JP2003300730A - アトミックドーピング酸化チタンおよびその製造方法 - Google Patents

アトミックドーピング酸化チタンおよびその製造方法

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JP2003300730A JP2002139300A JP2002139300A JP2003300730A JP 2003300730 A JP2003300730 A JP 2003300730A JP 2002139300 A JP2002139300 A JP 2002139300A JP 2002139300 A JP2002139300 A JP 2002139300A JP 2003300730 A JP2003300730 A JP 2003300730A
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Atsushi Takeda
篤 竹田
Chihiro Shiyounai
千尋 墻内
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ISI KK
JAPAN NANOTECH CO Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、二酸化チタン結晶格子中に
存在する特定の結晶面に、金属の非酸化状態のアトミッ
クドーピング層を周期的に配列させ、きわめて高い機能
を該基本粒子に付与することである。また、その得られ
た粒子表面のプラズマチャンバー内の有機性汚染官能基
を、さらに低温大気圧プラズマ等により完全に除去し、
生体に安全な素材を提供することである。 【解決手段】 本発明に係るアトミックドーピング二酸
化チタンは、アナターゼ型の単結晶粒子、ルチル型の単
結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒子又はこれらの混
合粒子を主体とする高周波熱プラズマ反応によって瞬時
にドーパントの金属原子状態の周期的配列を各単体粒子
内部に形成させることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アトミックドープ
酸化チタンに関し適用する。
【0002】
【従来の技術】従来、無機材料のドーピング技術はイオ
ニックな現象が多い。すなわち、標的へはイオン化させ
て元素を注入するほうがより効率的で、粒子中へも生成
時同時反応よりも二次工程によるものが多い。発明者ら
は、1990年より熱プラズマによる機能性超微粒子の
研究開発に取り組んできたが、その成果として光遮蔽剤
としての酸化チタン超微粒子があるがその結晶学的構造
は不明であり、ドーパントは複合酸化物としての存在状
態または、イオンドーピングされた存在状態としての判
断しか下しえなかった。
【0003】一方、従来ゾルゲル法によって開発された
鉄イオンドーピング超微粒子においても、確定的結晶構
造まったく不明であるが、作用や効果は純粋種とは異な
るものとして認識されている。この構造は、高分解能透
過電子顕微鏡(以下「TEM」)とX線分析(以下「E
DX」)による研究が非常に精密になされなければなら
ないのであるが分析と解析が非常に難しく、ドーパント
の存在状態を決定できないため放置されており真にドー
ピングなされているかどうかは不明である。
【0004】ところで、発明者らが開発対象としてきた
無機系の紫外線遮蔽材料においては、一般的には酸化チ
タン超微粒子が最もよく用いられるが、これは紫外線波
長領域においては260〜320nmにおいて単一の極
大吸収を持っているが、結晶がアモルファスの場合はき
わめて強い光活性作用を伴うため、目的の複合体への適
用ができなかった。同時に320nm以上可視光線領域
までの連続した光スペクトル領域での遮蔽性はまったく
欠如していて極大吸収を持たない。可視光線領域では従
来、顔料級酸化チタン(粒子径0.1〜0.4μm)が
光遮蔽剤として使われていたが、どんなにうまく分散し
ても不透明か半透明の分散体又は成膜材料しか得られな
