JP2003301114A - 複合体 - Google Patents

複合体

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JP2003301114A
JP2003301114A JP2002106428A JP2002106428A JP2003301114A JP 2003301114 A JP2003301114 A JP 2003301114A JP 2002106428 A JP2002106428 A JP 2002106428A JP 2002106428 A JP2002106428 A JP 2002106428A JP 2003301114 A JP2003301114 A JP 2003301114A
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composite
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Kunihiko Okajima
邦彦 岡島
Chihiro Yamane
千弘 山根
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Asahi Kasei Corp
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子化合物と無機物質からなる複合体であ
って、磁性、導電性、抗菌性等の機能に優れる複合体お
よび触媒活性や吸着効果等に優れる無機物質からなる微
粒子状多孔体の提供。 【解決手段】 面配向性高分子化合物と粒径1μm以下
の無機物質の微粒子とからなる複合体であって、前記微
粒子が複合体中に分散すると共に、高分子化合物と密着
している複合体である。この複合体は、面配向性高分子
化合物を無機物質と共に、粉砕、攪拌混合、混練または
圧延を行うことによって得られる。この複合体を焼結す
ることによって、比表面積が5m2/g以上の無機物質の
微粒子状多孔体が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、面配向性高分子化
合物と無機物質とからなる複合体、前記複合体から高分
子化合物を燒結、除去して製造される無機物質の不定形
の微粒子状多孔体、およびそれらの製造方法に関する。
本発明の複合体の利用分野として、電磁波シールド分
野、導電性ペースト分野、抗菌性を利用した衛生分野、
微粒子状多孔体の利用分野として、触媒分野、吸着性を
利用した水処理分野等が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】従来より、高分子化合物と無機物質との
複合体は知られている。例えば、高分子化合物に、磁
性、導電性(電磁波シールド性)、抗菌性、触媒活性、
選択吸着性等を付与することを目的に、高分子化合物か
らなる構造体(プラスチックス、繊維、膜等)に、金属
を単に物理的に配合したもの、または構造体の表面に金
属を物理的に固着させたものが知られている。特開平5
−17581号公報には、高せん断力、かつ、高圧縮力
で高分子化合物と金属を混合する例が開示されている
が、金属は樹脂粒子の表面に固着されているだけで、ナ
ノレベルで高分子化合物と金属が複合化されているわけ
ではない。
【0003】高分子化合物と金属以外の無機物質の複合
体としては、高分子化合物と金属酸化物の複合体がよく
知られており、利用法として、ラテックス等に見られる
増量剤、白度向上剤、滑剤、レオロジー制御材が挙げら
れる。特殊な例として、高分子化合物樹脂中に導電性フ
ィラーを配し、導電性材料や誘電損失材料(電磁波吸収
材)として用いることも知られているが、いずれの場合
も、高分子化合物に無機物質がナノレベルで複合化した
例は極めて少ない。一方で、金属単体、金属酸化物、金
属窒化物および金属炭化物の領域では、超微粒子化をは
かり、機能の向上、拡大を図る研究が長年に亘って実施
されてきており、これら物質の超微粒子化技術として
は、気相法、液相法および固相法が知れている。
【0004】気相法は、イオンや原子から過飽和蒸気に
対する化学反応を通して、均一核生成および成長過程を
経るものであり、集積量を制御すれば、原理的に任意の
大きさの粒子を作成できる。気相法として、気相化学析
出法(CVD法)、電気炉法、化学炎法、プラズマ法が
知られているが、電気炉法以外では、シャープな粒径分
布で1μm以下の粒径に容易に調整でき、凝集も小さ
く、高純度等の特徴がある。
【0005】しかし、粒子径が1μm以下の超微粒子で
さえ多孔質ではなく、形状が球形であることもあり、比
表面積は2〜3m2/g程度と比較的小さい。実際、平
均粒径70〜300nmの真球形状の金属粒子(例え
ば、純銀粒子、(株)レアメタリック製、(株)ニラコ
製等)の比表面積を後述する方法で測定したところ、比
表面積は2m2/g程度しかなかった。また、これらの
方法は、大量生産には向かない上、コストも高くなる。
酸化チタン、酸化ケイ素、アルミナ超微粒子の製造で実
用化されている電気炉法は最も安価であるが、この方法
でも管壁への不均一核生成による析出が優勢になり、収
率が落ちる欠点があるばかりか、多孔質の形成もできず
比表面積は小さい。
【0006】液相法には、化学的方法として、共沈法、
均一沈殿法(高純度酸化物セラミックス)、化合物沈殿
法、金属アルコキシド法、水熱合成法が知られている。
この方法によると、乾燥時の粒子凝集を避ける等の方策
に特段の配慮を必要とする。物理的方法として、目的溶
液を、噴霧乾燥・造粒する方法、溶液燃焼法、凍結乾燥
法、エマルジョン乾燥法等が知られている。この方法に
よると、せいぜいサブミクロンオーダーの多孔質ではな
い粒子しか作成できず、コスト的にも有利とはいえな
い。
【0007】固相法は、目的物を物理的に粉砕する方法
であり、最も単純で、大量に処理でき、安価な方法であ
る。ローラミル法では、石灰石等のやわらかい物質を用
