JP2003001448A - レーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインか
ら外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断する
ことができるレーザ加工装置を提供する。 【解決手段】 レーザ加工装置100は、パルス幅が1
μs以下のレーザ光Lを出射するレーザ光源101と、
レーザ光の集光点Pのピークパワー密度が1×108(W
/cm2)以上になるようレーザ光を集光する集光用レンズ
105を選択可能なレンズ選択手段405と、集光点を
加工対象物1の内部に合わせる手段113と、切断予定
ライン5に沿って集光点を移動させる移動手段109、
111と、開口数と改質スポットの寸法との相関関係を
予め記憶しており、選択された開口数で形成される改質
スポットの寸法を選択する手段127と、該改質スポッ
トの寸法を表示する寸法表示手段129とを備える。
ら外れた割れが生じることなく、加工対象物を切断する
ことができるレーザ加工装置を提供する。 【解決手段】 レーザ加工装置100は、パルス幅が1
μs以下のレーザ光Lを出射するレーザ光源101と、
レーザ光の集光点Pのピークパワー密度が1×108(W
/cm2)以上になるようレーザ光を集光する集光用レンズ
105を選択可能なレンズ選択手段405と、集光点を
加工対象物1の内部に合わせる手段113と、切断予定
ライン5に沿って集光点を移動させる移動手段109、
111と、開口数と改質スポットの寸法との相関関係を
予め記憶しており、選択された開口数で形成される改質
スポットの寸法を選択する手段127と、該改質スポッ
トの寸法を表示する寸法表示手段129とを備える。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体材料基板、
圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用
されるレーザ加工装置に関する。 【0002】 【従来の技術】レーザ応用の一つに切断があり、レーザ
による一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウ
ェハやガラス基板のような加工対象物の切断する箇所
に、加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射し、レ
ーザ光の吸収により切断する箇所において加工対象物の
表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物
を切断する。しかし、この方法では加工対象物の表面の
うち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よっ
て、加工対象物が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの
表面に形成された半導体素子のうち、上記領域周辺に位
置する半導体素子が溶融する恐れがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】加工対象物の表面の溶
融を防止する方法として、例えば、特開2000-21
9528号公報や特開2000-15467号公報に開
示されたレーザによる切断方法がある。これらの公報の
切断方法では、加工対象物の切断する箇所をレーザ光に
より加熱し、そして加工対象物を冷却することにより、
加工対象物の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて加工対
象物を切断する。 【0004】しかし、これらの公報の切断方法では、加
工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面
に、切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射してい
ない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生するこ
とがある。よって、これらの切断方法では精密切断をす
ることができない。特に、加工対象物が半導体ウェハ、
液晶表示装置が形成されたガラス基板、電極パターンが
形成されたガラス基板の場合、この不必要な割れにより
半導体チップ、液晶表示装置、電極パターンが損傷する
ことがある。また、これらの切断方法では平均入力エネ
ルギーが大きいので、半導体チップ等に与える熱的ダメ
ージも大きい。 【0005】本発明の目的は、加工対象物の表面に不必
要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しな
いレーザ加工装置を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明に係るレーザ加工
装置は、パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射
するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたパルスレ
ーザ光の集光点のピークパワー密度が1×108(W/c
m2)以上になるようにパルスレーザ光を集光する集光用
レンズを複数含みかつ複数の集光用レンズを選択可能な
レンズ選択手段とを備え、複数の集光用レンズを含む光
学系はそれぞれ開口数が異なり、レンズ選択手段で選択
された集光用レンズにより集光されたパルスレーザ光の
集光点を加工対象物の内部に合わせる手段と、加工対象
物の切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を
相対的に移動させる移動手段とを備え、加工対象物の内
部に集光点を合わせて1パルスのパルスレーザ光を加工
対象物に照射することにより加工対象物の内部に1つの
改質スポットが形成され、複数の集光用レンズを含む光
学系の開口数の大きさと改質スポットの寸法との相関関
係を予め記憶した相関関係記憶手段と、選択された集光
用レンズを含む光学系の開口数の大きさに基づいてこの
大きさの開口数で形成される改質スポットの寸法を相関
関係記憶手段から選択する寸法選択手段と、寸法選択手
段により選択された改質スポットの寸法を表示する寸法
表示手段と、を備えることを特徴とする。 【0007】本発明に係るレーザ加工装置によれば、パ
ルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせ、か
つ集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/c
m2)以上であってパルス幅が1μs以下の条件で、加工
対象物にパルスレーザ光を照射することができる。よっ
て、本発明に係るレーザ加工装置を用いてパルスレーザ
光を加工対象物に照射すると、加工対象物の内部に多光
子吸収という現象が生じ、これにより加工対象物の内部
に改質領域が形成される。加工対象物の切断する箇所に
何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で
割って切断することができる。よって、本発明に係るレ
ーザ加工装置を用いて加工された加工対象物は、改質領
域を起点として切断予定ラインに沿って割る又は割れる
ことにより切断することができる。従って、比較的小さ
な力で加工対象物を切断することができるので、加工対
象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを
発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。 【0008】また、本発明に係るレーザ加工装置によれ
ば、加工対象物の内部に局所的に多光子吸収を発生させ
て改質領域を形成している。よって、加工対象物の表面
ではレーザ光がほとんど吸収されないので、加工対象物
の表面が溶融することはない。なお、集光点とはレーザ
光が集光した箇所のことである。切断予定ラインは加工
対象物の表面や内部に実際に引かれた線でもよいし、仮
想の線でもよい。 【0009】本発明者によれば、集光用レンズを含む光
学系の開口数を大きくすると改質スポットを小さく制御
でき、その開口数を小さくすると改質スポットを大きく
制御できることが分かった。改質スポットとは、1パル
スのパルスレーザ光により形成される改質部分であり、
改質スポットが集まることにより改質領域となる。改質
スポットの寸法の制御は加工対象物の切断に影響を及ぼ
す。すなわち、改質スポットが大きすぎると、加工対象
物の切断予定ラインに沿った切断の精度及び切断面の平
坦性が悪くなる。一方、厚みが大きい加工対象物に対し
て改質スポットが極端に小さすぎると加工対象物の切断
が困難となる。本発明に係るレーザ加工装置によれば、
集光用レンズを含む光学系の開口数の大きさを調節する
ことにより改質スポットの寸法の制御をすることができ
る。 【0010】また、選択された集光用レンズを含む光学
系の開口数の大きさにより形成される改質スポットの寸
法をレーザ加工前に知ることができる。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
ついて図面を用いて説明する。本実施形態に係るレーザ
加工装置は、多光子吸収により改質領域を形成してい
る。多光子吸収はレーザ光の強度を非常に大きくした場
合に発生する現象である。まず、多光子吸収について簡
単に説明する。 【0012】材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子
のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よっ
て、材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。しか
し、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きく
するとnhν>EGの条件(n=2,3,4,・・・であ
る)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収とい
う。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光
点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり、例えばピー
クパワー密度が1×108(W/cm2)以上の条件で多光子
吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点における
レーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光
のビームスポット断面積×パルス幅)により求められ
る。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の
集光点の電界強度(W/cm2)で決まる。 【0013】このような多光子吸収を利用する本実施形
態に係るレーザ加工の原理について図1〜図6を用いて
説明する。図1はレーザ加工中の加工対象物1の平面図
であり、図2は図1に示す加工対象物1のII−II線に沿
った断面図であり、図3はレーザ加工後の加工対象物1
の平面図であり、図4は図3に示す加工対象物1のIV−
IV線に沿った断面図であり、図5は図3に示す加工対象
物1のV−V線に沿った断面図であり、図6は切断された
加工対象物1の平面図である。 【0014】図1及び図2に示すように、加工対象物1
の表面3には切断予定ライン5がある。切断予定ライン
5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレ
ーザ加工は、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の
内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照
射して改質領域7を形成する。なお、集光点とはレーザ
光Lが集光した箇所のことである。 【0015】レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って
(すなわち矢印A方向に沿って)相対的に移動させるこ
とにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動さ
せる。これにより、図3〜図5に示すように改質領域7
が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ
形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工
対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物
1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工
対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に
多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よ
って、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど
吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融するこ
とはない。 【0016】加工対象物1の切断において、切断する箇
所に起点があると加工対象物1はその起点から割れるの
で、図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を
切断することができる。よって、加工対象物1の表面3
に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切
断が可能となる。 【0017】なお、改質領域を起点とした加工対象物の
切断は、次の二通りが考えられる。一つは、改質領域形
成後、加工対象物に人為的な力が印加されることによ
り、改質領域を起点として加工対象物が割れ、加工対象
物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物
の厚みが大きい場合の切断である。人為的な力が印加さ
れるとは、例えば、加工対象物の切断予定ラインに沿っ
て加工対象物に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工
対象物に温度差を与えることにより熱応力を発生させた
りすることである。他の一つは、改質領域を形成するこ
とにより、改質領域を起点として加工対象物の断面方向
(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象
物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物
の厚みが小さい場合、改質領域が1つでも可能であり、
加工対象物の厚みが大きい場合、厚さ方向に複数の改質
領域を形成することで可能となる。なお、この自然に割
れる場合も、切断する箇所において、改質領域が形成さ
れていない部分上の表面まで割れが先走ることがなく、
改質部を形成した部分上の表面のみを割断することがで
きるので、割断を制御よくすることができる。近年、シ
リコンウェハ等の半導体ウェハの厚みは薄くなる傾向に
あるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効
である。 【0018】さて、本実施形態において多光子吸収によ
り形成される改質領域として、次の(1)〜(3)があ
る。 【0019】(1)改質領域が一つ又は複数のクラック
を含むクラック領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばガラスやLiTaO3からなる
圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における
電界強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1
μs以下の条件で照射する。このパルス幅の大きさは、
多光子吸収を生じさせつつ加工対象物表面に余計なダメ
ージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域
を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内
部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生す
る。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみ
が誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領
域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1
×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns〜2
00nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領
域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文
集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固
体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」
に記載されている。 【0020】本発明者は、電界強度とクラックの大きさ
との関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りで
ある。 【0021】(A)加工対象物:パイレックス(登録商
標)ガラス(厚さ700μm) (B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ 波長:1064nm レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2 発振形態:Qスイッチパルス 繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns 出力:出力<1mJ/パルス レーザ光品質:TEM00 偏光特性:直線偏光 (C)集光用レンズ レーザ光波長に対する透過率:60パーセント (D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:10
0mm/秒 なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ
光の波長程度まで集光可能を意味する。 【0022】図7は上記実験の結果を示すグラフであ
る。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルス
レーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表され
