JP2003185650A - 薬剤のスクリーニング方法 - Google Patents
薬剤のスクリーニング方法Info
- Publication number
- JP2003185650A JP2003185650A JP2001384683A JP2001384683A JP2003185650A JP 2003185650 A JP2003185650 A JP 2003185650A JP 2001384683 A JP2001384683 A JP 2001384683A JP 2001384683 A JP2001384683 A JP 2001384683A JP 2003185650 A JP2003185650 A JP 2003185650A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lrp
- protein
- dimensional structure
- dimensional
- information
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/68—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
- G01N33/6803—General methods of protein analysis not limited to specific proteins or families of proteins
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
- A61P31/04—Antibacterial agents
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/02—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms
- C12Q1/18—Testing for antimicrobial activity of a material
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2299/00—Coordinates from 3D structures of peptides, e.g. proteins or enzymes
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2333/00—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
- G01N2333/195—Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from bacteria
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Immunology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Hematology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Urology & Nephrology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Bioinformatics & Computational Biology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Food Science & Technology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- General Physics & Mathematics (AREA)
- Pathology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Public Health (AREA)
- Communicable Diseases (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Oncology (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
Abstract
を開発するための手段を提供する。 【解決手段】 微生物の代謝、増殖、感染等を制御する
Lrp様蛋白質の立体構造を明らかにし、該立体構造に基
づきLrp様蛋白質に対するリガンドとなりうる物質を探
索する。
Description
殖および感染から選ばれる少なくとも1以上を制御する
薬剤のスクリーニング方法に関する。
いに良く似た一連の蛋白質が、多くの微生物で共通して
発現されていることが明らかになってきた。こうした一
連の蛋白質のうち、最も良く機能が解明されているのは
大腸菌のLrp(leucine responsive regulatory protei
n)である。これとは別に、大腸菌のAsn C蛋白質もこの
種の蛋白質に含まれる。両者のアミノ酸配列には共通点
が多く、その機能も似ていて、Asn Cはいわば第2のLrp
といえる。以下、これら類似の蛋白質群をまとめて、Lr
p蛋白質群或いはLrp様蛋白質と呼ぶ。
知し、これにより外界の栄養状態を判断して自らの代謝
を制御する。この制御は「大宴会−飢餓(feast-famin
e)」制御と呼ばれる。外界の栄養価が高くなると、大
腸菌は「飢餓」状態から「宴会」状態へと移行する。す
なわち、他の場所への移動を停止し、細胞膜を介して栄
養素を積極的に吸収する一方で、アミノ酸合成等の独立
栄養的な代謝経路を遮断し、分裂、増殖を開始し、その
感染性まで変化させる。すでに、数十の代謝関連オペロ
ンがLrpの制御下にあることが実験的に同定されてお
り、その制御下にある遺伝子は全遺伝子の10%以上に及
ぶ可能性がある。同様に、大腸菌のもう1つのLrp様蛋
白質であるAsn C蛋白質はアスパラギンの濃度を感知
し、アミノ酸合成やDNA複製を制御する。
伝子上流のプロモーターDNA部位にLrp様蛋白質が結合
し、これらの遺伝子の転写を活性化もしくは不活性化す
