JP2002541861A - mRNAキャップ形成の薬理学的ターゲティング - Google Patents

mRNAキャップ形成の薬理学的ターゲティング

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JP2002541861A JP2000612510A JP2000612510A JP2002541861A JP 2002541861 A JP2002541861 A JP 2002541861A JP 2000612510 A JP2000612510 A JP 2000612510A JP 2000612510 A JP2000612510 A JP 2000612510A JP 2002541861 A JP2002541861 A JP 2002541861A
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スローン−ケッタリング インスティトゥート フォー カンサー リサーチ
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、真核生物遺伝子発現の必須側面−mRNA5’キャップm7GpppNの形成−を標的とする分子を発見するための方法を提供する。本発明の基本的原理は、必須のキャッピング酵素の組成または起源においてのみ異なる試験生物の異なる菌株を用いることである。さらに、本発明は、それらの全てのキャッピング活性が病原菌または哺乳類に由来するような同遺伝子型酵母菌株を提供する。それら菌株は、真菌キャッピング機構を特異的に標的とする分子を同定するための差別的成長阻害測定法の基礎を形成する。また、本発明は、キャップ合成における3つの工程の最初の工程を触媒する必須酵素である真菌RNAトリホスファターゼを阻害する分子をin vitroでスクリーニングするための方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の背景 関連出願への相互参照 本出願は、1998年11月9日出願の米国特許出願第09/118,579号の一部継
続出願である。
【0002】連邦資金援助 本発明は、国立衛生研究所からの補助金第GM-52470号による連邦資金を用いて
成された。従って、米国政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
【0003】発明の分野 本発明は、概して、遺伝子生化学的薬理学、および薬剤発見の分野に関する。
より詳細には、本発明は、生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化
合物をスクリーニングする方法に関する。
【0004】関連技術の説明 in vivoでの真核生物のmRNAのプロセシングは、時間的におよび物理的に
、転写と共に生じる。最初の事象として、新生転写物の5’末端が修飾され、キ
ャップ構造m7GpppNを形成する。そのキャップは、3つの酵素反応:(i) RNA5’ トリホスファターゼ によって新生RNAの5’三リン酸末端が二リン酸に加水分解
され;(ii) GTP:RNAグアニリルトランスフェラーゼによってその二リン酸末端
がGMPでキャップされ;さらに(iii) AdoMet:RNA(グアニン-N7)メチルトランス フェラーゼ によってそのGpppNキャップがメチル化される:によって形成される
[1]。
【0005】 RNAキャッピングは細胞成長に必須である。酵母キャッピング機構のトリホス
ファターゼ、グアニリルトランスフェラーゼ、またはメチルトランスフェラーゼ
成分の触媒活性を失効させる突然変異は、in vivoにおいて致命的である[2−1
2]。遺伝子的および生化学的実験は、細胞の5’エキソヌクレアーゼによる迅
速な分解からmRNAを保護し[13]、さらに翻訳開始の際にリボソームにm
RNAを集める[14]際におけるキャップの役割を強調する。
【0006】図面の簡単な説明 図1は、グアニリルトランスフェラーゼのサインモチーフ(signature motifs)
を示す。6つの同列の配列要素、すなわち表示のモチーフI、III、IIIa、IV、V
、およびVIが、細胞およびウィルスのキャッピング酵素に存在する。サッカロミ
セス・セレビシエ(Sce)、シゾサッカロミセス・ポンベ(S.pombe)(Spo)、カンジ
ダ・アルビカンス(Cal)、クロレラ(Chlorella)ウィルスPBCV-1(ChV)、マウス(Mu
s)、アフリカブタコレラウィルス(ASF)、トリパノソーマ・ブルセイ・ガンビエ
ンス(Trypanosoma brucei gambiense)(Tbr)、クリチディア・ファシキュラタ(Cr
ithidia fasciculate)(Cfa)、AcNPVバキュロウィルス(Lef4)、ワクシニアウィル
ス(Vac)、ショープ線維腫ウィルス(SFV)、および伝染性軟属腫ウィルス(MCV)の
酵素のアミノ酸配列を整列させる。モチーフを分けるアミノ酸残基の番号を指示
する。in vivoでのCeg1p機能に必須の酵母酵素のモチーフのアミノ酸を星印で表
示する。
【0007】 図2は、真菌、後生動物、およびクロレラウィルスのmRNAキャッピング酵
素における保存配列要素を示す。カンジダ・アルビカンス(cal)、シゾサッカロ
ミセス・ポンベ(spo)、マウス(mus)、カエノルハブディチス・エレガンス(Caeno
rhabditis elegans)(cel)、およびクロレラウィルスPBCV-1によってコードされ
ているグアニリルトランスフェラーゼの相同領域と共に、サッカロミセス・セレ
ビシエ(sce)のグアニリルトランスフェラーゼCeg1pの残基43から399のアミ
ノ酸配列を整列させる。8つの保存された同列の配列要素、すなわち表示のモチ
ーフP、I、III、IIIa、IV、V、Vc、およびVIを影付き囲みの中に示す。配列中の
ギャップをダッシュ(−)で示す。突然変異分析によって特定したin vivoでの
酵素機能に必須であるCeg1p残基を星印で表示する。クロレラウィルスキャッピ
ング酵素−GTP混合結晶(co-crystal)においてGTPに近接する残基を、整列させた
配列の下に矢印で表示する。
【0008】 図3は、後生動物のキャッピング酵素およびバキュロウィルスホスファターゼ
BVPのRNAトリホスファターゼ領域を示す。マウスキャッピング酵素(Mus CE)およ
びカエノルハブディチス・エレガンスキャッピング酵素(Cel CE)のN末端RNAトリ
ホスファターゼ領域と共に、168-アミノ酸バキュロウィルスホスファターゼBVP
のアミノ酸配列を整列させる。配列中のギャップをダッシュ(−)で示す。3つ
の全てのタンパク質において保存されているアミノ酸を星印で表示する。ホスフ
ァターゼタンパク質のサインモチーフを影付き囲みの中に強調する。活性部位の
システインを太字で示す。システイニルホスフェート中間体の形成に関連する推
定の反応経路を示す。
【0009】 図4は、金属依存的RNAトリホスファターゼの保存配列要素を示す。サッカロ
ミセス・セレビシエ(Cet1)、ワクシニアウィルス(vvD1)、ショープ線維腫ウィル
ス(SFV)、伝染性軟属腫ウィルス(MCV)、アフリカブタコレラウィルス(ASF)、バ
キュロウィルス(Lef4)、およびカンジダ・アルビカンス(Cal)における3つの保
存モチーフ、すなわち表示のA、B、およびCを図に整列させる。また、サッカロ
ミセス・セレビシエYMR180cオープンリーディングフレーム(180c)の推定上の翻
訳産物もその整列に含めている。2つ以上の異なるファミリーに属する細胞にお
いて保存されているCet1p残基を影付きで示す。モチーフを分けるアミノ酸の番
号を示す。ワクシニアウィルスのキャッピング酵素におけるトリホスファターゼ
活性に必須である5つのアミノ酸に下線を付す。in vivoにおけるCET1機能およ
びin vitroにおけるCet1 RNAトリホスファターゼ活性に必須であるCet1p残基のG
lu-305、Glu-307、Arg-454、Glu-492、Glu-494、およびGlu-496を矢印で表示す
る。酵母の456-アミノ酸RNAトリホスファターゼCet1p内のモチーフA、B、および
Cの配置を整列させた配列の上に図示する。g−ホスフェートの加水分解に十分な
C末端の触媒領域を角括弧で示す。
【0010】 図5は、ヒトおよび酵母のキャップメチルトランスフェラーゼにおけるアミノ
酸配列の保存を示す。酵母Abd1p(abd)の完全配列、および残基1−373からの推定
402-アミノ酸カエノルハブディチス・エレガンスC25A1.f遺伝子産物(ce1)と共に
、476-アミノ酸Hcm1pタンパク質(hcm)の完全アミノ酸配列を整列させる。配列中
のギャップをダッシュ(−)で示す。Hcm1pおよびAbd1pのC末端を星印で示す。A
bd1pまたはカエノルハブディチス・エレガンスタンパク質中の残基と同一または
類似のHcm1p中の残基を影付き囲みで示す。Abd1p機能に必須のアミノ酸をドット
で表示する。
【0011】 図6は、Cet1(201-549)pのRNAトリホスファターゼ活性に対する突然変異効果
を示す。(A) タンパク質精製:組換えられた野生型(WT) Cet1(201-549)pおよび
指示されたCet1(201-549)p-Ala変異体のNiアガロース調製物の一部(3μg)を0.1
%SDS含有12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。クーマシーブルー染
色によってポリペプチドを可視化させた。マーカータンパク質の位置およびサイ
ズ(kDa)を左に示す。(B) RNAトリホスファターゼ活性:50mM Tris-HCl (pH7.5)
、5mM DTT、1mM MgCl2、[γ32P]−ポリ(A)(三リン酸末端20pmol)、およびWTま
たは指示された変異体の何れかを含有する反応混合物(10μl)を30℃で1
5分間インキュベートした。その混合物の一部をポリエチレンイミン−セルロー
スTLCプレートに添加し、0.75Mリン酸カリウム(pH4.3)を用いて展開させた。32P
i遊離を添加タンパク質量の関数としてプロットする。
【0012】 図7は、Cet1pによるATPの加水分解を示す。50mM Tris-HCl (pH7.5)、5mM DTT
、1mM[γ32P]ATP、組換えCet1p(ホスホセルロース画分)(250ng)、および指示さ
れた1mM二価陽イオンを含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分間イ
ンキュベートした。その混合物の一部(4μl)をポリエチレンイミン−セルロー
スTLCプレートに添加し、0.5M LiCl2、1Mギ酸を用いて展開させた。TLPプレー
トのオートラジオグラフィーを示す。PiおよびATPの位置を左に示す。
【0013】 図8は、Cet1pによるATP加水分解の速度論的解析を示す。(A) タンパク質の滴
定:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、およびCet1
p、Cet1(201-549)p、またはCet1(246-549)pのいずれかを含有する反応混合物(1
0μl)を30℃で15分間インキュベートした。32Pi遊離を添加タンパク質量の
関数としてプロットする。(B) 速度論的解析:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT
、2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、および8、16、または32nMの何れかの量の
Cet1pを含有する反応混合物(100μl)を30℃でインキュベートした。その一
部(10μl)を指示された時間に採取し、5Mギ酸(2.5μl)を添加して即時に反
応を停止させた。32Pi遊離を時間の関数としてプロットする。(C) [α32P]ATPの
加水分解:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[α32P]ATP、およ
びCet1p(100ng)を含有する反応混合物(100μl)を30℃でインキュベート
した。その一部(10μl)を指示された時間に採取し、5Mギ酸で反応を停止さ
せた。その産物をTLCで分析した。[α32P]ADP(o)および[α32P]AMP(q)のレベル
を時間の関数としてプロットする。別に、1mM[γ32P]ATPを含有する同様の反応
を平行して分析した;Pi遊離を(●)で示す。(D) ATP依存性:50mM Tris-HCl (
pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2、Cet1p(40pg)、および指示された[γ32P]ATPを
含有する反応混合物(20μl)を30℃で15分間インキュベートした。32Pi遊
離をATP濃度の関数としてプロットする。挿入図:データの二重逆数プロットを
示す。
【0014】 図9は、組換えHcm1pのキャップメチルトランスフェラーゼ活性を示す。完全
反応混合物(レーン1)は、その10μ中に、50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM DTT、
キャップ標識ポリ(A)(16fmol)、50μM AdoMet、およびHcm1p(Ni-アガロース、0.
2Mイミダゾール溶出画分) (〜50fmol)を含有する。反応成分は以下のように変化
する:AdoMetを含まない(レーン2);AdoMetを含まず、50μM AdoHcyを含む(
レーン3);50μM AdoMetおよび500μM AdoHcyを含む(レーン4);Hcm1pを含
まない(レーン5);Hcm1pを含まず、精製組換えワクシニアキャッピング酵素
を含む(レーン6)。37℃で10分間インキュベートした後、反応混合物を9
5℃で5分間加熱し、さらに50mM酢酸ナトリウム(pH5.5)溶液に調製した。
その試料をヌクレアーゼP1(5μg)と共に37℃で30-60分間インキュベー
トした。次に、その消化物をポリエチレンイミンセルロースTLCプレートにスポ
ットして、0.2M (NH4)2SO4を用いて展開させた。そのクロマトグラムのオートラ
ジオグラフィーを示す。クロマトグラフの原点、ならびにキャップジヌクレオチ
ドm7GpppAおよびGpppAの位置を右に示す。
【0015】 図10は、ヒトキャップメチルトランスフェラーゼのグリセロール密度勾配沈
降を示す。以下の方法に記載のように、グリセロール密度勾配によって、Hcm1p
のNi-アガロース画分(パネルA)、ならびにN末端欠失変異体Δ120(パネルB)およ
びΔ151(パネルC)を沈降させた。チューブの底から画分を回収した(画分1)。
密度勾配に添加した物質の一部(レーンNi)と共に、1つ置きの画分の一部(2
0μl)をSDS-PAGEによって分析した。ゲルを固定し、クーマシーブルーで染色
した。同時に電気泳動したマーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を各
ゲルの左に示す。メチルトランスフェラーゼ反応混合物は、キャップ標識ポリ(A
)(16fmol)、50μM AdoMet、ならびにHcm1pおよびΔ120のグリセロール密度勾配
からの指示された画分を1/500に希釈したもの(1ml)、あるいはΔ151のグ
リセロール密度勾配からの画分を1/50に希釈したもの(1ml)を含有する。反
応産物をヌクレアーゼP1で消化し、TLCで分析した。FUJIX BAS1000ホスホリメ
ジャー(phosphorimager)を用いて、クロマトグラムを走査させて、キャップメチ
ル化[m7GpppA/(m7GpppA+GpppA)]の程度を特定した。平行させて遠心したマーカ
ータンパク質であるカタラーゼ、BSA、およびシトクロムCのピークを矢印で示す
【0016】 図11は、Hcm1pのN末端欠失変異体によるキャップメチル化を示す。(A) ポリ
ペプチド組成:野生型Hcm1p、ならびに欠失変異体Δ120およびΔ151のグリセロ
ール密度勾配ピーク画分をSDS-PAGEで分析した。クーマシーブルー染色によって
ポリペプチドを可視化した。マーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を
左に示す。(B)メチルトランスフェラーゼ活性:反応混合物は、キャップ標識ポ
リ(A)(20fmol)、50μM AdoMet、および指示されたWT、Δ120、またはΔ151酵
素を含有する。
【0017】 図12は、in vivoでの酵母Abd1pのためのヒトキャップメチルトランスフェラ
ーゼ置換を示す。野生型HCM1遺伝子または指示されたN末端欠失変異体を含有す
る2m TRP1プラスミド(パネルA)またはCEN TRP1プラスミド(パネルB)を用いて
、酵母菌株YBS10(MATa ura3 trp1 lys2 his3 leu2 abd1:: hisG [pCEN URA3 ABD
1])を形質転換させた。TRP1ベクター単独、およびABD1包含CEN TRP1プラスミド
を用いて、対照の形質転換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート上に
、Trp+単離細胞を線状に接種した。30℃で3日間インキュベートした後、プレ
ートを撮影した。
【0018】 図13は、哺乳類キャッピング酵素による酵母キャッピング機構の置換を示す
。(A) 指示する遺伝子を包含するCEN TRP1プラスミドで酵母菌株YBS50(Δcet1
Δceg1)を形質転換させた。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート上に、Trp+単離
細胞を線状に接種した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影
した。(B) 以下に記載のCEN TRP1プラスミドを用いて、1つ以上の酵母キャッピ
ング酵素遺伝子座において欠失させた同遺伝子型の菌株を形質転換させ、さらに
5-FOA上で選択した。YPD寒天プレート上に、FOA耐性単離細胞を線状に接種した
。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。HCM1Δ120 MCE1
は、HCM1(121-476)およびMCE1で形質転換させたYBS52であり;ABD1 CET1 CEG1
は、単一のプラスミド上のABD1 CET1およびCEG1で形質転換させたYBS52であり;
ABD1 MCE1は、MCE1で形質転換させたYBS50であり;HCM1Δ120 CET1 CEG1は、HCM
1(121-476)で形質転換させたYBS40である。
【0019】 図14は、サッカロミセス・セレビシエにおける遺伝的相補性による、カンジ
ダ・アルビカンスキャップメチルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングを示
す。(図14A)2μライブラリープラスミドpCCM1-6.6およびそのサブクローン
pCCM1-3.9のカンジダ・アルビカンスゲノムDNAへの挿入を図示する。サブクロー
ニングに用いられる制限酵素部位および遺伝子マッピングを示す。CCM1オープン
リーディングフレームを影線で表し、コード鎖の方向を矢印で示す。(図14B
)CCM1によるabd1-5の相補性:2μ URA3プラスミドpCCM1-6.6、pCCM1-3.9、YEp
24(ベクター)、およびYEp24-ABD1で酵母菌株abd1-5を形質転換させた。ウラシル
を欠く寒天培地上に、形質転換体を線状に接種し、25℃または37℃の何れか
でインキュベートした。(図14C)474-アミノ酸Ccm1pタンパク質の配列を示す
。アラニン走査(alanine scanning)によって見出されたHcm1p機能に必須である
8アミノ酸に対応するCcm1p残基をドットで表示する。
【0020】 図15は、カンジダ・アルビカンスのキャップメチルトランスフェラーゼによ
るサッカロミセス・セレビシエΔabd1菌株の相補性、およびin vivoでのCCM1機
能に対するN末端欠失の影響を示す。CCM1の指示する配列を包含するCEN TRP1プ
ラスミドで、酵母菌株YBS40を形質転換させた。TRP1ベクター単独、およびp358-
ABD1を用いて、対照の形質転換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート
上に、Trp+単離細胞を線状に接種した。30℃で3日間インキュベートした後、
プレートを撮影した。
【0021】 図16は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼのin vivoでの欠失
分析を示す。CET1または指示されたCaCET1配列の何れかを包含するCEN TRP1プラ
スミドで、YBS20を形質転換させた。TRP1ベクターを用いて、対照の形質転換を
実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート上に、Trp+単離細胞を線状に接種
した。25℃で7日間インキュベートした後、プレートを撮影した。カンジダ・
アルビカンス(Ca) Cet1pの相同部分と共に、サッカロミセス・セレビシエ(Sc) C
et1pの残基225-265からのアミノ酸配列を整列させた。同一アミノ酸をコロン(:
)で表し;側鎖の類似性をドット(.)で示す。CET1およびCaCET1の生育可能なN
末端欠失配列の範囲を整列させた配列の上および下に矢印で示す。致死的CaCET1
(217-520)変異体のN末端をバツ印付きの小さな矢印で示す。
【0022】 図17は、in vivoでのサッカロミセス・セレビシエCET1機能に対するN末端欠
失の影響を示す。CET1の指示されたN末端欠失配列を包含するCEN TRP1プラスミ
