JP2003311505A - サーメット工具及びサーメット工具の摩耗識別方法 - Google Patents

サーメット工具及びサーメット工具の摩耗識別方法

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JP2003311505A
JP2003311505A JP2003092268A JP2003092268A JP2003311505A JP 2003311505 A JP2003311505 A JP 2003311505A JP 2003092268 A JP2003092268 A JP 2003092268A JP 2003092268 A JP2003092268 A JP 2003092268A JP 2003311505 A JP2003311505 A JP 2003311505A
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coating layer
cermet
surface coating
tool
component
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JP2003092268A
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Masaru Matsubara
優 松原
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摩耗部と非摩耗部との目視による判別を容易
に行うことができ、ひいては工具の寿命到来時期等を適
切に判定できるサーメット工具を提供する。 【解決手段】 サーメット工具1は、サーメット焼結体
の表面に表面被覆層を形成した構造を有し、ISZ87
21に規定された明度において、表面被覆層の外観明度
をVS、彩度をCSとしたときに、VS が6以上及びCS
が4以上の少なくともいずれかを満たし、かつ、該表面
被覆層は、その外観が、実質的に無彩色、又はJISZ
8721に規定された色相環上にて、5PBから5RP
を経て5Yに至る色相範囲に属する有彩色を呈すること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、サーメット工具
及びその摩耗識別方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】硬質相がTiと、Ti以外の(4a,5
a,6a)族元素成分(V、Cr、Zr、Nb、Mo、
Hf、Ta及びW)との炭窒化物からなり、この硬質相
がNi及び/又はCoを主体とする結合金属相で結合さ
れたサーメット焼結体は、旧来汎用されてきた超硬合金
に比べて、耐塑性変形性等に優れることから切削工具の
主流となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記サーメット焼結体
は、一般に外観が黒に近い色調を呈している。そのた
め、工具として使用するに伴い摩耗が進行しても、摩耗
した部分と、その周囲の未摩耗の部分とを目視判別する
のが難しい場合がある。そのため、工具寿命が既に尽き
ているのにそのまま加工を続行して被削物を損傷させた
り、逆に、まだ十分使えるのに寿命と判断して工具交換
してしまうなどの問題を生ずることがある。
【0004】本発明の課題は、摩耗部と非摩耗部との目
視による判別を容易に行うことができ、ひいては工具の
寿命到来時期等を適切に判定できるサーメット工具と、
サーメット工具の摩耗識別方法とを提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記課題
を解決するために本発明のサーメット工具の第一は、サ
ーメット焼結体の表面に表面被覆層を形成した構造を有
し、JISZ8721に規定された明度において、表面
被覆層の外観明度をVS、彩度をCSとしたときに、VS
が6以上及びCSが4以上の少なくともいずれかを満た
し、かつ、該表面被覆層は、その外観が、JISZ87
21に規定された色相環上にて、5PBから5RPを経
て5Yに至る色相範囲に属する有彩色を呈することを特
徴とする。
【0006】本発明のサーメット工具の第一は、サーメ
ット焼結体の表面に表面被覆層を形成するとともに、J
ISZ8721に規定された明度において、その表面被
覆層の外観明度をVS、彩度をCSとしたときに、VS が
6以上及びCSが4以上の少なくともいずれかを満た
し、かつ、表面被覆層の外観が、JISZ8721に規
定された色相環上にて、5PBから5RPを経て5Yに
