JP2002316842A - 珪素酸化物を表面に含む基板同士の貼り合わせ方法 - Google Patents

珪素酸化物を表面に含む基板同士の貼り合わせ方法

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JP2002316842A
JP2002316842A JP2001150128A JP2001150128A JP2002316842A JP 2002316842 A JP2002316842 A JP 2002316842A JP 2001150128 A JP2001150128 A JP 2001150128A JP 2001150128 A JP2001150128 A JP 2001150128A JP 2002316842 A JP2002316842 A JP 2002316842A
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洋輝 小川
Yasuhiro Horiike
靖浩 堀池
Zen Takamura
禅 高村
Jun Kikuchi
純 菊地
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    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C27/00Joining pieces of glass to pieces of other inorganic material; Joining glass to glass other than by fusing
    • C03C27/06Joining glass to glass by processes other than fusing

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  • Materials Engineering (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来のふっ酸溶液を用いた少なくとも表面に珪
素酸化物を含む基板同士の貼り合わせ方法は、簡便では
あるものの、貼り合わせ強度が弱く、剥がれやすいとい
う欠点があった。 【解決手段】少なくとも珪素酸化物を表面の構成要素と
して含む基板同士の貼り合わせにおいて、珪素酸化物生
成の源となる六ふっ化珪酸(HSiF)を少なくと
も含む溶液を当該貼り合わせを行う基板間に導入した後
に、当該被貼り合わせ基板間に適当な圧縮圧力を印加す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は少なくとも珪素酸化
物を貼り合わせる面の表面の構成要素として含む基板同
士の貼り合わせ方法に関する。特に貼り合わせ時に少な
くとも六ふっ化珪酸(H2SiF6)を含む溶液を用い
ることを特徴とする。
【0002】
【従来の技術】半導体製品の高集積化に伴う微細加工技
術の進歩を土台に、近年、”Lab.on Chip
(チップ上の研究施設)”や”μTAS(Micro
Total Analysis)”といわれるような、
いわゆる数cm四方の平板の基板上に種々の薬液の微小
流路や微小分析器を配置し、その基板上で種々の化学合
成およびその物理化学分析を行うという試みが盛んに行
われている。このような手のひらにのる大きさのチップ
上で前記の化学合成、分析を行う利点として、従来のい
わゆる化学実験室のように広い空間を必要とせずチップ
自体が可搬であること、また使用する薬液量や分析に必
要とされる電力量が著しく少なくなり、地球環境に優し
いなどが挙げられる。さらにこのようなチップの一つの
応用例として、人間の微少量の血液をチップ上に導入
し、当該チップ上において血液の血清、血球成分分離や
血液の成分分析を行うとという、ヘルスケアチップが世
に現れている。(特願2000−120189)
【0003】このようなチップの基板となる材料には、
PET(ポリエチレンテレフタレート)のような樹脂系