いた時、分級と組み合わせサブミクロン粒子の作成が可
能であるが、多孔性のものは得られない。高速回転ミ
ル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミルで
は、せいぜい1−数μmの非多孔性粒子しか作成できな
い。以上のように、従来技術では、無機物質が微分散し
た高分子化合物と無機物質とからなる複合体および無機
物質の微粒子状多孔体が得られておらず、磁性、導電性
(電磁波シールド性)、抗菌性、触媒活性、選択吸着性
等の特性が満足できるものはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、磁
性、導電性(電磁波シールド性)、抗菌性、触媒活性、
選択吸着性等の優れた特性が発揮される、高分子化合物
に無機物質が微分散した複合体、この複合体をから製造
される、無機物質の不定形の微粒子状多孔体およびこれ
らの製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】面配向性高分子化合物
は、ある程度立体的に規則構造を持っている。面配向構
造を維持する力は、水素結合のような双極子力、ファン
デルワールス力等の疎水的結合、ベンゼンリングどうし
のπ電子雲結合等であるので、その規則構造を維持しな
がら、外的刺激、例えば、極少量の溶液の添加等によ
り、分子は容易に運動する。このような面配向性高分子
化合物と無機物質とを混合すると、どちらか一方の規則
面に沿って無機物質が分子分散状に配置した複合体が形
成し、しかも、その複合体において、新たな立体的規則
構造を発現すれば、より安定で有用な複合体を形成する
と考えられる。また、高分子化合物の規則構造は、基本
的に、原子間結合、疎水結合または水素結合のレベルで
あり、その構造間に無機物質が取り込まれれば、無機物
質がナノレベルで微分散するものと考えられる。
【0010】本発明者等は、この仮説に沿って鋭意研究
を重ねた結果、(1)セルロース系高分子化合物、ポリ
アミド系高分子化合物、ポリウレタン系高分子化合物等
は、部分的に水素結合/疎水結合による面配向構造に基
づく規則的立体構造を有し、僅かな親水性溶液の存在で
分子運動し易くなる構造単位と僅かな疎水性溶液の存在
で分子運動し易くなる構造単位が混在し、しかも、それ
ら溶液の存在下では、運動単位が動く温度領域も低下す
ること、(2)これらの高分子化合物と種々の金属、無
機物質との複合化を試みた結果、容易に分子分散性の良
好な複合体が作成でき、しかも、これら複合体は圧延可
能で成形可能であること、更に、(3)得られた複合体
や成形体を焼結することにより、無機物質の不定形の微
粒子状多孔体を得ること等を見出し、本発明を完成する
に至った。
【0011】すなわち、本発明は、以下のとおりであ
る。 (1) 面配向性高分子化合物と粒径1μm以下の無機
物質の微粒子とからなる複合体であって、微粒子が複合
体中に分散していると共に、高分子化合物と密着してい
ることを特徴とする複合体。 (2) 無機物質の微粒子が面配向性高分子化合物の劈
開した結晶面間に取り込まれて分散しており、高分子化
合物と密着していることを特徴とする(1)に記載の複
合体。 (3) 面配向性高分子化合物が、セルロース系高分子
化合物、ポリアミド系高分子化合物およびポリウレタン
系高分子化合物から選ばれた少なくとも一種であること
を特徴とする(1)または(2)に記載の複合体。
【0012】(4) セルロース系高分子化合物が、木
綿、木材由来のパルプ、天然セルロース、再生セルロー
ス、廃バイオマス、キチンおよびキトサンから選ばれた
少なくとも一種であることを特徴とする(3)に記載の
複合体。 (5) セルロース系高分子化合物の(11−0)結晶
面の見かけの微結晶サイズが30オングストローム以上
であることを特徴とする(3)または(4)に記載の複
合体。 (6) 無機物質が、元素周期律表のランタノイドおよ
びアクチノイドを除く金属若しくは非金属、それらの酸
化物、窒化物若しくは炭素化物、またはこれらの混合物
であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つ
に記載の複合体。
【0013】(7) 元素周期律表のランタノイドおよ
びアクチノイドを除く金属若しくは非金属が、IA属の
ルビジウム、セシウム、IB属の銅、銀、金、IIA属
のマグネシウム、カルシウム、バリウム、IIB属の亜
鉛、IIIA属のスカンジウム、イットリウム、III
B族のホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、
IVA属のチタン、ジルコニウム、IVB属の珪素、ゲ
ルマニウム、錫、鉛、VA属のバナジウム、ニオブ、タ
ンタル、VB族のリン、砒素、アンチモン、ビスマス、
VIA属のクロム、モリブデン、タングステン、VIB
属の硫黄、セレン、テルル、VIIA属のマンガン、テ
クネチウム、レニウム、VIII属の鉄、コバルト、ニ
ッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウ
ム、イリジウムおよび白金から選ばれる少なくとも1種
であることを特徴とする(6)に記載の複合体。 (8) 前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の複
合体を焼結することによって製造され、かつ、比表面積
が5m2/g以上である、無機物質からなる微粒子状多孔
体。
【0014】(9) 面配向性高分子化合物を無機物質
と共に、粉砕、攪拌混合、混練および圧延から選ばれた
少なくとも一種の機械的処理を行うことにより、面配向
性高分子化合物の結晶面間を劈開し、無機物質と複合化
することを特徴とする複合体の製造法。 (10) 面配向性高分子化合物の動的粘弾性または熱
刺激電流測定における主分散領域に運動性を与える溶液
の存在下に、機械的処理を行うことを特徴とする(9)
