JP2003340270A - 反応器の運転制御方法 - Google Patents

反応器の運転制御方法

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JP2003340270A
JP2003340270A JP2002154293A JP2002154293A JP2003340270A JP 2003340270 A JP2003340270 A JP 2003340270A JP 2002154293 A JP2002154293 A JP 2002154293A JP 2002154293 A JP2002154293 A JP 2002154293A JP 2003340270 A JP2003340270 A JP 2003340270A
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reactor
reaction
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analysis
mid
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JP2002154293A
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English (en)
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Yoichi Kunito
庸一 国頭
Yoshinori Suzuki
敬紀 鈴木
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の技術では対応出来ないリアルタイ
ムのオンライン分析により、反応器内または反応器出口
の組成分析を時間遅れなく行う事により反応器の制御を
行う方法が求められていた。 【解決手段】 反応器の運転制御方法において、反応器
内又は反応器出口の反応物を中赤外線スペクトルで組成
分析し、該分析結果を指標として、反応器出口の組成が
予め設定した組成で一定となるように反応器の運転条件
を制御することを特徴とする反応器の運転制御方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は化学工業における代表的
な装置である反応器の制御方法に関する。対象とする製
品は石油化学製品を中心とする製品群の他、医薬品或い
は農薬品、またそれらの中間体製品をも含む。また上述
は一般に有機合成に基づく反応製品群であるが、本発明
は無機合成(例えば合成ガラスなど)の反応をも対象と
する。また、プロセスは連続反応であっても回分反応で
あっても、本発明は何ら制限を受けない。
【0002】
【従来の技術】従来の反応器の運転管理は所望の反応器
出口の反応物の液組成を維持するために必要応じて、あ
るいは定期的に反応器出口の組成分析を行っていた。し
かしながら、これは直接装置からサンプルを採取して分
析をおこなうために、大きな時間遅れと作業量の増加を
招いていた。時間遅れが発生すると生産は続行している
から、測定結果が規格外であれば製品のロスになった
り、規格外の反応液が次の精製工程に回された場合に
は、例えば蒸留塔の運転条件が一定せず、場合によって
はプラントが不安定になり運転の続行が不可能になる。
また、有機過酸化物のような自己分解性化合物の場合に
は、反応中にその量を規格内に制御する必要があり、何
らかの原因でその量が増加した場合には分解熱により反
応液の温度が上昇し、制御温度範囲を超えると暴走反応
を誘発し、反応器の破裂、最悪の場合には爆発に至る危
険性がある。時間遅れを解消する方法として便宜的に反
応器の温度監視をして、反応状態の変化を目安としこれ
をもって運転管理の目安とする方法が一般的であるが、
温度監視だけでは近年要求されるような高いレベルの運
転は達成出来ない。
【0003】なお、ここでいう高いレベルの運転とは、
管理目標とする反応液の組成と実際の組成のずれをほと
んどなくし、安定に規格内の製品の製造を行ったり、次
工程の精製工程等で例えば蒸留塔の運転が安定する事で
ある。近年は、オンライン分析機器を反応器あるいは反
応器出口に導入し、分析の時間遅れを最小限にして、そ
の分析値から人が判断したり、装置が自動的に判断しな
がら制御が出来るようにされている。
【0004】しかしながら、これらオンライン分析機器
は、例えばガスクロマトグラフィー分析を用いて、サン
プリングを自動で行う方法が普及しているが分析機器が
分析する時間は何ら短縮はされてはおらず、更に迅速な
オンラインのリアルタイム分析が要望されていた。一方
で近年、近赤外線を用いた分析機器による、オンライン
のリアルタイム分析を行う分析も報告され、実用化され
るケースも多くなってきている。しかしながら、その原
理的な欠点により例えば反応液の形態が液とガスの2相
系、または固体と液との2相系である場合は、スペクト
ルを得る方法が透過法であるために、散乱光が強く発生
したり、たとえ測定出来たとしてもスペクトルの強度が
不安定となる現象等により定量精度が著しく悪化する。
【0005】また定量精度においても、近赤外線は中赤
外で起こる吸収の倍音及び結合振動によりよって吸収が
起こるので、中赤外線領域でのスペクトルのピーク数よ
り著しく少なく、従い、得られるスペクトルは非常に重
複したスペクトルとなって現れ、各成分の単独ピークを
得る事は通常はない。それを解決するために、通常は主
成分回帰法や部分最小自乗法といった多変量解析法が利
用されるが、スペクトル的に類似化合物が存在したり、
存在量が少なかったりすると著しく精度が低下する事が
知られている。
【0006】例えば、特開平8−301793号広報に
見られるように近赤外線分析機器を使用して、ベンゼン
とエチレンの合成によりエチルベンゼンを合成する工程
において、リアルタイムに得られる分析値をもとに反応
