JP2002508173A - 軟部組織細胞の組織に適切な表現型を維持または回復するための方法。 - Google Patents

軟部組織細胞の組織に適切な表現型を維持または回復するための方法。

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JP2002508173A JP2000539059A JP2000539059A JP2002508173A JP 2002508173 A JP2002508173 A JP 2002508173A JP 2000539059 A JP2000539059 A JP 2000539059A JP 2000539059 A JP2000539059 A JP 2000539059A JP 2002508173 A JP2002508173 A JP 2002508173A
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クーバー ティー. サンパス,
チャールズ エム. コーエン,
栄一 大枝
浩平 宮園
正博 川畑
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クリエイティブ バイオモレキュールズ, インコーポレイテッド
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Abstract

(57)【要約】 疾患の哺乳動物軟部組織細胞、損傷を受けた哺乳動物軟部組織細胞、もしくは加齢した哺乳動物軟部組織細胞の組織に適切な表現型を維持または回復するための方法、および内因性モルフォゲン発現のレベルの低下により特徴付けられる障害を処置するための方法。本発明の方法は、表現型特異的タンパク質発現のモルフォゲン活性化調節経路の任意の1つまたはいくつかの局面を操作するために役立つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本願は、1997年12月17日出願の米国仮出願番号60/069,931
および1998年12月1日出願の米国仮出願番号60/110,498の利益
を主張する。
【0002】 (発明の分野) 本発明は一般的に、軟部組織細胞における組織に適切な表現型を維持または回
復するための方法に関する。より詳細には、本発明は疾患の軟部組織、損傷を受
けた軟部組織、もしくは加齢した軟部組織の組織に適切な表現型を、表現型特異
的タンパク質発現に導く調節経路を操作することによって維持または回復するた
めの方法に関する。
【0003】 (発明の背景) 多数の因子が細胞の増殖、分化、および維持に影響を及ぼすことが公知である
。増殖因子および分化因子の中で最も重要な群の1つは、軟骨内骨形態形成を誘
導する能力により最初に同定された、骨形態発生タンパク質ファミリーのメンバ
ーを含むTGFβファミリー(特にモルフォゲン)のメンバーである。しかし、
それらは現在、一般的に組織における増殖および分化を維持し得る、一般的な増
殖因子および分化因子の群のうちの1つとして認識されている。さらに、モルフ
ォゲンは細胞性アポトーシスに関連している。
【0004】 本明細書で使用される場合、用語「モルフォゲン」、「骨モルフォゲン」、「
骨形態形成タンパク質」、「BMP]、「形態発生タンパク質」および「形態形
成タンパク質」は全て、ヒト骨形成タンパク質1(hOP−1)により代表され
るタンパク質のクラスを含む。hOP−1についてのヌクレオチド配列およびア
ミノ酸配列は配列番号7に示される。記載の平易化のため、hOP−1はモルフ
ォゲンを代表するものである。OP−1は真の組織モルフォゲンのTGF−βサ ブクラスを単に代表するものであることが理解され、そしてこの記載を限定する
ことは意図されない。好ましいモルフォゲンは、hOP−1のC末端の7つのシ
ステインドメインと少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、または好ましくは
少なくとも70%のアミノ酸配列相同性を共有するモルフォゲンである。他の公
知でありかつ有用なモルフォゲンは、哺乳動物骨形成タンパク質−1(OP−1
(BMP−7としてもまた公知)、およびDrosophilaホモログ60A
)、骨形成タンパク質−2(OP−2(BMP−8としてもまた公知))、骨形
成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(BMP−2AまたはCBMP−2
Aとしてもまた公知)、およびDrosophilaホモログDPP)、BMP
−3、BMP−4(BMP−2BまたはCBMP−2Bとしてもまた公知)、B
MP−5、BMP−6、ならびにそのマウスのホモログであるVgr−1、BM
P−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF3(Vgr2とし
てもまた公知)、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GD
F−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(CDMP
−1またはMP52としてもまた公知)、GDF−6(CDMP−2としてもま
た公知)、GDF−7(CDMP−3としてもまた公知)、Xenopusホモ
ログであるVglおよびNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMPなら
びにNEURAL、そして任意のそれらの形態発生的に活性なアミノ酸改変体(
例えば、保存的置換改変体)を含むが、それらに限定されない。代表的には、そ
れらのモルフォゲンはインビボでの骨のアッセイにおいて軟骨内の骨形成を刺激
する能力、またはNG108−15ニューロン細胞培養においてN−CAMもし
くはL1アイソフォーム産生を刺激する能力のような機能的特徴を共有する。米
国特許第4,968,590号;Sampathら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA 80:6591−6595(1983)を参照のこと(
これらは、本明細書において参考として援用される)。モルフォゲンを同定する
際に有用な、モルフォゲン活性についての他の機能的アッセイは、当該分野にお
いて公知である。
【0005】 モルフォゲンは、共通の構造的特徴を共有する分泌ペプチドを含む。代表的に
は、成熟形態のタンパク質は、前駆体である「プロ(pro−)形態」からプロ
セスされる。成熟形態は、保存されたパターンのシステインを含有する、およそ
97〜106アミノ酸を有するカルボキシ末端活性ドメインを含むダイマーであ
る。活性形態は、ジスルフィド結合したホモダイマーまたはヘテロダイマーのい
ずれかである。例えば、Massague、Annu.Rev.Cell Bi
ol.6:597(1990);Sampathら、J.Biol.Chem.
265:13198(1990)を参照のこと。モルフォゲンは構造において有
意な相同性および類似性を有するが、形態発生タンパク質遺伝子内の改変体は、
例えば、前駆体細胞増殖の刺激、組織特異的もしくは組織で好適な表現型の維持
、および/または分化率の刺激もしくは調節、高代謝回転により特徴付けられる
組織細胞の増殖もしくは複製を含む特定の組織において、特異的な役割を有し得
る。
【0006】 タンパク質のTGF−βスーパーファミリーの形態発生的活性は、適切で形態
発生的に寛容な環境における組織形態形成の発生的なカスケードを開始および維
持することを可能にする。これは幹細胞を組織特異的様式において増殖および分
化するよう刺激し、そして最終的に新しい組織形成となる事象の進行を誘導する
。詳細には、モルフォゲンは、形態発生的に寛容な環境において、少なくとも以
下のように生物学的に機能し得る:前駆体細胞の増殖を刺激すること;前駆体細
胞の分化を刺激すること;分化した細胞の増殖を刺激すること;および分化した
細胞の増殖および維持を支持すること(これらは、形質転換細胞の「再分化」を
含む)。
【0007】 これらの形態発生的活性はまた、このタンパク質が、疾患、損傷、または加齢
に起因する表現型を変更するために以前に誘導されて方向付けられた細胞の「再
分化」を刺激することを可能にする。モルフォゲンは、疾患の組織、損傷を受け
た組織、または加齢した組織の置換において、特に、その損傷を受けた組織が正
常な組織または器官の機能を干渉する場合において、有用である。例えば、増加
したモルフォゲン発現は、気腫から生じる損傷を受けた肺組織;損傷を受けた腎
細胞;肝硬変細胞;損傷を受けた心臓または血管;潰瘍またはその修復から生じ
る損傷を受けた胃組織;損傷を受けた神経組織(例えば、発作から生じる)また
はニューロパシー(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン
舞踏病、および多発性硬化症);損傷を受けた骨格または整形外科組織;あるい
は疾患または機械的損傷もしくは傷害から生じ得るような損傷を受けた象牙質お
よび歯周組織の修復を誘導する。さらに、モルフォゲンは疾患の軟部組織細胞、
損傷を受けた軟部組織細胞、または加齢した軟部組織細胞から生じる症状(例え
ば、ニューロパシー痛を含む、痛み)を処置する際に有用である。
【0008】 モルフォゲンは、表現型特異的遺伝子産物の発現を生じる細胞内カスケードを
誘導するように作用する。そのような遺伝子産物は、構造タンパク質、酵素など
を含む表現型を維持、増強、もしくは回復するのに必要または十分なタンパク質
を含む。一般的には、モルフォゲンは特異的なI型および/またはII型膜貫通
レセプター(各レセプターは、代表的にはセリン/トレオニンキナーゼと結合し
ている)についてのリガンドとして作用する。一般的なシナリオにおいて、リガ
ンド結合の後、II型レセプターは隣接するI型レセプターをリン酸化する。そ
の活性化されたI型レセプターは、Smadタンパク質ファミリーの特定のメン
バーを認識し、少なくともカルボキシ末端セリン残基でそれらをリン酸化する。
8つの異なるSmadタンパク質が、哺乳動物において同定されている。これら
は、経路を制限されるSmad(R−Smad)、一般的メディエータSmad
(co−Smad)、および阻害性Smad(anti−Smad)を含む3つ
のサブグループに分類される。R−SmadはI型レセプターにより直接活性化
されco−Smadと複合体を形成し、そして核内に移行する。Smadヘテロ
マーはDNAに直接結合し、そしてまた他のDNA結合タンパク質と結合し、従
って標的遺伝子の転写を調節する。Smad1、5、および8はBMPレセプタ
ーにより活性化され、そしてSmad2および3はTGF−βおよびアクチビン
レセプターにより活性化される。Smad4はco−Smadとして機能する。
Smad6およびSmad7は構造に関して他のSmadと関連性が低く、そし
てanti−Smadとして作用する。
【0009】 Smad1、Smad2、Smad3、およびSmad5タンパク質は、Sm
ad間でより分岐する領域によって連結される、保存されたアミノ末端ドメイン
およびカルボキシ末端ドメインからなる。カルボキシ末端ドメインは、エフェク
ター機能を有する。アミノ末端ドメインは、カルボキシ末端ドメインと物理的に
相互作用し(このエフェクター機能を阻害)、DNA結合に寄与する。カルボキ
シ末端ドメインの末端のセリン残基の、レセプターに媒介されるリン酸化は、ア
ミノ末端ドメインの阻害作用からカルボキシル末端ドメインを開放する。リン酸
化されたSmad分子は、少なくとも1つの他の特異的なSmadファミリー分
子とヘテロマー複合体を形成する。次いで、生じたSmad複合体は細胞核に移
行し、蓄積する。ヘテロマーSmad複合体は、単独またはDNA結合タンパク
質(例えば、フォークヘッド(forkhead)アクチビンシグナルトランス
デューサー−1(FAST1))との特異的な相互作用のいずれかによって転写
応答を制御する。
【0010】 OP−1またはBMP−2の活性化経路についての特定の参照とともに図2に
示すように、モルフォゲンは、I型およびII型レセプターに対するリガンドで
ある。II型レセプターは、I型レセプターをリガンド結合に対してトランスリ
ン酸化する構成的に活性なキナーゼを含む。II型レセプターによるI型レセプ
