JP2002530349A - Nf−at媒介の心臓肥大、それに関係する方法及び試薬 - Google Patents

Nf−at媒介の心臓肥大、それに関係する方法及び試薬

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アール.クラブトリー ジェラルド
ピー.ノースロップ ジェフリー
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Abstract

(57)【要約】 この発明は、NF−ATアンタゴニストの利用により、心臓肥大を治療する方法であり、又は他の心臓及び血管組織の増殖を防止する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明はNF−AT媒介の心臓肥大に関連した方法及び薬剤に関する。
【0002】 従来の技術 心不全は米国でほぼ300万人に影響があり、年々約40万人の割合で発症し
ている。心不全に対する現在の療法は主としてアンギオテンシン変換酵素(AC
E)インヒビターと利尿剤が使用されている。ACEインヒビターは患者の心不
全の終期の進行を遅延するようであるが、心不全患者の60%以上の症状を緩和
できず、心不全の死亡率を約05−20%程度減少するに過ぎない。心臓移植は
ドナーの心臓が容易に得られないために制限されている。ジゴキシンを除いて、
副作用(不整脈、突然死、その他の生死に拘わる有害な副作用)を伴わない陽性
変力剤の長期投与からは有用な薬剤が得られていない。これらの現在の治療法の
欠陥は更なる治療手段の必要性を示している。
【0003】 心筋肥大は心筋層の最も重要な生理的反応の一つである。心臓に対する増大し
た動作要求に応答し、或いは心臓の損傷に導くような病理的な各種の刺激に続い
て、筋細胞の増加、個々の心臓細胞中の収縮タンパク質の蓄積、胚遺伝子マーカ
ーの発現の活性化、或いは筋細胞増殖に対する共存的効果の欠落等、により特徴
づけられる各心筋細胞の肥大応答の活性化を通じて心臓は適応する。肥大過程は
初期には補償的であるが、心筋層は機能不全となるような病理的転移があり得る
(Braunwald(1994)in Pathophysiologv of Heart Failure,(Braunwald,
ed.);Saunders, Philadelphia;Vol.14, pp393−402)。
【0004】 心室筋細胞肥大のインビトロモデルでの研究では、多数の機構的、ホルモン的
な成長因子、及び肥大の独立した数種の特徴を活性化できる病理的刺激が特定さ
れている(Chien et al.(1991)FASEB J.5:3037−3046;Knowlt
on et al.(1991) J. Biol. Chem. 266:7759-7768; Shubeit
a et al. (1990) J. Biol. Chem.265 :20555-20562; Tho
rburn et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:2244−2249; La
Morte et al. (1994), J.Biol. Chem. 269:13490−13496
; Knowlton et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:15374−15
380). 現在では、少なくとも2種の信号伝達路が存在し、ras−型 (Thorbu
m et al. (1993) 上掲)と、Gqタンパク質依存性下流エフェクター(LaMo
rte et al. (1994) 上掲) とを含み、これらはインビトロモデル系での
肥大反応の特徴の活性化に関連している。心室筋細胞の肥大反応を活性化する信
号伝達路を探すためのたくさんの方法が提案されたが、非致死的な方法で肥大応
答を抑制する機構に関しては殆ど報告がない。
【0005】 発明が解決しようとする課題 心臓病の処置、例えば充血性心不全、肥大性心筋症などの心不全療法を改善す
る新規な薬剤に対する明らかな要求がある。したがって、これらの薬剤を同定す
る方法が必要となる。
【0006】 課題を解決するための手段 本発明は被験者の心臓肥大を抑制または軽減する方法を提供するもので、この
方法は、被験者に、心筋内のNF−ATの生物学的活性を減少するに充分な薬学
的に有効量のNF−ATアンタゴニストを投与して、被験者の心臓肥大を抑制ま
たは減少する。 例えば、本発明の方法はNF−ATアンタゴニストを使用してNF−ATの転
写活性、核転座、及び/又は脱燐酸化を抑制する。 ある例では、本発明のアンタゴニストは例えばタンパク質−タンパク質又はタ
ンパク質−DNA相互作用によるNF−ATを含む複合体の形成を抑制する。例
えば、このアンタゴニストはタンパク質とNF−AT反応性要素を含む遺伝子と
の相互作用を抑制することによりNF−AT活性を阻害し、或いはNF−ATタ
ンパク質の脱燐酸化を阻害し、或いはNF−ATタンパク質の核転座を抑制する
。アンタゴニストは局所的に又は系統的に投与できる。前者の場合にはアンタゴ
ニストはカテーテルを使用し、及び/又は心筋内空所に灌流できる。 本発明の方法は充血性心臓病等の処置の一部として使用できる。好ましい実施
例では、アンタゴニストはNF−ATc3及び/又はNF−ATc4を選択的に
抑制できる。
【0007】 アンタゴニストは次の方法により確認できる。 (i)単離したNF−ATポリペプチド又は分子と相互作用するに充分なその
一部を、該分子及び又は化合物と、当該化合物が存在しなければNF−ATポリ
ペプチド又はその一部と前記分子が相互作用したであろうような条件下で接触さ
せること、 (ii)前記化合物の存在時の、前記NF−ATポリペプチド又はその一部と前
記分子の間の相互作用の大きさを、前記化合物の不存在時と比較して決定し、そ
れにより、NF−ATポリペプチド又はその一部と前記分子との、前記化合物の
不存在に比した存在時の弱い相互作用が、NF−ATポリペプチドの活性のアン
タゴニストであることを示す。 他の形態では、本発明は心臓肥大を治療し又は抑制するための薬剤組成物を提
供するものであり、この薬剤は心臓を標的としてNF−ATアンタゴニストを送
るための製薬上許容できる媒体に担持したNF−ATポリペプチドを含む。 本発明は又、免疫反応を調節し、或いは免疫反応調節剤のスクリーニングをす
るための方法及び組成物を提供する。これらの方法はNF−ATc組み替えタン
パク質をコードするポリヌクレオチド配列体と、実質的にNF−ATcポリヌク
レオチド配列体と実質同一の相補的なポリヌクレオチドを利用する。
【0008】 本発明はその一形態において、NF−ATcポリペプチドとその組成物を提供
する。NF−ATcポリペプチドは図1に示した配列に実質的に等しいポリペプ
チド、或いはそれと相同の遺伝子配列を有する。NF−ATcをコードする核酸
配列体も提供される。図1におけるヌクレオチド配列及びそれから予想されるア
ミノ酸配列を含むクローンされた配列体も提供される。これらの配列を有するポ
リヌクレオチドは、ヒトNF−ATc及びマウスNF−ATcポリペプチドのよ
うな多量のNF−ATcポリペプチドの組み換え発現のためのテンプレートとし
て役立つ。これらのポリヌクレオチドはまた核酸ハイブリダイズに対するプロー
ブとして役立ち、例えば各個のリンパ細胞(または他の細胞型)でのインサイテ
ューハイブリダイズによる、NF−ATcmRNAの転写及びmRNA存在比を
検出し、ノーザンブロット分析及び/又はインサイテューハイブリダイズよるイ
ンサイテューリンパ細胞増殖を検出し(Aiwine et al. (1977) Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A. 74: 5350)、PCR増幅及び/又はLCR検出を
行う。かかる組み換えポリペプチド及び核酸ハイブリダイズプローブは、免疫調
節剤のインビトロスクリーニング法に使用でき、またNF−AT活性が病気の過
程、自己免疫、関節炎等に関与するような移植拒絶反応、T細胞媒介免疫反応、
リンパ細胞白血病(例えばT細胞白血病又はリンパ腫)等の病理学的症状の診断
及び治療に使用できる。
【0009】 一実施例では、免疫調節剤が、NF−ATcポリペプチドが他のNF−AT(
例えばAP−1)他の要素への結合を阻害し、或いはNF−ATのNF−AT認
識部位を有するDNAへの結合を阻害する能力を利用して、候補となる免疫調節
剤が同定される。DNAは好ましくはNF−AT蛋白質複合体が結合する1以上
のNF−AT部位を含んでいる。 NF−ATcからDNAへの結合を含むNF−AT蛋白質の結合の一つの検出
手段は、固体基質への共有又は非共有化学結合によるなどしてDNAを不動化し
、この不動化したDNAを、検出マーカ(例えば放射性標識アミノ酸)により標
識したNF−ATcポリペプチドを含むNF−AT蛋白質複合体と接触させるこ
とである。このような接触は典型的にはNF−AT蛋白質を、NF−AT結合配
列を含んでいる標的DNAに結合させることを可能にする水性条件下に行われる
。不動化DNAへの標識されたNF−ATの結合は、標識されたNF−ATcポ
リペプチドが特異的結合相互作用の結果として不動化される度合いを決定するこ
とにより測定される。かかる特異的結合は可逆性であるか、又はもしも交差結合
剤が適当な条件下に添加されれば選択的に非可逆性であり得る。
【0010】 一形態では、候補の免疫調節剤はNF−ATcと他のNF−AT複合体(AP
−1, JunB等)の間の分子間結合を抑制(又は増進)することができる剤として
同定される。本発明はNF−ATcの他のNF−ATポリペプチドへの結合に干
渉する能力のある剤のライブラリーを、水性条件下にスクリーニングするための
方法と組成物を提供する。典型的には少なくともNF−ATc及び/又は他のN
F−ATポリペプチドが検出可能標識によりラベルされ、そして、NF−ATc
とNF−ATポリペプチドとの間の分子間結合がNF−AT蛋白質複合体等に捕
捉された標識物質の量により検出される。
【0011】 NF−ATポリペプチドが核移行配列(NF−ATポリペプチドが細胞内カル
シウムの存在下に核へ移動するが、カルシウムの不在下にはNF−ATポリペプ
チド中の他の領域と分子内会合を形成することにより遮蔽される配列)を含んで
いるという知見に少なくとも基づいて、本発明は、NF−ATの移動(transloc
ation)を調節すること、例えば分子内会合を調節して核移行配列(NLS)の
遮蔽を行うこと、によりNF−ATの活性を調節する方法を提供する。加えるに
、NF−ATのNLSはNF−ATのホスホリル化領域と分子内会合を形成する
ので、本発明はNF−ATホスホリル化を調節することよりなるNF−AT活性
の調節方法を提供する。さらに、ここに記述するようにNF−ATは、蛋白質キ
ナーゼA(PKA) 及びグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3)(
によりホスホリル化され、カルシニューリンにより脱ホスホリル化されるので、
ホスホリル化の状態及びNF−ATの活性化は、これらのキナーゼ及び/又はホ
スホターゼの活性を調節することにより調整できる。また、本発明の範囲内には
NF−ATの核移動を調節する化合物及び追加の化合物を同定するためのスクリ
ーニング試験法も含まれる。
【0012】 本発明の一形態では、NF−ATのホスホリル化を調節する物質を同定するた
めの方法も提供される。この方法では、試験剤を、NF−ATポリペプチド(又
はその一部であってGSK−3キナーゼ活性の基質であるもの)のGSK−3キ
ナーゼ活性を有する混合物と接触させ、GSK−3キナーゼ活性とNF−ATポ
リペプチドの相互作用及び/又はNF−ATポリペプチドのGSK−3キナーゼ
活性によるホスホリル化の調節を行う能力を決定する。
【0013】 この試験法は例えば精製した又は半精製したGSK−3及びNF−AT基質の
調製物等の組み換えGSK−3キナーゼ、NF−AT基質及び/又はレポータ遺
伝子を使用した細胞に基づいたアッセイ、或いは細胞のない形態でのアッセイで
実施できる。このアッセイは、単純な競合結合アッセイでも良いし、基質のホス
ホリル化の速度を検出するキナーゼ活性アッセイでも良いし、或いは基質の核移
行の速度を検出する核移動アッセイでも良い。好ましい実施例では、このアッセ
イで同定される1以上の化合物を含む薬剤組成物の形成段階をさらに含む。
【0014】 本発明の他の形態では、NF−ATを発現する細胞をGSK−3によるホスホ
リル化を調節する剤(例えばGSK−3インヒビター特にNF−ATの核移動を
抑制するインヒビター)と接触させることを含むNF−ATホスホリル化を調節
する方法が提供される。
【0015】 本発明のさらに他の形態は、NF−AT蛋白質の核移動を調節するためのペプ
チド又は擬似ペプチド剤に関する。この剤は、核移行シグナルの分子内会合に関
与するNF−AT蛋白質の部分に対応している。本発明はまた、試験剤をNF−
ATポリペプチド又はその核移行シグナルを含む部分に接触させ、次いで試験剤
が核移行配列に結合し及び/又は核移行配列のホスホリル化形態の三次構造を変
える能力を決定することを含む、NF−ATの核移動を調節する化合物を同定す
る方法を提供する。上記のように、かかるアッセイは競合結合又は核移動アッセ
イとして、制帽に基づく又は細胞のない形態で実施できる。ある実施形態では、
NLS配列のホスホリル化に依存する蛋白質の配座の変化が、CD/ORDその他の
三次構造を決定する手段等により測光的に検出できる。
【0016】 本発明はまた、同族mRNA種の転写及び/又は翻訳の抑制に使用されるNF
−ATc配列に挿補的なアンチセンスポリヌクレオチドを提供し、それにより細
胞(例えば患者のリンパ細胞)中のそれぞれのNF−ATcの量を減少を行う。
このようなアンチセンスポリヌクレオチドはT細胞の活性化に必要なNF−AT
蛋白質の形成を抑制することにより免疫調節剤として作用する。
【0017】 本発明の変形例において、本発明のポリヌクレオチドはT細胞腫瘍、T細胞機
能昂進及び機能低下、その他NF−ATcポリペプチド、NF−ATcポリヌク
レオチド配列、又はNF−ATc遺伝子又は脇部領域の構造又は存在度の変化を
含む状態又は症状等の病理学的状態又は遺伝病の診断に使用される。
【0018】 本発明はまたNF−ATcに対して約1×107-1の親和度で結合するとと
もに、T細胞中に存在する他の蛋白質に対する高い結合親和性を欠いている抗体
を提供する。これらの抗体は、活性化T細胞の診断の標準的なアッセイにより決
定される増大した量のNF−ATc蛋白質を含有している細胞のような、患者の
細胞試料(例えばリンパ細胞又は固体組織検体)中のT細胞を同定する診断試薬
として使用できる。しばしば、アンチNF−ATc抗体はインサイテューでの細
胞試料の免疫組織的な染色に対する診断剤として含まれる。従って、アンチNF
−ATc抗体はT細胞に標識投与による治療に使用できる(例えばリポソーム/
免疫リポソームの投与)。
【0019】 本発明はまた、患者から移植した細胞中のNF−ATcmRNAの検出又は病
徴的なNF−ATc対立遺伝子の検出による(例えば、RFLP又は対立遺伝子特異
性のPCR分析による) 腫瘍又は免疫状態診断用のNF−ATcポリヌクレオチド
プローブを提供する。病徴的なNF−ATc対立遺伝子は、所定の病気又は病気
を進行させる傾向と統計的に関連している対立遺伝子である。典型的には、検出
は標識(32P, 35S, 14C, 3H,蛍光剤、ビオチニル化、又はヂゴキシゲニニル化
)を付したNF−ATcポリヌクレオチドポリペプチドを使用してインサイテュ
ーハイブリダイズによることができる。もっともノーザンブロット、ドットブロ
ット、又は細胞サンプルから単離したバルクRNA又はポリA+ RNA上の溶液
ハイブリダイズ等も使用でき、また、NF−ATc特異性のプライマーを使用し
PC増幅も使用できる。活性化したT細胞又は活性化可能なT細胞以外の細胞又
は細胞が谷対する標準的な対照値に対して、増大した量のNF−ATcmRNA
を含有する細胞は、それにおり活性化されたT細胞又は活性化可能なT細胞とし
て同定される。同様に、細胞試料中のNF−ATc個所又はそれに密接に結合し
た個所の病徴的な再配置又は増幅の検出は、病状又はかかる病状(例えばガン、
遺伝病)を生じる傾向の存在を同定する。
【0020】 本発明はまた、ヒト患者のT細胞昂進又は低下を診断するための方法において
、診断アッセイ(例えば固定したリンパ細胞の、ヒトNF−ATcに特異的に結
合する抗体による免疫組織化学的な染色)が使用されて、所定の病徴濃度のNF
−ATc蛋白質又はNF−ATcmRNAがヒト患者からの生検試料に存在する
かを決定し、もしもアッセイがかかる所定の病徴濃度又はそれ以上でNF−AT
c蛋白質又はNF−ATcmRNAの存在を示すならば、その患者はT細胞機能
昂進又は機能低下症状、移植拒絶反応、等を有するものと診断される。別法とし
て、T細胞機能昂進又は免疫抑制は、患者の核の及び/又は細胞質のNF−AT
のレベルを決定し、次いでこのレベルを健常者のそれと比較することにより診断
される。一つの例では核の及び/又は細胞質のNF−ATのレベルは、T細胞ア
クチベータによる患者のリンパ細胞の培養後に決定される。健常者に比較した核
NF−ATが低ければ、患者は免疫抑制されていることが示される。同様な方法
は、免疫抑制薬例えばシクロスポリンAで処置された患者の免疫抑制状態を監視
することができる。この方法では、患者に対してより適正な量の免疫抑制剤の投
与が可能となる。 全ての公知文献及び特許出願はここに引用して本書の一部とする。
【0021】 課題を解決するための手段 (i)概要 細胞レベルにおいて、心臓は筋細胞と周囲の支持細胞(非筋細胞)とのシンシ
チウム(細胞融合体)として作用する。非筋細胞は主として繊維芽/間充織細胞
であるが、それらは又内皮及び平滑筋細胞を含む。実際、筋細胞は成人の心筋塊
のほとんどを構成しているが、それらは心臓に存在する全細胞数の30%を構成
するに過ぎない。生体の心筋細胞との密接した関連のため、非筋細胞は筋細胞の
成長及び発達に影響を有しうる。この相互作用は細胞間接触を通じて直接に、又
はパラクリン因子の生成を通じて間接に媒介される。かかる生体内会合は非筋細
胞数とそれらが相互作用する細胞外基質の両者が心筋昂進時や傷害及び梗塞時に
増加するので重要である。これらの変化は異常な心筋機能に関連している。
【0022】 心筋は誕生後短期に分割できない。更なる成長が個々の細胞の肥大を通じて起
きる。心筋肥大の細胞培養モデルが心筋肥大機構のより良い理解のために開発さ
れている(Simpson et al., Circ. Res., 51: 787-801 (1982)
; Chien et al., FASEB J., 5: 3037-3046 (1991)。 培地で
の心筋のほとんどの研究は非筋細胞による汚染を最小にするように設計されてい
る(例えば Simpson and Savion, Cir. Cres., 50: 101-116 (198
2); Libby, J. Mol. Cell. Cardiol., 16: 803-811 (1984)
; Iwaki et al., J. Biol. Chem., 265:13809-13817 (199
0))。 成人の心室筋細胞の肥大は長期の過負荷を導く各種の条件に対する応答である
。この応答は心筋細胞の寸法の増大、細胞分割を伴わない収縮蛋白質含量、及び
胚遺伝子(心室ナトリウム排泄昂進ペプチド(ANP)に対する遺伝子を含む)の
活性化の増加により特徴づけられる(上記Chien et al.)。成人の心筋肥大は、
個々の筋繊維に対する負荷の減少を可能にすることにより、傷害のある心機能に
対する短期応答としては初期に有益である。しかし重い長期負荷に対しては肥大
した細胞が劣化と死滅を始める( Katz, "Heart failure," in Katz AM, ed., P
hysiology of the Heart (New York: Raven Press; 1992) pp. 638-
668)。内皮細胞、平滑筋細胞、及び繊維芽/間充織細胞は心臓の筋細胞に密
接に接触して存在する (Nag, Cytobios., 28: 4 1-61 (1980))
【0023】 本発明の一形態は、心筋その他の血管組織の所望されない成長を抑制又は阻止
する方法の一部としてインヒビターNF−AT活性(特にNF−ATc3 or NF
−ATC4)に対する薬剤の使用に関する。薬剤開発の目標としての蛋白質の可能
性を考慮すると、蛋白質の機能喪失が、治療投与期間中に、処置患者に対して致
命的(例えば組織の死滅又はであるかどうかを考慮しなければならない。従来、
NF−AT対立遺伝子の対する機能喪失変異体を有する形質転換動物は、ある種
のNF−AT機能の抑制が致死結果を含むことを示した。同様にカルシニューリ
ンの機能喪失は致死的表現型を生じうる。しかし、本書に記載するように(例え
ば実施例20)、NF−ATc4やNF−ATc3の機能喪失は動物に死を招か
ないし、これらの変異体は正常心筋の病理に対して悪影響を及ぼさない。従って
、本発明者の観察によると、NF−ATc4やNF−ATc3は薬剤開発の適当
な目標であることが示唆される。
【0024】 本発明によると、心臓や血管組織における筋細胞及び/又は非筋細胞の成長を
抑制するなどの心臓や血管組織の抑制方法を提供する。例えば以下に述べるよう
に本発明の方法は、血管平滑筋肥大又は心臓肥大の治療の一部とするなど、心臓
肥大及び小動脈平滑筋増殖の過程を遅延するのに使用できる。例えば慢性心臓肥
大は充血性心不全及び心拍動停止の重大な病的前駆症状である。NF−AT及び
特にNF−ATc3又はNF−ATc4のアンタゴニストは充血性心不全に対す
る治療の一部として有用である。
【0025】 さらに、DNA認識要素に対する特異性の差異に基づいて、又各種のNF−A
Tパラローグ(擬似体)が有する蛋白質−蛋白質相互作用における差異に基づい
て、本発明は特にある種のNF−AT蛋白質の活性を選択的に抑制するNF−A
Tアンタゴニストの同定と使用を意図している。好ましい実施例においては、本
発明は心臓肥大、或いはその他心臓及び血管組織の成長を、NF−ATc3及び
/又は NF−ATc4に対して選択である(NF−ATc1 or NF−ATc2に
対しては選択的でない)NF−ATアンタゴニストの使用により治療又は抑制す
る方法を提供する。例えばNF−ATアンタゴニストは、NF−ATc1又は N
F−ATc2活性の抑制に対するED5O値よりも少なくとも1桁、好ましくは2、
3、4、或いは5桁少ない生体内NF−ATc3又は NF−ATc4活性を抑制
するED5O値を有するように選択できる。 他の実施例では、NF−ATのアンタゴニストは、腫瘍の成長及び他の筋肉起
源の細胞を含む過大増殖症(例えば横紋筋腫や平滑筋腫)の抑制に使用すること
ができる。
【0026】 (ii)定義 特に断らない限り、全ての技術用語及び化学用語は通常理解されている意味有
する。 一般に以下で使用する用語及び培養の実験手法等はこうちであり、例えば次の文
献を参照されたい。 Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manu
al, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Sprin
g Harbor, N.Y.。 オリゴヌクレオチドはApplied Bio Systems社のオリゴヌクレオチド合成器と
提供された手順書を使用した。 PCR増幅法は従来公知である(PCR Technology: Principles and Applicat
ions for DNA Amplification ed. HA Erlich, Freeman Press, New York, NY (
1992); Protocols: A Guide to Methods and Applications, eds. Innis
, Gelfiand, Snisky, and White, Academic Press, San Diego, CA (1990
); Mattila et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 4967; Ec
kert, K.A. and Kunkel, T.A. (1991) PCR Methods and Applications 1
: 17; PCR, eds. McPherson, Quirkes, and Taylor, IRL Press, Oxford;
and U.S. Patent 4,683,202, which are incorporated herein by refer
ence). ここに使用した用語「例示のNF−AT核酸」及び「例示のNF−AT蛋白質
」は如何に記載する実施例及び次の文献Northrop et al. (1994) Nature
369:497; Park et a!. (1996) J. Biol. Chem. 271:209
14; Luo et al. (1996) MCB16:3955; Hoey et al.(1995
) Immunity 2:461; Masuda et al. (1995) Mol. Cell. Biol. 1
5:2697; US Patent 5,708,158及び同 5,612,455 に記載
されたそれぞれのNF−AT遺伝子のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ
意味する。これ等の文献は特にヒトNF−AT3(ヒトNF−ATc4)の配列
、ヒトNF−AT4(ヒトNF−ATc3)の3つの接合(スプライス)変種の
配列を記載している。NF−AT4はNF−AT4a、 NF−AT4b 及び N
F−AT4cと指定されており、コード領域のスプライス結合の位置はNF−A
T4aではプロリン699の後、NF−AT4bとNF−AT4cではバリン7
00及びプロリン716の後にある。これらのNF−AT蛋白質のRel領域の
整列はある領域が特に良く保存されることを示す。特に次のアミノ酸配列は全て
のNF−ATポリペプチドのREL領域に見いだされる。アミノ酸配列HHRAHYET
EGSRGAVKA (配列番号 )、アミノ酸配列PHAFYQVHRITGK(配列番号 )、アミ
ノ酸配列DIELRXGETDIGRKNTRVRLVFRVHX1P (配列番号 )、 及び配列番号PX2
ECSQRSAX3ELP (配列番号 )。ここにX1、X2はバリン又はイソロイシン
のような疎水性基であり、X3は任意の残基(好ましくはグルタミン又はヒスチ
ジン)である。
【0027】 例示のヒトNF−AT核酸及びポリペプチドのGenBankアクセス番号は次の表
に示す。
【表1】 NF-AT GenBank No. NF-ATc1 NF-Atc U08015 NF-ATc.b U59736 NF-ATc2 NF-AT1 I38152 NF-ATp1 U43341 isoform B U43342 isoform C NF-ATc3 NF-AT4a I38155 NF-AT4b I38156 NF-AT4c L41067 NF-ATc4 NF-AT3 L41066 I38154 NF-Atx U14510 NF-ATx2 U85428 NF-ATx3 U85429 NF-ATx4 U85430 NF-ATc2は又NFIL2E及びNFII-aとも呼ばれる。
【0028】 NF−AT遺伝子及びその産生物はGenBankにあり、特にアクセス番号I80
836、U36576、U36575、I60722、U02079、AF04
9606、AF087434、PRF30 locus 2013343A、PIR lo
cus S45262及びA48753である。
【0029】 「処置」の語は治療及び予防処置を指し、目的は肥大を抑制し或いは遅延(軽
減)することである。処置の必要性がある者には、既に疾患を有する者及びその
性向を有する者、及び疾患の阻止が必要な者が含まれる。肥大は、先天性、ウイ
ルス性又は突発性の、或いは筋肥大、心筋梗塞のような虚血又は虚血性傷害を含
む任意の原因によるものを含む。典型的には処置は特に虚血等の心臓損傷後に肥
大の進行を停止させ或いは減速させるために行われる。好ましくは、心筋傷害の
処置には薬剤を係る心筋傷害の直後に投与して肥大を防ぐか又は軽減する。
【0030】 用語「心不全」は心臓が血液を組織代謝を満足させるに必要な速度で血液を輸
送しない心機能の以上を意味する。心不全には充血性心不全、心筋梗塞、頻脈性
不整脈、家族性肥大心筋疾患、虚血性心臓病、突発性膨張心筋疾患、及び心筋炎
が含まれる。心不全は多数の因子が原因となるもので、例えば虚血性、先天性、
リューマチ性、又は突発性の原因がある。慢性心肥大は充血性心不全或いは心拍
動停止の前駆症状である実質的な病気状態である。さらに具体的に言うと、処置
又は処置するとは、阻止、軽減又は抑制を指す。この点に関して本発明の方法は
処置の一部として(但しこれに限らないが)(1)α1アドレナリンアゴニスト
及び/又はエンドセリン(血管収縮ペプチド)により什器される心室筋細胞肥大
、(2)心肥大を促進する副作用を有する薬剤により誘起される心室筋細胞肥大
、(3)例えば心室筋細胞の肥大が媒介する心不全等の症状、および(4)ウイ
ルス性心筋疾患、長期の高血圧、病理的刺激による心臓疾患、及びポスト心筋梗
塞等により媒介される心室筋細胞肥大の処置に適用できる。 「長期(chronic)」投与とは急性モードとは異なり連続して薬剤を投与し、
長期にわたり初期の肥満抑制効果を維持することである。
【0031】 「NF−ATアンタゴニスト」とはNF−AT依存性の転写を遮断又は阻止す
る任意の分子を指す。このようなアンタゴニストはかかる効果を色々な形で達成
する。例えばアンタゴニストの一つのクラスは充分な親和性と特異性をもってN
F−AT蛋白質に結合し、NF−ATの、AP1のようなDNAまたは蛋白質因
子中の同族応答要素との相互作用を抑制する。他のアンタゴニストのクラスはN
F−ATに結合し、そしてNLS部位のホスホリル化を阻止したり、ホスホリル
化から生じる配座変化を阻止したりすることなどにより、その核移行を抑制する
。さらに他のアンタゴニストのクラスは、GSK−3又はPKAのようなキナー
ゼが、NF−AT蛋白質のNLS部位をホスホリル化するのを抑制することによ
り、NF−AT活性を阻止することができる。他のアンタゴニストのクラスはこ
のに記載され或いは当業者には明らかであろう。
【0032】 「心室筋細胞肥大」とは個々の心室筋細胞における寸法の増加により特徴づけ
られる状態を指し、細胞寸法の増大は患者の診療的な診断を結果するに充分であ
り、或いは細胞が大きい(例えば非肥大細胞の2倍以上)と決定するに充分であ
る。これにはそれぞれの心筋細胞内の収縮蛋白質の蓄積と胚遺伝子発現の活性化
を伴い得る。
【0033】 心室筋細胞肥大の「抑制」とは、肥大状体に関して肥大を表示するパラメータ
の一つが減少すること、又は正常状態に対して相対的に肥大を示すパラメータの
一つの増大が阻止されることを指す。好ましくは心室筋細胞肥大の抑制は肥大状
態で観察される細胞に対して相対的に10%以上の肥大細胞寸法の減少である。
より好ましくは肥大の抑制は細胞寸法の50%以上の減少である。フェニルフリ
ンが指示剤として使用される場合の肥大評価アッセイに対して、これらの減少は
肥大評点約6.5以下、5.0〜5.5及び4.5〜5.0にそれぞれ関連づけ
られる。異なった指示剤が使用される場合には、抑制は誘起剤の存在下に測定さ
れる最大細胞寸法(肥大評点)に対して相対的に測定される。
【0034】 「心室筋細胞肥大の阻止」は完全に肥大を誘起するに充分な濃度の誘起剤の存
在下に、正常細胞に対して相対的に細胞寸法の増加を阻止することにより決定さ
れる。例えば肥大の阻止は最大刺激濃度の誘起剤の存在下に、非誘起細胞よりも
200%以下までの細胞寸法の増大を意味する。より好ましくは肥大の阻止は非
誘起細胞よりも135%以下までの細胞寸法の増大を意味し、さらに好ましくは
非誘起細胞よりも90%以下までの細胞寸法の増大を意味する。フェニルエフリ
ンが誘起剤として使用される場合の肥大評点アッセイに関しては、最大刺激濃度
のフェニルエフリンの存在下に肥大の阻止は、肥大評点でそれぞれ約6.0-6.
