JP2002508188A - 触媒性抗体によるアルドール縮合 - Google Patents

触媒性抗体によるアルドール縮合

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JP2002508188A
JP2002508188A JP2000539161A JP2000539161A JP2002508188A JP 2002508188 A JP2002508188 A JP 2002508188A JP 2000539161 A JP2000539161 A JP 2000539161A JP 2000539161 A JP2000539161 A JP 2000539161A JP 2002508188 A JP2002508188 A JP 2002508188A
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aldol
ketone
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カーロス エフ ザ サード バーバス
ロバート エイ ラーナー
グオフ ツォン
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Scripps Research Institute
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    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/24Preparation of oxygen-containing organic compounds containing a carbonyl group
    • C12P7/26Ketones
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/0002Antibodies with enzymatic activity, e.g. abzymes

Abstract

(57)【要約】 触媒性抗体(38C2および33F12を含む)は、多様なケトン−ケトン、ケトン−アルデヒド、アルデヒド−ケトンおよびアルデヒド−アルデヒド分子間アルドール反応を触媒することができ、さらにいくつかの事例ではその後で脱水を触媒してアルドール縮合生成物を生成することができる。多数の分子内アルドール反応もまた特定された。調べた全ての分子内アルドール反応の触媒作用によって対応する縮合生成物が得られた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、アルドラーゼ触媒性抗体38C2および33F12の基質特異性、
合成範囲および有効性に関する。より具体的には、これらの抗体が、ケトン−ケ
トン、ケトン−アルデヒド、アルデヒド−ケトン、およびアルデヒド−アルデヒ
ド分子間アルドール付加反応を触媒することを示し、さらにいくつかの事例では
、その後に続く脱水反応を触媒してアルドール縮合生成物を生じることを示す。
分子間アルドール反応のための基質もまた特定される。
【0002】
【従来技術】
アルドール反応は、合成的変換で用いられる最も重要なC−C結合生成反応の
1つであることは疑いのないことであろう。伝統的に、アルドール反応は不整合
成方法開発のための実験場であった。1980年代には、アルドール反応は、高
度に立体選択的アルドールを生じる多数の方法の開発についてルネッサンスを経
験した(アルドール反応の概論については以下を参照されたい:C.H. Heathcock
, in Asymmetric Synthesis, J.D. Morrison ed., Academic Press, New York,
Vol.3(1984); Evans et al. Topics in Stereochemistry 1982, 12, 1; Masamun
e et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1985, 24, 1; Heathcock et al. Aldri
chim. Acta 1990, 23, 99; C.H. Heathcock, Science 1981, 214, 395;D.A. Eva
ns, 同書, 1988, 240, 420; Masamune et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 19
85, 24, 1; D.A. Evans, J.V. Nelson, T.R. Taber, Top Stereochem. 1982, 13
, 1; C.H. Heathcock et al. in Comprehensive Organic Synthesis, B.M. Tros
t Ed.(Pergamon, Oxford, 1991), Vol.2, pp.133-319; I. Peterson, Pure Appl
. Chem. 1992, 64, 1821) 。
【0003】 一般に、これは化学量論的な数量のキラル補助物質をもちいることによって最
も効果的に達成された。ここ数年、アルドール反応の立体選択的触媒デザインが
興味の中心であった。これらのアプローチのうちで最も注意をひくものはカーレ
イラ(Carreira)アルドール反応で、この反応では、キラルTi(IV)複合体
(2−10mol%)は、アルデヒドへの2−メトキシプロペンの鏡像選択的付
加を66−98%eeで触媒する(A. Yanagisawa, Y. Matsumoto, H. Nakashim
a, K. Asakawa, H. Yamamoto, J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 9319 およびその
中に引用されている文献; T. Bach, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1994, 33, 4
17およびその中に引用されている文献; Y.M.A. Yamada, N. Yoshikawa, H. Sasa
i, M. Shibasaki, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1997, 36, 1871; (b)E.M. Car
reira, W. Lee, R.A. Singer, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 3649)。
【0004】 慣習的有機合成方法に対するチャレンジとして合成触媒として天然のアルドラ
ーゼ酵素を利用することによって、立体化学的に複雑な分子について多くの効率
のよい合成が特に炭水化物の合成領域でもたらされた。いずれの不斉触媒もそれ
ぞれの合成チャレンジを満足させるために必要な範囲の反応性を示さないので、
不斉触媒の開発を可能にする方法論が要求されている。これは、酵素系触媒と同
様に遷移金属系触媒でも言えることである。例えば、カーレイラTi(IV)複
合体はエノラート同等物の2−メトキシプロペンの使用範囲を限定されているが
、フルクトース1,6−ジホスフェートアルドラーゼは、アルドール供与体基質
としてジヒドロキシアセトンホスフェートの使用を制限されている(H.J.M. Gij
sen, L. Qiao, W. Fitz, C.-H. Wong, Chem. Rev. 1996, 96, 443; (b)C.-H. Wo
ng, R.L. Halcomb, Y. Ichikawa, T. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34,
412-432; (b)I. Henderson, K.B. Sharpless, C.-H. Wong, J. Am. Chem. Soc.
1994, 116, 558; (c)C.-H. Wong, G.M. Whitesides, Enzymes in Synthetic Org
anic Chemistry(Pergamon, Oxford, 1994); M.D. Bednarski, in Comprehensive
Organic Synthesis, B.M. Trost Ed.(Pergamon, Oxford, 1991), vol.2, 455;H
.J.M. Gijsen, C.-H. Wong, 同書, 1995, 117, 2947;C.-H. Wong et al. 同書,
1995、 117、 3333; L. Chen, D.P. Dumas, C.-H. Wong, 同書, 1992, 114, 741
)。
【0005】 アルドール反応の蛋白質触媒の新規生成の問題を考えるために、我々は最近2
つのアルドラーゼ触媒抗体38C2および33F12の開発を報告した。これら
の抗体はβ−ジケトンのハプテンに対して作製された(このハプテンは抗体の
活性部位でリジン依存I型アルドラーゼメカニズムを刻印する化学的トラップと
して作用する)。免疫時の抗体38C2および33F12の選別過程について提
唱されたメカニズムは図6に示されている。リジン残基のε−アミノ基はのβ
−ジケトン部分のカルボニル官能基と反応し、β−ケトヘミアミナルを生成し、
続いて脱水されてβ−ケトイミンを生じ、これは最終的に互変異性化により安定
なエナミノンを生じる。したがって、このハプテンは今や共有結合によって結
合ポケット内で結合している。この化学量論的反応とI型アルドラーゼ酵素の認
容されているエナミンメカニズムとの間のメカニズム的類似性は別のところで詳
細に考察されている(J. Wagner, R.A. Lerner, C.F. Barbas III, Science 199
5, 270, 1797; (b)G. Zhong, T. Hoffmann, R.A. Lerner, S. Danishefsky, C.F
. Barbas III, J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 8131; (c)C.F. Barbas III, A.
Heine, G. Zhong, T. Hoffmann, S. Gramatikova, R. Bjornestedt, B. List,
J. Anderson, E.A. Stura, E.A. Wilson, R.A. Lerner, Science 1997, 278, 20
85)。
【0006】 エナミノンの生成はUV分光法によってモニターし(ハプテン1:lmax=
318nm、ε〜15000)、抗体がハプテンまたは他のジケトン(例えば
2,4−ペンタンジオンまたは3−メチル2,4−ペンタンジオン)とともに保
温されたかどうかに応じて数秒から数分以内に完了する。抗体38C2および3
3F12は、分子内アルドール反応(この反応は、我々の最近のウィーランド−
ミーシャー(Wieland-Miescher)ケトンの抗体触媒合成を可能にする)と同様に
、いくつかの脂肪族ケトン供与体と2つの異なるアルデヒド受容体(これはβ位
に4−アセトアニリドをもつ)とのアルドール反応を触媒することが以前に示さ
れた(Zhong et al. 同書)。さらにまた、両抗体は、リジン残基のε−アミノ基
と基質のケト基との間でのシッフ塩基生成により芳香族β−ケト酸の脱カルボキ
シル反応を触媒することが認められた(R. Bjornestedt, G. Zhong, R.A. Lern
er, C.F. Barbas III, J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 11720)。
【0007】 必要とされるものは、多様な基質について多くのアルドール付加反応を触媒し
、所望の鏡像体を生成させることができ、さらにいくつかの事例ではその後でそ
れら鏡像体の脱水を触媒してアルドール縮合生成物を生じる抗体である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルドール縮合反応およびレトロアルドール反応を触媒するために
触媒性抗体を使用することに関する。 本発明の特徴の1つは、β−ヒドロキシケトンを生成するためにアルドール供
与基質とアルドール受容基質との間でアルドール縮合を触媒する方法に関する。
アルドール付加活性をもつ触媒性抗体の触媒的に有効な量、または触媒性抗体の
抗体結合部位部分を含む触媒として活性な分子の触媒的に有効な量を、反応媒体
中で十分な量のアルドール供与基質およびアルドール受容基質と混合して反応混
合物を生成する。アルドール供与基質は、反応性カルボニル基および当該カルボ
ニル基と隣接する非分枝炭素を含むタイプに属する。触媒性抗体または触媒とし
て活性な分子は、アルドール供与基質の反応性カルボニル基とともにシッフ塩基
中間体を形成するリジン残基を含むタイプに属する。続いて、触媒性抗体または
触媒として活性な分子が、アルドール供与基質とアルドール受容基質との間でア
ルドール縮合反応を触媒しβ−ヒドロキシケトンを生成するために十分な時間、
上記の反応混合物を維持する。アルドール供与基質は、ケトン供与基質またはア
ルデヒド供与基質のどちらかである。アルドール受容基質は、ケトン受容基質ま
たはアルデヒド受容基質のどちらかである。しかしながら以下の条件が適用され
る:アルドール供与基質がケトン供与基質であり、さらにアルドール受容基質が
アルデヒド受容基質である場合は、ケトン供与基質は、官能基をもたない開放鎖
脂肪族ケトンではない。本発明のこの特徴における好ましい態様では、アルドー
ル受容基質はアルデヒド受容基質で、アルドール供与基質は、脂肪族環式ケトン
、官能基を有する開放鎖脂肪族ケトンおよび官能基を有する環式ケトンから成る
群から選ばれるケトン供与基質である。アルドール縮合は分子間でも分子内でも
よい。それが分子内のものである場合は、アルドール供与基質およびアルドール
受容基質の両方が単一反応物分子を形成し、アルドール縮合はこの単一反応物分
子を環状化させ、環式β−ヒドロキシケトンを生成する。これらの基質は混成で
もよく(すなわち供与体および受容体は互いに異なっている)、または同種でも
よい(すなわち供与体および受容体は全く同じもので、単一ケトン反応物分子で
ある)。
【0009】 場合によっては、上記の方法に付加工程を付け加えてもよい。この場合、上記
の反応混合物は、触媒性抗体または触媒として活性な分子の存在下でさらなる時
間維持され、脱離反応によってβ−ヒドロキシケトンがβ−不飽和ケトン生成物
に変換される。 また別には、異なる付加工程を上記の方法に加えることができる。この場合、
還元によってβ−ヒドロキシケトンはジヒドロキシ生成物に変換される。
【0010】 本発明のまた別の態様では、アルドール供与基質は以下の構造によって表され
る:
【0011】
【化7】
【0012】 アルドール受容基質は以下の構造によって表される:
【0013】
【化8】
【0014】 β−ヒドロキシケトンは以下の構造によって表される:
【0015】
【化9】
【0016】 上記の構造で、R1は(FG)−アルキル、(FG)−アルケニルおよび(FG )−アリールから成る群から選ばれるラジカルで;R1はH、OHおよびFから 成る群から選ばれるラジカルで;XはNCH3、O、S、CH2およびC64から
成る群から選ばれるラジカルで;FGはOHおよびOCH3から成る群から選ば れるラジカルである。
【0017】 本発明の別の特徴は、アルドール供与基質とアルドール受容基質との間でアル
ドール縮合を触媒してβ−ヒドロキシケトンを生成するまた別の方法に関する。
アルドール供与基質は、ケトン供与基質またはアルデヒド供与基質のどちらかで
ある。アルドール受容基質は、ケトン受容基質またはアルデヒド受容基質のどち
らかである。アルドール付加活性をもつ触媒性抗体の触媒的に有効な量、または
触媒性抗体の抗体結合部位部分を含む触媒として活性な分子の触媒的に有効な量
を、反応媒体中で十分な量のアルドール供与基質およびアルドール受容基質と混
合して反応混合物を生成する。触媒性抗体または触媒として活性な分子は、アル
ドール供与基質とともにシッフ塩基中間体を形成するリジン残基を含むタイプに
属する。アルドール供与基質は結合を生成しないα位で分枝していない。、触媒
性抗体または触媒として活性な分子がアルドール供与基質とアルドール受容基質
との間でアルドール縮合反応を触媒してβ−ヒドロキシケトンを生成し、離脱反
応によってβヒドロキシケトンをβ−不飽和ケトン生成物に変換するために十分
な時間上記の反応混合物を維持する。
【0018】 本発明のまた別の特徴は、レトロアルドール反応を触媒してβ−ヒドロキシケ
トンを一次または二次カルボニル生成物に変換する方法に関する。一次および二
次カルボニル生成物はそれぞれ別個にケトン生成物またはアルデヒド生成物のど
ちらかである。触媒として有効な量のアルドール付加活性をもつ触媒性抗体、ま
たは触媒として有効な量の触媒性抗体の抗体結合部位部分を含む触媒として活性
な分子を、反応媒体中でβ−ヒドロキシケトンと混合し反応混合物を生成する。
触媒性抗体または触媒として活性な分子は、第一のカルボニル生成物とともにシ
ッフ塩基中間体を形成するリジン残基を含むタイプに属する。この第一のカルボ
ニル生成物はα位で分枝していない。続いて、触媒性抗体または触媒として活性
な分子が、レトロアルドール反応を触媒してβ−ヒドロキシケトンを第一および
第二のカルボニル生成物に変換するために十分な時間上記の反応混合物を維持す
る。本発明のこの特徴のべつの態様では、第一および第二のカルボニル生成物の
各々はケトン生成物でもよい。本発明の別の態様では、第一および第二のカルボ
ニル生成物は各々アルデヒド生成物である。本発明のさらに別の態様では、第一
のカルボニル生成物はアルデヒド生成物で、第二のカルボニル生成物はケトン生
成物である。β−ヒドロキシケトンは環状で、したがってレトロアルドール反応
はβ−ヒドロキシケトンを開環して、単一生成分子として第一および第二の両カ
ルボニル生成物を含むただ1つの開放鎖生成物を形成する。本発明のこの特徴の
別の態様では、レトロアルドール反応は逆方向のアルドール自己縮合で、この場
合、第一および第二のカルボニル生成物は互いに同一である。本発明のこの特徴
の好ましい実施態様では、β−ヒドロキシケトンは下記の構造によって表される
【0019】
【化10】
【0020】 第一のカルボニル生成物は以下の構造によって表される:
【0021】
【化11】
【0022】 第二のカルボニル生成物は以下の構造によって表される:
【0023】
【化12】
【0024】 上記の構造で,R1は(FG)−アルキル、(FG)−アルケニルおよび(FG )−アリールから成る群から選ばれるラジカルで;R1はH、OHおよびFから 成る群から選ばれるラジカルで;XはNCH3、O、S、CH2およびC64から
成る群から選ばれるラジカルで;さらにFGはOHおよびOCH3から成る群か ら選ばれるラジカルである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルドラーゼ触媒性抗体38C2および33F12の基質特異性、
合成範囲および有効性に関する。これらの抗体は、天然のクラスIアルドラーゼ
酵素に共通のエナミンメカニズムを利用する。これらの触媒のための基質、23
種の供与体および16種の受容体を特定した。検査した全てのアルデヒドは、ポ
リヒドロキシル化アルデヒドを除いてこれらの抗体にとって基質となったので、
アルドール受容体の特異性は、ここで規定したものよりもはるかに広いと予想さ
れる。38C2および33F12は、分子間ケトン−ケトン、ケトン−アルデヒ
ド、アルデヒド−ケトンおよびアルデヒド−アルデヒドアルドール付加反応を触
媒し、いくつかの事例では、その後脱水してアルドール縮合生成物を生じること
が明らかとなった。分子内アルドール反応のための基質もまた特定した。アルド
ール供与基質としてアセトンを用いて、新しい立体中心が、ほとんどの事例で9
5%を越えるeeでアルデヒドのsi−面上の攻撃によって形成される。供与基
質としてヒドロキシアセトンを用いたとき攻撃はre−面で発生し、α−syn
構造の2つの立体中心をもつα,β−ジヒドロキシケトンが70から>98%の
eeで生成される。フルオロアセトン供与体反応では、主要生成物は、synα
−フルオロ−β−ヒドロキシケトンでeeは95%である。レトロアルドール反
応の研究によって、これらの抗体は、単純なアミン触媒反応と比較して108倍
強化された効率を提供することが示された。
【0026】
【実施例】
実施例1.顕著な範囲をもつアルドラーゼ抗体 抗体38C2および33F12について、我々は4つの問題点に注目した:i
)分子内アルドールと同様に分子間交差アルドールおよび自己アルドールのため
の基質の範囲と制限、ii)それらの立体特異性、iii)結合ポケットの性質
を理解するためにこれらの反応に関する動態パラメーター、およびiv)これら
の触媒に関する理解を深めるために付加機構の研究。
【0027】 交差アルドール反応:交差アルドール反応に対する抗体触媒38C2および3
3F12の範囲を特定するために、供与体として種々の市販ケトンおよび受容体
として異なる6つのアルデヒドを含む1セット(4−アセトアミドベンズアルデ
ヒド、;3−(4'−アセトアミドフェニル−)プロパノール、;3−(4'
−アセトアミドフェニル)−2−メチルプロパナール、;4−(4'−アセト アミドフェニル)ブタナール、;4−ニトロベンズアルデヒド、;および4
−ニトロシンナムアルデヒド、:図1)を調べた。供与体活性をスクリーニン
グするために、アルデヒドを標準受容体アルデヒドとして選択した。これは、
アルデヒドがC3に4−アセトアミドフェニル基をもつためである。分子のこ
の部分はハプテン構造と密接な関係を有し、おそらく抗体によって特異的に認
識されるであろう。
【0028】 比較を容易にするために、以下の限定条件下でのこれらの反応の比速度を求め
た:供与体1M、アルデヒド500mMおよび抗体0.4モル−%。図13に
示すように、種々の異なるケトンがアルデヒドとアルドール反応を起こした。
これは、別個に化学的に合成した以下の標準物質とともに高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)を用いたときの生成物の保持時間の比較によって証明された
:脂肪族開放鎖(アセトン、ブタノン、2−ペンタノンおよび3−ペンタノン)
、脂肪族環式(シクロペンタノンおよびシクロヒキサノン)、官能基をもつ開放
鎖(ヒドロキシアセトンおよびフルオロアセトン)および官能基をもつ環式(2
−ヒドロキシシクロヘキサノン)ケトン。極めて多様な他のケトンもまたアルデ
ヒドを用いて調べ、の消費およびβ−ヒドロキシケトン生成物として試験的
に割り当てた新しいピークの出現をモニターした。全実験の基質ケトンは図14
に要約した。抗体触媒アルドール反応は、等モル量のハプテンまたは2,4−
ペンタンジオンの添加によって抑制された。さらに別のコントロール実験をリジ
ンまたは抗体の代わりにウシ血清アルブミンを用いて実施した。これらの事例で
は本明細書で解明しようとしているアルドール触媒反応は観察されなかった。多
数のケトン(例えばオクタノン)は水性媒体中では限定的な可溶性を示し、これ
はおそらくそれらの触媒としての利用可能性を妨げるであろう。混合溶媒系によ
る更なる実験によって、このような基質が触媒によって受容される条件の特定が
可能になるであろう。調べたケトンのうちで、供与体としてヒドロキシアセトン
を含む反応が最も効率的であった。
【0029】 物理化学的に非常に異なるこれらのケトンに対する抗体38C2の驚くほど高
い無差別性は、供与体の構造における小さな変化(もし存在するとして)に耐え
る天然のアルドラーゼとは極めて対照的である(H.J.M. Gijsen, L. Qiao, W. F
itz, C.-H. Wong, Chem. Rev. 1996, 96, 443;(b)C.-H. Wong, R.L. Halcomb, Y
. Ichikawa, T. Kajimoto, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34, 412-432;(
b)I. Hemderson, K.B. Sharpless, C.-H. Wong, J. Am. Chem. Soc. 1994,116.5
58;(c)C.-H. Wong, G.M. Whitesides, Enzymes in Synthetic Organic Chemistr
y(Pergamon, Oxford, 1994); M.D. Bednarrski, in Comprehensive Organic Syn
thesis, B.M. Trost, Ed(Pergamaon, Oxford, 1991), Vol.2, 455; H.J.M. Gijs
en, C.-H. Wong, 同書, 1995, 117, 2947;C.-H. Wong et al. 同書, 1995, 117,
3333; L. Chen, D.P. Dumas, C.-H. Wong, 同書, 1992, 114, 741)。
【0030】 次に、我々は、受容体アルデヒドに対する特異性の範囲を明らかにしようとし
た。図13に挙げた多様なケトンから代表的な供給体としてアセトン、シクロペ
ンタノンおよびヒドロキシアセトンを選択し、アルデヒドおよび(図1
)とのアルドール反応でこれらを調べた。再度、同一の条件(上記に記載したと
おり)を対応する比速度の決定に用いた(図15)。全ての基質の組み合わせで
予想した生成物が得られた。単純な脂肪族アルデヒド受容体は下記に記載した(
雑多なアルドール反応の項を参照のこと)。種々のポリヒドロキシル化受容体ア
ルデヒド、グリセルアルデヒド、グルコース、およびリボースも調べた。これら
の基質はこれらの抗体によって受容されず、これはおそらくその活性部位の疎水
性のためであろう。下記で述べる実験と合わせてこれらの実験は、疎水性アルデ
ヒドには制限はあるが、受容体の特異性は非常に広いことを示唆している。
【0031】 この触媒系についてより詳細な情報を得るために、我々は報告された反応のい
くつかを選び、供与体または受容体のどちらかの基質濃度を変えながら、一方第
二の反応物の濃度を一定に保って初速を調べた。アルデヒドとの全ての反
応は、偽一次キネティクスにしたがってデータを処理することによって典型的な
ミハエリス−メンテンのキネティクスにしたがった。一般に、基質または生成物
抑制は認められなかった。4−アセトアミドベンズアルデヒド()をより高濃
度(2mMおよびそれ以上)で用いたとき基質抑制が認められたが、これは、お
そらく活性部位とアルデヒド間の可逆性シッフ塩基形成のためであろう。供与体
のミハエリス定数Kmの典型的な値は1mMから1Mの範囲で、極めて多様な種 々のケトンを受容する抗体の能力を反映している。受容体のKmの値は1 0から500mMの範囲である。明らかに、これらの分子の芳香族部分は活性部
位による識別の強化に必要である。Kcatの特徴的な値は10-3から1分-1で、 Kcat/Kuncatの比は105対107であることを示している(更なる動態学的
データについては下記参照)。全てのデータは抗体の1つの活性部位について報
告されている(抗体分子は2つの活性部位をもつ)。
【0032】 自己アルドール反応:研究の過程で、我々はまた、抗体38C2および33F
12は自己アルドール反応を触媒することができるかどうかという問題に注目し
た。自己アルドール化はプロピオンアルデヒド、アセトンおよびシクロペンタノ
ンで認められたが、化合物では観察されなかった(図16)。さらにまた
、比較を容易にするために、以下の限定条件を用いて比速度を求めた:ケトンま
たはアルデヒド0.1M、抗体0.005モル−%。これらの基質により抗体は
、以下の2つの連続工程から成るアルドール縮合反応を触媒した:アルドール付
加およびその後に続く水の除去。基質としてプロピオンアルデヒドを用いたとき
、アルドール付加生成物である3−ヒドロキシ−2−メチルペンタナールは中間
体として検出されなかったが、もっぱらトランス−2−メチル−2−ペンタナー
ル(33)が検出され、水の除去も触媒されたことを示唆した(下記参照)。単
一生成物として化合物33が得られたが、第三のプロピオンアルデヒド分子との
連続アルドール付加反応のための基質ではない。興味深いことには、化合物33 は、アセトンが供与体として用いられる場合は受容体として働く(雑多なアルド
ール反応の項参照)。交差アルドール反応のためのアルデヒド受容体(これは活
性部位に優先的に結合する)が存在しない場合は、アセトン自体およびシクロペ
ンタノンは自己縮合を受け、それぞれメシチルオキシド34および化合物35
生じる。これらのケトン自己アルドール反応は実質的に緩慢で、上記のこれら供
与体を必要とする交差アルドール反応よりも典型的には500倍以上も緩徐であ
る。供与体としてアセトンまたはシクロペンタノンを用いる上記の交差アルドー
ル反応では、アセトン−アセトンおよびシクロペンタノン−シクロペンタノン自
己縮合生成物は観察されなかった。したがって、交差アルドール反応における自
己アルドール化活性は交差アルドール生成物の単離を損なうことはない。上記で
述べた自己アルドール縮合反応の一般的なメカニズムを説明するために、我々は
基質としてシクロペンタノンを選択し、アルドール付加生成物36およびその除
去生成物35の出現をHPLCおよびガスクロマトグラフィー(GC)によって
モニターした。さらに、抗体38C2を別個に合成した中間体36と保温し、 の出現をHPLCによってモニターした。実際、両反応工程が触媒され、アル
ドール付加が除去工程よりも速く進行した。シクロペンタノンから35への全体
的変換の動態実験によって、Km=845mM、Kcat=2x10-4-1であるこ
とが示された。36から35への除去反応もミハエリス−メンテンキネティクス
に従った(Km=750mM、Kcat=9x10-4-1およびKcat/Kuncat=2
240)。
【0033】 これらの実験から、我々は図7に示したシクロペンタノンの自己アルドール縮
合反応のメカニズムを提唱する(経路1)。β−ヒドロキシイミニウム陽イオン
(第二のシクロペンタノン分子のカルボニルC原子でのシクロペンタノンのエナ
ミンの攻撃後に活性部位で形成される)は、一部分がβ−ヒドロキシエナミン中
に失われた後で互変異性化され、続いて水を失う。この過程は、エナミンの窒素
原子からの電子の供与によって補助される(D.J. Hupe, M.C.R. Kendall, T.A.