ターのリン酸化に続いて、I型レセプターは、Smad1のホモ二量体を特異的
にリン酸化する。I型レセプターはまた、Smad5のホモ二量体を特異的にリ
ン酸化する。次いで、ホモ二量体は分離し(リン酸化されたSmad4分子との
会合において)、少なくともSmad1およびSmad4を含むリン酸化された
ヘテロマー複合体を形成する。あるいは、リン酸化されたSmad1/Smad
5/Smad4ヘテロ三量体を形成し得る。次いで、ヘテロマー複合体は、核に
移行し、核内で蓄積する。核内において、このSmad複合体は、単独または特
定のDNA結合タンパク質(図2のX−タンパク質)との会合のいずれかで、オ
ペレーターDNAと結合し、DNA転写を開始する。「X−タンパク質」はDN
A結合タンパク質として作用し、Smadヘテロマー複合体をDNAに結合する
。内因性のモルフォゲンの発現を導く経路は、上記に記載されるSmadヘテロ
マー複合体がモルフォゲンをコードする遺伝子の転写を誘導する経路に類似する
。他の細胞内経路はモルフォゲンによって誘導され、本明細書に記載される様式
で影響され得る。
【0011】 病的な軟部組織細胞、傷害性の軟部組織細胞、または加齢の軟部組織細胞は、
部分的に、形態発生タンパク質、特にOP−1の内因性発現の減少によって特徴
付けられる。形態発生タンパク質の内因性発現の減少は、細胞に組織に不適切な
表現型(極端な場合、細胞死を生じる)を呈する脱分化を引き起こす。例えば、
脳の黒質における細胞は、アルツハイマー病を患う患者において進行性の機能障
害を生じる。同様に、肝臓細胞は、アルコール乱用または他の原因に起因してそ
れらの表現型を失い得る(すなわち、硬変を生じる)。従って、当該分野におい
て、組織に適切な表現型を維持または回復するために、病的細胞、傷害性細胞、
または加齢細胞を刺激する方法が必要とされる。
【0012】 (発明の要旨) 現在、細胞表現型の保存および維持が、増殖因子および分化因子によって正常
に調節される経路の活性化によって成し遂げられることが知られている。さらに
、現在、それらの経路の阻害が、適切な表現型を保存または誘導するためのさら
なる方法として認識される。
【0013】 通常の表現型は、発生的な合図(cue)だけではなく、種々の内因性の増殖
因子によっても制御される。しかし、疾患、損傷、または加齢は、正常細胞の表
現型を導く遺伝子の発現を調節する、増殖因子および分化因子の能力に関する細
胞機能の1つ以上の局面に影響し得る。例えば、慢性変性疾患は、生化学的機能
障害だけではなく、冒された組織の失われた細胞を置換する能力の無力化を生じ
得る。
【0014】 本発明は、種々の細胞内経路の作用を介した表現型効果の活性化工程および制
御工程を含む。このようにして、モルフォゲン活性化経路は、組織増殖および組
織分化を調節し得る方法の例として使用される。しかし、本明細書に開示される
方法は、任意の増殖因子および分化因子によって正常に調節される任意の細胞内
経路での作用を介した表現型の修復および/または維持に有用である。
【0015】 従って、本発明は、軟部組織細胞における組織に適切な表現型を維持または保
存するための方法を提供する。本発明の方法に従って、組織に適切な表現型は、
表現型特異的タンパク質の内因性発現の増加によって、維持または保存される。
好ましい実施態様において、内因性の表現型特異的タンパク質の発現は、そのよ
うなタンパク質をコードする遺伝子の発現を調節する細胞内制御経路を操作する
ことによって増加される。従って、本発明の方法は、増殖因子および維持因子(
例えば、モルフォゲン)が、表現型特異的タンパク質(例えば、表現型の保存、
回復、または増強に関連するタンパク質)の発現を誘起する細胞内経路の少なく
とも1部分と相互作用する組成物の投与工程を含む。このような方法はまた、細
胞を内因性の増殖因子産物および維持因子産物が刺激される経路に相互作用する
組成物に曝露し、その結果、細胞の増殖因子発現および維持因子発現の増加を刺
激する工程を含む。好ましい実施態様において、本発明の方法は、所定の細胞ま
たは細胞集団において欠損している細胞生物学的構成成分を検出する工程、次い
で、経路の活性化または阻害を標的する工程を包含し、この結果は、欠損してい
る構成成分の補強または修復である。
【0016】 本発明の方法は、表現型特異的遺伝子産物の発現を正常に導く経路の1つ以上
の構成成分の内因性刺激を含む。特定の表現型特異的遺伝子の発現は、特定経路
の調節の直接的または即時性の結果であり得るか、あるいはこのような調節から
生じる1つ以上の任意の生化学的効果の結果であり得る。例えば、特定経路の調
節は、表現型特異的遺伝子産物の増加された発現を究極的に生じる、異なる制御
経路を順々に活性化し得る、OP−1の内因性発現の増加を生じる。原型の経路
を図2に示す。図に見られるように、レセプターの結合は、細胞内キナーゼを活
性化し、Smadと呼ばれる細胞内メッセンジャー分子のリン酸化を引き起こす
。このSmadは特徴付けられており、当該分野に公知である(例えば、Bak
erら、Curr.Op.Genet.Develop.,7:467−473
(1997)(本明細書中で参考として援用する)を参照のこと)。リン酸化に
よって種々のSmadサブタイプは複合体を形成し、次いで、核内に移行する。
いったん核内に移行すると、自身または転写活性化因子と関連してのいずれかに
おけるSmad複合体は、直接的または間接的にのいずれかで、刺激された細胞
の特徴である特異的遺伝子産物の発現を調節する。このような遺伝子産物の1つ
はモルフォゲン自身である。従って、この経路は、モルフォゲンの発現に対する
陽性のフィードバックとしての役割を果たし得、従って、表現型特異的遺伝子の
発現を生じる他の経路に影響し得る。
【0017】 本発明の方法はまた、正常の細胞表現型を縮小する細胞構成成分の効果を阻害
するために使用され得る。任意の特異的な細胞構成成分が細胞表現型を増強また
は縮小するかどうかは、局所的な環境、発育状態、および細胞の疾患/損傷状態
に依存する。例えば、創傷治癒の間、トランスフォーミング増殖因子β(TGF
−β)は、線維形成を介して瘢痕組織の形成を促進する。創傷治癒の研究におい
て、モルフォゲンはこの効果を相殺することが示された。特殊な2つのSmad
タンパク質、Smad6およびSmad7は、TGF−βを阻害することも示さ
れた。従って、1つに実施態様において、本発明の方法は、創傷治癒部位でTG
F−βを阻害するためにSmad6/Smad7を活性化する工程を包含する。
モルフォゲンに誘導される細胞内経路のさらなる活性化は、さらに、治癒ならび
に創傷部位での正常細胞の提示を促進する。本発明の方法に基づく制御の正確な
性質は、組織の存在する環境、組織の加齢、および組織の疾患または損傷状態に
依存する。しかし、本明細書に記載されるようなモルフォゲンに誘導される経路
の活性化は、正常な表現型の修復および維持を生じる。生化学的機能にわたる正
確な制御は、加齢、疾患、および/または損傷によって有害な作用を及ぼしてい
る特定の経路を標的化することによって達成される。
【0018】 他の局面において、本発明は、内因性の表現型特異的タンパク質のレベルを増
加するための方法を提供し、細胞制御経路のいくつかの部分を制御する低分子を
導入して、表現型特異的なタンパク質の発現または活性の効果的な増加を生じる
工程を包含する。これは、表現型特異的タンパク質の内因性発現の増加の刺激か
ら生じる得るか、あるいは正常(適切な発達および解剖学的な含有量)な表現型
のインヒビターの発現または阻害活性の減少から生じ得るかのいずれかである。
例えば、低分子は、I型またはII型モルフォゲンレセプター;あるいはセリン
/トレオニンキナーゼ、またはそれらのレセプターの他のキナーゼドメインで作
用し得る。経路活性化の別の標的は、単量体形態、二量体(ヘテロマー複合体お
よびホモマー複合体を含む)形態、または三量体(ヘテロマー複合体およびホモ
マー複合体を含む)形態を含むSmadタンパク質である。あるいは、転写因子
(例えば、図2に示されるX−タンパク質)の活性化は、表現特異的な発現を導
く。低分子はまた、1つまたはいくつかの任意の以下を促進し、模倣し、または
所望であれば妨害し得る:I型および/またはII型レセプター結合、I型レセ
プターのリン酸化、Smad分子のリン酸化、Smad複合体の形成、Smad
の核内への移行、Smad複合体の核内蓄積、またはSmad複合体の転写調節
。さらに、低分子はSmadまたはSmad複合体に作用し、三次構造を変化さ
せ得、その結果、SmadまたはSmad複合体の、レセプターキナーゼドメイ
ン、他のSmad、DNA結合タンパク質、またはDNA自身との相互作用を促
進または阻害する。
【0019】 特に好ましい実施態様において、低分子は患者に投与され、ここで低分子は、
表現型特異的遺伝子の発現を促進するように、Smad複合体の形成を促進する
(特に、Smad1、Smad2、Smad3、Smad4、Smad5、およ
び/またはSmad8の分子を含む複合体)。好ましい実施態様において、方法
はまた、モルフォゲンI型またはII型レセプターに会合するセリン/トレオニ
ンキナーゼドメインを活性化する組成物の投与、その結果、モルフォゲン誘導遺
伝子の発現に関連する経路を活性化する工程を包含する。別の実施態様において
、本発明の方法は、Smad1に会合するSmad4の活性化し、その結果、モ
ルフォゲン応答性の表現型遺伝子の発現を誘導する工程を包含する。本発明の方
法はまた、Smadと、表現型特異的遺伝子の発現のプロモーター(すなわち、
表現型タンパク質に対する遺伝子の発現;表現型の保存、回復、または増強に関
連するタンパク質(特徴的な脂質または炭水化物のような非タンパク質の表現型
マーカーの産生に決定的なタンパク質を含む);表現型機能または表現型形態の
性能に関連するタンパク質;またはモルフォゲン)のような特定の核酸との相互
作用を促進し得る。このような相互作用は、例えば、遺伝子の制御領域、および
同時に、Smad複合体のような1つ以上の制御タンパク質に結合し得る転写制
御因子に関連し得る(図2を参照のこと)。本明細書で使用されるように、表現
型特異的遺伝子の発現またはモルフォゲンに誘導される遺伝子の発現は、モルフ
ォゲンの制御化にある遺伝子の発現、または正常かつ健常な細胞においてモルフ
ォゲンによって制御され得る遺伝子の発現をいう。
【0020】 本発明の別の局面は、表現型の増強、保存、または回復は、モルフォゲンI型
またはII型レセプターでアゴニストとして作用する低分子を提供し、その結果
、表現型特異的遺伝子の発現またはモルフォゲンの発現を導く経路の活性化を刺
激することによって達成され得る。
【0021】 本発明の方法はまた、モルフォゲンに誘導される表現型特異的タンパク質の発
現の阻害を減少し得る低分子を含む組成物の投与工程を包含する。モルフォゲン
の阻害は、白血病阻害因子またはサイトカインのような内因性の阻害性化合物の
形態であり得るか、または外因的に供されるインヒビターの形態であり得る。さ
らに、Smad6および/またはSmad7は、表現型特異的タンパク質の発現
の制御経路に対して阻害活性を有する。従って、本発明の方法はまた、Smad
6および/またはSmad7の活性に影響を与える工程を包含する。
【0022】 本発明は、さらに、モルフォゲン発現のレベル減少で特徴付けられる軟部組織
の障害を処置するための方法を提供する。軟部組織細胞の脱分化を生じるモルフ
ォゲン発現のレベル減少で特徴付けられる障害としては以下が挙げられる:気腫
により生じる肺損傷;腎臓の硬変または肝組織の硬変;筋組織の損傷;心筋症お
よび/またはアテローム血栓症の発作もしくは心塞栓性の発作に起因し得るよう
な、損傷を受けた心臓または血管の組織;潰瘍性穿孔またはその修復に起因する
胃または腸組織の損傷:ならびに発作または神経障害(例えば、アルツハイマー
病、パーキンソン病、ハンティングトン舞踏病、または多発性硬化症)のような
物理的傷害または化学的傷害、あるいは上記のいずれかに関連する神経障害性の
疼痛または他の疼痛に起因し得る神経組織の損傷(視覚および聴覚組織を含む)
。本発明の方法は、軟部組織細胞の疾患、損傷、または加齢を有する組織部位に
、表現型特異的遺伝子の発現を導く経路に影響する低分子を投与する工程を含み