かった。
【0005】また、本発明者らが開発してきた熱プラズ
マ合成酸化チタンは、鉄やアルミニウムを原料のチタニ
ウム粉末と同時に酸化燃焼させるので、イオンドーピン
グがなされたものであって、光遮蔽バンドギャップと流
動性、均質な分散性などきわめて高い機能が付与されて
なるが、これはイオンドーピングによる成果と考えられ
てきた。しかし、常時良好な性能が得られていたわけで
はなく製造上再現性が不安定でその理由の解釈に疑問が
残っていた。そのため、ドーパントを自由に変更するこ
とができず、電子材料や生体材料その他の高機能性材料
開発には、理論的に裏づけが無くきわめて重大な課題で
あった。
【0006】一方、酸化チタンは、等電位点がおよそp
H=6.0近傍でゼロであるため純水中では凝集が発生
し即座に沈降する。この現象を防ぐため、種々の表面処
理方法が開発されているが、分散性を付与し且つ光触媒
作用を抑制するため、いわゆるゾルゲル法又はこの改良
法を用いて、シリカなどの酸化物薄膜を形成する方法が
本発明者を含めて数社から提供されている。しかし、本
発明者以外の技術ではほとんどが反応触媒や溶剤を用い
るため急激な加水分解反応が発生し、粒子の凝集を抑え
ることは不可能であり、一次粒子径の30〜数百倍の大
きさからなるフロックや凝結体を生成せしめてしまう。
したがって、分散性の付与と光触媒作用の抑制を同時に
満たした粉体は提供されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情に鑑みなされたものであって、常時一定の条件でドー
パントが酸化チタンの特定の結晶格子面に制御されて存
在するように、TEMおよびEDXで結晶構造を決定す
るとともに、赤外線吸収スペクトル(以下「FTI
R」)によるデータ解析により酸化チタンの赤外線最大
吸収位置の特定とその半値幅の測定によって決定された
熱プラズマ合成酸化チタンであって、ドーパントがアト
ミックな状態である二酸化チタンを提供するとともに、
該二酸化チタンの厳密な品質管理をする技術を提供する
こと、従来品質管理上不明とされてきた酸化チタンの表
面1〜5層部分の結晶工学的解析、およびその表面の有
機官能基による汚染の解明とプラズマクリーニングされ
て成るヒト細胞に感作性が無く該二酸化チタンが光線が
少ない環境であっても、極めて良好なミー散乱を発現す
ることができるアトミックドープ酸化チタンを提供する
ことを目的としている。
【0008】すなわち、TEM分析において、少なくと
も200KV以上の出力を有し、点間の分解能が1.8
Å以上である非常に良好に管理されたTEMによって、
評価対象となる該二酸化チタンの結晶格子像を明瞭にデ
ータ分析し、なおかつドーパンである金属がどの結晶面
に制御されて存在するかを決定すること、同時にEDX
によって粒子1ヶの試料に対してX線を通過させて得ら
れる特性X線を分析しドーパントを明瞭に分析確認する
こと、また、FTIR分析により酸化チタンの赤外線最
大吸収位置のスペクトル波形を詳細に解析し、粒子が二
次凝集していないことを確認することおよび該吸収波形
の半値幅が狭いことを確認すること、さらに該二酸化チ
タンを真空プラズマあるいは真空紫外線照射によってク
リーニングしたのちUV−可視光線スペクトル分析を行
い、230nm以下に有機官能基の付着による急激な吸
収が発生しないことの確認を同時に行うことを課題とし
ている。
【0009】さらに該二酸化チタン粒子を熱プラズマ中
で合成するに際して、より高温域において原料金属また
は/および酸化物を瞬時に気化させつつ気相から固相へ
の反応を誘導し、結晶が構成される際に即座にドーパン
トが特定の結晶面に規則的に配列されることを課題とし
ている。これによって、より広い面で金属のバンドギャ
ップが完成し、光の反射・吸収が有効になされること、
さらに導電性に代表される電子物性を獲得することをも
課題としている。
【0010】本発明では、また上記機能を有する酸化チ
タン微粒子のドーピングイオン種を幅広く提案し、さら
に数種類のチタン微粒子を同時に使用する場合を提案す
るものである。
【0011】本発明では、必要に応じて散乱反射率を高