を制御する方法がある。しかしながら、本法を液体と気
体との2相系の組成物や固体と液体との2相系の反応物
に適用した場合には、上述の原理的な問題により、正確
な分析値を得る事が出来ない。また、均一な液組成物で
あっても同様な原理的な問題で少量しか存在しないよう
な副生物などを精度よく分析する事はできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術では対応出
来ないリアルタイムのオンライン分析により、反応器内
または反応器出口の組成分析を時間遅れなく行う事によ
り反応器の制御を行う方法が求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、通常は研究や品質検
査等に用いられる中赤外線分析機器を反応器内もしくは
反応器内の組成液を外部循環させる方法、もしくは反応
器の出口に直接中赤外線のセンサーを挿入し、吸収スペ
クトルを測定し、上述の近赤外線の問題点を克服し精度
よく組成分析が可能であることを見い出し、本発明を完
成するに至った。
【0009】即ち、本発明の要旨は下記(1)〜(5)
に存する。 (1)反応器の運転制御方法において、反応器内又は反
応器出口の反応物を中赤外線スペクトルで組成分析し、
該分析結果を指標として、反応器出口の組成が予め設定
した組成で一定となるように反応器の運転条件を制御す
ることを特徴とする反応器の運転制御方法。
【0010】(2)反応物が、液−固系又は気−液系で
ある上記(1)に記載の運転制御方法。 (3)反応物が、発泡性を有する反応物である上記
(1)に記載の運転制御方法。 (4)中赤外スペクトルでの組成分析が、減衰全反射法
によるセンサー表面の極近傍の透過光を集める方法によ
り行われている上記(1)〜(3)のいずれかに記載の
運転制御方法。
【0011】(5)反応器出口の反応物の組成が予め設
定した組成で一定となるように反応器の運転条件を制御
する方法が、反応器へ供給する原料の量若しくは比率、
また必要により温度、圧力、滞留時間、酸化反応、或い
は水添反応等のガス供給源においては、その供給ガス量
もしくはガス濃度等を変更し、反応器内又は反応器出口
の反応物の組成を予め設定した組成で一定にすることで
ある上記(1)〜(4)いずれかに記載の運転制御方
法。
【0012】 [発明の詳細な説明]本発明の反応器の運転制御方法
は、反応器内又は反応器出口の反応物を中赤外線スペク
トルで組成分析し、該分析結果を指標として、反応器出
口の組成が予め設定した組成で一定となるように反応器
の運転条件を制御することを特徴とする。
【0013】本発明において反応器とは、液相反応、液
−固系の反応、気−液系の反応に使用される反応器を指
す。具体的には回分反応器、連続槽型反応器、半回分反
応器、気液攪拌槽型反応器、気泡塔反応器などが知られ
ており、広く工業的に用いられている。本発明において
は、この反応器内又は反応器出口の反応物を中赤外線ス
ペクトルで組成分析する。より高度な制御をするために
は反応器内の反応物の組成分析が好ましい。また、分析
装置の設置のしやすさという観点からは、反応器出口の
反応物の組成分析が好ましい。
【0014】本発明において「反応物」とは、有機溶媒
或いは無機溶媒、水溶液中における反応により生成する
目的生成物、副生物、場合により未反応の原料等を含有
する反応液である。なお、不均一相液においては本発明
における分析は気体または固体成分の妨害を受けずに、
精度良く液相のみの情報を得る事が可能であるという観
点から、反応物が液−固系又は気−液系である場合に本
発明の反応器の運転制御方法が好ましく、また、同様の
観点から、反応物が発泡性を有する反応物である場合も
好ましい。
【0015】本発明に適用されるプロセス(プラント)
は何ら制約を受けないが、例えば、クメン、フェノー
ル、ビスフェノールA、スチレン及びポリオレフィン、
ポリエステル、ポリスチレン等の大規模化学プロセスか
ら医農薬中間体、農薬等の小規模から大規模の化学プロ
セスにも適用できる。また、化学プロセス以外にも適用
可能であり、例えば医薬やバイオ或いは無機、食品分野
等幅広い分野において反応器を有するプロセスに適用可
能である。
【0016】本発明においては反応物を中赤外線スペク
トルで組成分析し、目的の反応物量、副生物量等の分析
結果を指標として、反応器出口の組成が予め設定した組
成で一定となるように反応器の運転条件を制御する。な
お「予め設定した組成」とは、製品の規格値を満足する
組成、後工程の精製系等に供給される目標の組成、或い
は反応物が自己分解性等である場合は、暴走反応を抑制
出来る組成であり、反応器出口の組成が予め設定した設
定した組成となるように分析結果を指標として運転条件
を制御する。反応器出口の組成が一定でない場合は、製
品組成が規格外となったり後工程の精製系の能力が得ら
れず、生産レートが低下したり製品規格を満足しない製
品が得られる事になる。また反応が暴走する組成に近づ
いていった場合には、緊急処置により運転を停止した
り、最悪の場合は反応器が爆発し、火災を誘発する危険
性がある。
【0017】本発明において「分析結果を指標として」
とは、分析結果に基づいてということであり、分析結果
と予め設定した組成とが一致するように運転条件を制御
する。運転条件の制御は、反応器内の反応、反応器の構
造等により異なるが、例えば反応器へ供給する原料の量
若しくは比率、また必要により温度、圧力、滞留時間、
酸化反応、或いは水添反応等のガス供給源においては、
その供給ガス量もしくはガス濃度等を変更することが挙
げられる。また、運転条件の制御は組成分析値を指標と
したマニュアル制御も可能であるが、自動的に制御する
ために制御ソフト等の組み合わせることにより、より高
度で安定な運転制御が可能となる。
【0018】本発明において中赤外線とは、近近赤外光
(800〜2500nm)と遠赤外光(25000〜1
