JP2003510045A - 新規pcna関連細胞周期タンパク質、組成物および使用法 - Google Patents

新規pcna関連細胞周期タンパク質、組成物および使用法

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JP2003510045A JP2001525343A JP2001525343A JP2003510045A JP 2003510045 A JP2003510045 A JP 2003510045A JP 2001525343 A JP2001525343 A JP 2001525343A JP 2001525343 A JP2001525343 A JP 2001525343A JP 2003510045 A JP2003510045 A JP 2003510045A
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cell
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proteins
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ルオ・イン
ベティ・フアン
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ライジェル・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、細胞周期に影響を及ぼすか、または細胞周期に関連がある新規ポリペプチド、核酸および関連分子を対象としている。これらの核酸配列を含むベクターおよび宿主細胞、異種ポリペプチド配列に融合した本発明のポリペプチドを彪組むキメラポリペプチド分子、本発明のポリペプチドに結合する抗体、並びに本発明のポリペプチドを作成法もまた、本発明で提供される。細胞周期のバイオ活性を調整する新しい組成物の同定法、および疾患の診断と処置におけるそのような組成物の使用が、本発明によってさらに提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の分野 本発明は、細胞周期制御に関わる組成物と使用法を対象としている。特に、本
発明は、細胞周期制御に関わるタンパク質をコードする遺伝子と、タンパク質を
対象としている。使用法には、細胞周期の調節因子をスクリーニングするアッセ
イにおける使用と、治療剤としての使用が含まれる。
【0002】 発明の背景 細胞は、有糸分裂と細胞質の分離(細胞質分裂)が起こるM期で始まる、様々
な成育段階を循環する。M期の次には、細胞が高速度の生合成と成育を再開する
G1期が続く。S期はDNA合成で始まり、核のDNA含有量が2倍になると終
わる。その後細胞はG2期に入り、そのG2期は、濃縮した染色体の出現によっ
て明らかになる有糸分裂が始まると終了する。最終的に分化した細胞はG1期で
滞留し、もはや細胞分裂を行わない。
【0003】 悪性の細胞に顕著な特徴は、無制御の増殖である。この現象は遺伝子変異の蓄
積によってもたらされ、変異の大部分は細胞周期の通り抜けを早める。癌細胞は
成長制御のシグナルを無視して、細胞分裂にしばりつけられている。rasのよ
うな古典的な癌遺伝子は、細胞外の増殖シグナルを模倣して、細胞周期のG1か
らS期への不適切な移行をもたらす。細胞周期チェックポイント制御は、ゲノム
の正確な複製と分離を確実にしている。細胞周期チェックポイント制御を失うと
、ゲノムが不安定になり、悪性転換を引き起こす変異の蓄積が大幅に加速される
。ゆえに、細胞周期チェックポイントの経路および他のそのような経路を治療物
質で調節することにより、正常な細胞と癌細胞との間の差異を活用でき、このこ
とは、放射線療法および化学療法の選択性を改善し、癌の新しい処置法をもたら
す。他の例として、このことはアポトーシス開始の制御に有用である。
【0004】 一方で、時には制御下で細胞の増殖を早めることも望ましい。例えば、細胞の
増殖は、傷の治癒および組織の成長が望まれる場合に有用である。ゆえに、増殖
の阻害を引き起こす、強める、または抑止する調節因子を同定することが望まし
い。
【0005】 細胞周期の構成成分および調節因子の同定が望まれているにも関わらず、その
ような化合物の分野は未成熟である。従って、細胞周期の調節因子をスクリーニ
ングするのに有用な組成物および方法を提供することは有益である。また、細胞
周期に関わる新しい組成物を提供することも有益である。
【0006】 発明の概要 本発明は、細胞周期タンパク質およびそのようなタンパク質をコードする核酸
を提供する。細胞周期を調節する能力のあるバイオ活性物質のスクリーニング方
法もまた、提供される。その方法は、細胞周期タンパク質ならびに候補バイオ活
性物質、および細胞または細胞集団を合わせ、候補物質の存在下および非存在下
において、細胞への影響を測定することを含む。細胞周期を制御するか、調節す
るための治療剤もまた、提供される。
【0007】 ある態様では、本発明の細胞周期タンパク質をコードする組換え核酸は、図1
または3に示す配列に相補的な配列にハイストリンジェントな条件でハイブリダ
イズする核酸を含む。好ましい実施態様では、本発明で提供される細胞周期タン
パク質は、増殖細胞核抗原(proliferation cell nuclear antigen、PCNA)
に結合する。
【0008】 ある実施態様では、図1または図3に示す核酸配列を含む組換え核酸が提供さ
れる。他の実施態様では、図1または図3に示す核酸と少なくとも85%の配列
同一性を有する核酸配列を含み、細胞周期タンパク質をコードする組換え核酸が
提供される。さらなる実施態様では、図2または図4に示すアミノ酸配列をコー
ドする組換え核酸が、本発明において提供される。
【0009】 本発明の他の態様では、発現ベクターが提供される。発現ベクターは、核酸を
トランスフォームされた宿主細胞によって認識される制御配列と機能し得るよう
に結合された、1またはそれ以上の本発明で提供される組換え核酸を含む。本発
明のベクターおよび組換え核酸を含む宿主細胞が、さらに提供される。さらに、
本明細書に記載されているように、細胞周期タンパク質の発現に適した条件下で
宿主細胞を培養することを含む、細胞周期タンパク質の作成方法が提供される。
ある実施態様では、その方法は細胞周期タンパク質を回収することを含む。
【0010】 本発明の核酸によってコードされる組換え細胞周期タンパク質もまた、提供さ
れる。ある態様では、図2または図4に示す配列と少なくとも80%の配列同一
性を有するアミノ酸配列を含む組換えポリペプチドが提供される。ある実施態様
では、図2または図4に示すアミノ酸配列を含む組換え細胞周期タンパク質が提
供される。
【0011】 他の態様では、本明細書に記載のように、本発明は、細胞周期タンパク質に特
異的に結合する、単離されたポリペプチドを提供する。そのような単離されたポ
リペプチドの例には、抗体が含まれる。そのような抗体は、モノクローナル抗体
で有り得る。ある実施態様では、そのような抗体は、該細胞周期タンパク質の生
物学的機能を低減するか、または除去する。
【0012】 細胞周期タンパク質に結合する能力のあるバイオ活性物質をスクリーニングす
る方法が、本発明でさらに提供される。ある実施態様では、その方法は細胞周期
タンパク質と候補バイオ活性物質を合わせ、該候補バイオ活性物質の該細胞周期
タンパク質への結合を測定することを含む。
【0013】 他の態様では、細胞周期タンパク質とPCNAタンパク質の結合を妨害する能
力のあるバイオ活性物質をスクリーニングする方法が、本発明でさらに提供され
る。ある実施態様では、そのような方法は、細胞周期タンパク質、候補バイオ活
性物質およびPCNAタンパク質を合わせ、該細胞周期タンパク質と該PCNA
タンパク質の結合を測定することを含む。必要なら、該細胞周期タンパク質と該
PCNAタンパク質を先に合わせることができる。
【0014】 細胞周期タンパク質の活性を調節する能力のあるバイオ活性物質をスクリーニ
ングする方法が、本発明でさらに提供される。ある実施態様では、該方法は、細
胞周期タンパク質をコードする組換え核酸を含む細胞に候補バイオ活性物質を加
え、該候補バイオ活性物質の該細胞への影響を測定することを含む。好ましい実
施態様では、候補バイオ活性物質のライブラリーを、細胞周期タンパク質をコー
ドする組換え核酸を含む細胞集団に加える。
【0015】 本発明の他の態様は、以下の発明の説明によって、当業者に明らかになるであ
ろう。
【0016】 図面の簡単な説明 図1A−1Bは、細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム1の核酸配列
を示す。翻訳開始コドン(ATG)、インフレームの上流の停止コドン(TGA
)および翻訳停止コドン(TAA)を、太字と下線で示す。
【0017】 図2は、細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム1のアミノ酸配列を示
す。推定される2部に分かれた核局在化シグナルは、351−368、374−
391、962−979、および999−1016の位置にある。推定されるチ
ューダー(tudor)ドメイン(核タンパク質複合体に付随するタンパク質に見ら
れる)は、位置21−81である。推定されるDNA/RNAヘリカーゼドメイ
ン(DEAD/DEAHボックス)は、位置517−635である。
【0018】 図3A−3Bは、細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム2の核酸配列
を示す。翻訳開始コドン(ATG)、読み枠が合う上流の停止コドン(TGA)
および翻訳停止コドン(TAA)を、太字と下線で示す。
【0019】 図4は、細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム2のアミノ酸配列を示
す。
【0020】 発明の詳細な説明 本発明は、細胞周期タンパク質および、そのようなタンパク質をコードする核
酸を提供する。細胞周期を調節する能力のあるバイオ活性物質をスクリーニング
する方法もまた、提供される。ある態様では、その方法は、細胞周期タンパク質
ならびに候補バイオ活性物質、および細胞または細胞集団を合わせ、候補物質の
存在下および非存在下において、細胞(群)への影響を測定することを含む。結
合アッセイを含む他のスクリーニングアッセイも、下記のように本発明で提供さ
れる。細胞周期を制御するか、または調節するための治療剤も提供され、本明細
書に記載されている。以下にさらに記載するように、診断剤もまた、提供される
【0021】 本発明の細胞周期タンパク質は、いくつかの方法で同定され得る。この意味で
の「タンパク質」には、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが含まれる。
本発明の細胞周期タンパク質は、2つの総括分類に分けられる:すなわち、判明
した時点で、発現配列タグ(expressed sequence tag、EST)によりコードさ
れる既知のタンパク質またはペプチドと相同性があっても、公開のデータベース
の一部にはなっていない完全に新規であるタンパク質。または、該細胞周期タン
パク質が既知のタンパク質であるが、細胞周期に関わることは未知であったもの
、すなわち、本明細書中で新しい生物学的機能を有するものと同定されるもので
ある。従って、細胞周期タンパク質は、先ず第一に細胞周期に関わることが知ら
れているタンパク質との関連性により、同定し得る。細胞周期タンパク質と核酸
が新規の場合、組成物と使用法が本発明で提供される。細胞周期タンパク質と核
酸が既知ではあるが、本明細書に記載のような細胞周期活性に関わることは未知
である場合、使用法、すなわち機能的スクリーニングの方法が提供される。
【0022】 本発明で提供されるある実施態様では、細胞周期タンパク質は、本明細書で定
義するように、次の特性の1つまたはそれ以上を有する:PCNAとの結合;酵
母RAD26およびヒトERCC6との相同性;および本明細書に記載の細胞周
期タンパク質活性。PCNA、酵母RAD26およびヒトERCC6は、以下に
さらに論じる。ある態様では、酵母RAD26およびヒトERCC6との相同性
は、例えばGenBankのBLAST検索プログラムを用いて見出される(Al
tschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402 (1997))。特に、ある実施態
様では、本発明のアイソフォーム1との相同性を有する配列を測定するために、
次のデータベースとパラメータを用いる。データベース:Non-redundant GenBan
k CDS translations+PDB+SwissProt+SPupdate+PIR; Lambda 0.316, K 0.132, H
0.00; Gapped Lambda 0.27, K 0.047, H 4.94e-324; Matrix:BLOSUM62; Gap Pe
nalities: Existence: 11, Extension: 1。同様に、ある実施態様では、本発明
のアイソフォーム2の相同性検索のために、次のパラメータを用いる。Database
: non-redundant GenBank CDS translations+PDB+SwissProt+SPupdate+PIR; Lam
bda 0.315; K 0.131; H 0.00; Gapped Lambda 0.27; K 0.047 and H 4.94e-324;
Matrix : BLOSUM62; Gap Penalties: existence: 11, extension: 1。
【0023】 ある実施態様において、細胞周期タンパク質をRadhと称する。以下に記載
する特性は本明細書中で提供されるいずれの細胞周期タンパク質にも当てはまる
が、Radhを用いて例示説明する。Radhは、ヘリカーゼのファミリーに属
するタンパク質と類似性を有する。DNAへリカーゼは、複製が可能となるよう
にDNAの超らせん構造を解き、あるいはDNAを巻き戻す。好ましくは、Ra
dhはPCNAに結合する。PCNAは、細胞周期進行、チェックポイント制御
、DNA複製および修復において関与するタンパク質を含むタンパク質と相互作
用する(Fotedar and Fotedar, Prog. Cell Cycle Res., 1:73〜89(1995);Pr
osperi. Prog. Cell Cycle Res., 3:193〜210(1997);Kelman and Hurwitz,
Trend Biochem. Sci., 23(7):236〜8(1998))。知見によれば、PCNA発現
のレギュレーターとしてp53腫瘍抑制タンパク質が提示されており、これはD
NA修復のインデューサーとしてのp53の機能と矛盾しないと思われる。また
、PCNAは、DNA修復タンパク質として提示される(Morris et al., Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93(2):895〜9(1996))。更にはPCNAはミス
マッチ修復に関与している(Kolodner and Marsischky, Curr. Opin. Genet. De
v, 9(1):89〜96(1999))。PCNAに関しては、例えば Warbrick, Bioessay
s, 20(3):195〜9(1998)もまた参照されたい。
【0024】 Radhがある程度相同性を有するERCC6は、DNAヘリカーゼとRNA
ヘリカーゼとの間で保存された7連続のドメインを包含する。本明細書中に提示
される新規の細胞周期タンパク質は、ERCC6、酵母RAD26、または他の
既知のタンパク質よりも図示された配列とより高い相同性を有する。ERCC6
の分析により、ERCC6が(i)コケイン症候群に関与し、(ii)転写遺伝子
の優先修復に対して特異的であり、そして(iii)細胞生存能に不可欠ではない
ことが示されることが、研究から報告されている(Troelstra, et el., Cell, 7
1(6):939〜53(1992))。UV感受性ヌクレオチド除去修復障害、コケイン症
候群(CS)の患者からの細胞は、転写と共役した修復において特異的な欠損を
有する。コケイン症候群において欠失している2つの遺伝子CSAおよびCSB
は同定されており、ERCC6はCS相補群B(CSB;Troelstra、前出)の
欠損を修正することが示された。ERCC6に関しては、Selby and Sancar, J.
