JP2003210158A - 微生物濃縮方法 - Google Patents

微生物濃縮方法

Info

Publication number
JP2003210158A
JP2003210158A JP2002015201A JP2002015201A JP2003210158A JP 2003210158 A JP2003210158 A JP 2003210158A JP 2002015201 A JP2002015201 A JP 2002015201A JP 2002015201 A JP2002015201 A JP 2002015201A JP 2003210158 A JP2003210158 A JP 2003210158A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
microorganisms
concentration
microorganism
concentrating
adsorbed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002015201A
Other languages
English (en)
Inventor
Hajime Kono
源 河野
Hiroaki Inoue
浩章 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aquas Corp
Original Assignee
Aquas Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aquas Corp filed Critical Aquas Corp
Priority to JP2002015201A priority Critical patent/JP2003210158A/ja
Publication of JP2003210158A publication Critical patent/JP2003210158A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料中の微生物を生菌として濃縮する方法に
おいて、遠心分離操作や膜分離操作等を必要とせず、し
かも低コストで省エネルギーに有効であり、且つ簡便で
汎用性のある微生物濃縮方法を提供すること。 【解決手段】 試料中の微生物を磁性体粒子に吸着さ
せ、磁石を利用した磁気分離を行う吸着・磁気分離工程
と、前記磁性体粒子に吸着された微生物を脱離処理液で
脱離し生菌を回収する脱離工程とを有することを特徴と
する微生物濃縮方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物濃縮方法に
関し、詳しくは、遠心分離操作や膜分離操作等を必要と
せず、しかも低コストでエネルギー消費が少なく、且つ
簡便で汎用性のある微生物濃縮方法に関するものであ
る。本発明において、微生物濃縮方法とは、環境水等、
一般に菌数の少ない試料中の微生物の検査等にあたり、
試料中の微生物濃度を上げるために、微生物を生きた状
態で(生菌として)濃縮する方法を言う。
【0002】
【従来の技術】近年、冷却塔用冷却水、下水処理水、排
水処理水、温浴水、河川水などの環境水中に生存してい
る微生物の中には、ヒト・動物への感染等で人間社会へ
の影響が懸念される細菌やウイルスなどの微生物が存在
することが知られるようになり、その検査の重要性が認
識されると共に、新しい検査技術の開発が求められてい
る。
【0003】しかし、これら環境水中の微生物の多くは
菌数が少なく、微生物濃度を上げるための濃縮操作が必
要とされるが、微生物は粒径が小さいため、一般の水処
理に用いられる固液分離技術の中で、水中の微生物濃縮
に適用できる技術は限られている。重力式分離法では、
微生物は粒径も小さく、また比重も水に近いため、自然
沈降による分離は困難であり、凝集沈殿法や遠心分離法
が用いられる。一方、ろ過式分離法では、精密ろ過や助
剤ろ過が用いられている。
【0004】重力式分離法のうち凝集沈殿法は、凝集剤
と微生物が結合して形成されたフロックを脱水機等によ
り濃縮分離する方法であり、主に排水処理の余剰汚泥分
離に使われている。しかし、凝集沈殿法では、濃縮度は
低く、また、分離回収されたフロックから微生物と凝集
剤を分けることは難しく、回収された微生物を他の目的
