JP2003513007A - Hivの経上皮伝染を予防する組成物および方法 - Google Patents

Hivの経上皮伝染を予防する組成物および方法

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Abstract

(57)【要約】 ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストを用いた、HIVの経皮的伝染を妨害する方法、組成物および製品を提供する。ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストは、ウイルス暴露部位でのウイルス性伝染を妨害する。ウイルス性伝染の妨害は、ICAM-1のLFA-1への結合の妨害を必要としない。ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストは、避妊具上もしくは内に、または、母乳補助剤および乳児用製剤として経口液剤で、粘膜表面へ適用されうる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 米国政府は、NIDAおよびNIAIDにより各々支援された基金番号DA 09717、DA 09
973、DA 05972、およびAI 07417に基づき、本発明における一定の権利を有する
。本出願は、1999年6月24日に出願され、その全体が本明細書に参照として組み
入れられている、米国特許仮出願第60/140,698号に対する優先権を主張するもの
である。
【0002】 発明の分野 本発明の分野は、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)の伝染を防止するための方
法、組成物および製造品に関する。特に好ましい態様において、本発明はICAM-1
アゴニスト/アンタゴニスト及び粘膜表面を介するHIV伝染の防止のためのそれら
の使用に関する。
【0003】 参照 いくつかの刊行物が本明細書において参照されている。これらの刊行物に対す
る完全な引用が以下に記載されている。これらの刊行物の開示は、特に記さない
限りは、その全体が本明細書に参照として組み入れられている。
【0004】 発明の背景 ウイルス伝染の機構を理解することは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の起因物
質であるHIVの広がりを防止するために重要である。AIDSの汎発性の世界的流行
を制限することは、大部分においてHIVの更なる伝染および蔓延を防ぐ能力に依
存する。
【0005】 HIV-1の性的伝染の重要な特徴は、最初に本ウイルスに暴露される膣表面また
は粘膜表面が、HIV-1感染症に通常関連している細胞の内ではなく、上皮細胞に
より被覆されていることである。この障壁を通過するために、ウイルスは、(1)
上皮細胞を直接横断または感染、(2)上皮細胞間を移動することができる細胞と
会合、もしくは、(3)上皮細胞間に広がる感染可能な宿主細胞と接触するように
なるかしなければならない。これら全ての可能性を裏付ける実験的証拠が存在す
る。先行研究は、上皮細胞は生産的に感染され得るが、これらの細胞へのおよび
細胞からの伝染には、感染細胞または感染可能な細胞との直接相互作用が必要で
あることを示唆している。
【0006】 潜伏的にHIV感染した白血球、CD4白血球および、無関係の個体由来の上皮細胞
の間の物理的接触は、ドナー細胞およびアクセプター細胞の間の閉ざされた空間
へのHIV-1の迅速な集合および放出の引き金となる。この過程の際、上皮膜に本
質的に付随した微絨毛を単球が形成する。その後これらの部位に隔離されたウイ
ルス粒子(virion)が、食作用性エンドソーム(phagocytic endosome)内で上皮
細胞へと内在化される。多数の更なる研究により支持されたこれらの知見は、細
胞-細胞相互作用が、HIV-1が上皮細胞へまたは上皮細胞から効率的に伝染するた
めに重要であることを示している。
【0007】 ICAM-1は、活性化されたT細胞同様、休止内皮細胞、休止単球、休止上皮細胞
上に構成的に発現される一本鎖糖タンパク質接着分子である。ICAM-1の発現は、
IFN-γ、TNFα、およびIL-1を含む、様々なサイトカインにより誘導される。細
胞接着分子のCD18ファミリーは、免疫系及び炎症系の細胞間の相互作用を媒介す
る。リンパ球機能関連抗原-1としても公知であるLFA-1またはCD11a/CD18は、内
皮細胞上のICAM-1、ICAM-2およびICAM-3を認識しかつこれらに結合する。LFA-1
のヘテロ二量体構造は、α鎖およびβ鎖からなる。インテグリンファミリーの一
員として、移動、抗原提示および細胞増殖のような、多くの細胞プロセスにおい
てLFA-1は役割を果たす。例えばLFA-1は、内皮細胞への白血球の結合を媒介し、
血流から組織への白血球の移動を可能にする。ICAM-1は、LFA-1の主要リガンド
である。ICAM-1は、膜貫通ドメインにより内皮細胞に係留され、短い細胞質尾部
を有し、5個の細胞外免疫グロブリン様ドメインを含み、かつHIV感染単球および
上皮細胞上で発現される。
【0008】 米国特許第5,891,841号(「第841号特許」)は、細胞内接着分子(ICAM-3)を用
い、循環系からのHIV-1感染細胞の移動を抑制する方法に向けられている。第841
号特許によると、上皮細胞、内皮細胞、および繊維芽細胞上でのICAM-1の誘導は
、リンパ球のLFA-1依存型接着を媒介する(12段(col.12)、48-50行)。LFA-1およ
びICAM-1は、互いに対する受容体であり、かつ第841号特許においては各々「受
容体」および「リガンド」と称されている。同上。特に第841号特許は、HIV誘導
性合胞体(syncytium)形成におけるICAM-1およびLFA-1間の相互作用に関係して
いる。第841号特許によると、LFA-1は、ICAM-2およびICAM-3と比べて、ICAM-1に
対して最も大きい親和性を有する(14段、9-16行)。
【0009】 米国特許第5,674,982号(「第982号特許」)は、LFA-1およびICAM-1間の相互作
用を妨害することにより、ライノウイルスの感染力を低下させるための抗ICAM-1
抗体の使用に関する。国際公開公報第90/13316 A1号は、ICAM-1または、受容体
分子のCD11/CD18ファミリーのメンバーへ結合するHTV感染性白血球の能力を損な
うことによる、循環系からのHIV-1感染細胞の移動を抑制する方法に関する。
【0010】 細胞会合性ウイルスまたは無細胞性ウイルスの経上皮伝染におけるこのような
接着分子の役割については取り組まれていない。先行する方法および組成物は、