Biol. Chem. 272(3):1885〜90(1997)および Huang, et el., Biochem Bioph
ys Res Commun, 201(1):310〜7(1994)もまた参照されたい。
【0025】 Radhがまたある程度相同性を有する酵母タンパク質RAD26が、コケイ
ン症候群B遺伝子ERCC6(van Gool et al., EMBO J., 13(22)5361〜9(199
4);Tijsterman and Brouwer, J. Biol. Chem. 274(3):1199〜202(1999))
の機能的な酵母相同体として同定されている。RAD26は、RNAポリメラー
ゼII転写配列の転写鎖からの損傷したDNAの除去に寄与する、転写と共役した
DNA修復に関与する。研究によりRAD26変異細胞は、転写に携わるが、そ
の後損傷部位でその転写複合体の放出を抑えることにより当該工程を阻止するこ
とが示唆される(Tijsterman and Brouwer、前出)。
【0026】 好ましい態様において、本発明のRadhタンパク質は、特にはUV照射が塩
基対におけるヌクレオチドに損傷を与えたり除去したりする、UV誘発性DNA
損傷に対するエラープローン修復機構に関与する一連のタンパク質に属し、これ
により、該修復タンパク質が欠損しているヌクレオチドをランダムに置換できる
ようにする。Radhタンパク質がPCNAのようなタンパク質と結合し、修復
カスケードの活性化に直接あるいは間接的に関与するのが最も好ましい。
【0027】 ある実施態様では、細胞周期核酸または細胞周期タンパク質は、本発明で提供
される配列(類)への核酸および/またはアミノ酸配列の実質的同一性または類
似性により最初に同定される。好ましい実施態様では、細胞周期核酸または細胞
周期タンパク質は、下記のように本発明で提供される配列に対して配列同一性ま
たは類似性を有し、1またはそれ以上のさらに後述するような細胞周期タンパク
質バイオ活性を有する。そのような配列同一性または類似性は、全体的な核酸ま
たはアミノ酸配列に基づくことができる。
【0028】 好ましい実施態様では、本明細書で定義するように、あるタンパク質は、アミ
ノ酸配列の、図2または4のアミノ酸配列に対する全体的な配列同一性が好まし
くは約75%より大きく、より好ましくは約80%より大きく、さらに好ましく
は約85%より大きく、最も好ましくは約90%より大きいならば、「周期細胞
タンパク質」である。ある実施態様では、該配列同一性は、約93ないし95ま
たは98%にも上る。
【0029】 他の好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質は、約80%より大きく、よ
り好ましくは約85%より大きく、さらに好ましくは約90%より大きく、最も
好ましくは約93%より大きい、図2または4のアミノ酸配列との全体的な配列
類似性を有する。ある実施態様では、該配列同一性は、約95ないし98または
99%にも上る。
【0030】 技術上周知のように、タンパク質(または以下に考察するように核酸)が既知
配列と配列同一性または類似性を有しているか否かを同定するために多数の異な
るプログラムを使用することができる。配列同一性および/または類似性は技術
上周知の標準的技法を用いて測定することができ、それらは、Smith & Waterman
, Adv. Appl. Math., 2: 482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman
& Wunsch, J. Mol. Biol., 48: 443 (1970)の配列同一性アラインメント、Pear
son & Lipman, PNAS U.S.A., 85: 2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴ
リズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package、Gen
etics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WI、中のGAP、BES
TFIT、FASTAおよびTFASTA)、Devereux et al., Nucl. Acid Re
s., 12: 387-395 (1984)に記載のBest Fit配列プログラム、を非限定的に含み
、好ましくはデフォルト設定を用い、または検定により使用する。好ましくは、
FstDBにより以下のパラメータに基づいてパーセント同一性を計算する:mi
smatch penalty 1; gap penalty 1; gap size penalty 0.33; joining penalty
30、「Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,」Macromolecul
e Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications, pp 127-14
9 (1988), Alan R. Liss, Inc.である。
【0031】 有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは、漸進的対
アラインメントを用いて関連配列から多重配列アラインメントを創成する。それ
はまた、アラインメント創成に使用される、クラスタリングの関係を示すツリー
を描くことができる。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:
351-360 (1987)の漸進的アラインメント法の簡略化したものを用いる;この方法
はHiggins & Sharp CABIOS 5: 151-153 (1989)記載の方法と類似している。有用
なPILEUPパラメータは、a default gap weight 3.00、a default gap len
gth weight 0.10、weighted end gapsを含む。
【0032】 有用なアルゴリズムのもう1つの例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215
, 403-410, (1990);およびKarlin et al., PNAS U.S.A. 90: 5873-5787 (1993)
に記載のBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、
Altschul et al., Methods in Enzymology, 266: 460-480 (1996); http://blas
t.wustl/edu/blast/ README.html]から得られるWU−BLAST−2である。
WU−BLAST−2はいくつかの検索パラメータを使用するがその殆どはデフ
ォルト値に設定されている。調節可能なパラメータは以下の値で設定する:over
lap span =1, overlap fraction = 0.125, word threshold (T) = 11である。H
SP SおよびHSP S2パラメータは動的数値であり、特定の配列の組成およ
び興味の対象である配列を検索する特定のデータベースの組成に依存してプログ
ラム自身により決定されるが、値は感度を上げるように調節することができる。
【0033】 これに加えて有用なアルゴリズムは、Altschul et al., Nucl. Acids Res., 2
5: 3389-3402に報告されているギャップドBLASTである。ギャップドBLA
STはBLOSUM−62代替スコアを使用する。ここで閾値Tパラメータは9
に設定し;2−ヒット法によりギャップのない伸長を開始し;ギャップ長kにコ
スト10+kを課し;Xを16に設定し;Xをデータベース検索段階では4
0に、そしてアルゴリズムのアウトプット段階では67に設定する。ギャップド
アラインメントは約22ビットまでに相当するスコアで開始される。
【0034】 パーセントアミノ酸配列同一性の値は、マッチする同一残基の数を、アライン
メントを行った領域における「より長い」配列の総残基数で割って決定される。
「より長い」配列は、アラインメントを行った領域中で実際の残基を最も多く有
する配列である(アラインメントスコアを最大化するためにWU−Blast−
2により導入されたギャップを無視する)。
【0035】 同様にして、ここで同定されるポリペプチドのコーディング配列に関する「パ
ーセント(%)核酸配列同一性」を、細胞周期タンパク質のコーディング配列中
のヌクレオチド残基と同一な、候補配列中のヌクレオチド残基の割合として定義
する。好ましい方法は、WU−BLAST−2のBLASTNモジュールをデフ
ォルトパラメータに設定し、オーバーラップスパンおよびオーバーラップフラク
ションをそれぞれ1および0.125に設定して利用するものである。
【0036】 アラインメントは、アラインメントを行う配列中へのギャップ導入を含んでも
よい。加えて、図1または3に示す配列でコードされるタンパク質より多いかま
たは少ないアミノ酸を含有する配列については、ある実施態様では、配列同一性
の割合は、アミノ酸総数に対する同一アミノ酸数に基づいて決定されると理解さ
れる。かくして、例えば、後で論じるように、ある実施態様では、図2または4
に示す配列より短い配列の配列同一性は、より短い配列中のアミノ酸数を用いて
決定される。パーセント同一性の計算においては、相対的重みは、挿入、欠失、
置換その他のような種々の配列変化の表出に起因するとはされない。
【0037】 ある実施態様では、同一性のみがプラスのスコアを与えられ(+1)、ギャッ
プを含むあらゆる形の配列変化に「0」の値が与えられる。これにより、配列類
似性計算について後述するような、重みをつけた目盛りまたはパラメータの必要
性がなくなる。例えば、配列同一性の割合は、アミノ酸総数に対する同一アミノ
酸数に基づいて決定されると理解される。例えば、パーセントアミノ酸配列同一
性は、マッチする同一残基の数を、アラインメントを行った領域における「より
短い」配列の総残基数で割り、100を掛けて算出される。「より長い」配列は
、アラインメントを行った領域中で実際の残基を最も多く有する配列である
【0038】 当業者に認識されるであろうように、本発明の配列は、配列のエラーを含んで
もよい。つまり、誤ったヌクレオシド、フレームシフト、未知のヌクレオシド、
または他のタイプの配列エラーが、配列のどこにあってもよい。しかし、正しい
配列は、本発明の定義の相同性およびストリンジェンシーの範囲内にある。
【0039】 本発明の細胞周期タンパク質は、図1または3に示す核酸にコードされるアミ
ノ酸配列よりも、短くても長くてもよい。ゆえに、好ましい実施態様では、本発
明で提供される核酸配列にコードされるアミノ酸配列の部分または断片が、細胞
周期タンパク質の定義に包含される。本発明のある実施態様では、細胞周期タン
パク質の断片は、a)少なくとも1つの抗原のエピトープを共有する;b)少な
くとも指示された配列の同一性を有する;およびc)好ましくは本発明でさらに
定義される細胞周期における生物学的活性を有する、の場合、細胞周期タンパク
質とみなされる。該配列が診断的に用いられる場合、つまり、細胞周期タンパク
質の核酸の有無が求められる場合には、指示された配列の同一性のみが要求され
る。本発明の核酸もまた、図1または3の配列よりも、短くても長くてもよい。
核酸断片には、過去に正確には同定されていない配列を有する、本発明で提供さ
れる核酸のあらゆる部分が含まれる;過去に同定されていない部分に対して、指
示された配列同一性がある配列を有する断片が、本発明のある実施態様で提供さ
れる。
【0040】 さらに、より詳しく後で概説するように、例えばエピトープもしくは精製用タ
グの付加、他の融合配列の付加、または付加的なコーディングおよび非コーディ
ング配列の解明により、図2または4に示されるものよりも長い細胞周期タンパ
ク質を作成し得る。後述のように、細胞周期タンパク質をグリーン蛍光ペプチド
(GFP)のような蛍光ペプチドと融合させることが、特に好ましい。
【0041】 細胞周期タンパク質はまた、本明細書で概説するように、図1または3に示す
配列またはその相補鎖とハイブリダイズする細胞周期核酸にコードされるものと
しても同定され得る。ハイブリダイゼーションの条件は、さらに後述する。
【0042】 好ましい実施態様では、抗体を作成するために細胞周期タンパク質を用いよう
とするとき、細胞周期タンパク質は、完全長タンパク質と、少なくとも1つのエ
ピトープまたは決定因子を共有せねばならない。本明細書では、「エピトープ」
または「決定因子」は、抗体を作成および/または結合するであろうタンパク質
の一部分を意味する。ゆえに、ほとんどの例で、より小さい細胞周期タンパク質
に対して作られた抗体は、完全長タンパク質に結合できる。好ましい実施態様で
は、エピトープは無二である。つまり、無二のエピトープに対して作成された抗
体は、交差反応性をほとんど、または全く示さない。「抗体」という用語には、
当分野で周知のように、抗体全体を修飾して作成されたか、または組換えDNA
技術を用いて新規に合成された、Fab、Fab、1本鎖抗体(例えば、Fv
)、キメラ抗体などを含む抗体断片が含まれる。
【0043】 後述するように、好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質に対する抗体に
は、本明細書に記載の細胞周期タンパク質の生物学的機能を低減するか、または
除去する能力がある。つまり、抗細胞周期タンパク質抗体(ポリクローナル、ま
たは好ましくはモノクローナルのどちらでも)を細胞周期タンパク質(または細
胞周期タンパク質を含有する細胞)に加えることで、細胞周期タンパク質活性を
低減するか、または除去し得る。一般的に、少なくとも25%の活性の減少が好
ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、約95−100%の減少がことさ
ら好ましい。
【0044】 本発明の細胞周期抗体は、細胞周期タンパク質に特異的に結合する。好ましい
実施態様では、抗体は特異的に細胞周期タンパク質に結合する。本明細書では、
「特異的に結合する」は、少なくとも10−4−10−6−1の範囲の結合定
数で、好ましくは10−7−10−9−1の範囲で、抗体がタンパク質に結合
することを意味する。抗体について、さらに後述する。
【0045】 核酸の場合、核酸配列の包括的な配列同一性は、アミノ酸の配列同一性と同一
基準であるが、遺伝暗号の縮重と異なる生物間のコドンの偏りを考慮にいれる。
従って、核酸配列の同一性は、タンパク質配列のそれと比べて低くも高くもあり
得る。ゆえに、図1または3の核酸配列と比較した核酸配列の配列同一性は、好
ましくは75%より大きく、より好ましくは約80%より大きく、特に約85%
より大きく、そして最も好ましくは90%より大きい。いくつかの実施態様では
、該配列同一性は約93ないし95または98%ほどに高い。
【0046】 好ましい実施態様では、細胞周期核酸は、細胞周期タンパク質をコードする。
当業者には理解されるであろうように、遺伝暗号の縮重のために、すべて本発明
の細胞周期タンパク質をコードする、極めて多数の核酸を作り得る。ゆえに、特
定のアミノ酸配列を同定すれば、当業者は、細胞周期タンパク質のアミノ酸配列
を変えない方法で、単純に1つまたはそれ以上のコドンの配列を変更することに
より、異なる核酸をいくつでも作成し得る。
【0047】 ある実施態様では、核酸はハイブリダイゼーション調査により決定される。ゆ
えに、例えば、図に示す核酸配列またはその相補鎖と、ハイストリンジェンシー
のもとでハイブリダイゼーションする核酸は、細胞周期核酸と考えられる。ハイ
ストリンジェンシー条件は、当分野で知られている;例えば、出典明示により本
明細書の一部とするManiatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manu
al, 2d Edition, 1989およびShort Protocols in Molecular Biology, ed. Ausu
bel, et al.を参照のこと。ハイストリンジェント条件は配列依存的であり、環
境が違えば異なる。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする
。核酸のハイブリダイゼーションの発展的手引きは、Tijssen, Techniques in B
iochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probe
s, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic
acid assays" (1993)に記載されている。一般的に、特異的な配列について、ス
トリンジェント条件は、規定されたイオン強度、pHにおいて熱融解点(T
より約5−10℃低いように選択される。Tは、標的に相補的なプローブの5
0%が、平衡状態で標的配列に(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度で)ハ
イブリダイズする温度である(標的配列が過剰に存在するので、Tでは、50
%のプローブが平衡状態において占められる)。ストリンジェント条件は、塩濃
度が約1.0ナトリウムイオンより小さく、典型的には0.01ないし1.0M
のナトリウムイオン(または他の塩)濃度、pH7.0ないし8.3、温度が、
短いプローブ(例えば、10ないし50のヌクレオチド)には低くても約30℃
、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド以上)には低くても約60℃、であ
る。ストリンジェント条件は、ホルムアミドのような不安定化させる物質の付加
により達せられてもよい。
【0048】 他の実施態様では、より低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件
を用いる;例えば、当分野で周知のように、モデレートまたはローストリンジェ
ンシー条件を用いてもよい;Maniatis and Ausubel, supra, and Tijssen(前出
)を参照のこと。
【0049】 本発明の細胞周期タンパク質と核酸は、好ましくは組換え体である。ここで用
いられる「核酸」は、さらに定義するように、DNAもしくはRNA、またはデ
オキシおよびリボヌクレオチドの両者を含む分子を表わし得る。核酸は、ゲノム
DNA、cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含み、センスおよびアンチセンス
核酸を含む。このような核酸はまた、生理的環境におけるそのような分子の安定
性および半減期を増加させるために、リボース−リン酸バックボーンに修飾を含
んでいてもよい。
【0050】 核酸は2本鎖、1本鎖であってよく、または2本鎖もしくは1本鎖の配列の両
方の部分を含んでいてもよい。当業者により認識されるであろうように、1本鎖
(「ワトソン」)を描けばもう1つの鎖(「クリック」)の配列が規定され、ゆ
えに図に示す配列は、該配列の相補鎖もまた含む。ここで「組換え核酸」という
用語は、一般的に、核酸をエンドヌクレアーゼによって操作して、自然界には存
在しない形状で、独創的にインビトロで形成した核酸を意味する。ゆえに、線状
の形状で単離された細胞周期核酸や、通常は結合していないDNA分子を連結す
ることによりインビトロで形成した発現ベクターは、両者とも本発明のためには
組換え体と考えられる。一旦組換え核酸が作成され宿主細胞または生物に再導入
されれば、それは非組換え的に、すなわち、インビトロの操作ではなく宿主のイ
ンビボの細胞機構を用いて複製すると理解される;しかしながら、そのような核
酸は一旦組換え的に生産されれば、以後は非組換え的に複製しても、本発明のた
めにはなお組換え体と考えられる。
【0051】 同様に、「組換えタンパク質」は組換え技術を用いて、すなわち上述のように
組換え核酸の発現を通して作成されたタンパク質である。組換えタンパク質は、
少なくとも1つまたはそれ以上の特性によって、天然産生のタンパク質と区別さ
れる。例えば、このタンパク質は、野生型宿主中で通常会合しているタンパク質
または化合物の一部または全てから単離または精製され、実質的に純粋であり得
る。例えば、単離されたタンパク質は、自然状態では通常会合している物質の少
なくとも一部を伴わないで、所定の試料中の総タンパク質重量の好ましくは少な
くとも約0.5%、より好ましくは少なくとも5%を構成している。実質的に純
粋なタンパク質は、総タンパク質重量の少なくとも約75%、好ましくは少なく
とも約80%、そして特に好ましくは少なくとも約90%を含む。この定義には
、ある生物由来の細胞周期タンパク質を異なる生物または宿主中で生産すること
が含まれる。あるいは、タンパク質がより増加した濃度レベルで作られるように
誘導可能プロモーターもしくは高発現プロモーターを使用することにより、タン
パク質を通常見られるよりも有意に高濃度で作ることができる。あるいは、以下
に考察するように、該タンパク質は、エピトープタグの付加またはアミノ酸置換
、挿入および欠失を含むような、自然界に通常見出されない形であり得る。
【0052】 ある実施態様では、本発明は、細胞周期タンパク質の変異体を提供する。これ
らの変異体は置換、挿入または欠失変異体の3つの分類の1つまたはそれ以上に
相当する。これらの変異体は通常、カセット式もしくはPCR式変異誘発または
技術上周知の他の技術を用いて、細胞周期タンパク質をコードするDNA中のヌ
クレオチドの部位特異的変異誘発により、変異体をコードするDNAを生産し、
そして次いでDNAを上に略述した組換え培養細胞中で発現させることにより調
製する。しかしながら、約100〜150残基までを有する変異細胞周期タンパ
ク質断片を、確立された技術を用いてインビトロ合成により調製することができ
る。アミノ酸配列変異体は変化が予め決定されているという特徴を有し、この特
徴によって、これらの変異体は、細胞周期タンパク質のアミノ酸配列に対する天
然産生の対立遺伝子変異体または種間変異体から区別される。変異体は典型的に
、天然産生の類似体と定性的に同じ生物活性を発揮するが、ただし、以下にさら
に詳しく略述するように、変更された特性を有する変異体を選択することもでき
る。
【0053】 アミノ酸配列変異を導入する部位または領域は予め決定されるが、変異自体は
予め決定しておく必要はない。例えば、所定の部位における変異能を最適化する
ために、標的コドンまたは領域にランダム変異誘発を起こし、発現した細胞周期
変異体をスクリーニングして所望の活性の最適な組合わせを有するものを探して
もよい。既知の配列を有するDNA中の予め定められた部位に置換変異を作成す
る技術は周知であり、例えば、M13プライマーによる変異誘発およびPCRに
よる変異誘発がある。変異体のスクリーニングは、細胞周期タンパク質活性のア
ッセイを用いて行われる。
【0054】 アミノ酸置換は典型的には単一の残基置換である;かなり大きな挿入も許容さ
れるが、挿入は通常、約1〜20アミノ酸の単位で行われよう。欠失は、より大
きな場合もあるが、約1から約20残基の範囲である。
【0055】 最終誘導体に到達するために、置換、欠失、挿入またはそれらのいずれの組み
合わせを用いてもよい。一般的に、これらの変化は、分子の変化を最小限にする
ために少数のアミノ酸について行われる。しかしながら、より大きな変化も一定
の状況では許容される。細胞周期タンパク質の特徴について小さな変化が望まれ
る場合は、置換は一般的に次のチャートに従ってなされる。
【表1】 チャートI
【0056】 機能または免疫学的同一性における実質的な変化は、チャートIに示したもの
より保存性の低い置換を選択することによってもたらされる。例えば、より大き
く影響する置換を行うことができる:それらは、変化する区域のポリペプチドバ
ックボーンの構造、例えばアルファ−ヘリックス構造またはベータ−シート構造
;標的部位での分子の電荷または疎水性;または側鎖の大きさである。一般的に
ポリペプチドの性質に最も大きな変化を生じると期待される置換は(a)親水性
残基、例えばセリルまたはスレオニルを、疎水性残基、例えばロイシル、イソロ
イシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに置換する(またはその逆
)、(b)システインまたはプロリンを他のいずれかの残基に置換する(または
その逆)、(c)正電荷を持つ側鎖、例えばリシル、アルギニル、またはヒスチ
ジルを負電荷を持つ側鎖、例えばグルタミル、アスパルチルに置換する(または
その逆)、(d)大きい側鎖を持つ残基、例えばフェニルアラニンを側鎖を持た
ない残基、例えばグリシンに置換する(またはその逆)、ものである。
【0057】 変異体は典型的には天然産生の類似体と定性的に同じ生物活性を発揮し、同じ
免疫応答を誘起するが、ただし、必要に応じて細胞周期タンパク質の特性を変更
するような変異体もまた選択される。あるいは、変異体を細胞周期タンパク質の
生物活性が変わるようにデザインすることができる。例えば、グリコシル化部位
を変えたりまたは除去したりすることができる。
【0058】 細胞周期タンパク質の共有結合による修飾は、本発明の範囲内に含まれる。共
有結合による修飾の1つのタイプは、細胞周期ポリペプチドの標的アミノ酸残基
を、細胞周期ポリペプチドの選択された側鎖またはN−もしくはC−末端と反応
できる有機誘導体化試薬と反応させることを含む。以下に詳述するように、二官
能性試薬による誘導体化は、例えば、抗細胞周期タンパク質抗体の精製またはス
クリーニングアッセイの方法において使用する水不溶性の支持マトリックスまた
は表面に、細胞周期を架橋するために有用である。一般的に用いられる架橋試薬
としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グ
ルタルアルデヒド、例えば4−アジドサリチル酸とのエステルのようなN−ヒド
ロキシスクシンイミドエステル、3,3'−ジチオビス(スクシンイミジルプロ
ピオン酸エステル)のようなジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能イミ
ドエステル、ビス−N−マレインイミド−1,8−オクタンのような二官能マレ
インイミドおよびメチル‐3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオンイミ
ダートのような試薬が挙げられる。
【0059】 他の修飾としては、グルタミニルおよびアスパラギニル残基からそれぞれ対応
するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリシン
の水酸化、セリルまたはスレオニル残基の水酸基のリン酸化、リシン、アルギニ
ン、およびヒスチジン側鎖の "−アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Protein
s: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisc
o, pp. 79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、およびC末端カルボキシル
基のアミド化が挙げられる。
【0060】 この発明の範囲内に含まれる細胞周期ポリペプチドの別のタイプの共有結合的
修飾は、ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンを変えることより成る。「
天然のグリコシル化パターンを変える」とは、ここでの目的には、細胞周期ポリ
ペプチドの天然の配列の中に見出される1個もしくはそれ以上の炭水化物部分を
取り除くこと、および/または細胞周期ポリペプチドの天然の配列に存在しない
1個またはそれ以上のグリコシル化部位を附加することを意味する。
【0061】 細胞周期ポリペプチドへのグリコシル化部位の附加はそのアミノ酸配列を変化
させることにより達成される。例えば、その変化は、1個またはそれ以上のセリ
ンまたはスレオニン残基を細胞周期ポリペプチドの天然配列に添加または置換す
ることによって行われる(O−グリコシル部位)。細胞周期アミノ酸配列は、D
NAレベルでの変化を通して任意に変化させ得るが、特に、所望のアミノ酸に翻
訳されるであろうコドンを作成するように予め選択した塩基において、細胞周期
ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって変化させ得る。
【0062】 細胞周期ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させるもう1つの方法は、
ポリペプチドにグリコシドを化学的もしくは酵素的にカップルさせることによる
。このような方法は、技術上で、例えば、1987年9月11日に公開されたWO
87/05330およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 2
59-306 (1981)に記述されている。
【0063】 細胞周期ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にもしくは
酵素的に、またはグリコシル化の標的となっているアミノ酸残基をコードするコ
ドンを置換する変異により達成される。化学的脱グリコシル化の手法は技術上周
知であり、例えば、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259: 52 (
1987)およびEdge et al., Anal. Biochem., 118: 131 (1981)に記述されている
。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al., Meth. En
zymol., 138: 350 (1987)に記述されているように種々のエンド−およびエキソ
−グリコシダーゼの使用により達成できる。
【0064】 もう1つのタイプの細胞周期タンパク質の共有結合的修飾は、特許第4640
835号、第4496689号、第4301144号、第4670417号、第
4791192号または第4179337号に示されている方法で、細胞周期ポ
リペプチドを種々の非タンパク質ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン、の1つに結合させるこ
とを含む。
【0065】 本発明の細胞周期ポリペプチドはまた、もう1つの、異種のポリペプチドまた
はアミノ酸配列に融合した細胞周期ポリペプチドを含むキメラ分子を形成するよ
うに修飾し得る。ある実施態様では、そのようなキメラ分子は、細胞周期ポリペ
プチドと、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプ
チドとの融合を含む。エピトープタグは一般的に、細胞周期ポリペプチドのアミ
ノ−またはカルボキシル−末端に置かれる。細胞周期ポリペプチドにそのような
エピトープタグが付いた形のものの存在は、タグポリペプチドに対する抗体によ
って検出することができる。また、エピトープタグをつけることにより、細胞周
期ポリペプチドが抗タグ抗体、またはエピトープタグに結合する別のタイプのア
フィニティーマトリックスによる精製が容易になる。別の実施態様では、キメラ
分子は、細胞周期ポリペプチドと免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の
領域との融合を含んでもよい。以下でさらに論じるように、2価形態のキメラ分
子について、このような融合はIgG分子のFc領域に対してなし得る。
【0066】 種々のタグポリペプチドおよびその各々の抗体は技術上周知である。例として
は、ポリ−ヒスチジン(poly-his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-h
is-gly)タグ、flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field
et al., Mol. Cell. Biol. 8: 2159-2165 (1988)];c−mycタグおよびそれ
に対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et a
l., Molecular and Cellular Biology, 5: 3610-3616 (1985)];ならびに単純ヘ
ルペスウイルスの糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al.