ドで、酵母菌株YBS20を形質転換させた。TRP1ベクターを用いて、対照の形質転
換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート上に、Trp+単離細胞を線状に
接種した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。
【0023】 図18は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構のトリホス
ファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ成分の置換を示す。指示された
遺伝子を包含するCEN TRP1プラスミドで、酵母菌株YBS50(Δcet1 Δceg1)を形質
転換させた。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート上に、Trp+単離細胞を線状に接
種した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。
【0024】 図19は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構の完全置換
を示す。以下に記載のTRP1プラスミドで、酵母菌株YBS52(Δcet1 Δceg1 Δabd1
)を形質転換させ、さらに5-FOA上で選択した。30℃で3日間インキュベートし
た後、プレートを撮影した。単一のCENプラスミド上の3つのサッカロミセス・
セレビシエ遺伝子で、ABD1 CET1 CEG1を形質転換させた。それぞれ、CENプラス
ミドpCAN-CAP-2、およびpCAN-CAP-2上の指示された組の3つのサッカロミセスセ
レビシエ遺伝子で、CaCET1(179-520) CGT1 CCM1(137-474)、およびCaCET(179-52
0) CGT1 CCM1を形質転換させた。CEN MCE1および2μHCM1(121-476)で、MCE1 HCM
1(121-476)を同時に形質転換させた。
【0025】 図20は、組換えられた、CaCet1p、CaCet1(203-520)p (Δ202)、およびCaCet
1(217-520)p (Δ216)の精製を示す。ホスホセルロースカラム溶出プロフィール
をSDS-PAGEによって分析した。ホスホセルロースカラムに添加したNi-アガロー
ス画分の一部(20μl)(レーンNi)、ホスホセルロース通過画分(レーンF)、ホス
ホセルロース50mM NaCl洗浄画分(レーン50)、100mM NaCl溶出画分(レーン100
)、200mM NaCl溶出画分(レーン200)、500mM NaCl溶出画分(レーン500)、および1
M NaCl溶出画分(レーン1000)を0.1%SDS含有12.5%ポリアクリルアミドゲル上で
電気泳動した。クーマシーブルー染色によってポリペプチドを可視化した。同時
に電気泳動したマーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を各ゲルの右に
示す。
【0026】 図21は、CaCet1pおよびCaCet1pのN末端欠失変異体のマンガン依存的ATPase
活性を示す。(図21A)ポリペプチド組成:組換えられた、CaCet1p、CaCet1(2
03-520)p (Δ202)、およびCaCet1(217-520)p (Δ216)のホスホセルロース調製物
の一部(4μg)を0.1%SDS含有12.5%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した
。クーマシーブルー染色によってポリペプチドを可視化した。同時に電気泳動し
たマーカータンパク質の位置およびサイズ(kDa)を左に示す。(図21B)ATPase
活性:50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、および指
示されたCaCet1p、Δ202またはΔ216を含有する反応混合物(10μl)を30℃で
15分間インキュベートした。5Mギ酸(2.5μl)を添加して反応を停止させた。
各混合物の一部(2.5μl)をポリエチレンイミン−セルロースTLCプレートに添加
して、0.5M LiCl2、1Mギ酸を用いて展開させた。FUJIX BAS2000 バイオイメー
ジングアナライザー(Bio-Imaging Analyzer)を用いてTLCプレートを走査させる
ことによって、[γ32P]ATPからの32Pi遊離を定量化した。
【0027】 図22は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼによるATP加水分解
が、マンガンおよびコバルトによって特異的に活性化されることを示す。(図2
2A)二価陽イオン特異性:50mM Tris-HCl (pH7.5)、1mM[γ32P]ATP、CaCet1(20
3-520)p (Δ202)(50ng)、および指示された2mM二価陽イオンを含有する反応
混合物(10μl)を30℃で15分間インキュベートした。Mg、Mn、Ca、Co、お
よびZnは、塩化物として添加し;Cuは硫酸銅として添加した。反応産物をTLCで
分析した。(図22B)マンガンおよびコバルトの滴定: Tris-HCl (pH7.5)、Δ
202(50ng)、1mM[γ32P]ATP、および指示されたMnCl2またはCoCl2の何れかを含有
する反応混合物(10μl)を30℃で15分間インキュベートした。Pi遊離をマ
ンガンまたはコバルトの濃度の関数としてプロットする。
【0028】 図23は、組換えCaCet1(203-540)pのRNAトリホスファターゼ活性を示す。50m
M Tris-HCl (pH7.5)、5mM DTT、1mM MnCl2、[γ32P]ポリ(A)(三リン酸末端20pmo
l)、および指示されたΔ202を含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分間
インキュベートした。5Mギ酸(2.5μl)を添加して反応を停止させた。混合物の
一部(5μl)をポリエチレンイミン−セルロースTLCプレートに添加して、0.75M
リン酸カリウム(pH4.3)を用いて展開させた。Pi遊離を添加したΔ202タンパク質
量の関数としてプロットする。
【0029】発明の詳細な説明 本発明は、真菌または哺乳類のキャッピング酵素を包含する同遺伝子型の酵母
菌株について記載する。それら菌株は、例えば、病原菌におけるキャップ形成(
キャッピング)を阻止するための薬剤発見の魅力的な手段を提供する。「真菌キ
ャッピング」菌株に対して選択的に細胞傷害性であるが、「哺乳類キャッピング
」菌株に対しては細胞傷害性でない任意の化合物が、菌類の特異的阻害剤の強力
な候補である。宿主生物のキャッピング酵素をコードする遺伝子の1つのサブセ
ットのみを真菌または哺乳類のキャッピング酵素をコードする遺伝子の対応サブ
セットで置換した菌株を比較することによる細胞傷害性のための第2スクリーニ
ングによって、そのキャッピング酵素のいずれがそのような化合物によって標的
とされるかを特定することができる。
【0030】 さらに、本発明は、真菌キャッピング機構に対する効果を介して細胞成長を阻
止する抗真菌化合物を同定するためのin vivo方法の詳細な説明をこの中に記載
する。本発明の基本的原理は、必須のキャッピング酵素の組成または起源におい
てのみ異なる、サッカロミセス・セレビシエのような試験生物の異なる菌株を用
いることである。さらに、本発明は、それらの全てのキャッピング活性が病原菌
または哺乳類に由来するような同遺伝子型酵母菌株を提供する。
【0031】実施例1 酵母RNAトリホスファターゼの発現および精製 Hoらが記載したように、His−タグ付けCet1p、Cet1(201-549)p、およびCet1(2
46-549)pの誘発的発現を実施した[11]。Ni-アガロースおよびホスホセルロー
スカラムクロマトグラフィーによって、可溶性細菌溶解物から組換えタンパク質
を精製した[11]。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、グアニリルトランスフェラーゼのサインモチーフを示す
【図2】 図2は、真菌、後生動物、およびクロレラウィルスのmRNAキャッピング酵
素における保存配列要素を示す
【図3】 図3は、後生動物のキャッピング酵素およびバキュロウィルスホスファターゼ
BVPのRNAトリホスファターゼ領域を示す
【図4】 図4は、金属依存的RNAトリホスファターゼの保存配列要素を示す
【図5】 図5は、ヒトおよび酵母のキャップメチルトランスフェラーゼにおけるアミノ
酸配列の保存を示す
【図6】 図6は、Cet1(201-549)pのRNAトリホスファターゼ活性に対する突然変異効果
を示す
【図7】 図7は、Cet1pによるATPの加水分解を示す
【図8】 図8は、Cet1pによるATP加水分解の速度論的解析を示す
【図9】 図9は、組換えHcm1pのキャップメチルトランスフェラーゼ活性を示す
【図10】 図10は、ヒトキャップメチルトランスフェラーゼのグリセロール密度勾配沈
降を示す
【図11】 図11は、Hcm1pのN末端欠失変異体によるキャップメチル化を示す
【図12】 図12は、in vivoでの酵母Abd1pのためのヒトキャップメチルトランスフェラ
ーゼ置換を示す
【図13】 図13は、哺乳類キャッピング酵素による酵母キャッピング機構の置換を示す
【図14】 図14は、サッカロミセス・セレビシエにおける遺伝的相補性による、カンジダ
・アルビカンスキャップメチルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングを示す
【図15】 図15は、カンジダ・アルビカンスのキャップメチルトランスフェラーゼによ
るサッカロミセス・セレビシエΔabd1菌株の相補性、およびin vivoでのCCM1機
能に対するN末端欠失の影響を示す
【図16】 図16は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼのin vivoでの欠失
分析を示す
【図17】 図17は、in vivoでのサッカロミセス・セレビシエCET1機能に対するN末端欠
失の影響を示す
【図18】 図18は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構のトリホス
ファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ成分の置換を示す
【図19】 図19は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構の完全置換
を示す
【図20】 図20は、組換えられた、CaCet1p、CaCet1(203-520)p (Δ202)、およびCaCet
1(217-520)p (Δ216)の精製を示す
【図21】 図21は、CaCet1pおよびCaCet1pのN末端欠失変異体のマンガン依存的ATPase
活性を示す
【図22】 図22は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼによるATP加水分解
が、マンガンおよびコバルトによって特異的に活性化されることを示す
【図23】 図23は、組換えCaCet1(203-540)pのRNAトリホスファターゼ活性を示す
【手続補正書】
【提出日】平成13年11月12日(2001.11.12)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の名称】 mRNAキャップ形成の薬理学的ターゲティング
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】発明の背景 関連出願への相互参照 本出願は、1998年11月9日出願の米国特許出願第09/118,579号の一部継続出願
である。
【0002】連邦資金援助 本発明は、国立衛生研究所からの補助金第GM-52470号による連邦資金を用いて
成された。従って、米国政府は、本発明に関して特定の権利を有する。
【0003】発明の分野 本発明は、概して、遺伝子生化学的薬理学、および薬剤発見の分野に関する。
より詳細には、本発明は、生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物
をスクリーニングする方法に関する。
【0004】関連技術の説明 インビボでの真核生物のmRNAのプロセッシングは、時間的におよび物理的に、
転写と共に生じる。最初の事象として、新生転写物の5’末端が修飾され、キャ
ップ構造m7GpppNを形成する。そのキャップは、3つの酵素反応:(i) RNA5’ト リホスファターゼ によって新生RNAの5’三リン酸末端が二リン酸に加水分解さ
れ;(ii) GTP:RNAグアニリルトランスフェラーゼによってその二リン酸末端がG
MPでキャップされ;さらに(iii) AdoMet:RNA(グアニン-N7)メチルトランスフ
ェラーゼによってそのGpppNキャップがメチル化される:によって形成される[
1]。
【0005】 RNAキャッピングは細胞増殖に必須である。酵母キャッピング機構のトリホス
ファターゼ、グアニリルトランスフェラーゼ、またはメチルトランスフェラーゼ
成分の触媒活性を失効させる突然変異は、インビボにおいて致命的である[2−
12]。遺伝子的および生化学的実験は、細胞の5’エキソヌクレアーゼによる
迅速な分解からmRNAを保護し[13]、さらに翻訳開始の際にリボソームにmRNA
を集める[14]際におけるキャップの役割を強調する。
【0006】 キャッピング機構の物理的および機能的構成は、真菌、後生動物、原生動物、
およびウィルスにおいて、重要な点で異なる。従って、キャップ形成酵素は、病
原菌のmRNAのキャップ形成を阻害するが、哺乳類宿主のキャッピング酵素を阻害
しないような抗真菌薬、抗ウィルス薬、および抗原虫薬の可能性のある標的であ
る。薬剤発見のための信憑性のある戦略は、宿主生物のキャッピング酵素を有す
る同様の細胞の増殖に影響を及ぼすことなく、病原菌がコードするキャッピング
活性を条件とした細胞増殖を阻害する化合物を同定することである。実行可能で
あるこのような試みのために、関心のあるキャッピングシステムは、インビボに
おいて互換性のあるものでなければならない。
【0007】 キャッピング機構の構成は、後生動物、真菌、原生動物、およびDNAウィルス
の間で異なる。後生動物種は、二機能のトリホスファターゼ−グアニリルトラン
スフェラーゼポリペプチド(マウス由来のものをMce1p、ヒト由来のものをHce1p
と称する)および個々のメチルトランスフェラーゼポリペプチド(ヒト由来のも
のをHcm1pと称する)から成る2成分キャッピングシステムをコードする[6、9
、15−22]。出芽酵母サッカロミセス・セレビシエは、個々のトリホスファ
ターゼ(Cet1p)、グアニリルトランスフェラーゼ(Ceg1p)、およびメチルトランス
フェラーゼ(Abd1p)遺伝子産物から成る3成分システムをコードする[7、10、
11、23]。酵母では、トリホスファターゼ(Cet1p)およびグアニリルトランス
フェラーゼ(Ceg1p)ポリペプチドは相互作用して、ヘテロメリック複合体(hetero
meric complex)を形成する[11]が、哺乳類では、自律的トリホスファターゼお
よびグアニリルトランスフェラーゼ領域が単一のポリペプチド内においてシス配
置で連結している(Mce1p)[18]。
【0008】 ワクシニアウィルスキャッピング酵素は、3つ全ての反応を触媒する多機能タ
ンパク質である。トリホスファターゼ、グアニリルトランスフェラーゼ、および
メチルトランスフェラーゼの活性部位は、単一のポリペプチド−ワクシニアD1
タンパク質−内において、モジュール様式で配列している[24−30]。他のDN
Aウィルスはキャッピング活性の1つのサブセットをコードする;例えば、バキ
ュロウィルスは二機能性のトリホスファターゼ−グアニリルトランスフェラーゼ
(LEF-4)をコードし、およびクロレラウィルスPBCV-1は単機能性のグアニリルト
ランスフェラーゼをコードする[31−33]。グアニリルトランスフェラーゼお
よびメチルトランスフェラーゼの領域は、DNAウィルス、真菌、および後生動物
の間で保存されている。一方、トリホスファターゼ成分は、構造的におよび機構
的に相違している。
【0009】RNAグアニリルトランスフェラーゼ GTPからRNAの5’二リン酸末端へのGMPの転移が、酵素―GMP共有結合中間体に関
連する2工程反応において生じる[34]。両方の工程が、マグネシウムまたはマ
ンガンのどちらかの二価陽イオン補因子を必要とする。
【0010】
【化1】 全ての公知の細胞のキャッピング酵素およびDNAウィルスがコードするキャッピ
ング酵素において見出されているKxDG保存的要素(モチーフI)内におけるリジン
残基のε−アミノ基に結合したリン酸アミド(P-N)を介して、GMPが酵素に共有結
合する(図1)。5つの他の配列モチーフ(III、IIIa、IV、V、およびVI)は、真
菌、後生動物、DNAウィルス、および原生動物に由来するキャッピング酵素にお
いて、同じ順序で、および類似の間隔で、保存されている(図1)[35]。
【0011】 Hakanssonらは、GTP結合状態およびGMPが共有結合した状態でのクロレラウィ
ルスキャッピング酵素の結晶構造を特定した[36]。そのキャッピング酵素タン
パク質は、大きなN末端領域(モチーフI、III、IIIa、およびIVを包含する領域1
)、ならびに小さなC末端領域(モチーフVIを包含する領域2)から成り、それら領
域の間に大きな間隙が存在する。モチーフVは2つの領域を架橋する。モチーフ
I、III、IIIa、IV、およびVは、ヌクレオチド結合ポケットを形成する。結晶構
造は、GTP結合酵素において、モチーフVIをGTPのβ−およびγ−リン酸に接触さ
せさらにモチーフIのリジンによるインライン攻撃のためにそれらリン酸を再配
向させるような、「開いた」状態から「閉じた」状態への大きな構造変化が生じ
ることを明らかにした。結晶をマンガン中に浸した場合、ゲラニリルトランスフ
ェラーゼ反応が結晶において生じ、酵素−GMP共有結合中間体が形成される。し
かしながら、閉じた構造の酵素のみが反応性を有する。
【0012】 必須酵素官能基の同定は、サッカロミセス・セレビシエのRNAグアニリルトラ
ンスフェラーゼCeg1pの部位特異的突然変異誘発によって達成される。Ceg1pのグ
アニリルトランスフェラーゼ活性は、細胞生存能に必須である。従って、野生型
遺伝子を変異CEG1配列で単に置換することによって、インビボにおいて、Ceg1p
機能に対する突然変異の影響を評価することができる。モチーフI、III、IIIa、
IV、V、およびVIにおける個々のアミノ酸をアラニンで置換した場合の影響を評
価した[2、5、6]。必須残基として16残基を特定し(図1において星印で表
示)、その後、保存的置換によって、それらの位置における構造活性相関を特定
した。必須Ceg1p側鎖の9つが、クロレラウィルスキャッピング酵素の結晶構造
においてGTPとの直接接触を生じている部分(図2中の矢じり部分)に対応する
。それらは:GTPのα-リン酸と接触するモチーフIのリジン求核原子;それぞれ
、リボースの3’-、2’-水酸基に接触するモチーフIのアルギニンおよびモチ
ーフIIIのグルタミン酸;グアニン塩基に重なったモチーフIIIのフェニルアラニ
ン;α-リン酸に接触するモチーフVの2つのリジン;β-リン酸と相互作用する
モチーフVのアスパラギン酸;β-リン酸と相互作用するモチーフVIのアルギニン
;およびGTPのγ-リン酸と接触するモチーフVIのリジン:を含む[6、36]。
【0013】 モチーフI、III、IIIa、IV、V、およびVIの外側における配列保存に基づき、
真菌(サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、カンジダ・
アルビカンス)、後生動物(カエノルハブディチス・エレガンスおよび哺乳類)、
ならびにクロレラウィルスを個々の亜科に分類することができる[6、37]。図
2における配列の整列は、それらのキャッピング酵素には存在するが、ポックス
ウィルス酵素には存在しない2つのモチーフを強調しており、それらはモチーフ
PおよびモチーフVcと表示されている。コレラウィルスキャッピング酵素におい
て、モチーフPは領域1のグアノシン結合ポケットの1つの壁を形成する[36]
。モチーフVc−(K/R)I(I/V)EC−は、領域2においてモチーフVとモチーフVIの間
に位置する。モチーフVcのグルタミン酸残基は、真菌グアニリルトランスフェラ
ーゼCeg1p活性に必須である[37]。
【0014】 RNAトリホスファターゼ 2つ以上の機構的におよび構造的に別個のクラスのRNA5’トリホスファターゼ
が存在する:(i)3つの保存された同列のモチーフ(A、B、およびC)を活性のため
に必要とする二価陽イオン依存的RNAトリホスファターゼ/NTPaseファミリー(酵
母Cet1p、バキュロウィルスLEF-4、およびワクシニアD1が例である);(ii)例え
ば、後生動物細胞の酵素およびバキュロウィルス酵素BVPのような、HCxAGxGR(S/
T)Gリン酸結合モチーフを必要とする二価陽イオン非依存的RNAトリホスファター
ゼ[15、17、38−40]。いくつかのRNAウィルスおよびトリパノソーマ科
原生動物の候補キャッピング酵素がその2つの公知のRNAトリホスファターゼフ
ァミリーの定義モチーフを欠く場合は、RNA5’-トリホスファターゼの別のクラ
スが存在するであろう[41、42]。従って、キャッピング機構のトリホスファ
ターゼ成分は、病原菌mRNAのキャッピングを阻害するが、哺乳類宿主酵素を阻害
しない特異的な抗真菌薬、抗ウィルス薬、抗原虫薬の同定のための魅力的な標的