に記載の複合体の製造法。 (11) ガラス転移点以上の温度領域で機械的処理を
行うことを特徴とする(10)に記載の複合体の製造
法。 (12) 面配向性高分子化合物の動的粘弾性または熱
刺激電流測定における主分散領域に運動性を与える溶液
が、親水性溶液であることを特徴とする(10)または
(11)に記載の複合体の製造法。
【0015】(13) 面配向性高分子化合物の動的粘
弾性または熱刺激電流測定における主分散領域に運動性
を与える溶液が、疎水性溶液であることを特徴とする
(10)に10または(11)に記載の複合体の製造
法。 (14) 面配向性高分子化合物の動的粘弾性または熱
刺激電流測定における主分散領域に運動性を与える溶液
が、両親媒性溶液であることを特徴とする(10)また
は(11)に記載の複合体の製造法。 (15) 前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の
複合体を、面配向性高分子化合物の分解温度および無機
物質の焼結温度のいずれか高い温度以上であって、無機
物質の融解温度未満の温度で燒結し、高分子化合物を焼
却、除去することを特徴とする無機物質からなる微粒子
状多孔体の製造方法。
【0016】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
複合体において、無機物質が、複合体中に、粒径1μm
以下のオーダーで分散し、高分子化合物に密着して存在
する。本発明では、このように分散していることを微分
散しているという。密着とは、面配向性高分子化合物と
無機物質との間に空隙が無い状態を示す。
【0017】本発明で用いられる面配向性高分子化合物
は、結晶領域と非晶領域を有する結晶性高分子化合物で
あり、結晶を構成する各々の結晶面がそれぞれ異なった
結合様式により形成されている、すなわち、結晶構造が
異方性である高分子化合物である。このような高分子化
合物は、結晶面によりその結晶面間の結合力にきわめて
大きな差があり、様々な操作で容易に特定結晶面が面配
向する。本発明の面配向性高分子化合物は、このよう
に、結晶に本質的に異方性があり、さまざまな操作で容
易に結晶面が面配向する高分子化合物である。
【0018】例えば、セルロースでは、水等の高極性溶
液を用いてフィルムを形成すると、(11−0)結晶面
がフィルム平面に高度に面配向する。ナイロン66で
は、ロールプレスによりフィルム成型すると特定結晶面
が面配向する。面配向構造の有無は、得られたフィルム
をX線回析することによって確認できる。しかし、面配
向構造を有しているフィルムも粗粉砕すれば、結晶はマ
クロなレベルで平均化されるので、面配向構造が失われ
ることになる。このような面配向構造が失われた高分子
化合物も本発明では用いることができる。このように、
本発明で用いられる高分子化合物は、必ずしも面配向構
造をとっていることが重要でなく、結晶構造が異方性で
あることが重要である。
【0019】結晶面における異なった結合様式、すなわ
ち、結晶構造の異方性の例を、セルロースを例に挙げて
説明する。セルロースにおいては、(11−0)結晶面
は、その表面エネルギーが40mN/mと高分子素材中
最も高いレベルで、その面内のセルロース分子が互い
に、主に水素結合により形成されているが、逆に(11
0)結晶面は、その表面エネルギーが20mN/mであ
る。これは高分子素材中最でも低い値であり、疎水性の
相互作用により形成されているものである。このよう
に、セルロースの結晶は各々の結晶面で結合様式が異な
る。セルロースの他にも、ポリアミドやポリウレタン
も、水素結合により形成される結晶面とそうでない結晶
面とが存在する。
【0020】このように、本発明で用いられる高分子化
合物としては、必ずしも特定結晶面が実際に面配向して
いる必要はなく、結晶に本質的に異方性があり,さまざ
まな操作で容易に結晶面が面配向する面配向性高分子化
合物が好ましい。このような高分子化合物は、結晶面間
の結合力にきわめて大きな差があり、後述する特定の操
作、例えば、親水性溶液の存在下での機械的処理によ
り、水素結合により積層した特定結晶面間が劈開し、こ
の間隙に無機物質が進入した複合体が形成される。疎水
性の溶液存在下では、原理的に、逆に、疎水性相互作用
により積層結晶面間隙に無機物質が進入した複合体が形
成される。
【0021】セルロースを例として、面配向性高分子化
合物への無機物質の分散について説明する。セルロース
には、結晶学でいう、(11−0)結晶面または(20
0)結晶面の微結晶があるが、乾燥状態または親水性溶
液または両親媒性溶液存在下に機械的処理を行うと、
(11―0)結晶面が選択的に劈開する。
【0022】このことは図1に示す、機械的処理による
各結晶面のX線回折強度の低下度合いから示唆される。
図1から明らかに、(200)結晶面の強度はほとんど
変わらないのに対し、(11−0) 結晶面強度は著しく
低下しており、機械的処理によって(11−0) 結晶面
が選択的に劈開していることが推測される。(11−
0)結晶面が劈開された模式図を図2に示す。劈開され
た表面には水酸基が露出し、無機物質が取り込まれ易い
状況にある。この面の間隔は、7−10オングストロー
ム(1nm以下)であり、取り込まれた無機物質はこの
程度のオーダーで分散されているものと推定される。
【0023】本発明で用いられる面配向性高分子化合物
としては、例えば、セルロース系高分子化合物、ポリア
ミド系高分子化合物、ポリウレタン系高分子化合物等が
挙げられ、これらは単独または混合物として使用され
る。セルロース系高分子化合物として、木綿、木材由来
のパルプ、バクテリアセルロースや微生物産生多糖類等
の天然セルロース、セロハンや再生繊維等の再生セルロ
ース、古紙等の廃バイオマス、キチン、またはキトサン
が挙げられる。さらに、これらの極低置換度誘導体や、
リグノセルロース等の天然複合体も含まれる。
【0024】セルロース系高分子化合物の場合、(11