最初の暴露部位から離れた部位での循環系からのウイルスの移動を防止するため
に、ICAM-1およびLEA-1の相互作用を妨害することに向けられている。HIVに暴露
された部位においてまたはウイルスが生体へ進入する時点でのウイルス伝染にお
ける、LFA-1との相互作用に依存しない、ICAM-1の役割については取り組まれて
いない。
【0011】 ウイルスに暴露された部位でのHIVの経上皮伝染を妨害するための方法および
組成物が必要とされている。
【0012】 発明の概要 本発明は、動物へのHIVの経上皮伝染を防止するための、新しい方法、組成物
、および製造品を提供する。ICAM-1に関連する先行技術の方法は、ICAM-1/LFA-1
結合を妨害し、かつ循環系からの、上皮細胞を超えた生体組織へのウイルスの移
動を防止することに向けられている。本発明は、ウイルスに暴露された部位での
HIVの経上皮伝染を妨害し、かつ感染の事実後これを治療するよりもむしろHIV感
染を防止することに向けられている。
【0013】 好ましい態様において、本発明は、ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストを用い
て、ウイルスへの暴露部位でのHIVの経上皮伝染を妨害する方法を提供する。別
の好ましい態様において、ウイルス伝染の妨害は、ICAM-1のLFA-1への結合の妨
害を必要としない。更に好ましい態様において、本発明は、ICAM-1アゴニスト/
アンタゴニストを含む組成物または製造品を用いて、例えば生殖器、膣、直腸、
口腔、胃腸管などの粘膜表面を介したHIVの経上皮伝染を妨害する方法を提供す
る。また、粘膜表面に接種するためのICAM-1アゴニスト/アンタゴニストを産生
できる遺伝的に修飾された細菌を用いる方法も提供する。
【0014】 別の好ましい態様において、本発明は、ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストお
よび薬学的に許容される担体を含む、HIVの経上皮伝染を妨害するための薬学的
組成物を提供する。更に別の好ましい態様において、本発明は、ICAM-1アゴニス
ト/アンタゴニストおよび基質を含む製造品を提供する。好ましい基質は、頸管
リング、コンドームおよび子宮内避妊具を含む。
【0015】 本発明の更なる態様および利点は、下記の説明において一部記載され、かつ一
部は説明により明らかであるか、もしくは本発明の実践を通じて学習されうる。
本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された手段
および組合せを用いて達成されると考えられる。
【0016】 好ましい態様の詳細な説明 HIV-1感染の最も新たな獲得症例は、主に異性間の、性的な伝染に起因する。
コンドームのような機械的な障壁は性的な伝染の防止において非常に有効であり
得る一方で、男性に依存したこの防御法は、使用が受け入れられないことが多く
、または、最もリスクのある女性による使用に関して非実用的である。ほとんど
の場合、新たなHIV感染症のリスクが最も高い女性は、開発途上国出身である。
しかし、アフリカおよび東南アジアでの急激なHIV-1感染症の広がりが、STD伝染
を防止するための予防的介入の必要性に新たな緊急性を加えた。
【0017】 本発明により、ウイルスへの暴露部位において、ICAM-1アゴニスト/アンタゴ
ニストを用いて、動物におけるヒト免疫不全ウイルスの経上皮伝染を妨害する組
成物および方法が提供されている。「ICAM-1アゴニスト/アンタゴニスト」とい
う用語は、ICAM-1の正常な機能に関連した事象を妨害または刺激することが可能
であるような化合物または生体分子を指す。「暴露部位」という用語は、HIVへ
の暴露が生じる動物の体の一部、例えば生殖管、口腔、直腸、眼組織、耳介組織
、皮膚などを指す。本発明によるHIV伝染の妨害は、ICAM-1のLFA-1への結合の妨
害を必要としない。
【0018】 好ましい態様において、ICAMアンタゴニストは、生殖器、膣、直腸、口腔、ま
たは胃腸管の表面を含むがこれらに限定されない、動物の粘膜表面に供給される
。粘膜表面は、性的接触、母子感染、および他の機構を通じてHIVに暴露される
可能性のある部位の代表である。ICAMアゴニスト/アンタゴニストは、コンドー
ムもしくは子宮内避妊具のような基質に塗布されるか、または、例えば膣洗浄液
、滑沢剤、殺精子薬、圧注液、坐薬、母乳補助剤、もしくは乳児用製剤を含む様
々な形で供給されうる。
【0019】 抗体は、生体の様々な部位への、特に粘膜表面への、塗布に特に適した、用途
の広い予防的介入である。本発明の抗体は、HIV感染症の病因におけるICAM-1の
機能の改変に向けられている。他のアゴニスト/アンタゴニスト、例えば、アン
チセンスヌクレオチド配列、およびリボザイムも、ICAM-1の機能を改変するため
に用いられうる。抗体は、疾病防止における予防的使用が可能な、高度に特異的
な殺菌薬(microbicide)の例である。一般に、上皮細胞からの病原体の排除によ
り機能するため、粘膜抗体には特に関心が持たれる。更に、特定の病原体に向け
られた特異的殺微生物剤を産生するのに重要である実際に無尽蔵の抗原結合特異
性のレパートリーを作製するのは、抗体構造の柔軟性(versatility)である。
【0020】 本明細書における「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgE、ならびに例え
ば一価、二価、および多価の断片のような断片を含むがこれらに限定されない、
ヒト、ヒト化された動物、または植物由来のヒト化された免疫グロブリン(「Ig
」)のスペクトルを意味する。好ましい抗体は、植物において産生された二価IgG
および多価IgAヒトモノクローナル抗体(「植物抗体(plantibody)」)を含む。別
の好ましい抗体は、抗ヒトICAM-1 IgG1である。植物抗体システムを、所定の特
異性を有する大量の抗体を産生するために容易に使用することができる。特異的
な価及びクラスの抗体、かつIgAの場合は分泌成分を有する抗体を、トウモロコ
シ植物体内で作製することができる。
【0021】 植物における多量体(polymeric)かつ分泌型の(secretory)IgAの発現は、
いくつかの理由により、より一般的なハイブリドーマ技術よりも好ましい。植物
におけるsIgAの産生は単細胞系であるが、哺乳類の産生系においては2種の異な
る細胞型が必要である。植物抗体システムは、よく特徴付けられた現存の抗体か
らのcDNAの挿入のための多量体IgA骨格を有する。また植物抗体は、より大きい
安定性も有し、かつ細胞培養物において作製されかつ維持される抗体よりも突然