を提供する。
【0015】哺乳類RNAトリホスファターゼ 後生動物キャッピング酵素は、N末端のRNAトリホスファターゼ領域、およびC
末端のグアニリルトランスフェラーゼ領域から成る。496アミノ酸マウス酵素
Mcelpにおいて、その2つの酵素領域は自律的であり、かつ重複していない[18
]。後生動物RNAトリホスファターゼ領域は、タンパク質チロシンホスファターゼ
/二特異的タンパク質ホスファターゼ酵素ファミリーのために記載された、サイ
ンモチーフ(signature motifs)(I/V)HCxAGxGR(S/T)Gを包含する。それらタンパ
ク質は、タンパク質リン酸モノエステル基質からサインモチーフのシステインの
チオレート(thiolate)へのリン酸転移を触媒して、ホスホシステイン共有結合中
間体を形成する。その後、それら中間体は加水分解されてリン酸を遊離する(図
3)。後生動物キャッピング酵素は、3リン酸末端を有するRNAのβ-とγ-リン
酸との間のリン酸無水物結合(phosphoanhydride bond)を加水分解する;それら
酵素はヌクレオシド3リン酸には活性を示さない。サインモチーフの保存された
システインは、RNAトリホスファターゼ機能に必須である[11、15、38、3
9]。システイン-ホスファターゼの特徴は、二価陽イオン補因子を必要としない
ことである。
【0016】 Mce1pの残基1−210からのN末端部分は、自律的RNAトリホスファターゼ領
域である[18]。組換えMce1(1-210)pを細菌において発現させ、さらにほとんど
均質に精製した。Mce1(1-210)pは、2.5 Sの分離ピークとしてグリセロール密度
勾配において沈殿し、その領域が溶液中において単量であることを示唆する。32 P標識したポリ(A)からの32Piの遊離によって、Mce1(1-210)pのRNAトリホスファ
ターゼ活性を測定することができる。動力学的解析は、Pi遊離の初期速度が酵素
濃度に比例することを示した。Mce1(1-210)pは安定状態において、1秒当たり、
および酵素当たり、1.2から2モルのPiを加水分解した。RNAトリホスファターゼ
活性は、pH7から7.5の50mM Tris-バッファー中において最適であった。二価陽
イオンの不在下において最適であり、EDTAによって影響を受けなかった。二価陽
イオンを含めると、RNAトリホスファターゼ活性の濃度依存的阻害を誘導した。0
.5mM MgCl2またはMnCl2において、75%阻害が観察された。Mce1(1-210)pは[γ32 P]ATPからの32Piの遊離を触媒しなかった。
【0017】金属依存的RNAトリホスファターゼ サッカロミセス・セレビシエおよびDNAウィルスのRNAトリホスファターゼは、
構造的におよび機構的に後生動物RNAトリホスファターゼに関連しない。ワクシ
ニアウィルスRNAトリホスファターゼは、二価陽イオン補因子に完全に依存する
。ワクシニアトリホスファターゼは、リボヌクレオシド3リン酸、デオキシヌク
レオシド3リン酸、および3リン酸末端を有するRNAのγ-リン酸を加水分解する
能力において、広い特異性を示す[43、44]。NTPaseおよびRNAトリホスファ
ターゼ反応は、ワクシニアキャッピング酵素の545アミノ酸N末端領域内の単
一活性部位において生じ、その部位はグアニリルトランスフェラーゼ活性部位と
は異なっていた[27−30]。ワクシニアRNAトリホスファターゼは、マグネシ
ウムと共に用いた場合に最適であり、マンガン中での活性は12%であり、さら
にコバルトと共に用いた場合は不活性である[43]。一方、ワクシニアNTPaseは
、コバルト、マンガン、またはマグネシウムと共に用いた場合、十分な活性を有
する[43、44]。バキュロウィルスLEF-4は、RNAおよびNTPのgリン酸を加水
分解する;LEF-4 NTPaseは、マンガンまたはコバルトによって活性化されるが、
マグネシウムによっては活性化されない[31]。
【0018】 また、酵母RNA5’-トリホスファターゼCet1pは、ヌクレオシド3リン酸のγ-
リン酸を加水分解する[12]。Cet1pのNTPaseは、マンガンおよびコバルトによ
って活性化される。このことは、ワクシニアD1およびバキュロウィルスLEF-4の
キャッピング酵素のトリホスファターゼ成分に共通の特性である。最近の研究は
、それら酵素による金属依存的触媒のための共通の構造的基礎を解明した。金属
依存的RNAトリホスファターゼは、A、B、およびCで示された3つの同列の配列モ
チーフを共有する(図4)。それらモチーフは、(i)酵母Cet1p、(ii)酵母カンジ
ダ・アルビカンス由来のCet1p相同物、(iii)ワクシニアウィルス、ショープ線維
腫ウィルス、伝染性軟属腫ウィルス、およびアフリカブタコレラウィルスのキャ
ッピング酵素のトリホスファターゼ−グアニリルトランスフェラーゼ領域、なら
びに(iv)バキュロウィルスLEF-4において存在する。突然変異分析によって、そ
れらモチーフ内に、ワクシニアウィルスキャッピング酵素のRNAトリホスファタ
ーゼおよびATPaseの活性に必須であるいくつかの残基を同定した;必須残基は、
モチーフA内の2つのグルタミン酸、モチーフB内のアルギニン、およびモチーフ
C内の2つのグルタミン酸である[28]。ワクシニアキャッピング酵素でのそれ
ら位置のいずれかにおけるアラニン置換は、ホスホヒドロラーゼの特異的活性を
2桁から3桁低下させた。それら5つの残基は、トリホスファターゼ活性部位の
一部を構成する。ワクシニアトリホスファターゼ活性に必須である5つの残基全
てが、LEF-4およびCet1pにおいて保存されている。Cet1pの等価残基の突然変異
は、結果としてトリホスファターゼ活性の喪失をもたらす[12]。
【0019】 キャッピング機構のトリホスファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ
成分の物理的関連性 酵母と哺乳類は、トリホスファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ活
性を有する二機能酵素を組み立てるのに異なる方法を用いる。酵母では、別個の
トリホスファターゼ(Cet1p)酵素およびグアニリルトランスフェラーゼ(Ceg1p)酵
素が相互作用してヘテロメリック複合体を形成するが、哺乳類では、自律的なト
リホスファターゼ領域およびグアニリルトランスフェラーゼ領域が単一のポリペ
プチド(Mce1p)内においてシス配置で連結している。
【0020】 Cet1pおよびCeg1pはインビトロにおいて異種二量体のキャッピング酵素複合体
を形成する グリセロール密度勾配沈降によって、精製された組換え酵母RNAトリホスファ
ターゼCet1pの天然のサイズを評価した。Cet1pは、4.3 Sの単一成分として沈殿
した。酵母グアニリルトランスフェラーゼCeg1pはグリセロール密度勾配におい
て同様に沈殿する。しかしながら、0.1M NaCl含有バッファー中において等量の
組換えCet1pとCeg1pとを混合し、さらにその混合物をグリセロール密度勾配沈降
によって分析した場合、2つのタンパク質、ならびにトリホスファターゼおよび
グアニリルトランスフェラーゼ活性は、7.5 Sの単一の分離ピークとして共沈殿
した。従って、Ceg1pおよびCet1pはインビトロで相互作用して、ヘテロメリック
複合体を形成する[11]。Cet1pは構造的に相同なマウスキャッピング酵素のRNA
グアニリルトランスフェラーゼ領域とは複合体を形成しない。組換えマウスグア
ニリルトランスフェラーゼMce1(211-597)pを均質に精製し、Cet1pまたは対照バ
ッファーと混合し、さらにCet1−Ceg1混合物と並行させて沈降分析を実施した。
45kDa Mcel(211-597)タンパク質のみが単一の単量体ピークとして沈殿した[1
8]。Mce1(211-597)pとCet1pとの混合物の沈殿では、マウスグアニリルトランス
フェラーゼまたは酵母トリホスファターゼの分布において、より迅速に沈殿する
形態への移動は示さなかった[11]。従って、酵母RNAトリホスファターゼは、
インビトロにおいて、酵母グアニリルトランスフェラーゼとヘテロメリック複合
体を形成するが、哺乳類酵素とは形成しない。その後のカンジダ・アルビカンス
RNAトリホスファターゼ(CaCet1pと称する)の研究は、2ハイブリッドレポーター
測定法によって評価した結果、CaCet1pはサッカロミセス・セレビシエグアニリ
ルトランスフェラーゼCeg1pと相互作用することを示した[45]。
【0021】 Cet1p-Ceg1p異種二量化はインビボにおいて必須である 切断タンパク質Cet1(201-549)pおよびCet1(246-549)pを細菌において発現させ
、さらにNi-アガロースおよびホスホセルロースカラムクロマトグラフィーによ
って可溶性細菌溶解物から精製した。精製されたCet1(201-549)pおよびCet1(246
-549)pは、完全長のCet1pと同じ特異的活性で、γ32P標識3リン酸末端を有する
ポリ(A)または[γ32P]ATPからの32Piの遊離を触媒した[11]。単一コピーにお
けるCET1(201-259)遺伝子は、インビボにおいて、酵母細胞の増殖を支援する点
で機能的である。その遺伝子産物はインビトロにおいて完全なRNAトリホスファ
ターゼ活性を有するが、CENプラスミド上のCET1(246-549)遺伝子が細胞増殖を支
援し得ないことの発見は、Cet1pの触媒活性が細胞増殖に必須であるが(以下を
参照)、インビボでのCet1p機能には十分でないことを示唆する。グリセロール
密度勾配分析は、Cet1(201-549)pが単独で、〜4.1 Sの分離ピークとして沈殿す
ることを示した。Cet1(201-549)pをCeg1pと混合し、その混合物をグリセロール
密度勾配沈降によって分析すると、その2つのタンパク質が6.8 Sヘテロメリッ
ク複合体として共沈殿した[11]。より広範囲に切断したCet1(246-549)pは、完
全サイズのCet1pおよびCet1(201-549)のような分離ピークとしては沈殿しなかっ
た。ほとんどのCet(246-549)pは、RNAトリホスファターゼ活性を保持した高分子
量オリゴマー(〜13 S)として沈殿した。Cet1(246-549)pとCeg1pの混合物が沈殿
した際に、ほとんどのCet1(246-549)pは凝集したままである;添加したCeg1pの
マイナー画分のみがヘテロメリック複合体と予測されるサイズに移動した。残基
201-245の欠失(結果として、インビトロでのトリホスファターゼ活性を保持す
るが、インビボでの機能を喪失する)は、Cet1pとCeg1pとの相互作用に影響する
【0022】 それらのデータは、Cet1pとCeg1pとの相互作用が酵母細胞の増殖に必須である
ことを意味する。Ceg1p-Cet1p異種二量化に対する薬理学的妨害は、哺乳類細胞
に影響を与えることなく、真菌における遺伝子発現を阻害するための可能性のあ
る機序である。
【0023】 キャップメチルトランスフェラーゼ RNA(グアニン-N7-)メチルトランスフェラーゼ酵素(以後、キャップメチルト
ランスフェラーゼと称する)は、AdoMetからRNAのGpppN末端へのメチル基の転移
を触媒して、m7GpppN末端化RNAおよびAdoHcyを産生する[1]。サッカロミセス・
セレビシエのキャップメチルトランスフェラーゼは、ABD1遺伝子の産物である[
7]。ABD1は436アミノ酸ポリペプチドをコードする。残基110-426からのAbd1pの
触媒領域は、酵母増殖に十分である[8、9];Abd1pのその断片は、ワクシニア
キャッピング酵素のメチルトランスフェラーゼ触媒領域に相同である。酵母とワ
クシニアウィルスとのキャップメチルトランスフェラーゼ間の重要な違いは、他
のキャップ形成酵素への物理的結合、またはその欠損である。ワクシニアウィル
スメチルトランスフェラーゼ活性部位は、トリホスファターゼおよびグアニリル
トランスフェラーゼと同じポリペプチド内にコードされているが、酵母メチルト
ランスフェラーゼは酵母抽出物の分画の間、他のキャッピング活性と関連しない
[7]。酵母およびワクシニアのキャップメチルトランスフェラーゼの突然変異分
析によって、キャップメチル化に重要である保存残基を同定した[8、9、46]
。Abd1pの場合、インビトロでのメチルトランスフェラーゼ活性を無くするよう
な突然変異は、インビボにおいて致死的である。カエノルハブディチス・エレガ
ンス由来の推定上のキャップメチルトランスフェラーゼを系統発生的根拠に基づ
いて同定した[9]。酵母キャップメチルトランスフェラーゼAbd1pと共に、推定
上の402アミノ酸カエノルハブディチス・エレガンスタンパク質の配列(遺伝子バ
ンク登録Z81038)を整列させて図5に示す。線虫類タンパク質がキャップメチル
トランスフェラーゼ活性を有することはまだ明確ではないが、広範囲の配列保存
が、他の後生動物もAbd1pの相同物をコードし得ることを示唆した。正真正銘の
キャップメチルトランスフェラーゼをコードするヒトcDNAを同定し、さらに、細
菌において産生された組換えヒトキャップメチルトランスフェラーゼ(Hcm1p)の
物理的および生化学的な特徴付けを実施した。欠失分析によって、Hcm1pの機能
的なC末端触媒領域を特定した[22]。
【0024】 細胞キャッピング機構とRNAポリメラーゼIIのリン酸化CTDとの相互作用 インビボでの真核細胞におけるキャップ形成は、RNAポリメラーゼII(pol II)
によって合成される新しい鎖を標的とする。どのようにしてpol II転写物がキャ
ッピングのために特異的に選択されるかの問題に対する解答は、細胞のキャッピ
ング酵素が、pol IIの最も大きなサブユニットのリン酸化カルボキシル末端領域
(CTD)に対して結合することによって、mRNA前駆体を標的とすることによって説
明された[16-18、47、48]。pol IIに独特であるCTDは、共通配列Tyr-Se
r-Pro-Thr-Ser-Pro-Serを有するヘプタペプチド反復のタンデム配列から成る。
哺乳類pol IIの大サブユニットは、52タンデム反復を有するが、サッカロミセ
ス・セレビシエのサブユニットは27コピーを有する。pol IIの最大サブユニッ
トは、非リン酸化IIA形態およびリン酸化IIO形態という2つの形態で存在し、そ
れら形態は相互変換可能であり、かつ機能的に異なる。インビボにおいて、pol
II IIO酵素は、そのCTD内に50もの数のリン酸化アミノ酸(主にホスホセリン)
を包含する。転写開始の際、一般転写因子によって、pol IIAがDNA鋳型に補充さ
れる。前開始複合体(preinitiation complex)から安定な伸長複合体への移行の
間、pol IIA CTDは広範囲のリン酸化を受けてIIOへと転化する。いくつかのCTD
キナーゼ活性がCTD過剰リン酸化に関係しており、それらの各々がサイクリンと
サイクリン依存性キナーゼサブユニットの対を包含する。一般転写因子TFIIHのc
dk7およびサイクリンHサブユニットは、CTDヘプタペプチドのSer-5のリン酸化を
触媒する。他のCTDキナーゼとして、pol IIホロ酵素において見出されているcdk
8/サイクリンC対、cdk様およびサイクリン様サブユニットを有するCTDK-I異種三
量体キナーゼ、およびcdc2様サブユニットを有するポリメラーゼ伸長の調節因子
であるP-TEFbが挙げられる。
【0025】 サッカロミセス・セレビシエおよびシゾサッカロミセス・ポンベの組換えグア
ニリルトランスフェラーゼCeg1pおよびPce1pは、CTDのリン酸化形態に対して特
異的に結合する[16]。さらには、組換え酵母キャップメチルトランスフェラー
ゼAbd1pもCTD-PO4に対して特異的に結合する[16]。7反復のSer-5でのリン酸
化は、CTDに対するグアニリルトランスフェラーゼおよびメチルトランスフェラ
ーゼの結合能をもたらすのに十分である[16]。この分析は哺乳類キャッピング
酵素にまで拡大され、そこでの重要な発見として、グアニリルトランスフェラー
ゼ領域Mce1(211-597)pは単独でCTD-PO4に対して結合するが、トリホスファター
ゼ領域Mce1(1-210)pは結合しないことがある[18]。それら発見は、哺乳類RNA
トリホスファターゼが、シス配置においてグアニリルトランスフェラーゼに接触
することによって、新しいmRNA前駆体を標的とすることを示唆する。グアニリル
トランスフェラーゼとCTDとの間のリン酸化依存的相互作用は、酵母から哺乳類
まで保存されている。CTD-PO4と相互作用する酵母および哺乳類の酵素上での構
造的要素が保存されているかまたは相違するかは明らかでない。それにもかかわ
らず、グアニリルトランスフェラーゼまたはキャップメチルトランスフェラーゼ
のCTDに対する結合の薬理学的妨害は、真菌または哺乳類細胞における遺伝子発
現を阻害するための可能性のある機序である。そのような妨害は、キャッピング
酵素/CTD-PO4結合の直接阻害によって生じるか、あるいはCTDのリン酸化状態に
影響を及ぼすことによって間接的に生じるかのどちらかである。
【0026】 先行技術は、生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物をスクリー
ニングする方法を欠いている。本発明は、その分野における長年の要求を満たす
ものである。
【0027】発明の概要 本発明は、真核生物の遺伝子発現の必須側面−mRNA5’キャップm7GpppNの形
成−を標的とする薬剤の発見を容易にする。本発明の根本的な原理は、必須キャ
ッピング酵素の構成または起源においてのみ異なる、異なる種の試験生物を使用
することである。例えば、その全てのキャッピング活性が、真菌供給源対哺乳類
供給源に由来する同遺伝子型の酵母菌株の構築が、真菌キャッピング機構を特異
的に標的とする分子を同定するための基礎を提供する。
【0028】 この中に開示されている方法は、構成または供給源においてのみ異なるキャッ
ピング酵素を包含する菌株の増殖を選択的に阻害する能力に関して、一連の候補
分子を試験する。本発明の1つの簡単な実施形態において、本方法は、構成また
は起源において異なるキャッピング酵素を包含する遺伝子組換え酵母菌株を接種
した寒天培養プレートに、候補分子の配列を局所的に添加することを含む。その
プレートをインキュベートして、酵母細胞を増殖させ、コンフルエント層を形成
する。添加部位の周りの増殖が全く無くまたは低下している「輪状(halo)」とし
て、添加した化合物による増殖阻害を検出する。本方法は、必然的に、全ての菌
株の増殖を阻害する多くの化合物を検出する;それら化合物はキャッピングに対
して非特異的と見なされ、それ以上追求されない。可能性のある候補化合物は、
1つの菌株の増殖を阻害するが、構成および起源において異なるキャッピング機
構を包含しかつそれ以外においては同一である菌株の増殖を阻害しない。例えば
、全ての真菌キャッピング機構を包含する酵母細胞の増殖を阻害するが、哺乳類
キャッピング機構を包含する酵母細胞の増殖にほとんどまたは全く影響を与えな
い分子が、抗真菌薬の見込みのあるリード化合物として見なされる。逆に、全て
の哺乳類キャッピング機構を包含する細胞の増殖を阻害するが、真菌キャッピン
グ機構を包含する細胞の増殖にほとんどまたは全く影響を与えない分子は、抗腫
瘍薬としての開発の可能性を有する、哺乳類細胞におけるキャッピングの特異的
阻害剤として考えてみる価値がある。
【0029】 また、本発明の方法は、ウィルスがコードするまたは寄生虫がコードするキャ
ッピング酵素を特異的に標的とする、潜在的抗ウィルス剤および駆虫薬の同定に
応用できる。本発明のその実施形態において、増殖阻害スクリーニングは、内因
性酵素の代わりに1つ以上のウィルスがコードするまたは寄生虫がコードするキ
ャッピング活性を包含する菌株に対して、一連の候補分子を試験することを含む
。ウィルスまたは寄生虫のキャッピング酵素成分を有する菌株の増殖を選択的に
阻害するが、哺乳類キャッピング機構を有する菌株を阻害しない化合物が、抗ウ
ィルスまたは駆虫活性をさらに評価するための見込みのあるリード化合物として
見なされる。
【0030】 本発明は、試験生物として真菌を使用することに限定されない。哺乳類細胞に
おける遺伝子ターゲティングの進歩によって、細胞のキャッピング活性をコード
する1つ以上の遺伝子を欠失させかつ別の供給源由来の類似酵素をコードする遺
伝子で置換した哺乳類細胞株を構築することが実現可能となる。従って、キャッ
ピング機構の組成または起源においてのみ異なるいくつかの細胞株の内1つの細
胞株の選択的増殖阻害に関するスクリーニングと並行して、候補のキャップター
ゲティング化合物をスクリーニングすることができる。ウィルスがコードするキ
ャッピング活性に依存する真核ウィルスも増殖阻害試験のための標的として開発
することができる。その実施形態において、必須キャッピング活性をコードする
ウィルス遺伝子を欠失させかつ別の供給源由来の類似酵素をコードする遺伝子で
置換する。許容宿主細胞上でのウィルスプラーク形成は、培地に添加された候補
薬剤によるウィルス複製の阻害に関する容易なウィルススクリーニング(プラー
ク数およびプラークサイズによる)を提供する。ある供給源由来のキャッピング
酵素を包含するウィルスの複製を選択的に阻害するが、別の供給源由来のキャッ
ピング酵素を包含するウィルスの複製を阻害しない薬剤は、キャップ形成の選択
的ターゲティングによってそのような阻害をもたらすと推測される。
【0031】 本発明はまた、キャップ形成を標的とする外因性分子を同定することに限定さ
れない。別の実施形態は、キャッピング酵素に対する細胞内効果を介して細胞増
殖を阻害する天然のまたは合成の遺伝子産物の、DNAに基づく同定を容易にする
。本発明のそのような応用において、候補の遺伝子または遺伝子ライブラリー(
天然のまたは合成の)で、例えば全ての真菌キャッピング機構を有する菌株のよ