, Protein Engineering, 3(6): 547-553 (1990)]が挙げられる。その他のタグポ
リペプチドとしては、Flag−ペプチド[Hopp et al., BioTechnology 6: 120
4-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science 255: 192
-194 (1992)];チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Ch
em. 266: 15163-15166 (1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ
[Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 6393-6397 (19
90)]が挙げられる。
【0067】 以下に概説するように、ある実施態様では、細胞周期ファミリーの細胞周期タ
ンパク質および他の生物由来の細胞周期タンパク質を、クローニングし、発現さ
せる。ゆえに、プローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の縮重したプラ
イマー配列を、ヒトまたは他の生物由来の他の関連する細胞周期タンパク質を見
つけ出すのに用いてもよい。当業者には理解されるであろうように、特に有用な
プローブおよび/またはPCRプライマー配列は、細胞周期核酸配列の独特な領
域を含む。当分野で一般的に知られるように、好ましいPCRプライマーは、約
15ないし約35ヌクレオチド長であり、約20ないし約30が好ましく、必要
ならイノシンを含んでもよい。PCR反応の条件は当分野で周知である。ゆえに
、ここで挙げられた配列の中で配列にともなって提供されるものは、これらの配
列の各部分であり、15ヌクレオチドまたはそれ以上の独特の各部分が特に好ま
しいこともまた理解される。当業者は、日常的にヌクレオチド配列を所望の長さ
に合成したり切断することができる。
【0068】 一旦、プラスミドまたは他のベクターに含めたり、そこから直線状の核酸断片
として切り出すなどして、その天然の供給源から単離すると、組換え細胞周期核
酸を、他の細胞周期核酸を同定および単離するためのプローブとしてさらに用い
ることができる。それをまた、修飾された、または変異型の細胞周期核酸および
タンパク質を作成するための「前駆」核酸として用いることができる。
【0069】 細胞周期タンパク質をコードする本発明の核酸を用いて、種々の発現ベクター
が作られる。発現ベクターは、自己複製的な染色体外ベクターでも宿主ゲノムに
組み込まれるベクターでもよい。一般的に、これらの発現ベクターは、細胞周期
タンパク質をコードする核酸に機能し得るように結合された転写および翻訳の制
御核酸を含む。「制御配列」という用語は、特定の宿主生物内で、機能し得るよ
うに結合されたコーディング配列が発現するのに必要なDNA配列を意味する。
原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列
、およびリボゾーム結合部位を含む。真核細胞はプロモーター、ポリアデニル化
シグナル、およびエンハンサーを使用することが知られている。
【0070】 核酸は、それが他の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合に「機能し得
るように結合されて」いる。例えば、前配列もしくは分泌リーダーに対するDN
Aは、もしそれがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現され
るならば、ポリペプチドに対するDNAに機能し得るように結合されている;プ
ロモーターまたはエンハンサーは、もしそれが配列の転写に影響を与えるならば
、コーディング配列に機能し得るように結合されている;または、リボゾーム結
合部位は、もしそれが翻訳を促進するように位置しているならば、コーディング
配列に機能し得るように結合されている。他の例として、機能し得るように結合
されたとは、隣接するように、そして、分泌リーダー配列の場合は、隣接しかつ
読みとり段階にあるように結合されたDNA配列を意味する。しかしながら、エ
ンハンサーは隣接している必要はない。結合は都合のよい制限部位におけるライ
ゲーションにより達成される。もしそのような部位が存在しないならば、合成オ
リゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを従来の実施法に従って使用する。
転写および翻訳制御核酸は、細胞周期タンパク質の発現に使用する宿主細胞にと
って一般的に適当であろう;例えば、Bacillus由来の転写および翻訳の制御核酸
配列は、Bacillusで細胞周期タンパク質を発現させるために好ましく使用される
。夥しい数の適当な発現ベクターおよび適切な制御配列が、様々な宿主細胞に関
して技術上公知である。
【0071】 一般的に、転写および翻訳の制御核酸は、プロモーター配列、リボゾーム結合
部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、およびエンハンサー
またはアクチベーター配列を非限定的に含む。好ましい実施態様では、制御配列
はプロモーター並びに転写の開始および終結配列を含む。
【0072】 プロモーター配列は構成または誘導可能プロモーターをコードする。該プロモ
ーターは天然産生のプロモーターでもハイブリッドプロモーターでもよい。1個
より多くのプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーター
も技術上公知であり、本発明において有用である。
【0073】 加えて、発現ベクターは付加的エレメントを含み得る。例えば、発現ベクター
は、2つの複製システムを有し、これにより2種の生物で、例えば発現のために
哺乳動物または昆虫の細胞で、そしてクローニングおよび増幅のために原核宿主
で、維持することができる。さらに、発現ベクターを組込むために、発現ベクタ
ーは宿主細胞のゲノムと相同な配列を少なくとも1個、また好ましくは発現コン
ストラクトに隣接する2個の相同配列を含む。ベクターに取り入れるのに適当な
相同配列を選択することにより、組込みベクターを宿主細胞の特定の座位を目指
して組込ませ得る。組込みベクターの構築は技術上周知である。
【0074】 加えて、好ましい実施態様では、該発現ベクターは形質転換した宿主細胞の選
択を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は技術上周知であり、用
いる宿主により異なる。
【0075】 好ましい発現ベクター系は、PCT/US97/01019およびPCT/U
S97/01048、両者とも特に出典明示により本明細書の一部とする、に一
般的に記述されているレトロウイルスベクター系である。
【0076】 本発明の細胞周期タンパク質は、細胞周期タンパク質をコードする核酸を含む
発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、細胞周期タンパク質の発現を誘導また
は誘起する適当な条件下で培養することによって生産される。細胞周期タンパク
質の発現に適当な条件は、発現ベクターと宿主細胞の選択によって異なるが、当
業者は日常的な実験により容易に確かめることができる。例えば、発現ベクター
中に構成プロモーターを使用している場合には、宿主細胞の生育および増殖を最
適化することが要求されるだろうし、一方、誘導可能プロモーターを使用してい
る場合には、誘導に適した生育条件が要求される。加えて、いくつかの実施態様
では、収穫のタイミングが重要である。例えば、昆虫細胞での発現に用いられる
バキュロウイルスシステムは、溶原性ウイルスであるので、収穫時期の選択は生
産物の収量にとって極めて重要である。
【0077】 適当な宿主細胞としては、酵母、細菌、古細菌、真菌、ならびに昆虫および哺
乳動物細胞を含む動物細胞が含まれる。特に興味の持たれるのはDrosophila mel
anogaster細胞、Saccharomyces cerevisiaeおよび他の酵母、E. coli、Bacillus
subtilis、SF9細胞、C129細胞、293細胞、ニューロスポラ、BHK
、CHO、COS、Hela細胞、繊維芽細胞、シュワン腫細胞株、不死骨髄お
よびリンパ細胞株、並びに癌細胞株である。
【0078】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質は哺乳動物細胞で発現される。哺
乳動物の発現系もまた技術上公知であり、レトロウイルスシステムが含まれる。
哺乳動物のプロモーターは、哺乳動物のRNAポリメラーゼを結合し、下流(3
'側)の細胞周期タンパク質をコードする配列の転写を開始できる、いかなるD
NAでもよい。プロモーターは、通常コーディング配列の5'末端に近接して配
置されている転写開始領域、および転写開始部位の25〜30塩基対上流を用い
るTATAボックスを有しているであろう。該TATAボックスは、RNA合成
を正しい部位から開始するようにRNAポリメラーゼIIを誘導すると考えられ
ている。哺乳動物のプロモーターはまた、典型的にTATAボックスの上流10
0〜200塩基対以内に位置している上流のプロモーターエレメント(エンハン
サーエレメント)を含有しているであろう。上流のプロモーターエレメントは、
転写開始速度を決定し、そしてどちら向きにも作用する。哺乳動物プロモーター
で特に有用なのは哺乳動物ウイルスの遺伝子由来のプロモーターであるが、これ
はウイルスの遺伝子はしばしば高度に発現され、また宿主範囲が広いためである
。例としては、SV40の初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスのLTRプロ
モーター、アデノウイルスの主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスのプ
ロモーター、およびCMVのプロモーターが挙げられる。
【0079】 典型的には、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列およびポリアデニ
レーション配列は、転写終結コドンの3'側に位置する制御領域であり、従って
、プロモーターエレメントと共にコーディング配列に隣接している。成熟mRN
Aの3'末端は、部位特異的な翻訳後切断およびポリアデニル化により形成され
る。転写ターミネーターおよびポリアデニレーションシグナルの例としてはSV
40由来のものが含まれる。
【0080】 外来性核酸を哺乳動物宿主およびその他の宿主中に導入する方法は技術上周知
であり、用いる宿主細胞により異なるであろう。この技術としては、デキストラ
ン仲介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介性トラ
ンスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、ウイルス感染、ポリヌク
レオチド(類)のリポソームへの封入、およびDNAの核内への直接マイクロイ
ンジェクションが挙げられる。
【0081】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質は細菌のシステムで発現される。
細菌の発現システムは技術上周知である。
【0082】 適当な細菌のプロモーターとしては、細菌のRNAポリメラーゼを結合し、下
流(3'側)の細胞周期タンパク質のコーディング配列の転写を開始できるいか
なる核酸配列でもよい。細菌のプロモーターは転写開始領域を有し、これは通常
コーディング配列の5'末端に隣接している。この転写開始領域は典型的に、R
NAポリメラーゼ結合部位と転写開始部位を含んでいる。代謝経路上の酵素をコ
ード化する配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラ
クトース、乳糖および麦芽糖のような糖を代謝する酵素由来のプロモーター配列
、およびトリプトファンのような物質の生合成にかかわる酵素由来の配列が挙げ
られる。バクテリオファージ由来のプロモーターも使用でき、技術上公知である
。加えて、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターも有用である;例
えば、tacプロモーターはtrpおよびlacプロモーター配列のハイブリッ
ドである。さらに、細菌のプロモーターには、細菌起源でないが細菌のRNAポ
リメラーゼを結合し転写を開始する能力のある天然産生のプロモーターを含める
ことができる。
【0083】 機能的プロモーター配列に加えて、効率の良いリボゾーム結合部位が望ましい
。E. coliでは、リボゾーム結合部位はシャイン・ダルガルノ(SD)配列と呼
ばれ、開始コドン、および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流にある3〜9
ヌクレオチド長の配列を含む。
【0084】 発現ベクターも、細菌中の細胞周期タンパク質の分泌を起こさせるシグナルペ
プチド配列を含有していてもよい。技術上周知のように、シグナル配列は典型的
に、細胞からのタンパク質の分泌を指令する疎水性アミノ酸よりなるシグナルペ
プチドをコードする。タンパク質は、成育培地中(グラム陽性細菌)、もしくは
細胞の内膜と外膜の間に位置する周辺腔内(グラム陰性細菌)に分泌される。
【0085】 細菌の発現ベクターはまた、形質転換した細菌株の選択を可能にするために、
選択マーカー遺伝子を含んでよい。適当な選択遺伝子は、アンピシリン、クロラ
ムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラ
サイクリンのような薬剤に対して細菌を耐性にする遺伝子を含む。選択マーカー
はまた、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシンの生合成経路上の遺伝子の
ような生合成遺伝子を含む。
【0086】 これらの成分は組み立てて発現ベクターに入れる。細菌用の発現ベクターは技
術上周知であり、なかんずくBacillus subtilis、E. coli、Streptococcus crem
oris、およびStreptococcus lividans用のベクターが含まれる。
【0087】 細菌の発現ベクターは、塩化カルシウム処理、電気穿孔法、その他のような技
術上周知の技術を用いて細菌宿主細胞に形質転換される。
【0088】 ある実施態様では、細胞周期タンパク質は昆虫細胞中に生産される。昆虫細胞
の形質転換用発現ベクター、特にバキュロウイルスに基づく発現ベクターは技術
上周知である。
【0089】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質は酵母細胞中に生産される。酵母
の発現システムは技術上周知であり、Saccharomyces cerevisiae、Candida albi
cansおよびC. maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilisおよび
K. lactis、Pichia guillerimondiiおよびP. pastoris、Schizosaccharomyces p
ombe、ならびにYarrowia lipolytica用の発現ベクターを含む。酵母での発現用
に好ましいプロモーター配列としては、誘導性GAL1、10プロモーターおよ
びアルコール脱水素酵素、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6リン酸
イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナー
ゼ、ホスホフラクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キ
ナーゼ、および酸ホスファターゼ遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。酵母
の選択マーカーとしては、ツニカマイシン耐性を付与するADE2、HIS4、
LEU2、TRP1、およびALG7、G418に対する耐性を付与するネオマ
イシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、および銅イオン存在下における酵母の
生育を可能にするCUP1遺伝子が挙げられる。
【0090】 細胞周期タンパク質は、当分野で周知の技術を用いて、融合タンパク質として
も作成され得る。ゆえに、例えば、モノクローナル抗体作成のために、もし目的
のエピトープが小さければ、その細胞周期タンパク質を、キャリアータンパク質
と融合させて免疫原を形成させ得る。あるいは、細胞周期タンパク質を、発現の
増加、または他の目的のために、融合タンパク質として作成し得る。例えば、細
胞周期タンパク質が細胞周期ペプチドであるとき、そのペプチドをコードする核
酸は、発現の目的のために、他の核酸と連結され得る。同様に、本発明の細胞周
期タンパク質を、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、レッド蛍光タンパク質(
RFP)、ブルー蛍光タンパク質(BFP)、イエロー蛍光タンパク質(YFP
)などのような、タンパク質の標識と連結させることができる。
【0091】 ある実施態様では、本発明の細胞周期核酸、タンパク質および抗体を標識化す
る。本明細書中で「標識化する」とは、ある化合物が、その化合物の検出を可能
にするように付加した少なくとも一成分、同位元素または化合物、を有すること
を意味する。一般的に、標識は次の3つの分類に分けられる。a)放射活性を有
する、または重同位元素であり得る、同位元素標識;b)抗体または抗原であり
得る、免疫標識;c)有色または蛍光染料。これらの標識は化合物のどの位置に
でも組み込まれ得る。
【0092】 好ましい実施態様では、該細胞周期タンパク質は発現後精製または単離される
。細胞周期タンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかに依存して
、当業者周知の種々の方法で単離または精製し得る。標準的な精製法としては、
電気泳動的、分子的、免疫学的技法ならびにイオン交換、疎水、アフィニティー
、および逆相HPLCクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー技法、なら
びにクロマトフォーカシングが挙げられる。例えば、細胞周期タンパク質は、標
準的な抗細胞周期抗体カラムを用いて精製することができる。タンパク質濃縮と
組合わせた限外ろ過およびダイアろ過技法も有用である。適当な精製技法の一般
的手引書としては、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, NY
(1982)を参照のこと。必要な精製の程度は細胞周期タンパク質の用途によって変
わるであろう。場合によっては精製は不要であろう。
【0093】 一旦発現され、必要なら精製されると、細胞周期タンパク質および核酸は、多
数の応用において有用である。
【0094】 細胞周期タンパク質類をコードしているこのヌクレオチド配列(またはそれら
の相補鎖)には、分子生物学の分野で、ハイブリダイゼーションプローブとして
の、クロモソームおよび遺伝子マッピングにおける、およびアンチ−センスRN
AおよびDNAの生成における利用を含む、多様な応用がある。細胞周期タンパ
ク質をコードしている核酸は、本明細書中に記載した組換え技術による細胞周期
ポリペプチド類の調製にも有用であろう。
【0095】 天然の完全長配列の細胞周期タンパク質遺伝子、またはその各部分は、cDN
Aライブラリーに対して、該細胞周期タンパク質をコードしている配列との所望
の配列同一性を有する他の遺伝子類(例えば、細胞周期タンパク質の天然に産生
する変種または他種由来の細胞周期タンパク質をコードしている遺伝子)を単離
するための、ハイブリダイゼーションプローブとして使用し得る。場合により、
これらのプローブの長さは約20ないし約50塩基であろう。これらのハイブリ
ダイゼーションプローブは、本明細書中のヌクレオチド配列から、または本明細
書中に提供されたような天然配列のプロモーター類、エンハンサーエレメント類
およびイントロン類を含むゲノム配列から誘導し得る。例をあげれば、スクリー
ニング方法は、既知DNA配列を使用して約40塩基の選択プローブを合成する
、細胞周期タンパク質遺伝子のコード領域の単離を含むであろう。ハイブリダイ
ゼーションプローブは、32Pまたは35Sのような放射性ヌクレオチド類、ま
たはアビジン/ビオチンカップリング系を介して該プローブと連結したアルカリ
ホスファターゼのような酵素標識類、を含む各種標識により標識化し得る。本発
明の細胞周期タンパク質遺伝子の配列と相補的な配列を有する標識化したプロー
ブ類は、ヒトcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAの各ライブラリーをスクリ
ーニングし、該プローブがそれらのライブラリーのどのメンバーとハイブリダイ
ズするかを測定するのに使用できる。