00000nm)の中間にある波長の光のことである。
従い、波長範囲は2500〜25000nm(4000
〜400cm-1)である領域を利用する分光光度計であ
る。この中赤外線の特徴としてはこの範囲にある波長の
スペクトルは分子の振動に由来し、特に局所的な振動、
例えばカルボニル基やニトロ基などの官能基の振動が特
異的に現れる。また近赤外スペクトルとは異なり、構造
的に極めて類似した構造同士でも、そのスペクトルは全
く一致する事はない方法であり、あらゆる分野で物質の
同定や定量分析等の目的のため、品質管理分析から試験
研究分野まで広く利用されている。
【0019】以下に中赤外線スペクトルで組成分析を行
う原理を中赤外線の吸収スペクトルを例に述べるが、他
の分光法と基本的にはその原理は同じである。すなわ
ち、被測定物質に中赤外線の所定の波長域(通常は上述
の4000〜400cm-1)の光を当て、その吸光度を
測定する。得られたデータから必要な領域(一定部分)
を抽出して解析する。具体的な定量方法(検量線の作成
方法)は、予め各成分の濃度が既知な標準液を測定し各
成分濃度と吸光度との関係から検量線を求めている。ま
た化合物に対応するスペクトルが単独で現れる場合はそ
の吸光度を用い定量用のピークとして用いる事が出来
る。一方、組成液に含まれる成分種が多く存在したり、
また類似化合物が存在する場合(スペクトルが重複す
る)、さらに存在量が少なく単独ピークが現れない場合
には、後述の多変量解析を用いた定量法が有効である。
この場合、スペクトルの安定性を補正する目的で連続ス
ペクトルを波長で1次微分または2次微分する方法がス
ペクトルの前処理として効果が大きく、更に精度の高い
分析が可能となる。
【0020】分析目的とする注目成分の純物質のスペク
トル又はその1次微分もしくは2次微分スペクトルの中
でその成分に独自のピークを特性吸収波長または帰属波
長と呼び、この波長で検量線を作成する。特性吸収波長
が存在しないときには数十から多い時には数千波長を用
いた多変量解析法を用いる。多変量解析法は通常、主成
分回帰法(PCR法)もしくは部分最小二乗法(PLS
法)が一般的であるが、その他ニューラルネットワーク
を用いた方法や遺伝的アルゴリズム法を用いた方法も同
様な解析が可能である。尚、古くから知られる多重回帰
法による定量も可能であるが、複数の成分により重複し
たスペクトルの場合、各波長同士で相互作用が強く(共
線性問題)精度が著しく低下する事があり注意を要す
る。
【0021】上述の主成分回帰法(PCR法)及び部分
最小自乗法(PLS法)等の解析は、FORTRAN或
いはC言語、ビジュアルBASIC等の言語を用いたプ
ログラミングにより計算は可能であるが、近年はピロエ
ット(Infometrix社、米国)やUnscra
mbler(Camo社、ノルウエー)等の市販のソフ
トによる計算も可能となり。研究者が独自にソフトを開
発する必要性がなくなった。尚、本発明ではPLSを中
心に検討を実施し、計算は上述市販ソフトであるピロエ
ット(Pirouette、Ver.2.03)を用い
て行った。
【0022】サンプルから中赤外線を集める方法は一般
的に3種類ある。即ち、光を被測定物質に照射しその反
射光を集める反射法、サンプルの透過光を集める透過
法、そして減衰全反射法(ATR)によるセンサー表面
の極近傍の透過光を集める方法(数ミクロン層を測定)
である。何れの方法も近年、開発され装置に導入は可能
であるが、本発明者は鋭意検討を重ね減衰全反射法(A
TR)が前述の目的のため、最も精度良くまた安定に分
析データが得られる事を発見した。
【0023】反射法は原理的に感度が極めて低く採用は
困難であり、また近赤外線で一般的に用いられる透過法
においては、適用出来る場合もあるが、中赤外線は近赤
外線に比べその感度が、特性吸収波長により10〜10
00倍高く、定量性を得るためには非常に薄いサンプル
の透過光を測定する必要があり、その厚みは数〜数百ミ
クロンと極めて薄く、実際のプロセスの装置に導入する
には現実的ではない。
【0024】中赤外線による分析では他成分を同時にし
かも高速に1分程度で測定出来る。分析した結果をオペ
レータが監視してそれをマニュアルで運転に反映する事
も可能であるがそれだけでなく、分析器を直接制御系シ
ステムと連結し分析結果を反応器の制御に自動で反映さ
せることも可能である。ここで制御とは反応器への原料
フィード量または反応器に供給する原料の比率や反応温
度、圧力、滞留時間といった反応操作条件を変更する事
によって、反応器内もしくは反応器出口の反応物の組成
を一定にする事をさす。すなわちオペレータ−は分析結
果を見て、反応器への原料フィード等をマニュアル操作
で実施出来たり、また自動で行わせる事が可能である。
また、変更する反応条件は、反応器に供給する原料の
量、比率だけでなく、反応器に供給する触媒の量、更に
は反応温度、反応圧力、滞留時間などがある。
【0025】本発明で用いられる反応圧力は特に限定さ
れるものではなく、減圧反応であっても、加圧反応であ
っても、常圧反応であっても本発明を何ら制限するもの
ではない。また、反応温度においても同様に特に限定さ
れるもではなく、摂氏温度以下の反応であっても、高温
反応であっても、常温反応であっても本発明を何ら制限
するものではない。
【0026】上述のように反応圧力、反応温度は本発明
を何ら制限はされず、実際の反応器内もしくは反応器出
口の圧力及び温度に耐えうるプローブ(センサー)を導
入が可能である。しかし、プローブの設置環境は0.0
0001〜100kg/cm 2G、−80〜300℃の
範囲に被測定物が維持されるのが望ましい。この温度範
囲外、圧力範囲外の温度域では中赤外線測定装置のプロ
ーブ等に使用されている材質強度やパッキング用シール
材の耐性上の問題により測定が一般に困難となる。中赤
外線の波長の範囲は2500〜25000nm(400
0〜400cm-1)であるが、スペクトルをとったと
