JP2003253395A - 高周波焼入れ部品 - Google Patents

高周波焼入れ部品

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JP2003253395A
JP2003253395A JP2002059210A JP2002059210A JP2003253395A JP 2003253395 A JP2003253395 A JP 2003253395A JP 2002059210 A JP2002059210 A JP 2002059210A JP 2002059210 A JP2002059210 A JP 2002059210A JP 2003253395 A JP2003253395 A JP 2003253395A
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mass
induction
hardened
shaft
steel material
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Koji Matsumura
康志 松村
Yutaka Kurebayashi
豊 紅林
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/25Process efficiency

Abstract

(57)【要約】 【課題】 クランクシャフトのような大型部品において
も、ねじりや曲げに対する疲労強度を十分に確保でき、
しかも、焼入れ前での状態での加工性も良好で、ひいて
は安価に製造可能な高周波焼入れ部品を提供する。 【解決手段】 鋼材として、Fe含有率が95質量%以
上であり、かつ、必須添加元素として、0.35〜0.
50質量%のC、0.02〜0.15質量%のSi、
0.5〜1質量%のMn、0.05〜0.50質量%の
Cr、0.002〜0.03質量%のAl、0.02〜
0.05質量%のTi及び0.0005〜0.003質
量%のBを含有し、Nの含有率が0.015質量%以下
とされたものを用いる。該鋼材は、硬度指数が1.1〜
1.5となり、焼入れ性指数が0.50〜0.75とな
るように調整され、1000℃から空冷したときの組織
が、フェライト面積率が20〜40%のフェライトとパ
ーライトとの混相組織となる。このような鋼材にて構成
された部品表層部に高周波焼入れによる焼入れ硬化層1
0が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用のクラン
クシャフトなど、大型で、かつ曲げ負荷及びねじり負荷
に対する高耐久性が要求される高周波焼入れ部品に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】機械構造用部品、例えば自動車用のクラ
ンクシャフトなどの動力用大型構造部品は、大きなねじ
り負荷と曲げ負荷とが繰り返し作用する環境下で使用さ
れるため、静的強度と疲労強度とに優れていることが要
求される。従来、こうした軸部品は、鋼材を熱間あるい
は温間での加工(たとえば鍛造加工)により、素材を所
望の形状に成型した後、高周波焼入れにより表面に焼入
れ硬化層を形成し、疲労強度を高めることが行われてい
る。鋼材としては、例えばCを0.4〜0.6質量%含
有する中炭素鋼が一般的に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高周波焼入れされる機
械構造用部品の疲労強度は、焼入れ硬化層の硬さと形成
厚さを増加させることにより、著しく向上することが知
られている。具体的には、Cを始め、Si、Mn,Cr
あるいはBなどの添加により、硬さの向上、あるいは焼
入れ性の向上を図り、部材の高強度化を達成している。
【0004】ここで、焼入れ硬化層厚さの増大により強
度向上を図るには、部材の厚さは、外径が増加するほ
ど、焼入れ硬化層の形成厚さも相対的に大きくしなけれ
ばならない。しかし、高周波焼入れにより形成可能な焼
入れ硬化層の厚さの絶対値には制限があるため、クラン
クシャフトのような大型の部品の場合は、部材厚さや外
径に対して焼入れ硬化層の厚さが不足しがちであり、十
分な高強度化を図ることが困難である。この場合、焼き
の入らない中心部の硬さを増加させれば疲労強度は向上
するが、この場合は、焼入れ前の状態で素材を加工する
際に、その加工性に大きな難が生ずる問題がある。
【0005】本発明は、クランクシャフトのような大型
部品においても、ねじりや曲げに対する疲労強度を十分
に確保でき、しかも、焼入れ前での状態での加工性も良
好で、ひいては安価に製造可能な高周波焼入れ部品を提
供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課
題を解決するために、本発明の高周波焼入れ部品は、部
品素材をなす鋼材が、Fe含有率が95質量%以上であ
り、かつ、必須添加元素として、0.35〜0.50質
量%のC、0.02〜0.15質量%のSi、0.5〜
1質量%のMn、0.05〜0.5質量%のCr、0.
