JP2003171496A - ハイブリッド樹脂材料およびその製造方法 - Google Patents
ハイブリッド樹脂材料およびその製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 疎水性の多孔質構造内に、液状成分の「漏
れ」を充分に防止可能な態様で親水性物質を含むハイブ
リッド樹脂材料およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 疎水性樹脂からなる多孔質構造体と、そ
の多孔質構造を構成する孔および/又は間隙内に配置さ
れた親水性物質とを少なくとも含むイブリッド樹脂材
料。前記疎水性樹脂と親水性物質との合計質量に対する
親水性物質の質量比が、乾燥状態で2%以上ある。
れ」を充分に防止可能な態様で親水性物質を含むハイブ
リッド樹脂材料およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 疎水性樹脂からなる多孔質構造体と、そ
の多孔質構造を構成する孔および/又は間隙内に配置さ
れた親水性物質とを少なくとも含むイブリッド樹脂材
料。前記疎水性樹脂と親水性物質との合計質量に対する
親水性物質の質量比が、乾燥状態で2%以上ある。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疎水性樹脂からな
る多孔質構造と、該多孔質構造内の孔および/又は間隙
内に配置された親水性物質とを含むハイブリッド(混
成)樹脂材料、およびその製造方法に関する。従来にお
いては、このような疎水性樹脂と親水性材料とを含むハ
イブリッド型材料の形成は極めて困難であった。
る多孔質構造と、該多孔質構造内の孔および/又は間隙
内に配置された親水性物質とを含むハイブリッド(混
成)樹脂材料、およびその製造方法に関する。従来にお
いては、このような疎水性樹脂と親水性材料とを含むハ
イブリッド型材料の形成は極めて困難であった。
【0002】従来タイプのハイブリッド型人工臓器にお
いては、該臓器を構成する人工血管は、例えば、疎水性
の物質であるフッ素樹脂を延伸して無数の亀裂を生じさ
せた延伸性ポリテトラフルオロエチレン(e−PTF
E)等が用いられていたが、e−PTFEの特徴たる亀
裂部分から血清成分が漏れ易いという欠点があった。こ
れに対して、本発明によれば、親水性物質(ヒアルロン
酸等)を疎水性物質の繊維間隙に配置することが極めて
容易となり、ハイブリッド型人工臓器等から実質的に血
清成分が漏れないようにすることが極めて容易となる。
いては、該臓器を構成する人工血管は、例えば、疎水性
の物質であるフッ素樹脂を延伸して無数の亀裂を生じさ
せた延伸性ポリテトラフルオロエチレン(e−PTF
E)等が用いられていたが、e−PTFEの特徴たる亀
裂部分から血清成分が漏れ易いという欠点があった。こ
れに対して、本発明によれば、親水性物質(ヒアルロン
酸等)を疎水性物質の繊維間隙に配置することが極めて
容易となり、ハイブリッド型人工臓器等から実質的に血
清成分が漏れないようにすることが極めて容易となる。
【0003】
【従来の技術】本発明のハイブリッド樹脂材料は、多孔
質構造を含む材料を使用しつつ、「液体および/又は流
体の漏れ」防止技術が関連する分野に特に制限なく適用
可能であるが、ここでは説明の便宜のために、先ず、疎
水性の多孔質構造の医用材料に関連する背景技術につい
て述べる。
質構造を含む材料を使用しつつ、「液体および/又は流
体の漏れ」防止技術が関連する分野に特に制限なく適用
可能であるが、ここでは説明の便宜のために、先ず、疎
水性の多孔質構造の医用材料に関連する背景技術につい
て述べる。
【0004】従来より、疎水性樹脂の多孔質構造を有す
る医用材料においては、フッ素樹脂である延伸性のポリ
テトラフルオロエチレン(以下「e−PTFE」と略記
する)の人工血管やパッチ材料が多用されている。今
日、臨床的には、これらは疎水性物質の多孔質構造のま
ま使用されている。しかしながら、人工血管の植え込み
を行った場合でも見られるように、多孔質構造であるが
故に、血液成分中の血清成分が人工血管等から漏れ出す
ことが避けがたい。一旦このような血液成分の漏れが生
じると、人工血管植え込み後3週間程度は「漏れ」状態
が持続する傾向があり、臨床的に好ましくない結果をも
たらすことが多い。
る医用材料においては、フッ素樹脂である延伸性のポリ
テトラフルオロエチレン(以下「e−PTFE」と略記
する)の人工血管やパッチ材料が多用されている。今
日、臨床的には、これらは疎水性物質の多孔質構造のま
ま使用されている。しかしながら、人工血管の植え込み
を行った場合でも見られるように、多孔質構造であるが
故に、血液成分中の血清成分が人工血管等から漏れ出す
ことが避けがたい。一旦このような血液成分の漏れが生
じると、人工血管植え込み後3週間程度は「漏れ」状態
が持続する傾向があり、臨床的に好ましくない結果をも
たらすことが多い。
【0005】この問題を解決するために、多孔質構造中
に親水性の物質をしみ込ませる技術が開発された。その
代表的な方法は、米国特許4,193,138号であ
る。この技術においては、ポリビニールアルコール(P
VA;ポバール)を、上記したe−PTFEにしみ込ま
せたり、e−PTFE上にコーティングする等の処理を
行っている。
に親水性の物質をしみ込ませる技術が開発された。その
代表的な方法は、米国特許4,193,138号であ
る。この技術においては、ポリビニールアルコール(P
VA;ポバール)を、上記したe−PTFEにしみ込ま
せたり、e−PTFE上にコーティングする等の処理を
行っている。
【0006】他方、生体内で分解吸収されるコラーゲン
等を使用する技術も報告されている。このような技術
は、米国特許5,665,114号および米国特許5,
716,660号等に記載されている。これらの技術に
おいては、溶液状のコラーゲンをしみ込ませる方法とし
て、使用するコラーゲンをより流動性にするために水素
イオン濃度(pH)を酸性側にしてコラーゲン溶液を作
製し、該コラーゲン溶液を疎水性のe−PTFEに対し
て圧注入した後に、コラーゲン溶液の中和によりコラー
ゲンを析出させる方法を採用している。
等を使用する技術も報告されている。このような技術
は、米国特許5,665,114号および米国特許5,
716,660号等に記載されている。これらの技術に
おいては、溶液状のコラーゲンをしみ込ませる方法とし
て、使用するコラーゲンをより流動性にするために水素
イオン濃度(pH)を酸性側にしてコラーゲン溶液を作
製し、該コラーゲン溶液を疎水性のe−PTFEに対し
て圧注入した後に、コラーゲン溶液の中和によりコラー
ゲンを析出させる方法を採用している。
【0007】しかしながら、このように水素イオン濃度
を変化させたにしても、親水性物質(コラーゲン)は依
然として親水性であるため、親水性の物質を疎水性のe
−PTFEの狭い繊維間隙に入り込ませることは困難で
ある。したがって、かなりの圧力をコラーゲン溶液にか
けてe−PTFE内に強制的に入れたとしても、充分の
量のコラーゲンを入れることは困難であった。
を変化させたにしても、親水性物質(コラーゲン)は依
然として親水性であるため、親水性の物質を疎水性のe
−PTFEの狭い繊維間隙に入り込ませることは困難で
ある。したがって、かなりの圧力をコラーゲン溶液にか
けてe−PTFE内に強制的に入れたとしても、充分の
量のコラーゲンを入れることは困難であった。
【0008】加えて、喩えe−PTFE内にコラーゲン
を入れこむことができたとしても、その実際の注入は、
本発明者らの実験によれば、e−PTFEの表層のみに
止まる傾向があり、ないしはe−PTFE内のコラーゲ
ンそのものの分布が不均質となり易いという欠点があっ
た。
を入れこむことができたとしても、その実際の注入は、
本発明者らの実験によれば、e−PTFEの表層のみに
止まる傾向があり、ないしはe−PTFE内のコラーゲ
ンそのものの分布が不均質となり易いという欠点があっ
た。
【0009】上記した米国特許4,193,138号
(親水性物質がPVA)、米国特許5,665,114
号および米国特許5,716,660号(いずれにおい
ても、親水性物質がコラーゲン)においては、このよう
な親水性物質を疎水性樹脂の狭い間隙に押し込むことを
記載している。しかしながら、実際に加圧によって親水
性物質を疎水性材樹脂の狭い間隙に押し込んだ場合、充
分な量の親水性物質を入れるために高い圧をかけると、
疎水性樹脂の構造が破壊される可能性がある。例えば、
e−PTFE製の人工血管の場合、400mmHg以上
の圧力をかけると、該人工血管は膨らみ始めて、人工血
管の内径が変化し、その人工血管は実際には臨床的に使
用不可能となる。したがって、現実には、圧力のみを用
いで疎水性材樹脂中に強引に親水性物質を押し込むこと
は困難であった。
(親水性物質がPVA)、米国特許5,665,114
号および米国特許5,716,660号(いずれにおい
ても、親水性物質がコラーゲン)においては、このよう
な親水性物質を疎水性樹脂の狭い間隙に押し込むことを
記載している。しかしながら、実際に加圧によって親水
性物質を疎水性材樹脂の狭い間隙に押し込んだ場合、充
分な量の親水性物質を入れるために高い圧をかけると、
疎水性樹脂の構造が破壊される可能性がある。例えば、
e−PTFE製の人工血管の場合、400mmHg以上
の圧力をかけると、該人工血管は膨らみ始めて、人工血
管の内径が変化し、その人工血管は実際には臨床的に使
用不可能となる。したがって、現実には、圧力のみを用
いで疎水性材樹脂中に強引に親水性物質を押し込むこと
は困難であった。
【0010】この欠点を一部改良した技術としては、米
国特許4,193,138号が挙げられる。この技術に
おいては、まず、e−PTFEのグラフト(graft)を
エタノールまたは界面活性剤に接触させ、その後に親水
性物質を押し込む方法が採用されている。このような方
法を実行すると、当初は無理なく親水性物質がe−PT
FEグラフトのフィブリル繊維間隙に入る。しかしなが
ら、親水性物質がe−PTFEグラフト内に入り始めて
しばらくすると、界面活性剤やエタノール等が親水性物
質により押し出されてe−PTFEの表面から脱離し、
界面活性剤やエタノール等の効果が徐々に消失するた
め、実際には、親水性物質をフィブリル繊維間隙内へ入
れ込む量には限界があった。
国特許4,193,138号が挙げられる。この技術に
おいては、まず、e−PTFEのグラフト(graft)を
エタノールまたは界面活性剤に接触させ、その後に親水
性物質を押し込む方法が採用されている。このような方
法を実行すると、当初は無理なく親水性物質がe−PT
FEグラフトのフィブリル繊維間隙に入る。しかしなが
ら、親水性物質がe−PTFEグラフト内に入り始めて
しばらくすると、界面活性剤やエタノール等が親水性物
質により押し出されてe−PTFEの表面から脱離し、
界面活性剤やエタノール等の効果が徐々に消失するた
め、実際には、親水性物質をフィブリル繊維間隙内へ入
れ込む量には限界があった。
【0011】本発明者らの実験によれば、米国特許4,
193,138号の推奨する方法で実際にこのような界
面活性剤やエタノールを利用して親水性物質を押し込む
作業を行った後に、ヒト体内の血流環境をシミュレート
した条件下でe−PTFEグラフトの壁からの水の漏れ
状態を検討した場合には、やはり漏れ現象が観察され
た。このような実験結果は、親水性物質によるe−PT
FEグラフトの被覆が、臨床的使用には充分でないこと
を示している。
193,138号の推奨する方法で実際にこのような界
面活性剤やエタノールを利用して親水性物質を押し込む
作業を行った後に、ヒト体内の血流環境をシミュレート
した条件下でe−PTFEグラフトの壁からの水の漏れ
状態を検討した場合には、やはり漏れ現象が観察され
た。このような実験結果は、親水性物質によるe−PT
FEグラフトの被覆が、臨床的使用には充分でないこと
を示している。
【0012】したがって、疎水性材料内に必要かつ充分
な量の親水性物質を押し込むことが可能な、現実的な手
段は未だに見出されていない。
な量の親水性物質を押し込むことが可能な、現実的な手
段は未だに見出されていない。
【0013】一般に、布製の人工血管においては、コラ
ーゲン被覆の技術が日常的に使用されている。この場
合、布製人工血管に使用するダクロン(デュポン社製)
等のポリエステル繊維は適度の疎水的な性質を有する。
このコラーゲン被覆の技術を用いた場合には、ポリエス
テル繊維の繊維間隙が広い場合には、親水性であるコラ
ーゲン溶液をその間隙に押し込むことは可能である。し
かしながら、繊維間隙が極めて狭い場合は、それが実質
的に不可能である。従って、布製人工血管のコラーゲン
被覆は、繊維間隙にしみ込むよりは、人工血管の繊維束
間にある程度のコラーゲンを配し、更に布の内面や外面
にコラーゲン層を作製して、人工血管全体を被覆する状
態で、実際のコラーゲン被覆が行われている。
ーゲン被覆の技術が日常的に使用されている。この場