る。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部
に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大き
さを示している。クラックスポットが集まりクラック領
域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポ
ットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさであ
る。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)
の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合であ
る。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ
(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合
である。ピークパワー密度が1011(W/cm2)程度から
加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピーク
パワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大き
くなることが分かる。 【0023】次に、本実施形態に係るレーザ加工におい
て、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニ
ズムについて図8〜図11を用いて説明する。図8に示
すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内
部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射
して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形
成する。クラック領域9は一つ又は複数のクラックを含
む領域である。図9に示すようにクラック領域9を起点
としてクラックがさらに成長し、図10に示すようにク
ラックが加工対象物1の表面3と裏面21に到達し、図
11に示すように加工対象物1が割れることにより加工
対象物1が切断される。加工対象物の表面と裏面に到達
するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象
物に力が印加されることにより成長する場合もある。 【0024】(2)改質領域が溶融処理領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばシリコンのような半導体
材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界
強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1μs
以下の条件で照射する。これにより加工対象物の内部は
多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱によ
り加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融
処理領域とは一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の
領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なく
ともいずれか一つを意味する。また、溶融処理領域は相
変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもで
きる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構
造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化し
た領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構
造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結
晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び
多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工
対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例
えば非晶質シリコン構造である。なお、電界強度の上限
値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パル
ス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。 【0025】本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融
処理領域が形成されることを実験により確認した。実験
条件は次ぎの通りである。 【0026】(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ
350μm、外径4インチ) (B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ 波長:1064nm レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2 発振形態:Qスイッチパルス 繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns 出力:20μJ/パルス レーザ光品質:TEM00 偏光特性:直線偏光 (C)集光用レンズ 倍率:50倍 NA:0.55 レーザ光波長に対する透過率:60パーセント (D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:10
0mm/秒 図12は上記条件でのレーザ加工により切断されたシリ
コンウェハの一部における断面の写真を表した図であ
る。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形
成されている。なお、上記条件により形成された溶融処
理領域の厚さ方向の大きさは100μm程度である。 【0027】溶融処理領域13が多光子吸収により形成
されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシ
リコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフであ
る。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの
反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シ
リコン基板の厚みtが50μm、100μm、200μm、
500μm、1000μmの各々について上記関係を示し
た。 【0028】例えば、Nd:YAGレーザの波長である106
4nmにおいて、シリコン基板の厚みが500μm以下の
場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透
過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11
の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融
処理領域はシリコンウェハの中心付近、つまり表面から
175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、
厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90
%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で
吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。この
ことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収さ
れて、溶融処理領域がシリコンウェハ11の内部に形成
(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形
成)されたものではなく、溶融処理領域が多光子吸収に
より形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融
処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要
第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の
「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」
に記載されている。 【0029】なお、シリコンウェハは、溶融処理領域を
起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割
れがシリコンウェハの表面と裏面に到達することによ
り、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面
に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、加
工対象物に力が印加されることにより成長する場合もあ
る。なお、溶融処理領域からシリコンウェハの表面と裏
面に割れが自然に成長するのは、一旦溶融後再固化した
状態となった領域から割れが成長する場合、溶融状態の
領域から割れが成長する場合及び溶融から再固化する状
態の領域から割れが成長する場合のうち少なくともいず
れか一つである。いずれの場合も切断後の切断面は図1
2に示すように内部にのみ溶融処理領域が形成される。
加工対象物の内部に溶融処理領域を形成する場合、割断
時、切断予定ラインから外れた不必要な割れが生じにく
いので、割断制御が容易となる。 【0030】(3)改質領域が屈折率変化領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点
を合わせて、集光点における電界強度が1×108(W/c
m2)以上でかつパルス幅が1ns以下の条件で照射する。
パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の
内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱
エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン
価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が
誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上
限値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パ
ルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに
好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、
例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997
年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒
レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に
記載されている。 【0031】以上のように本実施形態によれば、改質領
域を多光子吸収により形成している。そして、本実施形
態は、パルスレーザ光のパワーの大きさや集光用レンズ
を含む光学系の開口数の大きさを調節することにより、
改質スポットの寸法を制御している。改質スポットと
は、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パ
ルスのレーザ照射)で形成される改質部分であり、改質
スポットが集まることにより改質領域となる。改質スポ
ットの寸法制御の必要性についてクラックスポットを例
に説明する。 【0032】クラックスポットが大きすぎると、切断予
定ラインに沿った加工対象物の切断の精度が下がり、ま
た、切断面の平坦性が悪くなる。これについて図14〜
図19を用いて説明する。図14は本実施形態に係るレ
ーザ加工方法を用いてクラックスポットを比較的大きく
形成した場合の加工対象物1の平面図である。図15は
図14の切断予定ライン5上のXV-XVに沿って切断した
断面図である。図16、図17、図18はそれぞれ図1
4の切断予定ライン5と直交するXVI-XVI、XVII-XVII、
XVIII-XVIIIに沿って切断した断面図である。これらの
図から分かるように、クラックスポット90が大きすぎ
ると、クラックスポット90の大きさのばらつきも大き
くなる。よって、図19に示すように切断予定ライン5
に沿った加工対象物1の切断の精度が悪くなる。また、
加工対象物1の切断面43の凹凸が大きくなるので切断
面43の平坦性が悪くなる。これに対して、図20に示
すように、本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポット90を比較的小さく(例えば20μm以
下)形成すると、クラックスポット90を均一に形成で
きかつクラックスポット90の切断予定ラインの方向か
らずれた方向の広がりを抑制できる。よって、図21に
示すように切断予定ライン5に沿った加工対象物1の切
断の精度や切断面43の平坦性を向上させることができ
る。 【0033】このようにクラックスポットが大きすぎる
と、切断予定ラインに沿った精密な切断や平坦な切断面
が得られる切断をすることができない。但し、厚みが大
きい加工対象物に対してクラックスポットが極度に小さ
すぎると加工対象物の切断が困難となる。 【0034】本実施形態によればクラックスポットの寸
法を制御できることについて説明する。図7に示すよう
に、ピークパワー密度が同じ場合、集光用レンズの倍率
100、NA0.8の場合のクラックスポットの大きさ
は、集光用レンズの倍率50、NA0.55の場合のクラ
ックスポットの大きさよりも小さくなる。ピークパワー
密度は、先程説明したようにレーザ光の1パルス当たり
のエネルギー、つまりパルスレーザ光のパワーと比例す
るので、ピークパワー密度が同じとはレーザ光のパワー
が同じであることを意味する。このように、レーザ光の
パワーが同じでかつビームスポット断面積が同じ場合、
集光用レンズの開口数が大きく(小さく)なるとクラッ
クスポットの寸法を小さく(大きく)制御できる。 【0035】また、集光用レンズの開口数が同じでも、
レーザ光のパワー(ピークパワー密度)を小さくすると
クラックスポットの寸法を小さく制御でき、レーザ光の
パワーを大きくするとクラックスポットの寸法を大きく
制御できる。 【0036】よって、図7に示すグラフから分かるよう
に、集光用レンズの開口数を大きくすることやレーザ光
のパワーを小さくすることによりクラックスポットの寸
法を小さく制御できる。逆に、集光用レンズの開口数を
小さくすることやレーザ光のパワーを大きくすることに
よりクラックスポットの寸法を大きく制御できる。 【0037】クラックスポットの寸法制御について、図
面を用いてさらに説明する。図22に示す例は、所定の
開口数の集光用レンズを用いてパルスレーザ光Lが内部
に集光されている加工対象物1の断面図である。領域4
1は、このレーザ照射により多光子吸収を起こさせるし
きい値以上の電界強度になった領域である。図23は、
このレーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成さ
れたクラックスポット90の断面図である。一方、図2
4に示す例は、図22に示す例より大きい開口数の集光
用レンズを用いてパルスレーザ光Lが内部に集光されて
いる加工対象物1の断面図である。図25は、このレー
ザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成されたクラ
ックスポット90の断面図である。クラックスポット9
0の高さhは領域41の加工対象物1の厚さ方向におけ
る寸法に依存し、クラックスポット90の幅wは領域4
1の加工対象物1の厚さ方向と直交する方向の寸法に依
存する。つまり、領域41のこれらの寸法を小さくする
とクラックスポット90の高さhや幅wを小さくでき、こ
れらの寸法を大きくするとクラックスポット90の高さ
hや幅wを大きくできる。図23と図25を比較すれば明
らかなように、レーザ光のパワーが同じ場合、集光用レ
ンズの開口数を大きく(小さく)することにより、クラ
ックスポット90の高さhや幅wの寸法を小さく(大き
く)制御できる。 【0038】さらに、図26に示す例は、図22に示す
例より小さいパワーのパルスレーザ光Lが内部に集光さ
れている加工対象物1の断面図である。図26に示す例
ではレーザ光のパワーを小さくしているので領域41の
面積は図22に示す領域41よりも小さくなる。図27
は、このレーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形
成されたクラックスポット90の断面図である。図23
と図27の比較から明らかなように、集光用レンズの開
口数が同じ場合、レーザ光のパワーを小さく(大きく)
するとクラックスポット90の高さhや幅wの寸法を小さ
く(大きく)制御できる。 【0039】さらに、図28に示す例は、図24に示す
例より小さいパワーのパルスレーザ光Lが内部に集光さ
れている加工対象物1の断面図である。図29は、この
レーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成された
クラックスポット90の断面図である。図23と図29
の比較から分かるように、集光用レンズの開口数を大き
く(小さく)しかつレーザ光のパワーを小さく(大き
く)すると、クラックスポット90の高さhや幅wの寸法
を小さく(大きく)制御できる。 【0040】ところで、クラックスポットの形成可能な
電界強度のしきい値以上の電界強度となっている領域を
示す領域41が集光点P及びその付近に限定されている
理由は以下の通りである。本実施形態は、高ビーム品質
のレーザ光源を利用しているため、レーザ光の集光性が
高くかつレーザ光の波長程度まで集光可能となる。この
ため、このレーザ光のビームプロファイルはガウシアン
分布となるので、電界強度はビームの中心が最も強く、
中心から距離が大きくなるに従って強度が低下していく
ような分布となる。このレーザ光が実際に集光用レンズ
によって集光されていく過程においても基本的にはガウ
シアン分布の状態で集光されていく。よって、領域41
は集光点P及びその付近に限定される。 【0041】以上のように本実施形態によればクラック