うな試験酵母菌株を形質転換させる。ライブラリー中の遺伝子は、実験者がその
発現を抑制(グルコース培地中)、または誘導(ガラクトース培地中)し得るよ
うに、調節されたプロモーター(例えば、GALプロモーター)の制御下にある。
最初のスクリーニングは、グルコース上で増殖するが、ガラクトース上では増殖
が阻害されるようなライブラリー−形質転換細胞を選択する。そのような細胞か
ら回収されたプラスミドを細菌においてクローン増幅させ、さらにその後、真菌
キャッピング機構を包含する酵母菌株および1つまたは両方の哺乳類キャッピン
グ酵素を包含する菌株に並行して再導入する。真菌キャッピング機構を有する菌
株のガラクトース依存的増殖阻害菌株を誘導するが、哺乳類キャッピング成分を
有する菌株を阻害しないプラスミドが、真菌キャップ形成の特異的アンタゴニス
トをコードするプラスミドの優れた候補である。遺伝子産物をコードするプラス
ミドの配列が決定されると、推定上の阻害剤の正体が明らかになるであろう。さ
らに、DNAに基づく突然変異誘発によって、遺伝子産物のための構造活性相関を
描くことができる。
【0032】 本発明において記載された方法を用いて同定された増殖阻害分子または遺伝子
は、おそらく、多くの異なる機序:(i)同定された分子またその代謝産物による
キャップ形成酵素の1つの代謝活性の直接阻害;(ii)キャップ形成酵素の1つの
インビボでの機能に必要であるタンパク質−タンパク質相互作用の妨害;(iii)
キャップ形成のために利用できる基質(例えば、GTPおよびAdoMet)のレベルま
たはキャップ形成の内因性阻害剤(例えば、AdoHcy)のレベルの変化;ならびに
、(iv)RNAキャップに依存する細胞処理を効果的に「害する」増殖阻害分子(ま
たはその代謝産物)の存在下における異常なキャップ構造の合成:を介してキャ
ップ形成を標的とするであろう。
【0033】 本発明の1つの利点は、阻害機序に関して偏りを持たないで、キャッピング酵
素の組成または由来の違いに基づいて、キャッピング酵素のインビボにおける特
異的ターゲティングに適用されることである。候補分子が同定されれば、キャッ
ピング機構の1つの成分において異なる同遺伝子型菌株の増殖阻害に関してさら
なる試験を行うと、どの酵素が標的とされているかを明らかにすることができる
。さらに、関連する供給源由来の精製キャッピング酵素を用いた機構的研究が続
くであろう。
【0034】 また、本発明は、真菌RNA5’トリホスファターゼの触媒活性の候補阻害剤を同
定するためのインビトロスクリーニングを考えている。本方法は、酵母RNAトリ
ホスファターゼCet1pが二価陽イオン補因子としてのマグネシウムまたはコバル
トのどちらかに依存する活発なATPase活性を有するという事実を利用する[12]
。本方法は、簡単で、定量的で、かつ阻害剤のための高処理能スクリーニングに
適した比色検出測定法に適応できる。
【0035】図面の簡単な説明 図1は、グアニリルトランスフェラーゼのサインモチーフを示す。6つの同列
の配列要素、すなわち表示のモチーフI、III、IIIa、IV、V、およびVIが、細胞
およびウィルスのキャッピング酵素に存在する。サッカロミセス・セレビシエ(S
ce)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Spo)、カンジダ・アルビカンス(Cal)、クロ
レラ(Chlorella)ウィルスPBCV-1(ChV)、マウス(Mus)、アフリカブタコレラウィ
ルス(ASF)、ガンビアトリパノソーマ(Tbr)、クリチディア・ファシキュラタ(Cri
thidia fasciculate)(Cfa)、AcNPVバキュロウィルス(Lef4)、ワクシニアウィル
ス(Vac)、ショープ線維腫ウィルス(SFV)、および伝染性軟属腫ウィルス(MCV)の
酵素のアミノ酸配列を整列させている。モチーフを分けるアミノ酸残基の番号を
指示する。インビボでのCeg1p機能に必須である酵母酵素のモチーフのアミノ酸
を星印で表示する。
【0036】 図2は、真菌、後生動物、およびクロレラウィルスのmRNAキャッピング酵素に
おける保存配列要素を示す。カンジダ・アルビカンス(cal)、シゾサッカロミセ
ス・ポンベ(spo)、マウス(mus)、カエノルハブディチス・エレガンス(Caenorhab
ditis elegans)(cel)、およびクロレラウィルスPBCV-1によってコードされてい
るグアニリルトランスフェラーゼの相同領域と共に、サッカロミセス・セレビシ
エ(sce)のグアニリルトランスフェラーゼCeg1pの残基43から399のアミノ酸
配列を整列させている。8つの保存された同列の配列要素、すなわち表示のモチ
ーフP、I、III、IIIa、IV、V、Vc、およびVIを影付き囲みの中に示す。配列中の
ギャップをダッシュ(−)で示す。突然変異誘発分析によって特定した、インビ
ボでの酵素機能に必須であるCeg1p残基を星印で表示する。クロレラウィルスキ
ャッピング酵素−GTP混合結晶(co-crystal)においてGTPに近接する残基を、整列
させた配列の下に矢印で表示する。
【0037】 図3は、後生動物のキャッピング酵素およびバキュロウィルスホスファターゼ
BVPのRNAトリホスファターゼ領域を示す。マウスキャッピング酵素(Mus CE)およ
びカエノルハブディチス・エレガンスキャッピング酵素(Cel CE)のN末端RNAトリ
ホスファターゼ領域と共に、168-アミノ酸バキュロウィルスホスファターゼBVP
のアミノ酸配列を整列させる。配列中のギャップをダッシュ(−)で示す。3つ
の全てのタンパク質において保存されているアミノ酸を星印で表示する。ホスフ
ァターゼタンパク質のサインモチーフを影付き囲みの中に強調する。活性部位の
システインを太字で示す。システイニルホスフェート中間体の形成に関連する推
定の反応経路を示す。
【0038】 図4は、金属依存的RNAトリホスファターゼの保存配列要素を示す。サッカロミ
セス・セレビシエ(Cet1)、ワクシニアウィルス(vvD1)、ショープ線維腫ウィルス
(SFV)、伝染性軟属腫ウィルス(MCV)、アフリカブタコレラウィルス(ASF)、バキ
ュロウィルス(Lef4)、およびカンジダ・アルビカンス(Cal)における3つの保存
モチーフ、すなわち表示のA、B、およびCを図に整列させる。また、サッカロミ
セス・セレビシエYMR180cオープンリーディングフレーム(180c)の推定上の翻訳
産物もその整列に含めている。2つ以上の異なる科に属する細胞において保存さ
れているCet1p残基を影付きで示す。モチーフを分けるアミノ酸の番号を示す。
ワクシニアウィルスのキャッピング酵素におけるトリホスファターゼ活性に必須
である5つのアミノ酸に下線を付す。インビボにおけるCET1機能およびインビト
ロにおけるCet1 RNAトリホスファターゼ活性に必須である、Cet1p残基のGlu-305
、Glu-307、Arg-454、Glu-492、Glu-494、およびGlu-496を矢印で表示する。整
列させた配列の上に、酵母の456-アミノ酸RNAトリホスファターゼCet1p内のモチ
ーフA、B、およびCの配置を図示する。g−ホスフェートの加水分解に十分なC末
端の触媒領域を角括弧で示す。
【0039】 図5は、ヒトおよび酵母のキャップメチルトランスフェラーゼにおけるアミノ
酸配列の保存を示す。酵母Abd1p(abd)の完全配列、および残基1−373からのカエ
ノルハブディチス・エレガンスC25A1.f遺伝子産物(ce1)の推定402-アミノ酸と共
に、476-アミノ酸Hcm1pタンパク質(hcm)の完全アミノ酸配列を整列させる。配列
中のギャップをダッシュ(−)で示す。Hcm1pおよびAbd1pのC末端を星印で示す
。Abd1pまたはカエノルハブディチス・エレガンスタンパク質中の残基と同一ま
たは類似のHcm1p中の残基を影付き囲みで示す。Abd1p機能に必須であるアミノ酸
をドットで表示する。
【0040】 図6は、Cet1(201-549)pのRNAトリホスファターゼ活性に対する突然変異効果を
示す。(A) タンパク質精製:組換えられた野生型(WT) Cet1(201-549)pおよび指
示されたCet1(201-549)p-Ala変異体のNiアガロース調製物の一部(3μg)を0.1%
SDS含有12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。クーマシーブルー染色に
よってポリペプチドを可視化させた。マーカータンパク質の位置およびサイズ(k
Da)を左に示す。(B) RNAトリホスファターゼ活性:50mM Tris-HCl (pH7.5)、5m
M DTT、1mM MgCl2、[γ32P]−ポリ(A)(三リン酸末端20pmol)、およびWTまたは指
示された変異体の何れかを含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分間イ
ンキュベートした。その混合物の一部をポリエチレンイミン−セルロースTLCプ
レートに添加し、0.75Mリン酸カリウム(pH4.3)を用いて展開させた。32Pi遊離を
添加タンパク質量の関数としてプロットする。
【0041】 図7は、Cet1pによるATPの加水分解を示す。50mM Tris-HCl (pH7.5)、5mM DTT
、1mM[γ32P]ATP、組換えCet1p(ホスホセルロース画分)(250ng)、および指示さ
れた1mM二価陽イオンを含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分間インキュ
ベートした。その混合物の一部(4μl)をポリエチレンイミン−セルロースTLCプ
レートに添加し、0.5M LiCl2、1Mギ酸を用いて展開させた。TLPプレートのオー
トラジオグラフィーを示す。PiおよびATPの位置を左に示す。
【0042】 図8は、Cet1pによるATP加水分解の速度論的解析を示す。(A) タンパク質の滴
定:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、およびCet1
p、Cet1(201-549)p、またはCet1(246-549)pのいずれかを含有する反応混合物(10
μl)を30℃で15分間インキュベートした。32Pi遊離を添加タンパク質量の関
数としてプロットする。(B) 速度論的解析:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、
2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、および8、16、または32nMの何れかの量のCet1pを含
有する反応混合物(100μl)を30℃でインキュベートした。その一部(10μl)を
指示された時間に採取し、5Mギ酸(2.5μl)を添加して即時に反応を停止させた。 32 Pi遊離を時間の関数としてプロットする。(C) [α32P]ATPの加水分解:50mM T
ris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[α32P]ATP、およびCet1p(100ng)を
含有する反応混合物(100μl)を30℃でインキュベートした。その一部(10μl)
を指示された時間に採取し、5Mギ酸で反応を停止させた。その産物をTLCで分析
した。[α32P]ADP(o)および[α32P]AMP(q)のレベルを時間の関数としてプロット
する。別に、1mM[γ32P]ATPを含有する同様の反応を並行して分析した;Pi遊離
を(●)で示す。(D) ATP依存性:50mM Tris-HCl (pH7.0)、5mM DTT、2mM MnCl2 、Cet1p(40pg)、および指示された[γ32P]ATPを含有する反応混合物(20μl)を3
0℃で15分間インキュベートした。32Pi遊離をATP濃度の関数としてプロット
する。挿入図:データの二重逆数プロットを示す。
【0043】 図9は、組換えHcm1pのキャップメチルトランスフェラーゼ活性を示す。完全反
応混合物(レーン1)は、その10μ中に、50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM DTT、キャ
ップ標識ポリ(A)(16fmol)、50μM AdoMet、およびHcm1p(Ni-アガロース、0.2Mイ
ミダゾール溶出画分) (〜50fmol)を含有する。反応成分は以下のように変化する
:AdoMetを含まない(レーン2);AdoMetを含まず、50μM AdoHcyを含む(レー
ン3);50μM AdoMetおよび500μM AdoHcyを含む(レーン4);Hcm1pを含まな
い(レーン5);Hcm1pを含まず、精製組換えワクシニアキャッピング酵素を含
む(レーン6)。37℃で10分間インキュベートした後、反応混合物を95℃
で5分間加熱し、さらに50mM酢酸ナトリウム(pH5.5)溶液に調製した。その試料
をヌクレアーゼP1(5μg)と共に37℃で30-60分間インキュベートした。次
に、その消化物をポリエチレンイミンセルロースTLCプレートにスポットして、0
.2M (NH4)2SO4を用いて展開させた。そのクロマトグラムのオートラジオグラフ
ィーを示す。クロマトグラフの原点、ならびにキャップジヌクレオチドm7GpppA
およびGpppAの位置を右に示す。
【0044】 図10は、ヒトキャップメチルトランスフェラーゼのグリセロール密度勾配沈
降を示す。以下の方法に記載のように、グリセロール密度勾配によって、Hcm1p
のNi-アガロース画分(パネルA)、ならびにN末端欠失変異体Δ120(パネルB)およ
びΔ151(パネルC)を沈降させた。チューブの底から画分を回収した(画分1)。
密度勾配に添加した物質の一部(レーンNi)と共に、1つ置きの画分の一部(20
μl)をSDS-PAGEによって分析した。ゲルを固定し、クーマシーブルーで染色し
た。同時に電気泳動したマーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を各ゲ
ルの左に示す。メチルトランスフェラーゼ反応混合物は、キャップ標識ポリ(A)(
16fmol)、50μM AdoMet、ならびにHcm1pおよびΔ120のグリセロール密度勾配か
らの指示された画分を1/500に希釈したもの(1ml)、あるいはΔ151のグリセロー
ル密度勾配からの画分を1/50に希釈したもの(1ml)を含有する。反応産物をヌク
レアーゼP1で消化し、TLCで分析した。FUJIX BAS1000ホスホリメジャー(phospho
rimager)を用いて、クロマトグラムを走査させて、キャップメチル化[m7GpppA/(
m7GpppA+GpppA)]の程度を特定した。並行させて遠心したマーカータンパク質で
あるカタラーゼ、BSA、およびシトクロムCのピークを矢印で示す。
【0045】 図11は、Hcm1pのN末端欠失変異体によるキャップメチル化を示す。(A) ポリ
ペプチド組成:野生型Hcm1p、ならびに欠失変異体Δ120およびΔ151のグリセロ
ール密度勾配ピーク画分をSDS-PAGEで分析した。クーマシーブルー染色によって
ポリペプチドを可視化した。マーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を
左に示す。(B)メチルトランスフェラーゼ活性:反応混合物は、キャップ標識ポ
リ(A)(20fmol)、50μM AdoMet、および指示されたWT、Δ120、またはΔ151酵素
を含有する。
【0046】 図12は、インビボでの酵母Abd1pのためのヒトキャップメチルトランスフェラ
ーゼ置換を示す。野生型HCM1遺伝子または指示されたN末端欠失変異体を含有す
る2m TRP1プラスミド(パネルA)またはCEN TRP1プラスミド(パネルB)を用いて
、酵母菌株YBS10(MATa ura3 trp1 lys2 his3 leu2 abd1:: hisG [pCEN URA3 ABD
1])を形質転換させた。TRP1ベクター単独、およびABD1包含CEN TRP1プラスミド
を用いて、対照の形質転換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレートにお
いて、Trp+単離細胞を画線培養した。30℃で3日間インキュベートした後、プ
レートを撮影した。
【0047】 図13は、哺乳類キャッピング酵素による酵母キャッピング機構の置換を示す
。(A) 指示する遺伝子を包含するCEN TRP1プラスミドで酵母菌株YBS50(Δcet1
Δceg1)を形質転換させた。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレートにおいて、Trp+
単離細胞を画線培養した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮
影した。(B) 以下に記載のCEN TRP1プラスミドを用いて、1つ以上の酵母キャッ
ピング酵素遺伝子座において欠失させた同遺伝子型の菌株を形質転換させ、さら
に5-FOA上で選択した。YPD寒天プレートにおいて、FOA耐性単離細胞を画線培養
した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。HCM1Δ120 M
CE1は、HCM1(121-476)およびMCE1で形質転換させたYBS52であり;ABD1 CET1 C
EG1は、単一のプラスミド上のABD1 CET1およびCEG1で形質転換させたYBS52であ
り;ABD1 MCE1は、MCE1で形質転換させたYBS50であり;HCM1Δ120 CET1 CEG1は
、HCM1(121-476)で形質転換させたYBS40である。
【0048】 図14は、サッカロミセス・セレビシエにおける遺伝的相補性による、カンジ
ダ・アルビカンスキャップメチルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングを示
す。(図14A)2μライブラリープラスミドpCCM1-6.6およびそのサブクローンp
CCM1-3.9のカンジダ・アルビカンスゲノムDNAへの挿入を図示する。サブクロー
ニングに用いられる制限酵素部位および遺伝子マッピングを示す。CCM1オープン
リーディングフレームを影線で表し、コード鎖の方向を矢印で示す。(図14B
)CCM1によるabd1-5の相補性:2μ URA3プラスミドpCCM1-6.6、pCCM1-3.9、YEp2
4(ベクター)、およびYEp24-ABD1で酵母菌株abd1-5を形質転換させた。ウラシル
を欠く寒天培地において、形質転換体を画線培養し、25℃または37℃の何れ
かでインキュベートした。(図14C)474-アミノ酸Ccm1pタンパク質の配列を示
す。アラニン走査(alanine scanning)によって見出されたHcm1p機能に必須であ
る8アミノ酸に対応するCcm1p残基をドットで表示する。
【0049】 図15は、カンジダ・アルビカンスのキャップメチルトランスフェラーゼによ
るサッカロミセス・セレビシエΔabd1菌株の相補性、およびインビボでのCCM1機
能に対するN末端欠失の影響を示す。CCM1の指示する配列を包含するCEN TRP1プ
ラスミドで、酵母菌株YBS40を形質転換させた。TRP1ベクター単独、およびp358-
ABD1を用いて、対照の形質転換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレート
においてTrp+単離細胞を画線培養した。30℃で3日間インキュベートした後、
プレートを撮影した。
【0050】 図16は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼのインビボでの欠失
分析を示す。CET1または指示されたCaCET1配列の何れかを包含するCEN TRP1プラ
スミドで、YBS20を形質転換させた。TRP1ベクターを用いて、対照の形質転換を
実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレートにおいて、Trp+単離細胞を画線培
養した。25℃で7日間インキュベートした後、プレートを撮影した。カンジダ
・アルビカンス(Ca) Cet1pの相同部分と共に、サッカロミセス・セレビシエ(Sc)
Cet1pの残基225-265からのアミノ酸配列を整列させた。同一アミノ酸をコロン(
:)で表し;側鎖の類似性をドット(.)で示す。CET1およびCaCET1の生育可能
なN末端欠失配列の範囲を整列させた配列の上および下に矢印で示す。致死的CaC
ET1(217-520)変異体のN末端をバツ印付きの小さな矢印で示す。
【0051】 図17は、インビボでのサッカロミセス・セレビシエCET1機能に対するN末端欠
失の影響を示す。CET1の指示されたN末端欠失配列を包含するCEN TRP1プラスミ
ドで、酵母菌株YBS20を形質転換させた。TRP1ベクターを用いて、対照の形質転
換を実施した。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレートにおいて、Trp+単離細胞を画
線培養した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。
【0052】 図18は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構のトリホス
ファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ成分の置換を示す。指示された
遺伝子を包含するCEN TRP1プラスミドで、酵母菌株YBS50(Δcet1 Δceg1)を形質
転換させた。5-FOA(0.75mg/ml)含有寒天プレートにおいて、Trp+単離細胞を画線
培養した。30℃で3日間インキュベートした後、プレートを撮影した。
【0053】 図19は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構の完全置換