き、対象となる被測定物質によってその物質のもつ特異
的なピークが異なるため、本発明では中赤外線の波長の
範囲には何ら限定するものではない。例えば、アルコー
ル類のOH基の伸縮振動は通常、3400〜3700c
-1あたりに特異的なピークが現れ、またエーテル化合
物ではC−O伸縮振動が1060〜1150cm-1に、
更にケトン化合物ではC=O伸縮振動が、1700〜1
770cm-1あたりに特異的なピークが現れる。
【0027】
【実施例】以下に実施例をあげて、本発明を更に具体的
に説明する。 [PLS誤差の求め方]
【0028】
【式1】 上記式中、PLS推定値は表1中のIR(PLS解析
法)に、ヨウ素滴定値は表1中のヨウ素滴定に該当す
る。
【0029】
【式2】 上記式中、PLS推定値は表2、3中のIR(PLS解
析法)に、LC分析値は表2、3中のLCに該当する。 実施例1 1リットルのステンレス製オートクレーブを使用してク
メンの酸化反応を行った。クメンハイドロパーオキサイ
ド(以下、CHP)を含む(反応開始剤)クメン溶液を
反応器に仕込み、酸素と窒素の混合気体を反応液中に一
定流量でフィードした。反応温度は100℃、反応圧力
は4kg/cm2G、反応液量は300g、初期CHP
濃度は1.1重量%、フィードガス流量は1000ml
/分、フィードガス組成は10%の酸素と90%の窒素
である。
【0030】反応液は1時間おきに反応器下部よりサン
プリングし、ヨウ素滴定法によりCHP濃度を分析し
た。また、反応器内部の液相に減衰全反射型(ATR)
プローブを装着した中赤外線分析計(METTLER
TOLEDO社 ReactIR 1000型)を導入
し、1分おきに中赤外線スペクトルを測定した。CHP
濃度の定量には1150cm-1付近の特異的なピークを
使用し、予め作成した検量線を用いて定量した。
【0031】表1にパーオキサイド類定量の一般的な化
学分析法であるヨウ素滴定法の分析値、及び中赤外線に
より分析されたCHP濃度を示す。また、800〜15
00cm-1の中赤外線領域を部分最小自乗法(PLS
法)による多変量解析法で求めたCHP濃度も示す。中
赤外線のピーク強度から求めたCHP濃度の相対誤差は10
%以下であり、さらにPLS法を適用することにより相
対誤差は7%以下となり、定量精度が向上した。なお、
本実施例ではPLS法における解析では特異的なピーク
を含む領域として800〜1500cm-1を選択してい
るが、特にこの範囲は何ら限定されるものではない。し
かし、選択する領域が広すぎると、ピークが存在しない
領域の情報(ノイズ)を含むために定量精度が落ちた
り、逆に選択範囲が狭すぎると有効な情報が欠如し、定
量精度が落ちる場合がある。
【0032】図1に中赤外線により反応中に連続的に分
析されたCHP濃度を示す。また、図2にPLS法により求
めたCHP濃度も示す。以上により、中赤外線分析計を
用いることにより、CHP濃度を連続的に定量できること
が分かった。 実施例2 実施例1と同様にしてクメン酸化反応を行った。反応温
度は110℃、反応圧力は4kg/cm2G、反応液量
は300g、初期CHP濃度は1.1重量%、フィード
ガス流量は1000ml/分、フィードガス組成は2.
5%の酸素と97.5%の窒素である。
【0033】反応液は1時間おきに反応器下部よりサン
プリングし、液体クロマトグラフィー法(LC法)により微
量の副生物を定量する目的で、ジメチルフェニルカルビ
ノール(DMPC)及びアセトフェノン(AP)の濃度を分析し
た。また、反応器内部の液相に減衰全反射型(ATR)
プローブを装着した中赤外線分析計を実施例1と同様に
挿入し、1分おきに反応中の中赤外線スペクトルを測定
した。800〜1500cm-1の中赤外線領域をPLS
解析し、ジメチルフェニルカルビノール及びアセトフェ
ノンの濃度を求めた。ジメチルフェニルカルビノールの
測定結果を表2に、アセトフェノンの測定結果を表3に
示す。相対誤差はジメチルフェニルカルビノール、アセ
トフェノン共に7%以下であり、定量精度の高い分析法
であることを確認した。また、実施例1と同様にPLS
法における解析では特異的なピークを含む領域として8
00〜1500cm-1を選択しているが、特にこの範囲
は何ら限定されるものではない。しかし、選択する領域
が広すぎると、ピークが存在しない領域の情報(ノイ
ズ)を含むために定量精度が落ちたり、逆に選択範囲が
狭すぎると有効な情報が欠如し、定量精度が落ちる場合
がある。
【0034】図3に中赤外線スペクトルを反応中に連続
的に測定し、PLS解析することにより求めたジメチルフ
ェニルカルビノール濃度を示す。また、図4に同様にし
て求めたアセトフェノン濃度を示す。以上により、中赤
外線分析計を用いることにより、ジメチルフェニルカル
ビノール濃度及びアセトフェノン濃度を連続的に定量で
きることが分かった。
【0035】比較例1 1リットルのステンレス製オートクレーブを使用してク
メンの酸化反応を行った。クメンハイドロパーオキサイ
ド(以下、CHP)を含む(反応開始剤)クメン溶液を
反応器に仕込み、酸素と窒素の混合気体を反応液中に一
定流量でフィードした。反応温度は100℃、反応圧力
は4kg/cm2G、反応液量は300g、初期CHP
濃度は1.1重量%、フィードガス流量は1000ml
/分、フィードガス組成は10%の酸素と90%の窒素
である。
【0036】上記実験において反応器内部の液相に透過
型のプローブを装着した近赤外線分析計を導入し、1分
おきに近赤外線スペクトルを測定した。しかし、反応液
中に存在する気泡(液中に溶解しきれない気体状態の窒
素及び酸素)の影響で、近赤外線が気泡により散乱し、
スペクトルを得る事ができず、定量する事が困難であっ
た。
【0037】比較例2 実施例1と同様にしてクメン酸化反応を行った。反応温
度は110℃、反応圧力は4kg/cm2G、反応液量
は300g、初期CHP濃度は1.1重量%、フィード
ガス流量は1000ml/分、フィードガス組成は2.