5、 5.0-5.5、及び 4.0-4.5である。 NF−AT治療剤例えばアンタゴニストの「有効量」又は「薬剤的有効量」と
は、所望の生理学的効果、例えば心室筋細胞肥大の抑制を得るに充分なNF−A
T治療剤を意味する。NF−AT治療剤の有効量は、当業者が適正投与量を決定
するのに通常考慮する、患者の年齢、性別、体重等、処置条件、及び処置される
症状の重度等の因子に基づいてケース毎に処置をする者により決定される。
【0035】 ここで使用される20個の在来のアミノ酸及びそれらの略号は従来の用法を用
いる(Immunology - A Synthesis, 2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren,
Eds., Smauer Associates, Sunderland, Massachusetts (1991)。これら
20個の在来のアミノ酸の立体異性体(例 D-アミノ酸)、α,α二置換アミノ
酸、Nアルキルアミノ酸、乳酸、その他の合成アミノ酸も本発明のポリペプチド
のための適当な成分であり得る。合成アミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリ
ン、γ−グルタミン酸カルボキシル、ε−N,N,Nトリメチルリジン、ε−N
−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチ
オニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキジリジン、ω−N−メチルアルギ
ニン、その他の同様なアミノ酸、及びイミノ酸(4−ヒドロキシプロリン等)が
ある。本書のポリペプチドの表記では左がアミノ末端方向であり、右がカルボキ
シ末端方向である。単一鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’末端であり、二重
鎖ポリペプチド配列の左端方向は5’方向である。発生期のRNA転写の5’か
ら3’付加の方向は転写方向と称される。RNAと同一の配列を有するDNA鎖
の配列領域であって、RNA転写の5’から5’端である領域は上流配列と称さ
れ、RNAと同一の配列を有するDNA鎖上の領域であって、RNA転写の3’
から3’端の領域は下流領域と呼ばれる。
【0036】 「天然に産する」の語が物に対して使用されるときはその物が自然に存在する
物であることを示す。例えば天然源から単離でき人工的に改変されていない有機
体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は天然
に産する。
【0037】 「に相当する」の語は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の
全て又は一部に対して相同(すなわち同一。厳密に進化的に関連していることを
意味しない)であること、又はポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一
であることを意味する。これに対して、「に相補的である」の語は相補配列が参
照ポリヌクレオチド配列の全て又配列の前部又は一部に対して相同であることを
意味する。例えばヌクレオチド配列TATACは基準配列TATACに相当しており、基準
配列GTATAに相補的である。
【0038】 次の用語は2以上のポリヌクレオチドの間の配列関係を記述するために使用さ
れる。「基準配列」、「比較ウインドー」、「配列同一性」、「配列同一性の百
分率」、及び「実質的同一性」。「基準配列」は配列の比較の基準として使用さ
れる配列である。基準配列は例えば全長cDNAのセグメントのような長い配列
のサブセットであっても良いし、図1のポリヌクレオチド配列のような配列リス
ト中に与えられた遺伝子配列でも良いし、cDNAや遺伝子配列を含んでいて良
い。一般に少なくとも20個のヌクレオチド長を有し、しばしば少なくとも25
個のヌクレオチド長を有し、しばしば、少なくとも50個のヌクレオチド長を有
する。2つのポリヌクレオチドは各々(1)2つのポリヌクレオチドの間で類似
している配列(すなわち完全なポリヌクレオチド配列の一部)を含み、そして(
2)さらに2つのポリヌクレオチド間で異なった配列を含むので、2つ以上のポ
リヌクレオチドの配列の比較は典型的には比較ウインドーで2つのポリヌクレオ
チド間の比較を行って、配列類似性を持つ局所領域の確定と比較をおこなう。「
比較ウインドー」は、ポリヌクレオチド配列が少なくとも20個の隣接した基準
ヌクレオチドと比較でき、2つの配列の最適な整列のために比較ウインドー内の
ポリヌクレオチド配列の部分が基準配列(付加や欠失を含まないもの)に比して
20%以下の付加又は欠失(ギャップ)を含みうるような少なくとも20個の隣
接したヌクレオチド位置のセグメントを指す。比較ウインドーを整列するための
配列の最適の整列は、局所相同アルゴリズム(Smith and Waterman (1981
) Adv.19,App. Math. 2: 482)、相同整列アルゴリズム(Needleman a
nd Wunsch (1970) LMol. Biol. 48: 443)、 類似性検索法(Pears
on and Lipman (1988) Proc. Nati. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 24
44)、これらの電算機による実行(GAP,BESIFIT, FASTA及びTFASTA 。Wiscons
in Genetics Software Package Release 7.0, 5 Genetics Computer Group,
575 Science Dr., Madison, WI)、又は各種の方法により開発された検査と
最良整列(すなわち、比較ウインドーで最高の相同率を得るような方法)から選
択できる。「配列同一性」とは比較ウインドーで2つのポリヌクレオチド配列が
同一である(ヌクレオチド毎に比較して同一)ことを意味する。「配列同一性の
百分率」とは比較ウインドーにおいて2つの最適に整列したポリヌクレオチド配
列を比較し、同一核酸塩基(例えばA, T, C, G, U,又はI)が両配列中に生じる
位置の数を決定し、この一致数を比較ウインドー内の前位置の数で割り、それに
100を掛けることにより算出される。「実質的同一性」とはポリヌクレオチド
が、少なくとも20個のポリヌクレオチド位置、しばしば少なくとも25−50
個のポリヌクレオチドの比較ウインドーで、基準配列に対して、少なくとも85
%の配列同一性を有し、好ましくは少なくとも90−95%の配列同一性を有し
、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。こ
こに配列同一性の百分率は基準配列を、比較ウインドーで基準配列の20%以下
の付加又は欠失を含みうるポリヌクレオチド配列と比較することにより計算され
る。基準配列は例えば図1に示した全長ヒトNF−ATcポリヌクレオチド配列
、全長マウス又はウシNF−ATccDNA配列のセグメントとして、大きい配
列のサブセットであり得る。
【0039】 ポリペプチドに適用する場合、アミノ酸配列の同一性の度合いは2つのアミノ
酸配列に共通の位置の同一アミノ酸の数の関数である。アミノ酸配列の相同性又
は類似性の度合いは、2つのアミノ酸配列に共通の位置に構造的に関連したアミ
ノ酸の数の関数である。「関連のない」又は「非相同」配列は本発明のNF−A
Tc配列の一つと40%以下の同一性を有し、好ましくは20%以下の同一性を
有する。「実質的同一性」とは、2つのペプチド配列が、例えばデフォルトギャ
ップ重みを使用するプログラムGAP又はBESTFITによるなどで最適整列したとき、
少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、よ
り好ましくは少なくとも95%(例えば99%以上)の配列同一性を有すること
である。好ましくは同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換だけ相違する。保
存的アミノ酸置換とは類似の側鎖を有する残基の交換可能性を意味する。例えば
脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、
及びイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリ
ン及びトレオニンである。アミドを含有する側鎖を有するアミノ酸の群はアスパ
ラギン、及びグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルア
ラニン、チロシン、及びトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸の
群はリジン、アルギニン、及びヒスチジンである。イオウを含有する側鎖を有す
るアミノ酸の群はシステイン及びメチオニンである。好ましい保存性のアミノ酸
置換基はバリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジ
ン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0040】 用語「NF−ATc天然蛋白質」及び「全長NF−ATc蛋白質」は、図1に
示した導出アミノ酸配列に相当するか、又は同族全長cDNAの導出アミノ酸配
列に相当する天然に産するNF−ATcポリペプチドを指す。例えばNF−AT
c遺伝子を発現する天然のリンパ細胞中に存在するNF−ATc天然蛋白質は全
長NF−ATc蛋白質と考えられる。
【0041】 用語「NF−ATc断片」とは、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端が欠け
ているが、残りのアミノ酸配列が全長cDNA配列(例えば図1のcDNA)か
ら導出したNF−ATc配列中の相当した位置が同一であるようなポリペプチド
を指す。NF−ATc断片は典型的には少なくとも14アミノ酸の長さを有し、
好ましくは少なくとも20個のアミノ酸長、通常は少なくとも50個以上ののア
ミノ酸長を有する。
【0042】 用語「NF−ATc類似体」は、図1の導出されたアミノ酸配列の一部に実質
同一である少なくとも25個のアミノ酸のセグメントよりなるポリペプチドであ
って、次の特性の少なくとも一つを有するものをいう。(1)(a)他のNF−
AT蛋白質(たとえばAP−1)、(b)GSK−3及びPKAのようなキナー
ゼ、(c)カルシニューリンのようなホスホターゼ、(d)NLS, SRR, SP1,
SP2, 及び/又はSP3のようなNF−ATポリペプチド特にその一部を含む他
のポリペプチドに適当な条件下に結合する。(2)核酸に結合する。(3)T細
胞活性化で核への移行の能力を有する。及び(4)刺激信号の終了後に核から細
胞質に移動する能力を有する。典型的にはNF−ATc類似体は天然配列に関し
て保存性アミノ酸置換(又は付加又は欠失)を含む。NF−ATc類似体は典型
的には少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸長、最も普通
には全長天然産のNF−ATc(例えば図1に示されたもの)と同等の長さを有
する。ある種のNF−ATc類似体は生活性を欠くが、抗体をNF−ATcエピ
トープに上げたり、αNF−ATc抗体を親和クロマトグラフにより検出及び/
又は精製したり、或いは競合又は非競合アゴニスト、アンタゴニスト、又は天然
NF−ATc蛋白質機能の部分的なアゴニストとして使用することができる。
【0043】 「NF−ATcポリペプチド」はNF−ATポリペプチドと同義であり、NF
−ATcポリペプチド属の天然蛋白質、断片又は類似体を意味する一般語である
。したがって、天然NF−ATc、NF−ATcの断片、NF−ATcの類似体
はNF−ATcポリペプチド属である。好ましいNF−ATcポリペプチドには
、図1のヒト全長NF−ATc蛋白質(NF−ATc1とも呼ばれる)、又は実
質的に表IIに示された配列よりなるポリペプチドを含む。従ってNF−ATc
属は、同定されているものはもちろん、同定されていないもの、及び例えば低緊
縮ハイブリダイゼーションにより同定できる全てのNF−ATcポリペプチドを
含む。NF−ATc1とも呼ばれる配列番号38を有するNF−ATc、及び他
の族の相同体に加えて、NF−ATc属はNF−ATc2(NF−ATpとも言
う)、NF−ATc3(NF−AT4又は NF−ATxとも言う)、NF−AT
c4(NF−AT3とも言う)、及びそれらのスプライス変種を含む。
【0044】 「同族」とは、族間で発生的及び機能的に関連している遺伝子配列を指す。例
えば限定のつもりはないが、ヒトゲノムでは、ヒトCD4遺伝子がマウスCD4
遺伝子都道族である。なぜなら、これら2つの遺伝子の配列と構造は、それらが
高度に相同であり、いずれもMHCクラスII制限抗原認識を通じてT細胞活性化
シグナルを出すように作用する蛋白質をコードするからである。かくして、ヒト
NF−ATc遺伝子に対する同族マウス遺伝子は、ヒトNF−ATc蛋白質に対
して最大の配列同一性を有する発現された蛋白質をコードするとともに、ヒトN
F−ATc(例えばTリネージ細胞)のそれに類似の発現パターンを示すマウス
遺伝子である。好ましいNF−ATc遺伝子同族体は、ラットNF−ATc、ラ
ビットNF−ATc、イヌNF−ATc、非ヒト霊長類NF−ATc、ブタNF
−ATc、ウシNF−ATc、及びハムスターNF−ATcである。
【0045】 「NF−ATc依存性遺伝子」は次の遺伝子を言う。すなわち、(1)NF−
AT結合部位(適当な結合条件下にNF−ATにより特異的にフットプリントさ
れうる部位)を当該遺伝子の第1コード配列の約10キロ塩基内に有し、(2)
当該遺伝子に対するマイナー又はメジャー転写開始部位からの、増大した又は減
少した転写速度を表す(この転写速度の変更は、活性化されたT細胞におけるよ
うな、NF−AT複合体の存在に関連付けられる)遺伝子を言う。
【0046】 「変更された調節能力」は例えば遺伝子の転写等の生活性を向上又は抑制する
能力を指す。このような向上又は抑制はT細胞刺激のような特定のイベントの発
生に付随して起こりうる。例えば、変更は通常はT細胞刺激に続いて起きるIL
−2遺伝子の転写向上の抑制として現れうる。転写の向上又は抑制を調節する変
更された調節能力は、例えばIL-2遺伝子におけるような遺伝子の誘導可能な転
写に影響を与えることができ、或いは遺伝子の基本レベルの転写に影響すること
ができ、或いは両者である。
【0047】 「剤」とは化合物、化合物の混合物、生物巨大分子、又はバクテリア、植物、
菌類、又は動物(特にヒト)細胞(特にヒト)又は組織等からの抽出物を指す。
剤は以下に述べるスクリーニングアッセイにおいて封入による免疫調節剤(例え
ば免疫抑制剤)としての潜在的な活性に対して評価される。
【0048】 「候補免疫調節剤」とは本発明の一つ以上のスクリーニング法で推定免疫調節
剤として同定される剤のことを指す。ある候補免疫調節剤はヒト用の薬剤として
潜在的に値旅行かを有しうる。
【0049】 「標識」又は「標識された」の語は、放射線標識アミノ酸をビオチニル部分の
ポリペプチドへ合体又は付着することにより、標識されたアビジン(例えば蛍光
マーカー又は酵素活性を有し、後に光学的方法又は色測定法により検出できるス
トレプトアビジン)により検出されうるようにすることである。ポリペプチド及
び糖蛋白質を標識する各種の公知の方法が使用できる。ポリペプチドの標識には
、限定するつもりはないが、次のものがある。放射線同位体( 3H、14C、35
125I,131Iなど)、蛍光標識(FITC、ロダミン、ランタニド蛍光体など)、
酵素標識(生姜ペロキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカ
リ性ホスホターゼなど)、ビオチニル基、二次レポータにより認識される所定の
ポリペプチドエピトープ(ロイシンジッパー対配列、二次区タイに対する結合部
位、金属結合領域、エピトープタッグなど)がある。ある場合には標識は各種の
長さのスペーサアームにより付着されて潜在的な立体障害を減じる。 「実質的に純粋な」とは対象種が存在する支配的な種であること(すなわちモ
ル基準で、それは組成中の他のいかなる種よりも多量に存在すること)、好まし
くは、目的種が存在する全ての巨大分子種の少なくとも約50%(モル基準で)
を占めているような実質的に純粋な分画が組成物であることを指す。一般に、実
質的に純粋な組成物は、そこに存在する巨大分子の約80〜9%を含むであろう
。より好ましくは組成物が単一巨大分子種の二から実質的に構成されるように、
目的種が実質的に同質になるまでに精製されたもの(補選手が通常の検出法では
検出できない)である。
【0050】 「病徴的濃度」、「病徴的量」及び「病徴的染色パターン」の語は試料中のN
F−ATc蛋白質又はmRAの濃度、量、及び移行パターンを指し、移植拒絶の
ような病気を発達させる機能昂進又は機能低下T細胞条件又は性向の存在を指示
する。病徴的量は見込みによる及び/又は遡及的な統計臨床研究により決定され
る通常の診療値の範囲を外れる細胞又は細胞試料中のNF−ATc蛋白質又はN
F−ATcmRNAの量である。一般に、新生病(例えばリンパ細胞白血病)又
はT細胞媒介免疫反応を有する患者は、病気がない健常者を特徴づける濃度範囲
よりも高い細胞又は組織中NF−ATc蛋白質又はmRNA量を示すであろう。
典型的には病徴的濃度は平均正常値の上少なくとも約1の標準偏差を有し、もっ
と通常では平均正常値の上少なくとも2の標準偏差を有する。しかし、実質的に
全ての臨床試験はある率の誤った陽性及び陰性を示す。診断アッセイの感度と選
択性は診断目的と関連した調節要件をを満足するに充分でなければならない。一
般に本発明の診断法は個人が病気の候補者であるかどうかを同定し、有能な保険
専門医によりなされる病気の異なった診断に追加のパラメータを提供するもので
ある。
【0051】 (iii)実施例 A.NF−ATcポリヌクレオチド NF−ATcをコードするゲノム又はcDNAは図1に示したヌクレオチド配
列又は他の例示のNF−AT配列及び従来のハイブリダイゼーションスクリーニ
ング法(例えばBenton WD and Davis RW (1977) Science 196: 18
0; Goodspeed et al. (1989) Gene 76: 1; Dunn et al. (198
9) J. Biol. Chem. 264: 13057) に基づいて設計されたハイブリダ
イゼーションプローブを使用しクローンライブラリー(例えば入手先Clontech,
Palo Alto, CA)から単離できる。cDNAクローンが望まれる場合には、ヒト
mRNAに由来するcRNAを含むクローンライブラリーが好ましい。別法とし
て、図1に示した配列の全て又は一部に相当する合成ポリヌクレオチド配列また
は他のNF−AT配列は、オリゴヌクレオチドの化学合成により構成できる。さ
らに、NF−AT遺伝子の配列に基づくプライマーを使用したポリメラーゼ反応
(PCR)を使用してゲノムDNA、mRNAプール、又はcDNAクローンラ
イブラリからのDNA断片を増幅することができる。米国特許第4,683,19
5及び同4,683,202はPCR法を記載している。さらに、例えば図1に記
載した配列データに基づく一つのプライマー及びそこに記載されていない第2の
プライマーを使用するPCR法も使用できる。例えばポリアデニル化セグメント
に相同であるか又は相補的である第2のプライマーが使用できる。ある例では、
図1の2742個のヌクレオチド長を含むポリヌクレオチドが遺伝子コードの縮
退を使用して当業者により容易に構成できる。図1のNF−ATc配列の核酸4
18−710をコードするポリヌクレオチド配列もまた当業者には構成できる。
【0052】 ヌクレオチドの置換、欠失及び付加を本発明のポリヌクレオチドに導入できる
ことは明らかである。ヌクレオチド配列の変形は各種のNF−ATc対立遺伝子
、小さな配列誤差等の配列多様形から生じる。しかし、このような置換、欠失及
び付加はポリヌクレオチド配列が、特異的なハイブリダイゼーションを生じるに
充分な緊縮条件下に、図1に示したポリヌクレオチド配列の一つにハイブリダイ
ズする能力を実質的に喪失させるべきでない。
【0053】 特異的ハイブリダイゼーションはプローブポリヌクレオチド配列(例えば置換
、欠失、又は付加を含みうる本発明のポリヌクレオチド)と、特異的標的ポリヌ
クレオチド(例えば図1の配列を有するポリヌクレオチド又は他の例示の配列)
の間の交雑の形成を指す。ここにプローブは、例えばNF−ATcmRNAに相
当する単一バンド(又はNF−ATc遺伝子の複数の他のスプライス生成物に対
応する複数のバンド)が適当な細胞源(例えばNF−ATcを発現するT細胞)
からの調製されたRNAのノーザンプロット上で同定できるように、特異的標的
に対して優先的にハイブリダイズするものである。本発明のポリヌクレオチド及
び組み換え形成されたNF−ATc、その断片、及び類似体は、図1に与えられ
た配列を元にして、又は他の例示のNF−AT配列を元にして、公知の方法、例
えば文献(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd
Ed., (1989), Cold Spring Harbor, N.Y. and Berger and Kimmel, Meth
ods in Enzvmologv. Volume 152., Guide to Molecular Cloning Techniques
(1987), Academic Press, Inc., San Diego, CA)に記載された方法によ
り調製できる。
【0054】 NF−ATcポリヌクレオチドはハイブリダイゼーションプローブやPCR(
又はLCR)プライマーとして使用するなどの短いオリゴヌクレオチド(例えば
25−100塩基長)であり得る。NF−ATcポリヌクレオチド配列は又長い
ポリヌクレオチドの一部を含み得るし(例えばNF−ATcクローンを含むクロ
ーニングベクタ)また融合蛋白質の発現をコードするために、異なった蛋白質(
例えばグルタチオンS−トランスファーゼ又はβガラクトシダーゼ)をコードす
る他のポリヌクレオチド配列と、ポリヌクレオチド結合により、フレーム内で融
合しうる。典型的にはNF−ATcポリヌクレオチドは天然に産するNF−AT
cポリヌクレオチド配列(例えば図1の、または他の例示のNF−ATc配列)
と実質的に同一である少なくとも25個の連続したヌクレオチドを含む。より一
般にはNF−ATcポリヌクレオチドは天然に産するNF−ATcポリヌクレオ
チド配列と実質的に同一である少なくとも50−100個の連続したヌクレオチ
ドを含む。しかし、当業者にはNF−ATc標的配列への特異的ハイブリダイゼ
ーションに要するNF−ATcポリヌクレオチドの最小長さが数種の因子、G/
C量、不整合塩基(あるとして)の位置、標的ポリヌクレオチドの集団に比した
その配列の単一性の程度、及びポリヌクレオチドの化学的性質(例えばメチルホ
スホネートのバックボーン、ホスホロチオレート等)に依存する。
【0055】 例えば、限定するつもりはないが、試料中のNF−ATcmRNAの存在を検
出し或いは定量するための適当なハイブリダイゼーションプローブは、一般に下
記の表Iに示した1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは全てのヒトNF−A
Tc配列、または他の相補体を含みうる。
【0056】
【表2】 表I 選択されたヒトNF−ATcポリヌクレオチド配列 5'-TTC CTC CGG GGC GCG CGG CGT GAG CCC GGG GCG AGG-3'(配列番号:1)
; 5'-CAG CGC GGG GCG GCC ACT TCT CCT GTG CCT CCG CCC GCT GCT-3'(配列番
号:2); 5'-GCC GCG CGG ATG CCA AGC ACC AGC TT'T CCA GTC CCT TCC AAG-3'(配列番
号:3); 5'-CCA ACG TCA GCC CCG CCC TGC CGC TCC CCA CGG CGC ACT CCA-3'(配列番
号:4); 5'-TTC AGA CCT CCA CAC CGG GCA TCA TCC CGC CGG CGG-3'(配列番号:5)
; 5'-GCC ACA CCA GGC CTG ATG GGG CCC CTG CCC TGG AGA GTC CTC-3'(配列番
号:6); 5'-AGT CTG CCC AGC CTG GAG GCC TAC AGA GAC CCC TCG TGC CTG3'(配列番号
:7); 5'-GTG TCT CCC AAG ACC ACG GAC CCC GAG GAG GGC TTT CCC-3'(配列番号:
8); 5'-AGC TGG CTG GGT GCC CGC TCC TCC AGA CCC GCG TCC CCT TGC-3'(配列番
号:9); 5'-TAC AGC CTC AAC GGC COG CAG CCG CCC TAC TCA CCC CAC CAC-3'(配列番
号:10); 5'-GAC CAC CGA CAG CAG CCT GGA CCT GGG AGA TGG CGT CCC TGT-3'(配列番
号:11); 5'-CCT GGG CAG CCC CCC GCC CCC GGC CGA CTT CGC GCC CGA AGA-3'(配列番
号:12); 5'-GCT CCC CTA CCA GTG GCG AAG CCC AAG CCC CTG TCC CCT ACG-3'(配列番
号:13); 5'-CTT CGG ATT GAG GTG CAG CCC AAG TCC CAC CAC CGA GCC CAC-3'(配列番
号:14); 5'-CAT GGC TAC TTG GAG AAT GAG CCG CTG ATG CTG CAG CTT TTC-3'(配列番
号:15); 5'-AAG ACC GTG TCC ACC ACC AGC CAC GAG GCT ATC CTC TCC AAC-3'(配列番
号:16); 5'-TCA GCT CAG GAG CTG CCT CTG GTG GAG AAG CAG AGC ACG GAC-3'(配列番
号:17); 5'-AAC GCC ATC TTT CTA ACC GTA AGC CGT GAA CAT GAG CGC G-3'(配列番号
:18); 5'-AGA AAC GAC GTC GCC GTA AAG CAG CGT GGC GTG TOG CA-3'(配列番号:1
9); 5'-GCA TAC TCA GAT AGT CAC GGT TAT TTF GCT TCT TGC GAA TG-3'(配列番号
:20).
【0057】 又例えば次のPCRプライマー(アンプリマー)対はヒト又はマウスNF−A
Tc配列(例えばNF−ATc4細胞からのRNAの逆転写酵素始動PCRによ
るなど)を増幅するのに使用できる。 (順) 5'-AGGGCGCGGGCACCGGGGCGCGGGCAGGGCTCGGAG-3'(配列番号:21) (逆) 5'-GCAAGAAGCAAAATAACCGTGACTATCTGAGTATGC-3'(配列番号:22)
【0058】 所望により、実質的に全長のcDNAを増幅するためのPCRアンプリマーは
実務者の裁量により選択できる。同様に単一NF−ATcエキソン又はNF−A
Tc遺伝子(ヒト又はマウス)の部分を増幅するためのアンプリマーも選択でき
る。
【0059】 これらの配列の各々はNF−ATcmRNAの存在を検出して、例えばリンパ
細胞中の増大したNF−ATcmRNAレベルの存在により特徴づけられる病気
の診断に使用したり、組織タイピング(すなわちNF−ATcmRNAの発現に
より特徴づけられる細胞を同定する)したりするためのハイブリダイゼーション
プローブ又はPCRアンプリマーとして使用できる。配列は又、例えば法医学D
NA分析(例えばRFLP分析、PCR長分布等)のための、又はNF−ATc
遺伝子の増幅及び/又は再配列により特徴づけられる病気の診断のための、DN
A試料中のゲノムNF−ATc遺伝子配列の決定に使用できる。
【0060】 図1に示したヒトNF−ATcに対する全コーディング配列の開示は、NF−
ATc、その断片、又はその類似体の発現を指令することができる単離したポリ
ヌクレオチドの構成を可能にする。さらに、図1の配列はNF−ATcをコード
するRNA及びDNAを検出するのに使用できる核酸ハイブリダイゼーションプ
ローブ及びPCRプライマーを構成することができる。
【0061】 本発明のNF−ATcポリヌクレオチドは全長NF−ATポリヌクレオチド又
はその部分を含む。一つの例では、NF−ATポリヌクレオチドは、図1に示し
たヌクレオチド配列、又は配列番号45、又は他の例示のNF−AT配列、又は
その一部と、少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、
95%、さらに好ましくは約98%以上、最も好ましくは少なくとも約99%同
一である。従って、本発明はここにNF−ATc1として参照される配列番号3
8を有するNF−ATc以外のNF−ATc族メンバーをコードするポリヌクレ
オチドを含む。かかる族メンバーにはNF−ATc2(GenBank 138 152,
U43341, U43342;別名NF−ATp), NF−ATc3 (GenBank L
41067, 138155, 138156; 別名NF−AT4又はNF−ATx
)及びNF−ATc4 (GenBank L41066, 138154; 別名 NF−A
T3)、並びに例えば米国特許 5,612,455(Hoeyに March 18, 199
7発行)及び 5,656,452(Rao et al.にAugust 12,1997発行)、P
CT WO 95/02035(Arai et al)、同WO 94/15964 (Rao et al.
)に記載されているように、その異なってスプライス形が含まれる。
【0062】 好ましいNF−ATc蛋白質の部分又は断片には、一つ以上の特異領域を含む
ものがある。少なくとも次のNF−ATc領域が確認された。実質的にRd相同
領域(RHD)又はRel類似領域(RSD)に相当するDNA結合領域;例えばAP
−1や、PKA又はGSK−3のターゲット部位等の他の蛋白質と相互作用する
領域;配列番号38の265−267アミノ酸(N末端NLS)又は配列番号3
8の681−685アミノ酸(C末端NLS)等を含む核移行配列(NLS);
又は例えばSRR(配列番号38の172-194アミノ酸)、SP1(配列番号38
の233-252アミノ酸)、SP2 (配列番号38の 233−252アミノ酸
)、及びSP3 (配列番号38の278−301アミノ酸)のようなNLSと相
互作用する領域。他の可能な領域はさらに以下に説明するように同定することが
できる。従って、本発明はNF−ATcの少なくとも一つの生活性(例えばDN
Aまたは他の蛋白質のような他の分子への結合、又は細胞の核膜を横断する移動
の抑制)を実行することができる(アゴニスト)又は抑制することができる(ア
ンタゴニスト)NF−ATcポリペプチドの部分をコードするNF−ATcポリ
ヌクレオチドを提供する。NF−ATcポリペプチドがNF−ATの特異的な生
活性のアゴニスト又はアンタゴニストであることを決定するアッセイは以下に記
載する。
【0063】 本発明の他の好ましい核酸は、NF−ATcポリペプチド又はその部分、例え
ば特定の領域に相当するか、特定の生活活性を有するか、又は配列番号38のヒ
トNF−ATc配列の集合の一部又は他の例示のNF−AT配列の一部と同一又
は少なくとも約60%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%,よ
り好ましくは 少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%一致又
は類似する部分をコードする。例えば本発明の好ましい核酸は、核膜を横断する
移動を調節することができるNF−ATポリペプチドをコードする。子のNF−
ATポリペプチドは、SRR、SP1、SP2及びSP3よりなる群から選択した領域の
のような、NLSまたはそれと相互作用するNF−ATcポリペプチドの領域を
含む。さらに本発明のポリペプチドは実施例に記載したようなNF−ATcポリ
ペプチドの変異形態の野生型をコードする。例えば好ましいポリヌクレオチドは
、他のアミノ酸例えばアラニンで置換した1つ以上のセリンを有するNF−AT
cポリペプチドをコードし、それによりそのホスホリル化を阻止する。本発明の
核酸によりコードされる好ましいポリペプチドはNF−ATポリペプチドに関連
する章でさらに説明する。
【0064】 全長NF−ATcポリペプチド、その断片又はその類似体をコードするポリペ
プチドは、コードされたポリペプチド生成物が産生されるように、転写(発現配
列)及びコード配列の翻訳を容易にするポリヌクレオチド配列を含むことができ
る。このようなポリヌクレオチドは当業者には周知であり、さらにManiatis t a
l., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed. (1989), Cold
Spring Harbor, N.Y.記載されている。例えば、かかるポリヌクレオチドは、プ
ロモータ、転写終了部位(真核発現宿主のポリアデニル化部位)、リボソーム結
合部位、任意に真核発現宿主で使用するためのエンハンサー、及び任意にベクタ
ーの複製に必要な配列を含むことができる。典型的な真核発現カセットはプロモ
ータ(例えばHSV tkプロモータ又はpgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモ
ータ)のNF−ATcポリペプチド結合下流(すなわち翻訳読み取りフレームに
おけるポリヌクレオチドリンク)をコードするポリヌクレオチドを含み、任意に
エンハンサーと加療ポリアデニル化部位(例えばSV4OラージT AgポリA付加部位
)に結合している。
【0065】 好ましいNF−ATcポリヌクレオチドは次のアミノ酸配列の少なくとも1つ
を含むNF−ATcポリペプチドをコードする。 -NAIFLTVSREHERVGC- (配列番号:25); -LHGYLENEPLMLQLFIGT- (配列番号:26); -PSTSPRASVTEESWLG-(配列番号:27); -GPAPRAGGTMKSAEEEHYG-(配列番号:28); -ASAGGHPIVQ-(配列番号:29); -NTRVRLVFRV-(配列番号:30); -AKTDRDLCKPNSLVVEIPPFRN-(配列番号:31); -EVQPKSHHRAHYETEGSR-.(配列番号:32); -SPRVSVTDDSWLGNT-(配列番号:33); -SHHRAHYETEGSRGAV-(配列番号:34); -LRNSDIELRKGETDIGR-(配列番号:35); -TLSLQVASNPIEC-(配列番号:36).
【0066】 遺伝コードの縮退はこれらのアミノ酸配列をコードする一定のポリヌクレオチ
ド配列の組をあたえる。この縮退配列の組は手作業で又は市販のコンピュータソ
フト(Wisconsin Genetics Software Package Relaes7.0)で容易に発生させ
ることができる。従って、典型的には約10000個のヌクレオチド長を有し、
次のアミノ酸配列: -NAIFLTVSREHERVGC-(配列番号:25); -LHGYLENEPLMLQLFIGT-(配列番号:26); -PSTSPRASVTEESWLG-(配列番号:27); -GPAPRAGGTMKSAEEEHYG-(配列番号:28); -ASAGGHPIVQ-(配列番号:29); -NTRVRLVFRV-(配列番号:30); -AKTDRDLCKPNSLVVEIPPFRN-(配列番号:31); -EVQPKSHHRAHYETEGSR-(配列番号:32); -SPRVSVTDDSWLGNT-(配列番号:33); -SHHRAHYETEGSRGAV-(配列番号:34); -LRNSDIELRKGETDIGR-(配列番号:35); -TLSLQVASNPIEC-(配列番号:36). の各々をコードする配列を有する単離ポリヌクレオチドが提供され、そして特に
、免疫原、免疫試薬等として使用できるNF−ATcポリペプチドの発現のため
に使用して良い。かかるポリヌクレオチドは典型的には適当な原核又は真核宿主
細胞における発現を駆動するための動作可能に結合したプロモータを含む。この
ようなポリヌクレオチドの例は、ほ乳類の発現ベクトルpSRαへの動作結合でク
ローンされる図1のヒトNF−ATccDNA配列である。多くの別の実施例、
と問えば発現ベクターの使用等を含む多くの多くのこれに代わる実施例は当業者
に明らかであろう。(例えば pBC12BI及び p91023(B); Hanahan J (
1983) J. Mol. Biol. 166: 577; Cullen et al. (1985) J.
Virol.53: 515; Lomedico PT (1982) Proc. Nati. Acad. Sci. (
U.S.A.) 79: 5798; Morinaga et al. (1984) Bio/Technology
2: 636)。
【0067】 更に、ポリペプチドの発現を望まない場合には、本発明のポリヌクレオチドは
気のせい蛋白質をコードする必要はない。本発明のポリヌクレオチドはNF−A
TccRNA配列を検出するための、ハイブリダイゼーションプローブ、PCR
プライマー(アンプリマー)又はLCRオリゴマーとして使用し得る。
【0068】 別法として、本発明のポリヌクレオチドは、関連した遺伝子のRNA又はDN
A配列を検出するためのハイブリダイゼーションプローブ又はプライマーとして
使用できる。このような遺伝子は構造的に又は発生的に関連した蛋白質であり得
る。このようなハイブリダイゼーション又はPCRとしての応用に対しては、本
発明のポリヌクレオチドは機能性蛋白質をコードする必要はない。従って、本発
明のポリヌクレオチドは、NF−ATc配列に対する特異的なハイブリダイゼー
ション又は増幅が維持される限り、実質的な欠失、付加又は置換及び/又は転位
を含むことができる。
【0069】 特異的ハイブリダイゼーションは既に定義したが、簡単にまとめると、本発明
のポリヌクレオチド(置換、欠失、及び/又は付加を有しうる)とヒトNF−A
TcmRNAのような特定標的ポリヌクレオチドとの間の交雑の形成であり、こ
れにより単一バンドがT細胞から調製されたRNAのノーザンブロット上に各N
F−ATcの同型に対応するものとして同定される(すなわち、個々のNF−A
TcmRNAバンドの検出を可能にするハイブリダイゼーションと洗浄条件が確
立される)。従って、当業者は、図1に示した配列又は他の例示のNF−AT配
列に比較しての、(実質的な付加、欠失、置換、又は転位を含みうる)本発明の
ポリヌクレオチドを調製し、NF−ATcmRNAを発現するTリンパ細胞系か
ら調製されたRNAを使用したノーザンブロットを実施することにより及び/又
はNF−ATcDNAクローン(cDNA又はゲノムクローン)へハイブリダイ
ゼーションすることにより、特異的ハイブリダイゼーションがそのポリヌクレオ
チドの特性であるかどうかを決定することができる。
【0070】 特異的増幅は、NF−ATcポリヌクレオチドとのPCR反応において一緒に
使用された場合に、NF−ATc遺伝子配列又はmRNA配列に相当する実質的
に単一の主要増幅産生物を生成するPCRアンプリマーの能力として定義される
。一般にヒト細胞(例えばJurkat細胞系)を発現するヒトゲノムDNA又はmR
NAは、PCRアンプリマー反応に対するテンプレートDNA試料として使用で
きる。特異的増幅を示すPCRアンプリマーは、定量的なPCR増幅によりNF
−ATcmRNAの定量的な決定を行うのに適当である。NF−ATc対立遺伝
子に特異的な増幅生成物は、配列及び/又は長さ多形性であるが、本発明の目的
に対しては単一増幅生成物を構成すると考えられる。
【0071】 ハイブリダイゼーションプローブは、一般に図1に示した配列の少なくとも約
25個の連続したヌクレオチド(それぞれヒトおよびマウスNF−ATc検出の
ため)、好ましくは図1の配列の少なくとも50個の連続したヌクレオチド、よ
り好ましくは少なくとも100個の連続したヌクレオチドを含む。PCRアンプ
リマーは図1に示した配列の約25−50個の連続したヌクレオチドを含み、通
常は一般にポリメラーゼが介在する鎖延長に干渉しないように5’末端に存在す
る追加のヌクレオチド(もしある場合)を備えた、図1の配列の約25−50個
の連続したヌクレオチドより実質的に構成される。PCRアンプリマーの設計と
ハイブリダイゼーションプローブは充分当業者の裁量の範囲内にある。
【0072】 B.アンチセンスポリヌクレオチド NF−AT活性の調節に向けられた追加の実施例は、図1に示された配列又は
例示のNF−AT配列に相補的な特異的なアンチセンスポリヌクレオチドを使用
する方法、及びトリプル構造を形成するリボザイム及び分子を含む。かかる相補
的アンチセンスポリヌクレオチドは、NF−AT遺伝子の関連した標的配列への
特異的ハイブリダイゼーションプローブ又がポリヌクレオチドの機能特性として
維持される限り、ヌクレオチドの置換、付加、欠失又は転位を有しても良い。相
補手にアンチセンスポリヌクレオチドは、NF−ATcmRNA種へ特異的にハ
イブリダイズし、mRNA種の転写及び/又はコードされたポリペプチドの翻訳
を防ぐことができる可溶性のアンチセンスRNA又はDNAオリゴヌクレオチド
を含む。(Ching et al. (1989) Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A.86:
10006; Broder et al. (1990) Ann. Int. Med. 113: 604;
Loreau et al. (1990) FEBS Letters 274: 53; Holcenberg et a
l., W091/1 1535; U.S.S.N. 07/530,165; W091/09
865; W091/04753; W090/13641; 及び EP 38656
3を引用して記載に代える)。従って、アンチセンスポリヌクレオチドはNF−
ATcポリペプチドの産生を抑制する。NF−ATc蛋白質の発現はTリンパ細
胞の活性と関連しているので、NF−ATcポリペプチドに相当したmRNAの
転位及び/又は翻訳を阻止するアンチセンスポリヌクレオチドは、T細胞の活性
を抑制し及び/又はT細胞の活性化された表現型を反転することができる。NF
−ATcアンチセンスポリヌクレオチドの治療に有効な量を含む組成物は、リン
パ細胞白血病のような免疫病の治療に投与できるし、所望により移植拒絶反応の
抑制のために投与できる。同様に、NF−ATアンチセンスは、心臓肥大の治療
の一部として心臓及び/又は血管組織のNF−ATが関与する成長を抑制するた
めに使用できる。色々な長さのアンチセンスポリヌクレオチドが生成できる。も
っとも、これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、典型的には、天然に産する
NF−ATcポリヌクレオチド、又は図1に示した配列、又は他の例示のNF−
AT配列に実質的に同一の、少なくとも約25個の連続したヌクレオチドを含ん
でいる。
【0073】 アンチセンスポリヌクレオチドは、例えばヒトの造血幹細胞の個体群の全部又
は一部を再構成するのに使用される形質転換多能造血幹細胞のような、トランス
フェクタント細胞又は形質転換細胞中のヘテロ発現カセットから産生できる。別
法として、アンチセンスポリヌクレオチドは、インビトロの培地中か又はインビ
ボの循環系又は間質液中で、外来媒体に投与される可溶性オリゴヌクレオチドを
含みうる。外来媒体中に存在する可溶性アンチセンスポリヌクレオチドは、細胞
質にアクセスし特定のmRNA種の翻訳を抑制することが分かった。ある実施例
ではアンチセンスポリヌクレオチドはメチルホスホネート部分を含む。アンチセ
ンスポリヌクレオチドに関する一般的な方法については文献を参照されたい(An
tisense RNA and DNA, (1988), D.A. Melton, Ed., Cold Spring Harbor
Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)。
【0074】 C.同族ヒトNF−ATc遺伝子の単離 NF−ATccDNAのヒト相同体は、イースト合成染色体、コスミド又はバ
クテリオファージA (例えばλ Charon 35)のようなヒトゲノムクローンライ
ブラリを、図1に示したDNA配列または他の例示のNF−ATc配列の少なく
とも約24個の連続したヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドプローブを
使用して、スクリーニングすることにより同定し単離される。典型的にはハイブ
リダイゼーション及び洗浄は慣用のハイブリダイゼーション法に従って高緊縮条
件下に行われる。陽性クローンが分離され配列決定される。例えば図1の配列に
相当する全長ポリヌクレオチドに標識を付け、これをλEMBL4又は XGEM11(P
romega Corporation, Madison, Wisconsin)におけるヒト又はマウスクローンラ
イブラリからゲノムクローンを単離するハイブリダイゼーションプローブとして
使用することができる。プラークリフトをスクリーニングするための典型的なハ
イブリダイゼーション条件(Benton and Davis (1978) Science 196:
180)は、50%ホルムアミド、 5×SSC又はSSPE、1−5×Denhar
dt溶液、0.1−1%SDS、100−200μg切断異質構造 DNA又はtRNA、
0−10% 硫化デキストラン、約1×108cpm/μgの比活性を有する1×
105から1×107 cpm/mlの変性プローブ、及び42℃での約6−36
時間の培養である。予備ハイブリダイゼーションプローブ条件はプローブが含ま
