JP2003255163A - 連続波長可変フォトニック結晶ドロップフィルタ - Google Patents

連続波長可変フォトニック結晶ドロップフィルタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】複数の波長を含む光信号から任意の選択された
少なくとも1つの波長を抽出して再配向することが可能
な波長可変フォトニック結晶ト゛ロッフ゜フィルタ装置の提供。 【解決手段】フォトニック結晶ト゛ロッフ゜フィルタ装置(60)は、フォトニック
結晶(62)のハ゛ント゛キ゛ャッフ゜内の周波数を有する光を伝送す
るための第1の導波路(70)と、第2の導波路(76)とを備え
るフォトニック結晶(62)からなる。第2の導波路(76)は共振空
洞(80)によって第1の導波路(70)に接続され、この共振
空洞(80)は、第1の導波路が伝送する光の少なくとも1
つの波長を抽出し、その抽出された光を第2の導波路(7
6)に再配向する。チューニンク゛装置(90)が装置(60)に含めら
れ、波長の全範囲にわたって抽出される光の波長をチューニ
ンク゛する。係る装置(60)は、WDM通信システム(10)などの光通
信システム(10)用の抽出テ゛ハ゛イスとして特に適する。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する分野】本発明は、一般にフォトニック結
晶の分野に関し、より具体的にはフォトニック結晶ドロ
ップフィルタ、及びフォトニック結晶ドロップフィルタ
の伝送波長をチューニングするための方法に関する。 【0002】 【従来の技術】波長分割多重は、光通信システムの伝送
容量を増大することを可能にするプロセスである。特
に、波長分割多重(WDM)システムにおいては、各々
が異なる光の波長を有する複数の光搬送信号を使用して
情報が伝送される。複数の情報信号の中の異なる1つの
信号でもって各搬送信号を変調することにより、単一の
光ファイバなどの単一の導波デバイスを介して複数の情
報信号を同時に伝送することができる。 【0003】WDMシステムが適切に機能するために
は、そのシステムは、1つの導波路から特定波長の搬送
信号を抽出して、その抽出された搬送信号が伝わる経路
に再配向されるように、その信号を別の導波路にその波
長で追加する能力を備えていなければならない。 【0004】図1は、WDM通信システムの構成要素を
概略的に示すブロック図である。システムは、全体とし
て参照番号10により示され、光ファイバ、又は他の導
波デバイス14を介して異なる光の波長で複数の搬送信
号を送信する信号源12を含む。光ファイバ14は、そ
の光ファイバ14によって伝送される1つ又は複数の搬
送信号を抽出し、その抽出された信号を別の光ファイバ
又は導波デバイス18に再配向できる抽出デバイス16
に接続される。光ファイバ14によって伝送される残り
の搬送信号は、抽出デバイス16を介して光ファイバ2
0などに伝送される。そして、光ファイバ18及び20
によって伝送された搬送信号は、図1に示されていない
処理構造によって更に処理される。 【0005】実用的なWDM通信システムは、多数の搬
送信号を同時に伝送できる必要があり、従って多数の波
長の光を伝送できなければならない。将来的に、WDM
システムは、今日よりも非常に多くの搬送信号を伝送す
ることが必要とされるであろう。しかしながら、既知の
抽出デバイスによって抽出可能な波長の数は、有限であ
り、明確な波長の組だけが、任意の特定の抽出デバイス
設計から導出され得る。更に、将来のWDMシステムに
おいては搬送信号の波長間隔がもっと小さくなるはずで
あり、既知の抽出デバイスは、非常に接近した間隔の信
号を選択的に抽出するのに必要な分解能を備えていな
い。 【0006】例えば、光通信回路において1つの導波路
から特定波長の光を抽出して、その抽出された光を別の
導波路に導くために、通常、ドロップフィルタが使用さ
れている。つまり、ドロップフィルタにより、1つの波
長の光が、光通信回路内の1つの経路から除外され、回
路内の別の経路に追加されることが可能になる。 【0007】しかしながら、既知のドロップフィルタ
は、いくつかの異なった十分に分離された波長だけを抽
出して再配向するように設計され得る。従って、多数の
異なる波長を有する光によって搬送される搬送信号を抽
出する能力が必要なWDMシステムにおいて、既知のド
