JP2003027660A - 複合構造体、構造物、構造物の補強方法、及び構造物の設計方法 - Google Patents
複合構造体、構造物、構造物の補強方法、及び構造物の設計方法Info
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Abstract
能として、構造物の合理的な設計を行い、また限られた
スペースでのコンパクトな補強を行う。 【解決手段】 強度特性の異なる板部材1aと板部材1
bを接合して、それぞれの部材でともに荷重に抗するこ
とにより、単独の材質による部材よりも強度の優れた複
合構造体1を用いる。また、新しい知見に基づき、その
ような複合構造体、それを利用した構造物の設計方法を
提案し、構造物の補強方法に応用する。
Description
る複合構造体、それを用いた構造物、構造物の補強方法
および構造物の設計方法に関する。
り、複数の材料、材質を用いた複合部材が広く利用され
ている。ところで、これら複合材においては、異種材料
を混合して相互の組織を密着させて一体化したもの、例
えば、合成樹脂に見られるアロイ材、ファイバーガラス
や炭素繊維などの強度補強材を混ぜ込んだ強化樹脂材
料、種々の合金材および鉄筋コンクリートなどの複合材
が使用されている。
合材の場合、マトリックス中に強化繊維などを充填する
ような構成となっており、それぞれの部材の材質特性を
保ちながら両者を一体化させたものは用いられていなか
った。そのため、構造物を構築後にあとから強化繊維な
どを充填することはできず、したがって、構造物の補強
を行う場合、既設構造物の母材と同種材料からなる部材
を取り付けるしか補強の方法がなかった。また、同種材
料を取り付ける場合、荷重の大きいところには構造部材
を多く配置するか、構造部材自体を大きくして担荷断面
積をかせぐほかないので、構造物の利用スペースが減
り、構造物のデザインにも支障が出てくることになり、
不合理な設計になりがちであった。また、近年、耐震設
計の見直しや、老朽化構造物の増加により、既設構造物
に強度補強を施す補強工事の必要性が高まっているが、
このような構造物では、補強のためのスペースが限られ
ているので、できるかぎりコンパクトに補強を行う補強
方法が求められていた。
れたもので、構造物の構造部材として、より小さな担荷
断面積で従来と同等の耐荷力が得られる複合構造体、そ
れを用いた構造物、および構造物の設計方法を提案する
ことを目的とする。
構造物の補強を行うことができる補強方法を提案するこ
とを目的とする。
によって、必要な特性を有する部材を必要なだけ使用し
て合理的な設計を可能にすることを目的とする。
めに、請求項1に記載の発明では、強度特性がそれぞれ
異なる複数の部材を接合してなる複合構造体を用いる。
このような複合構造体によれば、それぞれの強度特性か
ら直接にその強度特性を算出することができ、しかも、
それぞれの部材の形状を変更して所望の強度特性を得る
ことができるから、必要な強度に応じて構造部材を設計
することができる。
は、降伏応力又はヤング率であることを特徴とする請求
項1に記載の複合構造体を用いる。このような複合構造
体によれば、降伏応力又はヤング率が支配的な強度特性
を所望の特性とすることができる。なお、降伏応力は、
明確な降伏点を示さない材質では一般に行われているよ
うに、0.2%の永久ひずみをもたらす耐力を意味する
ものとする。
材を接合してなり、一の部材の強度特性値がaで、他の
部材の強度特性値がbである場合に、その強度特性値c
が a<c<b の関係にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の
複合構造体を用いる。そのため、少なくともa以上の強
度特性値が必要な場合に、安全に用いることができる。
つは、非磁性材料からなることを特徴とする請求項1な
いし3のいずれかに記載の複合構造体を用いる。そのた
め、非磁性が要求される部位に非磁性材料を配置し、そ
の他の部位では、非磁性材料でない材料を備えた構造部
材とすることができ、高価な非磁性材料の使用量を減ら
して合理的な設計ができる。
し4のいずれかに記載の複合構造体を用いて構造物を構
成する。そのため、複合構造体の利点を構造物全体の設
計に生かすことができるとともに、構造物の適所に複合
構造体を配置することができる。
体における接合面と略垂直な方向に圧縮荷重が負荷され
るように、当該複合構造体が配置されていることを特徴
とする請求項5に記載の構造物を構成する。そのため、
圧縮荷重方向に強度特性の異なる部材が配置されるの
