JP2003252763A - 抗腫瘍剤 - Google Patents

抗腫瘍剤

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JP2003252763A
JP2003252763A JP2002051610A JP2002051610A JP2003252763A JP 2003252763 A JP2003252763 A JP 2003252763A JP 2002051610 A JP2002051610 A JP 2002051610A JP 2002051610 A JP2002051610 A JP 2002051610A JP 2003252763 A JP2003252763 A JP 2003252763A
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Yuichiro Kamikawa
雄一郎 上川
Morihito Sakagami
守人 阪上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、抗アレルギー剤であるオキサトミ
ド、アゼラスチン、またはそれらの医薬的に許容される
塩の新規な用途を提供することを課題とする。 【解決手段】 オキサトミド、アゼラスチンまたはそれ
らの医薬的に許容される塩から選ばれる1種または2種
以上を有効成分とする抗腫瘍剤を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗アレルギー剤で
あるオキサトミド、アゼラスチン、またはそれらの医薬
的に許容される塩の新規な用途である抗腫瘍剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】オキサトミドおよびアゼラスチンは、1
970年代にアレルギー性疾患治療薬として開発、合成
され、現在でも日本および海外で臨床で使われている。
医療薬日本医薬品集2002(第25版)(財団法人
日本医薬情報センター編)に掲載されているオキサトミ
ドおよびアゼラスチンの適応疾患にはアレルギー性鼻
炎、気管支喘息、蕁麻疹、皮膚掻痒症、湿疹、痒疹が挙
げられている。また、薬効薬理としてケミカルメディエ
ーター(ロイコトリエン、ヒスタミン、セロトニン、ア
セチルコリン、ブラジキニン)の遊離抑制、拮抗作用が
知られている。さらにオキサトミドでは細胞内カルシウ
ム濃度制御作用があることが明らかになっている。しか
し、抗腫瘍効果を検討した報告はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、抗アレルギ
ー剤であるオキサトミド、アゼラスチン、またはそれら
の医薬的に許容される塩の新規な用途を提供することを
課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、抗アレ
ルギー薬として臨床応用されているオキサトミド、アゼ
ラスチン、またはそれらの医薬的に許容される塩に関し
て、白血病由来癌細胞を始めとする各種の癌細胞株にお
ける抗腫瘍効果を検討した結果、これらの薬剤が、薬剤
濃度依存的に細胞増殖を抑制すること、およびアポトー
シス(細胞死)を誘導することを見出した。すなわち、
抗腫瘍効果を有することを見出し、本発明を完成するに
至った。
【0005】本発明は上記のようにしてなされたもので
あり、本発明の要旨は以下の通りである。 (1) オキサトミド、アゼラスチン、またはそれらの
医薬的に許容される塩から選ばれる1種または2種以上
を有効成分とする抗腫瘍剤。 (2) 前記アゼラスチンの医薬的に許容される塩は塩
酸塩である、(1)記載の抗腫瘍剤。
【0006】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の抗腫瘍剤は、オキサトミド、アゼラスチン、ま
たはそれらの医薬的に許容される塩から選ばれる1種ま
たは2種以上を有効成分とする。本発明に用いるオキサ
トミド、アゼラスチン、またはそれらの医薬的に許容さ
れる塩は、抗アレルギー薬としてシグマ・アルドリッチ
ジャパン社などから市販されているものを用いることが
できる。
【0007】本発明の抗腫瘍剤は、腫瘍細胞に対する細