めるため、若しくは光触媒作用が強い酸化チタン粒子で
あるときにはその光触媒作用を抑制するために、粒子表
面に核体をなす結晶の光屈折率より低い屈折率を持つシ
リカなどの超薄膜層を形成することを課題としている。
【0012】本発明では、さらに上記のような素材が皮
膚または細胞に安全性が保てるように、熱プラズマ中で
合成された粒子表面に頻繁に汚染される有機官能基を、
完全に切断除去するため、低温プラズマ中において粒子
を旋回乱流を起こさせながら、または/および真空紫外
線〜2537nmを照射してOリングの蒸発やプラズマ
トーチ部分等の配管部品のプラズマエッチングによって
分解させられた芳香性官能基を除去し、その結果をUV
−可視スペクトロメーターによって230−200nm
に異常な前記官能基群による吸収が無いことを証明する
ことを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のアトミッ
クドーピング二酸化チタンは、アナターゼ型の単結晶粒
子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型の単結晶粒
子又はこれらの混合粒子を主体とする高温酸化型酸化チ
タン粉体であって、前記粒子はFeなどのドーパント
が、ルチルの固有な結晶面(301)にそって、4周期
ごとに出現配列してなるように形成されている。そのた
め、該アトミックドーピング面が光反射面または光吸収
面として多重に有効活用される面として存在している。
当該ドーパントはFeにおいては二酸化チタンに対して
0.05〜5.5重量%配合されている。またプラズマ
合成後に当該粒子から2μm以上のサイズの粒子が分級
除去され粒子径が5〜2000nmに調整されて凝集二
次粒子を含有しないことを特徴とする。
【0014】また請求項1記載のアトミックドーピング
二酸化チタンは、必要に応じて、該粒子表面にアモルフ
ァスシリカ超薄膜を1〜10nmの膜厚で被覆形成し、
当該粒子表面にシラノール基が付与されほぼ完全に粒子
間に対抗電位が発生し、粒子径が5〜1000nmで二
次凝集粒子を形成しないことを特徴とする。
【0015】また、請求項1又は2記載のアトミックド
ーピング酸化チタンは、結晶格子中にドーパントが面的
に捕獲された金属原子面による酸素吸収性を持ち、さら
に紫外線波長域において290〜315nm320
〜350nm、及び365〜390nmにバックグラ
ウンドの高い極大吸収を有し、さらに可視光線領域に高
い吸収能を同時に有するワイドバンドギャップ二酸化チ
タン超微粒子であって、面的にドーパントが酸化された
ときには赤外線吸収機能が生ずることを特徴とする。
【0016】請求項1、請求項2および請求項3記載の
アトミックドーピング二酸化チタンは、熱プラズマ空間
でたとえ合成されても、同時に生成される有機官能性ガ
ス体の当該粒子表面への強烈な吸着作用により、チャン
バーから取り出されたときは異臭を伴っていることが多
い。また、これらの官能基は低分子量であり、ヒト皮膚
細胞にかなり浸透性があるものと考えられるが、まだ明
確に物質が同定されてはいない。そのため、本発明にお
いては、これらを生体に対しては「異物」であると考
え、完全に除去する必要があるので当該粒子をプラズマ
合成後にさらに、低温大気圧プラズマまたは、真空プラ
ズマ法による上記官能基のアッシングを行ったり、真空
紫外線又は/および短波長紫外線による表面酸化を実施
してクリーニングすることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に実施形態と実施例を挙げて
本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限
定して解釈されない。
【0018】本発明に係るアトミックドーピング酸化チ
タンは、酸化チタン単結晶粒子を主体とする熱プラズマ
合成酸化チタン粉体であって、前記粒子はアルミニウ
ム、鉄、亜鉛、セリウム、インジウム、ユーロピウム、
その他該二酸化チタンにバンドギャップを付与せしめる
金属を酸化チタンに対して0.05〜10.0重量%ド