で、圧縮荷重に対してそれぞれの強度特性から導かれる
耐荷力を発揮する構造物とすることができる。
する構成部材と異なる強度特性を持つ補強部材を、前記
構成部材に接合することを特徴とする構造物の補強方法
を用いる。そのため、必要な強度と配置可能なスペース
に応じた分の材料を配置して補強部材とすることができ
る。
の許容応力をσa1、前記補強部材の許容応力をσa2と
し、補強を前記構成部材と同じ強度特性を有する部材で
行う場合の補強断面積をA1、前記補強部材の補強断面
積をA2とする場合、 A2≧(σa1/σa2)・A1 によって、前記補強部材の補強断面積を算出することを
特徴とする請求項7に記載の構造物の補強方法を用い
る。そのため、補強すべき既設構造物の構造部材から算
出される同種材質の補強部材の補強断面積から、ただち
に、強度特性の異なる材質部材による補強断面積が計算
できる。
し4のいずれかに記載の複合構造体を用いて構造物を構
成する際の設計方法であって、前記複合構造体の圧縮耐
荷力をP、各部材の許容応力をσai、その耐荷面積をA
i(ただしnを部材の個数として、i=1、……、n)
とする場合に、
徴とする構造物の設計方法を用いる。そのため、複合構
造体であっても、圧縮耐荷力が容易に計算できる。
本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明に係る
複合構造体の一例を示す。この複合構造体1は、材質X
からなる、板厚tx、長辺長L、短辺長(2b+ty)の
寸法を有する板部材1aの短辺中央に沿って、かつ、板
部材1aと直交させた、材質Yからなる、板厚t y、長
辺長L、短辺長bの板部材1bを溶接し、長手方向に直
交する断面が、十字断面をなすように構成され、また接
合面内ですべりが生じないように接合されている。ここ
で、材質Xと材質Yは、強度特性の異なる延性材料であ
る。
き、以下に説明する解析に利用した材質の強度特性を表
1に示す。それぞれ、一般構造用圧延鋼、溶接構造用圧
延鋼、高マンガン非磁性鋼に属する鋼材であり、以下で
は、それぞれSS400、SM490Y、Mn鋼と略称
する。
0Yを用いれば、ヤング率が同一で、降伏応力の異なる
複合構造体が得られる。
ぶことができるのは言うまでもない。構造物の設計を行
う場合に、構造部材の変形特性と終局強度を直接支配す
る特性値としてヤング率または降伏応力を考慮するのは
当然であるが、設計の他の目的や構造物の使用環境によ
っては、強度特性として他の特性値を変えることも意義
がある。例えば材料硬度、衝撃強さ、腐食特性などを考
慮することができる。また、例えば一方の材質に必要な
のは非磁性特性であるが、同じ強度特性を有する磁性鋼
材がない場合などもある。
合して作製することが可能であれば、既設の構造物が有
するいずれの形状であってもよい。例えば、板部材を接
合して、十字断面のみならず、箱型断面あるいはL字、
H字などの形鋼と同様の断面形状とすることができる。
また、そのような複合構造体を湾曲させて用いてもよ
い。
のような複合構造体は、構造部材として用いられなかっ
た。なぜならこのような複合構造体の弾塑性座屈の問題
が解かれておらず、実用的な強度計算法が確立していな
いからである。本発明者は、このような複合構造体の座
屈問題を研究することにより、きわめて興味深い結果を
得ることに成功したので、その知見に基づき、現実の設
計にきわめて有効な設計方法を創案し、本発明に至っ
た。
屈強度の解析結果を説明する。座屈には、第一に、構造
体の軸線がたわむ、柱としての座屈があり、柱の細長比
(L/r)(ここで、L:柱の有効座屈長、r:柱の断
面2次半径)の大きさにより、全体座屈と局部座屈に分
けて考察される。第二に、構造体を構成する板部材が面
外たわみを起こして座屈する局部座屈があり、この場合
は板の幅厚比パラメータR0Sが1より大きい弾性座屈
と、1以下の弾塑性座屈に分けて考察される。
複合構造体1を用い、板部材1a、1bの材質と長辺長
L、短辺長b、板厚tx、tyを変えて解析した。なお、
解析は、様々パラメータの組み合わせと、座屈モードを
確認するための実験からなるが、以下では、要点を示す
ために、その中から代表的な例を選んで説明する。
いて図2を参照して説明する。図2に示したのは、複合
構造体1にx方向から荷重Pを加えた場合の点Qyにお
ける荷重変位曲線である。細長比を40.9に設定し、
柱としての弾塑性座屈の挙動を解析している。材質は、
ヤング率と降伏応力がともに異なるMn鋼とSS400
を複合させた(以下、Mn/SSと記す)が、比較のた
め同材質同士の、Mn鋼(以下、Mn/Mnと記す)、