【0096】 細胞周期タンパク質をコードしているヌクレオチド配列類は、該細胞周期タン
パク質をコードしている遺伝子のマッピングのため、および遺伝的異常がある各
個体の遺伝子分析のため、のハイブリダイゼーションプローブ類を構築するため
にも使用し得る。本明細書中に記載したこれらのヌクレオチド配列は、既知技術
、例えば、その場でのハイブリダイゼーション、既知染色体マーカー類に対する
連結分析、およびライブラリーについてのハイブリダイゼーションスクリーニン
グを使用して、染色体や染色体の特定領域に対してマッピングし得る。
【0097】 細胞周期タンパク質またはその修飾形態をコードしている核酸類は、トランス
ジェニック動物類または「ノックアウト」動物類を発生させるのにも使用でき、
ひいては治療的有用物質類の開発およびスクリーニングにおいても有用である。
トランスジェニック動物(例えば、マウスまたはラット)とは、導入遺伝子含有
細胞を有する動物であり、該導入遺伝子が該動物または該動物の祖先に胎内期(
prenatal)、例えば、胚期(embryonic stage)において導入されたものである
。導入遺伝子とは、それからトランスジェニック動物が発育する細胞のゲノム中
に集積されたDNAである。ある実施態様では、細胞周期タンパク質をコードし
ているcDNAは、確立された技術に従って細胞周期タンパク質をコードしてい
るゲノムDNAをクローン化するのに使用でき、該ゲノム配列は、所望のDNA
を発現する細胞を含有するトランスジェニック動物の発生に使用される。トラン
スジェニック動物、殊にマウスまたはラットのような動物を発生させる方法は、
当技術分野で日常化してきており、例えば、米国特許番号第4736866号お
よび第4870009号に記載されている。典型的には、特定の細胞が、組織−
特異的エンハンサー類による細胞周期タンパク質導入遺伝子導入の標的になる。
胚期に該動物の生殖ライン中に導入された、細胞周期タンパク質をコードしてい
る導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物類は、所望の核酸の増加し
た発現の効果を調べるのに使用できる。それらの動物は、例えば、その過剰発現
に伴う病理的状況からの保護をもたらすと考えられる物質に対するテスター動物
として使用できる。本発明のこの側面によれば、動物を該物質で処理し、該導入
遺伝子を有する非処理動物と対比した病理的状況の減少効果が、該病理的状況に
対する治療的干渉のポテンシャルを示す。
【0098】 あるいは、この細胞周期タンパク質の非ヒト相同体を、細胞周期タンパク質を
コードしている内因性遺伝子と、該動物の胚細胞中に導入された細胞周期タンパ
ク質をコードしている変化させたゲノムDNAとの間の、相同組換えの結果細胞
周期タンパク質をコードする遺伝子が欠落または変化している、細胞周期タンパ
ク質「ノックアウト」動物を構築するのに使用することができる。例えば、細胞
周期タンパク質をコードしているcDNAを、細胞周期タンパク質をコードして
いるゲノムDNAのクローン化に、確立された技術に従って使用することができ
る。細胞周期タンパク質をコードしているゲノムDNAの一部は、削除したり、
または他の遺伝子例えば、モニター集積に使用し得る選択マーカーをコードして
いる遺伝子と置き換えたりすることができる。典型的には、数キロ塩基の(5'
または3'末端の両方における)不変フランキング(側位)DNAを、ベクター
中に含める[相同組換えベクター類については、例えば、Thomas and Capecchi,
Cell, 51:503 (1987) の既述を参照]。このベクターを、胚幹細胞系中に(例
えば、電気穿孔法により)導入し、そして、導入したDNAが内因性DNAと相
同的に組換えられている細胞を選択する[例えば、Li et al., Cell, 69:915 (19
92) 参照]。選択した細胞を次いで動物(例えば、マウスまたはラット)の胚盤
胞中に注入し、キメラ集合体を形成させる[例えば、Bradley, in Teratocarcin
omas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed
. (IRL, Oxford, 1987), pp.113-152参照]。キメラ胚を、次いで適切な偽妊娠
雌フォスター動物中に移植し、該胚を「ノックアウト」動物作成期に導く。生殖
細胞中にこの相同組換えDNAを内包する後代は、標準的技術で同定することが
でき、そして該動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含有する動物を産
出することに使用できる。ノックアウト動物には、例えば、ある種の病理学的状
況に対して防御する能力があることや、細胞周期ポリペプチドの不存在により病
理学的状況が進展することなどが特徴であると言える。
【0099】 本明細書中に記載したモデルは変更可能と理解される。例えば、「ノックイン
」モデルを作成することができ、あるいは該モデルを動物モデルよりむしろ細胞
ベースとすることができる。
【0100】 これらの細胞周期ポリペプチドをコードしている核酸類、アンタゴニストまた
はアゴニストは、遺伝子治療にも使用できる。遺伝治療への応用では、遺伝子を
細胞内に導入し、例えば欠陥遺伝子置換のための、治療的に有効な遺伝子産物の
インビボ合成を達成させる。「遺伝子治療」には、単回の処置により持続的効果
を達成させる在来の遺伝子治療と、治療的に有効なDNAまたはmRNAの単回
または反復した投与を含む、遺伝子治療的物質の投与との両方が含まれる。アン
チセンスRNAおよびDNA類を、インビボである種の遺伝子の発現を阻止する
治療的物質として使用できる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチド類が細胞内
に導入され、細胞膜による取り込みが制限されることにより細胞内濃度が低いに
もかかわらず、そこで阻害物質として働き得ることが既に示されている(Zamecni
k et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 4143-4146 [1986])。これらのオリ
ゴヌクレオチド類は、修飾、例えばそれらの負荷電ホスフォジエステル基を非荷
電基と置換、してそれらの取り込みを増強することができる
【0101】 生存細胞内に核酸類を導入するには各種の技術が利用できる。これらの技術は
、核酸がインビトロで培養細胞内に移入されるのか、またはインビボで意図する
宿主の細胞内に移入されるのかによって変る。インビトロで哺乳動物細胞内に核
酸を移入するのに適した技術には、リポソーム、電気穿孔法、マイクロインジェ
クション、細胞癒合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、等の
使用が含まれる。現今好適とされているインビボ遺伝子移入技術には、ウイルス
(典型的にはレトロウイルス)ベクター類を用いるトランスフェクション、およ
びウイルス被覆タンパク質-リポソーム媒介トランスフェクションが含まれる(Dz
au et al., Trends in Biotechnology 11, 205-210 [1993])。ある状況では、標
的細胞を標的とする物質、例えば、細胞表面膜タンパク質または標的細胞に特異
的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド類、を有する核酸ソースを
供給するのが望ましい。リポソームを採用した場合は、エンドサイトーシスに伴
って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば特定の細胞型に親和性
のカプシドタンパク質またはその断片、サイクリング中に内在化を受けるタンパ
ク質に対する抗体、細胞間局在化を標的とし細胞内半減期を強化するタンパク質
、を標的化および/または取り込み増強のために使用することができる。レセプ
ター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem. 26
2,4429-2232 (1987): および Wagnernet al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87,
3410-3414(1990) に記載されている。遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロ
トコールについての総説 Andersen et al., Science 256, 808-813 (1992)参照
【0102】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質、核酸、変異種、修飾タンパク質
、該核酸またはタンパク質を含有する細胞および/またはトランスジェニック体
をスクリーニングアッセイに使用する。本明細書中に記載した細胞周期タンパク
質の同定により、細胞周期タンパク質に結合するかまたはその結合を妨げる化合
物についての、および細胞周期活性を制御する化合物についての薬剤スクリーニ
ングアッセイの設計が可能となる。
【0103】 好ましい実施態様では、ヒト細胞周期タンパク質を利用するが、他の齧歯類(
マウス、ラット、ハムスター、モルモット、その他)、家畜類(牛、羊、豚、馬
、その他)および霊長類を含む哺乳動物のタンパク質も使用できる。これらの後
者の実施態様はヒトの疾患の動物モデルの開発に好適であろう。ある実施態様で
は、本明細書中で概説したように、変異体または誘導体細胞周期タンパク質、上
記したような少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失または挿入を有する細胞周期
タンパク質を含めて、を使用してもよい。
【0104】 好ましい態様では、本発明の方法は、細胞周期タンパク質と候補バイオ活性物
質とを合わせること、および該細胞周期タンパク質への該候補物質の結合を測定
することを含む。他の実施態様では、以下に詳論するが、結合の阻害またはバイ
オ活性を測定する。
【0105】 本明細書において「候補バイオ活性物質」または「外来性化合物」とは、例え
ば、タンパク質、小型の有機分子、炭水化物(多糖類を含む)、ポリヌクレオチ
ド、脂質などのいずれかの分子をいう。一般に、複数のアッセイ混合物を種々の
薬物濃度を用いてパネルに並行して流し、種々の濃度に対しての種々の示差応答
を得る。典型的には、これらの濃度のうち1つ、すなわち0または検出レベルに
満たない濃度がネガティブコントロールとして用いられる。さらに、ポジティブ
コントロールを用いてもよい。すなわち、細胞周期を変化させることが知られて
いる薬剤の使用である。例えば、p21は、G1−サイクリン−CDK複合体に
結合することによって、細胞をG1細胞期で滞留させることが知られている分子
である。
【0106】 候補物質は多くの化学クラスを包含するが、典型的にはそれらは有機分子、好
ましくは分子量が100ダルトンより大きく約2,500ダルトン未満の小型の
有機化合物である。候補物質はタンパク質との構造相互作用、特に水素結合に必
要な官能基を含み、典型的には少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキ
シルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの官能化学基を含む。該
候補物質は環式炭素または複素環式構造および/または上記の1以上の官能基で
置換された芳香族もしくはポリ芳香族構造を含む。候補物質はまた、ペプチド、
糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体またはそ
れらの組合せを含む生体分子間に見出せる。特に好ましいのはペプチドである。
【0107】 候補物質は、合成または天然化合物のライブラリーを含む多様な供給源から得
られる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現をはじめ、多様な有機化
合物および生体分子のランダムな、また所定の合成には多くの手段が利用できる
。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物形態における天然化合物のラ
イブラリーが入手可能であるか、または容易に作製できる。さらに、天然の、ま
たは合成により作製したライブラリーまたは化合物は従来の化学的、物理的、生
化学的手段により容易に修飾される。公知の薬理活性物質は、アシル化、アルキ
ル化、エステル化、アミド化などの所定のまたはランダムな化学修飾を受けて構
造類似体を形成し得る。
【0108】 好ましい態様では、種々の候補バイオ活性物質のライブラリーを用いる。好ま
しくは、該ライブラリーはランダム化された物質の、構造的に十分多様な集団を
提供して、特定の標的との結合を可能にするために十分と見込まれる範囲の多様
性を達成する。従って、相互作用ライブラリーは、メンバーの少なくとも1つが
、標的に対する親和性を有する構造を持つよう、十分大きくなければならない。
相互作用ライブラリーに要求される絶対的なサイズを測るのは難しいが、自然が
免疫応答でヒントを与えてくれる。すなわち、多様な107ないし108個の異な
る抗体は、生物が直面する大部分のあり得る抗原と相互作用するに十分な親和性
を有する少なくとも1つの組合せを与える。また、公表されているインビトロ選
択技術も、107ないし108のライブラリーサイズが、標的への親和性を有する
構造を見出すに十分であることを示している。本明細書で一般に提案されるもの
など7ないし20アミノ酸長のペプチドのすべての組合せに関するライブラリー
は、207(109)ないし2020をコードする可能性を有する。従って、107
ないし108の異なる分子のライブラリーについて、本方法では、理論的に完全
な相互作用ライブラリーの「実働」サブセットをアミノ酸7個と見積り、形態サ
ブセットを2020ライブラリーと見積もる。このように好ましい態様では、主題
の方法において少なくとも106、好ましくは107、より好ましくは少なくとも
108、最も好ましくは少なくとも109個の異なる配列が同時に解析される。好
ましい方法はライブラリーのサイズおよび多様性を最大にする。
【0109】 好ましい態様では、該候補バイオ活性物質はタンパク質である。本明細書にお
いて「タンパク質」とは共有結合した少なくとも2つのアミノ酸を意味し、タン
パク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドが含まれる。該タンパク
質は、天然産生のアミノ酸およびペプチド結合または合成ペプチド模倣構造から
なってもよい。従って本明細書において「アミノ酸」または「ペプチド残基」と
は、天然産生のアミノ酸と合成アミノ酸の双方を意味する。例えば、ホモフェニ
ルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸
と考えられる。また「アミノ酸」には、プロリンおよびヒドロキシプロリンなど
のイミノ酸残基が含まれる。その側鎖は(R)配置または(S)配置のいずれで
あってもよい。好ましい態様では、該アミノ酸は(S)またはL配置である。天
然産生ではない側鎖を用いる場合は、例えばインビボ分解を妨げるまたは遅延さ
せるために非アミノ酸置換基を用いてもよい。また、化学保護基またはその他の
化学置換基を付加してもよい。
【0110】 好ましい態様では、候補バイオ活性物質は天然産生のタンパク質または天然産
生のタンパク質の断片である。従って、例えば、タンパク質またはタンパク質性
細胞抽出物のランダムなもしくは所定の消化物を含む、細胞抽出物を用いてもよ
い。このように、本明細書に記載の系のスクリーニングのためには、原核生物お
よび真核生物のタンパク質ライブラリーを作製すればよい。本態様において特に
好ましいのは、細菌、真菌、ウイルスおよび哺乳類タンパク質のライブラリーで
あり、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0111】 好ましい態様では、該候補バイオ活性物質は、約5ないし約30のアミノ酸か
らなるペプチドであり、約5ないし約20のアミノ酸からなるものが好ましく、
約7ないし約15のアミノ酸からなるものが特に好ましい。該ペプチドは上記に
概説したような天然産生のタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「偏
りのある」ランダムペプチドであってもよい。本明細書において「ランダム化さ
れた」または文法的均等語は、核酸およびペプチドが、それぞれ本質的にランダ
ムなヌクレオチドおよびアミノ酸からなることを意味する。一般に、これらのラ
ンダムペプチド(または以下に論じる核酸)は化学的に合成されるので、いかな
る位置にいかなるヌクレオチドまたはアミノ酸をも組み込める。この合成法は、
ランダム化されたタンパク質または核酸を作成し、配列全長にわたって、あり得
る組合せのすべてまたは大部分の形成を可能にし、ランダム化されたタンパク質
性候補バイオ活性物質のライブラリーを形成するよう設計することができる。
【0112】 ある実施態様では、該ライブラリーは完全にランダム化され、いかなる位置に
も優先のまたは一定の配列は存在しない。好ましい態様では、該ライブラリーに
は偏りがある。すなわち、配列内のある位置では一定であるか、または限られた
数の可能性から選択される。例えば、好ましい態様では、ヌクレオチドまたはア
ミノ酸残基は、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的に偏りのある(小
さいか、または大きい)残基、架橋のためのシステイン、SH−3ドメインのた
めのプロリン、リン酸化部位のためのセリン、トレオニン、チロシンもしくはヒ
スチジンの作出などに対して、またはプリンに対してといった所定のクラス内で
ランダム化される。
【0113】 好ましい態様では、該候補バイオ活性物質は核酸である。本明細書において「
核酸」もしくは「オリゴヌクレオチド」または文法的均等語は、共有結合した少
なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は一般にホスホジエステ
ル結合を含むが、以下に概説するように、例えば、ホスホルアミド(Beaucage, e
t al., Tetrahedron, 49(10):1925 (1993)およびその参照文献; Letsinger, J.
Org. Chem., 35:3800 (1970); Sprinzl, et al., Eur. J. Biochem., 81:579 (1
977); Letsinger, et al., Nucl. Acids Res., 14:3487 (1986); Sawai, et al.
, Chem. Lett., 805 (1984); Letsinger , et al., J. Am. Chem. Soc., 110:44
70 (1988); およびPauwels, et al., Chemica Scripta, 26:141 (1986))、ホス
ホロチオエート(Mag, et al., Nucleic Acids Res., 19:1437 (1991);および米
国特許番号第5644048号)、ホスホロジチオエート(Briu, et al., J. A
m. Chem. Soc., 111:2321 (1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(Ecks
tein , Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford Univ
ersity Press参照)、ならびにペプチド核酸主鎖および結合(Egholm, J. Am. C
hem. Sci., 114:1895 (1992); Meier, et al., Chem. Int. Ed. Engl., 31:1008
(1992); Nielsen, Nature, 365:566 (1993); Carisson, et al., Nature, 380:
207 (1996)参照。なお、これらは出典明示により本明細書の一部とする)を含む
、代替的な主鎖を有し得る核酸類似体が含まれる場合がある。その他の核酸類似
体としては、正電荷主鎖(Denpcy, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6
097 (1995));非イオン性主鎖(米国特許番号第5386023号、第5637
684号;第5602240号;第5216141号;および第4469863
号; Kiedroeshi, et al., Angew. Chem. Intl. Ed. English, 30;423 (1991); L
etsinger, et al., J. Am. Chem. Sci., 110:4470 (1988); Letsinger, et al.,
Nucleoside & Nucleotide, 13:1597 (1994); Chapters 2 and 3, ASC Symposiu
m Series 580, "Carbohydrate modifications in Antisense Research", Ed. Y.