至る色相範囲に属する有彩色を呈するものとした。サー
メット工具においては刃先(コーナー部)に摩耗が進行
すると、その部分が黒っぽい色(例えばVsが4〜1、
CsがN〜3に相当する)に変色する。そこで、本発明
のサーメット工具の第一では表面被覆層の外観明度およ
び彩度を上記の値に調整することで、摩耗部と非摩耗部
とを明度あるいは色彩の違いに基づいて、目視により容
易に識別することができる。その結果、使用済工具の判
別や工具寿命の到来確認等を簡単に行うことができるよ
うになる。また、表面被覆層の明度が使用済コーナー部
のそれとほぼ同程度であっても、前述の通り使用済コー
ナー部の彩度が3以下となるので、例えば、この場合は
表面被覆層の彩度が4以上となっていることで、彩度の
差によって使用済コーナー部の識別が可能となる。
【0007】表面被覆層の外観明度Vsが6未満、ある
いは彩度Csが4未満になると、サーメット工具の摩耗
部(例えば使用済コーナー部)と非摩耗部とを目視によ
り識別することが困難になる。なお、上記Vsは望まし
くは7以上、同じくCsは5以上とすることで、摩耗部
と非摩耗部との識別をさらに容易に行うことができる。
【0008】また、本発明のサーメット工具の第二は、
サーメット焼結体の表面に表面被覆層を形成した構造を
有し、JISZ8721に規定された明度において、表
面被覆層の外観明度をVSとしたとき、該表面被覆層の
外観明度VS が6以上を満たし、かつ、その外観が実質
的に無彩色を呈することを特徴とする。
【0009】本発明のサーメット工具の第二は、サーメ
ット焼結体の表面に表面被覆層を形成するとともに、J
ISZ8721に規定された明度において、その表面被
覆層の外観明度VS が6以上を満たし、かつ、表面被覆
層の外観が実質的に無彩色を呈するものとした。サーメ
ット工具においては刃先(コーナー部)に摩耗が進行す
ると、その部分が黒っぽい色(例えばVsが4〜1、C
sがN〜3に相当する)に変色する。そこで、本発明の
サーメット工具の第二では、表面被覆層の外観明度を上
記の値に調整することで、摩耗部と非摩耗部とを明度の
違いに基づいて、目視により容易に識別することができ
る。その結果、使用済工具の判別や工具寿命の到来確認
等を簡単に行うことができるようになる。なお、ここで
いう「実質的に無彩色」とは、JISZ8721に規定
された彩度Csが1以下の色彩をいう。
【0010】表面被覆層の外観明度Vsが6未満になる
と、サーメット工具の摩耗部(例えば使用済コーナー
部)と非摩耗部とを目視により識別することが困難にな
る。なお、上記Vsは望ましくは7以上とすることで、
摩耗部と非摩耗部との識別をさらに容易に行うことがで
きる。
【0011】また、本発明のサーメット工具の摩耗識別
方法は、上記本発明のサーメット工具を用いて被削物の
加工を行ったときの、該サーメット工具の摩耗部と非摩
耗部とを、明度あるいは色彩の違いに基づいて識別する
ことを特徴とする。
【0012】サーメットは、Ni、又はNi及びCo
(以下、結合金属相形成成分という)を主体に構成され
る結合金属相と、相の金属元素成分(以下、硬質相金属
元素成分という)として、主体をなすTi成分と、V、
Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWから選ばれ
る1種又は2種以上の添加金属元素成分Mとを含有し、
それら硬質相金属元素成分の炭窒化物からなる硬質相と
により組織が形成されたものを使用することができる。
【0013】サーメット中の、硬質相金属成分全体に対
するTi成分の含有率は50〜80重量%となっている
のがよい。Ti成分の含有率が50重量%未満になる
と、サーメットの耐塑性変形性あるいは耐摩耗性が損な
われることにつながる。一方、Ti成分の含有率が80
重量%を超えると、サーメットの靭性が損なわれる場合
がある。なお、Ti成分の含有率は、より望ましくは6
0〜70重量%となっているのがよい。
【0014】また、硬質相金属成分全体に対する添加金
属元素成分M(以下、M成分という)の含有率は20〜
50重量%となっているのがよい。M成分の含有率が5
0重量%を超えるとTi成分が相対的に不足して、サー
メットの耐塑性変形性あるいは耐摩耗性が損なわれるこ
とにつながる。一方、M成分の含有率が20重量%未満
になると、Ti成分が相対的に過剰となってサーメット
の靭性が損なわれる場合がある。なお、M成分の含有率
は、より望ましくは30〜40重量%となっているのが
よい。
【0015】さらに、上記Ti成分及びM成分が、炭窒
化物相の構成元素として有効に取り込まれるためには、