変異を受け難い。植物抗体を産生できる植物は、従来のハイブリドーマ細胞株よ
りもより長期の貯蔵能を有し、かつ3〜6桁の大きさで製造コストを減少させるこ
とができる。加えて植物抗体は、無限に拡大縮小可能(scalable)、すなわち単独
の植物体から数千エーカーまで拡大可能であり、かつ細胞培養物の潜在的なウイ
ルス汚染からおこる安全上の懸念を避けることができる。
【0022】 別の好ましい抗体の種類はsIgAであり、これは膣および子宮頸管を含む粘膜表
面に共通の抗体である。ほとんどの食細胞上にIgAのための Fc受容体が存在しな
いことおよびsIgAは古典経路により補体を固定できないことから、この抗体は、
IgG型の抗体とは機能的に区別される。これらの特性は、炎症が機能障害をもた
らしうる胃腸管または細気管支のような部位において有用な特性である、sIgAの
前炎症の可能性を減少させる。Fc受容体およびsIgAの補体結合能の減少により、
この種類の免疫グロブリンは、おそらく一部のHIV-1特異的IgGに関連した感染の
増大を誘導するのにあまり適さない。またIgAは、上皮細胞の基底表面上に発現
された多量体Ig受容体(または複数)により媒介される、上皮細胞との独自の反応
性により、IgGから区別される。二量体型において、抗体分子およびそれに付着
した任意の抗原が分解を受けることなく、IgAは、上皮細胞を細胞膜外に露出す
る(trancytose)ことを可能にするような、上皮細胞上のこれらの受容体に付着す
る。受容体の一部は、それが上皮細胞を離れた後もIgA分子に付着し続け、IgAの
分泌片をもたらす。多量体Ig受容体の機能成分は、マウスおよびヒトを含む様々
な種間で高度に保存される。
【0023】 別の好ましい態様において、ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストおよび薬学的
に許容される担体を含む予防的な薬学的組成物が提供される。「薬学的に許容さ
れる担体」とは、粘膜表面への塗布に適した担体または賦形剤を意味する。ICAM
-1アゴニスト/アンタゴニストは、アンタゴニストおよび担体に互換性があるな
らば、任意の適当な担体中に製剤化されうる。アンタゴニストの活性は、HIVの
伝染をもはや妨害しない程度にまで、担体により減弱されてはならない。担体は
、水性、または非水性、例えばアルコール性もしくは有機性であるか、またはそ
れらの混合物であることができ、かつ更に他の界面活性剤、皮膚軟化薬、滑沢剤
、安定剤、色素、ならびに、保存剤、抗生物質、避妊薬、殺精子薬または薬学的
物質のような活性成分を含みうる。この組成物は、たとえばクリーム剤、泡剤、
ローション剤、軟膏剤、液剤、固形剤およびスプレー剤の形状であることができ
る。
【0024】 好ましい担体は、膣管、口腔、胃腸管、および直腸への塗布に適している。特
に好ましい担体は、粘膜付着性ゲルである。好適な担体は、有機溶剤、乳化剤、
ゲル化剤、加湿剤、安定剤、湿潤剤、徐放剤、金属イオン封鎖剤、色素、香料、
および粘膜への投与のための薬学的組成物において用いられている他の成分を含
むことができる。
【0025】 本発明の組成物は、膣洗浄液または膣適用のための圧注液中に提供されうる。
ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストを含む母乳補助剤および乳児用製剤が、経口
粘膜表面を介して乳児へICAM-アンタゴニストを提供するために好ましい。
【0026】 固形剤形は、坐薬、散剤および顆粒剤を含む。固形剤形において、本組成物は
、ショ糖、乳糖、またはデンプンなどの、少なくとも1種の不活性希釈剤と混合
されうり、かつ更に滑沢剤、緩衝剤、および当業者に周知の他の成分を含みうる
【0027】 本発明の方法、組成物および製品におけるICAM-1アゴニスト/アンタゴニスト
の実際の用量レベルは、ウイルス暴露部位または進入点において所望の予防的反
応を得るような量を得るために変化しうる。従って、選択された用量レベルは、
性質およびウイルスへの暴露部位または進入点、望ましい予防的反応、投与経路
、望ましい予防期間ならびに他の要因に依存すると考えられる。
【0028】 本発明の組成物、製品および方法にとって好ましいアゴニスト/アンタゴニス
トは、抗ICAM-1抗体である。濃度は具体的状況に依存して変化されうるが、抗体
の有効濃度は一般に約20μg/ml〜約1000μg/mlの範囲である。抗ICAM-1植物抗体
の用量レベルは、約5mg/ml〜10mg/mlに及びうる。
【0029】 本発明のICAM-1アゴニスト/アンタゴニストは、任意の適当な方法により投与
される。ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストが、HIV伝染の予防のために、粘膜表
面に予防的に局所塗布されるのが好ましい。好ましくは、抗ICAM-1抗体は、1日
〜数日の間免疫グロブリン活性を保持し続ける粘膜付着性ゲル賦形剤内で送達さ
れる。
【0030】 本発明のアゴニスト/アンタゴニストはまた、抗ICAM-1アゴニスト/アンタゴニ
スト、例えば抗ICAM-1抗体、抗ICAM-1アンチセンス、ICAM-1抗原、またはリボザ
イムなどの産生が可能である遺伝的に修飾された細菌を介して送達され得る。「
遺伝的に修飾された」細菌は、抗ICAM抗体、抗ICAMアンチセンスヌクレオチド配
列、またはリボザイムをコードするヌクレオチドを含む、プラスミドDNAベクタ
ーまたは、例えばウイルス性の裸のDNAもしくはRNAのようなその他のベクターを
含むかまたはこれに感染している。遺伝的に修飾された好ましい細菌は、関心対
象の粘膜表面、すなわち生殖管、口腔などの粘膜表面の天然叢(flora)の一部
であるような種である。遺伝的に修飾された細菌は、任意の適当な組換えDNAま
たは当業者に公知の他の方法を用いて作製されうる。
【0031】 別の好ましい態様において、基質およびICAM-1アゴニスト/アンタゴニストを
含む製造品が提供される。「支持体」または「支持体」という用語は、例えば、
ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストにを用いた含浸または被覆、およびICAM-1ア
ゴニスト/アンタゴニストの生体の粘膜表面への送達が可能であるような、スポ
ンジ、コンドーム、ペッサリー、子宮内避妊具または頸管リングなどの対象を指
す。例えばコンドームは、アンタゴニストをコンドーム表面に噴霧するか、また
は製造時に当該技術分野において公知の方法によりコンドームにアンタゴニスト
を含浸させることにより、被覆されうる。哺乳瓶の乳首もまた同様の方法で被覆
されうる。別の好ましい態様において、抗ICAM-1抗体は、抗体で含浸された頸管