002〜0.03質量%のAl、0.02〜0.05質
量%のTi及び0.0005〜0.003質量%のBを
含有し、Nの含有率が0.015質量%以下とされ、さ
らに、表1に示す炭素換算係数を、各添加元素の質量%
含有率にそれぞれ乗じて合計した値により与えられる硬
度指数が0.5〜0.75となり、C、Si、Mn及び
Crの各質量%含有率をW、WSi、WMn及びW
Crを用いて、表2に示すごとく定義された焼入れ性換
算パラメータf(C)、f(Si)、f(Mn)及びf
(Cr)の合計にて表される焼入れ性指数が1.1〜
1.5となり、さらに、1000℃から空冷したときの
組織が、フェライト面積率が20〜40%のフェライト
とパーライトとの混相組織となる鋼材であり、部品表層
部に高周波焼入れによる焼入れ硬化層が形成されてなる
ことを特徴とする。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】本発明においては、鋼材組成において、必
須添加元素であるC、Si、Mn、Cr、Al、Ti及
びBの組成許容設定範囲をそれぞれ上記のように定め、
さらに、これを前提として、表2に定めるf(C)、f
(Si)、f(Mn)及びf(Cr)の合計値にて表さ
れる焼入れ性指数が1.1〜1.5を満足するように、
各必須元素の含有率を定めた。これにより、鋼材の焼入
れ性が大幅改善されて大型部材においても十分な焼入れ
硬化層を形成でき、ひいては、ねじりや曲げに対する疲
労強度を十分に確保できる。他方、必須添加元素を含む
各添加元素の含有率は、表1に示す炭素換算係数を、各
添加元素の質量%含有率にそれぞれ乗じて合計した値に
より与えられる硬度指数が0.50〜0.75となり、
さらに1000℃から空冷したときの組織が、フェライ
ト面積率が20〜40%のフェライトとパーライトとの
混相組織となる条件も同時に満足するように定められ
る。すなわち、焼入れ前の素材の硬度が最適化され、空
冷組織の加工性を低下させるパーライト形成量も比較的
小さく抑えられるので、強度が高いにもかかわらず、焼
入れ前での状態での加工性も良好で、ひいては安価に製
造可能な高周波焼入れ部品が実現する。
【0010】なお、本発明に採用される鋼材は、Fe含
有率が95質量%以上を満たし、かつ本発明の目的達成
の妨げにならない範囲内で、必須添加元素以外の成分
(例えば焼入れ性調整用のNi,Cuなど)を含有して
いてもよい。
【0011】硬度指数と焼入れ指数との意義を確認する
試験は、以下のようにして行っている。まず、C、S
i、Mn、Cu、Ni、Crを種々の組成にて含有する
鋼材を外径40〜70mmの棒材に加工し、さらに、完
全オーステナイト化温度である1000℃に1時間保持
した後、空冷する。その棒材表面にて測定したロックウ
ェルCスケール硬さHRCの値を、表1の炭素換算係数を
用いて算出した硬度指数に対してプロットした結果を図
4に示す。組成が種々異なるにもかかわらず、組成を硬
度指数に換算して硬さをプロットすると、両者の間には
ほぼ直線的な関係が成立しており、硬度指数が、硬さ予
測を行うために好適なパラメータであることがわかる。
硬度指数が0.50〜0.75の範囲において、HRCは
85〜98の範囲となる。硬度指数が0.5未満になる
ことは、HRCがおおむね85未満となることを意味し、
大型構造部品の曲げあるいはねじりに対する強度を保つ
には必ずしも十分でなくなる。他方、硬度指数が0.7
5を超えることは、HRCがおおむね98を超えることを
意味し、オーステナイト化温度から空冷した組織(熱間
加工後に空冷した組織に相当する)の硬さが高くなりす
ぎて、加工性が悪化することにつながる。
【0012】次に、C、Si、Mn、Crを種々の組成
にて含有する鋼材を、直径25mm、長さ80mmの棒
状試験片に熱間加工して空冷した後、加熱用コイル内に
て、周波数10kHz、加熱時間4秒にて誘導加熱し、
水冷して高周波焼入れした。焼入れ後の棒状試験片の軸
断面においてマイクロビッカース硬さ測定を行い、Hv
450(マルテンサイト面積率が50%の組織に相当す
る硬さである)となる位置を求め、棒材表面から該位置
までの半径方向深さを焼入れ硬化層厚さtとして求め
た。この焼入れ硬化層厚さtを、表2に定めるf
(C)、f(Si)、f(Mn)及びf(Cr)を用い
て算出した焼入れ性指数に対してプロットした結果を図
5に示す。組成が種々異なるにもかかわらず、組成を焼
入れ性指数に換算して焼入れ硬化層厚さtをプロットす
ると、両者の間にはほぼ直線的な関係が成立しており、
焼入れ性指数が、焼入れ深さを行うために好適なパラメ
ータであることがわかる。焼入れ性指数が1.1〜1.