れていない点及び培養時間が普通は減少される点を除いて上記と本質的に同一で
ある。洗浄条件は典型的には洗浄溶液を5〜30分ごとに変えて1−3×SSC
、0.1−1%SDS、及び 50−70℃の条件である。
【0075】 非ヒトNF−ATccDNA及びゲノムクローン(同族非ヒトNF−ATc遺
伝子)は、各種の非ヒトcDNA及び入手可能なゲノムクローンライブラリ(例
えばClontech, Palo Alto, CA) から、図1に示した配列に基づくプローブを使
用して、典型的にはヒトNF−ATcクローンの単離の場合よりは弱い緊縮条件
で、同様に単離することができる。
【0076】 NF−ATmRNAに相当する又は相補的な、少なくとも約30−50個、好
ましくは少なくとも約100個のヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドプ
ローブは、生殖細胞系のNF−AT遺伝子の同定及び単離のためのPCRプライ
マー及び/又はハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。これらの生
殖細胞系遺伝子は人のものでも良いし関連のほ乳類のもの、好ましくはけっし類
又は霊長類からのものである。ある生殖細胞系遺伝子は例えばバクテリオファー
ジλ又はコスミドライブラリのハイブリダイゼーションスクリーニングにより、
又は図1に示した配列に由来するプライマーを使用したゲノム配列のPCR増幅
によるなどの各種の公知の方法により単離できる。ヒトゲノムファイブラリーは
公然と入手できるし、或いはヒトDNAから新たに構成できる。
【0077】 特にマウス同族NF−ATc遺伝子のNF−ATcのゲノムクローンは、少な
くとも一つの機能破壊されたNF−ATc対立遺伝子(好ましくはノックアウト
NF−ATc対立遺伝子に対して同型のもの)を有する細胞又は形質転換非ヒト
動物を発生するための相同ターゲッティング構造体を構成するにに使用できる。
相同多げってぃんぐ構造体を構成するための手引きは各種文献に記載されている
(Rahemtulla et al. (1991) Nature 353:80; Jasin et al. (1
990) Genes Devel. 4: 157; Koh et al. (1992) Science 25
6: 1210; Molina et al. (1992) Nature 357: 161; Grus
by et al. (1991) Science 253: 1417; Bradley et al. (19
92) Bio/TechnologyjQ: 534,個々に引用して記載に代える)。相同ター
ゲッティングは不活化NF−ATc対立遺伝子に対して異型又は同型のいわゆる
ノックアウトマウスを発生するのに使用できる。このようなマウスは、免疫型の
開発、新生組織形成、T細胞活性化、信号トランスダクション、等の研究用に実
験動物として市販されている。
【0078】 キメラ標的マウスは文献に従って生成できる(Hogan, et al., Manipulating
the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (
1988) 、 Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practica1 a
pproach, E.J. Robertson, ed., IRL Press, Washington, D.C., (1987)
、ここに引用して記載に代える)。胚幹細胞は公知の手順に従って操作できる(
Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E.J. R
obertson, ed., IRL Press, Washington, D.C. (1987); Zjilstra et al
. (1989) Nature 342:435; and Schwartzberg et al. (198
9) Science 246: 799, ここに引用して記載に代える)。
【0079】 更に、NF−ATccDNA又はゲノム遺伝子コピーは、高いレベルでの及び
/又はNF−ATc遺伝子に近接して自然には産しない転写制御配列の転写制御
下での、NF−ATcポリペプチド発現のためのトランス遺伝子を構成するため
に使用できる。たとえば、構成プロモータ(例えばHSV-tk又はpgkプロモータ)
又は細胞結合特異性転写調節配列(例えば、CD4又は CD8遺伝子プロモータ/
エンハンサー)は、NF−ATcをコードするポリペプチド配列に結合して、(
典型的にはネオ遺伝子表現カセットのような選択可能なマーカーと組み合わせて
)トランス遺伝子を形成できる。かかるトランス遺伝子は細胞(例えばES細胞
又は造血幹細胞)導入することができ、形質転換細胞又は形質転換非ヒト動物は
公知の方法により得ることができる。NF−ATcの過剰発現又は不適当な発現
は高免疫状態を生じ、移植拒絶反応を生じるので、形質転換細胞又は形質転換ヒ
ト動物はアンチ新生組織剤及び/又は潜在的な免疫調節剤に対するスクリーニン
グに使用できる。
【0080】 D.NF−ATポリヌクレオチドの発現 最終的に所望のNF−ATポリヌクレオチドの発現が可能な本発明の核酸配列
は、各種のポリヌクレオチド(ゲノム又はcDNA、RNA、合成オリゴヌクレ
オチド、等)から各種の異なった技術により形成することができる。既に説明し
たように、DNA配列は配列が発現制御配列に結合(すなわち発現の機能を保証
する位置に結合)した後に、宿主内で発現される。これらの発現ベクターは典型
的にはエピソーム又は宿主染色体DNAの一体的な一部として宿主組織内で複製
される。一般に発現ベクターは選択マーカー(例えばテトラサイクリン抵抗性又
はハイグロマイシン抵抗性のもの)を含むことにより、所望のDNA配列で転換
された細胞の検出及び/又は選択を許容する(例えばU.S. Patent 4,704,3
62、ここに引用して記載に代える)。
【0081】 E.coliは本発明のDNA配列をクローニングするために特に有用な原核宿主
である。他の使用に適した微生物宿主には、バチルス(Bacillus subtilis等)
、及び他の腸内細菌(例えばSalmonella, Serratia, 各種のPseudomonas種)が
ある。これらの原核宿主内で典型的には宿主細胞と両立する発現制御配列(例え
ば複製開始点)を含む発現ベクターを作ることができる。さらには、ラクトース
プロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、βラクタマーゼプロモー
タ系、又はλファージからのプロモータ系のような任意数の各種の周知のプロモ
ータが存在する。プロモータは典型的には制御発現であり、任意にオペレータ配
列を有しうるものであり、転写及び翻訳の開始と完了のためのリボソーム結合部
位配列等を有するであろう。
【0082】 イースト等の他の微生物も又発現に利用できる。Saccharomycesは、3−ホス
ホグリセレートキナーゼまたは他のグリコール酵素を含むプロモータ及び複製の
好ましい宿主であり、所望により複製開始点、配列終点等の発現制御配列を有す
る適当なベクターを有する。
【0083】 微生物に加えて、哺乳動物の組織細胞培養体も又本発明のポリペプチドの発現
と産生に使用できる(例えばWinnacker, "From Genes to Clones," VCH Publish
ers, N.Y., N.Y. (1987), ここに引用して説明に代える)。完全なヒト細
胞をスクリーニングできる多数の適当な宿主細胞系が従来開発されているので真
核細胞実際上好ましく、これにはCHO細胞系、COS細胞系、HeLa細胞系、ミエロー
マ細胞系、Jurkat細胞、等が含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製開
始点、ポロモータ、エンハンサーのような発現制御配列(Queen et al. (19
86) Immunol. Rev.89: 49、ここに引用して説明に代える)、リボソー
ム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネー
タ配列のような必要な処理情報部位を含む。好ましい発現制御配列は免疫グロブ
リン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピロマウイルス等に由来するプ
ロモータである。関心のあるDNAセグメントを含むベクター(例えばNF−A
Tcポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)は宿主細胞の型に依存して周
知の方法により宿主細胞に移入できる。例えばCaC1トランスフェクションが原
核細胞に対して広く利用され、CaPO4処理又は電気穿孔法が他の宿主細胞に対し
て使用できる(Maniatis, et aL, Molecular Cioning: A Laboratory Manual,
Cold Spring Harbor Press, (1982)参照、ここに引用して記載に代える)
。通常はベクターはエピソームであり、過剰染色体として維持される。
【0084】 特にリンパ球生成リネージュの細胞のような細胞内の組み換えNF−ATc蛋
白質の発現は、NF−ATc蛋白質の存在により積極的に又は消極的に転写調節
される遺伝子を同定し単離するために使用できる。かかる遺伝子は典型的にはサ
ブトラクティブcDNAライブラリから単離されたcDNAクローンとして初期
に同定される。ここに、組み換えNF−ATcを発現する細胞から単離されたR
NA及び制御細胞から単離されたRNA(すなわち組み換えNF−ATcを発現
しないもの)は、サブトラクティブライブラリとスクリーニングプローブを生成
するにに使用される。このようにして、NF−ATc依存性遺伝子が単離できる
。NF−AT依存性遺伝子(又はレポータ遺伝子に動作可能に結合したそれらの
調節配列)は、NF−ATcポリペプチドを能率的な転写のための必要成分とし
て使用するインビトロ転写アッセイの成分として使用できる。このような転写ア
ッセイはNF−ATc依存性遺伝子転写を抑制し、それにより候補免疫調節剤と
して同定される剤をスクリーニングするために使用できる。
【0085】 E.NF−ATcポリペプチド 図1に示したヌクレオチドとアミノ酸配列、及び例示のNF−AT遺伝子は、
当業者が全長ヒトNF−ATcポリペプチド配列の一部又は全部に相当したポリ
ペプチドを賛成することを化のにする。これらのポリペプチドはNF−ATc又
はその断片又は類似体をコードするポリヌクレオチドの発現により原核又は真核
宿主中で産生し得る。別法として、これらのポリペプチドは化学的方法により合
成でき、或いは翻訳を指示するポリヌクレオチドテンプレートを使用してインビ
トロ翻訳系により生成できる。組み換え宿主中の異質蛋白質の発現方法、ポリペ
プチドの化学合成、及びインビトロ翻訳は当業者には周知であり、文献に記載さ
れている(Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1
989), 2nd Ed., Cold Spring Harbor, N.Y. and Berger and Kimmel, Meth
ods in Enzymology, Volume 152. Guide to Molecular Cloning Techniques
(1987), Academic Press, Inc., San Diego, CA.)。NF−ATcの断片
又は類似体は当業者により調製することが可能である。
【0086】 NF−ATcの断片又は類似体は当業者により調製することが可能である。N
F−ATcの断片又は類似体の好ましいアミノ酸及びカルボキシ末端は、昨日領
域の境界の近傍に生じる。例えば、かかる昨日領域は(1)他のNF−AT成分
への結合特性を付与する領域(例えばAP−1)、(2)核移行の特性を付与す
る領域、及び(3)細胞内で充分なレベルで発現したときにT細胞の活性を高め
る特性を付与する領域を含む。加えて、これらの機能領域は(1)RNAポリメ
ラーゼ種への結合特性を付与する領域、(2)触媒活性(例えばトピソメラーゼ
、エンドヌクレアーゼ)を含む及び/又は構造的特徴(例えば亜鉛フィンガー、
ヒストン結合部分)を含む、局部クロマチン構造を直接に変更する能力を有する
領域、及び(3)アクセサリー蛋白質及び/又は転写因子と相互作用し得る領域
を含むことがある。
【0087】 構造的及び機能的領域が同定できる一つの方法は、図1に示したヌクレオチド
及び/又はアミノ酸配列のデータ又は他の例示のNF−AT遺伝子を、公的又は
私的配列データベースと比較することである。好ましくは、計算機による比較法
を使用して、既知の構造及び/又は機能(例えば亜鉛フィンガー)の他の蛋白質
に生じる配列モチーフ又は予測される蛋白質配座領域を同定する。例えば、脱ヒ
ドロゲナーゼ(特に乳酸塩脱ヒドロゲナーゼ、及びマレイン酸塩脱ヒドロゲナー
ゼ)のNAD結合領域は、配座が類似であり、相同であると検出されるアミノ酸
配列を有する(Proteins. Structures and Molecular Principles, (1984
) Creighton (ed.), W.H. Freeman and Company, New York, ここで引用して
記載に代える)。さらに、公知の三次元構造に折り込まれる蛋白質配列を同定す
る方法は公知である(Bowie et al. (1991) Science 253.: 164)
。従って、次の実施例は当業者が本発明のNF−ATc配列における構造領域又
は機能領域を定義するのに使用できる配列モチーフ又構造配座を認識し得ること
を例示する。領域の例は図1のNF−ATcポリペプチド配列のアミノ酸418
からアミノ酸710までのrel類似領域である。
【0088】 又、追加的に、図1の配列の電算機による既存データベースとの比較は、他の
蛋白質又はNF−ATc蛋白質の類似領域を示すコード配列に見いだされる配列
モチーフ及び構造配座を同定することができる。例えば、Wisconsin Genetics S
oftware Package内のプログラムGAP, BESTFIT, FASTA 及び TFASTA (Genetics
Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI) は、NF−ATc配列と
相同の領域を有するGenBank/EMBLのようなデータベース中の配列を同定するた
めに使用できる。このような相同領域は候補構造又は機能領域である。別法とし
て、他のアルゴリズムを用いて配列データからこれらの領域を同定するために使
用できる。さらに、ニューラルネットワーク法は、ハードウエア又はソフトウェ
アで実行されるどうかは別として、(1)関連した蛋白質配列及びヌクレオチド
配列を同定し、(2)NF−ATcポリペプチド中の構造又は機能領域を定義す
る(Brunak et al. (1991) J. Mol. Biol. 220: 49, ここに引用し
て説明に代える)。例えば13個の残基繰り返しモチーフ -SPRASVTEESWLG- (
配列番号23)及び-SPRVSVTDDSWLG- (配列番号24) は構造的に関連してい
る領域の例である。
【0089】 実質的に1個以上の機能領域を含む断片又は類似体は異質ポリペプチド配列に
融合することができる。得られる融合蛋白質はNF−ATc断片により付与され
た機能を示す。また、一個以上の機能領域が欠失したNF−ATcポリペプチド
は欠失断片により通常は付与される特性を喪失する。
【0090】 例えば、核への移行及び/又はAP−1との相互作用という特性を与える領域
を、βガラクトシダーゼに融合して、核に移行し且つ酵素的に色素性基質を発色
団に変換することのできる融合蛋白質を作製することができる。
【0091】 好ましい態様の一つは、機能的領域境界に近いアミノ酸位置に相当するアミノ
及び/又はカルボキシル末端を有する断片であるが、別のNF−ATc断片を調
製してもよい。どの断片のアミノ又はカルボキシル末端を用いるかは、本発明の
実施者の裁量に任されるところであり、作製の容易さ、蛋白質分解に対する安定
性、熱安定性、免疫学的反応性、アミノ又はカルボキシ末端残基の改変やその他
の条件を考慮に入れた実験的な見地から選択されるものであろう。
【0092】 断片に加えて、NF−ATcの類似体を作製することができる。そのような類
似体としては、アミノ末端又はカルボキシル末端、あるいは内部配列のいずれか
又は両方における、アミノ酸配列の1個以上の欠失又は付加が挙げられる。類似
体は、更に配列転座を有していてもよい。類似体は、一般にアミノ又はカルボキ
シル末端において連結する異種配列を包含することもできる。この異種配列は、
得られる類似体に、天然NF−ATc蛋白質に固有のものではない機能的特性を
賦与する。しかし、NF−ATc類似体はそれぞれ、図1に示すアミノ酸配列の
部分に実質的に類似した25アミノ酸部分を包含しなくてはならなず、定義(上
述)において数え上げた機能特性要件の少なくとも1個を有さなくてはならない
。好ましいアミノ酸置換は、(1)蛋白質分解性が低く、(2)酸化率が低く、
(3)可能であればリン酸化を含む、類似体の翻訳後修飾を変え、そして(4)
可能であればカルシニューリンとの相互作用又はリン酸化又は脱リン酸化を含む
、そのような類似体の他の物理化学的又は機能的特性を賦与又は改変するもので
ある。NF−ATc類似体は、天然に産するペプチド配列のほかに様々なNF−
ATc配列の突然変異を含む。例えば、単数又は複数のアミノ酸置換(好ましく
は保存的アミノ酸置換)を、天然に産するNF−ATc配列(好ましくは機能的
領域外のポリペプチド部分)に加えることができる。
【0093】 保存的アミノ酸置換は、アミノ酸を、類似の特性を有する他のアミノ酸(例え
ば酸性のAsp及びGlu)で置換することである。保存性(又は同義)アミノ
酸置換は、元の配列の構造的特性を実質的に変えるものであってはならない(例
えば、置換されるアミノ酸は、元の配列の螺旋構造を破壊したり、元の配列の特
徴である他の二次構造を破壊するものであってはならない)。当分野で認識され
るポリペプチドの二次及び三次構造の例は、Proteins、Structu res and Molecular Principles (1984)Cr
eighton編、W.H.Treeman and Comany、ニューヨ
ーク;Introduction to Protein Structure (1991)C.Branden及びT.Tooze、Garland Pub
lishing、ニューヨーク;Thornton他(1991)Nature 354:105に記載がある(参照して説明に代える)。
【0094】 本発明は更に、リン酸化NF−ATポリペプチドを提供する。好ましいリン酸
化ポリペプチドは、約アミノ酸172から約アミノ酸301の領域から選択され
る、少なくとも1個のホスホセリンを包含する。より好ましいNF−ATポリペ
プチドは、SRR、SP1、SP2及び/又はSP3内にリン酸化セリンを包含
する。SRR内の好ましいセリンとしては、配列番号38の残基172、175
、176、178、179、181、184、187、188、192及び19
4のセリンが挙げられる。SP1内の好ましいセリンとしては、配列番号38の
残基199、203、207及び211のセリンが挙げられる。SP2内の好ま
しいセリンとしては、配列番号38の残基233、327及び245のセリンが
挙げられる。SP3内の好ましいセリンとしては、配列番号38の残基278、
282、286、290及び299のセリンが挙げられる。他の好ましいNF−
ATポリペプチドは、位置269にホスホセリンを有するものである。
【0095】 本発明は更に、ペプチド及びペプチド模倣体(mimetics)、例えばNF−AT
蛋白質の核への移動を変調するのに用いられるものを提供する。好ましい態様に
おいては、剤は、細胞の角膜を通過するNF−ATポリペプチドの移動に関係す
るNF−AT蛋白質部分、例えば分子内関係を形成するNF−ATポリペプチド
部分を包含する。より好ましい態様にあっては、NF−ATの部分は核移行シグ
ナル又は配列(NLS)を包含する。配列の例としては、NF−ATc1(配列
番号38)のアミノ酸682−685に相当するアミノ酸配列KRKK(配列番号5
6)又はKRKR(配列番号65)(これらをKRKK/R(配列番号66)と称する)
;又は、配列番号38のアミノ酸681−685に相当するアミノ酸配列GKRKK
/R(配列番号67)、又は他のNF−ATc族に相同性を有する配列が挙げら
れる。実際に、このC末端NLSは、他のNF−ATc族内にも見つかっている
(例えばHoey他(1995)Immunity2:461参照)。NF−ATp(NF−
ATc2)C末端NLSは、配列NGKRKRS(配列番号68)を有し(図4参照)
;NF−ATc3(NF−AT4)C末端NLSは配列NGKRKKS(配列番号69
)を有し;そしてNF−ATc4(NF−AT3)C末端NLSは、配列NGRRKR
S(配列番号70)を有する(Hoey他、上述参照)。すなわち本発明は、これら
のNLSを包含するペプチド又はペプチド模倣体を提供する。他の態様において
は本発明は、NF−ATc1(配列番号38)のアミノ酸265−267に相当
するアミノ酸配列KRKを含む核移行シグナルを包含する、ペプチド又はペプチ
ド模倣体を提供する。あるいは、本ペプチドは、配列番号38のアミノ酸.26
3−271に相当する、アミノ酸配列CNKRKYSLN(配列番号53)を包含する。
【0096】 NF−AT NLSを包含するペプチドがNF−ATを発現する細胞内に存在
すると、内生NF−AT NLSとNF−ATのSRR、SP1、SP2及び/
又はSP3領域との相互作用を競合的に阻害し、NLSが現われ、NF−ATが
核内に移動することが可能になる。従って、本発明のNF−AT NLSペプチ
ドは、NF−ATの特異的な活性剤を構成する。NF−ATc族間の配列類似性
から鑑みて、NLSと本明細書に記載したNF−ATc1分子の他の領域との分
子内相互作用が、他のNF−ATc族内で起こり、核膜を通じる移動を調節する
ことが予想される。これらの活性剤が細胞内で与える影響は、例えばNF−AT
NLSと相互作用することのできるペプチドを細胞内に導入することによって
、逆転させることができる。例えば、NLS KRKK/R(配列番号66)を
包含するペプチドが被験者に投与された場合、NLSに結合することのできるペ
プチドの投与で、活性剤を阻害することができる。
【0097】 従って本発明は更に、NF−ATc分子中のNLSと相互作用することのでき
るペプチド及びペプチド模倣体を提供する。そのようなペプチドを用いて、例え
ばNF−AT分子のNLSと相互作用し、よってNLSを遮蔽することによって
、核から細胞質へのNF−ATの移動を誘導することができる。好ましいペプチ
ドは、N末端ペプチド、例えば配列番号38のアミノ酸172−301領域に位
置するペプチドが挙げられる。より好ましいペプチドは、SRR、SP1、SP
2及びSP3からなる群より選ばれる1個以上の配列を包含するペプチドである
。一つの態様においては、そのようなペプチドは、SRR配列のアミノ酸配列、
例えば配列番号38の約アミノ酸172−194に相当する配列を包含する。N
LSと相互作用できる限り、より短いペプチドを用いることもできる。この目的
で用いることのできる他のペプチドとしては、SP1、SP2及びSP3からな
る群より選ばれる1個以上の配列を有するペプチド、例えば配列番号38の約ア
ミノ酸199−219(SP1)、配列番号38の約アミノ酸233−252(
SP2)、及び/又は配列番号38の約アミノ酸278−301(SP3)を包
含するペプチドが挙げられる。上記したSRR、SP1、SP2及びSP3の配
列に相同性(少なくとも80%、85%、90%、95%又は好ましくは少なく
とも約98%又は99%の同一性又は類似性)を有するアミノ酸配列を包含する
他のペプチドも、本発明の対象とするところである。特に、NLSと分子内相互
作用することのできるNF−ATc2、NF−ATc3及びNF−ATc5から
のペプチドは、本発明の対象とするところである。SP1、SP2及びSP3配
列は、全てのNF−ATc族で相同性を有する(例えばHoey他、上述参照)。
【0098】 SRR、SP1、SP2及びSP3からなる群より選ばれる1個以上の配列を
包含するNF−ATペプチドは、好ましくはホスホセリンを包含する。ペプチド
の各セリンをリン酸化することができる。しかし実施例に示すように、ペプチド
がNLSと相互作用するように、セリンを幾つかリン酸化することだけが必要で
ある(図12参照)。従って、本発明のペプチドで好ましいものは、NF−AT
のNLSと相互作用するのに十分な数のホスホセリンを有するNF−ATペプチ
ドである。主題のペプチドは、実施例に記載の方法によって、又は当分野で知ら
れる生体外リン酸化アッセイによって、生体外でリン酸化することができる。
【0099】 本発明は更に、配列番号38に記載の配列の相同体、変異体、誘導体又はペプ
チド模倣体である、NLS又は1個以上の繰返し単位SRR、SP1、SP2及
びSP3を包含するNF−ATペプチドを提供する。好ましい相同体、変異体、
誘導体又はペプチド模倣体は、NF−ATポリペプチドの部分と相互作用するこ
とができるものである。ペプチド又はペプチド模倣体は、結合アッセイ、例えば
本実施例に記載した結合アッセイによって、NF−ATの部分と相互作用するも
のについてスクリーニングすることができる。
【0100】 本発明が更に対象とするのは、構成的に活性なNF−ATポリペプチドである
。そのようなNF−ATポリペプチドは、活性化をカルシウムの存在に依存しな
いが、下記に詳述するように一般的な方法で活性化されるので有用である。実施
例に示すように、NF−AT内のある種のアミノ酸を突然変異することによって
、構成的な核移行、従って構成的な活性化が起こる。構成的に活性なNF−AT
ポリペプチドで好ましいものとしては、少なくとも1個のアミノ酸を欠失、付加
又は置換し(一般に「ペプチド改変」と称する)、NF−ATの分子内相互作用
に干渉するものが挙げられる。より好ましいNF−ATポリペプチドは、NF−
ATポリペプチドが分子内関係を形成する能力を減少させる又は阻害するように
、NF−AT分子のSRR、SP1、SP2又はSP3配列の1個以上において
ペプチド改変を有するものである。ペプチド改変は、1個以上の繰返し単位中に
おける1個以上のセリンの置換であってもよい。例えば、構成的に活性なNF−
ATペプチドは、SRR領域(配列番号38のアミノ酸172−アミノ酸194
)に位置するセリン全てを置換したものであってもよい。あるいは、構成的に活
性なペプチドは、配列番号38の位置184、187及び188のセリンを置換
したもの;配列番号38の位置172、175及び176のセリンを置換したも
の;配列番号38の位置178、179及び181のセリンを置換したもの;配
列番号38の位置184、187及び188のセリンを置換したもの;であって
もよい。構成的に活性なNF−ATポリペプチドは、SP1、SP2及び/又は
SP3領域の1個以上のセリンの置換によって得たものであってもよい。特に、
構成的なNF−ATペプチドは、SP1(配列番号38のアミノ酸199−21
9に相当)の4個のセリンの置換;SP2(配列番号38のアミノ酸233−2
52に相当)の位置233及び237のセリンの置換;又はSP3(配列番号3
8のアミノ酸278−301に相当)の位置278、282、286及び299
におけるセリンの置換を包含することができる。置換が分子内相互作用を低減さ
せる限りは、1個以上のセリンをどのアミノ酸で置換してもよい。好ましくはリ
ン酸化されないアミノ酸、例えばアラニンである。NF−ATポリペプチドに構
成的な活性を与える、NF−ATポリペプチド内に作られる突然変異は、ペプチ
ドのライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。例
えば、配列番号38のアミノ酸172−188を包含するペプチドで1個以上の
セリン又は他のアミノ酸がランダムに突然変異されたペプチド等の、変性ペプチ
ドのライブラリーを作製することができる。例えば過剰なNF−AT NLSペ
プチドを含むカラムに変性ペプチドのライブラリーを通過させることによって、
NF−AT NLSと相互作用しないペプチドについてライブラリーをスクリー
ニングすることができる。次いで、カラムを通過したペプチドのアミノ酸配列を
決定する。あるいは、ライブラリー内の個々のペプチドを標識付けすることもで
きるし、標識を検出及び同定することによって、ここのペプチドを同定すること
ができる。
【0101】 構成的に活性なNF−ATポリペプチドは、例えば構成的に活性なNF−AT
ポリペプチドをコードする遺伝子を、誘導性プロモーターの制御下に提供するこ
とによって調節することができる。あるいは、NF−ATポリペプチドは、調節
可能な他のペプチドに融合することができる。例えば、構成的に活性なNF−A
Tポリペプチドは、リガンド結合領域に融合することができる。このNF−AT
蛋白質活性の対照標準は、リガンド結合領域及び細胞質保持領域を含有する融合
蛋白質を細胞内でさらに発現することで得られる。それにより、2個の融合蛋白
質間の交雑を可能にする二量化剤(dimerizer)分子の存在下で、NF−AT融
合蛋白質が細胞質内に保持される。二量化剤を除去することによって、核への移
動を誘導する。
【0102】 あるいは、構成的に活性なNF−ATポリペプチドは、NF−ATポリペプチ
ドに追加のNLS、特に異種NLS、例えばウィルスNLS(SV40large T
抗原NLS等)を融合することによって得ることができる。NF−ATポリペプ
チドは、2個以上のNLSに融合することもできる。1個以上のNLSをNF−
ATポリペプチドのN末端に融合することができる。実施例10に示すように、
NF−ATポリペプチドが1個以上の異種NLSに電子対を共有して連結してい
ると、構成的な核への移行が起こる。
【0103】 NF−ATのNLSを用いて、蛋白質、特に異種蛋白質を核に向けることがで
きる。実施例11に示すように、配列番号38のアミノ酸263−271(N末
端NLS)のアミノ酸配列を有するペプチド又は配列番号38のアミノ酸681
−685(C末端NLS)のアミノ酸配列を有するペプチドを異種ポリペプチド
に添加すると、ポリペプチドの構成的な核移行が起こる。従って、NF−ATか
らのNLSは、ポリペプチドを核に向けるのに十分である。従って、NF−AT
からのNLSを包含するペプチド、特にアミノ酸配列KRK、又は好ましくはCNKRK
YSLN(配列番号53)(配列番号38のアミノ酸263−271)、より好まし
くはSPCNKRKYSLNGR(配列番号71)(配列番号38のアミノ酸261−273
)、及び/又はアミノ酸配列KRKKIR(配列番号66)、又は好ましくはGKRKK/R
(配列番号67)(配列番号38のアミノ酸681−685)、より好ましくは
CNGKRKK/RSQ(配列番号72)(配列番号38のアミノ酸679−687)を包
含するペプチドも本発明の範囲に含まれる。
【0104】 例えば1個の、好ましくは両方のNLSを突然変異させ、細胞質から核へのN
F−ATポリペプチドの移動を不能にすることによって、優性陰性(dominant n
egative)NF−AT、又は構成的に不活性なNF−ATを作製することができ
る。 1個以上の突然変異NLSを有するNF−ATポリペプチドは、優性陰性
突然変異として作用することができる。ポリペプチドは依然としてカルシニュー
リンと相互作用することができ、したがってカルシニューリンと競合し、その結
果カルシニューリンが内生NF−AT分子と相互作用して活性化するのを阻害す
るからである。N末端NLSは、例えば配列番号38の残基265−268(KR
K)を置換することによって突然変異させることができる。例えばこれらの残基
はQILに変えることができる。C末端NLSは、例えば配列番号38の残基68
2−685(KRKK/R(配列番号66))を置換することによって突然変異させ
ることができる。例えばこれらの残基はTRTG(配列番号55)に変えることがで
きる。他の突然変異も本発明の範囲に含まれ、例えば実施例に記載するアッセイ
を行うことによって同定することができる。そのようなアッセイを用いて、突然
変異したNLS配列のライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0105】 特に好ましい変異体は、優性陰性NF−ATc突然変異体の構造模倣体、例え
ば本質的に図1のアミノ酸1−418からなり、実質的にカルボキシル末端から
残基418のアミノ酸を欠失するポリペプチドである。そのような優性陰性突然
変異ポリペプチドの模倣体は、NF−AT活性化(従ってT細胞活性化)のアン
タゴニスト又は部分的アゴニストとしての実質的な活性を有することができる。
【0106】 本発明の他の特徴は、NLS配列に由来し、グルカンシンターゼキナーゼ(例
えばGSK−3)を阻害する、ペプチド及びペプチド模倣体阻害剤に関する。
【0107】 天然のNF−ATc蛋白質、その断片、又はその類似体は、NF−AT機能に
干渉する剤を同定するDNA結合アッセイ及び/又は生体外転写アッセイにおい
て試薬として用いることができる。そこで同定された剤は、例えばT細胞活性化
の阻害又はT細胞リンパ球性白血病の治療に用いられる候補薬剤である。通常、
NF−ATとDNAとの結合を測定する生体外DNA結合アッセイでは、(天然
NF−AT蛋白質の特異的フットプリント法によって定義される)1個以上のN
F−AT認識部位列を有する二本鎖DNAが用いられる。DNAは一般に、当業
者に知られるあらゆる手段によって、固体基質に連結している。そのような結合
は非共有結合(例えばナイロン66等の高荷電表面への結合)であってもよいし
、共有結合(例えば一般に、ヌクレオチド塩基における窒素位置に関連する化学
結合、例えばジアゾ化等)であってもよい。NF−ATcポリペプチドは一般に
、放射性同位元素標識付けしたアミノ酸の取り込みによって標識付けする。通常
NF−AT核成分(例えばAP−1活性)でNF−AT複合体を形成して再構成
される標識NF−ATcポリペプチドは、固定化DNAに接触される。接触は、
約1×106-1以上の結合親和性で、一般にZn+2及び/又はMn+2及び/又
はMg+2 を、ナノモルからミクロモルの範囲(1nM〜999μM)で含む、
対照結合反応における特異的な結合を可能にする水性条件下(例えば10−25
0mM NaCl又はKCl及び5−100mM Tris HCl pH5−
9、一般にpH6−8)で行う。結合の特異性は、一般に、医者の裁量によって
選択された様々な濃度の非標識付け競合体を添加することによって行う。非標識
蛋白質競合体の例としては、非標識NF−ATcポリペプチド、ウシ血清アルブ
ミン及び核蛋白質抽出物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1
種以上の剤が添加される結合反応は、作用体を含まない対照結合反応と並行して
行われる。対照反応に比較して、NF−ATcポリペプチドによるDNAへの特
異的な結合を阻害する作用体は、候補免疫調節剤として同定される。また、生体
外のNF−ATによる転写変調を回避する作用体は、候補免疫調節剤として同定
される。
【0108】 上に述べたように、天然に産するアミノ酸のみからなるNF−ATcポリペプ
チドに加えて、NF−ATcペプチド模倣体も提供される。ペプチド類似体は、
鋳型ペプチドに類似した特性を有する非ペプチドの薬剤として、薬産業で一般に
用いられている。これらの非ペプチド化合物種は、「ペプチド模倣体」と称され
ており(Fauchere, J.(1986)Adv. Drug Res.15:29;Veber及びFreid
inger(1985)TINS p.392;及びEvans他(1987)J. Med. Chem30
:1229、ここに参照して説明に変える)、一般にコンピューターによるモデ
ル作製によって開発されている。治療上有うようなペプチドに類似した構造を有
するペプチド模倣体を用いて、同等の治療効果又は予防効果を得ることができる
。一般に、ペプチド模倣体は、ヒトNF−ATc等の典型ポリペプチド(すなわ
ち、生物学的又は薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造が類似しているが
、1個以上のペプチド結合が−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、
−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2
及び−CH2SO−からなる群より選ばれる結合に任意に置換されうる。置換の
方法は、当分野で公知のものであり、詳細は下記を参照にできる。Spatola, A.F
. "Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins," B
. Weinstein編、Marcel Dekker、ニューヨーク、p267(1983);Spatol
a, A.F.、Vega Data(1983年3月)Vol. 1、Issue3、"Peptide Backbone
Modifications"(general review);Morley, J.S.、Trends Pharm Sci(198
0)pp.463−468(general review);Hudson, D.他、Int J Pept Prot R es (1979)14:177−185(−CH2NH−、CH2CH2−);Spatola, A.F.
他、Life Sci(1986)38:1243−1249(−CH2−S);Harm, M.M.
J Chem Soc Perkin Trans I(1982)307−314(−CH−CH−、シス
及びトランス);Almquist, R.G.他、J Med Chem(1980)23:1392−
1398(−COCH2−);Jennings−White, C.他、Tetrahedron Lett(1982
)23:2533(−COCH2−); Szelke, M.他、欧州特許出願EP45665(
1982)CA:97:39405(1982)(−CH(OH)CH2−);Holladay,
M.W.他、Tetrahedron Lett(1983)24:4401−4404(−C(OH)
CH2−);及びHruby, V.J.、Life Sci(1982)31:189−199(−CH 2 −S−);(ここに参照して説明に代える)。特に好ましい非ペプチド結合は−
CH2NH−である。そのようなペプチド模倣体は、ポリペプチドの態様に対して、
より安価な生産、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸
収、力価、効力など)、変化した特異性(例えば広域な生物学的活性)、低減し
た抗原性などの重要な利点を有することができる。ペプチド模倣体の標識付けで
は、直接に又はスペーサー(例えばアミノ基)を介して、1個以上の標識を、ペ
プチド模倣体の非干渉位置(定量的構造−活性データ及び/又は分子モデリング
によって予想される)に共有結合するのが一般的である。非干渉の位置は一般に
、ペプチド模倣体が結合して治療効果を生む巨大分子(例えば免疫グロブリン超
科分子)と、直接接触することのない位置である。ペプチド模倣体の派生化(例
えば標識付け)は、ペプチド模倣体の望まれる生物学的又は薬理学的活性に実質
的に干渉するものであってはならない。NF−ATcのペプチド模倣体を、NF
−ATc機能の競合的又は非競合的アゴニスト又はアンタゴニストとして用いる
ことができる。例えば、NF−ATcを含む誘導T細胞に投与したNF−ATc
ペプチド模倣体は、天然に産するNF−ATcと競合し、NF−AT活性を低減
させる。あるいは、NF−ATcを欠くT細胞に投与したNF−ATcペプチド
模倣体は、T細胞活性化などを誘導することができる。
【0109】 コンセンサス配列の1個以上のアミノ酸を同じ型のDアミノ酸(例えばL−リ
ジンの代わりにD−リジン)で系統的に置換して、より安定したペプチドを作製
することができる。加えて、コンセンサス配列又は実質的に同一のコンセンサス
配列変種を包含する制約された(constrained)ペプチド(環化ペプチドを含む
)は、公知の方法、例えば分子内ジスルフィド架橋を形成することができ、ペプ
チドを環化する内部システイン残基を添加することによって、作製することがで
きる(Rizo及びGierasch(1992)Ann.Rev.Biochem、61:387。参照し
て説明に代える)。
【0110】 ここで同定したNF−ATcポリペプチドのアミノ酸配列を用いれば、NF−
ATcペプチド配列及びその配列変異体に相当するポリペプチドの作製が当業者
には可能であろう。そのようなポリペプチドは、NF−ATcペプチド配列(多
くの場合にはより大きなポリペプチドの部分)をコードするポリヌクレオチドを
発現することによって、原核又は真核宿主細胞内で作製することができる。ある
いは、そのようなペプチドは、化学的方法によって合成することができる。組換
え宿主中での異種蛋白質の発現、ポリペプチドの化学合成、生体外翻訳の方法は
当業者に知られるものであり、下記文献に詳細を参照できる。Maniatis他、Mole cular Cloning:A Laboratory Manual (1989)第2版、Cold Spring Harbor
、ニューヨーク;Berger及びKimmel、Methods in Enzymology. Volume152. G uide to Molecular Cloning TechniQues (1987)、Academic Press, Inc.、
カリフォルニア州サンディエゴ;Merrifield, J.(1969)J.Am.Chem.Soc.9
1:501;Chaiken I.M.(1981)CRC Crit.Rev.Biochem. 11:255;
Kaiser他(1989)Science243.:187;Merrifield, B.(1986)Sc ience 232:342;Kent, S.B.H.(1988)Ann.Rev.Biochem.57:95
7;及びOfford,R.E.(1980)Semisynthetic Proteins、Wiley Publishing
;ここに参照して説明に代える)。
【0111】 F.α−NF−ATc抗体の作製及び適用 天然NF−ATc蛋白質、その断片又はその類似体を用いて、動物を免疫化し
て特異的な抗体を作製することができる。これらの抗体は、ポリクローナル抗血
清を包含してもよいし、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル
抗体を包含してもよい。抗体を調製する一般的な方法については、Antibodies: A Laboratory Manual (1988)E. Harlow及びD. Lane、Cold Spring Harbor
Laboratory、Cold Spring Harbor、ニューヨーク参照(ここに参照して説明に代
える)。
【0112】 例えば(ただしこの例に限定されるものではない)、組換え技術によって作製
したヒトNF−ATc断片を、当業者に知られる免疫化プロトコルに従ってアジ
ュバントと共にラットに注射し、免疫応答を誘導することができる。一般に、ポ
リペプチドの長さに応じて、少なくとも約1−50μgのNF−ATc断片又は
類似体が最初の免疫化に用いられる。別にあるいは組換え技術によって作製した
NF−ATcポリペプチドと組み合わせて、NF−ATc配列を有する化学合成
ペプチド(例えば表IIに例示したペプチド、下記参照)を免疫原として用いて
、NF−ATc蛋白質(本質的に図1に示した配列を有する天然ヒトNF−AT
cポリペプチド又は天然ヒトNF−ATcポリペプチドアイソホーム等)に結合
する抗体を作製することができる。少なくとも1×107-1の結合親和性で組
換え断片結合する免疫グロブリンは、免疫化した動物から抗血清として得ること
ができ、免疫親和性クロマトグラフィー又は他の方法によって更に精製すること
ができる。加えて、脾臓細胞を免疫化動物(一般にラット又はマウス)から得て
、骨髄腫細胞に融合し、抗体分泌ハイブリドーマ細胞の層を得る。組換え技術に
より作製したNF−ATcポリペプチド(又は化学的に合成されたNF−ATc
ポリペプチド)に少なくとも1×106-1の親和性で結合する免疫グロブリン
を分泌するクローンについて、ハイブリドーマの層をスクリーニングすることが
できる。マウス、ラット以外の動物を抗体の作製に用いることもできる。例えば
ヤギ、ウサギ、ヒツジ及びニワトリを用いて、NF−ATc蛋白質に反応する抗
体を作製することもできる。実質的なヒト抗体を産生することのできるトランス
ジェニックマウスを免疫化して、α−NF−ATc抗血清源として用いる及び/
又はモノクローナル分泌ハイブリドーマの作製に用いることもできる。
【0113】 バクテリオファージ抗体呈示ライブラリーを、NF−ATcポリペプチド[例
えば全長ヒトNF−ATc蛋白質、NF−ATc断片(例えば表IIに示した配
列を有するペプチド、下記参照)、あるいは図1に示したアミノ酸のうち少なく
とも連続する14個のアミノ酸であるNF−ATcポリペプチド配列又は表II
のポリペプチド配列(下記参照)を包含する融合蛋白質又はポリペプチド]への
結合についてスクリーニングすることもできる。抗体の組み合わせライブラリー
が、バクテリオファージプラークとして又は溶原コロニーとしてスクリーニング
される、バクテリオファージλ発現系内で作製されている(Huse他(1989) Science 246:1275;Caton及びKoprowski(1990)Proc.Nati.Acad.Sc i.(U.S.A. )87:6450;Mullinax他(1990)Proc.Nati.Acad.Sci.(U .S.A. )87:8095;Persson他(1991)Proc.Nati.Acad.Sci.(U.S.A.