ロップフィルタは、抽出デバイスとして使用するために
は、十分満足できるものではない。 【0008】フォトニック結晶(PC)は、特定の周波
数範囲にある光の伝搬を阻止することができる周期的な
誘電性構造体である。具体的には、フォトニック結晶
は、屈折率の空間的な周期的変動を有する構造体であ
り、十分に大きな屈折率のコントラストにより、その構
造体の光伝送特性にフォトニックバンドギャップを設け
ることができる(本明細書で使用され、当該技術で一般
に使用される「フォトニックバンドギャップ」という用
語は、フォトニック結晶を介した光の伝搬が阻止される
周波数範囲のことである。更に、本明細書で使用される
「光」という用語は、電磁スペクトルの全体にわたる放
射を含むことが意図され、可視光に限定されない)。 【0009】三次元で空間的な周期性を備えるフォトニ
ック結晶は、その結晶のバンドギャップ内の周波数を有
する光の伝搬をすべての方向で阻止することができる
が、このような構造体の製作は、技術的に困難な場合が
多い。1つの代替案は、二次元の周期的な格子が組み込
まれた二次元フォトニック結晶スラブを利用することで
ある。二次元フォトニック結晶スラブの場合、スラブ内
の光の伝搬は、内部全反射によってスラブの主面に対し
て垂直方向に制限され、スラブ内の主面に対して垂直で
ない方向のスラブ内の光の伝搬は、フォトニック結晶ス
ラブの特性によって制御される。二次元フォトニック結
晶スラブは、標準的な半導体プロセスのプレーナ技術と
互換性を有するという利点を備えており、更にスラブの
平面的な構造により、スラブ内に作成された導波路の光
信号は、相互作用のためにより容易にアクセス可能にな
る。結果として、二次元フォトニック結晶スラブは、能
動デバイスの作成に使用され得る。 【0010】図2は、従来技術で知られている二次元フ
ォトニック結晶スラブの概略的な透視図であり、本発明
の説明に役立つように提供された。フォトニック結晶ス
ラブは、全体として参照番号30により示され、ポスト
34のアレイからなる二次元の周期的な格子を備えるス
ラブ本体32からなる。図2に示されているように、ポ
スト34は、互いに平行に配置されており、上面36か
ら底面38に向かってスラブ本体を貫通して延びてい
る。 【0011】二次元フォトニック結晶スラブ30は、様
々な形態を取ることができる。例えば、ポスト34は、
第1の誘電性材料から形成されたロッドからなることが
でき、スラブ本体32は、第1の誘電性材料の誘電率と
異なる第2の誘電性材料から形成された本体を含むこと
ができる。代案として、ポストは、誘電性材料からなる
スラブ本体に形成された孔からなることができ、又はポ
ストは、誘電性材料のロッドからなることができ、且つ
スラブ本体は空気、又は他の気体、又は真空とすること
ができる。更に、ポストは、ポストの正方形アレイを画
定するように配置されることができ、又は長方形のアレ
イ又は三角形のアレイなどの異なる態様で配置され得
る。 【0012】図2に示されているような二次元フォトニ
ック結晶スラブにおいて、スラブ内の光の伝搬は、内部
全反射によってスラブ面36及び38に対して垂直方向
に制限される。しかしながら、スラブ面に対して垂直で
ない方向のスラブ内の光の伝搬は、スラブの空間的な周
期的構造によって制御される。具体的には、空間的な周
期的構造により、フォトニックバンドギャップがこの構
造の伝送特性に設けられ、スラブを介した光の伝搬が阻
止される。特に、図2の二次元フォトニック結晶スラブ
30内をスラブ面に対して垂直でない方向に伝搬し、且
つスラブのバンドギャップ内の周波数を有する光は、ス
ラブを介して伝搬しないが、バンドギャップ外の周波数
を有する光は、阻止されることなくスラブを介して伝送
される。 【0013】フォトニック結晶の周期的な格子に欠陥を
導入することにより、その欠陥の場所に閉じ込められ、
且つ周囲のフォトニック結晶材料のバンドギャップ内の
共振周波数を備える局所的な電磁状態の存在が可能にな
ることが知られている。これらの欠陥を適切に配置する
ことによって導波路をフォトニック結晶内に作成するこ
とができ、この導波路を介してフォトニック結晶のバン
ドギャップ内の周波数を有する(従って、通常はフォト
ニック結晶を介した伝搬が阻止される)光が、フォトニ
ック結晶を介して伝送される。 【0014】図3は、当該技術分野で知られている二次
