定しないウイルスDNAのセグメントが欠失して、lox P部位に置換されている、ア
デノウイルスDNAを含むアデノウイルスまたはプラスミドを提供する。
【0028】 本発明の第六の態様は、例えば、上記のプラスミドDNAと第五の態様のプラス
ミドのあいだのCre媒介組み換えによって感染性ウイルスゲノムが生成されるよ
うに、単一のlox P部位がfibreコード配列の上流に埋もれている、fibreコード
配列を含むウイルスDNAのセグメントを含むウイルスゲノムの一部を含むプラス
ミドを提供する。選択的に、上記のプラスミドにおけるfibre遺伝子は、fibreコ
ード配列の一部の変異、挿入、または欠失によって改変してもよい。部位特異的
組み換えによって操作されるウイルスDNAセグメントに応じて、他の位置にlox P
部位を有する類似のプラスミドを構築することができる。例えば、Adゲノムにお
いてfibreのコード配列とE4のコード配列とのあいだに、DNAの挿入に適した部位
が存在する。本発明のこの態様において、組換えの効率は、組み換えプラスミド
の双方にhthITR部位を含めると数倍増強される。
【0029】 本発明の第七の態様において、アデノウイルス配列とlox P部位とを含むプラ
スミドをCreリコンビナーゼの存在下で組み換えて、fibre遺伝子の改変または他
のウイルス遺伝子の改変を含む新規アデノウイルス変異体を産生する。本発明の
この態様において、組換えの効率は、組み換えるプラスミドの双方にhthITRを含
めることによって増強される。
【0030】 本発明の好ましい態様において、hthITR接合部がAdベクター産生の効率を増強
するために含まれる、部位特異的リコンビナーゼを用いることによって、新規Ad
ベクターを構築するため、または既存のAdベクターを改変するための系について
記述する。
【0031】 本発明のさらなる態様において、感染性ウイルスDNA-TP複合体は、リコンビナ
ーゼ媒介部位特異的組み換えおよび最終タンパク質の存在下で得られる感染度レ
ベルの増加を利用するように操作される。
【0032】 当業者は、本発明の開示が、アデノウイルスベクターの生成に関して当技術分
野で既知の技術に対して有意な進歩を提供することを認識するであろう。第一に
、組換え体が産生される効率は、相同的組み換えのみに依存する場合より、相同
的組み換えと組合せて、または部位特異的組み換えと組合せてhthITR接合部を用
いることによって増強される。本発明はさらに、それらを非感染性で安定にする
ベクターの利用を促進するという点において技術分野をさらに進歩させる。さら
に、本明細書に開示の方法を用いることによって、開始ウイルスが部位特異的組
み換えに用いられ、非組み換え体開始ウイルスの実質的なレベルが調製物に留ま
って、それらを次に連続的に継代して混入している開始ウイルスを除去しなけれ
ばならない既知の方法と比較して、産生されたあらゆるウイルスが組換え体ウイ
ルスであるために、組換えウイルスの迅速な産生が促進される。このように効率
が増加した結果、多くの場合、所定のコトランスフェクションの結果をコロニー
精製またはプラーク精製することが望ましいが、本技術の本態様に従って生成さ
れた全てのウイルスが組換え体であるために、プラーク精製は全く必要ない。従
って、本方法は、「ショットガン」アプローチにおいて、組換え体の迅速な産生
および産物のスクリーニングという選択肢を提供し、これは当業者に対して有意
な労力と時間の節約を提供する。
【0033】 以下に述べる詳細な開示を読むことによって、本明細書に引用した如何なる出
版物も、本発明が属する技術の現状をより詳しく説明するために本明細書におい
て参照として組み入れられることを念頭に置かなければならない。
【0034】 本明細書において用いられる全ての技術的および科学用語は、特に明記してい
ない限り、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有すると解釈さ
ることに注意することは本発明の理解にとって重要である。本明細書において用
いた技術はまた、特に明記していない限り当業者に既知である技術である。
【0035】 特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件等、またはこれらのいくつかのサ
ブクラスについての言及は、制限的に解釈してはならず、考察を記述した特定の
文脈において、当業者が関係すると認める、または価値があると認めるであろう
そのような関連材料を全て含むと読むべきである。例えば、異なるが既知の方法
を用いて、提案された方法、材料、または組成物を用いることが向けられる同じ
目的を達するように、ある緩衝液または培養培地を他のものに置換することがし
ばしば可能である。
【0036】 本明細書において用いられる用語は、本発明を制限すると解釈されない。例え
ば、「遺伝子」という用語には、cDNA、RNA、または遺伝子産物をコードするそ
の他のポリヌクレオチドが含まれる。「外因性遺伝子」という用語は、それが発
現される生物または細胞タイプ以外の生物または細胞タイプから得られた遺伝子
を意味する;これは同様に、ゲノムにおけるその正常な位置から転移している、
同じ生物からの遺伝子も意味する。「核酸」、「RNA」、「DNA」等の用語を用い
る場合、われわれは、特定の段階において用いることができる化学構造を制限す
ることを意味しない。例えば、RNAは一般的にDNAに置換することが可能であり、
そのため、「DNA」という用語は、この置換を含むように読むべきであることは
当業者にとって周知である。さらに、多様な核酸類似体および誘導体も同様に本
発明の範囲内であることは既知である。遺伝子または核酸の「発現」は、細胞遺
伝子の発現のみならず、クローニング系および他の意味における核酸(複数)の
転写および翻訳を含む。「リコンビナーゼ」という用語は、組換えを誘導、媒介
、または促進する酵素、および核酸配列の再配置、第二の核酸配列からまたは第
二の核酸配列への第一の核酸配列の切除または挿入を引き起こす、媒介する、ま
たは促進するその他の核酸改変酵素を含む。リコンビナーゼの「標的部位」は、
リコンビナーゼによって認識される(例えば、特異的に結合する)および/また
は作用する(切除、切断、または組換えを誘導する)核酸配列または領域である
。「遺伝子産物」という用語は、他の核酸によってコードされるタンパク質およ
びポリペプチド(例えば、tRNA、sRNPsのような非コードおよび調節RNA)を主に
意味する。「発現の調節」という用語は、所定の遺伝子産物の合成、分解、利用
率、または活性を増加または減少させる事象または分子を意味する。
【0037】 本発明は同様に、本明細書において用いられる細胞タイプおよび細胞株の使用
に限定されない。異なる組織(乳房上皮、結腸、リンパ球等)、または異なる種
(ヒト、マウス等)からの細胞も同様に、本発明において有用である。
【0038】 本発明において、組換え核酸およびそのコードされる遺伝子産物の産生および
発現を検出することは重要である。本明細書において用いられる検出方法には、
例えば、クローニングおよびシークエンシング、オリゴヌクレオチドのライゲー
ション、ポリメラーゼ連鎖反応およびその改変(例えば、7-ゼータGTPを用いるP
CR)の使用、単ヌクレオチドプライマーによる伸長アッセイ、所定のストリンジ
ェントな条件において相補的配列に選択的に結合することが示されうる標的特異
的オリゴヌクレオチドを用いるハイブリダイゼーション技術が含まれる。
【0039】 シークエンシングは、標識したプライマーもしくはターミネーターを利用する
市販の自動シークエンサーを用いて、またはシークエンシングゲルに基づく方法
を用いて行ってもよい。配列分析はまた、標的DNAまたはRNA分子上で互いに隣接
してアニーリングするオリゴヌクレオチド配列のライゲーションに基づく方法に
よって行われる(ウ&ワラス(Wu and Wallace)、Genomics 4:560〜569(1989
);ランドレン(Landren)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 87:8923〜8927(1990
);バラニー(Barany)、Proc. Natl. Acad. Sci. 88;189〜193(1991))。
リガーゼ媒介共有結合はオリゴヌクレオチドが正確に塩基対を形成している場合
に限って起こる。熱安定Taqリガーゼを標的増幅に利用するリガーゼ連鎖反応(L
CR)は、晩発型糖尿病変異座に信号を送る場合に特に有用である。反応温度の上
昇によって、ライゲーション反応を高いストリンジェンシーで実施することが可
能となる(バラニー(Barany, F.)、PCR Methods and Applications 1:5〜16
(1991))。
【0040】 ハイブリダイゼーション反応は、標的核酸がニトロセルロースまたはナイロン
メンブレン上で固定され、オリゴヌクレオチドプローブによってプロービングさ
れるフィルターに基づく形式で実施してもよい。サザンブロット、スロットブロ
ット、「リバース」ドットブロット、溶液ハイブリダイゼーション、固相支持体
に基づくサンドイッチハイブリダイゼーション、ビーズに基づく、シリコンチッ
プに基づく、およびマイクロタイターウェルに基づくハイブリダイゼーションの
形式を含む、既知のハイブリダイゼーション形式の如何なるものを用いてもよい
【0041】 検出オリゴヌクレオチドプローブの大きさの範囲は、10〜1,000塩基である。
検出オリゴヌクレオチドプローブを用いて必要な標的識別を得るために、ハイブ
リダイゼーション反応は一般的に20〜60℃のあいだで実施し、最も好ましくは30
〜50℃で実施する。当業者によって既知であるように、完全な二本鎖とミスマッ
チ二本鎖のあいだの最適な識別は、温度および/または塩濃度を操作することに
よって、またはストリンジェンシー洗浄にホルムアミドを含めることによって得
られる。
【0042】 本明細書に記述のクローニングおよび発現ベクターは、当技術分野で既知の多
様ないずれかの方法によって細胞または組織に導入される。そのような方法は、
参照として本明細書に組み入れられる、サムブルック(Sambrook)らの「分子ク
ローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」、
コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク州(1992)に記載されている
。同様に参照として本明細書に組み入れられる、アウスユベール(Ausubel)の
「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)
」ジョン・ウィリー&サンズ、ボルチモア、メリーランド州(1989);ヒット(
Hitt)ら、「ヒトアデノウイルスベクターの構築と増殖(Construction and pro
pagation of human adenovirus vectors)」、「細胞の生物学;実験ハンドブッ
ク(Cell Biology:A Laboratory Handbook)、セリス(J.E. Celis)編、アカ
デミックプレス、第2版、第1巻、500〜512頁、1998年;ヒット(Hitt)ら、「
ヒトアデノウイルスベクターの構築技術と特徴付け(Techniques for human ade
novirus vector construction and characterization)」、「分子遺伝子学の方
法(Methods in Molecular Genetics)」、アドルフ(K.W. Adolph)編、アカデ
ミックプレス、オーランド、フロリダ州、第7B巻、12〜30頁、1995;ヒット(Hi
tt)ら、「ヒトアデノウイルスベクターの構築と増殖(Construction and propa
gation of human adenovirus vectors)」、「細胞の生物学;実験ハンドブック
(Cell Biology:A Laboratory Handbook)、セリス(J.E. Celis)編、アカデ
ミックプレス、479〜490頁、1994年、も参照のこと。方法は、例えば、安定また
は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔および組換えウ
イルスベクターによる感染が含まれる。
【0043】 組み換えたおよび非組み換えコード配列のタンパク質産物は、免疫技術を用い
て分析してもよい。例えば、タンパク質またはその断片を、免疫応答を生成させ
るために、アジュバントと共に宿主動物に注入する。組換え型断片に結合する免
疫グロブリンを抗血清として採取して、選択的に、アフィニティクロマトグラフ
ィーまたはその他の手段によってさらに精製する。さらに、免疫したマウス宿主
から脾細胞を採取して、骨髄腫細胞と融合して、抗体分泌ハイブリドーマ細胞バ
ンクを生成する。ハイブリドーマバンクを、変種ポリペプチドに結合するが、野
生型ポリペプチドにはほとんど、または全く結合しない免疫グロブリンを分泌す
るクローンに関してスクリーニングして、それらを野生型タンパク質を予め吸収
させることによって、または変種に結合するが野生型ポリペプチドには結合しな
い特異的イディオタイプに関してハイブリドーマ細胞株をスクリーニングするこ
とによって選択する。
【0044】 最終的に所望の変種ポリペプチドを発現することができる核酸配列は、多様な
異なるポリヌクレオチド(ゲノムまたはcDNA、RNA、合成オリゴヌクレオチド等
)のみならず、異なる多様な技術によって形成される。
【0045】 配列を発現制御配列に機能的に結合させた(すなわち、確実に機能するように
配置した)後にDNA配列を宿主に発現させる。これらの発現ベクターは、典型的
に、エピゾームまたは宿主染色体DNAの組み込まれた一部のいずれかとして宿主
生物において複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列によ
って形質転換された細胞の検出および/または選択を行うために、選択マーカー
(例えば、テトラサイクリン抵抗性またはヒグロマイシン抵抗性に基づくマーカ
ー)を含む。詳しい内容は米国特許第4,704,362号に見ることができる。
【0046】 変種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コードされたポリペプチ
ド産物が産生されるようにコード配列の転写(発現配列)および翻訳を促進する
配列を含む。そのようなポリヌクレオチドの構築は当技術分野で周知である。例
えば、そのようなポリヌクレオチドは、プロモーター、転写終了部位(真核生物
発現宿主ではポリアデニル化部位)、リボソーム結合部位、および選択的に、真
核細胞発現宿主において用いられるエンハンサー、および選択的に、ベクターの
複製にとって必要な配列を含む。
【0047】 大腸菌は、特に、本発明のDNA配列をクローニングするために有用な原核細胞
宿主である。使用に適した他の微生物宿主には、枯草菌(Bacillus subtilus)
のような杆菌、ならびにサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、お
よび様々なシュードモナス(Pseudomonas)種のような他の腸内細菌が含まれる
。これらの原核細胞宿主において、典型的に宿主細胞と適合しうる発現制御配列
(例えば、複製開始点)を含む発現ベクターを形成する。さらに、乳糖プロモー
ター系、トリプトファン(Trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター
系、またはファージラムダのプロモーター系のような、如何なる数の多様な周知
のプロモーターを用いてもよい。プロモーターは、選択的に機能的配列によって
、典型的に発現を制御し、例えば、転写および翻訳を開始および終了させるため
のリボソーム結合部位を有する。
【0048】 酵母のようなその他の微生物を発現に用いられる。酵母菌(Saccharomyces)
は、適したベクターが、望ましければ、3-ホスホグリセレートキナーゼ、または
その他の糖分解酵素、および複製開始点、終了配列等を含む、プロモーターのよ
うな発現制御配列を有する適した宿主である。
【0049】 微生物の他に、哺乳類の組織細胞培養を用いて、本発明のポリペプチドを発現
させて、産生させる。無傷のヒトタンパク質を分泌することができる多くの適し
た宿主細胞株が当技術分野において開発されているために、真核細胞も好ましく
、これらにはCHO細胞株、様々なCOS細胞株、Hela細胞、骨髄腫細胞株、Jurkat細
胞、等が含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製開始点、プロモーター
、エンハンサー、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリ
アデニル化部位、および翻訳終了配列のような必要な情報処理部位のような発現
制御配列を含む。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデ
ノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス等に由来するプロモーター
である。当該DNAセグメントを含むベクター(例えば、変種ポリペプチドをコー
ドするポリペプチド)を周知の方法によって宿主細胞に移入するが、これは細胞
宿主のタイプに応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクション
は、原核細胞に一般的に用いられるが、燐酸カルシウム処理または電気穿孔は他
の細胞宿主にとって有用である。
【0050】 方法はそれ自身、診断において用いられる試験キットの形に役立つ。そのよう
なキットは、第一の容器が、酵素の基質のような標識したプローブの位置特定に
有用な試薬を含む、一つまたはそれ以上の容器を密封して含むように区画された
担体を含む。さらに別の容器は、制限酵素、緩衝液等をその使用説明書と共に含
む。
【0051】 本明細書において組換え型Adベクターを産生するために提供される方法は、宿
主細胞におけるリコンビナーゼによって触媒される相同的組み換えに依存する、
またはウイルスDNA断片のインビトロライゲーションに依存して感染性ウイルスD
NAを生成する、従来の記述された方法に対して有意に改善しており、それらの方
法とは有意に異なる。ウイルスDNAの複製およびウイルスDNAのビリオン粒子への
パッケージングに関して、ウイルスDNAの3つのみの領域がシスで必要であるこ
とがわかっている。これらは、左逆方向末端反復、またはITR(1〜約103塩基対
)パッケージングシグナル(約194〜358 bp)(ヒアリング&シェンク(Hearing
and Shenk)、1983、Cell 33:695〜703;グレーブル&ヒアリング(Grable an
d Hearing)、1992、J. Virol. 64:2047〜2056)、および右ITRである。トラン
スで機能するタンパク質をコードするウイルスゲノムの領域において、アデノウ
イルスベクターのデザインおよび開発において2つが最も重要である。これらは
、約76〜86 mu(mu=従来の方向性を有するゲノムの左端からの%距離)のあい
だに存在する初期領域3(E3)および約1〜11 muのあいだに存在する初期領域1
(E1)である。E3配列は、培養細胞においてウイルス複製のために必須ではない
ことが知られており、多くのウイルスベクターは、得られたベクター骨格の外因
性DNAを挿入するための範囲が、それによって野生型ウイルスによって許容され
る以上に有意に増加するようにE3配列を欠失している(ベット、プレベック、お
よびグラハム(Bett A.J., Prevec L., and Graham F.L.、「ヒトアデノウイル
ス5型ベクターのパッケージング能力と安定性(Packaging capacity and stabil
ity of human adenovirus type 5 vectors)」、J. Virol. 67:5911〜5921、19
93)。E1は、必須の機能をコードする。しかし、得られたウイルスを、E1遺伝子
を含んで発現し、E1(-)ウイルスの欠損を補足することができる293細胞、PER-C6
細胞、911細胞等のような宿主細胞において増殖させれば、E1も同様に欠失する
ことが可能である。
【0052】 外因性遺伝子をE1配列の代わりに挿入した、および選択的にE3配列の欠失も有
するウイルスは、これまで「第一世代」アデノウイルスとして知られている。第
一世代ベクターは、多くの応用を有することが証明されている。それらは、多く
の組織および多くの種に由来する哺乳類細胞における外因性遺伝子の高い効率の
移入および発現のための研究ツールとして用いることができる。第一世代ベクタ
ーは、ベクターが病原性生物に由来する抗原を含んで発現する場合、組換えウイ
ルスワクチンの開発に用いることができる。ベクターは、それらがインビボで外
因性遺伝子を効率的に移入して発現することができるために、そして多くの異な
る組織において複製および非複製細胞の双方を形質導入することができるために
、遺伝子治療に用いることができる。アデノウイルスベクターは、これらの応用
において広く用いられる。
【0053】 アデノウイルスベクターを構築する多くの既知の方法がある。上記のように、
最も一般的に用いられる方法の一つは、いわゆる「二プラスミド」技術である。
その技法において、以下の特性を有する二つの非感染性細菌プラスミドを構築す
る:それぞれのプラスミド単独では感染性ウイルスを生成することができない。
しかし、組みあわせると、その中に含まれるプラスミド配列が相同的に組み換え
られて完全な感染性ウイルスDNAを構成すれば、プラスミドはおそらく感染性ウ
イルスを提供することができる。その方法に従えば、典型的に一つのプラスミド
は大きく(約30,000〜35,000ヌクレオチド)、その欠失によってプラスミドが感
染性ウイルスを生じることができなくなるいくつかのDNAセグメント(パッケー
ジングシグナルを含む、または本質的な遺伝子をコードするセグメントのような
)を除いては、ウイルスゲノムのほとんどを含み、または上記のプラスミドは、
上記のウイルスゲノムがビリオンにパッケージングされるには大きすぎるように
挿入を含む。第二のプラスミドは典型的により小さく(例えば、5000〜10,000ヌ
クレオチド)、大きさが小さければ組換えDNA技術によってプラスミドDNAの操作
に役立つためである。上記の第二のプラスミドは、より大きいプラスミドに存在
する配列と部分的に重なり合うウイルスDNA配列を含む。より大きいプラスミド
のウイルス配列と共に、第二のプラスミドの配列は、おそらく感染性ウイルスDN
Aを構成することが可能である。宿主細胞に二つのプラスミドをコトランスフェ
クトすると、二つのプラスミドに共通する重なり合うウイルスDNA配列のあいだ
で相同的組換えが起こった結果として感染性ウイルスを生じる。当業者によって
一般的に用いられる一つの特定の系は、ベット、ハッダラ、プレベクおよびグラ
ハム(Bett A.J., Haddara W., Prevec L., and Graham F.L.、「初期領域1およ
び3に挿入または欠失を有するアデノウイルスベクターを構築するための効率的
で柔軟な系(An efficient and flexible system for construction of adenovi
rus vectors with insertions or deletions in early regions 1 and 3)」、P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8802〜8806、1994)、および米国特許出願番号
第08/250,885号による、そして国際公開公報第95/00655号(参照として本明細書
に組み入れられる)において記載されるように、pBHG10、pBHG11、およびpBHGE3
として知られる一連の大きいプラスミドに基づく。それらのプラスミドは、野生
型ウイルスゲノムの左端に存在するパッケージングシグナルの欠失を除いては、
ウイルスゲノムのほとんどを含み、感染性ウイルスを生じることができる。その
系の第二の成分は、パッケージングシグナル、選択的にマルチクローニング部位
、または選択的に発現カセットを含み、その後にE1の右端近傍から約15 muまた
は選択的にゲノムのさらに右の点までのウイルス配列が続く、Adゲノムの左の約
340ヌクレオチドを含む一連の「シャトル」プラスミドを含む。E1の右のウイル
ス配列は、pBHGプラスミドにおける配列と重なり合い、コトランスフェクトした