のものや珪素酸化物を含むガラスなどの安価なものが用
いられることが多い。これらのチップの作製は、まず基
板表面にミクロンオーダーの液体(薬液、血液等)の流
路等をいわゆるエッチング技術を用いて形成した後に、
他の一枚の基板を前述の流路等を形成した基板と何らか
の方法を用いて貼り合わせ、当該流路等に蓋をすること
により行われる。
【0004】上で説明したように、チップ上で液体中の
種々の化学物質の分析を行う方法として、流路途中に電
気化学的なセンサーを配置してそこで分析を行うという
方法や、チップ外から光をチップ上の液体が満たされて
いる流路等に入射し、そこでの特定の化学物質に由来す
る光吸収を調べる方法などがある。特に、後者の光を用
いる方法においては、チップを構成する基板が光路に含
まれるために、それ自体に当該光の高い透過率を有する
ことが望ましい。珪素酸化物を含むガラスのような材料
は、波長200nmの紫外光から同2.5μm程度の近
赤外光の広い波長範囲の光を高い透過率で透過すること
から、このような波長範囲の光を用いた分析に用いる基
板材料として広く用いられている。
【0005】貼り合わせる基板の少なくとも貼り合わせ
る面の表面に珪素酸化物を含む材料、例えばガラスのよ
うな材料を用いる場合、当該基板上に流路等を形成した
後に、他一枚の少なくとも貼り合わせる面の表面に珪素
酸化物を含む基板を貼り付けて、当該流路に蓋を施す必
要が生じる。このような少なくとも貼り合わせる面の表
面に珪素酸化物を含む基板同士の貼り合わせ方法とし
て、二枚の当該基板を重ね合わせた後にこれを1000
℃程度の温度まで昇温する融接法、同様に二枚の当該基
板間にふっ化水素(HF)を含む溶液(ふっ酸溶液)を
挟み、これらを重ね合わせるふっ酸接合などが知られて
いる。特に上述のような電気化学的な分析器を搭載して
いるようなチップの場合、室温程度の温度下で適当な圧
力を二枚の当該基板間に印加するのみで両者を貼り合わ
せることができるふっ酸接合(H.Nakanishi
ら、Sensors and Actuators 8
3巻、136頁、2000年)は魅力的であり、実際に
盛んに用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上で述べたふっ酸溶液
を用いた珪素酸化物を含む基板同士の貼り合わせ方法
は、簡便ではあるが、貼り合わせ強度が弱く、剥がれや
すいという欠点があった。
【0007】本発明の目的は上述のふっ酸溶液を用いた
貼り合わせ方法の特徴である室温近傍の温度で貼り合わ
せ可能という長所を生かしつつ、貼り付け強度の向上を
図ることが可能な貼り付け方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決させるための手段】従来のふっ酸溶液を用
いた少なくとも貼り合わせる面の表面に珪素酸化物を含
む基板同士の貼り合わせの機構については、貼り合わせ
た後のその界面の断面電子顕微鏡観察、二次イオン質量
分析などの結果から、界面には遷移層が存在し、この層
には珪素、酸素などの元素を主成分にその他、微量の水
素、弗素などの元素が含まれていることが明らかにされ
ているが(H.Nakanishiら、Sensors
and Actuators 83巻、136頁、2
000年)、詳細については全く白紙の状態である。
【0009】本発明者らは、従来のふっ酸溶液を用いた
少なくとも貼り合わせる面の表面に珪素酸化物を含む基
板同士の貼り合わせの機構の理解が、当該従来方法の欠
点を克服した貼り合わせ方法の発明に不可欠と考え、当
該従来方法による少なくとも貼り合わせる面の表面に珪
素酸化物を含む基板同士の貼り合わせ過程を赤外全反射
吸収測定法を用いてその場観察することで、当該貼り合
わせ機構を解明することを試みた。
【0010】図1にはその場赤外全反射吸収測定の様子
を示す。台形状のゲルマニウム製プリズム101上にス
パッタリング法により珪素酸化膜102を約70nm堆
積し、その上に10重量%ふっ酸溶液103を挟みなが
ら石英板104に圧力を印加してゲルマニウム製プリズ