元フォトニック結晶スラブ導波装置40を示す概略的な
断面図である。装置40は、空気中の誘電性ロッド44
の長方形アレイから構成されたフォトニック結晶スラブ
42からなる。フォトニック結晶スラブ内の欠陥領域に
よって導波路46が作成されており、この導波路を通っ
て周囲のフォトニック結晶材料のバンドギャップ内の周
波数を有する光が、伝搬できる。図3のフォトニック結
晶スラブにおいて、欠陥領域は、ロッド44の1つの行
を省くことによって作成される。また、欠陥領域は、例
えば、ロッドの一部の除去やロッドの直径の変更などに
よって1つ又は複数の行においてロッドを変更するな
ど、別の方法で作成されることもできる。欠陥領域は、
図3に示されているように直線の導波路を画定するため
に直線で延びることができ、又は湾曲した導波路を画定
するために、例えば90度の湾曲部のような湾曲部を含
むように構成され得る。 【0015】理論的研究と実験的研究により、二次元フ
ォトニック結晶スラブ導波デバイスにおける光の効率的
な誘導が実証されている(非特許文献1を参照された
い)。更に、導波デバイスの導波光学モードと相互作用
するための潜在的な応用例への研究も行われている。こ
れまでに検討されてきた応用例には、チューナブル導波
依存デバイス(共同所有の同時係属出願中の特許文献1
を参照されたい)、及びチャネルドロップフィルタ(特
許文献2を参照されたい)が含まれる。 【0016】 【特許文献1】米国特許出願第09/846,056号
明細書 【特許文献2】米国特許第6,130,969号明細書 【非特許文献1】S.Lin、E.Chow、S.Johnson、及びJ.Jo
annopoulos著、「Demonstration of Highly Efficient
Waveguiding in a Photonic Crystal Slab at the 1.5
μm Wavelength」、Opt.Lett.25、2000年、p.1
297−1299 【0017】 【発明が解決しようとする課題】特許文献1で開示され
ているようなフォトニック結晶デバイスは、WDM通信
システムに要求されるような特定波長の抽出と再配向を
行わない。更に、係るデバイスのチューニングの可能性
は実証されているが、デバイスのチューニング範囲はか
なり制限されている。特許文献2は、WDM通信システ
ム用のフォトニック結晶チャネルドロップフィルタを開
示するが、この開示されたフィルタはチューニングでき
ない。WDMシステムにおいてドロップフィルタが効果
的に機能するためには、フィルタは動作周波数の全範囲
にわたってチューニングできることが望ましい。このよ
うに、既存のフォトニック結晶ベースのデバイスは、一
般的にWDMシステムにおいて抽出デバイスとして使用
するには不十分である。 【0018】従って、複数の波長を含む光信号から1つ
又は複数の波長を抽出して再配向できると共に、任意の
選択された少なくとも1つの波長を光信号から抽出でき
るように連続的にチューニング可能である、WDM通信
システム及び他の用途に使用するための抽出デバイスが
必要とされている。 【0019】 【課題を解決するための手段】本発明は、複数の波長を
含む光信号から任意の選択された少なくとも1つの波長
を抽出して再配向できる、波長可変フォトニック結晶ド
ロップフィルタ装置を提供する。 【0020】本発明によるフォトニック結晶ドロップフ
ィルタ装置は、フォトニック結晶のバンドギャップ内の
周波数を有する光を伝送するための第1の導波路と、第
2の導波路とを備えるフォトニック結晶からなる。第2
の導波路は共振空洞によって第1の導波路に接続されて
おり、この共振空洞は、第1の導波路が伝送する光の少
なくとも1つの波長を抽出し、その抽出された光を第2
の導波路に再配向する。この装置には、第1の導波路か
ら抽出される少なくとも1つの光の波長を制御するため
のチューニング部材も含まれる。 【0021】共振空洞は、1つ又は複数の伝送零点を作
成することにより、第1の導波路の伝送特性を変更し、
その伝送特性は、第1の導波路を介して伝送可能な光
が、第1の導波路を介して伝搬することを阻止される
(即ち、「フィルタリング」されて第1の導波路から除
外される)フォトニック結晶材料のバンドギャップ内の
狭い周波数範囲を含む。第2の導波路を第1の導波路に
共振空洞を介して接続することにより、第1の導波路を