ーピングした金属原子膜ドーピング酸化チタン粒子で且
つ一次粒子径が5〜2000nmで二次粒子を形成しな
いことを特徴とする(以下アトミックドーピング型とい
う)。ここで、酸化チタン単結晶粒子は、アナターゼ型
の単結晶粒子、ルチル型の単結晶粒子、ブルッカイト型
の単結晶粒子又はこれらの混合粒子である。
【0019】本発明におけるアトミックドーピング型と
は、ドーピングされた金属元素が初生的には非酸化状態
で存在し、それらが規則的な配列をなして原子レベルで
面的、立体的に解析可能な状態を言い、単に隙間にかっ
てに原子が飛び込んだイオンドーピングとは根本的に存
在形態が異なる現象をいう。したがって、この解析には
高度の結晶工学的根拠が必要である。
【0020】上記アトミックドーピング型二酸化チタン
においては、粒子概観は球状をなしてなり、その内部構
造は、十分精密なTEM観察によれば少なくとも2方向
の結晶格子が視野に表示される。それらを写真撮影また
はデジタル画像解析(CCDカメラによる)によって結
晶格子間隔の実測、交差する2結晶格子のなす角度の測
定、格子のASTMカードとの比較、X線回折像の解析
等によって、表示された格子が結晶内でどのような状態
を表すのかを詳細に検証される。
【0021】ここで、TEMは、少なくとも200KV
以上の出力を持ち、望ましくは300KV以上の出力で
あって同時に2点間の点分解能が1.8Åであるように
完全に整備されてなるものでなければならない。なお、
この数値は通常能力としてはほぼ最高の状態であり、粒
子1個単位で十分に分析が可能なものである。さらにE
DXは、100KV級のTEMに接続されていて同様に
粒子1個体の分析ができるものである。
【0022】さらにFTIRについては、試料とKBr
粉末とが完全に真空脱水されていて、試料1〜2mgが
KBr200mg中に均質混合され真空圧縮成型ペレッ
トをなし、透明であるように調整されている。したがっ
て、測定上の個人差を徹底的に排除して分析を行うもの
である。
【0023】本発明では、一次粒子径を5〜1000n
mと制御した上で、少なくとも20〜50nm、100
〜300nm及び300nmを超える粒度範囲に正規分
布を持たせることが好ましい。このような粒度分布を持
たせる理由は、最小粒径範囲でレイリー散乱、それ以上
の範囲で紫外線から可視光線をミー散乱させるようにし
たものである。
【0024】本発明では、チタン源と共に鉄又はアルミ
ニウムを熱プラズマ中で蒸発気体化させて、酸化チタン
の結晶格子中に所定量の鉄イオン又はアルミニウムイオ
ンをドーピングする。結晶格子中に大きな不純物準位を
生じさせ、光バンドギャップ及びエレクトロンギャップ
を発現させ、紫外線全域に3ヵ所、特に280〜31
0nm、320〜350nm及び360〜390n
mの各領域に極大吸収を持ち、同時にドーピングされた
金属イオンが酸素を吸収して肉眼で識別できる程度の変
色性(フォトクロミック性)を持たせたものである。特
に340〜350nm及び360〜380nmの各
領域の極大吸収は、顔料級酸化チタンが持ち合わせてい
ないものである。
【0025】アルミニウムを本発明の二酸化チタンに対
して0.5〜8.0重量%ドーピングすると急激に電子
伝導性が付与される。また、粒子表面のOHとの複合
作用によって一方向に卓越した自己電子放出性を与えら
れることになる。同時にこの作用ため、酸化チタンに特
有のコンデンサー機能は減少する。
【0026】本発明において「二次粒子を形成しない」
とは、一次粒子同士の凝集や凝結の発生がないことをい
う。二次粒子が生成すると、一次粒子径を小さくしても
実質の粒径が増大して、溶媒に分散したときに沈降を起
こしてしまう。本発明では、鉄ドーピング酸化チタン粒
子の表面をアモルファスシリカで完全に被覆することで
表面電位の調整を行ない、二次粒子の生成の抑制及び溶
媒中での凝集防止による高分散化を図る。またアルミニ
ウムドーピング酸化チタン粒子は、熱プラズマ合成二酸
化チタンとすることで、前記膜を被膜することなしに表
面電位をマイナスにすることができ、二次粒子の生成の
抑制及び溶媒中での凝集防止による高分散化を図る。し