S. Sanghui and P. Dan Cook; Mesmaeker, et al., Bioorganic & Medicinal Ch
em. Lett., 4:395 (1994); Jeffs, et al., J. Biomolecular NMR, 34:17 (1994
); Tetrahedron Lett., 37:743 (1996))、ならびに米国特許第5235033号
、第5034506号、およびChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580,
"Carbohydrate Modifications in Antisense Research", Ed. Y.S. Sanghui and
P.Dan Cookに記載のものをはじめとする非リボース主鎖を有するものが挙げら
れる。1以上の炭素環式糖を含む核酸もまた、本核酸定義内に含まれる(Jenkin
s, et al., Chem. Soc. Rev., (1995) pp. 169-176参照)。いくつかの核酸類似
体が、Rawls, C & E News, June 2, 1997, page 35に記載されている。これらの
参照文献は、すべて出典明示により本明細書の一部とする。リボース−リン酸主
鎖のこれらの修飾を行い、標識などの付加部分の付加を助けたり、あるいは生理
学的環境下でかかる分子の安定性を高め、半減期を延ばしてもよい。さらに、天
然産生の核酸と類似体の混合物を作成することもできる。あるいは、種々の核酸
類似体の混合物や天然産生の核酸と類似体の混合物を作製してもよい。該核酸は
明示したように1本鎖であっても2本鎖であってもよく、あるいは2本鎖または
1本鎖配列の双方の部分を含んでもよい。該核酸は、デオキシリボヌクレオチド
とリボヌクレオチドのいずれかの組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、
シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、
イソグアニンなどを含む塩基のあらゆる組合せを含む、DNA(ゲノムDNAお
よびcDNAの双方)、RNAまたはハイブリッドであってもよい。
【0114】 一般にタンパク質に関して上記したように、核酸候補バイオ活性物質は天然産
生の核酸、ランダム核酸、または「偏りのある」ランダム核酸であってよい。例
えば、タンパク質に関して先に概説したように原核生物ゲノムまたは真核生物ゲ
ノムの消化物を用いてもよい。
【0115】 好ましい態様では、該候補バイオ活性物質は有機化学部分であり、多様なもの
が文献から得られる。
【0116】 好ましい態様では、候補バイオ活性物質は融合パートナーに結合している。本
明細書において「融合パートナー」または「機能的グループ」とは、候補バイオ
活性物質と会合し、そのクラスのライブラリーのすべてのメンバーに、共通の機
能または能力を付与する配列を意味する。融合パートナーは異種(すなわち、宿
主にとり天然でない)、または合成のもの(いずれの細胞にとっても天然でない
)であり得る。好適な融合パートナーとしては、限定されるものではないが、a
)候補バイオ活性物質を立体配位上限定された、または安定な形で提供する、提
示構造、b)候補バイオ活性物質を細胞内または細胞外区画へ局在化させる、標
的配列、c)候補バイオ活性物質またはそれらをコードする核酸のいずれかの精
製または単離を可能にする、レスキュー配列、d)候補バイオ活性物質またはそ
れをコードする核酸に、安定性または分解からの保護、例えばタンパク質分解耐
性を付与する、安定化配列、e)ペプチド二量化を可能にする、二量化配列、あ
るいはf)a)、b)、c)、d)およびe)ならびに要すればリンカー配列の
いずれかの組合せ、が挙げられる。
【0117】 本明細書に記載した方法のある実施態様では、細胞周期タンパク質の各部分を
使用する;好ましい態様では、細胞周期活性を有する部分を使用する。細胞周期
タンパク質活性については以下にさらに述べるが、以下にさらに述べるように、
PCNAまたは細胞周期タンパク質調節因子に対する結合活性を含む。加えて、
本明細書中に記載したアッセイでは、単離した細胞周期タンパク質または細胞周
期タンパク質を含む細胞を利用し得る。
【0118】 該して言えば、本発明の方法の好ましい態様では、例えば結合アッセイのため
に、細胞周期タンパク質、または候補物質を、単離試料受容領域を有する不溶性
支持体(例えば、マイクロタイタープレート、アレイ、その他)に非拡散的に結
合させる。これらの不溶性支持体は、本発明の組成物がそれに結合することがで
き、容易に可溶性材料から分離でき、そしてスクリーニングの全体方法と他の点
では適合性である、任意の組成で作成できる。それらの支持体の表面は固体また
は多孔質であり、任意の都合のよい形状であり得る。好適な不溶性支持体の例に
は、マイクロタイタープレート、アレイ、膜およびビーズが含まれる。これらは
、典型的にはガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、ポリサッカライ
ド、ナイロンまたはニトロセルロース、テフロン(登録商標)、その他で作成す
る。マイクロタイタープレートおよびアレイは、多数のアッセイを同時に実施で
き、試薬や試料の使用量が少なくてすむので特に好都合である。ある場合には、
磁性ビーズおよび類似物が含まれる。組成物結合の個々の様式は、本発明の試薬
類および全体方法と適合性であり、組成物の活性を維持し、そして非拡散的であ
る限り厳密ではない。好ましい結合方法には、抗体(それは、該タンパク質が支
持体に結合したとき、リガンド結合部位または活性化配列のいずれをも立体的に
ブロックしないものである)の使用、「粘着性」またはイオン性支持体への直接
結合、化学的架橋結合、表面上での該タンパク質または物質の合成、その他が含
まれる。ある実施態様では、PCNAを使用することができる。該タンパク質ま
たは物質の結合につづいて、過剰の未結合材料を洗浄により除去する。試料受容
領域を次いで牛血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは他の無害なタンパク
質または他の部位とインキュベートしてブロックする。本発明には、固体支持体
を使用しないスクリーニングアッセイも含まれる:その例は以下に述べる。
【0119】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質を支持体に結合させ、それから候
補バイオ活性物質をアッセイに加える。あるいは候補物質を支持体に結合させ、
それから細胞周期タンパク質を加える。新規な結合物質には、特殊な抗体、化学
的ライブラリーのスクリーニングで同定された非天然産結合物質、ペプチド類似
体、その他、が含まれる。特に重要であるのは、ヒト細胞に対する毒性が低い物
質に対するスクリーニングアッセイである。多様なアッセイがこの目的のために
使用でき、それらには標識化インビトロタンパク質―タンパク質結合アッセイ、
電気泳動シフトアッセイ、タンパク質結合に対する免疫アッセイ、機能的アッセ
イ(リン酸化アッセイ、その他)、および類似方法が含まれる。
【0120】 候補バイオ活性物質の細胞周期タンパク質への結合の測定は、各種の方法で実
施できる。好ましい態様では、候補バイオ活性物質を標識化し、結合を直接測定
する。例えば、これは、細胞周期タンパク質の全部または一部を固体支持体に接
触させ、標識化(例えば、蛍光標識)候補物質を加え、過剰の物質を洗い去り、
そして標識が固体支持体上に存在するかどうかを測定することにより実施できる
。当分野で既知の各種ブロックおよび洗浄段階を利用することができる。
【0121】 本明細書中では「標識化」とは、その化合物が、検出可能なシグナルを提供す
る標識、例えば放射性同位元素、蛍光剤、酵素、抗体、磁性粒子のような粒子、
化学的発光剤、または特異的結合分子、その他、により、直接的かまたは間接的
かのいずれかで標識されていることを意味する。特異的結合分子には、ビオチン
とストレプトアビジン、ジゴキシンとアンチジゴキシンのような対、その他、が
含まれる。特異的結合メンバーでは、前記概説のように、相補的メンバーは通常
、既知操作により検出のための分子により標識化されている。標識は直接または
間接的に検出可能なシグナルを提供する。
【0122】 ある実施態様では、成分のひとつだけを標識化する。例えば、タンパク質(ま
たはタンパク質性候補物質)をチロシン位で、125Iまたは発蛍光団を用いて
標識化することができる。あるいは、1以上の成分を異なる標識で;例えばタン
パク質は125Iを用いて標識化し、候補物質は発蛍光団で標識化してもよい。
【0123】 好ましい態様では、候補バイオ活性物質の結合は、競合的結合アッセイを使用
して測定できる。この実施態様では、競合物質は標的分子と結合することが既知
の結合部分(即ち、細胞周期タンパク質)、例えば、抗体、結合パートナー、リ
ガンド、その他である。好ましい態様では、競合物質はPCNAである。ある状
況では、バイオ活性物質が結合部位と置き換わる、バイオ活性物質と結合部位間
でのような競合的結合があり得る。このアッセイは、細胞周期タンパク質とPC
NA間の結合を妨害する候補物質を測定するために使用することができる。本明
細書中では「結合の妨害(interference)」とは、細胞周期タンパク質の本来の結
合が、候補物質の存在下に異なることを意味する。この結合は除去することがで
きるか、またはその親和性を低減することができる。それ故に、ある実施態様で
は、妨害は例えば、本来の結合部位に対する直接競合というよりむしろ立体配置
の変化により生じるものである。
【0124】 ある実施態様では、候補バイオ活性物質を標識化する。候補バイオ活性物質ま
たは競合物質のいずれか、または両方を、まずこのタンパク質に、それが存在す
るならば充分結合できるだけの時間加える。インキュベーションは、最適活性を
促す任意の温度、典型的には4ないし40℃で実施できる。インキュベーション
の時間は、最適活性となるように選択するが、迅速高度生産スクリーニングを促
すように最適化してもよい。典型的には0.1ないし1時間で充分であろう。過
剰の試薬は一般的に除去するかまたは洗い去る。次に、第2の成分を加え、結合
を示す標識化成分の存在または不存在を追及する。
【0125】 好ましい態様では、競合物質を最初に加え、その後候補バイオ活性物質を加え
る。競合物質が置換することは、候補バイオ活性物質が細胞周期タンパク質と結
合していること、従って細胞周期タンパク質活性に対して、それと結合しそれを
強力に調節する能力があることを示す指標である。この実施態様では、両成分を
標識化し得る。従って、例えば、競合物質を標識化した場合、洗浄液中に標識が
存在することは該物質による置換があったことを示す。あるいは、候補バイオ活
性物質を標識化した場合、支持体上の標識の存在は置換があったことを示す。
【0126】 別の実施態様では、候補バイオ活性物質を最初に加え、インキュベーションし
洗浄し、その後競合物質を加える。競合物質による結合の不存在は、該バイオ活
性物質が細胞周期タンパク質とより高度な親和性で結合していることの証しとな
る。かくて、候補バイオ活性物質を標識化した場合は、支持体上の標識の存在が
、競合物質結合がないために、該候補物質が細胞周期タンパク質と結合する能力
があることを示すこととなる。
【0127】 好ましい実施態様では、本発明の方法は、細胞周期タンパク質の活性を調節し
得る候補バイオ活性物質を同定するための分別スクリーニングを含む。そのよう
なアッセイは、細胞周期タンパク質または該細胞周期タンパク質を含んでいる細
胞により実施できる。ある実施態様では、本発明の方法は、ある細胞周期タンパ
ク質と、第1試料中の競合物質とを合わせることを含む。第2試料には、候補バ
イオ活性物質、細胞周期タンパク質および競合物質を含める。競合物質の結合を
両方の試料について測定すれば、2試料間の結合の変化または差異が、細胞周期
タンパク質と結合しその活性を強力に調節する能力のある物質の存在を示す。即
ち、競合物質の結合が第1試料と対比して第2試料中では異なるならば、その物
質は細胞周期タンパク質と結合する能力がある。
【0128】 あるいは、好ましい実施態様は、天然産生の細胞周期タンパク質とは結合する
が修飾細胞周期タンパク質とは結合できない薬物候補を同定するために分別スク
リーニングを利用する。この細胞周期タンパク質の構造をモデルとし、該部位と
相互作用する物質を合成するための理論的薬物設計に使用する。細胞周期タンパ
ク質のバイオ活性に作用する薬物候補も、該タンパク質の活性を増強または低減
させる能力について薬物をスクリーニングすることによって同定される。
【0129】 これらのアッセイでは、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロー
ルを使用することができる。好ましくは、全てのコントロールおよびテスト試料
は、統計的に有意な結果を得るために、少なくとも3部づつとする。全試料のイ
ンキュベーションは、その物質が該タンパク質に結合するのに充分なだけの時間
行う。インキュベーションに続いて、全試料を、特異的結合をしていない材料が
なくなるまで洗浄し、結合量、通常標識化物質、を測定する。例えば、放射性標
識を採用した場合は、試料をシンチレーションカウンターでカウントして結合化
合物の量を測定する。
【0130】 このスクリーニングアッセイには各種の他の試薬類を含めることができる。そ
れらには、塩類、アルブミンのような中性タンパク質、洗浄剤、その他のような
試薬類が含まれ、それらは最適のタンパク質−タンパク質結合を促す、および/
または非特異的またはバックグラウンド相互作用を低減する、ために用いられる
。このアッセイの効率を別の方法で改善する試薬類、例えば、プロテアーゼイン
ヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗微生物剤、等も使用できる。これらの
成分の混合物は、必要な結合をもたらす任意の順序で添加できる。
【0131】 細胞周期の活性を調節する物質についてのスクリーニングも実施できる。好ま
しい態様では、細胞周期の活性を調節し得るバイオ活性物質のためのスクリーニ
ング方法は、候補バイオ活性物質を細胞周期タンパク質(または細胞周期タンパ
ク質を含む細胞)の試料に加える段階、および該細胞周期タンパク質の生物学的
活性の変化を測定する段階を含む。「細胞周期タンパク質の活性を調節する」に
は、存在する活性の増加、活性の減少、または活性の型または種類の変化が含ま
れる。従って、この実施態様では、候補物質は、本明細書中で定義したように、
細胞周期タンパク質と結合(これは多分不要であるが)し、かつ生物学的または
生化学的活性を変更する。この方法は、一般的に上で説明したようなインビトロ
スクリーニング方法、および細胞周期タンパク質の存在、分布、活性または量に
おける変更についての細胞のインビボスクリーニング方法の両方を含む。
【0132】 従ってこの実施態様では、本発明の方法は、細胞周期試料と候補バイオ活性物
質とを合わせること、およびその細胞周期への影響を評価することを含む。本明
細書中で「細胞周期タンパク質活性」またはその文法的均等語は、細胞周期タン
パク質の活性の1つまたはそれ以上を意味し、それらには細胞周期に影響を与え
る、PCNAに結合する、PCNAとの結合について他のタンパク質と競合する
、DNA複製、コケイン症候群Bに関連する障害を調節する、核酸分子の巻き戻
しを調節する、PCNAを調節する、および、ミスマッチ修復を調節する、各能
力が含まれるがそれらに限定されない。
【0133】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質の活性が減少し;他の好ましい実
施態様では細胞周期タンパク質の活性が増加する。従って、ある実施態様ではア
ンタゴニストであるバイオ活性物質が好適であり、他の態様ではアゴニストであ
るバイオ活性物質が好適である。
【0134】 好ましい実施態様では、本発明は、細胞周期タンパク質の活性を調節する能力
のあるバイオ活性物質のスクリーニング方法を提供する。この方法は、上記した
ように、細胞周期タンパク質を含む細胞に候補バイオ活性物質を加えることを含
む。好適な細胞型には殆ど全ての細胞が含まれる。それらの細胞は、細胞周期タ
ンパク質をコードしている組換え核酸を含有する。好ましい実施態様では、候補
物質のライブラリーを複数の細胞について試験する。
【0135】 細胞周期制御の検出は、当業者には明らかなように実施できる。ある実施態様
では、細胞周期のインディケーターを使用する。細胞周期制御における変更の検
出を可能とするために評価またはアッセイするパラメータは多数あり、それらに
は、細胞生存力アッセイ、細胞が特定の細胞周期段階に留まっているかどうかを
測定するアッセイ(「細胞増殖アッセイ」)、およびその細胞がどの細胞段階に
留まっているかを決定するアッセイ(「細胞相アッセイ」)、が含まれるがそれ
らに限定されない。これらのパラメータの1またはそれ以上をアッセイまたは測
定することにより、細胞周期制御における変更のみならず、該細胞周期制御過程
の異なる段階での変更をも検出することが可能となる。これは、天然産生細胞を
評価するために、例えば、腫瘍細胞型の攻撃性を測るために、または細胞周期制
御についてそれらの作用を試験中の候補薬物の作用を評価するために実施しても
よい。このようにして、候補物質の迅速で、正確なスクリーニングを達成し、細
胞周期制御を調節する物質を同定することができる。
【0136】 従って、本発明の組成物および方法は、細胞または細胞集団を、ある成育相か
ら他の相に移動させるか、またはある成育相に留まらせることができる、バイオ
活性物質を明示するために有用である。ある実施態様では、細胞はある特定の成
育相に留まっているが、それらをその相から出して新しい相中に入れることが望
まれる。あるいは、細胞をある相、例えばG1内に強制的に留まらせることが、
細胞周期を経由して移動しつづけるよりもむしろ望ましいことがあろう。同様に
、ある場合には、滞留してはいないが移動が緩慢な細胞集団を次の相へまたは細
胞周期に忠実に沿って加速させること、または次相の開始を遅らせることが望ま
しいこともあろう。例えば細胞相変化の開始に役立つ、ある種の酵素、例えばキ
ナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼの活性を変更させること、または酵素を
ユビキチン化させることが可能であろう。
【0137】 好ましい態様では、本明細書中で概説した方法を、G1期に留まっていない細
胞上で:即ち、迅速にまたは制御不能に成育し複製しつづけている、例えば腫瘍
細胞上で実施することができる。このようにして候補物質を評価し、細胞周期制
御を変更し得る、即ち細胞を各細胞周期チェックポイント、例えばG1(他の相
例えばS,G2またはMに留まることも望ましいが)に留まらせ得る物質を見出
す。あるいは、候補物質を評価し、細胞集団を増殖させ得る、即ち一般にG1に
留まっている細胞:例えば、末梢血液細胞、最終分化細胞、培地中の幹細胞その
他、を再増殖させる物質を見出す。
【0138】 従って、本発明は、細胞集団の細胞周期制御における変更についてのスクリー
ニング方法を提供する。「変更」または「調節」(本明細書中では互変的に使用
)により、一般に、2つのことのどちらかを意味する。好ましい態様では、この
変更の結果、ある細胞の細胞周期に変化が生じる。即ち、増殖細胞が各相のどれ
かひとつに滞留するか、または滞留細胞が滞留相外へ動き出し、その結果別の細
胞と比較して、または異なる条件下の同じ細胞内で、細胞周期が開始する。ある
いは、どれか特定の相を経由する細胞の進行が変更される;即ち特定の成育相を
経由して細胞が移動するのに費やす時間の長さに加速または遅延が生じ得る。例
えば、該細胞は通常G1期に数時間留まるが;ある物質の添加によりG1期の延
長を来し得る。
【0139】 計測は、各計測が同じ条件にあるようにして行うことも、各種の条件下に、バ
イオ活性物質を用いるかまたは用いずに、または細胞周期過程の異なる段階で行
うこともできる。例えば、細胞周期制御の計測は、候補バイオ活性物質が存在す
る、および候補バイオ活性物質が存在しない、細胞または細胞集団中で行うこと
ができる。別の実施例では、細胞周期制御の計測を、条件または環境がそれぞれ
異なる細胞または細胞集団について行う。例えば、細胞を、生理学的シグナル、
例えば、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、成長因子、アクショ
ンポテンシャル、化学療法剤を含む医薬物質、放射能、カルシノゲン物質、その
他の細胞(即ち細胞−細胞接触)への曝露、の存在下または不存在下に、または
それに先立ちまたはその後に、評価してもよい。別の実施例では、細胞周期制御
の計測を、細胞周期過程の異なる段階で行う。さらに別の実施例では、細胞周期
制御の計測を、条件は同じであるが、ある細胞または細胞集団と別の細胞または
細胞集団との間での変更について行う。
【0140】 本明細書中で「細胞集団」または「細胞ライブラリー」とは、少なくとも2個
の細胞を意味するが、少なくとも約10個であることが好ましく、少なくとも
約10個であることが特に好ましく、少なくとも約10個ないし10個で
あることが格別に好ましい。該集団または試料は、第1または第2培養物と異な
る細胞型の混合物を含有してもよいが、単一の細胞型のみを含有する試料、例え
ば上記したように1種の細胞株由来であり得る、殊に腫瘍細胞株由来の試料が好
ましい。これらの細胞は、M、G1、S、およびG2を含む、同位相または同位
相でない、任意の細胞相であり得る。好ましい態様では、複製または増殖しつつ
ある細胞を使用するが:このようにすると候補バイオ活性物質の導入にレトロウ
イルスベクターの使用が可能になる。あるいは、複製中でない細胞を使用するこ
ともでき、かつ他のベクター類(例えば、アデノウイルスおよびレンチウイルス
ベクター)を使用することもできる。加えて、必須ではないが、これらの細胞は
染料および抗体と適合性である。
【0141】 本発明での使用に好適な細胞のタイプには、動物(マウス、ラット、ハムスタ
ー、アレチネズミを含む齧歯類)、霊長類、およびヒトの細胞、殊に乳癌、皮膚
癌、肺癌、頚癌、直腸癌、白血病、脳腫瘍、その他を含む全タイプの腫瘍細胞を
含む、哺乳動物細胞が含まれるが、それらに限定されない。
【0142】 好ましい態様では、この方法は、細胞生存能力、細胞増殖および細胞相を含む
、がそれらに限定されない1種または数種以上の細胞パラメータをアッセイする
ことを含む。他のパラメータには、DNA複製、ミスマッチ修復、CSBとの共
役、および核酸分子の巻き戻しへの関与が含まれる。
【0143】 好ましい態様では、細胞の生存能力をアッセイし、細胞性変化のないことが実
験的条件による(即ち、候補バイオ活性物質の導入)ものではなく、細胞死によ
るものではないことを確認する。光散乱法、生活力染色法、排除染色法を含む、
がそれらに限定されない各種の適切な細胞生存能力アッセイを使用できる。
【0144】 好ましい実施態様において、光散乱測定は、当分野において周知であるように
、生存能力アッセイとして使用される。例えば、FACSで観察した場合には、
細胞は前方および90度(側方)光散乱特性により測定される特異的な特徴を有す
る。これらの散乱特性は細胞のサイズ、形態および顆粒含有量を示す。これらの
特性は、生存力の読み取り(readout)として測定されるパラメータの説明となる
。簡単に言えば、瀕死細胞または死細胞のDNAは一般に凝集しており、このこ
とは90°散乱を変える;同様に、膜の気泡は前方散乱を変える。光散乱の強度
、または細胞反射値の変動は生存力の変動を示す。
【0145】 したがって、一般的に、光散乱アッセイのため、特定の細胞タイプの生存細胞
集団をその前方および側方散乱特性を測定して評価する。このことは後に使用さ
れ得る散乱の規準を与える。
【0146】 好ましい実施態様において、生存能力アッセイは生存可能な色素(viability d
ye)を使用する。死細胞または瀕死細胞を染色するが、増殖中の細胞は染色しな
い、多くの既知の生存可能な色素が存在する。例えば、アネキシンVは2価イオ
ンに依存した方法でリン脂質(ホスファチジルセリン)に特異的な結合を示すタン
パクファミリーのメンバーである。このタンパク質は、ホスファチジルセリンの
細胞表面への露出がこのプロセスの初期シグナルの特徴であるので、アポトーシ
ス(プログラム細胞死)の測定に広く使用されている。適当な生存可能な色素は、
アネキシン、エチジウムホモダイマー−1、DEAD Red、ヨウ化プロピジ
ウム、SYTOX Greenなど、および当分野で既知の他の物質を含むが、
これらに限定されない;the Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probe