SS400(以下、SS/SSと記す)の組み合わせに
よる結果も合わせてグラフ化している。これらは、断面
寸法が共通であるから、グラフの差は、材質を複合させ
たことによる差を表している。
部材が圧縮されて点Qyのx方向変位が比例増加し、最
高荷重にまで上昇すると、その後はそれ以下の荷重でも
変位が増大していく。すなわち、最高荷重が座屈荷重で
ある。Mn/SSは、図2のR1領域での傾きがMn鋼
とSS400のヤング率の平均値を示し、R2領域で
は、さらに小さな傾きを示し、Mn/Mnの座屈変位に
達すると同じように座屈する。ただし、座屈荷重は、M
n/MnとSS/SSの座屈荷重のほぼ平均値になって
いる。
間の結果を示すことが分かる。座屈荷重に至るまでの座
屈挙動はそれぞれの材質の間で種々の挙動をとるが、複
合構造体であっても座屈荷重は、同質部材の座屈と同様
に細長比(L/r)に支配され、平均的ヤング率の差に
よって座屈荷重の絶対値が変わるにすぎないと言うこと
ができる。
を参照して説明する。図3に示したのは、細長比(L/
r)を13.0に設定し、他は上記と同様にして、弾塑
性座屈の挙動を解析した結果である。
似た履歴をたどる。すなわち、同質部材では、弾性域で
は荷重の増加にしたがって部材が圧縮されて点Qyのx
方向変位が比例増加し、降伏が起こると、接線剛性を下
げながら最高荷重に達して弾塑性座屈を起こし、終局状
態を迎える。
SSの中間の履歴をたどっている。すなわち、Mn鋼、
SS400がともに弾性範囲にある図中S1領域では、
同質部材の中間の傾きで変形が進み、SS400が降伏
したあとのS2領域では、接線剛性が大きく低下して、
同質部材における最高荷重の中間の値を示し、Mn/M
nの座屈変位と同じ変位で弾塑性座屈して、終局状態を
迎える。
は、その材料の降伏応力によって決まる荷重であり、M
n/SSでは、それぞれの降伏応力の平均値で決まる値
になっている。
ける中間の結果を示すことが分かる。複合構造体は異種
材質の接合面を持っているので、一方の材質が降伏した
場合に、接合面の拘束状態が変化していくから、他方の
弾性部材の座屈挙動にどのように影響するか、予測する
ことはきわめて困難であるが、以上の解析によれば、き
わめて見通しのよい結果を与えることが分かる。
ついて説明する。この解析に用いたのは、図1に示す十
字断面の複合構造体1であり、板部材1a、1bの材質
を変えている。各部の寸法は、局部座屈の条件を得るた
めに、長辺長L=500mm、短辺長b=100mm、
として、tx=ty=6または12mmとした。
Mnの幅厚比R0Sを変えて、弾性座屈と弾塑性座屈の状
態を作り出し、Mn鋼による自由突出板としての板部材
の面外たわみと部材に生じる平均応力σmの関係を解析
したものである。すなわち、横軸に、図1の点Qyにお
けるz方向の面外たわみwを板厚tyで無次元化した無
次元化面外たわみ(w/ty)をとり、縦軸に平均応力
σmをMn鋼の降伏応力σ Yで無次元化した(σm/σY)
をプロットしたものである。Mn鋼の部材に関する解析
であることを明示するためにそれぞれの略号のあとに記
号(Mn)を付している(以下でも同様の意味で用い
る)。
合を、図4を参照して説明する。図4は、ty=6mm
として、幅厚比R0S=1.33なる条件において、解析
した結果であり、σmが降伏応力に達する以前に座屈す
る弾性座屈の解析例になっている。(なお、無荷重状態
でもwが0でないのは、計算を進めるためには、微小な
初期たわみを与える必要があるためである。)
(Mn)はほぼ、同一の挙動をとり、同一の平均応力に
達して座屈し、終局状態を迎える。このことから、端部
が異種材質と接合されていても板部材の弾性座屈挙動に
はほとんど影響がなく、幅厚比R0Sによって支配されて
いると言える。
場合を、図5を参照して説明する。図5では、ty=1
2mmとして、幅厚比R0S=0,66なる条件におい
て、解析した結果であり、σmが降伏応力に達して弾塑
性座屈する場合の解析例である。(無荷重時の初期たわ
みについては上記と同様の理由による。)
を上げてもほとんどたわみを生じないが、降伏が始まる
と急速に面外たわみwが増大し、平均応力σmが降伏応
力σYをほんのわずかに上まわる最高荷重になり、終局
状態に至る。一方、Mn/SS(Mn)は、同質部材の
座屈荷重の約0.7倍までは同質部材のMn鋼の板部材
と同一の挙動を示すが、それを超えると、面外たわみw
が徐々に増大し、同質部材の座屈荷重の約90%で最高
荷重を迎え、終局状態に至る。
σYはMn鋼の68%であるから、Mn/SS(Mn)