リングのような徐放性製品において送達される。
【0032】 HIVは主に性行為により伝染されるので、本発明の好ましい方法は、性交時ま
たはその前に、本発明のアゴニスト/アンタゴニスト組成物を、膣上皮細胞また
は他の粘膜表面と接触させる段階を含む。ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストで
被覆もしくは含浸されたコンドームのような避妊器具、またはゲルもしくは泡の
ような局所用組成物が、HIVの伝染および感染を予防するのに十分量で使用され
ることが好ましい。組成物は、妊娠を防ぐという更なる恩典が望ましい場合には
、殺精子剤と組み合されうる。
【0033】 更に別の本発明の態様において、ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストは、HIV暴
露部位への送達のために、例えばプラスチックのような固形物表面、または同様
の物質に付着される。適当なプラスチックは、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチ
レン、ポリウレタン、またはシリコーン、ならびに容器および哺乳瓶のための他
の一般的物質を含む。乳首部品を備えた哺乳瓶、または他の体液のための容器お
よび導管を、細胞会合性HIV伝染を予防または妨害するのに十分量のICAM-1アゴ
ニスト/アンタゴニストで被覆することができる。アゴニスト/アンタゴニストは
、プラスチックポリマーの重合時に組み入れられ、かつ徐放的に表面から漏出す
ることもできる。
【0034】 HIVの経上皮伝染を妨害するための特定のICAM-1アゴニスト/アンタゴニストお
よび組成物の能力は、例えばトランスウェル(transwell)培養システムにおいて
評価されうる。好ましいトランスウェルシステムは、24ウェルプレートから直径
5mの孔を有する取り外し可能なメッシュにより仕切られた上側および下側チャン
バーへ、ウェルを分割する挿入物を備える。ヒトの頸管上皮細胞、例えばME180(
アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビル、MD)は、この取り外し
可能なメッシュ上で集密になるまで増殖する。集密な上皮細胞は、 C14-イヌリ
ンに不浸透性であり、かつ、末梢血リンパ球(PBL)会合性ウイルスとは対照的に
、選択的にマクロファージ会合性ウイルスの伝染を促進するような障壁を形成す
る。上皮細胞障壁を越えて伝染されたHIVは、トランスウェルシステムの下側チ
ャンバー内に出現すると考えられる。従って、ICAM-1アゴニスト/アンタゴニス
トをm集密な上皮細胞障壁を支えるメッシュを超えたHIV伝染を妨害するその能
力について評価することができる。トランスウェルシステムは、異なる特異性の
Mabの上皮細胞単層を超えた細胞会合性HIV-1伝染を妨害する能力の迅速かつ直接
の試験を可能にする。このようなシステムは、更に抗体クラスおよびアイソタイ
プの相対効率を比較するために使用することができる。
【0035】 ICAM-1アゴニスト/アンタゴニストをまた、伝染が実際に生じる状況に非常に
類似したインビボ動物モデルにおいて評価することができる。例えば、Hu/PBL-S
CIDマウスの膣伝染モデルは、HIV-1伝染を研究するための優れたモデルである。
感染の時点(ヒト細胞移植後8日〜10日)におけるマウス内に移植されたヒトPMBC
細胞の活性化状態は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)において観察されたものと類似
しており、かつHIV増殖に典型的に使用される組織培養物において観察されたも
のとは顕著に異なっている。更に、Hu-PBL-SCIDマウスへ伝染された変異体の系
統的分析により、ウイルス伝染がランダムではなく、かつマクロファージ指向性
のウイルス変異体のサブセットが優先的に伝染されることが示された。この伝染
パターンは、ドナー由来のマクロファージ指向性ウイルスの非常に限定された範
囲がレシピエントに伝染されるような、ヒトの状況を複製している。ICAM-1アゴ
ニスト/アンタゴニストのインビボにおけるHIV伝染を妨害する能力を評価するた
めに、例えばHIVに暴露されたHu-PBL-SCIDマウスの膣管にICAM-1アゴニスト/ア
ンタゴニストが塗布されうる。
【0036】 具体的問題点または状況への本発明の開示の適用は、本明細書に含まれる開示
の観点で、当業者の能力の範囲内である。本発明の製品の更なる例およびそれら
を使用する方法は、以下の実施例において示される。
【0037】 実施例1 細胞非含有のHIV及びHIV感染した末梢血リンパ球及び単球の単離 HIV-1のマクロファージ指向性で、NSI及びCCR5利用変異体であるHIV-1Ba-L(Ad
vanced Biotechnologies社、コロンビア、MD)のアリコート1.0mlを購入し(1×10 6 50%組織培養感染量(TCID50)/ml)、かつ液体窒素中で貯蔵した。ウイルスス
トックを、培養での使用前に一度だけ解凍した。
【0038】 ヒトPBMCを、Ficoll Hypaque (Pharmacia社、Piscataway、NJ)上で白血球除去
した血液の遠心分離により単離した。総PBMCを、75cm2または150cm2組織培養フ
ラスコ(Corning Scientific Products社、Cambridge、MA)内で、100U/mlペニシ
リン/100mcgストレプトマイシン、10ng/mlゲンタマイシンおよび2mM L-グルタミ
ンを補充したRPMI-1640中に、1×107/mlで播種した(培地および全ての補充物は
、Life Technologies社、Grand Island、NYから入手した)。細胞を、培養の最初
の12時間、20%の熱失活FCS (56℃で45分間、Gemini Bio-Products社、Calabasa
s、CA)および10%の熱失活A/Bヒト血清(HS;Nabi社、Boca Raton、FL)を加えた
前述のRPMI-1640 (以後cRPMIと呼ぶ)中で再懸濁させた。単球を回収した。非接
着性PBMCを除去して廃棄し、冷HBSS (Life Technologies社)を用いて、接着細胞
をフラスコから取り除いた。表面抗原CD14の発現により、接着細胞の>95%が単
球であると決定された(FITC標識、抗ヒトCD14抗体、My-4;Coulter Immunotech
社、Hialeah、FL)。単球を洗浄し、25cm2フラスコ(Corning Scientific Product
s社)内で、TCID50が1×103のHIV-1Ba-Lと共に、5mlのcRPMI-10%FCSまたはcRPMI