宿主細胞において相同的組み換えによって感染性ウイルスを生じる。得られたウ
イルスは、シャトルプラスミドに由来するパッケージングシグナルと共に、パッ
ケージングシグナルと重なり合う配列とのあいだのシャトルプラスミドに存在す
るマルチクローニング部位または発現カセットに挿入された外因性DNAのような
如何なる配列も含む。いずれのプラスミドも単独ではウイルスを複製することが
できず、感染性ウイルスベクターの子孫は、コトランスフェクトした細胞内での
組換えの結果としての場合に限って生じうる。しかし、先に述べたように、その
ような相同的組み換えプロセスは、効率が悪く、ベクターの単離の成功率が多様
であり、ウイルス学、より詳しくはアデノウイルス学の技術分野に特に熟練して
いない人が行った場合には時に失敗する。
【0054】 CreまたはFLPリコンビナーゼのような効率的なリコンビナーゼによって触媒さ
れる部位特異的組換えは、相同的組み換えより何倍も効率的となりうる。本発明
の開示は、いずれも単独では複製して感染性アデノウイルスを生成することがで
きない個々の核酸構築物のあいだでの部位特異的組換えを可能にすることによる
二プラスミド方法によって、ウイルスベクターの産生の容易さを有意に増強する
方法および核酸構築物を提供する。本明細書に記載の方法論はさらに、ウイルス
ゲノムにウイルス遺伝子変異を効率的に導入するためにCre-loxPおよびその他の
既知の組み換え系を利用する。さらに、本方法論は同様に、その目的に従来用い
られているE1領域の他に、ウイルスDNAの様々な領域への外因性DNA配列の挿入に
も応用可能である。本発明のさらなる態様において、部位特異的組換えは、DNA
の5'鎖のいずれかまたは双方において、共有結合した末端タンパク質(DNA-TP複
合体)を有する感染性ウイルスDNAと組みあわせて用いられる。部位特異的組み
換え方法論のさらなる態様および応用もまた、本開示に基づいて明らかとなるで
あろう。さらに、本明細書に開示のように、われわれは、相同的組み換えまたは
部位特異的組み換えメカニズムにかかわらず、シャトルプラスミドにヘッド-ヘ
ッドITR接合部を含めると、組換えの効率を有意に増強することを意外にも発見
した。
【0055】 本発明の目的、長所、応用および方法論について一般的に説明したが、以下の
特定の実施例は、本発明の様々な態様を詳細に説明するために提供される。しか
し、本明細書に記述した発明は、以下の実施例の特定のものに限定されず、それ
らは単に本発明を実践使用とする人のための手引きとして提供されることを認識
しなければならない。本発明の範囲は、完全な開示と添付の請求の範囲を参照し
て評価すべきである。
【0056】 ヒトアデノウイルス血清型5を用いた以下の実施例は、制限的に解釈されない
ことをさらに認識すべきである。当業者は、異なるヒトアデノウイルス血清型、
例えばAd2について、類似のプラスミド、ウイルスおよび技術を用いることがで
きることを認識するであろう。同様に、ヒトAdsを用いることは、類似のプラス
ミド、ウイルス、および技術を異なるヒト以外の、例えばウシのアデノウイルス
に関しても利用できるために、制限的に解釈されない。同様に、アデノウイルス
を用いることは、類似のプラスミド、ウイルスおよび技術を他のウイルス、ヒト
およびヒト以外のウイルス、例えばバキュロウイルスにも利用できるために、制
限的に解釈されない。
【0057】 これらおよび他の実施例におけるCreリコンビナーゼの利用は、当業者は、上
記の酵素によって認識されるDNA配列のあいだでの部位特異的組換えを触媒する
ことができる他の酵素も等しく、Creリコンビナーゼの代わりに用いることがで
きることを容易に認識するであろうために、制限的に解釈されない。Creの代わ
りに用いることができるそのような酵素の制限的でない例は、その標的部位FRT
と組みあわせた酵母の「FLPリコンビナーゼ」である(オゴーマン(O'Gorman)
ら、Science 251、1351、1991)。
【0058】 本発明の成分は、外因性DNAまたは改変fibre遺伝子の挿入のような所望の改変
を含むウイルスを産生するために、293細胞のような、または本発明のウイルス
成分の複製をそれらが支持する、Creリコンビナーゼを発現する、そして本明細
書および以下に述べる実施例に記載のプラスミドをトランスフェクトできる、と
いう点において適しているように思われる他の細胞のようなヒト細胞を利用する
ことである。必須の細胞株は、293細胞またはその他の細胞に、プロモーター、
ポリアデニル化シグナルを含む適した調節配列の制御下でCreのコード配列を含
み、さらに例えば、G418またはヒスチジノールに対する抵抗性をコードする選択
遺伝子を含む、プラスミドをトランスフェクトさせることによって、生成するこ
とができることは当業者によって認識されるであろう。当業者は、選択に用いら
れる薬剤抵抗性遺伝子の他にCreリコンビナーゼを発現する薬剤抵抗性細胞を容
易に得ることができる。同様に、本開示に基づいて、宿主細胞はまた、上記のリ
コンビナーゼ遺伝子を含む発現カセットを含むプラスミドのトランスフェクショ
ンによって、またはリコンビナーゼを発現するウイルスベクターによる感染によ
って、リコンビナーゼを一過性に発現させるように誘導されうることは、当業者
によって認識されるであろう。このように、293Cre細胞またはその他の永続的に
形質転換したリコンビナーゼ発現細胞株の例は、制限的に解釈されない。
【0059】実施例1 2種のプラスミドによる部位特異的なアデノウイルスの組換え 図1は、プラスミド(pBHGloxΔEl,3)の使用を図示したものであり、パッケー
ジング・シグナルを含むEl領域の一部もしくは全体が細菌性プラスミドの複製開
始点および抗生物質耐性遺伝子を含む配列(例えばアンピシリン耐性遺伝子をコ
ードしているもの)で置換されている環化した形態のAdゲノムを含む。プラスミ
ドはさらに、Adゲノムの pIX 遺伝子の5'端近傍のloxP部位を含む。また、プラ
スミドは、(本図においてΔE3で示されるように)選択的にΔE3領域に外因性DN
Aの挿入のための1つもしくは複数の単一クローニング部位で置換され得るE3 配
列が選択的に欠失していてもよい。
【0060】 本発明の第2の構成要素は、ウイルスゲノムのITRとパッケージング・シグナル
、遺伝子治療もしくはワクチンによる処置のいずれかにその発現が必要とされる
細菌のβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)をコードするもの、もしくはその他の遺伝
子のような外因性DNAの挿入にためのマルチクローニング部位、ならびにpBHGlox
ΔEl,3のloxP部位と相対的に同一の方向で挿入された loxP部位を含む「シャト
ル・プラスミド」から成る。感染性のウイルスベクター中へ高効率で外因性DNA
をレスキューするために、Creが発現し、さらにAdゲノムのEl領域を発現するよ
うに作製した293Cre細胞、PER-C6 細胞、911 細胞等のヒト細胞に、2種類のプラ
スミドをコトランスフェクションする。リコンビナーゼを予め供給する方法自体
は重要ではないことが理解されるであろう。2種のプラスミドを導入した細胞で
リコンビナーゼが構成的に発現していてもよい。第3のプラスミドでリコンビナ
ーゼをトランスに与えてもよく、または導入プラスミドの1つにリコンビナーゼ
発現カセットを挿入してシスに与えてもよい。さらに、2種類のプラスミド上に
存在する配列間で起こる部位特異的組換えを効率よく誘起する任意のリコンビナ
ーゼを本法に従って用いることができると理解されるものである。従って、FRT
として知られている配列を認識するFLPリコンビナーゼは、Cre/loxPとの組み合
わせで用いてもよく、従って、本明細書にCreもしくはloxPと記載されている場
合には、かかる記載は、他の現在既知の、もしくは将来発見される部位特異的組
換え系が本明細書に開示・請求する特異的技術に用いられる場合には、これらを
も含むものと見なされる。
【0061】 Creが媒介する組換えによって、外因性DNAのインサートを含む感染性ウイルス
を生成する結合分子が形成される。pBHGloxΔEl,3 は、ウイルスのパッケージン
グ・シグナルを欠失しているので、形成可能なウイルスは、パッケージング・シ
グナルおよびシャトル・プラスミドの外因性DNAを含むものだけである。Creリコ
ンビナーゼが高効率で特異性であるため、形成される数は多く、Creを発現する
細胞で3回の連続的な継代を重ねた後でも、出発時の(非組換え体)ウイルスの
混入が依然として存在するベクター調製物を与えるHardy ら(J. Virol. 71(3):
1842-1849, (1997))の方法等とは対照的に、非組換えウイルスのバックグラウ
ンドは存在しない。
【0062】実施例2 相同的組換えと部位特異的組換えの比較 図2には、約10muから約15muのAd配列がlox部位の右に存在する修飾シャトル・
プラスミドの利用を示したものである。これらの配列によりCreの存在もしくは
非存在下での相同組換えが可能となる。この図で示されるようなシャトル・プラ
スミドは、通常、相同組換えとCreが媒介する組換えの相対的効率を評価する比
較の目的のためにのみ用いられる。本発明の以下の記載から分かるように、Cre
の存在下では、重複配列は不必要であり除外することもできるが、本開示ではこ
のような配列を除外する必要性はない。
【0063】実施例3 アデノウイルスベクターを作製するために部位特異的の組換えを起こすプラスミ ドの調製に有用な配列 図3には、多様なクローン化法において用いられるオリゴヌクレオチドのセッ
トを示す。二重鎖オリゴヌクレオチド(AB3233/3234)は、loxP領域外のオリゴ
の一端にScaIとEcoRIの制限酵素部位を有するloxP部位を含む。アニーリングし
た場合にオリゴヌクレオチドはBamHI/BglII突出部を有し、これはクローン化に
伴ってそのBglII部位が破壊されるように設計されている。(AB3233/3234)の内
部ScaI 部位は、リンカーの方向の決定とさらにその後の9.8-15.8 のAd5 配列の
欠失を調べ易いように設計した。第2のリンカー(AB 14626/14627)はEcoRIとSa
lI突出部、ならびにSmaI、BglII、HindIIIおよび ScaI制限酵素部位を含むマル
チクローニング領域を有する。
【0064】実施例4 図1に従って例示されるような一般的スキームに基づく部位特異的組換えを用い
たウイルスベクターのレスキューに好適な環化形態を有するアデノウイルスゲノ ムを含んだ細菌性プラスミドの構築 図4には、pBHG10の派生体であり、El欠失の3'端にloxP部位を含むように修飾
されたプラスミド、pBHGloxΔEl,3の調製を示す。この図を参照することによっ
て分かるように、本プラスミドは、pBHG10由来の4604 bpからなるBstl107I断片
をpΔE1sp1Aloxの2326 bpの EcoRV/Bstl107I断片で置換することによって構築さ
れた。プラスミド pΔE1splAlox(図5)は、loxP部位(アニーリングしたオリゴ
AB3233とAB3234を含む)を含むオリゴヌクレオチドをpΔE1splAのBglII部位に挿
入することによって構築された。E3における遺伝子をレスキューするために、外
因性配列を pBHGloxΔEl,3の単一部位であるPacI部位に挿入することができる。
E1の3'端近傍、すなわち、通常のAd5配列における約3520塩基の位置のpIX遺伝子
の5'端近傍のloxP部位を含むように修飾するために、図4に示されるプラスミド
を、pBHG10 のシリーズ(表記)、pBHG11、pBHGE3等のプラスミドから選択する
ことができる。選択的に、El 配列の約188 から約3520 塩基の部位を、該プラス
ミドから欠失させてもよい。元のプラスミド(pBHG10、pBHGllもしくはpBHGE3等
)と同様に、修飾pBHG派生体(例えば、 pBHGloxΔE El,3、pBHGdX1Plox, pBHGE
3lox等のプラスミド)はパッケージング・シグナル(Ψ)を欠くので、トランス
フェクションした宿主細胞中で感染性ウイルスを産生することができない。
【0065】 図4Aには、修飾によるE3欠失(pFG23dX1P由来)とpIX遺伝子の5'のlox部位を
含むプラスミドpBHGdXIPloxの構築を示す。プラスミド pFG23dX1P は、PacI部位
(AB14566; 5'-CTAGCTTAATTAAG-3', 配列番号:9)を含むオリゴヌクレオチド
をpFG23dXlのXbaI部位に挿入して構築した。プラスミド pNG17 は、pBHGloxΔEl
,3の 6724 bpのSpeI/ClaI断片をpBluescriptにクローン化することによって構築
した。プラスミド pNG17dX1P は、pNG17の1354 bpのSpeI/NdeI断片をpFG23dX1P
の2129 bpのSpeI/NdeI断片で置換することによって構築した。プラスミド pBHG
dXIP は、pBHGloxΔE 1,3 の6724 bpのSpeI/ClaI断片をpNG17dX1Pの7495 bpのSp
eI/ClaI断片で置換することによって構築した。
【0066】 図4Bには、野生型E3領域およびpIX遺伝子の5'のloxP部位を含むプラスミドの
構築を示す。プラスミドpBHGE3loxは、pBHGloxΔEl,3の 6724 bpのSpeI/ClaI断
片をpBHGE3の9377 bpのSpeI/ClaI断片で置換することによって構築した。
【0067】実施例5 実施例4に基づいて構築されたアデノウイルス・レスキュー・プラスミドでの組
換えのためのシャトルプラスミドの構築 上に記載のように、本発明の第2の態様は、少なくとも、左側の逆方向末端反
復(Ad5 DNAの1〜103塩基のITR)およびパッケージング 配列の全部もしくは大
部分、ならびに選択的にマルチクローニング部位もしくは選択的に発現カセット
を含むウイルスゲノムの左端祖含む、一連のプラスミドから選択されるシャトル
・プラスミドを含む。図5〜図8を参照し、このようなシャトル・プラスミドを改
変して、loxP部位がpBHGの派生体(実施例4を参照: 本明細書では「レスキュー
・プラスミド」と呼ばれる)のloxP部位に対し同一方向となり、該シャトル・プ
ラスミドにおいて該loxP部位が該マルチクローニング部位もしくは該発現カセッ
トの右に位置するようにする。
【0068】 図5には、loxP部位がpIX遺伝子の5'に導入されているpΔElSPlA およびpΔElS
PlBに由来するシャトル・プラスミドの構築を示す。プラスミドpΔElsplA およ
び pΔElSPlBは左端シャトル・プラスミドであり、m.u.1および9.8間でEl 配列
の欠失したm.u. 0〜15.8由来のAd5 配列を含む。これらは、マルチクローニング
領域の制限酵素部位が逆転していることを除き同一である。合成loxPリンカー (
AB3233/3234) を各々のプラスミドの BglII部位に導入して、pΔElSPlAloxおよ
び pΔElSPlBloxを作製した。プラスミドをNruIで消化し、ScaIで部分切断し、
次にセルフライゲーションを行って、m.u. 9.8〜15.8 由来のAd5 配列を除去し
た。このようにして、pΔElSPlAloxΔおよび pΔElSPlBloxΔと呼ばれるプラス
ミドを作製した。
【0069】 図6には、プロモーター、およびポリアデニル化シグナルならびにマウス・サ
イトメガロウイルス即時型初期遺伝子プロモーターで転写が誘導される発現カセ
ットを作製するために外因性DNAを挿入するマルチクローニング部位を含む、プ
ラスミドpMH4loxおよびpMH4loxΔの構築を示す。プラスミドpVDB3は、pMH4に由
来するがpBR322の複製開始点ではなくpUCに基づく複製開始点を含む。これは、m
.u. 1 および 9.8 間でEl 配列が欠失し、m.u. 0-15.8 に由来するAd5 配列含み
、MCMV IE プロモーターの0.5kbp(-491 〜+36) 断片、クローニングのための単
一制限酵素部位(EcoRI, Nhe I, Bam HI および SalI)、その後ろに、 SV40ポ
リアデニル化シグナルを含む発現カセットで置換されている。 pMH4loxの作製の
際に、loxPリンカー (AB3233/3234) をpVDB3のBglII部位に導入した。HindIIIで
消化し、大腸菌 DNA ポリメラーゼのクレノウ断片で処理したのちScaIで部分消
化し、次にセルフライゲーションを行うことによって、pMH4loxから Ad5 配列の
m.u. 9.8〜15.8を欠失させた。得られたシャトル・プラスミドpMH4loxΔをpBHGl
oxΔEl,3 とともに用いて、Cre/loxが媒介する組換えによってAd ベクターを作
製することができる。クローン化のためにより多目的に使用できるプラスミドpM
H4loxΔの作製の際には、異なるマルチクローニング領域を含むリンカー (AB146
26/14627)を、EcoRI および SalI 部位の間に導入し、pMH4loxΔlinkを得た。
【0070】 図6Aには、プラスミド pVDB3の構築を示す。pMH4(Microbix Biosystems)のP
vuI から Bst 11071 までの断片を、pUCのプラスミドDNA 複製開始点(pNEB193;
New England Biolabs)を含むpD47ElのBstl1071 から PvuI までの断片につな
ぎ、pVDB3を作製した。
【0071】 図7には、外因性遺伝子の転写がヒト・サイトメガロウイルス即時型初期遺伝
子プロモーターで制御されるHCMV loxPプラスミドの構築を示す。プラスミドpCA
13 および pCA14 は、m.u. 1 および 9.8間のEl 配列がHCMV IE プロモーター(
転写開始点から見て、-299 〜 +72)、マルチクローニング領域、およびSV40ポ
リアデニル化シグナル(プラスミド pCA13およびpCA14は、Microbix Biosystems
から入手可能である)で置換されているm.u. 0 から 15.8 間のAd5 ゲノム 配列
を含む。各々の発現カセット は、El の転写方向(右向き)に平行な向きである
。pCA13およびpCA14の違いは、マルチクローニング領域の方向だけである。プラ
スミドpCA13(ΔBglII) およびpCA14(ΔBglII) はpCA13およびpCA14 をBglIIで部
分的に消化し、クレノウ処理およびセルフライゲーション反応を行うことによっ
て作製した。合成loxPオリゴヌクレオチド (AB3233/3234) を、pCA13(ΔBglII)
およびpCA14(ΔBglII)の単一BglII部位に導入し、それぞれpCAl3loxおよびpCAl4
loxを作製した。pCA13loxおよびpCA14loxからのAd5 配列のm.u. 9.8〜15.8の除
去は、各々のプラスミドをNruI で切断し、各々をScaIで部分的に消化した後、
セルフライゲーションすることによって行った。得られたプラスミドpCA13loxΔ
およびpCA14loxΔは、Cre/lox組換えによる第1世代のAdベクターのレスキューに
有用なシャトル・プラスミドである。
【0072】 図8には、β-ガラクトシダーゼ遺伝子のアデノウイルスベクターへのレスキュ
ーのためのプラスミドpCA36loxΔの構築を示す。 当然のことながら、レスキュ
ーする遺伝子は、いずれの外因性遺伝子でもよく、例示する目的で本明細書に用
いるマーカーβ-gal 遺伝子等のマーカー遺伝子の使用については制限すること
はない。プラスミド pCA36は、短い MCMV IE プロモーター(-491〜+36)の制御
下にあるβ-gal cDNA とその後ろに、SV40ポリアデニル化シグナルを含んでいる
。プラスミド pCA36は、 LacZ 遺伝子をpMH4(Microbix Biosystemsから入手可
能である)に挿入したが、これについてはAddison, C. L., Hitt, M., Kunsken,
D. およびGraham, F. L.の「アデノウイルスベクターにおけるトランス遺伝子
発現のためのヒトとマウスのサイトメガロウイルス即時型初期遺伝子プロモータ
ーの比較(Comparison of the human versus murine cytomegalovirus immediat
e early gene promoters for transgene expression in adenoviral vectors )
」(J. Gen. Virol. 78: 1653-1661, 1997)に記載がある。合成loxP部位(AB32
33/3234)を、pCA36のBglII部位に導入して、pCA36loxを作製した。次に、この
プラスミドをNru Iで消化し、Sca Iで部分消化して、7646bpの断片をゲルで精製
し、セルフライゲーションして pCA36loxΔを得た。このプラスミドは、m.u. 0
〜1のAd 配列を含むが、由来するプラスミド pCA36およびpCA36loxには存在する
El 配列を欠いているのみならず、さらに、m.u.9.8〜15.8のAd5 配列をも欠失し
ている。
【0073】実施例6 相同組換えと比較において部位特異的組換えの効率が向上していることの証明 本発明の第3の態様においては、loxPもしくは他のリコンビナーゼ認識部位を
含む2種類のプラスミドを、(適当なリコンビナーゼ、本実施例の目的において
はCreを発現する)293Cre細胞もしくはその他の適当な細胞にコトランスフェク
ションする。Cre酵素は、各々のベクター中の該loxP部位間での部位特異的組換
えを触媒する。図1に示されるように、pBHG 配列にΨとITR配列含むDNAセグメン
トをつなぐことによってCreが媒介する該loxP部位間での組換えが、増殖可能な
ウイルスを生成することは当業者であれば容易に理解できる。さらに、pBHGの派
生体およびシャトル・プラスミドの設計と構築によって、得られたウイルスベク
ターは、該シャトル・プラスミドのloxP部位の左側に位置する発現カセットを含
み、これにより、外因性DNA挿入物および外因性遺伝子由来タンパク質の合成の
ための発現カセットを含むウイルスベクターを簡易かつ効率よく単離する手段を
提供する。
【0074】 先に概説したアプローチの妥当性を調べ証明し、さらに既知の方法と比較して
ベクターの単離効率の改善度を調べるために、Ad ゲノムの左端近傍に挿入され
たlacZ 発現カセットを有するベクターを構築し、多くの実験を実施した。293細
胞にコトランスフェクションして得られたウイルスプラークの数を293Cre4細胞
(例えば、参照のために本明細書に組み入れられる1995年6月7日付けの米国特許
出願第08/473,168号、および国際公開公報第96/40955号を参照のこと)へのコト
ランスフェクション後に得られた数と比較して測定することにより、Cre/loxが
媒介する組換えの効率を相同組換えの効率と比較した。
【0075】 表1で示される結果は、Cre/loxが媒介する組換え(両方がlox部位を含むプラ
スミドでの293Cre4細胞のコトランスフェクション)が、相同組換え(両方がlox
部位を含まないプラスミドでの293細胞のコトランスフェクションもしくは293Cr
e4細胞のコトランスフェクション)と比較して、ほぼ35倍以上効率のよいことを
示している。35倍の増加は、非常に有意であり、ウイルスの単離が相同組換え依
存的である場合には、ベクターレスキューの効率の予想以上に高い改善であるこ
とを示している。トランスフェクションした細胞調製物中に存在する感染性ウイ
ルスは出発ウイルスの混入ではなく感染性ウイルスのみである事実とともに、効
率、清浄度、ならびに既知の方法との比較したこの方法の簡便性は、当技術分野
における有意な進歩であることを意味している。従って、この新規な方法を用い
ることによって、コトランスフェクションに用いるプラスミド DNAの量を減らし
、ウイルスベクターのレスキューを行うためのコトランスフェクションに必要な
293(293Cre)細胞のシャーレの数を減らすことが可能となる。未知の理由で、
それ以外ではレスキューすることが困難であるようなレスキュー構築物(例えば
、El 中の外因性の大型DNAインサートを含むベクターのレスキューは未知の理由
で効率が悪いことが多い)においても有用である。
【0076】 pCA36とpBHGloxΔEl.3による293Cre細胞のコトランスフェクション後のプラー
ク形成効率の向上が、Cre-lox依存性組換え(例えば、相同組換え効率の向上に