5%の酸素と97.5%の窒素である。
【0038】上記実験において、比較例1と同様に反応
器内部の液相に透過型のプローブを装着した近赤外線分
析計を導入し、1分おきに近赤外線スペクトルを測定し
た。しかし、反応液中に存在する気泡(液中に溶解しき
れない気体状態の窒素及び酸素)の影響で、近赤外線が
気泡により散乱し、スペクトルを得る事ができず、定量
する事が困難であった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】本発明により、従来の技術では対応出来
ないリアルタイムのオンライン分析により、反応器内ま
たは反応器出口の組成分析を時間遅れなく行う事により
反応器の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 中赤外線により反応中に連続的に分析された
CHP濃度を示す図である。
【図2】 PLS法により求めたCHP濃度を示す図であ
る。
【図3】 中赤外線スペクトルを反応中に連続的に測定
し、PLS解析することにより求めたジメチルフェニルカ
ルビノール濃度を示す図である。
【図4】 中赤外線スペクトルを反応中に連続的に測定
し、PLS解析することにより求めたアセトフェノン濃度
を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年7月1日(2002.7.1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 反応器の運転制御方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は化学工業における代表的
な装置である反応器の制御方法に関する。対象とする製
品は石油化学製品を中心とする製品群の他、医薬品或い
は農薬品、またそれらの中間体製品をも含む。また上述
は一般に有機合成に基づく反応製品群であるが、本発明
は無機合成(例えば合成ガラスなど)の反応をも対象と
する。また、プロセスは連続反応であっても回分反応で
あっても、本発明は何ら制限を受けない。
【0002】
【従来の技術】従来の反応器の運転管理は所望の反応器
出口の反応物の液組成を維持するために必要応じて、あ
るいは定期的に反応器出口の組成分析を行っていた。し
かしながら、これは直接装置からサンプルを採取して分
析をおこなうために、大きな時間遅れと作業量の増加を
招いていた。時間遅れが発生すると生産は続行している
から、測定結果が規格外であれば製品のロスになった
り、規格外の反応液が次の精製工程に回された場合に
は、例えば蒸留塔の運転条件が一定せず、場合によって
はプラントが不安定になり運転の続行が不可能になる。
また、有機過酸化物のような自己分解性化合物の場合に
は、反応中にその量を規格内に制御する必要があり、何
らかの原因でその量が増加した場合には分解熱により反
応液の温度が上昇し、制御温度範囲を超えると暴走反応
を誘発し、反応器の破裂、最悪の場合には爆発に至る危
険性がある。時間遅れを解消する方法として便宜的に反
応器の温度監視をして、反応状態の変化を目安としこれ
をもって運転管理の目安とする方法が一般的であるが、
温度監視だけでは近年要求されるような高いレベルの運
転は達成出来ない。
【0003】なお、ここでいう高いレベルの運転とは、
管理目標とする反応液の組成と実際の組成のずれをほと
んどなくし、安定に規格内の製品の製造を行ったり、次
工程の精製工程等で例えば蒸留塔の運転が安定する事で
ある。近年は、オンライン分析機器を反応器あるいは反
応器出口に導入し、分析の時間遅れを最小限にして、そ
の分析値から人が判断したり、装置が自動的に判断しな
がら制御が出来るようにされている。
【0004】しかしながら、これらオンライン分析機器
は、例えばガスクロマトグラフィー分析を用いて、サン
プリングを自動で行う方法が普及しているが分析機器が
分析する時間は何ら短縮はされてはおらず、更に迅速な
オンラインのリアルタイム分析が要望されていた。一方
で近年、近赤外線を用いた分析機器による、オンライン
のリアルタイム分析を行う分析も報告され、実用化され
るケースも多くなってきている。しかしながら、その原
理的な欠点により例えば反応液の形態が液とガスの2相
系、または固体と液との2相系である場合は、スペクト
ルを得る方法が透過法であるために、散乱光が強く発生
したり、たとえ測定出来たとしてもスペクトルの強度が
不安定となる現象等により定量精度が著しく悪化する。
【0005】また定量精度においても、近赤外線は中赤
外で起こる吸収の倍音及び結合振動によりよって吸収が
起こるので、中赤外線領域でのスペクトルのピーク数よ
り著しく少なく、従い、得られるスペクトルは非常に重
複したスペクトルとなって現れ、各成分の単独ピークを
得る事は通常はない。それを解決するために、通常は主
成分回帰法や部分最小自乗法といった多変量解析法が利
用されるが、スペクトル的に類似化合物が存在したり、
存在量が少なかったりすると著しく精度が低下する事が
知られている。
【0006】例えば、特開平8−301793号広報に
見られるように近赤外線分析機器を使用して、ベンゼン
とエチレンの合成によりエチルベンゼンを合成する工程
において、リアルタイムに得られる分析値をもとに反応
を制御する方法がある。しかしながら、本法を液体と気
体との2相系の組成物や固体と液体との2相系の反応物
に適用した場合には、上述の原理的な問題により、正確
な分析値を得る事が出来ない。また、均一な液組成物で
あっても同様な原理的な問題で少量しか存在しないよう
な副生物などを精度よく分析する事はできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術では対応出
来ないリアルタイムのオンライン分析により、反応器内
または反応器出口の組成分析を時間遅れなく行う事によ
り反応器の制御を行う方法が求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、通常は研究や品質検
査等に用いられる中赤外線分析機器を反応器内もしくは
反応器内の組成液を外部循環させる方法、もしくは反応
器の出口に直接中赤外線のセンサーを挿入し、吸収スペ
クトルを測定し、上述の近赤外線の問題点を克服し精度
よく組成分析が可能であることを見い出し、本発明を完
成するに至った。
【0009】即ち、本発明の要旨は下記(1)〜(5)
に存する。 (1)反応器の運転制御方法において、反応器内又は反
応器出口の反応物を中赤外線スペクトルで組成分析し、
該分析結果を指標として、反応器出口の組成が予め設定
した組成で一定となるように反応器の運転条件を制御す
ることを特徴とする反応器の運転制御方法。
【0010】(2)反応物が、液−固系又は気−液系で