Spencer, J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 2271)。α,β−不飽和イミニウム陽イ
オンは最終的に加水分解され、アルドール縮合生成物35が遊離され、一方、抗
体38C2のリジン残基は再び触媒サイクルに入る。
【0034】 除去工程が遊離36を介してバックグラウンドで発生するまた別のメカニズム
も図7に示すが(経路2)、この可能性はもっと低いように思われる。なぜなら
ば除去は抗体38C2によって触媒され、アセチルアセトンによって抑制された
からである。抗体が存在しない場合シクロペンタノンから35への完全な変換に
対するバックグラウンド反応は、2箇月間という長期の保温の後で観察されなか
った。
【0035】 分子内アルドール縮合:分子内アルドール反応を解明するために、38C2を
3つの異なる脂肪族ジケトン(2,4−ヘキサンジオン(37)、2,5−ヘプ
タンジオン(39)および2,6−オクタンジオン(41))(図8)とともに保
温した。37から3−メチルシクロペント−2−エノン(38)への反応経路で
は触媒作用は認められなかった。これは、おそらく基質37のC2でのエナミン
の攻撃で中心的に関与するボルドウィン7不適性5(エノレンド−トリグ)(Ba
ldwin 7 disfavored 5(enolendo-trig))プロセスのためであろう。3−メチルシ
クロヘプト−2−エノン(42)を生じる、41の対応する閉環(水の除去がそ
の後に続く)はボルドウィン適性(7(エノレンド−トリグ)プロセス)である
が、この事例でもまた生成物の形成は観察されなかった。対照的に、2,5−ヘ
プタンジオン(39)のボルドウィン適性閉環反応(6(エノレンド−トリグ)
プロセス)(これは続いて水が除去され、3−メチルシクロヘキス−2−エノン
(40)を生じる)は抗体38C2によって触媒された。
【0036】 生成物40(これはダグラス=ファービートル8の性フェロモンである)の出
現をHPLCによってモニターした。この反応はミハエリス−メンテンキネティ
クスにしたがい(図17)、卓越した加速を示した。さらにまた対応する中間体
、3−ヒドロキシ−3−メチルシクロ−ヘキサノンと抗体を保温した。シクロペ
ンタノンの自己アルドール縮合でみられるように、40を生じる除去工程もまた
抗体38C2によって触媒された。報告した実験、4bでは、我々は基質として
トリケトン43および鏡像体として純粋なジケトン(S)−45および(R)− 45 (図9)を調べた。全ての事例で生成物の形成(それぞれウィーランド−ミ
ーシャーケトン(S)−44並びにケトン(S)−46および(R)−46)が
38C2によって触媒され、基質として単純なジケトン39を用いたときに認め
られる速度に匹敵する速度で進行した。全ての反応がミハエリス−メンテンキネ
ティクスにしたがった。それらのパラメーターは図17にまとめられている。我
々はまた、これらの抗体の潜在的基質として2−メチル−2−(3'オキソペン チル)−1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−2−(3'オキソブチル )−1,3−シクロペンタンジオン、および2−メチル−2−(4'オキソペン チル)−1,3−シクロヘキサンジオンを調べたが、これらの基質との反応は観
察されなかった。
【0037】 雑多なアルドール反応:上記で述べたように、2分子の自己アルドール縮合は
縮合工程後に終了する。生成物、トランス−2−メチル−2−ペンテナール( )は、第三の分子、プロピオンアルデヒドのその後のアルドール付加(または
縮合)のための基質ではない。対照的に、アルデヒド33は、アセトンが供与体
として存在する場合は基質となる(図10)。驚くべきことに、生成物47の水
の除去はこの抗体によって触媒されないが、しかし熱力学的に有利なα,β,γ
,δ−不飽和ケトンは生成されるであろう。結合ポケットもまた、2,4−ヘキ
サジエナール(48)で示されるようにこの受容体構造で鎖の伸長を許容する。
生成物47から分かるように、抗体はまた、アルドール付加生成物49の水の除
去も触媒しない。我々はまた、プロピオンアルデヒドが他のアルデヒドのための
供与体となるか否かを調べた。プロピンアルデヒドは結合ポケットに優先的に結
合し、さらに生成物としてβ−ヒドロキシアルデヒド(水の除去後に)、または
α,β−不飽和アルデヒドを生成するであろう。自己アルドール付加を抑えるた
めに、低濃度の供与体および高濃度の受容体アルデヒドを用いた。興味深い状態
がアセトアルデヒドに関して観察された。それは受容体として単独で作用し、供
与体のプロピオンアルデヒドとともに2−メチル−2−ブテナール(50)を生
成することが分かった。逆方向反応(供与体としてアセトアルデヒド、受容体と
してプロピオンアルデヒド)の交差アルドール縮合生成物である2−ヘキセナー
ルは検出されなかった。
【0038】 図18に示したように、この抗体は、単純な脂肪族アルデヒドが受容基質とし
て作用する交差アルドール反応を触媒する。生成物53を生じるシクロペンタノ
ンとペンタナールとの間の交差アルドール反応は、非常に効率的であることが証
明され、動態実験によってKcatは1.1分-1で、ペンタノールのKmは3.9m
Mであることが明らかになった。ペンタナールはまた、供与体としてヒドロキシ
アセトンと対にしたとき非常に効率的な受容体であった。ペンタナール誘導生成
55および56を伴うレトロアルドール反応も触媒された。
【0039】 アルドール生成物の立体特異性および絶対配置:アルドラーゼも抗体38C2
および33F12も高度に立体選択的なアルドール反応を触媒する。一般的ルー
ルとして、アセトンはアルデヒドにsi−面の選択性を付加し、一方、ヒドロキ
シアセトンに関しては鏡像面選択性の逆転がre−面への付加をもたらす。生成
物は>99%のeeで形成される(図19)。eeはキラルHPLCおよびキラ
ルGCで求めた。絶対配置を割り当てるために、生成物を2つの方法のどちらか
で合成した。アセトン生成物の場合は、Patersonら(Tetrahedron 1990, 46, 46
63)が開発した方法を用いた。この方法は、ジイソピノカンフェニルエノールボ
リエート(in situで(−)−Ipc2BOTfから調製)およびアセトンを用い
る。ヒドロキシアセトン生成物は、対応するα,β−不飽和ケトンからシャープ
レス(Sharpless)の不整ジヒドロキシル化(Kolb et al. Chem. Rev. 1994, 94,
2483; P.J. Walsh, K.B. Sharpless, Synlett 1993, 605)を介して調製された
【0040】 最高の鏡像選択性が、共役アルデヒド(アリルアルデヒドまたはベンジルアル
デヒド)が受容体としてアセトンが供与体として働くアルドール反応で認められ
た。これらの事例では、観察された鏡像選択性はいずれの抗体触媒でも常に98
%eeを越えた。より低い鏡像選択性は、α位にsp3中心を含むアルドール受
容体で観察されたが、ただし鏡像選択性は、化合物21で提唱されたようにこの
炭素中心に立体的かさばりを付加することによって高めることができる。このク
ラスの受容体に関しては、2つの触媒がそれぞれ異なる程度の立体選択性を示し
た。もっとも低い鏡像選択性は、受容体として4−(4'−アセトアミドフェニ ル)ブチルアルデヒドおよび供与体としてアセトンを用いて得られ、化合物24 が生成された。この事例でのeeは、触媒38C2および33F12でそれぞれ
20%および3%である。供与体、受容体および触媒は全てこの反応の鏡像選択
性に対する影響を示している。なぜならば、4−(4'−アセトアミドフェニル )ブチルアルデヒドとの反応でアセトンの代わりにアルドール供与体としてヒド
ロキシアセトンを使用することによって、生成物58が77%のeeで生成され
るからである。ヒドロキシアセトンのどちらかのα位における結合形成に関する
この反応の局所部位選択性(regioselectivity)は完全である。ヒドロキシアセ
トンのαヒドロキシ保有部位での反応によって生じた生成物のみが検出された。
38C2によって触媒されたアルデヒドとのフルオロアセトンの反応実験でも
、フルオロアセトンのα置換炭素を指向する結合形成の局所部位選択性が示され
た。しかしながら7%の他のレジオ異性体60も単離された(図11)。syn
16は単離生成物の72%を構成し95%のeeで生成され、一方、anti
16は単離生成物の21%を構成し34%のeeで生成された。これら生成物
の絶対立体化学はまだ定まっていない。これらの抗体によって触媒されるフルオ
ロアセトンのアルドール付加の局所部位選択性は、天然のアルドラーゼ(デオキ
シリボース−5−ホスフェート)で観察されたものと反対である。後者の場合、
フルオロアセトンの非置換部位への付加のみが観察された(C.F. Barbas III, Y
.-F. Wang, C. -H. Wong, J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 2013)。
【0041】 syn−16のようなα−フルオロ−β−ヒドロキシケトンの不整合成のため
の触媒も一般的方法論も知られていない(J.T. Welch, K. Seper, S. Eswarakri
shnan, J. Samartino, J. Org. Chem. 1984, 49, 4720; H.O. House, W.F. Fisc
her, M. Gall, T.E. McLaughlin, N.P. Peet, J. Org. Chem. 1971, 36, 3429-3
437; C. Kowalski, X. Creary, A.J. Rollin, M.C. Burke, J. Org. Chem. 1978
, 43, 260)。α−脂肪族置換ケトン(例えばシクロペンタノン)の反応を巻き込
む立体選択はこの事例では詳細に検討されなかった。これは、水性緩衝溶媒中で
これら供与体とともに形成される生成物のα位における立体化学的な不安定性の
ためである(R. Iriye, K. Takai, M. Noguchi, Bioorg. Med. Chem. Ltrs. 199
7, 7,199; M.T. Konieczny, P.H. Toma, M. Cushman, J. Org. Chem. 1993, 58,
4619)。脂肪族ケトンとの反応で供与体としてシクロペンタノンを用いる反応の
anti/syn選択性は、動力学的に制御した合成により得られた生成物分布
と比較しながら下記に示す(LDA、−78C)。受容体としてn−ペンタナー
ルを用いて53は抗体触媒によって生成されるが、そのanti/syn比は、
動力学的に制御した合成によって得られるものとほぼ同一である。選択性の逆転
は、受容体としてヘプタナールを用いた場合に認められるが、この場合syn−
生成物が優勢である。
【0042】 レトロアルドール化、触媒効率および提唱されるメカニズム:以前の両触媒の
生化学的研究および33F12の構造研究は、天然のクラスIアルドラーゼ酵素
と共有されるエナミンメカニズムと一致する。このメカニズムの中心となるもの
は、高度に不安定なpKaをもつε−アミノ基を有する化学的に固有のリジン残 基で、これは、より多くの典型的アミンにプロトンを付加しこの反応で効果をも
たない条件下で効率のよいアミン系触媒を可能にする。アルドラーゼとしての抗
体38C2の触媒効率は、レトロアルドール反応の研究によって単純なアミン触
媒を用いて最も容易に比較できる。なぜならば、アミン触媒反応の二次速度定数
は、抗体触媒反応のKcat/Kmと正比例するからである。アミン触媒アルドール
反応の動力学的研究が報告されたが、速度はアミン触媒レトロアルドール反応よ
りほぼ102倍遅い(J.-L. Reymond & Y. Chen, J. Org. Chem. 1995, 60, 697
9)。
【0043】 我々は、抗体およびアミン触媒による基質59のレトロ−アルドール反応を調
べた。アミン触媒は緩衝水性および有機溶媒の両方で調べた(図12)。抗体3
8C2は59のレトロアルドール化を触媒し、これはミハエリス−メンテンキネ
ティクスにしたがった(Kcat=1.4分-1、Km=270mM)。このレトロア
ルドール反応のバックグラウンド速度は8.3x10-8-1であった(100m
MのMOPS緩衝液、pH7)。この反応について抗体によって得られるバック
グラウンドに対する相対速度の増加は1.7x107(Kcat/Kuncat)で、特
異性定数(Kcat/Km)は5.2x103分-1-1である。38C2によって触
媒されるレトロアルドール反応のための最も効率的な基質は、今日までのところ
6−(4'−ジメチルアミノフェニル)−4−ヒドロキシ−5−ヘキセン−2− オンである。この基質の特異性定数は2.0x105である。この反応に対する
抗体38C2の特異性定数は、アミン補助因子依存抗体アルドラーゼについて以
前に報告されたものの106倍以上である(J.-L. Reymond, Angew. Chem. Int.
Ed. Engl. 1995, 34, 2285)。
【0044】 以前の研究では、活性部位のリジン、LysH93(これはこれら触媒化学の
中心をなすものである)のεアミノ基のpKaは、リガンドと結合していない抗 体ではプロトン付加および電荷の成長に不利な疎水性の分子環境によって高度に
不安定であると言われていた。38C2および33F12の活性部位リジンのp
aはそれぞれ6.0および5.5と概算された。溶液中で遊離しているリジン のε−アミノ基のpKaは10.5である(J.A. Dean, in Lange's Handbook of
Chemistry(McGraw-Hill, San Francisco, CA 1992), pp.8.19-8.71)。これら の研究はまた、n−オクタノールの疎水性に類似する活性部位の疎水性を示唆し
ている。したがって、59のn−ブチルアミンおよびアミノアセトニトリル触媒
レトロアルドール化のための二次速度定数は、水性緩衝液およびn−オクタノー
ルで求めた。n−ブチルアミンは、抗体触媒反応において重要なリジンの側鎖と
の構造的類似性のゆえに研究対象とし、アミノアセトニトリルは、そのpKaが
抗体の活性部位リジンのpKaと類似するので調べた。水の中でのn−ブチルア
ミンおよびアミノアセトニトリルのpKaは10.61および5.34である(D
.J. Hupe, M.C.R. Kendall, T.A. Spencer, J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 1254
)。アミン触媒に対する38C2の相対的有効性(Kcat/Km)/KNH2およ び38C2の活性部位リジンの有効モル濃度(Kcat/KNH2)は図20に示 す。抗体38C2は、水性媒体または有機媒体のどちらかでの非酵素的アミン触
媒反応と比較したとき、59のレトロアルドール反応の効率を106−108倍
高めた。59の単純アミン触媒レトロアルドール化に対する38C2の相対効率
は、酵素アセトアセテートデカルボキシラーゼの有効性に十二分に匹敵する(後
者は同じ基質のアミノアセトニトリル触媒脱カルボキシル反応と比較され、(K cat /Km)/KNH2は9.5x106である)(F.H. Westheimer, Proceddin
g of the Robert A. Welch Foundation, Houston, 1971, 15, 7; F.H. Westheim
er, Tetrahedron, 1995, 51, 3; L.A. Highbarger, J.A. Gerlt, G.L. Kenyon,
Biochemistry, 1996, 35, 41)。アセトアセテートデカルボキシラーゼは、その
メカニズムがリジンの活性化ε−アミノ基周囲に集中する酵素のうちで最も研究
されたものである。38C2の活性部位アミンの有効性もまた、用いられたアミ
ンおよび溶媒系にしたがって560から35000Mの間の有効モル濃度によっ
て示される。
【0045】 図20に示すように、n−オクタノール中でのn−ブチルアミン触媒は、アミ
ンがn−オクタノール中では反応性非プロトン付加状態にあるために水溶液中で
の触媒と比較して63倍増加する。アミノアセトニトリルは、その低いpKaの ために両溶媒で同様な有効性を示す。この反応のための活性化エネルギーは、こ
の反応は遷移状態で電荷分散を必要とするので、抗体の活性部位およびn−オク
タノールのような非極性溶媒中ではより低いはずである。極性媒体は、陽イオン
イミニウム中間体を活性化複合体よりもより強く安定化させると期待されるであ
ろう(C. Reichardt, in Solvents and Solvents Effects in Organic Chemistr
y, H.F. Ebel, E. Wentrup-Byne, Eds., New York, NY, 1990, 2nd eddition, p
p1-511; C.H. Stereoselective Aldol Condensations, in Comprehensive Carba
nion Chemistry, E. Buncel & T. Durst, Eds., Part B, p.177ff(特にp.198),
Elsevier, Amsterdam, 1984)。
【0046】 リガンドをもたない33F12の結晶構造は、水分子(これもまたTyrL4
1のヒドロキシル基に対して水素結合距離内に存在する)に対して水素結合距離
内にあるLysH93を示している。抗体が結合に際して大きな構造的変化を受
けるであろうということに注意して、クラスIアルドラーゼについて提唱された
メカニズムに類似するメカニズムを図2に示すが、これがもっとも可能性がある
であろう。この提唱メカニズムでは、TyrL41は塩基として作用するであろ
う。受容体活性化は必須のようである。なぜならば、ストークのエナミン(Stor
k et al. J. Am. Chem. Soc. 1963, 85, 20)またはミハエル反応(M.J. Lucero,
K.N. Houk, J.Am. Chem. Soc. 1997, 119, 826)にしたがって、4−ニトロフェ
ネチルブロミドのようなアルキル化基質またはメチルビニルケトンのようなα,
β−不飽和基質を添加してもエナミンを捕捉できなかったからである(先導的文
献として以下を参照されたい:M. Pfau, G. Revial, A. Guingant, J.J. d'Ange
lo, J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 273; J. d'Angelo, D. Desmaёle, F. Duma
s, A. Guingant, Tetrahedron: Asymmetry 1992, 3, 459; I. Jabin, G. Revial
, A. Tomas, P. Lemoine, M. Pfau, Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6, 1795; C
. Cave, D. Desmaёle, J. d'Angelo, J. Org. Chem. 1996, 61, 4361)。
【0047】 しかしながら、受容体の活性化およびそれが生じる分子環境は、アルデヒドの
非反応性ジェム−ジオール型の形成を促進しないように釣合いがとれていなけれ
ばならない。エナミン形成および/またはC−C結合形成/破壊工程はこれらの
触媒に関して律速的である。エレクトロスプレー質量分析法による18O標識水
での59の38C2触媒によるレトロ−アルドール化の研究では、抗体触媒によ
る迅速な18Oの基質59への取り込みが示された(図3)。6分以内に、1モ
ル%の38C2触媒により50%以上の基質59分子への18Oの取り込みが認
められた(抗体を含まないコントロール反応では取り込みはこの時点で認められ
なかった)。この結果は、β−ケト酸の38C2触媒脱カルボキシル反応の同様
な実験で我々が観察したものと対照的である。後者の場合は、イミン形成は律速
的で、18Oの基質への取り戻しは触媒されなかった。供与体としてヒドロキシ
アセトンを含む反応はアセトンを含む反応よりも速い。この観察はまた、エナミ
ン生成が少なくとも部分的に律速性であることを支持している。なぜならば、初
めの分子軌道からの計算によって、アセトンと比べてヒドロキシアセトンの場合
、イミンからエナミンへの変換のための活性化エネルギーは、ヒドロキシアセト
ンのヒドロキシ基の電子回収性(α−炭素のプロトン吸引を促進する)のために
低い(約2kcal/mol)と予想されていたからである(J.-F. Lin, C.-C.