スポットの寸法を制御できる。クラックスポットの寸法
は、精密な切断の程度の要求、切断面における平坦性の
程度の要求、加工対象物の厚みの大きさを考慮して決め
る。また、クラックスポットの寸法は加工対象物の材質
を考慮して決定することもできる。本実施形態によれ
ば、改質スポットの寸法を制御できるので、厚みが比較
的小さい加工対象物については改質スポットを小さくす
ることにより、切断予定ラインに沿って精密に切断がで
き、かつ、切断面の平坦性がよい切断をすることが可能
となる。また、改質スポットを大きくすることにより、
厚みが比較的大きい加工対象物でも切断が可能となる。 【0042】また、例えば加工対象物の結晶方位が原因
により、加工対象物に切断が容易な方向と切断が困難な
方向とがある場合がある。このような加工対象物の切断
において、例えば図20及び図21に示すように、切断
が容易な方向に形成するクラックスポット90の寸法を
小さくする。一方、図21及び図30に示すように、切
断予定ライン5と直交する切断予定ラインの方向が切断
困難な方向の場合、この方向に形成するクラックスポッ
ト90の寸法を大きくする。これにより、切断が容易な
方向では平坦な切断面を得ることができ、また切断が困
難な方向でも切断が可能となる。 【0043】改質スポットの寸法の制御ができることに
ついて、クラックスポットの場合で説明したが、溶融処
理スポットや屈折率変化スポットでも同様のことが言え
る。パルスレーザ光のパワーは例えば1パルス当たりの
エネルギー(J)で表すこともできるし、1パルス当た
りのエネルギーにレーザ光の周波数を乗じた値である平
均出力(W)で表すこともできる。 【0044】次に、本実施形態の具体例を説明する。 【0045】[第1例]本実施形態の第1例に係るレー
ザ加工装置について説明する。図31はこのレーザ加工
装置400の概略構成図である。レーザ加工装置400
は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ
光Lのパワーやパルス幅等を調節するためにレーザ光源
101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光
源101から出射されたレーザ光Lのパワーを調節する
パワー調節部401と、を備える。 【0046】パワー調節部401は、例えば、複数のND
(neutral density)フィルタと、各NDフィルタをレーザ
光Lの光軸に対して垂直な位置に移動させたりレーザ光L
の光路外に移動させたりする機構と、を備える。NDフィ
ルタは、エネルギーの相対分光分布を変えることなく光
の強さを減らすフィルタである。複数のNDフィルタはそ
れぞれ減光率が異なる。パワー調節部401は、複数の
NDフィルタの何れか又はこれらを組み合わせることによ
り、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lのパワ
ーを調節する。なお、複数のNDフィルタの減光率を同じ
とし、パワー調節部401がレーザ光Lの光軸に対して
垂直な位置に移動させるNDフィルタの個数を変えること
により、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lの
パワーを調節することもできる。 【0047】なお、パワー調節部401は、直線偏光の
レーザ光Lの光軸に対して垂直に配置された偏光フィル
タと、偏光フィルタをレーザ光Lの光軸を中心に所望の
角度だけ回転させる機構と、を備えたものでもよい。パ
ワー調節部401において光軸を中心に所望の角度だけ
偏光フィルタを回転させることにより、レーザ光源10
1から出射されたレーザ光Lのパワーを調節する。 【0048】なお、レーザ光源101の励起用半導体レ
ーザの駆動電流を駆動電流制御手段の一例であるレーザ
光源制御部102で制御することにより、レーザ光源1
01から出射されるレーザ光Lのパワーを調節すること
もできる。よって、レーザ光Lのパワーは、パワー調節
部401及びレーザ光源制御部102の少なくともいず
れか一方により調節することができる。レーザ光源制御
部102によるレーザ光Lのパワーの調節だけで改質領
域の寸法を所望値にできるのであればパワー調節部40
1は不要である。以上説明したパワーの調節は、レーザ
加工装置の操作者が後で説明する全体制御部127にキ
ーボード等を用いてパワーの大きさを入力することによ
りなされる。 【0049】レーザ加工装置400はさらに、パワー調
節部401でパワーが調節されたレーザ光Lが入射しか
つレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置さ
れたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミ
ラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レ
ンズを複数含むレンズ選択機構403と、レンズ選択機
構403を制御するレンズ選択機構制御部405と、を
備える。 【0050】レンズ選択機構403は集光用レンズ10
5a、105b、105cと、これらを支持する支持板
407と、を備える。集光用レンズ105aを含む光学
系の開口数、集光用レンズ105bを含む光学系の開口
数、集光用レンズ105cを含む光学系の開口数はそれ
ぞれ異なる。レンズ選択機構403は、レンズ選択機構
制御部405からの信号に基づいて支持板407を回転
させることにより、集光用レンズ105a、105b、
105cの中から所望の集光用レンズをレーザ光Lの光
軸上に配置させる。すなわち、レンズ選択機構403は
レボルバー式である。 【0051】なお、レンズ選択機構403に取付けられ
る集光用レンズの数は3個に限定されず、それ以外の数
でもよい。レーザ加工装置の操作者が後で説明する全体
制御部127にキーボード等を用いて開口数の大きさ又
は集光用レンズ105a、105b、105cのうちど
れかを選択する指示を入力することにより、集光用レン
ズの選択、つまり開口数の選択がなされる。 【0052】レーザ加工装置400はさらに、集光用レ
ンズ105a〜105cのうちレーザ光Lの光軸上に配
置された集光用レンズで集光されたレーザ光Lが照射さ
れる加工対象物1が載置される載置台107と、載置台
107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109
と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動さ
せるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及
びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ス
テージ113と、これら三つのステージ109,111,
113の移動を制御するステージ制御部115と、を備
える。 【0053】Z軸方向は加工対象物1の表面3と直交す
る方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦
点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸
方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレ
ーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また、この
集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸
ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させ
ることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が
移動手段の一例となる。 【0054】レーザ光源101はパルスレーザ光を発生
するNd:YAGレーザである。レーザ光源101に用いるこ
とができるレーザとして、この他、Nd:YVO4レーザやNd:
YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。クラック
領域や溶融処理領域を形成する場合、Nd:YAGレーザ、N
d:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザを用いるのが好適である。
屈折率変化領域を形成する場合、チタンサファイアレー
ザを用いるのが好適である。 【0055】第1例では加工対象物1の加工にパルスレ
ーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることが
できるなら連続波レーザ光でもよい。集光用レンズ10
5a〜105cは集光手段の一例である。Z軸ステージ
113はレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせ
る手段の一例である。集光用レンズ105a〜105c
をZ軸方向に移動させることによっても、レーザ光の集
光点を加工対象物の内部に合わせることができる。 【0056】レーザ加工装置400はさらに、載置台1
07に載置された加工対象物1を可視光線により照明す
るために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイ
クロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ
光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119
と、を備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ
105との間にダイクロイックミラー103が配置され
ている。ビームスプリッタ119は、可視光線の約半分
を反射し残りの半分を透過する機能を有しかつ可視光線
の光軸の向きを90°変えるように配置されている。観
察用光源117から発生した可視光線はビームスプリッ
タ119で約半分が反射され、この反射された可視光線
がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105
を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表
面3を照明する。 【0057】レーザ加工装置400はさらに、ビームス
プリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光
用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子12
1及び結像レンズ123を備える。撮像素子121とし
ては例えばCCD(charge-coupled device)カメラがある。
切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の
反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー
103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ
123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像デ
ータとなる。 【0058】レーザ加工装置400はさらに、撮像素子
121から出力された撮像データが入力される撮像デー
タ処理部125と、レーザ加工装置400全体を制御す
る全体制御部127と、モニタ129と、を備える。撮
像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用
光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせ
るための焦点データを演算する。この焦点データを基に
してステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動
制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うよう
にする。よって、撮像データ処理部125はオートフォ
ーカスユニットとして機能する。また、撮像データ処理
部125は、撮像データを基にして表面3の拡大画像等
の画像データを演算する。この画像データは全体制御部
127に送られ、全体制御部で各種処理がなされ、モニ
タ129に送られる。これにより、モニタ129に拡大
画像等が表示される。 【0059】全体制御部127には、ステージ制御部1
15からのデータ、撮像データ処理部125からの画像
データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光
源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部
115を制御することにより、レーザ加工装置400全
体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュー
タユニットとして機能する。また、全体制御部127は
パワー調節部401と電気的に接続されている。図31
はこの図示を省略している。全体制御部127にパワー
の大きさが入力されることにより、全体制御部127は
パワー調節部401を制御し、これによりパワーが調節
される。 【0060】図32は全体制御部127の一例の一部分
を示すブロック図である。全体制御部127は、寸法選
択部411、相関関係記憶部413及び画像作成部41
5を備える。寸法選択部411にはレーザ加工装置の操
作者がキーボード等により、パルスレーザ光のパワーの
大きさや集光用レンズを含む光学系の開口数の大きさが
入力される。この例においては、開口数の大きさを直接
入力する代わりに集光用レンズ105a、105b、10
5cのいずれかを選択する入力にしてもよい。この場
合、全体制御部127に集光用レンズ105a、105
b、105c、それぞれの開口数を予め登録しておき、選
択された集光用レンズを含む光学系の開口数のデータが
自動的に寸法選択部411に入力される。 【0061】相関関係記憶部413には、パルスレーザ
光のパワーの大きさ及び開口数の大きさの組と改質スポ
ットの寸法との相関関係が予め記憶されている。図33
は、この相関関係を示すテーブルの一例である。この例
では、開口数の欄には集光用レンズ105a、105b、
105cの各々について、それらを含む光学系の開口数
が登録される。パワーの欄にはパワー調節部401によ
り調節されるパルスレーザ光のパワーの大きさが登録さ
れる。寸法の欄には、対応する組のパワーと開口数との
組み合わせにより形成される改質スポットの寸法が登録
される。例えば、パワーが1.24×1011(W/cm2)
で、開口数が0.55のときに形成される改質スポット
の寸法は120μmである。この相関関係のデータは、
例えば、レーザ加工前に図22〜図29で説明した実験
をすることにより得ることができる。 【0062】寸法選択部411にパワーの大きさ及び開
口数の大きさが入力されることにより、寸法選択部41
1は相関関係記憶部413からこれらの大きさと同じ値
の組を選択し、その組に対応する寸法のデータをモニタ
129に送る。これにより、モニタ129には入力され
たパワーの大きさ及び開口数の大きさのもとで形成され
る改質スポットの寸法が表示される。これらの大きさと
同じ値の組がない場合は、最も近い値の組に対応する寸
法データがモニタ129に送られる。 【0063】寸法選択部411で選択された組に対応す
る寸法のデータは、寸法選択部411から画像作成部4
15に送られる。画像作成部415は、この寸法のデー
タを基にしてこの寸法の改質スポットの画像データを作
成し、モニタ129に送る。これにより、モニタ129
には改質スポットの画像も表示される。よって、レーザ
加工前に改質スポットの寸法や改質スポットの形状を知
ることができる。 【0064】パワーの大きさを固定し、開口数の大きさ
を可変とすることもできる。この場合のテーブルは図3
4に示すようになる。例えば、パワーを1.49×10
11(W/cm2)と固定し開口数が0.55のときに形成さ
れる改質スポットの寸法は150μmである。また、開
口数の大きさを固定し、パワーの大きさを可変とするこ
ともできる。この場合のテーブルは図35に示すように
なる。例えば、開口数を0.8と固定しパワーが1.1
9×1011(W/cm2)のときに形成される改質スポット
の寸法は30μmである。 【0065】次に、図31及び図36を用いて、本実施
形態の第1例に係るレーザ加工方法を説明する。図36
は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャー
トである。加工対象物1はシリコンウェハである。 【0066】まず、加工対象物1の光吸収特性を図示し
ない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づ
いて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少な
い波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定
する(S101)。次に、加工対象物1の厚さを測定す
る。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にし
て、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S10
3)。これは、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内
部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置す
るレーザ光Lの集光点を基準とした加工対象物1のZ軸方
向の移動量である。この移動量を全体制御部127に入
力される。 【0067】加工対象物1をレーザ加工装置400の載
置台107に載置する。そして、観察用光源117から
可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S10
5)。照明された切断予定ライン5を含む加工対象物1
の表面3を撮像素子121により撮像する。この撮像デ
ータは撮像データ処理部125に送られる。この撮像デ
ータに基づいて撮像データ処理部125は観察用光源1
17の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点デー
タを演算する(S107)。 【0068】この焦点データはステージ制御部115に
送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを
基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S
109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦
点が表面3に位置する。なお、撮像データ処理部125
は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工
対象物1の表面3の拡大画像データを演算する。この拡