介した伝搬を阻止された光が、第2の導波路に再配向さ
れる。結果として、第1の導波路から1つ又は複数の波
長の光を除去し、その除去した光を第2の導波路に再配
向できるドロップフィルタが提供される。 【0022】本発明の一実施形態によれば、チューニン
グ部材が、第2の導波路内へ延びて、第2の導波路内で
移動可能である。第1の導波路から抽出可能な光の波長
は、共振チャンバに対するこの誘電性チューニング部材
の位置の関数であり、誘電性チューニング部材の位置を
調節することによって、抽出される波長は正確に制御さ
れ得る。 【0023】本発明の別の実施形態によれば、移動装置
が誘電性チューニング部材に接続されており、本装置に
連続的なチューニング能力を付与するように、この移動
装置が第2の導波路内の所望の位置に誘電性チューニン
グ部材を移動させる。好適には、この移動装置は、抽出
される光の波長を非常に精密に制御できるように、非常
に精密な量だけ誘電性チューニング部材を移動できるマ
イクロムーバーからなる。 【0024】本発明によるフォトニック結晶ドロップフ
ィルタ装置は、光信号から抽出される光の波長を正確に
制御できると共に、広い波長範囲内の任意の選択された
波長を抽出するために連続的にチューニングされ得る。
従って、この装置は、複数の波長を含む信号から1つ又
は複数の波長の光を抽出する必要があるWDM通信シス
テム、及び他の用途において抽出デバイスとして使用す
るのに特に適する。 【0025】本発明の更なる利点及び固有の特徴は、本
発明の実施形態に関する以下の詳細な説明によって明ら
かになるであろう。 【0026】 【発明実施の形態】図4は、本発明の一実施形態による
二次元フォトニック結晶ドロップフィルタ装置の概略的
な断面図である。装置は、全体として参照番号60によ
り示され、二次元フォトニック結晶スラブ62(図4に
おいて破線で示されている)からなる。このフォトニッ
ク結晶スラブ62は、スラブ本体66内に埋め込まれた
ポスト64の二次元アレイからなる二次元の周期的な格
子を含む。図4に示される実施形態において、ポスト6
4は誘電性のロッドからなり、スラブ本体は空気からな
る。代替の実施形態において、ポストは、誘電性材料の
スラブ本体に形成された孔からなることができ、或いは
ポストは、第1の誘電性材料のロッドからなることがで
き、且つスラブ本体は、別のガス、又は真空、又は第1
の誘電性材料の誘電率と異なる第2の誘電性材料から形
成された本体からなることができる。 【0027】装置60には、第1の側面72から反対側
の側面74に向かってフォトニック結晶スラブ62を貫
通して延びる第1の導波路70と、第3の側面78から
フォトニック結晶スラブ62内へ延びる第2の導波路7
6も含まれる。第1の導波路70は、誘電性ロッド64
の1つのラインをアレイから省くことによって作成され
ており、第2の導波路76は、誘電性ロッド64の1つ
のラインの一部をアレイから省くことによって作成され
る。代替の実施形態においては、これらの第1及び第2
の導波路は、例えば、ロッドの一部の除去、又はロッド
の直径の変更など、他の方法によって作成可能である。 【0028】フォトニック結晶ドロップフィルタ装置6
0には、第1の導波路と第2の導波路を接続する共振空
洞80も含まれる。図4に示された実施形態において、
共振空洞は、アレイから1つのロッドを省くことによっ
て作成される。この共振空洞は異なる構造からなること
もでき、必要に応じて、ロッドを省くのではなく、ロッ
ドの直径の変更又はロッドの一部の除去によりロッドを
変更することもできる。図4に示されているように、共
振空洞は、第1の導波路の側壁から延び、第2の導波路
は共振空洞から第1の導波路に対して垂直な方向に延び
ている。他の実施形態においては、第2の導波路を、第
1の導波路に対して異なる角度で共振空洞から延ばすこ
とができる。 【0029】第1の導波路70、第2の導波路76、並
びにこれら第1及び第2の導波路を相互接続する共振空
洞80を有する二次元フォトニック結晶スラブ62は、
複数の光の波長からなる光信号が第1の導波路を介して
伝送される際に、ドロップフィルタとして機能する。具
体的には、複数の波長からなる入力光信号が入力端82
において第1の導波路70へ入ると、1つ又は複数の波
長がこの入力光信号から抽出、即ち「フィルタリング」