-10%HS中に5×106/mlで再懸濁させ、かつ37℃、5%CO2中で培養した。ウイルス
接種物を24時間後に除去し、細胞を温cRPMIで一度洗浄し、かつ新鮮なcRPMI-10
%FCSまたはcRPMI-10%HSを添加した。感染後(pi)3日目および7日目に、培養物
を新鮮培地に供給した。冷HBSSまたは0.02%EDTA (Sigma Chemical社、St. Loui
s、MO)を用いて、フラスコから単球を取り除き、かつ10 pi日目に実験に使用し
た。
【0039】 PBL(末梢血リンパ球)を、PHA (5μg/ml、Sigma社)を補充したcRPMI-10%FCS中
に2×106/mlで48時間、再懸濁した。1×103 TCID50 HIV-1Ba-Lによる感染後、PB
L培養培地が10U/ml IL-2(Boehringer Mannheim社、Indianapolis、IN)を含むこ
と以外は、PBLを単球と同様に培養した。単球およびPBLがHIV-1に感染した程度
は、HIV-1 gag特異的プライマー(フォワードプライマー 、およびリバースプライマー )を用い、先に記されたような適当な標準および対照を用いて実施される限定希
釈PCRにより決定した。PCR産物を、1%アガロースゲル上での電気泳動により視
認した。
【0040】 無細胞ウイルスは、cRPMI-10%FCSまたはcRPMI-10%HSの中の、HIV-1Ba-L感染
単球またはHIVBa-L感染PBLに由来していた。遠心分離により細胞の上清を透明化
し、0.2μmシリンジフィルター(Millipore社、Bedford、MA)を通して濾過した。
無細胞ウイルスを、HIV p24 ELISA (Dupont NEN社、Boston、MA)、および健常な
HIV陰性ドナー由来のPBMCとの共培養により定量し、TCID50を決定した。
【0041】 実施例2 ヒト頸管上皮細胞のトランスウェル培養 ヒトの自然に形質転換された頸管上皮細胞株であるME-180(ATCC、Rockville、
MD)を、75cm2フラスコ内の、cRPMI-10%FCS中で培養し、かつ0.05%トリプシン-
EDTA (Life Technologies社)による細胞置換により3日毎にルーチンに継代した
。ME-180細胞を、5.0μm、直径12mmのトランスウェル挿入物(Corning Scientifi
c Products社)1個あたり、0.1mlのcRPMI-10%FCSまたは10% HS中に2×105個で
播種した。トランスウェル内のME-180細胞を、37℃、5%CO2条件下で維持した。
培地を、2〜3日毎に交換した。7日間で、細胞はトランスウェル挿入物上に分極
した(polarized)完全な単層を形成し、これは、上皮を通る抵抗の抵抗計(Millip
ore社)を用いたモニタリング、及び上皮の密着結合(epitherial tight junction
)に見出されたタンパク質(20)であるZO1(1:50希釈、Zymed社、San Francisco、C
A)に対する蛍光クロム(fluorochrome)標識抗体による染色により確認された。挿
入物上のME-180単層を、培養の7〜10日の間の実験に常に使用した。
【0042】 実施例3 経上皮移動およびHIV-1伝染 経上皮移動アッセイ法を、いくつか改変を加えたBomselの記載に従って行った
。簡単に述べると、単球またはPBL培養物由来の上澄み液中の、1×106個のHIVBa -L 感染単球、1×106個のHIVBa-L感染PBL、または無細胞HIV-1を、上皮細胞単層
の頂端側に添加した。感染細胞の挿入物への添加後1〜48時間の間、頂端側およ
び基底側の培地を回収し、時間経過の分析を行った。単層を介したほぼ最大の伝
染が24時間で認められ、この時点が、その後の全ての実験のために選択された。
トランスウェルへの細胞添加の前および24時間の伝染期間の後に、トリパンブル
ー排除(Sigma社)により、単球およびPBLの生存率が評価され、かつ常に>90%で
あることが認められた。HIV-1 p24抗原のELISAアッセイ法(Dupont NEN社)を行い
、頂端側および基底側の上澄み液中のHIV-1 p24抗原の量を定量した(感度12.5pg
/ml〜350pg/ml)。
【0043】 実施例4 伝染妨害試験 マウスの抗ヒトICAM-1抗体(20μg/mlおよび希釈物;HA58 (IgG1)、Pharmingen
社)、抗ヒトE-カドヘリン抗体(20μg/ml;67A4(IgG1)、Coulter Immunotech社、
およびE4.6(IgG1))、抗ヒトCD103抗体(20μg/ml;2G5 (IgG2a)、Coulter Immuno
tech社およびαE7-1 (IgG2a)、αE7-2 (IgG1)およびαE7-3 (IgG1))、ならびに
抗ヒトCD18抗体(20μg/ml;L130 (IgG1)、Becton Dickinson社)、またはそれら
の各々のアイソタイプ対照を、ICAM-1を含むまたは含まない、1×106個のHIV感
染単球またはHIV感染293T細胞に、ME-180トランスウェル培養物にそれらを加え
る直前に添加した。AIDS臨床試験グループ(AIDS Clinical Trials Group)(ACTG)
抗体選択作業群(Antibody Selection Working Group)により確立された基準に従
い、抗体についてインビボにおいて達成可能な濃度以下の濃度において(20〜25
μg/ml)効能を示す抗体の最高濃度(20μg/ml)を、選択した。37℃、5%CO2で24
時間インキュベーションした後に、頂端側および基底側の上澄み液を回収した。
HIV-1 p24抗原を、ELISAにより定量した。
【0044】 実施例5 単球会合性HIV-1は、PBL会合性HIV-1または無細胞ウイルスよりもより効率的に
ヒト頸管上皮細胞を通過する 単球またはPBL培養物に由来し、各々10%FCS含有cRPMI中の、HIV-1感染単球、
HIV-1感染PBL、または無細胞ウイルス(cfv)を、ME-180上皮細胞の集密な単層を
含むトランスウェル培養物の頂端側チャンバー中に配置した。単球会合性ウイル
ス、PBL会合性ウイルス、または無細胞ウイルスが無傷のヒト頸管上皮細胞単層
を通過する程度を評価した(図1A)。(cRPMI-10%FCS培養培地(n=8ドナー、単球
およびPBLを比較した、PBLおよびcfv間のap<0.05;単球およびcfvを比較したbp
<0.001)。結果を、MB-180および各接種物のトランスウェル培養物の基底側上澄
み液由来のHIV-1 p24抗原濃度(pg/ml)として示している。
【0045】 単球会合性ウイルスは、頸管上皮の通過に関して、PBL会合性ウイルスよりも