サーメット中のC成分の含有率を7〜12重量%とする
のがよく、望ましくは8〜10重量%とするのがよい。
また、同様の理由により、サーメット中のN成分の含有
率は3〜8重量%、望ましくは5〜6重量%とするのが
よい。さらに、サーメット中のC成分の含有率をx、同
じくN成分の含有率をyとしたときに、y/(x+y)
の値は0.3より大きく0.5未満となる範囲で調整す
るのがよい。
【0016】次に、表面被覆層は、Ti、Al、V、C
r、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWのうちの、T
iを必須とする1種又は2種以上を金属元素の主成分と
して、その金属元素の炭化物、窒化物及び炭窒化物にて
構成されたものを使用できる。
【0017】上記表面被覆層は、工具の要部を構成する
サーメットの表層最外部に、内側の本体部と同様の硬質
相を主体として、結合金属相形成成分の重量含有率を、
該結合金属相形成成分のサーメット全体における平均的
な重量含有率(あるいは本体部の重量含有率)よりも小
さくしたものとして形成することができる。この場合、
その表面被覆層中の結合金属相形成成分の重量含有率
(表面被覆層中の結合金属相の量を反映したものとな
る)をWB1、本体部中の結合金属相形成成分の重量含有
率(本体部中の結合金属相の量を反映したものとなる)
をWB2として、0.1≦WB1/WB2 ≦0.7となるよ
うに調整する。
【0018】このような表面被覆層は、結合金属相の含
有率が本体部よりは少くなるので、該本体部よりも硬度
が高くなる。他方、WB1/WB2 に換算した場合にこれ
が0.1以上となるよう、適量の結合金属相は存在させ
る形としているから、硬質相の脱落等が生じにくく、靭
性にも優れた性状を有する。その結果、工具の耐摩耗性
を大幅に向上させることができる。また、上記のような
表面被覆層は、気相成膜法による表面被覆層のように、
サーメットの構成成分には由来しない原料を用いて別工
程によりいわば後付け形成するタイプのものとは異な
り、サーメット自身の表面を後述の方法により改質する
ことで容易に形成できる利点がある。
【0019】この場合、WB1/WB2 が0.1未満にな
ると、表面被覆層中の結合金属相が不足して硬質相の脱
落等が生じやすくなり、工具の耐摩耗性改善効果が不十
分となる。他方、WB1/WB2が0.7を超えると、表面
被覆層の硬度が不足し、工具の耐摩耗性改善効果が同様
に不十分となる。なお、上記WB1/WB2 は、より望ま
しくは0.2〜0.5の範囲で調整するのがよい。
【0020】他方、表面被覆層は、以下のように形成す
ることもできる。すなわち、表面被覆層中の硬質相金属
元素成分の重量含有率(表面被覆層中の硬質相の形成量
を反映したものとなる)をWR1、結合金属相形成成分の
重量含有率をWB1とし、同じく本体部中の硬質相金属元
素成分の重量含有率(本体部中の硬質相の形成量を反映
したものとなる)をWR2、結合金属相形成成分の重量含
有率をWB2として、表面被覆層側においては0.005
≦WB1/WR1≦0.14となり、また本体部側において
は0.05≦WB2/WR2≦0.2となるように調整す
る。
【0021】すなわち、この構成においても表面被覆層
は、結合金属相の含有率が本体部よりは少くなるので、
該本体部よりも硬度が高くなる。他方、WB1/WR1に換
算した場合にこれが0.005以上となるよう、適量の
結合金属相は存在させる形としているから、硬質相の脱
落等が生じにくく、靭性にも優れた性状を有する。その
結果、工具の耐摩耗性を大幅に向上させることができ
る。
【0022】表面被覆層側においては、WB1/WR1が
0.005未満になると、表面被覆層中の結合金属相が
不足して硬質相の脱落等が生じやすくなり、サーメット
の耐摩耗性改善効果が不十分となる。他方、WB1/WR1
が0.14を超えると、表面被覆層中の結合金属相の量
が逆に過剰となり、硬度が不足して耐摩耗性改善効果が
同様に不十分となる。WB1/WR1は、望ましくは0.0
1〜0.11となるように調整するのがよい。
【0023】また、本体部側においては、WB2/WR2が
0.05未満になると、結合金属相が不足して材料が脆
弱化し、サーメットの耐欠損性が悪化することにつなが
る。他方、WB2/WR2が0.2を超えると、硬質相の形
成量が不足して、サーメットの耐摩耗性が不十分とな
る。WB2/WR2は、望ましくは0.07〜0.16とな
るように調整するのがよい。さらに、0.1≦WB1/W
B2≦0.7(望ましくは0.2≦WB1/WB2 ≦0.