胞増殖抑制効果およびアポトーシス誘導効果を有する。
【0008】オキサトミドまたはアゼラスチンの医薬的
に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、
リン酸、炭酸などの無機酸塩、乳酸、酢酸、クエン酸、
グルコン酸などの有機酸塩、およびアスパラギン酸、グ
ルタミン酸などの酸性アミノ酸塩などが挙げられる。な
お、アゼラスチンの医薬的に許容される塩としては、塩
酸塩が好ましく例示される。
【0009】本発明の抗腫瘍剤は、オキサトミド、アゼ
ラスチン、またはそれらの医薬的に許容される塩から選
ばれる1種または2種以上を有効成分とする。本発明の
抗腫瘍剤としては、オキサトミド、アゼラスチン、また
はそれらの医薬的に許容される塩のうち少なくとも1種
を単独で用いてもよいが、製剤学的に通常用いられる製
剤用添加物と共に通常の製剤化手法に従って医薬組成物
を形成させて用いても良い。製剤用添加物としては、例
えば、希釈剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、防腐剤、安定
剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、pH調整剤、
等張剤、着色剤などが挙げられる。
【0010】本発明の抗腫瘍剤の薬効の判定は、in vit
ro実験系で各種腫瘍細胞を用いて細胞増殖抑制試験およ
び/またはアポトーシス誘導試験により行うことができ
る。薬効の判定試験に用いることができるマウス腫瘍細
胞株としては、例えば、マウス腫瘍細胞株P388、L1210
などが挙げられる。これらの細胞株はアメリカ(国立ガ
ン研究所(NCI))および我が国の抗腫瘍薬開発のための
効果判定基準(「癌化学療法・癌免疫療法の効果判定基
準と制癌剤開発」、斉藤達雄 編、サイエンスフォーラ
ム、1981)に抗腫瘍薬のスクリーニング系の例として明
示されており、現在応用されている抗腫瘍薬のほとんど
が薬効の判定にこれらの細胞株を用いている。さらに本
発明の抗腫瘍薬の薬効の判定試験に用いることができる
ヒト腫瘍細胞株としては、例えば、ヒト白血病由来腫瘍
細胞株HL-60、Jurkat、Molt4、バーキットリンパ腫由来
腫瘍細胞株Raji、Dauji、乳がん由来腫瘍細胞株MCF-7、
大腸癌由来腫瘍細胞株SW480、非小細胞肺癌由来腫瘍細
胞株A549細胞などが挙げられる。現在臨床応用されてい
る抗腫瘍薬のほとんどがこれらのヒト腫瘍細胞株に細胞
死(アポトーシス)を誘導することが知られている。し
たがって、上記マウスおよびヒト腫瘍細胞株を用いたin
vitro実験系において抗腫瘍効果を発揮することが確認
された薬剤を、ヒトを含む動物に対して用いたときにそ
れらの薬剤が抗腫瘍効果を発揮することは当業者により
明らかに推認することができる。
【0011】本発明の抗腫瘍剤の剤形は特に限定され
ず、投与経路などによって決定することができる。剤形
としては、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、
液剤、乳剤、注射剤、坐剤、経皮吸収剤などが挙げられ
る。本発明の抗腫瘍剤は、経口的に、あるいは皮内、皮
下、静脈内、動脈内、筋肉内などへの注射などにより非
経口的に、あるいは直腸などへの坐剤投与などにより経
腸的に、あるいは皮膚、粘膜などへの経皮吸収剤塗布な
どにより局所的に投与することができる。
【0012】本発明の抗腫瘍剤は、各種腫瘍に対する抗
腫瘍剤として用いることができる。すなわち、各種腫瘍
の治療を望む、ヒトを含む動物に抗腫瘍剤として投与す
ることができる。オキサトミド、またはそれらの医薬的
に許容される塩は、例えば、乳癌腫、肺癌腫など、好ま
しくはT細胞白血病、バーキットリンパ腫などの治療に
用いることができる。塩酸アゼラスチン、またはそれら
の医薬的に許容される塩は、例えば、乳癌腫、肺癌腫、
バーキットリンパ腫など、好ましくは大腸癌腫などの治
療に用いることができる。なお、本発明の抗腫瘍剤の投
与量、投与回数などは症状の重篤度、患者の年齢、性
別、体重などに基づいて適宜決定することができる。
【0013】オキサトミドおよび塩酸アゼラスチンはT