を示す。以下に記載のTRP1プラスミドで、酵母菌株YBS52(Δcet1 Δceg1 Δabd1
)を形質転換させ、さらに5-FOA上で選択した。30℃で3日間インキュベートし
た後、プレートを撮影した。単一のCENプラスミド上の3つのサッカロミセス・セ
レビシエ遺伝子で、ABD1 CET1 CEG1を形質転換させた。それぞれ、CENプラスミ
ドpCAN-CAP-2、およびpCAN-CAP-2上の指示された組の3つのサッカロミセスセレ
ビシエ遺伝子で、CaCET1(179-520) CGT1 CCM1(137-474)、およびCaCET(179-520)
CGT1 CCM1を形質転換させた。CEN MCE1および2μHCM1(121-476)で、MCE1 HCM1(
121-476)を同時に形質転換させた。
【0054】 図20は、組換えられた、CaCet1p、CaCet1(203-520)p (Δ202)、およびCaCet1
(217-520)p (Δ216)の精製を示す。ホスホセルロースカラム溶出プロフィールを
SDS-PAGEによって分析した。ホスホセルロースカラムに添加したNi-アガロース
画分の一部(20μl)(レーンNi)、ホスホセルロース通過画分(レーンF)、ホスホセ
ルロース50mM NaCl洗浄画分(レーン50)、100mM NaCl溶出画分(レーン100)、200m
M NaCl溶出画分(レーン200)、500mM NaCl溶出画分(レーン500)、および1M NaCl
溶出画分(レーン1000)を0.1%SDS含有12.5%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳
動した。クーマシーブルー染色によってポリペプチドを可視化した。同時に電気
泳動したマーカーポリペプチドの位置およびサイズ(kDa)を各ゲルの右に示す。
【0055】 図21は、CaCet1pおよびCaCet1pのN末端欠失変異体のマンガン依存的ATPase活
性を示す。(図21A)ポリペプチド組成:組換えられた、CaCet1p、CaCet1(203
-520)p (Δ202)、およびCaCet1(217-520)p (Δ216)のホスホセルロース調製物の
一部(4μg)を0.1%SDS含有12.5%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。ク
ーマシーブルー染色によってポリペプチドを可視化した。同時に電気泳動したマ
ーカータンパク質の位置およびサイズ(kDa)を左に示す。(図21B)ATPase活性
:50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM DTT、2mM MnCl2、1mM[γ32P]ATP、および指示さ
れたCaCet1p、Δ202またはΔ216を含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分
間インキュベートした。5Mギ酸(2.5μl)を添加して反応を停止させた。各混合物
の一部(2.5μl)をポリエチレンイミン−セルロースTLCプレートに添加して、0.5
M LiCl2、1Mギ酸を用いて展開させた。FUJIX BAS2000バイオイメージングアナ
ライザー(Bio-Imaging Analyzer)を用いてTLCプレートを走査させることによっ
て、[γ32P]ATPからの32Pi遊離を定量化した。
【0056】 図22は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼによるATP加水分解
が、マンガンおよびコバルトによって特異的に活性化されることを示す。(図2
2A)二価陽イオン特異性:50mM Tris-HCl (pH7.5)、1mM[γ32P]ATP、CaCet1(20
3-520)p (Δ202)(50ng)、および指示された2mM二価陽イオンを含有する反応混合
物(10μl)を30℃で15分間インキュベートした。Mg、Mn、Ca、Co、およびZnは
、塩化物として添加し;Cuは硫酸銅として添加した。反応産物をTLCで分析した
。(図22B)マンガンおよびコバルトの滴定: Tris-HCl (pH7.5)、Δ202(50ng
)、1mM[γ32P]ATP、および指示されたMnCl2またはCoCl2の何れかを含有する反応
混合物(10μl)を30℃で15分間インキュベートした。Pi遊離をマンガンまた
はコバルトの濃度の関数としてプロットする。
【0057】 図23は、組換えCaCet1(203-540)pのRNAトリホスファターゼ活性を示す。50mM
Tris-HCl (pH7.5)、5mM DTT、1mM MnCl2、[γ32P]ポリ(A)(三リン酸末端20pmol
)、および指示されたΔ202を含有する反応混合物(10μl)を30℃で15分間イ
ンキュベートした。5Mギ酸(2.5μl)を添加して反応を停止させた。混合物の一部
(5μl)をポリエチレンイミン−セルロースTLCプレートに添加して、0.75Mリン
酸カリウム(pH4.3)を用いて展開させた。Pi遊離を添加したΔ202タンパク質量の
関数としてプロットする。
【0058】発明の詳細な説明 本発明は、真菌または哺乳類のキャッピング酵素を包含する同遺伝子型の酵母
菌株に関して記載する。それら菌株は、例えば、病原菌におけるキャップ形成(
キャッピング)を阻止するための薬剤発見の魅力的な手段を提供する。「真菌キ
ャッピング」菌株に対して選択的に細胞傷害性であるが、「哺乳類キャッピング
」菌株に対しては細胞傷害性でない任意の化合物が、菌類の特異的阻害剤の強力
な候補である。宿主生物のキャッピング酵素をコードする遺伝子の1つのサブセ
ットのみを真菌または哺乳類のキャッピング酵素をコードする遺伝子の対応サブ
セットで置換した菌株を比較することによる、細胞傷害性に関する第2スクリー
ニングによって、何れのキャッピング酵素がそのような化合物によって標的とさ
れるかを特定することができる。
【0059】 さらに、本発明は、真菌キャッピング機構に対する効果を介して細胞増殖を阻
止する抗真菌化合物を同定するためのインビボ方法の詳細な説明をこの中に記載
する。本発明の基本的原理は、必須キャッピング酵素の組成または起源において
のみ異なる、サッカロミセス・セレビシエのような試験生物の異なる菌株を用い
ることである。さらに、本発明は、それらの全てのキャッピング活性が病原菌ま
たは哺乳類に由来するような同遺伝子型酵母菌株を提供する。
【0060】 本発明は、3成分サッカロミセス・セレビシエキャッピング機構の全てが病原
菌カンジダ・アルビカンスの3成分キャッピング機構によって置換されている酵
母菌株の構築に関して記載する。その菌株の構築は、キャップメチルトランスフ
ェラーゼをコードするカンジダ・アルビカンス遺伝子のクローニングおよび特徴
付けを条件としており、それらもこの中に記載されている。
【0061】 また、本発明は、キャップ合成における3つの工程の中の最初の工程を触媒す
る必須酵素である真菌RNAトリホスファターゼを阻害する分子のインビトロでの
スクリーニング方法を提供する。本スクリーニング方法は、サッカロミセス・セ
レビシエ酵素Cet1pによって例示されるマンガンまたはコバルト等の二価陽イオ
ン補因子の存在下においてヌクレオシド3リン酸を加水分解する真菌RNAトリホ
スファターゼの固有の能力を利用する。さらに、本発明は、病原菌カンジダ・ア
ルビカンスによってコードされるRNAトリホスファターゼの固有のマンガンまた
はコバルト依存的ヌクレオシドトリホスファターゼ活性に関する実証を含む。
【0062】 本発明は、ある生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物をスク
リーニングする方法に関するものであり:a)第1生物由来の5’mRNAキャッピン
グ機能をコードする遺伝子で、5’mRNAキャッピング機能をコードする宿主生物
の遺伝子を置換し、それによって、第1生物のキャッピング機構を発現する宿主
生物を作成し;b)第1生物とは異なる第2生物由来の5’mRNAキャッピング機能
をコードする遺伝子で、第 5’mRNAキャッピング機能をコードする宿主生物の
遺伝子を置換し、それによって、第2生物のキャッピング機構を発現する宿主生
物を作成し;c)第1生物のキャッピング機構を発現する宿主生物および第2生物
のキャッピング機構を発現する宿主生物を試験化合物で処理し;さらに、d)第1
生物のキャッピング機構を発現する宿主生物の増殖阻害を第2生物のキャッピン
グ機構を発現する宿主生物の増殖阻害と比較する:各工程を含む。第2生物のキ
ャッピング機構を発現する宿主生物と比較して、第1生物のキャッピング機構を
発現する宿主生物の増殖のみを阻害することは、その試験化合物が第1生物の5
’mRNAキャッピング機能を阻害することを示唆し、一方で、第1生物のキャッピ
ング機構を発現する宿主生物と比較して、第2生物のキャッピング機構を発現す
る宿主生物の増殖のみを阻害することは、その化合物が第2生物の5’mRNAキャ
ッピング機能を阻害することを示唆する。ウィルス、真菌細胞、昆虫細胞、植物
細胞、および哺乳類細胞より成る群から、代表的宿主生物を選択する。宿主生物
がウィルスである場合、第1生物のキャッピング機構を発現するウィルスと第2
生物のキャッピング機構を発現するウィルスとの増殖阻害の比較は、ウィルス許
容宿主細胞上に形成されたウィルスプラークの数、およびウィルス許容宿主細胞
上に形成されたウィルスプラークのサイズによって特定される。好ましい真菌宿
主生物は、サッカロミセス・セレビシエである。好ましくは、第1生物および第
2生物は、ウィルス、真菌、原生動物、植物、昆虫、および哺乳類より成る群か
ら選択される。通常、試験化合物は、化学薬品、薬剤、またはタンパク質の何れ
かである。好ましくは、タンパク質は、宿主生物によって発現されるDNAによっ
てコードされ、DNAは誘導可能なプロモーターに操作可能に結合している。好ま
しくは、本方法によって阻害される5’mRNAキャッピング機能は、RNAトリホス
ファターゼ、RNAグアニリルトランスフェラーゼ、またはRNA(グアニン−N7)−メ
チルトランスフェラーゼである。
【0063】 本発明は、ある生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物をスクリ
ーニングする方法に関するものであり:a)第1生物由来の5’mRNAキャッピング
機能をコードする遺伝子で、5’mRNAキャッピング機能をコードするサッカロミ
セス・セレビシエの遺伝子を置換し、それによって、第1生物のキャッピング機
構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞を作成し;b)第1生物とは異なる
第2生物由来の5’mRNAキャッピング機能をコードする遺伝子で、5’mRNAキャ
ッピング機能をコードするサッカロミセス・セレビシエの遺伝子を置換し、それ
によって、第2生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ
細胞を作成し;c)第1生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレ
ビシエ細胞および第2生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレ
ビシエ細胞を試験化合物で処理し;d)第1生物のキャッピング機構を発現するサ
ッカロミセス・セレビシエ細胞の増殖阻害を第2生物のキャッピング機構を発現
するサッカロミセス・セレビシエ細胞の増殖阻害と比較する:各工程を含む。第
2生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞と比較し
て、第1生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞の
増殖のみを阻害することは、その試験化合物が第1生物の5’mRNAキャッピング
機能を阻害することを示唆し、一方で、第1生物のキャッピング機構を発現する
サッカロミセス・セレビシエ細胞と比較して、第2生物のキャッピング機構を発
現するサッカロミセス・セレビシエ細胞の増殖のみを阻害することは、その化合
物が第2生物の5’mRNAキャッピング機能を阻害することを示唆する。好ましく
は、第1生物および第2生物は、ウィルス、真菌、原生動物、植物、昆虫、およ
び哺乳類より成る群から選択される。通常、試験化合物は、化学薬品、薬剤、ま
たはタンパク質の何れかである。好ましくは、タンパク質は、サッカロミセス・
セレビシエ細胞によって発現されるDNAによってコードされ、DNAは誘導可能なプ
ロモーターに操作可能に連結される。好ましくは、本方法によって阻害される5
’mRNAキャッピング機能は、RNAトリホスファターゼ、RNAグアニリルトランスフ
ェラーゼ、またはRNA(グアニン−N7)−メチルトランスフェラーゼである。
【0064】 本発明は、ある生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物をスクリ
ーニングする方法に関するものであり:a)真菌生物由来の5’mRNAキャッピング
機能をコードする遺伝子で、5’mRNAキャッピング機能をコードするサッカロミ
セス・セレビシエの遺伝子を置換し、それによって、真菌生物のキャッピング機
構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞を作成し;b)哺乳類生物由来の5
’mRNAキャッピング機能をコードする遺伝子で、5’mRNAキャッピング機能をコ
ードするサッカロミセス・セレビシエの遺伝子を置換し、それによって、哺乳類
生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞を作成し;
c)真菌生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞およ
び哺乳類生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞を
試験化合物で処理し;d)真菌生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス
・セレビシエ細胞の増殖阻害を哺乳類生物のキャッピング機構を発現するサッカ
ロミセス・セレビシエ細胞の増殖阻害と比較する:各工程を含む。哺乳類生物の
キャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞と比較して、真菌
生物のキャッピング機構を発現するサッカロミセス・セレビシエ細胞の増殖のみ
を阻害することは、その試験化合物が真菌生物の5’mRNAキャッピング機能を阻
害することを示唆し、一方で、真菌生物のキャッピング機構を発現するサッカロ
ミセス・セレビシエ細胞と比較して、哺乳類生物のキャッピング機構を発現する
サッカロミセス・セレビシエ細胞の増殖のみを阻害することは、その化合物が哺
乳類生物の5’mRNAキャッピング機能を阻害することを示唆する。通常、試験化
合物は、化学薬品、薬剤、またはタンパク質の何れかである。好ましくは、タン
パク質は、サッカロミセス・セレビシエ細胞によって発現されるDNAによってコ
ードされ、DNAは誘導可能なプロモーターに操作可能に連結される。好ましくは
、本方法によって阻害される5’mRNAキャッピング機能は、RNAトリホスファタ
ーゼ、RNAグアニリルトランスフェラーゼ、またはRNA(グアニン−N7)−メチルト
ランスフェラーゼである。置換遺伝子が由来する例示的真菌生物はカンジダ・ア
ルビカンスである。
【0065】 本発明は、真菌RNA5’トリホスファターゼの触媒活性を阻害する化合物をス
クリーニングする方法に関するものであり:a) 試験化合物の存在下および不在
下において、真菌RNA5’トリホスファターゼとヌクレオシド3リン酸および二
価陽イオン補因子とを接触させ;さらに、b)ヌクレオシド3リン酸の加水分解を
検出する:各工程を含む。ヌクレオシド3リン酸の加水分解の喪失、またはヌク
レオシド3リン酸の加水分解の低下は、その試験化合物による真菌RNA5’トリ
ホスファターゼの阻害を示唆する。好ましくは、二価陽イオン補因子は、マンガ
ンおよびコバルトより成る群から選択される。加水分解の検出は当業者に周知の
任意の方法によって成されるが、好ましい方法として、放射性同位体検定および
比色法が挙げられる。代表的な真菌RNAトリホスファターゼは、サッカロミセス
・セレビシエおよびカンジダ・アルビカンスである。
【0066】 また、本発明は、形質転換宿主生物に関するものであり、5’mRNAキャッピン
グ機能をコードするその宿主生物の遺伝子は、5’mRNAキャッピング機能をコ
ードする置換遺伝子で置換される。下記のように形質転換される代表的宿主生物
として、ウィルス、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞および哺乳類細胞が挙げられ
る。好ましくは、置換遺伝子は、ウィルス、真菌、原生動物、植物、昆虫および
哺乳類より成る群から選択される生物に由来する。好ましい宿主生物は、サッカ
ロミセス・セレビシエであり、サッカロミセス・セレビシエの好ましい菌株はYB
S52(Δcet1、Δceg1、Δabd1)である。さらに好ましくは、その置換遺伝子は真
菌および哺乳類より成る群から選択される生物に由来し、真菌由来の置換遺伝子
はABD1,CET1およびCEG1であり、結果として生じる遺伝子型はMATa leu2 ade2 t
rp1 his3 ura3 can1 ceg1::hisG cet1::LEU2 abd1::KAN p360-CET1/CEG1/ABD1で
あり、あるいは、哺乳類由来の置換遺伝子はHCM1およびMCE1である。置換遺伝子
が由来する好ましい生物はカンジダ・アルビカンスであり;それら置換遺伝子は
CaCET1、CGT1およびCCM1を包含する。例えば、サッカロミセス・セレビシエ由来
のABD1遺伝子をカンジダ・アルビカンス由来のCCM1遺伝子で置換して差し支えな
く、あるいは、サッカロミセス・セレビシエ由来のCET1およびCEG1遺伝子をカン
ジダ・アルビカンス由来のCaCET1およびCGT1遺伝子で置換して差し支えない。
【0067】 また、本発明は、そのABD1遺伝子がカンジダ・アルビカンスのCCM1遺伝子で置
換されている形質転換宿主サッカロミセス・セレビシエに関する。また、本発明
は、そのCET1およびCEG1遺伝子がカンジダ・アルビカンスのCaCET1およびCGT1遺
伝子で置換されている形質転換宿主サッカロミセス・セレビシエに関する。
【0068】 また、本発明は、カンジダ・アルビカンス由来のmRNAキャップメチル化酵素Ad
oMet:RNA(グアニン-N7)-メチルトランスフェラーゼをコードする単離されたCCM1
遺伝子を提供する。
【0069】 本発明に基づき、当業技術の範囲内の従来の分生物学的技術、細菌学的技術お
よび組換え遺伝子技術を用いて差し支えない。そのような技術は、文献において
完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch&Maniatis, “Molecular C
loning: A Laboratory Manual (1982); “DNA Cloning: A Practical Approach,
” Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985); “Oligonucleotide Synthesis
” (M.J. Gait ed. 1984); “Nucleic Acid Hybridization” [B.D. Hames & S
.J.Higgins eds.(1985)]; Transcription and translation” [B.D. Hames
& S.J.Higgins eds.(1984)]; “Animal Cell Culture” [R.I. Freshney,
ed (1986)]; “Immobilized Cells And Enzymes” [IRL Press, (1986)]; B.Pe
rbal, “A Practical Guide To Molecular Cloning” (1984)に記載されている
。従って、本明細書内において用いられた場合、以下の用語は、下記の定義を有
する。
【0070】 「DNA分子」は、一本鎖形態または二本鎖螺旋形態の何れかのデオキシリボヌク
レオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)の重合体を称する。DN
A分子の用語は、その分子の1次および2次構造のみを称し、特定の3次構造に
限定されない。従って、DNA分子の用語は、特に、直線DNA分子(例えば制限酵素
断片)、ウィルス、プラスミドおよび染色体において認められる二本鎖DNAを含
む。この中で構造に関して議論する際に、DNAの転写されない鎖(すなわちmRNA
に相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向にある配列のみを与える通
常のやり方に従う。
【0071】 「ベクター」は、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドのようなレプ
リコンであり、それに対して別のDNA断片が結合してその結合した断片の複製を
もたらすことができる。「レプリコン」は、インビボにおいてDNA複製の自律単
位として機能する;すなわち、それ自体の制御下において複製し得る任意の遺伝
要素(例えば、プラスミド、染色体、ウィルス)である。「複製起点」は、DNA
合成を開始するDNA配列を称する。「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写およ