に使用する場合には、凝集剤の混入が阻害要因になる。
【0005】一方、重力式分離法のうち遠心分離法は、
遠心力を利用して分離するため、微生物濃度を上げるこ
とも可能であるが、不溶性のSS成分の混入は避けられ
ない。また、高速遠心分離機を使用するため装置コスト
も高く、多くの電気エネルギーを消費するためランニン
グコストも高い。
【0006】また、ろ過式分離法のうち精密ろ過では、
ろ過材として膜(MF膜)を用いることが多く、ろ過材
には無機系(セラミック、ガラス)と有機系(酢酸セル
ロース系、ニトロセルロース系、ポリアミド系、ポリス
ルホン等)があり、ろ過方式としては、全量ろ過方式と
クロスフロー方式に分けられるが、ろ過効率が膜面積に
依存することや目詰まりの問題を解決するためのモジュ
ール設計面での工夫が要求される。また、ろ過には加圧
又は減圧のための電気エネルギーを消費する。さらに、
MF膜は、高価な上、定期的な交換が必要なため、ろ過
剤のコストも無視できない。
【0007】また、ろ過式分離法のうち助剤ろ過は、パ
ン酵母等の比較的大きい微生物の分離には使用できるも
のの、細菌のように小さい微生物には適用が困難であ
り、また、ろ過機を使用するため、電気エネルギーを消
費する。以上述べたように、従来の微生物濃縮法は、操
作性、装置コスト及びエネルギー消費の上で課題が多
い。
【0008】近年、磁性体粒子を用いる磁気分離法が省
エネルギー・高効率な分離法として注目され、免疫磁気
ビーズによる微生物の分離や、超伝導磁石を用いた余剰
汚泥の分離等が検討されている。
【0009】しかし、免疫磁気ビーズ法は特異的な微生
物の分離・検出には有効な方法であるが、高価な抗体が
必要であり、ランニングコストも無視できない。また、
微生物の種類に応じた免疫磁気ビーズを準備することが
必要であり、汎用性のある微生物濃縮方法とはいえな
い。また、余剰汚泥の分離では、磁性体粒子の回収に加
熱アルカリ処理や超音波処理が必要であり、生きた状態
での微生物の回収には適用できない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来、微
生物の濃縮方法としては、重力式分離法のうちの遠心分
離法や、ろ過式分離法が多く用いられているが、いずれ
も操作性、コスト及びエネルギー消費の上で問題が多
い。また、従来の磁性体粒子を用いる磁気分離法では、
生きた状態での微生物の回収、コスト及び汎用性の点に
おいて、これらの課題を解決できていない。
【0011】即ち、現状では、試料中の微生物を生菌と
して濃縮する方法において、遠心分離操作や膜分離操作
等を必要とせず、しかも低コストで省エネルギーに有効
であり(エネルギー消費が少なく)、且つ簡便で汎用性
のある微生物濃縮方法は見出されておらず、これらの課
題を解決する微生物濃縮方法が望まれている。
【0012】本発明は、このような従来技術の問題点を
悉く解消したものであって、試料中(試料水中)の微生
物を生菌として濃縮する方法において、遠心分離操作や
膜分離操作等を必要とせず、低コストで省エネルギーに
有効であり、且つ簡便で汎用性のある微生物濃縮方法を
提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意検討した結果、種々の微生物が磁性
体粒子に非特異的に吸着するが、その一方で、微生物以
外の不溶成分はほとんど吸着しないこと、更に磁性体粒
子に吸着した微生物をリン酸塩等の脱離処理液で脱離さ
せ生菌として回収できることを見出し、これらの知見に
基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】即ち、請求項1に係る本発明は、試料中の
微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を利用した磁気分
離を行う吸着・磁気分離工程と、前記磁性体粒子に吸着
された微生物を脱離処理液で脱離し生菌を回収する脱離
工程とを有することを特徴とする微生物濃縮方法を提供
するものである。
【0015】請求項2に係る本発明は、磁性体粒子が、
四三酸化鉄(Fe)であることを特徴とする請求
項1記載の微生物濃縮方法を提供するものである。
【0016】請求項3に係る本発明は、脱離処理液が、
リン酸塩、硫酸塩及びエチレンジアミン四酢酸塩から選
ばれる1種又は2種以上の組合せを含有する塩溶液であ
ることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物濃縮方
法を提供するものである。
【0017】請求項4に係る本発明は、脱離処理液の塩
濃度が、0.1〜250m mol/Lであることを特徴とす
る請求項1乃至3のいずれかに記載の微生物濃縮方法を
提供するものである。
【0018】請求項5に係る本発明は、脱離処理液のp
Hが、5.5以上8.5以下であることを特徴とする請
求項1乃至4のいずれかに記載の微生物濃縮方法を提供
するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】請求項1に係る本発明は微生物濃
縮方法に関し、試料中の微生物を磁性体粒子に吸着さ
せ、磁石を利用した磁気分離を行う吸着・磁気分離工程
と、前記磁性体粒子に吸着された微生物を脱離処理液で
脱離し生菌を回収する脱離工程とを有することを特徴と
するものである。
【0020】まず、請求項1に係る本発明では、試料中
の微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を利用した磁気
分離を行う吸着・磁気分離工程を行う。ここで、試料と
しては、微生物を含む試料であれば特に限定されず、例
えば、冷却塔用却水、下水処理水、排水処理水、温浴
水、河川水などの環境水等が挙げられる。また、微生物
の種類は特に限定されず、広く細菌、ウイルス、糸状菌
等を含むものである。
【0021】この吸着・磁気分離工程においては、ま
ず、上記試料中の微生物を磁性体粒子に吸着させる。こ
こで磁性体粒子の粒径は、磁性体粒子重量あたりの微生
物に対する吸着面積が相対的に増える点で、小さいほど
好ましいが、0.1μm以下では磁石への吸着力が低下
するため、0.1μm以上、100μm以下であること
が好ましい。このような磁性体粒子としては、磁性を持
つ粒子状の物質であれば特に限定されず、例えばフェラ
イト粒子等を用いることができ、その中でも、請求項2
に記載するように、四三酸化鉄(Fe)は、入手
しやすく、取扱いが容易な点で好ましい。
【0022】試料中の微生物を磁性体粒子に吸着させる
方法としては、例えば、試料溶液を磁性体粒子に添加し
て、必要に応じて振とう、撹拌しながら10分程度接触
させる方法が挙げられる。磁性体粒子は、通常、試料の
容量あたり、0.1〜0.2%程度用いれば十分である
が、これに限定されるものではない。
【0023】請求項1に係る本発明における吸着・磁気
分離工程において、微生物を吸着させた磁性体粒子の洗
浄操作が必要な場合は、吸着させた微生物を脱離させ
ず、且つ死滅させない条件を選択する必要がある。洗浄
に用いる塩溶液の陰イオンは、磁性体粒子に吸着した微
生物に影響がないように適宜選択する。そのため、洗浄
操作には、塩化物イオン、硫酸イオン及び硝酸イオンか
ら選ばれる1種又は2種以上の陰イオンの組合せを有す
る塩溶液を用いることができる。洗浄操作に用いる塩溶
液は、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩などのよう
な、吸着した微生物を磁性体粒子から脱離させる物質を
含有しないことが望ましい。また、洗浄操作に用いる塩
溶液の塩濃度は、微生物を脱離させる性質が発現する濃
度より充分低いことが必要である。
【0024】吸着・磁気分離工程においては、上述のよ
うに磁性体粒子に微生物を吸着させた後、磁石を利用し
た磁気分離、即ち、磁石を利用して微生物を吸着した磁
性体粒子をその他の不溶成分(非吸着画分、水などの溶
媒等)と分離(磁気分離)する。例えば、磁性流体の入
った容器の外側から磁石を近づけて容器内壁に微生物を
吸着した磁性体粒子を集めておいて、液相を除去するこ
とにより、容易に非吸着画分、水などの溶媒等を除くこ
とができる。
【0025】請求項1に係る本発明においては、上記し
た如き吸着・磁気分離工程の後、前記磁性体粒子に吸着
された微生物を脱離処理液で脱離し生菌を回収する脱離
工程を行なう。この脱離工程において、磁性体粒子に吸
着した微生物を脱離させるときに用いる脱離処理液とし
ては、請求項3に記載するように、リン酸塩、硫酸塩及
びエチレンジアミン四酢酸塩から選ばれる1種又は2種
以上の組合せを含有する塩溶液が好ましい。これらの中
でも、リン酸塩溶液を脱離処理液として用いることによ
り、特異的に極めて回収率の高い脱離が可能となる。
【0026】また、脱離処理液の塩濃度は、通常、0.