、だいたい5倍効率的であった。いずれかの細胞系に由来した無細胞ウイルスは
、上皮細胞単層を効果的に通過せず、かつ一般にp24 ELISAアッセイ法の検出限
界を下回っていた。
【0046】 Kageとその同僚により示唆されたように、無細胞HIV-1が上皮細胞単層を通過
することが、FCS (ウシ胎仔血清)中に見出された糖タンパク質により阻害されう
るかどうかを調べるために、10%HSを含むcRPMI中で培養したHIV感染単球または
cfv(無細胞ウイルス)を用いて試験を行った。これらの実験において、cRPMI-10
%HS中で培養された単球会合性HIV-1は、cRPMI-10%FCS中で培養された単球会合
性ウイルスよりもより効率的に、かつcRPMI-10%FCSまたはcRPMI-10%HS中のcfv
よりもより効率的に上皮細胞を通過した(図1B)。(cRPMI-10%FCSまたはHS培養培
地(n=3の代表的実験、単球FCSおよび単球HS間の比較ではap<0.05、cfv FCSお
よびcfv HSの間の比較ではbp<0.05、ならびに単球HSおよびcfv HSの間の比較で
はcp<0.005))。10%FCS中で測定された経上皮伝染とは対照的に、cRPMI-10% H
S中で培養されたcfvは、無傷の上皮細胞を通過することができたが、しかし細胞
会合性ウイルスよりも有意に低いレベルであった(p<0.05) (図1B)。
【0047】 ウイルスが、上皮細胞の頂端側に接種された感染単球またはPBLから放出され
る(shed)程度を決定するために、頂端上澄み液をH1V-1 p24抗原についていくつ
かの時点で評価した。FCSまたはHSのいずれかの中で培養されたHIV感染単球およ
びHIV感染PBL由来の上澄み液中のp24抗原の濃度は、常に同等であり、かつ感染
経路にわたって有意差はなかった(データは示さず)。
【0048】 感染していない単球またはPHA刺激PBLとの共培養時に、経時的に培養物中にp2
4抗原の量が増大する場合に、基底側の上澄み中で測定したHIV-1(p24濃度で示す
)は、感染性であることが見出された(データは示さず)。
【0049】 実施例6 単球は頸管上皮細胞を時間及び用量依存的なやり方で通過する ME-180単層のトランスウェル培養物を確立し、かつcRPMI-10%HS中の1×106
のHIV感染単球を上皮細胞の頂端側に添加して経上皮伝染の速度論を分析した。
経上皮にHIV-1を移動し及び/又は伝染する感染単球は、4時間と早期に検出され(
図2A)、基底側p24レベルは48時間まで増加し、この時点でプラトーに到達した。
同様に、1×106個細胞、またはそれらの5倍希釈物を、上皮細胞の頂端側に添加
し、かつ基底側の上澄み液を、p24抗原の存在のために試料採取して、上皮細胞
の基底側上のウイルスを検出するのに必要な最小細胞接種量を決定した。HIV-1
p24抗原は、5,000個のHIV感染単球の適用後、基底培地において一貫して検出さ
れた。LD-PCRで測定したところ、この細胞集団の1%〜5%がHIV-1に感染し(デー
タは示さず)、そのため、これは500個という少なめの感染した細胞が一貫してHI
V-1を伝染したことを意味する。基底側の上澄みから検出可能なp24は、トランス
ウェルの頂端側への1,000個と少ない単球の適用により得られた(同様に1%〜5%
の感染率) (図2B)。
【0050】 図2に示された本実験は、cRPMI-10%HS中のHIVBa-L感染単球を用いて行った。
これらの結果を、基底側上澄み中のHIV-1 p24抗原の濃度(pg/ml)として示す。時
間経過(n=4)および接種用量(n=2)に関する代表的実験を示す。+基底側p24は10
0〜1,000pg/ml;++基底側p24は1,001〜5,000pg/ml;+++基底側p24は5,001〜30,0
00pg/ml;-基底側p24は検出限界以下(12.5pg/ml)である。
【0051】 実施例7 無傷のヒト頸管上皮細胞は、HIV-1伝染を制限する これまでに、トランスウェル挿入物内のヒト頸管上皮細胞単層が、分極した完
全な表面を形成し、かつ無細胞HIV-1に対して決定的な障壁を提供することが示
されている。以下の実験を、頸管上皮単層および、トランスウェルチャンバーを
分割している膜が、HIV-1の経上皮伝染を制限する障壁を提供する程度を決定す
るために実施した。そのため、ME-180細胞が存在しないトランスウェルの下側チ
ャンバー培地中のp24抗原濃度を測定した。図1に示したHIV感染単球またはHIV感
染PBLにより伝染された基底側HIV-1 p24抗原の様々な濃度とは対照的に、頸管上
皮細胞なしのトランスウェル培養物の下側チャンバーにおいて測定されたp24抗
原の量については、単球会合性HIV-1、PBL会合性HIV-1、または無細胞ウイルス
の間で有意差がなかった(p>0.005)(図3)。これらのデータは、膜の組成および
孔径が、HIV-1の伝染を制限せず、しかしむしろこれは上皮層ならびにHIV感染し
た細胞および経上皮HIV-1伝染が生じる程度を決定する上皮細胞の間の推定され
る相互作用と密接に関連していることを示唆している。
【0052】 図3に示したデータは、挿入膜上に播種した、各々、ME-180上皮細胞を含むま
たは含まないトランスウェル培養物由来の基底側または下側チャンバーの上澄み
液中のp24抗原(pg/ml)として示されている。(n=3の)代表的実験は、ME-180を含
むまたは含まないいずれかの接種群内で比較してp<0.05、ME-180なしの接種群
間で比べてp >0.05を示した。
【0053】 実施例8 抗ICAM-1抗体は単球会合性HIV-1伝染を妨害する HIV感染単球および上皮細胞の間の接着相互作用が、経上皮移動およびHIV-1伝
染にとって重要であるかどうかを調べるために、いくつかの接着分子に対する抗
体を、トランスウェル培養物に添加した。ICAM-1、CD18、E-カドヘリン、または
αE-β7インテグリン(CD103)に対する抗体(1〜20μg/ml)の間を、HIV感染単球と
同時に添加し、かつ実験期間中は培養物中に維持した。これらの抗体を、上皮細
胞に結合する免疫細胞に関与することが先に示された特異的リガンド-受容体相
互作用を標的化するように選択した。
【0054】 ICAM-1は、HIV感染単球上、および上皮細胞上に発現される。上皮細胞単層の
基底側のp24抗原量で測定した場合、抗ICAM-1抗体は、単球会合性HIV-1の伝染を
妨害した(図4A)。CD18分子は、ICAM-1に結合しかつHIV誘導性合胞体の形成に関
連しているような、リンパ球機能関連抗原LFA-1のβ-サブユニットである。抗CD
18および各々のアイソタイプ対照は、HIV-1の経上皮伝染を妨害しなかった(図4A