−0)結晶面の見かけの微結晶サイズ(ACS)が30
オングストローム以上のものが好ましく、ナノレベルの
リボン状集合体であるバクテリアセルロースがより好ま
しい。ACSは見かけの微結晶サイズであるが、定性的
に結晶面がどの程度積層しているかの度合いを示してい
る。ACSが高いほど、すなわち、結晶面の積層度合い
が高いほど無機物質が分散されやすい。
【0025】ポリアミド系高分子化合物として、脂肪属
ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルアミド、
ポリエステルアミド等が挙げられる。ナイロン66やナ
イロン6について例示的に説明する。延伸されたナイロ
ン66やナイロン6の代表的結晶構造は、水素結合と疎
水結合からなる規則構造を有しており、繊維の場合は、
円周方向にある種の面構造をとっている。このため、本
発明では、繊維形態のナイロン66やナイロン6の延伸
体が有効である。
【0026】ポリウレタン系高分子化合物としては、例
えば、ソフトセグメント部にテトラメチレンオキサイド
の繰り返し単位、ハードセグメント部に芳香族尿素の繰
り返し単位を有するポリウレタンウレアが挙げられる。
ポリウレタン系高分子化合物には、ウレアまたはビュー
レット結合間の水素結合とオレフィンエーテル部または
オレフィンエステル部の疎水結合があり、セルロース系
高分子化合物やポリアミド系高分子化合物と同じように
面配向性特性を示す。
【0027】本発明に用いる無機物質は、限定されない
が、元素周期律表のランタノイドおよびアクチノイドを
除く金属若しくは非金属、それらの酸化物、窒化物若し
くは炭素化物、またはこれらの混合物は好ましい。中で
も、IA属のルビジウム、セシウム、IB属の銅、銀、
金、IIA属のマグネシウム、カルシウム、バリウム、
IIB属の亜鉛、IIIA属のスカンジウム、イットリ
ウム、IIIB族のホウ素、アルミニウム、ガリウム、
インジウム、IVA属のチタン、ジルコニウム、IVB
属の珪素、ガリウム、錫、鉛、VA属のバナジウム、ニ
オブ、タンタル、VB族のリン、砒素、アンチモン、ビ
スマス、VIA属のクロム、モリブデン、タングステ
ン、VIB属の硫黄、セレン、テルル、VIIA属のマ
ンガン、テクネチウム、レニウム、VIII属の鉄、コ
バルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウ
ム、オスミウム、イリジウム、白金がより好ましい。こ
れらは、単独または2種以上混合した状態でも利用し
て、何ら、さしつかえない。用途に応じて、元素種およ
び酸化物等の化学形態種を選択すればよい。無機物質
は、原料が粒径1μm以下の微粒子であってもよいが、
次に述べる機械的処理により、粒径1μm以下に粉砕さ
れればよい。
【0028】本発明の複合体は、面配向性高分子化合物
と無機物質とを、粉砕、攪拌混合、混練および圧延から
選ばれた少なくとも一種の機械的処理により混合するこ
とにより得られる。機械的処理によって、面配向性高分
子化合物中の積層している結晶面間を劈開させ、この間
隙に無機物質が進入して複合化される。積層している結
晶面間の劈開によって、面配向性高分子化合物の結晶化
度が低下するので、機械的処理の程度は結晶化度の低下
を指標として把握される。
【0029】本発明では、機械的処理の条件は、処理機
械の種類、面配向性高分子化合物および無機物質の種類
等によって大幅に異なるため限定されないが、結晶化度
として10%以上低下するまで機械的処理を行うことが
好ましく、30%以上低下するまで機械的処理を行うこ
とがより好ましい。具体的には、結晶化度60%の面配
向性高分子化合物の場合、結晶化度が50%になるまで
機械的処理を行うことが好ましく、30%になるまで機
械的処理を行うことがより好ましい。結晶性高分子化合
物における結晶領域と非晶領域の割合である結晶化度
は、公知の方法で求められ、例えば、X線回折像からSeg
al法(L.Segal, J.Greely, A.Martin, andC.Conrad, Te
xtile Research Journal, 29, 786(1959))により求め
られる。
【0030】機械的処理は、乾燥状態でもよいが、特定
の溶液の存在下で行えば、面配向性高分子化合物中の積
層している結晶面間の劈開が生成しやすく、より効果的
である。本発明でいう特定の溶液とは、面配向性高分子
化合物の動的粘弾性測定または熱刺激電流測定におい
て、主分散領域に運動性を与える溶液である。特定の溶
液が効果的な理由を、セルロース系高分子化合物を例に
述べる。乾燥状態のセルロース系高分子化合物につい
て、動的粘弾性測定(tanδ−温度曲線)または熱刺
激電流測定(熱刺激電流−温度曲線)を行うと、−15
0〜300℃の温度範囲に分散ピークが観測される。一
つは−150〜−50℃の低温度域に観察される局所分
散ピークであり、もう一つは0〜300℃の温度域に観
察される主分散ピークである。前者はグルコピラノース
リング間の振動運動およびC6位の側鎖の回転運動に起
因しており、後者はセルロース分子主鎖のミクロブラウ
ン運動に起因している。動的粘弾性測定と熱刺激電流測
定とを対比すると、測定原理上、前者の分散ピークの方
が、後者より約100℃以上高くなる。
【0031】動的粘弾性または熱刺激電流の測定時に、
特定の溶液を存在させると、乾燥状態と比較して、主分
散ピーク温度の低下が観測される。このことは、セルロ
ース分子主鎖の運動性、すなわち、主分散領域の運動性
が変化していることを示す。具体的には、セルロースの
動的粘弾性測定において、乾燥状態で210℃以上30
0℃以下に観測される主分散ピーク(以下、α2分散と
いう)は、水分の存在で100℃以下まで低下する。ま
た、乾燥状態で120℃以上200℃以下に観測される
主分散ピーク(以下、αsh分散という)は、疎水性溶
液または両親媒性溶液の存在で100℃以下まで低下す
る。α2分散は、水で運動する水素結合による分子凝集