ることにより行われる。プロモーターDNAへのLrp様蛋白
質の結合、解離は、外界の栄養状態を反映することか
ら、外界の栄養状態を反映する何らかの低分子物質(以
下、リガントと呼ぶ)がLrp様蛋白質の立体構造変化を
おこさせ、プロモーターDNAへの結合能を変化させるこ
とが予測される。
る立体構造情報、あるいは新たな人工リガンドの設計、
探索を可能にするLrp様蛋白質の立体構造情報は明らか
にされてはいない。通常、蛋白質の立体構造を研究する
手段としてはX線回折法、NMR分光法、電子顕微鏡法等の
手段があるが、NMR分光法には対象分子の大きさに制約
があり、電子顕微鏡法には精度上の制約がある。したが
ってLrp様蛋白質会合体の立体構造の解析にはX線回折法
が望ましい。しかし、X線回折法において必須の蛋白質
の結晶化は一般に容易ではない。
結晶化が進められているが、それが成功したとの報告は
ない。また、別の微生物由来のLrp様蛋白質がヨーロッ
パで結晶化され、その2次構造構成が報告されている
が、分解能が3Å程度、R因子が30%以上と精度が悪く、
リガンドとの作用に重要なアミノ酸側鎖の立体配置に関
する情報は得られていない。
質の立体構造をその側鎖を構成する原子の3次元座標に
至るまで解析し、リガンドの設計・探索の標的となる立
体構造上の特徴を明らかにすることを課題とする。さら
に、本発明は、上記立体構造情報に基づいて、微生物の
代謝、増殖、感染等を制御する薬剤をスクリーニングす
る方法を提供することを課題とする。
結果、Pyrococcus sp. OT3, (別名:Pyrococcus horik
oshii, あるいはPyrococcus shinkaii、Japan Collecti
on of Microorganisms登録番号: JCM9974)由来のLrp様
蛋白質(14種)のうち1つの結晶化に成功し、X線回折法
によりその立体構造を高い精度で決定した。そして、こ
の立体構造情報をもとに、Lrp様蛋白質が介在する微生
物の代謝、増殖、感染等に関与する遺伝子の転写制御を
変化させ、抗微生物作用を発揮する薬剤のスクリーニン
グ方法を確立した。
1)に関するものである。 (1)Lrp様蛋白質の立体構造情報に基づき、該蛋白質
のリガンドとなる物質を選択することを特徴とする、微
生物の代謝、増殖および感染から選ばれる少なくとも1
以上を制御する薬剤のスクリーニング方法。
単量体の会合によって生じるすきま部や穴部に関する情
報である、上記(1)記載の方法。 (3)前記立体構造情報が、X線回折法による原子3次
元座標データから得られる情報である、上記(1)また
は(2)記載の方法。
謝、増殖および感染から選ばれる少なくとも1以上を制
御する薬剤のスクリーニング方法。 1) X線回折法により、Lrp様蛋白質の結晶の原子3次元
座標データを得る。 2) 上記3次元座標データを蛋白質の立体構造解析プロ
グラムに入力し、Lrp様蛋白質の立体構造画像および/
または数値情報を解析する。 3) 上記立体構造画像および/または数値情報に基づ
き、Lrp様蛋白質単量体の会合によって生じるすきま部
や穴部に関する立体構造情報を得る。 4) 上記立体構造情報に基づき、Lrp様蛋白質のリガンド
となる物質を薬剤として選択する。
から選ばれる少なくとも1以上を制御する薬剤が抗微生
物薬である、上記(1)〜(4)のいずれか1に記載の
方法。 (6)前記Lrp様蛋白質がPyrococcus属に属する微生物
由来のLrp様蛋白質である、上記(1)〜(5)のいず
れか1に記載の方法。 (7)前記微生物がPyrococcus sp. OT3(JCM 9974)であ
る、上記(6)記載の方法。
録した記録媒体。 a) Lrp様蛋白質の原子3次元座標データ b) 上記データを蛋白質の立体構造解析プログラムに入
力して作成された、Lrp様蛋白質の立体構造画像および
/または数値情報 (9)前記Lrp様蛋白質がPyrococcus属に属する微生物
由来のLrp様蛋白質である、上記(8)記載の記録媒
体。 (10)前記微生物がPyrococcus sp. OT3(JCM 9974)で
ある、上記(9)記載の記録媒体。 (11)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の方
法で得られた、微生物の代謝、増殖および感染から選ば
れる少なくとも1以上を制御する薬剤又は抗微生物薬。
造情報に基づき、該蛋白質のリガンドとなる物質を選択
することを特徴とする、微生物の代謝、増殖および感染
から選ばれる少なくとも1以上を制御する薬剤のスクリ
ーニング方法に関する。以下、本発明について詳細に説
明する。
物由来のLrp(leucineresponsive regulatory protei
n)およびその類似蛋白質を意味する。Lrpは外界のロイ
シン濃度を感知して自らの代謝制御を行う蛋白質であ
る。Lrp類似蛋白質とは、Lrpとアミノ酸配列および機能
(外界の栄養状態を感知し、自らの代謝制御を行う)が
類似する一連の蛋白質を意味する。かかるLrp類似蛋白
質としては、例えば大腸菌のAsn C蛋白質、Pyrococcus
属のLrpA、Sulfolobus属のSa-lrp等が挙げられる。
遺伝子上流のプロモーターDNA部位に該蛋白質が結合
し、これらの遺伝子の転写を活性化もしくは不活性化す
ることにより発揮される。そして、プロモーターDNAへ
のLrp様蛋白質の結合、解離は、外界の栄養状態を反映
する何らかの低分子物質がLrp様蛋白質の立体構造変化
をおこさせ、プロモーターDNAへの結合能を変化させる
ことが予測される。本明細書中では、この「Lrp様蛋白
質に結合し、その立体構造変化をおこさせる低分子物
質」を「リガンド」と呼ぶ。
由来は特に限定されず、それが発現されている多くの微
生物を用いることができる。例えば大腸菌、枯草菌、Th
ermoplasma属やSulfolobus属に属する微生物等が挙げら
れるが、特にPyrococcus 属に属する微生物、なかでもP
yrococcus sp. OT3(JCM9974)が好ましい。
造情報」とは、Lrp様蛋白質結晶の立体構造に関する情
報である。該立体構造情報には、Lrp様蛋白質単量体の
みならず、それらが会合して生じる会合体の情報も含
む。また、リガンドが結合した状態とリガンドが結合し
ていない状態の双方の情報を含むものとする。