の挙動が変化するのは、SS400が降伏するからだと
考えられる。SS400が降伏するということは、接合
面の支持条件が動的に変化していくことであるから、そ
れが、その時点で弾性を保っているMn鋼による板部材
の座屈にどう影響するかを予測することはきわめて困難
である。SS400の降伏によって、Mn鋼の変形に重
大な影響が出て座屈強度が著しく下がることも考えられ
るが単体のときよりも10%しか低下せず、SS/SS
の座屈荷重よりも、Mn/Mnの座屈荷重に接近してい
るという事実はきわめて興味深い結果である。座屈現象
のような不安定変形の場合には、設計上、比較的大きな
安全係数を設定するのが普通なので、この程度の値であ
れば、実用上は、複合構造体の自由突出板は、接合され
る相手部材の材質にはあまり依存せず、その板部材の材
質の有する座屈強度を保つと考えることができる。
造体の終局強度について、図6、7を参照して説明す
る。図6は、上記の局部座屈の解析例において、ty=
9mm、すなわち、幅厚比R0S=0.88として、図1
の点Qx、Qyにおけるそれぞれの板部材のx方向変位と
それぞれの部材に生じる平均応力σmの関係を示したも
のである。
平均応力σmの増大にしたがって、ほぼ比例してx方向
変位が増大し、ほぼMn鋼の降伏応力に達して最高荷重
となり、終局状態に至る。SS/SSの場合もほぼ同様
だが、終局状態に至るまでの最高荷重を保持する変位の
範囲がやや長い点が異なる。
としては、SS400が最初に降伏し、次いでMn鋼が
降伏することにより、終局状態に至る。相互の影響は、
Mn鋼においては、SS400の降伏後に接線剛性がわ
ずかに低下し、最高荷重がわずかに低下する事実として
現れ(Mn/SS(Mn))、SS400においては、
降伏してから保持する平均応力σmの値が、SS/SS
の最高荷重よりもわずかに大きい事実として現れる(M
n/SS(SS))。この理由は、接合面において相手
部材が弾性を保っているか塑性状態にあるかによって、
同質部材の支持条件に比べて、それぞれ剛、柔に働くか
らであると考えられる。しかしながら、その程度は非常
にわずかである。
じで、降伏応力が異なるSM490YとSS400を組
み合わせた複合構造体の例を、図7に示す。材質以外の
条件は、上記の図6と同じである。
言える。弾塑性座屈が進行する領域で、それぞれの材質
の保持する平均応力σmが、同一部材の保持する平均応
力σmに比べて強度の高いSM490Yでは、わずかに
低下し、強度の低いSS400ではわずかに増大するこ
とが一層明確に現れている。
を伴う複合構造体の弾塑性座屈では、降伏応力、ヤング
率に差がある異材質を接合していても、それぞれの板部
材の座屈強度は、同質部材でその複合構造体を構成する
場合の座屈強度とほとんど変わらないと結論することが
できる。
合構造体の設計または既設構造物の強度を補強するため
の補強方法について説明する。なお、構造物の設計は、
実際には種々の要因によって左右されるものであり、以
下の説明は、本発明の設計思想を説明するための例に過
ぎないことは言うまでもない。
の最高負荷荷重を想定し、次に構造物を構成する構造部
材が負担すべき荷重を算出し、その荷重が構造部材の材
質の許容応力以下に収まるように、構造部材の形状や材
質を選択することにより行われている。許容応力は、構
造部材に塑性変形を許すかどうかで異なり、安全率をど
う設定するかによっても変わってくる。近年では、塑性
変形を許す極限設計法が広く行われている。
問題となるのは、座屈挙動に係わるために許容応力の設
定が難しい圧縮荷重の場合である。異材質の複合構造体
に関してその設計手法が確立していないのはすでに述べ
たとおりである。そこで、以下では、圧縮荷重に本発明
を適用した場合について説明する。
わち、座屈許容応力は、鋼構造の場合、例えば道路橋示
方書(『道路橋示方書・同解説』、日本道路協会、「II
鋼橋編」、平成8年、「V耐震設計編」、平成8年、
「SI単位系以降に関する参考資料」、平成10年)に
よる設計方法が知られている。同書の内容を簡単にまと
めると、座屈現象に全体座屈と局部座屈、弾性座屈と弾
塑性座屈があることを考慮している。柱の座屈において
は、オイラー座屈(弾性座屈)を適用する限界を、細長
比(L/r)を用いて、(L/r)0以上と定め、それ
以下の細長比では、局部座屈を考慮しない許容圧縮応力
の上限値を、安全率1.7を考慮してσca o と定めてい
る。(L/r)0、σcaoの値は、材質によって決まって
いる。また、自由突出板の局部座屈では、幅厚比の形状
パラメータである(b/t)(b:板幅、t:板厚)を