構造単位に起因し、αsh分散は、疎水性溶液で運動す
る分子凝集構造単位に起因する。α2分散およびαsh
分散のピークの温度は、広義のガラス転移点(Tg)で
ある。
【0032】セルロースは、(11−0)結晶面に相当
するシート構造が基本構造であると考えられている。α
2分散がアサインされている領域は、親水性領域であ
り、シート状構造の間隙の領域である。一方、αsh分
散アサインされている領域は、疎水性領域であり、シー
ト状構造そのものの領域である。シート状構造は、グル
コピラノースリングがその平面を接するように疎水性の
相互作用により形成された領域であって、ヘキサン等の
疎水性の溶液で容易に緩和する。
【0033】セルロースの動的粘弾性測定において、α
sh分散が、乾燥状態の場合192℃で観察されるが、
ベンゼン存在下で10℃、アセトン存在下で41℃、デ
カリン存在下で40℃、四塩化炭素存在下で20℃、お
よびトルエン存在下で15℃にそれぞれ低下することが
報告されている(福岡大学家政学部紀要、平成7年1月
発行、藤岡留美子、真鍋征一、p.18、およびProcee
dings of '99 Pusan-Kyeongnam / Kyushu Seibu Joint
Symposium on High Polymers (9th) and Fibers (7th),
1995[26](韓国)Rumiko Fujioka and Sei-ichi Manab
e, P13-20)。
【0034】図3に、セルロースの熱刺激電流測定の熱
刺激電流−温度曲線を示すが、乾燥状態の場合、χ1、
χ2分散が観察され、ヘキサン存在の場合、約50℃低
下した0℃近傍でχ分散に収束する。これらの結果は、
セルロース系高分子化合物が親水性であるだけでなく、
セルロース系高分子化合物中に、疎水性溶液によっても
運動し得る分子凝集領域が存在することを示している。
当然、この領域には疎水性物質が収容されるものと推測
される。
【0035】ナイロン66の場合、高温領域に、動的粘
弾性におけるα分散、65〜80℃にα‘分散、−50
〜−40℃にβ分散が知られている。α‘分散は3−5
%の水の存在で急激に0℃近辺に低温シフトし、水素結
合の破壊に伴う主査の運動である(例えば、R.H.B
oyel,J.Chem.Phys.,30、1276
(1959))。β分散は水分率0.9%で始めて出現
する緩和ピークで、メチレン鎖と隣接するフリーのアミ
ド結合の局所的運動とされる(A.E.Woodwar
ds et.al., J.Poly.Sci.,4、23
(1960))。ナイロン6の場合も、水分により誘起
される結晶化が知られ、時にはα2からα1に変化する
(G.J.Kettle、polymer、18,74
3(1977))。疎水性有機溶液の存在下での動的粘
弾性の測定はなされていないが、主分散であるα‘分散
がアミド間の水素結合である以上、その両端に直接連な
る疎水性メチレンが、疎水性溶液で影響を受け、結局主
分散を動かすと考えられる。このように、事情はセルロ
ースの場合と同様であり、金属または無機酸化物を規則
的に収容可能と考えられる。
【0036】以上のように、面配向性高分子化合物の動
的粘弾性測定または熱刺激電流測定において、主分散領
域に運動性を与える溶液として、親水性溶液、疎水性溶
液または両親媒性溶液がある。このような溶液の存在に
よって、面配向性高分子化合物のTgが低下する。Tg
を低下させた状態で、Tg以上の温度領域で面配向性高
分子化合物と無機物質とを、粉砕、攪拌混合、混練およ
び圧延から選ばれた少なくとも一種の機械的処理を行う
ことにより、面配向性高分子化合物は、その主鎖がミク
ロブラウン運動により運動性が付与されて膨潤してゴム
状の状態になっており、混合された無機物質はナノレベ
ルで分散する。
【0037】本発明における主分散領域に運動性を与え
る溶液とは、動的粘弾性測定において、主分散ピークで
あるα2分散又はαsh分散の出現温度を、好ましくは
100℃以下まで低下させる溶液、または熱刺激電流測
定において、主分散χを好ましくは20℃以下まで低下
させる溶液である。主分散領域に運動性を与える溶液と
して、本発明で用いられる親水性溶液は、例えば、水、
アルコール、アルキレングリコール、低級脂肪酸、低重
合度ポリアルキレングリコール、グリセロール、芳香族
カルボン酸、フェノール系化合物等である。アルコール
としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブ
タノール、ペンタノール等、アルキレングリコールとし
ては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタン
ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙
げられる。低級脂肪酸としては、炭素数9以下のもので
あり、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。低重合度ポ
リアルキレングリコールとしては、重合度20以下のポ
リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が
挙げられる。芳香族カルボン酸としては、安息香酸、ア
ミノ安息香酸、ベンゼンジカルボン酸等、フェノール系
化合物としては、フェノール、アミノフェノール、ジヒ
ドロキシベンゼン等が挙げられる。これらの中で好まし
いものは、水およびグリコールである。
【0038】主分散領域に運動性を与える溶液として、
本発明で用いられる両親媒性溶液は、例えば、アミド、
スルホキシド、スルホラン、ピロリドン等である。アミ
ドとしては、酸アミド、ラクタム等、スルホキシドとし
ては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド
等、ピロリドンとしては、N−メチル−2−ピロリドン
等が挙げられる。両親媒性溶液は、基本的には高分子化