たがって、何れの粒子も、溶媒中に粉体を分散させた場
合に、分散液や分散体の透明性を確保しつつ、高度の紫
外線遮蔽効果を得ることができるわけである。
【0027】次に本発明に係るアトミックドーピング二
酸化チタン粉体表面に存する有機官能基の除去について
説明する。
【0028】本発明で有機官能基とは、プラズマチャン
バー内部に設置されているエラストマー(いわゆるOリ
ングやバイトン、シリコーンゴムなど)や、フッ素化合
物のプラズマエッチングによるガス化と系内の循環およ
び残留によって生成されたものである。これらは、低温
では気化しないため非常にしつこく粒子表面に固着して
しまう。またこれらを放置したまま複合体を形成する
と、たとえば化粧料などでは、エマルション中にこれら
ラジカルが供給されることになり、非常に危険であるう
え異臭が放出され、実質的にPL法をクリアーできなく
なる。そのため、これらを除去する手段として、低温プ
ラズマ処理、特に大気圧プラズマまたは低圧プラズマが
考えられるが、真空系への影響を考えたい気圧プラズマ
処理を採用した。また、長時間この処理を行うと表面の
水酸基が除去され所望の表面状態がそこなわれるため、
親水性が絶対必要なときには真空紫外線による表面処理
によって問題の官能基を破壊除去する方法をとった。こ
の2種類の手段によって二次工程へのインターフェイス
が好適に得られることになる。
【0029】
【実施例】(実施例1)通常の酸化チタンの製造または
精製工程においては、鉄やアルミニウムイオンが多量に
残留することはない。酸化チタン結晶格子中に存在する
ホールには通常微量の金属や塩素イオンが含まれること
がありこれらのイオン類によって、酸化チタンの特性が
決まることが多い。実施例1においては、酸化チタン超
微粒子は、熱プラズマ中において各25μm以下の金属
チタン粉末97重量%と金属鉄粉末2重量%の混合物
を、3500℃以上のアルゴン・酸素プラズマ中で瞬時
に蒸発させつつ反応させて酸化チタン球状超微粒子を得
た。このときFe原子は結晶格子に歪みを与えないで、
酸化チタン結晶の格子空間に捕獲ドーピングされたもの
と考えられる。図1に得られたFeドーピング酸化チタ
ン粒子の透過型電子顕微鏡による微構造写真を示す。球
状の粒子はルチルである。
【0030】上記図1は、ルチルの結晶単体であり、そ
の粒子内に2〜3の方向性の結晶格子とみられる格子像
が現れている。これを解析するに、もっとも卓越した微
細な構造はルチルの(101)面で、その格子間距離は
3.24Åである。これに対して約50度で斜交するや
や格子間隔の広い格子像が、格子間距離5.44Åであ
った。通常のルチルにはこのような格子間隔の結晶面は
無く、そのため、(101)と交わる角度が同一の結晶
面を選択したところ(301)が認められた。しかし、
この格子間隔は1.35Åであるので、何周期めかにこ
の格子像が現れたものと考えられる。そこで、整数倍で
見つけると4周期めに(101)が現れていたことが判
明した。さらに、EDXデータをとると、Feが当該粒
子に存在することが確認された。これを図2に表す。ま
た、(301)面に直行するように見える格子像のよう
なものはモアレ像であり、実際には存在しない。すなわ
ち、当該ルチル粒子には、格子間隔が5.4Åで鉄の原
子面が周期的に現れることが判明した。したがって、こ
れらの面が本発明で言うアトミックドーピング面であ
る。たとえば、粒子サイズが仮に54nm(=540
Å)であれば、100面のアトミックドーピング格子面
が存在していることになる。なお、これらのドーピング
は、完全に均質ではなく、ところどころに濃集している
ことが判明した。この基本構造は長周期であれば酸化物
超伝導物質のモデルに相当するものである。この解析は
立命館大学理工学部学術フロンティア墻内(かいと)教
授によった。
【0031】Feの存在とその濃度により、本来酸化チ
タン超微粒子が有する固有の紫外線遮蔽域(主として2
80nm〜320nm)を大幅に広域遮蔽した。図2に
実施例1の波長による透過度の依存性を示した。また、
図2に比較例1として、一次粒子径35〜50nmで5
