JP2003339870A - バイトブロック - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 気管内挿管チューブの閉塞・損傷を防止する
だけでなく、患者の口腔内の観察を容易にし、さらに上
下口唇、口腔内粘膜および舌の潰瘍形成を防止する効果
に優れたバイトブロックを提供することを目的とする。 【解決手段】 左右に大臼歯で噛む左右一対の咬合部２
（ａ）、２（ｂ）およびこれらを連結するブリッジ６を
備えたバイトブロックであって、前記一対の咬合部の天
面３が患者の左右の上顎大臼歯に接触し、当該咬合部の
底面が左右の下顎大臼歯に接触し、前記ブリッジは気管
内挿管チューブが固定出来るようにアーチ状に成型され
ていることを特徴とするバイトブロック。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、患者の肺呼吸を補
助する気管内挿管チューブを用いる際に、口腔内に挿管
して気管内挿管チューブの保護するバイトブロックに関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】全身麻酔下の手術時や自発呼吸困難な重
症患者の治療の際には患者の気管に気管内チューブを挿
入し、人工呼吸器を用いて呼吸を確保しているが、挿入
した気管内チューブの固定時にはチューブの位置ずれや
患者がチューブを噛んでチューブが閉塞したりチューブ
が損傷しないようにバイトブロックが使用されている。

【０００３】従来のバイトブロックは、図５および図６
に示すようにゴム製の筒状本体の片末端付近にフランジ
が形成された形状のものが広く普及しているが、筒状本
体２１の口腔内先端２２およびフランジ２３が口腔内粘
膜や舌あるいは上下口唇を圧迫し、潰瘍を形成してしま
うものであった。これらの発症は、患者の疼痛や易感染
状態をつくるだけでなく、顔貌に変化をきたし、患者の
みでなく家族にとっても不快な印象を与えることが多
く、患者および家族の精神的な負担となっていた。

【０００４】特開平８−４７５３５号公報には、気管内
挿管チューブの位置ずれを防止する手段を備えたバイト
ブロックが開示されているが、フランジを口唇の表裏に
位置させ、フランジが常に口唇と口唇裏の粘膜へ強く接
触する構造となっているので、長時間装着した場合には
潰瘍を形成してしまうおそれがある。

【０００５】特開２００１−１９０６７５号公報には、
固定しやすいバイトブロックが開示されているが、従来
のバイトブロックのフランジと同様の鍔Ｃを備えてお
り、当該鍔Ｃが口唇と接触し、筒Ａの口腔内先端が舌と
接触する構造であり、長時間の使用における潰瘍形成の
問題については解決するに至っていない。

【０００６】特表平９−５１２４５７号公報には、フェ
ースプレートとヘッドバンドおよびチューブ保持ブロッ
クで構成されるバイトブロックが開示されている。しか
しながら、フェースプレートがヘッドバンドの締め付け
によって患者の口唇全体または一部と接触し圧迫される
構造であり、当該バイトブロックを長時間に亘って使用
する場合における潰瘍形成の問題については解決するに
至っていない。

【０００７】さらに米国特許第５３８６８２１号には、
左右のくさび形状部分がＵ字状の峰でつながったバイト
ブロックが開示されている。くさび形状部分を大臼歯で
噛んで固定し、大臼歯以外の上顎歯列を囲うようなＵ字
状の部分を上顎前歯の前に位置させることでバイトブロ
ックの口腔内や咽頭への滑り込み防止の効果について述
べている。しかしながらＵ字状の部分上部が歯肉あるい
は上口唇粘膜と接触する構造であるので、長時間使用し
た場合には口腔内粘膜や上下口唇の潰瘍を形成してしま
うおそれがある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題点に鑑みてなされたものであって、気管内チューブ
の閉塞・損傷を防止するだけでなく、さらに気管内チュ
ーブおよびバイトブロックとの長時間の接触による口腔
内粘膜、舌および口唇の潰瘍発生の防止、および形成さ
れた潰瘍の治癒または改善を達成することを目的とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
（１）から（３）の本発明により達成される。 （１）気管内挿管チューブを口腔内に固定するのに用い
られるバイトブロックであって、前記バイトブロックは
一対の咬合部およびこれらを連結するブリッジで構成さ
れており、前記一対の咬合部は、各々の咬合部天面が患
者の左右の上顎大臼歯に接触し、各々の咬合部底面が左
右の下顎大臼歯に接触し、前記ブリッジは、気管内挿管
チューブを固定出来るようにアーチ状に成型されている
ことを特徴とするバイトブロック。