Wu, M.-H. Lien, J. Phys. Chem. 1995, 99, 16903)。このことは、ヒドロキシ
アセトンのヒドロキシ含有側で形成されたエナミンの相対的安定性の増加と合わ
せて、結合形成がヒドロキシ基をもつα部位でのみ検出されるというヒドロキシ
アセトンアルドールの局所部位化学(regiochemstry)の完璧な制御を説明する。
同様な考えによって、フルオロアセトン付加の局所部位選択性が観察されたこと
はまた、初めの分子軌道計算の報告と一致する。ヒドロキシアセトン付加の鏡像
面選択性における逆転はまだ完全には説明されていない。ヒドロキシアセトン由
来生成物54および58のα−syn立体化学は、ヒドロキシアセトンのZ−エ
ナミンの優先的形成(これは分子内水素結合を介してE−配置よりも安定化され
ている)およびそれに続く受容体のre面上の攻撃によって合理的に説明するこ
とができる(図4に図示)。エナミンのα位の分枝は、活性化水分子またはこの
機能を果たす別のアミノ酸側鎖の再構成をもたらし、鏡像面の選択性を変化させ
ることができる。シクロペンタノンのアルデヒドへの付加におけるsynおよび
antiの両生成物(生成物5153)の観察によって、受容体アルデヒドの
両方の面がこのエナミンによる攻撃(E−エナミンの生成に限定される)で利用
性を有することが支持される。ベンジル系またはアリル系受容体および で認められた高い鏡像選択性に対してのような基質の鏡像選択性の低下は、よ
り自由度の小さい受容体分子のより効率的な鏡像面選択性と合致する。これら触
媒の化学的メカニズムの更なる理解は、ハプテンと結合した抗体33F12の
X線結晶構造解析によって得られるであろう。
【0048】 抗体38C2および33F12は、多様なケトンーケトン、ケトン−アルデヒ
ド、アルデヒド−ケトンおよびアルデヒド−アルデヒド分子間アルドール反応を
触媒し、さらにいくつかの事例では後続の脱水を触媒してアルドール縮合生成物
を生じることができる。多数の分子内アルドール反応もまた特定した。調べた全
ての分子内アルドール反応触媒によって対応する縮合生成物が得られた。調和供
与体と受容体基質は図5に示す。供与体特異性の主要な制限は、非結合形成α位
で分枝するケトンを触媒が受容する能力をもたないことであるようで、一方、受
容体は、ポリヒドロキシル化アルデヒドが基質としてまだ特定されていないので
、比較的疎水性のアルデヒドまたはケトンであるという程度の限定があるだけで
ある。これら抗体触媒の範囲は、天然の既知酵素アルドラーゼまたは遷移金属系
アルドール触媒のいずれで観察された範囲も越えている。ケトン−アルデヒド交
差アルドール反応でアセトンがアルドール供与基質である場合、新規な立体形成
中心がアルデヒドのsi面の攻撃によって多くの事例で95%を越えるeeで形
成される。供与基質としてヒドロキシアセトンを用いた場合、攻撃はアルデヒド
のre面で発生し、α−syn配置を有する2つの立体形成中心をもつα,β−
ジヒドロキシケトンを生成する(3R、4S)。これらの反応は70から>99
%のeeで進行する。供与基質としてフルオロアセトンを用いる交差アルドール
反応の主要生成物はsynα−フルオロ−β−ヒドロキシケトンで、95%のe
eで生成される。
【0049】 この研究は、有効でしかも範囲の広い触媒を製造することができる反応性免疫
の能力を際立たせた。そのような抗体は、目的に応じて製造することができ、ハ
プテンと共有結合させるために免疫系によって最適化され、結合ポケットは免疫
原との非共有結合反応に関して必ずしも純化される必要はない。結果として、生
物触媒は、物理化学的特性が極めて異なる多様な基質を受容することができる。
抗体38C2および33F12は、その極めて広い範囲、有効性および立体選択
性のゆえに不整合成触媒の項目に加えられる有用な触媒である。これは、1グラ
ムまでの規模で、異なる10個のブレビコミンの高度に鏡像選択的な完全合成に
よって本明細書で示される(下記参照)。現今の遷移金属触媒と異なり、本明細
書で報告する抗体はアルドール反応およびレトロアルドール反応の両反応を触媒
し、鏡像選択性合成または動力学的分離のいずれかにより高い光学的純度をもつ
β−ヒドロキシケトンの両鏡像体の製造を可能にした(下記参照)。抗体触媒反
応における規模の問題は、現時点で利用可能な技術、特に植物および藻類におけ
る抗体の異種発現を用いて解決できる。後者の場合、何トンもの規模でこれらの
触媒の低コスト製造を達成でき、実質的には無制限規模でアルドールの" グリー
ン合成"を可能にする。抗体38C2は現在はアルドリッチ=ケミカル=カンパ ニー社(Aldrich Chemical Company)から市販されている(A. Hiatt, Nature 1
990, 334, 469; A. Hiatt, J.K. Ma, Int. Rev. Immunol. 1993, 10, 139; J.K.
Ma, A. Hiatt, M. Hein, N.D. Vine, F. Wang, P. Stabila, C. van Dolleweer
d, K. Mostov, T. Lehner, Science 1995, 268, 716; E. Franken; U. Teuschel
, R. Hain, Curr. Opin. Biotechnol. 1997, 8, 411)。
【0050】 実施例2:天然酵素の反応速度加速をもつが範囲はより広い抗体アルドラーゼ
を誘導する免疫選別の能力 構造的および機能的研究によって、免疫系の選別基準が変化した場合に、天然
の酵素の有効性をもちながらより広範囲の基質を受容する抗体が誘導されること
が示された。この触媒性抗体は反応性免疫によって製造された。この反応は、免
疫系の選別基準を単純な結合から化学的反応性に変化させる過程である。この過
程は、解糖で用いられる天然の酵素の速度加速に類似するアルドラーゼ触媒性抗
体を製造するために用いられた。天然の酵素と異なり、抗体アルドラーゼは、多
様なアルドール反応および脱カルボキシル反応を触媒した。この研究は酵素の進
化の自然過程を暗示する。
【0051】 蛋白質触媒を選択する場合の主要なジレンマは、多様性を増す代わりに天然の
酵素の速度加速を2倍にすることの懸念である。新規な酵素が化学反応で最も有
用であるためには、それらは多様な基質を受容することができると同時に効率的
でなければならない。効率についての要求は明らかであるが、一方、酵素が多様
な基質を用いるある部類の反応を触媒することができるときそれらはさらに有用
性を増すので、その範囲が問題となってくる。この問題を解決するために、我々
は抗体触媒を用いた。
【0052】 このアプローチは、進化と免疫系が新規な蛋白質機能を発達させる過程を比較
することによって最も際立たせることができる(図28)。第一に、免疫系は、
進化が利用している強力な遺伝的手段の各々に対する対応物をもつ(S. Lerner,
J. Benkovic & P.G. Scultz, Science 252:659(1991); P.G. Schultz & R.A. L
erner, Science 269:1835(1995))。この2つの過程の重要な違いは時間というパ
ラメーターと選別基準である。進化の間に、自然の選別が機能または適合性の改
善を基準に発生し、一方、免疫系では効率のよいクローンがより優れた結合を基
準に選別される。天然の酵素はおそらく、基質のターンオーバーに最も適合して
いる反応に集中することができる結合相互作用を有する、" 完璧"ないくつかの 酵素の触媒としての有効性のゆえに選別される。したがって、各々の系は新規な
機能を作りだすために相応な遺伝的手段をもつが、それらの系は選別基準および
時間の進行では異なっている。主要な問題は、その選別基準が単純な結合から機
能へと切り換えられたとき、免疫系は直ちに効率的な触媒を産生できるだろうか
ということである。この問題についてのこのような考え方は、新規な抗体触媒を
開発する最も強力な方法は、所望の化学的成果を達成するそれらの能力を基準に
それらを選別することである。しかしながら先ず得られたこの近似の結果に対し
て、範囲の問題は、選別基準にかかわらず、誘発された抗体は免疫反応の結果と
して与えられた基質に対して高度に限定されているためにそのまま残っている。
しかしながら、効率的でかつ広い範囲をもつ触媒の開発を可能にする、抗体誘発
時における機能的選別のまた別の特徴が存在する。非共有結合反応の通常的協力
よりもむしろ抗体との共有結合を形成する化学的相互反応を基に選別する抗体誘
発の過程を考えてみよう(図24)。非共有結合の事例では、一連の体細胞変異
はハプテンとの相互反応の改善をもたらし、それと同時に誘発した分子に対する
結合特異性を高める。したがって、ある酵素がこの過程から生じる場合は、ほと
んどの天然酵素の限定的基質特異性をもつであろう。共有結合の事例では、体細
胞の通常の洗練過程は停止するであろう。なぜならば、クローン間で競合する優
れた非共有結合がたとえどんなに多く生成されたとしても、それらはただ1つの
共有結合事象によって達成される結合エネルギーと同等ではないので、抗原と共
有結合を形成した抗体をもつ全てのクローンが他のものから選別されるからであ
る。
【0053】 共有結合が抗体の進化の過程の初期に出現する場合、この洗練過程の一切の選
別圧力は、結合ポケット内で化学反応を達成できる抗体の誘導を停止し、そうで
なければ高度に洗練されないであろう。したがって、反応性免疫によって選別さ
れるいくつかの抗体は効率的であろう。なぜならば、酵素のようにそれらは化学
反応を基準に選別され、しかも酵素と違って、結合ポケットの洗練のための通常
の要求が妨げられていたので、それらは広い範囲を有する。
【0054】 我々の方法(反応性免疫と称する)は、上記に述べた特性を有する抗体の産生
を可能にする(Wagner et al. Science 270:1797(1995); Wirsching et al. Sci
ence 270:1775(1995))。この方法は、化学反応を達成することができる抗体触媒
の能力を基準にin vivoでそれら抗体触媒を選別する手段を提供する。この方法 は通常の免疫の態様から外れている。通常の免疫態様では、得られる抗体が天然
の状態の標的と反応することができるように、可能なかぎり化学反応を起こさな
い抗原を使用するために注意がはらわれる。反応性免疫の過程では、この反対を
行う。化学反応(例えば共有結合の形成)が免疫反応での抗体誘発中に抗体分子
の結合ポケットで発生することができるように、反応性抗原がデザインされる。
抗体誘発中の抗体で生じる化学反応は、対応する基質が用いられる場合は反応コ
ーディネートの不可欠な部分であるようにデザインされる。 我々はここで同じ化学的メカニズムを利用するアルドラーゼ(1つは自然に得
られたもの、他方は反応性免疫によって得られた触媒性抗体)を比較する。
【0055】 反応性免疫プロセスおよび抗体アルドラーゼ: 我々が製造しようとした抗体触媒は、天然の酵素のエナミンメカニズムが抗体
結合部位内に刻印されたアルドラーゼであった。この抗体触媒は、適切な化学的
反応性ををもつ適切に配置されたリジン残基をもつ全ての抗体が、カルボニル基
の1つを攻撃してαカルビノールアミン(これは続いて壊れてシッフ塩基を形成
する)を生成するように、1,3−ジケトンハプテンで動物を免疫することによ
って製造された。シッフ塩基が互変異性化によってα位の第二のカルボニル官能
性のために安定なビニローグ系アミドであるエナミンを形成するとき、抗体との
安定な共有結合反応が形成される(図23)。
【0056】 ビニローグ系アミドは蛋白質の範囲外で(約316nm)強力にUVを吸収し
、したがって結合スクリーニングの代わりに我々は新規な吸収についてスクリー
ニングした。この吸収は、抗体が天然のアルドラーゼの中核的化学メカニズムを
発達させたことを示すものである。この方法で製造された抗体はアルドール反応
および脱カルボキシル反応を触媒することが示された。それらの全ては、天然の
クラスIアルドラーゼによって利用される同じエナミンメカニズムによって生じ
る(G. Bjornestedt, R.A. Zhong, Lerner & C.F. Barbas III, J. Am. Chem.
Soc. 118:11720(1996))。これからそれら抗体の範囲、相対効率および構造を述 べる。
【0057】 酵素、フルクトース1,6−ジホスフェートアルドラーゼは蛋白質アルドラー
ゼのうちで最も研究されており、それは生物の3つの領域の各々で見出される。
この酵素は、グルコース代謝にとって主要なもので(解糖=糖分割=アルドラー
ゼ)、解糖または糖質新生でそれぞれ網目構造の切断または合成を触媒する。自
然界では、この酵素は、フルクトース1,6−ジホスフェートの切断を触媒して
燐酸ジヒドロキシアセトンおよびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートを生じ
る。クラスIアルドラーゼ酵素は、エナミンメカニズムによって生じる(図24
)。C−C結合形成工程での力学的対称性は、β−ジケトン選別が力学的に同一
な反応コーディネートをこの工程周辺に誘導することを可能にする(図24)。
【0058】 抗体触媒の範囲と効率: フルクトース1,6−ジホスフェート(特に供与体の活性化に関して範囲が非
常に狭い)と異なり、抗体アルドラーゼは範囲が非常に広く、極めて多様な基質
を受容する(図22)。今日までに100以上の異なるアルドール付加または縮
合またはその両方の反応がこのただ1つの触媒によって実施された。この触媒は
、アルデヒド−アルデヒド、ケトン−アルデヒド、およびケトン−ケトン反応を
加速することができる。交差アルドール反応の場合、種々のケトンが供与体とし
て受容される。例えば脂肪族開放鎖ケトン(例えばアセトンからペンタノンシリ
ーズ)、脂肪族環状ケトン(シクロペンタノンからシクロヘプタノン)、官能基
をもつ開放鎖ケトン(ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、フルオロア
セトン)および官能基をもつ環状ケトン(2−ヒドロキシシクロヘキサノン)で
ある。生物触媒の活性部位リジン残基は、これらのケトンを対応するエナミンに
変換できる。これらエナミンは、アルデヒドおよびケトンの両方を攻撃できる重
要な中間体である。供与体で分かったように、抗体はまた非常に異なるアルデヒ
ド基質を受容する。例えば、ペンタナール、4−アセトアミドベンズアルデヒド
、または2,4−ヘキサジエナールである。この研究中に、この抗体はまた、交
差反応のために受容体アルデヒドが存在しないことを条件にアセトンまたはシク
ロペンタノンの自己アルドール縮合を触媒することが分かった。特に、プロピオ
ンアルデヒドもまた自己アルドール縮合のための基質となる(ここでは同時に供
与体および受容体として作用する)。この反応は二量体工程で終了する。ただし
、生成物(トランス−2−メチル−2−ペンタナール)は反応性アルデヒド官能
性を含み、その後の付加工程にとってそれ自体が受容体であるかもしれない。そ
のような反応は、アセトンが供与体である場合にのみ抗体によって触媒されるこ
とが分かった。ここでは水の除去は行われなかった。ただしアルドール付加生成
物は脱水に対して不安定であった。
【0059】 自己アルドール縮合反応の事例で水の除去もまた触媒されるか否かを決定する
ために、シクロペンタノンのアルドール付加生成物を化学的に合成し、それを抗
体とともに保温した。この基質で水の除去が触媒され、典型的なミハエリス−メ
ネテンキネティクスにしたがった。分子内自己アルドール縮合を調べた。基質と
して2,6−ヘプタンジオンを用いたとき抗体は1つの工程で3−メチル−2−
シクロヘキセノンの形成を触媒することが分かった。2,6−ジケトンの一部が
シクロヘキサノン系に取り込まれる場合は、このボルドウィン適性6(エノレン
ド−トリグ)−エキソ−トリグ過程も抗体によって触媒される。したがって、ス
テロイドのA−B環の部分構造の形成は、対応する前駆体から開始しながら触媒
される。非常に驚くべきことは、抗体はキラリティーのないトリケトンの環状化
を触媒し、>95%の鏡像異性過剰(ee)でウィーランドミーシャーケトンの
(S)−鏡像体を生成する例である。最初のハプテンの構造を考え、さらにその
構造と幾何学的に必要なものもつその後の構造とを比較すれば、反応性免疫の力
が説明されるであろう。なぜならば、この生物触媒は、最初そのような基質の幾
何学構造を求めてデザインされたのではなく、機能を求めてデザインされたから
である。
【0060】 全ての抗体触媒アルドール反応は、ベンズアルデヒド誘導体を除いて典型的な
ミハエリス−メンテンキネティクスにしたがう。後者はより高い濃度(>2mM
)でわずかに基質抑制を示す。交差アルドール反応での供与体のミハエリス定数
Mの典型的な値は1mMから1Mの範囲で、多様な種々のケトンを受容するこ とができる抗体の能力を反映している。受容体アルデヒドのKM値は20μMか ら500μMの範囲である。部分的にはこれらの分子の芳香族部分によって、活
性部位による認識増加がもたらされる。さらに、これらの化合物の疎水性は駆動
力として作用し、それらの活性部位への分配を促進する。自己アルドール反応お
よび分子内アルドール縮合反応では、KM値は1から5mMの範囲である。レト ロアルドール反応のKM値はより好ましい値で、典型的には15から400μM の範囲である。全ての反応におけるKcatの特徴的な値は10-3から5分-1の範 囲で、Kcat/Kuncatの比は105から107を示す。
【0061】 各蛋白質がα−ヒドロキシケトンの切断を触媒しアルデヒドとケトンを生成す
ると仮定して、高度に類似するレトロアルドール反応の各々について効率のよい
事例を比較した(図25)。FDPアルドラーゼの場合、好ましい反応はフルク
トース1,6−ジホスフェートを切断して燐酸ジヒドロキシアセトンとグリセル
アルデヒド3−ホスフェートを生じるもので、一方、抗体の事例では、6−(4
'−ジメチルアミノフェニル)−4−ヒドロキシ−5−ヘキセン−2−オンを切 断して、アセトンと4−ジメチルアミノ−シンナムアルデヒドを生じるのが好ま
しい。抗体は、天然の基質上に荷電をもつホスフェートの手掛かりを必要としな
い。抗体によって達成される触媒のターンオーバーは、この事例での天然の酵素
のターンオーバーの10倍以内である。さらに、このターンオーバー効率は多様
な反応で維持される(図26)。
【0062】 最初の反応性の上に構築される多様な触媒機能の進化: アルドール反応の他に、この抗体は、電子の排水桶として機能するプロトン付
加シッフ塩基を有するβ−ケト酸の脱カルボキシル反応を触媒する。実際のとこ
ろ、いくつかの天然のアルドラーゼが、生物学的に関連する脱カルボキシル反応
を力学的に類似の態様で触媒することが示された(Vlahos & E.E. Decker, J. B
iol. Chem. 261:11049(1986))。
【0063】 メカニズムの多様化をもたらすまた別のルートは補助因子の利用を伴う。天然
の酵素では、補助因子は触媒できる反応のレパートリーを広げる。上記で述べた
抗体のような触媒が原始触媒のモデルと考えるならば、その範囲は、その後の更
なる進化による洗練を受けてピリドキサル燐酸のような補助因子の存在によって
拡張されるであろう。この比較的単純な作戦は、活性部位リジンをもつ酵素を多
くのアミノ酸依拠変換を触媒することができるピリドキサル依存酵素に変換する
であろう。これらの反応には、アミノ基転移反応、ラセミ化反応、脱カルボキシ
ル反応、アルドール反応、並びに除去および置換反応が含まれる(John, Biochi
mica et Biophysica Acta 1248:81(1995); H. Wada & E.E. Snell, J. Biol. Ch
em. 237(1):133(1962))。これらの酵素では、補酵素は、活性部位リジンのε−
アミノ基と補酵素のカルボニル基との間の反応によって形成される可逆性イミニ
ウム連結で結合して、360から420nmで特徴的な吸収を示すイミンを生成
する。これらの考えをテストするために、補助因子ピリドキサルをその活性部位
に閉じ込めることができる触媒抗体の能力を調べた。その結果、抗体33F12
は典型的な内部アルジミンの態様で補助因子と結合することが見出された。その
後の2,4−ペンタンジオンの付加によって、アルジミンがアルドール反応で用
いられるのと同じリジン残基により可逆的に形成されることが示された。同じ活
性が抗体38C2を用いて観察された。天然の補助因子のこの単純な付加によっ
てアルドラーゼ抗体の範囲を広げることができ、多様な新しい種類の反応を可能
にする。このようにして、我々は、最初の反応から実験的に酵素の多様化を創造
するために自然が用いたプロセスを再現できるかもしれない。
【0064】 化学的に反応性を有するリジン: 2つのアルドラーゼが類似している場合、我々は、クローン選別と自然の選別
がそれぞれ触媒事象における化学的問題をどのように解決するのかという点に興
味をもった。アルドール反応の第一の工程は、カルボニル基上のリジンのε−ア
ミノ基の求核攻撃である。ε−アミノ基が求核性であるために、それは電荷をも
たない状態でなければならない。しかしながら、水溶液中でのリジンのこのアミ
ノ基のpKaは10.5である(Dean, in Lange's Handbook of Chemistry(McGr
aw-Hill, San Francisco, CA, 1992), pp.8.19-8.71)。天然のアルドラーゼお よび抗体アルドラーゼは、両方とも球核物質として非プロトン付加リジンに依存
しており、しかもリジンのε−アミノ基が通常はプロトン付加される中性pHで
これらは最大活性を示して機能するので、この基のpKaは不安定であるにちが いない。
【0065】 レトロアルドール反応のためのpHの関数としてのKcat/KMおよび1/KM の依存性は酸性稼動pKaが6.3−6.6であることを示した。これは、FD Pアルドラーゼの触媒のpH依存性実験で観察されたものにほぼ近似する。pH
に対するKcat/KMおよび1/KMの依存性は、理想的には自由触媒および自由 基質のイオン化状態にしたがうが、一方、ここに示すように種々の程度にプロト
ン付加されたいくつかの中間工程を有する複雑なメカニズムでは、動力学的に決
定されたpKaは真のイオン化定数を示していないかもしれない。なぜならば、 それはいくつかの速度定数の比で構成され、律速工程はpHとともに変化するか
らである。
【0066】 レトロアルドール反応の複雑さのいくつかを避ける、主要リジンのpKaを決 定するもっと直接的なアプローチは、β−ジケトンとエナミンを形成する抗体の
能力を基にしている。アルドール抗体は、化学量論的にβ−ジケトン(例えば3
−メチル−2,4−ペンタンジオン)と反応して、安定なビニローグ系アミドを
生成し、完全にアルドラーゼ活性を抑制する。3−メチル−2,4−ペンタンジ
オンの反応は、抗体−エナミン複合体の吸収を335nmで追跡することによ
って分光光度計でモニターされた。この反応のpH依存性は図29に示され、抗
体33F12および38C2についてそれぞれpKa5.5および6.0で単純 な定量曲線によって表されている(これらの動力学的論争はD.E. Schmidtらの古
典的研究から続いている(D.E. Schmidt, Jr. & F.H. Westheimer, Biochemistr
y 10:1249(1971))。2,4−ペンタンジオンによるエナミン生成速度のpH依存
性の研究によって同じpKaが得られた。2,4−ペンタンジオンおよび3−メ チル−2,4−ペンタンジオンの3位のプロトンのpKaはそれぞれ8.87お よび10.65である(P.Y. Bruice, J. Am. Chem. Soc. 112:7361(1990))。こ
れらの研究は、レトロアルドール活性のpH依存性の研究と合わせて、これらの
蛋白質が摂動pKaをもつ活性部位リジンを含むことを示している。
【0067】 別のシッフ塩基形成酵素アセトアセテートデカルボキシラーゼに関するWesthe
imerと彼の共同研究者の仕事から、中性pHでのシッフ塩基生成のための反応性
リジンの化学的同調は、少なくとも部分的には、アミンの求核物質のpKaを静 電気的に動揺させる直ぐ近くの別のプロトン付加リジン残基によって達成できる
ことが分かっている。アミンのpKaを動揺させる第二の選択されるメカニズム は、疎水性の分子環境を基にするものである(P.A. Frey, F.C. Kokesh & F.H.