報のなかでも、特にLrp様蛋白質単量体の会合によって
生じるすきま部や穴部に関する情報を利用することが好
ましい。ここで、「すきま」とはLrp様蛋白質間に生じ
た、各原子と原子あるいはアミノ酸とアミノ酸の間の空
隙を意味し、「穴」とはLrp様蛋白質会合体を全体とし
てみたときに、中央に生じた大きい空間を意味する。こ
れらは、いずれもスクリーニング対象である「リガン
ド」のLrp様蛋白質への結合に重要な該蛋白質の立体的
特徴にかかわる情報である。
MR分光法、電子顕微鏡法等によって得ることができる。
ただし、NMR分光法には対象分子の大きさに制約があ
り、電子顕微鏡法には精度上の制約があるため、X線回
折法で得ることが望ましい。X線回折法では、各回折点
の位相関係を明らかにするため、そのままの結晶に加え
て、重原子同形置換法を用いた分析を行う。すなわち、
2種類の異なる重原子(例えば、白金と金)を含む溶液
を結晶に浸透させ、重原子置換誘導体として分析する。
グラム(例えばCCP4プログラム群等)を用いて電子密度
マップを計算し、この電子密度マップに最も合うように
原子の3次元座標データを決定する。該「3次元座標デ
ータ」としては、例えば表1に示すプロテインデータバ
ンク(PDB)のフォーマットで記載した原子3次元座標が
挙げられる。なお、PDBフォーマットは蛋白質分子を構
成する原子の3次元座標を扱う国際的な標準形式の一つ
である。
立体構造解析プログラムに入力することにより、Lrp様
蛋白質の立体構造画像および/または数値情報を得る。
該「立体構造解析プログラム」としては、例えば、CCP4
プログラム群、O、X-PLOR、MolScript、Insight II、Gr
asp等が挙げられる。また、「立体構造画像情報」と
は、リボンダイアグラム(例えば、図3および図4)、
立体構造モデル(例えば図2)、コンピューターグラフ
ィックス等の画像であらわされた情報を意味する。同様
に、「数値情報」とは、結晶の直径、穴やすきまの幅や
深さ等、数値であらされる情報のすべてを意味する。
画像およびまたは数値情報は、穴からすき間へと広がる
空間の形状を記述し、これに面する疎水性、親水性の様
々な原子団の配置を定めるものであり、Lrp様蛋白質に
作用するリガンドをスクリーニングするためのきわめて
有用な母体となる。
様蛋白質は自然界に存在するリガンドの結合により立体
構造変化を生じ、この構造がLrp様蛋白質のプロモータ
ーDNAへの結合、解離に重要なはたらきをする。したが
って、該リガンドは、微生物の代謝や増殖、感染等を、
人為的に制御する薬剤となり得る。好ましくはそのよう
な薬剤は微生物の代謝、増殖、感染を抑え、微生物によ
る有害な作用を防止するための抗微生物薬である。
白質が見出されておらず、そのリガンドにはヒト等への
深刻な副作用をもたらさない可能性が期待される。該リ
ガンドは、従来用いられてきた抗生物質とは標的とする
蛋白質、作用する機構が異なることから、近年深刻にな
りつつある微生物の抗生物質耐性の解決につながる可能
性も高い。
た記録媒体を提供する。該記録媒体は、具体的には以下
のa) および/またはb)を記録する。 a) Lrp様蛋白質の原子3次元座標データ b) 上記データを蛋白質の立体構造解析プログラムに入
力して作成された、Lrp様蛋白質の立体構造画像および
/または数値情報 本発明においては、記録媒体の好適な態様として、Pyro
coccus sp. OT3由来のLrp様蛋白質の立体構造情報を実
施例に記載する。なお、「記録媒体」にはCD-ROM、光デ
ィスク、光ファイル、MO、ミニディスク、フレキシブル
ディスク、コンピューターのハードディスク等、上記情
報を記録できるすべての媒体を含むものとする。前記記
録媒体は、Lrp様蛋白質のリガンド探索に有用な情報を
与え、微生物の代謝、増殖および感染から選ばれる少な
くとも1以上を制御する薬剤をスクリーニングするツー
ルとして利用できる。
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。 実施例1:Lrpの結晶化 (1) Lrpの発現ベクターの構築 Pyrococcus sp. OT3(JCM9974)のゲノムDNAを鋳型と
し、以下のプライマーを用いてlrp遺伝子配列を持つDNA
断片をPCR法により増幅した。PCRは、変性94℃、アニー
リング55℃、伸長反応72℃、30サイクル、(宝酒造株式
会社LA Taq、PERKIN ELMER社製GeneAmp PCR system 960
0使用)の条件で20μl行った。
造株式会社製)とBamHI(宝酒造株式会社製)で切断
し、この断片をアガロース電気泳動で分離した。得られ
たDNA断片(lrp遺伝子配列を持つ)は、制限酵素NdeIと
BamHIで切断した発現ベクターpET3(ノバゲン社製)に
連結し[10μlの反応溶液(660mM トリス−塩酸緩衝液
(pH7.6)、66mM MgCl2、100mM DTT、1mM ATP)中、16
℃で一晩T4 DNAリガーゼ(宝酒造株式会社製)により反
応]、Lrp発現ベクター(pET3-LRPS01)を構築した。
TG-3’(配列番号1) Reverse primer:5’-GAACGGATCCATCAAATTGCTATCATAGTCG
AGGTC-3’(配列番号2) (2) Lrpの大腸菌での発現 Lrp発現ベクター(pET3-LRPS01)を大腸菌BL21(DE3)株
(ノバゲン社製)に導入した。この大腸菌株を50mg/ml
のアンピシリンを含む2xYT培地8ml中37℃で一晩培養し
た後、8リットルの同じ培地に接種し、600nmでの吸収が
0.75付近になるまで生育させた。次いで2mMのイソプロ
ピルチオガラクトシド(IPTG)を加えて、Lrpの発現を
誘導した。さらに4時間培養を続けた後、遠心分離(ベ
ックマンAvanti J-25、7,500rpmで5分)により菌体を回
収した。
Aを含む)にLrpを発現した菌体を懸濁し、フレンチプレ
ス(SLM社製)で破砕後、30分間の遠心分離を行った[ベ
ックマン社製の遠心分離機(Avanti J-25、ローターJA-
25.5)を使用、4℃ 25,000rpm]。上澄みを回収し、75℃
で1時間の熱処理後、再度、4℃ 25,000rpmで30分間遠
心分離を行った。上澄みを30mMのトリス−塩酸(pH7.