対する) によるものであることを確かめるために、本発明者らはlox部位の右に
ある重複Ad 配列が除去され、従って、相同組換えの可能性を実質的に除いたpCA
36loxΔと命名した pCA36loxの派生体(図8を参照のこと)を構築した。次にこ
の新規シャトル・プラスミドを用いて、第2の実験ではベクター生成能を調べる
ために、293細胞もしくは293Cre細胞を、このプラスミドまたはpCA36もしくはpC
A36loxでコトランスフェクションしpBHGloxΔEl,3と比較した。pBHGloxΔEl,3に
よる293Cre細胞のコトランスフェクション後に、pCA36loxΔのみが、ウイルスプ
ラークを形成することが、表2の結果から示される。対照的に、pCA36もしくはpC
A36loxは、293細胞上に少数のプラークを生成することは可能であった。しかし
、また、293Cre細胞をpCA36loxおよびpBHGloxΔEl,3でコトランスフェクション
した場合には、効率が顕著に向上した。従って、Cre-lox組換えの利用によって
、アデノウイルスベクター中へ外因性DNAをレスキューするための非常に効率の
高い系となるのである。
【0077】 pCA36lox(図8に示す発現カセットとpIXコード配列との間にloxP部位を有する
lacZ含有シャトル・プラスミド)およびpBHGloxΔEl,3による293Creのトランス
フェクションが、所望の外因性DNAのインサートを含むウイルスを生成すること
を確かめるために、26個の組換えプラークを単離し、増殖させ、LacZの発現を分
析した。26個(100%)はいずれもβ-ガラクトシダーゼ発現が陽性であった。さ
らに、ウイルス構造の分析によって、26個はいずれも、図1に示した予想されるD
NA構造を有することが確かめられた。さらに、pCA36loxΔ および pBHGloxΔEl,
3で293Cre細胞をコトランスフェクションして(表2)得られた6個の単離プラー
クを分析することによって、発現カセットのレスキューに関するCre/lox系の効
率と特異性が確認された。6個の単離プラークはいずれも、β-ガラクトシダーゼ
を発現し、6個はいずれも、図1に示した予想されるDNA構造を有していた。適切
に作製されたlox部位を含むプラスミドで293Cre細胞のコトランスフェクション
を行い、得られた組換えウイルスが、100%正確な構造を有し、トランス遺伝子
(これらの実施例ではβ-ガラクトシダーゼ)を発現するので、図5、6および7に
示されるプラスミドもしくは同様のプラスミドに由来するシャトル・プラスミド
を構築し、pBHGloxΔEl,3もしくは同様にElの末端近傍にlox部位を含むpBHGプラ
スミドとともに該修飾シャトル・プラスミドを293Creもしくは同様な細胞にコト
ランスフェクションすることによって、他の外因性DNAインサートを有する組換
えウイルスを容易に生産することができることは当業者であれば容易に理解でき
る。更に、この方法では、レスキューが高効率であるため、所望の組換えウイル
スを得るのに少量の293Cre培養物と少量のDNAを用いるだけでよいことは当業者
であれば理解できる。さらに、所望の組換えウイルスのみが該コトランスフェク
ションで得られるので、プラーク精製および本発明の方法で得られるウイルスの
子孫ウイルスの分析は重要ではない。さらに、293Cre細胞から組換えウイルスを
最初に単離した後は、リコンビナーゼを発現していない293細胞、911細胞もしく
はPERC-6 細胞等の宿主細胞で該ウイルスを増殖させることができる。
【0078】実施例7 シャトル・プラスミド-ウイルス間の部位特異的組換え Hardy ら(J. Virol. 1997, Mar:71(3): 1842-1849および国際公開公報第97/3
2481号も参照のこと)は、組換えアデノウイルスを生成するために感染性のDNA
ベクターをlox-Cre組換えと組み合わせたプラスミドと組み合わて用いた方法を
開示した。しかし、その方法に基づく場合、組換えウイルス調製物中に感染性の
出発ウイルスが残存しており、Creを発現する細胞で調製物を何度も継代してこ
のバックグラウンドを除去することが必要となる。かかる技術の発展は、本明細
書ではCre-lox組換えとアデノウイルス末端タンパク質(TP)に結合したアデノ
ウイルスDNAの利用の組み合わせにより提供される。この組み合わせによって、
高効率の感染と同時に部位特異的組換えが得られるのである。
【0079】 ウイルスベクターもしくは修飾されたウイルスの単離に2種のプラスミドを用
いた系の利用については、制限する意図はない。本開示から、有用な位置にある
loxP部位を含む修飾されたウイルスのゲノムからウイルスDNAを系の1成分として
利用することが可能であることは当業者であれば理解できる。優れた例としては
、Parks, R. J., Chen, L., Anton, M., Sankar, U., Rudnicki, M. A. および
Graham, F. L.の 「新規のヘルパー依存性アデノウイルスベクター系: Creが媒
介するウイルスパッケージング・シグナルの切り出しによるヘルパーウイルスの
除去(A new helper-dependent adenovirus vector system: removal of helper
virus by Cre-mediated excision of the viral packaging signal)」 (Proc
. Natl. Acad. Sci. U.S. 93: 13565-13570, 1996)に記載のAdLC8、AdLC8c も
しくは AdLC8cluc の利用があげられるがこれにのみ限定されるものではない。
これらのウイルスは、293Cre細胞のウイルス感染後に切り出されてくる「フロッ
クスされた(floxed)」パッケージング・シグナルを含む。したがって、Sharp
らの「アデノウイルス5DNA-タンパク質複合体の感染性(The infectivity of ad
enovirus 5 DNA-protein complex)」(Virology, 1976 Dec:75(2):442-456)、
Chinnadurai らの「2型アデノウイルスとDNA-タンパク質複合体の感染性の増強
(Enhanced infectivity of adenovirus type 2 DNA and a DNA-protein comple
x)」(J. Virol. 1978 Apr:26(l):195-199)等に記載のTPに対する共有結合が
保持されるような方法でAdLC8, AdLC8c もしくは AdLC8clucから抽出したウイル
スDNAと図5、6、7または8に示すようなシャトル・プラスミドで293Cre細胞のコ
トランスフェクションを行うと、Cre媒介性の組換えが起こり、シャトル・プラ
スミドに由来する配列を含み、シャトルのITRおよびパッケージング・シグナル
から選択的マルチクローニング部位または選択的発現カセットを経て該シャトル
・プラスミドのloxP部位までの領域を含むベクターが新たに生成する。例えば、
これらのみに限定されるものではないが、図8Aに示されるように、lacZをコード
する図8に示されているのと同様なプラスミドおよびAdLC8c DNA-TPを用い、AdLC
8c-TPから抽出したDNAおよび該LacZをコードするプラスミドで293Cre細胞をコト
ランスフェクションすることにより、当業者はlacZまたは他の外因性遺伝子を含
む所望の組換えウイルスを容易に単離できる。選択的には、図8Bに示されるよう
に、制限エンドヌクレアーゼで処理したAdLC8c DNA-TPおよび図5、6、7および 8
に示されるプラスミドのセットから選択されるシャトル・プラスミドで293Cre細
胞をコトランスフェクションし、Cre媒介性組換えによって感染性のウイルスを
生産することができる。本法に従って AdLC8cから抽出したウイルスDNAは、該DN
Aのレシピエント細胞への伝達効率を増加させることが示されている末端タンパ
ク質(Sharp PA, Moore C, Haverty JL, 「アデノウイルス5DNA-タンパク質複合
体の感染性(The infectivity of adenovirus 5 DNA-protein complex)」(Vir
ology, 1976 Dec:75(2):442-456))を保持している。最も左のlox部位は不必要
であり、コトランスフェクション前にAdLC8cDNA-TPを制限酵素で切断する時には
、選択的にこれを欠失させることができることは、当業者には公知である。さら
に、 選択的に、制限酵素で消化後、コトランスフェクション前に、AdLC8cDNA-T
Pの右端の大型断片を精製することができる。
【0080】 図8Cは、Creを発現するシャトル・プラスミドの構築法を図示したものである
。Cre発現カセットは、プラスミド pLC2 (Chen, L., Anton, M. および Graham,
F.L., 「部位特異的リコンビナーゼ Creを発現するヒト293細胞株の調製と特徴
付け(Production and characterization of human 293 cell lines expressing
the site-specific recombinase Cre)」 Somat. Cell and Molec. Genet. 22:
477-488, 1996) をクレノウDNAポリメラーゼで末端修飾し、pCA36loxΔのEheI部
位に挿入し 2175 bpのBglII断片として得たものであり、これからpCA36loxΔCre
RおよびpCA36loxΔCreTを作製した。pCA36loxΔCreTの1402 bpの ScaI/KpnI断片
をプラスミド pRP1029 の2753 bpのScaI/KpnI断片で置換し、プラスミド pCA35l
oxΔCreITRを構築した。プラスミド pCA35loxΔCreITRは、複製可能な直鎖状Ad
DNA 分子を生成することが機能的に可能であることが知られているITR接合部(Gr
aham, F.L., 「ヒトのアデノウイルスDNA が共有結合で閉じた環状のものは感染
性である(Covalenlly closed circles of human adcnovirus DNA are infectio
us)」 The EMBO J. 3, 2917-2922,1984)を含んでいる。
【0081】 図8Dには、Creを安定に発現する細胞をを必要とせずAd 発現ベクターを生成す
るためにpBHGloxΔEl,3プラスミドおよびCreを発現する「Lox」シャトル・プラ
スミドを293細胞に導入するコトランスフェクション実験を模式的に示す。この
技術は Adベクターの生成に好適なタイプの細胞であればいかなる細胞にも適用
可能である。293細胞、および PER-C6 細胞 (Fallaux ら. Hum. Gene Ther. 199
8, Sep. 1;9(13):1909-17)、911細胞 (Fallaux ら、 Hum. Gene Ther. 1996 Jan
. 20;7(2):215-222)、またはその他の細胞があげられるが、これらのみに限定さ
れるものではない。図8CのpCA35loxΔCreITR等のシャトル・プラスミドも、Ad
ベクターの生成に好適なものである。pBHGloxΔEl,3および多様なシャトル・プ
ラスミドでコトランスフェクションを実施したときのAdベクターのレスキュー効
率を表3および表4にまとめた。表4の結果から、ITR接合部がシャトル・プラスミ
ドに含まれていると、レスキュー効率は有意に増加することが分かる。従って、
ITR接合部を含むことは好ましい態様である。
【0082】 Creリコンビナーゼをコードする発現カセットのシャトル・プラスミドへの挿
入に関しては制限する意図はなく、より大型のプラスミドpBHGloxΔEl,3にCreカ
セットを挿入することもできることは当業者であれば理解できる。これのみに限
定されるものではないが、このようなプラスミド構築の一例が図8Eに図解されて
いる。図1に示されるようなコトランスフェクションに用いる2つのプラスミドの
いずれか、もしくは双方がCre発現カセットを含み、コトランスフェクションし
た 293細胞でコトランスフェクションしたプラスミドのlox部位間で組換えを効
率よく触媒できる適切なレベルのCreが供給されるものと理解される。従って、2
93Cre細胞等のCreリコンビナーゼを発現する細胞の使用に関する記載は、限定的
なものではない。
【0083】 図8Eには、CreをコードするAd ゲノムプラスミドの構築を示す。pBHGloxΔEl,
3をSpeIおよびPshAIで切断することによって、プラスミド pBHGloxΔを構築した
。Cre発現カセットをプラスミドpLC2から2175 bpBglII断片として取り出し、Bam
HI 部位に挿入し、pBHGloxΔCreR およびpBHGloxΔCreLを生成させた。pBHGlox
ΔCreR およびpBHGloxΔCreL由来の1238 bpの Bstl107I/PacI断片を、pBHGloxΔ
El,3 由来の22380 bpの Bstl107/PacI断片で置換し、それぞれpBHGloxCreRおよ
びpBHGloxCreLを生成させた。
【0084】実施例8 外因性DNAのレスキューおよびアデノウイルスゲノムの所望の位置への変異導入 Ad ベクターのEl 領域への外因性DNAのレスキューを示す上記の実施例は、こ
れにのみ限定されるものではない。先に概説された指示に従って同じように、El もしくはウイルスゲノムの他の領域への挿入、変異または欠失のレスキューに
必要な同様のプラスミドを構築することができる。例えば、これらのみに限定さ
れるものではないが、ウイルスゲノム中のfibre変異のレスキューもしくはウイ
ルスゲノムのE3 領域にある外因性DNAインサートの感染性ウイルスへのレスキュ
ーに好適な一連の類縁体プラスミドを構築することができることは、当業者であ
れば理解できる。図9に一例を示すが、これにのみ限定されるものではない。こ
こには、Cre-loxP組換えを利用してfibre変異をレスキューし感染力をもつウイ
ルスに変える方法を図示してある。pFG173loxおよびfibre遺伝子の5' loxP部位
を含むシャトル・プラスミドによる293Cre細胞のコトランスフェクションによっ
て、lox部位間の部位特異的組換えおよび変異fibre遺伝子を選択的に含むシャト
ルのアデノウイルス配列の感染性ウイルスへのレスキューが起こる。
【0085】 図9Aは、lox部位およびfibre遺伝子と置換したアンピシリン耐性遺伝子を含む
プラスミドの構築法を図示したものである。構築が図14に記載されているpAB14l
ox等のプラスミドから出発し、fibreを含むClaI 部位とBlpI 部位との間のDNA
配列を、pCA14 (Microbix Biosystems)等のアンピシリン耐性プラスミドを制限
エンドヌクレアーゼ消化して選択的に得られる)アンピシリン耐性遺伝子および
プラスミドの DNA 複製開始点を含むDNAセグメントで置換する。
【0086】 図9Bは、Cre-lox組換えを用いて、fibre変異をレスキューし感染力をもつウイ
ルスに変えるためのpFG173loxを、図9AのプラスミドとpFG173から作製する方法
を図示したものである。図9Aに示されるプラスミド pAB14loxΔ は、fibreの3'
側のmu 100までのAd 配列からなる。プラスミドは、さらに、fibreの5'側のウイ
ルスDNA 配列を含むが、fibreのコード配列は完全に失われており、プラスミド
のDNA 複製開始点および、アンピシリン耐性等の抗生物質耐性遺伝子で置換され
ている。大腸菌での相同組換え (Chartier C, Degryse E, Gantzer M, Dieterle
A, Pavirani A, Mehtali M., 「大腸菌における相同組換えによる高効率な組換
えアデノウイルスベクターの生成(Efficient generation of recombinant aden
ovirus vectors by homologous recombination in Escherichia coli)」 J Vir
ol 1996 Jul;70(7):4805-4810)によって、pAB 14loxΔの配列は、pFG173 (Micr
obix Biosystems)との間で組換えを起こしうる。得られたプラスミドpFG173lox
は、fibre遺伝子の全体もしくは選択的にfibre遺伝子の一部、または選択的にE4
の全部もしくは一部、または選択的にfibreおよびE4の双方の全部もしくは一部
の欠失からなる配列の欠失を有し、従って細胞のトランスフェクション後に感染
性ウイルスを生産できない。しかし、図9に示されるように、pFG23dX1loxもしく
は同様のプラスミド等のプラスミドでの組換えに基づいて、感染性ウイルスを容
易に生成させることができる。Creリコンビナーゼを発現する293Cre細胞もしく
は同様の宿主細胞にpFG173loxおよびpFG23dX1loxをコトランスフェクションした
場合には、Creリコンビナーゼは該組換えを効率よく触媒することができる。
【0087】 fibre遺伝子もしくは E4遺伝子の変異、もしくは欠失、もしくは置換のレスキ
ューに好適なプラスミドの構築を、当業者は本開示に基づいて容易に実施するこ
とができる。これのみに限定されるものではないが、このようなプラスミドの構
築の一例を図10に示す。これは、ウイルスゲノムの右側約40%を含むプラスミド
を図示したものである。ここでloxP部位は、fibre遺伝子の5'端近傍に挿入され
ている。PFG23dXlは、Ad5 ゲノムの右側ほぼ40%、21563ヌクレオチド (mu 60)
からpBR322のBamHI 部位にクローン化したゲノムのほぼ右端 (mu 100)を有し、
さらにE3のほぼ全域を含む (Haj-Ahmad, Y. and Graham, F.L., 「ヘルパー非依
存性ヒトアデノウイルス ベクターの開発と単純ヘルペスウイルスのチミジンキ
ナーゼ遺伝子の導入に関する用途(Development of a helper independent huma
n adenovirus vector and its use in the transfer of the Herpes Simplex Vi
rus thymidine kinase gene)」 (J. ViroL 57, 267-274, 1986)28593から304
71位までのAd5 配列が欠失している。PFG23dXl をXbaIで消化し、loxP部位を含
む合成オリゴヌクレオチド(AB6920/AB6921、図3)を挿入した。得られたプラス
ミドpFG23dX1loxを用いて、pFGl73lox(図9)等のプラスミドで293Cre細胞をコ
トランスフェクションし感染性ウイルスを生成させることができる。選択的に、
pFG23dX1lox中でfibreをコードするウイルス遺伝子もしくはE4遺伝子に変異を導
入し、得られた変異をウイルスにレスキューした。相同組換えではなくCreが媒
介する部位特異的を用いて感染性を有するウイルスを生成する場合には、lox部
位の5'側のAd 配列(図の反時計回り)は不要であるため、loxP部位の5'に隣接
する単一Bst11071 部位とBsiWI 部位間のウイルス配列を欠失してpFG23dX1loxc
を作製した。
【0088】 コトランスフェクションに用い、Elへの変異もしくは挿入をレスキューするよ
うに設計したプラスミド間の組換えを促進するプラスミドの一方もしくは他方ま
たは両方にCre発現カセットを挿入して、Creリコンビナーゼが提供されるときに
は、同様に、図9に図解した組換えを起こすいずれかのプラスミドもしくは両方
に該発現カセットを挿入することができ、これによってリコンビナーゼを構成的
に発現していない宿主細胞で部位特異的組換えを起こさせることができることを
、当業者は本開示に基づいて理解することができる。好ましい態様においては、
従って、該接合部がウイルス生産効率の有意な改善をもたらすことを示す表4の
結果にあるように、修飾されたシャトル・プラスミドをさらにITR接合部を含む
ように改変する。図8Cおよび図8Eに示した例から分かるように、通常感染性のウ
イルスゲノムにCre発現カセットがレスキューされないように設計した該プラス
ミドはこのように生成されるのである。
【0089】 変異の感染性ウイルスへのレスキューを示す例には制限されることはなく、本
明細書に記載の方法は、ウイルスゲノムへ外因性DNAを挿入しレスキューするた
めに等しく用いられることは、当業者であれば容易に理解できる。容易に構築さ
れる好適なプラスミドの例は、pFG23dX1LacZloxである。図11は、該プラスミド
を図示したものである。ここで、細菌性lacZをコードする遺伝子等の外因性DNA
は、loxP部位とfibre遺伝子の間に挿入される。限定する意図はないが、この例
では、β-ガラクトシダーゼをコードする発現カセットは、次に図9に示す方法で
感染性ウイルスにレスキューするために、pFG23dX1lox(図10)のloxPに隣接す
るClaI部位に挿入される。上記の方法では、他の外因性DNAも容易に感染性ウイ
ルスゲノムにレスキューされることは、当業者であれば理解できる。該外因性DN
Aセグメントは、別の形質発現カセットでもよく、または、ペプチドをコードす
る配列を、fibreをコードする配列と融合した配列でもよく、該ペプチド配列は
、例えば、修飾された fibreを発現するレスキューされたウイルスが新規もしく
は有用な細胞接着特性を有するような細胞表面リセプターに対するリガンドのも
のである。この例は、限定的なものではなく、他のビリオン遺伝子を、対応する
変異体で置換するためにloxP部位をウイルスDNAの別の位置に容易に導入し得る
ことは、当業者であれば理解できる。
【0090】 限定的ではないが、これらの例として、例えばCreが媒介する組換えで得られ
たウイルスが、El 欠失ウイルスであるような他のウイルス遺伝子が欠失したpFG
l73loxに類似のプラスミドを構築することができる。
【0091】実施例9 本発明の方法により遺伝子工学的に作製したアデノウイルスの利用 限定的する意図はないが、Creが媒介する部位特異的組換えと組み合わせた2プ
ラスミドの系の利用は、E1の変異、欠失、および挿入を有するウイルスの生成か
ら開示されるように、好適に作製されたウイルスから単離したウイルスDNAを用
いてCreが媒介する組換えによりウイルスゲノムの操作が可能であることは、当
業者であれば容易に理解できる。例えば、図12および図13に示されるように、末
端タンパク質TPのいずれかまたは双方が保持される方法で、293Cre細胞をフロッ
クスされたfibre遺伝子を含むウイルスから抽出したDNAでコトランスフェクショ
ンする。コトランスフェクションを実施する前に、選択的に、lox部位間の配列
を切断する制限酵素で該DNAを消化する。本開示に基づくならば、最も右のlox部
位は不要であり、コトランスフェクション前にDNA-TPを制限酵素で切断する場合
には、選択的に欠失したもしくは取り除いてもよいことは、当業者にであれば理
解できる。2プラスミド法同様、 図12および図13の方法も、図13に示されるよう
に、fibre遺伝子またはE4遺伝子の変異のレスキューまたは外因性DNAインサート
のレスキューに用いられる。
【0092】 fibreをコードする遺伝子等の遺伝子の両側に隣接するアデノウイルスゲノム
のlox部位に挿入を行うことが可能であるか否かを確かめるために、図14で示さ
れるpAB14floxと命名されたプラスミドを構築した。このプラスミドは、fibre遺
伝子の3'端とE4遺伝子のコード領域の間に位置するpAB14の単一BlpI部位に挿入
したlox部位を含む。第2のlox部位をfibreの上流のXbaI部位に挿入した。図15に
示すように、pFGl73 (Hanke, T., Graham, F.L., V. LulitanondおよびD.C. Jo
hnson 「糖タンパク質 EおよびIを発現する組換えアデノウイルスベクターを用
いたヘルペス単純ウイルス IgG Fc 受容体の誘導(Herpes simplex virus IgG F
c receptors induced using recombinant adenovirus vectors expressing glyc
oproteins E and I)」、Virology 177:437-444,1990に記載されている:pFGl73
はMicrobix Biosystemsから入手可能である)でコトランスフェクションしてPAB