び翻訳を制御および調節するDNA配列である。RNAポリメラーゼがコード配列をmR
NAに転写し、さらにその転写物がそのコード配列によってコードされるタンパク
質に翻訳される場合、そのコード配列は転写および翻訳制御配列に「作動可能に
結合し」さらにそれらの「制御下」にある。
【0072】 通常、宿主との関連において、挿入DNA断片の効率的な転写および翻訳を促進
させるプロモーターを包含する発現ベクターを用いる。発現ベクターは、通常、
複製起点、プロモーター、ターミネーター、ならびに形質転換細胞において表現
型の選択をもたらし得る特定遺伝子を包含する。当業界で公知の手段に従って形
質転換宿主を発酵および培養して、最適な細胞増殖を得ることができる。
【0073】 DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビボ
において、転写されかつポリペプチドに翻訳される二本鎖DNA配列を称する。5
’(アミノ)末端における開始コドンおよび3’(カルボキシル)末端における
翻訳終止コドンによって、コード配列の境界が特定される。コード配列として、
限定はされないが、原核生物の配列、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物(
例えば、哺乳類)のDNA由来のゲノムDNA配列および合成DNA配列等が挙げられる
。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に
位置する。「cDNA」は、コピーDNAまたは相補DNAとして定義され、mRNA転写物
からの逆転写反応の産物である。「エキソン」が遺伝子座から転写された発現さ
れる配列であるのに対して、「イントロン」は遺伝子座から転写された発現され
ない配列である。
【0074】 転写および翻訳の制御配列は、宿主細胞においてコード配列の発現をもたらす
、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネータ
ー等のDNA調節配列である。「シス-要素」は、「コンセンサス配列」または「モ
チーフ」とも称され、特定遺伝子座の発現を促進させまたは抑制することができ
る他のタンパク質と相互作用する。「シグナル配列」はコード配列と共に包含さ
れていて差し支えない。その配列は、宿主細胞に伝達してそのポリペプチドを細
胞表面に方向付けしあるいはそのポリペプチドを媒体中に分泌するようなそのポ
リペプチドのN末端にあるシグナルペプチドをコードする。シグナル配列は原核
生物および真核生物に天然に存在する種々のタンパク質に関連することが分かる
【0075】 「プロモーター配列」は、細胞においてRNAポリメラーゼに結合しかつ下流(3
’側)のコード配列の転写を開始させ得るDNA調節領域である。本発明を特定す
る目的において、プロモーター配列は、その3’末端において転写開始部位に結
合し、さらに、バックグラウンドを越える検出可能なレベルで転写を開始するの
に必要な最小数の塩基または要素を含むように上流(5’側)に伸長する。プロ
モーター配列内に、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼに対する結合を担
うタンパク質結合部位(コンセンサス配列)が認められる。真核生物のプロモー
ターは、必ずではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを包含する
ことが多い。原核生物プロモーターは、−10および−35コンセンサス配列に
加えて、シャイン・ダルガーノ配列を包含する。
【0076】 外因性または異種DNAが細胞内に導入された場合、細胞はそのようなDNAによっ
て「形質転換」または「トランスフェクト」されている。形質転換DNAは細胞の
ゲノム中に(共有結合して)一体化されても一体化されなくても差し支えない。
例えば、原核細胞、酵母および哺乳類細胞において、形質転換DNAは、プラスミ
ドのようなエピソーム要素上に保持されていて差し支えない。真核細胞に関して
、安定に形質転換された細胞は、形質転換DNAが染色体に一体化されて染色体複
製を介して娘細胞に受け継がれるような細胞である。その安定性は、真核細胞が
、形質転換DNAを包含する娘細胞の集団から成る細胞株またはクローンを樹立す
る能力によって説明される。「クローン」は、有糸分裂によって単一の細胞また
は祖先に由来する細胞集団である。「細胞株」は何世代にも亘りインビトロで安
定に増殖し得る初代細胞のクローンである。外因性遺伝子で形質転換された植物
または動物等の生物を「トランスジェニック」と称する。
【0077】 この中で用いられている「宿主生物」の用語は、原核細胞のみでなく、酵母、
植物および動物細胞等の真核細胞も含むことを意味する。当業者に周知の任意技
術を用いて、宿主を形質転換させるために組換えDNA分子または遺伝子を用いて
差し支えない。原核宿主として、大腸菌、サルモネラ・タイムフィムリウム(ネ
ズミチフス菌)、セラシア・マルセッセンスおよび枯草菌が挙げられる。真核宿
主として、ピッチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母、哺乳類細胞
および昆虫細胞、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)およびタバ
キュム・ニコチアナ(Tabaccum nicotiana)等の植物細胞が挙げられる。
【0078】 以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を例示する目的で与えられており、
何ら本発明を限定することを意図していない。
【0079】実施例1 酵母RNAトリホスファターゼの発現および精製 Hoらが記載したように、His−タグ付けCet1p、Cet1(201-549)p、およびCet1(24
6-549)pの誘発的発現を実施した[11]。Ni-アガロースおよびホスホセルロース
カラムクロマトグラフィーによって、可溶性細菌溶解物から組換えタンパク質を
精製した[11]。
【0080】実施例2 酵母RNAトリホスファターゼの突然変異誘発分析 2段階重複伸長法を用いたPCRによって、CET1(201-549)遺伝子に、アラニン置
換突然変異を導入した。アミノ酸置換の標的とされる残基は、Glu-305、Glu-307
、Arg-454、Glu-492、Glu-494およびGlu-496であった。プラスミドp358-CES5(2
01-549)は、第一段階の増幅のための鋳型であった。第二段階の増幅のDNA産物を
NdeIおよびBamH1で消化し、pET-16bに挿入した。所望の突然変異が存在すること
をDNA配列決定によって確認した;増幅およびクローニングの間における好まし
くない突然変異の獲得を排除するため、挿入された制限断片を完全に配列決定し
た。Ho等の方法[11]によって、Ni-アガロースクロマトグラフィーによって
、可溶性細菌溶解物から、His-タグ付けされた突然変異タンパク質および野生型
タンパク質を精製した。Cet1(201-549)pを含む0.2Mイミダゾール溶出画分をバッ
ファーC(50mM Tris-HCl、pH 8.0、50mM NaCl、2mM DTT、10%グリセロール、0.0
5% Triton X-100)で透析した。標準物質としてウシ血清アルブミンを用い、Bio-
Rad染色試薬を用いることによって、タンパク質濃度を特定した。
【0081】実施例3 HCM1発現ベクター pfu DNAポリメラーゼ、ならびに翻訳開始コドンにNdeI制限酵素部位を導入し
かつ終止コドンの3’にBamHI部位を導入するように設計されたオリゴヌクレオ
チドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応によって、476-アミノ酸HCM1オ
ープンリーディングフレームを包含するDNA断片を増幅させた。そのPCR産物をNd
eIおよびBamHIで消化し、T7 RNAポリメラーゼ発現プラスミドベースのpET16bに
挿入して、プラスミドpET-His-Hcm1を作成した。Gly-120およびAla-151のための
コドンに代えてNdeI制限酵素部位およびメチオニンコドンを導入する、あるいは
Met-179コドンの位置にNdeI制限酵素部位を導入する突然変異誘発センス鎖プラ
イマーを用いて、PCR増幅によって、HCM1のN末端欠失突然変異体を構築した。そ
のPCR産物をNdeIおよびBamHIで消化し、その後pET16bに挿入して、プラスミドpE
T-His-Hcm1(121-476)、pET-His-Hcm1(152-476)およびpET-His-Hcm1 (179-476)を
得た。各プラスミドの挿入部分を配列決定して、増幅およびクローニングの間に
好ましくないコード変化が導入されていないことを確認した。
【0082】実施例4 Hcm1pの発現および精製 pET-His-Hcm1で大腸菌BL21(DE3)を形質転換させた。0.1mg/mlのアンピシリン
を含有するLuria-Bertani培地中において、大腸菌BL21(DE3)/pET-His-Hcm1(1
リッター)をA600が0.5になるまで37℃で増殖させた。その培養液を0.4mMイソプ
ロピル-β-D-チオガラクトピラノシシド(IPTG)に調整し、30℃で4時間インキュ
ベートし続けた。遠心によって細胞を回収し、そのペレットを-80℃で保存した
。全てのその後の処理を4℃で実施した。解凍した細菌を50mlの溶解バッファー(
50mM Tris-HCl、pH7.5、0.15M NaCl、10%スクロース)中に再懸濁させた。リゾチ
ームおよびTriton X-100を最終濃度がそれぞれ50μg/mlおよび0.1%になるまで添
加することによって細胞溶解を実施した。粘度を下げるため、その溶解物を超音
波処理し、さらに、遠心によって不溶性物質を除去した。溶解バッファーで平衡
化させたNi-NTA-アガロース樹脂2mlと共に、溶解性抽出物を1時間混合した。上
清をカラムに注入し、さらに溶解バッファーで洗浄した。25、50、200および500
mMイミダゾールを含有するIMACバッファー(20mM Tris-HCl、pH7.9、0.5M NaCl
、1mMフェニルメチルスルホニルフッ化物、10%グリセロール)を用いて、段階的
にカラムを溶出した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
(SDS-PAGE)によって、カラム画分のポリペプチド組成物をモニターした。組換え
Hcm1pタンパク質をカラム上に保持し、200mMイミダゾール溶出液中に回収した。
その画分の一部(タンパク質100μg)をバッファーA(50mM Tris-HCl、pH8.0、1
mM EDTA、2mM DTTおよび0.1% Triton X-100)の中に0.5M NaClを含有する4.8mlの
15-30%グリセロール密度勾配に添加した。Beckman SW50ローター中において、4
℃、50,000rpmで15時間その勾配を遠心した。チューブの底から画分(〜0.2ml)
を回収した。標準物質としてウシ血清アルブミンを用いて、BioRad染色試薬を用
いてタンパク質濃度を特定した。
【0083】実施例5 Hcm1pのN末端欠失突然変異体の発現および精製 細菌において可溶性形態であるHcm1(121-476)pおよびHcm1(152-476)pの発現を
最適化するために改変法を用いた。pETベースのプラスミドを運ぶ大腸菌BL21(DE
3)の培養液(1リッター)をA600が0.5になるまで37℃で増殖させた。その培養液を
2%エタノールに調整し、さらに17℃で24時間インキュベートし続けた。Ni-アガ
ロースクロマトグラフィーおよび野生型Hcm1pのために上述したグリセロール密
度勾配沈降によって、可溶性溶解物から組換えHcm1(121-476)pおよびHcm1(152-4
76)pタンパク質を精製した。Hcm1(179-476)pは、細菌において発現されたが、細
胞溶解物の不溶性ペレット画分においてのみ回収された。
【0084】実施例6 酵母HCM1発現プラスミド 野生型HCM1遺伝子およびN末端欠失突然変異体を包含するNdeI-BamHI制限酵素
断片をそれぞれのpET16bベースのプラスミドから切り出し、6つの連続ヒスチジ
ンコドンおよび独自のNdeI部位がpYX132のNcoIとBamHI部位の間に挿入されたpYX
132(CEN TRP1)の派生物である特製酵母発現ベクターpYX-His中に挿入した(pYX1
32はNovagenから購入した)。単一コピー発現プラスミドをpYX-Hcm1、pYX-Hcm1(
121-476)、pYX-Hcm1(152-476)およびpYX-Hcm1(179-476)と命名した。野生型HCM
1遺伝子およびN末端欠失突然変異体を包含するNcoI-XhoI断片をそれぞれのpYX
ベースのCENプラスミドから切り出し、酵母発現ベクターpYX232(2m TRP1)中に挿
入した。それらベクターにおいて、ヒトメチルトランスフェラーゼの発現は、酵
母TPI1プロモーターの制御下にある。
【0085】実施例7 酵母キャッピング酵素のための発現プラスミド プラスミドp360-CEG1/CET1(CEN URA3 CET1 CEG1)およびp358-CET1/CEG1(CEN T
RP1 CET1 CEG1)は、それらの天然プロモーターの制御下にある酵母RNAトリホス
ファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ遺伝子を包含する;CET1および
CEG1遺伝子は接近して配列され、分岐転写される。それぞれP360-CEG1/CET1お
よびP358-CET1/CEG1中に、ABD1を挿入することによって(その天然プロモーター
の制御下に)、プラスミドp360-CET1/CEG1/ABD1(CEN URA1 CET1 CEG1 ABD1)およ
びp358-CET1/CEG1/ABD1(CEN TRP1 CET1 CEG1 ABD1)を構築した;末端どうしが結
合する配向で、CEG1の次にABD1遺伝子を配置した。
【0086】実施例8 酵母菌株 酵母菌株YBS50(MATa leu2 ade2 trp1 his3 ura3 can1 ceg1::hisG cet1::LEU2
p360-CET1/CEG1)は、RNAトリホスファターゼおよびグアニルトランスフェラー
ゼをコードする染色体遺伝子座において欠失している。YBS40(MATa leu2 ade2 t
rp1 his3 ura3 can1 abd1::hisG p360-ABD1)は、キャプメチルトランスフェラー
ゼをコードする染色体遺伝子座において欠失している。YBS52(MATa leu2 ade2 t
rp1 his3 ura3 can1 ceg1::hisG cet1::LEU2 abd1::KAN p360-CET1/CEG1/ABD1)
は、酵母キャッピング機構の3つの成分の全てをコードする染色体遺伝子座にお
いて欠失している。YBS50、YBS40およびYBS52は、二倍体株W303における標的遺
伝子破壊、それに続く4分割、および半数体子孫の遺伝子型決定によって生じた
。サザンブロッティングによって遺伝子破壊を確認した。
【0087】実施例9 酵母細胞増殖に必須であるCet1pのRNAトリホスファターゼ活性 真菌RNAトランスフェラーゼCet1pは、哺乳類RNAトリホスファターゼによって
用いられる反応機構とは完全に異なる反応機構によってRNAキャップ形成の最初
の工程を行うため、有望な薬剤ターゲットである。抗真菌薬発見に対する研究方
法を設計するために触媒機構における違いを用いることを試みる前に、Cet1pのR
NAトリホスファターゼ活性が酵母細胞増殖に必須であることを確認する必要があ
る。インビトロおよびインビボでのCet1p機能に対する単アミノ酸突然変異の効
果を特徴付けることによって成される事例であることが分かっている。突然変異
は、金属依存的RNAトリホスファターゼ/NTTaseファミリーのモチーフA、Bお
よびC内の保存残基を標的とした(図4)。
【0088】 Cet1p残基のGlu-305、Glu-307(モチーフA)、Arg-454(モチーフB)、なら
びにGlu-492、Glu-494およびGlu-496(モチーフC)をそれぞれアラニンで置換
した。インビトロおよびインビボで完全に活性であるCet1(201-549)pに、Ala突
然変異を導入した[11]。6つの突然変異タンパク質をHisタグ付け融合物と
して発現させ、さらに、Ni-アガロースカラムクロマトグラフィーによって、野
生型Cet1(201-549)pと並行させて、可溶性溶解物を精製した(図6A)。2μM[
γ32P]-標識ポリ(A)からの32Piの遊離によって、野生型および6つの突然変異Ce
t1(201-549)pタンパク質のRNAトリホスファターゼ活性を測定した。酵素依存性
の直線範囲におけるタンパク質滴定曲線の勾配から特異的酵素活性を特定した。
(図6B)。野生型酵素の特異的活性(15分間に、タンパク質1μg当たり16.5nm
ol のPi遊離)は、〜0.8s-1の回転数に対応する。野生型Cet1(201-549)pによるR
NA三リン酸切断のRNA基質濃度の関数としての分析は、ポリ(A)三リン酸末端のた
めにKm(1μM)およびVmax(1s-1)を示した。図6Bにおけるデータから計算して野
生型の値に対する割合として表したアラニン変異体の特異的活性は:E305A(0.03
%); E307A(0.03%); R454A(0.2%); E492A(1.7%); E494A(0.03%); E496A(0.8%)で
あった。
【0089】 Ho等のプラスミドシャッフルアッセイ(shuffle assay)を用いてインビボで、
トリホスホターゼ欠損酵素をコードするCET1(201-549)の突然変異対立遺伝子の
機能に関して試験した[11]。天然のCET1プロモーターの制御下にCET1(201-5
49)遺伝子を配置させるように、野生型および変異コード配列をCEN TRP1ベクタ
ー中にクローン化した。そのプラスミドで、染色体のCET1遺伝子座が欠失してLE
U2で置換されているΔcet1菌株YBS20を形質転換した。YBS20の増殖は、CEN URA3
プラスミドにおける野生型CET1対立遺伝子の維持を条件とする。従って、生物学
的に活性なCET1対立遺伝子または別の生物由来の機能的相同物で形質転換されな
ければ、URA3プラスミドを選択する0.75mg/mlの5-フルオロオロチン酸(5-FOA)を
含有するアガロース培地においてYBS20は増殖することができない。5-FOAでの増
殖は、CET1(201-549)によって補完されるが、突然変異対立遺伝子E305A、E307A
、E454A、E492A、E494AまたはE496Aによっては補完されない[12]。インビト
ロおよびインビボでの突然変異効果の相関は、RNAトリホスファターゼ活性が酵
母細胞増殖に必須であることを示唆する。
【0090】実施例10 Ceg1pのマンガンおよびコバルト依存的NTPase活性 図7は、Ceg1pが、二価陽イオン補因子としての1mMマンガンの存在下において
、1mM[γ32P]ATPからの32Piのほとんど定量的な遊離も触媒することを示す。二
価陽イオンの不在下では検出可能なATP加水分解は無く、さらに1mMマグネシウム
は触媒の支援において非常に弱かった。以前の研究者が酵母抽出物または組換え
Cet1pから単離したキャッピング酵素のNTPase活性を適切に評価するのに失敗し
たのは、二価陽イオン補因子としてのマグネシウムに依存していたことに起因す
るに違いない。
【0091】 1mM ATPおよび2mM二価陽イオンを含有する反応混合物において、二価陽イオン
特異性を調べた。コバルトはATPaseの活性化において、少なくともマグネシウム
と同程度効果的である。カルシウム、銅および亜鉛はATPaseを活性化しなかった
。補因子滴定実験は、1mM ATPの加水分解が1-3mM MnCl2で最適であることを示し
た。1mM ATPのコバルト依存的加水分解は、1-5mM CoCl2で最適であった。pH6.0
からpH9.5の50mM Trisバッファー中において、ATP加水分解を測定した。活性はp
H6.5からpH7.0で最適であり、アルカリ性が強くなるにつれて低下した。pH9.5で
の活性はpH7.0での活性の25%であった。
【0092】実施例11 Cet1pによるATP加水分解の反応速度論 15分の反応の間における[γ32P]ATPからの32Pi遊離の程度は、投入したCet1p
タンパク質の量に比例した(図8A)。32Pは30分に亘り経時的に蓄積し;反
応速度はCet1p濃度によって直線的に変化した(図8B)初期速度対酵素濃度の
プロットから、回転数25s-1を計算した。Cet1pは[α32P]ATPの[α32P]ADPへの定
量的転化を触媒する。[α32P]ADP形成の速度は、並行させた反応混合物中におい
て測定した[γ32P]ATPからの32Piの遊離速度に一致した(図8C)。20-45分の
インキュベーション後でさえ、[α32P]ATPからの[α32P]AMPの形成は全く検出さ
れず、その時間までに、全てのヌクレオチドはADPに転化した。従って、Cet1pは
ATPのADPとPiへの加水分解を触媒し、ADP反応産物を更に加水分解することはで
きない。投入した[γ32P]ATP濃度の関数としてATPase活性を測定することによっ
て、速度論的パラメーターを特定した(図8D)。データの二重逆数プロットか
ら、Km値(2.8μM ATP)およびVmax(25s-1)を計算した(図8D)。Cet1pのホスホ
ヒドロラーゼ活性はATPに限定されなかった。Cet1pは、[α32P]GTPの[α32P]GDP
への、[α32P]dCTPの[α32P]dCDPへの、および[α32P]dATPの[α32P]dADPへのマ