合、布製人工血管に使用するダクロン(デュポン社製)
等のポリエステル繊維は適度の疎水的な性質を有する。
このコラーゲン被覆の技術を用いた場合には、ポリエス
テル繊維の繊維間隙が広い場合には、親水性であるコラ
ーゲン溶液をその間隙に押し込むことは可能である。し
かしながら、繊維間隙が極めて狭い場合は、それが実質
的に不可能である。従って、布製人工血管のコラーゲン
被覆は、繊維間隙にしみ込むよりは、人工血管の繊維束
間にある程度のコラーゲンを配し、更に布の内面や外面
にコラーゲン層を作製して、人工血管全体を被覆する状
態で、実際のコラーゲン被覆が行われている。
【0014】したがって、繊維間隙への親水性物質をく
まなく(すなわち、より均一に)配置することは実現さ
れていない。他方、例えば医療材料として好適に使用さ
れるe−PTFEの場合には、その繊維間隙が極めて狭
いことから、この極めて小さく、且つ狭い間隙に親水性
物質を配することが要求される。前述した米国特許4,
193,138号で示されるエタノールまたは界面活性
剤でe−PTFEを濡らしておく技術を用いた場合に
は、表面近くの間隙には親水性物質が入り込み、その表
面近くの内腔面に層状付着がみられるが、それは何かの
機械的な刺激で剥がれ、e−PTFEの壁から血清が漏
れる可能性が大きい。
まなく(すなわち、より均一に)配置することは実現さ
れていない。他方、例えば医療材料として好適に使用さ
れるe−PTFEの場合には、その繊維間隙が極めて狭
いことから、この極めて小さく、且つ狭い間隙に親水性
物質を配することが要求される。前述した米国特許4,
193,138号で示されるエタノールまたは界面活性
剤でe−PTFEを濡らしておく技術を用いた場合に
は、表面近くの間隙には親水性物質が入り込み、その表
面近くの内腔面に層状付着がみられるが、それは何かの
機械的な刺激で剥がれ、e−PTFEの壁から血清が漏
れる可能性が大きい。
【0015】上述したように、現実には、臨床におい
て、疎水性樹脂で作製されたe−PTFEグラフトの人
工血管等における液状成分の「漏れ」を防止する技術は
見出されていない。したがって、このような人工血管を
使用する際には、患者は血清の漏れに悩まされているの
が現状である。
て、疎水性樹脂で作製されたe−PTFEグラフトの人
工血管等における液状成分の「漏れ」を防止する技術は
見出されていない。したがって、このような人工血管を
使用する際には、患者は血清の漏れに悩まされているの
が現状である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来技術の欠点を解消したハイブリッド樹脂材料お
よびその製造方法を提供することにある。
した従来技術の欠点を解消したハイブリッド樹脂材料お
よびその製造方法を提供することにある。
【0017】本発明の他の目的は、疎水性の多孔質構造
内に、液状成分の「漏れ」を充分に防止可能な態様で親
水性物質を含むハイブリッド樹脂材料およびその製造方
法を提供することにある。
内に、液状成分の「漏れ」を充分に防止可能な態様で親
水性物質を含むハイブリッド樹脂材料およびその製造方
法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、従来の多孔質構造を有する材料において充分な「漏
れ」防止作用が得られていなかったのは、その多孔質構
造を構成する孔および/又は間隙内に、親水性物質が充
分に配置されていなかったためであることを見出した。
果、従来の多孔質構造を有する材料において充分な「漏
れ」防止作用が得られていなかったのは、その多孔質構
造を構成する孔および/又は間隙内に、親水性物質が充
分に配置されていなかったためであることを見出した。
【0019】本発明のハイブリッド樹脂材料は上記知見
に基づくものであり、より詳しくは、疎水性樹脂からな
る多孔質構造体と、その多孔質構造を構成する孔および
/又は間隙内に配置された親水性物質とを少なくとも含
み;前記疎水性樹脂と親水性物質との合計質量に対する
親水性物質の質量比が、乾燥状態で2%以上であるもの
である。
に基づくものであり、より詳しくは、疎水性樹脂からな
る多孔質構造体と、その多孔質構造を構成する孔および
/又は間隙内に配置された親水性物質とを少なくとも含
み;前記疎水性樹脂と親水性物質との合計質量に対する
親水性物質の質量比が、乾燥状態で2%以上であるもの
である。
【0020】本発明によれば、更に疎水性樹脂からなる
多孔質構造体と、その多孔質構造を構成する孔および/
又は間隙内に配置された生体内分解性の親水性物質との
ハイブリッド樹脂材料を作製するための製造方法であっ
て、
多孔質構造体と、その多孔質構造を構成する孔および/
又は間隙内に配置された生体内分解性の親水性物質との
ハイブリッド樹脂材料を作製するための製造方法であっ
て、
【0021】(a)親水性物質のハイドロゲルと、界面
活性剤とを少なくとも含むミセル懸濁液を作製し;
活性剤とを少なくとも含むミセル懸濁液を作製し;
【0022】(b)多孔質構造の片面又は両面から陽圧
又は陰圧の圧力差を与えて、前記ミセル懸濁液を疎水性
樹脂内に注入し;
又は陰圧の圧力差を与えて、前記ミセル懸濁液を疎水性
樹脂内に注入し;
【0023】(c)前記界面活性剤を除き、疎水性樹脂
によって囲まれた空間内に前記親水性物質を残すステッ
プを含む製造方法が提供される。
によって囲まれた空間内に前記親水性物質を残すステッ
プを含む製造方法が提供される。
【0024】本発明者の知見によれば、上記構成を有す
る本発明の疎水性樹脂ハイブリッド材料において好適な
効果が得られる理由は、以下のように推定される。
る本発明の疎水性樹脂ハイブリッド材料において好適な
効果が得られる理由は、以下のように推定される。
【0025】すなわち、一般に、疎水性樹脂材料の孔お
よび/又は間隙が小さくなればなるほど、界面張力のた
めに、その中には親水性の物質は入りにくくなる。特に
粘度の高い親水性物質は、疎水性樹脂によって形作られ
た狭い空間(例えば、10μm3程度の空間)には、実
質的に入らない。これに対して、本発明においては、
(例えば、予め親水性物質を含む特定の分散状態を形成
することにより)疎水性樹脂を含む多孔質構造内を構成
する孔および/又は間隙内に、「漏れ」防止に効果的な
量の親水性物質を配置することが可能となる。換言すれ
ば、本発明においては、上記した構成により、親水性物
質を充分に含ませて、多孔質構造を「目詰まり」させる
ことが可能となる。
よび/又は間隙が小さくなればなるほど、界面張力のた
めに、その中には親水性の物質は入りにくくなる。特に
粘度の高い親水性物質は、疎水性樹脂によって形作られ
た狭い空間(例えば、10μm3程度の空間)には、実
質的に入らない。これに対して、本発明においては、
(例えば、予め親水性物質を含む特定の分散状態を形成
することにより)疎水性樹脂を含む多孔質構造内を構成
する孔および/又は間隙内に、「漏れ」防止に効果的な
量の親水性物質を配置することが可能となる。換言すれ
ば、本発明においては、上記した構成により、親水性物
質を充分に含ませて、多孔質構造を「目詰まり」させる
ことが可能となる。
【0026】したがって本発明によれば、疎水性樹脂を
含むフィブリル構造の間隙に親水性物質の充分な量を配
置することが可能となり、(例えば、該親水性物質が含
水性を発揮して該間隙内等で膨潤することにより)フィ
ブリル構造間隙等の通過に起因する、液状成分の漏れ現
象を防ぐことが可能となる。
含むフィブリル構造の間隙に親水性物質の充分な量を配
置することが可能となり、(例えば、該親水性物質が含
水性を発揮して該間隙内等で膨潤することにより)フィ
ブリル構造間隙等の通過に起因する、液状成分の漏れ現
象を防ぐことが可能となる。
【0027】これに対して、上記した先行技術において
充分な漏れ防止効果が得られなかった理由は、本発明者
らの知見によれば、以下のように推定される。
充分な漏れ防止効果が得られなかった理由は、本発明者
らの知見によれば、以下のように推定される。
【0028】すなわち、本発明者らの実験によれば、前
述した米国特許4,193,138号の推奨する方法で
この作業を念入りに行った後に、e−PTFEグラフト
壁断面を切片を作製して、走査型電子顕微鏡で観察した
ところ、e−PTFEグラフト壁断面の内腔側の一部に
親水性物質が押し込まれており、その内腔面上に厚く親
水性物質が層状に付着し、内面被覆状態となっていた。
この本発明者らによる実験実験の結果、水の漏れ対策
は、米国特許4,193,138号の推奨する方法にお
いては、実際には、e−PTFEグラフト壁断面の内腔
側に押し込まれた少量の親水性物質と、その表面を覆う
親水性物質層によって行われることが判明した。
述した米国特許4,193,138号の推奨する方法で
この作業を念入りに行った後に、e−PTFEグラフト
壁断面を切片を作製して、走査型電子顕微鏡で観察した
ところ、e−PTFEグラフト壁断面の内腔側の一部に
親水性物質が押し込まれており、その内腔面上に厚く親
水性物質が層状に付着し、内面被覆状態となっていた。
この本発明者らによる実験実験の結果、水の漏れ対策
は、米国特許4,193,138号の推奨する方法にお
いては、実際には、e−PTFEグラフト壁断面の内腔
側に押し込まれた少量の親水性物質と、その表面を覆う
親水性物質層によって行われることが判明した。
【0029】内面に付着した親水性物質の層を取り除い
た後の、多孔質構造の孔の中に押し込まれた親水性物質
の質量を測定したところ、e−PTFEグラフトに付着
した親水性物質の全体量の約3%であり、多孔質構造内
に入らずに、該構造の表面に付着しているだけの親水性
物質が全体量の約97%であった。他方、後述する疎水
性樹脂の質量(aグラム)と、多孔質構造の孔および/
又は間隙内に配置された親水性物質(bグラム)との合
計質量に対する親水性物質の質量比(b/(a+b))
の表現を用いた場合には、この場合にe−PTFEグラ
フトに付着した親水性物質の量は、b/(a+b)<1
%であった。したがって、先行技術(米国特許4,19
3,138号)によれば、この約1%を超える親水性物
質は、壁内部には入り難いことが判明した。
た後の、多孔質構造の孔の中に押し込まれた親水性物質
の質量を測定したところ、e−PTFEグラフトに付着
した親水性物質の全体量の約3%であり、多孔質構造内
に入らずに、該構造の表面に付着しているだけの親水性
物質が全体量の約97%であった。他方、後述する疎水
性樹脂の質量(aグラム)と、多孔質構造の孔および/
又は間隙内に配置された親水性物質(bグラム)との合
計質量に対する親水性物質の質量比(b/(a+b))
の表現を用いた場合には、この場合にe−PTFEグラ
フトに付着した親水性物質の量は、b/(a+b)<1
%であった。したがって、先行技術(米国特許4,19
3,138号)によれば、この約1%を超える親水性物
質は、壁内部には入り難いことが判明した。
【0030】更に、人工臓器(血管等)として使用され
るこのような被覆を行ったe−PTFEグラフトが、そ
れ自体に対して実際に加えられる操作において、如何な
る変化を示すかに関する実験を行った。
るこのような被覆を行ったe−PTFEグラフトが、そ
れ自体に対して実際に加えられる操作において、如何な
る変化を示すかに関する実験を行った。
【0031】すなわち、本発明者らによる実験によれ
ば、上記被覆を行った米国特許4,193,138号に
従って作製したe−PTFEグラフトに対して、実際の
手術中に頻繁に生じ得る程度の機械的刺激を加えた(す
なわち、引き延ばしたりピンセット等でつまむ等の取り
扱い程度の操作を行った)ところ、表面に層状に付着し
ていた親水性物質は容易に剥がれ、その後の人工血管壁
からの水の漏れは顕著に増大した。この実験から、米国
特許4,193,138号で推奨するエタノールまたは
界面活性剤に接触させた後に親水性物質を押し込む方法
においては、表面への被覆は見かけ上は可能であって
も、e−PTFEグラフト内部における親水性物質との
ハイブリッド状態は不完全であることが判明した。この
ような不完全なハイブリッド状態にある多孔質材料を用
いた場合には、本発明の知見によれば、血清や体液中に
存在するリポ蛋白等の親水性および疎水性の両方の性質
を有する両親性物質が多孔質構造の壁内部に侵入し、壁
全体を親水化させることによって、血清中の親水性の液
性成分が限りなく漏れる現象が、極めて生じ易くなる傾
向が見られた。
ば、上記被覆を行った米国特許4,193,138号に
従って作製したe−PTFEグラフトに対して、実際の
手術中に頻繁に生じ得る程度の機械的刺激を加えた(す
なわち、引き延ばしたりピンセット等でつまむ等の取り
扱い程度の操作を行った)ところ、表面に層状に付着し
ていた親水性物質は容易に剥がれ、その後の人工血管壁
からの水の漏れは顕著に増大した。この実験から、米国
特許4,193,138号で推奨するエタノールまたは
界面活性剤に接触させた後に親水性物質を押し込む方法
においては、表面への被覆は見かけ上は可能であって