14flox(lox部位に隣接されたfibre)を感染性ウイルスにレスキューし、Adflox
fibreを調製した。2つの実験で、293細胞を、pAB14floxおよび pFG173でコトラ
ンスフェクションし、(実験1ではコトランスフェクションした293細胞を含む8
枚のシャーレから、および実験2では4枚のシャーレから)各々の実験で2個のプ
ラークの単離物が得られた。2個のプラークを増幅し、分析して図15に示された
ように予想されるDNA構造を証明した。
【0093】 図15に示すAdfloxfibre-TP等のAd ウイルスのDNA-TP複合体で293Cre細胞をト
ランスフェクションし、該フロックスされたfibre遺伝子を部位特異的組換えに
より、同一方向のloxP部位間で切り出し、図12に示される非感染性のウイルスDN
A(ビリオンの主要構成要素であるfibre)が得られる。pFG23dX1lox等のfibre上
流に単一loxP部位を含むプラスミドで該293Cre細胞をコトランスフェクションし
、または選択的に外因性 DNA がfibreもしくはE4遺伝子に変異もしくは挿入を有
するようにし、プラスミドとウイルスDNAとの間の部位特異的組換えを高効率で
起こさせ、図12または図13に示されるプラスミド由来のfibre遺伝子を有するウ
イルスを生成させる。したがって、プラスミドのfibre遺伝子中および近傍に作
製された変異、欠失もしくはその他の修飾が感染性ウイルスゲノムにレスキュー
されることは、当業者であれば容易に理解できる。例えば、これらに限定される
ものではないが、図12および図13に示されるプラスミド、ウイルスDNA、および
リコンビナーゼの組み合わせによって、野生型fibreを修飾したfibre遺伝子で高
効率に置換し、変化したfibreを含むビリオン・キャプシドを有する変異体ウイ
ルスを生成させることができる。
【0094】 このアプローチの用途に関するの別の例としては、外因性DNAセグメントをpFG
23dX1lox等のプラスミド中のlox部位とfibreをコードする配列の間に導入し、Ad
lox2fibre(図13)から調製したDNAで、293Cre細胞をコトランスフェクションし
て該外因性DNAセグメントをウイルスにレスキューする。2プラスミド系の利用に
関する上記の実施例のように、該外因性DNAセグメントは別の形質発現カセット
でもよく、細胞表面リセプターに対するリガンド等のペプチド配列の融合物でも
よい。
【0095】 表5には、図9に示す293Cre細胞のコトランスフェクションによる感染性ウイル
スの生成に、Cre媒介性組換えを用いた時の効率に関する結果を示した。レスキ
ュー効率は、 表1および表2に示すものと同等であり、相同組換え効率(pFG173
+pFG23dXl)よりも数倍高いことが明らかである。
【0096】実施例10 本発明の別のアデノウイルスベクター・システムの利用 本開示に基づくならば、本明細書に記載の図8Bの系では、ウイルスDNAを、表
記の酵素、すなわちAsuIIおよび/もしくは SwaIで消化した場合には最も左端の
lox部位は重要ではないことは、当業者であれば理解できる。プラスミドとTP を
含むウイルスDNA断片による細胞のコトランスフェクションにおけるウイルスゲ
ノムへの変異もしくはインサートのレスキューの亢進には、両端にTP が必要で
はなく、AsuII および/もしくは SwaI消化で形成された右端のみにTPを有して
いる大型のウイルスDNA断片でも、この系では十分に効率よく働くことも理解さ
れる。同様に、図12および図13に基づいて開示される系では、ウイルスDNA-TPを
、(例えば、fibreもしくはE4中で)右側で切断する1つもしくは複数の酵素で切
断する場合、fibreの5'にあるlox部位のみが必要である。この目的に好適な天然
の制限酵素部位がなければ、本開示に基づき当技術分野で通常用いられる方法で
このような部位を容易に作製できる。例えば、本発明者等は、fibreの3'端とE4
をコードする配列の間にあり、合成DNAを挿入するために利用できるBlpI 部位を
同定している。図14に示されるように、この部位にloxDNA 配列を挿入したが、
ウイルスゲノムの他の部位には存在しない制限エンドヌクレアーゼ部位を含むDN
Aを容易に導入して、 該制限酵素部位を図15に示す感染性ウイルスにレスキュー
することができた。
【0097】 本開示に基づくならば、さらに、その単純さゆえに、Cre-loxと2プラスミド系
の組み合わせは、最も幅広い用途を有することが理解できる。容易に調製できる
プラスミドDNAのみが必要であり、制限酵素消化が不要で、親株ウイルスがバッ
クグラウンドとして含まれる可能性がなく、単にほとんどの目的に好適な効率の
よい系であるだけに止まらないのである。それでもなお、感染レベルを高める必
要がある時には、ウイルスDNAを結合した末端タンパク質の取り込みの利用のた
めに本明細書に開示される方法を、本明細書に示した部位特異的組換え技術との
混み合わせで使用することもまた好適である。
【0098】実施例11 相同組換えまたは部位特異的組換えによる組換え効率の改善のためのITRのヘッ
ド-ヘッド接合部の利用 上記の本発明の開示に示されるように、遺伝子のAd 組換えベクターへのレス
キュー効率を、組換えを相同組換えではなくCreリコンビナーゼが媒介するプラ
スミドを操作することにより顕著に増強させることができる。293Cre4細胞にコ
トランスフェクションした2つのプラスミド間のCreが媒介する組換えによるAd
ベクターの構築は、非常に効率が高い。残念なことに、この系には、Elを相補し
Creを発現する細胞系が必要であり、その親株細胞の293細胞と同等に広く利用可
能なものは、現在のところ存在しない。広く入手可能な293細胞もしくは他のEl
相補細胞系を用いて高効率のCreが媒介するベクターレスキューを達成できれば
、本法はより幅広い適用が可能となる。したがって、本発明者等は、Cre発現カ
セットをシャトル・プラスミドpCA36loxΔに導入し、pCA36loxΔCreR、およびpC
A36loxΔCreTを作製して(図8C)、系の改変を行った。プラスミド内の位置に依
存して組換え後にCreカセットが組換えベクターに組み込まれることがなく、コ
トランスフェクション後Creの一過的発現を可能とし、従ってCreを発現する細胞
株が不要となるように、プラスミドを設計した。pBHGloxΔE1,3およびCre発現カ
セットを含む、または含まないシャトル・プラスミドで 293細胞のコトランスフ
ェクションした後のベクターのレスキュー効率を比較して、このアプローチの妥
当性を調べた。典型的な実験の結果を表3および表6に示す。
【0099】 表6では、pBHGloxΔE1,3およびpCA36またはpCA36loxで293細胞のコトランスフ
ェクションした後に形成したプラークの数は同程度であり、相同組換えによるベ
クターレスキューの通常の効率であった。相同組換えによるベクターレスキュー
を予め実質的に排除するようにloxP部位下流の全Ad 配列を欠失たので、pCA36lo
xΔではプラークが形成されなかった。pCA36loxΔとは対照的に、pCA35loxΔCre
Tではベクターレスキューを媒介することができ、シャトル・プラスミドがCre発
現カセットを含むことによって、293細胞を用いCreが媒介するベクターレスキュ
ーの達成が可能であることが示された。pCA36loxΔCreRでは同等数のプラークが
形成された(表3)。しかし、pCA36loxΔCreT、またはpCA36loxΔCreRを用いた
ベクターレスキューの効率は、293Cre4細胞を用いて得られたもの(表3)よりも
かなり低く、293Cre4細胞の構成的なCreの発現の結果、トランスフェクションし
たシャトル・プラスミドからのCreの一過性発現によって得られたものよりもよ
りもCre媒介性ベクターレスキューの効率が高いことを示唆している。
【0100】 pCA36loxΔCreRで一過的トランスフェクションした293細胞と比較する293Cre4
細胞では、Creレベルの直接的な尺度を持ち合わせていなかったが、293Cre4細胞
のCreリコンビナーゼのレベルがトランスフェクションした 293細胞のレベルよ
り高い可能性はあった。したがって、シャトル・プラスミドのコピー数を増やす
ことによってCreが媒介するベクターレスキューの効率を増加させることが可能
であるか否かを調べた。これを実施するために、pCA36loxΔCreT中の単一ITR接
合部をヘッド-ヘッドITR接合部で置換し、pCA35loxΔCreITRを作製した(図8C)
。この改変の原理は、ITR接合部が効率のよいAd DNA 複製開始点として働き、直
鎖化して、おそらくプラスミドDNAを増幅する (Graham, 1984 EMBO J. 3:2971)
との所見を基にしている。したがって、Ad DNAの複製に必要なすべてのトランス
に作用する因子をコードしているだけでなく、ITR接合部をも含んでいるpBHGlox
ΔE1,3で293細胞のコトランスフェクションを行った後に、pCA35loxCreITRは直
鎖化し複製すると予想され、Cre発現の増加をももたらす(発現カセットのコピ
ー数がより多い)と期待される。このアプローチの妥当性を、pBHGloxΔE 1,3
と様々ななシャトル・プラスミドで293細胞のコトランスフェクションした後、
ベクターレスキュー効率を比較して調べた。典型的な実験結果を表4に示す。pCA
36loxおよび pCA36loxΔCreTを用いて形成されたプラークの数は、表6に示され
る結果と一致した。pCA36loxΔCreTでの結果とは対照的に、pCA35loxΔCreITRを
用いて形成されたプラークの数は、約10倍高く(表4)、このことは、単一ITRを
ITR接合部で置換することによって、293細胞を用いたCre媒介性ベクターレスキ
ューの効率が有意に増加することを示している。
【0101】 表4の結果は、Cre発現カセットおよびITR接合部を含むシャトル・プラスミド
によって、単一ITRのみしか含まない同様のプラスミドと比較して非常に有意に
レスキュー効率が改善されることを示している。しかし、トランスフェクション
した細胞中の Creタンパク質を直接測定しなければ、これがCre発現亢進による
、もしくは他の何らかのメカニズムによるものでるあることを結論付けることは
できない。対照実験として、Creカセットを含まず、ITR接合部を含むシャトル・
プラスミドを構築し、単一ITRを有する類似のプラスミド(図2A)と比較した。
用いたプラスミドはいずれもlox部位を含まず、コトランスフェクションした細
胞でCreが全く発現されないので、この実験におけるウイルスレスキュー (表7
)は、相同組換えではなくCreが媒介する組換えに依存するものであった。驚く
べきことに、ITR接合部を有するシャトル・プラスミドでは、単一ITRを有するこ
と以外は同一であるプラスミドと比較して、組換えウイルスのレスキューに関し
て約10倍高い効率が得られた。従って、pCA36loxΔCreTと比較して pCA35loxCre
ITRを用いた場合のレスキューの改善は、Creのレベルの増加ではなくITR接合部
の使用に全面的によるのであろうと考えられる。従って、2プラスミドによるア
プローチを用いた組換えウイルスのレスキューは、シャトル・プラスミドにITR
接合部を組み込むことによって、顕著に改善される (約10 倍高い効率)。これ
によって、より多数のプラークを産生させるか、またはコトランスフェクション
におけるプラスミドDNAの濃度を低くする、または細胞数を減らして、またはそ
の両方でベクターレスキューを達成することができる。
【0102】 コトランスフェクションした細胞で、例えば、293Cre4細胞等の細胞を用い、
または一方のもしくは他方のコトランスフェクションしたプラスミドにクローニ
ングしたCreカセットからの発現により、Creを発現させることができる。例えば
、これらのみに限定されるものではないが、CreカセットをpBHGloxΔEl,3を基に
作製したゲノムプラスミドに挿入することができる。このようなプラスミドの構
築法の一例が、図4Cに示されている。ここではCre発現カセットがpBHG10 の派生
体pBHGloxΔEl,3に2方向のうちいずれか一方向に挿入して、pBHGloxΔEl,3Creお
よび pBHGloxΔEl,3CreRを作製する。ITR接合部とAdVec10のCreが媒介する組換
え系を組み合わせて用い、組換えウイルス生産の効率を元の2プラスミド法 (表
8〜表13)よりも少なくとも100倍向上させる。例えば、表8に示されるデータは
、シャトル・プラスミドが単一ITRのみを含む場合には、相同組換えによるレス
キュー効率が低いため、ゲノムプラスミドpBHGloxΔEl,3とシャトル・プラスミ
ド pCA36loxで293細胞のコトランスフェクションを行っても、この実験ではプラ
ークができないことを示している。これとは対照的に、ITR接合部を付加した場
合には、レスキュー効率が相対的に高くなり(15プラーク/シャーレ)、 pCA36l
ox+ pBHGloxΔEl,3での293Cre細胞のコトランスフェクション(Creが媒介する組
換えによるレスキューが可能となる)では、11プラーク/シャーレであった。最
も高い効率は、293Cre細胞を、ITR接合部を含むシャトル・プラスミドでコトラ
ンスフェクションすることによって得られた(113プラーク/シャーレ)。この組
換えはCreの作用よるものであることは、シャトルが右の発現カセットのAd 配列
を欠いており、従って相同組換えの阻害によって得られた結果から分かる。この
場合、293細胞のコトランスフェクション後にプラークは全く得られないが、ITR
接合部を含むプラスミドでは293Cre細胞において100プラーク/シャーレであった
。従って、本発明の好ましい態様は、部位特異的組換えとlox部位に加えITR接合
部を含むシャトル・プラスミドの利用との組み合わせである。しかし、相同組換
えにおいて用いられるシャトル・プラスミドに単純に ITR接合部を付加するだけ
でも、単一ITRを含むプラスミドの使用と比較して、レスキュー効率の顕著な改
善が得られることは、当業者はであれば理解できる。従って、部位特異的リコン
ビナーゼの使用が実用的でない、または都合が悪い時には、ITR接合部を有する
シャトル・プラスミドの利用により、外因性DNA挿入物を含むAd ベクター構築の
ための簡便で相対的に効率のよい手段を提供する。
【0103】 表9と表10に示される結果では、コトランスフェクションし、シャトル・プラ
スミド、例えば、pCA35loxΔCreITRで、または宿主細胞、例えば、293Cre細胞に
コトランスフェクションすることによって、Creリコンビナーゼが得られること
を示している。これらの実験、および、さらに別の複数の実験で、プラークを単
離し、293細胞上で増幅させて、ウイルスDNAの構造およびpCA35およびpCA36なら
びに派生体プラスミドにおけるクローニングした発現カセットからのβ-ガラク
トシダーゼの発現について分析を行った。60個以上の独立したプラーク単離物を
このような方法で分析し、各々の場合において、ゲノムプラスミドDNAおよびシ
ャトル・プラスミドDNA間の組換えによって形成した組換えウイルスベクターに
関して予測されるウイルスDNA構造であった。また、いずれの組換えウイルスも
、β-ガラクトシダーゼを発現していた。従って、本明細書に記載の方法は、外
因性DNAを含みかつ発現するAd ベクター構築に関し、正確かつ信頼性の高い方法
を提供する。
【0104】 表11と12に示される結果は、高効率のレスキューを行うために、293Cre4細胞
等のレシピエント宿主細胞またはpCA35loxΔCreITR等のシャトル・プラスミド、
またはpBHGloxΔE1,3Cre等のゲノムプラスミドもしくはこれらの組み合わせによ
り、Creリコンビナーゼを発現可能であることを示している。該プラスミド間の
組換えの結果得られるものは、Cre発現カセットを含むウイルスであることは、
当業者であれば理解できる。この結果は、さらに、レスキューが相同組換えによ
って起こるものであっても、または部位特異的組換えによって起こるものであっ
ても、シャトル・プラスミド上にITR接合部を付加することが重要である証拠を
与えるものでもある。
【0105】 従って、表8〜表13に示される多くのコトランスフェクション実験の結果で例
示されるように、Creリコンビナーゼは、コトランスフェクションしたプラスミ
ドまたは293Cre4細胞等の宿主細胞いずれかで発現する。組換えウイルスのレス
キュー効率は、 表9および表10で示されるように顕著に高く、ある実験では、計
数できないほど多数のプラークを与える。Creカセットはゲノムプラスミドもし
くはシャトル・プラスミド中に存在するが、Creの発現がトランスフェクション
した宿主細胞からではなく、コトランスフェクションしたプラスミド DNA に由
来する場合には、本発明の好ましい態様は、二つの理由でCreカセットがゲノム
プラスミド中に存在することである。すなわち、第一は、外因性DNAの挿入を行
い易いように、シャトル・プラスミドはできるだけ小型で、できるだけ多くのク
ローンニング部位を有している方がよく、第二に、表11〜表13に示される結果が
、Creゲノムプラスミド、具体的にはプラスミド pBHGloxΔEl,3Creによって、リ
コンビナーゼが提供される293細胞のトランスフェクションにおいて、レスキュ
ー効率がより高いことを示唆していることによる。
【0106】 多数の異なるシャトル・プラスミドを構築し、利用して、先に概説された方法
により組換えウイルスベクターが作製可能であることは、当業者であれば理解で
きる。これに限定されるものではないが、一例として、当業者が通常用いる方法
で、容易に利用可能なプラスミドから図5A、5Bおよび5Dに示される一連のシャト
ル・プラスミドを構築した。構築されたシャトル・プラスミドは、相同組換えの
ためのITR接合部、マルチクローニング部位(MCS)、lox部位、およびAd 配列を
有するpΔElSplAloxITR(MCS) およびpΔElSplBloxITR(MCS) (図5A)等のプラス
ミドである。該プラスミドを用いて、先に概説された方法により相同組換えもし
くは部位特異的組換えのいずれかによりウイルスレスキューを行う。他の有用な
プラスミドとしては、Creが媒介する組換えが不要であるまたは都合が悪い場合
には、相同組換えのための ITR接合部、マルチクローニング部位、lox部位を有
する、または (pDC113 および pDC114)ITR接合部およびAd配列を有するpDC111
〜114(図5B)をあげることもできる。図5Dおよび図6には、AdベクターへのcDNA
の挿入および発現のためのプロモーター(マウス・サイトメガロウイルスの即時
型初期遺伝子プロモーター、MCMV)、マルチクローニング領域、およびポリアデ
ニル化シグナル(SV40)を有する複数のシャトル・プラスミドの構築が示されて
いる。これらプラスミドは、ベクターの単離に様々な可能性を与える。例えば、
lox部位を有するが、lox部位の右則のAd 配列を欠いた pDC115およびpDC116(図
5D)は、Creリコンビナーゼの存在で細胞のコトランスフェクションを行うウイ
ルスレスキューに用いられる。他方、lox部位を欠き、相同組換え用のAd 配列を
有するプラスミド pDC117および118 は、Creリコンビナーゼ非存在下での組換え
ウイルスの単離に用いられ、レスキュー効率は、ITR接合部の存在によって高ま
る。
【0107】 ITR接合部を有するシャトル・プラスミドの利用、およびCreが媒介する部位特
異的組換えの利用、ならびにこれら2通りの改善の組み合わせは、Adベクター構
築の2プラスミド系の効率および信頼性を有意に増加させる。これら新規の方法
は、哺乳動物細胞および動物におけるタンパク質機能の分析のために異なるcDNA
を発現可能な多数の組換えアデノウイルスベクターを含む発現ベクター・ライブ
ラリーの生産を可能にする。本明細書に開示される方法で生産したベクターは、
組換えウイルスワクチンおよび遺伝子治療における用途もあり得る。
【0108】 ITR接合部を含むシャトル・プラスミドを用いた組換えウイルス単離の効率増
加は、El 領域における挿入もしくは置換もしくは変異を有するベクターの生産
にのみ限定されるものではない。ウイルスゲノムの他の領域に操作された変更を
加える時の簡便さと効率を高めることを、同様に、ゲノムの右端からAd 配列を
含むプラスミド中の単一ITRの位置にITR接合部を導入することによって達成でき
ることは、当業者であれば理解できる。例えば、これらのみに限定されるもので
はないが、図10および図11に示されるpFG23dX1loxもしくはpFG23dX1LacZlox等の
プラスミドにおいて、単一ITRはITR接合部で容易に置換され、例えば、図11Aに
おいて図解されるような方法でコトランスフェクションした細胞における fibre
変異もしくは外因性DNAインサートをレスキューする効率を改善できる。例えば
、pBHG10 のITR接合部をpFG23dX1loxに導入し、pFG23dX1loxITRを作製した。pFG
173loxおよびpFG23dX1loxITRによる293Cre4細胞のコトランスフェクションによ
って、シャーレ当たりほぼ50〜60個のプラークが得られ、pFG23dX1loxで通常得
られるものよりも約5〜10倍高い。さらに、第2のプラスミドを図11Aに示されるp
FG23dX1loxITRのようにITR接合部を含むように操作した場合には、図9、図12、
および図13に示されるウイルスレスキューではその効率が同様に増加した。
【0109】実施例12 FLP-FRT 組換えを用いた組換えベクターの生産 活性のあるFLPリコンビナーゼをコードし、機能的FLPを発現することが示され
ている発現プラスミドで形質転換した293細胞および293Cre細胞が、同時継続の
特許出願(整理番号AdVec3IB;米国特許出願第 09/351,819号)として開示され
ている。Creが媒介するloxP部位間の特部位異的組換えと同様な様式で、FLPはfr
t部位間の部位特異的組換え(図16A)を触媒可能であるため、もともとloxP部位
で占められている遺伝子座にfrt部位を有するゲノムプラスミドおよびシャトル
・プラスミドを同時継続出願(AdVec10;米国特許出願第 09/263,650号およびAd
Vec10IA;米国特許出願第 09/415,899号)に開示しているものと同様の系で、部
位特異的組換えで外因性DNAをAd ベクターにレスキューに利用可能なことは、当
業者であれば理解できる。したがって、本発明は、293FLP細胞におけるFLP-が媒
介する2種のコトランスフェクションしたプラスミドDNA間の部位特異的組換えで
生成するウイルスおよびベクターの生産を可能にする。適切に設計されたfrt 部
位を含む pBHG10(Bett, A. J., Haddara, W., Prevec, L. and Graham, F.L 「
初期領域1および3における挿入もしくは欠失を含むアデノウイルスベクターの構
築のための効率的で軟性のある系(An efficient and flexible system for con
struction of adenovirus vectors with insertions or deletions in early re
gions 1 and 3)」(Proc. Natl. Acad. Sci. US 91: 8802-8806, 1994.;Micro
bix Biosystemsから入手可能である)に由来するゲノムプラスミドの一例を図16
Bに示す。最小の適合DNA 配列は、プラスミドもしくはウイルスDNAに挿入できる
合成デオキシオリゴヌクレオチドとして容易に調製される34bpのDNA セグメント
である(図16Aを参照のこと)。ゲノムプラスミド pBHGfrtAEl,3は、2段階の工
程で構築した。最初に、アニーリングしたオリゴヌクレオチド AB10352および A
B10353からなる frt 部位を有する合成オリゴヌクレオチドをpΔElSPlA (Bett,
A. J., Haddara, W., Prevec, L. and Graham, F.L「初期領域1および3における
挿入もしくは欠失を含むアデノウイルスベクターの構築のための効率的で軟性の
ある系(An efficient and flexible system for construction of adenovirus
vectors with insertions or deletions in early regions 1 and 3)」(Proc.