されて、第2の導波路76に向け直される。入力光信号
の残りの部分は、第1の導波路70を介して伝送され続
け、出力端84において第1の導波路を出射する。つま
り、共振空洞80は、フォトニック結晶材料のバンドギ
ャップ内に伝送零点を形成することによって第1の導波
路の伝送特性を修正するように機能し、第1の導波路を
介して伝搬できる光が、第1の導波路を介した伝搬を阻
止される。この伝送零点の周波数は、共振チャンバの共
振周波数に対応する。第1の導波路の通過を阻止される
波長の光は、第2の導波路に向け直され、出力端86に
おいて第2の導波路を出射する。 【0030】第1の導波路から抽出される光の波長は、
より詳細に後述するように、共振空洞の構造の関数であ
る。従って、共振空洞を適切に設計することにより、特
定の波長又は一組の特定の波長を第1の導波路から抽出
して第2の導波路に再配向することができる。 【0031】図4に示されているように、フォトニック
結晶ドロップフィルタ装置60には、更に第2の導波路
76と軸方向に位置合わせされて第2の導波路内へ延び
る誘電性チューニング部材90も含まれる。第1の導波
路から抽出される光の波長は、共振空洞に対する誘電性
チューニング部材の位置の関数であり、この誘電性チュ
ーニング部材の位置を制御することによって共振チャン
バの共振周波数、ひいては第1の導波路から抽出され得
る光の波長を制御することができる。実際には、誘電性
チューニング部材自体は、第1の導波路内の光から抽出
される光の波長を調節し、その抽出した光を別の経路に
沿って(即ち、第2の導波路に)再配向する導波路とし
て機能する。共振空洞に対する誘電性チューニング部材
の位置に応じて、後述するように調節が可能な多数の位
置範囲が存在する。 【0032】本発明の一実施形態によれば、誘電性チュ
ーニング部材は、第2の導波路76内へ延び、第2の導
波路と実質的に同じ断面サイズである棒状要素からな
る。このチューニング部材90は、円形、正方形、又は
他の矩形形状など、任意の適切な断面形状からなること
ができる。より詳細に後述するように、本発明の他の実
施形態においては、この誘電性チューニング部材を第2
の導波路の外側に配置することができる。 【0033】図4のフォトニック結晶ドロップフィルタ
装置の動作をマイクロ波領域に基づくシステムにおいて
実証した。この実証においては、フォトニック結晶は、
格子定数(格子間隔)8.333mmの正方形の格子を
構成する3.18mmの直径のアルミナロッドから構成
された。アルミナロッドの屈折率は3.1であり、ロッ
ドの長さは12cmであった(これは、妥当な近似に対
して無限の長さであると見なすことができる十分な長さ
である)。この装置を介した伝送が、出力端84におい
てAgilent8509Aネットワークアナライザと2つの
マイクロ波ホーンアンテナを用いて測定された。送信ア
ンテナは第1の導波路の入力端82に配置され、受信ア
ンテナは第1の導波路の出力端84に配置された。 【0034】図4に示されているように、二次元フォト
ニック結晶スラブが組み立てられた。誘電性チューニン
グ部材が第2の導波路内に挿入された。誘電性チューニ
ング部材用の位置の基準点が、共振空洞と第2の導波路
との間のインターフェイスとして設定され、誘電性チュ
ーニング部材をこの位置から図4に示されているように
第2の導波路の方向に距離Dだけ移動させ、第1の導波
路84の出力端で伝送が測定された。共振空洞に起因す
る伝送の複数のノッチ(伝送の最小値)が存在する。図
5はこれらのノッチ周波数をプロットしたグラフであ
り、伝送ノッチの周波数がy軸に沿ってプロットされ、
共振空洞からの距離Dがx軸に沿ってプロットされてい
る。 【0035】図4の構造に関して、誘電性チューニング
部材90が存在しない状態で抽出される周波数は、1
3.61GHzであった。図5に実線で示されているデ
ータは、この装置を13.61GHz付近の様々な周波
数にチューニングされ得ることを示している。この周波
数は、図5に破線で示されているようにDの関数として
線形で変化しており、これは元のデータに対する直線回
帰(linear fit)によって得られた。 【0036】実際には、プレートを使用して任意の周波
数にチューニング可能である多数のD値が存在する。図
5に示すように、この繰り返しの距離は約15.5mm
である。また、特定の距離において、複数の周波数の伝