5の範囲において、焼入れ硬化層厚さtは5.8〜7.
5mmの範囲となる。焼入れ性指数が1.1未満になる
ことは、tがおおむね5.8mm未満となることを意味
し、大型構造部品の場合、焼入れ硬化層厚さtが相対的
に不足して、曲げあるいはねじりに対する強度をことが
できなくなる。他方、焼入れ性指数が1.5を超える
と、C、Si、Mn及びCrの添加量が必要以上に多く
なり、硬さ指数が前記の範囲を充足しなくなって、加工
性が悪化することにつながる。
【0013】また、1000℃から空冷した組織のフェ
ライト面積率が20%未満になると、パーライト組織が
過剰となって加工性が悪化することにつながる。他方、
フェライト面積率が40%を超えると、高周波焼入れに
より焼入れ硬化層を形成したとき、硬化層中にフェライ
ト相が残留しやすくなり、硬さひいては強度が不足する
ことにつながる。
【0014】以下、本発明の高周波焼入れ部品を構成す
る鋼材の、各成分の組成限定理由について説明する。ま
ず、Cは材料の強度確保のために必須の元素である。そ
の含有率が0.35質量%未満では、部品強度維持に必
要な硬さの焼入れ硬化層を形成することが不可能とな
る。他方、0.5質量%を超えると材料の被削性が劣化
し、高周波焼入れ時の焼き割れも発生しやすくなる。
【0015】Siは脱酸剤として添加されるものである
が、粒界強化あるいは軟化抵抗改善元素としても機能
し、強度向上、特に焼入れ硬化層の強度向上に寄与す
る。ただし、その含有率が0.02質量%未満では脱酸
効果あるいは強度向上効果が少なく、0.15質量%を
超えると冷間加工性や被削性が損なわれることにつなが
る。
【0016】Mnは、粒界強度を落とすSをMnSの形
で固定する脱硫元素として機能するほか、焼入れ性を向
上させる働きを有する。その結果、強度の高い焼入れ硬
化層を安定的に形成することに寄与する。しかし、含有
率が0.5質量%未満では効果に乏しく、1質量%を超
えると冷間加工性や被削性が損なわれることにつなが
る。
【0017】Crは材料の、マルテンサイト相の靭性を
向上させ、焼入れ硬化層の硬さと靭性、ひいては強度の
向上に寄与する。また、軟化抵抗改善元素としても機能
する。しかし、含有量が0.05質量%未満では効果に
乏しく、0.5質量%を超えると材料の被削性を低下さ
せることにつながる。
【0018】Alは脱酸剤として機能するほか、鋼材中
のNと結合してAlNを析出させるので、結晶粒粗大化
ひいてはそれによる強度あるいは靭性低下を抑制する効
果がある。ただし、含有率が0.002質量%未満では
効果に乏しく、0.03質量%を超えて含有させると、
鋼材基質中の不要な介在物を増加させ、強度や靭性の低
下につながる。
【0019】Bは焼入れ性を向上させ、また粒界強度を
高めて、焼入れ硬化層の強度向上に寄与する。ただし、
添加量が0.0005質量%未満では効果に乏しく、
0.003質量%を超えて含有させると、熱間加工性の
劣化につながる。
【0020】Tiは上記したBとの共添加を行うことに
より、B添加による焼入れ性や粒界強度を向上させる効
果をより顕著なものにする作用を有する。Bは鋼材基質
に含有されるNと結合すると、BNとして析出するた
め、粒界強度改善効果を発揮できなくなる。しかし、T
iを添加しておくと、TiNの形成を促進してN成分を
固定し、BがBN析出の形で消費されることが防止され
る。その結果、B添加による粒界強度向上効果が顕著と
なる。しかし、含有量が0.02質量%未満では顕著な
効果が望めず、0.05質量%を超えると、鋼材の靭性
低下につながる。
【0021】また、B添加による焼入れ性や粒界強度を
向上させる効果をより顕著なものにするには、Bと結合
するNの含有量を低減しておくことも有効であり、本発
明では、この目的のため、使用する鋼材中のNの含有率
を0.015質量%以下に制限する。
【0022】また、本発明にて使用する鋼材には、0.