細胞白血病由来癌細胞株HL-60、Molt4、Jurkat、バーキ
ットリンパ腫由来Raji、Daudiに対して増殖抑制、すな
わち抗腫瘍効果を示す。また乳癌由来MCF-7、肺癌由来A
549細胞、大腸癌由来SW480に対しても低から中程度の増
殖抑制効果を示す。これはオキサトミド及び塩酸アゼラ
スチンによる腫瘍細胞のアポトーシスの誘導に起因する
ものであり、このことはオキサトミドで処理した細胞の
DNAの断片化、細胞膜へのアネキシンVの結合、ミト
コンドリア膜電位の低下によって確認された。今回同時
に検討されたケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム
にはこのようなアポトーシス誘導作用は認められなかっ
たことから、抗腫瘍効果の有無は、抗アレルギー作用と
はまったく無関係であること、さらにオキサトミド及び
アゼラスチンにはこれまで発見されていなかった抗腫瘍
効果のあることが分かった。
【0014】現在、アポトーシスのシグナル伝達経路は
カスパーゼ(caspase)を中心に考えて三通り;細胞膜
受容体からカスパーゼ8が活性化される経路、ミトコン
ドリア膜電位の低下によりチトクロームcが放出されカ
スパーゼ9が活性化される経路、さらに小胞体ストレス
によってカスパーゼ12が活性化される経路が知られて
いる。オキサトミド及び塩酸アゼラスチンがアポトーシ
スを誘導する機序は、ミトコンドリア膜電位の低下、カ
スパーゼ-9選択的阻害剤LEHDによるアポトーシスの部分
的な回避が認められたことから、ミトコンドリア-カス
パーゼ9の経路に関与することが分かった。またオキサ
トミドを処理したHL-60細胞では活性型カスパーゼ12が
認められ、なおかつ、GADD153/CHOP遺伝子の発現がある
ことから、小胞体ストレスを介したアポトーシスシグナ
ル伝達にも関与することが明らかになった。
【0015】従来の抗腫瘍薬の大きな問題として、薬剤
の副作用と腫瘍細胞の薬剤耐性の獲得が挙げられる。悪
性リンパ腫に対する従来の抗腫瘍薬の第一選択薬とされ
ている薬剤として知られるアルキル化薬のシクロホスフ
ァミド、植物アルカロイドのエトポシド、および抗アレ
ルギー薬として知られるオキサトミド、塩酸アゼラスチ
ンの適用疾患、作用機序、副作用を比較した。従来の抗
腫瘍薬は骨髄抑制、腎障害、間質性肺炎、肺線維症など
の重大な副作用を持つものが多い。また肝機能障害、消
化器障害、脱毛などの出現頻度は1〜10%と報告されて
いる。更に従来の抗腫瘍薬は、長期間の投与により発癌
が認められており、変異原性、催奇形性が実験的に認め
られている。一方、オキサトミド、塩酸アゼラスチンは
共に眠気、倦怠感、口渇、悪心、嘔吐、肝機能障害、発
疹が副作用としてあるが、いずれもその出現頻度は5%
以下と低い。したがって、本発明の抗腫瘍薬は、抗腫瘍
薬として治療効果を有すると共に、従来の抗腫瘍薬に比
べ、患者の身体的な負担を軽減するものである。
【0016】以上のことから、今回、本願発明者らが、
抗腫瘍効果を有することを発見した抗アレルギー薬オキ
サトミドおよび塩酸アゼラスチンは、白血病由来癌細胞
をはじめとする各種の癌細胞株に対する抗腫瘍剤として
有効であり、また重大な副作用もないことから抗腫瘍剤
として有用である。
【0017】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は、その要旨をこえない限り、これ
らの実施例に限定されるものではない。
【0018】(薬剤と細胞)抗アレルギー薬オキサトミ
ド(oxatomide)、塩酸アゼラスチン(azelastinehydro
cloride)、ケトチフェン(ketotifen)およびクロモグ
リク酸ナトリウム(disodium cromoglycate)はシグマ
・アルドリッチジャパン社より購入した。オキサトミド
は0.1N塩酸に溶解した。塩酸アゼラスチン、ケトチ
フェンおよびクロモグリク酸ナトリウムはリン酸緩衝液
に溶解した。汎カスパーゼ阻害剤zVAD、およびカスパー
ゼ-9阻害剤LEHDはペプチド研究所より購入した。P388マ
ウス白血病細胞株はヒューマンサイエンス研究資源バン
ク(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、大阪)よ