Westheimer, J. Am. Chem. Soc. 93:7226(1971); F.C. Kokesh & F.H. Westheim
er, J. Am. Chem. Soc. 93:7270(1971); L.A. Highbarger, J.A. Gerlt & G.L.
Kenyon, Biochemistry 35:41(1996); J.K. Lee & K.N. Houk, Science 276:942(
1997); S. Dao-pin, D.E. Anderson, W.A. Baase, F.W. Dahlquist & B.W. Matt
hews, Biochemistry 30:11521(1991))。
【0068】 構造的に特異なリジンを取り囲む混成疎水性ポケット: これらの抗体内のただ1つの反応性リジンの求核特性を構造的により理解し、
さらにそれらの範囲を説明する構造的特徴を知るために、それらの遺伝子をクロ
ーニングして配列を決定し、さらに33F12の抗原結合フラグメント(Fab
)の三次元X線結晶構造を求めた。33F12および38C2の配列は、それぞ
れ26および25のLys残基を明らかにした。抗体は、ただ1つのVDJ再構
成を含む体細胞性変種であり、VLおよびVHの各々で9アミノ酸が異なっていた
【0069】 33F12の構造は、2.15オングストロームの解像で分子の置き換えによ
って求めた。天然のFabの全体的な構造は他の既知のFabの構造と類似して
いる(図30)。エルボアングル(elbow angle)(これはVL−VHおよびCL− CH1の擬似二重軸を互いに結びつける)は151.4−で、Fab分子の観察
範囲内に入っている(23)。33F12の抗原結合部位の入口は狭くて長い裂
け目である(図31)。結合ポケットの深さは11オングストローム以上で、深
くなるにつれ拡張する。このポケットの深さは、他の小さなハプテン分子に対し
て生じた抗体ポケットに匹敵する。ポケットの底にはLysH93が疎水性環境
内で見出される(図30)。第二のLysH52bはCDR−H2の上部に位置 し、その側鎖はこの分子の外側に向いている。抗体38C2では、LysH52
bはArgに変異し、一方、LysH93は両者で共通である。CDRと他の既
知抗体分子との配列比較によって、抗体33F12のいくつかの興味深い通常で
ない特色が明らかになった。ほとんどの抗体では残基H93はAlaである。既
知の構造を有する他のの2つの抗体(エステル分解性抗体17E8および癌腫結
合抗体B72.3のキメラFab)のみがこの位置にLysを含んでいる。さら
に、残基H94(これは他の抗体では通常Argである)は、33F12では疎
水性Ileによって置換されている。H94のArgは、しばしばH101のア
スパラギン酸と塩橋を形成する。両抗体によるJH3生殖細胞系統の利用(JH
セグメントだけはこの位置でAspをコードしない)は、この相互反応を妨げる
【0070】 Fab`33F12の結合部位の分析(図32A)では、LysH93はほと
んど疎水性の側鎖によって取り囲まれ、残基LeuH4、MetH34、Val
H37、CysH92、IleH94、TyrH95、SerH100、Tyr
H102およびTrpH103とファンデルワールス力により接触している。3
8C2ではThrであるIleH94を除いて、LysH94とファンデルワー
ルス力で接触している残基は両方の抗体で保存されている。さらに、これらの接
触を形成しているIle94以外のVおよびJ遺伝子セグメントの全ての残基は
、これらの抗体によって用いられた生殖細胞系統遺伝子セグメントでコードされ
ている。V遺伝子によってコードされた、抗体間で異なる残基は結合ポケットの
洗練にほとんど寄与しないが、このことは、リジンH93はこれら触媒の個体発
生の初期に出現し、さらに残存する変異は免疫学的選別時の自然の推進力の結果
であったことを提唱している。このポケット内部では、ただ1つの荷電残基がL
ysH93のNzの半径8オングストローム内に存在する。AspH50のカル
ボキシルは約7.4オングストロームに位置し、これはいずれの水素結合または
塩橋からも遠すぎる。さらに、LysH93は、いずれの主要鎖カルボニル酸素
とも水素結合を形成しない。B72.3では、AspH101は存在しないが、
LysH93は、TyrH96の主要鎖カルボニル酸素と荷電を有する水素結合
を形成する(後者は通常でないCDR−H3ループの構成の要因となっていると
いわれている)。本発明者らもまた基質認識のための疎水性ポケットを報告した
が(Zhou, J. Guo, W. Huang, R.J. Fletterick, T.S.Scanlan, Science 265:10
59(1994))、さらに荷電を有するArgH94およびAspH101残基が存在
する。ここでLysH93残基はAspH101と塩橋を形成し(LysH93
Nz−AspH101Od1 3.2オングストローム)、その場合、陽性荷電
Lysがオキシアニオン形成を安定化させると提唱されている。したがって、3
3F12では塩橋は形成されず、さらにそれは疎水性環境内に出現するので、p
aは揺れ動き、荷電をもたないLysH93が強力な求核物質として機能する ことを可能にするであろう。
【0071】 εアミノ基のpKaが揺れ動くメカニズムをさらに明らかにするために、我々 は、疎水性に関して一定の態様で異なる一連の関連するβ−ヒドロキシケトン基
質を合成した。n−オクタノールへの基質の分配とKcat/Kaとの間の直線的自
由エネルギーの関係、ハンシュ相関関係(Hansch correlation)についての研究
で、抗体33F12の活性部位はn−オクタノールよりも1.1倍疎水性である
ことが示された(図33)。この抗体はLysH93の近傍に陽性荷電アミノ酸
側鎖を欠いているという観察と合わせて、上記の分析は、LysH93のpKa は疎水性の分子環境によって揺れ動いている可能性を支持する(疎水性分子環境
は、リガンドをもたない抗体のそのεアミノ基上でのプロトン付加および荷電の
成長に不利である)。したがって、我々は、この触媒の効率性と雑多性に至る進
化の事象を写したものを持っている。リジン残基は、異なる態様で疎水性ポケッ
トを含む生殖細胞系統抗体の体細胞での洗練の初期に出現した。この疎水性分子
環境へのリジン残基の挿入は、選別が十分に可能なほど効率的な化学反応性をも
たらした。いったんこの共有結合過程が出現すると、この結合ポケットは高い特
異性に向かってさらに進化することはなかった。
【0072】 酵素の進化に関する有利な立場: 蛋白質酵素は、部分的には遷移状態の安定化、株、酸−塩基触媒作用、および
位置の近さの結果としてその蛋白質酵素の効率性を達成する。各酵素の蛋白質の
足場は、これらの個々の作用が互いに協調して反応しその結果それらが一緒にな
って顕著な速度加速を提供することができるように進化してきた。自由な蛋白質
の足場によって促進されるこれらの協調作用の要件は、人工蛋白質は天然の酵素
の効率に匹敵することができるのかという疑問をもたらした(Jencks, in Catal
ysis in Chemistry and Enzymology. A. Meister(Ed.), Dover Publications, I
nc., Mineola, New York, 1975. 31. J.R. Knowles, Nature 350:121(1991))。
【0073】 結合ポケット一式を酵素のように多くの基質と相互作用するようにプログラム
することができるので、原則として蛋白質の触媒としての潜在能力は抗体によっ
て探索することができる。多くの触媒性抗体が製造され、優れた速度加速を有す
ることが示されたが、それらが天然の酵素と異なるメカニズムを利用するために
天然の酵素と比較することはできなかった。したがって、天然の酵素と同じよう
に効率のよい他の蛋白質が製造できるかについての答えは得られていなかった。
我々はここで、抗体および酵素は、各々が同様なメカニズムを利用する場合、互
いに比肩しえる触媒効率を有することを示す。
【0074】 我々は、触媒性抗体が全ての酵素と同じように効率的であることが判明したと
主張しようとしているのではない。しかしながら触媒性抗体は、全ての生物でエ
ネルギー代謝の中心である高度に進化した天然の酵素のターンオーバー効率に類
似している。フルクトース1,6−ジホスフェートアルドラーゼは、ただ1つの
アミノ酸がそのような重要な役割を触媒メカニズムにおいて果たす特別な事例と
考えることができるであろう。しかしこの見かけの単純さは、このアミノ酸の化
学的性質はその局所環境によって調整されるという点で当てにならない。我々の
触媒性抗体の構造的および化学的研究によって、LysH93の中心εアミノ基
のpKaは、プロトン付加およびアミノ官能性の荷電の成長に不利な疎水性環境 によって低下することが示唆された。このことは、活性部位における特定の化学
反応を選別する反応性免疫の威力を示す。この事例では、抗体の選別には、カル
ボニル炭素を攻撃し、安定なビニロギー系アミドを形成するために十分に求核性
である活性部位リジンが要求される。水の原動力(この反応およびアルドールの
中心事項である)もまたこの選別でプログラムされていることも見のがされるべ
きではない。
【0075】 抗体アルドラーゼは効率的な触媒で、しかも非常に範囲が広い。それらは、1
00を越えるアルデヒド−アルデヒド、アルデヒド−ケトンおよびケトン−ケト
ンアルドール付加および/または縮合反応を触媒する。これらの反応のいくつか
(例えばウィーランド=ミーシャーケトンの構築)は、有機化学の理論と実際に
とって主要なものである。それらは、ステロイドおよびタキソールのように多様
な構造物の合成に役割を果たす。抗体アルドラーゼのこの広い基質特異性は、反
応性免疫によって製造された他の触媒性抗体と共有される特性で、さらに上記で
考察したように、おそらくそれは、免疫原(誘発中に結合ポケット内に共有結合
を形成する)によって誘発される抗体の固有の個体発生の結果であろう(図28
)。これは、限定された範囲をもつ高度に相補的な結合ポケットを生じる遷移状
態類似体を基準にした免疫学的選別で観察されるものと対照的である(Wedemaye
r et al. Science 176:1665(1997))。我々のX線結晶学的および化学的研究によ
って、抗体はその基部にある疎水性環境内に位置するリジンを含む大きな結合ポ
ケットを含むという考え方が支持される。結合ポケットは、疎水性分配の結果と
してこのポケットに引き込まれる多様な基質を収容すると予想される。いったん
結合ポケット内に入ると、基質は高度に反応性のリジン求核物質に出会い、求核
性エナミンに分解する。同様に、アルドール受容体はこのポケットに入り、禁制
の立体的反応が存在しないかぎりアルドール付加に参画する。疑いなく、抗体ア
ルドラーゼが触媒する多数の異なる反応がこの案に適合するであろう。
【0076】 最後に、アルドラーゼ触媒性抗体は、生命にとって一般に本質的である複雑な
酵素と多くの面で類似しているので、代謝性酵素の進化について我々は何かを学
ぶことができるかもしれない。複雑な触媒機能を達成することが如何に困難であ
るかについての疑問の答えは、生命の起源にについての我々の考えをさらに押し
進める上で重要である。本来、反応性免疫の過程は、多様化と選別の通常の進化
サイクルを、ほとんどの部分について選別が多様化に先行する進化サイクルにス
イッチを切り換える。我々の実験は、反応性物質の結合から複雑な触媒機能(選
別可能なように十分に効率的である)への移行は明らかに比較的単純であること
を暗示している。その機能を最適化させるためにいったん自然の選別が開始する
と、蛋白質は、関連する化学反応の遂行に関して洗練されるだけでなく、より複
雑な代謝体系(例えばグルコース代謝)にその活性を適応させるように洗練され
ていく。最終的には、適応の過程は触媒作用の範囲を狭い方向へ洗練させていく
であろう(この場合状況に固有の調節過程が作動するであろう)。しかしそのよ
うに狭い方向へと進む前に、広い特異性をもつ酵素が、関連する酵素類の進化の
出発点として機能することができるであろう。効率のよい化学的メカニズムの進
化が、酵素の進化および機能の多様化の出発点における主要な駆動力であるとい
う有利な立場によって、構造的に異なる蛋白質は、活性部位に適切に官能基を付
加するそれらの能力に基づいて効率のよい同一の化学的メカニズムに集中するか
もしれない(Hester et al. & K. Pointek, FEBS Lett. 292:237(1991))。
【0077】 いくつかの酵素の進化で初期に明らかになった事象は、反応性免疫原によるこ
れらの触媒性抗体の誘発と同様な過程での反応性物質(例えば毒素)との相互作
用であったかもしれない。原始の化学量論的蛋白質の化学反応性は、したがって
多様な触媒機能の迅速な進化のための鋳型として機能できるであろう。これは遺
伝子複製事象によって促進され、それぞれの酵素のコピーを自由に多様化させ、
特定の基質に対して特に最適化させるであろう。本明細書で述べた多くの反応に
ついて、その各々が遺伝子の複製事象の後で選択的に最適化される。
【0078】 実施例3:アルドラーゼ抗体38C2を用いたいくつかのブレビコミンの鏡像
選択的完全合成: 化学における1つの主要なゴールは鏡像選択的過程のための効率的な触媒の開
発である。レドックス反応のような官能基変換のための強力な触媒が過去20年
間の間に数多く開発されたが、一般的に使用できる鏡像選択性C−C結合形成触
媒の例ははるかに少ない((a)Noyori, Asymmetric Catalysis in Organic Synth
esis, Wiley-Interscience(1994);(b)I. Ojima(ed), Catalytic Asymmetric Syn
thesis, VCH(1993))。これに関しては、触媒性鏡像選択アルドール反応(これは
まぎれもなく最も重要なC−C結合形成反応である)は大きな挑戦を受けてきた
(触媒性鏡像選択アルドール反応の最近の例については以下を参照されたい:(a
)Y.M.A. Yamada, N. Yoshikawa, H. Sasai, M. Shibasaki, Angew. Chem. 109:1
942-1944(1997); Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 36:1871-1873(1997);(b)E.M. C
arreira, W. Lee, R.A. Singer, J. Am. Chem. Soc. 117:3649-3650(1995)およ
びその中の参考文献))。
【0079】 反応性免疫の過程を用いて、我々は、最近アルドラーゼ抗体38C2を開発し
たが、これは天然に存在するクラスIアルドラーゼのエナミンメカニズムを利用
する(Wagner, R.A. Lerner, C.F. Barbas III, Science 270:1797(1995))。我
々は、この抗体アルドラーゼは、その酵素の天然の対応物とは対照的に(実際の
ところほとんどの触媒性抗体と対称的に)、この抗体アルドラーゼは極めて多様
な基質を受容することを示した(Barbas III et al. Science 278:2085-2092(19
97))。抗体38C2は、ウィーランド=ミーシャーケトンの製造スケールでの高
度に鏡像選択的な合成によって示したように、有機合成で有用であることが明ら
かにされた(Zhong et al. J. Am. Chem. Soc. 119:8131-8132(1997))。以前に
(−)−α−マルチストリアチンの完全合成で抗体が用いられたが(Sinha, E.