)。
【0055】 経上皮伝染の阻害がICAM-1:LFA-1相互作用に特異的であるかどうかを決定す
るために、E-カドヘリンおよびCD103に対する抗体を、トランスウェルシステム
においてHIV-1伝染を阻害するそれらの能力について試験した。E-カドヘリンは
上皮細胞上で発現され、かつそのリガンドであるCD103は単球およびPBLサブセッ
ト上で発現される。抗E-カドヘリン抗体、抗CD103抗体、およびそれらの各々の
アイソタイプ対照は、HIV-1の経上皮伝染を阻害しなかった(図4、AおよびB)。こ
れらの実験で使用した抗体とHIV感染単球とのインキュベーションは、24時間の
インキュベーション期間後に頂端側上澄み液中において測定した場合、感染細胞
から放出されたウイルス量を変更しないことが決定された(データは示さず)。感
染単球と共に、トランスウェル培養物に添加した、抗E-カドヘリン(20mg/ml)、
抗CD103(20mg/ml)、抗CD18(LFA-1)(20mg/ml)、マウスのIgG1 (20mg/ml)およびマ
ウスのIgG2a (20mg/ml)の抗体は、HIV-1の経上皮伝染に対する作用を示さなかっ
た。図4の結果は、基底側上澄み液からのHIV-1 p24抗原として、p<0.05で示し
た。
【0056】 実施例9 ICAM-1に対するモノクローナル抗体は、HU-PBL-SCIDマウスにおいてHIV-1の膣伝
染を阻害する 先の3種の実験において示されたように、Hu-PBL-SCIDマウス内のモノクローナ
ル抗体(Mab)はHIV-1に対して保護的であることができる。しかしこれらの試験は
いずれも、抗ICAM-1抗体に対して向けられておらず、もしくは、ウイルスの膣伝
染に対する防御の問題に取り組んでいない。全ての場合において、それに対して
Mabが生じるような特異的エピトープを保持するウイルスに対して、Mabは効果的
であるが、しかし異種HIV-1変異体に対して交差防御的でなかった。
【0057】 表1に示されているように、SCIDマウスモデルにおいて、ICAM-1に対するMabの
経膣(vaginally)塗布は細胞会合性HIV-1の経膣伝染を完全に妨害した。結果は
統計学的に有意であった(p=0.03、片側検定によるFisherの直接法(one tailed
Fisher exact test);p=0.06、両側検定によるFisherの直接法)。
【0058】
【表1】
【0059】 実施例10 細胞会合性HIVの経上皮伝染の妨害は、ICAM-1のLFA-1への結合の妨害を必要とし
ない ICAM-1をその表面に発現しない293T細胞のトランスフェクションを行い、細胞
会合性HIVの経上皮伝染の妨害が、ICAM-1のLFA-1への結合の妨害を必要とするか
どうかを決定した。トランスフェクションされた293T細胞が、上皮細胞障壁を超
えてHIV-1を伝染することができ、かつこの伝染が、トランスウェル中の基底コ
ンパートメント中のHIV-1 p24抗原濃度で測定されると、ICAM-1に対する抗体に
より妨害されうることが、結果により示された(表2)。
【0060】
【表2】 p<0.001で、p24濃度の差を比較
【0061】 ICAM-1は293T細胞の表面に存在しないので(データは示さず)、抗ICAM-1抗体が
伝染を妨害する能力は、ICAM-1を発現することが公知であるME180頸管上皮細胞
株の表面上のICAM-1との相互作用と考えられねばならない。フローサイトメトリ
ーは、293T細胞がLFA-1を発現しないことを確認した(図6A-B)。293T細胞はLFA-1
を欠損しているので、抗ICAM-1抗体は、ICAM-1および、その相手方受容体(coun
ter-receptor)であるLFA-1との相互作用の妨害により、伝染を妨害することが
できない。
【0062】 実施例11 抗IGAM-1 Mabからの膣炎症反応はない ある潜在的な懸念は、免疫応答において役割を果たすリガンドに対して向けら
れたMabの膣内投与が、局所炎症反応を刺激しうることである。この疑問点に対
処するために、本発明者らは、マウスICAM-1に対して向けられたIgG2a Mabを20m
g/ml、無関係のIgG2a Mabを20mg/ml、またはネズミチフス菌(Salmonella typhi
mirium)由来のリポ多糖5mgを、正常なBALB/cマウスに膣内接種により毎日2回14
日間投与した。抗ICAM-1 Mabは、処置したマウスの膣上皮細胞において毒性を示
さなかった。
【0063】 実施例12 Mabは、膣内位置から血清中に吸収されない Mabは、膣内位置から血清中に吸収されない。これは、宿主抗原に対して向け
られたMabの使用に関する潜在的な臨床上の懸念であると考えられる。3匹のSCID
マウスに、20mgの正常マウスIgGを毎日2回、10日間接種した。0.1mg/mlレベルで
感受的なELISAアッセイ法を用い、マウス由来の血清を、マウスIgの濃度の増加
について、4日目、7日目および10日目に最終回注射後、2時間アッセイした。マ
ウスIg値のベースラインは、0〜4mg/mlの範囲内であった。マウス抗体濃度の増
加は、アッセイした任意の時点における、任意のマウスにおいて認められなかっ
た。
【0064】 参照
【0065】 上述の記載及び実施例は、本発明の目的、特徴及び利点を達成する好ましい態
様を例証しているのみであり、本発明がそれに限定されることを意図したもので
はない。添付の特許請求の精神及び目的の範囲内である、本発明の任意の改変は
、本発明の一部と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 単球会合性HIV-1Ba-L、PBL(末梢血リンパ球)会合性HIV-1Ba-L
および無細胞ウイルスの、上皮細胞単層を通過する能力を示している。
【図2】 経時的な(A)、および接種細胞数の変動に対する(B)、HIV感染単
球の伝染を示す。
【図3】 ヒト頸管上皮細胞単層が、単球会合性HIV-1、PBL会合性HIV-1、
または無細胞ウイルスからの無細胞HIV-1伝染に対する障壁を提供することを示
す。
【図4】 抗ICAM-1抗体が、単球会合性HIV-1の伝染を妨害することを示し
ている。抗ICAM-1抗体は、単球会合性HIV-1伝染を妨害し(4A)、一方 LFA-1のβ
サブユニット、E-カドヘリン、CD103、およびアイソタイプ対照に対する抗体は
、伝染を妨害しなかった(4B)。
【図5】 抗ICAM-1抗体が、インビボにおける細胞会合性HIVによる感染の
膣伝染を防止することを示している。Hu-PBL-SCIDマウスにおけるHIVの膣性伝染
は、抗ICAM-1モノクローナル抗体により完全に妨害された。
【図6】 293T細胞がLFA-1を発現しないことを示している。ICAM-1もLFA-1