大画像データは全体制御部127を介してモニタ129
に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5
付近の拡大画像が表示される。 【0069】全体制御部127には予めステップS10
3で決定された移動量データが入力されており、この移
動量データがステージ制御部115に送られる。ステー
ジ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ
光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸
ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動さ
せる(S111)。 【0070】次に、上記で説明したようにパワー及び開
口数の大きさを全体制御部127に入力する。入力され
たパワーのデータに基づいて、レーザ光Lのパワーはパ
ワー調節部401により調節される。入力された開口数
のデータに基づいて、開口数はレンズ選択機構制御部4
05を介してレンズ選択機構403が集光用レンズを選
択することにより調節される。また、これらのデータは
全体制御部127の寸法選択部411(図32)に入力
される。これにより、1パルスのレーザ光Lの照射によ
り加工対象物1の内部に形成される溶融処理スポットの
寸法及び溶融処理スポットの形状がモニタ129に表示
される(S112)。 【0071】次に、レーザ光源101からレーザ光Lを
発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断
予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対
象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工
対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ラ
イン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ1
11を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に
沿うように加工対象物1の内部に形成する(S11
3)。そして、加工対象物1を切断予定ライン5に沿っ
て曲げることにより、加工対象物1を切断する(S11
5)。これにより、加工対象物1をシリコンチップに分
割する。 【0072】第1例の効果を説明する。これによれば、
多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部
に集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライ
ン5に照射している。そして、X軸ステージ109やY軸
ステージ111を移動させることにより、集光点Pを切
断予定ライン5に沿って移動させている。これにより、
改質領域(例えばクラック領域、溶融処理領域、屈折率
変化領域)を切断予定ライン5に沿うように加工対象物
1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に
何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で
割って切断することができる。よって、改質領域を起点
として切断予定ライン5に沿って加工対象物1を割るこ
とにより、比較的小さな力で加工対象物1を切断するこ
とができる。これにより、加工対象物1の表面3に切断
予定ライン5から外れた不必要な割れを発生させること
なく加工対象物1を切断することができる。 【0073】また、第1例によれば、加工対象物1に多
光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に
集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライン
5に照射している。よって、パルスレーザ光Lは加工対
象物1を透過し、加工対象物1の表面3ではパルスレー
ザ光Lがほとんど吸収されないので、改質領域形成が原
因で表面3が溶融等のダメージを受けることはない。 【0074】以上説明したように第1例によれば、加工
対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要
な割れや溶融が生じることなく、加工対象物1を切断す
ることができる。よって、加工対象物1が例えば半導体
ウェハの場合、半導体チップに切断予定ラインから外れ
た不必要な割れや溶融が生じることなく、半導体チップ
を半導体ウェハから切り出すことができる。表面に電極
パターンが形成されている加工対象物や、圧電素子ウェ
ハや液晶等の表示装置が形成されたガラス基板のように
表面に電子デバイスが形成されている加工対象物につい
ても同様である。よって、第1例によれば、加工対象物
を切断することにより作製される製品(例えば半導体チ
ップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留
まりを向上させることができる。 【0075】また、第1例によれば、加工対象物1の表
面3の切断予定ライン5は溶融しないので、切断予定ラ
イン5の幅(この幅は、例えば半導体ウェハの場合、半
導体チップとなる領域同士の間隔である。)を小さくで
きる。これにより、一枚の加工対象物1から作製される
製品の数が増え、製品の生産性を向上させることができ
る。 【0076】また、第1例によれば、加工対象物1の切
断加工にレーザ光を用いるので、ダイヤモンドカッタを
用いたダイシングよりも複雑な加工が可能となる。例え
ば、図37に示すように切断予定ライン5が複雑な形状
であっても、第1例によれば切断加工が可能となる。こ
れらの効果は後に説明する例でも同様である。 【0077】[第2例]次に、本実施形態の第2例につい
て第1例との相違を中心に説明する。図38はこのレー
ザ加工装置500の概略構成図である。レーザ加工装置
500の構成要素のうち、図31に示す第1例に係るレ
ーザ加工装置400の構成要素と同一要素については同
一符号を付すことによりその説明を省略する。 【0078】レーザ加工装置500は、パワー調節部4
01とダイクロイックミラー103との間のレーザ光L
の光軸上にビームエキスパンダ501が配置されてい
る。ビームエキスパンダ501は倍率可変であり、ビー
ムエキスパンダ501によりレーザ光Lのビーム径が大
きくなるように調節される。ビームエキスパンダ501
は開口数調節手段の一例である。また、レーザ加工装置
500はレンズ選択機構403の代わりに1つの集光用
レンズ105を備える。 【0079】レーザ加工装置500の動作が第1例のレ
ーザ加工装置の動作と異なる点は、全体制御部127に
入力された開口数の大きさに基づく開口数の調節であ
る。以下、これについて説明する。全体制御部127は
ビームエキスパンダ501と電気的に接続されている。
図38はこの図示を省略している。全体制御部127に
開口数の大きさが入力されることにより、全体制御部1
27はビームエキスパンダ501の倍率を変える制御を
する。これにより、集光用レンズ105に入射するレー
ザ光Lのビーム径の拡大率を調節する。よって、集光用
レンズ105が1つであっても、集光用レンズ105を
含む光学系の開口数を大きくする調節が可能となる。こ
れを図39及び図40を用いて説明する。 【0080】図39は、ビームエキスパンダ501が配
置されていない場合の集光用レンズ105によるレーザ
光Lの集光を示す図である。一方、図40は、ビームエ
キスパンダ501が配置されている場合の集光用レンズ
105によるレーザ光Lの集光を示す図である。図39
及び図40を比較すれば分かるように、ビームエキスパ
ンダ501が配置されていない場合の集光用レンズ10
5を含む光学系の開口数を基準にすると、第2例では開
口数が大きくなるように調節することができる。 【0081】[第3例]次に、本実施形態の第3例につい
てこれまでの例との相違を中心に説明する。図41はこ
のレーザ加工装置600の概略構成図である。レーザ加
工装置600の構成要素のうち、これまでの例に係るレ
ーザ加工装置の構成要素と同一要素については同一符号
を付すことによりその説明を省略する。 【0082】レーザ加工装置600は、ビームエキスパ
ンダ501の代わりに、ダイクロイックミラー103と
集光用レンズ105との間のレーザ光Lの光軸上に虹彩
絞り601が配置されている。虹彩絞り601の開口の
大きさを変えることにより集光用レンズ105の有効径
を調節する。虹彩絞り601は開口数調節手段の一例で
ある。また、レーザ加工装置600は虹彩絞り601の
開口の大きさを変える制御をする虹彩絞り制御部603
を備える。虹彩絞り制御部603は全体制御部127に
より制御される。 【0083】レーザ加工装置600の動作がこれまでの
例のレーザ加工装置の動作と異なる点は、全体制御部1
27に入力された開口数の大きさに基づく開口数の調節
である。レーザ加工装置600は入力された開口数の大
きさに基づいて虹彩絞り601の開口の大きさを変える
ことにより、集光用レンズ105の有効径の縮小する調
節をする。これにより、集光用レンズ105が1つであ
っても、集光用レンズ105を含む光学系の開口数を小
さくなるように調節することができる。これを図42及
び図43を用いて説明する。 【0084】図42は、虹彩絞りが配置されていない場
合の集光用レンズ105によるレーザ光Lの集光を示す
図である。一方、図43は、虹彩絞り601が配置され
ている場合の集光用レンズ105によるレーザ光Lの集
光を示す図である。図42及び図43を比較すれば分か
るように、虹彩絞りが配置されていない場合の集光用レ
ンズ105を含む光学系の開口数を基準にすると、第3
例では開口数が小さくなるように調節することができ
る。 【0085】次に、本実施形態の変形例を説明する。図
44は本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備えられ
る全体制御部127のブロック図である。全体制御部1
27はパワー選択部417及び相関関係記憶部413を
備える。相関関係記憶部413には、図35に示す相関
関係のデータが予め記憶されている。レーザ加工装置の
操作者はキーボード等によりパワー選択部417に改質
スポットの所望の寸法を入力する。改質スポットの寸法
は、加工対象物の厚さや材質等を考慮して決定される。
この入力により、パワー選択部417は相関関係記憶部
413からこの寸法と同じ値の寸法に対応するパワーを
選択し、そのパワーのデータをパワー調節部401に送
る。よって、このパワーの大きさに調節されたレーザ加
工装置でレーザ加工することにより、所望の寸法の改質
スポットを形成することが可能となる。このパワーの大
きさのデータはモニタ129にも送られ、パワーの大き
さが表示される。この例では開口数が固定でパワーが可
変となる。なお、入力された寸法と同じ値の寸法が相関
関係記憶部413に記憶されていない場合、最も近い値
の寸法に対応するパワーのデータがパワー調節部401
及びモニタ129に送られる。これは以下に説明する変
形例でも同様である。 【0086】図45は本実施形態のレーザ加工装置の他
の変形例に備えられる全体制御部127のブロック図で
ある。全体制御部127は開口数選択部419及び相関
関係記憶部413を備える。図44の変形例と異なる点
は、パワーではなく開口数が選択されることである。相
関関係記憶部413には、図34に示すデータが予め記
憶されている。レーザ加工装置の操作者はキーボード等
により開口数選択部419に改質スポットの所望の寸法
を入力する。これにより、開口数選択部419は、相関
関係記憶部413からこの寸法と同じ値の寸法に対応す
る開口数を選択し、その開口数のデータをレンズ選択機
構制御部405、ビームエキスパンダ501又は虹彩絞
り制御部603に送る。よって、この開口数の大きさに
調節されたレーザ加工装置でレーザ加工することによ
り、所望の寸法の改質スポットを形成することが可能と
なる。この開口数の大きさのデータはモニタ129にも
送られ、開口数の大きさが表示される。この例ではパワ
ーが固定で開口数が可変となる。 【0087】図46は本実施形態のレーザ加工装置のさ
らに他の変形例に備えられる全体制御部127のブロッ
ク図である。全体制御部127は組選択部421及び相
関関係記憶部413を備える。図44及び図45の例と
異なる点は、パワー及び開口数の両方が選択されること
である。相関関係記憶部413には、図33のパワー及
び開口数の組と寸法との相関関係のデータが予め記憶さ
れている。レーザ加工装置の操作者はキーボード等によ
り組選択部421に改質スポットの所望の寸法を入力す
る。これにより、組選択部421は、相関関係記憶部4
13からこの寸法と同じ値の寸法に対応するパワー及び
開口数の組を選択する。選択された組のパワーのデータ
はパワー調節部401に送られる。一方、選択された組
の開口数のデータはレンズ選択機構制御部405、ビー
ムエキスパンダ501又は虹彩絞り制御部603に送ら
れる。よって、この組のパワー及び開口数の大きさに調
節されたレーザ加工装置でレーザ加工することにより、
所望の寸法の改質スポットを形成することが可能とな
る。この組のパワー及び開口数の大きさのデータはモニ
タ129にも送られ、パワー及び開口数の大きさが表示
される。 【0088】これらの変形例によれば、改質スポットの
寸法を制御することができる。よって、改質スポットの
寸法を小さくすることにより、加工対象物の切断予定ラ
インに沿って精密に切断でき、また平坦な切断面を得る
ことができる。加工対象物の厚みが大きい場合、改質ス
ポットの寸法を大きくすることにより、加工対象物の切
断が可能となる。 【0089】 【発明の効果】本発明に係るレーザ加工装置によれば、
加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割
れが生じることなく、加工対象物を切断することができ
る。よって、加工対象物を切断することにより作製され
る製品(例えば、半導体チップ、圧電デバイスチップ、
液晶等の表示装置)の歩留まりや生産性を向上させるこ
とができる。 【0090】本発明に係るレーザ加工装置によれば、改
質スポットの寸法を制御できる。このため、切断予定ラ
インに沿って精密に加工対象物を切断でき、また平坦な
切断面を得ることができる。
圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用
されるレーザ加工装置に関する。 【0002】 【従来の技術】レーザ応用の一つに切断があり、レーザ
による一般的な切断は次の通りである。例えば半導体ウ
ェハやガラス基板のような加工対象物の切断する箇所
に、加工対象物が吸収する波長のレーザ光を照射し、レ
ーザ光の吸収により切断する箇所において加工対象物の
表面から裏面に向けて加熱溶融を進行させて加工対象物
を切断する。しかし、この方法では加工対象物の表面の
うち切断する箇所となる領域周辺も溶融される。よっ
て、加工対象物が半導体ウェハの場合、半導体ウェハの
表面に形成された半導体素子のうち、上記領域周辺に位
置する半導体素子が溶融する恐れがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】加工対象物の表面の溶
融を防止する方法として、例えば、特開2000-21
9528号公報や特開2000-15467号公報に開
示されたレーザによる切断方法がある。これらの公報の
切断方法では、加工対象物の切断する箇所をレーザ光に
より加熱し、そして加工対象物を冷却することにより、
加工対象物の切断する箇所に熱衝撃を生じさせて加工対
象物を切断する。 【0004】しかし、これらの公報の切断方法では、加
工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面
に、切断予定ラインから外れた割れやレーザ照射してい
ない先の箇所までの割れ等の不必要な割れが発生するこ
とがある。よって、これらの切断方法では精密切断をす
ることができない。特に、加工対象物が半導体ウェハ、
液晶表示装置が形成されたガラス基板、電極パターンが
形成されたガラス基板の場合、この不必要な割れにより
半導体チップ、液晶表示装置、電極パターンが損傷する
ことがある。また、これらの切断方法では平均入力エネ
ルギーが大きいので、半導体チップ等に与える熱的ダメ
ージも大きい。 【0005】本発明の目的は、加工対象物の表面に不必
要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しな
いレーザ加工装置を提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明に係るレーザ加工
装置は、パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光を出射
するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたパルスレ
ーザ光の集光点のピークパワー密度が1×108(W/c
m2)以上になるようにパルスレーザ光を集光する集光用
レンズを複数含みかつ複数の集光用レンズを選択可能な
レンズ選択手段とを備え、複数の集光用レンズを含む光
学系はそれぞれ開口数が異なり、レンズ選択手段で選択
された集光用レンズにより集光されたパルスレーザ光の
集光点を加工対象物の内部に合わせる手段と、加工対象
物の切断予定ラインに沿ってパルスレーザ光の集光点を
相対的に移動させる移動手段とを備え、加工対象物の内
部に集光点を合わせて1パルスのパルスレーザ光を加工
対象物に照射することにより加工対象物の内部に1つの
改質スポットが形成され、複数の集光用レンズを含む光
学系の開口数の大きさと改質スポットの寸法との相関関
係を予め記憶した相関関係記憶手段と、選択された集光
用レンズを含む光学系の開口数の大きさに基づいてこの
大きさの開口数で形成される改質スポットの寸法を相関
関係記憶手段から選択する寸法選択手段と、寸法選択手
段により選択された改質スポットの寸法を表示する寸法
表示手段と、を備えることを特徴とする。 【0007】本発明に係るレーザ加工装置によれば、パ
ルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせ、か
つ集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/c
m2)以上であってパルス幅が1μs以下の条件で、加工
対象物にパルスレーザ光を照射することができる。よっ
て、本発明に係るレーザ加工装置を用いてパルスレーザ
光を加工対象物に照射すると、加工対象物の内部に多光
子吸収という現象が生じ、これにより加工対象物の内部
に改質領域が形成される。加工対象物の切断する箇所に
何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で
割って切断することができる。よって、本発明に係るレ
ーザ加工装置を用いて加工された加工対象物は、改質領
域を起点として切断予定ラインに沿って割る又は割れる
ことにより切断することができる。従って、比較的小さ
な力で加工対象物を切断することができるので、加工対