1m mol/L以上であり、好ましくは0.1〜250m mo
l/Lであり、0.4〜250m mol/Lがとりわけ好まし
い。特にリン酸塩溶液を用いる場合には、0.4〜25
0m mol/Lの範囲で充分な脱離が可能である。また、硫
酸塩溶液を用いる場合には、50〜250m mol/Lの範
囲で充分な脱離が可能である。さらに、エチレンジアミ
ン四酢酸塩溶液を用いる場合には、2〜50m mol/Lの
範囲で充分な脱離が可能である。一方、塩濃度の上限と
しては、微生物が死滅しない濃度であることが必要であ
る。
【0027】なお、エチレンジアミン四酢酸塩溶液を脱
離処理液として用いる場合、生菌としての回収率低下を
避けるため、塩濃度を50m mol/L未満とすることが好
ましい。回収率の低下の原因は明らかではないが、エチ
レンジアミン四酢酸塩の濃度が50m mol/L以上である
と、微生物の細胞膜や細胞壁の構成成分であるマグネシ
ウムなどの金属が、エチレンジアミン四酢酸塩によって
除去され、その結果、生菌としての回収率が低下するも
のと考えられる。
【0028】なお、一般に界面活性剤は、担体等に吸着
した細菌を脱離させるのに有効と考えられるが、請求項
1に係る本発明においては、脱離が不充分となる点で、
脱離処理液としては好ましくない。界面活性剤のうち、
最も微生物に対して影響が少ないと思われる非イオン性
界面活性剤の一種であるポリオキシエチレンソルビタン
モノオレート(Polyoxyethylene sorbitan monooleat
e)を、仮に脱離処理液として用いた場合でも、微生物
の回収率は低いものとなってしまう。
【0029】さらに、脱離処理液のpHは、請求項5に
記載するように、5.5以上8.5以下であることが好
ましく、特に好ましい範囲は6.0以上7.5以下であ
る。
【0030】請求項1に係る本発明は、以上の如き構成
を有するものである。請求項1に係る本発明の微生物濃
縮方法によれば、吸着・磁気分離工程及び脱離工程を経
て、試料中の微生物を充分に濃縮し、生菌として回収す
ることができる。従って、請求項1に係る本発明の微生
物濃縮方法は、例えば、冷却塔水などの環境水等の試料
水中のレジオネラ検査をはじめとする微生物検査や、菌
数が非常に少ない試料中での微生物の遺伝子を検出する
ときなどに適用することが可能である。また、勿論、請
求項1に係る本発明は上記のような環境水中の微生物検
査における予備濃縮への適用の他に、微生物の大量濃縮
の手段として有効なことは、言うまでもない。
【0031】
【実施例】次に、本発明を実施例により説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】実施例1[細菌の磁性体粒子への吸着] 磁性体粒子(キシダ化学(株)製「四三酸化鉄」、32
5メッシュ;以下、「マグネタイト」という。)に対す
る各種細菌の吸着性を以下の方法で評価した。
【0033】(1)供試細菌 供試細菌として、以下の細菌を用いた。 ・バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis )IAM114
5 ・スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus a
ureus )IAM1011 ・エシェリヒア・コリ(Escherichia coli )IAM12119 ・シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeru
ginosa )IAM1514 ・レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophi
la )SG1(環境分離株) ・レジオネラ・ドゥモフィー(Legionella dumoffii )
P4201
【0034】(2)実験方法 50mL平底フラスコに、蒸留水30mLとマグネタイ
ト60mg(0.2%)を入れ、121℃・15分条件
でのオートクレーブ滅菌を行ない、上記供試細菌を培養
して調製した菌体懸濁液を、菌数が約10CFU/m
Lとなるように添加して、振とう培養機で振とうし(1
60rpm、室温)、磁気分離により経時的に非吸着画
分を採取して、残存する細菌数を計測した。
【0035】(3)結果・考察 マグネタイトへの細菌吸着の経時変化をみるためにマグ
ネタイトに吸着せずに残った細菌数を測定した結果を図
1に示した。図1から明らかな通り、いずれの細菌も1
0分間の接触で殆ど100%がマグネタイトに吸着し
た。従って、マグネタイトへの細菌の吸着は、グラム陽
性及び陰性の細菌のいずれにも共通することが認められ
た。また、このことは、マグネタイトへの吸着が、細菌
以外の微生物でも共通して見られる現象であることを示
すものであると考えられる。
【0036】実施例2[脱離処理液の検討及び洗浄操作
に用いる塩溶液の検討] 大腸菌を用いて、マグネタイトに吸着した微生物を生菌
として回収する脱離処理液の組成について試験を行なっ
た。また、マグネタイトに吸着した微生物の洗浄操作に
用いる塩溶液についても検討を行った。
【0037】(1)マグネタイトへの吸着 実施例1の(2)実験方法と同様の条件及び手順で行な
った。
【0038】(2)マグネタイトからの大腸菌の回収 大腸菌を吸着したマグネタイトを磁気分離により回収し
た後、蒸留水30mLで1回洗浄した。次に、第1表に
示す種類及び塩濃度の塩溶液を30mL加え、充分に撹
拌した後、磁気分離により非吸着画分を採取し、コロニ
ー法にて生菌数を計測した。結果を第1表に示す。
【0039】