得るか、または外因性の形態発生タンパク質もしくはそのアゴニストを投与する
工程を含み得る。このタンパク質またはそのアゴニストとしては、モノマー、ダ
イマー、および/または可溶性の複合体形態(モルフォゲンダイマーに非共有結
合的に会合した1つ以上のモルフォゲンのプロドメインを含む)が挙げられる。
この形態発生のタンパク質を含む組成物は、さらにマトリックスを含み得る。有
用なマトリックス物質としては、コラーゲン、脱無機化された骨、ヒドロキシア
パタイト、生物活性セラミックス、リン酸カルシウムセラミックスまたは上記の
物質のいずれか1つ以上を含む混合物が挙げられる。
【0023】 本発明は、さらに、形態発生のタンパク質発現のレベル減少で特徴付けられる
軟部組織の障害を処置するための方法を提供する。この方法は、モルフォゲンお
よび表現型特異的タンパク質発現の阻害を放出し得る低分子を含む組成物の投与
の工程を包含する。
【0024】 さらなる別の局面では、本発明は、形態発生のタンパク質または表現型特異的
タンパク質の外因性の発現のレベルを上昇させるインビボの方法を提供する。こ
の方法は、形態発生のタンパク質または表現型特異的タンパク質をコードする裸
のDNAまたはmRNAを、軟部組織細胞の損傷、疾患または加齢の部位に直接
的に投与する工程を包含する。米国特許第5,580,859号(その教示が参
考として本明細書に援用されている)を参照のこと。別の局面では、本発明は、
形態発生のタンパク質または表現型特異的タンパク質の外因性の発現のレベルを
上昇させるエキソビボの方法を提供する。この方法は、形態発生のタンパク質ま
たは表現型特異的タンパク質をコードするDNAを、軟部組織細胞に導入する工
程、および軟部組織の損傷、疾患または加齢を有する組織部位に、形質転換され
た軟部組織細胞を置く工程を包含する。形態形成のタンパク質または表現型特異
的タンパク質をコードするDNAの軟部組織細胞への導入は、種々の手段および
方法により成し遂げられ得る。この方法および手段には以下が挙げられる:プラ
スミドDNA;レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘ
ルペスウイルス、SV40、ポリオーマウイルス、パピローマウイルスおよびピ
コルナウイルスを含むウイルスベクター;リポソームまたはプロテオリポソーム
との境界のDNAまたはそれに被包されたDNA;リン酸カルシウム、DEAE
−デキストラン;ポリブレン;ポリシン/DNA結合体;あるいはエレクトロポ
レーションまたはマイクロインジェクション。
【0025】 さらに、本発明は、モルフォゲン活性化調節経路を調節することによりアポト
ーシスに影響することによる軟部組織障害の処置のための方法を提供する。アポ
トーシスは、特徴的なクロマチン凝集およびDNA断片化により表された細胞死
の特有の形態であり、正常な細胞周期の部分として細胞のプログラムされた死を
生じる。しかし、アポトーシスはまた、病理的な刺激により誘導され得る。いく
つかの場合には、遺伝子転写およびタンパク質合成が、アポトーシスの誘導のた
めに必要であり、そしてこの工程は、正常な細胞増殖および分化に関与する遺伝
子のセットにより調節される。
【0026】 アポトーシスは、多数の生理学的および病理学的事象の原因である。例えば、
アポトーシスは、胚形成の際の細胞のプログラムされた破壊(着床、器官形成、
発育の退行を含む)、および変態の原因である。アポトーシスはまた、月経周期
の際の子宮内膜の細胞破壊、閉経における卵胞の閉鎖、および離乳後の授乳乳房
の退行のような、成体におけるホルモン依存性退行の原因である。アポトーシス
はまた、腸管陰窩上皮のような、細胞集団の増殖における細胞欠失において機能
する。さらに、アポトーシスは、最も頻繁には退行中の腫瘍において、また活性
な細胞増殖を有する腫瘍においても、細胞死の原因である。さらに、アポトーシ
スは、サイトカイン枯渇後のBリンパ球およびTリンパ球の両方の免疫細胞の死
、ならびに発生中の胸腺における自己反応性T細胞の欠損の原因である。さらに
、アポトーシスは、去勢後の前立腺萎縮および糖質コルチコイド投与後の胸腺に
おけるリンパ球の損失のようなホルモン依存性の組織の病理的萎縮の原因である
。アポトーシスはまた、細胞性免疫拒絶および対宿主性移植片病のような、細胞
傷害性T細胞により誘導される管閉塞細胞死の後の実質器官における病理的萎縮
の原因である。さらに、アポトーシスは、例えばウイルス性肝炎(ここで肝臓に
おけるアポトーシス細胞フラグメントは、カウンシルマン小体として公知である
)のような特定のウイルス疾患における細胞傷害において役割を果たす。アポト
ーシスはまた、中度熱傷、放射線、細胞傷害性抗癌薬および潜在的な低酸素(そ
れらは壊死を生じ得るが、低用量の場合は、アポトーシスを誘発する)を含む種
々の傷害性刺激により産生される細胞死の原因である。
【0027】 アポトーシスが誘導される経路は、刺激および細胞型に依存して変化する。ア
ポトーシスの1つの重要な特徴は、遺伝子活性化および新しいタンパク質合成で
の多くの(ただし全てではない)例におけるアポトーシスの依存性である。多数
の遺伝子がアポトーシスを生じる刺激によって誘導され得る(例えば、熱ショッ
クタンパク質および癌原遺伝子)。細胞死を刺激または阻害するアポトーシスに
特異的な遺伝子は記載されている。癌の増殖および原因に関与している特定の遺
伝子(癌遺伝子およびサプレッサー遺伝子)が、アポトーシスの誘導において調
節的役割を果たす。これらの遺伝子には、以下を含む:ホルモンおよびサイトカ
インによって誘導されたアポトーシスを阻害し、従って、細胞生存を延長する癌
遺伝子bcl−2;そのタンパク質産生が細胞増殖またはアポトーシスを刺激し
得る癌遺伝子c−myc;通常、アポトーシスを刺激するが、変異したまたは存
在しないときは、細胞生存を支持するp53。しかし、アポトーシスの多くのモ
デルにおいて、新しい遺伝子の発現は必要でなく、そして実際に遺伝子発現の全
くの阻害はアポトーシスを生じる。従って、本発明の方法はまた、モルフォゲン
活性化調節経路を調節することにより軟部組織細胞におけるアポトーシスの促進
または阻害を提供する。
【0028】 本発明の方法は、疾患、傷害または加齢の結果として表現型の機能を減少した
または消失した任意の組織において実行され得る。あるいは、本発明の方法は、
発生中の胚組織において適用可能である。
【0029】 本明細書において記載される好ましい方法および実施例は、例証されるのみで
あり、制限される意図ではない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な
説明および請求項の範囲から明白である。
【0030】 (詳細な説明) 本発明の方法は、その一部は、軟部組織細胞において組織に適切な表現型を維
持することにおける、モルフォゲンならびに他の増殖因子および分化因子の役割
に依存している。本明細書で用いられる「軟部組織」は、骨および軟骨を除くす
べての哺乳動物組織を含む。モルフォゲン応答性経路の調節は、本明細書におい
て例証される。しかし、増殖および分化の基礎の生物学のため、他の増殖因子誘
導経路は、本明細書で記載された様式で調節されることが意図される。モルフォ
ゲン、特にOP−1の、外因性発現の減少は、細胞の疾患、損傷または加齢の特
有である。本発明の方法は、疾患、損傷または加齢によって脱分化をはじめた、
軟部組織細胞の組織に適切な表現型を維持または回復するために有用である。詳
細には、本発明の方法は、通常、このようなタンパク質発現に影響する調節経路
の操作によって表現型特異的タンパク質発現を増強するために有用である。
【0031】 本発明の方法は、表現型特異的タンパク質(例えば、表現型の保存、修復また
は増強に関連するタンパク質);表現型機能の能力に関連するタンパク質、また
は健常な細胞の形態学に特有のタンパク質の発現を上昇させるための調節経路の
活性化を含む。外因性のモルフォゲン(例えば、OP−1)を発現する細胞、お
よび傷害、疾患または加齢により損傷される細胞は、特定の組織特異的な表現型
マーカーを発現する能力を失う。モルフォゲンを発現するためのこのような細胞
の誘導、またはモルフォゲン刺激タンパク質は、特徴的な表現型マーカーの発現
、表現型機能の能力、および正常な(健常な)表現型の形態学の表示により証明
されるように、細胞の表現型を回復する。
【0032】 例えば、肝細胞は大きく、多角体の細胞であり、これは身体の栄養状態に依存
して可変の細胞質形態を有する。肝細胞の核は、大きく、末梢分散型クロマチン
および目立った核を有している。しかしこの核は、サイズが大きく変化する。こ
れは、肝細胞の半分より多くの正常な補体が染色体物質の正常な量の2倍を含み
、いくつかは正常量の4倍または8倍をも含むという事実を反映する。肝細胞は
、一般にグリコーゲン、脂肪および特定のビタミンを貯蔵する表現型機能を実行
する。肝細胞はまた、必要な栄養素を血液に送達するように、常食中の栄養素の
物質を別のものに変換する。例えば、肝細胞は、必要な場合には、タンパク質を
炭水化物に変換し得る。さらに、肝細胞は、特定の産物を無毒化するように変換
および/または抱合する。さらに、肝細胞は、血液において、糖のような特定の
物質の濃度を調節する。肝細胞はまた、アルブミン、フィブリノーゲンおよびグ
ロブリンとして、このような表現型タンパク質を発現する。モルフォゲンは、正
常な機能に特徴的な1つ以上の構造的または生化学的機能を失った肝細胞に健常
な表現型を回復する。一旦、同定されれば、減少された表現型の機能は、表現型
特異的なタンパク質産生を導く経路の活性化により、全体にまたは部分的に、回
復される。代表的には、このような経路はモルフォゲン調節下である。
【0033】 当業者は、他の細胞型に対して、表現型に特異的なマーカー、機能、および形
態学が周知であることを理解する。
【0034】 (低分子媒介のアップレギュレージョン) 遺伝子発現を調節する経路は、広範な種々の発生的な刺激および環境的な刺激
により影響される。従ってこれは、それぞれの細胞型がその遺伝子の特有でそし
て特徴的なサブセットを発現すること、ならびに必要な場合、特定の遺伝子産物
の発現を調節することを可能にする。発現制御の重要性は、まさに、遺伝子調節
機構の機能における遺伝されたまたは獲得された欠損がヒトの疾患に広範に寄与
するように、マウスにおける重要な調節分子の標的された破壊が、しばしば強烈
な表現型異常を生じるという事実により強調される。この点において、表現型特
異的な遺伝子の発現を制御し得る低分子の有用性は有利である。モルフォゲン活
性化の調節経路は、例えば、表現型特異的タンパク質の発現を刺激し得る低分子
の投与により調節され得る。
【0035】 低分子は、OP−1のようなモルフォゲンによる調節経路の活性化を擬態する
モルフォゲンアナログであり得る。低分子のモルフォゲンアナログは、例えば、
本明細書中で参考として援用される、同時係属特許出願、U.S.S.N.08
/507,750中で報告されるように同定される。このような擬態の性質を有
する任意の物質は、その化学的または生物化学的な性質にかかわらず、本明細書
中で教示されるようにモルフォゲンアナログとして有用である。本発明のモルフ
ォゲンアナログは、生存系によってか、あるいは化学的または生物化学的な合成
技術を通じて産生される単一物質または複合体物質であり得る。それは、天然で
生じる物質、または例えば、合理的な薬物設計の原理に従って調製された、新規
な物質であり得る。それは、レセプター相互作用に関与する溶媒に曝露されたモ
ルフォゲン表面エピトープに構造的に類似する物質、そうでなければ膜貫通型モ
ルフォゲンレセプターを刺激する物質、またはモルフォゲン応答細胞のシグナル
伝達経路の任意の1つ以上の細胞内の局面と相互作用する細胞膜を浸透する物質
であり得る。例えば、天然で供給されるOP−1またはモルフォゲンアナログは
、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、アミノ酸、核酸、糖、脂
肪酸、ステロイド、または上記の化合物の任意の1つの誘導体を含み得る。それ
は、真核生物細胞または原核生物細胞の代謝の中間体または最終産物であり得る
。あるいは、このアナログは、生物学的応答修飾因子または毒素であり得る。
【0036】 制限されることなく、本発明の方法において有用なモルフォゲンアナログの1