合物の水素結合領域に作用するが、芳香族化合物であれ
ば、ベンゼン構造部分が疎水性領域にも作用する。
【0039】主分散領域に運動性を与える溶液として、
本発明で用いられる疎水性溶液は、例えば、脂肪族炭化
水素、芳香族炭化水素、可塑剤等である。脂肪族炭化水
素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタ
ン、ノナン、デカン、ケロシン、シクロヘキサン、デカ
リン等、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等が挙げられる。また、可塑剤としては、
一般の熱成形に使用されるものが使用でき、ジカルボン
酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。
【0040】溶液は、単独でもよいが、親水性溶液、疎
水性溶液および両親媒性溶液から選ばれた2種以上の混
合系でもよい。溶液種の選択は、複合化すべき熱可塑性
高分子化合物により適宜決定される。取扱いが容易で、
コスト的に有利なことから、好ましい溶液は水である。
面配向性高分子化合物と無機物質は、粉砕、攪拌混合、
混練および圧延から選ばれた少なくとも一種の機械的処
理によって、衝撃力、せん断力、摩擦力、圧縮力等の多
様な力で、破壊、凝着、変形の繰り返しを受けながら混
合される。具体的な機械的処理は、回転ボールミル、振
動型ボールミル、遊星ボールミル等の媒体型の粉砕機、
バンバリーミキサー等の攪拌羽根型の混合機を用いた処
理、プレス(圧延)機での繰り返し処理等である。これ
らの処理を組み合わせてもよい。
【0041】無機物質の微粒子の分散の状態は、原子間
力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)によ
り観察される。これらの観察から、本発明の複合体で
は、無機物質の微粒子が1μm以下のオーダーで、無機
物質の微粒子と面配向性高分子化合物との間には空隙が
無く密着した状態で分散しており、より精密に複合化し
たものでは0.5ミクロン以下のオーダーで無機物質の
微粒子が分散している。このような複合体は、従来のマ
クロ分散した混合物と比較して、無機物質のそれぞれの
性質に基づく、磁性、導電性(電磁波シールド性)、抗
菌性、触媒活性、錯体形成を利用した特殊吸着効果等
が、より顕著に発揮される。
【0042】本発明の複合体から得られる、無機物質か
らなる微粒子多孔体は5m2/g以上の比表面積を有す
る。微粒子状多孔体の粒径は、通常、1〜300μm、
空孔率は、通常、20〜95%であり、形状は、通常、
長軸/短軸比1〜10の楕円状不定形である。従来の金
属微粒子は球状のものが多く、また多孔質ではないた
め、粒子径が1μm以下の超微粒子でも比表面積は2−
3μm程度と比較的小さく、触媒活性等にも限界があっ
たが、本発明の不定形の微粒子状多孔体においては、比
表面積が著しく高いため優れた触媒活性が発揮される。
【0043】このような無機物質の不定形の微粒子状多
孔体は、本発明の複合体を焼結することにより得られ
る。焼結条件は複合体成分である面配向性高分子化合物
や無機物質により異なるが、面配向性高分子化合物の分
解温度以上で無機物質の焼結温度以上および無機物質の
融解温度未満であることが好ましい。例えば、面配向性
物質がセルロースで、無機物質が銅の場合、600〜1
080℃が好ましい。無機物質は、その融解温度未満の
温度で焼結が行われるため、複合体中の微粒子形態をほ
ぼ保持して焼結されるので、不定形の微粒子状多孔体
は、高い比表面積を示していると考えられる。焼結する
ときの温度が高いほど、時間が長いほど焼結が進むの
で、不定形の微粒子状多孔体の比表面積は低下すると考
えられ、これを利用して比表面積の制御が可能である。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を具体
的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。本発明における、見かけの微結晶サイズ(AC
S)、原子間力顕微鏡(AFM)観察および比表面積測
定法を次に示す。
【0045】(1)ACS Scherrerの式(P.Scherrer and Gottinger, Na
chr., 2, 98(1918))を用いて評価する。 ACS=0.9λ/βcosθ β=(B2−b21/2 ここで、λは、X線の波長(1.5418オングストロ
ーム);θは、(11−0)結晶面に対応する回折角
度;bは、装置定数(0.2°);Bは、(11−0)
結晶面の回折ピークの半値幅である。
【0046】(2)AFM観察 デジタルインスツルメント社製原子間力顕微鏡NanoScop
eIIIaを用いて、タッピングモードで観察する。 (3)比表面積 カンタクロム(株)製オートソーブ−1を用い、窒素に
より測定する。比表面積はBET法により算出する。
【0047】
【実施例1、2、3、比較例1】木材パルプ(重合度:
600、(11−0)結晶面のACS:46オングスト
ローム;実施例1)、コットンリンターパルプ(重合
度:350、(11−0)結晶面のACS:50オング
ストローム;実施例2)およびバクテリアセルロース
(重合度:3600、(11−0)結晶面のACS:5
1オングストローム;実施例3)を、それぞれ水分率3
0質量%(乾燥質量に対する水の分量)に調製し、密閉
容器に1昼夜以上静置した。この水分率は、ちょうど小
角X線における長周期構造が出現する値であり、セルロ
ースの構造変化を誘起させるに適当な水分率と考えられ
る。
【0048】この水分率で、他の金属や無機物質を機械
的刺激によりアロイ化させると、金属や無機物質は長周
期の変化する方向、具体的には、非晶部のα2領域に進
入し、最終的には(11−0)結晶面の劈開部(すべり
面)に沿って配置されるものと考えられる。また既に述
べたように、セルロース非晶領域における親水性領域の