ある上記(1)に記載の運転制御方法。 (3)反応物が、発泡性を有する反応物である上記
(1)に記載の運転制御方法。 (4)中赤外スペクトルでの組成分析が、減衰全反射法
によるセンサー表面の極近傍の透過光を集める方法によ
り行われている上記(1)〜(3)のいずれかに記載の
運転制御方法。
【0011】(5)反応器出口の反応物の組成が予め設
定した組成で一定となるように反応器の運転条件を制御
する方法が、反応器へ供給する原料の量若しくは比率、
また必要により温度、圧力、滞留時間、酸化反応、或い
は水添反応等のガス供給源においては、その供給ガス量
もしくはガス濃度等を変更し、反応器内又は反応器出口
の反応物の組成を予め設定した組成で一定にすることで
ある上記(1)〜(4)いずれかに記載の運転制御方
法。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の反応器の運転制御方法
は、反応器内又は反応器出口の反応物を中赤外線スペク
トルで組成分析し、該分析結果を指標として、反応器出
口の組成が予め設定した組成で一定となるように反応器
の運転条件を制御することを特徴とする。
【0013】本発明において反応器とは、液相反応、液
−固系の反応、気−液系の反応に使用される反応器を指
す。具体的には回分反応器、連続槽型反応器、半回分反
応器、気液攪拌槽型反応器、気泡塔反応器などが知られ
ており、広く工業的に用いられている。本発明において
は、この反応器内又は反応器出口の反応物を中赤外線ス
ペクトルで組成分析する。より高度な制御をするために
は反応器内の反応物の組成分析が好ましい。また、分析
装置の設置のしやすさという観点からは、反応器出口の
反応物の組成分析が好ましい。
【0014】本発明において「反応物」とは、有機溶媒
或いは無機溶媒、水溶液中における反応により生成する
目的生成物、副生物、場合により未反応の原料等を含有
する反応液である。なお、不均一相液においては本発明
における分析は気体または固体成分の妨害を受けずに、
精度良く液相のみの情報を得る事が可能であるという観
点から、反応物が液−固系又は気−液系である場合に本
発明の反応器の運転制御方法が好ましく、また、同様の
観点から、反応物が発泡性を有する反応物である場合も
好ましい。
【0015】本発明に適用されるプロセス(プラント)
は何ら制約を受けないが、例えば、クメン、フェノー
ル、ビスフェノールA、スチレン及びポリオレフィン、
ポリエステル、ポリスチレン等の大規模化学プロセスか
ら医農薬中間体、農薬等の小規模から大規模の化学プロ
セスにも適用できる。また、化学プロセス以外にも適用
可能であり、例えば医薬やバイオ或いは無機、食品分野
等幅広い分野において反応器を有するプロセスに適用可
能である。
【0016】本発明においては反応物を中赤外線スペク
トルで組成分析し、目的の反応物量、副生物量等の分析
結果を指標として、反応器出口の組成が予め設定した組
成で一定となるように反応器の運転条件を制御する。な
お「予め設定した組成」とは、製品の規格値を満足する
組成、後工程の精製系等に供給される目標の組成、或い
は反応物が自己分解性等である場合は、暴走反応を抑制
出来る組成であり、反応器出口の組成が予め設定した設
定した組成となるように分析結果を指標として運転条件
を制御する。反応器出口の組成が一定でない場合は、製
品組成が規格外となったり後工程の精製系の能力が得ら
れず、生産レートが低下したり製品規格を満足しない製
品が得られる事になる。また反応が暴走する組成に近づ
いていった場合には、緊急処置により運転を停止した
り、最悪の場合は反応器が爆発し、火災を誘発する危険
性がある。
【0017】本発明において「分析結果を指標として」
とは、分析結果に基づいてということであり、分析結果
と予め設定した組成とが一致するように運転条件を制御
する。運転条件の制御は、反応器内の反応、反応器の構
造等により異なるが、例えば反応器へ供給する原料の量
若しくは比率、また必要により温度、圧力、滞留時間、
酸化反応、或いは水添反応等のガス供給源においては、
その供給ガス量もしくはガス濃度等を変更することが挙
げられる。また、運転条件の制御は組成分析値を指標と
したマニュアル制御も可能であるが、自動的に制御する
ために制御ソフト等の組み合わせることにより、より高
度で安定な運転制御が可能となる。
【0018】本発明において中赤外線とは、近近赤外光
(800〜2500nm)と遠赤外光(25000〜1
00000nm)の中間にある波長の光のことである。
従い、波長範囲は2500〜25000nm(4000
〜400cm-1)である領域を利用する分光光度計であ
る。この中赤外線の特徴としてはこの範囲にある波長の
スペクトルは分子の振動に由来し、特に局所的な振動、
例えばカルボニル基やニトロ基などの官能基の振動が特
異的に現れる。また近赤外スペクトルとは異なり、構造
的に極めて類似した構造同士でも、そのスペクトルは全
く一致する事はない方法であり、あらゆる分野で物質の
同定や定量分析等の目的のため、品質管理分析から試験
研究分野まで広く利用されている。
【0019】以下に中赤外線スペクトルで組成分析を行
う原理を中赤外線の吸収スペクトルを例に述べるが、他
の分光法と基本的にはその原理は同じである。すなわ
ち、被測定物質に中赤外線の所定の波長域(通常は上述
の4000〜400cm-1)の光を当て、その吸光度を
測定する。得られたデータから必要な領域(一定部分)
を抽出して解析する。具体的な定量方法(検量線の作成
方法)は、予め各成分の濃度が既知な標準液を測定し各
成分濃度と吸光度との関係から検量線を求めている。ま
た化合物に対応するスペクトルが単独で現れる場合はそ
の吸光度を用い定量用のピークとして用いる事が出来
る。一方、組成液に含まれる成分種が多く存在したり、
また類似化合物が存在する場合(スペクトルが重複す
る)、さらに存在量が少なく単独ピークが現れない場合
には、後述の多変量解析を用いた定量法が有効である。
この場合、スペクトルの安定性を補正する目的で連続ス
ペクトルを波長で1次微分または2次微分する方法がス
ペクトルの前処理として効果が大きく、更に精度の高い
分析が可能となる。
【0020】分析目的とする注目成分の純物質のスペク
トル又はその1次微分もしくは2次微分スペクトルの中
でその成分に独自のピークを特性吸収波長または帰属波
長と呼び、この波長で検量線を作成する。特性吸収波長
が存在しないときには数十から多い時には数千波長を用
いた多変量解析法を用いる。多変量解析法は通常、主成
分回帰法(PCR法)もしくは部分最小二乗法(PLS
法)が一般的であるが、その他ニューラルネットワーク
を用いた方法や遺伝的アルゴリズム法を用いた方法も同
様な解析が可能である。尚、古くから知られる多重回帰
法による定量も可能であるが、複数の成分により重複し