つの型は、米国特許第5,132,405号,同第5,091,513号および
同第5,258,498号(この教示は、本明細書中に参考として援用される)
に示されるように、生合成の抗体結合部位(BABS)技術の原理の適用を通じ
て調製され得る。BABSアナログ構築物は、モルフォゲン膜貫通型レセプター
に特異的に結合する、好ましくはハイブリドーマ細胞によって産生された、抗体
から調製される。あるいは、BABS分析は、モルフォゲン生物学的活性をブロ
ックする抗体の抗原結合部位と特異的に反応する抗イディオタイプ抗体に基づく
。Vukicevicら(Biochem.Biophys.Res.Comm
.198:693〜700(1994))は、OP−1特異的モノクローナル抗
体の調製を教示する。当業者は、このような抗体を、本発明のBABSアナログ
が調製され得る、抗イディオタイプ抗体の慣用的な調製において、免疫原として
使用し得ることを理解する。
【0037】 モルフォゲンアナログの構造的に異なるクラス(例証のために本明細書中で再
び示されるのであって限定のためではない)は、Tuerkら、Science
249:505〜510(1990)、Famulokら、Angew.Ch
em.Intl.Ed.Engl.31:979〜988(1992)およびB
ockら、Nature 355:564〜556(1992)(各々の教示は
、本明細書中で参考として援用される)に示されるように、定方向の分子進化の
原理の適用を通じて調製され得る。この定方向の分子進化プロセスは、タンパク
質のような選択されたリガンドに高親和性で結合する、核酸分子、代表的にはR
NAの単離を含む。このような核酸分子は、当該分野において「アプタマー」と
呼ばれる。この所望のアプタマーは最初、核酸分子の無作為プールに存在し、そ
してリガンド結合核酸のPCRに基づく増幅と交互にリガンド親和性に基づくク
ロマトグラフィーを数回実行することによって単離される。上記のBockら(
1992)は、哺乳動物におけるインビボでの使用に適切であり、血液凝固促進
因子、トロンビンを特異的に阻害するアプタマーの調製を実証した。
【0038】 さらに、モルフォゲンアナログの別の構造的に異なるクラスが、無作為ペプチ
ドライブラリーの適切なメンバー(Scottら、(1990)Science
249:386〜390)、あるいは有機化合物または無機化合物のコンビナ
トリアル合成された無作為ライブラリーを選択することによって調製される。N
eedelsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10
700〜10704(1993);Ohlmeyerら、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 90:10922〜10926(1993)。当業
者は、生物学的に産生された物質をスクリーニングする伝統的な原理を伴なう、
前述の技術および他の関連技術が、モルフォゲンアナログ活性についてスクリー
ニングするための候補組成物の広範な整列を提供することを理解する。
【0039】 従って、本明細書中で使用されるように、モルフォゲンアナログは、細胞また
は組織において少なくとも1つの「モルフォゲン媒介性生物学的効果」を誘導す
る表現型特異的な遺伝子発現の調節経路のモルフォゲン活性を擬態する物質であ
る。この効果は、組織に適切な表現型の維持または修復を含むがこれらに限定さ
れない、モルフォゲンに曝露するかまたは接触させることから生じる任意の生物
学的効果であり得る。モルフォゲン媒介性生物学的効果は、例えば、同時継続特
許出願U.S.S.N.08/260,675および米国特許第5,656,5
93号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように
、モルフォゲンの曝露に対する細胞応答および分子応答を含む。従って、モルフ
ォゲン媒介性生物学的効果は、インビトロまたはインビボのいずれであれ、モル
フォゲン応答細胞または組織がモルフォゲンに曝露するかまたはモルフォゲンと
接触することから生じる任意の生物学的効果であることが理解される。本明細書
中の特に目的とするモルフォゲン媒介性生物学的効果は、DNA発現調節エレメ
ントに対する細胞内物質の結合の刺激を含む、1つ以上の表現型特異的遺伝子の
発現の刺激を含む。好ましいモルフォゲン媒介性生物学的効果は、分化した表現
型の維持、もしくは再分化の誘導、ならびに/または細胞増殖および細胞分化の
刺激を含む。
【0040】 非常に好ましい実施態様において、この低分子は、通常はモルフォゲンの調節
下である少なくとも1つの細胞内経路に作用する化合物である。このような低分
子は、好ましくは、その活性を刺激または阻害するために、細胞内に侵入し、そ
して1つ以上の細胞内経路の成分を標的とする能力を有する。例えば、Smad
1と、Smad4と、Smad5との間のSmad複合体形成を促進する低分子
は、表現型特異的タンパク質をコードする遺伝子の発現に至る経路を刺激する。
【0041】 候補の低分子を同定するための1つの方法は、モルフォゲンの有効な全身濃度
または局所濃度を調節する候補物の能力についてアッセイすることである。これ
は、例えば、モルフォゲンを産生する細胞培養物中で候補物をインキュベートし
、そして米国特許第5,741,641号および/または米国特許第5,650
,276号(各々の教示は、本明細書中で参考として援用される)の方法に従っ
て、モルフォゲンの産生レベルにおける変化の指標となるパラメーターについて
この培養物をアッセイすることによって実行され得る。あるいは、候補化合物は
、モルフォゲン活性がない細胞培養物において、表現型特異的なタンパク質の産
生を誘導するそれらの能力についてスクリーニングされる。モルフォゲンまたは
他の表現型特異的タンパク質の産生に関するそれらの効果についてスクリーニン
グされ得る組成物の例は、化学物質、生物学的応答修飾因子(例えば、リンホカ
イン、サイトカイン、ホルモン、またはビタミン)、植物抽出物、微生物ブロス
および真核生物細胞、体液、または組織抽出物で馴化した抽出物培地(extr
act medium)を含むがこれらに限定されない。次いで、有用な候補組
成物が、適切な動物モデルにおいてインビボでの効率について試験され得る。次
いで、これらの組成物は、インビボで使用され、表現型特異的タンパク質の発現
のモルフォゲン活性化調節経路を上方制御し得る。
【0042】 低分子組成物が培養細胞中の表現型特異的タンパク質のレベルにおける変化に
影響したか否かを決定する簡単な方法は、米国特許第5,741,641号(こ
の開示は、本明細書中で参考として援用される)中で提供される。低分子への曝
露から生じる細胞中の標的表現型特異的タンパク質のレベルを測定する。あるい
は、細胞内経路成分の活性または量の変化を、候補低分子の適用に応じて測定す
る。タンパク質産生または経路調節に関して所望の影響を有する候補物を、本発
明の方法における使用のために選択する。例えば、組成物が、腎臓細胞株による
OP−1の産生を上方制御する場合、動物モデルにおいてこの化合物の全身投与
を試験し、それがインビボでのOP−1の産生を上方制御するか否かを決定する
ことが所望され得る。身体におけるモルフォゲンのレベルは、広範な範囲の身体
的な状態(例えば、関節炎、気腫、骨粗しょう症、腎疾患、肺疾患、心筋症、お
よび肝硬変を含む疾患を生じるような組織変性)の結果であり得る。身体中のモ
ルフォゲンレベルの減少はまた、加齢の通常のプロセスの結果として生じ得る。
同じストラテジーが、細胞内経路成分に影響する組成物に対して使用される。次
いで、これらのスクリーニング方法により選択された組成物を、処置または予防
として使用する。
【0043】 適切な試験細胞は、検出可能な表現型特異的遺伝子産物をコードするレポータ
ー遺伝子に作動可能に結合されたモルフォゲン応答性転写活性化エレメントを規
定するDNAを含む任意の細胞である。このようなDNAは、試験細胞中で天然
に生じ得るか、またはトランスフェクトされたDNAであり得る。この誘導され
た細胞内効果は、代表的には、上記のような、Smad活性化、または生化学的
な現象のカスケードの活性化のような、あるいは環状ヌクレオチド、ジアシルグ
リセロール、ならびに/または、そして、組織形態形成の指標である、遺伝子の
転写から生じるmRNAの誘導および/もしくはmRNA転写物の翻訳から生じ
るタンパク質合成の誘導を含む、遺伝子発現の活性化もしくは抑制のような細胞
内シグナル伝達の他の指標を含む、形態発生生物学的活性の特徴である。例示的
なモルフォゲン応答細胞は、好ましくは、哺乳動物起源であり、そして骨形成前
駆細胞;頭蓋冠由来細胞;骨芽細胞;破骨細胞;骨肉腫細胞および肝臓起源また
は神経起源の細胞を含むがこれらに限定されない。任意のこのようなモルフォゲ
ン応答細胞は、誘導される候補物質がモルフォゲンアナログであるか否かを評価
するための適切な試験細胞であり得る。
【0044】 好ましい同定方法は、少なくとも1つの候補物質に試験細胞を曝露し、そして
このような曝露がモルフォゲン応答性転写活性化エレメントに作動可能に結合さ
れた検出可能な表現型特異的遺伝子産物の発現を誘導するか否かを検出すること
によって実行される。この遺伝子産物の発現は、この候補物質がモルフォゲン媒
介性生物学的効果を誘導することを示す。当業者は、本明細書中に提供されるガ
イダンスを考慮して、当該分野で周知である組換えベクターおよびトランスフェ
クション技術を使用して、えり抜きのモルフォゲン応答細胞およびレポーター遺
伝子からの応答エレメントを有する試験細胞を構築し得る。本明細書中で有用で
ある多数の周知のレポーター遺伝子が存在する。これらは、例えば、クロラムフ
ェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、ヒト成長
ホルモン(hGH)、β−ガラクトシダーゼ、ならびに市販で入手可能なアッセ
イ系および試薬を含む。当業者によって理解されるように、この列挙したレポー
ター遺伝子は、本明細書中で使用され得る少数の可能性のあるレポーター遺伝子
のみを示す。このようなレポーター遺伝子の例は、Ausubelら編、Cur
rent Protocols in Molecular Biology、
John Wiley & Sons、New York、(1989)に見出
され得る。広くは、検出可能な産物(例えば、検出可能な酵素活性を有するか、
または特異的な抗体が惹起され得る任意の産物)をコードする任意の遺伝子が、
本同定方法におけるレポーター遺伝子として使用され得る。
【0045】 現在好ましいレポーター遺伝子系は、ホタルルシフェラーゼレポーター系であ
る。Gouldら、Anal.Biochem.7:404〜408(1988
)は、本明細書で参考として援用される。このルシフェラーゼアッセイは、高速
および感受性である。このアッセイ系において、試験細胞の溶解物を調製し、そ
してATPおよび基質のルシフェリンと組合せる。このコードされた酵素のルシ
フェラーゼは、光放出産物を生成するために基質の迅速なATP依存性酸化を触
媒する。この総放出光は、測定され、そして広範な範囲の酵素濃度にわたって存
在するルシフェラーゼ量に比例する。CATは別の頻繁に使用されるレポーター
遺伝子系である;この系の主要な利点は、それが広範に確証されており、そして
プロモーター活性の測定物として広範に認容されることである。Gormanら
、Mol.Cell.Biol.2:1044〜1051(1982)は、本明
細書中で参考として援用される。この系において、試験細胞を、CAT発現ベク
ターでトランスフェクトし、そして最初のトランスフェクションの2〜3日内に
候補物質とともにインキュベートする。その後、細胞抽出物を調製する。この抽
出物を、アセチルCoAおよび放射性クロラムフェニコールとともにインキュベ
ートする。インキュベーションの後に、アセチル化クロラムフェニコールを薄層
クロマトグラフィーによって非アセチル化型から分離する。このアッセイでは、
アセチル化の程度が、特定のプロモーターを有するCAT遺伝子活性を反映する
【0046】 別の適切なレポーター遺伝子系は、hGHの免疫性検出に基づく。この系はま
た、使用することが迅速かつ容易である。Seldenら、Mol.Cell.