送ノッチが存在することにも留意すべきである。 【0037】当業者にはよく知られているように、マイ
クロ波領域における前述の特性は、フォトニック結晶、
共振空洞、及び誘電性チューニング部材のサイズを適切
にスケーリングすることによって光の領域にも簡単に拡
張され得る。 【0038】図6は、周波数の異なる様々な共振のQ値
(quality factor)をy軸に沿ってプロットし、x軸に
沿ってプロットされた共振空洞からの誘電性チューニン
グ部材の距離Dの関数として示したグラフである。Q値
(平均で約600)のため、これらの値はフォトニック
結晶の小さな不完全性及び環境に対して非常に敏感であ
り、値が大きく変動している。概してQ値は、第2の伝
送ノッチが出現する領域の付近で減少している。しかし
ながら、他の領域ではQ値が非常に大きく、装置がWD
M用途に非常に魅力的なものになっている。 【0039】また、フォトニック結晶ドロップフィルタ
装置60は、図4に94で概略的に示されている、第2
の導波路内で誘電性チューニング部材を様々な位置に移
動させるための装置を含むことが好ましい。好適には、
この移動装置は、誘電性チューニング部材を非常に小さ
く、非常に正確な距離だけ移動させることができるマイ
クロムーバーからなる。誘電性チューニング部材の移動
が微細であればあるほど、第1の導波路から抽出される
光の波長の制御も微細になるため、この能力は重要であ
る。 【0040】図7は、本発明の別の実施形態によるフォ
トニック結晶ドロップフィルタ装置をチューニングする
ためのステップを示すフローチャートである。方法は、
全体として参照番号100により示され、複数の波長を
備える光信号を伝送する第1の導波路から抽出されるべ
き所望の少なくとも1つの光の波長を選択するステップ
(ステップ110)と、フォトニック結晶内の共振空洞
に対して誘電性チューニング部材を位置決めするステッ
プ(ステップ120)とを含み、抽出された光の1つ又
は複数の波長は、例えば、共振空洞に対する誘電性チュ
ーニング部材の位置の関数である。 【0041】図4に示された実施形態において、共振空
洞は、ロッドのアレイ内の1つのロッド64を省くこと
によって作成される。代替の実施形態においては、ロッ
ドを省くのではなく、ロッドを直径の異なるロッドによ
って置換することができる。例えば、1つのロッドをあ
る寸法に作成して、装置の中心抽出波長を調節すること
が可能であり、必要に応じて誘電性チューニング部材を
用いて周波数を微調整することができる。本発明の別の
実施形態によれば、複数のロッドを省くことによって共
振空洞を作成できる。複数のロッドを除去することによ
り、同じ可動誘電性チューニング部材を用いて2つ又は
それより多い周波数領域を微調整することができる。 【0042】本発明の別の実施形態によれば、図1に点
線で表された追加の抽出デバイス22によって示される
ように、複数のフォトニック結晶ドロップフィルタ装置
が、光通信システムの光ファイバに沿った異なる位置に
接続され得る。それぞれの装置を特定の周波数領域に微
調整し、光ファイバから特定の波長の光を抽出すること
ができる。このようなシステムにおいては、干渉を回避
するために複数の装置を互いからいくつかの単位セルだ
け離しておく必要がある(この「単位セル」は、図4に
示すように、フォトニック結晶のx及びy方向の寸法を
有するセルとして定義され、結晶内のロッドの間隔に等
しい)。 【0043】誘電性チューニング部材90は、この部材
が第2の導波路の外側に位置する場合でも、抽出される
波長の周波数調整に有効であることが判明している。従
って、本発明の別の実施形態においては、誘電性チュー
ニング部材を第2の導波路の外側に配置することができ
る。誘電性チューニング部材を第2の導波路の外側に配
置する場合、その部材は、第2の導波路に平行に、又は
第2の導波路に所定の角度(垂直を含む)で配置され得
る。しかしながら、一般的に誘電性チューニング部材
は、第2の導波路から約1単位セル未満の距離だけ離間
されなければならない。本発明の別の実施形態において
は、光ファイバ18(図1)自体が誘電性チューニング
部材として機能する。このような実施形態においては、
抽出される周波数が、光ファイバを移動させることによ
ってチューニングされ得る。 【0044】本発明の装置は、波長可変ドロップフィル