【００１０】（２）前記咬合部の硬度は、デュロメータ
硬さＡ６０からＤ９０である上記（１）に記載のバイト
ブロック。 （３）前記バイトブロックの少なくとも前記一対の咬合
部天面に滑り止め加工が施されている上記（１）または
（２）に記載のバイトブロック。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明のバイトブロックを
添付図面に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明の
バイトブロックの実施例を示す全体正面図である。図２
は、図１に示すバイトブロックを上から見た図であり、
図３は、図１に示すバイトブロックの側面図である。ま
た、図４は、図１に示すバイトブロックを口腔内へ装着
した状態を示した図である。

【００１２】図１に示すように本発明のバイトブロック
１は、左右一対の咬合部２（ａ），２（ｂ）がブリッジ
６で連結されている。咬合部２（２（ａ）および２
（ｂ））は、装着した際に十分な開口が得られるような
厚さＢを有している。具体的には５〜２０ｍｍが好適で
あるが、咬合時には前歯開口幅が８〜１７ｍｍになるの
が望ましく、装着時の安定性を保つために左右同一の高
さであることが望ましい。

【００１３】また、咬合部２の幅Ａは大臼歯の幅と同じ
か、または大臼歯の幅の１２０％以内が望ましく、咬合
部側面５および周縁部９が歯肉と接触せず、頬粘膜との
接触が最小となる大きさに成型されるのであればよく、
具体的には５〜１５ｍｍが好ましく、さらに日本人の成
人の標準である８〜１３ｍｍがより好ましい。

【００１４】咬合部２の長さＤは、大臼歯２本の長さと
同じかまたは大臼歯の２本の長さの１２０％以内の１５
ｍｍ〜３０ｍｍの範囲であれば好ましく、具体的には日
本人の成人の標準である大臼歯２本の長さ１９〜２５ｍ
ｍがより好ましい。バイトブロック全体の幅Ｃは、歯列
弓の幅と同等の５０〜７５ｍｍの範囲が好ましく、日本
人の成人の標準である約６４ｍｍが好適である。

【００１５】さらに咬合部天面３および底面４は、大臼
歯で噛んで固定される様にフラットな形状であるが、バ
イトブロックの位置ずれを防止するための滑り止め加工
７を施しても良い。滑り止め加工７は、凹凸を施した形
状が望ましいが、凹凸の大きさや形状は限定されず、バ
イトブロックが左右前後に移動しにくい形状に加工され
ていれば良い。また、天面３だけでなく、底面４にも滑
り止め加工が施されていても良い。

【００１６】ブリッジ６は、口蓋粘膜に接触しない全高
Ｅを有し、またブリッジ傾斜部が歯肉に接触しない角度
で成型されており、気管内挿管チューブが固定できる空
間を設けるようにアーチ状に成型されている。全高Ｅは
大臼歯に装着した際にブリッジ６が上顎に接触しない高
さが好ましく、具体的には１５〜２５ｍｍが好ましく、
より具体的には、１７〜２０ｍｍが好ましい。またブリ
ッジ６には、紐あるいは糸などを通す穴１１を設けて、
穴１１を通した紐を気管内挿管チューブに縛って固定し
たり、穴を通した紐などを口腔外へ出してバイトブロッ
クが装着されていることを確認するための目印とするこ
とも可能である。口腔内粘膜や舌への圧迫を最小限にす
るため、咬合部２、咬合部側面５およびブリッジ６の周
縁部８，９，１０はすべて曲面で形成されていることが
望ましい。

【００１７】バイトブロック本体１の材料としては、プ
ラスチックやエラストマーなどの合成樹脂を用いること
ができ、顎の力で容易に破損しない強度を有するものが
望ましい。また咬合部天面３および咬合部底面４は歯を
傷つけないように大臼歯より柔らかな材料とすることが
好ましい。具体的には、咬合部２の硬度は、デュロメー
タ硬さＡ６０〜デュロメータ硬さＤ９０であることが好
ましい。硬さは、ＪＩＳＫ ７２１５に準拠し、好まし
い材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ
ウレタン、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラ
ストマー、スチレン系エラストマー、繊維強化プラスチ
ックなどが挙げられる。また一部が金属で形成されてい
ても良く、例えば、咬合部以外は金属製ブリッジで連結
されていても良い。さらに、咬合部２は土台中央部を金
属の様な硬度のある素材とし、周囲をゴムなど軟性素材
で覆うことでもよく、この場合は歯肉に直接使用するこ
とが可能となる。