Biol.6:3173〜3179(1986)は、本明細書中で参考として援
用される。このhGH系は、発現されたhGHポリペプチドが、細胞抽出物中よ
りも、むしろ培地中でアッセイされるという点で有利である。従って、この系は
、試験細胞の破壊を必要としない。このレポーター遺伝子系の原理は、hGHに
限定されず、むしろ受容可能な特異性の抗体が利用可能であるかまたは調製され
得る、任意のポリペプチドを用いる使用に適合されることが理解される。
【0047】 低分子組成物は、任意の1つ以上の部位に作用することにより、モルフォゲン
活性化経路をアップレギュレートし得る。例えば、経路の低分子の相乗作用は、
レセプターレベルで開始され得る。経路に依存して、膜貫通レセプターは、I型
および/もしくはII型であってもよいし、またはI型もしくはII型のいずれ
かのレセプターの変異体を含んでもよい。例えば、OP−Iは、I型およびII
型の両方のレセプターの少なくとも2つの変異体を含む調節経路を活性化し得る
(それぞれActR−1およびBMPR−1B、そしてActRIIおよびBM
PR−II)。低分子は、リガンドとして作用し、そしていずれかのレセプター
と結合することにより経路を刺激し得、それにより、I型レセプターおよび/ま
たはSmad分子のリン酸化を誘導する。同様に、低分子は、レセプターのセリ
ン/スレオニンキナーゼドメインのレベルで、調節経路を活性化し得、それによ
り、I型レセプターおよび/またはSmad分子のリン酸化を刺激する。
【0048】 さらなる代替として、低分子は、Smad複合体形成のレベルで調節経路を活
性化し得る。低分子は、Smadファミリーのホモダイマー、ヘテロダイマー、
あるいは他のホモマーまたはヘテロマーの複合体の形成を刺激し得る。さらに、
低分子は、Smad分子またはSmad複合体との相互作用により経路を活性化
し得、それにより、その三次構造を変化させる。
【0049】 あるいは、またはさらに、低分子は、細胞の核内でのSmad分子もしくはS
mad複合体の転移の促進、またはSmad分子もしくはSmad複合体の蓄積
の促進により調節経路を活性化し得る。DNA結合タンパク質または転写活性化
因子として作用することにより、低分子が、Smad分子またはSmad複合体
により引き起こされる転写活性の増加により調節経路を活性化し得る。
【0050】 さらに、低分子は、経路のインヒビターを妨害することにより調節経路を刺激
するように作用し得る。例えば、Smad1、Smad2、Smad3およびS
mad5とは構造的に異なっているSmad6およびSmad7は、望ましい表
現型特異的タンパク質の発現の特定の型のインヒビターとして作用する(例えば
、瘢痕組織形成を誘導するTGF−βを活性化することにより)。Smad6は
、I型レセプターと安定な結合を形成し、そしてSmad2およびSmad1を
含む他のSmadタンパク質のリン酸化、およびそれらの続くSmad4とのヘ
テロマー化を妨害する。Smad7はまた、活性化されたI型レセプターと安定
な結合を形成し、特定のSmad分子の接近およびリン酸化をブロックし、それ
により特定のSmadへテロマー複合体の形成を阻害する。Smad7はまた、
Smadへテロマー複合体の核への蓄積を阻害する。低分子は、例えば、どちら
か片方または両方のタンパク質と密接に結合し、そして片方のタンパク質をI型
レセプターと安定に結合できないようにすることによるか、あるいは競合的に結
合し、そしてモルフォゲン活性化膜貫通レセプターを刺激することにより、これ
らのSmadタンパク質の阻害的な活性を妨害し得る。あるいは、低分子は、望
ましくない効果(例えば、TGFβ活性)を阻害するためにこれらのSmadの
阻害性効果を活性化し得る。
【0051】 病的な、損傷した、あるいは加齢した軟部組織細胞の脱分化は、モルフォゲン
活性化調節経路の1つ以上の構成成分における障害に起因し得る。最も適切な治
療は、病的な、損傷したまたは加齢した細胞における細胞内プロセスのスクリー
ニングにより明白となる。経路での障害の正確な本質の解明において、低分子組
成物は、障害を矯正または回避するように設計され得、それにより再開するため
の表現型特異的遺伝子産物の正常な発現が可能となる。本発明の有用な実施態様
を以下に例証する。
【0052】 (実施例) (モルフォゲンを用いた腎臓表現型の修復) モルフォゲンは、発生中の腎臓において発現される。例えば、BMP−3は、
発生中のヒト腎臓において発現していることが示されている。Vukicevi
cら、J.Histochem.Cytochem.42:869−875(1
994)。また、OP−1(BMP−7)は、免疫組織化学的に、ヒトの胚の曲
尿細管における基底膜との結合が見られる。Vukicevicら、Bioch
em.Biophys.Res.Commun.198:693−700(19
94)。さらに、モルフォゲンは、成体の腎臓においても発現され、そして成体
のマウスの腎臓において、高レベルのマウスOP−1の発現が観察されている。
Ozkaynakら、Biochem.Biophys.Res.Commun
.179:116−123(1991)。モルフォゲンは、特に、表現型特異的
遺伝子の発現を引き起こすことにより、腎臓表現型の保存を助ける。表現型特異
的遺伝子発現のためのモルフォゲン誘導経路の活性化による、そのような遺伝子
の発現を増加させるための方法を、以下に記載する。
【0053】 ラットの部分(5/6)腎摘出またはラットレムナント腎臓モデル(RPKM
)モデルは、基本的にVukicevicら、J.Bone Mineral
Res.2:533(1987)に記載のように使用される。オスのラット(2
〜3ヶ月齢、体重約150〜200g)に、片側(左または右のいずれかの腎臓
)腎摘出を行なった。約1週間後、残った腎臓の2/3を、外科的に取り除く。
手術後すぐに、血漿クレアチニンおよびBUNのレベルが、腎臓の質量および機
能を失ったために劇的に上昇する。この「急性の」不全期のさらに数週間後、生
存している動物の血漿クレアチニンおよびBUNのレベルは、正常の値に向かっ
ていくらか減少するが、上昇したままである。次いで、腎機能は、変動期間にた
いして比較的定常または安定なままであるようである。この時点の後、動物は死
ぬまで腎機能が基本的に直線的に減少する慢性的な腎不全の期間に入る。外科的
なコントロールとして、さらなるラットを、腎臓を皮膜剥離するが、腎組織は取
り除かない「偽の(sham)」手術を行なう。
【0054】 腎摘出術および見せかけの手術を行なった両方のラットを、手術後約5〜6ヶ
月維持する。この時点において、生存している腎摘出された動物は、慢性的な腎
不全の状態となった。
【0055】 ラットを、各グループに12ラットを有する8グループに分ける。腎摘出した
ラットの2つのグループを、コントロール(Nxコントロール)として使用する
。それらのグループのうち1つは全く処置を受けないが、他方は、ビヒクル緩衝
液のみの注射を受ける。さらに、見せかけの手術を受けたラットの2つのグルー
プをコントロール(偽コントロール)として用い、1つのグループは、ビヒクル
緩衝液のみを受けるが、他方は、Smad複合体形成の低分子活性化因子を受け
る。腎摘出した4つの実験的なグループを用いて、腹腔内注射により低分子溶液
を与える。処置されたラットおよびビヒクルのみのラットは、4〜8週間の間1
週間あたり3回の注射を受ける。総注射量は、約300μlである。統計的有意
差が、2つのコントロールグループの間または2つの偽コントロールグループの
間で観察されないことが予想される。
【0056】 ビヒクルのみを受けた偽グループと比較して、ビヒクルのみを受けたNxグル
ープは、この研究の終わりに、腎機能の有意な欠損を示す、血清クレアチニンの
有意な上昇(p<0.01)を実証することが予想される。Smad複合体誘導
性低分子で処置された腎摘出ラットは、Nxコントロールと比較した場合、血清
クレアチニンの有意な減少を示すべきではないが、低分子を処置した腎摘出ラッ
トは、クレアチニン値の有意な減少を示すべきである。同様の結果が、血清尿素
レベルにおいても観察されるべきである。全ての腎摘出ラットは、偽の手術をし
たラットと比較した場合、有意により高い血清尿素を示すことが予想される。
【0057】 組織学的な観察によって、ビヒクル処理をしたNxグループとは対照的に、O
P−1を処置した腎摘出ラットが、比較的正常な糸球体の組織像の提示を示すこ
とが予想される。組織形態計測的な分析は、低分子Nxラットが、Nxコントロ
ールラットと比較して糸球体硬化症、ループ崩壊、比較的散発性の硬化症および
微細動脈瘤の発生率を減少させ、そしてより多くの生存可能な糸球体を示すこと
が予想される。そのような効果は、1つ以上の表現型特異的遺伝子生成物産生の
増加に起因し、この生成物産生の増加は上述したモルフォゲン誘導経路における
Smad複合体形成の低分子活性化に起因することが予想される。
【0058】 (MAPキナーゼの阻害性活性の低分子阻害によるモルフォゲン活性化調節経
路のアップレギュレート) モルフォゲン活性化表現型特異的遺伝子調節経路の媒介物であるSmad1は
また、表皮性増殖因子および肝細胞増殖因子のレセプタータンパク質チロシンキ
ナーゼ(RTKs)を介した分裂促進増殖因子シグナル伝達の標的である。Kr
etzschmarら、Nature 389:618−621(1997)。
リン酸化は、Smad1の阻害性ドメインおよびエフェクタードメインを結合す
る領域内の特定のセリンで生じ、そして分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ
(MAPキナーゼ)のErkファミリーにより触媒作用を受ける。カルボキシ末
端のセリンに影響を与え、そしてSmad1の核における蓄積を誘導するSma
d1のモルフォゲン刺激によるリン酸化とは対照的に、Erk媒介リン酸化は、
Smad1の核への蓄積を特異的に阻害する。Smad1は、RTKsおよびモ
ルフォゲンレセプターセリン/スレオニンキナーゼを介した逆の調節性の投入を
受ける。従って、MAPキナーゼのErkファミリーは、通常モルフォゲン活性
化調節経路の刺激に起因する表現型特異的タンパク質発現を阻害するように機能
する。
【0059】 RTKのモルフォゲン活性化調節経路の競合的な阻害を妨害するために、低分
子組成物が調製される。低分子組成物は、変異型増殖因子タンパク質分子を含有
する。変異型増殖因子タンパク質分子は、表皮増殖因子レセプターおよび/また
は肝細胞増殖因子レセプターに結合し得るが、チロシンキナーゼを活性化し得な
い。増殖因子レセプターの結合およびチロシンキナーゼ活性の抑制により、Sm
ad1分子のリンカードメインは、リン酸化されないままである。これらのSm
ad1分子のカルボキシ末端ドメインのセリンは、モルフォゲンレセプターのセ
リン/スレオニンキナーゼによりリン酸化され、それによりSmad1分子が調
節経路に関与して、表現型特異的遺伝子の転写を誘導する細胞核へ転移させるこ
とを可能にする。
【0060】 低分子組成物の刺激効果は、モルフォゲンI型レセプターおよびモルフォゲン
II型レセプターを活性化するための、モルフォゲンの添加によって、さらに増
強される。従って、この低分子組成物は、Smad1のリン酸化およびSmad
1ヘテロマー複合体の形成を増加するために、ならびにSmad1ヘテロマー複
合体の核の蓄積の阻害を解除するために、同時に作用する。
【0061】 (肝細胞中への裸のSmad1 mRNAの送達による、モルフォゲン調節化