ム101に押しつける。このときゲルマニウム製プリズ
ム101の角度60度に加工、研磨を施してある両端面
の片方から、赤外光光源105から放射され、マイケル
ソン干渉計106を経て伝搬してきた赤外光107を導
入し、これを当該プリズム101内で多重全反射させ
る。この赤外光107がゲルマニウム製プリズム101
内で全反射する際に、いわゆるエバネッセント波と呼ば
れる光が当該プリズム101外へと数ミクロンから数十
μm滲み出すので、石英板104と当該プリズム101
との界面における入射した赤外光107に誘起された分
子振動に由来する赤外光の吸収は、赤外光検出器108
で検出されることになる。すなわち、上で説明したよう
な赤外全反射吸収測定法により、珪素酸化膜102と石
英板104とのふっ酸溶液103を介した貼り合わせの
様子を観察することが可能である。
【0011】図2には、図1で示したような赤外全反射
吸収測定法を用い、5MPaの圧力の下で貼り合わせを
行ったときのその貼り合わせ過程をその場観察したとき
の、経過時間に伴う赤外吸収スペクトルの変化を示して
いる。なお、それぞれの経過時間における当該赤外吸収
スペクトルは、図1のふっ酸溶液103を挟まずに石英
板104をゲルマニウム製プリズム101上の珪素酸化
膜102に、貼り合わせの時と同じく5MPaの圧力で
押しつけたときに得られた赤外吸収スペクトルを参照ス
ペクトルとしてこれからの差から得られたものである。
また、経過時間の進行に伴い、図1におけるふっ酸溶液
103中の水やふっ酸等が蒸発するために、当該溶液層
の厚みが薄くなる。これに伴い石英板104がゲルマニ
ウム製プリズム101側へと近接してきて、経過時間の
増加に伴い水(HO)の分子振動に由来する赤外吸収
(3000から3600cm−1、1650cm−1
900cm−1以下に現れる)は減少し、石英板104
を構成する珪素酸化物(SiO)に由来する吸収(1
070cm−1付近に現れる)は増加する。図2におい
てはこれら水と珪素酸化物に由来する吸収をそれぞれそ
れらの参照スペクトルを用い、ほぼ消去したものを示し
ている。このようにすることによってこれら水や珪素酸
化物に由来する吸収に重畳している他の結合形態に由来
する吸収を検出することができる。図2を見てみると、
貼り合わせ開始直後から740cm−1付近に吸収が観
察されていることが分かる。この吸収は、その現れる波
数位置と貼り合わせ界面に存在する元素を鑑みると、珪
素とフッ素の結合(Si−F)の分子振動に由来するも
と考えられ、特にこの波数に現れる吸収に由来する結合
形態はSiF 2−であると考えられる。このような結
合形態を含む化合物として六ふっ化珪酸(HSi
)が考えられ、実際図2中に示す33重量%の六ふ
っ化珪酸溶液の赤外吸収スペクトルにはSiF 2−
由来する吸収が740cm−1付近に現れており、これ
は上述した10重量%のふっ酸溶液を用いた貼り合わせ
過程において観察される吸収の現れる波数位置と一致す
る。
【0012】以上の結果はふっ酸溶液を用いた少なくと
も貼り合わせる面の表面に珪素酸化物を含む基板同士の
貼り合わせ界面において、六ふっ化珪酸が生成されてい
ることを明瞭に示している。このような化合物の生成機
構は以下のようなふっ酸(HF)による貼り合わせる基
板の表面に存在する珪素酸化物(SiO)のエッチン
グに伴うものであると考えられる。すなわち、6HF+
SiO→HSiF+2HOという化学反応に由
来すると考えられる。
【0013】次に図1に示した実験系において、ふっ酸
溶液103の代わりに33重量%の六ふっ化珪酸溶液を
用いて同様の実験を行ったときの珪素酸化物、水、六ふ
っ化珪酸に由来する吸収(それぞれ1070cm−1
1650cm−1、740cm−1付近に現れる)の強
度の貼り合わせ経過時間依存性を図3に示す。同図にお
いて吸収強度が正にあるということは貼り合わせ開始直
後と比較してその吸収に由来する結合形態が増加したこ
とを示し、一方、吸収強度が負にあるということはその
吸収に由来する結合形態が減少したことを示す。この図