象物の表面に切断予定ラインから外れた不必要な割れを
発生させることなく加工対象物の切断が可能となる。 【0008】また、本発明に係るレーザ加工装置によれ
ば、加工対象物の内部に局所的に多光子吸収を発生させ
て改質領域を形成している。よって、加工対象物の表面
ではレーザ光がほとんど吸収されないので、加工対象物
の表面が溶融することはない。なお、集光点とはレーザ
光が集光した箇所のことである。切断予定ラインは加工
対象物の表面や内部に実際に引かれた線でもよいし、仮
想の線でもよい。 【0009】本発明者によれば、集光用レンズを含む光
学系の開口数を大きくすると改質スポットを小さく制御
でき、その開口数を小さくすると改質スポットを大きく
制御できることが分かった。改質スポットとは、1パル
スのパルスレーザ光により形成される改質部分であり、
改質スポットが集まることにより改質領域となる。改質
スポットの寸法の制御は加工対象物の切断に影響を及ぼ
す。すなわち、改質スポットが大きすぎると、加工対象
物の切断予定ラインに沿った切断の精度及び切断面の平
坦性が悪くなる。一方、厚みが大きい加工対象物に対し
て改質スポットが極端に小さすぎると加工対象物の切断
が困難となる。本発明に係るレーザ加工装置によれば、
集光用レンズを含む光学系の開口数の大きさを調節する
ことにより改質スポットの寸法の制御をすることができ
る。 【0010】また、選択された集光用レンズを含む光学
系の開口数の大きさにより形成される改質スポットの寸
法をレーザ加工前に知ることができる。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
ついて図面を用いて説明する。本実施形態に係るレーザ
加工装置は、多光子吸収により改質領域を形成してい
る。多光子吸収はレーザ光の強度を非常に大きくした場
合に発生する現象である。まず、多光子吸収について簡
単に説明する。 【0012】材料の吸収のバンドギャップEGよりも光子
のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よっ
て、材料に吸収が生じる条件はhν>EGである。しか
し、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きく
するとnhν>EGの条件(n=2,3,4,・・・であ
る)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収とい
う。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光
点のピークパワー密度(W/cm2)で決まり、例えばピー
クパワー密度が1×108(W/cm2)以上の条件で多光子
吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点における
レーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光
のビームスポット断面積×パルス幅)により求められ
る。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の
集光点の電界強度(W/cm2)で決まる。 【0013】このような多光子吸収を利用する本実施形
態に係るレーザ加工の原理について図1〜図6を用いて
説明する。図1はレーザ加工中の加工対象物1の平面図
であり、図2は図1に示す加工対象物1のII−II線に沿
った断面図であり、図3はレーザ加工後の加工対象物1
の平面図であり、図4は図3に示す加工対象物1のIV−
IV線に沿った断面図であり、図5は図3に示す加工対象
物1のV−V線に沿った断面図であり、図6は切断された
加工対象物1の平面図である。 【0014】図1及び図2に示すように、加工対象物1
の表面3には切断予定ライン5がある。切断予定ライン
5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレ
ーザ加工は、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の
内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照
射して改質領域7を形成する。なお、集光点とはレーザ
光Lが集光した箇所のことである。 【0015】レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って
(すなわち矢印A方向に沿って)相対的に移動させるこ
とにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動さ
せる。これにより、図3〜図5に示すように改質領域7
が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部にのみ
形成される。本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工
対象物1がレーザ光Lを吸収することにより加工対象物
1を発熱させて改質領域7を形成するのではない。加工
対象物1にレーザ光Lを透過させ加工対象物1の内部に
多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よ
って、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど
吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融するこ
とはない。 【0016】加工対象物1の切断において、切断する箇
所に起点があると加工対象物1はその起点から割れるの
で、図6に示すように比較的小さな力で加工対象物1を
切断することができる。よって、加工対象物1の表面3
に不必要な割れを発生させることなく加工対象物1の切
断が可能となる。 【0017】なお、改質領域を起点とした加工対象物の
切断は、次の二通りが考えられる。一つは、改質領域形
成後、加工対象物に人為的な力が印加されることによ
り、改質領域を起点として加工対象物が割れ、加工対象
物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物
の厚みが大きい場合の切断である。人為的な力が印加さ
れるとは、例えば、加工対象物の切断予定ラインに沿っ
て加工対象物に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工
対象物に温度差を与えることにより熱応力を発生させた
りすることである。他の一つは、改質領域を形成するこ
とにより、改質領域を起点として加工対象物の断面方向
(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象
物が切断される場合である。これは、例えば加工対象物
の厚みが小さい場合、改質領域が1つでも可能であり、
加工対象物の厚みが大きい場合、厚さ方向に複数の改質
領域を形成することで可能となる。なお、この自然に割
れる場合も、切断する箇所において、改質領域が形成さ
れていない部分上の表面まで割れが先走ることがなく、
改質部を形成した部分上の表面のみを割断することがで
きるので、割断を制御よくすることができる。近年、シ
リコンウェハ等の半導体ウェハの厚みは薄くなる傾向に
あるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効
である。 【0018】さて、本実施形態において多光子吸収によ
り形成される改質領域として、次の(1)〜(3)があ
る。 【0019】(1)改質領域が一つ又は複数のクラック
を含むクラック領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばガラスやLiTaO3からなる
圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における
電界強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1
μs以下の条件で照射する。このパルス幅の大きさは、
多光子吸収を生じさせつつ加工対象物表面に余計なダメ
ージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域
を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内
部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生す
る。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみ
が誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領
域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1
×1012(W/cm2)である。パルス幅は例えば1ns〜2
00nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領
域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文
集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固
体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」
に記載されている。 【0020】本発明者は、電界強度とクラックの大きさ
との関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りで
ある。 【0021】(A)加工対象物:パイレックス(登録商
標)ガラス(厚さ700μm) (B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ 波長:1064nm レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2 発振形態:Qスイッチパルス 繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns 出力:出力<1mJ/パルス レーザ光品質:TEM00 偏光特性:直線偏光 (C)集光用レンズ レーザ光波長に対する透過率:60パーセント (D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:10
0mm/秒 なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ
光の波長程度まで集光可能を意味する。 【0022】図7は上記実験の結果を示すグラフであ
る。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルス
レーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表され
る。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部
に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大き
さを示している。クラックスポットが集まりクラック領
域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポ
ットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさであ
る。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)
の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合であ
る。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ
(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合
である。ピークパワー密度が1011(W/cm2)程度から
加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピーク
パワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大き
くなることが分かる。 【0023】次に、本実施形態に係るレーザ加工におい
て、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニ
ズムについて図8〜図11を用いて説明する。図8に示
すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内
部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを加工対象物1に照射
して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形
成する。クラック領域9は一つ又は複数のクラックを含
む領域である。図9に示すようにクラック領域9を起点
としてクラックがさらに成長し、図10に示すようにク
ラックが加工対象物1の表面3と裏面21に到達し、図
11に示すように加工対象物1が割れることにより加工
対象物1が切断される。加工対象物の表面と裏面に到達
するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象
物に力が印加されることにより成長する場合もある。 【0024】(2)改質領域が溶融処理領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばシリコンのような半導体
材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界
強度が1×108(W/cm2)以上でかつパルス幅が1μs
以下の条件で照射する。これにより加工対象物の内部は
多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱によ
り加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融
処理領域とは一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の
領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なく
ともいずれか一つを意味する。また、溶融処理領域は相
変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもで
きる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構
造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化し
た領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構
造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結
晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び
多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工
対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例
えば非晶質シリコン構造である。なお、電界強度の上限
値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パル
ス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。 【0025】本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融
処理領域が形成されることを実験により確認した。実験
条件は次ぎの通りである。 【0026】(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ
350μm、外径4インチ) (B)レーザ 光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ 波長:1064nm レーザ光スポット断面積:3.14×10-8cm2 発振形態:Qスイッチパルス 繰り返し周波数:100kHz パルス幅:30ns 出力:20μJ/パルス レーザ光品質:TEM00 偏光特性:直線偏光 (C)集光用レンズ 倍率:50倍 NA:0.55 レーザ光波長に対する透過率:60パーセント (D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:10
0mm/秒 図12は上記条件でのレーザ加工により切断されたシリ
コンウェハの一部における断面の写真を表した図であ
る。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形
成されている。なお、上記条件により形成された溶融処
理領域の厚さ方向の大きさは100μm程度である。 【0027】溶融処理領域13が多光子吸収により形成
されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシ
リコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフであ
る。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの
反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シ
リコン基板の厚みtが50μm、100μm、200μm、
500μm、1000μmの各々について上記関係を示し
た。 【0028】例えば、Nd:YAGレーザの波長である106
4nmにおいて、シリコン基板の厚みが500μm以下の
場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透
過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11
の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融
処理領域はシリコンウェハの中心付近、つまり表面から
175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、
厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90
%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で
吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。この
ことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収さ