転写活性の刺激) Smad1および他のSmadタンパク質は、表現型特異的遺伝子に関連して
、転写活性因子の配列を刺激する。この活性は、カルボキシ末端ドメインに位置
し、そしてアミノ末端ドメインの除去の際に現れる。Smad1の転写活性は、
モルフォゲンレセプター媒介性シグナルによって刺激され得る。Smad1の過
剰な発現は、内因性のモルフォゲンシグナル、または外因性のモルフォゲン刺激
に対して細胞を感作し、そして細胞内の転写活性を増加する。
【0062】 Liuら、Nature、381:620−623(1997)の方法を本質
的に使用して(この教示は、本明細書中で参考として援用される)、Smad1
タンパク質の、少なくともカルボキシ末端ドメインをコードするmRNAが、調
製される。米国特許第5,580,859号、およびBudkerら、Gene
Therapy 3(7):593−598(1997)の一般的な方法(こ
れらの両方の教示は、本明細書中で参考として援用される)に従って、全長Sm
ad1タンパク質をコードする裸のmRNAおよびレセプター遺伝子(例えば、
CAT)が、高張液中に置かれる。この溶液は、一過性の閉塞肝静脈を有する哺
乳動物の肝臓において、門脈内に注射される。裸のmRNAの発現は、上記のよ
うな適切なレポーター遺伝子アッセイを使用して、少なくとも48時間後に立証
される。
【0063】 (処置の方法、投与の経路、および処置のための化合物) 正常細胞性の表現型を失った軟部組織を処置する方法は、上記のモルフォゲン
活性化発現経路の1つ以上の局面を刺激し得る組成物を投与する工程を包含する
。投与は、任意の適合性の経路により行われ得る。従って、投与は、適切な場合
、疾患組織、損傷組織、または老齢組織の局所的な環境に対して直接行われ得る
。投与の、他の意図される経路には、静脈経路および腹腔内経路を含む、経口ま
たは非経口の経路が挙げられる。さらに、投与は、組成物のボーラスの定期的な
注射によって行われ得、あるいは外部(例えば、静脈バッグ)または内部(例え
ば、生体浸食性の(bioerodable)移植、もしくは移植されたモルフ
ォゲン産生細胞のコロニー)にあるレザーバーから、静脈投与または腹腔内投与 によって、より連続的に行われ得る。
【0064】 本発明によって意図された治療的組成物は、任意の適切な手段によって、直接
的に(例えば、局所的に(組織部位に対する注射、移植もしくは局所的な投与に
よるような))または全身的に(例えば、非経口的に、もしくは経口的に)個体
に提供され得る。この組成物が、非経口的に(例えば、静脈の、皮下の、分子内
の、眼の、腹腔内の、筋内の、頬の、直腸の、膣の、眼窩内の、大脳内の、頭蓋
内の、脊椎内の、心室内の、鞘内の、槽内の(intracisternal)
包内の、鼻内の投与によって、またはエアロゾル投与によって)提供されるべき
場合、この組成物は、水性もしくは生理学的に適合性の液体の懸濁液または溶液
の一部を含み得る。従って、キャリアまたはビヒクルは、生理学的に受容可能で
あり、その結果患者に対する所望の組成物の送達に加えて、患者の電解質および
/または容積平衡に、別の悪影響を与えない。従って、試薬に対する液体媒体は
、正常な生理食塩水(例えば、9.85%のNaCl水溶液(0.15M、pH
7〜7.4))を含み得る。
【0065】 非経口投与のために有用な溶液は、薬学分野で周知の任意の方法(例えば、R
EMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE(Ge
nnaro,A編;Mack Publ、1990)に記載される)によって調
製され得る。本発明の治療剤の処方物には、例えば、ポリアルキレングリコール
(例えば、ポリエチレングリコール)、植物由来の油、硬化ナフタレン(hyd
rogenated naphthalenes)などが挙げられ得る。直接的
な投与のための処方物には、特に、所望の部位で試薬を保持することを助けるた
めに、高い粘性を有するグリセロールおよび他の組成物が挙げられ得る。生体適
合性の、好ましくは、生体再吸収性の(bioresorbable)ポリマー
(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン酸三カルシウム、ポリブチレート、
ラクチド、およびグリコリドポリマーならびにラクチド/グリコリドのコポリマ
ーを含む)は、インビボで試薬の放出を制御するために有用な賦形剤であり得る
。これらの試薬のための、他の潜在的に有用な非経口の送達系には、エチレン−
ビニルアセテートのコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、および
リポソームが挙げられる。吸入投与のための処方物は、賦形剤として、例えば、
ラクトースを含み、あるいは水溶液(例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリ
ルエーテル、グリココール酸およびデオキシコール酸を含む)、または点鼻薬も
しくは鼻内で適用されるゲルのような形式での投与のための油性の溶液を含み得
る。非経口投与のための処方物にはまた、頬の投与のためのグリココール酸、直
腸の投与のためのメトキシサリチル酸、膣の投与のためのクエン酸が挙げられ得
る。直腸の投与のための坐薬はまた、非刺激性の賦形剤(例えば、室温で個体で
あり、かつ体温で液体である、ココアバターまたは他の組成物)を伴うモルフォ
ゲン阻害を解除し得る分子(単独で、またはモルフォゲンと組み合わせて)を混
合することによって調製され得る。
【0066】 皮膚表面に対する局所的な投与のための処方物は、皮膚科学的に受容可能なキ
ャリア(例えば、ローション、クリーム、軟膏または石けん)でモルフォゲン阻
害を解除し得る分子(単独で、またはモルフォゲンと組み合わせて)を分散する
ことによって調製され得る。皮膚上にフィルムまたは層を形成し得るキャリアが
、適用を局在化し、そして除去を阻害するために、特に有用である。内部組織表
面に対する局所的な投与のために、試薬は、組織表面に対する吸収を増強するこ
とが公知な、液体組織接着剤または他の物質において、分散され得る。例えば、
ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液は、好
都合に使用され得る。あるいは、組織被膜溶液(例えば、ペクチン含有処方物が
、使用され得る。
【0067】 組成物が、CNSの障害のための治療としての使用を意図される場合、以下の
さらなる問題に取りかからなければならない:全てを効果的に排除する血液脳関
門、毛細血管壁構造を克服すること。しかし選択されたカテゴリーの物質は血液
中に存在し、脳内へのこれらの通過を妨げる。血液脳関門は、脳内で、モルフォ
ゲン阻害を解除し得る分子(単独で、もしくはモルフォゲンと組み合わせて)の
直接的な注入によって、または嗅覚神経による取込みおよび逆行性の輸送のため
に適切な、処方物の鼻内の投与もしくは吸入によって、効果的に回避され得る。
【0068】 (アポトーシスの調節) 表現型特異的遺伝子の発現を制御する細胞性経路の調節は、Drosophi
la melanogasterモデルにおいて実証された。BMPサブファミ
リーのメンバーであるDPPは、Drosophilaの発生の間、背面の外胚
葉のパターン化を確立し、消化管の形態形成を調節し、そして羽および眼のよう
な成虫盤の成長を調節するために重要な役割を果たす。Drosophilaに
おけるアポトーシス1タンパク質のDrosophilaインヒビター(DIA
P1)は、DPP I型レセプターの相互作用タンパク質である。太い血管(T
kv)のDIAP1は、アポトーシスのバキュロウイルスインヒビター(IAP
)タンパク質のホモログであり、またアポトーシスのインヒビターである。同様
のホモログが、ウイルス(OpIAP、VpIAP)、マウス(MIHA、mc
−IAP−1)、およびヒト(XIAP/nILP、MIHB/c−IAP1/
hIAP2、MICH/c−IAP1/hIAP1、NAPI)において報告さ
れているが、Drosophilaが、本明細書中で、例示のためのモデル系と
して使用された。以下に示す、これらと同様の結果が、ヒトおよび他の哺乳動物
において予測される。
【0069】 IAPは、それらのN末端領域に2つまたは3つのバキュロウイルスIAP反
復(BIR)ドメインを含む保存された領域、およびC末端領域に1つのRIN
Gフィンガードメインを共有する。IAPは、カスパーゼファミリープロテアー
ゼであるインターロイキン−1β変換酵素(ICE)によって誘導される、細胞
のアポトーシスを妨げ得る。DIAP1タンパク質は、DIAP1のC末端RI
NGフィンガードメインによって、Tkvなど(例えば、腫瘍壊死因子レセプタ
ー関連因子(TRAF)1および2)に結合する。
【0070】 Drosophilaにおけるアポトーシスは、いくつかの遺伝的エレメント
の制御下にある。doom遺伝子(これは、昆虫細胞においてアポトーシスを誘
導する)は、これらに含まれる。doomは、その結合タンパク質と同様、核に
局在化する。Reaper(65アミノ酸のポリペプチド)はまた、アポトーシ
スに関与する。DIAP2タンパク質は、DIAP2のBIRドメインを結合す
ることによって、Reaper誘導細胞死を妨げる。Reaperは、細胞質に
局在化し、そしてIAPが存在する場合、核周囲の位置において蓄積する。
【0071】 (プラスミドの構築) LexA DNA結合ドメインおよびTkvの細胞質領域の融合タンパク質を
コードする、ベイトプラスミドであるpEG−Tkvを、以下のように構築した
。Tkvの細胞質領域を、全長クローンであるBrk25D2から、ポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、そしてpEG202のEcoRIとXh
oI部位との間に挿入した。Tkvのプレイプラスミド、pJG−TkvをpJ
G4−5内にEcoRI−XhoIフラグメントを挿入することによって構築し
た。Tkv変異体を、Chameleon変異誘発キット(Staratage
ne)を使用する、部位特異的変異誘発によって構築した。Tkv(ΔJM)は
、野生型のTkvの膜近傍領域(アミノ酸205〜254位)を欠失する。Tk
v(Q253D)およびTkv(K281R)は、253位のグルタミン酸の代
わりにアスパラギン酸、および281位のリジンの代わりにアルギニンをそれぞ
れ有する。pcDNA3−HAを、pcDNA3(Invitrogen)のX
hoI部位とXbaI部位との間にアニーリングされたオリゴヌクレオチドを挿
入することによって、作製した。pcDNA3−FLAGは、Okadomeら
、J.Biol.Chem.、271:21687〜21690(1996)に
記載された。Tkvの全コード領域を、PCRによって増幅した。EcoRI部
位およびXhoI部位を、開始コドンより前に付加し、次いで終止コドンの代わ
りに、pcDNA3−HAのEcoRI部位とXhoI部位との間の挿入した。
Tkvの内部のEcoRI部位を、部位特異的変異誘発によって除去した。
【0072】 DIAP1の酵母発現プラスミドを、PCRによって増幅した、EcoRI−
XhoIフラグメントをpEG202およびpJG4−5中へサブクローニング
することによって作製した。終止コドンのない、DIAP1のコード領域を、p
cDNA−FLAGのEcoRIとXhoIとの間でサブクローニングし、FL