タ(低誘電性チューニングプレート又は光ファイバを使
用する)、又は波長可変スタブチューナー(高誘電性チ
ューニングプレートを使用する)として使用され得る。 【0045】説明してきた内容は、本発明の模範的な実
施形態を構成するが、本発明は、その範囲から逸脱する
ことなく多数の態様で変更され得ることを認識された
い。例えば、本明細書で開示した実施形態は二次元のフ
ォトニック結晶ドロップフィルタ装置から構成されてい
るが、本発明は、完全な三次元フォトニック結晶装置に
も適用可能である。本発明は多数の態様で変更され得る
ので、本発明は、特許請求の範囲によって要求される限
りにおいてのみ制限されるべきであることを理解された
い。 【0046】以下においては、本発明の種々の構成要件
の組み合わせからなる例示的な実施形態を示す。 1.フォトニック結晶ドロップフィルタ装置(60)であ
って、フォトニック結晶(62)と、前記フォトニック結
晶(62)のバンドギャップ内の周波数を有する光を伝送
するための、前記フォトニック結晶(62)の第1の導波
路(70)と、前記フォトニック結晶(62)の第2の導波
路(76)と、前記第1の導波路(70)及び第2の導波路
(76)を接続して、前記第1の導波路(70)で伝送され
る少なくとも1つの波長の光を抽出し、その抽出した光
を前記第2の導波路(76)に再配向するための共振空洞
(80)と、及び前記第1の導波路(70)から抽出される
少なくとも1つの光の波長を制御するためのチューニン
グ部材(90)とからなる、フォトニック結晶ドロップフ
ィルタ装置(60)。 2.前記第1の導波路(70)が、前記フォトニック結晶
(62)の第1の側面(72)から反対側の第2の側面(7
4)に向かって前記フォトニック結晶(62)を貫通して
延びており、前記第2の導波路(76)が、前記共振空洞
(80)から前記フォトニック結晶(62)の第3の側面
(78)に向かって延び、前記抽出された光を前記装置
(60)から送り出す、上記1記載のフォトニック結晶ド
ロップフィルタ装置(60)。 3.前記チューニング部材(90)が、前記第2の導波路
(76)内の誘電性チューニング部材(90)からなる、上
記1記載のフォトニック結晶ドロップフィルタ装置(6
0)。 4.前記第1の導波路(70)から抽出される少なくとも
1つの光の波長が、前記共振空洞(80)に対する前記チ
ューニング部材(90)の位置の関数であり、前記装置
(60)が、選択された少なくとも1つの光の波長を前記
第1の導波路(70)から抽出するために前記共振空洞
(80)に対して前記チューニング部材(90)の位置を調
節するための、前記チューニング部材(90)に接続され
た移動装置(94)を更に含む、上記1記載のフォトニッ
ク結晶ドロップフィルタ装置(60)。 5.前記フォトニック結晶(62)が、スラブ本体(66)
に組み込まれた二次元の周期的な格子を備える二次元フ
ォトニック結晶スラブ(62)からなり、前記第1の導波
路(70)が、前記二次元フォトニック結晶スラブ(62)
の第1の側面(72)から反対側の第2の側面(74)に向
かって延びる前記二次元の周期的な格子における第1の
欠陥のラインからなり、前記第2の導波路(76)が、前
記二次元フォトニック結晶スラブ(62)の前記共振空洞
(80)から第3の側面(78)に向かって延びる前記二次
元の周期的な格子における欠陥のラインからなる、上記
1記載のフォトニック結晶ドロップフィルタ装置(6
0)。 6.前記周期的な格子が、ポスト(64)のアレイからな
り、前記第1の導波路(70)が、前記ポスト(64)の第
1のラインを省くことによって作成され、前記第2の導
波路(76)が、前記ポスト(64)の第2のラインの一部
を省くことによって作成される、上記5記載のフォトニ
ック結晶ドロップフィルタ装置(60)。 7.前記装置(60)が、波長分割多重通信システム(1
0)に組み込まれる、上記1記載のフォトニック結晶ド
ロップフィルタ装置(60)。 8.フォトニック結晶(62)と、前記フォトニック結晶
(62)のバンドギャップ内の周波数を有する光を伝送す
るための前記フォトニック結晶(62)内の第1の導波路
(70)と、前記フォトニック結晶(62)内の第2の導波
路(76)と、前記第1の導波路(70)と前記第2の導波
路(76)とを接続して、前記第1の導波路(70)によっ
て伝送される少なくとも1つの波長の光を抽出するため