たスペクトルの場合、各波長同士で相互作用が強く(共
線性問題)精度が著しく低下する事があり注意を要す
る。
【0021】上述の主成分回帰法(PCR法)及び部分
最小自乗法(PLS法)等の解析は、FORTRAN或
いはC言語、ビジュアルBASIC等の言語を用いたプ
ログラミングにより計算は可能であるが、近年はピロエ
ット(Infometrix社、米国)やUnscra
mbler(Camo社、ノルウエー)等の市販のソフ
トによる計算も可能となり。研究者が独自にソフトを開
発する必要性がなくなった。尚、本発明ではPLSを中
心に検討を実施し、計算は上述市販ソフトであるピロエ
ット(Pirouette、Ver.2.03)を用い
て行った。
【0022】サンプルから中赤外線を集める方法は一般
的に3種類ある。即ち、光を被測定物質に照射しその反
射光を集める反射法、サンプルの透過光を集める透過
法、そして減衰全反射法(ATR)によるセンサー表面
の極近傍の透過光を集める方法(数ミクロン層を測定)
である。何れの方法も近年、開発され装置に導入は可能
であるが、本発明者は鋭意検討を重ね減衰全反射法(A
TR)が前述の目的のため、最も精度良くまた安定に分
析データが得られる事を発見した。
【0023】反射法は原理的に感度が極めて低く採用は
困難であり、また近赤外線で一般的に用いられる透過法
においては、適用出来る場合もあるが、中赤外線は近赤
外線に比べその感度が、特性吸収波長により10〜10
00倍高く、定量性を得るためには非常に薄いサンプル
の透過光を測定する必要があり、その厚みは数〜数百ミ
クロンと極めて薄く、実際のプロセスの装置に導入する
には現実的ではない。
【0024】中赤外線による分析では他成分を同時にし
かも高速に1分程度で測定出来る。分析した結果をオペ
レータが監視してそれをマニュアルで運転に反映する事
も可能であるがそれだけでなく、分析器を直接制御系シ
ステムと連結し分析結果を反応器の制御に自動で反映さ
せることも可能である。ここで制御とは反応器への原料
フィード量または反応器に供給する原料の比率や反応温
度、圧力、滞留時間といった反応操作条件を変更する事
によって、反応器内もしくは反応器出口の反応物の組成
を一定にする事をさす。すなわちオペレータ−は分析結
果を見て、反応器への原料フィード等をマニュアル操作
で実施出来たり、また自動で行わせる事が可能である。
また、変更する反応条件は、反応器に供給する原料の
量、比率だけでなく、反応器に供給する触媒の量、更に
は反応温度、反応圧力、滞留時間などがある。
【0025】本発明で用いられる反応圧力は特に限定さ
れるものではなく、減圧反応であっても、加圧反応であ
っても、常圧反応であっても本発明を何ら制限するもの
ではない。また、反応温度においても同様に特に限定さ
れるもではなく、摂氏温度以下の反応であっても、高温
反応であっても、常温反応であっても本発明を何ら制限
するものではない。
【0026】上述のように反応圧力、反応温度は本発明
を何ら制限はされず、実際の反応器内もしくは反応器出
口の圧力及び温度に耐えうるプローブ(センサー)を導
入が可能である。しかし、プローブの設置環境は0.0
0001〜100kg/cm 2G、−80〜300℃の
範囲に被測定物が維持されるのが望ましい。この温度範
囲外、圧力範囲外の温度域では中赤外線測定装置のプロ
ーブ等に使用されている材質強度やパッキング用シール
材の耐性上の問題により測定が一般に困難となる。中赤
外線の波長の範囲は2500〜25000nm(400
0〜400cm-1)であるが、スペクトルをとったと
き、対象となる被測定物質によってその物質のもつ特異
的なピークが異なるため、本発明では中赤外線の波長の
範囲には何ら限定するものではない。例えば、アルコー
ル類のOH基の伸縮振動は通常、3400〜3700c
-1あたりに特異的なピークが現れ、またエーテル化合
物ではC−O伸縮振動が1060〜1150cm-1に、
更にケトン化合物ではC=O伸縮振動が、1700〜1
770cm-1あたりに特異的なピークが現れる。
【0027】
【実施例】以下に実施例をあげて、本発明を更に具体的
に説明する。 [PLS誤差の求め方]
【0028】
【式1】 上記式中、PLS推定値は表1中のIR(PLS解析
法)に、ヨウ素滴定値は表1中のヨウ素滴定に該当す
る。
【0029】
【式2】 上記式中、PLS推定値は表2、3中のIR(PLS解
析法)に、LC分析値は表2、3中のLCに該当する。 実施例1 1リットルのステンレス製オートクレーブを使用してク
メンの酸化反応を行った。クメンハイドロパーオキサイ
ド(以下、CHP)を含む(反応開始剤)クメン溶液を
反応器に仕込み、酸素と窒素の混合気体を反応液中に一
定流量でフィードした。反応温度は100℃、反応圧力
は4kg/cm2G、反応液量は300g、初期CHP
濃度は1.1重量%、フィードガス流量は1000ml
/分、フィードガス組成は10%の酸素と90%の窒素
である。
【0030】反応液は1時間おきに反応器下部よりサン
プリングし、ヨウ素滴定法によりCHP濃度を分析し
た。また、反応器内部の液相に減衰全反射型(ATR)
プローブを装着した中赤外線分析計(METTLER
TOLEDO社 ReactIR 1000型)を導入
し、1分おきに中赤外線スペクトルを測定した。CHP
濃度の定量には1150cm-1付近の特異的なピークを
使用し、予め作成した検量線を用いて定量した。
【0031】表1にパーオキサイド類定量の一般的な化
学分析法であるヨウ素滴定法の分析値、及び中赤外線に
より分析されたCHP濃度を示す。また、800〜15
00cm-1の中赤外線領域を部分最小自乗法(PLS
法)による多変量解析法で求めたCHP濃度も示す。中
赤外線のピーク強度から求めたCHP濃度の相対誤差は10
%以下であり、さらにPLS法を適用することにより相
対誤差は7%以下となり、定量精度が向上した。なお、
本実施例ではPLS法における解析では特異的なピーク
を含む領域として800〜1500cm-1を選択してい
るが、特にこの範囲は何ら限定されるものではない。し
かし、選択する領域が広すぎると、ピークが存在しない
領域の情報(ノイズ)を含むために定量精度が落ちた
り、逆に選択範囲が狭すぎると有効な情報が欠如し、定
量精度が落ちる場合がある。
【0032】図1に中赤外線により反応中に連続的に分
析されたCHP濃度を示す。また、図2にPLS法により求
めたCHP濃度も示す。以上により、中赤外線分析計を
用いることにより、CHP濃度を連続的に定量できること
が分かった。 実施例2 実施例1と同様にしてクメン酸化反応を行った。反応温
度は110℃、反応圧力は4kg/cm2G、反応液量
は300g、初期CHP濃度は1.1重量%、フィード
ガス流量は1000ml/分、フィードガス組成は2.