)88:2432参照)。バクテリオファージ抗体呈示ライブラリーの様々な態
様及びλファージ発現ライブラリーが、これまで記述されている(Kang他(19
91)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:4363;Clackson他(1991
Nature352:624;MeCafferty他(1990)Nature348:552;Bu
rton他(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:10134;Hoogenb
oom他(1991)Nucleic Acids Res.19:4133;Chang他(1991)J. Immunol 147:3610;Breifling他(1991)Gene104:147;Mar
ks他(1991)J.Mol.Biol.222:581;Barbas他(1992)Proc.Nati .Acad.Sci.(U.S.A. )89:4457;Hawkins及びWinter(1992)J.Immun ol .22:867;Marks他(1992)Biotechnology10:779;Marks他(
1992)J.Biol.Chem.267:16007;Lowman他(1991)Biochemist ry 30:10832;Lerner他(1992)Science258:1313;参照し
て説明に代える)。一般にバクテリオファージ抗体呈示ライブラリーは、固定化
(例えば、クロマトグラフィー樹脂に共有結合して親和性クロマトグラフィーに
よる反応ファージを増加させた)及び/又は標識付けした(例えば、プラーク又
はコロニーのスクリーニングを目的とする)NF−ATcポリペプチドでスクリ
ーニングする。
【0114】 試料中のα−NF−ATc抗体の診断的な検出、(例えば標準的な競合イライ
ザによる)試料中のNF−ATc蛋白質の診断的な検出及び定量化、バクテリオ
ファージ抗体呈示ライブラリーのスクリーニングに、免疫原として有用なNF−
ATcポリペプチドは、一般に約50%(w/w)以上の純度で、実質的に干渉
蛋白質及び不純物を含まない実質的に純粋な形態で好適に得られる。好ましくは
これらのペプチドは、実質的にヒト、マウスの他の蛋白質や他の不純物を含まな
い、少なくとも80%(w/w)、より好ましくは少なくとも95%(w/w)
の純度で単離又は合成される。好ましい免疫原は、表IIに記載のNF−ATc
ポリペプチド配列の少なくとも1個を、独立したペプチドとして又は(例えばβ
−ガラクトシダーゼ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ配列との)融合ポ
リペプチドの一部として、包含する。NF−ATc免疫原は、少なくとも1個の
、一般には数個のそのような免疫原性エピトープを包含する。
【0115】 例えば免疫交差反応性蛋白質を同定する、これらの抗体の用途として、望まし
い抗血清又は(複数の)モノクローナル抗体は単一特異的ではない。これらの例
において、抗原としては天然全長蛋白質を用いるよりも、合成又は組換えのNF
−ATc断片を用いるのが好ましいと思われる。より具体的には、物体が特別な
構造基(DNA結合領域など)を包含する免疫交差反応性ポリペプチドの同定に
用いられる場合、NF−ATc蛋白質中の同一基準(commensurate)構造領域の
部分又は全体に相当する断片を、抗原として用いるのが好ましい。そのような確
定したアミノ−カルボキシ末端を有する組替え又は合成断片の作製は、図1に示
すNF−ATc配列によって提供される。
【0116】 NF−ATc免疫原性エピトープを含有し、β−ガラクトシダーゼ又はグルタ
チオンS−トランスフェラーゼに融合したNF−ATc融合ポリペプチドに対す
る抗血清を作製する場合、抗血清は好ましくは非NF−ATc融合パートナー(
例えばβ−ガラクトシダーゼ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ)で予め
吸収しておき、免疫原として作用する融合蛋白質の非NF−ATc部分に反応す
る(即ち、特異的に結合する)抗体の抗血清を、枯渇させておく。ヒト及び/又
はマウスNF−ATc蛋白質に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体
を用いて、試料中のヒト又はマウスNF−ATcポリペプチドの存在を調べるこ
とができる。例えば患者のリンパ球試料から得た変性蛋白質を用いるウエスタン
ブロット(SDS−PAGEのニトロセルロースブロットなど)を行う。好まし
くは、濃度スキャニング及びウエスタンブロットのシグナル形成等の定量的検出
を行う。変性したNF−ATcエピトープに結合したモノクローナル又はポリク
ローナル抗体は、公知の方法で、標識付けした二次抗体又は標識付けした黄色ブ
ドウ球菌蛋白質Aを用いて、目視又は他の工学的手段によって同定することがで
きる。一般には、変性NF−ATcを標的抗原として用いて、より多くのエピト
ープが結合に関与するようにする。
【0117】
【表3】 表II 選択されたヒトNF−ATc抗原ペプチド −NAIFLTVSREHERVGC−(配列番号25); −LHGYLENEPLMLQLFIGT−(配列番号26); −PSTSPRASVTEESWLG−(配列番号27); −GPAPRAGGTMKSAEEEHYG−(配列番号28); −ASAGGHPIVQ−(配列番号29); −NTRVRLVFRV−(配列番号30); −AKTDRDLCKPNSLVVEIPPFRN−(配列番号31); −EVQPKSHHRAHYETEGSR−(配列番号32); −SPRVSVTDDSWLGNT−(配列番号33); −SHHRAHYETEGSRGAV−(配列番号34); −LRNSDIELRKGETDIGR−(配列番号35);及び −TLSLQVASNPIEC−(配列番号36)
【0118】 表IIに示したようなNF−ATc配列は、(例えばバクテリオファージ抗体
呈示ライブラリーをスクリーニングする又はウサギを免疫化することを目的に)
直接、免疫原性ペプチドとして用いてもよいし、担体巨大分子(例えばBSA)
に連結させてもよいし、免疫原として用いられる融合蛋白質の一部を構成しても
よい。好ましいNF−ATcポリペプチドは、下記のアミノ酸配列 −NAIFLTVSREHERVGC−(配列番号25); −PSTSPRASVTEESWLG−(配列番号27); −SPRVSVTDDSWLGNT−(配列番号33);及び −SHHRAHYETEGSRGAV−(配列番号34); を包含し、さらに他の介在及び/又は末端配列を包含してもよい。一般にそのよ
うなポリペプチドは1000アミノ酸未満であり、より一般には500アミノ酸
未満である。他のスペーサーペプチド配列又は末端ペプチド配列が存在する場合
には、それらは天然に産するポリペプチド配列、一般には哺乳類のポリペプチド
配列に相当する。上に挙げた好ましいNF−ATcポリペプチドの適用例として
は、好適な動物中でα−NF−ATc抗体を作製する市販の免疫原として、及び
/又は本発明により提供される抗NF−ATc抗体とともに用いる、定量的イラ
イザ(例えば競合イライザ)用又は競合RIA用の市販の免疫診断試薬として用
いるものである。例えばヒトにおけるNF−ATc発現リンパ球性白血病、又は
細胞型の決定、T細胞(活性化したT細胞及び/又は活性化できるT細胞等)の
同定を目的とした、そのような免疫学的検定法の標準化の較正に用いるものであ
る。上に挙げた好ましいNF−ATcポリペプチドには、免疫原又は免疫学的試
薬として用いる他に、多くの用途が考えられる。上に挙げた1個以上の配列は、
ヒト血清アルブミン、GST等の融合パートナーと共に、融合蛋白質内に組み込
むことができる。望ましい場合には、アミノ酸が1000個を越える融合蛋白質
用に、融合パートナー(アルブミン)における欠失を行って約1000アミノ酸
未満にすることもできる。
【0119】 ある態様においては、少なくとも2個の共有結合(通常ペプチド結合)したN
F−ATc免疫原性エピトープを包含する、多価のNF−ATc抗原を用いるこ
とが望ましい。そのような多価NF−ATc抗原は、一般に同じ種(例えばヒト
やマウス)由来の複数のNF−ATc抗原性ペプチドを包含するが、異なる種の
NF−ATc蛋白質由来の抗原性ペプチド混合物(すなわち異種間NF−ATc
多価抗原)を包含してもよい。一般的に、多価抗原の一次アミノ酸配列において
、抗原性ペプチド配列の空間的順序は、天然に産するNF−ATc蛋白質と同じ
方向で現われる。すなわち、天然に産するNF−ATc蛋白質中の第二の抗原性
ペプチド配列のアミノ末端側にある第一の抗原性ペプチド配列は、多価抗原中の
該第二の抗原性ペプチド配列のアミノ末端側にくる。一般に、スペーサーペプチ
ド配列は、多価抗原中の抗原性ペプチド配列の連結に用いられる。そのようなス
ペーサー配列は所与のものでも、ランダムでも、擬似ランダムのものであっても
よい。スペーサーペプチド配列は、多価抗原で免疫化される動物に対して非免疫
原であると知られる配列(例えば動物に耐性を与えるのに用いた配列)に相当す
るものであってもよい。そのような多価抗原として多くの例が考えられる。下記
に挙げる態様は例証であって限定するものではない。 −NAIFLTVSREHERVGC−(aa1)(配列番号25)−AKTDRDLCKPNSLVVEIPPFRN−
(aa2)(配列番号31)−GILKLRNSDIELRKGETD−(配列番号37)
【0120】 ここで(aa1)及び(aa2)は、少なくとも1個、1000個未満のアミ
ノ酸のペプチドスペーサーであり;aa1はaa2ペプチド配列から独立して選
択されるペプチド配列であり;(複数の異なるアミノ酸で構成されうる)aa1
の長さは、(複数の異なるアミノ酸で構成されうる)aa2の長さとは独立して
いる。
【0121】 免疫原性NF−ATcペプチドは、動物を免疫化し、抗NF−ATc抗体を作
製する及び/又はハイブリドーマライブラリー作製用の脾臓細胞源とするのに用
いることができる。このライブラリーからは、1×107-1以上、好ましくは
少なくとも1×108-1〜1×109-1の親和性でNF−ATc蛋白質に結合
するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマクローンが選択される。その
ような免疫原性NF−ATcペプチドを用いて、バクテリオファージ抗体呈示ラ
イブラリーを直接スクリーニングすることもできる。
【0122】 そのような抗体の1つの使用例として、好ましくはヒト又はマウスの様々な組
織mRNA由来のcDNAを含むcDNA発現ライブラリーをスクリーニングす
ることが挙げられる。このスクリーニングによって、構造的に関連した、免疫交
差反応性蛋白質(新規な転写要素候補又はクロマチン蛋白質)をコードするcD
NA挿入を含むクローンを同定することができる。cDNA発現ライブラリーの
そのようなスクリーニングは、当分野において知られている(Young他、Proc.Na tl.Acad.Sci.U.S.A .80:1194−1198(1983)や他の文献、参照し
て説明に代える)。そのような抗体の他の用途としては、抗体を作製するのに用
いられる天然NF−ATc蛋白質又は対応するNF−ATc断片(例えば機能領
域、DNA結合領域)に、構造的又は進化的に関係した免疫交差反応性蛋白質の
同定及び/又は精製が挙げられる。そのような抗体は、市販されている他の抗体
(及び制限酵素やポリメラーゼなどの生物学的試薬)と同じように、研究用の試
薬として市販されること考えられる。
【0123】 そのような抗体の他の様々な用途として、白血病又は他の免疫学的疾病状態の
診断及び/又は病期識別、(カチオン化抗体として又は標的化リポソーム運搬に
よる)新形成、過剰免疫機能、移植片拒絶などの治療が挙げられる。 NF−ATcポリペプチドの例としては、下記の配列を有するポリペプチドが
挙げられる。 MPSTSFPVPSKFPLGPAAAVFGRGETLGPAPRAGGTMKSAEEEHYGYASSNVSPALPLPTAHSTLPAPCHNL
QTSTPGIIPPADHPSGYGAALDGCPAGYFLSSGHTRPDGAPALESPRIEITSCLGLYHNNNQFFHDVEVEDV
LPSSKRSPSTATLSLPSLEAYRDPSCLSPASSLSSRSCNSEASSYESNYSYPYASPQTSPWQSPCVSPKTTD
PEEGFPRGLGACTLLGSPQHSPSTSPRASVTEESWLGARSSRPASPCNKRKYSLNGRQPPYSPHHSPTPSPH
GSPRVSVTDDSWLGNTTQYTSSAIVAAINALTTDSSLDLGDGVPVKSRKTTLEQPPSVALKVEPVGEDLGSP
PPPADFAPEDYSSFQHIRKGGFCDQYLAVPQHPYQWAKPKPLSPTSYMSPTLPALDWQLPSHSGPYELRIEV
QPKSHHRAHYETEGSRGAVKASAGGHPIVQLHGYLENEPLMLQLFIGTADDRLLRPHAFYQVHRITGKTVST
TSHEAILSNTKVLEIPLLPENSMRAVIDCACILKLRNSDIELRKGETDIGRKNTRVRLVFRVHVPQPSGRTL
SLQVASNPIECSQRSAQELPLVEKQSTDSYPVVGGKKMVLSGHNFLQDSKVIFVEKAPDGHHVWEMEAKTDR
DLCKPNSLVVEIPPFRNQRITSPVHVSFYVCNGKRKRSQYQRFTYLPANGNAIFLTVSREHERVGCFF(配
列番号38)
【0124】 抗体を調製するための他に好ましい抗原としては、リン酸化NF−ATポリペ
プチド又はその領域が挙げられる。例えば、本発明はリン酸化NF−ATcポリ
ペプチドに特異的に結合するが、リン酸化していないNF−ATcポリペプチド
には結合しない抗体を提供する。NF−ATcポリペプチドはセリン(SRR、
SP1、SP2、SP3又はこれらの繰返し配列間に位置するセリン)において
リン酸化できる。上記抗体は、これらのリン酸化領域をNLSから遮蔽すること
ができ、よって細胞核内へのNF−ATc移行が起こりやすくなる。あるいは、
(例えば診断において)そのような抗体を用いて、リン酸化形態を特異的に検出
することができる。
【0125】 G.NF−ATcに結合する蛋白質の同定及び単離 NF−ATc及び/又はNF−AT−DNA複合体に結合する蛋白質は、転写
調節蛋白質として潜在的に重要である。そのような蛋白質は、新規な免疫調節剤
の標的となりうる。これらの蛋白質を、以下副(accessory)蛋白質と称する。
副蛋白質は公知の様々な方法で単離することができる。
【0126】 副蛋白質を単離する好ましい方法の一つとして、NF−ATcポリペプチドを
NF−ATcポリペプチドに結合する抗体に接触させ、得られる免疫複合体を単
離するものが挙げられる。これらの免疫複合体は、NF−ATcポリペプチドに
結合した副蛋白質を含みうる。副蛋白質は、免疫複合体を変性剤、好ましくは還
元剤で変性することによって同定及び単離することができる。変性された、好ま
しくは還元された蛋白質は、ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動することがで
きる。推定副蛋白質を、1以上の公知の方法(例えばクーマシー染色、ウエスタ
ンブロット、銀染色)によってポリアクリルアミドゲル上で同定し、該当の同定
ポリペプチドを含むポリアクリルアミドゲルの部分を切除し、ゲル部分からポリ
ペプチドを溶出することによって、単離することができる。
【0127】 推定副蛋白質は、NF−ATC及び/又はNF−AT−DNA複合体との結合
を実証することによって副蛋白質と同定することができる。そのような結合は様
々な方法で、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動法による単離に続いて復元
された推定副蛋白質を用いる結合アッセイなど(但しこの例に限定されるもので
はない)で、 生体外で起こることを示すことができる。或いは、組換え又は化
学合成した推定副蛋白質を用いる結合アッセイを行うこともできる。例えば、推
定副蛋白質を単離し、アミノ酸配列の全て又は部分をエドマン分解法等の化学的
配列決定法によって決定することができる。アミノ酸配列の情報は、推定副蛋白
質の化学合成に用いることができる。さらに、アミノ酸配列は、(1)推定副蛋
白質をコードするcDNAクローンを、アミノ酸配列データに従った縮重オリゴ
ヌクレオチドプローブでスクリーニングすることによってcDNAライブラリー
から単離し、(2)宿主細胞内でcDNAを発現し、そして(3)推定副蛋白質
を単離するという工程で、組換え推定副蛋白質を作製するのに用いることもでき
る。或いは、NF−ATcポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをオリゴ
ヌクレオチド合成によって作製し、発現ベクター内に入れ、宿主細胞内で発現さ
せることもできる。
【0128】 生体外でNF−ATc及び/又はNF−AT−DNA複合体と結合する推定副
蛋白質は、副蛋白質と同定される。副蛋白質は、二機能架橋剤(例えばジメチル
スベルイミド酸塩、グルタルアルデヒド等)による生体内での架橋、及びそれに
続くNF−ATcポリペプチドを含む架橋産物の単離によって同定することがで
きる(架橋の一般論については、Kunkel他(1981)Mol.Cell.Biochem.34
:3を参照。参照して説明に代える)。好ましくは、二機能架橋剤による架橋は
特殊な条件下で可逆的なものである。それにより、架橋複合体を単離した後、N
F−ATcポリペプチドからの副蛋白質の単離が容易になる。NF−ATcポリ
ペプチドを含む架橋複合体の単離は、好ましくはNF−ATcポリペプチドに少
なくとも1×107-1の親和性で結合する抗体を架橋複合体の集合体に結合さ
せ、抗体に少なくとも1×107-1の親和性で結合した複合体のみを回収する
ことによって行う。
【0129】 好適な結合条件下で、NF−ATcの副蛋白質(例えばAP−1)への結合を
阻害する(下記参照)、候補免疫調節剤のを同定するためのスクリーニングアッ
セイを開発することができる。
【0130】 酵母菌複合体検出システムを用いて、哺乳動物(一般にはヒト)cDNA発現
ライブラリーをスクリーニングすることができる。ここではcDNAがGAL4
DNA結合領域又は活性化領域に融合し、NF−ATcポリペプチド配列がそ
れぞれGAL4活性化領域又はDNA結合領域に融合する。そのような酵母菌複
合体検出システムは、NF−ATc配列に結合する蛋白質をコードするcDNA
についてスクリーニングすることができる。例えば、cDNAライブラリーを、
ヒト成熟T細胞系統又は他の好適な細胞型から得たmRNAから作製することが
できる。酵母菌複合体検出システムにおいてクローンされるそのようなcDNA
ライブラリー(Chien他(1991)Proc.Nati.Acad.Sci.(U.S.A.)88:95
78又はCell72:233)を用いて、NF−ATcに相互作用する蛋白質をコ
ードするcDNAを同定し、よってGAL4依存レポーター遺伝子を発現させる
ことができる。NF−ATcに相互作用するポリペプチドは、抗体を用いるNF
−ATcの免疫沈降と、共沈降する種の確認によっても同定することができる。
さらに、NF−ATcに結合するポリペプチドは、ペプチドライブラリー(例え
ばバクテリオファージペプチド呈示ライブラリー、空間的に画定したVLSIPSペプ
チド整列など)を、NF−ATcポリペプチドによってスクリーニングすること
によって同定することができる。
【0131】 H.本発明の診断及び予後方法の例証 本発明は、被験者中の免疫抑制状態の決定、免疫抑制剤の適当な用量の決定方
法を含む、診断及び予後方法を提供する。 本発明の一つの好ましい態様にあっては、NF−ATc遺伝子を特異的に同定
するハイブリダイゼーションプローブを、遺伝病の診断に用いることができる。
例えば、診断される遺伝病として、NF−ATc構造又は調節配列に関連した損
傷、並びに関連したNF−ATc遺伝子座における制限断片長多型性又はDNA
配列多型性によって同定される、NF−ATc遺伝子座に密接に関連した遺伝子
座における損傷が挙げられる(ただしこれらに限定されるものではない)。さら
に他の好ましい態様においては、NF−ATc遺伝子プローブを、免疫学的疾病
の素因に関係する遺伝子病の診断又は同定に用いることができる。そこでの内生
NF−ATcの量及び機能性は、個人における免疫疾患、特に免疫不全、関節炎
又は自己免疫疾患が進行する可能性が高まったことを示すのに充分である。
【0132】 本発明は更に、被験者の免疫抑制状態を決定する方法を提供する。一つの態様
においては、方法は被験者の細胞内(好ましくはリンパ球)の細胞質及び/又は
核NF−ATポリペプチドレベルを決定することを包含する。方法は、被験者か
ら血液試料を得て、例えばNF−ATに特異的に結合する抗体を用いる免疫組織
化学によって細胞質及び/又は核NF−ATの量を調べることを包含する(本明
細書に詳述する)。好ましい態様にあっては、本発明は、被験者の赤血球をT細
胞活性化化合物及び/又はカルシウムイオノフォアと共に培養し、NF−ATの
細胞移行を調べることを包含する。実際に、患者が免疫抑制されている場合、患
者のリンパ球を刺激してもNF−ATの核への有意な移動は起こらない。好まし
いT細胞活性化剤は、レクチン、コンカナバリン−A(Con−A)及び植物性
赤血球凝集(PHA)などのポリクローナル活性化剤である。他の活性化剤とし
て、T細胞受容体又はCD3上の不変枠エピトープに結合する抗体が挙げられる
【0133】 NF−ATを検出する好ましい方法は、1個以上のNF−ATc蛋白質に特異
的に結合する抗体を用いる免疫蛍光法である。好ましいモノクローナル抗体は、
Northrop他(1994)Nature369:497に記載の7A6抗体である。 好ましい態様において、被験者から得た細胞を繁殖させたもの、例えば単核細
胞に富む血液試料について、試験を行う。例えば公知の方法によって細胞を軟膜
上の血液試料から分離することによって、末梢血単核細胞を得ることができる
【0134】 次に被験者のリンパ球中の核及び/又は細胞質NF−ATのレベルを、対照被
検者の核及び/又は細胞質NF−ATと比較する。「対照」被検者又は「正常」
被検者とは、NF−AT活性化に関与する疾病または病状、例えば炎症又は自己
免疫疾患がないことが分かっており、細胞試料を採取した時点で他に治療を受け
ていない被験者のことをいう。正常標準値は、正常被験者からの幾つかの細胞試
料を分析することによって確立することができる。次いで患者からの試料を分析
し、標準との比較を行う。
【0135】 好ましい態様においては、この診断法を用いて免疫抑制処置(例えばサイクロ
スポリンA)を受けている被験者の免疫抑制状態をモニターすることができる。
一つの態様においては、被験者から細胞を得て、T細胞活性化剤(例えばPHA
)と共に細胞を培養する前及び/又は後で、NF−ATの細胞移行を調べる。分
析の結果、患者に核NF−ATを有するリンパ球(すなわち活性化リンパ球)の
数が多いと判明した場合、患者に追加の免疫抑制剤を投与する。従って、患者の
病状を追跡して適量の免疫抑制剤を患者に投与することができ、余分な量の免疫
抑制剤を投与することなく、免疫抑制状態を保つのに充分な量だけ投与すること
ができる。
【0136】 他の態様においては、本発明は被験者の、ある特定の免疫抑制剤、例えばサイ
クロスポリンAに対する感受性を調べる方法を提供する。一つの態様においては
、被験者からリンパ球を得て、様々な量の免疫抑制剤の存在下に様々な時間でリ
ンパ球を生体外培養し、NF−ATの細胞移行を調べる。この分析結果を、1以
上の正常被験者から得たリンパ球を用いた同様の分析結果と比較することで、平
均的な人に比べて被験者の免疫抑制剤に対する感受性が多いか少ないかが示され
る。この分析は、生体内でも行うことができる。例えば、ある用量の免疫抑制剤
を被験者に投与して、被験者のリンパ球中のNF−AT細胞移行を様々な時点で
調べ、正常被験者のデータと比較する。正常被験者の標準値を予め用意しておき
、分析を行って標準値と比較することもできる。従って、そのような試験の結果
に基づいて、医師は被験者に投与する免疫抑制剤の有効量をより的確に予想する
ことができ、被験者にとって有毒となりうる過剰な免疫抑制剤投与を回避するこ
とができる。
【0137】 他の態様においては、本発明は、望ましくない心血管成長を含む疾病の進行の
危機を調べ、さらにそのように診断された場合には、疾病の病因を同定する方法
を提供する。後者の場合、疾病におけるNF−AT蛋白質の役割など、疾病を分
子レベルで理解することで、正しい治療過程(すなわち、ある特定の治療が効果
的かどうか)を決定し、再発を示す予後マーカーとしてNF−ATを用いる処置
工程の見通しを立てるのに有用である。 主題の方法のそのような態様は、NF−AT遺伝子における変化、例えば点突
然変異、欠失、付加、染色体再配列、メチル化パターンにおける変化や、蛋白質
の発現レベルにおける変化、蛋白質回転の速度(ユビキチン依存性又は非依存性
)、リン酸化/脱リン酸化の速度、及び/又は蛋白質の細胞移行を検出すること
を含む。
【0138】 I.薬剤作製及びスクリーニングアッセイの方法 本発明は更に、NF−AT蛋白質の活性を変調する化合物を同定するスクリー
ニングアッセイを提供する。スクリーニングアッセイは、生体内又は生体外で行
うことができ、細胞に基づくフォーマットでも細胞を用いないフォーマットでも
行うことができる。これらの剤としては、NF−AT蛋白質又はNF−AT蛋白
質を含む複合体の内因性活性を強化する又は阻害する化合物、NF−AT蛋白質
と他の蛋白質又は核酸との相互作用に干渉する化合物、NF−AT蛋白質の(例
えばホスファターゼ又はキナーゼなどの酵素による)ある種の翻訳後修飾の速度
を変える化合物、NF−AT蛋白質の発現を阻害するアンチセンス構造体、ゲノ
ムDNAの応答要素に対するNF−AT蛋白質の結合を児湯号的に阻害する核酸
デコイ、並びに改変され(突然変異し)て優性機能減少又は機能獲得活性を提供
するNF−AT蛋白質形態を包含する化合物が挙げられるが、これらに限定され
るものではない。一つの態様において、本発明のスクリーニング方法は、筋細胞
等の細胞の肥大進行を変調する、特に阻害することのできる、あるいは細胞の肥
大を減少することのできる、剤の同定を企図する。
【0139】 好ましい態様においては、主題の薬剤スクリーニングアッセイは、特異なNF
−ATパラログ(paralog)への選択性を検出することを企図するように実施さ
れる。例えば、ある好ましい態様においては、NF−ATc3及び/又はNF−
ATc4に対して選択的であるが、NF−ATc1又はNF−ATc2に対して
は選択的でないNF−AT アンタゴニストを検出するようにアッセイが設定さ
れる。例えば、生体内でのED50によるNF−ATc3又はNF−ATc4の
阻害が、ED50によるNF−ATc1又はNF−ATc2活性の阻害より少な
くとも1、より好ましくは2、3、4、5桁小さくなるようにNF−ATアンタ
ゴニストを選択することができる。
【0140】 そのような選択性があるので、2個以上のNF−ATパラログ間にある、DN
A認識要素、蛋白質−蛋白質相互作用、及び/又はNF−AT蛋白質の翻訳後修
に対する特異性における差異を利用することができる。従って、ここに記載した
アッセイはいずれも、2個以上の異なるNF−ATパラログを用いて並行して行
うことができ、化合物の同定はNF−AT蛋白質の生物学的活性に影響を与える
能力のみに基づいて行われるのではなく、アッセイに用いるNF−ATパラログ
間と同様に選択的に影響を与える能力にも基づいている。
【0141】 この点について、本発明は、主題のNF−AT蛋白質の正常な細胞機能につい
ての、又は、正常な又は異常な細胞機能(例えば筋細胞肥大及びそれに関連した
疾患)の病因論的なこれら蛋白質の役割についての、アゴニスト又はアンタゴニ
ストのいずれかの剤を同定するアッセイを提供する。一つの態様においては、ア
ッセイは、NF−AT蛋白質と他の蛋白質、DNA又はRNAとの結合を変調す
る化合物の能力を評価する。他の態様においては、アッセイは、リン酸化及び/
又は蛋白質の折りたたみにおける変化といった、NF−AT蛋白質の翻訳後修飾
を阻害又は強化する化合物を検出する。更に他の態様は、NF−AT蛋白質の細
胞移行における変化を検出する。本アッセイによって同定された化合物は、例え
ば細胞肥大、特に筋細胞肥大によって起こる疾病又は病状の処置に用いられる。
例えば、本発明の化合物を、鬱血性心臓病の治療に用いることができる。
【0142】 NF−AT蛋白質のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する能力の有無
を試験される剤には、例えば、バクテリア、酵母菌又は他の生物体によってされ
たもの(例えば天然に存在する産物)、化学的に作製したもの(例えばペプチド
模倣体等の小分子など)、又は組換え技術によって作製したものなどがある。好
ましい態様においては、試験剤は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する
小さな有機分子である。分子調節体に直接結合する剤の高速スクリーニングでは
、固定化又は「標識付け」組み合わせライブラリー(又は容易に解析できるライ
ブラリー)を用いることができる。
【0143】 薬剤スクリーニングアッセイで活性を有すると同定された剤は、細胞肥大進行
を阻害する能力及び/又は細胞の肥大を減少させる能力について、試験される候
補である。下に述べるように、これらの剤は、心臓梗塞及び鬱血性心臓病を含む
心臓の病状を治療又は回避するのに有用であろう。
【0144】 本発明の開示を鑑みるに、様々なアッセイフォーマットが可能であり、ここに
詳述されなかったものも当業者によって理解されて然るべきである。例えば、ア
ッセイを様々なフォーマットで作製することができ、(精製蛋白質又は細胞溶解
物などの)細胞を用いないシステム、(未反応の細胞などの)細胞を用いるシス
テムなどが含まれる。単純な結合アッセイを用いて、NF−AT蛋白質が関与す
る蛋白質−蛋白質又は蛋白質−DNA相互作用を強化又は阻害することのできる
化合物を検出するなど、剤を検出することもできる。
【0145】 化合物及び天然抽出物のライブラリーを試験する、多くの薬剤スクリーニング
プログラムにおいて、所与の時間内に調べる化合物の数を最大化するために、高
処理量アッセイが望ましい。細胞を用いない(例えば精製又は半精製蛋白質、又
は細胞溶解物を用いる)システムにおいて実施される本発明のアッセイは、試験
化合物によって媒介される分子標的の変化の迅速な発現及び比較的簡単な検出と
いう点から、「一次」スクリーニングとして好まれる。その上更に、試験化合物
の細胞毒性及び/又は生物学的利用能の影響は生体外系では一般に無視できるの
で、アッセイは、他の蛋白質との結合親和性の変化又は分子標的の酵素特性の変
化に現われる、分子標的に与える薬剤の効果に主に焦点を当てることができる。
【0146】 従って、本発明の例証的なスクリーニングアッセイにおいては、NF−AT蛋
白質、試験化合物及び「標的分子」、例えばNF−AT蛋白質と相互作用する蛋
白質又は核酸を含む反応混合物を作製する。NF−AT蛋白質と標的分子との相
互作用の検出及び定量化によって、NF−AT蛋白質と標的分子との相互作用の
阻害又は強化における、化合物の効力を調べる方法が提供される。化合物の効力
は、様々な濃度の試験化合物を用いて得たデータから用量反応曲線を作製するこ
とによって評価することができる。その上更に、対照アッセイを行って比較用の
基線を提供することもできる。対照アッセイにおいて、NF−AT蛋白質と標的
分子との相互作用は、試験化合物の非存在下に定量化する。NF−AT蛋白質と
NF−AT結合パートナーとの相互作用は、様々な技術によって検出することが
できる。複合体形成の変調は、例えば検出可能に標識付けした蛋白質(放射性同
位元素標識付け、蛍光標識付け、又は酵素標識付けしたNF−AT蛋白質又はN
F−AT結合パートナー等)を用いて、又はクロマトグラフ検出によって定量化
することができる。
【0147】 一般に、NF−AT又はその結合パートナーのいずれかを固定化して、片方又
は両方の蛋白質で未複合形態のものから、複合体を分離し、アッセイを自動化す
るのが望ましい。NF−ATのNF−AT結合パートナーへの結合は反応物を含
むのに好適な容器であればどのようなものの中でも行うことができる。例として
は、マイクロタイタープレート、試験管、マイクロ遠心分離管が挙げられる。一
つの態様において、蛋白質が基質に結合することを可能にする領域を付加した、
融合蛋白質が提供される。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/N
F−AT(GST/NF−AT)融合蛋白質を、グルタチオンセファロースビー
ズ(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)又はグルタチオン変性マイクロ
タイタープレート上に吸収させ、NF−AT結合パートナー(例えば35S標識N
F−AT結合パートナー)及び試験化合物と合わせ、複合体形成に誘導する条件
下(例えば塩及びpHについて生理的条件、望ましくはやや緊縮な条件)で混合
物を培養することができる。培養に続いて、ビーズを洗浄して未結合の標識を除
去し、基質に固定化し、(例えば発光状態に置いて)直接又は複合体を解離した
のち上澄液中で、放射性同位元素標識を確認する。あるいは、複合体を基質から
解離し、SDS−PAGEで分離し、ビーズ画分中に見つかったNF−AT蛋白
質又はNF−AT結合パートナーのレベルを、標準的な電気泳動法(例えば付属
の実施例に記したもの)を用いてゲルから定量化することができる。
【0148】 蛋白質を基質上に固定化する他の方法も、主題のアッセイに用いることができ
る。例えば、NF−AT又はその同族結合パートナーのいずれかを、ビオチンと
ストレプトアビジンとの連結体を用いて固定化することができる。例えば、ビオ
チン化NF−AT分子を、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド
)から公知の方法(例えばビオチン化キット、Pierce Chemicals、イリノイ州ロ
ックフォード)で調製し、ストレプトアビジンで被覆した96ウェルプレート(
Pierce Chemical)のウェルに固定化することができる。あるいは、NF−AT
に反応する抗体を、プレートのウェルに固着させ、抗体との結合によってNF−
ATをウェルに捕える。上記したように、NF−AT結合蛋白質及び試験化合物
調製物を、NF−ATを呈示するプレートのウェル内で培養し、ウェルに捕えら
れた複合体の量を定量することができる。GST−固定化複合体について上記し
たものの他に、そのような複合体を検出する方法の例として、NF−AT結合パ
ートナーに反応する、又はNF−AT蛋白質に反応して結合パートナーと競合す
る抗体を用いた、複合体の免疫検出;内因性又は外因性の活性いずれかの、結合
パートナーに関連した酵素活性の検出に依存した酵素結合アッセイが挙げられる
。後者の場合、酵素を化学的連結することもできるし、あるいはNF−AT結合
パートナーとの融合蛋白質として提供することもできる。例証のために、NF−
AT結合パートナーを化学的に架橋させるか又はセイヨウワサビペルオキシダー
ゼに遺伝子工学的に融合させ、複合体に捕えられたポリペプチドの量を、酵素の
色素基質(例えば3,3'−ジアミノ−ベンザジンテトラヒドロクロリド又は4
−クロロ−1−ナフトール)を用いて評価することができる。同様に、ポリペプ
チド及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼを包含する融合蛋白質を提供す
ることができ、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンを用いてGST活性を検
出することによって複合体形成を定量化することができる(Habig他(1974
)J Biol Chem249:7130)。
【0149】 複合体に捕えられた1以上の蛋白質の定量化に免疫検出を用いている方法では
、蛋白質に対する抗体(抗NF−AT抗体など)を用いることができる。あるい
は、複合体中に検出できる蛋白質は、NF−AT配列の他に、抗体を容易に用意
する(例えば市販のものを用いる)ことのできる第二のポリペプチドを含む、融
合蛋白質の形態で「エピトープ標識付け」することができる。例えば,上記した
GST融合蛋白質は、GST基に対する抗体を用いる結合の定量化に用いること
ができる。他に有用なエピトープ標識は、c−mycからの10残基配列を含む
myc−エピトープ(例えばEllison他(1991)J Biol Chem266:211
50−21157参照)、pFLAGシステム(International Biotechnologie
s, Inc.)、又はpEZZ−蛋白質Aシステム(Pharmacia、ニュージャージー州
)が挙げられる。
【0150】 分子間、特にNF−ATとNF−AT結合パートナーとの相互作用は、光学的
現象である表面プラズモン共鳴(SPR)を検出するリアルタイムBIA(生体
分子相互作用分析、Pharmacia Biosensor AB)によって同定することができる。
検出は、生物学的に特異な界面における巨大分子の質量濃度における変化に依存
しており、相互作用体の標識を必要としない。一つの態様においては、試験化合
物のライブラリーを、例えば微小流動細胞の壁の一つを形成する、センサー表面
上に固定化することができる。次いで、NF−AT蛋白質、その機能的断片、N
F−AT類似体又はNF−AT結合パートナーを含む溶液を、センサー表面上に
連続的に流す。シグナルを記録する際に共鳴角度に変化があった場合、相互作用
が起きたことを意味する(この技術の更なる記述については、例えばPharmacia
のBIA技術マニュアル参照)。
【0151】 上記したスクリーニングアッセイは、一般に以下のように行うことができる。
構成要素の一つはNF−AT又はその部分であり、他の構成要素はNF−AT結
合パートナーと称する、例えばNF−AT分子又はその部分、キナーゼ、又はカ
ルシニューリンなどのホスファターゼである。従って、本発明の例証的なスクリ
ーニングアッセイは、(a)(i)NF−ATポリペプチド、(ii)NF−A
T結合パートナー、及び(iii)試験化合物を含む反応混合物を作製し;そし
て(b)NF−ATとNF−AT結合蛋白質との相互作用を検出する段階を包含
する。反応混合物は、細胞を含まない蛋白質調製物、例えば再構成蛋白質混合物
又は細胞溶解物であってもよいし、組換え技術によってNF−AT蛋白質を発現
する、異種核酸を含む組換え細胞であってもよい。例えば本明細書に記載したよ
うに、NF−ATポリペプチド及びNF−AT結合パートナーを、組換え技術に
よって作製してもよいし、例えば細胞抽出物などから精製してもよいし、化学的
に合成してもよい。試験化合物が存在しない場合のNF−ATとNF−AT結合
蛋白質との相互作用に比較して、試験化合物の存在下での相互作用における統計
上の有意な変化(増加又は阻害)は、試験化合物にNF−AT対生物活性のアゴ
ニスト(模倣体又は相乗因子)又はアンタゴニスト(阻害剤)の潜在能力がある
ことを示している。このアッセイの試験化合物は、同時に接触させることができ
る。あるいは、NF−AT蛋白質をまず試験化合物に適当な時間接触させ、次い
でNF−AT結合パートナーを反応混合物に添加することもできる。化合物の効
力は、様々な濃度の試験化合物を用いて得たデータから用量反応曲線を作製する
ことによって評価することができる。その上更に、対照アッセイを行って比較用
の基線を提供することもできる。対照アッセイにおいては、NF−AT結合パー
トナー又はNF−ATポリペプチドを含む組成物に、単離及び精製されたNF−
ATポリペプチド又は結合パートナーを添加し、複合体の形成を試験化合物の非
存在下に定量化する。
【0152】 本発明は更に、NF−AT分子のリン酸化又は脱リン酸化を変調する化合物を
同定するスクリーニングアッセイを提供する。この点において、NF−ATアン
タゴニストは、少なくとも心臓肥大の処置に関して、NF−AT蛋白質の脱リン
酸化を阻害する又はリン酸化を強化する剤である。アッセイのある態様において
は、NF−ATポリペプチドのリン酸化における変化を直接検出するのが望まし
いこともある。
【0153】 一つの態様において、アッセイは生体外アッセイである。一つの態様において
、アッセイは、非リン酸化又は部分リン酸化したNF−ATポリペプチドを、細
胞抽出物あるいは1以上の精製キナーゼ(GSK−3、PKA等)、及び(リン
酸塩源を含み、試験化合物を含む又は含まない)生体外キナーゼアッセイに必要
な他の構成物質に、NF−ATのリン酸化が起こる条件下で接触させることを包
含する。試験化合物の存在下又及び非存在下におけるNF−ATのリン酸化状態
を比較することによって、試験化合物がNF−ATのリン酸化を減少させた(阻
害した)か、あるいは増加させた(誘導した)かが示される。キナーゼアッセイ
及び細胞抽出物の調製は、実施例に記載するように行うことができる。キナーゼ
アッセイの前にNF−ATポリペプチドを部分的にリン酸化するには、例えば非
リン酸化NF−ATをPKAと共に予め培養する。PKAでリン酸化したNF−
ATは、GSK−3によるリン酸化を阻害する化合物を同定するアッセイの構成
物質として用いることができる。というのは、GSK−3はPKAによってリン
酸化されたペプチドをリン酸化するからである。非リン酸化又は部分リン酸化N
F−ATを、活性化した例えば核NF−ATを含む細胞から得ることもできる。
従って、本発明に用いるNF−AT基質は、活性化したT細胞の核抽出物から得
る又は核抽出物に存在する。
【0154】 他の態様において、キナーゼアッセイは生体内キナーゼアッセイである。アッ
セイは、非リン酸化又は部分リン酸化NF−ATを発現する細胞(例えば活性化
T細胞)を、試験化合物と共に培養し、試験化合物の存在下及び非存在下におけ
るNF−ATのリン酸化状態を比較することを包含する。異なったリン酸化状態
が存在することは、試験化合物がNF−ATのリン酸化を変調できることを意味
する。NF−ATのリン酸化状態は、例えば(放射性同位元素などで)標識付け
したリン酸塩(例えばATP)の存在下に細胞を培養し、NF−ATに特異な抗
体を用いた免疫沈降に存在する標識の量を測定することによって、調べることが
できる。あるいは、リン酸化の状態は、ウェスタンブロット分析で、場合によっ
ては免疫沈降を組み合わせて、調べることができる。
【0155】 他の態様において、本発明はNF−ATの脱リン酸化を変調する化合物、例え
ばNF−AT蛋白質のカルシニューリン媒介脱リン酸化の阻害剤を同定するスク
リーニングアッセイを提供する。一つの態様において、アッセイはリン酸化NF
−ATポリペプチドを、細胞抽出物又は1以上のホスファターゼ(例えばカルシ
ニューリン)並びに試験化合物と共に、NF−ATポリペプチドがホスファター
ゼの触媒作用を受ける条件下で培養することを包含する。NF−ATはPKA及
び場合によってはさらにGSK−3で、生体外でリン酸化することができ、NF
−ATは細胞抽出物でリン酸化することができる。NF−ATは、細胞抽出物か
ら単離するまたは細胞抽出物中に存在させることもできる。試験化合物の存在下
及び非存在下におけるホスファターゼ反応ののち、NF−ATのリン酸化状態を
比較することで、試験化合物がNF−ATのリン酸化を変調できるかどうかがわ
かる。試験化合物の非存在下でのリン酸化に比べて、より高いリン酸化NF−A
Tレベルが試験化合物の存在下で示されたということは、化合物がNF−AT脱
リン酸化の阻害剤であることを意味する。より低いレベルが示された場合には、
試験化合物は脱リン酸化の誘導剤であることを意味する。NF−ATのリン酸化
状態は、上記したように調べることができる。
【0156】 更に他の態様において、薬剤スクリーニングアッセイがNF−AT蛋白質を発
現する細胞全体を含むように企図することができる。試験剤に、NF−AT蛋白
質の活性を変える能力があるかどうかは、組換え細胞の分析によって検出するこ
とができる。例えば、NF−AT蛋白質の生物学的活性のアゴニスト及びアンタ
ゴニストは、細胞の肥大における変化を評価することによって検出することがで
きる。そのような変化を検出する一般的な方法は公知のものであり、さらにここ
に詳述する。細胞を用いるアッセイにおいて、組み換え細胞は好ましくは哺乳動
物細胞、例えばヒト細胞である。好ましい態様において、細胞は筋肉細胞、最も
好ましくは筋細胞である。
【0157】 形態の研究に加えて、NF−AT蛋白質依存性活性に応答する、細胞内の第二
のメッセンジャーレベルにおける変化を、検出することができる。例えば、様々
な態様にあって、NF−ATのリン酸化パターンにおいて又は転写をNF−AT
に依存する遺伝子の発現において変化を引き起こす能力が、試験剤にあるかどう
かを、アッセイによって評価することができる。細胞内シグナルにおける変化、
例えば第二のメッセンジャーにおける又は遺伝子発現における変化を検出するこ
とによって、NF−AT蛋白質依存性シグナリングのアゴニスト及びアンタゴニ
スト候補を、同定することができる。
【0158】 標的遺伝子、例えばNF−AT依存性転写制御要素を有する遺伝子のアップレ
ギュレーション又はダウンレギュレーションに応答する標的遺伝子から、転写調
節配列を選択し、場合によってはさらにそのようなプロモーターをレポーター遺
伝子に連結することによって、本発明は、NF−AT蛋白質に依存するシグナリ
ング回路に影響を与える特異な試験化合物の能力に敏感な、転写に基づくアッセ
イを提供する。
【0159】 例証的な態様にあっては、主題のアッセイは、細胞を用いるアッセイで、NF
−AT蛋白質によるシグナリングに反応する転写調節配列によって制御される遺
伝子の発現レベルにおける変化を検出することを包含する。本発明の、レポータ
ー遺伝子に基づくアッセイにより、上記した事象(例えば転写調節)のカスケー
ドの最終段階を測定する。従って、アッセイの一つの実施態様において、NF−
AT蛋白質によるシグナリングに依存する検出シグナルを得るために、レポータ
ー遺伝子構造体を試薬細胞内に挿入する。従ってレポーター遺伝子の発現は、N
F−AT蛋白質依存性シグナリングのアゴニスト又はアンタゴニストとして作用
する化合物の開発用の、貴重なスクリーニング手段を提供する。
【0160】 アッセイの一つの実施態様において、NF−AT蛋白質により産生される第二
のメッセンジャーに依存する検出シグナルを得るために、レポーター遺伝子構造
体を試薬細胞内に挿入する。一般に、レポーター遺伝子構造体は、NF−AT蛋
白質からのシグナルトランスダクションに応答する1個以上の転写調節要素に、
操作可能に連結したレポーター遺伝子を含む。ここではレポーター遺伝子の発現
レベルが検出シグナルを提供する。レポーター遺伝子からの転写量は、当業者に
好適であるとされるものであればどのような方法を用いても測定することができ
る。例えば、レポーター遺伝子からのmRNA発現は、リボヌクレアーゼ保護又
はRNAに基づくPCRを用いて検出することができるし、或いはレポーター遺
伝子の蛋白質産物を、特徴的な染色又は内因性活性によって同定することができ
る。次いでレポーター遺伝子の発現量を、試験化合物の非存在下においた同じ細
胞と比較するか、或いは標的受容体蛋白質を欠く実質的に同一の細胞における転
写量と比較することができる。転写量の統計的な或いは有意な差は、試験化合物
がNF−AT蛋白質の誘導活性を何らかの方法で変化させたことを意味する。
【0161】 下に詳述するように、好ましい態様において、レポーターの遺伝子産物を、産
物に関連した内因性活性によって検出することができる。例えば、レポーター遺
伝子は、酵素活性によって(色、蛍光、発光に基づく)検出シグナルを発生する
遺伝子産物をコードすることができる。他の好ましい態様においては、レポータ
ー又は標識遺伝子は、選択的な成長における利点を提供する。例えばレポーター
遺伝子は細胞の生存力を強化し、細胞の必須栄養条件を緩和し、及び/又は薬剤
への耐性を与える。多くのレポーター遺伝子が当業者に公知であり、他のレポー
ター遺伝子も、当業者に同定及び合成が可能である。レポーター遺伝子は、検出
可能な遺伝子産物(RNA又は蛋白質など)を発現する遺伝子であればどのよう
なものでも含まれる。
【0162】 好ましいレポーター遺伝子は、容易に検出できるものである。レポーター遺伝
子は、望ましい転写調節配列を含む又は他の望ましい性質を示す遺伝子と融合し
た遺伝子の形態をとる構造体に含まれても良い。レポーター遺伝子の例としては
、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)(Alton及びVap
nek(1979)Nature282:864−869)ルシフェラーゼ、及び他の酵
素検出システム、例えばβ−ガラクトシダーゼ;ホタルルシフェラーゼ(deWet
他(1987)Mol.Cell.Biol.7:725−737);バクテリアルシフェラー
ゼ(Engebrecht及びSilverman(1984)PNAS1:4154−4158;Baldw
in他(1984)Biochemistry23:3663−3667);アルカリホスファ
ターゼ(Toh他(1989)Eur.J.Biochem.182:231−238、Hall他(
1983)J.Mol.Appl.Gen.2:101)、ヒト胎盤分泌アルカリホスファター
ゼ(Cullen及びMalim(1992)Methods in Enzymol.216:362−368
)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0163】 薬剤スクリーニングの更に他の態様において、複合体アッセイをNF−AT蛋
白質及び標的分子で作製することができる。薬剤に依存する、相互作用の阻害又
は強化が評価される。当分野で知られる複合体アッセイのフォーマットを、その
ような薬剤スクリーニングの態様に容易に適応させることができる(例えば米国
特許第5,283,317号、第5,580,736号及び第5,695,941号;
Zervos他(1993)Cell72:223−232;Madura他(1993)J Biol
Chem268:12046−12054;Bartel他(1993)Biotechniques1
4:920−924;及びIwabuchi他(1993)Oncogene8:1693−16
96参照)。
【0164】 NF−ATの脱リン酸化を変調する化合物は、細胞を用いるアッセイにおいて
も同定することができる。例えば、リン酸化NF−ATを含む細胞を、試験化合
物の存在下又は非存在下に培養し、NF−ATのリン酸化を上記したように調べ
る。例えば、化合物の有するNF−ATのリン酸化/脱リン酸化を変調する能力
を、リン酸化した残基に対する抗体を用いるコロニー免疫ブロット法(Lyons及
びNelson(1984)PNAS81:7426−7430)でスクリーニングするこ
とができる。その様なアッセイに用いる試薬は、本明細書に詳述する。
【0165】 更に他の態様において、本発明は、NF−ATの核への移動を変調する化合物
を同定する、細胞を用いるスクリーニングアッセイにして、試験化合物の存在下
又は非存在下に細胞を培養又は処理し、細胞中のNF−ATの移行、すなわちN
F−ATが細胞の細胞質及び/又は核に存在するかどうかを調べることを包含す
るアッセイを提供する。一つの態様において、細胞質にNF−ATを含む細胞(
例えば静止T細胞又はJurkat細胞)を、試験化合物と共に培養し、NF−ATの
細胞移行を調べる。核内にNF−ATが存在する場合、試験化合物が細胞質から
核へのNF−ATの移動を誘導することを意味する。他の態様においては、細胞
質にNF−ATを含む細胞を、試験化合物及び、NF−AT活性化剤すなわち核
への移動の誘導剤の存在下に培養し、NF−ATの細胞移行を調べる。試験化合
物で処理しなかった細胞に比較して試験化合物と培養した細胞の細胞質中により
多くのNF−ATが移行している場合には、試験化合物は細胞質から核へのNF
−ATの移動を阻害し、すなわち試験化合物はNF−AT阻害剤である。或いは
、試験化合物と培養しなかった細胞に比較して試験化合物と共に培養した細胞の
核内により多くのNF−ATが存在する場合には、試験化合物はNF−ATの誘
導剤又は活性化剤である。
【0166】 本発明は更に、NF−ATの活性を変調する化合物を同定するスクリーニング
アッセイを提供する。スクリーニングアッセイは生体内又は生体外で行うことが
でき、細胞を用いるフォーマット又は細胞を用いないフォーマットのいずれでも
行うことができる。好ましい態様においては、アッセイは核膜を通じるNF−A
Tの移動を変調する化合物の同定を可能にする。より好ましい態様においては、
スクリーニングアッセイは、NF−AT NLSを、NF−AT分子又はNLS
の結合に充分なその部分、及び試験化合物又は試験化合物のライブラリーに接触
することを包含する。一つの態様においては、NLSはアミノ酸配列CNKRKYSLN
(配列番号53)(N末端NLS)を包含する。他の態様においては、NLSは
アミノ酸配列GKRKK/R(配列番号67)(C末端NLS)を包含する。スクリー
ニングアッセイの他の構成要素としては、NF−AT分子のSRR、SP1、S
P2及び/又はSP3を包含するペプチドなどが挙げられる。好ましい態様にお
いては、スクリーニングアッセイは、リン酸化された、N末端NLS及びSRR
領域を包含するペプチドを包含する。 他の態様においては、スクリーニングアッセイは、リン酸化された、C末端N
LS及びSP1、SP2及び/又はSP3領域を包含するペプチドを包含する。
【0167】 スクリーニングアッセイの他の態様においては、アッセイの一つの構成要素は
、NF−ATポリペプチド又はカルシニューリンの結合に充分なその部分であり
、他の構成要素はカルシニューリン又はNF−ATの結合に充分なその部分であ
る。NF−ATの部分は、N末端部分、例えば配列番号38のアミノ酸1−41
8であってもよい。従って、一つの態様にあっては、スクリーニングアッセイは
、試験化合物の存在下でNF−ATポリペプチドが相互作用できる条件下で、N
F−ATポリペプチドをカルシニューリン及び試験化合物に接触させることを包
含する。試験化合物の存在下及び非存在下におけるアッセイの2個の構成要素の
結合を比較することで、試験化合物がNF−ATとカルシニューリンとの相互作
用を阻害したか、あるいは誘導したかを調べることができる。
【0168】 他の態様においては、スクリーニングアッセイは核NF−ATを含む細胞(例
えばイオノマイシンで処理したT細胞などの、活性化T細胞)を培養し、試験化
合物に接触させ、NF−AT細胞移行を調べることを包含する。試験化合物で処
理しなかった細胞に比較して、試験化合物で処理した細胞の核内により多くのN
F−ATが移行する場合には、試験化合物は、NF−ATを活性状態すなわち核
内に保持することのできる化合物である。試験化合物で処理しなかった細胞に比
較して、試験化合物で処理した細胞の細胞質内により多くのNF−ATが移行す
る場合には、試験化合物は、NF−ATを失活させることのできる、すなわち細
胞質への移動を誘導することのできる化合物である。
【0169】 NF−AT分子の細胞移行を、例えばNF−ATと特異的に相互作用する抗体
又は他の剤を用いて、細胞内への移行を検出することによって調べることができ
る。例えば、実施例に記載するように、NF−ATは免疫蛍光法によって検出す
ることができる。他の態様においては、検出可能な標識に融合したNF−ATポ
リペプチドをコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることができる。例え
ば、myc標識に融合したNF−ATポリペプチドを発現するように細胞を作製
することができ、myc標識に特異的に結合する抗体でNF−AT融合ポリペプ
チドを検出することができる。
【0170】 細胞の肥大状態を変調することのできる他の剤としては、NF−AT蛋白質の
DNA結合部位の結合に競合する核酸、例えば「デコイ」核酸が挙げられる。好
ましい核酸は、NF−ATのDNA結合部位を包含する。これらの剤は、1個の
NF−ATポリペプチドのみの結合を阻害することもできるし、或いは様々なN
F−AT族のほとんど又は全てのDNA結合部位への結合を阻害するように企図
することもできる。
【0171】 上記した薬剤スクリーニングアッセイなどによって同定することのできる小分
子に加えて、細胞の肥大を変調することのできる他の剤としては、NF−AT蛋
白質のペプチド領域(断片)、分子調節体の突然変異体が挙げられる。ここでい
う「突然変異体」とは、天然に産するペプチド又は蛋白質とは少なくとも1個の
アミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するペプチドのことをいう。突然変異体は、
天然に産する蛋白質と同じ生物学的及び免疫学的活性を有していても良い。しか
し、突然変異体の生物学的又は免疫学的活性は、異なる又は欠損していても良い
。例えば、蛋白質突然変異体は、天然に産する蛋白質の機能のアゴニスト、アン
タゴニスト(競合的又は非競合的)、又は部分的アゴニストとして作用すること
ができる。
【0172】 例えば、NF−AT蛋白質の同族体(アゴニスト及びアンタゴニストの両形態
)を、アラニンスキャニング突然変異誘発(Ruf他(1994)Biochemistry3
3:1565−1572;Wang他(1994)J. Biol. Chem.269:3095
−3099;Balint他(1993)Gene137:109−118;Grodberg他(
1993)Eur.J.Biochem.218:597−601;Nagashima他(1993)J
. Biol. Chem.268:2888−2892;Lowman他(1991)Biochemistr
y30:10832−10838;及びCunningham他(1989)Science244
:1081−1085);リンカースキャニング突然変異誘発(Gustin他(19
93)Virology193:653−660;Brown他(1992)Mol.Cell Biol.