5)とすれば、サーメットの耐摩耗性を向上させる効果
をさらに顕著に達成することができる。
【0024】上記の構成の表面被覆層は、下記製造方法
にて簡単に製造することができる。すなわち、該製造方
法においては、硬質相原料粉末と結合金属相原料粉末と
を所定量配合した混合粉末を所定の形状に成形し、得ら
れた成形体を1450〜1650℃の範囲で設定される
焼成温度で焼成する。そして、その焼成後において、少
なくとも1450℃から1300℃までの温度範囲にお
ける平均の冷却速度が7〜50℃/分となり、かつ少な
くともその温度範囲における冷却雰囲気として、50t
orr以上の分圧の窒素及び/又は不活性ガス(例えば
アルゴン)を含有する雰囲気を使用して冷却を行うこと
を要旨とする。成形体を焼成することにより、硬質相原
料粉末に基づいて硬質相が、また結合金属相原料粉末に
基づいて結合金属相が形成され、サーメット焼結体とな
る。そして、その焼成後の冷却を上記冷却速度及び雰囲
気で行うことにより、サーメット表層部は金属結合金属
層の量が減少し、硬質相の比率が相対的に高められて、
上記表面被覆層に改質されることとなる。
【0025】なお、熱処理後の冷却条件を上記のように
設定することで、サーメット表層部の結合金属相が減少
する機構として、下記のようなことが推定される。すな
わち、焼結中においては、被焼成物の中心部から外側に
向けて金属相の構成元素の拡散が生ずる。そして、焼結
完了後の冷却時においては、その初期段階で雰囲気中に
窒素及び/又は不活性ガスを所定値以上の圧力で導入す
ると、硬質相粒子の窒化もしくは炭化が促進されて表層
部の硬質相の粒成長が起こるとともに硬質相と結合金属
相との濡れ性が低下し、結合金属相の一部が外部にはじ
き出されやすくなる(あるいは揮発しやすくなる)結
果、該表層部の結合金属相が減少するものと考えられ
る。
【0026】いずれにしろ上記方法によれば、サーメッ
ト表面に表面被覆層が形成された本発明の工具を、サー
メット自身の表面改質により容易に形成することができ
る。しかも、その表面改質処理が、焼成後の冷却時に行
われる形となるので、表面被覆層形成のための別工程を
実施しなくともよく、成膜に先立つ表面研磨等の前処理
工程も不要となる。その結果、工具の製造工数を効果的
に削減でき、工具価格を低廉なものとすることが可能と
なる。
【0027】上記製造方法においては、焼成温度が16
50℃を超えると結晶粒成長が過度に進行するので必要
な強度が確保できなくなる。一方、焼成温度が1450
℃未満の場合は材料の緻密化が不十分となり、同様に強
度が不足する結果につながる。なお、焼成温度は、望ま
しくは1500〜1650℃の範囲とするのがよい。
【0028】他方、1450℃から1300℃までの温
度範囲における冷却速度が7℃/分未満になると、工具
の耐摩耗性が損なわれることにつながる。これは、表面
被覆層中の金属相の含有量が過剰となるためであると考
えられる。また、50℃/分を超えると、冷却時の熱衝
撃で焼結体にクラック等の欠陥が生じやすくなる。それ
故、冷却速度は7〜50℃/分とするのがよく、望まし
くは10〜30℃/分とするのがよい。なお、上記範囲
の冷却速度を維持する温度区間は、1450℃よりも高
温側(例えば焼成温度まで)に拡張すること、あるいは
1300℃よりも低温側に拡張することが可能である。
【0029】また、冷却雰囲気中の窒素及び/又は不活
性ガスの分圧が50torr未満になると、表面被覆層
の形成が不十分となり、工具の耐摩耗性が不足すること
につながる。窒素及び/又は不活性ガスの分圧は、より
望ましくは100torr以上とするのがよい。なお、
窒素と不活性ガスとは、各々単独で使用しても、混合し
て使用してもいずれでもよい。
【0030】なお、サーメットの本体部の硬質相金属元
素成分の重量含有率WR2、及び結合金属相形成成分の重
量含有率WB2は、硬質相原料粉末と結合金属相原料粉末
との配合比率により調整できる。また、表面被覆層中に
おける硬質相金属元素成分の重量含有率WR1、及び結合