ンガン依存的加水分解も触媒した。
【0093】 ATP加水分解における酵母酵素の回転数(25s-1)は、バキュロウィルス(30s-1)
およびワクシニアウィルス(10s-1)トリホスファターゼのために報告された値に
類似するが、ATPへの酵母酵素の親和性(Km=2.8μM)は、LEF-4(Km=43μM)または
ワクシニアトリホスファターゼ(Km=800μM)の値よりも有意に高い。
【0094】実施例12 Cet1p(201-549)およびCet1(246-549)のATPase活性32P]標識三リン酸末端化ポリ(A)からの32Piの遊離を触媒する活性を完全に
保持している2つのN末端切断変異体、Cet1(201-549)pおよびCet1(246-549)pは
、既に精製および特徴付けされている[11]。同様に、その2つの切断タンパ
ク質は、ATPの加水分解において、完全長Cet1pと同程度活性である(図3A)。
カルボキシル末端領域内の同じ触媒部位によって、両方の反応が触媒される。Ce
t1(201-549)pによるATP加水分解のために特定された速度論的パラメーター(Km=3
.3μM ATP、Vmax=33s-1)は、完全長Cet1pの値に類似した。それらデータは、欠
失したN末端200アミノ酸断片は、ヌクレオチド結合または反応化学に寄与しない
ことを示唆する。従って、Cet1(201-540)pのATPase活性に対する外因性化合物の
効果に基づき、真菌キャップ形成の第1工程の候補阻害剤に関してインビトロで
スクリーニングするために、精製された組換えCet(201-540)pを用いることがで
きる。
【0095】実施例13 組換えヒトキャップメチルトランスフェラーゼの精製および特徴付け Hcm1pと命名された、ヒトcDNA KIAA0398(Genbank登録番号AB007858)によって
コードされる476アミノ酸ポリペプチドは、その長さ全体に亘り、426アミノ酸Ab
d1pタンパク質と配列保存性を示す(図5)。Abd1pは、Hcm1pには対応物が無い1
1アミノ酸C末端伸長を包含し;Abd1pのそのC末端デカペプチドはインビトロおよ
びインビボでのキャップメチルトランスフェラーゼ活性に不要である[9]。Hc
m1pはカンジダ・エレガンス由来の候補キャップメチルトランスフェラーゼに対
する広範囲に亘る配列類似性を示す(図5)。Abd1pによるキャップメチル化に
必須であることが分かっている6つの酵素的官能基の全て(図5において整列さ
せた配列の上のドットによって示している)は、Hcm1pにおいて保存されている
[8,9]。
【0096】 Hcm1pタンパク質は、短いヒスチジン-リッチアミノ末端リーダー断片に融合さ
れて、細菌において発現された。そのHis-タグは、固相化ニッケルへのそのタグ
の親和性に基づく、Hcm1pの迅速な濃縮を可能とする。細菌溶解物をNi-アガロー
スに添加し、イミダゾールの濃度を上げて、吸着物質を段階的に溶出した。SDS-
PAGE分析は、200mMイミダゾール溶出液中において、56kDaクーマシーブルーで顕
著に染色された種を表した(図10Aを参照)。pETベクター単独または他のHis
タグ付け遺伝子産物を発現するpETプラスミドの何れかを運ぶIPTG誘導BL21(DE3)
の溶解物に対して、同じNi-アガロースクロマトグラフィー処理を施した場合、
そのポリペプチドは回収されなかった。
【0097】 AdoMetの存在下における32Pキャップ標識ポリ(A)のメチル化キャップ標識ポ
リ(A)への転化によって、RNA(グアニン-7-)メチルトランスフェラーゼ活性を
検出した[7]。反応産物をヌクレアーゼP1でキャップジヌクレオチドに消化し
、その後、メチル化キャップm7GpppAからGpppAキャップを分離するPEI-セルロー
ス薄層クロマトグラフィーで分析した。Hcm1pによって合成された放射標識産物
(図9、レーン1)は、精製された組換えワクシニアウィルスキャップメチルト
ランスフェラーゼを含有する並行させた反応混合物中において生じるm7GpppAと
共移動する(図9、レーン6)。Hcm1pによるキャップメチル化は、反応混合物
中にS-アデノシルメチオニンを含めることに依存する(図9、レーン2)。S-ア
デノシルホモシステインはキャップメチル化を支援せず(図9、レーン3)、Ad
oMetの存在下において、部分的に抑制した(図9、レーン4)。
【0098】 15-30%グリセロール密度勾配によるNi-アガロース分画の遠心によって、Hcm1p
をさらに精製した。キャップメチルトランスフェラーゼ活性は、Hcm1pポリペプ
チドのピークと同時に生じる単一ピークとして沈降した(図10A)。4Sの見か
けの沈降計数(並行させて分析されたマーカーと比較して)、組換えヒトキャッ
プメチルトランスフェラーゼが単量体であることを示唆する。
【0099】 Hcm1pのピークグリセロール勾配分画を用いて、酵素の特徴付けを行った。キャ
ップポリ(A)のメチル化は、投入酵素と関連して線形に変化し、飽和状態で一
定に達した(図11B)。Hcm1pは、10分の反応の間に、タンパク質1fmol当たり
、0.24fmolのメチル化キャップ末端を形成した。MgCl2は、濃度依存的に活性を
強く阻害した;メチル化は、1mMのマグネシウムによって、1桁低下した。メチル
化の割合は、AdoMet濃度によって変化した。半最大活性は、〜25μM AdoMetで観
察された。その反応産物AdoHcyは、濃度依存的にキャップメチル化を阻害した;
10μM AdoMetの存在下におけるキャップメチル化は、100μM AdoHcyの存在下に
おいて80%まで低下した。
【0100】実施例14 キャップメチルトランスフェラーゼ活性に対するN末端欠失の影響 N末端切断タンパク質Hcm1(121-476)p、Hcm1(152-476)pおよびHcm1(179-476)p
のHis-タグ付けしたものを大腸菌において発現させた。Ni-アガロースクロマト
グラフィーおよびグリセロール密度勾配沈降によって、可溶性細菌溶解物から、
Hcm1(121-476)p(Δ120と称する)、Hcm1(152-476)p(Δ151)を精製した(図1
0Bおよび図10C)。Hcm1(179-476)pは不溶性であり、従って、精製が困難で
あった。Δ120およびΔ151タンパク質は、それぞれ、4Sおよび3Sの別々のピーク
として沈降した。両方の調製物は、組換えタンパク質と共沈降したキャップメチ
ルトランスフェラーゼ活性を示した。従って、両方の切断酵素は単量体であると
思われる。
【0101】 野生型Hcm1p、Δ120およびΔ151のピークグリセロール密度勾配画分のSDS-PAG
E分析は、それらタンパク質が同様の純度であり、かつ、予想通り、切断された
ものが完全サイズのHcm1pより迅速に移動することを表した(図11A)。酵素
依存性の直線範囲における滴定曲線の勾配から、キャップメチル化におけるΔ12
0およびΔ151の特異的活性を計算した(図11B)。Δ120は、完全長Hcm1pの活
性の50%を保持した。Δ151は、野生型酵素の22%の活性であった。
【0102】実施例15 酵母においてインビボで機能するヒトキャップメチルトランスフェラーゼ HCM1および切断対立遺伝子HCM1(121-476)、HCM1(152-476)およびHCM1(179-476
)を、その発現が酵母TPI1プロモーターの制御下にあるように酵母2μ TRP1プラ
スミド中にクローン化した。染色体のABD1遺伝子座が欠失している酵母菌株YBS1
0に、HCM1プラスミドを導入した。YBS10の増殖は、CEN URA3プラスミドにおける
染色体外ABD1遺伝子の維持を条件とする。5-FOAを含有する培地にTrp+形質転換
体を蒔き、URA3 ABD1プラスミドを選択した。TRP1 ABD1プラスミドで形質転換し
た対照細胞は5-FOA上で増殖したが、TRP1ベクターで形質転換した細胞は5-FOA上
で増殖できなかった(図5A)。有益な発見として、HCM1またはHCM1(121-476)
プラスミドを運ぶ細胞は5-FOA上で増殖した。従って、ヒトキャップメチルトラ
ンスフェラーゼは、内因性酵母酵素に代わって、インビボで機能した。より広範
囲に切断された対立遺伝子HCM1(152-476)およびHCM1(179-476)は、FOA上での増
殖を支援しなかった(図12A)。
【0103】 また、完全長および切断したHCM1対立遺伝子をCEN TRP1ベクター中にクローン
化した。単コピーでのΔ120タンパク質の発現はabd1欠失を補足したが、完全長H
cm1pタンパク質の発現はabd1欠失を補足しなかった(図12B)。完全長HCM1
による補足がコピー数に依存することは、Δ120派生物と比較して、酵母におけ
るHcm1p発現のレベルが低いことを示唆する。
【0104】 図5における整列に基づき、Hcm1pのΔ120欠失は、酵母Abd1pのN末端からの93
アミノ酸の欠失にほぼ相当するが、Δ151欠失はAbd1pからの124アミノ酸の欠失
に類似する。Abd1pのN末端から欠失させた52または109アミノ酸は、欠失対立遺
伝子が酵母細胞増殖を支援する能力に影響を及ぼさなかった[8]。しかしなが
ら、N末端からの120、129または142アミノ酸のより広範囲の欠失は致命的であっ
た[9]。酵母およびヒトキャップメチルトランスフェラーゼの最小機能的領域
のN末端部分はかなり類似するように思われる。
【0105】実施例16 哺乳類酵素による酵母キャッピング機構の完全置換 本発明を支持する薬剤発見のための策略は、宿主生物のキャッピング酵素を運
ぶこと以外において同一の細胞の増殖に影響を及ぼすことなく、病原菌がコード
するキャッピング活性を条件として細胞増殖を遮断する化合物を同定することで
ある。本試みを実現可能にするには、関心キャッピングシステムがインビボで置
換可能でなければならない。従って、完全真菌キャッピング機構が哺乳類酵素で
置換された酵母菌株を構築した。
【0106】 酵母における哺乳類トリホスファターゼ−グアニリルトランスフェラーゼの発
現は、単一欠失されたΔceg1またはΔcet1菌株の増殖を補足することができる[
11、17、18、20]。重要な次の工程は、哺乳類キャッピング酵素が新し
いΔcet Δceg1二重欠失菌株(YBS50)を補足する能力に関して試験することで
あり、その増殖はCEN URA3 CET1 CEG1プラスミドの維持に依存する。対照実験は
、CEN TRP1 CET1 CEG1プラスミドでのYBS50の形質転換が5-FOA上での細胞の増殖
を可能にしたのに対して、CET1のみまたはCEG1のみを包含するCEN TRP1プラスミ
ドは5-FOA上での増殖を回復させることができないことを示した。酵母TPI1プロ
モーターの制御下でのCEN TRP1プラスミド上でのMCE1の発現は、Δcet1 Δceg1
二重欠失を完全に補足した(図13A)。
【0107】 新しいΔcet1 Δceg1 Δabd1三重欠失菌株(YBS52)を構築し、その増殖はCEN U
RA3 CET1 CEG1 ABD1プラスミドによって維持される。対照プラスミドシャッフル
実験は、CEN TRP1 CET1 CEG1 ABD1プラスミドで形質転換したYBS52細胞が5-FOA
上で増殖したが、CET1のみ、CEG1のみ、またはABD1のみを包含するプラスミドは
5-FOA上での増殖を補足しないことを示した。MCE1とHCM1(121-476)での同時形質
転換は、その三重欠失を補足した;MCE1単独またはHCM1(121-476)単独の何れも
、5-FOA上でのYBS52の増殖を可能としなかった。FOA耐性分離株をYPDプレート上
、30℃で画線培養した。増殖の概算としてコロニーサイズを用いたところ、CET1
とCEG1に代えてMCE1、あるいはABD1に代えてHCM1(121-476)を包含する細胞は、
全ての酵母キャッピング機構を包含する菌株とほぼ同様に増殖した(図13B)
。しかしながら、3つの酵母遺伝子の全てがCENプラスミド上においてMCE1プラ
スHCM1(121-476)で置換されている場合は、コロニーサイズが小さかった。それ
ら酵母遺伝子がCEN MCE1プラス2μ HCM1(121-476)で置換されている場合は、コ
ロニーサイズが上昇し、本背景において、ヒトメチルトランスフェラーゼが単コ
ピーにおける増殖を制限することを暗示する。
【0108】 酵母キャッピング酵素成分または哺乳類キャッピング酵素成分を包含する同遺
伝子型酵母細胞の増殖を対比してうまく評価するために、30℃での懸濁培養にお
けるYPD培地中において、それらの倍増時間を測定した。酵母酵素に代えて、Mce
1pまたはHcm1(121-476)pの何れかの発現を含む細胞の増殖速度(世代時間1.6-1.
8時間)は、全て酵母のキャッピングシステムを有する細胞の増殖速度(1.4時間
)に類似していた。単コピープラスミドから発現された全て哺乳類のキャッピン
グシステムを有する細胞は、ゆっくり増殖した(倍増時間3.3時間)が、ヒトメ
チルトランスフェラーゼの高コピー発現によってその問題は抑えられた(倍増時
間2.2時間)。従って、完全3成分真菌キャッピングシステムを2成分哺乳類シ
ステムで置換することができる。
【0109】 2つの酵母菌株は、本出願において概説した薬剤発見の方法を実施するための
手段を提供する。本方法は、以下に概説した一連の一次および二次スクリーニン
グ工程から成る。以下の項において記載されている方法は、真菌キャッピング機
構を標的とする分子のためのスクリーニングにおいて、標的生物として酵母を用
いる本発明の実施形態に適用できる。他の実施形態を上記のように適合させるこ
とができる。
【0110】実施例17 キャッピング機構の構成または起源に基づく、差別的増殖阻害に関してのスク リーニング 差別的増殖阻害をスクリーニングするために用いられる2つの酵母菌株は、そ
れぞれ、「真菌キャッピング菌株」(FCS)および「哺乳類キャッピング菌株」
(MCS)である。一次スクリーニングは、1つの寒天プレートに真菌キャッピン
グ菌株細胞の懸濁液を蒔き、別のプレートに哺乳類キャッピング菌株細胞の懸濁
液を蒔くことを必要とする。例えば、寒天中に作った小さな穴の中への各化合物
溶液の沈着によって、並行させて2つのプレートに、試験化合物のマトリックス
を添加する。その化合物溶液は、その添加地点から放射線状に拡散し、増殖阻害
する場合には、添加地点から放射線状に広がる非増殖または遅い増殖の勾配をも
たらす。従って、許容増殖温度(真菌キャッピング菌株および哺乳類キャッピン
グシステム酵母菌株のために30℃)において、数日間インキュベートした後、非
増殖または遅い増殖の光輪(halo)が酵母細胞の背景培地に対して現れる。真菌キ
ャッピング菌株および哺乳類キャッピング菌株の増殖を同程度阻害する化合物は
、酵母増殖の非特異的阻害剤であると見なされる。キャッピング特異的阻害剤は
、2つの試験菌株の一方の増殖を阻害するが、他方の増殖を阻害しない阻害剤で
ある。例えば、真菌キャッピング菌株を阻害するが、哺乳類キャッピング菌株を
阻害しない化合物は、真菌キャッピング機構を介してその効果を発揮すると見な
される。
【0111】 3つの真菌キャッピング酵素が、工程1において同定された候補抗真菌キャッ
ピング菌株化合物によって標的とされることの説明は、真菌および哺乳類キャッ
ピング成分の混合物を包含する菌株を用いる差別的増殖阻害に関してのスクリー
ニングの第二ラウンドによって成される。(i)真菌トリホスファターゼおよびグ
アニリルトランスフェラーゼ、ならびに哺乳類キャップメチルトランスフェラー
ゼ;(ii)哺乳類トリホスファターゼ−グアニリルトランスフェラーゼ、ならびに
真菌キャップメチルトランスフェラーゼ:を包含する三重ノックアウト酵母菌株
YBS52(Δcet1 Δceg1 Δabd1)の派生物を作成した。真菌トリホスファターゼま
たはグアニリルトランスフェラーゼを標的にすることによって真菌キャッピング
菌株を阻害した化合物は、菌株(i)を阻害するが、菌株(ii)は阻害しないであろ
う。真菌メチルトランスフェラーゼを標的とする化合物は、菌株(ii)を阻害する
が、菌株(i)は阻害しないであろう。
【0112】 工程2の間に、真菌トリホスファターゼおよび/またはグアニリルトランスフ
ェラーゼを標的とすることが分かった抗FCS化合物に関して、その真菌酵素が選
択的増殖阻害を担うことを評価するために更にスクリーニングを行った。本目的
のために、真菌トリホスファターゼおよび哺乳類グアニリルトランスフェラーゼ
を包含する酵母菌株を構築した。
【0113】実施例18 真菌RNAトリホスファターゼの阻害に関してのインビトロスクリーニング 二価陽イオン補因子としてマンガンまたはコバルトの存在下において、Cet1p
は強いヌクレオシドトリホスファターゼ(NTPase)活性を示す。Cet1pのNTPase機
能は、RNAトリホスファターゼ反応を行う酵素上での同じ触媒部分によって介在
されている。従って、Cet1p阻害剤の大スケース試験を実施するために、Cet1pに
よるNTPの加水分解の測定はRNAトリホスファターゼよりもはるかに便利な測定法
である。それは、NTPsが市販されているのに対して、三リン酸末端RNAの合成は
技術的に複雑であるからである。
【0114】 図7の実験におけるATP加水分解の検出は、放射性標識ATPの使用および薄層ク
ロマトグラフィーによる産物の分析を必要とした。しかしながら、ATPからのPi
の遊離を検出する非放射能比色法にも容易にその測定法を適用できる。Cet1p活
性の比色法は、候補阻害剤の高処理能力スクリーニングに特に役に立つ。
【0115】実施例19 abd1-ts変異体の相補性に関して選択することによる、カンジダ・アルビカン
スキャップメチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の単離
【0116】 サッカロミセス・セレビシエ2μ URA3プラスミドベクター中にクローン化した
カンジダ・アルビカンスゲノムDNAライブラリーで、3つの異なるts変異菌株(ab
d1-5、 abd1-8およびabd1-15)を形質転換した後、サッカロミセス・セレビシエ
abd1-ts変異体の条件付き増殖欠失の相補性に関してスクリーニングすることに
よって、病原性酵母カンジダ・アルビカンス由来のキャップメチルトランスフェ
ラーゼ遺伝子を単離した(50)。複製を許容しない温度(34℃)での増殖に関し
て、Ura+形質転換体を選択した;37℃のさらに高い制限的温度での増殖に関して
、陽性分離株をさらにスクリーニングした。37℃で増殖した9つの個々の分離株
から回収された2μプラスミドDNAを大腸菌中で増殖させ、その後、ライブラリ
ー挿入部位に隣接するポリリンカーにおいて切断する一連の制限エンドヌクレア
ーゼで消化することによって、プラスミド挿入物を分析した。37℃で増殖して救
済された;9つ全ての分離株由来の2μプラスミド中に、明らかに同一である6.6
kbpの挿入物が存在した。abd1-5菌株を形質転換した場合におけるそのts増殖表
現型の相補性に関して、その2μプラスミド(pCCM1-6.6と命名;図14A)を再
試験した(図14B)。従って、そのプラスミドがカンジダキャップメチルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子(CCM1と命名された)を包含することが推測された。pCCM
1-6.6の右末端からの2.7kbp SphI断片の切除は、2μプラスミドpCCM1-3.9をもた
らし、それは37℃でのabd1-5の増殖の救済において基の分離株と同程度効果的で
あった(図14B)。挿入物の左末端からの1kbp EcoRI断片の切除は(2μプラ
スミドpCCCM1ΔEcoをもたらすための)、結果として、相補活性の喪失をもたら
し、CCM1遺伝子はその挿入物のEcoRI部位に架かっていることを示唆する。挿入
物の右末端からの0.3kbp HindIII断片の除去は、相補性に全く影響を及ぼさなか
った。pCCM1-3.9の挿入物に由来する制限酵素断片をpBluescript中にサブクロー
ニングし、その後配列を決定した。
【0117】 CCM1遺伝子は、EcoRI部位を挟んでその左右に伸長する1422ヌクレオチドの連
続するオープンリーディングフレームを包含する(図14C)。pCCM1-6.6中の
ゲノム挿入物は、その翻訳開始部位の上流に254bp伸長する;その要素は、サッ
カロミセス・セレビシエにおいてCCM1発現をもたらし得るカンジダ・アルビカン
スプロモーター要素を明らかに包含する。推測アミノ酸配列は、Ccm1pがサッカ
ロミセス・セレビシエAbd1p(同一または類似の209位置)およびヒトキャップメチ
ルトランスフェラーゼHcm1p(同一または類似の140位置)に相同であることを示
す。アラニン走査突然変異誘発によってヒトキャップメチルトランスフェラーゼ
の機能に必須であると特定された8アミノ酸残基(22)は、カンジダ・アルビ
カンスタンパク質において保存されている(図14C)。Ccm1pは、ヒトにとっ
て病原性である真菌属由来のキャップメチルトランスフェラーゼの初めての例で
ある。
【0118】実施例20 カンジダキャップメチルトランスフェラーゼの欠失分析 その発現が構成性サッカロミセス・セレビシエTPI1プロモーターの制御下にな
るように酵母CEN TRP1プラスミド中に、完全CCM1コーディング配列をクローン化
した。染色体のABD1遺伝子座を欠失指せた酵母菌株中に、CCM1プラスミドを導入
した。Δabd1菌株の増殖は、CEN URA3プラスミド上における染色体外ABD1遺伝子
の維持を条件とする。URA3 ABD1プラスミドを選択するために、5-FOA含有培地中
にTrp+形質転換体を蒔いた。TRP1 ABD1プラスミドで形質転換した対照細胞は5-F
OA上で増殖したが、TRP1ベクターで形質転換した細胞は5-FOA上で増殖できなか
った(図15)。CCM1プラスミドを運ぶ細胞は、5-FOA上で増殖した(図15)