も発現していない HIVトランスフェクションされた293T細胞によるHIVの経上皮
伝染は抗ICAM-1抗体で妨害され、暴露部位でのHIV伝染の妨害が、ICAM-1のLFA-1
との結合を必要としないことを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 9/10 A61K 9/10 9/12 9/12 9/20 9/20 A61P 31/18 A61P 31/18 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA, ZW Fターム(参考) 4C076 AA01 AA12 AA16 AA24 AA36 BB01 BB29 BB30 BB31 CC35 FF09 FF16 FF31 FF36 FF52 FF53 FF57 FF63 4C085 AA13 AA14 BA99 BB11 CC40

Claims (33)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物のHIV暴露部位に抗ICAM-1抗体を供給する段階を含む、
    動物へのHIVの経上皮伝染を妨害する方法。
  2. 【請求項2】 上記抗ICAM-1抗体が植物抗体(plantibody)である、請求項
    1記載の方法。
  3. 【請求項3】 上記抗ICAM-1抗体が抗ヒトICAM-1 IgG1抗体である、請求項1
    記載の方法。
  4. 【請求項4】 上記抗ICAM-1抗体が、HIVの経上皮伝染を妨害するのに十分
    量供給される、請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 上記量が、約20μg/mlから約1000μg/mlの範囲内である、請
    求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 上記量が、約5mg/mlから約10mg/mlの範囲内である、請求項4
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 上記動物が哺乳類である、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 上記動物がヒトである、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 上記抗ICAM-1抗体が、クリーム剤、泡剤、経口液剤、固形剤
    、スプレー剤、膣洗浄液、膣圧注液、坐薬、母乳補助剤、および乳児用製剤から
    なる群より選択される形で供給される、請求項1記載の方法。
  10. 【請求項10】 上記抗ICAM-1抗体が、滑沢剤、界面活性剤、ゲル、有機溶
    剤、乳化剤、ゲル化剤、加湿剤、安定剤、湿潤剤、徐放剤、金属イオン封鎖剤、
    色素および香料からなる群より選択される物質を含む担体中に供給される、請求
    項1記載の方法。
  11. 【請求項11】 HIVの細胞会合性伝染の上記妨害が、ICAM-1のLFA-1への結
    合の妨害を必要としない、請求項1記載の方法。
  12. 【請求項12】 上記暴露部位が粘膜表面である、請求項1記載の方法
  13. 【請求項13】 細菌が抗ICAM-1抗体を産生できる、上記粘膜表面に遺伝的
    に変更された細菌を接種する段階を更に含む、請求項12記載の方法。
  14. 【請求項14】 上記粘膜表面が、生殖器、膣、直腸、口腔、および胃腸管
    の表面からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
  15. 【請求項15】 HIVの細胞会合性伝染の妨害が動物の膣上皮細胞で生じる
    、抗ICAM-1抗体を動物の膣上皮細胞に供給する段階を含む、HIVの細胞会合性経
    上皮伝染を妨害する方法。
  16. 【請求項16】 抗ICAM-1抗体がHIVの経上皮伝染を妨害するのに十分量で
    存在する、抗ICAM-1抗体および賦形剤を含む、該HIVに暴露された経上皮部位で
    のHIVの経上皮伝染を妨害するための物質の組成物。
  17. 【請求項17】 上記量が、約20μg/mlから約1000μg/mlの範囲内である、
    請求項16記載の物質の組成物。
  18. 【請求項18】 上記抗ICAM-1抗体が植物抗体である、請求項16記載の物質
    の組成物。
  19. 【請求項19】 上記抗ICAM-1抗体が抗ヒトICAM-1 IgG1抗体である、請求
    項16記載の物質の組成物。
  20. 【請求項20】 上記植物抗体が、約5mg/ml〜約10mg/mlの量で存在する、
    請求項18記載の物質の組成物。
  21. 【請求項21】 上記組成物が母乳補助剤である、請求項16記載の物質の組
    成物。
  22. 【請求項22】 上記組成物が乳児用製剤である、請求項16記載の物質の組
    成物。
  23. 【請求項23】 上記組成物が膣洗浄液である、請求項16記載の物質の組成
    物。
  24. 【請求項24】 上記組成物が経口液剤である、請求項16記載の物質の組成
    物。
  25. 【請求項25】 上記組成物が坐薬である、請求項16記載の物質の組成物。
  26. 【請求項26】 上記組成物が、抗ICAM-1抗体であり、かつ上記賦形剤が薬
    学的に許容される担体である、請求項16記載の物質の組成物。
  27. 【請求項27】 上記担体が、滑沢剤、界面活性剤、ゲル、有機溶剤、乳化
    剤、ゲル化剤、加湿剤、安定剤、湿潤剤、徐放剤、金属イオン封鎖剤、色素およ
    び香料からなる群より選択される、請求項26記載の物質の組成物。
  28. 【請求項28】 上記担体が粘膜付着性(mucoadhesive)ゲルである、請求
    項26記載の物質の組成物。
  29. 【請求項29】 基質および抗ICAM-1抗体を含む、HIVの細胞会合性経上皮
    伝染を防御するための製造品。
  30. 【請求項30】 上記抗ICAM-1抗体が上記基質中に含浸されている、請求項
    29記載の製造品。
  31. 【請求項31】 上記抗ICAM-1抗体が上記基質上に被覆されている、請求項
    29記載の製造品。
  32. 【請求項32】 上記基質が、スポンジ、コンドーム、子宮内避妊具、頸管
    リングおよびペッサリーからなる群より選択される、請求項29記載の製造品。
  33. 【請求項33】 上記基質が避妊具を含む、請求項29記載の製造品。
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