も、e−PTFEグラフト内部における親水性物質との
ハイブリッド状態は不完全であることが判明した。この
ような不完全なハイブリッド状態にある多孔質材料を用
いた場合には、本発明の知見によれば、血清や体液中に
存在するリポ蛋白等の親水性および疎水性の両方の性質
を有する両親性物質が多孔質構造の壁内部に侵入し、壁
全体を親水化させることによって、血清中の親水性の液
性成分が限りなく漏れる現象が、極めて生じ易くなる傾
向が見られた。
【0032】これに対して、上記構成を有する本発明の
ハイブリッド樹脂材料を用いた場合には、多孔質構造
(e−PTFE等)壁の内部のフィブリル間隙に充分な
量の親水性物質が配置されているため、手術中に操作す
る程度の機械的刺激にも耐えて、多孔質構造の壁からの
漏れ現象を実質的に完全に防ぐことが可能となる。この
理由は、本発明者の知見によれば、本発明のハイブリッ
ド樹脂材料において、ひとたび多孔質構造のフィブリル
間隙に親水性物質が充分量押し込まれると、親水性物質
が含水性を発揮してその場(多孔質構造内)で膨潤し
て、いわゆる「目詰まり効果」を発揮することに基づ
き、液体成分が多孔質構造内を通過する「漏れ」現象を
防ぐためと推定される。
ハイブリッド樹脂材料を用いた場合には、多孔質構造
(e−PTFE等)壁の内部のフィブリル間隙に充分な
量の親水性物質が配置されているため、手術中に操作す
る程度の機械的刺激にも耐えて、多孔質構造の壁からの
漏れ現象を実質的に完全に防ぐことが可能となる。この
理由は、本発明者の知見によれば、本発明のハイブリッ
ド樹脂材料において、ひとたび多孔質構造のフィブリル
間隙に親水性物質が充分量押し込まれると、親水性物質
が含水性を発揮してその場(多孔質構造内)で膨潤し
て、いわゆる「目詰まり効果」を発揮することに基づ
き、液体成分が多孔質構造内を通過する「漏れ」現象を
防ぐためと推定される。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
質量基準とする。 (ハイブリッド樹脂材料)
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
質量基準とする。 (ハイブリッド樹脂材料)
【0034】本発明のハイブリッド樹脂材料は、疎水性
樹脂からなる多孔質構造体と、その多孔質構造を構成す
る孔および/又は間隙内に配置された親水性物質とを含
む。前記疎水性樹脂の質量(aグラム)と、多孔質構造
の孔および/又は間隙内に配置された親水性物質(bグ
ラム)との合計質量に対する親水性物質の質量比(b/
(a+b))は、乾燥状態で2質量%以上である。この
質量比(b/(a+b))は、更には5質量%以上(特
に5〜40質量%)であることが好ましく、特に7〜3
5質量%、更には10〜30質量%であることが好まし
い。この質量比は、以下のようにして測定することが可
能である。 <親水性物質の質量比の測定方法>多孔質構造を構成す
る疎水性樹脂の質量を(例えば、電子秤で)測定し、
「aグラム」とする。他方、適当な方法(例えば、後述
するように、親水性物質を界面活性剤とともにミセル状
態として、疎水性樹脂の多孔質構造内に圧入し、次いで
純水内に漬ける事によって親水性物質を疎水性樹脂の孔
および/又は間隙内で膨潤させることによって流失させ
ない状態にしつつ界面活性剤を取り除く、もしくは化学
的、又は物理的手段で架橋することによって不溶化する
ことで親水性物質を疎水性樹脂の孔および/又は間隙内
から流失させない状態にしておいて100%エタノール
によって界面活性剤を取り除く。このいずれかの方法に
よって界面活性剤を除いた後、凍結乾燥する)により親
水性物質を多孔質構造の孔および/又は間隙内に配置さ
せた後に質量を測定して、(a+b)グラムとする。こ
のようにして測定した2つの質量の差から、多孔質構造
に配置された親水性物質の質量(bグラム)を計算し
て、質量比b/(a+b)を求める。 <表面上の親水性物質の除去>この質量比b/(a+
b)測定の際に、親水性物質を多孔質構造内に配置させ
た後のハイブリッド材料の表面(上記の多孔質構造が管
状構造等である場合のように、内表面および外表面を有
する場合には、それらの内表面および外表面)に「多孔
質構造の孔および/又は間隙内に配置されていない」
(換言すれば、ハイブリッド材料の表面上に付着した)
親水性物質が認められる場合には、この親水性物質を除
くことが必要である。この親水性物質の除去法は特に制
限されないが、例えば、スパチュラ等の器具で、ハイブ
リッド材料の表面上に付着した親水性物質(通常は白色
または有色)を削り取ればよい。この場合、多孔質構造
を構成する疎水性樹脂が低付着性の樹脂(例えば、PT
FE=ポリテトラフルオロエチレン)である際には、こ
のような削り取りにより、親水性物質が層状で剥がれ易
い傾向がある。他にも、上述したエタノール洗浄等で、
ハイブリッド材料の表面上に付着した親水性物質を除去
してもよい。上記したいずれの方法による場合であって
も、ハイブリッド材料の表面上に付着した親水性物質の
存在が肉眼で判別出来ない程度であれば、該表面上の親
水性物質は「実質的に無い」と判断することが可能であ
る。
樹脂からなる多孔質構造体と、その多孔質構造を構成す
る孔および/又は間隙内に配置された親水性物質とを含
む。前記疎水性樹脂の質量(aグラム)と、多孔質構造
の孔および/又は間隙内に配置された親水性物質(bグ
ラム)との合計質量に対する親水性物質の質量比(b/
(a+b))は、乾燥状態で2質量%以上である。この
質量比(b/(a+b))は、更には5質量%以上(特
に5〜40質量%)であることが好ましく、特に7〜3
5質量%、更には10〜30質量%であることが好まし
い。この質量比は、以下のようにして測定することが可
能である。 <親水性物質の質量比の測定方法>多孔質構造を構成す
る疎水性樹脂の質量を(例えば、電子秤で)測定し、
「aグラム」とする。他方、適当な方法(例えば、後述
するように、親水性物質を界面活性剤とともにミセル状
態として、疎水性樹脂の多孔質構造内に圧入し、次いで
純水内に漬ける事によって親水性物質を疎水性樹脂の孔
および/又は間隙内で膨潤させることによって流失させ
ない状態にしつつ界面活性剤を取り除く、もしくは化学
的、又は物理的手段で架橋することによって不溶化する
ことで親水性物質を疎水性樹脂の孔および/又は間隙内
から流失させない状態にしておいて100%エタノール
によって界面活性剤を取り除く。このいずれかの方法に
よって界面活性剤を除いた後、凍結乾燥する)により親
水性物質を多孔質構造の孔および/又は間隙内に配置さ
せた後に質量を測定して、(a+b)グラムとする。こ
のようにして測定した2つの質量の差から、多孔質構造
に配置された親水性物質の質量(bグラム)を計算し
て、質量比b/(a+b)を求める。 <表面上の親水性物質の除去>この質量比b/(a+
b)測定の際に、親水性物質を多孔質構造内に配置させ
た後のハイブリッド材料の表面(上記の多孔質構造が管
状構造等である場合のように、内表面および外表面を有
する場合には、それらの内表面および外表面)に「多孔
質構造の孔および/又は間隙内に配置されていない」
(換言すれば、ハイブリッド材料の表面上に付着した)
親水性物質が認められる場合には、この親水性物質を除
くことが必要である。この親水性物質の除去法は特に制
限されないが、例えば、スパチュラ等の器具で、ハイブ
リッド材料の表面上に付着した親水性物質(通常は白色
または有色)を削り取ればよい。この場合、多孔質構造
を構成する疎水性樹脂が低付着性の樹脂(例えば、PT
FE=ポリテトラフルオロエチレン)である際には、こ
のような削り取りにより、親水性物質が層状で剥がれ易
い傾向がある。他にも、上述したエタノール洗浄等で、
ハイブリッド材料の表面上に付着した親水性物質を除去
してもよい。上記したいずれの方法による場合であって
も、ハイブリッド材料の表面上に付着した親水性物質の
存在が肉眼で判別出来ない程度であれば、該表面上の親
水性物質は「実質的に無い」と判断することが可能であ
る。
【0035】上記した親水性物質の質量比は、疎水性樹
脂の多孔質構造の形態によっても、ある程度の影響を受
ける可能性がある。すなわち、多孔質の孔の部分が大き
ければ大きいほど、水の漏れは大きくなり、その水の漏
れを防ぐには、大量の親水性物質を疎水性樹脂の多孔質
構造中に配置することが好ましい。
脂の多孔質構造の形態によっても、ある程度の影響を受
ける可能性がある。すなわち、多孔質の孔の部分が大き
ければ大きいほど、水の漏れは大きくなり、その水の漏
れを防ぐには、大量の親水性物質を疎水性樹脂の多孔質
構造中に配置することが好ましい。
【0036】しかしながら、e−PTFEグラフト等の
多孔質構造の疎水性樹脂の場合、多孔質の孔の部分が大
きくなれば壁構造が弱くなるため、むやみに孔を大きく
することは好ましくないため、孔の好適なサイズには上
限がある。本発明者の試算によれば、疎水性樹脂部分と
孔の部分との比(体積比)が1対9以上に孔の部分が多
くなると、力学的には弱くなり過ぎる傾向があることが
判明している。したがって、疎水性樹脂部分と孔の部分
との比が1:9以下の疎水性樹脂の多孔質構造体におけ
る親水性物質とのハイブリッド化が好ましい。
多孔質構造の疎水性樹脂の場合、多孔質の孔の部分が大
きくなれば壁構造が弱くなるため、むやみに孔を大きく
することは好ましくないため、孔の好適なサイズには上
限がある。本発明者の試算によれば、疎水性樹脂部分と
孔の部分との比(体積比)が1対9以上に孔の部分が多
くなると、力学的には弱くなり過ぎる傾向があることが
判明している。したがって、疎水性樹脂部分と孔の部分
との比が1:9以下の疎水性樹脂の多孔質構造体におけ
る親水性物質とのハイブリッド化が好ましい。
【0037】他方、多孔質構造体における孔のサイズが
小さくなると、壁構造が硬くなり、屈曲性も悪くなっ
て、手術時等の際における操作性が低下する傾向があ
る。臨床用途においては、e−PTFEグラフトの場合
にはフィブリル長さが約30ミクロン程度のe−PTF
Eグラフトが使用されており、この疎水性樹脂部分と孔
の部分との比(体積比)が4対6程度であるものが好適
に使用される。
小さくなると、壁構造が硬くなり、屈曲性も悪くなっ
て、手術時等の際における操作性が低下する傾向があ
る。臨床用途においては、e−PTFEグラフトの場合
にはフィブリル長さが約30ミクロン程度のe−PTF
Eグラフトが使用されており、この疎水性樹脂部分と孔
の部分との比(体積比)が4対6程度であるものが好適
に使用される。
【0038】本発明者の実験によれば、この範囲内での
多孔質構造の疎水性樹脂の孔の部分に親水性物質を配置
する適切な量は、ハイブリッド構造を作る場合、その総
質量(疎水性樹脂と親水性物質との合計質量)の5%以
上の親水性物質であることが判明した。このように、5
%以上の親水性物質を多孔質構造内に配置することによ
り、漏れ現象を好適に防止することができる。この親水
性物質の量比は、より効果的な漏れ防止の点からは、7
%以上、更には10%以上であることが好ましい。
多孔質構造の疎水性樹脂の孔の部分に親水性物質を配置
する適切な量は、ハイブリッド構造を作る場合、その総
質量(疎水性樹脂と親水性物質との合計質量)の5%以
上の親水性物質であることが判明した。このように、5
%以上の親水性物質を多孔質構造内に配置することによ
り、漏れ現象を好適に防止することができる。この親水
性物質の量比は、より効果的な漏れ防止の点からは、7
%以上、更には10%以上であることが好ましい。
【0039】更に、多孔質構造内に配置すべき親水性物
質の量を最大限に増大させることも可能である。しかし
ながら、多孔質構造の疎水性樹脂中の親水性物質の量を
過度に増大させると、e−PTFE等の疎水性樹脂グラ
フトの機械的特性が変化して、グラフトが硬くなる傾向
が生じ易くなる場合がある。本発明者の知見によれば、
親水性物質の質量比は、50%以下が好ましく、更には
40%以下(特に35%以下)であることが好ましい。 (疎水性樹脂)
質の量を最大限に増大させることも可能である。しかし
ながら、多孔質構造の疎水性樹脂中の親水性物質の量を
過度に増大させると、e−PTFE等の疎水性樹脂グラ
フトの機械的特性が変化して、グラフトが硬くなる傾向
が生じ易くなる場合がある。本発明者の知見によれば、
親水性物質の質量比は、50%以下が好ましく、更には
40%以下(特に35%以下)であることが好ましい。 (疎水性樹脂)
【0040】本発明においては、生体内における長期安
定性と生体適合性の点から、親水性物質を保持すべき多
孔質構造を構成する材料として、疎水性樹脂を用いる。
定性と生体適合性の点から、親水性物質を保持すべき多
孔質構造を構成する材料として、疎水性樹脂を用いる。
【0041】上記した親水性物質を一定時間保持するこ
とが可能である限り、本発明で使用可能な疎水性樹脂は
特に制限されないが、酸素、窒素またはイオウ原子を含
む極性基(例えば、−OH、−COOH、−NH2基、