01〜0.2質量%のPb、0.02〜0.20質量%
のS、0.01〜0.1質量%のBi、及び0.000
5〜0.02質量%のCaの少なくともいずれかを添加
することができる。これらの元素は、いずれも快削性付
与元素として機能し、鋼材に切削加工等の除去加工を施
す場合に、その加工コストを大幅に削減することができ
る。しかし、各元素とも添加量が下限値未満となった場
合は快削性付与効果に乏しく、上限値を超えた添加は効
果が飽和するので無駄が多い。
【0023】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の高周波焼入れ部
品の一例であるクランクシャフトの一例を示すものであ
る。該クランクシャフト1は、回転軸線Oの方向に所定
の間隔にて配置されたクランクアーム2を、回転軸線O
と中心軸線が一致するように配置されるクランクジャー
ナル4と、回転軸線Oから半径方向に一定距離隔たった
位置に中心軸線を有するクランクピン5とにより、交互
に連結した構造を有してなる。クランクジャーナル4及
びクランクピン5はいずれも円形断面の軸状に形成され
てなり、図2及び図3に示すように、その外周面全体
に、高周波焼入れ硬化層10が形成されている。この高
周波焼入れ硬化層10は、以下のようにして形成され
る。まず、原料を溶解・鋳造後、分塊された素材を、熱
間鍛造と切削によりクランクシャフト形状に加工し、こ
れを加熱用コイル内に挿入して、表層部を温度900〜
1100℃となるように高周波誘導加熱し、部品寸法に
応じた適当な時間(例えば10〜40秒)保持した後、
水冷することにより高周波焼入れを行い、焼入れ硬化層
10を形成する。
【0024】焼入れ硬化層の厚さtは、軸表面から半径
方向において、マルテンサイト形成量50%に相当する
硬さとなる位置までの距離にて定義される。図2に示す
ように、クランクピン5(軸状部)には、内燃機関側の
ピストンを往復動させるための図示しないコンロッドを
結合するために、外周面に開口する孔部8が形成されて
いる。そして、クランクジャーナル4及びクランクピン
5(軸状部)の外径を2R、孔部8の開口周縁部におけ
る焼入れ硬化層の厚さをtとしたとき、t/Rが0.2
〜0.5とされてなる。内燃機関駆動時には、クランク
ジャーナル4及びクランクピン5には大きなねじり負荷
が生ずる。連続体力学のねじり理論によると、部材のね
じり剛さは、外周面に開放する孔やスリットが形成され
ている場合、大きく減少することが知られている。この
場合、孔部8の開口周縁部において、t/Rが0.2〜
0.5となるように焼入れ硬化層厚さtを確保しておく
と、クランクジャーナル4及びクランクピン5(軸状
部)の静ねじり強度及びねじり疲労強度を大幅に高める
ことができる。t/Rが0.2未満では上記強度が不十
分となる場合がある。
【0025】また、高周波焼入れにより部材表層部にの
み焼入れ硬化層を形成すると、部材表面に圧縮残留応力
が生じて強度向上にさらに有利となる。これは、フェラ
イト相(パーライト相を含む)主体となる内層部に対し
て、マルテンサイト相が主体となる焼入れ硬化層の方が
より大きく膨張するためである。しかし、t/Rが0.