から珪素酸化物に由来する吸収は経過時間に伴い増加
し、一方、水と六ふっ化珪酸に由来する吸収は経過時間
に伴い減少していくことが分かる。特に珪素酸化物の増
加と水の減少の挙動は非常に酷似しており、経過時間が
700分程度の時に両者の増加と減少は停止し、一定値
となる。さらにこのとき水に由来する吸収はほぼ検出限
界以下であり、このことは貼り合わせ界面にはほとんど
水は存在しないことを示している。以上の結果から六ふ
っ化珪酸溶液を用いた貼り合わせにおいて、その貼り合
わせ界面では六ふっ化珪酸と水から珪素酸化物が生成さ
れていることが示唆される。すなわち、HSiF
2HO→6HF+SiOというふっ酸溶液を用いた
貼り合わせの時と逆の化学反応である。この反応に珪素
酸化物の生成が従うとすれば、図3の700分以降の経
過時間において珪素酸化物の生成が停止しているのは、
その貼り合わせ界面に水が欠乏したためであると理解さ
れる。このとき六ふっ化珪酸が減少し続けるのは六ふっ
化珪酸がふっ酸や四ふっ化珪素として界面から蒸発(H
SiF→2HF+SiF)し続けるためであると
考えられる。しかしながら、図3で示したような経過時
間に伴う珪素酸化物の増加は、図2で述べたように貼り
合わせ界面から水等が蒸発し、石英板が近接してくるこ
とに由来している可能性も考えられる。
【0014】六ふっ化珪酸溶液を用いて貼り合わせを行
った場合に、その貼り合わせ界面において珪素酸化物が
生成されているか否かを確かめるために、図1に示した
実験系において石英板104の代わりに表面に珪素酸化
物が存在しないような珪素基板を用い、また、ふっ酸溶
液103の代わりに六ふっ化珪酸溶液を用いて貼り合わ
せを行い、その過程を赤外全反射吸収測定法によりその
場観察した。このように石英板の代わりに珪素基板を用
いることによって、仮に貼り合わせ経過時間の増加に伴
い、貼り合わせ界面に存在する水等の蒸発により、珪素
基板がゲルマニウム製プリズム101上の珪素酸化膜1
02に近接してきても珪素基板表面には珪素酸化物等が
存在しないので、この珪素基板の近接に起因する珪素酸
化物に由来する赤外吸収は観察されない。このとき得ら
れた珪素酸化物に由来する吸収の現れる波数領域の赤外
吸収スペクトルの経時変化を図4に示す。この図から、
貼り合わせ時間の増加に伴い1090cm−1付近に珪
素酸化物に由来する吸収が出現、増加していくことが明
瞭に分かり、このことは貼り合わせ界面において珪素酸
化物が生成されていることを示している。そして経過時
間963分後の吸収強度から見積もった生成された珪素
酸化物の膜厚は約6nmであった。以上の結果は六ふっ
化珪酸溶液を用いた貼り合わせ過程において、その貼り
合わせ界面では珪素酸化物が生成されていることを明瞭
に示している。したがって、図3に示した経過時間に伴
う珪素酸化物に由来する吸収の増加は、石英基板がプリ
ズムに近接してくる効果を観察しているわけではなく、
正に貼り合わせ界面での珪素酸化物の生成を観察してい
るものと考えられる。よって前述のように図3の経過時
間700分以降の経過時間において珪素酸化物の生成が
停止したのは、その貼り合わせ界面に水が欠乏したため
であると理解される。
【0015】以上のふっ酸溶液、あるいは六ふっ化珪酸
溶液を用いた貼り合わせ過程の赤外全反射吸収測定法に
よるその場観察の結果から、ふっ酸溶液を用いた少なく
とも貼り合わせる面の表面に珪素酸化物を含む基板同士
の貼り合わせ機構は以下のようであると考えられる。す
なわち、貼り合わせ界面においてふっ酸溶液による貼り
合わせる基板の表面に存在する珪素酸化物のエッチング
により六ふっ化珪酸が生成される。次に、この珪素酸化
物のエッチングに伴う六ふっ化珪酸の生成にふっ酸が費
やされ、六ふっ化珪酸濃度がふっ酸濃度を凌駕すると、
今度はこの貼り合わせ界面において珪素酸化物が生成す
るような反応が生じるようになる。このとき珪素酸化物
を含む両基板の表面の珪素酸化物同士が、この生成され
た珪素酸化物を介して化学的なネットワークを形成する
に至り、結果として両基板の貼り合わせが完了すること