−SO3H基、等)の1分子当たりの平均の合計数をP
nとし、その樹脂の重量平均分子量をMwとした場合
に、それらの比(Pn/Mw)で好適に規定することが
できる。臨床的に疎水性樹脂が多用されているという観
点からは、このPn/Mwは、1/100以下(更には
1/200以下、特に1/300以下)の樹脂が好適に
使用可能である。上記特性を有する限り、ホモポリマ
ー、コポリマー、ポリマーブレンド、複合化ポリマー等
のポリマーの態様は問わない。
とが可能である限り、本発明で使用可能な疎水性樹脂は
特に制限されないが、酸素、窒素またはイオウ原子を含
む極性基(例えば、−OH、−COOH、−NH2基、
−SO3H基、等)の1分子当たりの平均の合計数をP
nとし、その樹脂の重量平均分子量をMwとした場合
に、それらの比(Pn/Mw)で好適に規定することが
できる。臨床的に疎水性樹脂が多用されているという観
点からは、このPn/Mwは、1/100以下(更には
1/200以下、特に1/300以下)の樹脂が好適に
使用可能である。上記特性を有する限り、ホモポリマ
ー、コポリマー、ポリマーブレンド、複合化ポリマー等
のポリマーの態様は問わない。
【0042】疎水性樹脂の好適な例としては、含フッ素
樹脂、含ケイ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステ
ル樹脂等が挙げられる。このような含フッ素樹脂として
は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
樹脂等が挙げられる。また、上記含ケイ素樹脂として
は、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。上記ポリ
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(P
P)樹脂等が挙げられる。
樹脂、含ケイ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステ
ル樹脂等が挙げられる。このような含フッ素樹脂として
は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
樹脂等が挙げられる。また、上記含ケイ素樹脂として
は、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。上記ポリ
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(P
P)樹脂等が挙げられる。
【0043】生体内における安定性ないし毒性の点から
は、これらの中でも含フッ素樹脂、含ケイ素樹脂が好ま
しい。 (多孔質構造)
は、これらの中でも含フッ素樹脂、含ケイ素樹脂が好ま
しい。 (多孔質構造)
【0044】本発明においては、上記した疎水性樹脂を
多孔質構造として用いる。その多孔質構造の孔および/
又は間隙内への親水性物質の充填、および一定時間の保
持が可能である限り、本発明で使用可能な多孔質構造は
特に制限されないが、上記多孔質構造はフィブリル(す
なわち、繊維含有)構造を有していることが好ましい。
このようなフィブリル構造は、特に制限されない。フィ
ブリル構造の具体例としては、例えば、織物、編み物、
ネット状構造、不織布、フェルト等が挙げられる。
多孔質構造として用いる。その多孔質構造の孔および/
又は間隙内への親水性物質の充填、および一定時間の保
持が可能である限り、本発明で使用可能な多孔質構造は
特に制限されないが、上記多孔質構造はフィブリル(す
なわち、繊維含有)構造を有していることが好ましい。
このようなフィブリル構造は、特に制限されない。フィ
ブリル構造の具体例としては、例えば、織物、編み物、
ネット状構造、不織布、フェルト等が挙げられる。
【0045】布製の場合には、ANSI/AAMI(As
sociation for the Advancement ofMedical Instrument
ation American National Standard Institute, Inc.(1
994年))に規定するWater Permeabilty で、6000
〜50mlの範囲以下、更には2000〜50mlの範
囲程度(特に1000〜100mlの範囲程度)である
ことが好ましい。e−PTFE等のように水を透過させ
ない材料の場合には、Fibril length で300μm〜5
μm、更には100〜20μm(特に50〜25μm)
であることが好ましい。
sociation for the Advancement ofMedical Instrument
ation American National Standard Institute, Inc.(1
994年))に規定するWater Permeabilty で、6000
〜50mlの範囲以下、更には2000〜50mlの範
囲程度(特に1000〜100mlの範囲程度)である
ことが好ましい。e−PTFE等のように水を透過させ
ない材料の場合には、Fibril length で300μm〜5
μm、更には100〜20μm(特に50〜25μm)
であることが好ましい。
【0046】本発明においては、上記した疎水性樹脂
が、複数の結節と、各結節間を結ぶフィブリル構造とを
交互に有するフッ素樹脂、又は延伸ポリテトラフルオロ
エチレン(e−PTFE)であることが特に好ましい。 (親水性物質)
が、複数の結節と、各結節間を結ぶフィブリル構造とを
交互に有するフッ素樹脂、又は延伸ポリテトラフルオロ
エチレン(e−PTFE)であることが特に好ましい。 (親水性物質)
【0047】本発明における親水性物質としては、種々
の物質が使用可能である。本発明において好適な「親水
性」は、以下の方法により確認することができる。この
親水性物質は、更に「生体内分解性」を有していること
が好ましい。この「生体内分解性」は、以下の方法によ
り確認することができる。 <好適な親水性の確認方法>室温(25℃)下で材料表
面に脱イオンした蒸留水を滴下し、静止状態で液体の自
由表面が材料表面に接する部位での液面と固体面とのな
す角、いわゆる接触角を測定する。本発明においては、
この接触角が90°以下の場合に「親水性」と判断す
る。親水性材料の接触角は、80°以下、更には60°
以下であることが好ましい。他方、接触角が90°を超
える場合に、本発明においては「疎水性」と判断する。
疎水性材料の接触角は、100°以上、更には120°
以上であることが好ましい(このような接触角測定方法
の詳細については、例えば、文献van Oss CJ, Zingg W,
Hum OS, Neumann AW; Platelet Activation of Agar/A
garose Gel surfaces; Variation Correlated with Cas
ting Technique and Hydrophobic/Hydrophilic Balance
as Reflected in Contact Angle Measurements, Throm
b. Res, 1977,Aug.11(2):183〜191
を参照することができる)。例えば、水とガラスの接触
角は、8ないし9度である。 <好適な生体内分解性の確認方法>生体内分解性を測定
すべき材料の小片(5×10mm、厚さ0.6mm程
度)を清潔下でラットの皮下組織内(深さ5mm)に挿
入し、その材料が生体内で分解および/又は吸収される
までの期間を観察する(肉眼で判別できない程度にまで
分解された場合に、「分解・吸収された」と判断す
る)。本発明においては、この分解・吸収されるまでの
期間が12ヶ月以内である場合に、「生体内分解性あ
り」と判断する(このような生体内分解性の測定方法の
詳細については、例えば、文献、佐藤温重、桜井靖之編
「医歯科用バイオマテリアル安全性評価」、第89〜9
2頁、サイエンスフォーラム、東京、1987を参照す
ることができる)。早期に吸収される材料では2週間以
内にラットの皮下組織内に吸収され、遅い物では6ヶ月
必要な場合もある。
の物質が使用可能である。本発明において好適な「親水
性」は、以下の方法により確認することができる。この
親水性物質は、更に「生体内分解性」を有していること
が好ましい。この「生体内分解性」は、以下の方法によ
り確認することができる。 <好適な親水性の確認方法>室温(25℃)下で材料表
面に脱イオンした蒸留水を滴下し、静止状態で液体の自
由表面が材料表面に接する部位での液面と固体面とのな
す角、いわゆる接触角を測定する。本発明においては、
この接触角が90°以下の場合に「親水性」と判断す
る。親水性材料の接触角は、80°以下、更には60°
以下であることが好ましい。他方、接触角が90°を超
える場合に、本発明においては「疎水性」と判断する。
疎水性材料の接触角は、100°以上、更には120°
以上であることが好ましい(このような接触角測定方法
の詳細については、例えば、文献van Oss CJ, Zingg W,
Hum OS, Neumann AW; Platelet Activation of Agar/A
garose Gel surfaces; Variation Correlated with Cas
ting Technique and Hydrophobic/Hydrophilic Balance
as Reflected in Contact Angle Measurements, Throm
b. Res, 1977,Aug.11(2):183〜191
を参照することができる)。例えば、水とガラスの接触
角は、8ないし9度である。 <好適な生体内分解性の確認方法>生体内分解性を測定
すべき材料の小片(5×10mm、厚さ0.6mm程
度)を清潔下でラットの皮下組織内(深さ5mm)に挿
入し、その材料が生体内で分解および/又は吸収される
までの期間を観察する(肉眼で判別できない程度にまで
分解された場合に、「分解・吸収された」と判断す
る)。本発明においては、この分解・吸収されるまでの
期間が12ヶ月以内である場合に、「生体内分解性あ
り」と判断する(このような生体内分解性の測定方法の
詳細については、例えば、文献、佐藤温重、桜井靖之編
「医歯科用バイオマテリアル安全性評価」、第89〜9
2頁、サイエンスフォーラム、東京、1987を参照す
ることができる)。早期に吸収される材料では2週間以
内にラットの皮下組織内に吸収され、遅い物では6ヶ月
必要な場合もある。
【0048】本発明において使用されるべき親水性物質
は、上記試験方法において、生体内で24時間以上、1
2ヶ月以内(より好ましくは6ヶ月以内、更には3ヶ月
以内)の間に分解・吸収されることが好ましい。 (負荷電性)本発明においては、上記した親水性物質の
少なくとも一部が、負荷電部分を有することが好まし
い。ここに「負荷電部分」とは、水中(pH=7,25
℃)でマイナスに解離可能な官能基を有する部分を言
う。このような官能基を例示すれば、カルボキシル基、
スルホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。一般的
に、荷電を有する親水性材料が多孔質構造内に存在する
場合には、電荷同士の反発に基づいて多孔質構造を構成
する自体が空間的に広がるため、その個々の網目内に水
を取り込み易くなる(すなわち、親水性材料が適度に膨
潤して、網目を目詰まりさせ易くなる)傾向がある。し
かしながら、親水性材料に正荷電性の部分がある程度以
上に存在する場合には、血小板(負荷電)が付着し易く
なって、血栓性が高まる傾向が生じやすい。したがっ
て、本発明においては、親水性材料の少なくとも一部
が、負荷電部分を有することが好ましい。 (親水性物質の具体例)
は、上記試験方法において、生体内で24時間以上、1
2ヶ月以内(より好ましくは6ヶ月以内、更には3ヶ月
以内)の間に分解・吸収されることが好ましい。 (負荷電性)本発明においては、上記した親水性物質の
少なくとも一部が、負荷電部分を有することが好まし
い。ここに「負荷電部分」とは、水中(pH=7,25
℃)でマイナスに解離可能な官能基を有する部分を言
う。このような官能基を例示すれば、カルボキシル基、
スルホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。一般的
に、荷電を有する親水性材料が多孔質構造内に存在する
場合には、電荷同士の反発に基づいて多孔質構造を構成
する自体が空間的に広がるため、その個々の網目内に水
を取り込み易くなる(すなわち、親水性材料が適度に膨
潤して、網目を目詰まりさせ易くなる)傾向がある。し
かしながら、親水性材料に正荷電性の部分がある程度以
上に存在する場合には、血小板(負荷電)が付着し易く
なって、血栓性が高まる傾向が生じやすい。したがっ
て、本発明においては、親水性材料の少なくとも一部
が、負荷電部分を有することが好ましい。 (親水性物質の具体例)
【0049】前記親水性物質は、その少なくとも一部