用いて、(b/t)0以上では弾性座屈の耐荷力曲線か
ら定まる許容応力を定め、それ以下では、σcaoと定め
ている。(b/t)0は板の材質によって決まってい
る。
t)0以下の寸法を持つ構造部材は、弾塑性座屈を考慮
して、許容応力をσcao以下とする設計が行われてい
る。例えば、鋼構造に用いられる通常の構造部材のほと
んどは、(L/r)が15以下、(b/t)が9.5以
下では、σcaoを採用すべき領域に入る。しかしなが
ら、個々の材質によって、(L/r)0、(b/t)0の
値は異なるので、実際には、さらに広い範囲でσcaoを
許容応力とする設計が行われる。
異種材料を接合した複合構造体に容易に適用できる。以
下に例を挙げ、図8を参照して説明する。図8に示すの
は、本発明に係る複合構造体の設計方法を説明するため
の複合構造体の例である。複合構造体2は、材質M1か
らなる十字断面部材3に、その2つの自由突出板の先端
面に、材質M2からなる平板部材4を溶接により接合し
て形成した複合構造体である。
り、荷重の作用する面が断面3a、4aであるとし、そ
れぞれの断面積はA1、(A2/2)であるとする。ま
た、材質M1、M2の座屈許容応力は、それぞれσa1、σ
a2(ただし、σa1≦σa2)であるとする。さらに従来の
同質部材による設計では、平板部材4の材質M1とし、
断面4aの断面積が(A3/2)必要だったとする。
合構造体の各断面部材は、それぞれの同質部材で作られ
た部材の場合とほぼ同じ応力を負荷できるから、 P=σa1・A1+σa2・A2 ……(1) よって A2=P/σa2−(σa1/σa2)・A1 ……(2) とすればよい。また、平板部材4が材質M1であるとす
ると、 P=σa1・(A1+A3) ……(3) したがって、式(1)、(3)より、 σa1・A1+σa2・A2=σa1・(A1+A3) ……(4) ゆえに、 A2=(σa1/σa2)・A3 ……(5) したがって、式(2)から直接、A2を求めることもで
きるし、すでに、同材質での必要担荷断面積が分かって
いれば、式(5)の計算により、異材質の必要面積が算
出される。
材の種類は2種類としたが、3種類以上としても同様の
ことが言える。この場合、各部材の許容応力をσai、そ
の耐荷面積をAi(ただしnを部材の個数として、i=
1、……、n)とするとき、式(1)に替えて、下記の
ように一般化できる。
の強度が、同材質部材の強度よりわずかに変動すること
を考慮していないが、実際に適用する場合には、その変
動幅を評価して、安全率に反映させればよい。この場
合、一方の材質の強度は低下するが、他方の材質の強度
は増加することをすでに述べているので、安全率を考慮
するとしても、すでに、一般に織り込まれている道路橋
示方書の1.7という値に対して、その理由による安全
率の増加は比較的小さな値になると考えられる。
を強度補強するための補強も容易である。上記と同じ例
で説明する。まず、図8における十字断面部材3がすで
に既設構造物に、死荷重応力σdが発生している状態で
取り付けられており、死荷重を除く補強後の作用荷重を
Pmとする。(例えば、耐震力向上のための荷重目標の
変更値であるとする。)すると、 Pm=(σa1−σd)・A1+(σa1−σd)・A2 +{σa2−(σa1−σd)}・A2 =(σa1−σd)・A1+σa2・A2 ……(7) よって、 A2=(σa1/σa2)・{Pm−(σa1−σd)・A1}/σa1 ……(8) ここで、補強を同材質で行うとすると、σa1=σa2だか
ら、必要面積A3は A3={Pm−(σa1−σd)・A1}/σa1 ……(9) 式(8)、(9)より A2=(σa1/σa2)・A3 が得られ、これは、式(5)と同じである。すなわち、
σa1≦σa2であれば、補強に要する部材断面積、すなわ
ち、部材使用量を比(σa1/σa2)の割合で低減できる
ことを示している。
を示す概略図を示す。鋼材を組み付けて構成された鉛直
上に延びる既設構造物5の端部に、既設構造物5の母材
と強度特性、例えば降伏応力の大きい材質からなる、T
字断面を備えた補強部材6のT字のウェッブを既設構造
物5に溶接して補強した例を示している。
計や補強に、強度特性として降伏応力、ヤング率の異な
る材質を複合させる例を述べたが、設計の目的に応じ
て、種々の材料特性が変更された部材を接合させてもよ
い。例えば、磁気力を駆動力とする交通手段の軌道を保
持する構造部材において、磁界が及ぶ範囲に磁性体が存
在すると、磁気損失が大きくなって、駆動効率が悪化す
る場合があるので、磁界の及ぶ範囲のみに非磁性鋼を利
用することは有意義である。非磁性鋼は非常に高価であ