Natl. Acad. Sci. US 91: 8802-8806, 1994.;Microbix Biosystemsから入手可
能である)のBglII部位に挿入し、frt部位をAd5 pIX遺伝子の5'に隣接部位に導
入した。第2に、該frt部位およびpIX遺伝子を含む EcoRV-Bstl1071断片で、pBHG
10のBstl1071断片を置換した。得られたゲノムプラスミドpBHGfrtΔE1,3は、pBH
Gl0同様、複製に必要なウイルス機能はすべてコードされているが、ウイルスDNA
をキャプシド化してビリオンを形成するために必要なパッケージング・シグナ
ルを欠く。
【0110】 pBHGfrtΔEl,3および同様なプラスミドからの感染性ウイルスの生成には、パ
ッケージング・シグナルが、例えば、pBHG プラスミドとITRおよびパッケージン
グ・シグナルを含むAd ゲノムの左端を含む一連のプラスミドから選択される第
二のプラスミドとの間の組換えによって再構成されることが必要である。これが
、Ad ベクターの構築に関する「2プラスミド」レスキュー法 (Bett, A. J., Ha
ddara, W., Prevec, L. and Graham, F.L「初期領域1および3における挿入もし
くは欠失を含むアデノウイルスベクターの構築のための効率的で軟性のある系(
An efficient and flexible system for construction of adenovirus vectors
with insertions or deletions in early regions 1 and 3)」(Proc. Natl. A
cad. Sci. US 91: 8802-8806,1994)の基礎となる。本発明者等は、以前に (Ng
ら, 1999,2000) 、例えば、Creリコンビナーゼで触媒される部位特異的組換えの
方が、相同組換えよりも効率が高いことを示している。ここでは、以下に、FLP
が媒介する組換えは、いずれもfrt部位を含むゲノムプラスミドおよびシャトル
・プラスミドでコトランスフェクションした細胞からの組換えウイルスの生成に
おいて同様に非常に効率的であることを示す。
【0111】 図17A には、大腸菌 β-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現カセットを含むシャト
ル・プラスミドpCA35ITRのBglII部位とEheI 部位の間にオリゴヌクレオチド AB1
9509およびAB19510から成る合成 frt 部位を挿入して作製したシャトル・プラス
ミドpCA35ΔfrtITRの構築物を示す。得られたプラスミドpCA35ΔfrtITRは、ITR
接合部、ウイルスパッケージング・シグナル、β-ガラクトシダーゼ発現カセッ
ト、およびpBHGfrtΔE1,3のfrt 部位と同一方向のfrt 部位を含む。図17Bに示さ
れるように、FLPが媒介する該frt部位間の組換えは、該ウイルスのEl 領域に挿
入したトランス遺伝子(本実施例では、大腸菌 β-ガラクトシダーゼ遺伝子)を
含む組換えアデノウイルス発現ベクターを生成させる。FLPはコトランスフェク
ションした 293FLP細胞において高効率で組換えウイルスベクターを生産する機
能を有することを示す典型的な実験の結果を表14に示す。
【0112】 本発明者等は以前に(Ng ら、 2000; AdVec 10IA, 米国特許出願第09/415,899
号)、Creが媒介する Adベクターのレスキューにおいて、コトランスフェクショ
ンした宿主細胞がリコンビナーゼを構成的に発現する必要はないが、ゲノムプラ
スミドもしくはシャトル・プラスミドのいずれかにクローン化した発現カセット
から一過的に発現させることが可能であることを示した。もともとはリコンビナ
ーゼが発現しないように作製した宿主細胞を含む好適な宿主細胞でレスキューを
行うことができるので、この系は、リコンビナーゼを発現する宿主細胞を利用し
た系と比べて利点を有する。従って、特定の目的では、コトランスフェクション
したプラスミドの一つにリコンビナーゼ遺伝子を挿入することが、好ましい本発
明の態様である。したがって、図18に示すpBHGfrtΔEl,3由来のFLPを発現するゲ
ノムプラスミドpBHGfrtΔE1,3FLPを構築した。最初に、SwaI 制限酵素部位を含
む合成オリゴヌクレオチドを挿入することによって、pBHGfrtΔEl,3 を改変し、
pBHGfrtΔEl,3poly2を作製した。次に、示されているように、pdelElCMVFLP(Vo
lker Sandig, Merck Research Laboratories, Incから入手した)のHpaI-SalI断
片に含まれるFLPリコンビナーゼ発現カセットをpBHGfrtΔEl,3poly2 のSwaI 部
位に挿入した。従って、最終的なプラスミドpBHGfrtΔEl,3FLPは、コトランスフ
ェクションした細胞で一過性にFLPを発現し、pBHGfrtΔEl,3FLPのfrt 部位とコ
トランスフェクションした pCA35ΔfrtITR等のシャトル・プラスミドのfrt 部位
との間で部位特異的組換えを触媒し、図17Bに示されるものと同一の感染性の Ad
ベクターを生成するFLP発現カセットを含む。ゲノムプラスミドpBHGfrtΔEl,3F
LPは、発現カセットが最終的な組換えウイルスに導入されないように設計した。
【0113】 前述の実施例が限定的なものではないことは、当業者であれば理解できる。従
って、当業者であれば、上記のいずれかもしくはすべてのプラスミドが、loxP部
位もしくはCre発現カセットを含むようなゲノムプラスミド類縁体を容易に構築
することができる。ここで、該loxP部位および該 Cre発現カセットは、それぞれ
frt部位およびFLP発現カセットで置換したものである。従って、当業者であれば
、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBHGE3loxの構築物で示された方法でゲノムプラス
ミドpBHG11frt、pBHGdXIPfrt、およびpBHGE3frtを容易に構築することができる
【0114】 Cre-loxが媒介するもしくは FLP-frt が媒介する組換えの効率の比較を行った
典型的な実験結果を表15に示す。得られたプラーク数から、該2つを用いる系は
同等に高効率で機能することが明らかである。従って、2部位特異的リコンビナ
ーゼ系はウイルスベクターのレスキューに相互交換的に用いることができる。そ
れゆえ、Ad ゲノムの操作、ベクターの構築、fibre変異もしくは他のウイルス遺
伝子修飾のレスキューに関し、Cre-lox組換えの利用について開示されている同
時継続出願第09/251,955号; 同第08/719,217号; 同第08/486,459号; 同第09/286
,874号; 同第09/263,650号; 同第09/415,899号; 同第09/250,929号において、容
易にCreをFLPで、およびloxPをfrtで置換可能であることは、当業者であれば理
解できる。したがって、本発明は、FLPの利用とEl領域に外因性DNAを挿入した第
1世代のAdベクターの単離に好適であることのみに限定されず、上記の同時継続
出願に記載の開示されている方法で他のウイルスゲノムの領域を修飾することに
も用いることができる。本発明は、部位特異的リコンビナーゼCreおよび FLPの
利用に限定されず、部位特異的リコンビナーゼの使用により一般にも好適である
ことがさらに理解される。
【0115】 第1世代のAdベクターの単離に対するFLP-frt 系の有用性および広汎性を最大
限にするために、外因性DNAを含むAd 発現ベクターを効率よくかつ簡単に生産す
るために、本発明を当業者が利用できるような複数のシャトル・プラスミドをさ
らに構築した。該シャトル・プラスミドは小型で、容易に増殖し、本明細書に開
示される方法でベクターへのレスキューを行うための発現カセットもしくは cDN
Aの挿入に容易に用いることができる。多様なプロモーターの制御下にある遺伝
子(pDC511 および 512)を含む発現カセットの挿入もしくはMCMV プロモーター制
御下で発現するcDNAの挿入 (pDC515 and 516)に、当業者が容易に用いることの
できるプラスミド pDC511、512、515、および516の構築物を図19に示す。
【0116】 図19A: pDC411 の2347 bpのSalI/PshAI断片をfrt部位 AB19818: および AB19819: を含むオリゴで置換することによってプラスミド pDC511を構築した。 pDC412の2352 bpのBamHI/PshAI断片をfrt部位 および を含むオリゴで置換することによってプラスミドpDC512を構築した。
【0117】 図19B: MCMV プロモーター、マルチクローニング領域、およびSV40のポリAを
含むpMH4の728 bpのXbaI/BglII断片をpDC512のXbaI/BamHI部位に挿入して、プラ
スミド pDC515を構築した。
【0118】 図19C: pDC512の3229 bpのXbaI/BamHI断片、pDC316の568 bpのXbaI/SalI断片
、およびpMH4の160 bpのSalI/BglII断片をライゲーションして、プラスミドpDC5
16を構築した。
【0119】 本発明に記載の実施例は、限定的なものではなく、本明細書に記載の方法で他
のプロモーターおよび異なるマルチクローニング部位を有する多様な同様のシャ
トル・プラスミドを容易に構築可能であることは、当業者であれば理解できる。
【0120】 したがって、上記の開示から判るように、本発明のhthITR接合部を使用する際
には、重複Ad 配列が組換えで感染性ウイルスゲノムを生じるようにコトランス
フェクションするプラスミドを構築した場合には、例えば、図11aに示されるCre
が媒介する組換えもしくは図17Bに示される FLP-が媒介する組換えまたは相同組
換えによって、部位特異的機構で組換えが起こるのである。
【0121】 上記の実施例は限定的なものではない。従って、当業者であれば、 容易に上
記のプラスミド全てに対するloxP部位もしくは Cre発現カセットを含む類縁体シ
ャトル・プラスミドを構築できる。ここで 該loxP部位および該 Cre発現カセッ
トは、それぞれ、frt部位およびFLP発現カセットで置換されている。同様に、当
業者はそれぞれpΔElsplAlox、pΔElsplAloxΔ、pΔElsplBlox、pΔElsplBloxΔ
、pMH4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、pCA
14loxΔ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lox
、およびpCA35loxΔCreITRの構築物において開示された方法によってシャトル・
プラスミドpΔElsp1Afrt、pΔElsp1AfrtΔ、pΔElsplBfrt、pΔElsplBfrtΔ、pM
H4frt、pMH4frtΔ、pMH4frtΔlink、pCA13frt、pCA13frtΔ、pCA14frt、pCA14fr
tΔ、pCA36frt、pCA36frtΔ、pCA36frtΔFLPR、pCA36frtΔFLPT、pCA35frt、お
よびpCA35frtΔFLPITRを容易に構築できる。
【0122】 中心的機能を破壊することのないアデノウイルスゲノムの特定部位に上記と同
様の操作を行うことができることも、当業者であれば 理解できる。従って、例
えば、ゲノムの右端におけるfibre変異のレスキュー、E3挿入等も、本明細書に
開示・請求される方法に従って成される場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【0123】
【表1】 LacZベクター(±loxP)のレスキューのための293細胞および293Cre4細
胞のコトランスフェクション
【0124】
【表2】 LacZベクター(±loxP)のレスキューのための293細胞および293Cre4細
胞のコトランスフェクション
【0125】
【表3】 pBHGloxΔEl,3および各種シャトルベクタープラスミドによる同時ト
ランスフェクションでのAdベクターレスキューの効率a aコトランスフェクションには全て5μgのプラスミドを用いた。
【0126】
【表4】 pBHGloxΔEl,3およびCreをコードするシャトルプラスミドによる293
細胞のコトランスフェクションでのAdベクターレスキューの効率a a全てのコトランスフェクションを5μgの表記のシャトルプラスミドおよび5μg
のpBHGloxΔE1,3を用いて行った。b 図8Cに示されているプラスミド。
【0127】
【表5】 pFG173loxおよびpFG23loxによるコトランスフェクションでのAd中へ
のfibreおよびE4遺伝子のレスキューの効率 a図9に図示されているコトランスフェクション。b 図9Bに図示されている。c 図10に図示されている。
【0128】
【表6】 Cre発現カセットを含む、または含まないシャトルプラスミドでの293
細胞のコトランスフェクション後の組換えウイルスのレスキュー 5μgのpBHGloxAEl,3、および5μgの表記のシャトルプラスミド、または1μgのpF
G140により293細胞にコトランスフェクトした。
【0129】
【表7】 pBHGlOおよび単一ITRもしくはITR接合部を含むシャトルプラスミドに
よる293細胞のコトランスフェクション後のAdベクターのレスキュー効率
【0130】
【表8】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコト
ランスフェクション(±lox、±ITR接合部、±CRE) a全てのコトランスフェクションを5μgのシャトルプラスミド+ 5μgのpBHGloxΔ
El,3で行った。b 1μg/シャーレ
【0131】
【表9】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコト
ランスフェクション(±lox、±ITR接合部、±CRE) *これらコトランスフェクトしたそれぞれから5プラークを取り解析を行った。
すべてβ-galは+で、予測されるウイルスDNA構造を有していた。
【0132】
【表10】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコ
トランスフェクション(±lox、±ITR接合部、±CRE) *pFG140の場合を除き、5μgのpBHGloxΔEl,3でコトランスフェクションを行った
【0133】
【表11】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコ
トランスフェクション(±lox、±ITR接合部、±CRE) aFG140では1μg/シャーレで実施したことを除き、各プラスミド5μgでコトラン
スフェクションを行った。b 実施していない。
【0134】
【表12】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコ
トランスフェクション(±lox、±ITR接合部、±CRE) a実施していない。b 多すぎるため計数できない。
【0135】
【表13】 LacZベクターのレスキューに関する293細胞および293Cre4細胞のコ
トランスフェクション(プラスミドから、293細胞によって、またはその双方から
CREを発現する) a多すぎるため計数できない。
【0136】
【表14】 LacZのレスキューに関する293細胞、293Cre細胞、または293FLP細
胞のコトランスフェクション *これらコトランスフェクトしたそれぞれから6プラークを取り解析を行った。す
べてβ-galは+で、予測されるウイルスDNA構造を有していた。
【0137】
【表15】 リコンビナーゼを発現するゲノムプラスミドを用いたCre媒介性組
換えとFLP媒介性組換えのベクターレスキューの効率a a60mmシャーレの293細胞をそれぞれ2μgのプラスミドでコトランスフェクション
し、コトランスフェクション後10日目にプラークを計数した。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 Cre/lox組換えシステムを用いて、E1に発現カセットを含むAdベ
クターの分離法を示す。pBHGloxΔE1,3は、パッケージングシグナルならびに細
菌プラスミドの複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子を含むE1領域に欠失があ
るAdゲノムが環状化したプラスミドである。このプラスミドは、AdゲノムのpIX
遺伝子の5'端の近傍にloxP部位を有し、E3配列に欠失がある。「シャトルプラス
ミド」には、ウイルスゲノムのITRおよびパッケージングシグナル、外因性DNA(
例えば細菌のβ-ガラクトシダーゼ(LacZ))挿入用のポリクローニング部位、p
BHGloxΔE1,3上のloxP部位と同じ方向に挿入したloxP部位が含まれる。これら2
種のプラスミドを、Creを発現する293Cre細胞にコトランスフェクトすると、Cre
を介した組換えが起こり、外因性DNA挿入配列を含む感染性ウイルスを生じる接
合分子が生成される。本発明によれば、シャトルプラスミドのITRは、ヘッド-ヘ
ッドITR接合部に置換されており、部位特異的組換え法の効率を高めている。
【図2】 シャトルプラスミドがlox部位の3'端にAd配列を含み、lox部位の
右側に対してpBHGloxΔE1,3中のウイルス由来配列と重複する(相同である)点
を除き、図1で示したものと同様のコトランスフェクション実験を示す。したが
って、2種のプラスミドを293Cre細胞にコトランスフェクトしてCre/lox組換えに
より、または、重複配列間の相同組換えにより、E1に発現カセットを含むAdベク
ターを作製することができる。図に示したシャトルプラスミドを使用することで
、2通りの組換え様式による効率を比較することができる。本発明によれば、シ
ャトルプラスミドのITRは、ヘッド-ヘッドITR接合部と置換されており、部位特
異的組換え法の効率を高めている。
【図2A】 シャトルプラスミドの構築。プラスミドpCA35loxは、pCA36lox
中の短いMCMVプロモーターの制御下にあるLacZ発現カセットを含むXbaI/SalI断
片を、pCA35loxΔCreITRに由来する長いMCMVプロモーターの制御下にあるLacZ発
現カセットを含むXbaI/SalI断片と置換して構築した。プラスミドpCA35loxΔITR
は、pCA36lox中の単独の左端ITRを有するAseI断片を、pCA35loxΔCreITRに由来
するITR接合部を有するAseI断片と置換して構築した。プラスミドpCA35loxITRは
、pCA36lox中の単独の左端ITRを有するAseI断片を、pCA35loxΔCreITRに由来す
るITR接合部を有するAse断片と置換して構築した。プラスミドpCA36ITRは、pCA3
6中の単独の左端ITRを有するScaI/XbaI断片を、pCA35loxITRに由来するITR接合
部を有するScaI/XbaI断片と置換して構築した。プラスミドpCA35ITRは、pCA36IT
R中の短いMCMVプロモーターの制御下にあるLacZ発現カセットを含むXbaI/SalI断
片を、pCA35loxITRに由来する長いMCMVプロモーターの制御下にあるLacZ発現カ
セットを含むXbaI/SalI断片と置換して作製した。細い黒線は細菌に由来するプ
ラスミド配列を表し、太い黒線はAd配列を表す。loxP部位およびAd ITRの位置お
よび配向は、それぞれ白い三角および水平方向の小さな矢印で表す。図のプラス
ミド群は、実寸に対応して描いてはおらず、関連する制限酵素切断部位のみを示
してある。
【図3】 さまざまなクローニングに使用する4組(対)のオリゴヌクレオ
チドを示す。オリゴは、図に示す二本鎖のDNAセグメント作製に使用する前にア
ニールさせる。図に示すオリゴヌクレオチド対のうち3種は、loxP、Creリコンビ
ナーゼ認識部位のほか、診断目的または後のクローニング段階で利用する一か所
または複数の制限エンドヌクレアーゼ切断部位が含まれる。図に示すオリゴヌク
レオチド対のうち1種は、複数の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含み、さま
ざまなシャトルプラスミドにポリクローニング部位を導入するために使用された
【図4】 pBHG10(Bett,A.J., Haddara,W., Prevec,LおよびGraham,F.L,「
初期領域1および3における挿入および欠失を有するアデノウイルスの構築のため
の効果的で適応性のあるシステム(An efficient and flexible system for con
struction of adenovirus vectors with insertions or deletions in early re
gions 1 and 3)」 Proc.Natl.Acad.Sci.US 91:8802-8806,1994.、Microbix Bio
systemsより入手可能)に由来し、loxP部位がE1欠失の3'端かつpIX遺伝子の5'端
(上流)に挿入されているプラスミドの構築を示す。pBHGloxΔE1,3は、pBHG10
に由来する4604 bpのBst1107I断片を、pΔE1sp1Alox(図5および図5A参照)に由
来する2326 bpのEcoRV/Bst1107I断片と置換して構築した。外因性DNA配列は、E3
中の遺伝子をレスキューする目的でpBHGloxΔE1,3中の唯一PacI部位に挿入する
ことができる。
【図4A】 修飾されたE3欠失(pFG23dX1に由来)および、pIX遺伝子の5'
端のlox部位を含むプラスミドpBHGdX1Ploxの構築を示す。プラスミドpFG23dX1P
は、PacI部位を含むオリゴヌクレオチド(AB14566; 5'-CTAGCTTAATTAAG-3';こ
のオリゴは自己アニールして、XbaI切断で生じる突出部とのハイブリダイズ用に
5'端が突出した二本鎖DNAとなる)をpFG23dX1のXbaI部位に挿入して構築した。
得られたプラスミドpFG23dX1Pは、11392番目のヌクレオチドに位置する唯一のXb
aI部位が唯一のPacI部位に変更された点以外はpFG23dX1と同一である。プラスミ
ドpNG17は、pBHGloxΔE1,3に由来する6724 bpのSpeI/ClaI断片をpBluescriptに
クローニングして構築した。プラスミドpNG17dX1Pは、pNG17に由来する1354 bp
のSpeI/NdeI断片を、pFG23dX1Pに由来する2143 bpのSpeI/NdeI断片と置換して構
築した。最終的にプラスミドpBHGdX1Ploxは、pBHGloxΔE1,3に由来する6724 bp
のSpeI/ClaI断片を、pNG17dX1Pに由来する7513 bpのSpeI/ClaI断片と置換して構
築した。したがってpBHGdX1Ploxは、E3配列の欠失が、元となったプラスミドpBH
GloxΔE1,3上の大きな欠失ではなく、元となったもう一方のプラスミドpFG23dX1
(1878 bpが欠失)となるように修飾されたE3領域を含む。
【図4B】 pBHGE3およびpBHGloxΔE1,3に由来し、pBHGloxΔ1,3に由来す
る6724 bpのSpeI/ClaI断片を、pBHGE3に由来する9377 bpのSpeI/ClaI断片と置換
して構築したプラスミドpBHGE3loxの構築を示す。pBHGE3loxは、野生型のE3を保
持するウイルスベクターを分離するための完全なE3領域を含む。
【図4C】 CreをコードするAdゲノムプラスミドの構築を示す。プラスミ
ドpBHGloxpoly1は、BstBI、XbaIおよびSwaI部位と、ClaIと互換性のある末端を