【表1】第1表[マグネタイトからの大腸菌の回収]
【0040】(3)考察 第1表から明らかな通り、リン酸緩衝液(KHPO
/NaHPO、pH7.0)の場合、0.016m
mol/L以上の濃度で大腸菌を生菌として回収することが
でき、特に10m mol/L以上の濃度では、高い回収率で
大腸菌を回収することができた。また、硫酸ナトリウム
(NaSO)水溶液の場合、2m mol/L以上の濃度
で大腸菌を生菌として回収することができ、特に50m
mol/L以上では、高い回収率で回収することができた。
一方、0.4m mol/L以下の濃度ではほとんど大腸菌を
回収することができなかった。
【0041】これに対し、食塩(NaCl)水溶液の場
合、250m mol/L以上の高濃度の場合に僅かに大腸菌
を回収できるに過ぎなかった。また、硝酸ナトリウム
(NaNO)水溶液では、濃度を50m mol/L〜25
0m mol/Lといった高濃度で変化させても殆ど生菌を回
収できなかった。
【0042】また、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウ
ム(EDTA)水溶液の場合、0.4m mol/L以上の塩
濃度で生菌を回収することができ、特に濃度10m mol/
Lでは、約40%の大腸菌を生菌として回収できたが、
50m mol/L以上の濃度では、逆に回収量が低下する傾
向が見られた。これは、EDTAの濃度が高くなると、
微生物の細胞膜や細胞壁の構成成分であるマグネシウム
などの金属が、EDTAによって除去され、その結果、
生菌としての回収率が低下するものと考えられる。
【0043】これらの結果から、マグネタイトに吸着し
た微生物を脱離し生菌を回収するための脱離処理液とし
ては、請求項3に記載するように、リン酸塩、硫酸塩及
びエチレンジアミン四酢酸塩から選ばれる1種又は2種
以上の組合せを含有する塩溶液を用いることが好まし
く、特にリン酸塩を含有する塩溶液を用いることが最も
好ましいことが明らかとなった。
【0044】また、請求項4に記載するように、脱離処
理液として、リン酸塩、硫酸塩及びエチレンジアミン四
酢酸塩の塩濃度が10m mol/L以上、好ましくは50m
mol/Lで充分な脱離が可能となること、特に、リン酸塩
溶液を用いる場合には、リン酸塩の濃度が0.08m mo
l/Lと低濃度のリン酸塩溶液であっても十分に微生物を
脱離し、生菌として回収できることが分かった。
【0045】その一方で、マグネタイトに吸着した微生
物の洗浄操作に用いる塩溶液としては、硫酸塩濃度が
0.4m mol/L以下の塩溶液、塩化物塩溶液濃度が50
m mol/L以下の塩溶液を用いることにより、磁性体粒子
に吸着した微生物に影響がないこと、及び、硝酸塩を含
む塩溶液の場合は、硝酸塩濃度が250m mol/Lであっ
ても、磁性体粒子に吸着した微生物に影響がないことが
明らかとなった。
【0046】なお、上記塩溶液とは別に、プラスチック
担体等に吸着した細菌を脱離させるのに有効な界面活性
剤による脱離について検討した。検討は、界面活性剤の
うち、最も微生物に対して影響が少ないと思われる非イ
オン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタン
モノオレート(Polyoxyethylene sorbitan monooleat
e)をさまざまな濃度に希釈して検討したが、いずれの
濃度であってもリン酸塩溶液に比較して低い回収率であ
り、満足できる値ではなかった。
【0047】実施例3[磁性体粒子からの微生物の脱離
へのpHの影響] 大腸菌を用いて、マグネタイトに吸着した微生物を生菌
として回収する脱離処理液のpHの影響について試験し
た。
【0048】(1)マグネタイトへの大腸菌の吸着 実施例1の(2)実験方法と同様の条件及び手順で行な
った。
【0049】(2)マグネタイトからの大腸菌の回収 pH4.0〜8.5の10m mol/Lリン酸緩衝液を使用
して、実施例2と同様にして、マグネタイトから脱離・
回収される大腸菌の生菌数を計測した。結果を第2表に
示す。
【0050】
【表2】第2表[フェライトからの大腸菌の回収]
【0051】(3)考察 第2表から明らかな通り、いずれのpHの脱離処理液を
用いても、大腸菌を生菌として回収することができた
が、特に、pHが5.5以上、8.5以下の場合では6
0%以上の回収ができ、pHが6.0以上、7.5以下
ではほぼ完全に大腸菌を生菌として回収することができ
た。このことから、脱離処理液のpHは、5.5以上、
8.5以下であると、マグネタイトに吸着した微生物を
脱離し生菌を回収することができ、特に、6.0以上、
7.5以下であると、より高い回収率で生菌を回収でき
ることが分かる。
【0052】実施例4(レジオネラ属細菌の濃縮分離) レジオネラ属細菌を用いて、本発明の微生物濃縮方法の
効果を確認した。比較のため、遠心分離機を用いた遠心
分離法による濃縮(10,000rpm、30分)も並
行して実施した。
【0053】(1)マグネタイトへの吸着・磁気分離 滅菌脱イオン水1000mLに、予め培養したレジオネ
ラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila )SG-1
(以下、単に「レジオネラ」という。)を10 CFU
/100mLとなるように懸濁させた。マグネタイト1
gを添加し、5分間撹拌した後、磁石を利用して磁気分
離を行ない、非吸着画分を捨て、滅菌脱イオン水100
0mLを加え、洗浄した。
【0054】(2)マグネタイトからのレジオネラ属細