が、天然由来材料又はその誘導体、合成高分子由来材料
又はその誘導体、および/又は人為的に生物を利用して
作製された(元来、天然には存在しない材料)又はその
誘導体であることができる。
が、天然由来材料又はその誘導体、合成高分子由来材料
又はその誘導体、および/又は人為的に生物を利用して
作製された(元来、天然には存在しない材料)又はその
誘導体であることができる。
【0050】このような親水性物質の例としては、例え
ば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ーポリグリ
コール酸共重合体、生分解性(3−ヒドロキシルブチレ
ート−4−ヒドロキシルブチレート)ポリエステル重合
体、ポリエチレングリコール、ポリジオキサン、コラー
ゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブリン、キトサン、
キチン、フィブロイン、セルロース、ムコ多糖類、フィ
ブロネクチン、ラミニン、アルギン酸、ヒアルロン酸、
コンドロイチン硫酸、ポリアミノ酸、澱粉、デキストリ
ン、デキストラン、アガロース、ペクチン、マンナン、
およびそれらの誘導体、からなる群の中から選ばれた少
なくとも一つ以上を構成要素として有する材料が好まし
い。このような構成要素は、既に医用材料等での使用実
績があることから使用しやすい。しかしながら、これら
以外の材料であっても、生体内での毒性が実質的にない
限り使用しうる。 (ハイブリッド樹脂材料の製造方法)
ば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ーポリグリ
コール酸共重合体、生分解性(3−ヒドロキシルブチレ
ート−4−ヒドロキシルブチレート)ポリエステル重合
体、ポリエチレングリコール、ポリジオキサン、コラー
ゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブリン、キトサン、
キチン、フィブロイン、セルロース、ムコ多糖類、フィ
ブロネクチン、ラミニン、アルギン酸、ヒアルロン酸、
コンドロイチン硫酸、ポリアミノ酸、澱粉、デキストリ
ン、デキストラン、アガロース、ペクチン、マンナン、
およびそれらの誘導体、からなる群の中から選ばれた少
なくとも一つ以上を構成要素として有する材料が好まし
い。このような構成要素は、既に医用材料等での使用実
績があることから使用しやすい。しかしながら、これら
以外の材料であっても、生体内での毒性が実質的にない
限り使用しうる。 (ハイブリッド樹脂材料の製造方法)
【0051】本発明において、疎水性樹脂からなる多孔
質構造と、その多孔質構造を構成する孔および/又は間
隙内に配置された親水性物質とのハイブリッド樹脂材料
を作製するための製造方法は特に制限されない。このよ
うなプロセスの例としては、例えば、以下のものが挙げ
られる。 (好適な製造方法の例)
質構造と、その多孔質構造を構成する孔および/又は間
隙内に配置された親水性物質とのハイブリッド樹脂材料
を作製するための製造方法は特に制限されない。このよ
うなプロセスの例としては、例えば、以下のものが挙げ
られる。 (好適な製造方法の例)
【0052】上記した本発明のハイブリッド樹脂材料を
製造ずべき好適な方法(本発明の製造方法)は、以下の
ステップを含むことが好ましい。この態様においては、
親水性物質のハイドロゲルを用いている。ハイドロゲル
の使用は、含水性作用の発揮に基づく多孔質構造の目詰
まり効果が高いという点から好ましい。
製造ずべき好適な方法(本発明の製造方法)は、以下の
ステップを含むことが好ましい。この態様においては、
親水性物質のハイドロゲルを用いている。ハイドロゲル
の使用は、含水性作用の発揮に基づく多孔質構造の目詰
まり効果が高いという点から好ましい。
【0053】(1)親水性物質のハイドロゲルを、界面
活性剤と共に混濁状態にして、ハイドロゲル微細粒子の
ミセル懸濁液状態の液を作製する。
活性剤と共に混濁状態にして、ハイドロゲル微細粒子の
ミセル懸濁液状態の液を作製する。
【0054】(2)この後、必要に応じて、有機溶媒を
加えてミセルを分散させる。
加えてミセルを分散させる。
【0055】(3)この状態のハイドロゲルミセルを、
疎水性樹脂によって形作られた狭い空間に、多孔質構造
の片面又は両面から陽圧又は陰圧の圧力差(好ましくは
5mmHg以上、300mmHg以下の範囲内で)を与
えることにより圧注入させる。
疎水性樹脂によって形作られた狭い空間に、多孔質構造
の片面又は両面から陽圧又は陰圧の圧力差(好ましくは
5mmHg以上、300mmHg以下の範囲内で)を与
えることにより圧注入させる。
【0056】(4)その後に、100%エタノール等の
界面活性剤を溶解させる液体を用いて界面活性剤を除去
し、結果として親水性物質を疎水性樹脂によって形作ら
れた狭い空間に残す。
界面活性剤を溶解させる液体を用いて界面活性剤を除去
し、結果として親水性物質を疎水性樹脂によって形作ら
れた狭い空間に残す。
【0057】この際、ハイドロゲルの微細粒子の懸濁液
状態を作製し、それを有機溶媒で希釈すると疎水性樹脂
への注入がより容易になるが、それなりに濃度は低くな
ることから、実際に配置される親水性物質の量も少なく
なる。したがって、作業の容易さと、配する物質の量と
のバランスを考慮して希釈率を調節したり、あるいは希
釈せずに使用することも可能である。
状態を作製し、それを有機溶媒で希釈すると疎水性樹脂
への注入がより容易になるが、それなりに濃度は低くな
ることから、実際に配置される親水性物質の量も少なく
なる。したがって、作業の容易さと、配する物質の量と
のバランスを考慮して希釈率を調節したり、あるいは希
釈せずに使用することも可能である。
【0058】親水性の物質を疎水性の物質からなる狭い
間隙や孔の中に押し込むことは、その孔や間隙が狭けれ
ば狭いほど困難であり、特にその疎水性物質の粘度が高
ければ、押し込むことが、実質的に不可能であることが
多い。小さな領域において、表面張力の作用が相対的に
大きくなるためである。
間隙や孔の中に押し込むことは、その孔や間隙が狭けれ
ば狭いほど困難であり、特にその疎水性物質の粘度が高
ければ、押し込むことが、実質的に不可能であることが
多い。小さな領域において、表面張力の作用が相対的に
大きくなるためである。
【0059】上記した製造方法の態様においては、粘度
の高い親水性のハイドロゲルを入れることを可能として
いる。それは、親水性物質のハイドロゲルと両親性を有
する界面活性剤とを混ぜて強く撹拌することで、親水性
のゲルが微細なミセルを作ることに基づく。
の高い親水性のハイドロゲルを入れることを可能として
いる。それは、親水性物質のハイドロゲルと両親性を有
する界面活性剤とを混ぜて強く撹拌することで、親水性
のゲルが微細なミセルを作ることに基づく。
【0060】ミセルは、油脂を洗い流すときに使用する
石けんによって形成されることで、一般に周知である。
このような一般的なミセルは、親水性の物質(例えば
水)で油脂を取り除くときに、水の中に油脂を微細な粒
子状態にして浮かすよことが通常は必要となる。この場
合は、一種の界面活性剤である石けんを使用する。この
際、石けんの分子のうち、疎水性を有する部分が油脂の
粒子に接するようになって、油脂粒子を取り囲む。一
方、親水性を有する部分は、周囲の水の方向に向かって
配列する。すなわち、油脂の粒子は、石けんの膜からな
る球の中に取り込まれる形で覆われるが、その膜の内面
は疎水性であって、油脂に面しており、膜の外面は親水
性であって、周囲を取り囲む水と接することとなる。こ
れが一般的なミセルの形態である。
石けんによって形成されることで、一般に周知である。
このような一般的なミセルは、親水性の物質(例えば
水)で油脂を取り除くときに、水の中に油脂を微細な粒
子状態にして浮かすよことが通常は必要となる。この場
合は、一種の界面活性剤である石けんを使用する。この
際、石けんの分子のうち、疎水性を有する部分が油脂の
粒子に接するようになって、油脂粒子を取り囲む。一
方、親水性を有する部分は、周囲の水の方向に向かって
配列する。すなわち、油脂の粒子は、石けんの膜からな
る球の中に取り込まれる形で覆われるが、その膜の内面
は疎水性であって、油脂に面しており、膜の外面は親水
性であって、周囲を取り囲む水と接することとなる。こ
れが一般的なミセルの形態である。
【0061】上記した本発明の態様においては、油脂の
代わりに親水性のハイドロゲルが使用される。そこで界
面活性剤を混ぜて強く撹拌すると、ハイドロゲルが分散
し始めるが、個々のハイドロゲル粒子はその表面が親水
性であることから、その周囲に界面活性剤が付着する場
合に、必ず界面活性剤分子の中の親水性部分をハイドロ
ゲルに接するように配する。したがって、その外側は疎
水性となる。この状態で有機溶媒を入れると、有機溶媒
の液体の中で、ハイドロゲル粒子は界面活性剤の膜の中
に取り囲まれた状態で分散する。
代わりに親水性のハイドロゲルが使用される。そこで界
面活性剤を混ぜて強く撹拌すると、ハイドロゲルが分散
し始めるが、個々のハイドロゲル粒子はその表面が親水
性であることから、その周囲に界面活性剤が付着する場
合に、必ず界面活性剤分子の中の親水性部分をハイドロ
ゲルに接するように配する。したがって、その外側は疎
水性となる。この状態で有機溶媒を入れると、有機溶媒
の液体の中で、ハイドロゲル粒子は界面活性剤の膜の中
に取り囲まれた状態で分散する。
【0062】しかしながら、この場合は石けんの例で示
した一般的なミセルの状態とは逆で、外側に疎水性部分
を、内側に親水性部分を向けたミセルとなっている。す
なわち、石けんの場合には一般的なミセルの状態であっ
て、いわゆるw/o(Waterin oil)の状態である。そ
れに対して上記した本発明の態様の場合には、その逆で
o/w(Oil in water)の状態である。すなわち、逆ミ
セルの状態となっている。
した一般的なミセルの状態とは逆で、外側に疎水性部分
を、内側に親水性部分を向けたミセルとなっている。す
なわち、石けんの場合には一般的なミセルの状態であっ
て、いわゆるw/o(Waterin oil)の状態である。そ
れに対して上記した本発明の態様の場合には、その逆で
o/w(Oil in water)の状態である。すなわち、逆ミ
セルの状態となっている。
【0063】この逆ミセルの状態を作り、疎水性の表面
を有する粒子を多数作製して、疎水性の樹脂の孔や間隙
に親水性物質を入れ込むことが、上記した本発明の態様
の特徴である。
を有する粒子を多数作製して、疎水性の樹脂の孔や間隙
に親水性物質を入れ込むことが、上記した本発明の態様
の特徴である。
【0064】これに対して、従来技術においては、疎水
性の樹脂で作られたe−PTFE等の多孔質構造体を最
初に両親性を有するた溶液状態のもの、例えば、エタノ
ールやある種の界面活性剤に接触させておき、樹脂の表
面を親水性化させてから、親水性の物質を押し込む、と
いう考え方である。そのため、親水性の物質を無理矢理
に押し込むにつれて、疎水性の表面に付着した両親性物
質や界面活性剤は容易に剥がれてしまい、それ以上、親
水性の物質は、孔の中深くには入り込むことができな
い。
性の樹脂で作られたe−PTFE等の多孔質構造体を最
初に両親性を有するた溶液状態のもの、例えば、エタノ
ールやある種の界面活性剤に接触させておき、樹脂の表
面を親水性化させてから、親水性の物質を押し込む、と
いう考え方である。そのため、親水性の物質を無理矢理
に押し込むにつれて、疎水性の表面に付着した両親性物
質や界面活性剤は容易に剥がれてしまい、それ以上、親
水性の物質は、孔の中深くには入り込むことができな
い。
【0065】これに対して、本発明においては、微細な
親水性物質がミクロなレベルで逆ミセル現象によって疎
水性状態の表面を有するため、樹脂表面の性状に無関係
に、その孔の内部深くまで入り込むことができる。これ
が本発明のミセルを使用する態様の長所である。
親水性物質がミクロなレベルで逆ミセル現象によって疎
水性状態の表面を有するため、樹脂表面の性状に無関係
に、その孔の内部深くまで入り込むことができる。これ
が本発明のミセルを使用する態様の長所である。
【0066】逆ミセルは英語でreversed micelle、また
はinverted micelleといい、この考え方の従来技術とし
ては1980年代から考えられている。米国特許第4,
411,815号、米国特許第4,923,854等に
もすでにこの考え方がみられる。医薬関係では米国特許
第4,548,922号、米国特許第5,444,04
1号、米国特許第5,633,226号、米国特許第
5,646,109号、米国特許第5,688,761
号、米国特許第5,981,240等にその技術が利用
されている。これらの多くは薬剤関係であり、最近では
化粧品関係でもこの考え方の技術が報告されている。
はinverted micelleといい、この考え方の従来技術とし
ては1980年代から考えられている。米国特許第4,
411,815号、米国特許第4,923,854等に