含むオリゴヌクレオチド対を、pBHGloxΔE1,3のClaI部位に挿入して構築した。C
re発現カセットは、pBSKS-Cre1またはpBSKS-Cre2からSmaI-SpeI断片として回収
したものであり、図に示すようにSwaI、XbaIで切断したpBHGloxpoly1に挿入する
ことで、pBHGloxΔE1,3CreおよびpBHGloxΔE1,3CreRを得た。
【図5】 pΔE1SP1AおよびpΔE1SP1Bに由来し、loxP部位がパッケージング
シグナルの3'端に導入されたシャトルプラスミドの構築を示す。プラスミドpΔE
1SP1AloxおよびpΔE1SP1Bloxは、loxP部位を有するオリゴヌクレオチド(アニー
ルしたオリゴAB3233およびAB3234からなる)を、pΔE1sp1AのBglII部位に挿入し
て構築した。続いてNruIによる切断とScaIによる部分切断を行った後に連結して
pΔE1SP1AloxΔとpΔB1SP1BloxΔを得た。
【図5A】 シャトルプラスミドの構築。プラスミドpΔE1SP1Aloxおよびp
ΔE1SP1Bloxは、loxPリンカー(AB3233/AB3234)を、pΔE1SP1AおよびpΔE1SP1B
のBglII部位に挿入して構築した。プラスミドpΔE1SP1AloxITRおよびpΔE1SP1Bl
oxITRは、pΔE1SP1AloxおよびpΔE1SP1BloxのPvuI/XbaI断片を、pCA35loxITRのP
vuI/XbaI断片と置換して作製した。このようにして得られたプラスミド群は、単
独の左端ITRの代わりにITR接合部を含む。プラスミドpΔE1SP1AloxITR(MCS)お
よびpΔE1BloxITR(MCS)は、オリゴヌクレオチド(AB16853/AB16854)および(
AB16855/AB16856)を、それぞれpΔE1SP1AloxITRの唯一のXbaI/SalI部位とpΔE1
SP1BloxITRのXbaI/BamHI部位に挿入して作製した。
【図5B】 シャトルプラスミドの構築。プラスミドpDC111およびpDC112は
、pΔE1SPlAloxITR(MCS)およびpΔE1SP1BloxITR(MCS)をEheIで切断し、ScaI
で部分切断後に連結して作製した。得られたプラスミドは、相同組換えによるAd
ベクターのレスキューに必要不可欠な左端Ad配列を欠く。これらのシャトルプラ
スミドは、Adゲノムプラスミドをコトランスフェクトして、loxP部位間で組換え
が生じた場合にのみプラークを生じる。シャトルプラスミドpDC113は、pDC111の
PvuI/SalI部位を、pΔE1SP1A(BglII部位を欠く)に由来する同様の断片と置換
して作製した。プラスミドpDC114は、pDC112のPvuI/BamHI断片を、pΔE1SP1B(B
glII部位を欠く)由来の同様の断片と置換して作製した。プラスミドpDC113およ
びpDC114は、ITR接合部および相同組換え用のAd配列を含むシャトルプラスミド
であるが、元となったプラスミドに含まれるloxP部位を欠く。
【図5C】 図5Aに示すpΔE1SP1AloxITR(MCS)およびpΔE1BloxITR(MCS
)の構築に使用する合成オリゴヌクレオチド。
【図5D】 その他のシャトルプラスミドの構築。プラスミドpDC115および
pDC116は、pDCMH4lox(Ad del)およびpDCMH4lox(Ad del)リンカーのPvuI/Xba
I断片を、pCA35loxITRに由来する断片を含む同様のPvuI/XbaIのITR接合部と置換
して作製した。作製したプラスミドは、単独の左端ITRの代わりにITR接合部を含
む。プラスミドpDC117およびpDC118は、pCA14(BglIIを欠く)に由来するPvuI/S
alI断片を、PvuI/SalIで切断したpDC115およびpDC116に挿入して作製した。プラ
スミドpDC117およびpDC118にはloxP部位が含まれないが、相同組換えによりウイ
ルスをレスキューするためのAd配列を含む。
【図6】 pMH4lox、pMH4loxΔの構築を示す。これらのプラスミドは、本明
細書でpDCMH4lox(Ad del)およびpMH4loxΔlink(またさらに本明細書ではpDCM
H4lox(Ad del)linkerとも呼ぶ)と呼び、lox部位およびプロモーターならびに
ポリアデニル化シグナルおよび、外因性DNAを挿入して発現カセットとするため
のポリクローニング部位を含むプラスミドである(この際、マウスのサイトメガ
ロウイルスの最初期遺伝子のプロモーターにより転写が駆動される)。プラスミ
ドpVDB3(図6A参照)はpMH4に由来するが、複製起点はpBR322系ではなくpUC系で
ある。このプラスミドは、m.u. 1〜9.8を欠失して発現カセット(MCMVのIEプロ
モーターの0.5 k bp(-491〜+36)断片、それぞれ唯一のクローニング用制限酵
素切断部位(EcoRI、NheI、BamHI、およびSalI)とSV40のポリアデニル化シグナ
ル)で置換されたE1配列を伴うm.u. 0〜15.8のAd5配列をもつ。pMH4loxの作製に
際しては、loxPリンカー(AB3233/3234)を、pVDB3のBglII部位に導入した。Ad5
配列m.u. 9.8〜15.8は、HindIIIで切断して大腸菌のDNAポリメラーゼのクレノー
断片で処理した後にScaIで部分切断後に自己連結させてpMH4loxから欠失させた
。得られたシャトルプラスミドpMH4loxΔ(本明細書ではpDCMH4lox(Ad del)と
も呼ぶ)は、pBHGloxΔE1,3と併せて使用することで、Cre/loxを介した組換えに
よりAdベクターを作製することができる。クローニングをさらに容易にするプラ
スミドpMH4loxΔの作製に際しては、多種多様なクローニング領域を含むリンカ
ー(AB14626/14627)をEcoRI〜SalI部位に導入してpMH4loxΔlink(本明細書で
はpDCMH4lox(Ad del)Linkerとも呼ぶ)を得た。
【図6A】 pMH4に由来するが複製起点がpBR322系ではなくPUC系であるプ
ラスミドpVDB3の構築を示す。pMH4(Microbix Biosystems)のPvuI〜Bst1107I断
片を、pUC系(pNEB193、New England Biolabs)のプラスミドDNA複製起点を含む
pD47E1に由来するBst1107I〜PvuI断片と連結してpVDB3を得た。
【図7】 HCMV loxPプラスミドであるpCA13loxΔおよびpCA14loxΔの構築
を示す。これらのプラスミド中における外因性遺伝子の転写は、ヒトのサイトメ
ガロウイルスの最初期遺伝子プロモーターの制御を受ける。プラスミドpCA13(
ΔBglII)およびpCA14(ΔBglII)は、pCA13およびpCA14をBglIIで部分切断し、
クレノー処理して自己連結させて得た。合成loxPオリゴヌクレオチド(AB3233/3
234)を、pCA13(ΔBglII)およびpCA14(ΔBglII)中の唯一のBglII部位に導入
して、それぞれpCA13loxおよびpCA14loxを得た。Ad5配列m.u. 9.8〜15.8は、pCA
13loxとpCA14loxをNruIで切断してScaIで部分切断した後に自己連結させて除い
た。
【図8】 Ad5の左端の約340ヌクレオチド、β-ガラクトシダーゼをコード
する発現カセット、アデノウイルスベクターへのLacZ遺伝子レスキュー用のloxP
部位を含むシャトルプラスミドの一つpCA36loxΔの構築法を示す。合成したloxP
部位(AB3233/3234)を、pCA36のBglII部位に導入してpCA36loxを得た。このプ
ラスミドを次にNruIで切断してScaIで部分切断し、7646 bpの断片をゲル泳動で
精製後にセルフライゲーションさせてpCA36loxΔを得た。
【図8A】 (a)アデノウイルスDNAの5'端に連結した共有結合した末端タ
ンパク質(TP)を有するAdLC8c DNA-TP複合体および(b)発現カセットおよびlo
xP部位を含むシャトルプラスミドを293Cre細胞にコトランスフェクションするこ
とで、発現カセットを含むアデノウイルスベクターを分離する方法を図示する。
Creを介したAdLC8cのフロックスされたパッケージングシグナルの除去により、A
dLC8cゲノムはパッケージング不能となる。シャトルプラスミド上のlox部位とAd
LC8cゲノム間で起きるCreを介した第二の組換えにより、パッケージングシグナ
ル、外因性DNAインサート、唯一のlox部位をもつベクターが得られる。本発明に
よれば、シャトルプラスミドのITRは、ヘッド-ヘッドITR接合部で置換されてお
り、それにより部位特異的組換え法の効率を高めている。
【図8B】 制限酵素処理されたAdLC8c DNA-TPならびに発現カセットおよ
びloxP部位を含むシャトルプラスミドを293Cre細胞にコトランスフェクトして、
発現カセットを含むアデノウイルスベクターを単離する方法を図示する。AdLC8c
DNA-TPは、Ψに隣接したlox部位間にある唯一の制限酵素切断部位を認識するAs
uIIまたはSwaIなどのエンドヌクレアーゼで切断する。コトランスフェクション
前に制限酵素でウイルスDNAを切断すると、親ウイルスDNAの感染性が低下し、高
効率のCre介在性組換えと組み合わせると、図に示すようにコトランスフェクシ
ョンした293Cre細胞中に高効率にベクターが分離される。所望のベクターではな
く、元となったDNA断片を再び連結して感染性の親ウイルスを作ることは、AdLC8
c中でCreがフロックスされたパッケージングシグナルに作用することから避けら
れる。しかしながら、ウイルスのDNA-TP複合体を、図に示すように制限酵素で切
断すると、Creを介した組換えのレベルは十分高く、シャトルプラスミドと大き
なDNA-TP断片間の組換えにより、全てではないものの大半の子孫ウイルスが生じ
る。したがって、AdLC8cおよび同等のベクターの左端lox部位は必須ではない。
本発明によれば、シャトルプラスミドのITRは、ヘッド-ヘッドITR接合部と置換
することで部位特異的組換え法の効率を高めている。
【図8C】 Creを発現するシャトルプラスミドの構築法を図示する。Cre発
現カセットは、プラスミドpLC2から、2175 bpのBglII断片として得た(Chen,L.,
Anton,M.およびGraham,F.L., 「部位特異的組み換えCreを発現するヒト293細胞
系の作製及び特徴付け(Production and characterization of human 293 cell l
ines expressing the site-specific recombinase Cre)」, Somal.Cell and Mol
ec.Genet. 22:477-488,1996)。この断片の末端をクレノーDNAポリメラーゼで修
飾し、pCA36loxΔのEheI部位に挿入して、pCA36loxΔCreRおよびpCA36loxΔCreT
を得た。プラスミドpCA35loxΔCreITRは、pCA36loxΔCreT中の1402 bpのScaI/Kp
nI断片を、プラスミドpBR1029に由来する2753 bpのScaI/KpnI断片と置換して構
築した。プラスミドpCA35loxΔCreITRは、複製可能な線形のAd DNA分子を作るよ
うに機能することが知られているITR接合部を含む(Graham,F.L., 「ヒトアデノ
ウイルスDNAの共有結合的に近接した環は感染される(Covalently closed circle
s of human adenovirus DNA are infections)」, The EMBO J. 3,2917-2922,198
4)。
【図8D】 pBHGloxΔE1,3などのlox部位を有するAdゲノムプラスミドと、
Creを発現する「Lox」シャトルプラスミドを、安定にCreを発現する細胞を使用
する必要なく293細胞に導入してAd発現ベクターを作製するためのコトランスフ
ェクション実験を示す。この方法は、Adベクターの作製に適した任意の細胞に応
用することができる。例として、293細胞、およびPER-C6細胞(Fallaux ら, Hum
.Gene Ther. 1998,Sep.1;9(13):1909-17)、911細胞(Fallaux ら, Hum.Gene
Ther. 1996 Jan.20;7(2):215-222)ほかの細胞などがあるが、これらの細胞に
限定されることはない。本発明によれば、シャトルプラスミドのITRは、ヘッド-
ヘッドITR接合部と任意選択に置換されて、部位特異的組換え法の効率を高めて
いる。したがって、図8CのpCA35loxΔCreITRなどのシャトルプラスミドは、アデ
ノウイルスベクター作製にも適している。
【図8E】 CreをコードするAdゲノムプラスミドの構築を示す。プラスミ
ドpBHGloxΔは、pBHGloxΔE1,3をSpeIおよびPshAIで除いて構築した。Cre発現カ
セットは、プラスミドpLC2から2175 bpのBglII断片として回収したもので、pBHG
loxΔのBamHI部位に挿入して、それぞれpBHGloxΔCreRおよびpBHGloxΔCreLを得
た。pBHGloxΔCreRおよびpBHGloxΔCreLに由来する1238 bpのBst1107I/PacI断片
は、pBHGloxΔE1,3に由来する22380 bpのBst1107I/PacI断片と置換して、それぞ
れpBHGloxCreRおよびpBHGloxCreLを得た。
【図9】 Cre-lox組換えを用いてfibre変異を感染性ウイルス中にレスキュ
ーする方法を図示する。プラスミドpFG173loxはpFG173に由来し、Ad5ゲノムの大
部分を含むが、プラスミドを非感染性にするための配列は欠く(図では「欠失(
deletion)」と表示)細菌プラスミドである。配列は、抗生物質耐性遺伝子およ
び細菌プラスミドのDNA複製起点を含む細菌DNAで置換されている。欠失/置換の
上流(Adゲノムの通常のマップでは左側)に位置するlox部位は、約85 mu〜100
muのウイルスゲノムの右側領域を含み、右側ITRの大部分またはすべてを含むシ
ャトルプラスミド中にある同様のlox部位とのCreを介した組換えを目的としてプ
ラスミドに挿入されている。図に示した組換えにより、pFG173loxに由来するAd
ゲノムの左側の約78 muの配列、およびシャトルプラスミドに由来する約85〜100
muの配列を含む感染性ウイルスが作製される。本発明によれば、シャトルプラ
スミドのITRは、ヘッド-ヘッドITR接合部と選択的に置換されて、部位特異的組
換え法の効率を高めている。
【図9A】 lox部位を含み、fibre遺伝子に代わってアンピシリン耐性遺伝
子をもつプラスミドの構築法を図示する。図14に記載の構築物の詳細を記述する
pAB14loxを元に、fibreを含むClaI部位とBlpI部位間のDNA配列を、アンピシリン
耐性遺伝子およびプラスミドのDNA複製起点を含むDNAセグメントと置換する。ア
ンピシリン耐性遺伝子およびプラスミドのDNA複製起点を含むpCA14(Microbix B
iosystems)に由来するNdeI〜SspIのDNA断片を、クレノーDNAポリメラーゼで処
理し、同様に処理したpAB14loxのBlpI〜ClaI断片とライゲーションすることで、
アンピシリンおよびカナマイシンの両者に耐性でfibre遺伝子を欠くpAB14loxAが
得られる。
【図9B】 図9AのプラスミドをpFG173に連結して、Cre-lox組換えを利用
することでfibreまたはE4変異を感染性ウイルスへレスキューするためのpFG173l
oxの作製法を図示する。プラスミドpAB14loxΔは、カナマイシン耐性遺伝子の内
部および周囲を切断する制限酵素で処理し、図に示すようにpFG173を同様にEcoR
Iで切断する。2つのプラスミドに由来する断片化したDNAで大腸菌を形質転換す
ることで、pFG173の図で影をつけた部分の内部および周囲の配列が、pAB14loxΔ
に由来する対応配列で相同組換えにより置換された複製可能なプラスミドが形成
される(Chartier C, Degryse E, Gantzer M, Dieterle A, Pavirani A, Mehtal
i M.「大腸菌の相同組換えによる組換えアデノウイルスベクターの効果的作製(
Efficient generation of recombinant adenovirus vectors by homologous rec
ombination in Escherichia coli.)」J Virol 1996 Jul;70(7):4805-4810)
【図10】 loxP部位がfibre遺伝子の5'端近傍に挿入されたウイルスゲノ
ムの右側の約40%を含むプラスミドの構築法を示す。プラスミドpFG23dX1は、細
菌プラスミドpBR322にクローニングされたAd5ゲノムの右側の40%を含み、野生型
Ad5配列のヌクレオチド28,589(79.6 mu)からヌクレオチド30,470(mu. 84.8)
までのXbaI断片を欠き、loxP部位の挿入に適した唯一のXbaI部位が残されている
。2種の合成オリゴヌクレオチド(AB6920/AB6921、図3)からなるloxP部位をpFG
23dX1のXbaI部位にライゲーションして、fibreをコードする配列の上流にloxP部
位を含むpFG23dX1loxを得た。最終的に、loxP部位の5'端のすぐ近傍に位置する
唯一のBst11071部位〜BsiW1部位間にあるウイルス配列を欠失させてpFG23dX1lox
をさらに修飾してpFG23dX1loxcを得た。
【図11】 loxP部位とfibre遺伝子間にあるClaI部位に挿入された細菌の
β-ガラクトシダーゼをコードする発現カセットを有するpFG23dX1loxプラスミド
を示す。
【図11A】 2種の非感染性プラスミドを、各プラスミドのAd E3領域の5'
端に挿入されたlox部位間で部位特異的組換えにより連結し、複製可能でパッケ
ージング可能な組換えウイルスゲノムを得る方法を示す。両プラスミドとも、Ad
DNAの複製にトランスに必要なウイルスの機能を発現するトランスフェクトされ
た宿主細胞内でDNAの複製を可能とするITR接合部を含む。連結したDNAは、ウイ
ルスDNAの複製およびビリオンへのパッケージングにトランスおよびシスに必要
なすべてのウイルス機能をコードする。図に示す例では、Cre-lox組換えを利用
してfibre変異を感染性ウイルスへレスキューする方法が利用されているが、こ
の方法に限定することを意味しない。プラスミドpFG173loxはpFG173に由来し、A
d5ゲノムの大部分を含むが、プラスミドを非感染性にするための配列は欠く(図
では「欠失(deletion)」と表示)細菌プラスミドである。配列は、抗生物質耐
性遺伝子および細菌プラスミドのDNA複製起点を含む細菌のDNAで置換されている
。該配列は、Creリコンビナーゼをコードする発現カセットで追加的に置換する
ことができるであろう。欠失/置換の上流(Adゲノムの通常のマップでは左側)
に位置するlox部位は、約85〜100 muのウイルスゲノムの右側領域を含み、右側
のITRに「ヘッド-ヘッド(head to head)」で連結した右側ITRを含むシャトル
プラスミド中にある同様のlox部位とのCreを介した組換え目的でプラスミドに挿
入されている。2種のプラスミドDNAの直鎖状化およびlox部位間の部位特異的組
換えにより、pFG173loxに由来するAdゲノムの左側の約78 muの配列および、シャ
トルプラスミドに由来する約85〜100 muの配列を含む感染性ウイルスが得られる
【図12】 Adフロックスされたfibre(Adfloxed fibre)のDNA-TPと(任
意選択で変異している場合がある)fibre遺伝子の5'端にあるloxP部位を含むプ
ラスミドの293Cre細胞へのコトランスフェクションによるfibre変異のウイルス
ゲノムへのレスキューを示す。Adfloxfibre(図15)のウイルス調製物から抽出
したウイルスのDNA-TP複合体と、選択的に変異型のfibre遺伝子を有するプラス
ミドDNA(pFGdX1lox)を293細胞にコトランスフェクションして、選択的に変異
型fibreを発現する組換え型のウイルスを作製する。望ましいならば図に示すよ
うに、ウイルスDNAは末端タンパク質をウイルス粒子のDNAの末端に連結させた状
態で調製することができる。本開示から理解されるように、ヘッド-ヘッドITR接
合部をもつシャトルプラスミドは、ウイルスレスキューの効率を上昇すると考え
られる。
【図13】 フロックされたfibreのDNA-TPおよびloxP部位およびfibre遺伝
子の5'端に挿入した外因性遺伝子を含むプラスミドの293細胞へのコトランスフ
ェクションによる外因性DNA配列のウイルスゲノムへのレスキューを示す。Adflo
xfibre DNA-TPおよびpFG23dX1LacZloxを細胞にコトランスフェクションすると、
fibreの上流に挿入された外因性(例えばlacZ)遺伝子をもつベクターが得られ
る。上述したように図8Bの説明では、Adフロックスされたfibreゲノム中に示し
た右端のlox部位は、fibreの5'端に位置するlox部位の右側を切断する一種また
はそれ以上の制限酵素でDNA-TPを切断した場合に除くことができる。本開示から
理解されるように、ヘッド-ヘッドITR接合部をもつシャトルプラスミドは、ウイ
ルスレスキューの効率を上昇すると考えられる。
【図14】 loxP部位が隣接するfibre遺伝子を含むプラスミドの構築を示
す。プラスミドpAB14(Bett, A.J., Prevec,L.およびGraham,F.L. Packaging ca
pacity and stability of human adenovirus type 5 vectors. J.Virol.67: 591
1-5921,1993に記述)には、概算でmu 0〜1.0、10.6〜16.1、69.0〜78.3、および
85.8〜100のAd配列が含まれる。このプラスミドには、図に示すようにloxP部位
を含む合成オリゴヌクレオチドの挿入に適した唯一のXbaIおよびBlpIの制限酵素
切断部位がある。pAB14floxの構築に際しては、fibreの上流に位置するXbaI部位
にlox部位を挿入してpAB14loxを最初に作製した。次に、もう一か所のlox部位を
、pAB14中にあるfibre遺伝子の3'端と、E4遺伝子のコード領域間にある唯一のBl
pI部位に挿入した(pAB14flox:lox部位に隣接したfibre)。
【図15】 fibre遺伝子に隣接するloxP部位(フロックスされたfibre)を
含むウイルスゲノムの分離を示す。pAB14floxとpFG173のコトランスフェクショ
ン(Hanke,T., Graham,F.L., V.LulitanondおよびD.C.Johnson.「糖タンパク質E
およびIを発現する組換えアデノウイルスベクターを用いて誘導された単純疱疹
ウイルスIgG Fc受容体(Herpes simplex virus IgG Fc receptors induced usin
g recombinant adenovirus vectors expressing glycoproteins E and I.)」Vi
rology 177:437-444,1990に記載。PFG173はMicrobix Biosystemsから入手可能)
により、フロックスされたfibre遺伝子を含むウイルスであるAdfloxfibreが得ら
れる。
【図16A】 FLPリコンビナーゼおよびその標的部位である「frt」の本質
的特徴を示す。この酵素のコアとなる認識部位は、長さがわずか34 bp程度であ
ることから、標準的な組換えDNA法で制限酵素切断部位に挿入するための合成オ
リゴヌクレオチドとして容易に合成することができる。