れて、溶融処理領域がシリコンウェハ11の内部に形成
(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形
成)されたものではなく、溶融処理領域が多光子吸収に
より形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融
処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要
第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の
「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」
に記載されている。 【0029】なお、シリコンウェハは、溶融処理領域を
起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割
れがシリコンウェハの表面と裏面に到達することによ
り、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面
に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、加
工対象物に力が印加されることにより成長する場合もあ
る。なお、溶融処理領域からシリコンウェハの表面と裏
面に割れが自然に成長するのは、一旦溶融後再固化した
状態となった領域から割れが成長する場合、溶融状態の
領域から割れが成長する場合及び溶融から再固化する状
態の領域から割れが成長する場合のうち少なくともいず
れか一つである。いずれの場合も切断後の切断面は図1
2に示すように内部にのみ溶融処理領域が形成される。
加工対象物の内部に溶融処理領域を形成する場合、割断
時、切断予定ラインから外れた不必要な割れが生じにく
いので、割断制御が容易となる。 【0030】(3)改質領域が屈折率変化領域の場合 レーザ光を加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点
を合わせて、集光点における電界強度が1×108(W/c
m2)以上でかつパルス幅が1ns以下の条件で照射する。
パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の
内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱
エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン
価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が
誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上
限値としては、例えば1×1012(W/cm2)である。パ
ルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに
好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、
例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997
年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒
レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に
記載されている。 【0031】以上のように本実施形態によれば、改質領
域を多光子吸収により形成している。そして、本実施形
態は、パルスレーザ光のパワーの大きさや集光用レンズ
を含む光学系の開口数の大きさを調節することにより、
改質スポットの寸法を制御している。改質スポットと
は、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パ
ルスのレーザ照射)で形成される改質部分であり、改質
スポットが集まることにより改質領域となる。改質スポ
ットの寸法制御の必要性についてクラックスポットを例
に説明する。 【0032】クラックスポットが大きすぎると、切断予
定ラインに沿った加工対象物の切断の精度が下がり、ま
た、切断面の平坦性が悪くなる。これについて図14〜
図19を用いて説明する。図14は本実施形態に係るレ
ーザ加工方法を用いてクラックスポットを比較的大きく
形成した場合の加工対象物1の平面図である。図15は
図14の切断予定ライン5上のXV-XVに沿って切断した
断面図である。図16、図17、図18はそれぞれ図1
4の切断予定ライン5と直交するXVI-XVI、XVII-XVII、
XVIII-XVIIIに沿って切断した断面図である。これらの
図から分かるように、クラックスポット90が大きすぎ
ると、クラックスポット90の大きさのばらつきも大き
くなる。よって、図19に示すように切断予定ライン5
に沿った加工対象物1の切断の精度が悪くなる。また、
加工対象物1の切断面43の凹凸が大きくなるので切断
面43の平坦性が悪くなる。これに対して、図20に示
すように、本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポット90を比較的小さく(例えば20μm以
下)形成すると、クラックスポット90を均一に形成で
きかつクラックスポット90の切断予定ラインの方向か
らずれた方向の広がりを抑制できる。よって、図21に
示すように切断予定ライン5に沿った加工対象物1の切
断の精度や切断面43の平坦性を向上させることができ
る。 【0033】このようにクラックスポットが大きすぎる
と、切断予定ラインに沿った精密な切断や平坦な切断面
が得られる切断をすることができない。但し、厚みが大
きい加工対象物に対してクラックスポットが極度に小さ
すぎると加工対象物の切断が困難となる。 【0034】本実施形態によればクラックスポットの寸
法を制御できることについて説明する。図7に示すよう
に、ピークパワー密度が同じ場合、集光用レンズの倍率
100、NA0.8の場合のクラックスポットの大きさ
は、集光用レンズの倍率50、NA0.55の場合のクラ
ックスポットの大きさよりも小さくなる。ピークパワー
密度は、先程説明したようにレーザ光の1パルス当たり
のエネルギー、つまりパルスレーザ光のパワーと比例す
るので、ピークパワー密度が同じとはレーザ光のパワー
が同じであることを意味する。このように、レーザ光の
パワーが同じでかつビームスポット断面積が同じ場合、
集光用レンズの開口数が大きく(小さく)なるとクラッ
クスポットの寸法を小さく(大きく)制御できる。 【0035】また、集光用レンズの開口数が同じでも、
レーザ光のパワー(ピークパワー密度)を小さくすると
クラックスポットの寸法を小さく制御でき、レーザ光の
パワーを大きくするとクラックスポットの寸法を大きく
制御できる。 【0036】よって、図7に示すグラフから分かるよう
に、集光用レンズの開口数を大きくすることやレーザ光
のパワーを小さくすることによりクラックスポットの寸
法を小さく制御できる。逆に、集光用レンズの開口数を
小さくすることやレーザ光のパワーを大きくすることに
よりクラックスポットの寸法を大きく制御できる。 【0037】クラックスポットの寸法制御について、図
面を用いてさらに説明する。図22に示す例は、所定の
開口数の集光用レンズを用いてパルスレーザ光Lが内部
に集光されている加工対象物1の断面図である。領域4
1は、このレーザ照射により多光子吸収を起こさせるし
きい値以上の電界強度になった領域である。図23は、
このレーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成さ
れたクラックスポット90の断面図である。一方、図2
4に示す例は、図22に示す例より大きい開口数の集光
用レンズを用いてパルスレーザ光Lが内部に集光されて
いる加工対象物1の断面図である。図25は、このレー
ザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成されたクラ
ックスポット90の断面図である。クラックスポット9
0の高さhは領域41の加工対象物1の厚さ方向におけ
る寸法に依存し、クラックスポット90の幅wは領域4
1の加工対象物1の厚さ方向と直交する方向の寸法に依
存する。つまり、領域41のこれらの寸法を小さくする
とクラックスポット90の高さhや幅wを小さくでき、こ
れらの寸法を大きくするとクラックスポット90の高さ
hや幅wを大きくできる。図23と図25を比較すれば明
らかなように、レーザ光のパワーが同じ場合、集光用レ
ンズの開口数を大きく(小さく)することにより、クラ
ックスポット90の高さhや幅wの寸法を小さく(大き
く)制御できる。 【0038】さらに、図26に示す例は、図22に示す
例より小さいパワーのパルスレーザ光Lが内部に集光さ
れている加工対象物1の断面図である。図26に示す例
ではレーザ光のパワーを小さくしているので領域41の
面積は図22に示す領域41よりも小さくなる。図27
は、このレーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形
成されたクラックスポット90の断面図である。図23
と図27の比較から明らかなように、集光用レンズの開
口数が同じ場合、レーザ光のパワーを小さく(大きく)
するとクラックスポット90の高さhや幅wの寸法を小さ
く(大きく)制御できる。 【0039】さらに、図28に示す例は、図24に示す
例より小さいパワーのパルスレーザ光Lが内部に集光さ
れている加工対象物1の断面図である。図29は、この
レーザ光Lの照射による多光子吸収が原因で形成された
クラックスポット90の断面図である。図23と図29
の比較から分かるように、集光用レンズの開口数を大き
く(小さく)しかつレーザ光のパワーを小さく(大き
く)すると、クラックスポット90の高さhや幅wの寸法
を小さく(大きく)制御できる。 【0040】ところで、クラックスポットの形成可能な
電界強度のしきい値以上の電界強度となっている領域を
示す領域41が集光点P及びその付近に限定されている
理由は以下の通りである。本実施形態は、高ビーム品質
のレーザ光源を利用しているため、レーザ光の集光性が
高くかつレーザ光の波長程度まで集光可能となる。この
ため、このレーザ光のビームプロファイルはガウシアン
分布となるので、電界強度はビームの中心が最も強く、
中心から距離が大きくなるに従って強度が低下していく
ような分布となる。このレーザ光が実際に集光用レンズ
によって集光されていく過程においても基本的にはガウ
シアン分布の状態で集光されていく。よって、領域41
は集光点P及びその付近に限定される。 【0041】以上のように本実施形態によればクラック
スポットの寸法を制御できる。クラックスポットの寸法
は、精密な切断の程度の要求、切断面における平坦性の
程度の要求、加工対象物の厚みの大きさを考慮して決め
る。また、クラックスポットの寸法は加工対象物の材質
を考慮して決定することもできる。本実施形態によれ
ば、改質スポットの寸法を制御できるので、厚みが比較
的小さい加工対象物については改質スポットを小さくす
ることにより、切断予定ラインに沿って精密に切断がで
き、かつ、切断面の平坦性がよい切断をすることが可能
となる。また、改質スポットを大きくすることにより、
厚みが比較的大きい加工対象物でも切断が可能となる。 【0042】また、例えば加工対象物の結晶方位が原因
により、加工対象物に切断が容易な方向と切断が困難な
方向とがある場合がある。このような加工対象物の切断
において、例えば図20及び図21に示すように、切断
が容易な方向に形成するクラックスポット90の寸法を
小さくする。一方、図21及び図30に示すように、切
断予定ライン5と直交する切断予定ラインの方向が切断
困難な方向の場合、この方向に形成するクラックスポッ
ト90の寸法を大きくする。これにより、切断が容易な
方向では平坦な切断面を得ることができ、また切断が困
難な方向でも切断が可能となる。 【0043】改質スポットの寸法の制御ができることに
ついて、クラックスポットの場合で説明したが、溶融処
理スポットや屈折率変化スポットでも同様のことが言え
る。パルスレーザ光のパワーは例えば1パルス当たりの
エネルギー(J)で表すこともできるし、1パルス当た
りのエネルギーにレーザ光の周波数を乗じた値である平
均出力(W)で表すこともできる。 【0044】次に、本実施形態の具体例を説明する。 【0045】[第1例]本実施形態の第1例に係るレー
ザ加工装置について説明する。図31はこのレーザ加工
装置400の概略構成図である。レーザ加工装置400
は、レーザ光Lを発生するレーザ光源101と、レーザ
光Lのパワーやパルス幅等を調節するためにレーザ光源
101を制御するレーザ光源制御部102と、レーザ光
源101から出射されたレーザ光Lのパワーを調節する
パワー調節部401と、を備える。 【0046】パワー調節部401は、例えば、複数のND
(neutral density)フィルタと、各NDフィルタをレーザ
光Lの光軸に対して垂直な位置に移動させたりレーザ光L
の光路外に移動させたりする機構と、を備える。NDフィ
ルタは、エネルギーの相対分光分布を変えることなく光
の強さを減らすフィルタである。複数のNDフィルタはそ
れぞれ減光率が異なる。パワー調節部401は、複数の
NDフィルタの何れか又はこれらを組み合わせることによ
り、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lのパワ
ーを調節する。なお、複数のNDフィルタの減光率を同じ
とし、パワー調節部401がレーザ光Lの光軸に対して
垂直な位置に移動させるNDフィルタの個数を変えること
により、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lの
パワーを調節することもできる。 【0047】なお、パワー調節部401は、直線偏光の
レーザ光Lの光軸に対して垂直に配置された偏光フィル
タと、偏光フィルタをレーザ光Lの光軸を中心に所望の
角度だけ回転させる機構と、を備えたものでもよい。パ
ワー調節部401において光軸を中心に所望の角度だけ
偏光フィルタを回転させることにより、レーザ光源10
1から出射されたレーザ光Lのパワーを調節する。 【0048】なお、レーザ光源101の励起用半導体レ
ーザの駆動電流を駆動電流制御手段の一例であるレーザ
光源制御部102で制御することにより、レーザ光源1
01から出射されるレーザ光Lのパワーを調節すること
もできる。よって、レーザ光Lのパワーは、パワー調節
部401及びレーザ光源制御部102の少なくともいず
れか一方により調節することができる。レーザ光源制御
部102によるレーザ光Lのパワーの調節だけで改質領
域の寸法を所望値にできるのであればパワー調節部40
1は不要である。以上説明したパワーの調節は、レーザ
加工装置の操作者が後で説明する全体制御部127にキ
ーボード等を用いてパワーの大きさを入力することによ
りなされる。 【0049】レーザ加工装置400はさらに、パワー調
節部401でパワーが調節されたレーザ光Lが入射しか
つレーザ光Lの光軸の向きを90°変えるように配置さ
れたダイクロイックミラー103と、ダイクロイックミ
ラー103で反射されたレーザ光Lを集光する集光用レ
ンズを複数含むレンズ選択機構403と、レンズ選択機
構403を制御するレンズ選択機構制御部405と、を
備える。 【0050】レンズ選択機構403は集光用レンズ10
5a、105b、105cと、これらを支持する支持板
407と、を備える。集光用レンズ105aを含む光学
系の開口数、集光用レンズ105bを含む光学系の開口
数、集光用レンズ105cを含む光学系の開口数はそれ
ぞれ異なる。レンズ選択機構403は、レンズ選択機構
制御部405からの信号に基づいて支持板407を回転
させることにより、集光用レンズ105a、105b、
105cの中から所望の集光用レンズをレーザ光Lの光
軸上に配置させる。すなわち、レンズ選択機構403は
レボルバー式である。 【0051】なお、レンズ選択機構403に取付けられ
る集光用レンズの数は3個に限定されず、それ以外の数
でもよい。レーザ加工装置の操作者が後で説明する全体
制御部127にキーボード等を用いて開口数の大きさ又
は集光用レンズ105a、105b、105cのうちど
れかを選択する指示を入力することにより、集光用レン
ズの選択、つまり開口数の選択がなされる。 【0052】レーザ加工装置400はさらに、集光用レ
ンズ105a〜105cのうちレーザ光Lの光軸上に配
置された集光用レンズで集光されたレーザ光Lが照射さ
れる加工対象物1が載置される載置台107と、載置台
107をX軸方向に移動させるためのX軸ステージ109
と、載置台107をX軸方向に直交するY軸方向に移動さ
せるためのY軸ステージ111と、載置台107をX軸及
びY軸方向に直交するZ軸方向に移動させるためのZ軸ス
テージ113と、これら三つのステージ109,111,
113の移動を制御するステージ制御部115と、を備
える。 【0053】Z軸方向は加工対象物1の表面3と直交す
る方向なので、加工対象物1に入射するレーザ光Lの焦
点深度の方向となる。よって、Z軸ステージ113をZ軸
方向に移動させることにより、加工対象物1の内部にレ
ーザ光Lの集光点Pを合わせることができる。また、この
集光点PのX(Y)軸方向の移動は、加工対象物1をX(Y)軸
ステージ109(111)によりX(Y)軸方向に移動させ
ることにより行う。X(Y)軸ステージ109(111)が
移動手段の一例となる。 【0054】レーザ光源101はパルスレーザ光を発生
するNd:YAGレーザである。レーザ光源101に用いるこ
とができるレーザとして、この他、Nd:YVO4レーザやNd:
YLFレーザやチタンサファイアレーザがある。クラック
領域や溶融処理領域を形成する場合、Nd:YAGレーザ、N
d:YVO4レーザ、Nd:YLFレーザを用いるのが好適である。
屈折率変化領域を形成する場合、チタンサファイアレー
ザを用いるのが好適である。 【0055】第1例では加工対象物1の加工にパルスレ
ーザ光を用いているが、多光子吸収を起こさせることが
できるなら連続波レーザ光でもよい。集光用レンズ10
5a〜105cは集光手段の一例である。Z軸ステージ
113はレーザ光の集光点を加工対象物の内部に合わせ
る手段の一例である。集光用レンズ105a〜105c
をZ軸方向に移動させることによっても、レーザ光の集
光点を加工対象物の内部に合わせることができる。 【0056】レーザ加工装置400はさらに、載置台1
07に載置された加工対象物1を可視光線により照明す
るために可視光線を発生する観察用光源117と、ダイ
クロイックミラー103及び集光用レンズ105と同じ
光軸上に配置された可視光用のビームスプリッタ119
と、を備える。ビームスプリッタ119と集光用レンズ
105との間にダイクロイックミラー103が配置され
ている。ビームスプリッタ119は、可視光線の約半分
を反射し残りの半分を透過する機能を有しかつ可視光線
の光軸の向きを90°変えるように配置されている。観
察用光源117から発生した可視光線はビームスプリッ
タ119で約半分が反射され、この反射された可視光線
がダイクロイックミラー103及び集光用レンズ105