AGタグ化DIAP1を得た。DIAP2プラスミドを、DIAP1と同様の様
式で構築した。
【0073】 (スクリーニングおよび相互作用アッセイ) Tkvと相互作用するタンパク質について探索するために、Gyurisら、
Cell、75:791〜803(1993);Kawabataら、J.Bi
ol.Chem.270:29628〜29631(1995)(両方とも、本
明細書中で参考として援用される)によって本質的に記載されるような、相互作
用トラップスクリーニング(interaction trap screen
)を使用した。簡単にいえば、Drosophila成虫盤のcDNAライブラ
リーを、ベイトとして、Tkvの細胞質領域でスクリーニングした。酵母菌株で
あるEGY48を、レポーターであるpSH18−34およびpEG−Tkvで
形質転換する。次いで、cDNAライブラリーをEGY48に導入した。この形
質転換体を、適切な選択培地で増殖させ、そしてポジティブクローンを、β−ガ
ラクトシダーゼ活性およびロイシン原栄養に基づいて選択した。ライブラリーの
プラスミドを、EGY48から採集し、細菌中で増殖し、そして配列決定した。
相互作用トラップを使用する相互作用アッセイを、以下に記載されるように実施
した。Kawabataら、J.Biol.Chem.270:29628〜2
9631(1995)。
【0074】 (全長DIAP1のクローニング) ポジティブクローンの1つは、DIAP1部分的なC末端領域を含んだ(図3
)。PCRを、標準条件下で実施して、pNB40ベクター中のDrosoph
ila4〜8時間齢胚cDNAライブラリー由来の欠失N末端領域を、増幅した
。DIAP1の全コード領域を、PCRから得られたEcoRI−BanIIフ
ラグメントと、相互作用トラップスクリーニングから得られたBanII−Xh
oIフラグメントとを連結することによって作製した。
【0075】 (インビボでのタンパク質相互作用) COS−7細胞を、10%ウシ胎児血清、100単位/mlのペニシリン、お
よび4.5g/リットルのグルコースを含有するダルベッコ改変イーグル培地中
で維持した。細胞を、10μgのプラスミドとともにDMRIE−C(Gibc
oBRL)を使用して一過性トランスフェクションをした。2日後、細胞を22
.8mCi/ml[35S]メチオニンおよびシステイン混合物(Amersha
m)を用いて5時間標識し、そして1.5%のアプロチニンを含有する150m
M NaCl、20mM Tris−HCl、pH7.5、および1% Tri
ton X−100中で溶解した。明澄化した溶解物を、2本のチューブに分け
、そして抗FLAG M2(Eastman Kodak)または抗HA 12
CA5(Boehringer Mannheim)モノクローナル抗体ととも
に、インキュベートした。免疫複合体を、プロテインGセファロース(Phar
macia)またはプロテインAセファロース(Pharmacia)に結合さ
せた。沈殿物を洗浄し、そしてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS
−PAGE)(8.5%または10%ゲル)に供し、そして蛍光間接撮影または
Fuji BAS2000 Bio−Imaging Analyzer(Fu
ji Photo Film)を用いて解析した。
【0076】 (結果) 相互作用捕捉スクリーニングを使用して、Tkvと相互作用するタンパク質を
検索した。Drosophila成虫原基cDNAライブラリーを、餌(bai
t)としてTkvの細胞質領域を使用して、スクリーニングした。スクリーニン
グした160,000形質転換体から、4つの陽性クローンを単離した。1つの
クローンは、TβR−Iを含む哺乳動物I型レセプターの結合タンパク質として
公知のヒトFKBP12のホモログであるDrosophila FKBP12
をコードした。別のクローンは、バキュロウイルスIAPのホモログであるDI
AP1(PC1)のC末端部分領域をコードした。図3を参照のこと。残りの2
つの陽性クローンは、解析しなかった。
【0077】 Drosophilaの4〜8時間胚のcDNAライブラリーを使用するPC
Rを行って、不足しているN末端領域を得た。全長DIAP1と、Tkvの相互
作用を、相互作用捕捉を使用して試験した。図4に要約されるように、DIAP
1は、野生型Tkvと強力に相互作用したが、その相互作用は、部分クローンP
C1の相互作用よりも若干弱かった。異なるシグナル伝達活性を有するTkv変
異体もまた、DIAP1との相互作用について試験した。グルタミン253をア
スパラギン酸に置換する1つのTkv変異体(QD)(構成的にキナーゼ活性を
有すると報告されている)は、DIAP1およびPC1に対して強力な相互作用
を示した。リジン281をアルギニンに置換する別の変異体(KR)(キナーゼ
活性を欠損すると予測される)は、DIAP1およびPC1に対して弱い相互作
用を示した。また、II型レセプターのリン酸基転移部位で、膜近傍領域(アミ
ノ酸205〜254)を欠損する欠失変異体もまた試験した。変異体Tkv(Δ
JM)は、PC1ともDIAP1とも相互作用しなかった。Tkvとは反対に、
別のDPP I型レセプターであるSaxophone(Sax)、またはDP
PのII型レセプターであるPuntは、PC1ともDIAP1とも相互作用し
なかった。従って、DIAP1は、酵母系においてTkvと特異的に相互作用し
た。
【0078】 Drosophilaにおけるアポトーシスの第2のインヒビターであるDI
AP2もまた、Tkvとの相互作用について試験した。図3に示すように、DI
AP2は、3つのBIRドメインを有するが、その一方、DIAP1は、2つの
BIRドメインを有する。DIAP2は、酵母系においてTkv、Sax、また
はPuntの野生型とも変異体とも相互作用を示さなかった。
【0079】 種々の短縮形態(TF)のDIAP1を構築し、Tkvと相互作用するDIA
P1の領域を同定した。図3を参照のこと。野生型Tkvは、TF4と相互作用
したのみであって、他の短縮形態とは相互作用しなかった。図5を参照のこと、
TF4は、RINGフィンガードメインを有するのみなので、相互作用領域は、
DIAP1中のRINGフィンガードメインにマッピングされる。Saxおよび
Puntは、TF4と相互作用しなかった。
【0080】 DIAP1とTkvとの間のインビボでの相互作用もまた、試験した。DIA
P1を、そのC末端でFLAGでエピトープタグ化した(DIAP1−FLAG
)。HAタグ化Tkvおよび/またはDIAP1−FLAGを、COS−7細胞
内で一過性発現した。標識された溶解物を、抗HAまたは抗FLAGモノクロー
ナル抗体で免疫沈降し、そして次に、SDS−PAGEに供した。各抗体は、T
kv−HAおよびDIAP1−FLAGをそれぞれ特異的に認識した。抗FLA
G抗体は、DIAP1が発現した場合にのみTkvを共沈殿し、このことは、D
IAP1がTkvとインビボで相互作用することを実証した。構成性活性(QD
)変異体およびキナーゼ不活性(KR)変異体の両方は、野生型Tkvと同程度
に効率的にDIAP1と相互作用した。
【0081】 インビボでのDIAP2とTkvとの相互作用もまた試験した。Tkv−HA
および/またはDIAP2−FLAGを、COS−7細胞内で一過性にトランス
フェクションした。DIAP2とTkvとの相互作用は、酵母系において検出さ
れなかったが(図4)、DIAP2もまた、野生型Tkv、ならびにQDおよび
KR変異体とインビボで共沈殿した。
【0082】 BIRドメイン(BIR−FLAG)およびDIAP1のC末端領域(PC1
−FLAG)の発現プラスミドを、インビボでのTkvとの相互作用に必要なD
IAP1の領域を決定するために、構築した(図6)。Tkv−HAをBIR−
FLAGまたはPC1−FLAGと同時発現した。Tkv−HAを、PC1−F
LAGをともなう安定な複合体中で検出したが、BIR−FLAGとともには検
出しなかった。酵母アッセイにおける結果と一致して、これらの結果は、DIA
P1の相互作用領域がRINGフィンガードメインを含むC末端であることを示
す。
【0083】 従って、Tkvは、DIAP1機能を抑制することにより、アポトーシスを誘
導する。
【0084】 (Smadタンパク質を用いる間葉細胞のトランスフェクション、およびBM
Pを用いるトランスフェクション細胞の活性化) 異なるSmadタンパク質の生物学的効果を、アデノウイルスベースのベクタ
ー系を使用して、C2C12未分化間葉細胞において試験した。Smad1およ
びSmad5のようなBMPレセプターによって活性化される経路制限Smad
(R−Smad)は、C2C12細胞内のアルカリホスファターゼの産生を誘導
したが、TGF−β/アクチビン経路によって活性化されるR−Smad(Sm
ad2およびSmad3)は、誘導しなかった。BMP−6の添加は、Smad
1または5によって誘導されるアルカリホスファターゼの産生を劇的に増大した
。この誘導は、BMP−6により誘導されるR−Smadの核移行に起因し得る
。Smad1および5を活性化することが公知であるALK−3、ALK−6、
およびALK−2のようなBMP I型レセプターはまた、これらの細胞におい
てアルカリホスファターゼの産生を誘導した。抗Smad(すなわち、Smad
6およびSmad7)は、Smad1および5によって誘導されたアルカリホス
ファターゼの産生を阻害した。BMPレセプターによって活性化されたR−Sm
adを、細胞質中で、Smad6またはSmad7の存在下で検出した。従って
、BMPによって誘導された骨芽細胞の分化は、主にBMPによって活性化され
たR−Smadによって媒介され、そしてR−Smadの効果は、抗Smadに
よって妨害され得る。
【0085】 これらの実験手順は、プラスミド構築、細胞培養、およびアデノウイルスの感
染、免疫ブロット法、アルカリホスファターゼおよびオステオカルシンの産生に
ついてのアッセイ、軟骨形成、およびSmadタンパク質の細胞内局在化の解析
を含んだ。これらの手順の全ては、当該分野において周知である。
【0086】 (結果) (Smad1およびSmad5による、C2C12細胞の骨芽細胞への分化誘
導) C2C12未分化間葉細胞は、BMP−2、BMP−4、およびOP−1/B
MP−7の処置によって、骨芽細胞様の細胞に分化する。C2C12細胞を、ア
デノウイルスベースのベクターであるpAxCAwtを使用することにより、異
なるDNAを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション効率は、
LacZによる細胞の染色によって決定した場合、非常に高かった。異なるSm
ad由来のcDNAを含むプラスミドを構築し、そしてC2C12細胞にトラン
スフェクションした。FLAGエピトープタグ化Smadの発現を、抗FLAG
抗体を使用する免疫ブロット法によって解析し、そしてアルカリホスファターゼ
の産生を、6日後の細胞の染色によって決定した。Smad1、Smad5およ
びSmad4は、C2C12細胞内で高発現した。
【0087】 これらの細胞をアルカリホスファターゼの産生について染色した場合、Sma
d5またはSmad1を用いてトランスフェクションした細胞は、高い感染多重
度で陽性に染色された。対照的に、TGF−βおよびアクチビンレセプターによ
って活性化されるSmad2およびSmad3は、アルカリホスファターゼの合
成を誘導しなかった。
【0088】 哺乳動物において共通のSmadメディエータであるSmad4は、単独でト