Tgも、この水分率においてちょうど室温まで低下して
おり、容易に構造変化がもたらされる。
【0049】次に、上記の静置した木材パルプ、コット
ンリンターパルプおよびバクテリアセルロース各10g
(乾燥質量換算)と銅粉末((株)高純度化学研究所製、
粒径200メッシュパス)10gを、各々、密閉型の遠
心式ボールミル(型式P5、フリッチュジャパン製、遊
星型ボールミル)に入れ、回転速度300rpmで3時
間粉砕混合した。粉砕には直径20mmのジルコニアビ
ーズを使用した(この時のビーズの加速度は12Gであ
る)。
【0050】実施例1、2、3で得られた複合体は、す
べてが銅光沢を維持していた。光沢の程度は肉眼判定で
も、明らかに実施例3、2、1の順で光沢の度合いが高
かった。実施例3で得られた複合体の銅成分の分析走査
型顕微鏡写真を図4に示す。図4によると、銅は複合体
全体に均一に分布していることがわかる。さらに高倍率
の原子間力顕微鏡写真を図5に示す。図5において、黒
く不定形状に観察されるのが銅である。セルロースと銅
は質量比1:1で複合化しているが、比重が大きく異な
るため、容積比ではセルロースと銅は6:1であり、セ
ルロースマトリックス中に銅がサブミクロンからナノレ
ベルで分散しているのが観察される。
【0051】得られたこれらの複合体を19.6MPa
の圧力で25℃で圧縮してペレットを調製した。このペ
レットについて電気抵抗を測定した。比較例として、前
記バクテリアセルロース各10g(乾燥質量換算)と銅粉
末((株)高純度化学研究所製、粒径200メッシュパ
ス)10gを回転式のミキサーでごく簡単に混合処理
し、セルロースと銅の混合物を得た。得られた混合物か
ら実施例と同様にペレットを調製し、電気抵抗を測定し
た。実施例1、2および3のペレットの電気抵抗は、そ
れぞれ6.65×10-3Ωcm、4.35×10-3Ωc
mおよび1.25×10-3Ωcmであり、バクテリアセ
ルロースからのものが最も小さかった。比較例1のもの
は5.0×10-2Ωcmであり、実施例より一桁程度高
かった。
【0052】
【実施例4、5】実施例3で用いたバクテリアセルロー
スを水分率6質量%に調節し、バクテリアセルロース1
0g(乾燥質量換算)とビスマス粉末((株)高純度化学
研究所製、粒径180μmパス;実施例4)10gおよ
び銀粉末((株)高純度化学研究所製、粒径約2μm;
実施例5)10gを、各々密閉型の遠心式ボールミル
(型式P5、フリッチュジャパン製、遊星型ボールミ
ル)で300rpm、3時間粉砕混合した。得られた複
合体枌体を原子間力顕微鏡で観察したが、実施例3と同
様バクテリアセルロースと各々金属はサブミクロンから
ナノレベルで混合していた。
【0053】
【実施例6、比較例2】実施例3で用いたバクテリアセ
ルロースを絶乾状態で使用し、実施例3と同様の操作で
銅との複合体を作成した。3時間の混合では、混合は不
均一であり、6時間の混合で均一になった。得られた複
合体の金属光沢は低下し、やや暗褐色であったが、銅の
分散はナノレベルであった。光沢が低下している理由と
して、セルロース自体がメカノケミカル的にラジカル崩
壊していることが考えられる。得られた複合体を空気存
在下で600℃、30分焼結し、バクテリアセルロース
を分解除去した。この焼結物の走査型電子顕微鏡写真を
図6に示す。焼結物は著しい多孔体で、比表面積は9m
2/gであり、元の銅粉末の0.3m2/gに比べ著しく
大きかった。
【0054】比較例2として、銅単独で同様の遠心式ボ
ールミル処理を行った結果、銅どうしが凝集結合し、巨
大な鱗片状物しか得られなかった。実施例6の焼結物お
よび比較例2の鱗片状物を19.6MPa、25℃で圧
縮してペレットを調製し、電気抵抗を測定した。実施例
6の電気抵抗は4×10-6Ωcmであり、バルク銅の電
気抵抗1×10-6Ωcmに極めて近い値であった。比較
例2の電気抵抗は1×10-5でありバルク銅より一桁程
度高かった。
【0055】
【実施例7】実施例3で用いたバクテリアセルロースを
水分率6質量%に調節し、バクテリアセルロースと銅粉
末((株)高純度化学研究所製、粒径200メッシュパ
ス)を3(セルロース、乾燥換算質量):17(銅、乾燥質
量)の割合でスパチュラで簡単に混合し、4.9MPa
の圧力で厚さ1mmのペレットを調製した。このペレッ
トを金属ロール間で、金属ロール間距離10μmになる
まで圧延した(圧縮比100)。これら圧延試料を積み重
ね、再度圧延を、最終圧縮比10,000になるまで繰
り返した。断面を観察したところ、バクテリアセルロー
スと銅はそれぞれ、ナノレベルで混合していた。
【0056】
【実施例8】相対湿度60%、温度20℃の条件で調湿
したパラフェニレンテレフタレート10gと実施例1か
ら3で用いた銅粉末10gを密閉型の遠心式ボールミル
(型式P5、フリッチュジャパン製、遊星型ボールミ
ル)に入れ、回転速度350rpmで5時間、粉砕混合
した。粉砕には直径20mmのジルコニアビーズを使用
した(この時のビーズの加速度は15Gである)。得ら
れた複合体を原子間力顕微鏡で観察すると、銅はサブミ
クロンからナノレベルでポリフェニレンテレフタレート
中に分散していた。
【0057】
【発明の効果】本発明の複合体は、従来の単なる物理的
に混合された複合体に比べ、混合がより精密で、かつ,
面配向性物質の結晶面間に規則正しく無機物質が微分散
されているため、無機物質のもつそれぞれの特性、例え
ば、磁性、導電性(電磁波シールド性)、抗菌性等機能
がより顕著に向上している。複合体を焼結し、面配向性
高分子物質を焼結除去して得られた無機物質からなる微
粒子状多孔体は、比表面積が5m2/g以上と著しく高い
ため、表面を利用する触媒活性や吸着効果等の特性に著
しく優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械的処理による各結晶面のX線回折強度の低
下度合いを示すグラフ。