菌の脱離回収 吸着・磁気分離後の磁性体粒子に、脱離処理液として1
0m mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)を10mL加
え、良く撹拌した。次いで、磁気分離によりレジオネラ
を含む脱離処理液を回収した。この脱離処理液100μ
Lをレジオネラ検出用のGPVCα培地に接種し、コロ
ニー数を計測した。
【0055】(3)結果 本発明の微生物濃縮方法による操作で回収されたレジオ
ネラ生菌数は、2.5×10CFU/100mLであ
った。一方、従来の遠心分離法でのレジオネラ生菌数は
2.0×10CFU/100mLであり、両者はほぼ
同じ回収率であった。このことから、本発明の微生物濃
縮方法によれば、従来の遠心分離法と同様の精度でレジ
オネラを生菌として回収できることが分かる。
【0056】以上より、試料中の微生物を磁性体粒子に
吸着させ、磁石を利用した磁気分離を行う吸着・磁気分
離工程と、前記磁性体粒子に吸着された微生物を脱離処
理液で脱離し生菌を回収する脱離工程とを有することを
特徴とする請求項1に係る本発明の微生物濃縮方法によ
れば、環境水等の試料中に生存している微生物を生菌と
して高い回収率で回収し濃縮できることが明らかとなっ
た。
【0057】
【発明の効果】本発明の微生物濃縮方法によれば、環境
水等の試料中に生存している微生物を生菌として高い回
収率で回収し濃縮することができる。また、本発明の微
生物濃縮方法は、従来の遠心分離法やろ過式分離法等の
微生物濃縮方法と比較して、遠心分離操作や膜分離操作
等を必要としないため、操作性に優れている。さらに、
本発明の微生物濃縮方法は、高価な遠心分離機や膜ろ過
材をも必要としないため、コスト及びエネルギー消費の
上での問題もない。
【0058】そして、本発明の微生物濃縮方法は、従来
の磁性体粒子を用いる磁気分離と比較しても、微生物を
生菌として回収することができ、また、対象となる微生
物の種類に応じた用具も必要ないことから、汎用性に優
れている。さらに、高価な抗体を必要としないことか
ら、コストの上での問題もない。
【0059】よって、本発明の微生物濃縮方法は、例え
ば冷却塔水等の環境水中のレジオネラ検査をはじめ、菌
数が非常に少ない試料中の微生物の遺伝子を検出すると
きなどに適用することが可能である。また、本発明の微
生物濃縮方法は、環境水中の微生物検査における予備濃
縮への適用の他、微生物の大量濃縮の手段としても有効
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 マグネタイトに吸着せずに残った細菌数の経
時的変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B063 QA01 QQ06 QQ07 QQ10 QQ18 QR41 QR50 QS12 QS15 QS40 4B065 AA01X AA58X AA95X BD50 CA46

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料中の微生物を磁性体粒子に吸着さ
    せ、磁石を利用した磁気分離を行う吸着・磁気分離工程
    と、前記磁性体粒子に吸着された微生物を脱離処理液で
    脱離し生菌を回収する脱離工程とを有することを特徴と
    する微生物濃縮方法。
  2. 【請求項2】 磁性体粒子が、四三酸化鉄(Fe
    )であることを特徴とする請求項1記載の微生物
    濃縮方法。
  3. 【請求項3】 脱離処理液が、リン酸塩、硫酸塩及びエ
    チレンジアミン四酢酸塩から選ばれる1種又は2種以上
    の組合せを含有する塩溶液であることを特徴とする請求
    項1又は2記載の微生物濃縮方法。
  4. 【請求項4】 脱離処理液の塩濃度が、0.1〜250
    m mol/Lであることを特徴とする請求項1乃至3のいず
    れかに記載の微生物濃縮方法。
  5. 【請求項5】 脱離処理液のpHが、5.5以上8.5
    以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    に記載の微生物濃縮方法。
JP2002015201A 2002-01-24 2002-01-24 微生物濃縮方法 Withdrawn JP2003210158A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002015201A JP2003210158A (ja) 2002-01-24 2002-01-24 微生物濃縮方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002015201A JP2003210158A (ja) 2002-01-24 2002-01-24 微生物濃縮方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003210158A true JP2003210158A (ja) 2003-07-29

Family

ID=27651667

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002015201A Withdrawn JP2003210158A (ja) 2002-01-24 2002-01-24 微生物濃縮方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003210158A (ja)