るから、磁界の及ばない範囲まで非磁性鋼を用いるのは
合理的ではない。しかし、一般には、磁性特性のみが異
なり、強度特性が同一の鋼材が得られることはないか
ら、目的は非磁性鋼の複合構造体であっても、現実的に
は、本発明に係る強度特性の異なる複合構造体としなけ
れば実現できないものである。
いる例を挙げているが、終局状態以前に接合部でのすべ
りや剥離が生じない接合方法ならば、これに限るもので
はない。例えば、接合のための部材を介して十分な接合
強度でボルト締結すること、あるいは接着などが採用で
きる。
に限るものではない。延性材料であって、部材単独で引
張と圧縮の強度を有し、接合部での相対変形に追従し得
る部材であれば、上記解析の接合条件に合致するもので
ある。
化樹脂材料や鉄筋コンクリートとはまったく異なった技
術思想に基づくものである。すなわち、これらは、それ
ぞれの母材(樹脂、骨材)と心材(ガラスなどの強化フ
ィラー、鉄筋)では、材料の性質がまったく異なってお
り、その混合と密着によって強度特性を引き出してい
る。したがって、フィラーや鉄筋においては、高負荷時
には接合部にミクロ的な剥離破壊が起こりその進展が破
壊につながるものである。さらに、これらの複合材で
は、その部分的な強度補強を追加して行うことはできな
いが、本発明に係る複合構造体では、このような補強に
柔軟に対応できる利点を有している。
発明では、強度特性の比較的優れた部材と、強度特性の
比較的劣る部材を接合して、その中間の強度特性が得ら
れることが示されたので、このようにして、強度特性の
比較的劣った部材よりも必ず強度特性の優れた構造体を
構成できるという効果がある。
強度に影響する降伏応力とヤング率の異なる部材を接合
して複合構造体を構成することにより、構造物の終局強
度を向上させることのできる複合構造体を構成できる効
果がある。
低い部材に強度特性値が高い部材を接合して、強度特性
値の低い部材のみからなる構造部材より確実に強度特性
の高い複合構造体を構成できる効果がある。
構成する部材の一つを非磁性材料で構成し、他の部材
を、非磁性材料に限らない部材で構成するので、非磁性
特性が必要な部分にのみ、非磁性材料を用い、それ以外
は、より高強度の部材、あるいは、より安価な部材など
を用いて、合理的な設計とすることができる効果があ
る。
用いて構造物を構成するので、複合構造体の優れた特性
を構造物の全体の中で生かすことができ、また必要な機
能の部材を構造物の適所に配置して、より合理的な構造
物設計ができる効果がある。
度特性の異なる部材断面でそれぞれ負荷することによ
り、弾塑性座屈領域でも、それぞれの部材の持つ座屈強
度を生かすことができるので、座屈強度の不十分な構造
部材の強度を強化できる効果がある。
構成部材と異なる強度特性を持つ補強部材を接合して補
強を行うので、より強度の高い補強部材や構成部材とは
異なる特性を有する部材によって補強を行うことがで
き、よりコンパクトで合理的な補強ができる効果があ
る。
部材と強度特性の異なる強度特性値を有する部材で補強
する場合、構成部材と同材質によって補強する場合に必
要な部材断面積が分かれば、許容応力の比によって必要
な断面積が算出できるので、補強のための計算が容易と
なる。したがって、現場でもすぐ必要な補強部材面積を
知ることができて補強が容易となる効果がある。また、
本設計式が示すところでは、許容応力の比によって必要
な補強断面積が決まるので、許容応力の大きな材質を用
いればよりコンパクトなスペースに補強部材を収めるこ
とができる効果がある。
おいて、強度特性の異なる材質が含まれていても、荷重
方向の各部材の断面積がそれぞれの許容応力まで担荷で
きるとして、圧縮耐荷力を計算できるので、設計が容易
となる効果がある。また解析に裏付けられたこのような
設計手法によって、複合構造体を用いた合理的な設計が
初めて可能となる効果がある。
斜視図である。
析結果を示すグラフである。
析結果を示すグラフである。
結果を示すグラフである。
析結果を示すグラフである。
析結果を示す第2のグラフである。
析結果を示す第3のグラフである。
説明するための他実施の形態を示す斜視図である。
実施の形態を示す説明図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 強度特性がそれぞれ異なる複数の部材を
接合してなることを特徴とする複合構造体。 - 【請求項2】 前記強度特性は、降伏応力又はヤング率
であることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。 - 【請求項3】 二つの前記部材を接合してなり、 一の部材の強度特性値がaで、他の部材の強度特性値が