金属相形成成分の重量含有率WB1は、上記配合比率のほ
か、焼成後の冷却における雰囲気ガスの圧力及び/又は
冷却速度に応じて調整できる。例えば、WB1(すなわ
ち、結合金属相の量)を減少させたい場合は、比較的高
圧の雰囲気中で急速冷却を行うようにし、増加させたい
場合はこの逆とする。
【0031】以上説明した構成の表面被覆層は、サーメ
ット表層部が、結合金属相を減少させる形で変質して生
ずるものであり、その硬質相の組成のみで比較した場合
に、表面被覆層と本体部とでは、硬質相金属元素成分を
形成する個々の金属元素成分同士の相対的な含有比率は
ほぼ等しくなる形となる。すなわち、表面被覆層は、基
本的には本体部と同様の組成の硬質相を本体部よりは多
く含む形となるので、良好な耐摩耗性を確保することが
可能となる。
【0032】一方、表面被覆層は、物理蒸着法(イオン
プレーティング、スパッタ法等)あるいは化学蒸着法と
いった気相成膜法により形成することもできる。
【0033】表面被覆層の厚さは、0.5〜5μmの範
囲で調整するのがよい。表面被覆層の厚さが0.5μm
未満になると、該表面被覆層形成による耐摩耗性向上の
効果が不十分となる場合がある。他方、表面被覆層は本
体部よりも脆いため、その厚さを5μm以上にすると、
表面被覆層にチッピングを生じやすくなる不具合につな
がる。それ故、表面被覆層の厚さは上記範囲で調整する
のがよく、望ましくは2〜4μm、より望ましくは2.
5〜3μmとするのがよい。
【0034】上記表面被覆層は、その形成条件を適宜調
整することにより、外観の色彩を前記範囲内のものとす
ることができる。また、焼結後のサーメットの表面を酸
処理することにより、上記表面被覆層を改質することが
できる。この改質により、例えば表面被覆層の外観色調
を調整する(例えば彩度を高くする)ことが可能とな
り、使用済コーナー部を一層容易に識別できるようにな
る場合がある。使用できる酸としては、塩酸、硝酸、あ
るいは王水(例えば硝酸と塩酸の混合体積比が硝酸:塩
酸=1:3程度のもの)などがある。
【0035】
【実施例】以下、本発明のサーメット工具を実施例によ
り具体的に説明する。まず、原料粉末として使用したの
は、平均粒径1.5μmの炭窒化チタン粉末(炭化チタ
ン/窒化チタン=50/50)、平均粒径1.0μmの
炭化チタン粉末、平均粒径1.4μmの窒化チタン粉
末、平均粒径1.4μmの炭化ニオブ粉末、平均粒径
1.6μmの炭化タンタル粉末、平均粒径3.3μmの
炭化モリブデン(Mo2C)粉末、平均粒径1.6μm
の炭化タングステン粉末、平均粒径3.0μmのニッケ
ル粉末、及び平均粒径1.5μmのコバルト粉末であ
る。まず、表1のA及びBの各種成分比率となるように
上記原料粉末を配合し、アセトンを溶媒としてボールミ
ルにより72hr混合した。混合後の粉末は乾燥後、マ
イクロワツクス系バインダーを添加して混練・乾燥後、
60メッシュのふるいを通して造粒粉末とした。次い
で、その造粒粉末を1.5ton/cmの圧力でプレ
ス成形して所定の工具形状に成形し、脱ワックスを行っ
た(表3:試料番号1〜6、ただし番号5,6は本発明
の範囲外のものである)。
【0036】
【表1】
【0037】これら成形体を焼成炉に装入し、焼成炉内
を100Torr以下の各種分圧の窒素雰囲気に保ちつ
つ、図1に示すように、室温から1200℃までは10
℃/分の平均温度勾配により加熱し、該1200℃で脱
ガスのため30分保持した。その後、炉内に所定分圧の
窒素あるいはアルゴンを導入して表2に示す各種焼結雰
囲気とし、さらに5℃/分の昇温速度で昇温を続けて焼
成温度(最高温度1600℃)にて1時間保持した。次
いで、焼成保持が終了すると、炉内に所定分圧の窒素あ
るいはアルゴンを導入して表2に示す各種冷却雰囲気と
し、1300℃までの平均冷却速度が表2の各種値とな
るように冷却を行い、サーメット焼結体を製造した。
【0038】
【表2】
【0039】上記各サーメット焼結体は、後記切削性能
試験が終了した後に、中央部を切断して断面を鏡面研磨
した後、表面被覆層の厚さ及び組成と本体部の組成と