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004111264A1 (en) * 2003-06-13 2004-12-23 University Technologies International Inc. Bacterial biofilm assay employing magnetic beads
JP2007525216A (ja) * 2004-02-23 2007-09-06 ベルナルディ、ティエリー 培養基中でバイオフィルムの形成および発育を検出することを可能にする方法および装置
JP2007236221A (ja) * 2006-03-06 2007-09-20 Fuji Electric Systems Co Ltd 微生物の分離方法
JP2008507992A (ja) * 2004-08-02 2008-03-21 ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー 臨床サンプルからの無傷の生体全体の磁性粒子による捕捉
WO2009104223A1 (ja) * 2008-02-21 2009-08-27 株式会社日立製作所 微生物検査装置および微生物検査用チップ
CN102676385A (zh) * 2011-03-14 2012-09-19 株式会社东芝 微生物的浓缩装置及浓缩方法
JP2013508690A (ja) * 2009-10-20 2013-03-07 オゲノ ゲーエムベーハー 磁気要素を備える生検器具
US8546100B2 (en) 2007-10-03 2013-10-01 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process and agent
US8741595B2 (en) 2008-12-31 2014-06-03 3M Innovative Properties Company Coliform detection process and kit for use therein
US9145541B2 (en) 2007-10-03 2015-09-29 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process
US9624464B2 (en) 2007-10-03 2017-04-18 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process
JP2018046785A (ja) * 2016-09-23 2018-03-29 国立大学法人名古屋大学 異種微生物の集団化方法、及び共生関係構築方法
CN110305792A (zh) * 2019-06-30 2019-10-08 华南理工大学 一种分离土壤微塑料表面微生物的方法
WO2022225193A1 (ko) * 2021-04-23 2022-10-27 재단법인대구경북과학기술원 미생물 능동 채취 마이크로 구조체 및 이를 이용한 미생물 능동 채취 방법

Cited By (23)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004111264A1 (en) * 2003-06-13 2004-12-23 University Technologies International Inc. Bacterial biofilm assay employing magnetic beads
JP2007525216A (ja) * 2004-02-23 2007-09-06 ベルナルディ、ティエリー 培養基中でバイオフィルムの形成および発育を検出することを可能にする方法および装置
US7955818B2 (en) 2004-02-23 2011-06-07 Thierry Bernardi Method for detecting the formation of biofilms
JP4909743B2 (ja) * 2004-02-23 2012-04-04 ベルナルディ、ティエリー 培養基中でバイオフィルムの形成および発育を検出することを可能にする方法および装置
KR101166947B1 (ko) * 2004-02-23 2012-07-19 티에리 베르나르디 배양 배지 내 바이오필름의 형성 및 발달을 탐지하기 위한방법 및 장치
JP2008507992A (ja) * 2004-08-02 2008-03-21 ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー 臨床サンプルからの無傷の生体全体の磁性粒子による捕捉
JP2007236221A (ja) * 2006-03-06 2007-09-20 Fuji Electric Systems Co Ltd 微生物の分離方法
US8546100B2 (en) 2007-10-03 2013-10-01 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process and agent
US11391732B2 (en) 2007-10-03 2022-07-19 3Minnovative Properties Company Microorganism concentration process
US9624464B2 (en) 2007-10-03 2017-04-18 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process