bである場合に、 その強度特性値cがa<c<b の関係にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の
複合構造体。 - 【請求項4】 前記部材の1つは、非磁性材料からなる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の
複合構造体。 - 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の複
合構造体を用いて構成されたことを特徴とする構造物。 - 【請求項6】 前記複合構造体における接合面と略垂直
な方向に圧縮荷重が負荷されるように、当該複合構造体
が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の構
造物。 - 【請求項7】 構造物を構成する構成部材と異なる強度
特性を持つ補強部材を、前記構成部材に接合することを
特徴とする構造物の補強方法。 - 【請求項8】 前記構成部材の許容応力をσa1、前記補
強部材の許容応力をσa2とし、補強を前記構成部材と同
じ強度特性を有する部材で行う場合の補強断面積を
A1、前記補強部材の補強断面積をA2とする場合、 A2≧(σa1/σa2)・A1 によって、前記補強部材の補強断面積を算出することを
特徴とする請求項7に記載の構造物の補強方法。 - 【請求項9】 請求項1ないし4のいずれかに記載の複
合構造体を用いて構造物を構成する際の設計方法であっ
て、 前記複合構造体の圧縮耐荷力をP、各部材の許容応力を
σai、その耐荷面積をAi(ただしnを部材の個数とし
て、i=1、……、n)とする場合に、 【数1】 によって、前記各部材の圧縮耐荷力を算出することを特
徴とする構造物の設計方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001219856A JP2003027660A (ja) | 2001-07-19 | 2001-07-19 | 複合構造体、構造物、構造物の補強方法、及び構造物の設計方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001219856A JP2003027660A (ja) | 2001-07-19 | 2001-07-19 | 複合構造体、構造物、構造物の補強方法、及び構造物の設計方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003027660A true JP2003027660A (ja) | 2003-01-29 |
Family
ID=19053780
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001219856A Pending JP2003027660A (ja) | 2001-07-19 | 2001-07-19 | 複合構造体、構造物、構造物の補強方法、及び構造物の設計方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003027660A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8511238B2 (en) | 2007-09-21 | 2013-08-20 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steerable truck for a railway car, a railway car, and an articulated car |
-
2001
- 2001-07-19 JP JP2001219856A patent/JP2003027660A/ja active Pending
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US8511238B2 (en) | 2007-09-21 | 2013-08-20 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steerable truck for a railway car, a railway car, and an articulated car |
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