00nm以上の二次粒子を形成した市販酸化チタンの波
長による透過度の依存性を示した。実施例1は、極大吸
収域が290〜315nm域においては、305〜3
10nmに少なくとも1個、320〜350nm域に
おいては、340〜348nmに少なくとも1個、さら
に、365〜390nm域においては、365〜37
5nmに少なくとも1個、それぞれピークを有してい
た。また、これらピークのバックグラウンドは高く極大
吸収位置以外においても全面的に紫外線遮蔽能が高く、
さらに短波長可視光線領域においても高い吸収能を同時
に有していることがUV−可視スペクトロメーターによ
って判明した。
【0032】実施例1で得たワイドバンドギャップ酸化
チタン球状超微粒子の粒度分布は、20〜40nmに個
体数分布最大ピークを有し、100〜300nmに重量
分布最大ピークを有している。しかし、表面特性が通常
の酸化チタンと異なり等電位点がおおよそpH≒4付近
に存在し、純水(pH≒6)におけるゼータ電位が−2
5〜50mVときわめて大きいため、瞬時に完全に分散
し光散乱機能(レイリー散乱およびミー散乱)が著しく
高まり、透明感が高いものであった。
【0033】同時に、上記実施例1の酸化チタンは、純
水以外にも、イソプロピルアルコール、エタノールにも
よく分散することが判明した。また、一旦、それらの溶
剤に均一分散したのち、酢酸エチルのようなインクベー
スに使用される溶剤中に混合しても凝集しないことが判
明した。
【0034】さらに、上記実施例1の酸化チタン粒子に
ついてX線回折を行ったところ、アナターゼを主体と
し、4〜5割のルチルが通常含まれ、少量のブルッカイ
トが共存していた。Feのドーピング率を増加し、5%
程度にするとアナターゼが減少し、ルチルが圧倒的に増
える。
【0035】一方、アトミックドーピングされたFe
は、初期的にはほとんど酸化されていないものと考えら
れ、粉体の色は肌色である。これを強制的に200〜3
00℃で30〜60分加熱すると、色が赤味が強くな
り、フォトクロミック性が得られた。この酸化チタン粒
子のUV−可視スペクトルを測定したところ、前記の光
遮蔽特性がより長波長側において吸収能が明らかに高ま
っていることが判明した。加熱温度をさらに高め短時間
加熱すると、赤外線領域まで吸収能のバックグラウンド
が上昇した。これは、ドーパントが初期的には非酸化状
態で結晶中に取り込まれ、低次酸化されるにつれて、バ
ンドギャップがさらに変化し、自己酸化の程度による酸
素吸収性が認められるものと考えられる。
【0036】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。球
状超微粒子酸化チタン結晶格子中に、鉄やアルミニウム
の不純物準位の比較的高い原子をドーピングすることに
より、酸化チタンの固有の結晶面に周期的にドーピング
面構造が生成され、多重なバンドギャップ構造が明らか
となった。このため、ドーパントの種類や基本物性によ
って多くの昨日が発現されることが判明した。例えば紫
外線遮蔽バンドギャップにおいては、従来280nm〜
320nmに1つしかなかった紫外線最大吸収を29
0nm〜315nm、320nm〜350nm、3
65nm〜390nmにそれぞれ最大吸収をもつように
なった。また、エレクトロンギャップについては、本来
の純粋鉱物結晶が持ちえなかった導電性がアルミニウム
原子のドーピングによって得られたが、これは1粒子内
部において導電性原子面が多数成層していることにより
発揮できるようにした。同時に等電位点を酸性側にシフ
トさせ、二次粒子を形成することなく、極めて高い分散
性を付与できる。この結果、本発明の紫外線遮蔽粉体は
各種母材に分散させたときに、可視光域での透明性、光
触媒活性の抑制及び優れた紫外線遮蔽性を同時に併せ持
ち、且つ安全衛生性を有する。
【0037】同時に、光の散乱を高め、数10nmの球
状超微粒子で起きるレイリー散乱とさらに広い粒子範囲
で起きるミー散乱が得られるため、ラジカル反応が危険
視される活性酸素の抑制ができる。
【0038】また、ドーパントの活性力によって、たと
え活性酸素が発生しても即座に吸着固定できるため、複