ランスフェクションした場合アルカリホスファターゼ産生を誘導しなかったが;
Smad1/5感染細胞へのSmad4の同時感染は、BMP活性化Smadの
効果を増強した。Smad4は、Smad3感染C2C12細胞内でのアルカリ
ホスファターゼの産生を、弱く誘導した。従って、Smad3は、弱くではある
が、有意に、Smad4存在下でアルカリホスファターゼ遺伝子の転写を活性化
する。
【0089】 BMP−6は、構造的に最もOP−1/BMP−7と類似する。200ng/
mlのBMP−6は、C2C12細胞の骨芽細胞への分化を効率的に誘導した。
このC2C12細胞を、Smad1またはSmad5で感染し、そして200n
g/mlのBMP−6で処理した場合、アルカリホスファターゼの産生は、劇的
に増強された。しかし、Smad2は、アルカリホスファターゼの産生を促進し
なかった。
【0090】 (BMP I型レセプターによるC2C12細胞の分化誘導) 哺乳動物における7つの異なるI型レセプター(ALK−1〜7)の中で、A
LK−3およびALK−6は、特異的BMP I型レセプターとして機能する。
ALK−2もまた、OP−1/BMP−7およびBMP6に結合し、そしてBM
P I型レセプターとして機能する。HAタグ化ALKプラスミドの構成的活性
形態を、C2C12細胞内に感染し、そしてアルカリホスファターゼの産生を試
験した。ALK−3(QD)およびALK−6(QD)、ならびにALK−2(
QD)は、アルカリホスファターゼの合成を強力に誘導した。最も構造的にAL
K−2に類似するALK−1(QD)もまた、アルカリホスファターゼの産生を
誘導した。対照的に、ALK−4(TD)、ALK−5(TD)、およびALK
−7(TD)は、この細胞においてアルカリホスファターゼ活性を誘導しなかっ
た。このことは、TGF−βまたはアクチビンレセプターは、C2C12細胞の
骨芽細胞分化を効率的に誘導しないことを示す。
【0091】 (Smadの核移行は、C2C12細胞内のアルカリホスファターゼ合成を誘
導する) Smadの細胞内局在化を、Smad5に対する抗FLAG抗体を使用する、
細胞の間接免疫蛍光染色によって決定した。Smad5は、主に細胞質中で観察
された。BMP−6を用いるかまたは用いない、Smad5およびALK−2(
QD)による細胞の処理は、Smad4の核移行を強力に誘導した。ALK−3
(QD)およびALK−6(QD)はまた、Smad5の核移行を誘導した。S
mad5の過剰発現は、Smadの核での蓄積を生じないが、少量のSmad5
は、自発的に核に移行し得る。従って、BMP−6の効果の増強は、Smad5
の核移行によって誘導される。
【0092】 (抗SmadはBMPによって誘導されるC2C12細胞の骨芽細胞への分化
をブロックする) Smad6およびSmad7は、p3TP−luxプロモーターおよびサイク
リンAプロモーターを使用してアッセイした場合、R−Smadの転写活性を阻
害する。哺乳動物およびXenopusにおけるSmad6およびSmad7は
、Xenopus胚アッセイにおけるBMP活性を妨げることがまた、示された
。しかし、骨芽細胞の分化に対する抗Smadの効果は、試験されていない。C
2C12細胞をSmad6またはSmad7を用いてトランスフェクションし、
そしてBMP−6で処理した。免疫ブロット法によって測定した場合、Smad
6およびSmad7の発現は、感染多重度と相関した。アルカリホスファターゼ
の合成は、BMP−6によって誘導された。この合成は、LacZを発現するコ
ントロールプラスミドによって影響されなかった。Smad6およびSmad7
の両方は、BMP−6によって誘導されるアルカリホスファターゼの産生を阻害
した。
【0093】 ALK−3(QD)、ALK−6(QD)、またはALK−2(QD)でC2
C12細胞を感染した場合、アルカリホスファターゼは、劇的に誘導された。S
mad6またはSmad7の同時感染は、タンパク質の発現に依存して、この細
胞の骨芽細胞への分化を妨げた。
【0094】 Smad6およびSmad7の両方が、細胞の全体で観察されたが、Smad
6は、細胞質でより多量に観察され、その一方、Smad7は、核でより多量に
検出された。Smad5は、ALK−3(QD)またはALK−6(QD)の刺
激により核へ移行した。しかし、Smad6およびSmad7の同時感染は、S
mad5の核移行をブロックし、そしてSmad5タンパク質は、細胞質におい
てのみ観察された。この細胞を抗Smad5抗体で染色すると、Smad7は、
完全にSmad5の核移行をブロックしたが、その一方で、Smad6感染細胞
内では、アルカリホスファターゼ合成はSmad7感染細胞内と同様に阻害され
たが、Smad5は核で弱く染色された。従って、Smad6およびSmad7
は、Smad5の核移行を妨げ、それにより、C2C12細胞の骨芽細胞様細胞
への分化を阻害する 本発明の実施態様のさらなる局面は、当業者とって明らかである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本明細書に規定される形態発生のタンパク質のファミリ
ーの種々のメンバーがC末端の7つのシステイン骨格においてhOP−1と共有
する、アミノ酸配列同一性パーセント、およびアミノ酸配列相同性(「類似性」
)の表である。
【図2】 図2は、表現型特異的な遺伝子の発現のためのモルフォゲン活性
化調節経路の概略図である。
【図3】 図3は、数で示したアミノ酸位を有するDIAPおよび短縮され
た形態のDIAP1の概略図である。
【図4】 図4は、種々のDPPレセプターを有する種々の形態のDIAP
1の相互作用を要約する表である。
【図5】 図5は、種々のDPPレセプターを有する種々の形態のDIAP
1の相互作用を要約する表である。
【図6】 図6は、本明細書で記載された実験に用いられたDIAP1構築
物の概略図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),AU,CA,J P,US (72)発明者 コーエン, チャールズ エム. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02193, ウエストン, ハリントン レ ーン 1 (72)発明者 大枝 栄一 山口県宇部市小串455−3−ビー202 (72)発明者 宮園 浩平 埼玉県志木市本町5−5−34 (72)発明者 川畑 正博 東京都世田谷区桜丘4−23−20

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 疾患、損傷、または加齢により影響された細胞における細胞
    表現型を回復するための方法であって、該方法は以下の工程: 表現型特異的遺伝子の発現を誘導する細胞内経路を活性化する工程、 それによって、細胞表現型を回復する工程、 を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記経路が、モルフォゲンのその膜貫通レセプターへの特異
    的結合により活性化される活性化される経路である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記活性化する工程が、表現型特異的遺伝子の発現を誘導し
    得るSmad複合体の細胞内形成を誘導する工程を包含する、請求項1に記載の
    方法。
  4. 【請求項4】 前記Smad複合体が、Smad1およびSmad4を含む
    、 請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記誘導する工程が、Smad分子のリン酸化を含む、請求
    項3に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記活性化する工程が、モルフォゲンI型レセプターおよび
    モルフォゲンII型レセプターを有する細胞を、モルフォゲンI型レセプターま
    たはモルフォゲンII型レセプターのアゴニストであり得る低分子に曝露する工
    程を包含する、請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 細胞核内への前記Smad複合体の移行を誘導する工程をさ
    らに包含する、請求項3に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記細胞が肝細胞である、請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記細胞が腎細胞である、請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記活性化する工程がSmadタンパク質の発現を誘導す
    る工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記細胞をSmadタンパク質をコードするDNAでトラ
    ンスフェクトする工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記トランスフェクトする工程がアデノウイルスに基づく
    ベクターを使用することにより実施される、請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記トランスフェクトする工程が、前記DNAを含むプラ
    スミドを使用することにより実施される、請求項11に記載の方法。
  14. 【請求項14】 疾患、損傷、または加齢により影響された細胞における細
    胞表現型を回復する方法であって、該方法は以下の工程: 正常表現型のインヒビターである遺伝子の発現を誘導する細胞内経路を阻害す
    る工程、 それによって、細胞表現型を回復する工程、 を包含する、方法。
  15. 【請求項15】 前記遺伝子がTGF−βをコードする、請求項14に記載
    の方法。
  16. 【請求項16】 前記阻害する工程が、Smad6の発現を誘導する工程を
    包含する、請求項14に記載の方法。
  17. 【請求項17】 前記阻害する工程が、Smad7の発現を誘導する工程を
    包含する、請求項14に記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記活性化する工程が、患者にモルフォゲンを投与する工
    程を包含する、請求項1に記載の方法。
  19. 【請求項19】 請求項18に記載の方法であって、前記モルフォゲンが、
    OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BM
    P−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、
    BMP−12、BMP−13、BMP−15、DPP、Vgl、Vgr−1、G
    DF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、G
    DF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、60A、
    NODAL、UNIVEN、SCREW、ADMP、およびNEURALからな
    る群より選択される、方法。
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