を、SEM(走査電子顕微鏡)付属のEPMA(電子プ
ローブ微小分析;ただしエネルギー分散型X線分光方式
による)により、次のようにして測定した。まず、表面
被覆層の厚さについては、焼結体の断面を二次電子線像
によりSEM観察し(倍率5000倍)、得られる組織
写真からこれを測定した。すなわち、二次電子線像にお
いては、導電率の高い結合金属相を多く含む本体部は、
該結合金属相の含有量が少ない表面被覆層よりも明るく
表れるので、そのコントラストから両者の境界を定める
ことができる。
【0040】他方、本体部の組成は、断面中央部をSE
Mにより倍率5000倍にて拡大するとともに、その視
野中に縦30μm、横40μmの分析領域を設定し、該
領域内で電子線を走査して各成分の特性X線強度を測定
し、その強度比から組成を決定した。なお、分析領域は
異なる視野にて3ケ所設定し、それぞれ得られた3領域
からの組成値を平均化したものを、最終的に求める組成
値とした。他方、表面被覆層の組成も同様に、断面をS
EMにより倍率5000倍にて拡大し、その視野中に直
径1μmの電子線プローブを照射して各成分の特性X線
強度を測定し、その強度比から組成を決定した(この場
合も組成は、3ケ所の平均値として算出している)。こ
の測定結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】そして、この測定結果から算出した前述の
WB1、WR1、WB2、WR2、WB1/WB2、WB1/WR1及び
WB2/WR2の各値を表4に示している。また、各サーメ
ット焼結体に対しガス分析を行って測定したC及びNの
各成分の含有量と、前述のy/(x+y)の値も合わせ
て表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】図2は、試料番号1の焼結体の走査型電子
顕微鏡写真である(各倍率5000倍)。表面からおよ
そ5μmまでの部分が、前述の測定により表面被覆層と
して特定された部分である。
【0045】次に、表2の試料番号4と同様の組成及び
焼成条件にて作製したサーメット焼結体の表面をサンド
ブラストにより清浄化処理した。ただし、この処理は、
焼成後の冷却時に形成される前述の表面被覆層を完全に
は除去せず、一部が残留する程度の処理としている。な
お、この清浄化処理後の試料についてもWB1、WR1、W
B2、WR2、WB1/WB2、WB1/WR1及びWB2/WR2の各
値を前記した方法と同様に測定した。この値を表4に示
している。次いで、該表面清浄化処理後の試料に対し、
その表面に新たな表面被覆層として、TiN、TiCN
及びTiAlNの各皮膜をイオンプレーティング法によ
り、各々膜厚3μmで形成した試料も作製した(試料番
号7、8、9)。ただし、イオンプレーティングは、タ
ーゲットとしてTi金属又はTiAl合金のターゲット
を、反応ガスとしてN又はCガスを用い、上記
ターゲットと処理物間に、800V/100Aでアーク
を発生させることにより行った。一方、比較例として、
焼成後の冷却時に形成される表面被覆層をサンドブラス
トにより完全に除去したのみの試料も合わせて作製した
(試料番号10)。
【0046】次に、各サーメット焼結体の外観の色彩
を、前記JISに定められた色相、明度、彩度により特
定するために、その外観色を、色相、明度及び彩度がそ
れぞれ既知の各種色見本と目視により比較することで決
定した。その結果を表5に示している。
【0047】
【表5】
【0048】さらに、各サーメット焼結体を工具として
使用したときの切削性能評価試験を以下のようにして行
っている。まず、焼結体(以下、工具という)形状は、
図3に示す通りのものである(lSO規格でCCMT0
60204ENとして規定されているもの)。すなわ
ち、工具1は、厚さSが約2.38mm、内接円CIの
直径が約6.35mmの略平行四辺形断面の偏平形状
(主面のコーナー部角度は100°及び80°)を有
し、各コーナー部に施されたアールの大きさrεは約
0.4mmとした。また、エッジ部1kに施された面取