12:2644−2652;McKnight他(1982)Science232:316)
;飽和突然変異誘発(Meyers他(1986)Science232:613);PCR
突然変異誘発(Leung他(1989)Method Cell Mol Biol1:11−19);
又はランダム突然変異誘発(Miller他(1992)A Short Course in Bacteria
l Genetics、CSHL Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク;及びGreener他
(1994)Strategies in Mol Biol7:32−34)などを用いて作製するこ
とができる。リンカースキャニング突然変異誘発は、特に組み合わせて用いられ
る場合には、末端切断した(例えば構成的に活性な又は優性陰性の)NF−AT
蛋白質を同定する、有効な好ましい方法である。
【0173】 本発明は更に、主題のNF−AT蛋白質を変形して、肥大状態の細胞(例えば
筋細胞)で基準のNF−AT蛋白質の効果に干渉しあるいは模倣する、模倣体(
例えばペプチド又は非ペプチド剤)を作製することを企図する。そのようなペプ
チド模倣体は、細胞肥大を変調する薬剤として作用することができる。
【0174】 ペプチド模倣体は一般に製薬業界では、模擬ペプチドに類似した特性を有す得
る非ペプチド薬剤を含むものとして理解されている。ペプチド模倣体の構造の原
理及び使用は、公知のものである(例えばFauchere、Adv.Drug Res.15:29
(1986);及びEvans他、J.Med.Chem.30:1229(1987)参照)。
治療上有用なペプチドに構造上の類似性を有するペプチド模倣体を用いて、同等
の治療効果又は予防効果を得ることができる。一般に、そのようなペプチド模倣
体は、1個以上のペプチド結合を有するが、その結合は場合によっては望ましい
特性(生体内での化学的切断に対する耐性)を与える結合に置換されても良い。
このような結合の例としては、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2
、−CH=CH−、−COCH2−、−CH(OH)CH2−及び−CH2SO−
が挙げられる。ペプチド模倣体は、強化した薬理学的特性(生物学的半減期、吸
収速度など)、様々な特異性、増加した安定性、生産コストの低減、抗原性の低
下、などの治療用として特に望ましい利点を有することができる。
【0175】 上記したような突然変異誘発方法は、蛋白質−蛋白質相互作用に関与する(例
えばロイシンジッパー含有蛋白質への結合に関与する)NF−AT蛋白質の決定
子の地図作製に特に有用である。例えば、他の細胞蛋白質(又は核酸)の分子認
識に不可欠なNF−AT蛋白質の残基を決定し、結合活性の少なくとも一部を保
持するペプチド模倣体の作製に用いることができる。例えば、結合に関与するア
ミノ酸残基の地図作製にスキャニング突然変異誘発を用いることによって、キナ
ーゼとの結合に際してそれらの残基を模倣するペプチド模倣体化合物(例えばジ
アゼピン又はイソキノリン誘導体)を作製することができる。例えば、そのよう
な残基の、非ハイブリダイズ性ペプチド類似体を、ベンゾジアゼピン(例えばFr
eidinger他、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publi
sher:オランダ国ライデン、1988中の記事参照)、アゼピン(例えばHuffma
n他、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:
オランダ国ライデン、1988中の記事参照)、置換γラクタム環(Garvey他、 Peptides:Chemistry and Biology 、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:オラン
ダ国ライデン、1988中の記事)、ケト−メチレン擬似ペプチド(Ewenson他
(1986)J.Med.Chem.29:295;及びEwenson他、Peptides:Structure
and Function中の記事(第9回アメリカペプチドシンポジウムの議事録)Pierce
Chemical Co.、イリノイ州ロックランド、1985)、β回転ジペプチドコア
(Nagai他(1985)Tetrahedron Lett26:647;及びSato他(1986
J Chem Soc Perkin Trans1:1231)、及びβ−アミノアルコール(Gordo
n他(1985)Biochem Biophys Res Commun126:419;及びDann他(1
986)Biochem Biophys Res Commun134:71)を用いて作製することがで
きる。
【0176】 NF−ATcポリペプチド、特にNF−AT複合体に直接接触する部分を、N
F−AT変調剤(例えば抗新生物剤及び免疫調節剤)候補の合理的な薬剤設計に
用いることができる。実質的に精製されたNF−ATc、NF−ATcの(例え
ばAP−1及びDNAとの)細胞間関係の形成能の同定、並びに細胞間関係の形
成によって、実質的に純粋なNF−ATポリペプチド複合体及びコンピューター
上のモデルを得て、蛋白質X線結晶学又は例えばDOCKプログラム(Kuntz他(
1982)J.Mol.Biol.161:269;Kuntz ID(1992)Science257:
1078)及びその変異体といった、他の構造分析法に用いることができる。潜
在的な治療薬剤はそうして提供される構造情報に基づいて合理的に設計すること
ができる。一つの態様においては、その様な薬剤を、NF−ATcポリペプチド
:AP−1ポリペプチド複合体の形成を回避するように設計することができる。
他の態様においては、そのような薬剤を、NF−ATにおける分子内相互作用を
回避するように設計することができる。従って、本発明はNF−ATcが結合し
てNF−AT複合体を形成するのを阻害する能力を有する薬剤を含む薬剤の設計
に用いることができる。
【0177】 心臓肥大モデル 上記した方法により同定される化合物を、、心臓肥大などの治療剤として更に
評価することができる。用いる心臓肥大モデルの数に制限はない。心臓肥大誘導
の方法には、様々な体液要因、例えばアンギオテンシンII、フェニレフリン(
PE)、及びエンドセリン−1(ET−1)(Karliner他(1990)Experien tia 46:81、Sadoshima他(1993)Circ.Res.73:424、Leite他(1
994)Am.J.Physiol.267:H2193)を用いる。心臓肥大を誘導すること
のできる化合物又はポリペプチド又はポリペプチドをコードする遺伝子を、それ
ぞれここで「肥大誘導」化合物、ポリペプチド、又は遺伝子と称する。内皮細胞
中で産生されることが知られるエンドセリン−1は、生体外で心筋細胞の肥大を
誘導することが幾つかの研究によって示されている( Shubeita他(1990)J .Biol.Chem. 、265:20555−20562;Ito他(1991)Circ Res
9:209−215;Suzuki他(1991)J.Cardiovasc.Pharmacol.17Suppl
7:S182−S186;及び米国特許第5,344,644号参照)。さらに他
の肥大誘導因子はLIFである(米国特許第5837241号)。
【0178】 筋細胞肥大、例えば心室筋細胞肥大の存在を検出する、生体外及び生体内の方
法が知られている。筋細胞肥大の生体外アッセイには、心房ナトリウム排泄昂進
因子(ANF)における細胞サイズの増加及び発現の増加といった、本発明に開
示の方法が挙げられる。細胞サイズの変化が肥大の程度を決定する評価システム
に用いられている。これらの変化は、逆相顕微鏡によって観察することができ、
肥大の程度を0〜7の任意のスケール(7=充分に肥大した細胞、3=非誘導細
胞)で評価できる。3及び7の状態は、Simpson他(1982)Circulation Res
.51:787−801の図2A及びBそれぞれにみられる。肥大評価値と細胞
表面積(μm2)との関係を、線形になるように決定した(相関係数=0.99
)。フェニレフリン誘導肥大において, 接触させなかった(正常)細胞は肥大値
が3、表面積/細胞が581mu m2であり、充分に肥大した細胞は肥大値が
7、表面積/細胞が1811mu m2あるいは正常細胞の約200%である。
肥大値4の細胞は、表面積/細胞が771μm2であり、非接触細胞より約30
%大きい。肥大値5の細胞は、表面積/細胞が1109μm2あるいは非接触細
胞より約90%大きい。肥大値6の細胞は、表面積/細胞が1366μm2又は
非接触細胞より約135%大きい。心室筋細胞肥大の存在は、好ましくは約15
%(肥大値3.5)以上大きさの増加した細胞を含む。上記のアッセイによって
評価される最大肥大応答を誘導する能力は、肥大誘導剤によって異なる。例えば
、エンドセリンによって誘導される細胞の寸法における最大の増加は、肥大値に
して約5である。
【0179】 肥大アッセイを、以下のように行うことができる。まず、筋細胞懸濁液を調製
する(Chien他(1985)J.Clin.Invest75:1770−1780及びIwaki
他、上述参照)。1−2日Sprague−Dawleyラットの心臓から、心室を除去して
三等分する。刻んだ心室を、一連のコラゲナーゼ処理で消化する。得られる単一
細胞懸濁液を、不連続パーコール勾配によって精製した結果、純度95%の筋細
胞の懸濁液が得られる。
【0180】 次いで、筋細胞をLong他、上述の方法で培養する。この方法は、細胞懸濁液を
MEM/5%ウシ血清中に30分、予め培養することを含む。次いで、インシュ
リン、トランスフェリン、BrdU及びウシ血清アルブミンを補った血清非含有
MEMを含む35mm組織培養皿に7.5×104細胞/mLの密度で、未固着の
筋細胞を培養する。筋細胞の培養は、D−MEM/199/5%ウマ血清/5%
胎児ウシ血清を含む10cm組織培養皿に3×105細胞/mLで培養すること
もできる。24時間培養したのち細胞を洗浄して血清非含有D−MEM/199
で培養する。
【0181】 筋細胞を培養し、小型化アッセイで試験容量増加させる方法は、以下の通りで
ある。96ウェル組織培養プレートのウェルをD−MEM/F12/4%胎児ウ
シ血清を用いて37℃で8時間被覆する。この培養基を除去し、インシュリン、
トランスフェリン及びアプロチニンを補ったD−MEM/F−12中に7.5×
104細胞/mLの割合で細胞を懸濁した液を内側の60ウェルに入れる。培養
基は一般に、ペニシリン/ストレプトマイシン等の抗生物質及びグルタミンを含
んでいる。この培養基を用いることによって、この低い培養密度で、血清なしに
細胞が生存することができる。細胞を24時間培養したのち、例えばNF−AT
アンタゴニスト等の試験物質を直接ウェルに添加する。
【0182】 αアドレナリン性アゴニスト又はエンドセリンで誘導した後、培養基中の新生
ラット心筋細胞は、鬱血生心不全に見られる生体内心筋細胞肥大の幾つかの特徴
(細胞の寸法が増加する、個々の収縮性蛋白質が集合して組織的な収縮ユニット
になる量が増加するなど)を顕わす(Chien他、FASEB J.、上述)。これらの変
化は逆相顕微鏡によって観察することができ、肥大の程度を0〜7の任意のスケ
ール(7=充分に肥大した細胞、3=非誘導細胞)で評価できる。3及び7の状
態は、Simpson他(1982)Circulation Research51:787−801にみ
られる。96ウェル培養の顕微鏡での読み出しを用意にし、恒久的な記録を作成
するために、筋細胞を固定し、適当な試験期間の後、クリスタルバイオレットを
含むメタノール中で染色する。クリスタルバイオレットは、培養している細胞の
染色に一般的に用いられている蛋白質である。加えて、96ウェルプレートから
アリコートを得て、ANF又はANPの放出などの応答といった、蛋白質標識の
発現をモニターすることができる(例えば米国特許第5534615号参照)。
【0183】 高い細胞密度において、筋細胞は自己誘導肥大を開始することもある。 従って、一つの態様において、肥大を阻害するNF−ATアンタゴニストをス
クリーニングする方法は、以下の段階を包含する。 (a)少なくともインシュリン、トランスフェリン及びアプロチニンを補ったD
−めM/F−12培養基中に、約7.5×104細胞/mLの細胞密度で筋細胞を
懸濁した液を96ウェルプレートに入れ; (b)肥大誘導因子(例えばLIF又はエンドセリン)の存在下で細胞を培養し
; (c)検定する試験物質(NF−ATアンタゴニスト)を添加し; (d)細胞を試験物質と培養し;そして (e)肥大を測定する。 培養基は、細胞の生存力を強化する、EGF等の更なる要素を補うことができ
るが、そのような要素は必須ではない。D−MEM/F−12培養基はGibco BR
L(メリーランド州ゲーサーズバーグ)から入手することができる。
【0184】 好ましい肥大アッセイは、 (a)96ウェル組織培養プレートのウェルを、子ウシ血清を含む培養基、好ま
しくは4%胎児ウシ血清を含むD−MEM/F−12培養基で予め被覆し(ここ
で好ましくはウェルは培養基を用いて約37℃で約8時間培養される); (b)培養基を除去し; (c)インシュリン、トランスフェリン及びアプロチニンを補ったD−MEM/
F−12培養基中に、約7.5×104細胞/mLの細胞密度で筋細胞を懸濁した
液を内側の60ウェルに入れ; (d)肥大誘導因子(例えばLIF又はエンドセリン)の存在下に筋細胞を少な
くとも2時間培養し; (e)試験物質を添加し; (f)試験物質と共に細胞を(好ましくは約24−72時間、より好ましくは約
48時間)培養し;そして (g)好ましくはクリスタルバイオレット染色の後に、例えば顕微鏡で観察する
ことによって肥大を調べる 段階を包含する。
【0185】 段階(c)で用いられる培養基は好ましくは、血清を含まないがペニシリン/
ストレプトマイシン(pen/strep)及びグルタミンを含む培養基である。最も好
ましくは、培養基は100mL D−MEM/F−12、100muLトランス
フェリン(10mg/mL)、20muLインシュリン(5mg/mL)、50
muLアプロチニン(2mg/mL)、1mL pen/strep(JRH Biosciences
No.59602−77P)、及び1mL L−グルタミン(200mM)を含有
する。
【0186】 1週間に1000個の試料を検定し、かつ100mu L未満の小さな試料量
しか必要としないので、現在実施されている方法をして不可能であった、発現ク
ローニング及び蛋白質精製が可能になった。
【0187】 肥大を検定する他の方法は、<125>I−ラットANPのラットANP受容
体A−IgG融合蛋白質への結合に対する競合を調べるアッセイによって放出さ
れる、筋細胞肥大のマーカーである心房ナトリウム排泄昂進ペプチド(ANP)
の測定を含む。使用に好適な方法は、CD4−IgG融合蛋白質を用いてGP1
30を決定する際に使用されている方法と同様である(Chamow他、Biochemistry
29:9885−9891(1990)参照)。筋細胞の培養、肥大誘導及びア
ッセイについては米国特許第5837241号に更なる記載がある。
【0188】 あるいは、心臓肥大を阻害する本発明の化合物は、NF−ATc活性を阻害す
る化合物のためのスクリーニングによって同定することができる。好ましくは化
合物は、NF−ATc4活性を阻害するが、NF−AT族の1種以上の蛋白質す
なわちNF−ATc1、NF−ATc2又はNF−ATc3及びそのスプライシ
ング変異体の活性を阻害しない。あるいは、本発明に用いられるアンタゴニスト
は、1個以上のNF−ATポリペプチドの活性を阻害するが、全ての活性を阻害
しない。例えば、本発明に用いられるアンタゴニストは、NF−ATc4及びN
F−ATc3アンタゴニストであるが、NF−ATc1又はNF−ATc2アン
タゴニストではない。ある種のNF−ATポリペプチドのみのアンタゴニストで
あるが、その他に対してはアンタゴニストではない化合物を、NF−AT族間の
違いに基づいて作製することができる。例えば、ある種のNF−ATポリペプチ
ドに対して特異的なアンタゴニストは、NF−ATポリペプチドと特異なDNA
結合配列との相互作用を阻害する化合物でありうる。NF−ATポリペプチドは
全てが同じNF−AT結合配列に結合するわけではないので、ある種のNF−A
Tポリペプチドに特異なアンタゴニストを作製することができる。あるいは、あ
る種のNF−ATポリペプチドに特異なアンタゴニストは、NF−AT配列にお
ける差異に基づく化合物でありうる。例えば、他のNF−ATポリペプチドの産
生を阻害せずにある種のNF−ATポリペプチドのみの産生を特異的に阻害する
のにアンチセンス化合物を用いることができる。同様に、他のNF−AT族に影
響を与えることなくある種のNF−AT族を選択的に破壊するように、リボザイ
ムを設計することができる。
【0189】 あるいは、全てのNF−AT族を阻害することのできる化合物を、これらの蛋
白質間及びそれらをコードする遺伝子間の有意な相同性に基づいて作製すること
もできる。 心臓肥大の阻止又は治療に用いることのできる剤は、動物モデル内でも同定す
ることができる。動物モデルとしては、心臓肥大を進行させたモデルや、本発明
のNF−ATノックアウトマウスと交雑した動物モデルを用いることができる。
【0190】 例証的な態様においては、動物モデルは構成的に活性なNF−AT経路を有す
るトランスジェニックマウスである。そのようなマウスには、構成性カルシニュ
ーリン又は構成性NF−AT、例えばNF−ATc4を有するものが挙げられる
(例えばOlsen他、Cell93:215(1998)参照)。これらのマウスは、
本発明のNF−ATc4ノックアウトマウスと交配させることができる。従って
、構成的に活性なNF−ATc4シグナリング回路を有し野生型のNF−ATc
4を発現するトランスジェニックマウスとは対照的に、構成的に活性なNF−A
Tc4回路を有するが、野生型NF−ATc4を発現しないマウスは心臓肥大を
進行させない。
【0191】 単独で例えばスクリーニングアッセイに用いることのできる他の動物モデルは
、あるいは他のモデルを得るためにNF−ATc4ノックアウトマウスと交雑で
きる動物モデルの例としては、ここに述べるような、肥大誘導遺伝子について遺
伝子を導入したマウスが挙げられる。心臓肥大の他の動物モデルの例としては、
肺動脈が狭窄して右心室不全になった圧負荷マウスモデルが挙げられる。心室機
能不全を有するレトロウィルス性マウスモデルを用いることもできる。他の動物
モデルの例としては、MLC−rasマウス及び大動脈絞扼のヘテロ接合型IG
F−I欠陥マウスが挙げられる。更に、筋アクチンプロモーター−IGF−I融
合遺伝子を有するトランスジェニックマウスは、筋疾患又は心不全の兆候をあら
わさずに心筋及び骨格筋の肥大を呈示する。IGF−I−遺伝子−標的マウスは
、心筋形成(及び骨格筋)の欠陥(例えば心室筋収縮性蛋白質遺伝子の発現の顕
著な低減)を呈示する。たの有用な動物モデルの例としては、RXRα突然変異
マウスモデル(Sucov他(1994)Genes Dev.8:1997−1018)及び
RXRα−/−胚モデル(Dyson他(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.(In Press
))が挙げられる。これらの遺伝子に基づく動物モデルは、心室異常形態発生の
重要な特徴を呈示する。
【0192】 NF−ATアンタゴニストは、後壁心筋梗塞ラットモデルにおいて試験するこ
ともできる。このモデルを用いてANFを産生するヒト鬱血性心不全を予測でき
る。そのようなラットを作成する手順の詳細については、米国特許第57671
55号を参照できる。以下簡単に述べると、オスSprague−Dawley(Charles Riv
er Breeding Laboratories, Inc.、生後8週間)の冠動脈を結紮することによっ
て心筋梗塞を作り出す(Greenen他(1987)J.Appl.Physiol.93:92−9
6及びButtrick他(1991)Am.J.Physiol.260:11473−11479
参照)。結紮の4〜6週間後、ラットの心筋梗塞は心不全へと進行する。梗塞の
進行は、心電図によってモニターすることができる。このモデルにおける鬱血性
心不全は、殆どのヒト患者における鬱血性心不全と酷似している。
【0193】 当業者は、上記したスクリーニングアッセイはいずれも、化合物のスクリーニ
ングライブラリーに用いられるように容易に適応させることが可能であると分か
るであろう。本発明のスクリーニングアッセイによって同定される化合物、それ
を包含する薬学的組成物及びキットも本発明の対象とするところである。
【0194】 他の特徴において本発明は、治療上有効量の上記した1種以上の化合物を包含
し、1種以上の薬学的に許容可能な担体(添加剤)及び/又は希釈剤と共に配合
する、薬学的に許容可能な組成物を提供する。下に詳述するように、本発明の薬
剤組成物は、下記に挙げる投与形態に適合した固体又は液体の形態で、特に配合
することができる。(1)経口投与、例えば水薬(水溶液又は非水溶液又は懸濁
液)、錠剤、巨丸剤、粉末、顆粒、舌に塗布するペースト;(2)非経口投与、
例えば無菌溶液又は懸濁液の形状での例えば皮下、筋肉内又は静脈内注射;(3
)局所的投与、例えばクリーム、軟膏又は皮膚に塗布するスプレーの形状;又は
(4)膣内又は直腸内、例えばペッサリー、クリーム又は泡の形状。
【0195】 ここでいう「治療上有効量」という表現は、本発明のペプチド又はペプチド模
倣体を包含する化合物、材料又は組成物について、医療処置として適用できる合
理的な利益/危険比で、望ましい治療効果が効果的に得られる量のことをいう。
ここでこの治療効果は、少なくとも動物の細胞の部分母集団においてNF−AT
依存性シグナリング回路を阻害し、処理をした細胞中でその回路の生物学的結果
を封鎖することによって得られる。
【0196】 ここでいう「薬学的に許容できる」という表現は、ヒト及び動物組織に、合理的
な利益/危険比に沿って過度の毒性、刺激、アレルギー応答又は他の問題又は合
併症を与えることなく接触して用いられると薬学上判断される、化合物、材料、
組成物及び/又は用量形態のことを参照していう。
【0197】 ここでいう「薬学的に許容可能な担体」とは、主題のペプチド模倣体の臓器又
は体の部分から他の臓器又は体の部分への運搬に関与する、液体又は固体充填剤
、希釈液、補形剤、溶液又はカプセル封入した材料などの、薬学的に許容可能な
材料、組成物又は賦形剤のことをいう。各担体は、配合中の他の成分と融和性を
有し、患者に害を与えないという意味において「許容可能」でなければならない
。薬学的に許容可能な担体として用いることのできる他の材料の例としては、(
1)ラクトース、グルコース及びサクロース等の糖類;(2)コーンスターチ及
びジャガイモでんぷん等のでんぷん;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロ
ース、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体;(
4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カ
カオ脂及び座薬蝋等の補形剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴ
マ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油等の油類;(10)プロピレン
グリコール等のグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトル
及びポリエチレングリコール等のポリオール類;(12)オレイン酸エチル及び
ラウリン酸エチル等のエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム
及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱因子を
含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアル
コール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)薬剤配合に用いられる他に非毒性
で融和性の物質、が挙げられる。
【0198】 J.本発明の例証的な使用 本発明は、細胞内のNF−ATの活性を変調する方法を提供する。一つの態様
においては、NF−ATの活性を他の分子、例えば蛋白質又は核酸との相互作用
によって変調する。特に、NF−ATの活性は、NF−ATcとAP−1又は他
の基本的領域/ロイシンジッパー蛋白質との相互作用を変調することによって変
調することができる。他の態様においては、NF−ATcとDNAとの相互作用
、すなわちNF−ATc結合部位を、変調することができる。
【0199】 好ましい態様において、本発明は核膜を通じるNF−ATの移動を変調する。
例えば、本発明のある種の方法は、細胞質から核へのNF−AT蛋白質の移動を
誘導又は阻害する。本発明の他の方法は、核から細胞質へのNF−AT分子の移
動を誘導又は阻害する。例えば、細胞の細胞質から核へのNF−ATの移動は、
少なくとも1個のNLSとNF−AT分子の他の部分との相互作用を阻害する化
合物を細胞内に導入し、よって少なくとも1個のNF−AT NLSの遮蔽を除
去することで誘導することができる。NLSと他のNF−AT蛋白質部分との相
互作用を阻害する化合物はペプチド、ペプチド模倣体、核酸又はその誘導体とい
った、小分子であってもよい。好ましい化合物はNF−AT分子の他の部分(1
個以上の繰返し単位、例えばSRR、SP1、SP2又はSP3など)と分子内
関係を形成することのできるNF−AT NLS、又はその同族体を包含するペ
プチド又はペプチド模倣体である。その様な化合物を更に、ここに記載する。他
に好ましい化合物は、その様なペプチドをコードする核酸である。従って、核酸
をNF−ATを発現する細胞中に導入し、細胞内で発現させる。他に好ましい態
様においては、化合物は、ここに記載するように小分子用スクリーニングライブ
ラリーによって単離することのできる小分子である。化合物は小さくて細胞質膜
を通過できるものが好ましい。
【0200】 他の態様において本発明は、核から細胞質へのNF−ATの移動を阻害し、よ
ってNF−AT依存性生物学的活性を阻害する方法を提供する。これは例えば少
なくとも1個のNLSとNF−AT分子の他の部分との分子内関係を安定させる
ことによって、達成することができる。本方法は、NLSと、SRR、SP1、
SP2及びSP3からなる群より選ばれる少なくとも一つのNF−AT部分との
相互作用を安定化する化合物を、細胞内に導入することを包含する。化合物はこ
こに記載されるように入手することのできる、小分子が好ましい。
【0201】 更に他の態様においては、本発明は細胞の核から細胞質へのNF−ATの移動
を誘導し、よってNF−AT依存性生物学的活性の活性化を阻害する方法を提供
する。これは、例えばNF−AT分子中の1個以上のNLSを遮蔽することによ
って、達成することができる。例証的な態様においては、細胞内のNF−AT分
子のNLS配列は、NLS配列に相互作用する化合物を細胞内に導入することに
よって遮蔽することができる。好ましい化合物は、ペプチド又はペプチド模倣体
、例えばNF−ATのSRR、SP1、SP2又はSP3配列からなる群より選
ばれるアミノ酸配列を包含するペプチドが挙げられる。好ましい態様において、
2個の化合物が1個の細胞内に導入される。すなわち、第一の化合物がNLS
KRK(配列番号38のアミノ酸265−267)に相互作用し、第二の化合物
がNLS KRKK/R(配列番号66)(配列番号38のアミノ酸682−6
85)に相互作用する。例えば、SRRのアミノ酸配列を包含するペプチド、及
びSP1、SP2及びSP3のうち少なくとも1個のアミノ酸配列を包含するペ
プチドを細胞に投与することができる。
【0202】 その上更に本発明は、細胞の核から細胞質へのNF−AT分子の移動を阻害し
、よってNF−AT依存性生物学的活性を保持又は延長させる方法を対象とする
。その様な方法は、核内にNF−AT分子を包含する細胞に、1個以上のNLS
が分子内関係を形成するのを妨げる化合物を導入することを包含することができ
る。これは、例えばNLSと相互作用することのできるNF−AT部分と相互作
用する化合物を細胞内に導入することによって達成することができる。例えば化
合物は、NF−AT分子の部分、例えばSRR、SP1、SP2及び/又はSP
3繰返し単位と結合することのできる、NLSペプチド又はその誘導体であって
もよい。NF−ATc族間の配列相同性に少なくとも基づいて、1個のペプチド
は少なくとも2個のNF−ATc族と相互作用することができる。この目的に用
いることのできる他の化合物の例としては、その様なペプチド及び小分子をコー
ドする核酸が挙げられる。
【0203】 NF−ATcポリペプチドの移動を変調する他の方法は、NF−ATcのリン
酸化、例えば配列番号38の約アミノ酸1から約アミノ酸418、より好ましく
は配列番号38の約アミノ酸170から約アミノ酸301の領域に位置するセリ
ンのリン酸化を変調することを包含する。より好ましくは本方法は、SRR、S
P1、SP2及び/又はSP3、及び/又はこれらの繰返し配列間に位置するセ
リンをリン酸化することを包含する。
【0204】 NF−ATcポリペプチドのリン酸化は、様々な方法によって変調することが
できる。一つの態様においては、NF−ATcをリン酸化するキナーゼ(例えば
PKA、GSK−3α及びGSK−3β)の活性を変調することでリン酸化を変
調することができる。活性をリン酸化できる他のキナーゼの例としては、JNK
−1又はJNK−2などのJNK(junキナーゼ)が挙げられる。キナーゼの
蛋白質レベルを変調することによっても、キナーゼの活性を変調することができ
る。例えば、キナーゼの活性の増加は、例えばキナーゼの転写を増加させて、キ
ナーゼの内生蛋白質レベルを増加させることによって達成することができる。或
いはキナーゼの活性は、例えばキナーゼをコードする核酸を導入して、キナーゼ
を細胞内に導入することによっても増加させることができる。実際に、ここに示
すように、T細胞内でのGSK−3の過剰な発現は、NF−ATの核への移動を
阻害し、NF−ATcの核外輸送を増加させた。細胞質から核へのNF−ATの
移動誘導は、例えばアンチセンス法を用いてキナーゼの転写又は翻訳を阻害して
、NF−ATcをリン酸化するキナーゼの活性を阻害することによって達成する
ことができる。キナーゼの活性は、キナーゼに結合することのできる、活性を阻
害する剤(例えばNF−ATペプチド)を細胞内に導入することによって阻害す
ることもできる。
【0205】 他の態様においては、例えばカルシニューリンなどのホスファターゼの活性化
を変調することによって、リン酸化を変調する。これは例えばカルシニューリン
が相互作用できるNF−ATペプチドに接触させて、リン酸化容量を変調するこ
とによって達成することができる。或いは、例えば発現を変調させることによっ
て、又は外生カルシニューリンを導入することによって、又はカルシニューリン
のmRNA翻訳を阻害するアンチセンス核酸を導入することによって、細胞内の
カルシニューリンのレベルを変調することができる。
【0206】 更に他の態様において本発明は、GSK−3等のグルカンシンターゼキナーゼ
によるNF−AT蛋白質のリン酸化、又はカルシニューリンなどのホスファター
ゼによるNF−ATの脱リン酸化のいずれかを阻害する化合物を提供する。この
点に関して、本適用法は、例えば特に重要な残基、NF−ATのGSK−3によ
るリン酸加速度を、試験化合物の存在下又は非存在下でモニターすることに基づ
く薬剤スクリーニングアッセイを提供する。同様に本適用法は、例えば特に重要
な残基、NF−ATのカルシニューリンによる脱リン酸加速度を、試験化合物の
存在下又は非存在下でモニターすることに基づく薬剤スクリーニングアッセイを
提供する。
【0207】 GSK−3がNF−AT蛋白質に特異的なホスファターゼであるというのが我
々の発見の特筆すべき点であり、特定の残基(例えばNLS部位)がGSK−3
の基質であることの説明となっている。本発明はGSK−3を阻害するペプチド
及びペプチド模倣体を提供する。そのような阻害剤は、NF−ATの4以上の残
基、あるいは425残基、より好ましくは4〜15残基、更により好ましくは4
〜10残基に相当しうる。好ましくはNF−ATのGSK−3リン酸化の阻害に
ついての阻害剤のKiは1μM未満、より好ましくは100mM未満、更により
好ましくは1nM未満である。
【0208】 好ましくは、GSK−3のペプチド又はペプチド模倣体は、ホスホセリン残基
、又はより好ましくは、その類似体を包含する。ホスホセリン基は、一般式
【化1】 で表わされる。ここでRは下記からなる群より選ばれる。
【化2】 ここでiは0又は1〜6の整数であり;Xは存在しない又はO、S又はNを表わ
し;D1はO又はSを表わし;D2はN3、SH2、NH2又はNO2を表わし;そし
てR15及びR16はそれぞれ独立に水素、低級アルキル又は薬学的に許容可能な塩
を表わすか、あるいはR15及びR16はO−P−O、O−B−O、O−V−O又は
O−As−O原子と共に、5〜8原子を環状構造に含む完全な複素環を形成する
。好ましい態様において、ホスホセリンは非加水分解性のホスホセリン類似体で
ある。
【0209】 本発明のペプチド類似体は、例えばベンゾジアゼピン、置換γラクタム環(Ga
rvey他、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher
:オランダ国ライデン、1988、p123)、C−7模倣体(Huffman他、Pepti
des:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:オランダ国
ライデン、1988、p105)、ケト−メチレン擬似ペプチド(Ewenson他(1
986)J Med Chem29:295;及びEwenson他、Peptides:Structure and F
unction(第9回アメリカペプチドシンポジウムの議事録、Pierce Chemical Co.