0)緩衝液に透析した後、陰イオン交換カラムクロマト
グラフィーおよびゲルろ過をそれぞれ2回行って精製し
た。
衝液で予め平衡化した陰イオン交換カラム[1.6 x 18c
m、Resource Q(ファルマシア社製)]に注ぎ、さらに同
じ緩衝液でカラムを洗浄した。次に、緩衝液中の塩化ナ
トリウムの濃度を0から2Mまで直線的に上昇する勾配で
変化させながらカラムに通し、蛋白質を溶出させた。カ
ラムはFPLCシステム(ファルマシア社製)を使用し、流
速を毎分2mlとした。カラムから溶出された溶液を4mlず
つ分取し、SDS電気泳動法によりLrpを含む画分を確認
後、保存した。
塩酸(pH7.0)に対して透析した後、ゲルろ過を行っ
た。100mMのトリス−塩酸(pH 7.0)緩衝液で予め平衡
化したカラム[2.6 x 60cm、Superdex 75(ファルマシア
社製)]に蛋白質溶液を注入後、同緩衝液を毎分1mlで注
入した[FPLCシステム(ファルマシア社製)を使用]。カ
ラムからの流出液を2mlずつ分取し、SDS電気泳動法によ
りLrpを含む画分を確認して保存した。以上の陰イオン
交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過の過程を交互に
2回繰り返し、最終的にSDS電気泳動法により単一のバン
ドが観察される程度に精製した。
0mg/mlとなるよう調整して結晶化用の試料とした。結晶
化は24穴結晶化プレート(ハンプトンリサーチ社製)を
用いて蒸気拡散法によるシッティング・ドロップ法で行
った。すなわち、結晶化試料とリザーバー液[10%(重
量)PEG 6000、1.0M 塩化リチウム、100mMクエン酸緩衝
液(pH 4.0)]を4μlずつ混合した溶液を母液とし、0.8
mlのリザーバー液に対して5℃の恒温下で蒸気拡散さ
せ、約1週間で0.2mm程度の六角錐状の結晶を得た(図
1)。
用いて立体構造決定を行うため、10mM シアン化白金(K
2[Pt(CN)6])または0.1mM 塩化金(K[AuCl4])を含む保
存液を5℃で約2日間浸透させた。測定は、1)実験室用回
転対陰極型X線源と2)放射光X線源の2条件で、もともと
のLrpの結晶2組と2種類の重原子(白金および金)誘導
体各1組の合計4組について測定した。
金)誘導体各1組について、実験室用の回転対陰極型X
線源を用いて室温で測定した。それぞれの結晶は石英製
の細管(直径1.5mm、TOHO株式会社製)に入れ、余分な
溶液を取り除いた後、細管の両端をワックスで封じて、
X線回折装置に取り付けた。X線源(理学電機社製、Ultr
aX 18)を50kV, 100mAで運転し、回折データを、回折装
置(理学電機社製、R-AXIS IV)を用いて記録した。
晶を凍結した状態で放射光X線源を用いて測定した。放
射光X線源は、放射光施設SPring8の兵庫県ビームライン
BL24XUを用いた。結晶は、凍結用の保存液[20%(重量)
グリセロール、14%(重量)PEG 6000、1.0M 塩化リチウ
ム、100mM クエン酸緩衝液(pH 4.0)]に数分間、浸透
後、結晶凍結用の0.2mmのマウントループ(クライオル
ープ、ハンプトン・リサーチ社製)にとりつけ、液体窒
素中(-196℃)で凍結させた。測定中も、冷気吹き付け
型結晶凍結装置(理学電機社製)を用いて、結晶の温度
を-173℃に保った。0.834Åの放射光X線を用い、回折装
置(理学電機社製、R-AXISIV)を用いて回折を記録し
た。
laborative Computational Project, Number 4, Acta C
rystallographica D50, 760-763 (1994)]を用いて回折
データを処理した。その結果、この結晶は空間群P3221
またはP3121に属し、単位格子の各辺の長さはa = b = 9
6.3Å、c = 97.1Åであることが判明した。この単位格
子の大きさから、結晶の非対称単位には、3から6分子の
Lrpが含まれていることが推測された。
回折データを、CCP4プログラム群を用いて統合し、以後
の計算処理に用いた。重原子誘導体結晶中の重原子の位
置を、差パターソンマップを用いて決定した。金および
白金の誘導体結晶の非対称単位中には、それぞれ2個お
よび3個の金属原子が存在することが判明した。これら
重原子の個数、位置および占有度をCCP4内のMLPHAREプ
ログラムを用いて精密化した。この位相のオーバーオー
ル・フィギュア・オブ・メリット(overall figure of
merit)は3.0Åで0.43であった。
マップを計算し、CCP4内のDMプログラムを用いて溶媒平
滑化とヒストグラム・マッチィングにより位相を改良し
た。改良した位相を用いて作成した電子密度マップで
は、非対称単位に4分子と空間群P3221を仮定した場合に
のみ、右巻きのヘリックスの電子密度が適切に観察され
た。この電子密度マップに最も良く適合するように各分
子72残基のアラニンからなる4分子のモデルをプログラ
ムO(Jones T. A., Zou J. Y., Cowan S. W., and Kjel
dgaard M., Improved methods for binding protein mo
dels in electron density maps and the location of
errors in these models, Acta Crystallographica A4
7, 110-119 (1991))を用いてデザインした。
質立体構造が共通に持つパラメーター(Engh and Hube
r)に適合する様にX-PLOREプログラム[Brunger,A. X-PL
ORE v3.1 Manual(エール大学出版、ニューヘブン、199
2)]を用いて精密化した。さらに、プログラムOを用い
てモデルと電子密度マップが大きく異なる部分を修正し
た。この時点では、非対称単位中の4つの分子は全く同
じになるように制限している。この時点で、実験データ
とモデルとの違いを示すR因子の値は39.1%であった。
施設SPring8 BL24XUで測定した高分解能のデータを用い
てモデルの精密化と修正を行った。3.0Åまでのデータ
を対象としてX-PLOREプログラムにより先のアラニンモ
デルを精密化後、2.0Åまでの高分解能のデータを使
い、wARPプログラム[Perrakis, A., Sixma, T. K., Wil
son, K. S., and Lamzin, V. S., wARP: improvement a
nd extension of crystallographic phases by weighte
d averaging multiple refined dummy atomic models,
Acta Crystallographica D53, 448-455 (1997)]を用い
てその位相を改良した。この改良した位相を用いて電子
密度マップを作成し、側鎖を含め蛋白質を構成するほと
んどの原子に対応する電子密度を明瞭に同定することが
できた。この電子密度マップを元に、側鎖まで含めたLr
pの立体構造モデルを作成することに成功した。さらな
る精密化を行い、分解能1.8Åの段階で、蛋白質の原子
では解釈できない明瞭な電子密度を溶媒分子としてモデ
ルに加えた(これについては後にさらに議論する)。精
密化の最終段階では、4分子が全く同じ立体構造をとる
という制限は外した。
アミノ酸、メチオニンを除く全ての残基から構成される
4つのLrpが含まれている。20から1.8Åまでの実験デー
タと最終モデルとの整合性を評価するR因子は21.2%であ
り、高い精度で立体構造が決定されたことが示された。
CCP4内のPROCHECKプログラムを用いて、ラマチャンドラ
ン(Ramachandran)プロットを作成したところ、全残基
の98.5%がエネルギー的に安定なコンホメーションをと
り、したがって、蛋白質立体構造を一般的に律する法則
から観ても問題がないことが明らかになった。平均の温
度因子(B-factor)は17.3で、蛋白質の表面に位置して
いるために本来揺らいでいて決定できない側鎖以外は、
全ての原子の位置が明瞭に決定されたことが明らかであ
った。
体あるいは4量体を形成するとの報告がなされている。
そこで、大腸菌で発現したLrpを、ゲルろ過(溶液中の
分子の見かけの大きさを反映する)によって分析した。
M塩化ナトリウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.
