JP2002339281A - 草本植物からの繊維分離方法 - Google Patents

草本植物からの繊維分離方法

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JP2002339281A
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Teruhisa Miki
輝久 三木
Masaru Ishikawa
勝 石川
Tadatomi Ri
忠富 李
Takanori Shinoki
孝典 篠木
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MIKI TOKUSHU SEISHI KK
Miki Tokushu Paper Manufacturing Co Ltd
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MIKI TOKUSHU SEISHI KK
Miki Tokushu Paper Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】水中微生物処理方法において、パルプの原料と
なる葉鞘繊維を収率よく分離製造する方法を提供する。 【解決手段】葉鞘繊維を有する草本植物を刈取ってから
水中微生物処理するまでの間、草本植物中の含水率を一
定レベル以上、具体的には10重量%以上、さらに好ま
しくは20〜50重量%以上に保持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非木質繊維を含有
する植物から繊維を分離する方法に関し、さらに詳しく
はマニラ麻、サイザル麻、バナナ植物等草本植物の微生
物化学的処理により、タフネスに優れ、且つ白度の高い
パルプの原料となる非木質繊維を収率良く分離製造する
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、世界的に見て、紙や板紙等の原料
としては、85〜90%木材繊維が用いられている。そ
の需要も特に世界的な通信技術の発展、人々の生活レベ
ルの向上等に伴い急速に増大してきた。それでもなお人
々の紙・パルプに対する需要は高まる一方であるため、
かつて木材資源が豊富であった地域でも、増大する需要
に対して不足を告げるようになってきている。
【0003】また、木材資源は地球上に極めて偏って存
在するため世界の人口分布に対して非常に釣合いのとれ
ない不安定な状態にある。我が国は勿論、木材資源の乏
しい世界の国々でも、今や国民生活水準の向上に深い関
係のある紙やパルプの生産を、自国産の資源を利用して
行ないたいという要望が強くなってきた。このような状
況下、木材以外の諸種の繊維資源を利用して木材パルプ
の補助的或いは単独の製紙原料とすることは、紙パルプ
産業 今後の発展のため大いに役立つと考えられる。
【0004】本発明は、かかる観点から草本植物から非
木質繊維を分離する際の歩留り及び品質向上を目的とし
たものである。ここで、草本植物とは、木部があまり発
達せず、非木質繊維を多く含有する植物をいい、具体的
にはサイザル麻、マニラ麻、バナナ等が挙げられる。サ
イザル麻は茎がきわめて短く、数十枚の葉を密生し、こ
の葉の部分から非木質繊維を分離することができる。一
方、マニラ麻やバナナは芭蕉科植物であり、葉の基部
(葉柄を含む)が鞘状になった葉鞘から構成されてお
り、この葉鞘が幾重にも重なって仮茎(ストーク)を形
成している。
【0005】ストークは、木質繊維原料である針葉樹や
広葉樹等の幹のような外側の外皮と内側の木質部とに明
確に分かれた組織体でなく、非木質繊維を多く含有し、
特にマニラ麻においてはこの部分からの非木質繊維の分
離が従来からさかんに行われている。
【0006】マニラ麻のストークから繊維を分離する一
つの方法は、刈取ったマニラ麻のストークから最外皮を
除去した後、一定長さに切断し高圧蒸解釜(地球釜)で
蒸解してパルプを製造することである。この方法は、木
材パルプ製造の最も一般的な方法であるが、化学薬品で
の高圧処理であるため、得られたパルプ繊維を傷めるし
蒸解後の廃液処理に多大のコストを要する上、得られた
パルプが黒褐色に着色するため、白度を高めるにはさら
に漂白工程が必要という問題があった。
【0007】ストークから繊維部分を分離する他の方法
として、ストークの最外層を剥離した後、その内側にあ
る繊維層を機械的に取り出す方法も行われている(剥皮
ストリッピング法)。しかし、この方法は工程としては
簡単であるが、多量の取出しロスが避けられず、また、