Keinan, J. Am. Chem. Soc. 117:3653-3654(1995)、今日までに報告されたほと
んどの触媒性抗体は、一般的に有用な触媒の場合に要求される合成範囲を欠いて
いた。我々はここで、抗体触媒アルドール反応またはレトロアルドール反応を用
いて、高度に鏡像選択的な(−)−(1R)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビ
コミン(ent−6000)および(−)−(1S)−1−ヒドロキシ−エキソ
−ブレビコミン(ent−5000)の完全合成を、他の異なる8種のブレビコ
ミンの公式完全合成とともに報告する。
【0080】 6,8−ジオキサビシクロ〔3.2.1〕オクタンの誘導体(図34)は、キ
クイムシの多様な種のフェロモンである(Silverstein, R.G. Brownlee, T.E. B
ellas, D.L. Wood, L.E. Browne, Science 159:889(1968))。キクイムシの大発
生は、毎年数百万の樹木の破壊をもたらし、大きな環境破壊と経済的損失を生じ
る。(+)−エキソ−ブレビコミン(7−エチル−5−メチル−6,8−ジオキ
サビシクロ〔3.2.1〕オクタン、(1000))は、この種類のフェロモンの
特定第1号であった。いくつかの酸素付加エキソ−ブレビコミンが単離され、最
近合成された(Prestwich, Pure Appl. Chem. 61:551-554(1989);(b)W. Francke,
F. Schroeder, P. Philipp, H. Meyer, V. Shinnwell, G. Gries, Bioorg. Med
. Chem. 4:363-373(1996);(c)H. Takikawa, K.-i. Shimbo, K. Mori, Liebigs A
nn. 1997, 821-824;(d)Y. Yokoyama, K. Mori, Liebigs Ann. 1997, 845-849)。
エキソ−ブレビコミン1000はアルドラーゼ酵素(ウサギ筋肉アルドラーゼ)
を用いて合成された。しかしながら、この天然のアルドラーゼは、供与体として
はジヒドロキシアセトンホスフェートに限定された。この制限は、その後の燐酸
基の酵素的除去を要求する(M. Schultz, H. Waldmann, W. Vogt, H. Kunz, Tet
rahedron Lett. 31:867-868(1990))。
【0081】 (+)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミンおよび(+)−2−ヒドロキ
シ−エキソ−ブレビコミンが、雄のマウンテンパインビートル(Dentroctonus b
revicomis)の揮発性物質で特定された。その1989年の発見と1996年の構
造解明以来、1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミンは2回合成された。Franck
eらによる最初の合成は、シャープレスの不整エポキシ化による動力学的分解を 基にしていた。Moriらによる第二回目の合成は主要工程としてシャープレスの不
整ジヒドロキシル化を用いた。この方法を用いて、彼らはまた図34に示したよ
うに(+)−2−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミンの合成を報告した。
【0082】 以前に我々は、供与体としてヒドロキシアセトンを用いた38C2触媒アルド
ール反応は、α(2R,3S)−配置をもつα,β−ジヒドロキシケトンの高度
に局所部位選択的および立体選択的な生成をもたらすことを示した。さらに、今
日までに報告された遷移金属触媒のいずれとも異なり、これらの抗体はまた効率
的にレトロアルドール反応を触媒する。これらの触媒を用いた動力学的分解はα
(2R,3S)−アルドールの選択的破壊をもたらし、高い鏡像体過剰でβ(2
R,3S)−アルドールの回収を可能にする。アルドール付加およびレトロアル
ドール活性の両方を用いることによって、両アルドール鏡像体が同じ抗体触媒を
用いて製造できる(図35に示す)。
【0083】 結果と考察: 抗体38C2は、製造スケールでアルデヒド7000とヒドロキシアセトンと
の間でアルドール反応を触媒し、55%の収量および98%のeeでジオール 000 をanti−ジアステレオマーとともに生じる(比4:1;アルデヒド 000 は市販の5−オキソヘキサンニトリルから2つの工程で製造された)。分
析スケールではeeはさらに高かった(>99%)。ジヒドロキシケトン800 αは水素化ホウ素ナトリウムで還元され、HPLC分離後にトリオールsyn
9000およびanti−9000を生じた。個々のトリオールの酸触媒脱保
護および環状化によって、本質的に鏡像体として純粋な形でヒドロキシブレビコ
ミンent−5000およびent−6000が得られる(図36)。
【0084】 ヒドロキシケトン8000αのeeは、キラセルADカラムを用いてキラルH
PLC分析によって求めた。その絶対配置は合成参照サンプルとの比較によって
割り当てた。この合成参照サンプルは、ホーナー=ワズワース=エモンス反応、
その後ADミックス−αまたはADミックス−βを用いてシャープレスの不整ジ
ヒドロキシル化を行って7000から製造した(図37)(Mulzer et al. Tetr
ahedron Lett. 35:9021-9024(1994); Walsh, K.B. Sharpless, Synlett 1993, 6
05-606) 。
【0085】 抗体38C2はラセミ体8000のレトロアルドール反応を触媒し、動力学的
分解を介してラセミ化合物の52%変換の後、>99%のeeでジオール800 βを生じた。したがって、ヒドロキシブレビコミン5000および6000
、図38で述べた経路と類似の経路によって8000βから得ることができる。
【0086】 2−ヒドロキシル化ブレビコミン3000および4000は、化合物5000 および6000について記載した方法と同様な方法を用いてジヒドロキシケトン 11000 αから製造した。抗体38C2は、アルデヒド10000と1−ヒド
ロキシ−2−ブタノンとの間でアルドール反応を触媒し、11000αを>99
%eeで生じた(アルデヒド10000は市販のエチルレブリネートから2工程
で製造した)。また、鏡像体(ent−3000およびent−4000)はア
ルドールrac−syn−11000の動力学的分解により製造でき、54%変
換後>99%eeで11000βを生じた。2−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコ
ミン4000は、以前に報告されたことがない新規な化合物である。我々は、そ
れは酸素付加によりエンド−ブレビコミン2000に由来する天然の生成物であ
ろうと考える。これは、エキソ−ブレビコミン1000はヒドロキシ−ブレビコ
ミン3000の生合成の前駆体であるという事実によって支持される。からエ
キソ−ブレビコミン1000を合成することは既に報告されている(Taniguchi,
H. Ohnishi, K. Ogasawara, Chem. Commun. 1996, 1477-1478)。したがって、
エキソ−ブレビコミンの両鏡像体は今や入手可能である(図38)。 全ての抗体触媒反応の動力学的パラメーターは図39に示されている。
【0087】 要約すれば、我々は、ブレビコミンent−5000およびent−6000 の高度に鏡像選択的な完全合成および、8つの他のブレビコミン(5000、6
000、3000、ent−3000、4000、ent−4000、1000
、ent−1000)の公式完全合成を、ただ1つの抗体触媒を利用して実施し
てみせた。先ず最初に、触媒抗体は、合成工程の総数を減らすため、および天然
生成物合成の鏡像選択性を高めるために用いた。これらの結果は、効率的でもあ
り範囲も広い抗体触媒を生成する反応性免疫の威力を強調している。
【0088】 実施例4:抗体触媒による1−デオキシ−L−キシルロースの短工程鏡像選択
的合成: 1−デオキシ−L−キシルロース(1111)の新規な効率的合成を示す。主
要工程は、抗体触媒によるベンジルオキシアセトアルデヒドへのヒドロキシアセ
トンの高度に鏡像選択的アルドール付加によって達成される。本明細書で述べる
合成はアイソトープ標識誘導体を得る便利な経路を提供するはずである。
【0089】 最近1−デオキシキシルロースに対する注目が文献で高まってきたことで、我
々はこの重要な炭水化物の合成結果の報告を促された。この炭水化物は最初スト
レプトミセス=ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicuus)から1976
年に単離された(Slechta et al. J. Antibiot. 29:685(1976); H. Hoeksema, L
. Baczynskyj, J. Antibiot. 29:688(1976))。1−デオキシ−D−キシルロース
は、チアミン(ビタミンB1)およびピリドキサル(ビタミンB6)の生合成の
中間体であることが分かった。L−およびD−鏡像体が広範囲の微生物によって
ピルビン酸およびL−またはD−グリセルアルデヒドからそれぞれ合成される。
最近になって、この糖は、テルペノイド構築ブロックへのまた別の非メバロネー
ト系生合成前駆体であることが分かった。
【0090】 今日まで1−デオキシキシルロースの両鏡像体のいくつかの合成が報告されて
きたが、これらにはアイソトープ標識を伴うものが含まれる。これらのうちのい
くつかは全体的収量が低い多段合成である。本明細書で我々は、市販のアルドラ
ーゼ抗体38C2を用いる1−デオキシ−L−キシルロースの新規な高効率鏡像
選択性合成を報告する。この抗体は、200を越える異なるアルドールおよびレ
トロアルドール反応を通常は優れた鏡像選択性で触媒する(J. Wagner, R.A. Le
rner, C.F. Barbas III, Science 270:1797(1995);(b)C.F. Barbas III, A. Hei
ne, G. Zhong, T. Hoffmann, S. Gramatikova, R. Bjornestedt, B. List, J.
Anderson, E.A. Stura, E.A. Wilson, R.A. Lerner, Science 278:2085-2092(19
97); (c)T. Hoffmann, G. Zhong, B. List, D. Shabat, J. Anderson, S. Grama
tikova, R.A. Lerner, C.F. Barbas III, J. Am. Chem. Soc. 120:2768(1998);(
d)G.F. Zhong, D. Shabat, B. List, J. Anderson, S.C. Sinha, R.A. Lerner,
C.F. Barbas III, Angew. Chem. 37:2481-4(1998);(e)B. List, D. Shabat, C.F
. Barbas III, R.A. Lerner, Chem. Eur. J. 4:881-5(1998))。
【0091】 ヒドロキシアセトンは、抗体38C2のための最良のアルドール供与体の1つ
である。このことは、他の触媒(化学的または生物学的触媒)が、アルドール反
応の供与基質としてヒドロキシアセトンを用いることができない状況で明瞭であ
る。一般的原則として、我々は、ヒドロキシアセトンは種々のアルデヒドと高度
に局所部位選択的、偏左右異性選択的および鏡像選択的に反応し、対応するα(
2R,3S)−ジヒドロキシケトンを生じることを見出した。対応するβ−(2
S,3R)−異性体は、38C2触媒鏡像選択性レトロアルドール反応によるラ
セミ混合物から得ることができる(図40)。この方法は、多くのアルドールの
動力学的分解および10種の異なるブレビコミンの完全合成で明示してみせるこ
とができた。
【0092】 市販のベンジルオキシアセトアルデヒドへの抗体38C2触媒アルドール付加
によって、α,β−ジヒドロキシケトン2111aが32%の単離収量で得られ
た。この反応は非常に低い触媒負荷(0.04mol%)を用い、アルデヒドの
56%の変換後に停止した。反応速度はこの時点で、おそらく2111aがわず
かに酸化され対応する1,3−ジケトンを生成するために遅くなった。β−ジケ
トンは抗体の活性部位リジンに結合し、反応してエナミノン(これは強力に触媒
を抑制する)を形成する。以前の事例で観察されたように、いくらかのアンチジ
アステレオマーが生成された。この事例では、わずか7%の望まないアンチ生成
物が観察されたが、シリカゲルクロマトグラフィーによって純粋な生成物が得ら
れた。ケトン2111aは、水素添加によって容易に1−デオキシ−L−キシル
ロース(1111)に変換された(図41)。
【0093】 0.5mlのアセトニトリル中のベンジルオキシアセトアルデヒド(80mg
、0.53mmol)をPBS(燐酸緩衝食塩水、100mM)中の抗体38C2溶
液9ml(35mg、0.23mmol)に加え、続いてヒドロキシアセトン(0.
5ml、6.3mmol)を添加した。室温で48時間後、反応は56%変換に達し
、混合物を凍結乾燥させた。残留物を塩化メチレンで抽出した。減圧下で溶媒を
除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキ
サン、1/1)で精製し、純粋な2111a(39mg、0.17mmol、32%
)を97%eeで生じた。ベンジルエーテル2111a(39mg、0.17mm
ol)を1mlのメタノールに溶解し、炭素上の触媒量の水酸化パラジウムで水素
添加した。2時間後、混合物をセリットでろ過し、溶媒を減圧下で除去して純粋
な1−デオキシ−L−キシルロース(19mg、0.14mmol、81%)を生じ
た。
【0094】 アルドール生成物の鏡像体純度を決定するために、我々は参考化合物を図42
に示したように合成した。ベンジルオキシアセトアルデヒドとのジエチル−2−
オキソプロピル−ホスフェートのホーナー=ワズワース=エモンス反応によって
、既知のオレフィン3111を生成し、これをシャープレス(Sharpless)の方法
にしたがってジヒドロキシル化して参照化合物アルドール2111aおよび21 11b を高いeeで得た(P.J. Walsh, K.B. Sharpless, Synlett 1993, 605-61
0; J. Mulzer, B. List, Tetrahedron Lett. 35:9021-4(1994))。シャープレス
AD反応は意図的にサブオプティマルな条件(反応は室温で実施)で実施した。
これは、このような条件下で形成される所望しない少量のフラクションをクロマ
トグラフィー標準物として使用するためである。
【0095】 ジヒドロキシケトン2111aの鏡像体過剰は、キラセルADカラムを用いて
キラルHPLC分析によって測定し、97%eeであることが分かった(図43
)。絶対配置は、シャープレスのADから得た真正サンプルと比較して割り当て
た。
【0096】 要するに、我々は新規な1−デオキシ−L−キシルロースの合成を本明細書で
示した。この2工程合成は今日までに報告されたもので最も短い。主要工程は、
アルドール供与体としてヒドロキシアセトンを用いて、高度に偏左右異性体選択
的および鏡像選択的な抗体触媒アルドール反応を介して達成された。抗体38C
2(アルドリッチ(Aldrich)から市販)は、非保護ヒドロキシアセトンのアルデ
ヒドへのアルドール付加を触媒することができる唯一の既知触媒である。アイソ
トープ標識1−デオキシキシルロースの調製(更なる生物学的研究のために必要
)は、我々の合成方法および標識ベンジルオキシアセトアルデヒドおよび/また
はヒドロキシアセトンを用いて容易に実施できる(Piel et al. Tetrahedron Le
tt. 38:6387(1997))。
【0097】 アルドラーゼ活性をもつ触媒性抗体を製造する方法は、米国特許第55716
81号および米国特許第5733757号(これらの文献は参照により本明細書
に含まれる)に開示されている。 本発明の好ましい形態を図面で示して説明してきたが、好ましい形態の変形例
は当業者には明白であろうと思われるので、本発明は、ここに示した特定の形態
に限定されず、むしろ下記請求項の記載のように限定される。
【0098】 合成プロトコル 原則:1HNMRスペクトルは、ブルーカー(Bruker)AMX−500NMR分 光計で記録した。質量スペクトルは、API−III−PEサイエックス(Scie
x)トリプル四極子質量分光計で記録した。無水条件を要求する全ての反応はオー
ブン乾燥ガラス器具でArまたはN2雰囲気下で実施した。化学薬品および溶媒 は、純度puriss p.A. または標準的技術で精製した。THFはナトリウム−ベン
ゾフェノンから蒸留した。薄層クロマトグラフィー(TLC):シリカゲルプレ
ートメルク(Merck)60F254、化合物はUV光で可視化するか、および/また は25gのホスホモリブデン酸、10gのCe(SO42・H2O、60mlの 濃硫酸および940mlのH2Oの溶液で処理し、続いて加熱するか、および/ または60mlの濃硫酸中の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン12g、80
mlのH2Oおよび200mlの95%EtOHの溶液で染色し、続いて加熱す るか、および/または沃素浴(EtOH/H2O(1:1)400ml中の30 gのI2、2gのKI)に浸漬して加温することによって可視化。フラッシュク ロマトグラフィー(FC):シリカゲルメルク60(粒子サイズ0.040−0
.063mm)、溶離剤は括弧内に表示。1HNMR:ブルーカーAMX300 、ブルーカーAMX250。化学的シフトは、TMSに対するd相対値(d=0
ppm)で示される。共役定数JはHzで示される。スペクトルは、別に記載が
なければ室温で溶媒としてCDCl3中で記録した。HR−MS:液体二次イオ ン化(LSI−MS):3−ニトロベンジルアルコールマトリックスによるVG
ZAB−ZSE。
【0099】 抗体安定性:抗体38C2および33F12は、種々の緩衝溶液(pH5.5
から8.5)に溶解して(純水でさえも)数週間室温で安定である。それらを凍
結乾燥させ、さらにセファデックスカラムを通したとき活性の損失は5%未満で
ある。リン酸緩衝食塩水(PBS)(10mM燐酸塩、150mMNaCl、p
H7.4)中で−78℃で抗体を10から20mg/mlのストック溶液として
保存した場合、検出可能な損失は見出されなかった。
【0100】 図1に示した4−(4'−アセトアミドフェニル)ブチルアルデヒド()の 調製:アルデヒドは、市販の4−(4'−アミノフェニル)酪酸から出発し以 下のように4工程で調製した。 (i)4−(4'−アセトアミドフェニル)酪酸。4−(4'−アミノフェニル
)酪酸(4.0g、22mmol)をアセトニトリルと水(9/1)の混合溶媒15
0mlに加えた。無水酢酸(7.4g、55mmol、2.5当量)を0℃で加え、
続いて反応混合物を室温で4時間攪拌した。この反応混合物をろ過し、その後1
20℃で一晩乾燥させ、4.53gの4−(4'−アセトアミドフェニル)酪酸 (93%)を得た。HR−MS:222.1140;C12H16O3N+(計
算値222.1130);C12H15O3N(221.26)。
【0101】 (ii)4−(4'−アセトアミドフェニル)酪酸メチルエステル。4−(4'
−アセトアミドフェニル)酪酸(4.50g、20mmol)および炭酸カリウム(
2.90g、21mmol)を20mlの乾燥DMFに加えた。反応混合物を室温で
15分攪拌した。続いてヨウ化メチル(14.2g、0.10mol)を窒素下
で加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒およびヨウ化メチルを蒸発さ
せた後、固形の混合物が得られ、その混合物から酢酸エチル(3x70ml)で
抽出してメチルエステルを4.7g得た(>99%)。1HNMR(300MH
z,CDCl3):7.41(d,J8.4,2H),7.34(s,br,1 H),7.12(d,J8.4,2H),3.67(s,3H),2.61(t
,J7.3,2H),2.32(t,J7.3,2H),2.17(s,3H)
,1.93(hept,J7.3,2H);HR−MS:236.1296;C
13H18O2N+(計算値236.1287);C13H17O3N(235 .28)。
【0102】 (iii)4−(4'−アセトアミドフェニル)ブタノール。4−(4'−アセ
トアミドフェニル)酪酸メチルエステル(4.70g、20mmol)を乾燥THF
50mlに溶解し、塩化メチレン中のDIBALH(1.0M、40ml)を−
30℃で滴下して加えた。混合物をこの温度で3時間攪拌し続けた。飽和塩化ア
ンモニウム(25ml)をゆっくりと加えた。酢酸エチル(3x80ml)で抽
出し、続いて溶媒を蒸発させて残留物を得て、これをFC(ヘキサン/酢酸エチ
ル4:1)で精製して、2.73g(66%)の4−(4'−アセトアミドフェ ニル)ブタノールを得た。1HNMR(300MHz,CDCl3):7.42
(d,J8.4,2H),7.23(s,br,1H),7.13(d,J8.
4,2H),3.71(t,J7.2,2H),2.56(t,J7.2,2H
),2.17(s,3H),1.65(m,4H);HR−MS:208.13
42;C12H18O2N+(計算値208.1338);C12H17O2N
(207.27)。
【0103】 (iv)4−(4'−アセトアミドフェニル)ブチルアルデヒド(6)。塩化 メチレン(25ml)と塩化オキサリル(1.0ml、11mmol)の混合物をフ
ラスコに入れた。塩化メチレン(5ml)で希釈したジメチルスルホキシド(1
.7ml、22mmol)を−78℃でこの攪拌溶液に加えた。反応混合物を2分間
攪拌し、塩化メチレン(10ml)中の4−(4'−アセトアミドフェニル)ブ タノール(2.2g、10mmol)を5分以内に加えた。さらに15分間攪拌を継
続した。トリエチルアミン(7.0ml。50mmol)を加え、反応混合物を5分
間攪拌し、続いて室温に加温した。水(50ml)を加え、水層を塩化メチレン
(50ml)で再抽出した。有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(100
ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮後、2.07gの純粋な
4−(4'−アセトアミドフェニル)ブチルアルデヒド()をFC(ヘキサン /酢酸エチル3:1)によって得た。1HNMR(300MHz,CDCl3) :9.76(s,br,1H),7.42(d,J8.4,2H),7.23(
s,br,1H),7.13(d,J8.4,2H),2.63(t,J7.2
,2H),2.45(t,J7.2,2H),2.17(s,3H),1.94
(hept,J7.2,2H);HR−MS:206.1185;C12H16
O2N+(計算値206.1181);C12H15O2N(205.26)。
【0104】 図10、11、13、15、16および18に示したアルドール生成物の化学
的調製のための一般的方法:対応するケトン(1.0mmol;図14に開示する好
ましいアルデヒドのいくつかはアルドリッチ、シグマ(Sigma)、フルカ(Fluka)
などから購入するか、または本明細書に記載したように得た)を新しく調製した
THF2ml中のLDA溶液(1.05mmol)に−78℃で加えた。この温度で
30分間攪拌した後、適切なアルデヒド(1.0mmol;図1および図10、11
、13、15、16および18に開示した好ましいアルデヒドのいくつかはアル
ドリッチ、シグマ、フルカなどから購入するか、または本明細書に記載したよう
に得た)(2mlのTHFに溶解)を1分かけて加えた。−78℃で5−30分
間攪拌した後で、飽和NH4Cl溶液(1ml)を加え、反応混合物を室温に加 温した。生成物を酢酸エチル(3x10ml)で抽出し、乾燥させ(MgSO4 )て蒸発させた。純粋なアルドール生成物をFCによって得た。アルデヒド および48を用いたアセトン付加生成物の分光光度計によるデータは実施例と
して以下に示す。
【0105】 6−(4'−アセトアミドフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ヘキサノン( ):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のアル
デヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エチル
/ヘキサン75:25)により0.21g(85%)の純粋なアルドールが生
成された。1HNMR(300MHz,CDCl3):8.12(s,br,1
H),7.37(d,J8.4,2H),7.06(d,J8.4,2H),4
.01(m,1H),3.42(m,1H),2.71(m,1H),2.62
(m,3H),2.13(s,3H),2.10(s,3H),1.75(m,
1H),1.64(M,1H);HR−MS:250.1450;C14H20
O3N+(計算値250.1443);C14H19O3N(249.31)。
【0106】 4−(4'−アセトアミドフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ブタノン(18 ):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のアル
デヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成いた。FC(酢酸エチル
/ヘキサン70:30)によって0.18g(82%)の純粋なアルドール18 が生成された。1HNMR(250MHz,DMSO−d6):9.88(s,
1H),7.49(d,J8.5,2H),7.24(d,J8.5,2H),
5.28(d,J4.4,1H),4.91(m,1H),2.65(m,2H
),2.09(s,3H),2.01(s,1H);HR−MS:244.09
55;C12H15O3NNa+(計算値244.0949);C12H15O 3N(221.26)。
【0107】 4−(4'−イソブチルアミドフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ブタノン( 59 ):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示の
アルデヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エ
チル/ヘキサン40:60)によって0.23g(91%)の純粋なアルドール 59 が生成された。1HNMR(250MHz,CDCl3):7.50(d, J8.5,2H),7.03(d,J8.5,2H),7.27(s,br,1
H),5.12(m,1H),3.36(s,1H),2.84(m,2H)2
.51(pent,J6.8,1H),2.20(s,3H),1.25(d,
J6.8,6H);HR−MS:272.1267;C14H19O3NNa+ (計算値272.1263);C14H19O3N(249.31)。
【0108】 6−(4'−アセトアミドフェニル)−4−ヒドロキシ−5−メチル−2−ヘ キサノン(21):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして
得た表示のアルデヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。F
C(酢酸エチル/ヘキサン70:30)によって0.21g(79%)の純粋な
アルドール21が生成された。1HNMR(300MHz,CDCl3):7. 85(s,br,1H),7.39(d,J8.3,2H),7.07(d,J
8.3,2H),3.95(m,1H),3.08(m,1H),2.82(m
,1H)2.66(m,3H),2.55(m,1H),2.37(m,1H)
,2.18(s,3H),2.15(s,3H),1.76(m,1H),0.