り部(ホーニング)は、主面1cに対するホーニング
(R=0.05mm)となるように形成した。
【0049】各工具の切削性能の評価条件は以下の通り
である。すなわち、図4(a)に示す形状の棒状の被削
材Wを軸線周りに回転させ、その外周面に対し図3に示
す工具1を、図4(b)に示すように当接させ、主面1
cの一方をすくい面(以下、すくい面を1c'で表
す)、側面1e(図3)を逃げ面として用いることによ
り、以下の条件にて被削材の外周面を乾式で連続切削し
た。 被削材 :機械構造用Mn鋼(SNCM439)、丸棒
形態(外径φ240mm、長さ200mm、硬度:HB
300) 切削速度V:300m/分 送り量 f:0.1mm/1回転 切り込みd:1.5mm 切削油 :なし 切削時間 :4分 工具1と被削材Wとのより詳細な位置関係は、図5に示
す通りである。なお同図において、1gは横逃げ面、1
fは前逃げ面をそれぞれ示す。他の符号の意味は図面中
に示している。切削終了後、工具の刃先の逃げ面摩耗量
Vn(横逃げ面1g側の旋削方向の摩耗高さ:図4
(c)参照)を測定した。また、切削に使用したコーナ
ー部の摩耗判別性を目視にて確認した。以上の結果を表
5に示す。
【0050】すなわち、試料番号5及び6以外のサーメ
ット工具は、いずれも良好な耐摩耗性を示していること
がわかる。また、表面被覆層の外観明度をVS、彩度を
CSとしたときに、VSが6以上及びCSが4以上の少な
くともいずれかが満足されることで、摩耗部の目視判別
が可能であることがわかる。他方、鏡面研磨したサーメ
ット内部(本体部)の色彩も同様に色見本を用いて決定
したところ、表1の組成Aを採用したものが明度5、彩
度Nであり、同じくBを採用したものが明度4、彩度N
であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で採用したサーメットの焼結パターンを
示す説明図。
【図2】実施例における試料番号1のサーメット焼結体
の組織を示すSEM写真。
【図3】実施例で使用したサーメット工具の平面図、側
面図及びそのエッジ部の側面拡大図。
【図4】切削試験の概要を示す説明図。
【図5】切削試験における試験片と被削材との位置関係
を示す説明図。
【符号の説明】
1 サーメット工具

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サーメット焼結体の表面に表面被覆層を
    形成した構造を有し、 JISZ8721に規定された明度において、前記表面
    被覆層の外観明度をVS、彩度をCSとしたときに、VS
    が6以上及びCSが4以上の少なくともいずれかを満た
    し、かつ、該表面被覆層は、その外観が、JISZ87
    21に規定された色相環上にて、5PBから5RPを経
    て5Yに至る色相範囲に属する有彩色を呈することを特
    徴とするサーメット工具。
  2. 【請求項2】 前記表面被覆層は、Vsが7以上及びC
    sが5以上の少なくともいずれかを満たす請求項1記載
    のサーメット工具。
  3. 【請求項3】 サーメット焼結体の表面に表面被覆層を
    形成した構造を有し、 JISZ8721に規定された明度において、前記表面
    被覆層の外観明度をVSとしたとき、該表面被覆層の外
    観明度VSが6以上を満たし、かつ、その外観が実質的
    に無彩色を呈することを特徴とするサーメット工具。
  4. 【請求項4】 前記表面被覆層は、Vsが7以上を満た
    す請求項3記載のサーメット工具。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか1項
    に記載のサーメット工具を用いて被削物の加工を行った
    ときの、該サーメット工具の摩耗部と非摩耗部とを、明
    度あるいは色彩の違いに基づいて識別することを特徴と
    するサーメット工具の摩耗識別方法。
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