の共振空洞(80)とからなるフォトニック結晶ドロップ
フィルタ(60)において、そのフォトニック結晶ドロッ
プフィルタ(60)をチューニングするための方法であっ
て、前記第1の導波路(70)から抽出されるべき所望の
少なくとも1つの光の波長を選択するステップと、及び
前記共振空洞(80)に対して誘電性チューニング部材
(90)を位置決めするステップとからなり、前記第1の
導波路(70)から抽出される少なくとも1つの光の波長
が、前記共振空洞(80)に対する前記誘電性チューニン
グ部材(90)の位置の関数である、方法。 9.前記誘電性チューニング部材(90)が、前記第2の
導波路(76)内へ延びる誘電性チューニング部材(90)
からなり、前記位置決めするステップが、前記共振空洞
(80)に対して前記誘電性チューニング部材(90)の端
部の距離を調節するステップを含む、上記8記載の方
法。 10.前記誘電性チューニング部材(90)を所望の位置
に移動させ、波長の全範囲内で前記抽出される少なくと
も1つの波長をチューニングするステップを更に含む、
上記8記載の方法。 【0047】 【発明の効果】本発明によって、複数の波長を含む光信
号から任意の選択された少なくとも1つの波長を抽出し
て再配向することが可能な波長可変フォトニック結晶ド
ロップフィルタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】 【図1】WDM通信システムの構成要素を概略的に示す
ブロック図である。 【図2】従来技術で知られている二次元フォトニック結
晶スラブの概略的な透視図である。 【図3】従来技術で知られている二次元フォトニック結
晶スラブ導波装置の概略的な断面図である。 【図4】本発明の実施形態による二次元フォトニック結
晶ドロップフィルタ装置の概略的な断面図である。 【図5】図4の装置における第1の導波路の出力におい
て測定された伝送ノッチの周波数を図4の装置の共振空
洞からのチューニング部材の距離の関数として示すグラ
フである。 【図6】Q値を図4の装置の共振空洞からの調整部材の
距離の関数として示すグラフである。 【図7】本発明の別の実施形態によるフォトニック結晶
ドロップフィルタをチューニングするための方法のステ
ップを示すフローチャートである。 【符号の説明】 10 波長分割多重通信システム 60 フォトニック結晶ドロップフィルタ装置 62 フォトニック結晶 64 ポスト 66 スラブ本体 70 第1の導波路 76 第2の導波路 80 共振空洞 90 チューニング部材 94 移動装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 キャロル・ジェイ・ウィルソン アメリカ合衆国カリフォルニア州95130, サンノゼ,メンデンホール・ドライブ・ 1707 (72)発明者 ミハイル・エム・シガラス アメリカ合衆国カリフォルニア州95051, サンタクララ,サウス・ドライブ・2411 (72)発明者 カート・アラン・フローリィ アメリカ合衆国カリフォルニア州94024, ロスアルトス,レイモンズ・アベニュー・ 774 Fターム(参考) 2H047 KA03 KA12 KB03 LA11 2H048 AA01 AA07 AA12 AA18 AA23 AA29

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】フォトニック結晶ドロップフィルタ装置
    (60)であって、 フォトニック結晶(62)と、 前記フォトニック結晶(62)のバンドギャップ内の周波
    数を有する光を伝送するための、前記フォトニック結晶
    (62)の第1の導波路(70)と、 前記フォトニック結晶(62)の第2の導波路(76)と、 前記第1の導波路(70)及び第2の導波路(76)を接続
    して、前記第1の導波路(70)で伝送される少なくとも
    1つの波長の光を抽出し、その抽出した光を前記第2の
    導波路(76)に再配向するための共振空洞(80)と、及
    び前記第1の導波路(70)から抽出される少なくとも1
    つの光の波長を制御するためのチューニング部材(90)
    とからなる、フォトニック結晶ドロップフィルタ装置
    (60)。
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