85(d,J6.6,3H);HR−MS:264.1608;C15H22O
3N+(計算値264.1600);C15H21O3N(263.34)。
【0109】 7−(4'−アセトアミドフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン( ):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のア
ルデヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エチ
ル/ヘキサン70:30)によって0.23g(89%)の純粋なアルドール が生成された。1HNMR(300MHz,CDCl3):7.39(d,J 8.4,2H),7.24(s,br,1H),7.13(d,J8.4,2H
),4.05(m,1H),3.04(m,1H),2.57(m,4H),2
.17(s,3H),2.16(s,3H),1.70(m,2H),1.45
(m,2H);HR−MS:286.1411;C15H21O3NNa+(計 算値286.1419);C15H21O3N(263.34)。
【0110】 4−(4'−ニトロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−ブタノン(27):図 に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のアルデヒド
およびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エチル/ヘキ
サン50:50)によって0.18g(86%)の純粋なアルドール26が生成
された。1HNMR(250MHz,CDCl3):8.21(d,J7.2, 2H),7.52(d,J7.2,2H),5.25(m,1H),3.56(
d,J3.2,1H),2.83(m,2H),2.21(s,1H);HR−
MS:232.0591;C10H11O4NNa+(計算値232.0586 );C10H11O4N(209.20)。
【0111】 6−(4'−ニトロフェニル)−4−ヒドロキシ−5−ヘキセン−2−オン( 30 ):図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示の
アルデヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エ
チル/ヘキサン50:50)によって0.21g(89%)の純粋なアルドール 30 が生成された。1HNMR(250MHz,CDCl3):8.15(d, J7.3,2H),7.46(d,J7.3,2H),6.71(d,J15.
9,1H),6.35(dd,J15.9,J5.3,1H),4.78(m,
1H),3.28(d,J3.7,1H),2.73(m,2H),2.21(
s,1H);HR−MS:258.0751;C12H13O4NNa+(計算 値258.0742);C12H13O4N(235.24)。
【0112】 4−ヒドロキシノナ−5,7−ジエン−2−オン(49):図に示されている
、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のアルデヒドおよびケトンを
用い上記の方法にしたがって合成した。FC(酢酸エチル/ヘキサン15:85
)によって88mg(57%)の純粋なアルドール49が生成された。1HNM
R(300MHz,CDCl3):6.21(m,1H),6.05(m,1H ),5.74(m,1H),5.54(m,1H),4.56(m,1H),2
.93(m,1H),2.62(d,J6.2,2H),2.18(s,3H)
,1.75(d,J6.5,3H);HR−MS:177.0899;C9H1
4O2Na+(計算値177.0892);C9H14O2(154.21)。
【0113】 抗体触媒: 一般的調製用抗体触媒反応: 図15に示した(S)4−ヒドロキシ−6−(4−ニトロフェニル)−5−ヘ
キセン−2−オン(30)の調製のための図10、11、13、15、16およ
び18に示した抗体触媒反応の代表例:15mlのDMFおよび31mlのアセ
トン(また別に他のケトン供与体を図に示したが、市販ルートで購入するかまた
は本明細書の記載にしたがって得ることができる)中の4−ニトロシンナムアル
デヒド(110mg、0.61mmol;また別に他のアルデヒド受容体を図に示
したが、市販ルートで購入するかまたは本明細書の記載にしたがって得ることが
できる)の溶液に、PBS緩衝液(571ml、脱気してアルゴン下で維持)を
ゆっくり添加して沈澱を避けた。抗体38C2(120mM溶液8.0ml)を
添加した。4−ニトロシンナムアルデヒドおよび抗体38C2の最終濃度は、5
%(v/v)のアセトンを含む総容積625ml中でそれぞれ1.0mMおよび
1.9mMであった。この反応混合物をアルゴン下で7日間暗所で室温で保持し
た。反応混合物を塩化ナトリウムで飽和させ、3x150mlの酢酸エチルで抽
出した。抽出物をMgSO4上で乾燥させて蒸発させ、140mgの粗生成物を 得た。FC(1:2、酢酸エチル/ヘキサン)による精製で96mg(67%)
の純粋なアルドール生成物(30)を91%のeeで生じた。
【0114】 実施例2:フッ素化アルドール鏡像体選択的調製のための図11に示した抗体
触媒反応の代表例: 0.2mlのDMF中の3−(4'−アセトアミドフェニル)プロパナール (15mg、0.078mmol;また別に他のアルデヒド受容体を図に示したが、
市販ルートで購入するかまたは本明細書の記載にしたがって得ることができる)
の溶液、0.5mlのフルオロアセトン(また別に他のケトン供与体を図に示し
たが、市販ルートで購入するかまたは本明細書の記載にしたがって得ることがで
きる)および8.0mlのPBS緩衝液を抗体38C2(120mM溶液1.5
ml)に加えた。3−(4'−アセトアミドフェニル)プロパナールおよび抗体 38C2の最終濃度は、5%(v/v)のフルオロアセトンを含む総容積10.
2ml中でそれぞれ7.6mMおよび17.5mMであった。この反応混合物を
21日間室温で保持した。3つのアルドール生成物syn−16(ee95%)
、anti−16(ee34%)および60(ee97%)(図11)を準製造
用RH−HPLC(カラム:VYDAC蛋白質&ペプチドC18、(=254n
m、12%CH3CN/88%の水(0.1%のTFAを含む)、4.0ml/
分、1.0ml反応混合物/注入)によって単離し、syn−16(12mg、
tR=20.8分、収量61%)、anti−16(3.6mg、tR=18.
2分、収量21%)および60(1.2mg、tR=16.3分、収量7%)が
得られた。全体的な収量は82%であった(15%のアルデヒドが回収された
)。
【0115】 6−(4'アセトアミドフェニル)−3−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−ヘ キサノンのsyn−異性体(syn−16):図に示されている、購入または本
明細書の記載のようにして得た表示のアルデヒドおよびケトンを用い上記の方法
にしたがって合成した。1HNMR(300MHz,CDCl3):7.41( d,J8.4,2H),7.22(s,br,1H),7.15(d,J8.4
,2H),4.62(dd,J48.8,4.9,2H),3.97(m,1H
),2.85(m,1H),2.67(m,1H),2.30(d,J5.1,
3H),2.18(s,3H),1.84(m,2H)。
【0116】 6−(4'アセトアミドフェニル)−3−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−ヘ キサノンのanti−異性体(anti−16):図に示されている、購入また
は本明細書の記載のようにして得た表示のアルデヒドおよびケトンを用い上記の
方法にしたがって合成した。1HNMR(300MHz,CDCl3):7.4 2(d,J8.4,2H),7.17(s,br,1H),7.16(d,J8
.4,2H),4.64(dd,J48.9,2.4,1H),4.00(dm
,J24.5,1H),2.77(m,2H),2.31(d,J5.0,3H
),2.18(s,3H),1.94(m,2H)。
【0117】 6−(4'アセトアミドフェニル)−3−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−ヘ キサノンのレジオ−異性体(60):1HNMR(300MHz,CDCl3) :図に示されている、購入または本明細書の記載のようにして得た表示のアルデ
ヒドおよびケトンを用い上記の方法にしたがって合成した。(7.43(d,J
8.4,2H),7.17(d,J8.4,2H),7.14(s,br,1H
),4.83(d,J47.5,2H),4.12(m,1H),2.73(m
,4H),2.18(s,3H),1.81(m,2H)。
【0118】 図15で示した2−〔1'−(4"−イソブチルアミドフェニル),1'−ヒド ロキシ〕メチルシクロペンタノン(19)の製造スケールでの合成のために図1
5で示した生成物の代表例:シクロペンタノン(1mol、88ml;また別に
他のケトン供与体を図に示したが、市販ルートで購入するかまたは本明細書の記
載にしたがって得ることができる)をMOPS緩衝液(100mM、pH=7.
4)912mlに溶解した。次に、抗体38C2(1.3mmol、0.1g)を加
え、アルデヒド、4−イソブチルアミドベンジアルデヒド(1.1mmol、213
mg;また別に他のアルデヒド受容体を図に示したが、市販ルートで購入するか
または本明細書の記載にしたがって得ることができる)の最初の添加を実施した
。反応物を24時間攪拌し、続いて第二のアルデヒド添加を実施した。その後の
24時間で2回のアルデヒドの添加が続き総量852mg、4.4mmolとなった
。反応の進行は、ライニン(Rainin)カラム(Microsorb-MV, C18)(300オン
グストローム、5mm;250x4.6mm)およびアセトニトリル/水混合物
(20%CH3CN/80%水(0.1%トリフルオロ酢酸を含む))を用い流速
1.0ml/分でHPLC(Hitachi HPLCシステム:ポンプL−7100、UV
検出装置L−7400およびインテグレータD−7500)によってモニターし
た。反応混合物を暗所のアルゴン下で室温で21日間保持した。反応混合物を続
いてNaClで飽和させた。この混合物を3x500mlの酢酸エチルで抽出し
、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させて1.4gの粗生成物を得た。FC(60 :40、EtAc/Hex.)による精製で>95%のdeで0.9g(72%
)の純粋な生成物(19)が得られた。1HNMR(300MHz,CDCl3
:(7.49(d,J8.4,2H),7.31(s,br,1H),7.27
(d,J8.4,2H),5.24(s,1H),4.62(m,1H),2.
6−1.6(m,7H),1.26(d,J6.8,6H)。
【0119】 抗体アッセイ:全抗体触媒反応は、基質43(模式図4、H2O、pH6.5 )および基質n−C49CHO、n−C511CHO、n−C613CHO(表6
、(3−〔N−モルフォリノ〕プロパンスルホン酸)ナトリウム塩緩衝液(MO
PS緩衝液)、pH7.0)との反応を除いて燐酸緩衝食塩水(10mM燐酸塩
、150mMNaCl、pH7.4)中で実施した。基質33 37 39 41 43 45および48を用いる全ての抗体触媒反応およびバックグ
ラウンド反応は、ライニン(Rainin)カラム(マイクロソーブ(Microsorb)−M
V、C18、300オングストローム、5mm;250x4.6mm)および溶
離剤としてアセトニトリル/水混合物(0.1%トリフルオロ酢酸含有)(流速
1.5ml/分または1.0ml/分)を用いて、高圧液体クロマトグラフィー
(HPLC;Hitachi HPLCシステム(ポンプL−7100、UV検出装置L−7
400およびインテグレータD−7500))によってモニターした。生成物5153の生成に続いてガスクロマトグラフィー(DB−5(J&W Scientific)、
長さ:30m。I.D.:0.32nm、温度:65℃(2分)、速度:10℃
/分、tR:(51−anti)=13.82分、(51−syn)=14.0
5分、(52−anti)=12.56分、(52−syn)=12.82分、
53−anti)=11.24分、(53−syn)=11.52分)を実施
した。
【0120】 交差アルドール反応の比速度:交差アルドール反応の比速度は、受容基質(5
00mM)、抗体(2mM)および供与基質(1.0M)の開始濃度を用いて1
0%の反応が完了する前に決定した。 自己アルドールおよび分子内アルドール反応の比速度:自己アルドールおよび
分子内アルドール反応の比速度は、基質、0.10Mおよび抗体、5mMの開始
濃度を用いて10%の反応が完了する前に決定した。 ミハエリス−メンテンカイネティクス:抗体触媒反応混合物の生成物形成また
は百分率変換は、HPLCまたはGCによってモニターした。実験データは、反
応のKcatおよびKMを得るためにグラフィット(GraFit)ソフトで非直線回帰分
析を用いて作図した。全てのデータは抗体の活性部位について示されている。I
gG抗体は約150000g/molのMWにつき2つの活性部位を有する。
【0121】 生成物185921242730および54の鏡像体過剰の決
定:PBS160ml中の6.25Mアルデヒド溶液に、PBS中の抗体溶液(
135mM)30mlおよびアセトン10mlを加えた。最終濃度は、アセトン
5%(v/v)を含む総容積200mlのPBS中でアルデヒド5mMおよび抗
体20mMであった。18時間後に12mlのCH2Cl2を加え、有機層を乾燥
(MgSO4)させ、さらに蒸発させた。生成物18592124 27 および30の場合には、残留物は約1mlのi−プロパノールに溶解し、e
eは、鏡像体分離のために適切なダイセル(Daicel)カラムを使用して通常のフ
ェースHPLCによって決定した。生成物54のeeは、キラル毛細管カラム(
サイクロデックス(Cyclodex)−B(J&W Scientific)、長さ:30m、I.D
.:0.25mm、温度:150℃、tR:(a)=15.48分、(b)=1
6.01分)でGCを使用して決定した。
【0122】 18O取り込み:59への18Oの取り込みをモニターするために用いる電子 スプレーイオン化(ESI)質量分析は、API−IIIパーキンエルマー(Pe
rkin Elmer)SCIEXトリプル四極子質量分析計で実施した。サンプルの調製
では、凍結乾燥抗体38C2を18O標識水(18O、95−98%、Cambridg
e Isotope Laboratories, Andover, MA)に再懸濁させ、最終濃度7.5mMにし
た。反応はアルドール生成物59(1.5mM)を添加して開始させ、経過時間
にしたがって部分標本を18O取り込みの分析のために採取した。分析直前に、
サンプルをメタノールで10倍希釈した。
【0123】 結晶化、データ収集、構造解明および洗練(refinement):アルドラーゼ抗体
33F12のFab`を18%PEG4000、0.1MのHEPES、pH7
.4およびイソプロパノールから、以下の単位胞寸法(a=56.5オングスト
ローム、b=65.3オングストローム、c=132.6オングストローム)を
もち1分子が非対称性ユニットである空間群p212121で結晶化する。固有の データセットを、スタンフォードシンクロトロン放射研究所(Stanford Synchro
tron Radiation Laboratory)のビームライン7−1で、凍結保護剤として25%
グリセロールを用い−176℃で2.15オングストロームの分解能で収集した
。データはDENZOおよびSCALEPACK(17)を用いて処理した。構
造は分子置換技術を用いて決定した。86の初期サーチモデルから、抗体NC6
.8(18)は、分解能範囲10−4オングストロームで7.6sのMERLO
T(17)を用いて回転関数分解を提供した。プログラムAMORE(17)で
の15−4オングストロームのデータを用いた回転サーチおよび移動サーチによ
って、相関係数49.6をもつ44.7%のR値が提供され、これは次のR=5
5.6%および相関係数19.4の不正確な解答と比較される。正確な数列の計
算による変化および多段モデル構築は製図プログラムOを用いて実施した。剛体
を用いる最初のXPLOR(位置決定的および緩慢冷却洗練プロトコル)での最
初の洗練によって、F>1sをもつ10.0から2.15オングストロームのデ
ータについてR=23.8%がもたらされた。さらに洗練をプログラムSHEL
XL−96を用いて継続した。各洗練工程について、個々のB値洗練をもつ少な
くとも10サイクルの共役勾配最少化を、結合距離および結合角度に関して標準
的拘束力さらにB値については0.08のSIMU拘束力で実施した。最終ステ
ージでは、さらに別のパラメーターを用いることなく水素原始を計算した位置に
配置した。水分子は差異電子密度(difference electron density)に組み込まれ
、それらが合理的な水素結合相互反応を示す場合に洗練した。全体的なマップの
質は良好で、他の抗体でもしばしば観察される定常重鎖のH128−H136領
域を除いて、主要な鎖の断裂は示されなかった。これらの残基は、説明可能な密
度をもたなかったので、固定B値を用いオキュパンシーセットをゼロにして洗練
した。ラマチャンドラン(Ramachandran)作図によって、90.2%の残基がも
っとも適性な領域に示され、ただ1つの部外残基はValL51でこれは抗体F
abフラグメント分子で共通に観察される。LysH93の密度は2sレベルで
非常にかさだかく、Ceを越えて拡張しない。このことは、Lysでしばしば観
察されるようにおそらく多数の側鎖配置を示唆している。この残基はわずかに異
なる方向に向いているが、常に同じ報告位置に洗練された。最終的な洗練パラメ
ーターは図15に概略されている。
【0124】 クラスIアルドラーゼ酵素は、共有結合シッフ塩基中間体の形成に活性部位L
ysを利用する。この反応の第一の工程は、Lysが荷電をもたないと仮定して
、このLysの求核性攻撃で基質とカルビノールアミンを生成することである。
トランスアルドラーゼB−中間体複合体のX線結晶構造では、対応するLysが
電荷を有するといわれているが、脱プロトン反応は近傍の水分子によって促進さ
れる。水溶液中でのLysのpKaは通常はおよそ10.5である。上記の反応 を触媒するために要求される強力な求核物質として作用するためには、顕著に揺
れ動くpKaをもつ荷電をもたないアミノ基が必要である。Paetzelらは、Lys
のpKaの揺れ動きのための3つの基本的条件を概略している。すなわち、静電 気、極性、および疎水性分子環境である。Westheimerらは、アセト酢酸デカルボ
キシラーゼについて、反応性LysのpKaは近傍の第二の陽性荷電Lys残基 の静電気的反発作用のために5.6にシフトすることを示した。他方、近傍に陰
性荷電が存在する場合は、陽性荷電Lysが荷電の中和に有利なためにLysの
pKaは増加する。オロチジンモノホスフェートデカルボキシラーゼの触媒性L ysのpKaは7に低下し、これは、Lysは存在する周囲の非極性空洞によっ て説明されている。T4リゾチームの疎水性コア内の変異実験によって、疎水性
ポケットに埋め込まれているLysのpKaは6.5にシフトすることが示され た。
【0125】 抗体Fab`33F12の配列は26Lys残基を含んでいる。それは、1,
3ジカルボニルハプテンによる反応性免疫によって生じたので、この選別された
抗体は結合ポケットにLysを位置させているはずである。このLysの求核特
性のための構造をより理解するために、我々は、三次元X線構造を2.15オン
グストロームの分解能で分子置換によって決定した。本来のFabの全体的構造
は他の既知のFabの構造と類似している。エルボーアングル(これはVL−VH およびCL−CH1の擬似二重軸を互いに結びつける)は151.4−であり、
さらにFab分子のための観察された範囲内にある。33F12の抗原結合部位
は細長く伸びた裂け目で、これは結合ポケットの底で拡大する(図28−33)
。結合ポケットは深さが11オングストロームで、これは小さなハプテン群に対
して作製された抗体について認められるものと同等である。LysH93は、こ
の抗原結合ポケットの底の疎水性環境内に存在する(図30c)。第二のLys
H52bはCDR−H2の上部に配置されていて、その側鎖を分子の外側に向け ている。同様な抗体38C2(これは同等な速度加速で同じ反応を触媒する)で
は、LysH52bがArgに変異しているが、LysH93は保持されている
。このCDRと他の既知の抗体分子との配列比較によって、抗体33F12のい
くつかの興味深く通常と異なる特性が明らかにされた。残基H93はこの位置で
は非常にしばしばAlaである。既知の構造をもつ他の2つの抗体、エステル分
解抗体17E8および癌腫結合抗体B72.3のキメラFabフラグメントのみ
がその位置にLysを含んでいる。さらにまた、残基H94(これは通常はAr
gである)は、33F12では疎水性Ileによって置換されている。H94位
のArgは、しばしばH101のアスパラギン酸と塩橋を形成する(しかしなが
ら33F12では短いH3ループのために欠落している)。
【0126】 Fab`33F12の結合部位(図3A)の分析によって、LysH93はほ
ぼ疎水性側鎖によって取り囲まれ、残基LeuH4、MetH34、ValH3
7、CysH92、IleH94、TyrH95、SerH100、TyrH1
02、およびTrpH103とファンデルワールス力で接触していることが示さ
れた。荷電をもつ1つの残基がLysH93のNzの半径8オングストローム内
に存在するが、いずれの水素結合または塩橋からも遠すぎる。さらに、LysH
93はいずれの主要鎖のカルボニル酸素とも水素結合を全く形成しない。B72
.3では、AspH101は存在しないが、LysH93はTyrH96の主要
鎖カルボニル酸素と荷電をもつ水素結合を形成し、これは、通常と異なるCDR
−H3ループ構造の原因であると提唱されている。抗体17E8の対応する環境
は図32bに示されている。本著者らはまた基質認識のための疎水性ポケットに
ついて記載したが、さらに荷電をもつArgH94およびAspH101残基が
存在する。ここで、LysH93残基はAspH101と塩橋を形成し(Lys
H93Nz−AspH101Od1、3.2オングストローム)、この場合陽性
荷電Lysがオキシアニオン形成を安定化させると提唱されている。したがって
、塩橋は33F12では形成されないので、LysH93のe−アミノ基でのプ
ロトン付加および電荷の成長は疎水性環境のために不利であるように思われる。
したがって、pKaは揺れ動き、荷電をもたないLysH93を強力な求核性に し、反応性免疫過程での選別のための優れた候補物としてそれを提供するであろ
う。
【0127】 図36に示したアルデヒド7000の合成:5−オキソヘキサンニトリル(1
.14ml、10mmol、1当量;販売源にはアルドリッチ(Aldrich)/シグマ(
Sigma)/フルカ(Fluka)が含まれる)、カテコール(5.51g、50mmol,5
当量)および触媒量のp−TsOHをベンゼン(15ml)中で12時間還流さ
せた。室温に冷却後、混合物をエーテル(50ml)で希釈し、1NのNaOH
で4回、飽和塩化アンモニウムで1回洗浄した。混合物を乾燥させ(MgSO4 )、ろ過して濃縮し、2g(>99%)のアセタールがわずかに黄色の油として
得られた。これを塩化メチレン(100ml)に取り、ヘキサン中の1NのDI
BAH10.5mlで−78℃で処理した。−78℃で2時間、0℃で1時間後
、飽和塩化アンモニウム3mlおよびエーテル100mlを添加し、混合物を室
温に加温した。少量のアルミナおよび10分後に硫酸マグネシウムを添加した。
混合物を2時間攪拌し、続いてろ過し濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー
(9%EtAc/ヘキサン)によって、1545mg(75%)のアルデヒド 000 が油として得られた。アセタールの分光計によるデータ:1HNMR(2 50MHz,CDCl3)δ1.63(s,3H),1.88(m,2H),2 .07(m,2H),2.40(t,J=7.1,2H),6.77(m,4H
);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ17.0,19.2,24.5, 37.7,108.4,117.8,119.2,121.2;C1213NO2 として算出したHRMS:203.0946、測定値203.0952。 アルデヒドの分光計データ:1HNMR(300MHz,CDCl3)δ1.6
0(s,3H),1.80(m,2H),1.93(m,2H),2.48(d
t,J=1.4および7.2,2H),6.74(m,4H),9.74(t,
J=1.4,1H);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ15.7,24 .3,38.1,43.3,108.2,121.0,121.2,201.8
;C12143としての算出したHRMS:206.0943、測定値206. 0948。
【0128】 図36に示したジオール8000αの抗体触媒合成:PBS緩衝液(50mM
、pH=7.0)中の抗体38C2(アドリッチケミカル社から入手可能)の3
8μM溶液18mlに1mlのヒドロキシアセトンおよびアセトニトリル中のア
ルデヒドの100mM溶液1ml(20.6mg、0.1mmol)を添加した。
最終濃度は、約33μM(アルデヒドに対して0.66%)の38C2、0.6
8Mのヒドロキシアセトンおよび5mMのアルデヒド7000であった。36時
間後、RP−HPLC(35%アセトニトリル/水(0.1%TFAを含む)、 8000 αの保持時間=7.75分anti−異性体=7.34分、7000
15.77分)によってモニターしたとき反応は65%変換に達した。抗体は、
セントリコン(Centricon)−10濃縮チューブ(Amicon)で遠心して反応物から
分離した。溶媒は減圧下で除去して粗生成物はRP−HPLCで精製し、98%
以上のeeで10.2mg(0.036mmol、消費アルデヒドにしたがって55
%)の純粋な8000αが得られた。eeは、キラセルADカラムを用いてキラ
ルHPLCによって求めた(12%i−PrOH/ヘキサン、1ml/分、λ=
284nm;分析スケールではeeは>99%であった)。1HNMR(250 MHz,CDCl3)δ1.46−2.10(m's,7H),1.59(s,3
H),2.23(s,3H),3.73(br,1H),3.95(br,1H
),4.03(br,1H),6.73(m,4H);13CNMR(63MHz
,CDCl3)δ19.4,24.2,25.1,34.0,38.7,71. 5,79.1,108.2,118.5,120.9,207.9;C1520 5 Naとして算出されたHRMS:303.1208、測定値303.1216 。
【0129】 図36に示したトリオール9000の合成:10mlのメタノール中のジオー
8000α(10.2mg、0,036mmol、1当量)をナトリウムボラネー
ト(3mg、2当量)で処理し、5分間攪拌した。混合物を飽和塩化アンモニウ
ム溶液で抽出し、さらにエーテルで再抽出した。乾燥させ(MgSO4)、真空 中で蒸発させた後、偏左右異性体トリオールをRP−HPLCで単離した。3.