【図2】セルロース(11−0)結晶面の機械的処理に
伴う劈開現象の模式図。
【図3】セルロースの熱刺激電流−温度曲線。
【図4】セルロース/銅複合体の走査型電子顕微鏡写
真。
【図5】セルロース/銅複合体の原子間力顕微鏡写真。
【図6】銅多孔体の走査型顕微鏡写真。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 面配向性高分子化合物と粒径1μm以下
    の無機物質の微粒子とからなる複合体であって、微粒子
    が複合体中に分散していると共に、高分子化合物と密着
    していることを特徴とする複合体。
  2. 【請求項2】 無機物質の微粒子が面配向性高分子化合
    物の劈開した結晶面間に取り込まれて分散しており、高
    分子化合物と密着していることを特徴とする請求項1記
    載の複合体。
  3. 【請求項3】 面配向性高分子化合物が、セルロース系
    高分子化合物、ポリアミド系高分子化合物およびポリウ
    レタン系高分子化合物から選ばれた少なくとも一種であ
    ることを特徴とする請求項1または2記載の複合体。
  4. 【請求項4】 セルロース系高分子化合物が、木綿、木
    材由来のパルプ、天然セルロース、再生セルロース、廃
    バイオマス、キチンおよびキトサンから選ばれた少なく
    とも一種であることを特徴とする請求項3記載の複合
    体。
  5. 【請求項5】 セルロース系高分子化合物の(11−
    0)結晶面の見かけの微結晶サイズが30オングストロ
    ーム以上であることを特徴とする請求項3または4記載
    の複合体。
  6. 【請求項6】 無機物質が、元素周期律表のランタノイ
    ドおよびアクチノイドを除く金属若しくは非金属、それ
    らの酸化物、窒化物若しくは炭素化物、またはこれらの
    混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか
    1項に記載の複合体。
  7. 【請求項7】 元素周期律表のランタノイドおよびアク
    チノイドを除く金属若しくは非金属が、IA属のルビジ
    ウム、セシウム、IB属の銅、銀、金、IIA属のマグ
    ネシウム、カルシウム、バリウム、IIB属の亜鉛、I
    IIA属のスカンジウム、イットリウム、IIIB族の
    ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、IVA
    属のチタン、ジルコニウム、IVB属の珪素、ゲルマニ
    ウム、錫、鉛、VA属のバナジウム、ニオブ、タンタ
    ル、VB族のリン、砒素、アンチモン、ビスマス、VI
    A属のクロム、モリブデン、タングステン、VIB属の
    硫黄、セレン、テルル、VIIA属のマンガン、テクネ
    チウム、レニウム、VIII属の鉄、コバルト、ニッケ
    ル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、
    イリジウムおよび白金から選ばれる少なくとも1種であ
    ることを特徴とする請求項6記載の複合体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の複
    合体を焼結することによって製造され、かつ、比表面積
    が5m2/g以上である、無機物質からなる微粒子状多孔
    体。
  9. 【請求項9】 面配向性高分子化合物を無機物質と共
    に、粉砕、攪拌混合、混練および圧延から選ばれた少な
    くとも一種の機械的処理を行うことにより、面配向性高
    分子化合物の結晶面間を劈開し、無機物質と複合化する
    ことを特徴とする複合体の製造法。
  10. 【請求項10】 面配向性高分子化合物の動的粘弾性ま
    たは熱刺激電流測定における主分散領域に運動性を与え
    る溶液の存在下に、機械的処理を行うことを特徴とする
    請求項9記載の複合体の製造法。
  11. 【請求項11】 ガラス転移点以上の温度領域で機械的
    処理を行うことを特徴とする請求項10記載の複合体の
    製造法。
  12. 【請求項12】 面配向性高分子化合物の動的粘弾性ま
    たは熱刺激電流測定における主分散領域に運動性を与え
    る溶液が、親水性溶液であることを特徴とする請求項1
    0または11記載の複合体の製造法。
  13. 【請求項13】 面配向性高分子化合物の動的粘弾性ま
    たは熱刺激電流測定における主分散領域に運動性を与え
    る溶液が、疎水性溶液であることを特徴とする請求項1
    0または11記載の複合体の製造法。
  14. 【請求項14】 面配向性高分子化合物の動的粘弾性ま
    たは熱刺激電流測定における主分散領域に運動性を与え
    る溶液が、両親媒性溶液であることを特徴とする請求項
    10または11記載の複合体の製造法。
  15. 【請求項15】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の
    複合体を、面配向性高分子化合物の分解温度および無機
    物質の焼結温度のいずれか高い温度以上であって、無機
    物質の融解温度未満の温度で燒結し、高分子化合物を焼
    却、除去することを特徴とする無機物質からなる微粒子
    状多孔体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014208390A1 (ja) * 2013-06-28 2014-12-31 八千代工業株式会社 抗微生物材料
CN115551807A (zh) * 2020-06-22 2022-12-30 国立大学法人东京工业大学 镧/钼复合氧化物、抗菌性烧结体和抗病毒性烧结体

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