、イリノイ州ロックランド、1985)中の記事参照;n回転ジベプチドコア(
Nagai他(1985)Tetrahedron Lett26:647;及びSato他(1986)J
Chem Soc Perkin Trans1:1231)、β−アミノアルコール(Gordon他(1
985)Biochem Biophys Res Commun126:419;及びDann他(1986)
Biochem Biophys Res Commun134:71)、ジアミノケトン(Natarajan他(
1984)Biochem Biophys Res Commun124:141)及びメチレンアミノ改
変体(Roark他、Peptides:Chemistry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Pu
blisher:オランダ国ライデン、1988、p134)を用いて作成することがで
きる。さらにSession III:Analytic and synthetic methods、Peptides:Chemi
stry and Biology、G.R.Marshall編、ESCOM Publisher:オランダ国ライデン(
1988)も参照できる。
【0210】 他の例証的な態様において、ペプチド模倣体は、ペプチド配列のretro−inver
so類似体配列、例えばSisto他、米国特許第4,522,752号に記載のもの;
ペプチドのretro−enatio類似体;トランス−オレフィン誘導体、例えばY.K.Shu
e他(1987)Tetrahedron Letters28:3225の方法に従って合成できる
もの;又はホスホン酸エステル誘導体、例えばLoots他、Peptides:Chemistry a
nd Biology(Escom Science Publishers、ライデン、1988、p118);Pet
rillo他、Peptides:Structure and Function(第9回アメリカペプチドシンポ
ジウムの議事録、Pierce Chemical Co.、イリノイ州ロックランド、1985)
に記載の合成法を適用して作製できるものとして派生させることができる。
【0211】 本発明は更に、構成的に活性なNF−AT、例えばNF−ATポリペプチドを
細胞内に導入することによって、NF−AT依存性生物学的活性を活性化する方
法を提供する。そこではNLSは蛋白質の他の部分と分子内相互作用を形成する
ことができず、よってNF−AT蛋白質を構成的に核に移動させる。そのような
NF−AT蛋白質は、例えばNF−AT蛋白質のSRR、SP1、SP2及び/
又はSP3領域のセリンを、NF−ATの少なくとも1個のNLSを「遮蔽しな
い」ように置換する。従って、構成的に活性なNF−AT蛋白質の活性は、蛋白
質をコードする遺伝子の発現を変調することによって変調することができる。例
えば、構成的に活性なNF−ATをコードする遺伝子を、誘導性調節要素の制御
下、例えば転写制御下に置くことができる。
【0212】 本発明の方法に基づいて用いることのできる、構成的に活性な他のNF−AT
ポリペプチドは、1個以上のNLSを包含する。これらは、NF−AT NLS
又は異種NLS、例えばSV40 large T抗原NLSであってもよい。
【0213】 あるいは、NF−AT依存性生物学的活性を、以下のように変調することがで
きる。構成的に活性になるように突然変異させたNF−ATポリペプチドをリガ
ンド結合領域に融合させ、リガンド結合領域に融合した細胞質保持領域を更に発
現する細胞内で発現し、それによって二量化剤の存在下に、2個の融合蛋白質が
架橋されてNF−AT蛋白質が細胞質内に保持される。NF−AT蛋白質の核へ
の移動は、二量化剤の非存在下、又は除去によって誘導することができる。
【0214】 更に他の態様においては本発明は、NF−ATの優性陰性突然変異体の発現を
調製することによってNF−ATの発現を調節する方法を提供する。一つの態様
においては優性陰性突然変異体は、少なくとも1個の、好ましくは2個のNLS
が例えば突然変異によって不活化されている、核への移動ができないNF−AT
蛋白質、例えばNF−ATポリペプチドである。そのような突然変異NF−AT
ポリペプチドは、依然としてカルシニューリンと相互作用することができ、従っ
て内生NF−AT分子からのカルシニューリンと競合する。
【0215】 更に他の態様においては本発明は、細胞内カルシウムに依存しない角膜を通じ
た異種ポリペプチドの移動を調節する方法を提供する。本発明によると、異種ポ
リペプチドは、NF−ATのNLS(例えばC末端NLS)、及びSRR、SP
1、SP2及びSP3からなる群より選ばれるNF−AT部分と融合する。好ま
しくは、NF−AT部分はSRRである。細胞内でのこれらのNF−AT部分に
融合した異種ポリペプチドの細胞移行は、カルシウムの存在に依存する。従って
通常の条件下では、蛋白質は細胞の細胞質内に移行し、カルシウムイオノフォア
の存在下で、ポリペプチドが核に移動することが予想される。あるいは、異種ポ
リペプチドをNLSのみに融合させ、例えばNLSに相互作用するペプチドを細
胞に添加することによって、細胞内移行を変調することができる。
【0216】 その上更にGSK−3は、ツメガエルの背−腹パターン形成(He他、Nature3
74、617(1995))及びショウジョウバエにおける体節極性決定(zest
white3又はshaggy)(Bourouis他、EMBO,J.9、2877(1990);Siegf
ried他、Nature345、825(1990))に関与することが示されている。
GSK−3はwntシグナリング経路の負の調製剤であり、GSK−3βにおけ
る機能の喪失及び優性陰性突然変異によって、ショウジョウバエとツメガエルの
wnt経路が活性化されることが示されている。その上更に、GSK−3へのウ
イングレスシグナリング経路が哺乳動物中に保存され(Cook他、EMBO, J.15、
4526(1996);Stambolic他、Curr.Biol.6、1664(1996))
、wntシグナリング経路が脊椎動物の発達及び脊椎動物において中心的な役割
を果たす。従って、ウイングレスシグナリング経路は、これらの遺伝子が共発現
される組織中で、NF−AT族の核外輸送を制御するようである。本発明による
と、ウィングレスシグナリング経路を変調する化合物に細胞を接触させることを
包含する、細胞内へのNF−AT移動を調節する方法が提供される。例えば、細
胞質から核へのNF−ATの移動は、wntシグナリング経路の活性化剤によっ
て誘導することができる。更に他の態様においては本発明は、例えばGSK−3
の活性を変調することを包含する、ウィングレス経路を変調する方法を提供する
。一つの態様においては、GSK−3の活性はGSK−3に結合することができ
、従ってWntシグナリング経路を活性化できるNF−ATペプチドで阻害され
る。
【0217】 本発明の方法は、異常な又は迷走性のT細胞活性化に関連した、被験者の疾病
又は病状の治療又は予防に用いることができる。過剰なT細胞活性化により起こ
る疾病又は病状の例としては、白血病などの癌、炎症又は自己免疫疾患などが挙
げられる。あるいは、本発明の方法は、被験者(例えば臓器又は骨髄移植患者の
移植片の受容者)の免疫抑制に用いることができる。異常に低いT細胞活性化を
含む疾病又は病状の例としては、AIDS等の免疫抑制状態、又は被験者が感染
している状態が挙げられる。従って、例えばウィルス又はバクテリアに感染して
いる被験者に、NF−ATcを活性化することによってT細胞を活性化し及び感
染に対抗する被験者の免疫系を誘導する化合物を投与して、治療することができ
る。例えば、核内へのNF−ATcの移行を増加させる化合物(NF−ATcの
NLSとNF−AT分子の他の部分との分子内相互作用を阻害する化合物など)
を、薬剤的有効量で、局所的又は全身的に被験者に投与することができる。これ
に対して、自己免疫疾患を有する被験者の場合、T細胞活性化を阻害又は低減さ
せるのが望ましい。従ってこの場合、細胞質内へのNF−ATc移行を増加させ
る化合物(NF−ATcのNLSを遮蔽する化合物など)を、薬剤的有効量で、
被験者に投与することができる。あるいは、GSK−3及び/又はPKA活性及
びNF−ATリン酸化を活性化する化合物を、被験者に投与することもできる。
【0218】 その上更に、ウイングレスシグナリング経路はGSK−3に関与するので、本
発明はウイングレスシグナリング回路に関連する疾病又は障害、例えば乳癌など
の癌の治療方法を提供する。例えば、そのような疾病を有する被験者に、GSK
−3を阻害することのできる化合物、例えばGSK−3に結合することのできる
NF−ATペプチドを投与することによって、疾病の治療又は予防をすることが
できる。
【0219】 一つの態様において、ここに記載するNF−ATアンタゴニストを、(例えば
細胞培養における又は生体内における)望ましくない血管組織増殖の阻害に用い
ることができる。例えば、主題のアンタゴニストを、心筋細胞及び/又は非筋細
胞(繊維芽細胞)の成長阻害に用いることができる。他の態様においては、主題
の方法を、小動脈平滑筋増殖の阻害に用いることができる。
【0220】 例えば、NF−ATアンタゴニスト、NF−ATc3及び/又はNF−ATc
4のアンタゴニストは、心臓障害の処置又は予防の一部として、心臓及び/又は
血管肥大の阻害に用いることができる。例えば、主題のアンタゴニストは、血管
形成術(例えば心臓血管形成術)に続く肥大状態の治療又は阻止、再狭窄及び大
動脈狭窄の処置、並びに後壁心筋梗塞養生法の一部として用いることができる。
【0221】 主題のアンタゴニストは、高血圧、特に高血圧性心疾患の処置の一部として用
いることができる。 一つの態様において、本発明のNFATアンタゴニストを、病理学上の刺激に
よる心筋症、例えばウィルス性心筋炎の処置の一部として用いることができる。 更に他の態様において、アンタゴニストを、心臓肥大を促進する負の副作用を
有する薬剤に対抗する処置、例えば甲状腺ホルモン処置の一部として用いること
ができる。
【0222】 従って好ましい態様において本発明は、哺乳動物(例えばヒト)における、N
F−ATc媒介細胞肥大、特に筋細胞肥大に関連する疾病及び病状の予防及び治
療の方法を提供する。特に本発明は、肥大を予防又は低減する、心不全の被験者
を治療する方法を提供する。例証的な態様にあっては本発明は、NF−ATアン
タゴニスト、好ましくはNF−ATc4アンタゴニストを、治療上有効な量で、
そのような処置を必要とする哺乳動物に長期的に投与することを包含する。
【0223】 あるいは、有効量のNF−ATc4アンタゴニストをエンドセリン又はLIF
(米国特許第5837241号参照)と組み合わせて長期に投与してもよい。追
加することのできる構成要素の例としては、CT−1アンタゴニスト等のカーデ
ィオトロフィン(cardiotrophin)阻害剤、カプトプリル等のACE阻害剤、及
び/又はヒト成長ホルモン及び/又はIGF−I(鬱血性心不全の場合)、又は
他の心筋(myocardiotrophic)の、抗不整脈の、又は変力的因子(他の心不全又
は心臓疾患の場合)、他の抗肥大又は心筋因子(他の心不全又は心臓疾患の場合
)が挙げられる。剤を用いた心臓肥大の処置については、Ferarra他による米国
特許第5,573,762号に更に記載がある。
【0224】 合同養生療法の一部として用いることのできるACE阻害剤は、アンギオテン
シンIのアンギオテンシンIIへの変換を阻害する、アンギオテンシン変換酵素
の阻害剤である。ACE阻害剤は、体血管抵抗を低減し、循環鬱血を軽減すると
いうことで、鬱血性心不全に有用である。ACE阻害剤の例としては、Accupril
(キナプリル)、Altace(ラミプリル)、Capoten(カプトプリル)、Lotensin
(ベナゼプリル)、Monopril(フォシノプリル)、Prinivil(リジノプリル)、
Vasotec(エナラプリル)及びZestril(リジノプリル)といった登録商標のもの
が挙げられる。
【0225】 本発明は、高血圧といった心臓疾患の処置用の薬剤投与と組み合わせて用いる
ことができる。例えばNF−ATアンタゴニストを、エンドセリン受容体に対す
る抗体、及びペプチド又は他の小分子アンタゴニスト;カーベジロル(carvedil
ol)等のβアドレナリン受容体アンタゴニスト;α1アドレナリン受容体アンタ
ゴニスト;酸化防止剤;複数の活性を有する化合物(例えばβ遮断剤/α遮断剤
/酸化防止剤);カーベジロル様化合物、又はカーベジロルに見られる複数の機
能を有する、それらの化合物の組み合わせ;成長ホルモン等のエンドセリン受容
体アンタゴニストと共に投与することができる。
【0226】 K.キット 本発明の化合物は、T細胞の活性を変調することが望まれる疾病又は病状の治
療、予防又は診断に用いる、キットの形で提供することができる。例えば本発明
は、NF−AT中のNLSの細胞内相互作用を阻害することのできる、又はGS
K−3及び/又はPKAを阻害することのできる化合物を包含する、被験者中の
NF−ATcを活性化するキットを提供する。
【0227】 本発明の好ましい態様にあっては、本発明のキットは、被験者(例えば免疫抑
制剤の処置を受けている被験者)の免疫抑制レベルを決定する試薬を提供する。
一つの態様においては、キットはNF−ATの細胞移行を決定する試薬、例えば
NF−ATに特異的に結合する抗体を包含する。キットに含むことのできる他の
試薬は、試験の結果を比較することのできる対照試薬又は基準物である。ある態
様においては、基準物は、正常な個人(免疫抑制を受けていない個人)における
値を示す表又は曲線である。キットは更に他の試薬、例えばフルオレセイン標識
抗体等の二次試薬や、緩衝液を含んでもよい。本発明は、被験者の免疫抑制レベ
ルのモニターに用いるだけでなく、ある薬剤例えば免疫抑制剤に対する被験者の
感受性を予想するのに用いることもできる。
【0228】 L.法医学的同定方法 本発明のNF−ATcポリヌクレオチド配列を、ヒト個人の法医学的同定(死
者の身元確認、父親の確認、犯罪者の身元証明など)に用いることができる。例
えばDNA試料を個人から又は細胞試料(血液、唾液、精液等の犯行現場で得ら
れる証拠物件)から得て、PFLP分析、対立遺伝子特異的PCR又はPCRク
ローニングにかけ、増幅産物の配列決定を行ってNF−ATc遺伝子領域の構造
を調べることが挙げられる(ただしこれに限定されるものではない)。NF−A
Tc遺伝子構造に基づいて、試料を得た個人が、NF−ATc遺伝子型について
同定される。NF−ATc遺伝子型は、容疑者として個人を同定する又は除外す
る目的で、単独でも他の遺伝子標識と組み合わせても用いることができる。
【0229】 一つの態様において、集団(一般に様々な人種からなる少なくとも50人)か
ら得たヒトゲノムDNA試料を、それぞれ別個に反応容器(例えばマイクロタイ
タープレートのウェル)中に等分する。それぞれのアリコートを、好適な反応条
件下(例えばNew England Biolabs、1992カタログ参照)で、1種以上の制
限酵素(例えばEcoRI、HindIII、SmaI、BamHI、SalI、NotI、AccI、ApaI、BglII
、XbaI、PstI)で消化(培養)する。各個人から得た対応する消化産物を、別々
に電気泳動ゲル(一般にアガロース)に乗せ、電気泳動し、サザンブロットによ
って膜上にブロットを得て、標識付けしたNF−ATcプローブ(例えば図1の
全長ヒトNF−ATc cDNA配列)とハイブリダイズする。サンプル集団内
で多様性を示す制限酵素断片(バンド)を、NF−ATc遺伝子型を区別する基
準として用い、NF−ATc遺伝子型に基づいて個人を分類する。
【0230】 集団から得たPCR増幅産物を配列決定し、配列多型性を用いて対立遺伝子(
遺伝子型)を同定し、個人の同定又は分類を行うことによって、類似のNF−A
Tc遺伝子型の分類を行うことができる。
【0231】 下記実施例を用いて本発明をさらに例証するが、それらは発明を限定するもの
と解釈されるべきではない。本明細書を通じて引用した参考文献(論文、特許、
特許出願を含む)の内容は、参照して説明に代える。本発明の実施は、特に述べ
ない限りは、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、形質転換生物学、微生物学、
組換えDNA及び免疫学で当業者に公知の方法を用いるものとする。そのような
方法は、下記文献に十分な記載が見られる。Molecular Cloning A Laboratory M
anual、第二版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編(Cold Spring Harbor Labor
atory Press:1989);DNA Cloning, Volumes I and II(D.N.Glover編
、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullis
他、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames
及びS.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames
及びS.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney、Al
an R.Liss,Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1
986); B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)
;論文Methods In Enzymology(Academic Press, Inc.、ニューヨーク);Gene
Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller及びM.P.Calos編、198
7、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、Vols.154
及び155(Wu他編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biolo
gy(Mayer及びWalker編、Academic Press、ロンドン、1987);Handbook Of
Experimental Immunology、Volumes I−IV(D.M.Weir及びC.C.Blackwell編、1
986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory P
ress、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1986)。
【0232】 実験的実施例 概観 我々は、NF−ATの先在性又は細胞質性の成分を表す別々の遺伝子によりコ
ードされる2つの関連タンパク質を精製した。これらのタンパク質の一つである
NF−ATcの完全長cDNAの発現は、IL−2プロモーターを非Tリンパ球
において活性化するが、NF−ATcの優性ネガティブは、Tリンパ球における
IL−2プロモーターの活性化を特異的にブロックし、これは、NF−ATc
IL−2遺伝子発現に必要であり、IL−2の制限された発現の原因であること
を示している。NF−ATcRNAの発現は、リンパ様組織に大いに制限されて
おり、細胞活性化に際して誘導される。第2のタンパク質NF−ATpは、NF
−ATcと限られたドメインにわたって高度に相同であるが、一層広い組織分布
を示し、Ca++依存性の調節により特徴付けられる組織において高度に発現さ
れる。まとめると、これらのタンパク質は、DNA結合性タンパク質の新しいフ
ァミリーのメンバーであり、それらは、Dorsal/Relファミリーと僅か
に関係している(Nolan及びBaltimore(1992)Current Biology, Ltd.2:211-220)。
細胞内Ca++を増大させる薬剤又はプロテインキナーゼCを活性化する薬剤は
、独立に、NF−ATcの移動性に変化を生じ、これは、別個のシグナリング経
路がNF−ATcに集まってその機能を調節することを示している。
【0233】 我々の前の仕事が、NF−ATの細胞質成分がヒトのリンパ様細胞株において
比較的低濃度で存在することを示したので(Northrop等、(1993)J.Biol.Chem.268
:2917-2923)、我々は、NF−ATcをウシの胸腺から精製することを選択した。
6ペプチドから得られたアミノ酸配列を用いて、2742ヌクレオチドに及ぶ2
つの重複するヒトcDNAクローンを単離した(図1)。このcDNAは、716
アミノ酸のタンパク質(予想分子量77,870)をコードしている。イニシエー
ターメチオニンの上流のイン・フレームの停止コドンは、完全なNF−ATc
ンパク質がこのcDNAによりコードされることを示している。ユニークな反復
する13残基の配列も同定された。NF−ATcのカルボキシ末端側半分は、転
写因子のDorsal/RelファミリーのDNA結合及び二量体形成領域に対
する限られた類似性を示している(図4、総説としては、Nolan及びBaltimore(19
92)Current Biology, Ltd.2:211-220)が、NF−ATcは、このグループの最も
僅かに関係するメンバーであるらしい。RelファミリーのメンバーとNF−A
cの間に電荷反転を生じる有意の数のアミノ酸変化があり、これは、塩橋を保
持するように電荷がこれらの部位で保存され得ることを示唆している。精製した
ウシのタンパク質から得られる更なる6つのペプチドは、ウシのNF−ATp
族体に由来し、そのcDNA断片は、McCaffrey等、(1993)Science 262:750-754
により報告された。NF−ATcとNF−ATpの比較は、それらがRel類似
性領域において73%のアミノ酸同一性を有する別個の遺伝子の産物であること
を示す(図4)が、この領域の外側では、非常に僅かの類似性しかない。NF−A
TcのマウスcDNAを単離したところ、その予想タンパク質は、ヒトNF−A
Tcに対して87%同一でありマウスNF−ATpとは明らかに異なっているこ
とが見出された。
【0234】 実施例1:ヒトNF−ATcのcDNAのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列
の決定 この実施例は、この新規なヒトNF−ATタンパク質のNF−ATcの単離・
精製、その断片のアミノ酸配列の決定及びこのタンパク質をコードするcDNA
クローンの単離と配列決定を表す。
【0235】 このタンパク質を、ウシ新生児から得たウシ胸腺から精製した。約20のウシ
胸腺をホモジェナイズして細胞質抽出物を作成し、次いで、それを順に、1)硫
安沈殿、2)スルホプロピルセファロースクロマトグラフィー、3)ヘパリンア
ガロースクロマトグラフィー、4)セファロースCL4Bに結合させた配列5’
−ACGCCCAAAGAGGAAAATTTGTTTCATACA−3’(SEQ
ID NO:73)を有するNF−ATに対するマルチ結合部位を用いるアフィニティ
ークロマトグラフィー及び5)逆相C4カラム上でのHPLCにかけた。その結
果の精製されたタンパク質を、LysC/ArgCによる開裂にかけ、断片をH
PLCにより単離した。これらの個々の断片の配列を、次いで、自動化エドマン
分解により決定した。得られた配列は、次を含んだ:LRNSDIELRKGE
TDIGR(SEQ ID NO:74)及びLRNADIELR(SEQ ID NO:75)。GET
DIG(SEQ ID NO:76)(逆方向プライマー)及びRNADIE(SEQ ID NO:77)
(順方向プライマー)に対応する縮重オリゴを作成した。これらの縮重オリゴPC
Rプライマーは、下記の配列を有した: 順方向:(A/C)GIAA(C/T)GCIGA(C/T)AT(A/C/T)GA
(A/G)(SEQ ID NO:78) 逆方向:ICC(A/G/T)AT(A/G)TCIGT(C/T)TCICC(SEQ
ID NO:79)
【0236】 cDNAを単離するために、決定されたアミノ酸配列に対応するオリゴヌクレ
オチドプローブを作成して、PCRプライマーとして利用して、45塩基の断片
をウシ胸腺から調製したウシcDNAから単離した。ウシのPCR産物は、−L
−R−K−をコードするヌクレオチド配列CTGCGGAAAを含んだ。同じ4
5bpの断片を、ヒト及びマウス起源から増幅することができる。
【0237】 このウシのPCR産物を、次いで、用いて、ヒトJurkatT細胞株のcD
NAライブラリーをスクリーニングした。クローンは、約100,000〜20
0,000当たり1の頻度で単離された。2つの重複するクローン(一つは5’
末端を含み、一つは3’末端を含む)を、各クローン中に存在するユニークなE
coRI制限部位を用いて一緒に連結して、長さにおいてノーザンブロッティン
グにより決定されたメッセンジャーRNAに対応する完全長のcDNAを生成し
た。
【0238】 NF−ATccDNAの配列を、サンガー法により決定し、その完全なヌクレ
オチド配列と予想アミノ酸配列を図1に示す。図1に示したイニシエーターメチ
オニン(太字表示)を、この読み枠をグルタチオントランスフェラーゼ遺伝子に融
合させ、その結果生成したクローンを細菌にトランスフェクトすることにより決
定した。この生成したクローンは、適当な分子量の融合タンパク質を生成し、こ
れは、このイニシエーターメチオニンで示された読み枠が実際正しい読み枠であ
ることを示している。停止コドンの位置を、類似の手順で決定した。加えて、こ
の停止コドンは、決定されたアミノ酸配列の9つの読み枠に対応する。
【0239】 全NF−ATcタンパク質構造を、個々のRelタンパク質に対して、FAS
TAプログラムのアラインメントパラメーターを利用するDOTALIGNと呼
ばれるマッキントッシュソフトウェアプログラムを用いて整列させた。これらの
タンパク質のRelドメインに対応する有意の相同性が認められた。増大された
アミノ酸残基アラインメントを、同じプログラムスートのALIGNを用いて行
った。NF−ATcとNF−ATpのRel類似性領域のアラインメントを、手
で行った(挿入の必要なし)。Miyata alphabet(Miyata等、(1979
)J.Mol.Evol.12:214-26)を用いて、類似残基を決定した。図4は、かかる配列ア
ラインメントの結果を示している。
【0240】 実施例2:T細胞及び非T細胞におけるNF−ATcの発現 図_に示したcDNAをヘモフィルス・インフルエンザヘマグルチニン(HA)
12アミノ酸エピトープタグに決定した読み枠で融合させて、ベクターpBJ5
(Lin等、1990, Science 249:677-679)中のSRαプロモーターに操作可能に結合
した。その結果生成した構築物をエレクトロポレーションによりJurkatヒ
トTリンパ球及びCos繊維芽細胞中に一時的にトランスフェクトした。このエ
ピトープタグ付きNF−ATcタンパク質の発現を、トランスフェクトした細胞
から調製した全細胞抽出物の、HAエピトープを検出する抗体(12CA5、Ber
keley Antibody Co., CA)を用いるウエスタンブロッティングにより測定した。
図2は、NF−ATccDNA構築物が、JurkatT細胞及びCos細胞の
両者において、精製されたタンパク質と大きさにおいて正確に対応する約120
kDAのタンパク質を発現することができることを示している(レーン3及び6
標識NF−AT*参照。レーン2は、対照として、エピトープタグを有さずウエ
スタンブロットにおいて検出され得ないNF−ATを示している)。
【0241】 実施例3:NF−ATcのトランスフェクションは、Cos及びJurkat 細胞の両者において転写を活性化する NF−ATccDNAを、pBJベクター中のSV40初期遺伝子プロモータ
ーとHIV転写調節領域に操作可能に結合する。この発現ベクターをJurka
t及びCos細胞に、3コピーのNF−AT結合部位を及びルシフェラーゼの転
写を指示する(結果を図3A及び3Bに示す)ルシフェラーゼの転写を指示する完
全なIL−2エンハンサー/プロモーター(結果を図3Bに示す)に結合したもの
と同時トランスフェクトする。細胞質抽出物を調製して、ルシフェラーゼアッセ
イを標準的手順により行った(de Wet等、1987, Mol.Cell.Biol.7:724-837)。
【0242】 これらの結果は、Cos細胞及びJurkat細胞の両者において、NF−A
Tcタンパク質の過剰発現がNF−AT依存性転写を劇的に50〜1000倍増
大させることを示している(図3A参照)。加えて、NF−ATcタンパク質のC
os細胞における過剰発現は、NF−ATcの非存在下では活性化され得ないI
L−2プロモーターを活性化する(図3B参照)。
【0243】 これらの結果は、cDNAクローンが機能的なNF−ATcタンパク質をコー
ドしていること及びNF−ATcがT細胞に対するインターロイキン2の発現を
抑制するタンパク質であることを示している。
【0244】 実施例4:NF−ATcmRNA及びタンパク質の発現 NF−ATcmRNAは、Hela細胞(図5、パネルa、レーン7)、IL−
2又はNF−AT依存性転写のできない細胞株中に存在しないが、Jurkat
細胞中では誘導可能である(図5、パネルa)。この誘導は、シクロスポリンA(
CsA)に感受性であり、これは、NF−ATcが、CsAがその核結合をブロ
ックすることが示されているので、自己刺激ループに参加していることを示して
いる(Flanagan等(1991)Nature 352:803-807)。2つのB細胞株、筋肉組織、He
pG2細胞及び骨髄性白血病細胞は、NF−ATcmRNAを発現しない(図5
、パネルb)。これらの観察は、IL−2転写及びNF−AT活性の観察された
T細胞制限されたパターンと一致する。以前の研究(Verweij等(1990)J.Biol.Che m 265 :15788-15795)は、NF−AT依存性の転写を主として、NF−AT依存性
レポーター遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの脾臓、胸腺及び皮膚で
示した。これらの観察と一致して、マウスNF−ATcmRNAは、同じ発現パ
ターンを示す(図5、パネルc)。少量のNF−ATc発現が、肺及び心臓で見ら
れたが、これは、循環T細胞による汚染のためであろう。マウスNF−ATpm
RNA(定量的リボヌクレアーゼ防護によりアッセイ)は、脳、心臓、胸腺及び脾
臓でほぼ等しいレベルで発現されることが見出された(図5、パネルc)。NF−
ATcと対照的に、NF−ATpは、PMA及びイオノマイシンにより誘導可能
でなかった(図5、パネルc)。
【0245】 方法。特定のヒト若しくはマウスのNF−ATc又はマウスのNF−ATpの
cDNA断片を、RNA転写物の合成のテンプレートとして用いた。リボヌクレ
アーゼ防護を、Melton等(1984)Nucl.Acids.Res.12:7035-7056に従って10μg
の全RNAを用いて行った。脾臓細胞及び胸腺細胞を、記載された(Verweij等(1
990)J.Biol.Chem 265:15788-15795)ように単離して処理してからRNAを単離し
、或は全組織を用いた。
【0246】 実施例5:NF−ATcの機能的発現 NF−ATルシフェラーゼ及びIL−2ルシフェラーゼは、記載されている(N
orthrop等(1993)J.Biol.Chem.268:2917-2923)。β28ルシフェラーゼを、三量
体化HNF−I認識部位(β28)をNF−ATルシフェラーゼ中のNF−AT認
識部位の位置に挿入することにより構築した。プラスミドpSV2CAT(Gorma
n等(1982)Mol.Cell.Biol.2:1044-1050)をトランスフェクション効率の内部対照
として用いた。細胞を、1.5μgのルシフェラーゼレポーターと3μgの記載
した発現用構築物でトランスフェクトした。20時間の生育の後に、細胞を20
ng/mlPMAに2μMイオノマイシンをプラス又はマイナスしたもので8時
間刺激して、ルシフェラーゼにつき収穫して(de Wet等(1987)Mol.Cell.Biol.7:7
25-737)CATアッセイ(Gorman等(1982)Mol.Cell.Biol.2:1044-1050)を行った。
【0247】 Cos細胞を、記載したエピトープタグ付きNF−ATcでトランスフェクト
した。Cos細胞、Jurkat細胞及びマウス胸腺細胞を、PMAとイオノマ
イシンで3時間にわたって刺激した。HeLa細胞を、PMAだけで3時間にわ
たって刺激し、核抽出物を記載されたように調製した(Fiefing等(1990)Genes & Dev.4 :1823-1834)。細胞質を、刺激してないCos細胞から調製した。ゲル移動
度シフトを前に記載されたように行った(Flanagan等(1991)Nature 352:803-807
;Northrop等(1993)J.Biol.Chem.268:2917-2923)。抗血清を、ベクターpGEX
−3X(Pharmacia)を用いて細菌で発現させたグルタチオン−S−トランスフェ
ラーゼ融合タンパク質により免役したマウスで高め、グルタチオンアガロース上
で精製した。融合タンパク質は、NF−ATc残基12〜143(immune
−1)及び12〜699(immune−2)を含んだ。
【0248】 非T細胞株で発現されたNF−ATcは、特に、NF−AT部位及びIL−2
プロモーターからの転写を活性化した(図6パネルa(左)及び図6パネルb)。一
時的にトランスフェクトしたJurkat細胞において、NF−ATcの過剰発
現は、NF−AT依存性プロモーターを活性化したが、HNF−1依存性プロモ
ーター(図6パネルa(右))又はAP−1依存性プロモーターを活性化しなかった
。NF−ATccDNAのトランスフェクションは、内因性NF−ATと識別不
能なDNA結合活性を示している(図6パネルc、レーン1〜4)。トランスフェ
クトしたcDNAによりコードされたHAエピトープに対する抗体は、NF−A
T複合体のスーパーシフトを誘導し、これは、NF−ATcがこの活性に関与し
ていることを示している。トランスフェクトされたCos細胞における核NF−
AT活性は、T細胞の天然の核複合体と一緒に移動し、同じ結合特異性を有する
(図6、パネルc、レーン4〜11)。NF−ATcトランスフェクトされたCo
s細胞からの細胞質抽出物は、HeLa核抽出物と混合したときに、T細胞由来
の細胞質抽出物(Flanagan等(1991)Nature 352:803-807;Northrop等(1993)J.Bio l.Chem.268 :2917-2923)と同様に、NF−ATDNA結合活性を再構成すること
ができる(図6パネルc、レーン12〜16)。NF−ATpに対する類似性を有
しないNF−ATcの細菌で発現させた断片に対して高めた抗血清は、Jurk
at細胞又は胸腺細胞からの内因性NF−AT複合体のスーパーシフトを誘導す
ることができるが、AP−1複合体はできない(それぞれ、immune−I及
びimmune−2、図6パネルd)。immune−2抗血清は、マウス胸腺
核抽出物を用いて生成したDNA−タンパク質複合体を有意に減じたが、これは
、ウシ胸腺から精製したタンパク質におけるNF−ATc及びNF−ATpペプ
チドの比較的等しい表示と一致する。
【0249】 実施例6:一時的トランスフェクションアッセイにおいてアッセイされるNF −ATc優性ネガティブ変異体 cDNAの大規模欠失分析後に調製した優性ネガティブNF−ATcは、アミ
ノ末端ドメインが、NF−AT依存性の機能を結合に影響を与えずにブロックす
ることを示した。cDNAのこの領域は、NF−ATp中で見出されず、それ故
に、IL−2遺伝子の活性化に対するNF−ATcの寄与の評価に利用すること
ができる。利用する優性ネガティブNF−ATcは、アミノ酸463のPvuI
I部位に及ぶエピトープタグ付きNF−ATc発現プラスミド(前出)のカルボキ
シ末端を切り詰めたものよりなる。この優性ネガティブのトランスフェクション
は、IL−2プロモーター機能並びにNF−AT部位にり指示される転写の90
%を超える阻害を生じた(図7)。この効果は、AP−1部位又はRSVプロモー
ター及びエンハンサーにより指示される転写が比較的影響されなかったので、高
度に特異的であった(図7)。これらの結果は、NF−ATcがT細胞におけるI
L−2遺伝子発現に対して相当寄与していることを強く指示する。
【0250】 優性ネガティブNF−ATcポリペプチド又はそのペプチド模倣物を、T細胞
のNF−AT媒介の活性化の薬用アンタゴニストとして利用することができる。
一変法において、かかる薬物は、多くの他の用途(例えば、免疫抑制剤)の内で、
T細胞活性化等の研究室での試験及び分析のための市販の研究用試薬として利用
することができる。
【0251】 実施例7:NF−ATcの転写後修飾 NF−ATcの転写後修飾を、PKCを活性化する薬剤又は細胞内Ca++を
増大させる薬剤で処理した細胞において研究した。細胞を、図2に記載したよう
にNF−ATcでトランスフェクトして、示したように2時間プラス又はマイナ
ス100ng/mlCsAで刺激した。全細胞溶解物を図2のようにウエスタン
ブロッティングにより分析した。イオノマイシンで処理した細胞中のNF−AT
cのバルクは、未処理細胞におけるより速く移動し、この移動度シフトは、Cs
Aにより阻害される(図8、レーン1、3〜4)。これは、おそらくカルシニュー
リンの直接作用による脱リン酸化事象(Clipstone及びCrabtree(1992)Nature 357 :695-697)と一致するが、多数のプロセスの何れも、この観察された移動度の変
化を生じ得るであろう。NF−ATpがカルシニューリンの基質である証拠があ
るが、NF−ATp又はNF−ATcのリン酸処理により生じる移動度シフトは
、図8で認められるものより遙かに大きい。これらの観察は、NF−ATcがカ
ルシニューリンの直接の基質ではないことを示している。PMA処理は、一層ゆ
っくり移動するNF−ATc(図8、レーン2)を生じ;それ故、PKC活性化経
路が、核成分の活性化に加えてNF−ATcの修飾によるNF−AT活性に寄与
することはありそうなことである。
【0252】 実施例8:カルシニューリンは、NF−ATcの核エントリーにつき律速され 殆どの組織は、NF−ATファミリーのメンバーの1つを発現する。リンパ球
及び繊維芽細胞を含む様々な細胞型が、トランスフェクトされた及び内因性のN
F−ATcファミリーメンバーのCa2+依存性の核局在性を支持する(Shibasaki
等、Nature, 382:370-373)。NF−AT移動の正確なアッセイを開発するために
、NF−ATcをCOS細胞中で発現させた(該細胞は、リンパ球と異なり、豊
富な細胞質を有し、それ故、細胞質と核の局在性の一層容易な評価を可能にする
)。
【0253】 COS−7細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)、100μg/mlのペニシ
リンG、100μg/mlのストレプトマイシン及び10mMのHEPS(pH
7.4)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma)中に、37℃で
CO2中に維持した。細胞をエレクトロポレーションにより、pBJ5ベクター
中のヒトNF−ATc1cDNAの第2のコドンの直ぐ5’側のXbaI部位に
挿入されたFLAGエピトープタグをコードする1μgのSH160cHo等(199
5)J.Biol.Chem.270:19898でトランスフェクトし、カバー硝子上にプレートし、
トランスフェクション後18〜14時間、新鮮な培地又はイオノマイシン(終濃
度2μM)と10mM(終濃度)CaCl2を補った新鮮な培地中で、様々な時間
にわたって37℃で刺激した。イオノマイシンは、Calbiochemから入手し、DM
SOに溶解させた。細胞を、FK506(2ng/ml)にイオノマイシンとCa
Cl2を加えたもの又はイオノマイシンに2.5mM EGTAを加えたもので
も60分間にわたって処理した。FK506は、カルシウム及びイオノマイシン
の添加の15分前に2ng/mlで加えた。FK506は、Fukisawa(Chicago,
IL)から入手し、エタノールに溶解させた。COS細胞におけるNF−ATcの
効率的な核への移動は、イオノマイシンと細胞外カルシウムの上昇を必要とする
。このCa2+の要求の理由は、COS細胞のイオノマイシン刺激が、刺激された
リンパ球程高い細胞内Ca2+レベルを生じないことであろう。次いで、細胞を、
下記のように、抗FLAG抗体で染色した。カバー硝子に付着した細胞を、4%
パラホルムアルデヒド中で固定して、0.1%トリトンX−100中で透過性に
した。FLAGエピトープを、1μg/mlの抗FLAGM2抗体(Eastman Kod
ak)とインキュベートすることにより検出した。このモノクローナル抗体を、ビ
オチン結合した抗マウスIgG(Caltag)と、その後、ストレプトアビジン−FI
TC及びDAPI(Molecular Probes)とインキュベートすることにより検出した
。蛍光を、Zeiss Axiophot蛍光顕微鏡により可視化した。核及び
原形質膜を同定することのできる蛍光性の細胞を、主として細胞質染色を含むか
、主として核染色を含むか、又は細胞質と核の両方の染色を含むかで評価した。
少なくとも100の細胞を、核カバー硝子上で評価した。有糸分裂中の細胞又は
複数の核を有する細胞は、除いた。すべての欠失用構築物に関して、細胞下局在
性を共焦点イメージング蛍光顕微鏡を用いて確認した。
【0254】 図9Bの図式に示したように、NF−ATc3(4)(Shibasaki等、Nature, 38
2:370-373)と同様に、NF−ATc1のアミノ末端は、Ca2+調節される核イン
ポートに十分であった(FK506によりブロックされた)。その上、トランスフ
ェクトされたNF−ATc1は、イオノマイシン処理後5〜15分以内に核内に
移動した。
【0255】 NF−ATcの核から退出は、トランスフェクトされた細胞をI+Ca++で1
時間刺激し、次いで、培地をFK506を含む培地と置き換えることにより測定
した。スライドを様々な時点で固定し、細胞質のNF−ATcを有する細胞のパ
ーセンテージを測定した。細胞質でNF−ATcを発現している細胞及び細胞質