9mg(0.014mmol、38%)のanti−9000および4.4mg(0
.016mmol、43%)のsyn−9000を固形物として得た。 anti−9000の分光計によるデータ:1HNMR(250MHz,CD3
D)δ1.08(d,J=6.3,3H),1.45(s,3H),1.30−
1,60(m,4H),1.89(m,2H),2.98(br,1H),3.
61(m,2H),6.59(m,4H);13CNMR(63MHz,CD3O D)δ19.8,20.6,24.5,34.6,40.1,69.7,73.
0,78.3,109.1,122.0,148.9;C15225Naとして 算出されたHRMS:305.1365、測定値305.1375。syn− 000 の分光計によるデータ:1HNMR(250MHz,CD3OD)δ1.0
5(d,J=6.4,3H),1.43(s,3H),1.30−1.60(m
,4H),1.80(m,2H),2.99(br,1H),3.48(br,
1H),3.67(m,1H)6.60(m,4H);13CNMR(63MHz
,CD3OD)δ20.1,20.8,24.5,34.6,40.1,68. 7,71.2,78.3,109.1,120.0,122.0,148.9;
15225Naとして算出されたHRMS:305.1365、測定値305 .1374。
【0130】 図36に示した(1S,1'S,5'S,7'S)−1−(5'−メチル−6', 8'−ジオキサビシクロ−〔3.2.1〕オクト−7'イル)エタノール((−)
−(1S)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミン(ent−5000))の
合成:トリオールanti−9000(4.4mg、0.016mmol)およびベ
ンゼン0.5ml中の触媒量のp−TsOHを60℃で45分加熱した。冷却後
、25%のトリメチルアミン水溶液を1滴および100mgのシリカゲルを加え
た。この物質を真空中で蒸発させ、続いてクロマトグラフィー(9%EtOAc
/ヘキサン)を施して、1−ヒドロキシブレビコミンent−5000の2.7
mg(0.0154mmol、96%)を生じた。分光計によるデータは文献の値と
完全に一致した。eeは98%であった。
【0131】 図36に示した(1R,1'S,5'S,7'S)−1−(5'−メチル−6', 8'−ジオキサビシクロ−〔3.2.1〕オクト−7'イル)エタノール((−)
−(1R)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミン(ent−6000))の
合成:トリオールsyn−9000(3.9mg、0.014mmol)およびベン
ゼン0.5ml中の触媒量のp−TsOHを60℃で45分加熱した。冷却後、
25%のトリメチルアミン水溶液を1滴および100mgのシリカゲルを加えた
。この物質を真空中で蒸発させ、続いてクロマトグラフィー(9%EtOAc/
ヘキサン)を施して、1−ヒドロキシブレビコミンent−6000の2.3m
g(0.013mmol、95%)を液体として得た。分光計によるデータは文献の
値と完全に一致した。eeはキラルGCで測定し、98%であった。
【0132】 ジオール8000の抗体触媒動力学的分解:この反応は分析スケールで実施し
た。ラセミアルドール8(500μM)およびPBS(pH7.4)中の抗体3
8C2(30μM)をラセミ混合物の52%が消費されるまで(およそ10時間
)保温した。再アミノ化アルドール8000αを分析用RP−HPLCカラムで
単離した。eeは上記のようにして決定し、>99%であった。
【0133】 ホーナー=ワズワース=エモンス反応およびシャープレス不整ジヒドロキシル
化による8000αおよび8000βの参照化学物質の合成:アルデヒド700 (360mg、1.748mmol、1当量)、ジエチル(2−オキソプロピル)
ホスホネート(424mg、2.184mmol、1.25当量)および水酸化リチ
ウム一水塩(101mg、2.412mmol、1.38当量)を5mlの無水TH
F中で3時間攪拌した。混合物を5mlのエーテルで希釈し、0.3mlの飽和
塩化アンモニウム溶液を加えた。混合物を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して濃 縮した。シリカゲル上でのろ過(50%EtOAc/ヘキサン)によって、液体
としてα,β−不飽和メチルケトン430mg(>99%)が得られた。1HN MR(300MHz,CDCl3)δ1.60(s,3H),1.58−1.7 0(m,2H),1.90−2.00(m,2H),2.22(s,3H),2
.20−2.30(m,2H),6.05(d,J=15.9,1H),6.7
5(m,5H);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ19.2,24.5 ,26.8,32.0,37.6,108.2,108.3,120.9,12
1.2,131.5,147.3,203.8;C15183Naとして算出さ れたHRMS:269.1154、測定値269.1161。
【0134】 図36に示したシャープレス−ADによるジオール8000αの合成:12m
lのt−BuOH/水(1:1)中のα,β−不飽和メチルケトン(300mg
、1.22mmol、1当量)をAD−ミックス−α(1.73g)およびメタンス
ルホンアミド(120mg)と0℃で処理し、0℃で3時間攪拌し、さらに室温
で16時間攪拌した。メタ重亜硫酸ナトリウム(2.48g)を注意して加え、
混合物を酢酸エチル(x5)で抽出した。乾燥(MgSO4)、真空中での蒸発 、クロマトグラフィー(35%EtOAc/ヘキサン)の後で、299mg(8
8%)の純粋なジオールαが固体として得られた。eeは上記のように決定し
、89%であった。
【0135】 図37に示したジオール8000βの合成:12mlのt−BuOH/水(1
:1)中のα,β−不飽和メチルケトン(300mg、1.22mmol、1当量)
をAD−ミックス−β(1.73g)およびメタンスルホンアミド(120mg
)と0℃でで処理し、0℃で3時間さらに室温で16時間攪拌した。メタ重亜硫
酸ナトリウム(2.48g)を注意して加え、混合物を酢酸エチル(x5)で抽
出した。乾燥(MgSO4)、真空中での蒸発、クロマトグラフィー(35%E tOAc/ヘキサン)の後で、290mg(85%)の純粋なジオール8000 βが固体として得られた。eeは上記のように決定し、91%であった。
【0136】 図38で示したムルザーシーケンスおよびシャープレス不整ジヒドロキシル化
によるジオール11000αおよびジオール11000βの参照化学物質の合成
:エチルレブリネート(7.1ml、50mmol、1当量)、カテコール(27.
53g、250mmol、5当量)および触媒量のTsOHをベンゼン(200ml
)中で12時間還流させた。室温に冷却後、混合物をエーテル(250ml)で
希釈し、1NのNaOHで4回、飽和塩化アンモニウムで1回洗浄した。混合物
を乾燥させて(MgSO4)ろ過し、濃縮してルブリネートアセタール11.8 g(>99%)をわずかに黄色の油として得た。この物質(2.36g、10mm
ol)を塩化メチレン(100ml)中に取り、ヘキサン中の1NのDIBAH1
0.5mlで処理した。−78℃で30分後、3mlの飽和塩化アンモニウムお
よび100mlのエーテルを加え、混合物を室温に加温した。少量のアルミナお
よび10分後に硫酸マグネシウムを加えた。混合物を2時間攪拌し、続いてろ過
し濃縮した。この後の化学工程のためにこの物質は十分な純度を有していた。抗
体触媒工程用:フラッシュクロマトグラフィー(9%EtOAc/ヘキサン)に
よって1.83g(95%)のアルデヒド10000が油として得られた。分光
計によるアセタールのデータ:1HNMR(250MHz,CDCl3)δ1.1
2(t,J=7.1,3H),1.53(s,3H),2.20(m,2H),
2.38(m,2H),4.02(q,J=7.1,2H),6.66(m,4
H);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ14.1,24.6,28.2 ,34.2,60.53,108.4,121.14,147.3,172.8
;分光計による10000のデータ:1HNMR(300MHz,CDCl3)δ
1.64(s,3H),2.31(t,J=7.6,2H),2.62(t,7
.6,2H),6.76(m,4H),9.76(s,1H);13CNMR(6
3MHz,CDCl3)δ24.6,31.4,37.6,108.4,121 .3,147.1,200.8。
【0137】 図38に示したα,β不飽和エチルケトンの合成:15mlの無水エタノール
中のメチルメタンホスホネート(1.95ml、18mmol、3.6当量)をn−
BuLiの2.5M溶液(7.2ml、18mmol、3.6当量)で−78℃で処
理した。30分後、7mlの無水エーテル中のエステル(881mg、10mmol
、2当量)をゆっくりと添加し、混合物を−78℃で1時間、0℃で30分攪拌
した。40mlのTHF中の水(360mg、20mmol、4当量)、続いてアル
デヒド10000(960mg、5mmol、1当量)を加えた。1時間後、混合物
を65mlのエーテルで希釈し、さらに3mlの飽和塩化アンモニウム溶液を加
えた。混合物を乾燥させ(MgSO4)、ろ過して濃縮した。クロマトグラフィ ー(9%EtOAc/ヘキサン)によって960mg(78%)のα,β−不飽
和エチルケトンが液体として得られた。1HNMR(250MHz,CDCl3
δ1.06(t,J=7.3,3H),1.62(s,3H),2.09(m,
2H),2.37(m,2H),2.50(q,J=7.3,3H),6.04
(dt,J=1.5および15.8,1H),6.75(m,4H),6.81
(dt,J=6.8および15.8,1H);13CNMR(63MHz,CDC
3)δ8.0,24.6,26.1,33.3,37.5,108.3,11 7.9,121.1,130.7,145.2,147.2,200.7;C15183として算出されたHRMS:246.1256、測定値246.126 2。
【0138】 図38に示したジオール11000αの合成:16mlのt−BuOH/水(
1:1)中のα,β不飽和エチルケトン(400mg、1.626mmol、1当量
)をAD−ミックス−α(2.3g)およびメタンスルホンアミド(160mg
)と0℃で処理し、0℃で3時間、さらに室温で36時間攪拌した。メタ重亜硫
酸ナトリウム(3.38g)を注意して加え、混合物を酢酸エチル(5x)で抽
出した。乾燥(MgSO4)、真空中での蒸発およびクロマトグラフィー(グラ ジエント、35%,50%EtOAc/ヘキサン)の後で、固体として355m
g(78%)の純粋なジオール11000α(ee=91%、HPLC)、およ
び85mg(21%)の出発物質を得た。1HNMR(250MHz,CDCl3 )δ1.12(t,J=7.3,3H),1.64(s,3H),1.86(m
,3H),2.15(m,2H),2.52(m,2H),3.75(br,1
H),4.00(br,1H),4.05(br,1H),6.77(m,4H
);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ7.4,28.2,31.0,3 5.4,71.6,78.6,108.4,118.6,121.1,147.
7,210.6;C15205Naとして算出されたHRMS:303.120 8、測定値303.1198。
【0139】 図38に示したジオール11000βの合成:16mlのt−BuOH/水(
1:1)中のα,β不飽和エチルケトン(400mg、1.626mmol、1当量
)をAD−ミックス−β(2.3g)およびメチルスルホンアミド(160mg
)と0℃で処理し、0℃で3時間、さらに室温で36時間攪拌した。メタ重亜硫
酸ナトリウム(3.38g)を注意して加え、混合物を酢酸エチル(5x)で抽
出した。乾燥(MgSO4)、真空中での蒸発およびクロマトグラフィー(グラ ジエント、35%,50%EtOAc/ヘキサン)の後で、固体として322m
g(71%)の純粋なジオール11000β(ee=92%、HPLC)、およ
び114mg(28%)の出発物質を得た。1HNMR(250MHz,CDC l3)δ1.12(t,J=7.3,3H),1.64(s,3H),1.86 (m,3H),2.15(m,2H),2.52(m,2H),3.75(br
,1H),4.00(br,1H),4.05(br,1H),6.77(m,
4H);13CNMR(63MHz,CDCl3)δ7.4,28.2,31.0 ,35.4,71.6,78.6,108.4,118.6,121.1,14
7.7,210.6。
【0140】 抗体触媒によるジオール11000αの合成:この反応は分析スケールで実施
した。アルデヒド10000(500μM)、1−ヒドロキシ−2−ブタノン(
5%v/v)および抗体38C2(30μM)を約5時間保温した。アルドール
生成物は分析用RP−HPLCカラムで分離し、ee(>99%)は8000α
の製造で述べたように決定した。
【0141】 抗体触媒によるジオール11000の動力学的分解:この反応は分析スケール
で実施した。ラセミアルドール11000(5mM)およびPBS(pH7.4
)中の抗体38C2(104μM)をラセミ混合物の54%が消費されるまで保
温した(約10時間)。残留アルドール11000βを分析用RP−HPLCカ
ラムで単離し、eeは上記のようにして決定し>99%であった。
【0142】 図38で示した2−ヒドロキシブレビコミン3000および4000の合成:
5mlのメタノール中のシャープレスAD由来ジオール11000α、ee=9
1%(140mg、0.5mmol、1当量)をナトリウムボラネート(38mg、
2当量)で処理し5分間攪拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム溶液で抽出し
、エーテルで再抽出した。乾燥(MgSO4)および真空中での蒸発後に、14 1mg(>99%)の純粋な偏左右異性体トリオール12000を単離した。分
析のためにこのトリオールをRP−HPLCで分離してもよい。分光計によるa
nti−12000のデータ:1HNMR(250MHz,CD3OD)δ0.8
6(t,J=7.1,3H),1.25(m,1H),1.49(s,3H),
1.60(m,3H),1.85(m,1H),2.00(m,1H),3.0
0(br,1H),3.40(br,1H),3.72(br,1H),6.6
0(m,4H);13CNMR(63MHz,CD3OD)δ10.2,24.6 ,27.4,28.5,36.8,71.5,74.1,76.7,109.1
,120.0,122.1,149.0;C15225Naとして算出されたH RMS:305.1365、測定値305.1358。syn−12000:C 15225Naとして算出されたHRMS:305.1365、測定値305. 1371。
【0143】 図38に示した(1R,2S,5S,7R)−および(1R,2S,5S,7
S)−7−エチル−5−メチル−6,6−ジオキサビシクロ〔3.2.1〕オク
タン−2−オ−ル)((+)−(2S)−2−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミ
ンおよび(+)−(2S)−2ヒドロキシ−エンド−ブレビコミン)(4000 および3000):トリオール12000(141mg、0.5mmol)および1
0mlのベンゼン中の触媒量のp−TsOHを45分間60℃で加熱した。冷却
後、30滴の25%トリメチルアミン水溶液および500mgのシリカゲルを加
えた。この物質を真空中で蒸発させ、続いてクロマトグラフィー(グラジエント
、12%EtOAc/ヘキサン)を実施し、固体として40mg(46%)の 000 および液体として40mg(46%)のを得た。分光計によるデータは
文献の数値と完全に一致している。:1HNMR(250MHz,C66)δ0 .90(t,J=7.4,3H),1.12(br,1H),1.43(s,3
H),1.30−1.70(m,6H),3.62(m,1H),3.80((
d,J=3.7,1H),4.18(t,J=6.5,1H);13CNMR(6
3MHz,C66)δ10.0,24.3,26.9,28.8,35.4,6
6.2,77.3,80.9,107.4。4000の分光計データ:1HNM R(250MHz,CDCl3)δ0.96(t,J=7.4,3H),1.0 2(br,1H),1.48(s,3H),1.67−2.10(m,6H),
3.32(dt,J=3.1および8.1,1H),3.52(dd,J=4.
1および9.0,1H),4.30(m,1H);13CNMR(63MHz,C
DCl3)δ9.5,23.5,23.6,25.4,33.8,68.1,7 4.9,78.0。
【0144】 図41に示した化合物1111の合成:0.5mlのアセトニトリル中のベン
ジルオキシアセトアルデヒド(80mg、0.53mmol)をPBS(燐酸緩衝食
塩水、100mM)中の抗体38C2溶液9mlに加え、続いてヒドロキシアセ
トン(0.5ml、6.3mmol)を加えた。室温で48時間後、反応は56%変
換に達した。混合物を凍結乾燥させた。残留物を塩化メチルで抽出した。溶媒を
減圧下で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチ
ル/ヘキサン、1:1)で精製して純粋な2111α(39mg、0.17mmol
、32%)を97%eeで得た。ベンジルエーテル2111α(39mg、0.