0)で希釈し、最終濃度が約100μMになるように調整し
た。ゲル(Waters社製、Protein Pak 125、7.8 x 300m
m)を用いて、同じ緩衝液を使用して、毎分1mlの流速で
ろ過を実施し(Waters社製、LC Module I plusシステム
を使用)、時間とともに流出する蛋白質の状況を蛋白質
の220nmの光吸収で観測した。
5、精製1)一般に、ゲルろ過では、溶液中の見かけの
大きさが大きいものから順に流出されるので、最初のピ
ーク(図5のピーク1)がLrp8量体に対応し、より遅く
流出するピークはより低い会合状態に対応するものと考
えられる。したがって、条件によって、8量体に至るま
での種々の会合体をLrpは形成し、8量体を形成した時の
Lrpの機能と、より低い会合状態にある時のLrpの機能は
異なると考えられた。
の解析 (1) Lrpを構成する原子の3次元座標 Lrp立体構造の原子3次元座標をプロテインデータバンク
(PDB)フォーマットで記載したものを表1に示す。該
座標から、Lrpが4分子(A〜D)、および196個の水分子
が非対称単位内に存在することがわかる。表1の1〜7行
はこの非対称単位を結晶中と同様に繰り返すための情報
である。8行目以降の各行では、左より、(i)原子の通し
番号(1〜2556)、(ii)原子の種類、つまり元素(ただ
しアミノ残基内での位置、すなわち化学結合に関する情
報をも含み、同じ炭素、CでもCAやCBというように区別
される)、(iii)各原子が属するアミノ酸残基の種類(2
0種類ある各アミノ酸を三文字で表記、例えばVAL、水分
子の場合はHOHと表記)と原子が属する分子の区別(例
えばLrpの場合A〜Dのどれか、水分子の場合にはW)、(i
v)各単量体中でN末端から数えたアミノ酸残基の番号
(水分子の場合は1〜196の通し番号)、(v)X座標(オン
グストローム単位)、(vi)Y座標(オングストローム単
位)、(vii)Z座標(オングストローム単位)、(viii)占
有率(その位置をその原子が占めている確率)、(ix)等
方性温度因子(熱運動による原子座標のゆらぎの示標、
(x)同期律表上の元素番号(6はC、7はN、8はO等)、(x
i)再度、元素の種類(C、O、N等)を示している。
が、においてはα、β、γ、δ、ε、ζ、およびηの
代わりに、A 、B 、C 、D 、E 、Z 、およびHを用い(C
AやCB)、C末端の余分な酸素原子をOXT(OT)で表し
た。
鎖からなるβシートと2本のαヘリックスから構成され
ることがわかった(図4)。2つの単量体のβシート各4
鎖、合計8鎖は単一のβシートを形成して2量体を形成す
る(図4)。結晶中では、4つのこのような2量体がさら
に会合して、円盤状の8量体を形成している(図3)。8
量体円盤の直径は約60Å、厚みは約40Åであった。
のように、穴が貫通していた。この中央の穴から、各2
量体間のすき間(4つ)へと十字型に空間が広がってい
る(図3上)。この空間の形状、および、これをとりま
くアミノ酸側鎖の種類とその立体的な配置は、Lrpに作
用するリガンドをスクリーニングするための重要な立体
構造情報である。
が約30Åのシリンダー状で、その広さは、アミノ酸2ヶ
を充填して多少余裕が残る程度であった。この穴に、会
合体中の8つのLrpのそれぞれから合計8組のアミノ酸側
鎖群、9番のバリン、37番のグルタミン酸、38番のチロ
シン、68番のメチオニン、70番のセリンが面していた
(9、37、38等の番号はLrp単量体の中でN末端から数え
た該アミノ酸残基の番号、表1参照)。このうち37番、3
8番、68番は2量体間のすき間へと連なる境界ともなって
いた。
酸2ヶ程度を何とか充填できる、あるいは充填すること
によりすき間が押し広げられる程度の大きさであった。
このすき間を、2個のLrpのアミノ酸側鎖群、15番のグル
タミン酸、33番のバリン、35番のチロシン、39番のアス
パラギン酸、49番のロイシン、53番のアスパラギン酸、
56番のイソロイシン、57番のトレオニン、61番のアルギ
ニン、69番、71番のトレオニン、73番、75番のイソロイ
シンがとり囲んでいた。
した場合、もしそのリガンドが空間の一部に完全に相補
的で、これを埋めることができれば、8量体を安定化さ
せ、8量体としてのLrpの機能を発現することができる。
一方、もしそのリガンドが空間よりも大きく、しかしな
がらLrpへの高い結合定数を持つ場合には、二量体間の
空間を拡張することにより8量体を解離させ、8量体とし
てのLrpの機能を阻止する、あるいはより低い会合状態
としてのLrpの機能を発現させると予想された。そし
て、この部分が自然界に存在するリガンドの相互作用部
位である可能性が極めて高いと考えられた。
成されたLrpの立体構造画像およびまたは数値情報は、
穴からすき間へと広がる空間の形状を記述し、これに面
する疎水性、親水性の様々な原子団の配置を定めるもの
である。したがって、これらの情報は、Lrpに作用する
リガンドをスクリーニングするためのきわめて有用な母
体と考えられた。
界のリガンドの位置 (1) Lrp結晶内への自然界のリガンドの取り込み 実施例1で得た結晶が自然界のリガンドが結合した状態
であることを以下のようにして確認した。 1) Lrpの精製(実施例1と異なる方法による精製) 実施例1の精製法に硫安による分画と疎水性カラムクロ
マトグラフィーを追加し、より厳しい条件で精製を行っ
た。すなわち、熱処理後の遠心分離して得た上澄みに、
40%飽和になるように硫酸アンモニウムを加えて溶解し
た後、4℃ 18,000rpmで15分間遠心分離した。その上澄
みに再度、硫酸アンモニウムを加えて最終濃度が80%飽
和にした後、4℃ 18,000rpmで15分間遠心分離した沈澱
を以後の精製に用いた。沈澱は、30mlの30mMのトリス
−塩酸(pH7.0)緩衝液に溶解した後、30mMのトリス−
塩酸(pH7.0)緩衝液に対して透析した。また実施例1
の陰イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびゲルろ
過の後に疎水性カラムクロマトグラフィーを加えた。す
なわち、ゲルろ過により精製した蛋白質溶液に硫酸アン
モニウムを1.6Mになるように加えた後、予め平衡化した
[1.5M硫酸アンモニウムを含む50mMのトリス−塩酸(pH
7.0)緩衝液を使用]、疎水性カラム[1.6 x 18cm(東ソ
ー株式会社製、BUTYL-TOYOPEARL 650M)]に注入後、同
じ緩衝液でカラムを洗浄した。次に緩衝液中の硫酸アン
モニウムの濃度を変化させながら(1.5から0Mまで直線
的に下降する勾配)、カラムに通し、蛋白質を溶出させ
た。この間、FPLCシステム(ファルマシア社製)を使用
して、流速を毎分2mlとした。カラムからの流出液を4ml
ずつ分取し、SDS電気泳動法によりLrpを含む画分を確認
して保存した。
まり会合状態が変化していることが確認された(図5、
精製2)。これは実施例1の精製法に比べて、本精製法
が蛋白質の変性を起こし易い条件であるため、大腸菌か
ら取り込まれLrpの会合を促進していたリガンドが解離
し、8量体形成ができなかったものと考えられた。以上