5を超えると、圧縮残留応力の発生が顕著でなくなり、
強度不足につながる場合がある。
【0026】次に、クランクアーム2は、隣接するクラ
ンクアーム2と対向する面が平面状の基面2aとされた
基面形成部を形成する。そして、クランクジャーナル4
及びクランクピン5は、該基面2aから突出形成される
軸状部に相当する。図1及び図3に示すように、クラン
クジャーナル4及びクランクピン5(軸状部)の突出基
端部には、基面2a側に向かうほど外径を漸増させるフ
ィレット部7が形成されている。突出基端縁は凹状であ
り、曲げ負荷が作用したときに応力集中しやすいが、上
記のようなフィレット部7を形成しておくと、応力集中
が緩和され、曲げ強度を高めることができる。本実施形
態においてフィレット部7は、凹状のアール面とされて
いる。
【0027】図3において、クランクジャーナル4及び
クランクピン5(軸状部)の軸線方向における任意位置
にて測定したフィレット部の外径を2R’、フィレット
部7の表面に形成された焼入れ硬化層の厚さをt’とし
たとき、t’/R’のフィレット部7における最大値は
0.1〜0.2とされていることが望ましい。t’/
R’が0.1未満では曲げ強度が不十分となる場合があ
る。また、t’/R’が0.2を超えると、フィレット
部7の表層部における圧縮残留応力の発生が顕著でなく
なり、曲げ強度不足につながる場合がある。
【0028】
【実施例】本発明の効果を調べるために、以下の実験を
行った。 (実施例1)表1に示す組成が得られるように原料を配
合し、電気炉で150kgの鋼塊を溶製した後、850
℃にて熱間鍛造し、さらに1000℃にて2時間保持し
た後空冷して、直径20〜50mmの各種棒材を作製し
た。また、各組成毎に、前記した定義により硬度指数と
焼入れ性指数を算出している。これを表3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】この試験品の外周面のロックウェルBスケ
ール硬さHRBを、JIS:Z2245に規定された方法
により測定した。また、上記棒材を用いて、以下の各種
試験を行った。
【0031】工具寿命比測定 上記素材を切断して直径50mm長さ300mmの試験
片を作製し、切削試験を行う。切削工具としてP10超
硬工具を用い、周速300m/min、一回転当りの切
り込み量2mm、一回転当りの送り量0.2mmで、乾
式にて切削を継続し、フランク摩耗量が0.2mmとな
った時点を工具寿命とする。工具寿命は、比較例7に対
する工具寿命比として表している。
【0032】曲げ疲労強度試験 上記素材の外周面を旋削加工し、図3に示すように、縮
径側が外径30mmの円柱状の軸状部が形成され、か
つ、該軸状部の基端位置に曲率半径2mmの凹アール面
状のフィレット部を有する試験片を得た。次いで、その
試験片をコイル内に挿入し、コイルを固定して周波数1
00kHzにて高周波誘導加熱し(温度約1000
℃)、水冷することにより高周波焼入れを行った。この
焼入れ後、部材を180℃にて60分加熱し、その後空
冷して焼き戻し処理を行った。この、上記試験片を、曲
げ疲労試験機に装着し、繰り返し破断回数が2×10
回となる繰り返し曲げ応力の値を曲げ疲労強度として求
めた。
【0033】なお、疲労試験に供さない試験品を用意し
ておき、中心軸線を含む断面にて切断し、フィレット部
の軸線方向の種々の位置にて、半径方向における微小ビ
ッカース硬さ分布を測定するとともに、軸中心位置での
ビッカース硬さHV2を測定した。なお、光学顕微鏡観
察画像上での面積率測定により、軸表面でのマルテンサ
イト量はほぼ100%、中心部でのマルテンサイト量は
0%であることを確認している。そして、50%マルテ
ンサイト量に相当する硬さHVm(=Hv450)を、
硬さがマルテンサイト量に比例すると仮定して、HV1
とHV2との値を用いた比例補間により算出し、半径方
向に測定した微小ビッカース硬さ分布において、硬さが
HVmとなる位置から焼入れ硬化層厚さtを求め、t/
Rを算出した。また、断面中心部の光学顕微鏡鏡による
観察画像を撮影し、フェライトとパーライトとの面積率
を画像解析により求めた。
【0034】ねじり疲労強度 外径20mm、長さ220mmの棒状試験片を用意し、
図2に示すように、軸線方向中央位置に、内径2mmの
貫通孔を形成した。縮次いで、その試験片をコイル内に
挿入し、コイルを移動させながら周波数10kHzにて
高周波誘導加熱し(温度約1000℃)、水冷すること
により高周波焼入れを行った。この焼入れ後、部材を1
80℃にて60分加熱し、その後空冷して焼き戻し処理
を行った。この上記試験片を、ねじり疲労試験機に装着
し、繰り返し破断回数が2×10 回となるまで繰り返