になる。またこの貼り合わせの過程で界面の水やふっ
酸、六ふっ化珪酸の一部は徐々にこの界面から揮発して
いき、最終的には界面にはほとんどこれらの化合物は存
在しないようになる。
【0016】上で述べたような貼り合わせ機構を鑑みる
と、この貼り合わせ界面で生じるHSiF+2H
O→6HF+SiOという反応の結果生じる珪素酸化
物が被貼り合わせ基板表面の接合種として非常に重要な
役割を果たしていることが分かる。そして貼り合わせ前
に両表面の間に挟むふっ酸溶液は、両表面の珪素酸化物
をわずかにエッチングして、六ふっ化珪酸を生成する役
割のみ有することが分かる。したがって、これらのこと
からふっ酸溶液の代わりに予め少なくとも六ふっ化珪酸
を含む溶液を被貼り合わせ基板の間に挟み、その後に貼
り合わせを行えば珪素酸化物の生成がふっ酸溶液を用い
た場合よりも促進された結果、より強固な少なくとも貼
り合わせる面の表面に珪素酸化物を含む基板同士の貼り
合わせが実現できると考えられる。
【0017】
【発明の実施の形態】図5に本発明の少なくとも貼り合
わせる面の表面に珪素酸化物を含む基板同士の貼り合わ
せ方法の実施の様子を示す。 少なくとも表面に珪素酸
化物を含む基板A501と同じくB502の間に少なく
とも六ふっ化珪酸を含む溶液503を挟み、これらを土
台504上に設置する。必要に応じ、押さえ板505を
介して圧力を印加しながらこれらを適当な時間、放置し
て貼り合わを行う。また、この貼り合わせ時間を短縮す
るために、室温より温度を上昇させることで貼り合わせ
界面における化学反応を促進させることも有効である。
【0018】
【実施例】〔第一の実施例〕図5に示した要領で1cm
角の石英基板同士の貼り合わせを行った。このとき両者
の間に挟む溶液として、0.5重量%のふっ酸溶液と3
3重量%の六ふっ化珪酸溶液を用い、それぞれ6組ずつ
貼り合わせを行った。両溶液の珪素酸化膜(SiO
のエッチング速度はほぼ同じで約3.3nm毎分であ
る。貼り合わせ処理は室温下で、約3MPaの圧力を印
加して24時間行った。貼り合わせが終了した後に、引
っ張り試験器を用いて貼り合わした基板を引っ張り、そ
れぞれの基板が貼り合わせた面から剥がれたときの圧力
を張り合わせ強度としてこれらの結果をまとめたのが図
6である。この図から貼り合わせ回数6回とも六ふっ化
珪酸溶液を用いた場合の方が貼り合わせ強度が大きく、
ふっ酸溶液を用いた場合よりも強固に貼り合わされてい
ることが分かる。この場合珪素酸化物のエッチング量は
ふっ酸溶液、六ふっ化珪酸ともにほぼ同じであるので、
このエッチングに伴い生成される六ふっ化珪酸の貼り合
わせ強度への寄与は、両者の間でほぼ同等であると考え
られる。しかしながら、図6に示したようにふっ酸溶液
と六ふっ化珪酸溶液を用いた場合に生じる貼り合わせ強
度の大きな違いは、六ふっ化珪酸溶液を用いた場合には
ふっ酸溶液を用いた場合と比較して、被貼り合わせ基板
表面の珪素酸化物をエッチングして生成される六ふっ化
珪酸量以上の六ふっ化珪酸が既に貼り合わせ界面に存在
するために、酸化珪素の生成が促進され、容易に、かつ
確実に被貼り合わせ表面間に珪素酸化物のネットワーク
が形成されたためであると考えられる。
【0019】同様な貼り合わせ強度試験を珪素酸化物が
表面を覆っている珪素基板やほう珪酸ガラス、コパール
ガラス、鉛ガラス、パイレックス(R)ガラス等の不純
物を含むガラスに行ったところ、いずれの場合にも六ふ
っ化珪酸溶液を用いた場合の方がふっ酸溶液を用いた場
合よりも高い貼り合わせ強度を得ることができた。
【0020】〔第二の実施例〕図5に示した要領で1c
m角の石英基板同士の貼り合わせを行った。このとき両
者の間に挟む溶液として、0.5重量%のふっ酸溶液
と、0.5重量%のふっ酸溶液と33重量%の六ふっ化
珪酸溶液を容積比で1:1に混合した溶液を用いた。両
溶液の珪素酸化膜(SiO)のエッチング速度はほぼ
同じで約3.3nm毎分であった。貼り合わせは室温下
で、約3MPaの圧力を印加して24時間行った。貼り