【図16B】 pBHG10(Bett,A.J., Haddara,W., Prevec,L.およびGraham,F
.L 「初期領域1および3における挿入および欠失を有するアデノウイルスの構築
のための効果的で適応性のあるシステム(An efficient and flexible system f
or construction of adenovirus vectors with insertions or deletions in ea
rly regions 1 and 3)」 Proc.Natl.Acad.Sci.US 91:8802-8806,1994、Microbi
x Biosystemsから入手可能)に由来し、E1欠失の3'端かつpIX遺伝子の5'端(上
流)にfrt部位が挿入されているプラスミドの構築を示す。pBHGfrtΔE1,3は、pB
HG10に由来する4604 bpのBst1107I断片を、pΔE1sp1Afrtに由来する2316 bpのEc
oRV/Bst1107I断片と置換して構築した。pΔE1sp1Afrtは、frt部位を含むオリゴ
ヌクレオチドAB10352およびAB10353からなる合成DNAを、pΔE1sp1A(Bett,A.J.,
Haddara,W., Prevec,L.およびGraham,F.L 「初期領域1および3における挿入お
よび欠失を有するアデノウイルスの構築のための効果的で適応性のあるシステム
(An efficient and flexible system for construction of adenovirus vector
s with insertions or deletions in early regions 1 and 3)」 Proc.Natl.Ac
ad.Sci.US 91:8802-8806,1994、Microbix Biosystemsから入手可能)中の唯一の
BglII部位に挿入して構築した。外因性DNA配列は、E3中の遺伝子をレスキューす
る目的で、pBHGfrtΔE1,3の唯一のPacI部位に挿入することができる。
【図16C】 さまざまなクローニングに使用するオリゴヌクレオチドの配
列を示す。オリゴは、図に示すように、使用前にアニールさせて、制限酵素で切
断したプラスミドDNAへ挿入するための二本鎖DNAセグメントとする。オリゴヌク
レオチド対のうち3種(AB10352とAB10353、AB19509とAB19510、AB19816とAB1981
7)にはfrt、FLPリコンビナーゼの認識部位のほか、診断目的または後のクロー
ニング段階で利用する一か所または複数の制限エンドヌクレアーゼ切断部位が含
まれる。
【図17A】 LacZ発現カセットおよび、FLP-frt組換えによるAdベクター
へのレスキュー用のfrt部位を含むシャトルプラスミドの構築。プラスミドpCA35
ITRは、同時係属中の出願Advec 10IA、米国特許出願第09/415,899号に記載され
ている。このプラスミドには、短いMCMVプロモーターの制御下にあるLacZ発現カ
セットで置換したE1領域を伴うAd5ゲノムの左端が含まれる。frt部位は、E1の右
側に位置するAd配列を含むBglII/Ehel断片を、frt部位を含む合成オリゴヌクレ
オチドと置換することでプラスミドに導入した。すべてのAd配列を除いてITRお
よびパッケージングシグナルをレスキューすると、frt部位を含むゲノムプラス
ミドとのFLPを介した組換えによって、このプラスミドはLacZカセットのみを組
換えAdベクターへレスキューすることができる。これは、重複した相同組換え用
の配列を欠くためである。
【図17B】 E1に発現カセットを含むAdベクターを、FLP/frt組換えシス
テムを利用して分離する方法を示す。pBHGfrtΔE1,3は、パッケージングシグナ
ルならびに細菌プラスミドの複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子を含むE1領
域に欠失があるAdゲノムが環状化したものである。このプラスミドは、Adゲノム
のpIX遺伝子の5'端の近傍にfrt部位を有し、E3配列に欠失がある。「シャトルプ
ラスミド」であるpCA35frtΔITR(図17A)には、ウイルスゲノムのITR接合部お
よび、パッケージングシグナル、外因性DNA(本例では細菌のβ-ガラクトシダー
ゼ(LacZ))および、pBHGfrtΔE1,3(図16B)中のfrt部位と同じ方向に挿入し
たfrt部位が含まれる。これら2種のプラスミドを、FLPを発現する293FLP細胞に
コトランスフェクションすると、FLPを介した組換えが起こり、外因性DNA挿入配
列を含む感染性ウイルスを生じる連結分子が生成される。
【図18】 FLPをコードするAdゲノムプラスミドの構築を示す。プラスミ
ドpBHGfrtΔE1,3poly2は、BstBI、XbaIおよびSwaI部位ならびにClaIと互換性の
ある末端を含むオリゴヌクレオチド対をpBHGfrtΔE1,3のClaI部位に挿入して構
築した。FLP発現カセットは、pdelE1CMVFLPからHpaI〜SalI断片として回収した
ものであり、図に示すようにSwaIで切断したpBHGfrtΔE1,3poly2に挿入してpBHG
frtΔE1,3FLPを得た。
【図19A】 シャトルプラスミドpDC511およびpDC512の構築を示す。両シ
ャトルプラスミドには、frt部位が、パッケージングシグナルの3'端に導入され
ており、すべてのAd配列は欠失していて、ITR接合部およびパッケージングシグ
ナルをレスキューする。プラスミドpDC511およびpDC512は、発現カセットをパッ
ケージングシグナルとfrt部位間に位置する複数の任意のクローニング部位に挿
入するようにデザインされている。
【図19B】 pDC512およびpMH4に由来し、MCMVプロモーター、およびSV40
のポリアデニル化シグナルを含むpMH4(Addison,C.L., Hitt,M., Kunsken,D.お
よびGraham,F.L. 「アデノウイルスベクターの導入遺伝子発現のためのヒトおよ
びマウスサイトメガロウイルス初期遺伝子プロモーターの比較(Comparison of
the human versus murine cytomegalovirus immediate early gene promoters f
or transgene expression in adenoviral vectors.)」J.Gen.Virol.78:1653-16
61,1997)のXbaI-BglII断片を、pDC512のポリクローニング領域中のXbaI-BamHI
部位に挿入したシャトルプラスミドpDC515の構築を示す。
【図19C】 pDC512、pDC316およびpMH4に由来するシャトルプラスミドpD
C516の構築を示す。プラスミドpDC316は、既に開示した(このプラスミドをpDC1
16と命名した図5Dを参照)。PDC516は、MCMVプロモーターおよびポリクローニン
グ領域を含むpDC316のXbaI-SalI断片を、SV40のポリアデニル化シグナルを含むp
MH4のSalI-BglII断片と連結し、これらをpDC512のXbaI-BamHI部位に挿入して作
製した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),AU,CA,J P,US (72)発明者 エヌジー フィリップ カナダ国 オンタリオ州 ゲルフ ロドニ ー ブールバード 90 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA20 BA07 CA01 DA02 EA02 FA01 GA11 GA18 HA17 4B065 AA90Y AA95X AA95Y AB01 AC20 BA01 BA14 CA24 CA44 4C084 AA13 NA14 4C087 AA01 AA03 BC83 CA12 NA14

Claims (44)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞に以下を接触させる、または導入する段階を含む、感染
    性アデノウイルスを作製する方法: (a) 分子間組換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、またはパ
    ッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分なアデノウイルス配
    列をコードする第一の核酸配列;および (b) トランスで提供されたアデノウイルス複製因子、または該第一の核酸
    配列との分子間組み換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、またはパ
    ッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分なアデノウイルス配
    列をコードする第二の核酸配列; ただし、(i)該第一および該第二の核酸配列はそれぞれ、ヘッド-ヘッド(he
    ad to head)ITR接合部を含み;(ii)該第一の核酸と該第二の核酸はそれぞれ
    、リコンビナーゼ認識部位を含み、該第一および該第二の核酸は、該リコンビナ
    ーゼ認識部位を認識するリコンビナーゼと接触し;または(iii)該第一および
    該第二の核酸配列はそれぞれヘッド-ヘッドITR接合部を含み、且つ該第一の核酸
    と該第二の核酸はリコンビナーゼ認識部位を含み、該第一および該第二の核酸は
    該リコンビナーゼ認識部位を認識するリコンビナーゼに接触し;それによって該
    第一および該第二の核酸は、組換えを行って該感染性アデノウイルスを形成する
  2. 【請求項2】 第一の核酸配列が、分子間組換えの非存在下において、感染
    性の、複製可能な、またはパッケージング可能なアデノウイルスをコードするに
    は不十分であるアデノウイルス配列をコードする環状アデノウイルスDNA分子を
    含むプラスミドである、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 プラスミドが、細菌のDNA複製開始点、細菌における選択の
    ための抗生物質抵抗性遺伝子、感染性ウイルスの形成に不十分なアデノウイルス
    配列にするE1における欠失または改変、部位特異的リコンビナーゼをコードする
    発現カセット、およびその組合せを含む、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 アデノウイルスDNAがアデノウイルスパッケージングシグナ
    ルの欠失を有する、または該パッケージングシグナルが少なくとも一つの部位特
    異的リコンビナーゼ認識部位のいずれかの側に隣接する、請求項2記載の方法。
  5. 【請求項5】 アデノウイルスDNAが、パッケージングシグナルを超えて伸
    長するアデノウイルスE1配列、アデノウイルスfibre遺伝子配列、アデノウイル
    スE3遺伝子配列、アデノウイルスE4遺伝子配列、およびその組合せからなる群よ
    り選択されるアデノウイルス遺伝子の(i)欠失、(ii)改変、または(iii)部
    位特異的リコンビナーゼ認識部位に隣接する配列を含む、請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 アデノウイルスDNAが、pIX遺伝子の5'に存在するlox部位、f
    rt部位、またはその双方を有する、請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 プラスミドがpBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBH
    GE3lox、pFG173lox、pBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択される、請求項2記
    載の方法。
  8. 【請求項8】 第一の核酸配列が、共有結合したアデノウイルス末端タンパ
    ク質TPを含むアデノウイルスDNAのセグメントである、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 第一の核酸配列がAdLC8cDNA-TP、またはadfloxfibreDNA-TP
    である、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 第二の核酸配列が以下を含むプラスミドである、請求項1
    記載の方法: (i)アデノウイルスゲノムの最も左側の約350ヌクレオチドの中に含まれるヘ
    ッド-ヘッドITR接合部、およびパッケージングシグナル; (ii)マルチクローニング部位、外因性DNAまたは発現カセット;ならびに選
    択的に (iii)マルチクローニング部位、外因性DNA、または発現カセットの3'のlox
    Pまたはfrt部位。
  11. 【請求項11】 pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1
    BloxΔ、pMH4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lo
    x、pCA14loxΔ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA
    35lox、pCA35loxΔCreITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116
    、pDC117、pDC118、その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、その
    ような改変がヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含む、請求項10記載の方法
  12. 【請求項12】 以下を含む、組換えアデノウイルスベクター系: (a) (i)分子間組換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、もし
    くはパッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデノ
    ウイルス配列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコンビナーゼ
    によって認識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を
    含む第一の核酸配列、または(ii)アデノウイルス末端タンパク質に共有結合し
    た感染性の、複製可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルスをコー
    ドするために十分であるアデノウイルス配列をコードする第一の核酸配列であっ
    て、部位特異的リコンビナーゼによって認識される少なくとも一つの部位特異的
    リコンビナーゼ認識標的部位を含む第一の核酸配列であり、該第一の核酸と該部
    位特異的リコンビナーゼとの接触の結果、分子間組換えの非存在下で、該感染性
    の、複製可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルスが複製もしくは
    パッケージング欠損となるように、該複製可能なアデノウイルスからの配列が切
    除される配列、または(iii)ヘッド-ヘッドITR接合部が第二の核酸配列に存在
    する場合、該第二の核酸配列における配列との相同的組換えが起こるように、十
    分な重なり合うアデノウイルス核酸配列のいずれか; (b) トランスで提供されたアデノウイルス複製因子、もしくは該第一の核
    酸配列との分子間組み換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、もしく
    はパッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデノウ
    イルス配列をコードする第二の核酸配列であって、(i)少なくとも一つのヘッ
    ド-ヘッドITR接合部、および該第一の核酸配列との相同的組換えを許容するため
    に十分なアデノウイルス配列、(ii)該第一の核酸における該部位特異的リコン
    ビナーゼ認識標的部位を認識する同じ部位特異的リコンビナーゼによって認識さ
    れる、該第一の核酸における該リコンビナーゼ認識標的部位と十分に同一である
    少なくとも一つのリコンビナーゼ認識標的部位、または(iii)その組合せを含
    む第二の核酸配列、 ただし、該第一および該第二の核酸配列を組みあわせて、相同的もしくは部位
    特異的分子間組換えが起こった後、感染性アデノウイルスの産生が起こり、且つ
    該部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を認識する部位特異的リコンビナーゼ
    が(i)該第一および該第二の核酸が導入される細胞によって発現されるか、(i
    i)該第一の核酸、該第二の核酸、もしくはその両者によって機能的にコードさ
    れるか、(iii)第三の核酸からの発現によってトランスで提供されるかもしく
    は活性タンパク質としてトランスで提供されるか、または(iv)存在せず、組換
    えは、この場合ヘッド-ヘッドITR接合部が存在する限り、相同的組換えを通じて
    起こるかのいずれかである。
  13. 【請求項13】 以下を含む、請求項12記載の組換えアデノウイルスベクタ
    ー系: (a) pBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGloxΔE1,3Cre、およびpBHGloxΔE1,3
    CreR、からなる群より選択され、環状アデノウイルスDNA分子を含み、選択的に
    細菌のDNA複製開始点および細菌において選択のための抗生物質抵抗性遺伝子を
    含み、およびさらなるE1配列、E3、E4、またはfibreのパッケージングシグナル
    の欠失または改変を有し、および選択的にウイルスのpIX遺伝子、E3、E4、また
    はfibreに隣接して存在するlox P部位を有する第一のプラスミドであって、選択
    的にCre、FLPまたはもう一つの部位特異的リコンビナーゼをコードするプラスミ
    ド; (b) pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1BloxΔ、pMH
    4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、pCA14lox
    Δ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lox、pCA3
    5loxΔCreITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116、pDC117、pD
    C118、その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのような改変が
    ヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含む、第二のプラスミド: (i)Adゲノムの最も左の約350ヌクレオチドまたはヘッド-ヘッドITR接合部
    の中に含まれる左ITRの全てまたはほとんど、およびパッケージングシグナル; (ii)マルチクローニング部位、外因性DNAまたは発現カセット;および選
    択的に (iii)該マルチクローニング部位、外因性DNA、または発現カセットの3'の
    lox Pまたはfrt部位;および (c) 通常、アデノウイルスの複製を支持することができ、選択的に、リコ
    ンビナーゼCre、FLP、またはlox P部位、frt部位、もしくは両者のあいだの部位
    特異的組換えを触媒することができるもう一つの部位特異的リコンビナーゼを発
    現する細胞株。
  14. 【請求項14】 細胞がアデノウイルスE1をさらに発現する、請求項12記載
    の組換えアデノウイルスベクター系。
  15. 【請求項15】 第一のプラスミドおよび第二のプラスミドが細胞にコトラ
    ンスフェクトされて、左端、マルチクローニング部位、外因性DNA、または該第
    一のプラスミドに由来するウイルスDNAの残りの部分に結合した該第二のプラス
    ミドに由来する発現カセットを含む、感染性ウイルスベクターを生成する、請求
    項12記載の組換えアデノウイルスベクター系。
  16. 【請求項16】 細胞に、lox P部位が隣接するパッケージングシグナルを
    含むAdLC8、AdLC8cluc、AdLC8cCE199からなる群より選択されるウイルスから共
    有結合したアデノウイルス末端タンパク質TPを保持するように抽出された第一の
    DNAと、パッケージングシグナルを含む第二のDNAとをコトランスフェクトさせ、
    該第二のDNAが、pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1Blox
    Δ、pMH4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、p
    CA14loxΔ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lo
    x、pCA35loxΔCreITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116、pDC
    117、pDC118、その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのよう
    な改変がヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含み、それによって、該第一の
    DNAの該パッケージングシグナルに隣接する該lox P部位が、該細胞において発現
    されたCreリコンビナーゼによって、該パッケージングシグナルの切除を誘導す
    るように作用し、該第二のDNAのlox P部位とのCre媒介組み換えによって結合し
    てその中でパッケージングシグナルを再構築しなければ、そのDNAをビリオンに
    パッケージングすることができない非感染性ウイルスゲノムが生成される、請求
    項12記載の組換えアデノウイルスベクター系。
  17. 【請求項17】 コトランスフェクションの前に、該第一のDNAがlox P部位
    のあいだを切断する制限酵素によって切断される、請求項16記載の組換えアデノ
    ウイルスベクター系。
  18. 【請求項18】 以下を含む、組換えアデノウイルスベクターを構築するた
    めのキット: (a) (i)分子間組換えの非存在下で、感染性の、複製可能な、もしくはパ
    ッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分なアデノウイルス配
    列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコンビナーゼによって認
    識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を含む第一の
    核酸配列、(ii)アデノウイルス末端タンパク質に共有結合した感染性の、複製