不純物も一緒に持ち込むため、用途によっては再度、漂
白その他の再精製をする必要が生じて好ましくない。
【0008】ところで、蒸解釜法あるいは機械的剥離法
に代る木材のパルプ化の一般的方法として、最近、微生
物の利用により植物組織細胞間に介在する接着層を分解
し、所要の組織のみを得ようという水中微生物処理方法
が提案されている[繊維と工業、48(11),31〜34,(199
2)]。
【0009】この水中微生物処理方法は、植物の体内に
存在し、植物組織を自然状態に保ち且つ互いに密着させ
ているペクチンその他の成分を酵素分解しようというも
のである。酵素分解には、積極的に分解酵素菌を添加し
て繊維、さらにはパルプを取出す方法と、古来、家内工
業的に行なわれている湖水或いは河川水中に木本植物を
投入保持することで、自然界に存在する微生物による分
解を待って繊維を取り出そうという分離法とがある。
【0010】これらの方法は、蒸解法或いは機械的剥離
法に比べ分離条件が極めて温和なため、繊維を傷めず白
度が高くて繊維長の長い高純度で品質の良好な繊維を与
えるが、この水中微生物処理方法を草本植物からの非木
質繊維の分離方法に応用した場合、残念ながらマニラ
麻、サイザル麻、バナナストーク(仮茎)等の葉鞘繊維
や葉脈繊維では、酵素反応を妨げる蝋質が繊維の表面を
被い、且つ内部に存在する多量の肉質のような非繊維成
分により妨害されるため、酵素分解による繊維の究極的
分離が困難になり、低い分離歩留りに甘んじざるを得な
かった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】これは上記草本植物
が、重量ベースでおおよそ94%の水分と3%の繊維素
及び3%の非繊維素からなっており、植物中に形成する
蝋質や肉質などの夾雑物の影響で、上述した蒸解釜によ
るパルプ用繊維の収率は1%前後であるのに対し、微生
物を用いたバイオケミカル/バイオメカニカルな分離方
法の場合は、精々0.5%止まりで低い歩留りにならざ
るを得なかった。
【0012】そのため、白度が高く品質の良好な繊維が
得られる水中微生物処理方法の利点を活かしつつ、草本
植物からの繊維素収率を高めることができる分離方法の
出現が強く要望されていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究した結果、草本植物を刈取ってか
ら水中微生物処理するまでの間、草本植物内の含水率を
一定レベル以上に保って貯蔵すると、繊維の収率が著し
く向上することを見出した。このような草本植物の含水
率とそれから得られるパルプ収率に上記の如き相関性の
あることは、全く驚くべきことである。
【0014】この学術的な詳細理由は未詳であるが、刈
取られた草本植物が放置されている間に水分の蒸発が起
る。そのため、植物の内部で植物組織を保っている接着
層、例えばペクチン、リグニン等の複雑な構造の有機化
合物が、水分減少により互いに反応して蝋質化或いは肉
質化を進行させ、それが繊維と本来除かれねばならぬ夾
雑物との界面を被ってしまう結果、分解酵素の作用が末
端まで行き渡らなくなり繊維の完全分離が妨害されるの
ではないかと推測される。
【0015】草本植物の水分量(含水率)を一定レベル
にするとは、具体的に10重量%以上を保持することを
いう。10重量%以上は必要とされ、20〜80重量%
に保持するのが好ましく、さらに、20〜50重量%と
するのが特に好ましい。ここで、草本植物内の含水率
(X%)は、以下の式で表される。 X(%)=(Gu−Gd)÷Gu×100 ただし、Gu;水中微生物処理する直前の草本植物の重
量 Gd;上記草本植物を乾燥処理(105℃×10時間)
した後の重量
【0016】上記草本植物の含水率が10重量%未満に
低下した場合、接着層分解酵素による分離が進まなくな
り、繊維収率が低下する。逆に、含水率が上限を越えて
も接着層分解酵素による分解速度は変わらないが、処理
する草本植物の重量が重くなって作業性、運搬性など生
産性の妨げとなり好ましくない。
【0017】ただ、ここで留意すべきは、草本植物の含
水率とは、刈取った草本植物全体の平均値でなく、全部
分が上記範囲の含水率内に保たれることを要する点であ
る。平均含水率が上記範囲内にあっても積荷の最外層部
の植物或いは同一植物であっても外皮に当る部分の水分
管理には特に入念な注意が必要である。
【0018】草本植物の含水率を調節する方法は特に制
約は無い。その場所、事情により適時選択すればよい。
例えば、刈取った草本植物を倉庫に保管する場合は、殆
どそのまま放置しても差し支えない。ただ、草本植物の