と核の両方でNF−ATcを発現しているものを加えて分析した発現細胞の総数
で除した。結果(図9Cに示す)は、NF−ATが、核から細胞質へ、FK506
添加の30分以内に移動したことを示している。これらの移動は、タンパク質合
成を阻害しても起きた。完全長タンパク質は、アミノ末端418アミノ酸とグリ
ーン蛍光蛋白質との融合物(NF−AT(CΔ418)−GFP)(図9A)と同様に
振る舞った。pSH160cΔ418−GFP構築物を、pEGFP−1(Clone
tech)に由来するGFPをコードするBamHI−NotI断片をSH160c
のコドン418のPvuII部位の後ろに融合することにより作成し、その自己
蛍光を利用して検出した。
【0256】 この核局在性のタイムコースは、抗原提示により活性化されたマウスリンパ球
で認められたものと一致し(Timmerman等、Nature, 383:837-840)、COS細胞が
、NF−ATcの生理的移動を支持し得ることを示している。NF−ATc3[
4](Shibasaki等、Nature, 382:370-373)と同様に、カルシニューリンの過剰発
現は、NF−ATのCOS細胞核への移動を増大させた(図9A)が、これは、カ
ルシニューリンが、NF−ATcタンパク質の核への移動を律速していることを
示している。
【0257】 実施例9:異種核局在性配列のNF−ATcへの付加は、Ca2+非依存性のF K506耐性の核インポートを生じる 過剰発現されたNF−ATcは、JurkatTリンパ球及びCOS細胞にお
いて細胞質にあるという観察は、NF−ATcを細胞質に保持するのに必要な容
易に飽和される細胞質アンカーリングタンパク質がないことを示唆している。D
NA濃度の200倍の範囲を超えるNF−ATc1発現構築物のトランスフェク
ションは、一層高レベルの構成的核局在性を生じなかった。もしNF−ATcが
細胞質アンカーリングパートナーにより局在化されたならば、十分活性な核局在
性配列(NLS)のNF−ATcへの付加は、細胞質停留NF−ATcを克服しな
いであろう。従って、FLAGエピトープとNF−ATc1の第2のアミノ酸と
の間にコードされるSV40大型T抗原NLS又はNLS(NLS−T)の変異型
の1若しくは2コピーの何れかの0、1又は2コピーを有するNF−ATc1発
現構築物。SV40NLS及び変異体(NLS−T)を有する構築物を、合成オリ
ゴヌクレオチドをpSH160cのXbaI部位に挿入することにより造った(H
o等(1995)J.Biol.Chem.270:19898、これは、pBJ5ベクター中のヒトNF0A
Tc1cDNAの第2のコドンの直ぐ5’側のXbaI部位に挿入されたFLA
Gエピトープタグをコードする(Northrop等(1994)Nature, 369:497-502))。挿入
されたNLSは、CTAGTCCTAAGAAGAAGAGAAAGGTAT(S
EQ ID NO:80)であり;NLS−Tの配列は、CTAGTCCTAAGACGA
AGAGAAAGGTAT(SEQ ID NO:81)であり、スレオニンをリジンの代わ
りに用いている(Cell, 39:499-509)。すべての置換点を、シーケンシャルオーバ
ーラップイクステンションPCR(J.Biol.Chem.,270:19898-19900)により造った
。次いで、細胞を抗FLAG抗体で染色し、核蛍光を有する細胞のパーセンテー
ジを測定した。
【0258】 図10に示したように、COS細胞におけるSV40大型T抗原NLSの0、
1又は2コピーを有するNF−ATc1の発現は、FK506に反応しない構成
的核局在の漸進的増加を生じた。対照的に、変異型NLS配列、NLS−T(Kal
deron等(1984)Cell,39:499-509)のNF−ATc1への付加は、実質的に一層少
ない核へのエントリーを生じた。NLS−Tの取込みの結果の低レベルの核局在
性は、この変異体の僅かな活性に帰せられよう(複数コピーで存在する場合には
野生型配列と同様に増進される)。これらの結果は、優勢の活性な細胞質結合タ
ンパク質に依存する細胞質局在性の機構に反論する。
【0259】 実施例10:2つのNLSは、各々、NF−ATc核移行に十分である NF−ATcタンパク質は、おそらくNLSであろうNF−ATcタンパク質
中に保存されているクラスター化した塩基性残基の4つのグループを含んでいる
(図11A参照)。これらの配列がNLS活性を有するか否かを決定するために、
それらの各々を別々に細胞質交換因子SOSに結合した。
【0260】 これらのSOS発現構築物は、HAエピトープによりカルボキシル末端に付け
られたヒトSOScDNA、pSOS−E(Proc.Natl.Acad.Sci.92:98109814)に
基づいた。pSOSを、配列LECNKRKYSLNVD(SEQ ID NO:82)をコ
ードするオリゴヌクレオチドをSOSとHAエピトープの間のユニークなSal
I部位に挿入することにより造った。SOSをコードする発現用構築物(SOS
−E)を発現させ、12CA5抗体を用いて可視化した。NF−ATcの残基2
63〜271に結合した(SOS−265)又はNF−ATcの残基681〜68
5に結合したSOS−Eをコードする構築物(SOS−682)も又、12CA5
抗体で検出された。免疫蛍光を上記のように検出したが、HAエピトープは、1
2CA5腹水の1:2000希釈物とインキュベートすることにより検出した。
【0261】 これらの結果は、NF−ATcの残基682〜685を取り込んだSOS−6
82と残基265〜267を取り込んだSOS−265が核に局在化されること
を示している。従って、NF−ATC中のこれら2つの保存された領域は、NL
Sである。
【0262】 これらのNLSがNF−ATcの核インポートに必要であるか否かを測定する
ために、各配列を完全長NF−ATc1のコンテキスト内で別々に及び組み合わ
せて突然変異させた。野生型NF−ATc配列中のNLS中に作成した突然変異
の図解を、図11Bに示す。残基265〜268のNLSは、QILに変化させ
た(構築物m265)。残基682〜685のNLSは、TRTGに変化させ、こ
の変異とm265を含む構築物をm265+682と呼ぶ。この変異型発現用構
築物をCOS細胞にトランスフェクトし、それらの細胞をI+Ca++で60分間
上記のように刺激した。核、細胞質又は両区画において染色された細胞のパーセ
ンテージを測定した。
【0263】 図11Bに示した結果は、265〜267の配列のKRKからQILへの変異
がイオノマイシンに応答してのNF−ATCの核局在性の程度を低下させたが、
最大で60%の細胞がNF−ATCの幾らかのCa2+依存性の核蓄積を示すこと
を示している。682〜685位の配列KRKK(SEQ ID NO:56)のTRTG(S
EQ ID NO:55)への変異又はこれら4残基の正確な除去は、Ca2+上昇に応答し
てのNF−ATCの核局座性に影響を与えなかった。しかしながら、両領域内に
変異を含むNF−ATcは、イオノマイシン処理後に細胞質に留まる。従って、
他の複数のNLSを有する核タンパク質(Richardson等(1986)Cell,44:77-85)と
同様に、2つのNLSは、何れも細胞質SOSを核に向かわせることができ、核
エントリーを阻止するには両者が変異しなければならないという観察により示唆
されたように、部分的に重複している。これらのデータは又、両NLSは、Ca 2+ 刺激のないときは不活性でなければならないことをも示した。
【0264】 実施例11:アミノ末端のセリンの変異は、NF−ATcの構成的な核局在性 を生じる NF−ATcのアミノ末端はカルシウム依存性の核エントリーに十分であるの
で、アミノ末端のリン酸化が転写因子の細胞下区画化を指示するかどうかを測定
した。各NF−ATcタンパク質のアミノ末端は、SP反復モチーフと呼ばれる
配列を3コピー含む(Ho等(1995)J.Biol.Chem.,270:19898-19900;Hoey等(1995)I
mmunity,2:461-472;Masuda等(1995)Mol.Cell Biol.,15:2697-2706)。付加的S
RR23アミノ酸長は、最初のSP反復の丁度アミノ末端側にある(Ho等(1995)J
.Biol.Chem.,270:19898-19900)図9A)。ホスホアミノ酸分析は、すべてのリン
酸化がセリン上に位置していることを示した。2次元トリプシンペプチドマップ
は、アミノ末端418アミノ酸に由来する多くのホスホペプチドを示す(下記参
照)。これらの特定のセリンのリン酸化がNF−ATcの局在性を調節すること
ができるのかどうかを測定するために、SRR及びSPリピート中の保存された
セリンの選択したグループをアラニンに変異させ、これらの変異体の細胞下局在
性をCOS細胞において測定した。
【0265】 SRRを、残基172〜194中の11のセリンをアラニンに変化させること
により変異させてmSRRを形成した。第1のSP反復を、残基199〜211
中の4つのセリンをアラニンに変化させることにより変異させてmSP1を形成
した。第2のSP反復を、233〜237のセリンをアラニンに変化させること
により変異させてmSP2を形成した。第3のSP反復を、278、282,2
86、290及び299の5つのセリンにおいて変異させた(mSP3)。他の変
異した構築物を、図12に示す。これらの置換を、NF−ATカルボキシ末端欠
失構築物(アミノ酸1〜418を含む)及びアミノ末端のヘマグルチニン(HA)エ
ピトープタグをコードする構築物pSH102cΔ418(Nature,369:497-502)
中に作成した。
【0266】 野生型(WT)又は変異型のNF−ATccDNAでトランスフェクトした細胞
の細胞質(C)又は核(N)抽出物のイムノブロットも行った。従って、トランスフ
ェクトされた細胞を、添加物を含まない培地(NS)又はイオノマイシンとカルシ
ウム(I+CA++)を有する培地で下記のように60分間処理し、次いで、J.Biol
.Chem.270:19898-19900に従って、細胞質画分と核画分とに分けてSDS−PA
GEにかけ、メンブレンにトランスファーして、抗マウスペルオキシダーゼ及び
ケミルミネッセンス(Amersham)により検出されるM2又は12CA5抗体を用い
てウエスタンブロッティングを行った。
【0267】 これらの結果は、SRR内のすべてのセリンの変異(mSRR)は、FK506
により影響されない構成的核局在性を発現細胞の100%において生じることを
示している。mSRRは、SDS電気泳動において増大された移動度を有し、ウ
エスタンブロッティングにおいて核に存在し、オルトホスフェートでイン・ビボ
での標識後の32Pの減少した取込みを示し、これは、これらのセリンがイン・ビ
ボでタンパク質のリン酸化状態に影響を及ぼすという仮説と一致する。最初のS
P反復中のセリンがアラニンに置換されたNF−ATc変異体(mSP1)も又、
発現細胞の100%において構成的に核に局在され、分子量の減少を示す。類似
の結果が、第1及び第3のSP反復にS→A変異を有するNF−ATc変異体(
mSP13)及び3つすべてのSP反復において変異を生じさせたもの(mSP1
23)又はSRRにおける変異と組み合わせた(mSRR+SP123)バージョ
ンにおいて得られた。これらの変異体の各々の細胞下局在性は、それらがJur
kat細胞で発現されるならば、構成的に核内にNF−ATcを生じ、これは、
これらのホスホセリンが様々な細胞型において細胞下局在性を制御することを示
唆している。S→A変異の調節されない核エントリーは、変異型NF−ATcの
内のこれらの変異型の各々がNF−ATc依存性転写に関与するので、タンパク
質の変性により引き起こされることはありそうにない。
【0268】 SRRのS→A変異は、見かけ分子量の最小の変化を生じたので、この領域が
細胞質局在性に必要な最小数の臨界的セリンを含むということは、ありそうなこ
とであった。これらの変異体は、更に細胞へのトランスフェクション及びイオノ
マイシン処理後に脱リン酸化され得る(これは、SRR変異体が依然ホスファタ
ーゼおそらくはカルシニューリンの基質であることを示している)。従って、S
RR中のセリンの一層小さいブロックの変異による更なる分析を行った。残基1
72〜176、178〜181及び184〜188におけるアラニン置換は、発
現細胞の100%においてCa2+/カルシニューリンシグナリングの非存在下で
NF−ATcの核蓄積を生じたが、残基191〜194では生じなかった(図1
2A参照)。興味深いことに、これらの構成的核局在性の変異体は、FK506
を加えた後も核内に留まり、該処理は、刺激により核に輸送された野生型のNF
−ATc、NF−ATp又はNF−ATc3の迅速な細胞質蓄積を生じる(Flana
gan等(1991)Nature,352:803-807;Shibazaki等(1996)Nature,382:370-372;Timm
erman等(1996)Nature,383:837-840)。従って、これらの結果は、これらの残基の
リン酸化がNF−ATcの核からのエキスポートに必要であることを示している
【0269】 実施例12:カルシニューリンは、NF−AT中のセリンを脱リン酸化する カルシニューリンが核エントリーを指示するホスファターゼたり得るか否かを
決定するために、核エントリーに関係する残基を特異的に脱リン酸化するカルシ
ニューリンの能力を調べた。
【0270】 NF−ATGST融合タンパク質を、下記のように調製した。NF−ATc1
(Northrop等(1994)Nature,369:497-502)の残基196〜304をpGEX−3X
のSmaI部位にクローン化してpGSPを生成した。S→A置換が上記の3つ
のSP反復のすべてにあるGST融合タンパク質pGAPを同様に構築した(9
S及び10T残基は残した)。このGST融合タンパク質を、グルタチオン−セ
ファロース上に固定した1μgの融合タンパク質を全脳抽出物(55μgタンパ
ク質)(下記のように調製)及び100μmATP及び[γ−32P]ATP(400μ
Ci/μモル)と50μlのキナーゼ緩衝液(20mM トリス、pH7.5、1
0mM MgCl2、1mM DTT)中で30分間30℃でインキュベートする
ことによりリン酸化した。キナーゼ反応を、アガロースビーズを1mlのカルシ
ニューリン緩衝液中で3回洗うことにより停止させた。次いで、これらの融合タ
ンパク質を上記のようにカルシニューリンとインキュベートし、又は2単位のエ
ビジャコホスファターゼ(U.S.Biochemical)又は5単位のプロテインホスファタ
ーゼI(Boehringer Mannheim)で製造業者により記載された緩衝液中で30分間
30℃で処理した。次いで、試料を電気泳動してオートラジオグラフィーに曝露
した。
【0271】 図12Bに与えた結果は、一度リン酸化されると、196〜304WT基質は
、カルシニューリン及びカルシニューリンにより活性化されるホスファターゼI
(Cohen(1989)Annual Rev.Biochem.58:453)によるイン・ビトロ処理により容易に
脱リン酸化されることを示している。これらの結果は、NF−ATcの核局在性
を制御するSP反復中の保存されたセリンが細胞キナーゼ及びカルシニューリン
の基質であることを示している。グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK
−3)は、高度に保存されたプロリン指向のセリンスレオニンキナーゼであり、
これは、NF−ATをイン・ビボでリン酸化し、Ca2+/カルシニューリン誘導
される核エントリーに対抗する(下記参照)。GSK−3は、SP反復中の保存さ
れたセリンをイン・ビトロでリン酸化する。これらのSRR及びSP反復モチー
フ中のセリンは、GSK−3コンセンサス基質配列(Fiol等(1994)J.Biol.Chem.,
269:32187-32197)に従う。まとめると、これらの結果は、これらの2つのモチー
フ中の保存されたセリンは細胞のキナーゼによりイン・ビボでリン酸化され、カ
ルシニューリンにより脱リン酸化されることを示している。
【0272】 実施例13:SRR中のホスホセリンは、NF−ATc中の分子内相互作用を 制御する 上記の結果は、両塩基性NLSが、SP反復及びセリンリッチ領域内のホスホ
セリンと相互作用して非刺激状態での核エントリーを阻止する可能性を高める。
かかる分子内相互作用は、同じタンパク質の別々の部分を、同じペプチド鎖上の
残基の高い有効濃度に等しい濃度で発現させることの困難さの故に識別するのが
困難である。分子内相互作用の検出に対するバリヤーを克服するために、NF−
ATcの一部を固定化し、COS細胞抽出物中では発現されている、NF−AT
cをCa2+/カルシニューリン制御下でリン酸化して移動させる他の領域を分析
した。
【0273】 空の発現ベクター又はHAエピトープタグを付けたNF−ATcのアミノ末端
418残基(2〜418)をコードするベクター(Northrop(1994)Nature,369:497-
502)でトランスフェクトしたCOS細胞の抽出物を、GSTに結合したグルタチ
オン−アガロースビーズとインキュベートし又はGSTのNF−ATcのRSD
との融合物(GST−RSD)と結合させたビーズとインキュベートした。NF−
ATc1のRelドメイン、GST−RSD(残基415〜716)よりなるGS
T融合タンパク質を細菌中で発現させ、グルタチオン−アガロース(Gene,67:31-
40)上でアフィニティー精製した。アミノ末端にHAエピトープを付けたNF−
ATc1の残基1〜418(Nature,369:497-502)をCOS細胞で発現させ、抽出
物を緩衝液A(J.Biol.Chem.270:19898-19900)中でプロテアーゼ及びホスファタ
ーゼ阻害剤を用いて溶解させることにより作成した。この抽出物の100μgを
GST、GST−RSD又はGST−mNLS(−2μgの融合タンパク質)と結
合させた30μlのグルタチオン−アガロースと、300μlのインキュベーシ
ョン緩衝液(50mMHEPES、pH7.8、150mM NaCl、1mM
EDTA、50mM NaPO4、0.5%NP−40)中でJ.Biol.Chem.270:19
898-19900におけるようにプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を伴って2時
間4℃でインキュベートし、インキュベーション緩衝液中で3回洗った。アフィ
ニティー選択したタンパク質を洗ったビーズからSDS試料緩衝液で溶出させ、
7A6(Nature,369:497-502)又は12CA5モノクローナル抗体を用いるイムノ
ブロッティングにより検出した。
【0274】 図13Aに示したように、Rel類似性ドメインと部分的に重複する2つのN
LSの1つを含むタンパク質のカルボキシル末端を固定化した(GST415〜
716)場合には、それは、COS細胞中で発現させた場合は容易に且つ特異的
にNF−ATc1のアミノ末端側半分(1〜418)と相互作用し、並びにリンパ
球からの抽出物中の内因性タンパク質と相互作用する。
【0275】 複数のホスホセリンを含むアミノ末端は、Rel類似性領域内の塩基性残基と
のみ反応し得るので、rel類似性ドメイン内のNLSを変異させて、この変異
したタンパク質のアミノ末端残基1〜418に対する結合を分析した。図13B
に示したように、カルボキシ末端NLSのKRKK(SEQ ID NO:56)からTRT
G(SEQ ID NO:55)への突然変異は、アミノ末端418残基への結合を完全に破
壊した。
【0276】 この変異は、このNLSの変化が依然イン・ビボでNF−ATn及びNF−A
T依存性の転写との協力を許すので、変性を生じることはありそうにない。この
相互作用がアミノ末端中のホスホセリンの存在に対して感受性であることを示す
ために、NF−ATc(1−418WT)のHAエピトープタグ付きアミノ末端側
418残基又はSRR若しくはSP反復中にS→A突然変異が存在するバージョ
ンでトランスフェクトしたCOS細胞の抽出物をGST−RSDとインキュベー
トしてから洗った。図13Cに示したように、SRR中にS→A突然変異を有す
るアミノ末端418残基は、タンパク質のカルボキシル末端との減少した会合を
示すが、3つのSP反復中のS→Aの変化は、この会合を一層弱めるように強く
影響を及ぼす。突然変異の各セットは、SDS電気泳動における一層迅速な移動
を生じ、これは、これらのS→A突然変異がリン酸化を阻害することを示してい
る。SRR中の重複しないS→A突然変異(図13C)も又、この分子内会合アッ
セイで試験した。残基172〜176のアラニン置換は、rel類似性ドメイン
(RSD)との会合を減じるが、191〜194のセリンのアラニンでの置換は、
RSDとの会合を変化させない。興味深いことに、分子内会合アッセイにおける
RSDへの結合とCa2+/カルシニューリン依存性核エントリーとの間には、相
関があり、m172−176は、構成的に核にあり、m191−194は、調節
された核エントリーを受ける。イン・ビトロ分子内会合アッセイにおけるNF−
ATcの各S→A変異間の差異が変性に帰することは、すべての変異体が、SP
反復内のNF−ATcの領域に対するモノクローナル抗体により免疫沈降され(N
orthrop等(1994)Nature,369:497-502)、細胞中で発現された際に安定であり且つ
NF−AT依存性の転写を指示するので、ありそうにない。この結合活性が、完
全長のNF−ATc分子間のヘッドトゥーテイルの二量体形成を指示することは
、このタンパク質が溶液中及びDNAに結合した際に単量体である(Hoey等(1995
)Immunity,2:461-472)のでありそうにない。
【0277】 従って、NF−ATc内の相互作用は、SRR内の残基並びに完全なカルボキ
シ末端NLSに依存している。SRR中の変異体の細胞下局在性とそれらのイン
・ビトロ結合アッセイにおける振る舞いとの間の相関は、この分子内会合がカル
ボキシル末端NLSの露出と機能を制御していることを示唆している。3つのS
P反復内のS→A変化は、RSDへの結合を弱く撹乱するだけであり、これらの
ホスホセリンがタンパク質のカルボキシル末端との相互作用に強くは関与し得な
いことを示唆する。SP反復モチーフの脱リン酸化は、他の機構により、多分第
2第3SP反復の間にある別のNLSの露出によって核局在性を生じ得る。NF
−AT中のNLSとリン酸化残基との間の相互作用を表すモデルを図14に与え
る。このモデルは、NLS、SRR及びSP反復領域の保存に基づいて、NF−
ATc遺伝子ファミリーの他のメンバーに拡張されよう。NF−ATc3及びN
F−ATp(Proc.Natl.Acad.Sci.,93:8907-8912;Nature,382:370-373)のアミノ
末端は、Ca2+感受性の核エントリーを受ける。
【0278】 実施例14:NF−ATキナーゼ活性はGSK−3と同時精製される この実施例は、NF−ATのN末端をリン酸化するキナーゼ活性がGSK−3
と同時精製されることを示す。
【0279】 ラットの脳からのタンパク質抽出物を、下記のように、NF−ATキナーゼ活
性について試験した。抽出物を、2容の20mM トリス(pH7.5)、1mM
EDTA、5mM EGTA、2mMジチオスレイトール(DTT)及び50mM
β−グリセロール−ホスフェート中でプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤[
0.1mM Na3VO4、1mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド、ペプ
スタチン(1μg/ml)、アプロチニン(1μg/ml)、ロイペプチン(5μg
/ml)及び1mMベンザミジン]を加えてホモジェナイズしたラットの脳から調
製した。80,000g上清の一部をG−50サイジングカラムを通して内因性
アデノシン三リン酸(ATP)を除去し、グリセロール中で10%とし、全脳抽出
物(5.5mg/mlのタンパク質)として用いた。NF−ATキナーゼ活性をN
4SO4分画及びホスホセルロース(P−11樹脂)上での分離及び200mMN
aClでの溶出により追跡した。活性画分をプールし、Mono−Sカラム(Hug
hes等、Eur.J.Biochem.203,305(1991))上で更に精製した。
【0280】 カラム画分を、野生型及び変異型NF−ATペプチドについて、NF−ATキ
ナーゼ活性について、[γ−32P]ATPを用いてアッセイしてからオートラジオ
グラフィーにかけた。その上、NF−ATのN末端部分(特に、アミノ酸196
〜304)の分析が推定の重複するGSK−3コンセンサス部位(SSXXS(P)
)の存在を示したので(図15参照)、カラム画分を、GS−2、GSK−3の特
異的ペプチド基質(Welsh等、J.Biol.Chem.271,11410(1996))のリン酸化について
もアッセイした。加えて、GSK−3(Hughes等、Eur.J.Biochem.203,305(1991)
)は、しばしば、プロテインキナーゼA(PKA)その他のキナーゼにより前にリ
ン酸化されたセリンに隣接するセリンをリン酸化する(Fiol等、J.Biol.Chem.269
,32187(1994))ので、PKA予備リン酸化された野生型NF−ATペプチドのリ
ン酸化も又、基質として利用した。NF−ATc中の幾つかの部位のPKAによ
るリン酸化は、一連のリン酸化依存性の重複するGSK−3コンセンサス部位を
生成することができた(Foil等、J.Biol.Chem.269,32187(1994))(図15)。各画
分中のタンパク質の総量も測定した(280nmの吸光度により測定)。
【0281】 基質のNF−ATペプチドを、NF−ATc1(Durand等、Mol.Cell.Biol.8,1
715(1988);Cocerill等、同書、15,2071(1995);Chuvpilo等、Nucleic Acids Re
s.21,5694(1993);Rooney等、Immunity 2,473(1995);Goldfield等、J.Exp.Med.
178,1365(1993))の残基196〜304をコードするDNA断片をpGEX−3
X中にクローン化してpGSPを生成することにより調製した。S→A置換を有
するGST融合タンパク質(図15)、pGAPを同様に構築したが、9個のセリ
ンと10個のスレオニン残基を保持した。細菌により発現されたタンパク質をグ
ルタチオンアガロース上で精製して、1μgの融合タンパク質を10μlのビー
ズスラリー(D.B.Smith及びK.S.Johnson, Gene 67,31(1988))当たり用いた。融合
タンパク質を直接使用し、又は融合タンパク質1μg当たり5単位のPKA(Sig
ma)の添加によりアガロース上で30℃でキナーゼ緩衝液[20mMトリス(pH
7.5)、10mM MgCl2及び1mM DTT]中で1mM ATPを用い
て2時間にわたり予備リン酸化し、次いで、洗ってPKAとATPを除去した。
1単位のPKAを、毎分移される1pモルの32Pとして定義する。キナーゼアッ
セイは、グルタチオンセファロース上の融合タンパク質(1μg)、[γ−32P]A
TP(400μCi/μモル)を伴う100μMのATPを、50μlのキナーゼ
緩衝液中で30分間30℃でインキュベートした。ビーズを、10μlのカラム
画分又は全脳抽出物(55μgのタンパク質)、2.5単位の精製PKA若しくは
GSK−3β(New England Biolabs)又は両者とインキュベートした。粗又は部
分精製脳抽出物を用いる実験は、アプロチニン、ロイペプチン及びペプスタチン
(すべて1μg/ml)、0.1mM β−グリセロール−ホスフェート及び1m
M Na3VO4を含んだ。キナーゼ反応を、アガロースビーズを1mlのTEN
[50mM トリス(pH7.5)、1mM EDTA、150mM NaCl及
び0.5%NP−40]で2回洗ってリン酸化細胞タンパク質を除去することに
より停止させ、SDS−PAGE上で分画し、オートラジオグラフィーにかけ、
クーマシーで染色して基質が分解されていないことを確実にした。
【0282】 このカラムからの画分を用いるキナーゼアッセイの結果は、図15(パネルA
及びB)に示してあるが、NF−ATキナーゼのクロマトグラフィー上の振る舞
いがGSK−3のそれと類似していたことを示している。特に、NF−ATキナ
ーゼ活性は、カラムP−11の約35〜40画分(図15B参照)及びMono−
Sカラムの約15〜25画分(図15C参照)で最強であることが示された(これ
らは又、最強のGSK−3活性を有した画分でもある)。事実、NF−ATキナ
ーゼ活性及びGSK−3免疫反応性のピークは、第21画分にある。その上、P
KA予備リン酸化された野生型NF−ATペプチドも又、同じカラム画分により
リン酸化された。対照的に、活性なカラム画分は、変異型NF−AT基質ペプチ
ドを有意にリン酸化しなかった。
【0283】 GSK−3α及びGSK−3βに対する抗体を用いるタンパク質イムノブロッ
ティングは、それらがNF−ATキナーゼと同時精製され(図15C)、PKAが
Mono−Sカラムからの部分的に重複するピーク中に溶出されることを確実に
した。事実、PKA免疫反応性のピークは、第24画分にある。従って、これら
の結果は、NF−ATcがGSK−3及びPKAの基質であることがありそうな
ことであることを示している。
【0284】 実施例15:GSK−3と他のキナーゼは、協力してNF−ATをリン酸化す NF−ATcのリン酸化におけるGSK−3の役割を、GSK−3を全脳抽出
物から免疫涸渇させることにより評価した。GSK−3α及びGSK−3βに対
する抗血清又は対照用抗体を用いて、これらのタンパク質を全脳抽出物から除去
した。110μgの全脳抽出物中のGSK−3活性の免疫涸渇を、200μlの
TEN、1mM DTT並びにプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(上記と
同じもの)に、3μgの抗GSK−3α(ヒツジポリクローナル、Upstate Biotec
hnology)、抗GSK−3β(免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル、Tra
nsduction Labs)又は両者及び20μlのプロテインG−セファロースを加えて
4℃で4時間行った。IgG1マウスモノクローナル抗体(mAb)M2(Kodak)
、ヒツジポリクローナル抗HIVp17(NIH)又は両者を、対照用抗体として
用いた。NF−ATキナーゼアッセイは、2.5μlの上清(1.2μgのタン
パク質)(Cook等、EMBO J.15,4526(1996);Stambolic等、Curr.Biol.6,1664(1996
))を用いた。
【0285】 免疫涸渇させた抽出物を、PKA予備リン酸化したNF−ATと、[γ−32P]
ATPを含むイン・ビトロキナーゼ反応物中でインキュベートし、32P標識され
た基質をオートラジオグラフィーにより検出した。次の2つの基質を用いた:プ
ライミングキナーゼ活性を検出するためのNF−AT(WT)及びGSK−3活性
を検出するためのリン酸化されたWT−PKA。一の反応において、5単位の精
製GSK−3をその反応物に加えた。
【0286】 図16に示したように、特異的抗体を用いるGSK−3α及びGSK−3βの
抽出物からの涸渇は、PKAにより予備リン酸化されたNF−ATcに対するN
F−ATキナーゼ活性を完全に且つ特異的に除去した。しかしながら、この免疫
涸渇させた抽出物は、NF−ATcをリン酸化する能力を保持し(図16B)、こ
れは、少なくとも2つのNF−ATキナーゼ活性(直接NF−ATcに対して作
用し得る活性とNF−ATcの予備リン酸化を必要とする第2の活性)があるこ
とを示した。第2のキナーゼ活性は、GSK−3のものであり(免疫涸渇実験に
より示される)、プライミングキナーゼ活性は、イン・ビトロでPKAにより与
えられ得る。しかしながら、抽出物中のPKAの特異的な阻害は、PKAが、脳
又はリンパ球抽出物中のプライミングキナーゼ活性のすべてを与えるのではない
ことを示す。GSK−3免疫涸渇は、基質過剰の条件下では、少しのパーセンテ
ージの基質しかプライムされずそれ故少しのパーセンテージの基質しかその後の
GSK−3によるリン酸化に利用され得ないので、プライムされてないNF−A
T基質のリン酸化に影響しないということに注意すべきである。酵素がこれらの
アッセイにおける限界であるということは、クーマシー染色において基質の移動
度に検出可能な変化(リン酸化を反映する)がないので、ありそうなことである。
【0287】 実施例16:PKA及びGSK−3は、化学量論的にNF−ATcをリン酸化 する 野生型NF−AT融合タンパク質(「WT基質」と呼ぶ)を、イン・ビトロで、
精製PKA及び/又はGSK−3キナーゼを用いてリン酸化した。WT基質を2
つのキナーゼとインキュベートした反応において、第1のキナーゼにWT基質を
非放射性ATPによるリン酸化を完了させ;次いで、WT基質ビーズを洗って、
キナーゼを除去し、WTビーズを[γ−32P]ATPの存在下に第2のキナーゼに
よってリン酸化した。
【0288】 これらの結果は、図17Aに示してあるが、GSK−3β単独でのリン酸化は
NF−AT1モル当たり0.01モル未満の32Pを取り込んだが、PKA単独で
は、NF−AT1モル当たり1〜2モルの32Pを与え、GSK−3βとPKAの
組合せは、NF−AT1モル当たり3〜7モルの32Pを与えたことを示している
。カゼインキナーゼII(CKII)及びCa2+カルモジュリン依存性プロテイン
キナーゼII(CaMkII)は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タ
ンパク質NF−AT−GSTを化学量論的にはリン酸化しなかった。その上、G
SK−3βは、NF−ATcを、それが先ずPKAによりリン酸化された場合に
のみリン酸化した。類似の結果が、リンパ球から精製した脱リン酸化NF−AT
cを基質として用いて得られた。
【0289】 次いで、PKAとGSK−3βが、NF−ATcの細胞性リン酸化に寄与して
いるかどうかを、イン・ビボでリン酸化されたNF−ATcからのトリプシンホ
スホペプチドをNF−AT融合タンパク質のイン・ビトロリン酸化に由来するも
のと比較することにより試験した。NF−ATcを、COS細胞(可逆的Ca2+
依存性核局在性を支持する)中で過剰発現させ、[32P]オルトホスフェートで標
識した。3μgのPSH102(Northrop等、Nature 369,497(1994))でトランス
フェクトしたCOS細胞を、[32P]オルトホスフェート(1mCi/ml)で6時
間標識し、ヘマグルチニン(HA)mAb12CA5を用いて免疫沈降させ、ポリ
ビニリデンジフルオリドメンブレンにトランスファーし、トリプシンで消化した
。酸化されたペプチド(1000cpm)をセルロース上の電気泳動(pH1.9
、1000V、30分間)により分離し、次いで、第2の次元でブタノール−酢
酸−ピリジン溶媒を用いるクロマトグラフィー(Boyle等、Methods Enzymol.201,
110(1991))にかけた。一の反応において、PKA+GSK−3βでイン・ビトロ
でリン酸化されたペプチドを、イン・ビボでリン酸化されたペプチドと混合して
から、2次元分離を行って、それらが類似していることを確立した。
【0290】 結果は、図17Bに示してあるが、NF−AT融合タンパク質のイン・ビトロ
リン酸化に由来するものによりイン・ビボでリン酸化されたNF−ATcに由来
するトリプシンホスホペプチドが、一つのホスホペプチドを除いて同一であった
ことを示している。これらの結果は、GSK−3βと他のキナーゼが共力して、
イン・ビボで、NF−ATを、Ca2+依存性核局在性に関与する部位でリン酸化
することを示唆している。
【0291】 実施例17:PKA及びGSK−3によるNF−ATのリン酸化部位 GSK−3及びPKAによるリン酸化部位を、イン・ビトロで32P標識したト
リプシン断片のエドマン分解により限定した。野生型NF−ATc−GST融合
タンパク質をイン・ビトロでPKAにより[γ−32P]ATP(50μCi/μモ
ル)でリン酸化し、Xa因子で開裂させて融合タンパク質を遊離させた。これを
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で単離し、トリプシンにより
開裂させて、放射性断片を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製
した。一つの放射性画分は、第2のエドマン分解サイクルにおいて32Pを放出し
、第2位にSer245を有するトリプシンペプチドの配列ASVTEESWLG
AR(SEQ ID NO:83)を有した。第2の放射性画分は、第3のエドマン分解サイ
クルにおいて32Pを放出し、NF−ATc配列中にSer269を含むトリプシン
ペプチドKYSLNGRを示す分子サイズを有した。NF−ATの残基223〜
277をコードする第2のGST融合タンパク質を精製し、イン・ビトロで非放
射性ATP及びPKAによりリン酸化し、洗ってから、[γ−32P]ATP(50
μCi/μモル)及びGSK−3βでリン酸化した。この融合タンパク質をSD
S−PAGE上で単離してトリプシンにより開裂させ、2つの放射性断片をHP
LCにより精製した。一つの放射性断片は、トリプシンペプチドGLGACTL
LGSPQHSPSTSPR(SEQ ID NO:84)を含んだ。
【0292】 従って、これらの結果は、PKAがNF−ATc融合タンパク質を2つのセリ
ンにおいてリン酸化することを示している(図15A)。Ser245のPKA部位
は、一連の重複するGSK−3基質部位を造る。PKAで予備リン酸化されたN
F−ATc融合タンパク質のGSK−3βによるリン酸化は、GSK−3部位の
このアレイを含むペプチドを標識した(図15A)。
【0293】 実施例18:GSK−3の過剰発現は、Ca++NF−AT誘導される核移行 をブロックする GSK−3βによるNF−ATcリン酸化の生物学的重要性を、その活性を細
胞内で操作し、NF−ATcの細胞下局在性に対する効果を測定することにより
評価した。多くの細胞と同様にGSK−3を発現するCOS細胞(Woodgett, Met
hods in Enzymology, T.Hunter及びB.M.Sefton編(Academic Press, San Diego,
CA, 1991)、第200巻、第564頁)を、FLAGエピトープタグ付きNF−ATc1
をコードする1μgの構築物及び3μgのGSK−3発現ベクター又は空のベク
ターで同時トランスフェクトし、それらの細胞を刺激しないままにおき又は2μ
M イオノマイシンと10mM CaCl2(I+Ca2+)で処理してNF−AT
cの核局在性を誘導した。ヒトGSK−3βcDNA(He等、Nature 374, 617(1
995))をpBJ−5中にクローン化した。NF−ATcをFLAGmAbM2及
び間接免疫蛍光法を用いて可視化した。COS細胞NF−AT移行アッセイをNo
rthrop等、Nature 369, 497(1994)に記載されたように行った。
【0294】 これらの結果は、トランスフェクトされたNF−ATcファミリーのメンバー
(Shibasaki等、Nature 382, 370(1996);Luo等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,89
07(1996))が、内因性NF−ATcと同様に、細胞質性であって、細胞内Ca2+
を増加させる因子により刺激された場合に核へ移行することを示している。その
上、GSK−3βの過剰発現は、COS細胞内で同時発現されたNF−ATcの
Ca2+カルシニューリン誘導される核移行をブロックする。
【0295】 他の例においては、内因性NF−AT依存性の転写がGSK−3βの過剰発現
により阻害されることが示された。Jurkat−T抗原細胞を、2μgの転写
レポータープラスミド(SEAPをコードする遺伝子に結合された、NF−AT
依存性レポーター、AP−1依存性レポーター又はHIV−LTR含有レポータ
ー)と3μgのGSK−3β発現用構築物又は空のベクターでトランスフェクト
した。NF−ATSEAP活性を測定して、イオノマイシン刺激された及びホル
ボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)刺激された対照の活性のパ
ーセンテージとして表し;AP−1及びHIV−LTRSEAP活性は、PMA
刺激した活性のパーセンテージとして表す(Spencer等、Science 262, 1019(1993
))。これらの結果は、図18、パネルAに描いてあるが、GSK−3箇条発現が
NF−AT依存性のレポーター遺伝子の発現を阻害することを示している。AP
−1依存性のレポーター遺伝子の発現も又、おそらくc−Junに対する阻害的
リン酸化を生成するGSK−3の能力のために、GSK−3の過剰発現によりダ
ウンレギュレートされた(Mikolakaki等、Oncogene 8, 833(1993))。GSK−3
は、HIV−LTR依存性レポーター遺伝子の発現に対する阻害効果を有しなか
った。
【0296】 更に別の例においては、様々なセリンスレオニンキナーゼの、COS細胞中の
同時トランスフェクトされたNF−ATcの核エントリーを阻害する能力を比較
した。従って、COS細胞を、1μgのFLAGエピトープタグ付きNF−AT
c1と1μgのセリンスレオニンキナーゼCKII、CaMkδA、CaMkδ
B、PKA若しくはPKC又は3μgのGSK−3β又は0.5μgのERKで
同時トランスフェクトした。ERKcDNAを、pBJ−5中にクローン化した
。キイロショウジョウバエのCKIIcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応により
増幅して、pBJ−5中にクローン化した。マウスのPKAcDNAとPKC−
βの活性型を、pSRα中にクローン化した。カルシニューリンA及びBの発現
用構築物(Clipstone及びCrabtree, Nature 357, 695(1992))、CaMkII構築
物(Srinivasan等、J.Cell Biol.126,839(1994))、COS細胞NF−AT転写ア
ッセイ、及びJurkat−T抗原細胞転写レポーターアッセイ(Northrop等(19
94)Nature 369:497)は、記載された通りであった。トランスフェクトされた細胞