    可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルスをコードするために十分
    なアデノウイルス配列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコン
    ビナーゼによって認識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標
    的部位を含む第一の核酸配列であり、該第一の核酸を該部位特異的リコンビナー
    ゼに接触させた結果、分子間組換えの非存在下で、該感染性の、複製可能な、も
    しくはパッケージング可能なアデノウイルスが、複製もしくはパッケージング欠
    損となるように、該複製可能なアデノウイルスからの配列が切除される配列、ま
    たは(iii) 第二の核酸配列における類似の配列との相同的組換えを許容する
    ために十分なアデノウイルス配列のいずれか; (b) トランスで提供されたアデノウイルス複製因子もしくは該第一の核酸
    配列との分子間組換えの非存在下で、感染性の、複製可能な、もしくはパッケー
    ジング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデノウイルス配列
    をコードする第二の核酸配列であって、(i)該第一の核酸において該部位特異
    的リコンビナーゼ認識標的部位を認識する同じ部位特異的リコンビナーゼによっ
    て認識される、該第一の核酸における該リコンビナーゼ認識標的部位と十分に同
    一である少なくとも一つのリコンビナーゼ認識標的部位、(ii)ヘッド-ヘッドI
    TR接合部、および該第一の核酸において類似の配列との相同的組換えを許容する
    十分なアデノウイルス配列、または(iii)その組合せを含む、第二の核酸配列
    ;ならびに (c) 該要素(a)および該要素(b)が、コトランスフェクトされて、相同
    的組み換えまたは該リコンビナーゼ認識部位を認識するリコンビナーゼの作用に
    よって組み換えられた際に、感染性の組換えアデノウイルスベクターが生成され
    る細胞。
  19. 【請求項19】 要素(a)がpBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pB
    HGE3lox、およびpBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択される、請求項18記載の
    キット。
  20. 【請求項20】 要素(b)が、pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1B
    lox、pΔE1sp1BloxΔ、pMH4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13l
    oxΔ、pCA14lox、pCA14loxΔ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36l
    oxΔCreT、pCA35lox、pCA35loxΔCreITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pD
    C115、pDC116、pDC117、pDC118、その組合せ、およびその改変からなる群より選
    択され、そのような改変がヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含む、請求項
    18記載のキット。
  21. 【請求項21】 上記の(c)の細胞が、293細胞、Creを発現する293細胞、
    Creを発現するPER-C6細胞、Creを発現する911細胞からなる群より選択され、リ
    コンビナーゼ認識部位がlox部位である、請求項18記載のキット。
  22. 【請求項22】 アデノウイルス遺伝子変異が、アデノウイルスベクター組
    換え体の中にレスキューされる、請求項12記載の組換えアデノウイルスベクター
    系。
  23. 【請求項23】 アデノウイルスベクター組換え体の中にレスキューされた
    アデノウイルス遺伝子変異が、アデノウイルスfibre遺伝子、アデノウイルスE4
    遺伝子、アデノウイルスE3遺伝子、またはその組合せにおける変異である、請求
    項22記載の組換えアデノウイルスベクター系。
  24. 【請求項24】 第一の核酸配列が、リコンビナーゼ認識部位と、アデノウ
    イルスfibre遺伝子における欠失とを含む、請求項12記載の組換えアデノウイル
    スベクター系。
  25. 【請求項25】 以下を含む、請求項12記載の組換えアデノウイルスベクタ
    ー系: (a) lox P、frt部位、またはlox Pとfrt部位の両者が隣接するfibre遺伝子
    を有する第一のアデノウイルスベクター; (b) 細菌の複製開始点、細菌の抗生物質抵抗性マーカー、アデノウイルスf
    ibre遺伝子における欠失、外因性DNAインサート、fibre遺伝子の左に存在する単
    一のlox Pまたはfrt部位、およびlox Pまたはfrt部位とfibre遺伝子とのあいだ
    の外因性DNAインサートを含み、選択的に、ヘッド-ヘッドITR接合部も含む、fib
    re遺伝子を含むAdゲノムの右端を含むプラスミド。
  26. 【請求項26】 pBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBHGE3lox、pF
    G173lox、およびpBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択される、アデノウイルス
    ベクター。
  27. 【請求項27】 少なくとも一つのヘッド-ヘッドITR接合部を含む、pΔE1s
    p1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1BloxΔ、pMH4lox、pMH4loxΔ
    、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、pCA14loxΔ、pCA36lox、p
    CA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pFG23dX1lox、pAB14loxΔ、pAB1
    4flox、pCA35loxΔCreITR、およびその誘導体からなる群より選択される、アデ
    ノウイルスベクター。
  28. 【請求項28】 請求項26記載のアデノウイルスベクターを含む細胞。
  29. 【請求項29】 請求項27記載のアデノウイルスベクターを含む細胞。
  30. 【請求項30】 pBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBHGE3lox、pF
    G173lox、およびpBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択される第一のベクターと
    、pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1BloxΔ、pMH4lox、p
    MH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、pCA14loxΔ、pCA
    36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lox、pCA35loxΔC
    reITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116、pDC117、pDC118、
    その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのような改変がヘッド
    -ヘッドITR接合部を含めることを含む、第二のベクターとを導入された細胞。
  31. 【請求項31】 以下の部位特異的組み換えによって生成されたアデノウイ
    ルスの有効量をレシピエントに投与することを含む、そのような治療を必要とす
    るレシピエントにワクチンを接種する、または遺伝子治療を行う方法: (a) (i)分子間組換えの非存在下で、感染性で、複製可能な、もしくはパ
    ッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分なアデノウイルス配
    列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコンビナーゼによって認
    識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を含む第一の
    核酸配列、(ii)アデノウイルス末端タンパク質に共有結合した感染性の、複製
    可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルスをコードするために十分
    なアデノウイルス配列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコン
    ビナーゼによって認識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標
    的部位を含む第一の核酸配列であり、該第一の核酸を該部位特異的リコンビナー
    ゼに接触させた結果、分子間組換えの非存在下で、該感染性の、複製可能な、も
    しくはパッケージング可能なアデノウイルスが、複製もしくはパッケージング欠
    損となるように、該複製可能なアデノウイルスからの配列が切除される配列、ま
    たは(iii)第二の核酸配列における類似の配列との相同的組換えを許容するた
    めに十分なアデノウイルス配列を含む第一の核酸のいずれか; (b) トランスで提供されたアデノウイルス複製因子もしくは該第一の核酸
    配列との分子間組換えの非存在下で、感染性の、複製可能な、もしくはパッケー
    ジング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデノウイルス配列
    をコードする第二の核酸配列であって、(i)該第一の核酸において該部位特異
    的リコンビナーゼ認識標的部位を認識する同じ部位特異的リコンビナーゼによっ
    て認識されるような、該第一の核酸における該リコンビナーゼ認識標的部位と十
    分に同一である少なくとも一つのリコンビナーゼ認識標的部位、(ii)該第一の
    核酸において類似の配列との相同的組換えを許容するために十分なアデノウイル
    ス配列と、少なくとも一つのヘッド-ヘッドITR接合部、または(iii)その組合
    せを含む、第二の核酸配列; ただし、該第一および該第二の核酸配列を組みあわせて、部位特異的分子間組
    換えが起こった後に、感染性アデノウイルスの産生が起こり、選択的に部位特異
    的組み換えを用いる場合、該部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を認識する
    部位特異的リコンビナーゼが、(i)中に該第一および該第二の核酸が導入され
    る細胞によって発現されるか、(ii)該第一の核酸、該第二の核酸、もしくは両
    者によって機能的にコードされるか、または(iii)第三の核酸からの発現によ
    ってトランスで提供されるかもしくは活性タンパク質としてトランスで提供され
    るかのいずれかである。
  32. 【請求項32】 該第一の核酸が、pBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plo
    x、pBHGE3lox、pFG173lox、およびpBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択され、
    該第二の核酸が、pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1Blox
    Δ、pMH4lox、pMH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、p
    CA14loxΔ、pCA36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lo
    x、pCA35loxΔCreITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116、pDC
    117、pDC118、その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのよう
    な改変がヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含む、請求項31記載の方法。
  33. 【請求項33】 pBHGloxΔE1,3、pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBHGE3lox、pF
    G173lox、およびpBHGloxΔE1,3Creからなる群より選択される第一のベクターと
    、pΔE1sp1Alox、pΔE1sp1AloxΔ、pΔE1sp1Blox、pΔE1sp1BloxΔ、pMH4lox、p
    MH4loxΔ、pMH4loxΔlink、pCA13lox、pCA13loxΔ、pCA14lox、pCA14loxΔ、pCA
    36lox、pCA36loxΔ、pCA36loxΔCreR、pCA36loxΔCreT、pCA35lox、pCA35loxΔC
    reITR、pDC111、pDC112、pDC113、pDC114、pDC115、pDC116、pDC117、pDC118、
    その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのような改変がヘッド
    -ヘッドITR接合部を含めることを含む第二のベクターとの組み換え産物を含む組
    成物であって、該第一のベクターと該第二のベクターを選択的にCreリコンビナ
    ーゼの存在下で接触させる組成物。
  34. 【請求項34】 第一のベクターおよび第二のベクターが細胞の内側で接触
    し、組み換え産物が該細胞から回収される、請求項33記載の組成物。
  35. 【請求項35】 以下を含む、請求項12記載の組換えアデノウイルスベクタ
    ー系: (a) 分子間組換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、もしくは
    パッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデノウイ
    ルス配列をコードする第一の核酸配列であって、部位特異的リコンビナーゼによ
    って認識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位を含む
    第一の核酸配列、または(ii)アデノウイルス末端タンパク質に共有結合した感
    染性の、複製可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルスをコードす
    るために十分であるアデノウイルス配列をコードする第一の核酸配列であって、
    (A)少なくとも一つの制限酵素認識部位を認識する制限酵素による該核酸の制
    限によって、部位特異的リコンビナーゼ認識標的部位が無傷のままであるが、該
    核酸が複製、パッケージング、もしくは感染欠損となる、少なくとも一つの制限
    酵素認識部位を含む、または(B)該核酸が、部位特異的リコンビナーゼによっ
    て認識される少なくとも一つの部位特異的リコンビナーゼ認識部位を含み、該第
    一の核酸と該部位特異的リコンビナーゼとの接触の結果、分子間組換えの非存在
    下で、該感染性の、複製可能な、もしくはパッケージング可能なアデノウイルス
    が複製、またはパッケージング欠損となるように、該複製可能なアデノウイルス
    からの配列が切除される、第一の核酸配列; (b) トランスにおいて提供されたアデノウイルス複製因子もしくは該第一
    の核酸配列との分子間組み換えの非存在下において、感染性の、複製可能な、も
    しくはパッケージング可能なアデノウイルスをコードするには不十分であるアデ
    ノウイルス配列をコードする第二の核酸配列であって、該第一の核酸における該
    部位特異的リコンビナーゼ認識標識部位を認識する同じ部位特異的リコンビナー
    ゼによって認識される、該第一の核酸における該リコンビナーゼ認識標的部位と
    十分に同一である少なくとも一つのリコンビナーゼ認識標的部位と、少なくとも
    一つのヘッド-ヘッドITR接合部とを含む第二の核酸配列、 ただし、該第一および該第二の核酸配列を組みあわせて、部位特異的分子間組
    換えが起こった後に、感染性アデノウイルスの産生が起こり、および該部位特異
    的リコンビナーゼ認識標的部位を認識する部位特異的リコンビナーゼが(i)該
    第一および該第二の核酸が導入される細胞によって発現されるか、(ii)該第一
    の核酸、該第二の核酸、もしくは両者によって機能的にコードされるか、または
    (iii)第三の核酸からの発現によってトランスで提供されるかもしくは活性タ
    ンパク質としてトランスで提供されるかのいずれかである。
  36. 【請求項36】 プラスミドが細胞に導入された場合に、単独では感染性ア
    デノウイルスを生成するために十分なアデノウイルス配列を含まないが、両者の
    プラスミドを細胞に導入すると、組換えが起こって感染性の組換えアデノウイル
    スが形成される、二つのプラスミドを含む、改善されたアデノウイルスベクター
    系であって、該改善が(a)少なくとも一つのプラスミドに少なくとも一つのヘ
    ッド-ヘッドITR接合部を含むこと、または(b)第一のプラスミド、第二のプラ
    スミド、該第一および該第二のプラスミドの両者、または中に該第一および該第
    二のプラスミドが導入される細胞のいずれかにおいて、活性部位特異的リコンビ
    ナーゼをコードするために十分な配列を含むこと、ならびに該第一および該第二
    のプラスミドが該部位特異的リコンビナーゼに接触した際に、該第一のプラスミ
    ドと該第二のプラスミドにおける該リコンビナーゼ認識配列のあいだで部位特異
    的組み換えが起こるように、該第一および該プラスミドにリコンビナーゼ認識配
    列を含むこと、または(c)(a)と(b)の組合せを含む、改善されたアデノウイル
    スベクター系。
  37. 【請求項37】 各プラスミドが単独では、組換えの際に感染性アデノウイ
    ルスベクターが産生される感染性アデノウイルスベクターをコードするには不十
    分なアデノウイルス配列を含む、感染性アデノウイルスベクターを作製するため
    の二プラスミド系であって、該二プラスミド系のそれぞれのプラスミドが、(a
    )ヘッド-ヘッドITR接合部;(b)該二プラスミド系の両者のプラスミドが部位
    特異的リコンビナーゼに接触すると、該二プラスミド系のプラスミドのあいだに
    部位特異的組み換えが起こるようなリコンビナーゼ認識部位を含む、または(c
    )該二プラスミド系が(a)と(b)の両者を含む、二プラスミド系。
  38. 【請求項38】 以下を含む、請求項12記載の組換えアデノウイルスベクタ
    ー系: (a) pBHGfrtΔE1,3、pBHG11frt、pBHGdX1Pfrt、pBHGE3frt、およびpBHGfrt
    ΔE1,3FLPからなる群より選択され、環状アデノウイルスDNA分子を含み、選択的
    に細菌のDNA複製開始点および細菌において選択のための抗生物質抵抗性遺伝子
    を含み、およびさらなるE1配列、E3、E4、またはfibreのパッケージングシグナ
    ルの欠失または改変を有し、および選択的にウイルスのpIX遺伝子、E3、E4、ま
    たはfibreに隣接して存在するfrt部位を有する第一のプラスミドであって、選択
    的にCre、FLPまたはもう一つの部位特異的リコンビナーゼをコードするプラスミ
    ド; (b) pCA35ΔfrtITR、pDC511、pDC512、pDC515、pDC516、その組合せ、およ
    びその改変からなる群より選択され、そのような改変がヘッド-ヘッドITR接合部
    を含めることを含む、第二のプラスミド: (i)Adゲノムの最も左の約350ヌクレオチドまたはヘッド-ヘッドITR接合部
    の中に含まれる左ITRの全てまたはほとんど、およびパッケージングシグナル; (ii)マルチクローニング部位、外因性DNA、または発現カセット;および
    選択的に (iii)該マルチクローニング部位、外因性DNA、または発現カセットの3'の
    lox Pまたはfrt部位;ならびに (c) 通常、アデノウイルスの複製を支持することができ、選択的に、リコ
    ンビナーゼCre、FLP、またはlox P部位、frt部位、または両者のあいだの部位特
    異的組換えを触媒することができるもう一つの部位特異的リコンビナーゼを発現
    する細胞株。 【請求項38】 要素(a)が、pBHGfrtΔE1,3、pBHG11frt、pBHGdX1Pfrt、
    pBHGE3frt、およびpBHGfrtΔE1,3FLPからなる群より選択される、請求項18記載
    のキット。
  39. 【請求項39】 要素(b)が、pCA35ΔfrtITR、pDC511、pDC512、pDC515、
    pDC516、その組合せ、およびその改変からなる群より選択され、そのような改変
    がヘッド-ヘッドITR接合部を含めることを含む、請求項18記載のキット。
  40. 【請求項40】 上記の(c)の細胞が、293細胞、FLPを発現する293細胞、
    FLPを発現するPER-C6細胞、FLPを発現する911細胞からなる群より選択され、リ
    コンビナーゼ認識部位がfrt部位である、請求項18記載のキット。
  41. 【請求項41】 Cre-loxをFLP-frtと組みあわせて用いることを含む、DNA
    を組み換えるための方法。
  42. 【請求項42】 FLP-frt系がCre-loxによって調節される分子スイッチを含
    むカセットをレスキューするために用いられる、またはその逆である、請求項41
    記載の方法。
  43. 【請求項43】 FLP-frt系がCre発現カセットをレスキューするために用い
    られる、またはその逆である、請求項41記載の方法。
  44. 【請求項44】 pBHG11lox、pBHGdX1Plox、pBHGE3lox、pΔE1sp1Afrt、pΔ
    E1sp1AfrtΔ、pΔE1sp1Bfrt、pΔE1sp1BfrtΔ、pMH4frt、pMH4frtΔ、pMH4frtΔ
    link、pCA13frt、pCA13frtΔ、pCA14frt、pCA14frtΔ、pCA36frt、pCA36frtΔ、
    pCA36frtΔFLPR、pCA36frtΔFLPT、pCA35frt、およびpCA35frtΔFLPITRの構築の
    際に開示された方法によって、pBHG11frt、pBHGdX1Pfrt、およびpBHGE3frtから
    なる群より選択される核酸構築物。
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