17mmol)を1mlのメタノールに溶解し炭素上の触媒量の水酸化パラジウムで
水素を添加した。2時間後に混合物をセリットでろ過し、溶媒を減圧下で除去し
て純粋な1−デオキシ−L−キシルロース1111(19mg、0.14mmol、
81%)を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、抗体触媒交差アルドール反応での受容体としてのアルデヒド
示す。
【図2】 図2は、アルドール反応における抗体38C2および33F12の提唱メカニ
ズムの詳細な説明図である。律速工程は、おそらく工程5のC−C結合生成であ
る。
【図3】 図3は、エレクトロスプレーMSで得られた質量スペクトルで、緩衝98%1
8O標識水でのアルドール生成物59の抗体触媒酸素交換を示している。272
のm/zは出発物質に該当し、一方、抗体触媒交換(おそらく共有結合中間体を
介して)によって18Oが取り込まれ、274のm/zが生成された。極めて微
量の18Oの59への取り込みが、抗体38C2は存在しないがそれ以外は同一
の条件で観察された。
【図4】 図4は、アセトンおよびヒドロキシアセトンがアルドール供与基質として作用
する場合の鏡像選択性の潜在的な力学的開始点を示す。
【図5】 図5は、抗体38C2および33F12のケトン−アルデヒド交差アルドール
コンセンサス基質を示す。
【図6】 図6は、β−ジケトンハプテンを用いて抗体結合部位のリジン残基の主要e
−アミノ基の捕捉メカニズムを示す。
【図7】 図7は、シクロペンタノンの抗体触媒自己アルドール縮合のための提唱メカニ
ズム(経路1)を示す。両工程(付加および除去)は抗体によって触媒される。
水の除去が遊離36を介して生じるより不利なメカニズム(経路2)も示す。
【図8】 図8は、抗体触媒分子内アルドール縮合で基質として調べたジケトン37 および41を示す。39から40に至る6(エノール−エンド−トリグ)−エ
キソ−トリグ過程のみが触媒される。
【図9】 図9は、ステロイド部分構造(S)−44(ウィーランド−ミーシャケトン)
、(S)−46および(R)−46の抗体触媒合成を示す。
【図10】 図10は、抗体触媒交差アルドール反応での受容体としてアルデヒド33 およびアセトアルデヒドを示す。
【図11】 図11は、抗体触媒アルドール反応によるフッ素付加アルドール(syn− 、anti−16および60)の製造を示す。
【図12】 図12は、基質59の抗体またはアミン触媒レトロアルドール反応を示す。
【図13】 図13は供与体の雑多性を示す:多様なケトンの抗体触媒交差アルドール反応
のための比速度(mmol生成物/d/mmol抗体)は以下の規定条件下でア
ルデヒドを用いて決定:1Mの供与体、500mMのおよび0.4mol−
%の抗体(2mM)。R=4−アセトアミドフェニル。
【図14】 図14は抗体38C2および33F12の供与基質を示す。
【図15】 図15は受容体の雑多性を示す:アセトン、シクロペンタノンおよびヒドロキ
シアセトンの抗体触媒交差アルドール反応のための比速度(mmol生成物/d
/mmol抗体)は、以下の規定条件下でアルデヒドおよびを用いて決
定:1Mの供与体、500mMのおよび0.4mol−%の抗体(2mM)。
R=4−アセトアミドフェニル、R'=4−ニトロフェニル。
【図16】 図16は、プロピオンアルデヒド、アセトン、シクロペンタノンの抗体触媒自
己アルドール反応のための比速度(mmol生成物/d/mmol抗体)、およ
び36から水を除去して35を生成する比速度を示す。以下の規定条件を用いた
:0.1Mのケトンまたはアルデヒドおよび0.005mol−%の抗体(5m
M)。これらの反応は、交差アルドール反応をもたらすアルデヒド受容体の非存
在下でもっぱら生じる。
【図17】 図17は、基質3943および45の分子内アルドール縮合のための動力学
パラメーター(ミハエリス−メンテンキネティクス)を示す。
【図18】 図18は、以下の規定条件下で脂肪族アルデヒドを用いたシクロペンタノンお
よびヒドロキシケトンの抗体触媒交差アルドール反応のための比速度(mmol
生成物/d/mmol抗体)を示す:1Mの供与体、500mMのアルデヒドお
よび0.4mol−%の抗体(2mM)。
【図19】 図19は、キラルフェースHPLCおよびGCにより測定したいくつかの生成
物の立体化学的純度を示す。
【図20】 図20は、水溶液および有機溶媒中での59の抗体38C2触媒レトロアルド
ール化とアミン触媒レトロアルドール化との比較を示す。
【図21】 図21は、進化と免疫系が新規な蛋白質機能を発達させる過程の比較を示す。
先ず第一に、免疫系は、進化が利用する強力な遺伝的手段の各々に対して複製を
もつ。2つの過程の重要な相違は時間のパラメーターにあり、選別基準は以下の
通りである:*バックグラウンド反応は無し。数値は、アルデヒドへのアセトン
のアルドール付加についてはKuncat=2.28.10-7-1-1を用い、さら に除去工程のためにKcat/Kuncatは2250と測定されたという事実によって
概算;**Kuncat=2.28.10-7-1-1(アルデヒドへのアセトンの付 加の場合)。 酵素進化のための戦術と抗体反応の進化で用いられた戦術との比較: 蛋白質の進化 免疫反応 エクソンの移動組換え VDJの再構成 遺伝子の複製 V、D、およびJ遺伝子成分の対合群 点変異の蓄積 体細胞ハイパー変異、遺伝子変換 生物との適合のための自然の選別 結合のためのクローン選別 時間的規模:102−109年 時間的規模:週単位
【図22】 図22は基質として用いられた種々のケトンまたはアルデヒドを示す。100
例以上のアルデヒド−アルデヒド、アルデヒド−ケトンおよびケトン−ケトンア
ルドール付加または縮合反応が触媒された。R1=4−アセトアミドベンジル、 R2=4−ニトロベンジル、R3およびR4は供与体に左右される。
【図23】 図23は、シッフ塩基の互変異化によって、α位の第二のカルボニル官能性の
ために安定なビニロギー系アミドであるエナミンが生成される場合、抗体との安
定な共有結合反応が形成されること示す。
【図24】 図24は、クラスIアルドラーゼ酵素はエナミンメカニズムによって作用が進
行することを示す。C−C結合形成工程における力学的対称性によって、β−ジ
ケトン選別はこの工程の周辺に力学的に同一の反応コーディネートを誘導するこ
とができる。
【図25】 図25は、FDPアルドラーゼクラスIおよび抗体アルドラーゼによって触媒
される最適反応の比較を示す。R=4−イソブチルアミドベンジルまたはn−ブ
チルである。
【図26】 図26は、抗体が天然の基質上に荷電をもつホスフェートの握りを必要としな
い多様な反応を示す。抗体によって達成される触媒のターンオーバーは、この事
例での天然の酵素のそれの10倍以内である。さらに、ターンオーバー効率は表
示した多様な反応で維持される。抗体触媒アルドールおよびレトロアルドール反
応の選別のための動力学パラメーターは、幾何学的に明瞭に異なる基質を受容す
る生物触媒の能力を反映している。
【図27】 図27は、アルドール反応の他に、この抗体は、電子の排水桶として作用する
プロトン付加シッフを用いてβ−ケト酸の脱カルボキシル反応も触媒することを
示している。実際、いくつかの天然のアルドラーゼは、力学的に類似の態様で生
物学的に関連する脱カルボキシル反応を触媒することが示された。
【図28】 図28は、古典的免疫と反応性免疫の構造的帰結の比較を示す。
【図29】 図29はpHの関数としてエナミン形成速度を示す。抗体33F12と3−メ
チル−2,4−ペンタンジオンとの間のエナミン形成は、分光光度計によって3
35nmで15℃で追跡した。保温混合物は、7.5μMの抗体および250μ
Mの3−メチル−2,4−ペンタンジオンを4.2から8のpH範囲のクエン酸
/燐酸緩衝液中に含んでいた。反応速度は、実験的に求めた吸光係数ε335=9 .1mM-1cm-1を用いて算出した。
【図30】 図30は、抗体33F12の可変領域の立体図を示す。(a)側面図は超可変
ループH3の底部のLysH93の位置を示す。(b)90−の回転によって対
応するものの上面を示し、結合部位の中を見せる。(c)Fab`33F12結
合部位の立体図で、LysH93の近傍4オングストロームまたはそれ未満の中
に存在する残基のための側鎖のみを示す。軽鎖は薄紫色で、重鎖は青色で着色さ
れている。薄紫の標識は軽鎖の残基を、青色の標識は重鎖の残基をそれぞれ示し
ている。
【図31】 図31は、Fab`33F12結合ポケットの立体図を示す。1.4オングス
トロームの球体半径で計算した分子の表面からの薄片が示されている。残基Ly
sH93のNzの先端のみが分子の表面と接触し、抗原結合部位のほぼ底部に位
置している。軽鎖は薄紫色で、重鎖は青色で示されている。
【図32】 図32は抗体結合部位の比較で、(A)抗体Fab`33F12および(B)
抗体17E8(27)(pdb code leap)のLysH93の異なる
疎水性環境を示している。LysH93のNz周辺の8オングストロームの球体
の残基が示されている。CPK表示では、疎水性原子は黄色で、極性窒素および
酸素は青色および桃色でそれぞれ示されている。荷電をもつ塩基性残基では、そ
れらの窒素原子は濃紺で、荷電をもつ酸素原子は赤色で着色されている。Lys
H93のNz原子は青色で着色されている。
【図33】 図33は、活性部位の相対的疎水性の測定のためのハンシュプロットを示す。
一連のアルドール、R1CH(OH)CHR2C(O)R3の抗体33F12触媒 レトロアルドール反応のための動力学定数(Kcat/Km)を、対応するR置換基
の疎水性定数ρの関数として作図した。ρ値は記載したように計算した。
【図34】 図34は、いくつかのブレビコミンの構造を示す:(+)−エキソ−ブレビコ
ミン(1000);(+)−エンド−ブレビコミン(2000);(1R,2S
,5S,7R)−2−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミン(3000);(1R
,2S,5S,7S)−2−ヒドロキシ−エンド−ブレビコミン(4000);
(1R,1'R,5'R,7'R)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビコミン( 000 );(1S,1'R,5'R,7'R)−1−ヒドロキシ−エキソ−ブレビ コミン(6000)。
【図35】 図35は、ヒドロキシアセトンを含む38C2触媒アルドールおよびレトロア
ルドール反応の立体化学的経過を示す。
【図36】 図36は、以下の条件でsyn−9000およびanti−9000から50 00 および6000を製造する過程を示す:a)抗体39C2(0.66mol
%)、ヒドロキシアセトン(5容積%)、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.
4);b)NaBH4、MeOH;HPLC分離;c)pTsOH、C66、6 0℃。
【図37】 図37は、分析スケールでの反応で得たアルドール8000αの絶対配置と鏡
像異性体純度の測定を示す。キラセルADカラム(12%i−PrOH/ヘキサ
ン、1ml/分、波長(λ)=284nm)。
【図38】 図38は、以下の条件を用いた10000から1000の合成を示す:a)分
析スケールでの反応:抗体38C2(0.6mol%)、1−ヒドロキシ−2−
ブタノン(5容積%)、PBS(pH7.4);b)NaBH4、MeOH;c )pTsOH、C66、60℃、カラムクロマトグラフィー;d)文献に報告さ
れた条件に正確にしたがった(Taniguchi, H. Ohnishi, K. Ogasawara, Chem. C
ommun. 1966, 1477-1478)。
【図39】 図39は、抗体触媒反応の動力学的パラメーターを示す表である。(a)3日
後、バックグラウンド反応の生成物の形成は観察されなかった。(b)ラインウ
ィーバ=バーク(Lineweaver-Burk)の作図から得られたKcat。(c)速度は単 一濃度で測定したが、化合物8000α8000βについて得られた速度と相
関性を有している。
【図40】 図40は、ヒドロキシアセトンが種々のアルデヒドと高い局所部位選択性、偏
左右異性選択性、および鏡像選択性をもって反応して対応するα−(2R,3S
)−ジヒドロキシケトンを生成するのを示している。対応するβ−(2S,3R
)−異性体は、38C2触媒鏡像選択的レトロアルドール反応を介してラセミ混
合物から得ることができる。この手法は、多くのアルドールの動力学的解析を用
い、異なる10のブレビコミンの完全合成で示すことができた。
【図41】 図41は、水素付加によってケトン2111aを容易に1−デオキシ−L−キ
シルロース(1111)に変換できることを示している。0.5mlのアセトニ
トリル中のベンジルオキシアセトアルデヒド(80mg、0.53mmol)を、P
BS(リン酸緩衝食塩水、100mM)中の抗体38C2溶液(35mg、0.
23mmol)9mlに加え、続いてヒドロキシアセトン(0.5ml、6.3mmol
)を添加した。室温で48時間後に反応は56%変換に達した。この混合物を凍
結乾燥させた。残留物を塩化メチレンで抽出した。減圧下で溶媒を除去し、粗生
成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン、1/1
)で精製し、純粋な2111a(39mg、0.17mmol、32%)を97%の
eeで得た。ベンジルエーテル2111a(39mg、0.17mmol)を1ml
のメタノールに溶解し、炭素上の触媒量の水酸化パラジウムを用いて水素を付加
させた。2時間後、混合物をセリットでろ過して減圧下で溶媒を除去し、純粋な
1−デオキシ−L−キシルロース(19mg、0.14mmol、81%)を得た。
【図42】 図42は、アルドール生成物の鏡像異性体純度を決定するために参考化合物を
合成したことを示している。ジエチル−2−オキソプロピル−ホスフェートとベ
ンジルオキシアセトアルデヒドとのホーナー=ワズワース=エモンス反応によっ
て、既知のオレフィン3111が生成された。これをシャープレスの方法を用い
てジヒドロキシル化して参考アルドール2111aおよび2111bを高いee
で得た。
【図43】 図43は、抗体触媒反応から得たアルドール2111αの絶対配置および鏡像
異性体純度の測定を示している。キラセルADカラム(12%i−PrOH/ヘ
キサン、1ml/分、λ=254nm)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ラーナー ロバート エイ アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92037 ラ ジョラ イースト ローズラ ンド ドライヴ 7750 (72)発明者 ツォン グオフ アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92122 サン ディエゴ ノーベル ドラ イヴ 4085 ナンバー5 Fターム(参考) 4B064 AC32 AC34 AC36 BA02 BA03 BA04 BH04 BH07 CA21 CA50 DA16

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルドール供与基質とアルドール受容基質との間でアルドー
    ル縮合を触媒して、β−ヒドロキシケトンを生成する方法であって、前記アルド
    ール供与基質がケトン供与基質またはアルデヒド供与基質のどちらかで、前記ア
    ルドール受容基質がケトン受容基質またはアルデヒド受容基質のどちらかで、前
    記方法が以下の工程を含む、アルドール縮合を触媒する方法: 工程A:触媒として有効な量のアルドール付加活性を有する触媒性抗体または
    前記触媒性抗体の抗体結合部位部分を含む触媒として活性な分子を、十分量の前
    記アルドール供与基質および前記アルドール受容基質と反応媒体中で混合して反
    応混合物をつくる工程であって、前記アルドール供与基質は反応性カルボニル基
    および前記カルボニル基に隣接する分枝していない炭素を含み、前記触媒性抗体
    または前記触媒として活性な分子は、前記アルドール供与基質の反応性カルボニ
    ル基とともにシッフ塩基中間体を形成するリジン残基を含むタイプに属するもの
    である工程;続いて 工程B:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子が前記アルドール供
    与基質と前記アルドール受容基質との間でアルドール縮合を触媒して前記β−ヒ
    ドロキシケトンを生成するために十分な時間、前記工程Aの反応混合物を維持す
    る工程であって、下記の条件が適用される工程: アルドール供与基質がケトン供与基質で、アルドール受容基質がアルデヒド受
    容基質である場合は、ケトン供与基質は官能基をもたない開放鎖脂肪族ケトンで
    はない。
  2. 【請求項2】 前記アルドール受容基質がアルデヒド受容基質で、前記アル
    ドール供与基質が、脂肪族環式ケトン、官能基をもつ開放鎖脂肪族ケトンおよび
    官能基をもつ環式ケトンから成る群から選ばれる前記ケトン供与基質である請求
    項1に記載のアルドール縮合を触媒する方法。
  3. 【請求項3】 工程Bの後に、以下の付加工程を含む請求項2に記載のアル
    ドール縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケトンを
    β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  4. 【請求項4】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項2に記載のア
    ルドール縮合を触媒する方法: 工程C:還元によって前記β−ヒドロキシケトンをジヒドロキシ生成物に変換
    する。
  5. 【請求項5】 前記アルドール供与基質がケトン供与基質で、前記アルドー
    ル受容基質がケトン受容基質である請求項1に記載のアルドール縮合を触媒する
    方法。
  6. 【請求項6】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項5のアルドー
    ル縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケトンを
    β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  7. 【請求項7】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項5に記載のア
    ルドール縮合を触媒する方法: 工程C:還元によって前記β−ヒドロキシケトンをジヒドロキシ生成物に変換
    する。
  8. 【請求項8】 前記アルドール供与基質がアルデヒド供与基質で、前記アル
    ドール受容基質がアルデヒド受容基質である請求項1に記載のアルドール縮合を
    触媒する方法。
  9. 【請求項9】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項8のアルドー
    ル縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケトンを
    β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  10. 【請求項10】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項8に記載の
    アルドール縮合を触媒する方法: 工程C:還元によって前記β−ヒドロキシケトンをジヒドロキシ生成物に変換
    する。
  11. 【請求項11】 前記アルドール供与基質がアルデヒド供与基質で、前記ア
    ルドール受容基質がケトン受容体である請求項1に記載のアルドール縮合を触媒
    する方法。
  12. 【請求項12】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項11のアル
    ドール縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケトンを
    β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  13. 【請求項13】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項11に記載
    のアルドール縮合を触媒する方法: 工程C:還元によって前記β−ヒドロキシケトンをジヒドロキシ生成物に変換
    する。
  14. 【請求項14】 前記アルドール縮合が分子内で、前記アルドール供与基質
    およびアルドール受容基質の両方が単一反応分子で、前記アルドール縮合が前記
    単一反応分子を環状化させて環式β−ヒドロキシケトンを生成する請求項1に記
    載のアルドール縮合を触媒する方法。
  15. 【請求項15】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項14のアル
    ドール縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記環式β−ヒドロキシケト
    ンを環式β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  16. 【請求項16】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項14に記載
    のアルドール縮合を触媒する方法: 工程C:還元によって前記環式β−ヒドロキシケトンを環式ジヒドロキシ生成
    物に変換する。
  17. 【請求項17】 前記アルドール縮合が自己アルドール縮合で、前記アルド
    ール供与基質およびアルドール受容基質の両方が単一ケトン反応分子である請求
    項1に記載のアルドール縮合を触媒する方法。
  18. 【請求項18】 前記工程Bの後で以下の付加工程を含む請求項17のアル
    ドール縮合を触媒する方法: 工程C:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子の存在下で更なる時
    間工程Bの反応混合物を維持し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケトンを
    β−不飽和ケトン生成物に変換する。
  19. 【請求項19】 前記アルドール供与基質が以下の構造によって表され: 【化1】 前記アルドール受容基質が以下の構造によって表され: 【化2】 前記β−ヒドロキシケトンが以下の構造によって表される請求項1に記載のアル
    ドール縮合を触媒する方法: 【化3】 式中、R1は(FG)−アルキル、(FG)−アルケニルおよび(FG)−アリ ールから成る群から選ばれるラジカルで;R1はH、OHおよびFから成る群か ら選ばれるラジカルで;XはNCH3、O、S、CH2およびC64から成る群か
    ら選ばれるラジカルで;FGはOHおよびOCH3から成る群から選ばれるラジ カルである。
  20. 【請求項20】 アルドール供与基質とアルドール受容基質との間でアルド
    ール縮合を触媒して、β−ヒドロキシケトンを生成する方法であって、前記アル
    ドール供与基質がケトン供与基質またはアルデヒド供与基質のどちらかで、前記
    アルドール受容基質がケトン受容基質またはアルデヒド受容基質のどちらかで、
    前記方法が以下の工程を含むアルドール縮合を触媒する方法: 工程A:触媒として有効な量のアルドール付加活性を有する触媒性抗体または
    前記触媒性抗体の抗体結合部位部分を含む触媒として活性な分子を、十分量の前
    記アルドール供与基質および前記アルドール受容基質と反応媒体中で混合して反
    応混合物をつくる工程であって、前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分
    子は、前記アルドール供与基質とともにシッフ塩基中間体を形成するリジン残基
    を含むタイプに属し、前記アルドール供与基質は結合を形成しないα位で分枝し
    ていない工程;続いて 工程B:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子が前記アルドール供
    与基質と前記アルドール受容基質との間でアルドール縮合を触媒して前記β−ヒ
    ドロキシケトンを生成するために十分な時間、前記工程Aの反応混合物を維持し
    て前記β−ヒドロキシケトンを生成し、離脱反応によって前記β−ヒドロキシケ
    トンをβ−不飽和ケトン生成物に変換する工程。
  21. 【請求項21】 レトロアルドール反応を触媒してβ−ヒドロキシケトンを
    第一および第二のカルボニル生成物に変換する方法であって、前記第一および第
    二のカルボニル生成物がそれぞれ別個にケトン生成物またはアルデヒド生成物で
    ある、以下の工程を含むレトロアルドール反応を触媒する方法: 工程A:触媒として有効な量のアルドール付加活性を有する触媒性抗体または
    前記触媒性抗体の抗体結合部位部分を含む触媒として活性な分子を、前記β−ヒ
    ドロキシケトンと反応媒体中で混合して反応混合物をつくる工程であって、前記
    触媒性抗体または前記触媒として活性な分子は、前記第一のカルボニル生成物と
    シッフ塩基中間体を形成するリジン残基を含むタイプに属し、前記第一のカルボ
    ニル生成物はα位で分枝していない工程;続いて 工程B:前記触媒性抗体または前記触媒として活性な分子が前記レトロアルド
    ール反応を触媒して前記β−ヒドロキシケトンを前記第一および第二のカルボニ
    ル生成物に変換するために十分な時間、前記工程Aの反応混合物を維持する工程
  22. 【請求項22】 前記第一および第二のカルボニル生成物がおのおのケトン
    生成物である請求項21に記載のレトロアルドール反応を触媒する方法。
  23. 【請求項23】 前記第一および第二のカルボニル生成物がおのおのアルデ
    ヒド生成物である請求項21に記載のレトロアルドール反応を触媒する方法。
  24. 【請求項24】 前記第一のカルボニル生成物がアルデヒド生成物で、さら
    に第二のカルボニル生成物がケトン生成物である請求項21に記載のレトロアル
    ドール反応を触媒する方法。
  25. 【請求項25】 前記β−ヒドロキシケトンが環状で、前記レトロアルドー
    ル反応が前記環式β−ヒドロキシケトンを開環して、単一生成物分子として前記
    第一および第二のカルボニル生成物の両方を含む単一の開放鎖生成物を形成する
    請求項21に記載のレトロアルドール反応を触媒する方法。
  26. 【請求項26】 前記レトロアルドール反応が逆方向の自己アルドール縮合
    で、ここで前記第一および第二のカルボニル生成物が互いに同一である請求項2
    1に記載のレトロアルドール反応を触媒する方法。
  27. 【請求項27】 前記β−ヒドロキシケトンが以下の構造によって表され: 【化4】 前記第一のカルボニル生成物が以下の構造によって表され: 【化5】 前記第二のカルボニル生成物が以下の構造によって表される請求項21に記載の
    レトロアルドール反応を触媒する方法: 【化6】 式中、R1は(FG)−アルキル、(FG)−アルケニルおよび(FG)−アリ ールから成る群から選ばれるラジカルで;R1はH、OHおよびFから成る群か ら選ばれるラジカルで;XはNCH3、O、S、CH2およびC64から成る群か
    ら選ばれるラジカルで;FGはOHおよびOCH3から成る群から選ばれるラジ カルである。
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