もすでにこの考え方がみられる。医薬関係では米国特許
第4,548,922号、米国特許第5,444,04
1号、米国特許第5,633,226号、米国特許第
5,646,109号、米国特許第5,688,761
号、米国特許第5,981,240等にその技術が利用
されている。これらの多くは薬剤関係であり、最近では
化粧品関係でもこの考え方の技術が報告されている。
【0067】したがって、逆ミセル自体は新しい考え方
ではないが、疎水性の樹脂からなる多孔質構造の孔また
は間隙に親水性物質を無理なく配置するための手段とし
て用いた例は、本発明が最初である。
ではないが、疎水性の樹脂からなる多孔質構造の孔また
は間隙に親水性物質を無理なく配置するための手段とし
て用いた例は、本発明が最初である。
【0068】前述したとおり、界面活性剤を使用する考
え方は、疎水性樹脂を処理する、という技術として考え
られていたが、疎水性樹脂に挿入する親水性物質を逆ミ
セルの考え方で処理する技術は、本発明が最初である。
え方は、疎水性樹脂を処理する、という技術として考え
られていたが、疎水性樹脂に挿入する親水性物質を逆ミ
セルの考え方で処理する技術は、本発明が最初である。
【0069】親水性物質を配した後の処理は特に制限さ
れない。すなわち、親水性物質を配した後の疎水性樹脂
を凍結乾燥しても良いし、自然乾燥、いわゆる風乾を行
っても良い。一般的には、凍結乾燥の方が柔軟で多孔質
となり、風乾の方が硬くて無孔質の状態の親水性物質が
得られる傾向がある。これらは、その後に使用されるべ
きハイブリッド材料の用途(例えば、医療材料)の求め
られる物性によって調整することが可能である。(不溶
化)
れない。すなわち、親水性物質を配した後の疎水性樹脂
を凍結乾燥しても良いし、自然乾燥、いわゆる風乾を行
っても良い。一般的には、凍結乾燥の方が柔軟で多孔質
となり、風乾の方が硬くて無孔質の状態の親水性物質が
得られる傾向がある。これらは、その後に使用されるべ
きハイブリッド材料の用途(例えば、医療材料)の求め
られる物性によって調整することが可能である。(不溶
化)
【0070】本発明の親水性物質は、疎水性樹脂の孔又
は間隙に配された後に、必要に応じて、何らかの方法で
不溶化してもよい。このような手段で、生体内での吸収
速度を調節することが可能となる。具体的な手法の例と
しては、親水性物質を架橋処理することが挙げられる。
その方法は、前記親水性材料を熱、電子線、ガンマー
線、紫外線、圧力、乾燥、絡まり、等の物理的エネルギ
ーによる架橋;ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒ
ド、ポリエポキシ化合物、ジアルデヒドデンプン、ヘキ
サメチレンジイソシアナート、等の化学架橋剤による架
橋、のいずれかの方法で不溶化が可能である。
は間隙に配された後に、必要に応じて、何らかの方法で
不溶化してもよい。このような手段で、生体内での吸収
速度を調節することが可能となる。具体的な手法の例と
しては、親水性物質を架橋処理することが挙げられる。
その方法は、前記親水性材料を熱、電子線、ガンマー
線、紫外線、圧力、乾燥、絡まり、等の物理的エネルギ
ーによる架橋;ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒ
ド、ポリエポキシ化合物、ジアルデヒドデンプン、ヘキ
サメチレンジイソシアナート、等の化学架橋剤による架
橋、のいずれかの方法で不溶化が可能である。
【0071】更に不溶化の方法としては、前記親水性物
質を、亜鉛、マグネシューム、鉄、アルミニューム等の
金属イオンにより配位結合状態とさせることが可能であ
る。このような配位結合を利用する際は、親水性材料が
カルボキシ基を有していることが好ましい。
質を、亜鉛、マグネシューム、鉄、アルミニューム等の
金属イオンにより配位結合状態とさせることが可能であ
る。このような配位結合を利用する際は、親水性材料が
カルボキシ基を有していることが好ましい。
【0072】前記親水性物質を不溶化することで、親水
性物質が生体内で分解吸収される物質である場合には、
生体内での親水性物質の分解、吸収をコントロールする
ことができる。例えば強く架橋して不溶化すると、その
物質は生体内で12ヶ月以上も分解吸収を受けないよう
にすることもできるし、弱く架橋したり配位結合の程度
を低くすると、生体内で1ヶ月程度でも分解吸収される
ようにすることも可能である。このように、不溶化処置
の程度で、分解吸収の程度を自由にコントロール可能と
なる。
性物質が生体内で分解吸収される物質である場合には、
生体内での親水性物質の分解、吸収をコントロールする
ことができる。例えば強く架橋して不溶化すると、その
物質は生体内で12ヶ月以上も分解吸収を受けないよう
にすることもできるし、弱く架橋したり配位結合の程度
を低くすると、生体内で1ヶ月程度でも分解吸収される
ようにすることも可能である。このように、不溶化処置
の程度で、分解吸収の程度を自由にコントロール可能と
なる。
【0073】更に生体内で吸収を早めるには、吸収可能
な状態のまま(すなわち、架橋を行わずに、または弱い
架橋を行って)親水性物質を多孔性構造(e−PTFE
等)の壁内に留めておくこともできる。このようにした
場合でも、多孔性構造の壁内部には水が入り難いので、
親水性物質が水に溶け出る可能性が低くなるため、多孔
性構造の外にある親水性物質に比べて生体内では長時間
残存させることができる。 (親水性物質の修飾)
な状態のまま(すなわち、架橋を行わずに、または弱い
架橋を行って)親水性物質を多孔性構造(e−PTFE
等)の壁内に留めておくこともできる。このようにした
場合でも、多孔性構造の壁内部には水が入り難いので、
親水性物質が水に溶け出る可能性が低くなるため、多孔
性構造の外にある親水性物質に比べて生体内では長時間
残存させることができる。 (親水性物質の修飾)
【0074】更に本発明においては、必要に応じて、親
水性物質に種々のサイトカインや細胞成長因子等、生物
活性を有する薬剤や因子を吸着させることができる。こ
のような態様によれば人為的に疎水性樹脂の多孔質部分
に意図的に選別した細胞を集めることが可能となる。
水性物質に種々のサイトカインや細胞成長因子等、生物
活性を有する薬剤や因子を吸着させることができる。こ
のような態様によれば人為的に疎水性樹脂の多孔質部分
に意図的に選別した細胞を集めることが可能となる。
【0075】本発明においては、親水性物質の少なくと
も一部が、細胞性因子、サイトカイン、抗生物質、抗凝
固性物質、凝固促進物質、細胞成長抑制物質、薬理学的
作用を有する薬剤からなる群から選ばれた一つ以上の生
理活性物質を、吸収又は吸着により保持可能な物質であ
ることが好ましい。
も一部が、細胞性因子、サイトカイン、抗生物質、抗凝
固性物質、凝固促進物質、細胞成長抑制物質、薬理学的
作用を有する薬剤からなる群から選ばれた一つ以上の生
理活性物質を、吸収又は吸着により保持可能な物質であ
ることが好ましい。
【0076】より具体的には、親水性物質が、ポリグリ
コール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ーポリグリコール酸共重
合体、生分解性(3−ヒドロキシルブチレート−4−ヒ
ドロキシルブチレート)ポリエステル重合体、ポリジオ
キサン、ポリエチレングリコール、コラーゲン、ゼラチ
ン、アルブミン、フィブリン、キトサン、キチン、フィ
ブロイン、セルロース、ムコ多糖類、ビトロネクチン、
フィブロネクチン、ラミニン、アルギン酸、ヒアルロン
酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポ
リアミノ酸、澱粉、デキストリン、デキストラン、アガ
ロース、ペクチン、マンナン、およびそれらの誘導体か
らなる群から選ばれた一つ以上の物質を含むことが好ま
しい。 (好適な充填の一態様)
コール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ーポリグリコール酸共重
合体、生分解性(3−ヒドロキシルブチレート−4−ヒ
ドロキシルブチレート)ポリエステル重合体、ポリジオ
キサン、ポリエチレングリコール、コラーゲン、ゼラチ
ン、アルブミン、フィブリン、キトサン、キチン、フィ
ブロイン、セルロース、ムコ多糖類、ビトロネクチン、
フィブロネクチン、ラミニン、アルギン酸、ヒアルロン
酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポ
リアミノ酸、澱粉、デキストリン、デキストラン、アガ
ロース、ペクチン、マンナン、およびそれらの誘導体か
らなる群から選ばれた一つ以上の物質を含むことが好ま
しい。 (好適な充填の一態様)
【0077】図1は、本発明において好適に使用可能な
充填の一態様を示す模式斜視図である。
充填の一態様を示す模式斜視図である。
【0078】図1を参照して、e−PTFE等のフィブ
リル疎水性樹脂からなる人工血管1(例えば、外径8m
m、長さ10cm、壁の厚さ0.6mm程度)の一端を
三方活栓3(例えば、トップ社製)の第1の端子3aに
接続する(例えば、1号絹糸を用いてくくりつける)。
次いで、人工血管1を細長い透明な塩化ビニール袋2に
入れ、その袋2の一方の末端を、上記人工血管1と共に
三方活栓3の第1の端子3aに接続する。その袋2の他
方の末端にはコネクティブチューブ4(例えば、トップ
社製)を接続し、該コネクティブチューブ4の他方の末
端を、前記三方活栓3の第2の端子3bに接続する。
リル疎水性樹脂からなる人工血管1(例えば、外径8m
m、長さ10cm、壁の厚さ0.6mm程度)の一端を
三方活栓3(例えば、トップ社製)の第1の端子3aに
接続する(例えば、1号絹糸を用いてくくりつける)。
次いで、人工血管1を細長い透明な塩化ビニール袋2に
入れ、その袋2の一方の末端を、上記人工血管1と共に
三方活栓3の第1の端子3aに接続する。その袋2の他
方の末端にはコネクティブチューブ4(例えば、トップ
社製)を接続し、該コネクティブチューブ4の他方の末
端を、前記三方活栓3の第2の端子3bに接続する。
【0079】別に、親水性物質(例えば、ヒアルロン
酸)をアルコール等の含水極性溶媒(例えば、50%エ
タノール水溶液)に懸濁させてなる液体6を注射器5に
入れておき、三方活栓3の第3の端子3cに接続する。
また、止血鉗子7を用いて、人工血管1の三方活栓3に
接続されていない方末端を、塩化ビニール袋2の上から
挟みつけることにより、人工血管1の末端を閉じる。
酸)をアルコール等の含水極性溶媒(例えば、50%エ
タノール水溶液)に懸濁させてなる液体6を注射器5に
入れておき、三方活栓3の第3の端子3cに接続する。
また、止血鉗子7を用いて、人工血管1の三方活栓3に
接続されていない方末端を、塩化ビニール袋2の上から
挟みつけることにより、人工血管1の末端を閉じる。
【0080】このような装置を作り、三方活栓3の端子
3c−3a間を導通させるように切り替えた後に、注射
器5から親水性物質6を含水アルコール等の溶媒に懸濁
させた液を人工血管1の中に注入する。このとき、人工
血管1の壁を通過した親水性物質の溶解/分散液6は、
塩化ビニール袋2の中にたまる。このように溜まった液
は、三方活栓3の端子3b−3a間を導通させるように
切り替えた後に、注射器5を用いてコネクティブチュー
ブ4を介して吸引し、注射器5内に戻す。
3c−3a間を導通させるように切り替えた後に、注射
器5から親水性物質6を含水アルコール等の溶媒に懸濁
させた液を人工血管1の中に注入する。このとき、人工
血管1の壁を通過した親水性物質の溶解/分散液6は、
塩化ビニール袋2の中にたまる。このように溜まった液
は、三方活栓3の端子3b−3a間を導通させるように
切り替えた後に、注射器5を用いてコネクティブチュー
ブ4を介して吸引し、注射器5内に戻す。
【0081】次いで、三方活栓3の端子3c−3a間を
導通させるように切り替えた後に、再び、このように注
射器5内に戻した液を、人工血管1内に注入する。
導通させるように切り替えた後に、再び、このように注
射器5内に戻した液を、人工血管1内に注入する。
【0082】このような操作を10分間ほど、繰り返し
行うことで、徐々に親水性物質は人工血管1の壁内に吸
着されて蓄積する。親水性物質の濃度が高い場合には、
数回の注入で人工血管1の壁の孔が塞がれて注入が継続
できなくなる。この場合にはこの時点で注入を止める。
行うことで、徐々に親水性物質は人工血管1の壁内に吸
着されて蓄積する。親水性物質の濃度が高い場合には、
数回の注入で人工血管1の壁の孔が塞がれて注入が継続
できなくなる。この場合にはこの時点で注入を止める。
【0083】次に、止血鉗子7を人工血管1から外した
状態で上述した注射器5から人工血管1への溶解/分散
液6の注入操作を続け、これによって人工血管1の内腔
に付着している過剰な親水性物質を洗い流す。この操作
が完全に終了した後に、人工血管1をビニール袋2から
取り出す。この操作によって、コンタミネーションを起