s and Research Chemicals, Haugland, Sixth Editionを参照。引用により本明
細書に含める;特に285ページのApoptosis Assay、およびChapter 16を参照
【0147】 細胞が生存可能な生存色素染色(viability dye staining)のプロトコールは既
知である。上記のMolecular Probesの目録を参照。本実施態様において、アネキ
シンのような生存可能な色素を直接的または間接的に標識し、細胞集団と組み合
わせる。アネキシンは商業的に、すなわちPharMingen, San Diego, California
またはCaltag Laboratories, Millbrae, Californiaから入手可能である。好ま
しくは、生存可能な色素は、色素の濃度が約100ng/ml〜約500ng/
ml、さらに好ましくは約500ng/ml〜約1μg/ml、および最も好ま
しくは約1μg/ml〜約5μg/mlの溶液で提供される。好ましい実施態様
において、生存可能な色素は直接的に標識される;例えば、アネキシンはフルオ
レセイン イソチオシアネート(FITC)、Alexa色素、TRITC、AM
CA、APC、tri−color、Cy−5のような蛍光色素、および当分野
で既知または商業的に入手可能なものであり得る。別の好ましい実施態様におい
て、生存可能な色素はハプテン(例えばビオチン)のような第1の標識で標識され
、第2の蛍光標識として、例えば蛍光ストレプトアビジンが使用される。当業者
に分かるであろう他の第1および第2の標識の組合せが使用され得る。
【0148】 添加後、生存可能な色素は、ある時間、細胞とともにインキュベートされ、必
要であれば洗浄される。次いで、以下に概説したように細胞をソートして非生存
細胞を取り除く。
【0149】 好ましい実施態様において、色素排除染色は生存能力アッセイとして使用され
る。排除色素は生存細胞から排除されるものであり、すなわちそれらは受動的に
取り込まれない(それらは生存細胞の細胞膜を浸透しない)。しかしながら、死細
胞または瀕死細胞の浸透性により、それらは死細胞に取り込まれる。一般的に(
必ずというわけではないが)、排除色素はDNAと、例えばインターカレーショ
ンにより結合する。好ましくは、排除色素はDNAの不存在下において蛍光しな
いか、または不十分に蛍光する;このことにより洗浄の段階の必要がなくなる。
代わりに、第2の標識の使用を必要とする排除色素も使用され得る。好適な排除
色素は、エチジウムブロマイド;エチジウムホモダイマー−1;ヨウ化プロピジ
ウム;SYTOX green nucleic acid chain;Calcein AM、BCEC
F AM;フルオレセイン ジアセテート;TOTO(登録商標)およびTO−PR
O(商標)(Molecular Probesより;上記、chapter 16参照)および当分野で既知の
他の物質を含むが、これらに限定されない。
【0150】 細胞が生存したまま色素排除染色するためのプロトコールは既知である。上記
のMolecular Probes参照。一般的に、排除色素は、約100ng/ml〜約50
0ng/ml、さらに好ましくは約500ng/ml〜約1μg/ml、および
最も好ましくは約0.1μg/ml〜約5μg/mlの濃度で細胞に加えられ、
特に約0.5μg/mLが好ましい。細胞および排除色素を、ある時間インキュ
ベートし、必要であれば洗浄し、次いで該細胞を以下に概説したようにソートし
て集団から非生存細胞を取り除く。
【0151】 さらに、実施可能な他の細胞生存能力アッセイが存在し、該方法は生存細胞(
すなわち分泌されたプロテアーゼなど)または死細胞(すなわち培地中に細胞内酵
素;例えばプロテアーゼ、ミトコンドリア酵素などが存在すること)の細胞外酵
素活性の測定が可能である。the Molecular Probes Handbook of Fluorescent P
robes and Research Chemicals, Haugland, Sixth Editionを参照。引用により
本明細書に含める;特にChapter 16を参照。
【0152】 好ましい実施態様において、少なくとも1つの細胞生存能力アッセイが実施さ
れ、蛍光が互換可能な場合には2つの異なる細胞生存能力アッセイが好ましい。
1つの生存能力アッセイのみを実施する場合、好ましい実施態様では光分散測定
が利用され(前方および側方分散の両方)。2つの生存能力アッセイを実施する場
合、好ましい実施態様では光分散と色素排除が利用され、光分散と生存可能な色
素染色も利用可能であり、そして場合によっては3つすべてが利用され得る。し
たがって、生存能力アッセイにより非生存細胞または瀕死細胞から生存細胞を分
離することが可能となる。
【0153】 細胞生存能力アッセイに加えて、好ましい実施態様では細胞増殖アッセイが利
用される。本明細書において「増殖アッセイ(proliferation assay)」は、細胞集
団が増殖している(すなわち複製している)か、または複製していないことの測定
を可能にするアッセイを意味する。
【0154】 好ましい実施態様において、増殖アッセイは色素封入アッセイである。色素封
入アッセイは細胞相を区別する希釈効果によるものである。簡単に言えば、色素
(一般に、以下に概説した蛍光色素)を細胞に導入し、細胞に取り込ませる。一度
取り込まれると、色素は細胞中にトラップされ、拡散しない。細胞集団が分裂す
るにつれて、色素は比例して希釈される。すなわち、封入色素の導入後、細胞を
、ある時間、インキュベートするのである;時間の経過にともない蛍光を失う細
胞は分裂しており、蛍光を維持している細胞は非増殖期にある。
【0155】 一般に、封入色素の導入は2つの方法のうちの一方で行われ得る。色素が細胞
内に入れず(例えば、荷電を有する)、色素が取り込まれるように、例えば電気パ
ルスを使用して;細胞を処理しなければならない。もう1つは、色素は受動的に
細胞内に入るが、取り込まれた後、細胞外に拡散できないように修飾される。例
えば、封入色素の酵素学的修飾によりそれを帯電させ、したがって、細胞外に拡
散できないようにし得る。例えば、Molecular Probes CellTracker(登録商標)は
蛍光クロロメチル誘導体であり、自由に細胞内へと拡散し、次いでグルタチオン
S−トランスフェラーゼ介在反応により膜不浸透性色素を生じる。
【0156】 適当な封入色素は、Molecular Probes CellTracker(登録商標)のMolecular Pr
obes系を含むが、これらに限定されず、CellTracker(登録商標) Blue、CellTrac
ker(登録商標) Yellow-Green、CellTracker(登録商標) Green、CellTracker(登
録商標) Orange、PKH26(Sigma)、および当分野で既知の他の物質を含むが、これ
らに限定されない;上記のMolecular Probes Handbook;特にchapter 15参照。
【0157】 一般に、封入色素は約100ng/ml〜約5μg/ml、好ましくは約50
0ng/ml〜約1μg/mlの範囲の濃度で細胞に供与される。洗浄の段階を
使用しても、使用しなくてもよい。好ましい実施態様において、候補バイオ活性
物質を本明細書に記載のような細胞と組み合わせる。細胞および封入色素を、あ
る時間、インキュベートすると細胞分裂し、したがって色素が希釈化される。時
間の長さは、細胞特有の細胞周期の時間に依存する;一般に、少なくとも約2回
の細胞分裂が好ましく、少なくとも約3回が特に好ましく、そして少なくとも約
4回がとりわけ好ましい。次いで細胞を以下に概略するようにソートし、複製し
ている細胞集団とそうでない集団を作成する。当業者には分かるであろうが、場
合によっては、例えば抗増殖剤をスクリーニングする場合、発光(すなわち蛍光)
している細胞を回収する;他の実施態様において、例えば増殖剤をスクリーニン
グするため、蛍光の少ない細胞を回収する。変動は、異なる時点での、または異
なる細胞集団における蛍光を測定することにより決定され、そして該決定を互い
にまたは基準と比較することにより決定される。
【0158】 好ましい実施態様において、増殖アッセイは代謝拮抗物質アッセイである。代
謝拮抗物質アッセイは、G1またはG2休止期における休止の原因となる薬品を
所望の場合に最も使用される。代謝拮抗物質増殖アッセイでは、毒性があり、分
裂中の細胞を死滅させる代謝拮抗物質の使用の結果、分裂していない細胞のみが
生き残ることになる。適当な代謝拮抗物質は、メソトレキセート、シスプラチン
、タキソール、ヒドロキシウレア、AraCのような核酸アナログ、などのような通
常の化学療法剤を含むが、これらに限定されない。さらに、代謝拮抗アッセイは
、発現すると細胞死の原因となる遺伝子の使用を含み得る。
【0159】 代謝拮抗物質が添加される濃度は代謝拮抗物質に特有の毒性に依存し、当分野
で既知のように決定される。代謝拮抗物質が添加され、細胞は、一般に、ある時
間インキュベートされる;再び、正確な時間は代謝拮抗物質の特徴および独自性
、ならびに細胞集団に特有の細胞周期の時間に依存する。一般に、少なくとも1
回の細胞分裂が起こるのに十分な時間。
【0160】 好ましい実施態様において、少なくとも1つの増殖アッセイが実施され、1よ
り多いことが好ましい。したがって、増殖アッセイにより、結果的に増殖中の細
胞集団と休止の細胞集団になる。ある実施態様では、他の既知の増殖アッセイ、
すなわち比色定量アッセイなどの当分野において既知のものを使用し得る。
【0161】 好ましい実施態様において、上で概説した1以上の増殖アッセイの後または同
時に、少なくとも1つの細胞相アッセイが行われる。「細胞相」アッセイは、細胞
が滞留している細胞相、M、G1、S、またはG2を決定する。
【0162】 好ましい実施態様において、細胞相アッセイはDNA結合色素アッセイである
。簡単に言えば、DNA結合色素は細胞に導入され、受動的に取り込まれる。一
度細胞内に入ると、DNA結合色素はDNAに、一般的にはインターカレーショ
ンにより結合するが、場合によっては、それらは主溝または副溝結合性化合物(m
ajor or minor groove biding compound)であり得る。したがって、色素の量は
細胞中のDNAの量に直接関連し、これは細胞の相によって変動する;G2およ
びM期の細胞はG1期の細胞の2倍のDNA含有量を有し、S期の細胞は中間の
量を有し、その細胞がS期のどの点であるかに依存する。適当なDNA結合色素
は浸透性であり、Hoechst 33342および33258、acridine orange、7−AAD、
LDS751、DAPI、およびSYTO16、上記のMolecular Probes Handb
ook;特にchapter 8および16を含むが、これらに限定されない。
【0163】 一般的に、DNA結合色素は約1μg/ml〜約5μg/mlの範囲の濃度で
加えられる。該色素は細胞に加えられ、ある時間、インキュベートされる;時間
の長さは選択された色素に一部依存する。1つの実施態様において、色素の添加
直後に測定が行われる。次いで、以下に概説したように細胞をソートし、異なる
量の色素、したがって異なる量のDNAを含む細胞集団を作成する;本方法にお
いて、複製中の細胞は、そうでないものと分離される。当業者には分かるように
、場合によっては、例えば抗増殖剤をスクリーニングする場合に、最も弱い蛍光
(したがって1セットのゲノム)を有する細胞を増殖中の細胞(したがって1セッ
トのゲノムより多いDNA含む)と分離することができる。変動は、異なる時点
での、または異なる細胞集団における蛍光を測定することにより決定され、そし
て該決定を互いにまたは基準と比較することにより決定される。
【0164】 好ましい実施態様において、細胞相アッセイはサイクリン破壊アッセイである
。本実施態様において、スクリーニングの前(および一般的に、以下に概略した
ように、候補バイオ活性物質の導入前)に融合核酸を細胞に導入する。融合核酸
はサイクリン破壊ボックスをコードする核酸および検出可能な分子をコードして
いる核酸を含む。「サイクリン破壊ボックス」は当分野において既知であり、特定
の細胞相の間に該ボックスを含むタンパク質のユビキチン化経路を通して分解の
原因となる配列である;すなわち、例えば、G1サイクリンはG1期の間安定で
あり得るが、G1サイクリン破壊ボックスのためS期の間に分解され得る。した
がって、サイクリン破壊ボックスを検出可能な分子、例えばグリーン蛍光タンパ
ク質と結合させることにより、検出可能な分子の存在または不存在により細胞集
団の細胞相の同定が可能となる。好ましい実施態様において、好ましくはそれぞ
れ、さまざまな蛍光とともに多数のボックスが使用され、その結果、細胞相の検
出が可能となる。
【0165】 多くのサイクリン破壊ボックスが当分野において既知であり、例えば、サイク
リンAは配列RTVLGVIGDを含む破壊ボックスを有する;サイクリンB1
の破壊ボックスは配列RTALGDIGNを含む。Glotzer et al., Nature 349
:132-138 (1991)参照。さらに他の破壊ボックスとして: YMTVSIIDRFMQDSCVPKKMLQLVGVT(ラットサイクリン
B); KFRLLQETMYMTVSIIDRFMQNSCVPKK(マウスサイクリ
ンB); RAILIDWLIQVQMKFRLLQETMYMTVS(マウスサイクリン
B1); DRFLQAQLVCRKKLQVVGITALLLASK(マウスサイクリン
B2);および MSVLRGKLQLVGTAAMLL(マウスサイクリンA2) が知られている。
【0166】 サイクリン破壊ボックスをコードする核酸を検出可能な分子をコードする核酸
と機能し得るように結合させる。融合タンパク質は当分野において既知の方法で
作成される。本明細書の「検出可能な分子」は、検出可能な分子を含む細胞または
化合物がそれを含まないもの、すなわちエピトープ(抗原TAGと呼ばれること
もある)、特定の酵素、または蛍光分子と区別され得る分子を意味する。好適な
蛍光分子は、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ブルー蛍光タンパク質(BFP)
、イエロー蛍光タンパク質(YFP)、レッド蛍光タンパク質(RFP)、およびル
シフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼを含む酵素、を含むがこれらに限定さ
れない。抗原TAGが使用される場合、好適な実施態様では細胞表面抗原を使用
する。エピトープは、好ましくは、一般的には細胞膜上で見出されない任意の検
出可能なペプチドであるが、いくつかの例において、エピトープが細胞上で普通
に見出されるものである場合には、増加が検出され得る(このことは一般的には
好ましくないのだが)。同様に酵素学的に検出可能な分子;例えば新規または発
色性の生成物を産生する酵素も使用され得る。
【0167】 したがって、細胞相アッセイ後のソートの結果、一般的に、異なる細胞相にあ
る少なくとも2つの細胞集団が生じる。
【0168】 ここで提供されるタンパク質および核酸を、スクリーニング目的のために使用
することができ、細胞周期タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用を同定
することができる。タンパク質−タンパク質相互作用を検出するための遺伝学的
システムが記載されている。酵母のシステムにおいて最初の研究が実施された。
すなわち「酵母2−ハイブリッド」システムである。基本的なシステムは、レポ
ーター遺伝子の転写を開始するために、タンパク質−タンパク質相互作用を必要
とする。次いで、研究は哺乳類細胞において実施された。Fields et al., Natur
e 340: 245(1989); Vasavada et al., PNAS USA 88: 10686(1991); Fearon et a
l., PNAS USA 89: 7958(1992); Dang et al., Mol. Cell. Biol. 11: 954(1991)
; Chien et al., PNAS USA 88: 9578(1991); 並びに米国特許番号第52831
73号、第5667973号、第5468614号、第5525490号、およ
び第5637463号を参照されたい。好ましいシステムは、出願番号第09/
050863号、1998年3月30日出願、および第09/359081号、
1999年7月22日出願、両者の表題「Mammalian Protein Interaction Clon
ing System」に記載されている。これらのシステムの合同的な使用について、特
に有用なシャトルベクターが、出願番号09/133944、1998年8月1
4日出願、表題「Shuttle Vectors」に記載されている。
【0169】 一般に、2つの核酸を1細胞に形質転換する。1つの核酸は細胞周期タンパク
質またはその一部をコードする遺伝子のような「ベイト(bait: えさ)」であり
、もう1つの核酸は試験候補をコードしている。2つの発現産物が互いに結合す
る場合のみ、蛍光タンパク質などの指示薬は発現する。その指示薬の発現は、い
つ試験候補が細胞周期タンパク質に結合するかを示し、試験候補を細胞周期タン
パク質として同定することができる。同じシステムと同定される細胞周期タンパ
ク質を使用して、逆のことを実施することができる。すなわち、本発明で提供さ
れる細胞周期タンパク質を、新規なベイト、または細胞周期タンパク質と相互作
用する物質を同定するために、使用することができる。さらに、ベイトおよび細
胞周期タンパク質をコードしている核酸のほかに試験候補を添加し、PCNAの
ようなベイトおよび細胞周期タンパク質を妨害する物質を調べる場合に、2−ハ
イブリッドシステムを使用することができる。
【0170】 ある実施態様において、哺乳類2−ハイブリッドシステムが好ましい。哺乳類
のシステムは、タンパク質のポスト翻訳修飾を提供し、その修飾は、タンパク質
が相互作用する能力に有意に寄与し得る。さらに、哺乳類2−ハイブリッドシス
テムを広範な哺乳類細胞のタイプにおいて使用し、特定の細胞タイプ内の特異的
タンパク質の制御、誘導、プロセッシングなどを模倣することができる。例えば
、疾患状態(すなわち、癌、アポトーシス関連障害)に関連するタンパク質を、
関連する疾患細胞において試験し得る。同様に、ランダムタンパク質の試験のた
めに、関連する細胞内条件でアッセイすることにより、最高の肯定的な結果が得
られる。さらに、哺乳類細胞を、細胞間タンパク質−タンパク質相互作用に影響
を及ぼし得る広範な実験条件下(例えば、ホルモン、薬剤、成長因子およびサイ
トカイン、放射線、化学療法剤、細胞内および化学的刺激などの存在)で試験す
ることができ、このことは、タンパク質−タンパク質相互作用に影響を及ぼすこ
とのできる条件(特に癌に関連する条件)に寄与し得る。
【0171】 2−ハイブリッドシステムなどの結合に関連するアッセイは、非特異的結合タ
ンパク質(NSB)を考慮に入れ得る。
【0172】 様々な細胞タイプにおける発現、および細胞周期活性のアッセイを、前記した
。細胞周期、PCNAへの結合、DNA複製、コケイン症候群B、超らせん形成
、およびミスマッチ修復の調節への影響を有するなどの活性のアッセイを実施し
、PCNAとの配列同一性/類似性またはそれとの結合によって、既に同定され
ていた細胞周期タンパク質の活性を確認することができる。さらに、細胞周期タ
ンパク質活性の調節因子として同定されるリード化合物の活性を確認することが
できる。
【0173】 本発明で提供されるアッセイ用の、本発明で提供される構成成分を組合せて、
キットを形成してもよい。該キットは、タンパク質および/または細胞周期タン
パク質をコードする核酸の使用をベースとすることができる。ある実施態様では
、他の構成成分がキット中で提供される。そのような構成成分には、1つまたは
それ以上の包装、指示書、抗体、および標識が含まれる。診断に使われるような
さらなるアッセイは、さらに後述する。
【0174】 このようにして、バイオ活性物質は同定される。医薬的活性のある化合物は、
細胞周期タンパク質の活性を高めたり、妨害したりできる。さらに後述するよう
に、所望の医薬的活性を有する化合物を、医薬的に許容し得る担体中で宿主に投
与してもよい。
【0175】 細胞周期における細胞周期タンパク質の役割に関する今回の開発は、ゆえに細
胞中で細胞増殖を誘導または防止する方法を提供する。好ましい実施態様では、
細胞周期タンパク質、および特に細胞周期タンパク質断片は、細胞周期タンパク
質が介在する症状の研究または処置において、すなわち、細胞周期タンパク質関
連障害の診断、処置、または予防において、有用である。ゆえに、「細胞周期関
連障害」または「疾患状態」には、細胞増殖の不足または過剰の両方に関連する
症状が含まれる。例には、癌およびコケイン症候群Bが含まれる。
【0176】 ゆえに、ある実施態様では、細胞または生物内での細胞周期制御が提供される
。ある実施態様では、その方法は、治療的な量で細胞周期タンパク質を、それを
必要としている細胞または個体に投与することを含む。あるいは、内在性の細胞
周期タンパク質の生物学的活性を低減または排除する抗細胞周期抗体を投与する
。他の実施態様では、本発明で提供される方法で同定したバイオ活性物質を投与
する。あるいは、その方法は、細胞周期タンパク質をコードする組換え核酸を、
細胞または個体に投与することを含む。当業者に理解されるであろうように、こ
のことはいかなる数の方法で達成されてもよい。好ましい実施態様では、例えば
、内因性細胞周期タンパク質を過剰発現させるか、または、遺伝子治療技術など
で細胞周期タンパク質をコードする遺伝子を投与することで、細胞中の細胞周期
タンパク質の量を増やすことによって、細胞周期タンパク質の活性は、増大する
。好ましい実施態様では、該遺伝子治療技術は、例えば出典明示により本明細書
の一部とするPCT/US93/03868に記載のように、強化相同組換え(
EHR)を用いて、外来性遺伝子を組込むことを含む。
【0177】 理論によって限定されないが、細胞周期タンパク質は、細胞周期において重要
なタンパク質であると思われる。従って、細胞周期遺伝子の突然変異または変異
に基づく障害が確定され得る。ある実施態様では、本発明は、細胞中の少なくと
も1つの内因性細胞周期遺伝子配列の全部または部分を解読することを含む、変
異型細胞周期遺伝子を有する細胞の同定法を提供する。当業者に理解されるであ
ろうように、このことは、配列解読技術をいくつでも用いて行われ得る。好まし
い実施態様では、本発明は、個体の少なくとも1つの細胞周期遺伝子配列の全部
または部分を解読することを含む、個体の細胞周期遺伝子型の同定法を提供する
。このことは、一般的に、個体の少なくとも1組織について行われ、多数の組織
または同じ組織からの異なる試料の評価を含んでもよい。該方法は、解読された
細胞周期遺伝子の配列を、既知の細胞周期遺伝子、すなわち、野生型遺伝子と比
較することを含んでもよい。
【0178】 細胞周期遺伝子の全部または部分の配列を、既知の細胞周期遺伝子の配列と比
較して、差異が存在するかどうかを決定することができる。このことは、Bes
tfitなどの周知の配列同一性プログラムをいくつでも用いて行うことができ
る。好ましい実施態様では、患者の細胞周期遺伝子と既知の細胞周期遺伝子との
間の配列の差異が存在することは、疾患状態または疾患状態になる傾向を示して
いる。
【0179】 ある実施態様では、本発明は、個体における細胞周期関連症状の診断法を提供
する。この方法は、個体または患者由来の組織における細胞周期活性の測定を含
み、細胞周期タンパク質の量または特異的活性の測定を含んでもよい。この活性
を、罹患していない第2の個体または第1の個体の罹患していない組織のどちら
かに由来する細胞周期の活性と比較する。これらの活性が異なる場合、第1の個
体には細胞周期関連障害のリスクが有り得る。このようにして、例えば、タンパ
ク質のレベルまたはそのmRNAの発現をモニターすることによって、様々な疾
患状態をモニターし得る。同様に、発現レベルは、予後に相関し得る。
【0180】 ある態様では、 細胞周期タンパク質遺伝子の発現レベルを、診断または予後
情報が求められる異なる患者の試料または細胞について測定する。遺伝子発現の
モニターは、細胞周期タンパク質をコードする遺伝子について行われる。ある態
様では、細胞周期タンパク質遺伝子の発現レベルは、正常細胞およびアポトーシ
スまたは形質転換をしている細胞のような、細胞の異なる状態について測定され
る。異なる状態の細胞において細胞周期タンパク質遺伝子の発現レベルを比較す
ることによって、細胞周期タンパク質遺伝子のアップレギュレーションおよびダ