積荷の最上部が晴れた日に天井からの輻射熱により予想
以上に乾燥され易いので時々散水その他の水分供給を行
なえば充分である。屋根だけのある開放型の一時収納庫
に保管する場合も、上記に準じた管理をすれば十分であ
る。
【0019】刈取った草本植物を日差しの強烈な熱帯地
方の屋外に放置する時は、たとえ短時間でも注意が必要
である。出来るだけ被いをして直射日光に曝されない
様、屋外放置の時間を出来るだけ短くする配慮が要求さ
れる。出来れば時々散水を心掛けるべきである。
【0020】具体的な草本植物の種類としては、前述の
ごとく、芭蕉科の植物、例えばマニラ麻、芭蕉(琉球芭
蕉、ヒメバショウ)、バナナ(食用バナナ、フェイバナ
ナ)、並びにヒガンバナ科の植物であるサイザル麻など
を挙げることができ、中でもマニラ麻、バナナ、サイザ
ル麻を好適に使用することができる。特に、バナナにお
いては、従来、果実を収穫した後の葉やストークは、農
業廃棄物として廃棄されていたが、本発明により有効利
用が可能になるという利点を有する。
【0021】水中微生物処理に使用される草本植物の部
位については特に限定されず、植物の形態に合わせて適
宜使用すればよい。例えば、前述したように、サイザル
麻の場合には、茎が短くそのほとんどが葉から構成され
ているため、葉の部分を使用すればよい。また、マニラ
麻に代表される芭蕉科植物においては、葉の基部(葉柄
を含む)が鞘状になった葉鞘から構成されているため、
葉及び葉鞘のすべて(ストーク)を用いることができ
る。また、葉を取り除いてストークのみを使用すること
も可能であり、さらに、ストークとして外皮を剥いだ状
態のものを原料として用いれば、組織が柔軟であること
から水中微生物処理が短時間で行え、かつ色目が淡色で
あることから白度が高く品質の良好な繊維が分離できる
点で好ましい。
【0022】水中微生物処理法としては、前述のよう
に、醗酵槽内で断裁された草本植物に接着層分解酵素を
加えることで微生物分解を短時間に行なわせるものと、
草本植物を天然の湖水あるいは河川水を利用してこれら
の水に浸漬することで自然界に生息する微生物の作用で
接着層分離を行ない繊維を得るレッティング法とがある
が、本発明はこれら両方の処理法を対象にするものであ
る。
【0023】なお、レッティング法において、天然の湖
水或いは河川水等を利用するとは、草本植物を湖水或い
は河川水に直接浸漬する場合と、人工池に湖水あるいは
河川水を引き込んで浸漬する場合の両方を含むことを意
味している。また、通常、清水に分解酵素を加えて分離
処理する醗酵槽を用いた水中微生物処理方法において
も、湖水或いは河川水を一部又は全部利用することも可
能である。
【0024】上記醗酵槽による水中微生物処理の場合、
酵母菌の選択、液のPH、温度、時間等は公知の方法で
実施可能であり、湖水、河川水等を利用するレッティン
グ法も従来公知の方法で実施可能であるので、その詳細
な説明は省略する。一般に処理温度は、20〜30℃付
近が好ましいが、特に制約されるものではない。
【0025】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明は、これによりなんら制限されるものではない。
実施例中、「部」、「%」とあるのはすべて「重量
部」、「重量%」を意味する。また、草本植物の含水率
(X%)は前述の式を用いて算出し、ハンター白色度
は、JIS P8128「紙及びパルプのハンター白色
度試験方法」に準拠して測定した。
【0026】[実施例1]葉がついた状態の直径約20
cmのフィリッピン産バナナストーク(以下、単に「バ
ナナストーク」と略する)を50cm長に切断した後、
縦方向に四分割し、ついで圧砕ロールで直径約0.5〜
1.0cmの細片に破砕した。この細片の含水率Xは9
3%であった。
【0027】この細片を直ちに太さ15cm位の束に紐
でくくり、河川水を導入できる人工池に入れた(人工池
寸法:4m×2.5m×0.8m)。この人工池に河川
水を導入し、上記バナナストーク細片束を完全に浸漬さ
せた。更に、微生物の増殖促進助剤として、硫酸アンモ
ニウム及び燐酸水素カリを、それぞれが0.01%前後
の濃度になる計算量を人工池に投入した。水温変動は1
8(最低)℃〜22(最高)℃であった。
【0028】10日でバナナストークの肉質や夾雑物が
完全に分離したことが確認できた。人工池から上記細片
束試料を取り出し、繊維部分を分離した。分離した繊維
を河川水で十分洗浄した後、天日で3日乾燥し、バナナ
繊維を得た。繊維の一部を採取し、その乾燥前重量と電
気乾燥器による乾燥処理後(105℃×10時間)重量
とを測定することで繊維収率を算出した。