こさせることなく清潔な状態で人工血管1の壁に親水性
物質を絡めることが可能となる。
状態で上述した注射器5から人工血管1への溶解/分散
液6の注入操作を続け、これによって人工血管1の内腔
に付着している過剰な親水性物質を洗い流す。この操作
が完全に終了した後に、人工血管1をビニール袋2から
取り出す。この操作によって、コンタミネーションを起
こさせることなく清潔な状態で人工血管1の壁に親水性
物質を絡めることが可能となる。
【0084】図2は、上記したような充填操作で用いた
(親水性物質を充填する前)人工血管の一態様を示す模
式断面図(a)および拡大模式断面図(b)である。図
2(a)は、人工血管壁8の長軸方向の割断面9を示
す。図2(b)は、この割断面9の拡大図10を示す。
図2(b)を参照して、この態様においては、人工血管
1の結節部分11とフィブリル部分12とが交互に存在
している。
(親水性物質を充填する前)人工血管の一態様を示す模
式断面図(a)および拡大模式断面図(b)である。図
2(a)は、人工血管壁8の長軸方向の割断面9を示
す。図2(b)は、この割断面9の拡大図10を示す。
図2(b)を参照して、この態様においては、人工血管
1の結節部分11とフィブリル部分12とが交互に存在
している。
【0085】図3は、上記したような充填操作により得
ることが可能な、親水性物質が充填された人工血管の一
態様を示す模式断面図(a)および拡大模式断面図
(b)である。図3(a)は、親水性物質6が絡められ
た人工血管壁8の長軸方向の割断面13を示し、図2
(b)は、この割断面13の拡大図14を示す。図2
(b)を参照して、人工血管1には結節部分11とフィ
ブリル部分12が交互に存在するが、そのフィブリル部
分12に親水性物質6が絡まっている。
ることが可能な、親水性物質が充填された人工血管の一
態様を示す模式断面図(a)および拡大模式断面図
(b)である。図3(a)は、親水性物質6が絡められ
た人工血管壁8の長軸方向の割断面13を示し、図2
(b)は、この割断面13の拡大図14を示す。図2
(b)を参照して、人工血管1には結節部分11とフィ
ブリル部分12が交互に存在するが、そのフィブリル部
分12に親水性物質6が絡まっている。
【0086】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。
説明する。
【0087】
【実施例】実施例1
【0088】5%ヒアルロン酸(商品名ヒアルロン酸ナ
トリウム、和光純薬株式会社製)の水溶液を10ml作
製し、等量の界面活性剤トゥイーン(Tween)20(I
CI社製)の10mlを加えて充分に撹拌(マグネチッ
クスターラ、約20rpm、24時間)して、懸濁液を
作製した。次に、得られた懸濁液と等量(等体積)の1
00%エタノールを注入して、上記懸濁液を希釈した。
トリウム、和光純薬株式会社製)の水溶液を10ml作
製し、等量の界面活性剤トゥイーン(Tween)20(I
CI社製)の10mlを加えて充分に撹拌(マグネチッ
クスターラ、約20rpm、24時間)して、懸濁液を
作製した。次に、得られた懸濁液と等量(等体積)の1
00%エタノールを注入して、上記懸濁液を希釈した。
【0089】次に、臨床で使用されている市販のe−P
TFEグラフト(フィブリル長さ:30μm、商品名イ
ンプラグラフト、インプラ社製)の長さ5cm、内径6
mmの人工血管を用いて、上記した図1に示した方法を
用いて、その方末端を鉗子にて止め、他の末端から作製
した懸濁液の合計10mlを200mmHgの圧力をか
けつつ、徐々に繰り返し(約10回)て圧注入した。
TFEグラフト(フィブリル長さ:30μm、商品名イ
ンプラグラフト、インプラ社製)の長さ5cm、内径6
mmの人工血管を用いて、上記した図1に示した方法を
用いて、その方末端を鉗子にて止め、他の末端から作製
した懸濁液の合計10mlを200mmHgの圧力をか
けつつ、徐々に繰り返し(約10回)て圧注入した。
【0090】次いで、得られた人工血管を凍結乾燥し、
ヘキサメチレン ジイソシアネートを用いて架橋して、
本発明のハイブリッド樹脂材料を得た。この際に用いた
凍結乾燥条件、および架橋条件は、以下の通りであっ
た。 <凍結乾燥条件>マイナス80度で凍結させた上記人工
血管をロータリーポンプで減圧し、10 −3mmHgの
圧で12時間かけて材料に含まれる水を抜き、脱水させ
た。 <架橋条件>3%のエポキシ化合物(EX−313、ナ
ガセ化成工業株式会社、大阪)の100%エタノール溶
液30mlの中に上記人工血管を浸し、摂氏50度で5
時間維持させることによって、人工血管に圧注入された
ヒアルロン酸をエポキシ架橋した。
ヘキサメチレン ジイソシアネートを用いて架橋して、
本発明のハイブリッド樹脂材料を得た。この際に用いた
凍結乾燥条件、および架橋条件は、以下の通りであっ
た。 <凍結乾燥条件>マイナス80度で凍結させた上記人工
血管をロータリーポンプで減圧し、10 −3mmHgの
圧で12時間かけて材料に含まれる水を抜き、脱水させ
た。 <架橋条件>3%のエポキシ化合物(EX−313、ナ
ガセ化成工業株式会社、大阪)の100%エタノール溶
液30mlの中に上記人工血管を浸し、摂氏50度で5
時間維持させることによって、人工血管に圧注入された
ヒアルロン酸をエポキシ架橋した。
【0091】実施例2
【0092】実施例1で得られたハイブリッド樹脂材料
における、疎水性樹脂内の多孔質構造を構成する孔およ
び/又は間隙内に配置された親水性物質の量を以下のよ
うにして求めた。 <親水性物質の量の測定>疎水性樹脂からなる多孔質構
造体の質量を予め測定して、それをaグラムとした。次
に親水性物質を界面活性剤によってミセル化させて多孔
質構造体の孔の中に圧注入し、その後100%エタノー
ルによって界面活性剤を取り除いた後に凍結乾燥を行
い、質量(a+b)を測定した。この値からaグラムを
差し引いた質量が親水性物質の乾燥状態での質量(bグ
ラム)とした。
における、疎水性樹脂内の多孔質構造を構成する孔およ
び/又は間隙内に配置された親水性物質の量を以下のよ
うにして求めた。 <親水性物質の量の測定>疎水性樹脂からなる多孔質構
造体の質量を予め測定して、それをaグラムとした。次
に親水性物質を界面活性剤によってミセル化させて多孔
質構造体の孔の中に圧注入し、その後100%エタノー
ルによって界面活性剤を取り除いた後に凍結乾燥を行
い、質量(a+b)を測定した。この値からaグラムを
差し引いた質量が親水性物質の乾燥状態での質量(bグ
ラム)とした。
【0093】上記測定の結果、実施例1で作製した人工
血管内には、ヒアルロン酸の質量比が人工血管全体の約
30%であることが判明した。この人工血管の通水量を
測定したが、1平方センチメートルあたり1分間に5m
lであった。血清の漏れはなかった。この際、通水量測
定、および血清の漏れ検査は、以下のようにして行っ
た。 <通水量測定>塩化ビニールの管(肉厚2mm程度、内
径10mm程度、長さ120cm程度)を閉鎖的に繋ぎ
回路を作成し、この回路の一部に小型のポンプ(例え
ば、商品名:遠心型血液ポンプ HPM−15、日機装
株式会社製)を組み込んで塩化ビニール内には脱イオン
した蒸留水を流した。この時の圧力をマノメーターで測
定した。この方法において、回路の一部に可変性の狭窄
部分を作成することで、回路内の圧力を変動させた。通
水量の測定時には、この圧力を120mmHgに固定し
た。このようにして準備した回路の一部から、加圧され
た水を導き、その部分に通水量を測定すべき多孔質体の
膜を置いて、その膜を通過する水の量を測定した。測定
した水の量は、多孔質体の膜の面積を1平方cmに換算
して1分間に通過する水の量として表示した(このよう
な通水量測定の詳細については、文献Guidoin R, King
M, Marceau D, Cardou A, de la Faye D, Legendre JM,
Blais P.:Textile Arterial Prostheses:Is Water Per
meability Equivalent to Porosity?J.Biomed.Maer.Re
s.,1987 Jan; 21(1):65-87を参照することができる)。
一般に、高度な多孔質の場合には1500ml以上の水
が1分間に流れ、低度の多孔質の膜の場合には、この1
分間に流れる水の量は50ml程度である。 <血清の漏れ検査>血清の漏れは、通水率の測定と同じ
装置を用いて、同様の条件下で行うことができる。この
場合には、上記した蒸留水に代えて、ヒト又は牛の血清
を用いる。血清通過量の表示も、同様である。血清は水
より粘調度が高いため、血清の通過量は、水の通過より
も少ない量となるのが一般的である。
血管内には、ヒアルロン酸の質量比が人工血管全体の約
30%であることが判明した。この人工血管の通水量を
測定したが、1平方センチメートルあたり1分間に5m
lであった。血清の漏れはなかった。この際、通水量測
定、および血清の漏れ検査は、以下のようにして行っ
た。 <通水量測定>塩化ビニールの管(肉厚2mm程度、内
径10mm程度、長さ120cm程度)を閉鎖的に繋ぎ
回路を作成し、この回路の一部に小型のポンプ(例え
ば、商品名:遠心型血液ポンプ HPM−15、日機装
株式会社製)を組み込んで塩化ビニール内には脱イオン
した蒸留水を流した。この時の圧力をマノメーターで測
定した。この方法において、回路の一部に可変性の狭窄
部分を作成することで、回路内の圧力を変動させた。通
水量の測定時には、この圧力を120mmHgに固定し
た。このようにして準備した回路の一部から、加圧され
た水を導き、その部分に通水量を測定すべき多孔質体の
膜を置いて、その膜を通過する水の量を測定した。測定
した水の量は、多孔質体の膜の面積を1平方cmに換算
して1分間に通過する水の量として表示した(このよう
な通水量測定の詳細については、文献Guidoin R, King
M, Marceau D, Cardou A, de la Faye D, Legendre JM,
Blais P.:Textile Arterial Prostheses:Is Water Per
meability Equivalent to Porosity?J.Biomed.Maer.Re
s.,1987 Jan; 21(1):65-87を参照することができる)。
一般に、高度な多孔質の場合には1500ml以上の水
が1分間に流れ、低度の多孔質の膜の場合には、この1
分間に流れる水の量は50ml程度である。 <血清の漏れ検査>血清の漏れは、通水率の測定と同じ
装置を用いて、同様の条件下で行うことができる。この
場合には、上記した蒸留水に代えて、ヒト又は牛の血清
を用いる。血清通過量の表示も、同様である。血清は水
より粘調度が高いため、血清の通過量は、水の通過より
も少ない量となるのが一般的である。
【0094】比較例1
【0095】実施例1で用いたものと同じ人工血管を用
いて、従来技術(米国特許4,193,138号)によ
る対照の実験を行った。
いて、従来技術(米国特許4,193,138号)によ
る対照の実験を行った。
【0096】すなわち、エタノールまたは界面活性剤で
あるトゥイーン20に浸した後、200mmHgの圧力
をかけて、実施例1と同様に圧注入した。次いで、得ら
れた人工血管を実施例1と同様に凍結乾燥し、ヘキサメ
チレン ジイソシアネートを用いて架橋した。この際に
使用したエタノール浸漬条件、およびトゥイーン20浸
漬条件は、米国特許4,193,138号の方法に従っ
た。
あるトゥイーン20に浸した後、200mmHgの圧力
をかけて、実施例1と同様に圧注入した。次いで、得ら
れた人工血管を実施例1と同様に凍結乾燥し、ヘキサメ
チレン ジイソシアネートを用いて架橋した。この際に
使用したエタノール浸漬条件、およびトゥイーン20浸
漬条件は、米国特許4,193,138号の方法に従っ
た。
【0097】上記により作製した人工血管内を用いて、
実施例2と同様の測定を行ったところ、ヒアルロン酸が
人工血管全体の1.2%となっていた。これはエタノー
ルを使用しても、トゥイーンを使用してもほぼ同量であ
った。
実施例2と同様の測定を行ったところ、ヒアルロン酸が
人工血管全体の1.2%となっていた。これはエタノー
ルを使用しても、トゥイーンを使用してもほぼ同量であ
った。
【0098】実施例2と同様に、この人工血管の通水量
を測定したが、1平方センチメートルあたり1分間に5
0mlであった。血清の漏れは1分間に10mlであっ
た。
を測定したが、1平方センチメートルあたり1分間に5
0mlであった。血清の漏れは1分間に10mlであっ
た。
【0099】比較例2
【0100】前述した実施例を、ヒアルロン酸に代えて
ゼラチン、デキストラン、ポリエチレングリコール等を
それぞれ用いた以外は、実施例1〜2および比較例1と
同様の実験を行ったところ、ヒアルロン酸を用いて行っ
たとほぼ同じ結果が、本発明の実施例と対照例共に認め
られた。
ゼラチン、デキストラン、ポリエチレングリコール等を