。従って、カンジダ・アルビカンスキャップメチルトランスフェラーゼは、内因
性サッカロミセス・セレビシエ酵素に代わり、インビボで機能した。
【0119】 CCM1のいくつかのN末端欠失変異体をCEN TRP1ベクター中にクローン化し、プ
ラスミドシャッフルによってインビトロでの機能に関して試験した。CCM1(137-4
74)は、5-FOA上でのΔabd1菌株の増殖を補足した(図15)。しかしながら、さ
らに広範囲に切断された対立遺伝子CCM1(151-474)およびPCM1(175-474)はインビ
ボで致命的であった(図15)。Ccm1pおよびAbd1pのアミノ酸配列の整列に基づ
き、Ccm1pの生存可能なN末端Δ136欠失は、Abd1pのN末端からの108アミノ酸の欠
失に類似する。Ccm1pの致命的なN末端Δ150およびΔ174欠失は、Abd1pのΔ122お
よびΔ146欠失に対応する。以前の研究は、Abd1pのN末端からの109アミノ酸の欠
失は、酵母細胞の増殖に影響を及ぼさないが、142または155残基の欠失は致命的
であることを示している(51、52)。従って、カンジダおよびサッカロミセ
スキャップメチルトランスフェラーゼの機能的領域のN末端の限界はかなり類似
している。
【0120】実施例21 カンジダ・アルビカンスおよびサッカロミセス・セレビシエのRNAトリホスフ
ァターゼのインビボ欠失分析 カンジダ・アルビカンスCaCET1遺伝子は、520アミノ酸RNAトリホスファターゼ
をコードする(53)。186−520残基からのCaCet1pのC末端断片は、位置225-53
8からのサッカロミセス・セレビシエCet1pのカルボキシル部分(549アミノ酸ポ
リペプチド)に対して広範囲の配列類似性を示す(95の同一残基および64の側鎖
類似性を有する位置)。一方、CaCet1pおよびCet1pのN末端断片は保存されてい
ない。
【0121】 カンジダトリホスファターゼの最小機能的領域の限界を線引きするため、酵母
TPI1プロモーターの制御下にあるCENベクター中に、野生型CaCET1遺伝子およびC
aCET1の一連のN末端欠失対立遺伝子をクローン化した。それらプラスミドで、染
色体CET1遺伝子座が欠失しLEU2で置換されているΔcet1菌株YBS20を形質転換し
た。YBS20の増殖は、CEN URA3プラスミド上における野生型CET1対立遺伝子の維
持を条件とする。従って、YBS20は、生物活性CET1対立遺伝子(図16)または
別の生物由来の機能的相同物で形質転換されなければ、5-フルオロオロチン酸(5
-FOA)を含有する寒天培地において増殖できない。完全長CaCET1または欠失変異
体CaCET1(179-520)、CaCET1(196-520)およびCaCET(203-520)によって5-FOA上で
の増殖が補足されるが、CaCET1(217-520)は致命的である(図16)ことは、有
益な発見である。本実験は、トリホスファターゼがTPI1プロモーターによって発
現された場合にインビボでのCaCet1p機能に必要である残基203と216の間の短い
ペプチド断片を線引きする。
【0122】 CET1プロモーターの制御下になるように、CEN TRP1ベクター中に、サッカロミ
セス・セレビシエCET1遺伝子のN末端欠失対立遺伝子CET1(211-549)、CET1(221-5
49)、CET1(231-549)およびCET1(241-549)をクローン化した。Δcet1菌株YBS20の
相補性に関して、プラスミドシャッフルによって、それらプラスミドを試験した
。5-FOA上での増殖は、CET1(201-549)、CET1(211-549)、CET1(221-549)、CET1(
231-549)およびCET1(241-549)によって補足された(図17:Δ200、Δ210、Δ2
20、Δ230、Δ240)が、さらに広範囲に切断された対立遺伝子CET1(246-549)ま
たはCET1(276-549)によっては補足されなかった(図17:Δ245およびΔ275)
。本実験は、トリホスファターゼがそれ自身のプロモーターによって発現される
場合にインビボにおけるCet1p機能に必要である残基241と245の間の短いペプチ
ド断片を線引きする。
【0123】 図17に示された配列の整列に基づき、CaCet1pの生存可能なΔ195およびΔ20
2欠失はCet1pのN末端からの235および242アミノ酸の欠失に対応するが、致命的
なΔ216突然変異は、Cet1pからの256残基の欠失に対応する。それら結果は、2
つの真菌RNAトリホスファターゼの上流の機能的境界がかなり類似することを示
す。
【0124】実施例22 カンジダ酵素によるサッカロミセスキャッピング機構の完全置換 キャッピング特異的抗真菌薬発見の信憑性のある策略は、哺乳類キャッピング
酵素を運ぶこと以外では同一の酵母細胞の増殖に影響を及ぼさないが、真菌がコ
ードするキャッピング活性を包含する酵母細胞の増殖を阻害する化合物を同定す
ることである。理想的には、試験された酵母細胞の増殖を維持する真菌キャッピ
ング酵素は、臨床的に重要である真菌病原体によってコードされている酵素であ
る。そのシナリオを達成するため、完全サッカロミセス・セレビシエキャピング
機構が病原性真菌カンジダ・アルビカンス由来酵素で置換されているサッカロミ
セス・セレビシエ菌株を構築した。
【0125】 サッカロミセス・セレビシエにおけるカンジダ・アルビカンスCaCet1p(RNAト
リホスファターゼ)またはCgt1p(RNAグアニリルトランスフェラーゼ)の発現が
、単一欠失Δceg1またはΔcet1菌株の増殖を補足できることが示されている(5
3、54)。図18は、サッカロミセス・セレビシエにおけるCaCet1pおよびCgt
1pの同時発現が、Δcet1 Δceg1二重欠失菌株(YBS50)を補足できることを示す
。YBS50の増殖は、CEN URA CET1 CEG1プラスミドの維持に依存する。CEN TRP1 C
ET1 CEG1プラスミドでの形質転換は、5-FOA上での細胞増殖を可能としたが、CET
1のみまたはCGT1のみを包含するCEN TRP1プラスミドでの形質転換は5-FOA上での
増殖を救済できなかった(図18)。CEN TRP1 CaCET1 CGT1プラスミドでの形質
転換は、Δcet1 Δceg1菌株を補足した(図18)。また、CGT1および切断トリ
ホスファターゼ対立遺伝子CaCET1(179-520)を包含するプラスミドで細胞を形質
転換した場合に、補足は明らかであった。
【0126】 カンジダ・アルビカンスキャップメチル化酵素をコードするCCM1遺伝子をクロ
ーン化すれば、完全サッカロミセス・セレビシエキャッピングシステムをカンジ
ダ・アルビカンス酵素で置換できるか否かを調べることが可能になる。以下のよ
うに、サッカロミセス・セレビシエプロモーターの制御下にある3つのカンジダ
・アルビカンス遺伝子を包含するCEN TRP1発現プラスミド(pCan-CAP-1)を構築し
た:TPIプロモーターによって制御されるCaCET1(179-520);GPD1プロモーターに
よってもたらされるCGT1;TPI1プロモーターによって制御されるCCM1(137-474)
。その増殖がCEN URA3 CET1 CEG1 ABD1プラスミドによって維持されているサッ
カロミセス・セレビシエΔcet1 Δceg1 Δabd1三重欠失菌株(YBS52)を、pCan-CA
P-1およびpCan-CAP-2で形質転換した。プラスミドシャッフル実験は、pCan-CAP-
1またはpCan-CAP-2の何れか、あるいは「全サッカロミセス」キャッピング酵素
発現プラスミド(CEN TRP1 CET1 CEG1 ABD1)で形質転換されたYBS52細胞は5-FOA
上で増殖したが、CET1のみ、CEG1のみ、またはABD1のみを包含するプラスミドは
5-FOA上での増殖を補足しなかった。
【0127】 次に、YPDプレート上、30℃で5-FOA耐性分離株を画線培養した。増殖の概算と
してコロニーサイズを用いたところ、「全カンジダ」キャッピング機構を包含す
る細胞は「全サッカロミセス」キャッピング機構を包含する細胞と同様に増殖す
ることが予測される(図19)。また、CEN MCEおよび2μHCM1(121-476)プラス
ミドによってコードされる「全哺乳類」キャッピング機構を包含する細胞の増殖
もそのプレート上で示された(図19)。
【0128】実施例23 組換えCaCet1pの発現および精製 完全長CaCet1pならびにアミノ末端欠失変異体CaCet1(203-520)p(Δ202)および
CaCet1(217-520)p(Δ216)をHis-タグ付け融合物として細菌において発現させた
。pETベースの細菌発現ベクター中にCaCET1、CaCET1(203-520)およびCaCET1(217
-520)遺伝子をクローン化した;pET-CaCET1プラスミドで大腸菌BL21(DE3)を形質
転換した。A600が0.5に達するまで、0.1mg/mlアンピシリン含有Luria Bertani培
地中において単一のアンピシリン耐性形質転換体(100ml)を37℃で培養した。そ
の培養液を0.4mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)に調整し、
さらに37℃で3時間インキュベートし続けた。遠心によって細胞を回収し、その
ペレットを-80℃で保存した。その後の全ての操作を4℃で実施した。解凍した細
菌を5mlの溶解バッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、0.15M NaCl、10%スクロース)
中に再懸濁させた。リゾチームおよびTriton X-100を最終濃度がそれぞれ50μg/
mlおよび0.1%になるまで添加することによって細胞溶解を実施した。粘度を下げ
るためその溶解物を超音波処理し、さらに、Sorvall SS34ローター中、18,000rp
mで45分間遠心することによって不溶性物質を除去した。溶解バッファーで平衡
化させたNi-NTA-アガロースのカラム1mlに、溶解性抽出物を添加した。0.1%Tri
ton X-100含有溶解バッファー5mlでカラムを洗浄し、、その後、50、100、200
、500および1000mMイミダゾールを含有するバッファー液(50mM Tris-HCl、pH8.
0、50mM NaCl、2mM DTT、10%グリセロール、0.05% Triton X-100)を用いて、段
階的にカラムを溶出した。SDS-PAGE分析は、組換えカンジダタンパク質が、主に
、200mMイミダゾール溶出画分中に回収されることを示した。組換えタンパク質
を含有するピーク画分を集め、5mM EDTAに調整し、さらに、50mM NaCl含有P-Cel
lカラムバッファー(50mM Tris-HCl、pH8.0、2mM DTT、5mM EDTA、10%グリセロー
ルおよび0.05% Triton X-100)で透析した。同じバッファーで平衡化させたホス
ホセルロースカラム0.5mlに、透析液を添加した。50mM NaCl含有バッファーでカ
ラムを洗浄し、その後、0.1、0.2、0.5、1.0M NaCl含有P-Cellバッファーで段階
的に溶出した。標準物質としてウシ血清アルブミンを用いて、Biorad染色結合法
によってタンパク質濃度を特定した。ホスホセルロース酵素調製物を-80℃で保
存した。
【0129】 Ni-アガロース調製物およびホスホセルロース溶出プロフィールのポリペプチ
ド組成物のSDS-PAGE分析を図20に示す。CaCet1pのNi-アガロース溶出プロフィ
ールは、完全長66kD組換えタンパク質に加えて、N末端His-タグを維持するCaCet
1pのタンパク質分解断片に対応すると予測される多数のより小さいポリペプチド
を含有していた(図20)。より小さな分解産物は、組換えサッカロミセス・セ
レビシエCet1pのNi-アガロース精製の間にも認められた(55)。組換えΔ202
およびΔ216ポリペプチドは、Ni-アガロース段階で実質的に純粋であった(図7
、レーンNi);それら調製物中に、より小さな分解産物が存在しないことは、Ca
Cet1pのN末端領域が、細菌において発現された時に、特にタンパク質分解されや
すいことを示唆する。
【0130】 ホスホセルロースカラムクロマトグラフィーによって、CaCet1pの更なる精製
を行った。CaCet1pはホスホセルロースに吸着し、0.5M NaCl含有バッファーを用
いて段階的に溶出された。多くの低分子量汚染ポリペプチドをその工程で除去し
た(図20)。Δ202およびΔ216タンパク質もホスホセルロースに吸着し、0.5M
NaCl溶出画分中に回収された(図20)。
【0131】実施例24 CaCet1pのマンガンおよびコバルト依存的NTPase活性 初期の特許出願において記載したように、サッカロミセス・セレビシエCet1p
は、二価陽イオン補因子−マンガンまたはコバルトの何れか−の存在下において
、ヌクレオシド三リン酸をヌクレオシド二リン酸と無機リン酸に加水分解する固
有の能力を有する。NTPaseの二価陽イオン特異性は、マグネシウムによって支援
されるCet1pのRNAトリホスファタ−ゼと異なっている。真菌RNAトリホスファタ
ーゼ阻害剤のインビトロスクリーニングのためのATPaseに基づく測定法の有用性
は、NTPase活性が真菌RNAトリホスファターゼ(特に、カンジダ・アルビカンス
のおうな病原性真菌における)の一般特性であり、単にサッカロミセス・セレビ
シエ由来の酵素に限定されないことの証明によって強調される。
【0132】 図21に示された実験は、組換えCaCet1p、Δ202およびΔ216のホスホセルロ
ース調製物が、塩化マンガンの存在下において、[γ32P]ATPからの32Piの遊離を
触媒することを示している。ATP加水分解の程度は、投入酵素の関数として増加
した(図21)。Δ202およびΔ216の特異的活性はほとんど同一であった。直線
範囲における滴定曲線の勾配からΔ202の回転数14s-1を計算した。カンジダタン
パク質のためのその値は、サッカロミセス・セレビシエCet1pによるマンガン依
存的ATP加水分解のために特定された回転数25s-1に類似する。完全長CaCet1pの
活性(ナノグラム当たり)は、切断タンパク質の活性よりわずかに低かった(図
21);このことは、調製物中の不活性汚染ポリペプチドの存在のせいであるに
違いない。CaCet1pの生物学的特性のさらなる特徴付けをΔ202酵素で実施した。
【0133】 1mM ATPおよび2mM二価陽イオンを含有する反応混合物中において、CaCet1Δ2
02の金属特異性を調べた(図22A)。ATPaseの活性化においてコバルトはマン
ガンよりも効果的であったが、マグネシウムはATP加水分解を支援しなかった。
カルシウムおよび銅はATPaseを活性化しなかった;亜鉛は弱い活性を有していた
(組換え完全長CaCet1pのATPase活性の二価陽イオン特異性はCet1Δ202に示され
たものと同じであった)。以前の研究者がCaCet1pのATPase活性を適切に評価す
るのに失敗したのは、二価陽イオン補因子としてマグネシウムに依存したせいで
あろう。
【0134】 補因子滴定実験は、1mM ATPの加水分解が1-2.5mMマンガンまたはコバルトで最
適であり、二価陽イオン濃度が5および10mMに上昇するとわずかに低下すること
を示した(図22B)。滴定曲線は、投入ATPのレベル以下のマンガンまたはコ
バルト濃度で、急勾配のS字状であった。
【0135】 CaCet1Δ202のRNAトリホスファターゼ活性は、1mMマグネシウムの存在下にお
ける、2μM[γ32P]ポリ(A)からの32Piの遊離によって評価される(図23)。滴
定曲線の勾配から特定された特異的活性は、15分間に、ナノグラムタンパク質当
たり32pmol Piの遊離であった。それは、回転数〜1.4s-1(サッカロミセス・セ
レビシエCet1pによる[γ32P]ポリ(A)の加水分解のためのVmax値(1s-1)にかなり
近似する値)に相当する。
【0136】 以下の引例をこの中で挙げた:
【表1】
【表2】 本明細書に記載の任意の特許または公開物は、本発明が属する分野の当業者の
レベルを示す。さらには、それら特許および公開物は、個々の公開物が参照によ
って組み込まれることが特異的におよび個別的に示唆されたのと同様に、参照に
よってこの中に組み込まれる。当業者は、この中に記載された目的、目標および
利点、ならびに本質的なそれらの目的、目標および利点を達成するために本発明
を上手く適用できることを容易に理解するであろう。方法、手順、処理、分子お
よび特異的化合物に沿って記載された本実施例は、現在における好ましい実施形
態の代表であり、例示であり、本発明の範囲を限定するものとしてみなされない
。実施例における変化および他の用途は当業者に考え付くものであり、請求の範
囲によって特定された本発明の精神の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、グアニリルトランスフェラーゼのサインモチーフを示す
【図2】 図2は、真菌、後生動物、およびクロレラウィルスのmRNAキャッピング酵素に
おける保存配列要素を示す
【図3】 図3は、後生動物のキャッピング酵素およびバキュロウィルスホスファターゼ
BVPのRNAトリホスファターゼ領域を示す
【図4】 図4は、金属依存的RNAトリホスファターゼの保存配列要素を示す
【図5】 図5は、ヒトおよび酵母のキャップメチルトランスフェラーゼにおけるアミノ
酸配列の保存を示す
【図6】 図6は、Cet1(201-549)pのRNAトリホスファターゼ活性に対する突然変異効果を
示す
【図7】 図7は、Cet1pによるATPの加水分解を示す
【図8】 図8は、Cet1pによるATP加水分解の速度論的解析を示す
【図9】 図9は、組換えHcm1pのキャップメチルトランスフェラーゼ活性を示す
【図10】 図10は、ヒトキャップメチルトランスフェラーゼのグリセロール密度勾配沈
降を示す
【図11】 図11は、Hcm1pのN末端欠失変異体によるキャップメチル化を示す
【図12】 図12は、インビボでの酵母Abd1pのためのヒトキャップメチルトランスフェラ
ーゼ置換を示す
【図13】 図13は、哺乳類キャッピング酵素による酵母キャッピング機構の置換を示す
【図14】 図14は、サッカロミセス・セレビシエにおける遺伝子相補性による、カンジ
ダ・アルビカンスキャップメチルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニングを示
【図15】 図15は、カンジダ・アルビカンスのキャップメチルトランスフェラーゼによ
るサッカロミセス・セレビシエΔabd1菌株の相補性、およびインビボでのCCM1機
能に対するN末端欠失の影響を示す
【図16】 図16は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼのインビボでの欠
失分析を示す
【図17】 図17は、インビボでのサッカロミセス・セレビシエCET1機能に対するN末端欠
失の影響を示す
【図18】 図18は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構のトリホス
ファターゼおよびグアニリルトランスフェラーゼ成分の置換を示す
【図19】 図19は、カンジダ酵素による、サッカロミセスキャッピング機構の完全置換
を示す
【図20】 図20は、組換えCaCet1p、CaCet1(203-520)p (Δ202)、およびCaCet1(217-520
)p (Δ216)の精製を示す
【図21】 図21は、CaCet1pおよびCaCet1pのN末端欠失変異体のマンガン依存的ATPase活
性を示す
【図22】 図22は、カンジダ・アルビカンスRNAトリホスファターゼによるATP加水分解
が、マンガンおよびコバルトによって特異的に活性化されることを示す
【図23】 図23は、組換えCaCet1(203-540)pのRNAトリホスファターゼ活性を示す
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),AU,CA,J P,MX

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生物の5’mRNAキャップ構造の形成を阻害する化合物を
    スクリーニングする方法であって: a)第1生物由来の5’キャッピング機能をコードする遺伝子で、宿主生物の
    5’mRNAキャッピング機能をコードする遺伝子を置換し、それによって、第
    1生物のキャッピング機構を発現する宿主生物を作成し; b)該第1生物とは異なる第2生物由来の5’キャッピング機能をコードする
    遺伝子で、宿主生物の5’mRNAキャッピング機能をコードする遺伝子を置換
    し、それによって、第2生物のキャッピング機構を発現する宿主生物を作成し; c)該第1生物のキャッピング機構を発現する宿主生物、および該第2生物の
    キャッピング機構を発現する宿主生物を試験化合物で処理し;さらに d)該第1生物のキャッピング機構を発現する宿主生物の成長阻害を該第2生
    物のキャッピング機構を発現する宿主生物の成長阻害と比較し、ここで、該第2
    生物のキャッピング機構を発現する宿主生物の成長を阻害しないで該第1生物の
    キャッピング機構を発現する宿主細胞のみの成長を阻害することが、該試験化合
    物が第1生物の5’mRNAキャッピング機能を阻害することを示唆し、該第1
    生物のキャッピング機構を発現する宿主生物の成長を阻害しないで該第2生物の
    キャッピング機構を発現する宿主細胞のみの成長を阻害することが、該試験化合
    物が第2生物の5’mRNAキャッピング機能を阻害することを示唆する: 工程を含むことを特徴とする方法。
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