ウンレギュレーションの両者を含む、情報が得られ、この情報は多数の方法で用
いられる。例えば、特定の処置方式を評価し得る:ある化学療法剤が特定の患者
の長期的予後を改善するのに役立っているか、を評価し得る。同様に、患者の試
料を比較して、診断を行うか、または確認してもよい。さらに、これらの遺伝子
発現レベルによって、特定の発現レベルを模倣または変化させる目的で、薬物候
補をスクリーニングすることが可能になる。このことは、このようなスクリーニ
ングに用いることができて、本発明のもののような重要な細胞周期タンパク質遺
伝子の一揃えを含む、バイオチップを作成することによって行ってもよい。これ
らの方法は、タンパク質に基づいて行うこともできる;つまり、細胞周期タンパ
ク質のタンパク質発現レベルを、診断の目的や候補物質のスクリーニングのため
に評価できる。さらに、細胞周期タンパク質の核酸配列を遺伝子治療の目的で投
与することができる。このことには、アンチセンス核酸の投与、または治療薬と
しての細胞周期タンパク質の投与が含まれる。
【0181】 バイオチップに結合する細胞周期タンパク質配列には、上記定義のように核酸
およびアミノ酸の両者の配列が含まれる。好ましい実施態様では、細胞周期タン
パク質の核酸(図に概説した配列を有する核酸配列および/またはその相補鎖の
両者)に対する核酸プローブが作成される。バイオチップに取付けられる核酸プ
ローブは、細胞周期タンパク質の核酸、すなわち、標的配列(試料の標的配列、
または例えばサンドイッチアッセイにおける他のプローブ配列への標的配列)に
実質的に相補的に設計し、標的配列と本発明のプローブとのハイブリダイゼーシ
ョンが起こるようにする。以下に概説するように、この相補性は、完全である必
要は無い;標的配列と本発明の1本鎖核酸の間のハイブリダイゼーションを妨害
するミスマッチ塩基対がいくつあってもよい。しかし、もし変異の数が多すぎて
、ストリンジェンシーが最低のハイブリダイゼーション条件下でさえハイブリダ
イゼーションが起こらないならば、その配列は相補的標的配列ではない。ゆえに
、本明細書で「実質的に相補的」は、本明細書で概説するように、通常の反応条
件、特にハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするのに、プローブが
標的配列に十分相補的であることを意味する。
【0182】 核酸プローブは、一般的に1本鎖であるが、部分的に1本鎖、および部分的に
2本鎖であり得る。プローブの鎖形成は、構造、組成、および標的配列の性質に
よって決定される。一般的に、核酸プローブは約8ないし約100塩基長の範囲
にあり、約10ないし約80塩基が好ましく、約30ないし約50塩基が特に好
ましい。ある実施態様では、数百塩基に上るさらに長い核酸(例えば、遺伝子全
長)を用いることができる。
【0183】 当業者に理解されるであろうように、核酸を、幅広い方法で、固体支持体に結
合または固定することができる。 本明細書での「固定された」および文法的均
等語は、以下に概説するように、核酸プローブと固体支持体の会合または結合が
、以下に概説するように、結合、洗浄、分析、および除去の条件下で安定である
ために十分であることを意味する。結合は、共有的または非共有的であり得る。
本明細書における「非共有結合」および文法的均等語は、1またはそれ以上の、
電気的、親水的、および疎水的相互作用のいずれかを意味する。ストレプトアビ
ジンのような分子の支持体への共有結合、およびビオチン化プローブのストレプ
トアビジンへの非共有結合は、非共有結合に含まれる。本明細書における「共有
結合」および文法的均等語は、2つの部分、固体支持体とプローブが、シグマ結
合、パイ結合および配位結合を含む少なくとも1つの結合によって結合している
ことを意味する。共有結合は、プローブと固体支持体との間に直接形成でき、あ
るいは、クロスリンカーによって、または固体支持体とプローブのいずれかもし
くは両者に特異的反応基を含むことによって形成できる。固定化は、共有および
非共有相互作用の組合せも含み得る。
【0184】 一般的に、当業者に理解されるであろうように、プローブを幅広い方法でバイ
オチップに結合させる。本明細書に記載のように、核酸は、最初に合成して次に
バイオチップに結合するか、またはバイオチップ上で直接合成することができる
【0185】 バイオチップは、好適な固体基板を含む。本明細書の「基板」または「固体支
持体」または他の文法的均等語は、核酸プローブの結合または会合に適する独立
した個々の部位を含有するように変更することができ、そして少なくとも1つの
検出法で分析できる、あらゆる材料を意味する。当業者に理解されるであろうよ
うに、可能な材料の数は非常に多く、ガラスおよび修飾または機能化ガラス、プ
ラスチック(アクリル、ポリスチレン、ならびにスチレンおよび他の材料の共重
合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン
Jなどを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまた
はシリコンもしくは修飾シリコンを含むシリカベースの材料、炭素、金属、無機
ガラス、プラスチックなどを含むが、これらに限定されるものではない。一般的
に、該基板は、好都合な検出を可能にし、感知できるほどの蛍光を示さない。
【0186】 好ましい実施態様では、バイオチップとプローブの表面を、両者の結合のため
に、化学官能基で誘導し得る。ゆえに、例えば、バイオチップは、アミノ基、カ
ルボキシル基、オキソ基およびチオール基を含むがこれらに限定されない化学官
能基で誘導され、アミノ基が特に好ましい。これらの官能基を用いると、プロー
ブをプローブ上の官能基を用いて結合させることができる。例えば、アミノ基を
含む核酸は、例えば、当分野で周知のようにリンカーを用いて、アミノ基を含む
表面に取付けることができる;例えば、ホモ―またはヘテロ―両機能性リンカー
は、周知である(1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section
on cross-linkers, pages 155-200, 参照。出典明示により本明細書の一部とす
る)。さらに、ある場合では、アルキル基(置換およびヘテロアルキル基を含む
)のような追加のリンカーを用いてもよい。
【0187】 この実施態様では、核酸プローブに対応するオリゴヌクレオチドを当分野で周
知のように合成し、固体支持体の表面に結合させる。当業者には理解されるであ
ろうように、5'または3'の末端のどちらを固体支持体に結合させてもよく、ま
た内側のヌクレオチドを介して結合させてもよい。
【0188】 さらなる実施態様では、固体支持体への固定化は、非共有結合であっても非常
に強固であり得る。例えば、ストレプトアビジンで共有結合により被膜された表
面に結合するビオチン化オリゴヌクレオチドを作成することができ、結合させる
【0189】 または、当分野で周知のように、オリゴヌクレオチドを表面上で合成できる。
たとえば、光重合の化合物および技術を利用する光活性化技術を用いる。好まし
い実施態様では、核酸は、WO95/25116;WO95/35505;米国
特許番号第5700637号および第5445934号;およびそれらの中で引
用された参照文献(それらすべてを出典明示により本明細書の一部とする)に記
載のように、周知の写真平板技術を用いてin situで合成できる;これらの結合
の方法は、Affimetrix GeneChip(登録商標)技術の基礎をなしている。
【0190】 本明細書で使用される「ディファレンシャル発現」または文法的均等語は、遺
伝子の時間的および/または細胞の発現パターンにおける、細胞間の量的差異と
質的差異の両方を表わす。ゆえに、異なって発現された遺伝子は、例えば正常細
胞対アポトーシスの細胞において、活性化と不活性化を含む、定性的に変化した
発現を有することができる。つまり、遺伝子は、特定の状態において、他の状態
に関連して点いたり切れたりし得る。当業者には明らかなように、2種またはそ
れ以上の状態のどのような比較も行うことができる。そのような定性的に制御さ
れる遺伝子は、ある状態または細胞のタイプにおいて、発現パターンを示すであ
ろう。そのパターンは、状態または細胞のタイプが1種の場合は標準的な技術で
検出できるが、両方の場合は検出できない。あるいは、発現が増加または減少す
る場合には、測定は定量的である;つまり、遺伝子の発現はアップレギュレーシ
ョンされ、転写物の量が増加するか、または遺伝子の発現はダウンレギュレーシ
ョンされ、転写物の量が減少するかのどちらかである。発現が異なる程度は、以
下に概説するように、Affymetrix GeneChip(登録商標)発現アレイ(Lockhart,
Nature Biotechnology 14:1675-1680 (1996)、出典明示により本明細書の一部
とする)のような、標準的な特性分析技術を介して定量するのに十分なほどに大
きい必要があるだけである。他の技術には、定量的逆転写酵素PCR、ノザン分
析およびRNase保護が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0191】 当業者に理解されるであろうように、このことは遺伝子転写物、またはタンパ
ク質レベルのいずれかを評価することによってなし得る;つまり遺伝子発現の量
は、遺伝子転写物と等価のDNAまたはRNAに対する核酸プローブ、および遺
伝子発現のレベルの定量を用いてモニターすることができ、または、例えば細胞
周期タンパク質の抗体および標準的なイムノアッセイ(ELAISAなど)、ま
たはマススペクトロスコーピーアッセイ、2次元ゲル電気泳動アッセイなどの他
の技術を介して、遺伝子の最終産物そのもの(タンパク質)をモニターすること
ができる。
【0192】 他の方法では、mRNAの検出はin situで行われる。この方法では、透過性
にした細胞または組織の試料を、検出可能な標識化核酸プローブに十分な時間接
触させ、プローブを標的mRNAにハイブリダイズさせる。非特異的に結合した
プローブを除去するために洗浄した後、標識を検出する。例えば、細胞周期タン
パク質をコードするmRNAに相補的なジゴキシゲニン標識化リボプローブ(R
NAプローブ)は、ジゴキシゲニンを抗ジゴキシゲニン二次抗体と結合させ、ニ
トロブルーテトラゾリウムおよびリン酸5−ブロモ4−クロロ−3−インドリル
と反応させることで検出される。
【0193】 他の好ましい方法では、細胞周期タンパク質の発現は、細胞周期タンパク質抗
体を使用するin situイメージング技術を用いて行われる。この方法では、細胞
を細胞周期タンパク質に対する1種ないし多種の抗体に接触させる。非特異的に
結合している抗体を除去するために洗浄し、抗体または抗体の存在を検出する。
ある実施態様では、抗体は、検出可能な標識を含む二次抗体とインキュベートす
ることにより検出される。他の方法では、細胞周期タンパク質に対する一次抗体
が、検出可能な標識を有する。他の好ましい実施態様では、多種類の一次抗体の
各々が、別個の検出可能な標識を含む。この方法には、多数の細胞周期タンパク
質の同時スクリーニングにおいて特に有用性がある。標識は、異なる波長の発光
を検出し、区別できる性能を有する蛍光光度計で検出し得る。さらに、蛍光標示
式細胞分取器(FACS)を、この方法で用いることができる。通常の技術のあ
る当業者に理解されるであろうように、膨大な数の他の組織学的イメージング技
術が本発明で有用であり、抗体をELISA,イムノブロット(ウエスタンブロ
ット)、免疫沈降、BIACORE技術などに使用できる。
【0194】 ある実施態様において、細胞周期タンパク質に対するポリクローナルおよびモ
ノクローナル抗体を生成するために、本発明の細胞周期タンパク質を使用し得る
。それらの抗体は、ここで記載されるように有用である。同様に、細胞周期タン
パク質を、標準的な技術を使用してアフィニティ・クロマトグラフィ・カラムに
結合することができる。そして、これらのカラムを抗細胞周期タンパク質抗体を
精製するために使用し得る。好ましい実施態様において、抗体を細胞周期タンパ
ク質に対してエピトープ特異的に生成する;すなわち、抗体は、他のタンパク質
とほとんどまたは全く交差反応性を示さない。これらの抗体について、多くの応
用における使用が見出される。例えば、抗細胞周期タンパク質抗体を標準的なア
フィニティ・クロマトグラフィ・カラムに結合し得る。そして、以下にさらに記
載するように、細胞周期タンパク質を精製するために使用し得る。抗体を、前記
で概説したように、ブロッキングポリペプチドとしても使用し得る。というのは
、これらは、細胞周期タンパク質と特異的に結合するからである。
【0195】 抗細胞周期タンパク質抗体は、ポリクローナル抗体を含み得る。ポリクローナ
ル抗体を調製する方法は、当業者にとって既知である。ポリクローナル抗体を哺
乳類中で産生し得る。例えば、1以上の免疫化物質および所望によりアジュバン
トの注射による。典型的には、免疫化物質および/またはアジュバントを、数回
の皮下または腹膜内への注射によって哺乳類に注射する。免疫化物質は、細胞周
期ポリペプチドまたはその融合タンパク質を含み得る。免疫化物質と、免疫化さ
れる哺乳類において免疫原であることが既知であるタンパク質とを結合すること
は、有用である。そのような免疫原タンパク質の例は、キーホール・リンペット
・ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ・チログロブリンおよびダイズ・トリプ
シンインヒビターを含むが、これらに限定されない。使用され得るアジュバント
の例は、フロイントの完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モ
ノフォスフィリル・リピッドA、合成トレハロース・ジコリノミコレート)を含
む。免疫化プロトコールを当業者は過度な実験なくして選択し得る。
【0196】 あるいは、抗細胞周期タンパク質抗体はモノクローナル抗体であってよい。モ
ノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製し得る。その方法は、Ko
hler and Milstein, Nature, 256: 495(1975)に記載されている。ハイブリドー
マ法では、マウス、ハムスターなどの適当な宿主動物を典型的には免疫化物質で
免疫化する。そして、免疫化物質に特異的に結合する抗体を、産生または産生し
得るリンパ球を誘発する。あるいはリンパ球をインビトロで免疫化し得る。
【0197】 免疫化物質は、典型的には、細胞周期ポリペプチドまたはその融合タンパク質
を含む。一般的には、ヒト起源の細胞が望まれるならば、末梢血液リンパ球(「
PBL」)を使用し、または、非ヒト哺乳類ソースが望まれるなら、脾臓細胞ま
たはリンパ節細胞を使用する。そして、リンパ球を不死化細胞株と融合化する。
その際に、ポリエチレングリコールのような適当な融合化物質を使用してハイブ
リドーマ細胞を形成させる[Goding, Monoclonal Antibodies: Pronciples and P
ractice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化細胞株として、通常、
形質転換された哺乳類細胞、特に齧歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞
を使用する。通常、ラットまたはマウスミエローマ細胞系統を使用する。ハイブ
リドーマ細胞を適当な培地中で培養し得る。それは、好ましくは、融合されず、
不死化していない細胞の成長または生存を阻害する1以上の物質を含む。例えば
、親細胞が酵素ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラー
ゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマのための培地(
「HAT培地」)は、典型的には、HGPRT欠失細胞の成長を妨げるヒポキサ
ンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む。
【0198】 好ましい不死化細胞系統は効率的に融合し、選択された抗体生産細胞にる抗体
の安定的高水準の発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である
。さらに好ましい不死化細胞系統は、ネズミミエローマ系統であり、例えば、Sa
lk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California and the Ame
rican Type Culture Collection, Rockville, Marylandから得ることができる。
ヒトミエローマおよびマウス−ヒトへテロミエローマ細胞系統は、ヒトモノクロ
ーナル抗体の生産に関して記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001(198
4); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applic
ations, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0199】 そして、ハイブリドーマ細胞を培養する培地を、細胞周期タンパク質に対する
モノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハ
イブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫
沈降によって、または放射性免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着ア
ッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって測定する。これら
の技術およびアッセイは当技術分野で既知である。例えば、モノクローナル抗体
の結合親和性をMunson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220(1980)のScatcha
rd分析によって測定することができる。
【0200】 所望のハイブリドーマ細胞の同定の後、クローンを限界希釈法によってサブク
ローン化し、標準的な方法によって成長させ得る[Goding、前出]。この目的のた
めの適当な培地は、例えば、Dulbecco修正Eagle培地およびPPMI−1640
培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳類内の腹水のようなインビボ
で成長させ得る。
【0201】 サブクローン化によって分泌されたモノクローナル抗体を、通常の免疫グロブ
リン精製方法により培地または腹水液から単離し精製し得る。この精製方法には
、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグ
ラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティー・クロマトグラフィーが
ある。
【0202】 モノクローナル抗体を組み換えDNA法によっても作成し得る。例えば、米国
特許番号第4816567号に記載されている。本発明のモノクローナル抗体を
コードするDNAを通常の方法を使用して容易に単離し、配列決定することがで
きる(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に
結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)。本発明のハイ
ブリドーマ細胞を、そのようなDNAの好ましいソースとして使用することがで
きる。単離すると、DNAを発現ベクター内に入れ、宿主細胞にトランスフェク
トし得る。そのような細胞には、トランスフェクトされなければ免疫グロブリン
タンパク質を産生しないシミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(C
HO)細胞、またはミエローマ細胞がある。次いで組換え宿主細胞においてモノ
クローナル抗体が合成される。例えば、ヒトの重鎖および軽鎖の定常ドメインの
コード配列を、相同的なネズミ配列の場所に置換することにより[特許番号48
16567第;Morrison et al., 前出]、または免疫グロブリン・コード配列と
、非免疫グロブリン・ポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部とを共有結
合させることなどによりDNAもまた修飾し得る。そのような非免疫グロブリン
・ポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインと、置換することができる。あ
るいは、本発明の抗体のある抗原結合部位の可変ドメインと置換し、キメラ二価
抗体を生成することができる。
【0203】 抗体は一価の抗体であってよい。一価の抗体を調製する方法は、当技術分野で
周知である。例えば、ある方法は、免疫グロブリンの軽鎖および修飾重鎖の組換
え発現を含む。重鎖は、Fc領域における任意の点において末端切除し、重鎖の
交差結合(cross linking)を防止する。あるいは、関連するシステイン残基を
、別のアミノ酸残基で置換するか削除して、交差結合を防ぐ。
【0204】 インビトロ法は、一価抗体を調製するためにも適当である。抗体の消化によっ
て、その断片、特にFab断片を生成することは、当分野で既知の日常的な技術
を使用し実施することができる。
【0205】 本発明の抗細胞周期タンパク質抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含
み得る。ヒト化型の非ヒト(例えばネズミ)抗体は、キメラ免疫グロブリン、免
疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')または抗
体の他の抗原結合サブシーケンスなど)である。これらは、非ヒト免疫グロブリ
ンに由来する最小配列を含む。ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント
抗体)を含み、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、マウス
、ラットまたはウサギなどの所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種
(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されている。いくつかの例では、ヒト
免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換されて
いる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体および導入されたCDRまたはフレーム
ワーク配列のいずれにも見出されない残基も含む。一般に、ヒト化抗体は、実質
的に少なくとも1つの、そして典型的には2つの可変ドメインの全部を含む。こ
のドメインでは、すべてまたは実質的にすべてのCDR領域が、非ヒト免疫グロ
ブリンのCDR領域に一致し、すべてまたは実質的にすべてのFR領域が、ヒト
免疫グロブリン共通配列のFR領域である。ヒト化抗体は、所望により、免疫グ
ロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なく
とも一部も含む[Jones et al., Nature, 321: 522-525(1986); Riechmann et al
., Nature, 332: 323-329(1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 5
93-596(1992)]。
【0206】 非ヒト抗体をヒト化する方法は当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体
は、非ヒトのソースから抗体に導入された1以上のアミノ酸残基を有している。
これらの非ヒトアミノ酸残基をしばしば「導入」残基と称する。それは、典型的
には「導入」可変ドメインに由来する。ヒト化をWinterおよびその共同研究者の
方法[Jones et al., Nature, 321: 522-525(1986); Riechmann et al., Nature,
332: 323-327(1988); Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536(1988)]に