合わせが終了した後に、引っ張り試験器を用いて貼り合
わせ強度をそれぞれの溶液の場合について比較した。そ
の結果、5回の試験、いずれの場合においてもふっ酸に
六ふっ化珪酸を添加した溶液の場合の方がふっ酸溶液の
みの場合よりも貼り合わせ強度が大きいことが判明し
た。この結果も貼り合わせ界面における六ふっ化珪酸量
の違いに由来する珪素酸化物の生成量の違いを反映した
ものと考えられる。
【0021】〔第三の実施例〕図5に示した要領で1c
m角の石英基板同士の貼り合わせを行った。このとき両
者の間に挟む溶液として、0.5重量%のふっ酸溶液
と、33重量%の六ふっ化珪酸溶液を用いた。貼り合わ
せは約3MPaの圧力を印加して3時間、それぞれ室温
(約25℃)下と70℃の大気雰囲気中で5回ずつ行っ
た。図7にはそれぞれの条件での貼り合わせ強度の平均
値をまとめたものを示している。この図から、ふっ酸溶
液および六ふっ化珪酸溶液を用いた場合ともに、貼り合
わせ時の温度が高い(70℃)方が、室温の場合と比較
して高くなっており、このことは貼り合わせ温度が高い
方が貼り合わせ界面での化学反応および化学種の移動等
が促進され、より短時間で貼り合わせが完了するものと
考えられる。次にふっ酸溶液の場合と六ふっ化珪酸溶液
の場合を比較してみると、室温においても温度が高い場
合においても六ふっ化珪酸溶液の場合の方が貼り合わせ
強度が高い。したがって六ふっ化珪酸溶液を用い、かつ
室温より高い温度下で貼り合わせを行うことで、より短
時間でかつより高い貼り合わせ強度を得ることができ
る。
【0022】〔第四の実施例〕実際に種々の薬液や血液
の流路が形成された基板の貼り合わせを想定して、幅5
0μm、深さ30μmの溝が図8のように形成されてい
る2cm四方、厚み0.5mmの石英基板と、同図中の
液貯めA802と液貯めB803に合致する位置に貫通
孔を有する2cm四方、厚み0.5mmの石英基板の貼
り合わせを行った。この場合も0.5重量%のふっ酸溶
液と33重量%の六ふっ化珪酸溶液を比較し、それぞれ
10組ずつ、室温で3MPaの圧力の下、24時間貼り
合わせを行い、チップを作製した。貼り合わせ終了後、
図8の液貯めA802に生理食塩水を導入し、液貯めB
からシュリンジを用い、液貯めAにある水を流路804
を介して液貯めB803に引き込んだ。その結果、ふっ
酸溶液を用いて貼り合わせを行った10個のチップのう
ち、6個が上記説明の溝への生理食塩水の流し込みに伴
い、局所的に当該溝中の生理食塩水が貼り合わせ界面へ
と滲み出していることが肉眼で観察された。このような
溝(流路)中の液体が貼り合わせ界面に滲み出すという
現象は、少なくとも当該溝近傍において、確実な石英基
板同士の貼り合わせが行われていないことを示し、また
このような現象は作製したチップの正常な動作に悪影響
を及ぼす可能性が高く、極力排除する必要がある。一
方、六ふっ化珪酸溶液を用いて貼り合わせを行い作製し
たチップにおいては、10組すべてふっ酸溶液の場合に
観察されたような溝近傍の貼り合わせ界面への生理食塩
水の滲み出しは一切観察されず、このことは溝近傍にお
いても石英基板同士の貼り合わせは確実に行われている
ことを示している。
【0023】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により少な
くとも珪素酸化物を表面の構成要素として含む基板同士
の貼り合わせを、従来の方法と比較してより高い貼り合
わせ強度とともに確実に行うことができるようになっ
た。本発明を用いて種々の化学合成や物理化学分析を行
うチップを作製することで、当該チップの高い良品率と
信頼性を得ることができ、結果として地球環境問題や人
々の健康管理などに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】珪素酸化物を含む基板同士の貼り合わせの機構
を解明するための実験装置を説明する図である。
【図2】ふっ酸溶液を用いた珪素酸化物を含む基板同士
の貼り合わせに伴う赤外吸収スペクトルの変化を示す図
である。
【図3】六ふっ化珪酸溶液を用いた珪素酸化物を含む基