り分譲を受けた。ヒト腫瘍細胞株(白血病由来HL-60、J
urkat、Molt4、バーキットリンパ腫由来Raji、Dauji、
乳がん由来MCF-7、大腸癌由来SW480、非小細胞肺癌由来
A549細胞)は東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源
センターより供与された。これらの細胞は10%牛胎児血
清を含むRPMI-1640培養液中で37℃、5%炭酸ガス環境下
で継代培養し、実験に供した。
【0019】
【実施例1】 マウス腫瘍細胞を用いた細胞増殖抑制効
果の検討 オキサトミド、塩酸アゼラスチンのマウス腫瘍細胞の細
胞増殖抑制効果を検討した。細胞増殖試験は、次のよう
にして行った。96ウェルプレートで腫瘍細胞(2.5×1
04細胞/ウェル)と特定濃度の薬剤を37℃、5%炭酸ガス
環境下で48時間培養した後にWST-1細胞増殖試験試薬
(Roche社)を加え、その2時間後に450nmにて吸光度を
測定(マイクロプレートリーダー Benchmark、日本バイ
オラッド社)し、対照群に対する細胞生存率を算出し
た。
【0020】P388マウス白血病細胞を細胞増殖試験に供
した。細胞とそれぞれの薬剤(オキサトミド、塩酸アゼ
ラスチン)最終濃度0,1,10,20,30,40,
50μMとともに48時間培養した後、細胞生存率を計
測した。図1に示すようにオキサトミドおよび塩酸アゼ
ラスチンは薬剤濃度依存性の細胞生存率の低下、すなわ
ち腫瘍細胞の増殖を抑制した。塩酸アゼラスチンはP388
細胞に対してオキサトミドより強い増殖抑制効果を示し
た。
【0021】
【実施例2】 ヒト腫瘍細胞を用いた細胞増殖抑制効果
の検討 オキサトミド、塩酸アゼラスチンの腫瘍細胞の細胞増殖
抑制効果を検討した。細胞増殖試験は、次のようにして
行った。96ウェルプレートで腫瘍細胞(2.5×104細胞
/ウェル)と特定濃度の薬剤を37℃、5%炭酸ガス環境下
で48時間培養した後にWST-1細胞増殖試験試薬(Roch
e社)を加え、その2時間後に450nmにて吸光度を測定
(マイクロプレートリーダー Benchmark、日本バイオラ
ッド社)し、対照群に対する細胞生存率を算出した。
【0022】HL-60細胞を細胞増殖試験に供した。細胞
とそれぞれの薬剤(オキサトミド、塩酸アゼラスチン、
ケトチフェン)最終濃度0,10,20,30,40μ
M(クロモグリク酸ナトリウムについては0,10,2
0,40,80,100μM)とともに48時間培養し
た後、細胞生存率を計測した。図2に示すようにオキサ
トミドおよび塩酸アゼラスチンは薬剤濃度依存性の細胞
生存率の低下、すなわち腫瘍細胞の増殖を抑制した。一
方、ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウムはHL-60
細胞の生存率を抑制しなかった。
【0023】次に他の腫瘍細胞株(T細胞白血病由来癌
細胞株Jarkat、Molt4、バーキットリンパ腫由来Rajiお
よびDaudi、乳癌由来MCF-7、肺癌由来A549細胞、大腸癌
由来SW480)に対するオキサトミドおよび塩酸アゼラス
チンの細胞増殖抑制効果を検討した。上記HL-60細胞に
おける方法と同様にして、実験を行った。ただし、オキ
サトミドの最終薬剤濃度は0、30μM、塩酸アゼラス
チンの最終薬剤濃度は0、20μMとした。
【0024】オキサトミド(最終濃度30μM)はT細胞白
血病由来癌細胞株HL-60、Jarkatに対して強い細胞増殖
抑制効果を示した(図3)。しかし、T細胞白血病細胞
株Molt4、バーキットリンパ腫由来RajiおよびDaudiに対
する抑制効果は中程度であった。また固形腫瘍の乳癌由
来MCF-7および肺癌由来A549細胞ではその効果は弱かっ
た。大腸癌由来SW480に対しては増殖を全く抑制しなか
った。塩酸アゼラスチン(最終薬剤濃度20μM)はHL-6
0、Molt4に対して強い増殖抑制効果を示し、Jurkat、Da
udiでは中程度であった(図4)。Raji、MCF-7およびA5
49細胞ではその効果は弱かったが、オキサトミドに対す
る薬剤感受性が全くなかったSW480に対しては中程度の