を透過し、加工対象物1の切断予定ライン5等を含む表
面3を照明する。 【0057】レーザ加工装置400はさらに、ビームス
プリッタ119、ダイクロイックミラー103及び集光
用レンズ105と同じ光軸上に配置された撮像素子12
1及び結像レンズ123を備える。撮像素子121とし
ては例えばCCD(charge-coupled device)カメラがある。
切断予定ライン5等を含む表面3を照明した可視光線の
反射光は、集光用レンズ105、ダイクロイックミラー
103、ビームスプリッタ119を透過し、結像レンズ
123で結像されて撮像素子121で撮像され、撮像デ
ータとなる。 【0058】レーザ加工装置400はさらに、撮像素子
121から出力された撮像データが入力される撮像デー
タ処理部125と、レーザ加工装置400全体を制御す
る全体制御部127と、モニタ129と、を備える。撮
像データ処理部125は、撮像データを基にして観察用
光源117で発生した可視光の焦点が表面3上に合わせ
るための焦点データを演算する。この焦点データを基に
してステージ制御部115がZ軸ステージ113を移動
制御することにより、可視光の焦点が表面3に合うよう
にする。よって、撮像データ処理部125はオートフォ
ーカスユニットとして機能する。また、撮像データ処理
部125は、撮像データを基にして表面3の拡大画像等
の画像データを演算する。この画像データは全体制御部
127に送られ、全体制御部で各種処理がなされ、モニ
タ129に送られる。これにより、モニタ129に拡大
画像等が表示される。 【0059】全体制御部127には、ステージ制御部1
15からのデータ、撮像データ処理部125からの画像
データ等が入力し、これらのデータも基にしてレーザ光
源制御部102、観察用光源117及びステージ制御部
115を制御することにより、レーザ加工装置400全
体を制御する。よって、全体制御部127はコンピュー
タユニットとして機能する。また、全体制御部127は
パワー調節部401と電気的に接続されている。図31
はこの図示を省略している。全体制御部127にパワー
の大きさが入力されることにより、全体制御部127は
パワー調節部401を制御し、これによりパワーが調節
される。 【0060】図32は全体制御部127の一例の一部分
を示すブロック図である。全体制御部127は、寸法選
択部411、相関関係記憶部413及び画像作成部41
5を備える。寸法選択部411にはレーザ加工装置の操
作者がキーボード等により、パルスレーザ光のパワーの
大きさや集光用レンズを含む光学系の開口数の大きさが
入力される。この例においては、開口数の大きさを直接
入力する代わりに集光用レンズ105a、105b、10
5cのいずれかを選択する入力にしてもよい。この場
合、全体制御部127に集光用レンズ105a、105
b、105c、それぞれの開口数を予め登録しておき、選
択された集光用レンズを含む光学系の開口数のデータが
自動的に寸法選択部411に入力される。 【0061】相関関係記憶部413には、パルスレーザ
光のパワーの大きさ及び開口数の大きさの組と改質スポ
ットの寸法との相関関係が予め記憶されている。図33
は、この相関関係を示すテーブルの一例である。この例
では、開口数の欄には集光用レンズ105a、105b、
105cの各々について、それらを含む光学系の開口数
が登録される。パワーの欄にはパワー調節部401によ
り調節されるパルスレーザ光のパワーの大きさが登録さ
れる。寸法の欄には、対応する組のパワーと開口数との
組み合わせにより形成される改質スポットの寸法が登録
される。例えば、パワーが1.24×1011(W/cm2)
で、開口数が0.55のときに形成される改質スポット
の寸法は120μmである。この相関関係のデータは、
例えば、レーザ加工前に図22〜図29で説明した実験
をすることにより得ることができる。 【0062】寸法選択部411にパワーの大きさ及び開
口数の大きさが入力されることにより、寸法選択部41
1は相関関係記憶部413からこれらの大きさと同じ値
の組を選択し、その組に対応する寸法のデータをモニタ
129に送る。これにより、モニタ129には入力され
たパワーの大きさ及び開口数の大きさのもとで形成され
る改質スポットの寸法が表示される。これらの大きさと
同じ値の組がない場合は、最も近い値の組に対応する寸
法データがモニタ129に送られる。 【0063】寸法選択部411で選択された組に対応す
る寸法のデータは、寸法選択部411から画像作成部4
15に送られる。画像作成部415は、この寸法のデー
タを基にしてこの寸法の改質スポットの画像データを作
成し、モニタ129に送る。これにより、モニタ129
には改質スポットの画像も表示される。よって、レーザ
加工前に改質スポットの寸法や改質スポットの形状を知
ることができる。 【0064】パワーの大きさを固定し、開口数の大きさ
を可変とすることもできる。この場合のテーブルは図3
4に示すようになる。例えば、パワーを1.49×10
11(W/cm2)と固定し開口数が0.55のときに形成さ
れる改質スポットの寸法は150μmである。また、開
口数の大きさを固定し、パワーの大きさを可変とするこ
ともできる。この場合のテーブルは図35に示すように
なる。例えば、開口数を0.8と固定しパワーが1.1
9×1011(W/cm2)のときに形成される改質スポット
の寸法は30μmである。 【0065】次に、図31及び図36を用いて、本実施
形態の第1例に係るレーザ加工方法を説明する。図36
は、このレーザ加工方法を説明するためのフローチャー
トである。加工対象物1はシリコンウェハである。 【0066】まず、加工対象物1の光吸収特性を図示し
ない分光光度計等により測定する。この測定結果に基づ
いて、加工対象物1に対して透明な波長又は吸収の少な
い波長のレーザ光Lを発生するレーザ光源101を選定
する(S101)。次に、加工対象物1の厚さを測定す
る。厚さの測定結果及び加工対象物1の屈折率を基にし
て、加工対象物1のZ軸方向の移動量を決定する(S10
3)。これは、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内
部に位置させるために、加工対象物1の表面3に位置す
るレーザ光Lの集光点を基準とした加工対象物1のZ軸方
向の移動量である。この移動量を全体制御部127に入
力される。 【0067】加工対象物1をレーザ加工装置400の載
置台107に載置する。そして、観察用光源117から
可視光を発生させて加工対象物1を照明する(S10
5)。照明された切断予定ライン5を含む加工対象物1
の表面3を撮像素子121により撮像する。この撮像デ
ータは撮像データ処理部125に送られる。この撮像デ
ータに基づいて撮像データ処理部125は観察用光源1
17の可視光の焦点が表面3に位置するような焦点デー
タを演算する(S107)。 【0068】この焦点データはステージ制御部115に
送られる。ステージ制御部115は、この焦点データを
基にしてZ軸ステージ113をZ軸方向の移動させる(S
109)。これにより、観察用光源117の可視光の焦
点が表面3に位置する。なお、撮像データ処理部125
は撮像データに基づいて、切断予定ライン5を含む加工
対象物1の表面3の拡大画像データを演算する。この拡
大画像データは全体制御部127を介してモニタ129
に送られ、これによりモニタ129に切断予定ライン5
付近の拡大画像が表示される。 【0069】全体制御部127には予めステップS10
3で決定された移動量データが入力されており、この移
動量データがステージ制御部115に送られる。ステー
ジ制御部115はこの移動量データに基づいて、レーザ
光Lの集光点Pが加工対象物1の内部となる位置に、Z軸
ステージ113により加工対象物1をZ軸方向に移動さ
せる(S111)。 【0070】次に、上記で説明したようにパワー及び開
口数の大きさを全体制御部127に入力する。入力され
たパワーのデータに基づいて、レーザ光Lのパワーはパ
ワー調節部401により調節される。入力された開口数
のデータに基づいて、開口数はレンズ選択機構制御部4
05を介してレンズ選択機構403が集光用レンズを選
択することにより調節される。また、これらのデータは
全体制御部127の寸法選択部411(図32)に入力
される。これにより、1パルスのレーザ光Lの照射によ
り加工対象物1の内部に形成される溶融処理スポットの
寸法及び溶融処理スポットの形状がモニタ129に表示
される(S112)。 【0071】次に、レーザ光源101からレーザ光Lを
発生させて、レーザ光Lを加工対象物1の表面3の切断
予定ライン5に照射する。レーザ光Lの集光点Pは加工対
象物1の内部に位置しているので、溶融処理領域は加工
対象物1の内部にのみ形成される。そして、切断予定ラ
イン5に沿うようにX軸ステージ109やY軸ステージ1
11を移動させて、溶融処理領域を切断予定ライン5に
沿うように加工対象物1の内部に形成する(S11
3)。そして、加工対象物1を切断予定ライン5に沿っ
て曲げることにより、加工対象物1を切断する(S11
5)。これにより、加工対象物1をシリコンチップに分
割する。 【0072】第1例の効果を説明する。これによれば、
多光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部
に集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライ
ン5に照射している。そして、X軸ステージ109やY軸
ステージ111を移動させることにより、集光点Pを切
断予定ライン5に沿って移動させている。これにより、
改質領域(例えばクラック領域、溶融処理領域、屈折率
変化領域)を切断予定ライン5に沿うように加工対象物
1の内部に形成している。加工対象物の切断する箇所に
何らかの起点があると、加工対象物を比較的小さな力で
割って切断することができる。よって、改質領域を起点
として切断予定ライン5に沿って加工対象物1を割るこ
とにより、比較的小さな力で加工対象物1を切断するこ
とができる。これにより、加工対象物1の表面3に切断
予定ライン5から外れた不必要な割れを発生させること
なく加工対象物1を切断することができる。 【0073】また、第1例によれば、加工対象物1に多
光子吸収を起こさせる条件でかつ加工対象物1の内部に
集光点Pを合わせて、パルスレーザ光Lを切断予定ライン
5に照射している。よって、パルスレーザ光Lは加工対
象物1を透過し、加工対象物1の表面3ではパルスレー
ザ光Lがほとんど吸収されないので、改質領域形成が原
因で表面3が溶融等のダメージを受けることはない。 【0074】以上説明したように第1例によれば、加工
対象物1の表面3に切断予定ライン5から外れた不必要
な割れや溶融が生じることなく、加工対象物1を切断す
ることができる。よって、加工対象物1が例えば半導体
ウェハの場合、半導体チップに切断予定ラインから外れ
た不必要な割れや溶融が生じることなく、半導体チップ
を半導体ウェハから切り出すことができる。表面に電極
パターンが形成されている加工対象物や、圧電素子ウェ
ハや液晶等の表示装置が形成されたガラス基板のように
表面に電子デバイスが形成されている加工対象物につい
ても同様である。よって、第1例によれば、加工対象物
を切断することにより作製される製品(例えば半導体チ
ップ、圧電デバイスチップ、液晶等の表示装置)の歩留
まりを向上させることができる。 【0075】また、第1例によれば、加工対象物1の表
面3の切断予定ライン5は溶融しないので、切断予定ラ
イン5の幅(この幅は、例えば半導体ウェハの場合、半
導体チップとなる領域同士の間隔である。)を小さくで
きる。これにより、一枚の加工対象物1から作製される
製品の数が増え、製品の生産性を向上させることができ
る。 【0076】また、第1例によれば、加工対象物1の切
断加工にレーザ光を用いるので、ダイヤモンドカッタを
用いたダイシングよりも複雑な加工が可能となる。例え
ば、図37に示すように切断予定ライン5が複雑な形状
であっても、第1例によれば切断加工が可能となる。こ
れらの効果は後に説明する例でも同様である。 【0077】[第2例]次に、本実施形態の第2例につい
て第1例との相違を中心に説明する。図38はこのレー
ザ加工装置500の概略構成図である。レーザ加工装置
500の構成要素のうち、図31に示す第1例に係るレ
ーザ加工装置400の構成要素と同一要素については同
一符号を付すことによりその説明を省略する。 【0078】レーザ加工装置500は、パワー調節部4
01とダイクロイックミラー103との間のレーザ光L
の光軸上にビームエキスパンダ501が配置されてい
る。ビームエキスパンダ501は倍率可変であり、ビー
ムエキスパンダ501によりレーザ光Lのビーム径が大
きくなるように調節される。ビームエキスパンダ501
は開口数調節手段の一例である。また、レーザ加工装置
500はレンズ選択機構403の代わりに1つの集光用
レンズ105を備える。 【0079】レーザ加工装置500の動作が第1例のレ
ーザ加工装置の動作と異なる点は、全体制御部127に
入力された開口数の大きさに基づく開口数の調節であ
る。以下、これについて説明する。全体制御部127は
ビームエキスパンダ501と電気的に接続されている。
図38はこの図示を省略している。全体制御部127に
開口数の大きさが入力されることにより、全体制御部1
27はビームエキスパンダ501の倍率を変える制御を
する。これにより、集光用レンズ105に入射するレー
ザ光Lのビーム径の拡大率を調節する。よって、集光用
レンズ105が1つであっても、集光用レンズ105を
含む光学系の開口数を大きくする調節が可能となる。こ
れを図39及び図40を用いて説明する。 【0080】図39は、ビームエキスパンダ501が配
置されていない場合の集光用レンズ105によるレーザ
光Lの集光を示す図である。一方、図40は、ビームエ
キスパンダ501が配置されている場合の集光用レンズ
105によるレーザ光Lの集光を示す図である。図39
及び図40を比較すれば分かるように、ビームエキスパ
ンダ501が配置されていない場合の集光用レンズ10
5を含む光学系の開口数を基準にすると、第2例では開
口数が大きくなるように調節することができる。 【0081】[第3例]次に、本実施形態の第3例につい
てこれまでの例との相違を中心に説明する。図41はこ
のレーザ加工装置600の概略構成図である。レーザ加
工装置600の構成要素のうち、これまでの例に係るレ
ーザ加工装置の構成要素と同一要素については同一符号
を付すことによりその説明を省略する。 【0082】レーザ加工装置600は、ビームエキスパ
ンダ501の代わりに、ダイクロイックミラー103と
集光用レンズ105との間のレーザ光Lの光軸上に虹彩
絞り601が配置されている。虹彩絞り601の開口の
大きさを変えることにより集光用レンズ105の有効径
を調節する。虹彩絞り601は開口数調節手段の一例で
ある。また、レーザ加工装置600は虹彩絞り601の
開口の大きさを変える制御をする虹彩絞り制御部603
を備える。虹彩絞り制御部603は全体制御部127に
より制御される。 【0083】レーザ加工装置600の動作がこれまでの
例のレーザ加工装置の動作と異なる点は、全体制御部1
27に入力された開口数の大きさに基づく開口数の調節
である。レーザ加工装置600は入力された開口数の大
きさに基づいて虹彩絞り601の開口の大きさを変える
ことにより、集光用レンズ105の有効径の縮小する調
節をする。これにより、集光用レンズ105が1つであ
っても、集光用レンズ105を含む光学系の開口数を小
さくなるように調節することができる。これを図42及
び図43を用いて説明する。 【0084】図42は、虹彩絞りが配置されていない場
合の集光用レンズ105によるレーザ光Lの集光を示す
図である。一方、図43は、虹彩絞り601が配置され
ている場合の集光用レンズ105によるレーザ光Lの集
光を示す図である。図42及び図43を比較すれば分か
るように、虹彩絞りが配置されていない場合の集光用レ
ンズ105を含む光学系の開口数を基準にすると、第3
例では開口数が小さくなるように調節することができ
る。 【0085】次に、本実施形態の変形例を説明する。図
44は本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備えられ
る全体制御部127のブロック図である。全体制御部1
27はパワー選択部417及び相関関係記憶部413を
備える。相関関係記憶部413には、図35に示す相関
関係のデータが予め記憶されている。レーザ加工装置の
操作者はキーボード等によりパワー選択部417に改質
スポットの所望の寸法を入力する。改質スポットの寸法
は、加工対象物の厚さや材質等を考慮して決定される。
この入力により、パワー選択部417は相関関係記憶部
413からこの寸法と同じ値の寸法に対応するパワーを
選択し、そのパワーのデータをパワー調節部401に送
る。よって、このパワーの大きさに調節されたレーザ加
工装置でレーザ加工することにより、所望の寸法の改質
スポットを形成することが可能となる。このパワーの大
きさのデータはモニタ129にも送られ、パワーの大き
さが表示される。この例では開口数が固定でパワーが可
変となる。なお、入力された寸法と同じ値の寸法が相関
関係記憶部413に記憶されていない場合、最も近い値
の寸法に対応するパワーのデータがパワー調節部401
及びモニタ129に送られる。これは以下に説明する変
形例でも同様である。 【0086】図45は本実施形態のレーザ加工装置の他
の変形例に備えられる全体制御部127のブロック図で
ある。全体制御部127は開口数選択部419及び相関
関係記憶部413を備える。図44の変形例と異なる点
は、パワーではなく開口数が選択されることである。相
関関係記憶部413には、図34に示すデータが予め記
憶されている。レーザ加工装置の操作者はキーボード等
により開口数選択部419に改質スポットの所望の寸法
を入力する。これにより、開口数選択部419は、相関
関係記憶部413からこの寸法と同じ値の寸法に対応す
る開口数を選択し、その開口数のデータをレンズ選択機
構制御部405、ビームエキスパンダ501又は虹彩絞
り制御部603に送る。よって、この開口数の大きさに
調節されたレーザ加工装置でレーザ加工することによ
り、所望の寸法の改質スポットを形成することが可能と
なる。この開口数の大きさのデータはモニタ129にも
送られ、開口数の大きさが表示される。この例ではパワ
ーが固定で開口数が可変となる。 【0087】図46は本実施形態のレーザ加工装置のさ
らに他の変形例に備えられる全体制御部127のブロッ
ク図である。全体制御部127は組選択部421及び相
関関係記憶部413を備える。図44及び図45の例と
異なる点は、パワー及び開口数の両方が選択されること
である。相関関係記憶部413には、図33のパワー及
び開口数の組と寸法との相関関係のデータが予め記憶さ
れている。レーザ加工装置の操作者はキーボード等によ
り組選択部421に改質スポットの所望の寸法を入力す
る。これにより、組選択部421は、相関関係記憶部4
13からこの寸法と同じ値の寸法に対応するパワー及び
開口数の組を選択する。選択された組のパワーのデータ
はパワー調節部401に送られる。一方、選択された組
の開口数のデータはレンズ選択機構制御部405、ビー
ムエキスパンダ501又は虹彩絞り制御部603に送ら
れる。よって、この組のパワー及び開口数の大きさに調