5%の酸素と97.5%の窒素である。
【0033】反応液は1時間おきに反応器下部よりサン
プリングし、液体クロマトグラフィー法(LC法)により微
量の副生物を定量する目的で、ジメチルフェニルカルビ
ノール(DMPC)及びアセトフェノン(AP)の濃度を分析し
た。また、反応器内部の液相に減衰全反射型(ATR)
プローブを装着した中赤外線分析計を実施例1と同様に
挿入し、1分おきに反応中の中赤外線スペクトルを測定
した。800〜1500cm-1の中赤外線領域をPLS
解析し、ジメチルフェニルカルビノール及びアセトフェ
ノンの濃度を求めた。ジメチルフェニルカルビノールの
測定結果を表2に、アセトフェノンの測定結果を表3に
示す。相対誤差はジメチルフェニルカルビノール、アセ
トフェノン共に7%以下であり、定量精度の高い分析法
であることを確認した。また、実施例1と同様にPLS
法における解析では特異的なピークを含む領域として8
00〜1500cm-1を選択しているが、特にこの範囲
は何ら限定されるものではない。しかし、選択する領域
が広すぎると、ピークが存在しない領域の情報(ノイ
ズ)を含むために定量精度が落ちたり、逆に選択範囲が
狭すぎると有効な情報が欠如し、定量精度が落ちる場合
がある。
【0034】図3に中赤外線スペクトルを反応中に連続
的に測定し、PLS解析することにより求めたジメチルフ
ェニルカルビノール濃度を示す。また、図4に同様にし
て求めたアセトフェノン濃度を示す。以上により、中赤
外線分析計を用いることにより、ジメチルフェニルカル
ビノール濃度及びアセトフェノン濃度を連続的に定量で
きることが分かった。
【0035】比較例1 1リットルのステンレス製オートクレーブを使用してク
メンの酸化反応を行った。クメンハイドロパーオキサイ
ド(以下、CHP)を含む(反応開始剤)クメン溶液を
反応器に仕込み、酸素と窒素の混合気体を反応液中に一
定流量でフィードした。反応温度は100℃、反応圧力
は4kg/cm2G、反応液量は300g、初期CHP
濃度は1.1重量%、フィードガス流量は1000ml
/分、フィードガス組成は10%の酸素と90%の窒素
である。
【0036】上記実験において反応器内部の液相に透過
型のプローブを装着した近赤外線分析計を導入し、1分
おきに近赤外線スペクトルを測定した。しかし、反応液
中に存在する気泡(液中に溶解しきれない気体状態の窒
素及び酸素)の影響で、近赤外線が気泡により散乱し、
スペクトルを得る事ができず、定量する事が困難であっ
た。
【0037】比較例2 実施例1と同様にしてクメン酸化反応を行った。反応温
度は110℃、反応圧力は4kg/cm2G、反応液量
は300g、初期CHP濃度は1.1重量%、フィード
ガス流量は1000ml/分、フィードガス組成は2.
5%の酸素と97.5%の窒素である。
【0038】上記実験において、比較例1と同様に反応
器内部の液相に透過型のプローブを装着した近赤外線分
析計を導入し、1分おきに近赤外線スペクトルを測定し
た。しかし、反応液中に存在する気泡(液中に溶解しき
れない気体状態の窒素及び酸素)の影響で、近赤外線が
気泡により散乱し、スペクトルを得る事ができず、定量
する事が困難であった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】本発明により、従来の技術では対応出来
ないリアルタイムのオンライン分析により、反応器内ま
たは反応器出口の組成分析を時間遅れなく行う事により
反応器の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 中赤外線により反応中に連続的に分析された
CHP濃度を示す図である。
【図2】 PLS法により求めたCHP濃度を示す図であ
る。
【図3】 中赤外線スペクトルを反応中に連続的に測定
し、PLS解析することにより求めたジメチルフェニルカ
ルビノール濃度を示す図である。
【図4】 中赤外線スペクトルを反応中に連続的に測定
し、PLS解析することにより求めたアセトフェノン濃度
を示す図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 2G059 AA01 BB01 BB04 CC01 CC12 EE01 EE02 EE12 FF06 HH01 HH06 MM01 MM02 4G075 AA62 AA65 BA10 BD13 BD16 EB01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応器の運転制御方法において、反応器
    内又は反応器出口の反応物を中赤外線スペクトルで組成
    分析し、該分析結果を指標として、反応器出口の組成が
    予め設定した組成で一定となるように反応器の運転条件
    を制御することを特徴とする反応器の運転制御方法。
  2. 【請求項2】 反応物が、液−固系又は気−液系である
    請求項1に記載の運転制御方法。
  3. 【請求項3】 反応物が、発泡性を有する反応物である
    請求項1に記載の運転制御方法。
  4. 【請求項4】 中赤外スペクトルでの組成分析が、減衰
    全反射法によるセンサー表面の極近傍の透過光を集める
    方法により行われている請求項1〜3のいずれかに記載
    の運転制御方法。
  5. 【請求項5】 反応器出口の反応物の組成が予め設定し
    た組成で一定となるように反応器の運転条件を制御する
    方法が、反応器へ供給する原料の量若しくは比率、また
    必要により温度、圧力、滞留時間、酸化反応、或いは水
    添反応等のガス供給源においては、その供給ガス量もし
    くはガス濃度等を変更し、反応器内又は反応器出口の反
    応物の組成を予め設定した組成で一定にすることである
    請求項1〜4いずれかに記載の運転制御方法。
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