より、大腸菌細胞内にLrpの会合を助けるような自然界
のリガンドが存在し、実施例1の結晶は、これをだき込
んでLrpが結晶化したものと考えられた。
然界のリガンドの位置 Lrpの立体構造の最終モデルに含まれる蛋白質以外の部
分(196個の水分子とされた部分)をさらに詳細に解析
した。その結果、リガンドの可能性がある電子密度が2
ヶ所、どちらも2量体の会合面上のすき間に同定された
(図6)。すでに記述したように、X線回折法によって
実験的に得られるものは電子密度分布図であり、最終的
に得られる立体座標はこの分布図に最も良く合うように
デザインされたモデルである(図2)。結晶中には多数
の水分子が含まれているが水分子の様に小さい分子の位
置を電子密度の中に同定することはきわめて困難であ
る。水分子を構成する原子のうち、水素原子のX線回折
能は極めて低いので(つまりX線では見えない)、実際
には遊離した酸素原子1個を電子密度分布図に同定する
ことになる。現在のモデルには、Lrpに由来すると考え
られる以外に電子密度があり、これを196個分の水分
子、より正確には196個の酸素原子と同定している。も
し大腸菌細胞に由来する、自然界のリガンドが結晶内に
とりこまれているなら、このいずれかの電子密度に対応
するはずである。
るために、まず、電子密度があまり高くない部分に対応
する水分子(該蛋白質8量体の穴の中にある水分子66個
を含む)を削除した。これは、これらの原子がモデルの
他の部分に影響して電子密度を歪めるのを防ぐためであ
る。この改良モデルを用いて、立体構造の精密化をさら
に数サイクル行い、電子密度分布との差(差フーリエマ
ップと呼ぶ)を計算した。もしリガンドが存在するなら
この差フーリエマップ上にその密度が観測されるはずで
ある。差フーリエマップ上に、新たに観測された電子密
度(カウンターレベルが3以上の、すなわち電子密度が
強いもののみ)を、厳しい基準で検討し、周りに他の水
分子(酸素原子)が存在せず、単独の水分子として蛋白
質に非共有結合的に結合すると考えられるという箇所の
みに、新たに水分子をモデルに加えた。この様にして判
定を続けた結果、電子密度が水分子以上に連続してい
て、したがって、本来はより大きな分子を構成する可能
性のある箇所が、非対称単位あたりに1ヶ所、該Lrp8量
体あたりに2ヶ所同定された(図6)。リガンドに対応
する可能性が高い2つの部位は、どちらも、2量体間のす
き間部に位置する。それぞれの電子密度に水分子にして
少なくとも4つ以上が対応し、全体としては、それぞれ
が中程度のアミノ酸(バリン、イソロイシン等)に対応
する大きさであった。
るリガンドの相互作用 各種アミノ酸や代謝の中間産物等の生体分子が、自然界
に存在するリガンドとしてLrp会合体に作用することを
確認した。 (1) アミノ酸による結晶構造の変化 蛋白質の立体構造を変化させるリガンドを蛋白質の結晶
内へと浸透させると、蛋白質の構造変化から結晶の規則
性が維持できなくなり、結晶性が失われる場合があるこ
とが古くから知られている。そこでLrpの結晶に、20種
のアミノ酸のそれぞれを10mM濃度で浸透させたところ、
イソロイシン、バリン、メチオニン、ロイシンの場合に
のみ、数時間後に、結晶の偏光性、結晶性が失われた
(図7)。これ以外のアミノ酸を浸透させた時には、こ
のような効果は観測されなかった。ただし、先の4つの
アミノ酸によってひきおこされた変化が全て同じである
保証はなく、また、変化が観測されなかったアミノ酸
は、実際には結晶内に浸透できなかった可能性もあると
考えられた。
でのLrpの会合状態の変化を、ゲルろ過を用いて解析し
た。 1) 試験方法 ゲル(Waters社製、Protein Pak 125、7.8 x 300mm)を
用い、300mM塩化ナトリウムを含む50mMトリス−塩酸(p
H7.0)緩衝液を毎分1mlで流し、蛋白質の流出を蛋白質
による220nmの吸光により観測した(Waters社製、LC Mo
dule I plusシステムを使用)。Lrpを厳しい精製2によ
り調整し、200 mM 塩化ナトリウムを含む50mMトリス−
塩酸(pH7.0)緩衝液、200mM塩化ナトリウム中に溶解
し、本実験に使用するまで-80℃で保存した。この試料
を、各種低分子物質と300 mM塩化ナトリウムを含む50mM
トリス−塩酸(pH7.0)緩衝液で10倍に希釈後、室温
(約25℃)で30分間以上放置してから、ゲルろ過を行っ
た。ゲルろ過を開始する時点では、Lrpの濃度は単量体
にして、約100μM、天然型L体のアミノ酸20種類の濃度
は各1mM、代謝の中間産物である5種類の化合物、リン
ゴ酸、2‐オキソグルタル酸、オキサロ酢酸、ピルビン
酸、3‐ホスホグリセリン酸の濃度は10mMである。
え、バリンを加えた試料では3番目のピークが増えた
(図8a)。6種類のアミノ酸(メチオニン、アルギニ
ン、ロイシン、フェニルアラニン、アラニン、スレオニ
ン)のいずれかを加えた場合には4番目のピークが増え
た(図8b)。残りの12種類のアミノ酸では、ゲルろ過
の結果に大きな影響は見られなかった。炭素原子を4つ
以上持つ3種の代謝中間産物(リンゴ酸、2‐オキソグル
タル酸、オキサロ酢酸)を加えた場合には、3番目のピ
ークが増え(図8c)、炭素原子を3つしか持たない2種
の代謝中間産物(ピルビン酸、3‐ホスホグリセリン
酸)では、ほとんど影響が見られなかった。
度が高いと考えられることから、イソロイシンは会合度
を上げる効果、6種類のアミノ酸(メチオニン、アルギ
ニン、ロイシン、フェニルアラニン、アラニン、スレオ
ニン)は会合度を下げる効果、バリン、および3種の代
謝中間物(リンゴ酸、2‐オキソグルタル酸、オキサロ
酢酸)は、中間的な会合度の状態を安定化する効果を持
つと結論された。
与する微生物の広範な遺伝子群の転写を活性化、あるい
は不活性化する。したがってLrp様蛋白質の立体構造を
変化させる、あるいは会合体形成能といった立体構造を
介したLrp様蛋白質の機能を制御するようなリガンド
は、微生物の代謝や増殖、感染等を、人為的に制御する
薬剤となり得る。
白質が見出されておらず、そのリガンドにはヒト等への
深刻な副作用をもたらさない可能性が期待される。該リ
ガンドは、従来用いられてきた抗生物質とは標的とする
蛋白質、作用する機構が異なることから、近年深刻にな
りつつある微生物の抗生物質耐性の解決につながる可能
性が高い。本発明は前記リガンドを探索する極めて有力
な手段を提供するものであり、全く新しいアプローチに
より従来の抗生物質に変わりうる薬剤を開発するための
画期的な手段となりうる。
プ、カウンターレベル1.0)に最終的な立体構造モデル
を整合させたものを示す。
グラムを示す。
グラムを示す。
例の条件、精製2:より厳しい条件)。
る自然界に存在するリガンド2分子の位置を示す(赤:
電子密度、bはaの構造を側面からながめたところ、cはb
の拡大図)。
M)の浸透を示す。
酸、2−オキソグルタル酸、オキサロ酢酸(c)存在下で
のLrp蛋白質のゲルろ過を示す。
Claims (11)
- 【請求項1】 Lrp様蛋白質の立体構造情報に基づき、
該蛋白質のリガンドとなる物質を選択することを特徴と