【００１８】本発明のバイトブロックは、基本的に上下
の大臼歯で咬合部２（ａ），２（ｂ）を噛む位置に装着
して使用する。紐通し穴１１に紐または糸を通し、気管
内挿管チューブに縛りつけて固定するか、紐通し穴１１
を通した紐または糸を口腔外へ垂らすことによって、バ
イトブロックが装着されていることを確認できる。咬合
部２およびブリッジ６によって形成された空間に気管内
挿管チューブを位置させて固定する。

【００１９】以下に具体的実施例を示す。

【実施例１】全幅Ｃの長さが６４ｍｍ、咬合部の厚さＢ
が１３．０ｍｍ、咬合部の幅Ａが１３．１ｍｍ、咬合部
の長さＤが２５．０ｍｍ、全高Ｅが２０．０ｍｍのポリ
エチレン製（デュロメータ硬さＤ６５）のバイトブロッ
クを成人男女の患者３２名の口腔内の大臼歯に挿入・固
定して、呼吸用のチューブを気管に挿入してから抜去す
るまで８時間毎に口腔内の様子を観察した。その結果２
６人の患者の口腔内粘膜および舌表面には潰瘍の発生は
全く見られなかった。また、患者が気管内挿管チューブ
を咬合して閉塞することは全員とも無かった。なお、バ
イトブロック装着期間は当日抜去から最長３７日間であ
った。

【００２０】

【実施例２】従来のバイトブロック装着にて、発赤、出
血、潰瘍などの発生が見られた男女の患者２１名を実施
例１と同様のバイトブロックへ交換・装着したところ６
時間からから８日間経過後には１２名の患者に改善効果
が見られた。

【００２１】

【比較例】成人男女２７名の患者に気管内チューブを気
管に挿入した後、図５および図６に示す従来のバイトブ
ロックを前記チューブの後端から挿嵌して口腔内の前歯
に固定した。４時間以上２７時間未満の時間内におい
て、２１名の患者の口唇または舌に発赤・出血・潰瘍な
どの症状の出現が観察された。

【００２２】以上、本発明のバイトブロックを図示の実
施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定され
るものではない。

【００２３】

【発明の効果】以上述べたごとく、本発明のバイトブロ
ックによれば、気管内挿管チューブの損傷防止効果だけ
でなく、前歯から開口されるため口腔内の観察が容易で
あり、長時間に亘ってバイトブロックを使用する場合に
も、患者の口腔内粘膜、舌および口唇の潰瘍発生を防止
する効果、または形成された潰瘍を治癒または改善する
効果を得ることができ、患者の肉体的および精神的負担
を軽減し、さらに患者の家族の精神的負担を軽減すると
共に、感染予防の為の抗生剤投与の機会を減らし医療経
済性に寄与できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明のバイトブロックの実施例を示
す全体正面図である。

【図２】図２は、図１に示すバイトブロックを上から見
た図である。

【図３】図３は、図１に示すバイトブロックの側面図で
ある。

【図４】図４は、図１に示すバイトブロックを口腔内へ
装着した状態を示した図である。

【図５】図５は、従来のバイトブロックを口腔内に装着
した図である。

【図６】図６は、従来のバイトブロックを口腔内に装着
した断面図である。

【符号の説明】

１ バイトブロック本体 ２ 咬合部 ３ 咬合部天面 ４ 咬合部底面 ５ 咬合部側面 ６ ブリッジ ７ 咬合部天面の滑り止め ８ ブリッジ天面周縁部 ９ 咬合部天面周縁部 １０ 咬合部底面周縁部 １１ 紐通し穴 Ａ 咬合部幅 Ｂ 咬合部高さ Ｃ バイトブロック幅 Ｄ 咬合部長さ Ｅ バイトブロック全高 ２１ 筒状本体（従来のバイトブロック） ２２ 筒状本体先端（従来のバイトブロック） ２３ フランジ（従来のバイトブロック） ２４ 気管内チューブ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 気管内挿管チューブを口腔内に固定する
   のに用いられるバイトブロックであって、 前記バイトブロックは、一対の咬合部およびこれらを連
   結するブリッジで構成されており、 前記一対の咬合部は、各々の咬合部天面が患者の左右の
   上顎大臼歯に接触し、各々の咬合部底面が左右の下顎大
   臼歯に接触し、 前記ブリッジは、気管内挿管チューブを固定出来るよう
   にアーチ状に成型されていることを特徴とするバイトブ
   ロック。
2. 【請求項２】 前記咬合部の硬度は、デュロメータ硬さ
   Ａ６０からＤ９０である請求項１に記載のバイトブロッ
   ク。
3. 【請求項３】 前記バイトブロックの少なくとも前記一
   対の咬合部天面に滑り止め加工が施されている請求項１
   または２に記載のバイトブロック。