US9145541B2 (en) 2007-10-03 2015-09-29 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration process
US8951575B2 (en) 2007-10-03 2015-02-10 3M Innovative Properties Company Microorganism concentration agent and method of making
JP2009195156A (ja) * 2008-02-21 2009-09-03 Hitachi Ltd 微生物検査装置および微生物検査用チップ
WO2009104223A1 (ja) * 2008-02-21 2009-08-27 株式会社日立製作所 微生物検査装置および微生物検査用チップ
US8741595B2 (en) 2008-12-31 2014-06-03 3M Innovative Properties Company Coliform detection process and kit for use therein
JP2013508690A (ja) * 2009-10-20 2013-03-07 オゲノ ゲーエムベーハー 磁気要素を備える生検器具
JP2012187083A (ja) * 2011-03-14 2012-10-04 Toshiba Corp 微生物の濃縮装置及び濃縮方法
CN102676385A (zh) * 2011-03-14 2012-09-19 株式会社东芝 微生物的浓缩装置及浓缩方法
JP2018046785A (ja) * 2016-09-23 2018-03-29 国立大学法人名古屋大学 異種微生物の集団化方法、及び共生関係構築方法
CN110305792A (zh) * 2019-06-30 2019-10-08 华南理工大学 一种分离土壤微塑料表面微生物的方法
WO2022225193A1 (ko) * 2021-04-23 2022-10-27 재단법인대구경북과학기술원 미생물 능동 채취 마이크로 구조체 및 이를 이용한 미생물 능동 채취 방법
KR20220146116A (ko) * 2021-04-23 2022-11-01 재단법인대구경북과학기술원 미생물 능동 채취 마이크로 구조체 및 이를 이용한 미생물 능동 채취 방법
KR102537287B1 (ko) 2021-04-23 2023-05-26 재단법인대구경북과학기술원 미생물 능동 채취 마이크로 구조체 및 이를 이용한 미생물 능동 채취 방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2003210158A (ja) 微生物濃縮方法
Sobsey et al. Concentration of poliovirus from tap water using positively charged microporous filters
CN102417214B (zh) 利用石墨烯片与趋磁细菌三维复合物吸附重金属的方法
Kumar et al. Utilization of carbon nanotubes for the removal of rhodamine B dye from aqueous solutions
CN102264631A (zh) 利用磁性纳米粒子进行液体纯化的方法
Lakshmanan et al. Effect of magnetic iron oxide nanoparticles in surface water treatment: Trace minerals and microbes
CN104014314B (zh) 一种生物吸附剂、制备方法和用途
CN104741076A (zh) 一种磁性沸石及其制备方法和应用
KR20050058437A (ko) 중금속 흡착제 조성물
JPH02139091A (ja) 水溶液から重金属類を除去する方法と装置、およびそれに用いる重金属除去剤
CN109012595A (zh) 一种改性碳纳米管重金属离子吸附剂的制备方法
JP4260244B2 (ja) 菌体濃縮試薬
CN107151678A (zh) 好氧微生物合成的磁性铁锰氧化物及其应用
CN109012594A (zh) 一种去除废水中铬离子的改性碳纳米管的制备方法
CN106994333B (zh) 吸附重金属镉离子的胱胺改性生物炭的制备方法
CN108772044A (zh) 磁性纳米壳聚糖负载鞘细菌复合生物吸附剂及其制备方法
CN104289200A (zh) 一种磁性hacc/氧化多壁碳纳米管吸附剂的制备方法及应用
CN104667883A (zh) 一种可同时检测和吸附去除水体中亚铁离子和铜离子材料的制备方法
JP2011155919A (ja) ノロウイルス検出用材料および該材料を用いるノロウイルスの検出方法
CN104072692B (zh) 细乳液聚合制备磁性/核壳式分子印迹吸附剂的方法
CN109046300A (zh) 一种吸附重金属铜离子的改性碳纳米管的制备方法
CN108993446A (zh) 一种重金属离子吸附剂的制备方法
CN109052542A (zh) 一种去除废水中汞离子的改性碳纳米管的制备方法
CN106215851B (zh) 一种铜试剂修饰的纳米氧化铝的制备方法及其应用
CN103421702B (zh) 吸附金和锑的赖氨酸芽孢杆菌

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050405