増殖抑制効果を示した。
【0025】
【実施例3】 アポトーシス誘導の検討 腫瘍細胞の生存率の低下がオキサドミドおよび塩酸アゼ
ラスチンによるアポトーシス(細胞死)の誘導によるも
のか明確にするために、アポトーシスを起こした細胞に
認められる細胞DNAの断片化、細胞膜の変化、ミトコ
ンドリア膜電位の変化を観察した。 (1)細胞DNAの断片化の観察 HL-60およびDaudi細胞をオキサトミド(最終濃度0、2
5μM)とともに16時間培養した後、細胞からDNAを
抽出した。抽出したDNA5μgを、1.5%アガロース
ゲル電気泳動し、エチジウムブロマイド染色を行い紫外
線照射下で観察した。オキサトミドで処理したHL-60細
胞から抽出したDNAは、アポトーシスに典型的な細胞
DNAの規則性のある断片化(ラダー状DNAパター
ン)が観察された(図5)。しかし、オキサトミドによ
ってあまり増殖抑制が認められなかったDaudi細胞から
抽出したDNAは、断片化が生じていなかった。
【0026】(2)細胞膜変化の観察 正常細胞では細胞膜の内側に存在するフォスファチジル
セリンがアポトーシス細胞では外側に移動することが知
られている。この細胞膜の変化はホスファチジルセリン
と結合するアネキシンVによって観察できる。Molt4細胞
(1×106細胞/ml)をオキサトミド(最終濃度0、30
μM)あるいは塩酸アゼラスチン(最終濃度0、30μ
M)と共に37℃、5%炭酸ガス環境下で8時間培養した後、
細胞膜の局所的な反転を観察するために蛍光標識したア
ネキシンV(annexinV-FITC、ロッシュ社)と、氷上(4
℃)で10分間反応させた。信号の検出、解析にはFACSca
n(Bection Dickinson社)を使用し、装置のマニュアル
の条件に従って検出、解析を行った。オキサトミドある
いはアゼラスチンに曝露したT細胞白血病腫瘍細胞株Mol
t4を蛍光標識アネキシンVと反応させフローサイトメー
ターを用いて観察の結果、二剤は共にアネキシンVと結
合する細胞数を増加させ、アポトーシスを誘導すること
が明らかになった(表1)。
【0027】
【表1】
【0028】(3)ミトコンドリア膜電位の測定 アポトーシスの早い段階でおきるミトコンドリアの膜電
位の低下についても検討した。Molt4細胞(1×106細胞/
ml)をオキサトミド(最終濃度0、40μM)あるいは
塩酸アゼラスチン(最終濃度0、30μM)と共に37
℃、5%炭酸ガス環境下で8時間培養した後、ミトコンド
リア膜電位指示薬JC-1(Molecular Probe社)(最終濃
度1μl/ml)と37℃、10分間反応させ、FACScan(Bectio
n Dickinson社)装置を使用し、装置のマニュアルの条
件に従って検出、解析を行った。解析の結果、二剤は共
にミトコンドリア膜電位の低下を誘導することがわかっ
た(表2)。
【0029】
【表2】
【0030】
【実施例4】 アポトーシスのシグナル伝達経路の検討 オキサトミドおよび塩酸アゼラスチンによるアポトーシ
ス誘導のシグナル経路について検討した。汎カスパーゼ
阻害剤zVADおよびカスパーゼ9選択的阻害剤LEHDを用い
た細胞増殖試験を行った。HL-60細胞(2.5×104細胞/ウ
ェル)をオキサトミド(最終濃度0、30μM)、zVAD
(最終濃度0、25μM)またはLEHD(最終濃度0、2
5μM)と共に37℃、5%炭酸ガス環境下で48時間培養
した。汎カスパーゼ阻害剤zVAD処理群ではオキサトミド
による細胞生存率の低下が抑えられたが、カスパーゼ9
選択的阻害剤LEHD処理群ではオキサトミドで誘導される
アポトーシスの部分的な回避しか認められなかった(図
6)。
【0031】次に小胞体ストレスによって活性型に変わ
るカスパーゼ12の検出をウエスタンブロット法により
試みた。陽性対照群にはカスパーゼ12を活性化するこ
とが知られているタプシガルジンを、陰性対照群にはカ
スパーゼ9を活性化することが知られているデキサメサ
ゾンを添加した。HL-60細胞(2.5×104細胞/ウェル)を
オキサトミド(最終濃度0、20、40μM)、または
タプシガルジン(最終濃度1μM)、またはデキサメサゾ
ン(最終濃度0.2μM)と共に37℃、5%炭酸ガス環境下で