節されたレーザ加工装置でレーザ加工することにより、
所望の寸法の改質スポットを形成することが可能とな
る。この組のパワー及び開口数の大きさのデータはモニ
タ129にも送られ、パワー及び開口数の大きさが表示
される。 【0088】これらの変形例によれば、改質スポットの
寸法を制御することができる。よって、改質スポットの
寸法を小さくすることにより、加工対象物の切断予定ラ
インに沿って精密に切断でき、また平坦な切断面を得る
ことができる。加工対象物の厚みが大きい場合、改質ス
ポットの寸法を大きくすることにより、加工対象物の切
断が可能となる。 【0089】 【発明の効果】本発明に係るレーザ加工装置によれば、
加工対象物の表面に溶融や切断予定ラインから外れた割
れが生じることなく、加工対象物を切断することができ
る。よって、加工対象物を切断することにより作製され
る製品(例えば、半導体チップ、圧電デバイスチップ、
液晶等の表示装置)の歩留まりや生産性を向上させるこ
とができる。 【0090】本発明に係るレーザ加工装置によれば、改
質スポットの寸法を制御できる。このため、切断予定ラ
インに沿って精密に加工対象物を切断でき、また平坦な
切断面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るレーザ加工方法によってレー
ザ加工中の加工対象物の平面図である。 【図2】図1に示す加工対象物のII−II線に沿った断面
図である。 【図3】本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ
加工後の加工対象物の平面図である。 【図4】図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿った断面
図である。 【図5】図3に示す加工対象物のV−V線に沿った断面図
である。 【図6】本実施形態に係るレーザ加工方法によって切断
された加工対象物の平面図である。 【図7】本実施形態に係るレーザ加工方法における電界
強度とクラックの大きさとの関係を示すグラフである。 【図8】本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程に
おける加工対象物の断面図である。 【図9】本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程に
おける加工対象物の断面図である。 【図10】本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程
における加工対象物の断面図である。 【図11】本実施形態に係るレーザ加工方法の第4工程
における加工対象物の断面図である。 【図12】本実施形態に係るレーザ加工方法により切断
されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表し
た図である。 【図13】本実施形態に係るレーザ加工方法におけるレ
ーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を
示すグラフである。 【図14】本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポットを比較的大きく形成した場合の加工対象
物の平面図である。 【図15】図14に示す切断予定ライン上のXV-XVに沿
って切断した断面図である。 【図16】図14に示す切断予定ラインと直交するXVI-
XVIに沿って切断した断面図である。 【図17】図14に示す切断予定ラインと直交するXVII
-XVIIに沿って切断した断面図である。 【図18】図14に示す切断予定ラインと直交するXVII
I-XVIIIに沿って切断した断面図である。 【図19】図14に示す加工対象物を切断予定ラインに
沿って切断した平面図である。 【図20】本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポットを比較的小さく形成した場合の切断予定
ラインに沿った加工対象物の断面図である。 【図21】図20に示す加工対象物を切断予定ラインに
沿って切断した平面図である。 【図22】所定の開口数の集光用レンズを用いてパルス
レーザ光が加工対象物の内部に集光されている状態を示
す加工対象物の断面図である。 【図23】図22に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図24】図22に示す例より大きい開口数の集光用レ
ンズを用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図25】図24に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図26】図22に示す例より小さいパワーのパルスレ
ーザ光を用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図27】図26に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図28】図24に示す例より小さいパワーのパルスレ
ーザ光を用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図29】図28に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図30】図21に示す切断予定ラインと直交するXXX-
XXXに沿って切断した断面図である。 【図31】本実施形態の第1例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図32】本実施形態に係るレーザ加工装置に備えられ
る全体制御部の一例の一部分を示すブロック図である。 【図33】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルの一例を示す図
である。 【図34】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルの他の例を示す
図である。 【図35】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルのさらに他の例
を示す図である。 【図36】本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法を
説明するためのフローチャートである。 【図37】本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法に
より切断可能なパターンを説明するための加工対象物の
平面図である。 【図38】本実施形態の第2例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図39】ビームエキスパンダが配置されていない場合
の集光用レンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図40】ビームエキスパンダが配置されている場合の
集光用レンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図41】本実施形態の第3例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図42】虹彩絞りが配置されていない場合の集光用レ
ンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図43】虹彩絞りが配置されている場合の集光用レン
ズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図44】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部の一例のブロック図である。 【図45】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部の他の例のブロック図である。 【図46】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部のさらに他の例のブロック図である。 【符号の説明】 1・・・加工対象物、3・・・表面、5・・・切断予定
ライン、7・・・改質領域、9・・・クラック領域、1
1・・・シリコンウェハ、13・・・溶融処理領域、4
1・・・領域、43・・・切断面、90・・・クラック
スポット、101・・・レーザ光源、105,105a,
105b,105c・・・集光用レンズ、109・・・X
軸ステージ、111・・・Y軸ステージ、113・・・Z
軸ステージ、400・・・レーザ加工装置、401・・
・パワー調節部、403・・・レンズ選択機構、411
・・・寸法選択部、413・・・相関関係記憶部、41
5・・・画像作成部、417・・・パワー選択部、41
9・・・開口数選択部、421・・・組選択部、500
・・・レーザ加工装置、501・・・ビームエキスパン
ダ、600・・・レーザ加工装置、601・・・虹彩絞
り、P・・・集光点
ザ加工中の加工対象物の平面図である。 【図2】図1に示す加工対象物のII−II線に沿った断面
図である。 【図3】本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ
加工後の加工対象物の平面図である。 【図4】図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿った断面
図である。 【図5】図3に示す加工対象物のV−V線に沿った断面図
である。 【図6】本実施形態に係るレーザ加工方法によって切断
された加工対象物の平面図である。 【図7】本実施形態に係るレーザ加工方法における電界
強度とクラックの大きさとの関係を示すグラフである。 【図8】本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程に
おける加工対象物の断面図である。 【図9】本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程に
おける加工対象物の断面図である。 【図10】本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程
における加工対象物の断面図である。 【図11】本実施形態に係るレーザ加工方法の第4工程
における加工対象物の断面図である。 【図12】本実施形態に係るレーザ加工方法により切断
されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表し
た図である。 【図13】本実施形態に係るレーザ加工方法におけるレ
ーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を
示すグラフである。 【図14】本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポットを比較的大きく形成した場合の加工対象
物の平面図である。 【図15】図14に示す切断予定ライン上のXV-XVに沿
って切断した断面図である。 【図16】図14に示す切断予定ラインと直交するXVI-
XVIに沿って切断した断面図である。 【図17】図14に示す切断予定ラインと直交するXVII
-XVIIに沿って切断した断面図である。 【図18】図14に示す切断予定ラインと直交するXVII
I-XVIIIに沿って切断した断面図である。 【図19】図14に示す加工対象物を切断予定ラインに
沿って切断した平面図である。 【図20】本実施形態に係るレーザ加工方法を用いてク
ラックスポットを比較的小さく形成した場合の切断予定
ラインに沿った加工対象物の断面図である。 【図21】図20に示す加工対象物を切断予定ラインに
沿って切断した平面図である。 【図22】所定の開口数の集光用レンズを用いてパルス
レーザ光が加工対象物の内部に集光されている状態を示
す加工対象物の断面図である。 【図23】図22に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図24】図22に示す例より大きい開口数の集光用レ
ンズを用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図25】図24に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図26】図22に示す例より小さいパワーのパルスレ
ーザ光を用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図27】図26に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図28】図24に示す例より小さいパワーのパルスレ
ーザ光を用いた場合の加工対象物の断面図である。 【図29】図28に示すレーザ光の照射による多光子吸
収が原因で形成されたクラックスポットを含む加工対象
物の断面図である。 【図30】図21に示す切断予定ラインと直交するXXX-
XXXに沿って切断した断面図である。 【図31】本実施形態の第1例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図32】本実施形態に係るレーザ加工装置に備えられ
る全体制御部の一例の一部分を示すブロック図である。 【図33】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルの一例を示す図
である。 【図34】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルの他の例を示す
図である。 【図35】本実施形態に係るレーザ加工装置の全体制御
部に含まれる相関関係記憶部のテーブルのさらに他の例
を示す図である。 【図36】本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法を
説明するためのフローチャートである。 【図37】本実施形態の第1例に係るレーザ加工方法に
より切断可能なパターンを説明するための加工対象物の
平面図である。 【図38】本実施形態の第2例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図39】ビームエキスパンダが配置されていない場合
の集光用レンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図40】ビームエキスパンダが配置されている場合の
集光用レンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図41】本実施形態の第3例に係るレーザ加工装置の
概略構成図である。 【図42】虹彩絞りが配置されていない場合の集光用レ
ンズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図43】虹彩絞りが配置されている場合の集光用レン
ズによるレーザ光の集光を示す図である。 【図44】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部の一例のブロック図である。 【図45】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部の他の例のブロック図である。 【図46】本実施形態のレーザ加工装置の変形例に備え
られる全体制御部のさらに他の例のブロック図である。 【符号の説明】 1・・・加工対象物、3・・・表面、5・・・切断予定
ライン、7・・・改質領域、9・・・クラック領域、1
1・・・シリコンウェハ、13・・・溶融処理領域、4
1・・・領域、43・・・切断面、90・・・クラック
スポット、101・・・レーザ光源、105,105a,
105b,105c・・・集光用レンズ、109・・・X
軸ステージ、111・・・Y軸ステージ、113・・・Z
軸ステージ、400・・・レーザ加工装置、401・・
・パワー調節部、403・・・レンズ選択機構、411
・・・寸法選択部、413・・・相関関係記憶部、41
5・・・画像作成部、417・・・パワー選択部、41
9・・・開口数選択部、421・・・組選択部、500
・・・レーザ加工装置、501・・・ビームエキスパン
ダ、600・・・レーザ加工装置、601・・・虹彩絞
り、P・・・集光点
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
// C03B 33/09 C03B 33/09
H01L 21/301 B23K 101:40
B23K 101:40 H01L 21/78 B
(72)発明者 内山 直己
静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホ
トニクス株式会社内
(72)発明者 和久田 敏光
静岡県浜松市市野町1126番地の1 浜松ホ
トニクス株式会社内
Fターム(参考) 3C069 AA01 BA08 BB01 BB02 BC04
CA05 CA11 EA02 EA05
4E068 AD00 AE01 CA02 CA03 CA11
CB03 CB04 CD13 DA10 DB13
4G015 FA06 FB01 FC14
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 パルス幅が1μs以下のパルスレーザ光
を出射するレーザ光源と、 前記レーザ光源から出射されたパルスレーザ光の集光点
のピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上になるよ
うにパルスレーザ光を集光する集光用レンズを複数含み
かつ前記複数の集光用レンズを選択可能なレンズ選択手
段と、 を備え、 前記複数の集光用レンズを含む光学系はそれぞれ開口数
が異なり、 前記レンズ選択手段で選択された集光用レンズにより集
光されたパルスレーザ光の集光点を加工対象物の内部に
合わせる手段と、 前記加工対象物の切断予定ラインに沿ってパルスレーザ
光の集光点を相対的に移動させる移動手段と、 を備え、 前記内部に集光点を合わせて1パルスのパルスレーザ光
を前記加工対象物に照射することにより、前記内部に1
つの改質スポットが形成され、 前記複数の集光用レンズを含む光学系の開口数の大きさ
と改質スポットの寸法との相関関係を予め記憶した相関
関係記憶手段と、 選択された前記集光用レンズを含む光学系の開口数の大
きさに基づいて、この大きさの開口数で形成される改質
スポットの寸法を前記相関関係記憶手段から選択する寸
法選択手段と、 前記寸法選択手段により選択された改質スポットの寸法
を表示する寸法表示手段と、 を備える、レーザ加工装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002097513A JP2003001448A (ja) | 2000-09-13 | 2002-03-29 | レーザ加工装置 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000-278306 | 2000-09-13 | ||
JP2000278306 | 2000-09-13 | ||
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