する、微生物の代謝、増殖および感染から選ばれる少な
くとも1以上を制御する薬剤のスクリーニング方法。 - 【請求項2】 前記立体構造情報が、Lrp様蛋白質単量
体の会合によって生じるすきま部や穴部に関する立体構
造情報である、請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 前記立体構造情報が、X線回折法による
原子3次元座標データから得られる情報である、請求項
1または2記載の方法。 - 【請求項4】 以下の工程からなる、微生物の代謝、増
殖および感染から選ばれる少なくとも1以上を制御する
薬剤のスクリーニング方法。 1) X線回折法により、Lrp様蛋白質の結晶の原子3次元
座標データを得る。 2) 上記3次元座標データを蛋白質の立体構造解析プロ
グラムに入力し、Lrp様蛋白質の立体構造画像および/
または数値情報を解析する。 3) 上記立体構造画像および/または数値情報に基づ
き、Lrp様蛋白質単量体の会合によって生じるすきま部
や穴部に関する立体構造情報を得る。 4) 上記立体構造情報に基づき、Lrp様蛋白質のリガンド
となる物質を薬剤として選択する。 - 【請求項5】 前記微生物の代謝、増殖および感染から
選ばれる少なくとも1以上を制御する薬剤が抗微生物薬
である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 - 【請求項6】 前記Lrp様蛋白質がPyrococcus属に属す
る微生物由来のLrp様蛋白質である、請求項1〜5のい
ずれか1項に記載の方法。 - 【請求項7】 前記微生物がPyrococcus sp. OT3(JCM 9
974)である、請求項6記載の方法。 - 【請求項8】 以下の a) および/または b) を記録し
た記録媒体。 a) Lrp様蛋白質の原子3次元座標データ b) 上記データを蛋白質の立体構造解析プログラムに入
力して作成された、Lrp様蛋白質の立体構造画像および
/または数値情報 - 【請求項9】 前記Lrp様蛋白質がPyrococcus属に属す
る微生物由来のLrp様蛋白質である、請求項8記載の記
録媒体。 - 【請求項10】 前記微生物がPyrococcus sp. OT3(JCM
9974)である、請求項9記載の記録媒体。 - 【請求項11】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の
方法で得られた、微生物の代謝、増殖および感染から選
ばれる少なくとも1以上を制御する薬剤又は抗微生物
薬。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001384683A JP2003185650A (ja) | 2001-12-18 | 2001-12-18 | 薬剤のスクリーニング方法 |
US10/499,126 US20050208463A1 (en) | 2001-12-18 | 2002-12-17 | Method of screening drug |
EP02786130A EP1469308A4 (en) | 2001-12-18 | 2002-12-17 | METHOD OF SCREENING A MEDICAMENT |
PCT/JP2002/013193 WO2003052408A1 (fr) | 2001-12-18 | 2002-12-17 | Methode de criblage d'un medicament |
AU2002354206A AU2002354206A1 (en) | 2001-12-18 | 2002-12-17 | Method of screening drug |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001384683A JP2003185650A (ja) | 2001-12-18 | 2001-12-18 | 薬剤のスクリーニング方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003185650A true JP2003185650A (ja) | 2003-07-03 |
JP2003185650A5 JP2003185650A5 (ja) | 2005-04-21 |
Family
ID=19187745
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001384683A Pending JP2003185650A (ja) | 2001-12-18 | 2001-12-18 | 薬剤のスクリーニング方法 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20050208463A1 (ja) |
EP (1) | EP1469308A4 (ja) |
JP (1) | JP2003185650A (ja) |
AU (1) | AU2002354206A1 (ja) |
WO (1) | WO2003052408A1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010532162A (ja) * | 2007-06-28 | 2010-10-07 | ノバルティス アーゲー | カリクレイン7モジュレーター |
-
2001
- 2001-12-18 JP JP2001384683A patent/JP2003185650A/ja active Pending
-
2002
- 2002-12-17 EP EP02786130A patent/EP1469308A4/en not_active Withdrawn
- 2002-12-17 WO PCT/JP2002/013193 patent/WO2003052408A1/ja active Application Filing
- 2002-12-17 US US10/499,126 patent/US20050208463A1/en not_active Abandoned
- 2002-12-17 AU AU2002354206A patent/AU2002354206A1/en not_active Abandoned
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010532162A (ja) * | 2007-06-28 | 2010-10-07 | ノバルティス アーゲー | カリクレイン7モジュレーター |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
AU2002354206A1 (en) | 2003-06-30 |
US20050208463A1 (en) | 2005-09-22 |
EP1469308A1 (en) | 2004-10-20 |
EP1469308A4 (en) | 2006-08-23 |