を、イオノマイシンと10mM Ca2+で刺激し、核、細胞質又は両区画に局在
化されたNF−ATを発現している細胞のパーセンテージを視覚的に評価して発
現細胞のパーセンテージとして与える。トランスフェクトされたERKキナーゼ
を、PMA(25ng/ml)を加えることにより活性化した。HAエピトープタ
グ付きキナーゼの相対的な発現の比較を、15μgの全細胞抽出物のHAmAb
12CA5を用いるイムノブロッティングにより行った。
【0297】 これらの結果は、図18Bに与えてあるが、GSK−3は、一層少量で発現さ
れても、NF−ATcの核エントリーの阻止において最も活性であったことを示
している。PKAの過剰発現は、NF−ATcの局在性に殆ど影響を有しなかっ
た。これは、内因性PKA活性又は他のキナーゼがCOS細胞中のNF−ATc
をリン酸化するのに十分であること又はかかるリン酸化が核エキスポートに必要
であるが十分ではないことを示すのであろう。従って、これらの結果は、Ca2+ カルシニューリンシグナリング経路がGSK−3により妨害されることを示す。
【0298】 実施例19:GSK−3の過剰発現は、NF−ATの核エキスポートを促進す この実施例は、NF−ATの核エキスポートに対するGSK−3の効果を、先
ずその核への移行を細胞をイオノマイシンで刺激することにより引き起こし、次
いで、Ca2+カルシニューリンシグナルを排除し、更なる核インポートをカルシ
ニューリン阻害剤FK506でブロックすることにより記載する(Clipstone及び
G.R.Crabtree, Nature 357, 695(1992))。
【0299】 COS細胞を、FLAGエピトープタグ付きNF−ATc1(1μg)、カルシ
ニューリンA及びB(各0.5μg)をコードする発現用構築物(N.A.Clipstone及
びG.R.Crabtree, Nature 357, 695(1992))、及び2μgのベクターGSK−3β
又はGSK−KM、触媒的に不活性なGSK−3β(He等、Nature 374, 617(199
5))で同時トランスフェクトした。細胞を、図15A中の下線を付したセリンが
カルシニューリンとGSK−3βによりアラニンに変化されたNF−ATc1の
バージョンでも同時トランスフェクトした。Ca−カルシニューリンを含むこと
は、NF−ATcの核エントリーを促進し(Shibasaki等、Nature 382, 370(1996
);Luo等、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 93, 8907(1996))、GSK−3βの過剰発
現により誘導されるNF−ATcの細胞質局在性を克服する。野生型NF−AT
cは、刺激してない発現細胞の98%においてサイトゾル中に局在し、90%の
細胞が、I+Ca2+処理によりNF−ATcを核に移行させたが、この移行はF
K506により完全にブロックされた。NF−ATcは、I+Ca2+で60分間
処理することにより核に局在し、次いで、培地をFK506(20ng/ml)を
含む培地に変えてCa2+シグナリングを終了させ且つNF−ATcの核再エント
リーをブロックした。トランスフェクトされたNF−ATcを、間接免疫蛍光法
によりFLAGmAbM2を用いて検出し、200の発現細胞を、NF−ATc
の細胞質、核又は両区画での発現につき評価した。
【0300】 これらの結果は、図19に示してあるが、GSK−3βの過剰発現(NF−A
Tcの量の約1/10の量)がNF−ATcの細胞質への移動を、ベクター又は
触媒的に不活性な型のGSK−3β(He等、Nature 374, 617(1995))をトランス
フェクトされた細胞と比べて促進したことを示している。GSK−3βの過剰発
現は、セリン−プロリン反復中にS→A変異を有するNF−ATcの構成的な核
局在性に影響を与えなかった。これらのデータは、GSK−3βが、触媒的に作
用してNF−ATcの核エキスポート指示すること及び核エキスポートの調節が
NF−ATcの保存されたセリンでのリン酸化を含むことを示している。NF−
ATcファミリーのメンバーは多くの組織で発現され、核インポート及びエキス
ポートに関与するNH2末端残基において配列類似性を有するので、GSK−3
が4つの異なるNF−ATcファミリーメンバーの各々の区画化を制御すること
はありそうなことである。
【0301】 実施例20:NF−ATは、心臓肥大の治療用標的である Ca++/カルシニューリン/NF−ATシグナリング経路。 このNF−AT転写因子は、最初は、T細胞において、ヒトIL2プロモータ
ー(1,2)の遠位抗原レセプター応答エレメントARRE−2に結合する迅速に
誘導されるタンパク質複合体として記載された。この活性な転写因子は、細胞質
成分(NF−ATc)及び核成分(NF−ATn)から作られる(3)。この転写因子
のNF−ATcファミリーは、少なくとも4つの別個の遺伝子NF−ATc1、
c2、c3、c4によりコードされる(Genome Data Base (GBD) Nomenclature C
ommittee)(4−9)。NF−ATcファミリーのタンパク質は、組織分布の特異
的なパターンを示す(表1)。
【0302】
【表4】
【0303】 NF−AT依存性転写の活性化は、少なくとも3つの異なるシグナリング経路を
統合する。NF−ATcは、細胞質内に隔離され、[Ca++]の上昇に応じて迅速
に核に移行する(3、10−12)。この細胞質から核への移行は、カルシニュー
リンによるNF−ATcの脱リン酸化を必要とし、カルシニューリンの活性を選
択的に阻害する免疫抑制剤シクロスポリンA(CsA)及びFK506によりブロ
ックされる(13−21)。NF−ATnの誘導及び/又は活性化は、Ras/M
APK経路からのシグナル(7,10,22)及び細胞骨格のRac/CDC42
依存性の再編成を必要とする((23))。各NF−ATcファミリーメンバーは、
2つの主要な機能的ドメイン、N末端調節領域又はNF−AT相同領域(NHR)
及びC末端DNA結合ドメイン(DBD)又はRel相同性ドメイン(RHD)を含
む。このN末端調節ドメインは、NF−ATcタンパク質の調節された核インポ
ート及びエキスポートに必要十分である。N末端領域内には、セリンリッチ領域
(SRR)及び3つのセリンプロリン(SP)反復を含む幾つかの保存されたモチー
フがあり、それらは、プロリン指向性キナーゼ部位である(8,19,24)。こ
れらのモチーフは、対抗するキナーゼとホスファターゼによる両方向性NF−A
Tc調節の標的である。これらのモチーフ中の保存されたホスホセリンは、カル
シニューリンの基質として働き、セリンスレオニンキナーゼのグリコーゲンシン
ターゼキナーゼ−3(GSK−3)は、NF−ATcを、これらの保存されたセリ
ン残基でリン酸化してCa++/カルシニューリン誘導される核エントリーに対抗
する(24)。高度に保存されたC末端のDNA結合ドメインは、Relファミリ
ータンパク質のDNA結合ドメインとの中位の配列相同性を示し且つトポロジー
を共有するが、臨界的残基の弛緩のために、単独では生理的濃度でDNAに結合
しない(25−30)。従って、すべてのNF−ATcタンパク質は、DNAへの
結合のための核内パートナー(NF−ATn)を必要とする。AP−1ファミリー
メンバー、Fos及びJunのヘテロ二量体結合は、NF−ATnとして機能す
ることが示されてきた(25,30,31)。NF−ATcとAP−1は、共同し
て、近接した認識部位に結合し、相乗的に遺伝子発現を活性化する(25,28
,32)。加えて、亜鉛フィンガー転写因子GATA4は、心筋細胞における転
写の活性化においてNF−ATc4と共同することが示されている。
【0304】 心臓肥大 米国では、毎年50万人の新たな心臓病患者が診断され、死亡率は約50%で
ある。心臓肥大は、心筋の一般的拡大であり、初期には、心臓の出力を増す心筋
の代償性応答である。しかしながら、持続的肥大は、拡張型心筋症、機能不全、
心臓麻痺及び突然死を生じ得る。様々な根底にある病状例えば高血圧、心筋梗塞
、不整脈、内分泌異常及び心臓タンパク質(33−35)遺伝子の遺伝的変異は、
肥大型心筋症(HCM)を生じ得る。トランスジェニックマウスの心臓における構
成的に活性な/Ca++非依存型のカルシニューリンの又は構成的に核型のNF−
ATc4の過剰発現は、心臓肥大に典型的な分子的及び病態生理学的変化を引き
起こし、ヒトの心臓病の病理学的な面をすべて真似る(36)。これらのカルシニ
ューリントランスジェニック動物におけるHCMの進展は、シクロスポリンA(
CsA)処理によりブロックされ、これは、カルシニューリンのホスファターゼ
活性がHCMの誘発に必須であることを示している。心筋細胞における肥大応答
を誘導するアンギオテンシンII及びフェニレフリンによる心筋細胞の刺激は、
心筋細胞におけるNF−AT依存性の転写を活性化する。その上、CsAとFK
506は、アンギオテンシン及びフェニレフリン誘導された肥大応答をイン・ビ
トロでブロックする。CsAは又、トロポモジュリン、ミオシン軽鎖−2、胎児
β−トロポミオシン等の収縮性心臓タンパク質の突然変異に基づく3種類のマウ
スモデルにおいてHCMの進展をブロックすることが示されている(33)。加え
て、CsA及びFK506処理は、ラットの大動脈バンディングにより引き起こ
される圧負荷誘発性肥大を阻止した。これらのデータは、Ca++/カルシニュー
リン/NF−ATcシグナリング経路がHCMの開始に重大な役割を演じている
ことを示している。すべての肥大刺激は、細胞内Ca++レベルを増加させる(3
7−39)。この細胞内Ca++の増加は、直接、カルシニューリンを活性化する
ことができた。カルシニューリンの活性化は、NF−ATcタンパク質の脱リン
酸化と核移行によってHCMを開始することができた。NF−ATc依存性の転
写は、肥大応答遺伝子を誘導することができた。
【0305】 電圧ゲートCa++チャンネル(VSCC)は、心筋の発達と収縮性において、中
心的役割を演じる。VSCCは、活動電位の急速なアップストローク中の膜脱分
極により開く。遅れた脱分極とCa++ホメオスタシスの変化を伴う活動電位持続
時間の延長は、ヒトの心臓病及び心臓肥大の動物モデルにおける一般的所見であ
る。心筋細胞は、高電圧活性化L型VSCCと低電圧活性化T型VSCCを発現
する。L型Ca++チャンネルは、心筋における興奮−収縮カップリングにおいて
中心的役割を演じ、従って、イオノトロピーの鍵となるレギュレーターである。
L型VSCCからのCa++流入は、心収縮期において、筋小胞体(SR)からのC
++放出を増大させて、収縮を開始する。心筋において、VSCCからのCa++ 流入は、カテコールアミンの作用と密接に関係している。心筋細胞のβ−アドレ
ナリン様の刺激は、細胞内cAMPの増大したレベルにより、L型VSCCが開
く確立を増大させる。加えて、cAMP依存性プロテインキナーゼA経路のβ−
アドレナリン様の刺激は、SRCa++−ATPアーゼのCa++に対する親和性を
、調節タンパク質ホスホランバンのリン酸化により増大させ、そうして、SRの
Ca++充填状態を増大させる。SRの充填状態は、次の収縮期の収縮力を決定す
る。加えて、L型VSCCからのCa++流入は、ニューロン(40)と骨格筋(4
1)における遺伝子転写の引き金を引くことができる。心臓におけるT型チャン
ネルは、L型チャンネルより一層低密度で存在する。T型チャンネルの役割は、
十分に限定されていない。T型チャンネルは、胎児の心臓の発生中及び潜在的に
病理的状態例えば肥大(42)において、心臓の律動的活動において役割を演じて
いると考えられる。
【0306】 研究結果 我々は、相同組換えを利用して、心臓肥大においてEric Olson博士のグループ
が関わってきたNF−ATc4タンパク質のアミノ酸1〜438をコードするN
F−ATc4遺伝子のエキソン1、2及びエキソン3の部分を欠失させた。マウ
ス129ライブラリーから得た15キロベースのゲノムクローンを用いて、ポジ
ティブ/ネガティブ選択により相同組換え用ターゲティングベクターを構築した
。PGK−neoカセットを、NF−ATc4遺伝子の第1、第2及び第3エキ
ソンに逆向きに挿入して、NF−ATc4の調節領域とDNA結合ドメインの部
分を欠失させた(図1)。標的のES細胞クローンを、C57B1/6胚細胞への
マイクロインジェクションのために用い、その後、偽妊娠CD−1雌の子宮へ移
した。雄のキメラマウスをCD−1、C57B1/6及び129Sv雌と交配さ
せ、その結果生成したヘテロ接合マウスを繁殖させてホモ接合とした。このホモ
接合のNF−ATc4ノックアウトマウスは、利用可能であり、それ故、心臓の
機能について試験することができる。
【0307】
【0308】同等物 当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例の多くの同等物を認識し、
日常的実験を用いて確かめることができよう。かかる同等物は、後記の請求の範
囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1AはヒトNF−ATccDNA(配列番号45)のヌクレオチド配列と、
それから誘導したアミノ酸配列(配列番号46)を示す。Nは配列に曖昧さが存
在することを示す。
【図1B】 図1BはヒトNF−ATccDNA(配列番号45)のヌクレオチド配列と、
それから誘導したアミノ酸配列(配列番号46)を示す。Nは配列に曖昧さが存
在することを示す。
【図2】 図2はT細胞(Jurkat)及び非T細胞(Cos)中のNF−ATc蛋白質の発現
を示す。
【図3A】 図3AはNF−ATccDNAクローンが、NF−AT部位からの転写を活性
化しそして非T細胞中のIL−2プロモータを活性化できる蛋白質をコードする
ことを示す。
【図3B】 図3BはNF−ATccDNAクローンが、NF−AT部位からの転写を活性
化しそして非T細胞中のIL−2プロモータを活性化できる蛋白質をコードする
ことを示す。
【図4A】 図4AはNF−ATc、NF−ATp及びRel族メンバーの間のRel相同
領域における相同性を示す。マウスのNF−ATp及びRel蛋白質ドーサル(
ショウジョウバエの軸椎決定蛋白質)(配列番号47)、ヒトc−Rel(配列
番号48)、NF−κBp50(配列番号49)及びNF−κBp65(配列番
号50)の蛋白質配列が、NF−ATc(配列番号51)及びNF−ATp(配
列番号52)の配列に対して並べてある。番号付けはNF−ATcに対するもの
である。NF−ATcへの同一性は白抜きの四角で、また、公知の残基又は構造
は陰領域でしました。星印は1)NF−ATcが他のRel蛋白質の大多数に対
して反転電荷を有すること、2)NF−ATcがヒスチジン又は他のキレート残
基で潜在的な塩ブリッジを置換したことを示す。下側部分はNF−ATc及びN
F−ATpの模式図である。
【図4B】 図4BはNF−ATc、NF−ATp及びRel族メンバーの間のRel相同
領域における相同性を示す。マウスのNF−ATp及びRel蛋白質ドーサル(
ショウジョウバエの軸椎決定蛋白質)(配列番号47)、ヒトc−Rel(配列
番号48)、NF−κBp50(配列番号49)及びNF−κBp65(配列番
号50)の蛋白質配列が、NF−ATc(配列番号51)及びNF−ATp(配
列番号52)の配列に対して並べてある。番号付けはNF−ATcに対するもの
である。NF−ATcへの同一性は白抜きの四角で、また、公知の残基又は構造
は陰領域でしました。星印は1)NF−ATcが他のRel蛋白質の大多数に対
して反転電荷を有すること、2)NF−ATcがヒスチジン又は他のキレート残
基で潜在的な塩ブリッジを置換したことを示す。下側部分はNF−ATc及びN
F−ATpの模式図である。
【図5A】 図5Aは、Jurkat細胞(レーン1−6)又はHela細胞(レーン7)
からのRNAでのヒトNF−ATcのリボヌクレアーゼ保護を示す。期待される
特定のリボヌクレアーゼ抵抗性の断片は304個のヌクレオチド(矢印)である
。Hela細胞は刺激されなかった。Jurkat細胞は20ng/ml PMA及び2
uMのイオノマイシン(ionomycin)で刺激されない、又は3時間刺激された後
に表示の時間でプラス又はマイナス100ng/ml CsAが添加された。
【図5B】 図5Bは、ヒト細胞KJ(preB細胞ALL)、JD−1(B細胞リネージ
ュALL)、K562(赤白血病細胞系統)、CML(骨髄白血病を持つ患者の
骨髄細胞)、ヒト筋細胞、Hep G2(肝臓細胞系統)、HPB ALL(2
μg/mi PHA及び50ng/ml PMAで3時間刺激された又は刺激さ
れないT細胞系統)、及びリボヌクレアーゼ保護により分解されたHela細胞
からのRNAを示す。このゲルの長い露出はK562細胞系統が少量のNF−A
Tc転写量を有することを示す。
【図5C】 図5Cはマウス組織とNF−AT−Tag形質転換(トランスジェニック)マ
ウスからの皮膚腫瘍 (Verweij et al. (1990) J. Biol. Chem 1578
8-15795)におけるNF−ATc(上側図)及びNF−ATc(下側図)
mRNA発現を示す。細胞は刺激されないか又は20ng/ml PMA及び2uMで
3時間刺激された。RNAはマウスcDNAプローブを使用した定量リボヌクレ
アーゼ保護により測定した。プローブに相同の断片の予想された寸法はなじる子
により示されている。
【図6A】 図6AはNF−AT又はHNF−1(β28)に対するリポータ構造体で感染
されたCos細胞とJurkat細胞を示す。NF−ATc(+NF−AT) 又
は HNF-la (+HNF-1) に対する共感染発現ベクトルは、指示されている場合に
含まれ、そうでない場合はpBJ5ベクターが含まれる。細胞は指示のようにPMA、 P + I (PMAとイオノマイシン)で刺激された。
【図6B】 図6BはIL-2ルシフェラーゼで感染されたCos細胞と、図Aにおけると同様な
発現ベクトルを示す。刺激はAと同様である。図AとBのデータは空pBJ5ベク
ターを有する非刺激値に対するルシフェラーゼ仮性の誘導倍数として表されてい
る。バーは2〜3の独立した感染の平均と範囲を示す。
【図6C】 図6CはCos細胞中のNF−ATc発現が、特異的DNA結合活性を生じさ
せることを示す。pBJ5(レーン1及び3)及びNF−ATc (レーン2及び4
−7)により感染されたCos細胞からの核抽出物、非感染Jurkat細胞(
レーン8−11)からの核抽出物、pBJ5−又は NF−ATc感染Cos細胞 (レ
ーン12−13、15−16) をHela核抽出物(レーン15−16)と組み合
わせたものからのサイトソル(液性細胞質)を使用したゲル易動度シフトである
。Hela核抽出物は単独。標識したAP−1(レーン1−2)又は NF−A
T (レーン3−16)プローブと冷競合オリゴヌクレオチドが示されている。
矢印は特定のAP−1とNF−ATの複合体を示す。
【図6D】 図6DはNF−ATの抗血清誘導のスーパーシフトを示す。刺激したマウスJ
urkat細胞又はマウス胸腺細胞からの核抽出物を用いたのNF−AT及び
AP−1のゲル易動度である。抗血清、予備免疫なしか、又は2種の異なった免
疫抗血清かが指示のように含まれていた。矢印は特定のNF−AT又はAP1複
合体又はスーパーシフトされた複合体(*)を含んでいた。
【図7】 図7は優性陰性NF−ATcを示す。Jurkat Tag細胞がベクタープ
ラスミド(対照)又は優性陰性NF−ATcプラスミド、並びに指示の分泌アル
カリ性ホスホターゼレポータプラスミドで感染された。感染細胞はその後に新規
な培地で24時間培養され分泌されたアルカリホスホターゼの活性が、1uMア
イノマイシと 20ng/ml PMA(NF−AT及びIL−2レポータ)又
は20ng/ml PMA単独(APIレポータ)で刺激した後又は無刺激(RS
Vレポータ)で16時間から24時間後に測定された(Clipstone and Crabtree
(1992)Nature 357:695−698)。バーは優性陰性(dominant ne
gative)NF−ATcに感染した細胞からの分泌アルカリホスホターゼの活性を
、対照のプラスミドでへ移行して感染した細胞からの活性に対する百分率で示し
、また(n)の独立した感染から得たデータを示す。優性陰性NF−ATcはア
ミノ酸463のPvuIIに延長するエピトープ標識NF−ATcのカルボキシ
末端切断よりなる。
【図8】 図8はJurkat細胞で発現されるエピトープ標識NF−ATcの易動度の
変化を示す。細胞は図2のようにNF−ATcで感染され、示したように2時間
、プラスマイナス100ng/ml CsAで刺激された。全ての細胞溶解物は図2のよ
うにしてウエスタンブロットにより分析された。
【図9A】 図9AはFLAGエピトープ標識NF−ATc蛋白質の図を示し、Rel類似領域
(RSD)、2つの核移行配列(NLS)、保存されたセリンリッチ領域(SRR
)のそれぞれの位置を示し、又3繰返しリッチはセリンとプロリンである(SP1
, SP2, SP3)。
【図9B】 図9Bは細胞のイオノマイシンとカルシウム(I + Ca++)で、又はFK506pl
us (I+Ca++ + FK506) での異なった時間で処理された、又はイオノマイシ
ンと 2.5 mM EGTA (I + EGTA)で60分処理された後に、核中でNF−AT
c1を発現するNF−ATc(SH160c)により移行的に感染されたCos細
胞の百分率を示す図である。
【図9C】 図9Cはセリンリッチ領域 (SRR) 及び緑蛍光蛋白質(GFP)に融合した3セ
リンプロリンリッチ領域(SP1, SP2, SP3)を含むNF−ATc1のアミノ酸
1〜148を含むNF−AT融合蛋白質 CA4l8-GFPを示す図である。
【図9D】 図9Dは、イオノマイシンとカルシウムで1時間刺激した後、培地をFK506
を含有する培地で置換した後の、細胞質NF−ATを有するNF−ATc1 (□
) 又はNF−AT(C△418)-GFP (O)をコードする構造体(constructs
)で移行的に感染されたCos細胞の百分率を示す。細胞質中でNF−ATcを
発現する細胞及び細胞質及び核内でNF−ATcを発現する細胞を添加し、分析
された発現細胞の全数で割った。
【図10】 図10はFLAGエピトープとNF−ATc1の第2アミノ酸の間に挿入されたSV
4O大型T抗原からの野生型NLSのゼロ、1つ又は2つのコピー、又はNLS(
NLS-T)の変異体の1つ又は2つのコピー、に融合したNF−ATc1をコー
ドする構造体を細胞に移行的に感染させ、続いて核内のNF−ATを発現するC
os細胞の百分率を示す図である。細胞はアンチFLAG抗体で染色した。
【図11A】 図11AはNF−ATc1 (配列番号53及び配列番号54)における2つの
保存された推定のNLSのアミノ酸配列(配列番号53及び配列番号54)と、
それらの配列番号38における位置を示す。
【図11B】 図11BはNF−ATc1と2つのNLSのアミノ酸配列を示し、それらの上
には変異体NLSのアミノ酸配列(TRTGは配列番号55を有し、 KRKKは配列番
号56を有する)を示す。図の下側には、細胞の移行敵艦線に続いたイオノマイ
シンとカルシウムで60分刺激した後に、核内で野生型NF−AT又は変異NF
−ATを発現するCos細胞の百分率を示す(変異N末端NLSを有するNF−
ATc1蛋白質に対応するm265、及びm265変異体とC末端NLSの変異
体を含むm265+682)。核(薄い陰影領域)、細胞質(実線領域)又は両
区分(濃い陰影部分)における細胞染色の割合を決定した。
【図12A】 図12AはNF−ATc1からのSRRのアミノ酸配列(配列番号38のアミノ
酸170〜194、配列番号57に記述)と、指示されたセリンからアラニンの
置換(配列番号58〜63)を有するNF−ATc1蛋白質の細胞移行(核N又
は細胞質C)を示す。
【図12B】 図12Bはウエスタンブロットの写真であり、NF−ATc(WT)のアミノ
酸196〜304を含むホスホリル化GST-NF-ATc融合蛋白質、又は3つのSP繰
り返しにおけるセリンからアラニンへに変異体(S−>A)であって、[γ-32P]AT
Pでの培養によるホスホリル化、細胞NF−ATキナーゼ活性(脳抽出物)の部
分精製、次いで上記ホスホターゼでの培養、そして電気泳動による分離、及びオ
ートラジオグラフィー撮像(頂部レーン)したものを示す。底部のレーンはCoom
assie染色により化しかされた各試料中のNF−ATの量を示す。
【図13】 図13Aは空発現ベクター(Vector)又はNF−ATcのHAエピトープ標識
アミノ末端418残基(2−418)をコードするベクターで感染させたCos
細胞の抽出物の、GSTに結合したグルタチオンアガロースビーズによる又はNF
−ATcのRSDとの融合体GST(GST-RSD)に結合したビーズと共に培養したもの
による、親和精製の結果を示すウエスタンブロットの写真である。親和により選
択した蛋白質はアンチHA 12CA5抗体により免疫ブロットすることにより検出
された。図の左側はアガロースビーズに固着したNF−ATポリペプチド及びビ
ーズ上で親和精製したNF−ATポリペプチドのグラフ表示である。 図13BはGST-RSD又はカルボキシ末端NLS (mNLS)における変異体を
持ち、NF−ATcのHAエピトープ標識アミノ末端418残基(2〜418)
をコードする構造体又はベクター単独で感染させたCos細胞からの親和生成物
の結果を示すウエスタンブロットの写真である。結合した蛋白質は12CA5抗体
で検出した。図の左側はこの例で使用されたNF−ATポリペプチドのグラフ表
示である。 図13CはNF−ATcのHAエピトープ標識アミノ末端418残基(2〜4
18W)又はS−>A変異体がGST-RSDとのSRRまたはSP反復中に存在したもの
により感染させたCos細胞からの抽出物の親和生成物の結果を示すウエスタン
ブロットの写真である。関連した蛋白質は7A6抗体で検出した。ブロットの下
側部分は親和精製の前に細胞抽出物中に存在するNF−ATの量を示す。
【図14】 図14はNF−ATc核エントリの機構モデルを示す。このモデルによると、
細胞質NF−ATcはSP反復及びSRR上でホスホリル化され、その2つの部分的
に冗長なNLS、265〜267位置の配列KRK、及びNF−ATc1の682-
685位置での配列KRXX/Rの活性を遮蔽する。カルシニューリンの活性化に応
答する脱ホスホリル化は分子内相互作用の修正おそらくは配座の変化を導き、一
個以上のNLSを核輸入機構に曝す。核内ではカルシウム信号の終了で、おそら
くは核輸出配列(NES)への露出によりサイトソールへの急速な輸出が生じる。
【図15】 図15Aは配列番号64に記述されたNF−ATc1のアミノ酸196〜30
4のアミノ酸配列(配列番号38)を示す。推定の重畳するGSK−3一致部位
[SPXXS(P)] (Fiol et al., J. Biol. Chem. 269, 32187 (1994
)は上線で示す。核移行配列は太字で、インビトロPKAによりホスホリル化さ
れた部位は四角で示した。下線を施したセリンはある例のアラニンと置換されて
いるセリンである。 図15Bは脳抽出物の硫酸アンモニウム分画に続いてP−11カラムから溶出
した各種分画におけるGSK−3活性のレベルを示すグラフである。この図の下
側には野生型(WT)NF−ATc又は図Aの下線部のセリンがアラニンへ変異
されているか、又はインビトロでPKAでホスホリル化(WT−PKA prephos
ph.)されたNF−ATc1 含有するGST-NF-AT融合体をホスホリル化するため
の溶出分画の能力を示すウエスタンブロットのオートラジオグラフを示す。 図15Cは図BのP−11プールのMono-Sカラムから溶出した各種分画中の蛋
白質の量を示すグラフである。パネル下側のウエスタンブロットオートラジオグ
ラフは野生型NF−ATc1又は図Aの下線を施したセリンがアラニンに変異さ
れたNF−ATc1、又はインビトロでPKAでホスホリル化されたNF−AT
c1(WT−PKA prephosph.)を含有するGSTNF−AT融合蛋白質をホスホ
リル化するための溶出画分の能力を示すウエスタンブロットのオートラジオグラ
フを示す。底部の2つの写真はGSK−3αとGSK−3βに対して特異的な抗
血清で培養した溶出画分からの蛋白質を含むウエスタンブロットのオートラジオ
グラフである。
【図16】 図16Aは抗血清でGSK25- 3α及び/又は GSK−3βへ脱免疫した脳抽
出物により培養したPKA予備ホスホリル化したNF−AT(WT−PKA pre
phos.)、又は[γ32P]ATPとのインビトロキナーゼ反応での対照抗体、及び32P
標識基質(上側ゲル;下側ゲルはCoomassie染色を示す)におけるのウエスタン
ブロットのオートラジオグラフを示す。 図16BはPKA予備ホスホリル化したNF−AT(WT−PKA prephos.
)、又は抗血清でGSK25- 3α及び/又は GSK−3βへ脱免疫した脳抽出物
により培養したNF−AT(WT)、又は[γ32P]ATPとのインビトロキナーゼ反
応での対照抗体(Ig)のウエスタンブロットのオートラジオグラフを示す。
【図17】 図17Aは表示の精製キナーゼとインビトロでホスホリル化したNF−AT-G
ST融合蛋白質のウエスタンブロットのオートラジオグラフを示す。最も右のレー
ンでは、第1のキナーゼはWT基質を非放射性のATPでホスホリル化を完結す
ることが許容され、次いでWT基質ビーズが洗浄されてキナーゼを除去され、そ
してWT基質ビーズが [γ-32P]ATPの存在下に第2のキナーゼによりホスホリル
化された。 図17Bはインビトロで表示のキナーゼでNF−ATc1野生型融合蛋白質の
二次元トリプシンホスホペプチドマップを示すオートラジオグラフである。NF
−ATcはCos細胞中で過剰発現され(これは可逆Ca2+依存性核移行を支持
する)、32P正リン酸塩により標識された。右下の図ではインビトロでホスホリ
ル化したペプチド中のPKA + GSK−3βが二次元分離の前にインビトロホ
スホリル化したペプチドと混合されてそれらが類似するようにした。異なった移
動をするホスホペプチドは点線円で示した。
【図18】 図18AはNF−AT,AP−1又は HIV10 LTR調節要素の制御下にSEAPレ
ポータ遺伝子で感染させたJurkat細胞からの抽出物中のアルカリホスホタ
ーゼ(SEAP)の活性を示す。GSK−3βは過剰発現されているか又は空ベクタ
ーが過剰発現されていた。NF−AT SEAP活性はイオノマイシン刺激及びホル
ボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)刺激対照の活性の百分率で
表現した。AP−1及び HIV-LTR SEAP活性はPMA刺激活性の百分率として表
した(Spencer et al., Science 262, 1019 (1993))。 図18BはFLAGエピトープで標識した NF−ATcl及び表示の各セリン−ト
レオニンキナーゼによりCOS細胞を共感染させた後に細胞質、核又は両者中でN
F−ATc1を発現する細胞の百分率を示す。細胞はイオノマイシンと10 mM
Ca2+で刺激されており、核、細胞質又は両者中に移行したNF−ATを発現する
細胞の百分率は視覚的に評価され発現細胞の百分率として表されている。感染し
たERKキナーゼはPMA(25ng/ml)の添加により活性化された。
【図19】 図19はFLAGエピトープで標識したNF−ATcをコードする発現構造体、カ
ルシニューリンAとB、及びベクター(□)、GSK−3β (◇) 又は GSK-K
M (○)、触媒不活性GSK−3β (He et al., Nature. 374, 617 (
1995))で共感染させたCOS細胞中のGSK−3βの過剰発現後の、細胞質
NF−ATcを有する細胞の百分率を表す。細胞は又図1Aの下線を付けたセリ
ンがカルシニューリンでアラニンに変化されたNF−ATc1及びGSK−3β
により共感染した。核内へのNF−ATc移行を得るために、感染細胞はイオノ
マイシン及びCa2+で60分処理され、次いで培地をFK506 (20 ng/ml)
を有するものに変えてCa2+信号を終了させ、NF−ATcの核再導入をブロッ
クした。感染NF−ATcは間接免疫蛍光法によりFLAG mAb M2で検出した。2
00個の発現細胞を細胞質、核又は両者中でNF−ATcを発現するものとして
評価した。
【図20A】 図20Aは内生NF−ATc遺伝子、ES細胞を感染させるのに使用した照準
構造体、及び相同組み替えからの標的NF−ATc4の模式図である。
【図20B】 図20Bは3’外側プローブによりブロットされた、EcoRVで消化されたマウ
スの尾のDNAのサザンブロットを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 15/09 ZNA C12Q 1/42 // C12Q 1/02 1/68 Z 1/42 C12N 15/00 ZNAA 1/68 A61K 37/02 (72)発明者 ジェフリー ピー.ノースロップ アメリカ合衆国 95008 カリフォルニア、 キャンベル、ノース ミルトン アベニュ ー 313 (72)発明者 ステファン エヌ.ホー アメリカ合衆国 92122 カリフォルニア、 サンディエゴ、アウォード ロウ 3014 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA11 CA04 CA09 CA12 DA02 DA03 GA14 HA01 4B063 QA05 QQ08 QQ22 QQ33 QQ43 QR02 QR13 QR62 QR77 QS03 QS25 QX02 4C084 AA01 AA02 AA13 AA17 AA27 BA01 BA08 BA23 BA35 BA44 CA17 CA18 NA13 NA14 ZA362

Claims (33)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 患者における心臓肥大を防止し又は軽減する方法であって、
    その患者に、医薬として有効な量のNF−ATアンタゴニストを投与して心筋組
    織中のNF−ATの生物学的活性を減じ、それによりその患者における心臓肥大
    を防止し又は軽減することを含む、上記の方法。
  2. 【請求項2】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATの転写活性を減じ
    る、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATの核移行を阻害す
    る、請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATの脱リン酸化を阻
    害する、請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 NF−ATアンタゴニストが、カルシニューリンのNF−A
    Tへの結合を阻害する、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATのリン酸化を刺激
    する、請求項3に記載の方法。
  7. 【請求項7】 NF−ATのリン酸化が、GSK−3の増加により刺激され
    る、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATを含む複合体の形
    成を阻害する、請求項2に記載の方法。
  9. 【請求項9】 複合体が、NF−AT結合部位を含む核酸を含む、請求項7
    に記載の方法。
  10. 【請求項10】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATポリペプチドの
    優性ネガティブ変異体である、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATポリペプチドの
    優性ネガティブ変異体をコードする核酸である、請求項9に記載の方法。
  12. 【請求項12】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATポリペプチドの
    生成を阻害する、請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 NF−ATアンタゴニストが、アンチセンスNF−AT核
    酸又はリボザイムである、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATポリペプチドを
    コードする遺伝子の転写を阻害する、請求項12に記載の方法。
  15. 【請求項15】 NF−ATアンタゴニストを局所的に送達する、請求項1
    に記載の方法。
  16. 【請求項16】 NF−ATアンタゴニストが、心臓を標的とする製薬上許
    容し得る送達用ビヒクル中にある、請求項1に記載の方法。
  17. 【請求項17】 患者が、鬱血性心臓病を有する、請求項1に記載の方法。
  18. 【請求項18】 NF−ATが、NF−ATc4である、請求項1に記載の
    方法。
  19. 【請求項19】 NF−ATアンタゴニストが、NF−ATc4ポリペプチ
    ドのアンタゴニストであって、NF−ATc1、NF−ATc2及びNF−AT
    c3ポリペプチドのアンタゴニストでない、請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 アンタゴニストを下記の: (i)一の分子と相互作用するのに十分な単離されたNF−ATポリペプチド又は
    その部分を、その分子及び一の化合物と、その化合物が存在しなければNF−A
    Tポリペプチド又はその部分とその分子が相互作用する条件下で接触させ;そし
    て (ii)NF−ATポリペプチド又はその部分とその分子との間の相互作用のレベ
    ルを、その化合物の存在下で、その化合物の非存在下と比較して測定する ことを含む方法により同定する、請求項1に記載の方法であって、 その化合物の存在下でのNF−ATポリペプチド又はその部分とその分子との間
    の、その化合物の非存在下での相互作用より弱い相互作用が、その化合物がNF
    −ATポリペプチドの活性のアンタゴニストであることを示す、上記の方法。
  21. 【請求項21】 分子が、核酸である、請求項20に記載の方法。
  22. 【請求項22】 核酸が、NF−AT認識配列を含む、請求項21に記載の
    方法。
  23. 【請求項23】 分子が、ポリペプチドである、請求項20に記載の方法。
  24. 【請求項24】 ポリペプチドが、ロイシンジッパーを含むポリペプチドで
    ある、請求項23に記載の方法。
  25. 【請求項25】 ポリペプチドが、c−Fos又はc−Junである、請求
    項24に記載の方法。
  26. 【請求項26】 ポリペプチドが、カルシニューリンである、請求項23に
    記載の方法。
  27. 【請求項27】 NF−ATポリペプチドが、NF−ATc4であり、NF
    −ATc4以外のNF−ATポリペプチドを阻害する化合物を選択することを更
    に含む、請求項20に記載の方法。
  28. 【請求項28】 アンタゴニストを下記: (i)NF−ATポリペプチドとNF−AT結合部位を含むプロモーターに操作可
    能に結合されたレポーター遺伝子を含む細胞を試験化合物と接触させ;そして (ii)試験化合物と接触させた細胞におけるレポーター遺伝子の発現レベルを、
    その試験化合物に接触させてない細胞と比較して測定する ことを含む方法により同定する、請求項1に記載の方法であって、 試験化合物と接触させた細胞におけるレポーター遺伝子の、試験化合物と接触さ
    せてない細胞と比較しての一層低レベルの発現が、その化合物がNF−AT活性
    のアンタゴニストであることを示す、上記の方法。
  29. 【請求項29】 アンタゴニストを下記の: (i)リン酸化され得るNF−ATポリペプチド又はその部分を、一の混合物及び
    化合物と、その化合物がなければNF−ATのリン酸化がその細胞抽出物により
    調節される条件下で接触させ;そして (ii)NF−ATポリペプチド又はその部分のリン酸化レベルを、その化合物の
    存在下で、非存在下と比較して測定する ことを含む方法により同定する、請求項1に記載の方法であって、 その化合物の存在下におけるNF−ATポリペプチド又はその部分の、その化合
    物の非存在下よりも一層高レベルのリン酸化が、その化合物がNF−AT活性の
    アンタゴニストであることを示す、上記の方法。
  30. 【請求項30】 アンタゴニストを下記の: (i)リン酸化され得るNF−ATポリペプチド又はその部分を含む細胞を、NF
    −ATのリン酸化を調節する薬剤及び一の化合物と接触させ;そして (ii)その化合物と接触させた細胞におけるNF−ATポリペプチド又はその部
    分のリン酸化レベルを、その化合物と接触させてない細胞と比較して測定する ことを含む方法により同定する、請求項1に記載の方法であって、 NF−ATポリペプチド又はその部分の一層低レベルのリン酸化が、その化合物
    がNF−AT活性のアンタゴニストであることを示す、上記の方法。
  31. 【請求項31】 アンタゴニストを下記の: (i)細胞質から核への移行に十分なNF−ATポリペプチド又はその部分を含む
    細胞を、NF−ATポリペプチドの細胞質から核への移行を刺激する化合物及び
    試験化合物と接触させ;そして (ii)ステップ(i)の後に、NF−ATポリペプチドの細胞内局在性を測定する
    ことを含む方法により同定する、請求項1に記載の方法であって、 試験化合物に接触させた細胞の細胞質内のNF−ATポリペプチドの、試験化合
    物と接触させてない細胞と比較して増大したレベルが、その試験化合物がNF−
    AT活性のアンタゴニストであることを示す、上記の方法。
  32. 【請求項32】 NF−ATポリペプチドが、NF−ATc4であり、NF
    −ATc4以外のNF−ATポリペプチドを阻害する化合物を選択することを更
    に含む、請求項28〜31の何れか1つに記載の方法。
  33. 【請求項33】 NF−ATアンタゴニストを、該アンタゴニストを心臓に
    狙いを定めて送るための製薬上許容し得る送達用ビヒクル中に含む、心臓肥大を
    治療し又は防止するための医薬組成物。
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