【0029】[実施例2〜5]実施例1で使用した同じ
バナナストークを50cm長に切断した後、縦方向に四
分割し、次いで、圧砕ロールで直径約0.5〜1.0c
mの細片に破砕した。この試料を温度約30℃の屋内床
上に所要の水分量(X%)に達するまで放置した。この
様にX%の異なるバナナストーク4種類を、以下、実施
例1とまったく同様の操作を施すことでそれぞれ繊維を
分離した。この4種類を実施例2〜5とする。
【0030】[比較例1〜3]実施例2〜5と全く同様
の方法により、直径約0.5〜1.0cmのバナナスト
ーク細片を作成した。この細片を屋外に並べ、太陽の直
射日光に約10、20、40時間それぞれ暴露した外
は、実施例1と同様の操作を施すことで、夫々の繊維を
分離した。これらを比較例1〜3とする。なお、直射日
光下の床付近の温度は、約40℃であった。
【0031】上記各実施例及び比較例における繊維収率
を表1に示す。表1によれば、含水率が10%以上にな
ると、繊維収率が1%以上となり、0.4%以下の比較
例1〜3に比べて大幅に繊維収率が向上しているのが判
る。以上から、本発明方法の繊維収率に与える効果が確
認された。
【0032】
【表1】
【0033】[実施例6]実施例1で得られたバナナ繊
維を実験用小型蒸解釜[容量520リットル、トータス
エンジニアリング株式会社製]で蒸解した。バナナ繊維
30kg、水150kg(浴比1:5)、バナナ繊維に
対して、水酸化ナトリウム12%、アントラキノン0.
1%、160℃で5時間処理した後、常圧まで放圧し、
繊維を取り出した。よく水洗後室温放置で乾燥しパルプ
を得た。
【0034】[比較例4]バナナストークより機械的に
剥皮しストリッピングする従来法で繊維を抽出し、十分
水洗した後、乾燥した。この機械剥離法によるバナナ繊
維30kg、水150kg(浴比1:5)を上記実験用
小型蒸解釜に取り、実施例6と同様の方法により蒸解し
パルプを得た。
【0035】この実施例6のパルプ及び比較例4のパル
プを各々常法により離解し、TAPPI試験抄紙機によ
り、それぞれ80g/m2の紙を調製した。両者のハン
ター白色度を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】表2の結果から、実施例6で調製した紙
は、比較例4で調製した紙よりもハンター白色度が大幅
にアップしているのが判る。以上から、本発明方法の紙
白度に対する優れた効果が確認された。
【0038】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によると、草本植物の如き非木材素材から繊維を微生物
醗酵法(水中微生物処理法)により分離するに際し、植
物を刈り取ってから水中で醗酵させるまでの間、刈取っ
た植物全体に亘り、その含水率を一定値以上に保つこと
で繊維分離収率を従来の2倍以上に向上させることが可
能となる。
【0039】また、このような処理法を経た繊維パルプ
は、蒸解法のみから得られたパルプと異なり、漂白しな
くても白度が高く、繊維長も長いため柔軟性に富んだ強
靭な紙原料を与える。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 李 忠富 愛媛県川之江市川之江町156番地 三木特 種製紙株式会社内 (72)発明者 篠木 孝典 大阪府大阪市東淀川区東中島1丁目18番地 31号 三木特種製紙株式会社大阪営業所内 Fターム(参考) 4L055 AA05 BA10 BA39 EA13 FA02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 草本植物を水中で微生物処理して繊維を
    分離する方法であって、草本植物を刈取ってから水中微
    生物処理するまでの間、草本植物中の含水率を一定レベ
    ル以上に保持することを特徴とする草本植物からの繊維
    分離方法。
  2. 【請求項2】 前記草本植物を機械的に圧砕した後、天
    然の湖水及び/又は河川水を利用して水中微生物処理す
    ることを特徴とする請求項1記載の繊維分離方法。
  3. 【請求項3】 前記草本植物の含水率を10重量%以上
    に保持することを特徴とする請求項1又は2記載の繊維
    分離方法。
  4. 【請求項4】 前記草本植物が芭蕉科植物である請求項
    1、2又は3記載の繊維分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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