し、ねじり剪断応力の値をねじり疲労強度として求め
た。
【0035】なお、疲労試験に供さない試験品を用意し
ておき、貫通孔を直径方向に横切るように、中心軸線を
含む断面にて切断し、貫通孔開口縁から軸線方向に1m
m離れた位置において、半径方向における微小ビッカー
ス硬さ分布を測定し、フィレット部と同様にt/Rを算
出した。
【0036】以上の結果を表4に示す。
【表4】
【0037】この結果によると、本発明の組成範囲を満
たす鋼材は、直径30mmもの比較的大きな寸法を有し
ながら、硬化層を十分に厚く形成でき、曲げ疲労強度お
よびねじり疲労強度のいずれにおいても高いことがわか
る。また、非焼入れ状態での切削性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例たるクランクシャフトを示す
正面図。
【図2】クランクジャーナル及びクランクピンに設けら
れた孔部と、焼入れ硬化層厚さとの関係を説明する図。
【図3】クランクジャーナル及びクランクピンと、クラ
ンクアームとの接続部に形成されたフィレット部と、焼
入れ硬化層厚さとの関係を説明する図。
【図4】硬度指数と鋼材硬さとの関係を示すグラフ。
【図5】焼入れ性指数と焼入れ硬化層厚さとの関係を示
すグラフ。
【符号の説明】
1 クランクシャフト 2 クランクアーム(基部) 4 クランクジャーナル(軸状部) 5 クランクピン(軸状部) 7 フィレット部 8 孔部

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部品素材をなす鋼材が、 Fe含有率が95質量%以上であり、 かつ、必須添加元素として、0.35〜0.50質量%
    のC、0.02〜0.15質量%のSi、0.5〜1質
    量%のMn、0.05〜0.5質量%のCr、0.00
    2〜0.03質量%のAl、0.02〜0.05質量%
    のTi及び0.0005〜0.003質量%のBを含有
    し、 Nの含有率が0.015質量%以下とされ、 さらに、表1に示す炭素換算係数を、各添加元素の質量
    %含有率にそれぞれ乗じて合計した値により与えられる
    硬度指数が0.5〜0.75となり、 C、Si、Mn及びCrの各質量%含有率をW、W
    Si、WMn及びWCrを用いて、表2に示すごとく定
    義された焼入れ性換算パラメータf(C)、f(S
    i)、f(Mn)及びf(Cr)の合計にて表される焼
    入れ性指数が1.1〜1.5となり、 さらに、1000℃から空冷したときの組織が、フェラ
    イト面積率が20〜40%のフェライトとパーライトと
    の混相組織となる鋼材であり、部品表層部に高周波焼入
    れによる焼入れ硬化層が形成されてなることを特徴とす
    る高周波焼入れ部品。
  2. 【請求項2】 前記鋼材が、0.01〜0.2質量%の
    Pb、0.02〜0.2質量%のS、0.01〜0.1
    質量%のBi、及び0.0005〜0.02質量%のC
    aの少なくともいずれかを含有するものである請求項1
    記載の高周波焼入れ部品。
  3. 【請求項3】 外周面に孔部が開口形成されてなる軸状
    部を有し、前記軸状部の外径を2R、前記孔部の開口周
    縁部における前記焼入れ硬化層の厚さをtとしたとき、
    t/Rが0.2〜0.5とされてなる請求項1又は2に
    記載の高周波焼入れ部品。
  4. 【請求項4】 平面状の基面を有する基面形成部と、前
    記基面から突出形成される軸状部とを有し、前記軸状部
    の突出基端部には、前記基面側に向かうほど外径を漸増
    させるフィレット部が形成されてなり、前記軸状部の軸
    線方向における任意位置にて測定した前記フィレット部
    の外径を2R’、前記フィレット部表面に形成された前
    記焼入れ硬化層の厚さをt’としたとき、t’/R’の
    前記フィレット部における最大値が0.1〜0.2とさ
    れてなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高周
    波焼入れ部品。
  5. 【請求項5】 回転軸線方向に所定の間隔にて配置され
    たクランクアームを、前記回転軸線と中心軸線が一致す
    るように配置されるクランクジャーナルと、前記回転軸
    線から半径方向に一定距離隔たった位置に中心軸線を有
    するクランクピンとにより、交互に連結した構造を有し
    てなるクランクシャフトとして構成されてなる請求項1
    ないし4のいずれか1項に記載の高周波焼入れ部品。
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