それぞれ用いた以外は、実施例1〜2および比較例1と
同様の実験を行ったところ、ヒアルロン酸を用いて行っ
たとほぼ同じ結果が、本発明の実施例と対照例共に認め
られた。
【0101】以上の実施例に示すとおり、本発明によれ
ば、容易に親水性の材料を疎水性樹脂の多孔質構造の孔
および/又は間隙に均質に配することが可能であること
が判明した。このような多孔質構造体は人工血管として
使用することも可能であると共に、それを長軸方向に切
り裂くことによって、長方形の膜状物が得られることか
ら、それを各種のパッチ材料として使用することが可能
となる。
ば、容易に親水性の材料を疎水性樹脂の多孔質構造の孔
および/又は間隙に均質に配することが可能であること
が判明した。このような多孔質構造体は人工血管として
使用することも可能であると共に、それを長軸方向に切
り裂くことによって、長方形の膜状物が得られることか
ら、それを各種のパッチ材料として使用することが可能
となる。
【0102】
【発明の効果】本発明によれば、多孔質構造の疎水性樹
脂の孔および/又は間隙に親水性材料を配することが容
易に可能となるため、本発明は以下の効果を有する。
脂の孔および/又は間隙に親水性材料を配することが容
易に可能となるため、本発明は以下の効果を有する。
【0103】本発明によれば、多孔質構造を有する疎水
性樹脂の孔および/又は間隙からの液体(血清等)の漏
れを防ぐことが可能である。特に、このような多孔質構
造体を人工血管として使用した際に、血清の漏れを防止
するために有用である。
性樹脂の孔および/又は間隙からの液体(血清等)の漏
れを防ぐことが可能である。特に、このような多孔質構
造体を人工血管として使用した際に、血清の漏れを防止
するために有用である。
【0104】本発明において親水性材料として生体内分
解性の材料を使用する態様によれば、生体内に植え込ん
だ後、宿主の細胞がその材料と置き換わって、宿主の組
織を作ることが期待され、疎水性樹脂と生体細胞とのハ
イブリッド型の組織を作製するのに適している。
解性の材料を使用する態様によれば、生体内に植え込ん
だ後、宿主の細胞がその材料と置き換わって、宿主の組
織を作ることが期待され、疎水性樹脂と生体細胞とのハ
イブリッド型の組織を作製するのに適している。
【0105】本発明においては、必要に応じて親水性材
料に各種細胞成長因子を絡ませることが可能であること
から、一般に疎水性樹脂では不可能であった細胞の誘導
等にその威力を発揮させることが可能であり、その為、
人為的に意図した細胞を多く集めて、生体内で特殊な機
能的組織を作製することができる。
料に各種細胞成長因子を絡ませることが可能であること
から、一般に疎水性樹脂では不可能であった細胞の誘導
等にその威力を発揮させることが可能であり、その為、
人為的に意図した細胞を多く集めて、生体内で特殊な機
能的組織を作製することができる。
【0106】本発明においては、必要に応じて親水性材
料に各種の細胞成長を阻止する因子を絡ませることが可
能であることから、細胞を付着させない環境を生体内に
形成させることが可能となる。この特性を活用すると、
細胞で何時までも覆われない組織が生体内で作られ、各
種センサーのセンシングを行う良好な場を生体内で提供
することが可能となる。
料に各種の細胞成長を阻止する因子を絡ませることが可
能であることから、細胞を付着させない環境を生体内に
形成させることが可能となる。この特性を活用すると、
細胞で何時までも覆われない組織が生体内で作られ、各
種センサーのセンシングを行う良好な場を生体内で提供
することが可能となる。
【0107】更に、本発明の一態様によれば、例えば親
水性物質のハイドロゲルを界面活性剤と共に強く撹拌す
ることでハイドロゲル微細粒子のミセル懸濁状態の液を
作製し、この状態のハイドロゲルを疎水性樹脂によって
形作られた狭い空間に圧注入させた後に、界面活性剤を
除去することにより、該親水性物質を疎水性樹脂によっ
て形作られた狭い空間に残すという新たなコンセプトに
基づく技術が提供される。
水性物質のハイドロゲルを界面活性剤と共に強く撹拌す
ることでハイドロゲル微細粒子のミセル懸濁状態の液を
作製し、この状態のハイドロゲルを疎水性樹脂によって
形作られた狭い空間に圧注入させた後に、界面活性剤を
除去することにより、該親水性物質を疎水性樹脂によっ
て形作られた狭い空間に残すという新たなコンセプトに
基づく技術が提供される。
【図1】疎水性樹脂からなる多孔質構造の人工血管壁
に、生体内溶解性材料を含浸させる方法の一例を示す模
式斜視図である。
に、生体内溶解性材料を含浸させる方法の一例を示す模
式斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1の方法で用いた人工血管の
長軸方向の割断面の一例を示す。図2(b)は、該割断
面の拡大図の一例を示す。
長軸方向の割断面の一例を示す。図2(b)は、該割断
面の拡大図の一例を示す。
【図3】図3(a)は、図1の方法により得ることが可
能な溶解性材料が充填された人工血管壁の長軸方向の割
断面の一例を示す。図3(b)は、該割断面の拡大図の
一例を示す。
能な溶解性材料が充填された人工血管壁の長軸方向の割
断面の一例を示す。図3(b)は、該割断面の拡大図の
一例を示す。
1…人工血管
2…細長い透明な塩化ビニール袋2
3…三方活栓
4…コネクティブチューブ
5…注射器
6…親水性物質
7…止血鉗子
8…長軸方向に切断された人工血管
9…人工血管の長軸方向の割断面
10…人工血管の長軸方向の割断面の拡大図
11…人工血管の結節部分
12…人工血管のフィブリル部分
13…生体内溶解性材料が絡められた人工血管の長軸方
向の割断面 14…生体内溶解性材料が絡められた人工血管の長軸方
向の割断面の拡大図
向の割断面 14…生体内溶解性材料が絡められた人工血管の長軸方
向の割断面の拡大図
フロントページの続き
Fターム(参考) 4C081 AB13 BA03 BA04 BA05 BA06
BB01 BB02 CA131 CA172
CA182 CB011 CB042 CC04
CC05 CD012 CD022 CD032
CD042 CD052 CD062 CD072
CD082 CD092 CD112 CD122
CD152 CD172 CD27 CD29
CD34 CE01 CE02 CE08 DA03
DA05 DA06 DA12 DB04 DB07
DC05 DC14 EA02 EA06
4F074 AA38 AA39 CC07Z CE15
CE17 CE35 CE44 CE58 CE98
DA53
Claims (17)
- 【請求項1】 疎水性樹脂からなる多孔質構造体と、そ
の多孔質構造を構成する孔および/又は間隙内に配置さ
れた親水性物質とを少なくとも含み;前記疎水性樹脂と
親水性物質との合計質量に対する親水性物質の質量比
が、乾燥状態で2%以上であるハイブリッド樹脂材料。 - 【請求項2】 前記親水性物質の少なくとも一部が生体
内分解性である請求項1に記載のハイブリッド樹脂材
料。 - 【請求項3】 前記疎水性樹脂が、複数の結節と、各結
節間を結ぶフィブリル構造とを交互に有するフッ素樹
脂、又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(e−PTF
E)である請求項1または2に記載のハイブリッド樹脂
材料。 - 【請求項4】 前記親水性物質の少なくとも一部が、天
然由来材料又はその誘導体である請求項1〜3のいずれ
かに記載のハイブリッド樹脂材料。 - 【請求項5】 前記親水性物質の少なくとも一部が、合
成高分子由来材料又はその誘導体である請求項1〜3の
いずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。 - 【請求項6】 前記親水性物質の少なくとも一部が、人
為的に生物を利用して作製された非天然物たる材料又は
その誘導体である請求項1〜3のいずれかに記載のハイ
ブリッド樹脂材料。 - 【請求項7】 前記親水性物質の少なくとも一部が、負
荷電部分を有する請求項1〜3のいずれかに記載のハイ
ブリッド樹脂材料。 - 【請求項8】 前記親水性物質の少なくとも一部が、化
学架橋または物理架橋によって部分的に架橋されている
請求項1〜7のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材
料。 - 【請求項9】 前記親水性物質の少なくとも一部が、細
胞性因子、サイトカイン、抗生物質、抗凝固性物質、凝
固促進物質、細胞成長抑制物質、薬理学的作用を有する
薬剤からなる群から選ばれた一つ以上の生理活性物質
を、吸収又は吸着により保持可能な物質である請求項1
〜8のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。 - 【請求項10】 前記親水性物質が、ポリグリコール
酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸ーポリグリコール酸共重合体、
生分解性(3−ヒドロキシルブチレート−4−ヒドロキ
シルブチレート)ポリエステル重合体、ポリジオキサ
ン、ポリエチレングリコール、コラーゲン、ゼラチン、
アルブミン、フィブリン、キトサン、キチン、フィブロ
イン、セルロース、ムコ多糖類、ビトロネクチン、フィ
ブロネクチン、ラミニン、アルギン酸、ヒアルロン酸、
ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリア
ミノ酸、澱粉、デキストリン、デキストラン、アガロー
ス、ペクチン、マンナン、およびそれらの誘導体からな
る群から選ばれた一つ以上の物質を含む請求項1〜9の
いずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。 - 【請求項11】 疎水性樹脂からなる多孔質構造体と、
その多孔質構造を構成する孔および/又は間隙内に配置
された生体内分解性の親水性物質とのハイブリッド樹脂
材料を作製するための製造方法であって、 (a)親水性物質のハイドロゲルと、界面活性剤とを少
なくとも含むミセル懸濁液を作製し; (b)多孔質構造の片面又は両面から陽圧又は陰圧の圧
力差を与えて、前記ミセル懸濁液を疎水性樹脂内に注入
し; (c)前記界面活性剤を除き、疎水性樹脂によって囲ま
れた空間内に前記親水性物質を残すステップを含む製造
方法。 - 【請求項12】 前記多孔質構造体の孔および/又は間
隙内に前記親水性物質を配置した後に、該親水性物質を
凍結乾燥処理又は自然乾燥処理する請求項11に記載の
ハイブリッド樹脂材料製造方法。 - 【請求項13】 前記親水性物質を、物理的架橋および
/又は化学的架橋により不溶化する請求項11または1
2に記載の製造方法。 - 【請求項14】 前記親水性物質を、金属イオンにより
配位結合状態として不溶化する請求項11〜13のいず
れかに記載の製造方法。 - 【請求項15】 前記親水性物質の少なくとも一部が、
生体内分解性を有するポリマーである請求項11〜14
のいずれかに記載の製造方法。 - 【請求項16】 前記親水性物質の少なくとも一部が、
ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル
基、および/またはスルフォ基から選ばれた親水性基を
少なくとも1種類有する請求項11〜15のいずれかに
記載の製造方法。 - 【請求項17】 前記親水性物質の少なくとも一部が、
蛋白、脂質、多糖類、酵素、細胞成長因子、サイトカイ
ン、抗生物質、抗凝固性物質、凝固促進物質、細胞成長
抑制因子、薬理学的作用および/又は生理的機能を有す
る薬剤からなる群から選ばれた1つ以上の物質を保持可
能である請求項11〜16のいずれかに記載の製造方
法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001370188A JP2003171496A (ja) | 2001-12-04 | 2001-12-04 | ハイブリッド樹脂材料およびその製造方法 |
PCT/JP2001/010650 WO2003048241A1 (fr) | 2001-12-04 | 2001-12-05 | Matiere de resine hybride et procede de preparation correspondant |
AU2002221063A AU2002221063A1 (en) | 2001-12-04 | 2001-12-05 | Hybrid resin material and method for preparation thereof |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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ID=19179447
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