従って、齧歯類CDR配列と、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって
、基本的に実施することができる。従って、該「ヒト化」抗体は、キメラ抗体で
あり(米国特許番号第4816567号)、無処置のヒト可変ドメインより実質
的に小さいドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されている。実
際、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかのCDR残基およびおそらくいくつかの
FR残基が、齧歯類抗体の同種の部位からの残基によって置換されているヒト抗
体である。
【0207】 ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技術を使用して産生することができる
。この技術はファージ・ディスプレイ・ライブラリーを含む[Hoogenboom and Wi
nter, J. Mol. Biol., 227: 381(1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 5
81(1991)]。ColeらおよびBoernerらの技術は、ヒトモノクローナル抗体の調製の
ためにも利用可能である(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Th
erapy, Alan R. Liss, p. 77(1985) and Boerner et al., J. Immunol., 147(1)
:86-95(1991)]。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子を部分的に
または完全に不活性化したマウスなどのトランスジェニック動物への、ヒト免疫
グロブリン遺伝子座の導入によって作成することができる。チャレンジしたとき
、ヒト抗体生産が観察され、それはすべての点でヒトに見出されるものとよく類
似し、遺伝子の再配列、集合、およびレパートリーを含む。この方法は、例えば
、米国特許番号第5545807号;第5545806号;第5569825号
;第5625126号;第5633425号;第5661016号、および以下
の科学的出版物: Marks et al., Bio/Technology 10, 779-783(1992); Lonberg
et al., Nature 368 856-859(1994); Morrison, Nature 368, 812-13(1994); Fi
shwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51(1996); Neuberger, Nature
Biotechnology 14, 826(1996); Lonberg and Huszar, Intern Rsv. Immunol. 13
65-93(1995)に記載されている。
【0208】 二重特異的抗体は、少なくとも2の異なる抗原に結合特異性を有するモノクロ
ーナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。今回の場合において、結
合特異性の1つは細胞周期タンパク質について、他方は任意の他の抗原について
、そして好ましくは細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニッ
トについての抗体である。
【0209】 二重特異的抗体を生成するための方法は、当技術分野で既知である。通常、二
重特異的抗体の組換え産物は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖組の共発現に基
づき、この場合2本の重鎖が異なる特異性を有する。[Milstein and Cuello, Na
ture, 305: 537-539(1983)]。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組合
わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗
体分子があり得る混合物を産生する。このうち1種のみが適当な二重特異的構造
を有する。適当な分子の精製を通常アフィニティ・クロマトグラフィ法によって
実施する。類似方法は、WO93/08829、1993年5月13日公開、お
よびTraunecker et al., EMBO J., 10: 3655-3659(1991)に記載されている。
【0210】 所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体抗原結合部位)を、免疫グ
ロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。その融合は、好ましくは免
疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。そしてヒンジ、CH2、および
CH3領域の少なくとも一部を含む。第1の重鎖定常領域(CH1)を有するの
が好ましい。それは、融合の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要である部
位を含む。免疫グロブリン重鎖融合、および所望により免疫グロブリン軽鎖をコ
ードするDNAを別の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に共トランスフェ
クトさせる。二重特異的抗体の生成のさらなる詳細について、例えば、Suresh e
t al., Methods in Enzymology, 121: 210(1986)を参照されたい。
【0211】 ヘテロ結合抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロ結合抗体は、2つの共
有結合した抗体から成る。そのような抗体は、例えば、好ましくない細胞に免疫
系細胞の標的を定めるために[米国特許番号第4676980号]、HIV感染の
処置のために[WO91/00360; WO92/200373; EP0308
9]提案されている。抗体は、合成タンパク質化学(関連交差結合物質を含む)
における既知の方法を使用して、インビトロで調製し得る。例えばイムノトキシ
ンを、ジスルフィド置換反応を使用して、またはチオエーテル結合の形成によっ
て構築し得る。この目的のために適当な物質の例は、イミノチオレートおよびメ
チル−4−メルカプトブチルイミデートを含み、例えば、米国特許番号第467
6980号に記載されている。
【0212】 本発明の抗細胞周期タンパク質抗体は、多様な有用性を有する。例えば、抗細
胞周期タンパク質抗体は、細胞周期タンパク質についての診断アッセイに使用し
うる。例えば、特定の細胞、組織、または血清におけるその発現の検出である。
当技術分野で既知の多様な診断アッセイ技術を使用し得る。例えば、競合的結合
アッセイ、直接的または間接的サンドイッチアッセイ、および異種性または同種
性の相のいずれかにおいて実施される免疫沈降法である[Zola, Monoclonal Anti
bodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc.(1987)pp. 147-158]。診断
アッセイに使用される抗体を、検出可能部分で標識化することができる。検出可
能部分は、直接的にまたは間接的に検出可能なシグナルを生産するものである。
例えば、検出可能部分は、H、14C、32P、35S、もしくは125Iの
ような放射性同位体、フルオレセイン・イソチオシアネート、ローダミン、もし
くはルシフェリンのような蛍光もしくは化学発光化合物、またはアルカリホスフ
ァターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼもしくはホースラディッシュ・ペルオキシ
ダーゼなどの酵素であってよい。抗体の検出可能部分への結合について、当技術
分野で既知の任意の方法を使用し得る。それらの方法は、Hunter et al., Natur
e, 144: 945(1962); David et al., Biochemistry, 13: 1014(1974); Pain et a
l., J. Immunol. Meth., 40: 219(1981); およびNygren, J. Histochem. and Cy
tochem., 30: 407(1982)に記載された方法を含む。
【0213】 抗細胞周期タンパク質抗体は、組換え細胞培養または天然起源からの細胞周期
タンパク質の親和性精製にとっても有用である。この方法では、細胞周期タンパ
ク質に対する抗体を、例えば、Sephadfex樹脂または濾紙などの適当な支持体に
、当技術分野で周知の方法を使用して固定する。次いで、固定した抗体を、生成
する細胞周期タンパク質を含む試料と接触させる。その後、該支持体を適当な溶
剤で洗浄し、固定した抗体に結合している、試料中の細胞周期タンパク質以外の
実質的にすべての物質を除去する。最終的に、細胞周期タンパク質を抗体から遊
離する別の適当な溶剤で、支持体を洗浄する。
【0214】 抗細胞周期タンパク質抗体を医療処置にも使用し得る。ある実施態様において
、抗体をコードしている遺伝子を提供する。抗体は細胞内の細胞周期タンパク質
に結合し、それを制御する。
【0215】 ある実施態様において、細胞周期タンパク質、アゴニストまたはアンタゴニス
トの治療有効量を患者に投与する。ここで「治療有効量」は、投与の目的である
効果を生じる用量を意味する。正確な用量は処置目的により異なり、公知技術を
用いて当業者は確認し得る。当分野で既知の通り、細胞周期タンパク質分解、全
身的対局所的送達、並びに年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時
間、薬剤相互作用および病状の重篤度による調節が必要であり、当業者は常用の
試行で確認し得る。
【0216】 本発明の目的における「患者」は、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳類お
よび生物を包含する。すなわち、本発明の方法は、ヒトの治療および獣医学的利
用の両方に適用され得る。好ましい実施態様において、患者は哺乳類であり、最
も好ましい実施態様において患者はヒトである。
【0217】 本発明の細胞周期タンパク質、アゴニストまたはアンタゴニストの投与を、様
々な経路、例えば、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内
、膣、直腸または眼内経路で行い得るがこれらに限定されない。場合によっては
、例えば、損傷および炎症の処置において、組成物を溶液またはスプレーとして
直接適用し得る。導入の方法に応じて、化合物を様々な方法で製剤化し得る。製
剤中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1ないし100重量%で変化し得
る。
【0218】 本発明の医薬組成物は、患者への投与に適した形態の細胞周期タンパク質、ア
ゴニストまたはアンタゴニスト(本明細書に記載の抗体およびバイオ活性物質を
含む)を含む。好ましい実施態様において、この医薬組成物は、水溶性形態、例
えば、医薬的に許容し得る塩類として存在しており、これらは酸および塩基の両
付加塩類を包含するものとする。「医薬的に許容し得る酸付加塩類」は、遊離塩
基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学上またはその他の点で許容できるもの
であり、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、および
有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、蓚酸、マレ
イン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸
、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸
、サリチル酸などと形成する。「医薬的に許容し得る塩基付加塩類」は、無機塩
基、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マ
グネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩類などから誘導されたも
のを含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウ
ムおよびマグネシウム塩類などである。医薬的に許容し得る有機非毒性塩基から
誘導される塩類は、第1級、第2級および第3級アミン類、置換アミン類、例え
ば、天然産生の置換アミン類、環状アミン類および塩基性イオン交換樹脂、例え
ば、イロプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミ
ン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンの塩類がある。
【0219】 これらの医薬組成物はまた次の物質;すなわち担体タンパク質、例えば、血清
アルブミン;緩衝液;充填剤、例えば、微晶性セルロース、ラクトース、トウモ
ロコシおよび他の澱粉類;結合剤;甘味料および他の着香剤;着色剤;およびポ
リエチレングリコールのうちの1種以上を含み得る。添加物は当業界ではよく知
られており、様々な製剤で使用される。
【0220】 組成物の組合せを投与し得る。さらに、組成物を成長因子または化学療法剤お
よび/もしくは放射線を含む他の治療剤と組み合わせて投与してもよい。標的化
物質(すなわち、癌細胞の受容体のリガンド)も、本発明で提供される組成物と
組合わせてよい。
【0221】 本発明で提供されるある実施態様では、抗体を免疫療法に用いる。ゆえに、免
疫療法の方法が提供される。「免疫療法」は、細胞周期タンパク質に対して生成
された抗体を用いて、細胞周期タンパク質に関連する疾患を処置することを意味
する。本発明で使用されるように、免疫療法は、受動的または能動的であり得る
。本明細書に記載のように、受動的免疫療法は、抗体を受容者(患者)に受動的
に輸送することである。能動的免疫療法は、抗体および/またはT細胞反応を受
容者(患者)の中で誘導することである。細胞周期タンパク質抗原(これに対し
て抗体を生成する)を受容者に与えると、その結果免疫反応が誘導され得る。当
業者に理解されるように、細胞周期タンパク質抗原は、抗体を生成しようとして
いる細胞周期ポリペプチドを受容者に注射するか、または細胞周期タンパク質抗
原を発現する条件下で、細胞周期タンパク質抗原を発現できる、細胞周期タンパ
ク質をコードしている核酸を、受容者に接触させるかして与えられる。
【0222】 好ましい実施態様では、治療的化合物が抗体、好ましくは抗細胞周期タンパク
質抗体、に結合している。治療的化合物は細胞毒性物質であってもよい。この方
法では、アポトーシス細胞または癌組織もしくは細胞に細胞毒性物質の標的を定
めることにより、罹患した細胞の数を低減し、その結果、アポトーシス、癌およ
び細胞周期関連障害に付随する症状を低減する結果をもたらす。細胞毒性物質は
膨大かつ多様であり、細胞毒性薬もしくは毒物またはそのような毒物の活性断片
を含むが、これらに限定されるものではない。好適な毒物およびその対応する断
片には、ジフテリアA鎖、エクソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、カ
ルシン(curcin)、クロチン(crotin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノ
マイシン(enomycin)などが含まれる。細胞毒性物質には、細胞周期タンパク質
に対して生成された抗体に放射性同位元素を結合させるか、または抗体に共有結
合で結合させたキレート化剤に放射性核種を結合させて作成される、放射性化学
物質も含まれる。
【0223】 好ましい実施態様では、細胞周期タンパク質遺伝子を、DNAワクチンとして
投与する。1種類の遺伝子または細胞周期タンパク質遺伝子の組合せのどちらか
である。むき出しのDNAワクチンは、当分野で一般的に知られている;Brower
, Nature Biotechnology 16:1304-1305 (1998)を参照のこと。DNAワクチンと
しての遺伝子の使用は、当業者に周知であり、細胞周期タンパク質遺伝子または
細胞周期タンパク質遺伝子の部分を、患者中での発現用のプロモーターの制御下
におくことを含む。DNAワクチンに使われる細胞周期タンパク質遺伝子は、細
胞周期タンパク質完全長をコードできるが、より好ましくは細胞周期タンパク質
から生じるペプチドを含む、細胞周期タンパク質の部分をコードする。好ましい
実施態様では、患者は、細胞周期タンパク質遺伝子から生じる多数の核酸配列を
含むDNAワクチンで免疫性を与えられる。同様に、本明細書に記載のように、
多数の細胞周期タンパク質遺伝またはその部分で、患者に免疫性を与えることが
可能である。理論によって制限を受けないが、DNAワクチンにコードされるポ
リペプチドの発現に続いて、細胞周期タンパク質を発現している細胞を破壊また
は除去する細胞障害性T細胞、ヘルパーT細胞および抗体が誘導される。
【0224】 好ましい実施態様では、DNAワクチンは、DNAワクチンとともにアジュバ
ント分子をコードする遺伝子を含む。そのようなアジュバント分子には、DNA
ワクチンにコードされる細胞周期ポリペプチドへの免疫反応を上昇させるサイト
カインが含まれる。追加または代用のアジュバントは、当業者に周知であり、本
発明で有用である。
【0225】 本発明に従う他の改変は、当業者にとって明らかである。本明細書で引用した
全参考文献を、出典明示により本明細書の一部とする。さらに、該参考文献中で
引用されたか、または記載された全配列および受託番号を、出典明示により本明
細書の一部とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム1の核酸配列を示
す。
【図2】 細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム1のアミノ酸配列
を示す。
【図3】 細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム2の核酸配列を示
す。
【図4】 細胞周期タンパク質Radh−アイソフォーム2のアミノ酸配列
を示す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 105 C07K 14/47 4C085 C07K 14/47 16/18 4H045 16/18 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 1/21 1/21 C12P 21/02 C 5/10 C12Q 1/02 C12P 21/02 G01N 33/15 Z C12Q 1/02 33/50 Z G01N 33/15 33/53 D 33/50 M 33/53 33/566 33/574 D 33/566 C12P 21/08 33/574 C12N 15/00 ZNAA // C12P 21/08 5/00 A Fターム(参考) 2G045 AA24 AA40 BA11 BB50 DA12 DA13 DA14 DA36 FB02 4B024 AA01 AA11 AA20 BA21 CA04 DA02 EA04 FA02 GA11 4B063 QA18 QQ08 QR77 QS31 4B064 AG01 AG27 CA10 CA19 CC24 DA13 4B065 AA90X AA99Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA25 CA44 CA46 4C085 AA13 AA14 BB11 EE01 4H045 AA10 AA11 AA30 BA10 CA40 EA28 FA74

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞周期タンパク質をコードしている組換え核酸であって、
    図1または図3に記載した配列と相補的な配列と、ハイストリンジェントな条件
    下にハイブリダイズする核酸を含む、組換え核酸。
  2. 【請求項2】 該タンパク質がPCNAと結合する、請求項1に記載の組換
    え核酸。
  3. 【請求項3】 図1または図3に記載した核酸配列を含む、請求項1に記載
    の組換え核酸。
  4. 【請求項4】 細胞周期タンパク質をコードしている組換え核酸であって、
    図1または図3に記載した配列と少なくとも85%の配列同一性を有する核酸を
    含む、組換え核酸。
  5. 【請求項5】 図2または図4に示したアミノ酸配列をコードしている組換
    え核酸。
  6. 【請求項6】 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に
    記載の組換え核酸のいずれかを含み、該核酸が、該核酸で形質転換した宿主細胞
    により認識される調節配列に作動可能なように連結している、発現ベクター。
  7. 【請求項7】 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に
    記載の組換え核酸のいずれかを含む宿主細胞。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のベクターを含む宿主細胞。
  9. 【請求項9】 細胞周期タンパク質の製法であって、請求項8に記載の宿主
    細胞を、該細胞周期タンパク質の発現に適した条件下に培養することを含む方法
  10. 【請求項10】 さらに該細胞周期タンパク質を回収することを含む、請求
    項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5
    に記載の核酸によりコードされている、組換え細胞周期タンパク質。
  12. 【請求項12】 図2または図4に記載した配列と少なくとも80%の配列
    同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えポリペプチド。
  13. 【請求項13】 該ポリペプチドがPCNAと結合する、請求項12に記載
    の組換えポリペプチド。
  14. 【請求項14】 該アミノ酸配列が図2または図4に記載したものである、
    請求項12に記載の組換えポリペプチド。
  15. 【請求項15】 請求項12に記載の細胞周期タンパク質と特異的に結合す
    る、単離されているポリペプチド。
  16. 【請求項16】 抗体である、請求項15に記載のポリペプチド。
  17. 【請求項17】 該抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の
    ポリペプチド。
  18. 【請求項18】 該抗体が、該細胞周期タンパク質の生物学的機能を低下ま
    たは除去するものである、請求項17に記載のモノクローナル抗体。
  19. 【請求項19】 細胞周期タンパク質と結合する能力のあるバイオ活性物質
    をスクリーニングする方法であって、 a)細胞周期タンパク質と候補バイオ活性物質とを合わせること:および b)該候補バイオ活性物質と該細胞周期タンパク質との結合を測定すること を含む、方法。
  20. 【請求項20】 細胞周期タンパク質とPCNAタンパク質との結合を妨害
    する能力のあるバイオ活性物質をスクリーニングする方法であって、 a)細胞周期タンパク質、候補バイオ活性物質およびPCNAタンパク質を合わ
    せること:および b)該細胞周期タンパク質と該PCNAタンパク質との結合を測定すること を含む、方法。
  21. 【請求項21】 該細胞周期タンパク質と該PCNAタンパク質とを最初に
    合わせる、請求項20に記載の方法。
  22. 【請求項22】 細胞周期タンパク質の活性を調節する能力のあるバイオ活
    性物質をスクリーニングする方法であって、 a)細胞周期タンパク質をコードしている組換え核酸を含む細胞に候補バイオ活
    性物質を加えること:および b)該候補バイオ活性物質が該細胞に与える効果を測定すること を含む、方法。
  23. 【請求項23】 候補バイオ活性物質のライブラリーを、細胞周期タンパク
    質をコードしている組換え核酸を含む複数の細胞に加える、請求項22に記載の
    方法。
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