板同士の貼り合わせに伴う赤外吸収スペクトルの変化か
ら、六ふっ化珪酸、珪素酸化物、水に由来する吸収強度
の経時変化をまとめた図である。
【図4】珪素酸化物を含む基板と珪素基板の間に六ふっ
化珪酸溶液を挟み擬似的に貼り合わせ処理を行ったとき
の赤外吸収スペクトルの変化を示す図である。
【図5】本発明の珪素酸化物を含む基板同士の貼り合わ
せ方法の実施の様子を説明する図である。
【図6】本発明の方法と従来方法を用いて石英基板の貼
り合わせを行ったときのそれぞれの貼り合わせ強度を比
較した図である。
【図7】本発明の方法と従来方法を用いて石英基板の貼
り合わせを行ったときのそれぞれの貼り合わせ強度を比
較した図である。
【図8】貼り合わせを行う石英基板表面に形成した溝の
構造を説明する図である。
【符号の説明】
101 ゲルマニウム製プリズム 102 珪素酸化膜 103 10重量%ふっ酸溶液 104 石英板 105 赤外光光源 106 マイケルソン干渉計 107 赤外光 108 赤外光検出器 501 表面に珪素酸化物を含む基板A 502 表面に珪素酸化物を含む基板B 503 六ふっ化珪酸を含む溶液 504 土台 505 押さえ台 801 石英基板 802 液貯めA 803 液貯めB 804 溝
フロントページの続き (72)発明者 堀池 靖浩 東京都西東京市東伏見3丁目2番地12号 (72)発明者 高村 禅 東京都荒川区南千住四丁目9番地2 リバ ーハープ南千住 401号 (72)発明者 菊地 純 東京都港区白金台2丁目14番地6号 Fターム(参考) 4G061 AA02 BA05 CB04 CB12 CD18 DA23

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも珪素酸化物を貼り合わせる面の
    表面の構成要素として含む基板同士の貼り合わせにおい
    て、少なくとも六ふっ化珪酸(HSiF)を含む溶
    液を当該貼り合わせを行う基板間に導入した後に、当該
    被貼り合わせ基板間に適当な圧縮圧力を印加することを
    特徴とする貼り合わせ方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の少なくとも珪素酸化物を
    貼り合わせる面の表面の構成要素として含む基板が、特
    に石英であることを特徴とする貼り合わせ方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の少なくとも珪素酸化物を
    貼り合わせる面の表面の構成要素として含む基板が、特
    に硼素、ナトリウム等の不純物を含有するガラスである
    ことを特徴とする貼り合わせ方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の少なくとも珪素酸化物を
    貼り合わせる面の表面の構成要素として含む基板が、特
    に少なくとも貼り合わせる面の表面に珪素酸化層を有す
    る珪素であることを特徴とする貼り合わせ方法。
  5. 【請求項5】請求項1に記載の少なくとも六ふっ化珪酸
    (HSiF)を含む溶液が、特に六ふっ化珪酸の他
    にふっ化水素(HF)が含まれている溶液であることを
    特徴とする貼り合わせ方法。
  6. 【請求項6】請求項1の貼り合わせ方法を、特に室温下
    で行うことを特徴とする貼り合わせ方法。
  7. 【請求項7】請求項1の貼り合わせ方法を、特に室温よ
    り高い温度下で行い、室温下で貼り合わせを行ったとき
    よりも短い時間で貼り合わせを完了することを特徴とす
    る貼り合わせ方法。
  8. 【請求項8】請求項1に記載の少なくとも珪素酸化物を
    貼り合わせる面の表面の構成要素として含む基板におい
    て、当該基板の貼り合わせる面の表面に溝などの型が形
    成されていることを特徴とする貼り合わせ方法。
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