WO2003052408A1 (fr) | 2003-06-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Heaslet et al. | Structural comparison of chromosomal and exogenous dihydrofolate reductase from Staphylococcus aureus in complex with the potent inhibitor trimethoprim | |
Parraga et al. | Co-crystal structure of sterol regulatory element binding protein 1a at 2.3 Å resolution | |
Johnson et al. | Crystal structures of a tetrahedral open pore ferritin from the hyperthermophilic archaeon Archaeoglobus fulgidus | |
Puranik et al. | Structural basis for the oligomerization of the MADS domain transcription factor SEPALLATA3 in Arabidopsis | |
Sharma et al. | Crystal structure of the amino-terminal fragment of vaccinia virus DNA topoisomerase I at 1.6 Å resolution | |
Till et al. | Improving the success rate of protein crystallization by random microseed matrix screening | |
Kukimoto-Niino et al. | Crystal structure of the GTP-binding protein Obg from Thermus thermophilus HB8 | |
AU782516B2 (en) | Crystallization and structure determination of Staphylococcus aureus UDP-N-acetylenolpyruvylglucosamine reductase (S. aureus MurB) | |
JP2003185650A (ja) | 薬剤のスクリーニング方法 | |
Asherie et al. | Tartrate chirality determines thaumatin crystal habit | |
WO2001010906A1 (en) | Crystallization and structure determination of staphylococcus aureus elongation factor p | |
US20070099273A1 (en) | Refolded recombinant beta-secretase crystals and methods for preparing and using the same | |
Jiang et al. | Expression, purification, crystallization and preliminary X-ray analysis of human spindlin1, an ovarian cancer-related protein | |
US20070031849A1 (en) | Three-dimensional structure of DNA recombination/repair protein and use thereof | |
US20020072105A1 (en) | Crystallization and structure determination of FemA and FemA-like proteins | |
JP2011507537A (ja) | インシュリン分解酵素結晶 | |
Rani et al. | Structural Biology an Essential Tool for Drug Discovery and Development | |
Seetharaman et al. | Crystal structure of a putative HTH-type transcriptional regulator yxaF from Bacillus subtilis | |
Soleimani | The TELSAM Protein Polymer Significantly Improves the Speed and Propensity of Crystallization of Target Proteins | |
JPWO2003048203A1 (ja) | Dna複製調節タンパク質の立体構造及びその使用 | |
JP2005008595A (ja) | 抗菌作用を有する薬剤のスクリーニング方法 | |
US20050131209A1 (en) | Crystallized hnf4 gamma ligand binding domain polypeptide and screening methods employing same | |
Sadow | The X-ray crystal structure of wheat translation initiation factor eIF4E | |
Zhang et al. | Analysis and Statistics of Crystallisation Success Increase by Composition Modification of Protein and Precipitant Mixing Ratio | |
Nielsen | Crystal structure of a human U5 snRNP specific binary complex and crystal structure of a histone deacetylase-like bacterial amidohydrolase |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20040210 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040614 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040614 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060718 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060919 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070313 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071002 |