合体内部構造などにそれらのラジカルが侵入し、内容物
を変質することを防ぐことができる。
【0039】さらに、上記超微粒子を短時間低温で加熱
することによってドーパントの状態を低次酸化状態にさ
せると、粒子の成長なしに紫外線から赤外線域まで光遮
蔽域を広げることができる。
【0040】また、鉄イオンドーピング酸化チタン粒子
の表面に1〜数nmのアモルファスシリカなどの超薄膜
を少なくとも1層形成することによって、粒子表面に反
射層を付与できるため、分散性を大幅に高めるととも
に、高い反射率を得ることができる。
【0041】さらに、本発明のアトミックドーピング二
酸化チタン表面をプラズマによってアッシングし、完全
にクリーニングすることにより表面汚染物質を取り除き
生体に安全な素材を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉄ドーピング酸化チタン粒子の透過型電子顕微
鏡による微構造写真である。図1は、ルチルの結晶単体
であり、その粒子内に2〜3の方向性の結晶格子とみら
れる格子像が現れている。もっとも卓越した微細な構造
はルチルの(110)面で、その格子間距離は3.24
Åである。これに対して約50度で斜交するやや格子間
隔の広い格子像が、格子間距離5.44Åでルチルの
(301)面の4周期目である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 墻内 千尋 滋賀県大津市清風町26−10 Fターム(参考) 4C083 AB242 CC19 EE03 EE10 4G047 CA02 CA05 CB04 CC03 CD04 CD07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アナターゼ単結晶粒子、ルチル単結晶粒
    子、ブルッカイト単結晶粒子又はこれらの混合粒子を主
    体とする熱プラズマ合成球状二酸化酸化チタンであっ
    て、前記二酸化チタンを構成する特定の結晶面に密着し
    て、非酸化性異種金属の単層または数層が周期的に存在
    してなる基本構造を有し、1球体内に少なくとも数層以
    上の数のパラレルなバンドギャップ面を有し、きわめて
    多重な光吸収または/および光散乱能と、該二酸化チタ
    ン粒子表面に存在するTi−OH結合または/および
    ドーピングされた電子移動速度の速い周期的結晶面の存
    在とにより、半導体構造をなし電子伝導性が付与されて
    なることが、点分解能が1.8Å以上である高分解能透
    過型電子顕微鏡による結晶格子の詳細な観察、X線分析
    による該異種金属の直接的な存在の確認ならびに赤外線
    吸収スペクトルによる二酸化チタンの最大吸収位置およ
    びその吸収波形と半値幅の計測などの結晶学的解析を用
    いて決定されてなり、粒子径が2μm〜5nmに調整さ
    れ同時に光線をミー散乱または/およびレイリー散乱す
    ることを特徴とするアトミックドーピング二酸化チタ
    ン。
  2. 【請求項2】前記金属が、鉄、アルミニウム、亜鉛、セ
    リウム、イットリウム、ビスマス、銅、ユーロピウム、
    インジウムのようなバンドギャップを酸化チタンに付与
    せしめる金属であることを特徴とする請求項1記載のア
    トミックドープ二酸化チタン。
  3. 【請求項3】請求項1、2記載の二酸化チタンがアルゴ
    ン・酸素をプラズマソースとする高周波熱プラズマによ
    って、少なくとも3,500℃以上の温度履歴を得て合
    成され、かつプラズマ装置内部に設置されている有機化
    合物部品のプラズマ分解官能基による該二酸化チタン表
    面の汚染を真空プラズマまたは/および真空紫外線照射
    により完全にクリーニングされてなるヒト皮膚細胞に対
    する感作性が無いことを特徴とするアトミックドープ二
    酸化チタンおよびその製造方法。
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