16時間培養した。細胞からタンパク質を抽出し、その
うち、20μgを用いて、ポリアクリルアミドゲル電気泳
動を行った後に、PVDF膜上に転写した。免疫反応にはウ
サギ坑カスパーゼ12抗体(×1000倍希釈)(Chemicon
社、アメリカ)、パーオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギ免
疫グロブリン抗体を用い、化学発光法(ECL、Amersham
社、アメリカ)による目的タンパク質の検出を行った。
オキサトミドによる16時間処理したHL-60細胞および
陽性対照群(タプシガルジン処理)では活性型カスパー
ゼ12が認められた(図7a)。対照および陰性対照群
(デキサメサゾン処理)の細胞では活性型カスパーゼ12
は認められなかった。
【0032】
【実施例5】 小胞体ストレスの誘導と増殖抑制の強さ
との関連の検討 オキサトミドによる小胞体ストレスの誘導と増殖抑制の
強さとの関連を検討した。小胞体ストレスによって誘導
される遺伝子GADD153/CHOPの発現をノーザンブロットに
より解析した。HL-60およびMCF-7細胞(2.5×104細胞/
ウェル)を30μMオキサトミドと共に37℃、5%炭酸ガス
環境下で8時間培養した。各細胞株よりRNAを抽出し、そ
のうち20μgを用いて、アガロース電気泳動を行った後
に、膜上に転写した。GADD153/CHOP遺伝子の1〜507bp
(GeneBank Accesion number NM 004083)に基づいて合
成された放射性物質標識DNAプローブを用いて、目的遺
伝子の発現の検出を行った。その結果、オキサトミドに
よる増殖抑制が強く認められるHL-60細胞ではGADD153/C
HOPの発現誘導があった(図7b)。一方、MCF-7ではこ
の遺伝子の発現は弱く、薬剤感受性とGADD153/CHOP遺伝
子の発現に相関を認めた。
【0033】
【発明の効果】本発明により、抗アレルギー剤であるオ
キサトミド、アゼラスチン、またはそれらの医薬的に許
容される塩の新規な用途である抗腫瘍剤としての用途が
提供される。本発明の抗腫瘍剤は、各種腫瘍に対する細
胞増殖抑制効果およびアポトーシス誘導効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、マウス白血病細胞株P388を用いた抗
腫瘍作用試験の結果を示す図である。
【図2】 図2は、前骨髄球細胞白血病細胞株HL-60を
用いた細胞増殖抑制試験の結果を示す図である。
【図3】 図3は、オキサトミドによる細胞増殖抑制を
示す図である。
【図4】 図4は、塩酸アゼラスチンによる細胞増殖抑
制を示す図である。
【図5】 図5は、アポトーシスによるDNAの断片化を
示す図である。
【図6】 図6は、カスパーゼ阻害剤によるアポトーシ
スの回避を示す図である。
【図7】 図7は、小胞体ストレスの指標を示す図であ
る。図7aは、ウェスタンブロッティングによる活性型
カスパーゼ12の解析を示す図である。図7bは、ノー
ザンブロッティングによるGADD153/CHOPの発現の解析を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07D 403/04 C07D 403/04 (72)発明者 上川 雄一郎 栃木県下都賀郡壬生町北小林880 獨協医 科大学 薬理学教室内 (72)発明者 阪上 守人 栃木県下都賀郡壬生町北小林880 獨協医 科大学 薬理学教室内 Fターム(参考) 4C063 AA01 BB02 CC28 DD19 EE01 4C086 AA01 AA02 BC41 BC50 GA07 GA12 GA13 MA01 MA02 MA04 NA14 ZB26 ZB27

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オキサトミド、アゼラスチン、またはそ
    れらの医薬的に許容される塩から選ばれる1種または2
    種以上を有効成分とする抗腫瘍剤。
  2. 【請求項2】 前記アゼラスチンの医薬的に許容される
    塩は塩酸塩である、請求項1記載の抗腫瘍剤。
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