JP2002311256A - 光ファイバ回折格子、及び光学装置 - Google Patents

光ファイバ回折格子、及び光学装置

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JP2002311256A
JP2002311256A JP2001111520A JP2001111520A JP2002311256A JP 2002311256 A JP2002311256 A JP 2002311256A JP 2001111520 A JP2001111520 A JP 2001111520A JP 2001111520 A JP2001111520 A JP 2001111520A JP 2002311256 A JP2002311256 A JP 2002311256A
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Japan
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optical fiber
diffraction grating
recoat
fiber diffraction
center wavelength
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Maki Ikechi
麻紀 池知
Susumu Inoue
享 井上
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温度変化に伴う反射中心波長の変化がより効
果的に低減され得る光ファイバ回折格子、及び光ファイ
バ回折格子を有する光学装置を提供する。 【解決手段】 光ファイバ回折格子を有する光学装置1
は、光ファイバ回折格子2と光ファイバ回折格子2が固
定される基材3とを含む。光ファイバ回折格子2は、光
ファイバ2aと、回折格子部2bと、光ファイバ2aを
囲む被覆層2cと、少なくとも回折格子部2bを覆うリ
コート膜2dとを有する。基材3は、Alからなる第1
基材3aと、石英ガラスからなる第2基材3bとにより
構成される。そして、基材3に光ファイバ回折格子2が
固定されている。リコート膜2dのヤング率が7.85
×108N/m2未満であるので、光ファイバ回折格子の
反射中心波長の温度依存性の直線性が向上され、その結
果、温度変化に伴う反射中心波長の変化が効果的、且つ
容易に制御され得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバの光軸
に沿って屈折率が周期的に変化する回折格子が形成され
ている光ファイバ回折格子、及び光ファイバ回折格子を
有する光学装置に関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ回折格子は、光ファイバ中を
伝搬する光のうち特定の波長を有する光を反射させる光
学デバイスである。そのため、光ファイバ回折格子は波
長分割多重伝送方式の光通信システム等において重要な
光部品として使用されている。すなわち、このようなシ
ステムでは波長の異なる複数の光信号が1本の光ファイ
バを通して多重伝送されるが、光ファイバ回折格子を用
いれば複数の光信号が効果的に分波される。
【0003】ところで、光ファイバは、使用温度範囲に
おいて正の熱膨張係数を有しているため、周囲温度が上
昇すると膨張し、降下すると収縮する。このような膨張
又は収縮が発生すると回折格子において屈折率が変化す
る周期及びガラスの密度が変化し、そのため、反射中心
波長が変化してしまう。さらに、膨張・収縮に伴って、
回折格子には圧縮応力又は伸張応力が印加されることに
なる。応力は光弾性効果を引き起こし、この効果により
光ファイバガラス部の屈折率が変化する。その結果、回
折格子の反射中心波長が変化してしまう。このような温
度変化に伴う反射中心波長の変化を低減するためには、
回折格子に対して、温度上昇時には圧縮応力が、降下時
には伸張応力が外部から印加される必要がある。
【0004】このため、実質的に負の熱膨張係数を有す
る部材に光ファイバを固定するという方法が採用されて
いる。このような構造では、上記部材により、温度上昇
時には圧縮応力が、降下時には伸張応力が光ファイバに
対して印加されることになる。その結果、光ファイバの
伸縮による応力が効果的に補償され、温度変化に伴う反
射中心波長の変化が低減される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本願発明者らは、上述
のような固定構造による反射中心波長の安定性を更に改
善するため、固定構造について調査研究を行なった。そ
の結果、このような固定構造がより効果的に効果を奏す
るのは、反射中心波長の温度依存性が所定の傾きを有す
る直線で表される光ファイバ回折格子に対してであるこ
とが分かった。しかし、反射中心波長の温度依存性は必
ずしも直線ではなく湾曲した曲線で表される傾向にある
こともまた明らかとなり、上述の固定構造により反射中
心波長を安定化させる上で、このような温度依存性が障
害となっていることが判明した。
【0006】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、温度変化に伴う反射中心波長の変化がより効果
的に低減され得る光ファイバ回折格子、及び光ファイバ
回折格子を有する光学装置を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る光ファイバ
回折格子は、光ファイバの光軸方向の所定長さにわたっ
て回折格子が形成され、回折格子を覆うように被覆膜が
設けられた光ファイバ回折格子であって、光ファイバ回
折格子の使用温度範囲における被覆膜のヤング率が7.
85×108N/m2未満であることを特徴とする。ま
た、光ファイバ回折格子の使用温度範囲における被覆膜
のヤング率の最大値と最小値との差が7.75×108
N/m2以下であると更に好ましい。
【0008】上記の光ファイバ回折格子は、光ファイバ
に形成された回折格子を覆う被覆膜のヤング率が7.8
5×108N/m2未満であるので、光ファイバ回折格子
の反射中心波長の温度依存性の直線性が向上される。そ
のため、光ファイバ回折格子の温度が変化しても、温度
変化に伴う反射中心波長の変化を効果的、且つ容易に制
御し得る。また、使用温度範囲における被覆膜のヤング
率の最大値と最小値との差が7.75×108N/m2
下となるようにすれば、反射中心波長の安定化をより効
果的に図り得る。
【0009】また、本発明に係る光学装置は、上記の光
ファイバ回折格子が基材に固定され、温度変化に伴う伸
縮によって基材に生じる光ファイバの光軸方向の変位を
光ファイバ回折格子に印加することを特徴とする。この
ようにすれば、上記の光ファイバ回折格子が温度変化に
伴って伸縮するのを抑えることができる。すなわち、基
材に生じる光ファイバの光軸方向の変位により、温度上
昇時には光ファイバ回折格子の膨張を抑止するように、
また、温度降下時には光ファイバ回折格子の収縮を抑止
するように光ファイバ回折格子に対して応力が印加され
得る。そのため、光ファイバ回折格子の温度が変化する
ことにより生じる反射中心波長の変化が効果的に補償さ
れ得る。しかも、上記の光ファイバ回折格子において
は、反射中心波長の温度依存性の直線性が向上されてい
ることから、より一層確実に反射中心波長の安定化が図
れる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
による光ファイバ回折格子、及びこの光ファイバ回折格
子を有する光学装置の好適な実施形態について詳細に説
明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には
同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略す
る。
【0011】図1は、本実施形態による光ファイバ回折
格子を有する光学装置の構成を示す斜視図である。同図
において、光ファイバ回折格子を有する光学装置1は、
回折格子が形成された光ファイバ回折格子2と光ファイ
バ回折格子2が固定される基材3とを含み構成される。
【0012】光ファイバ回折格子2は、回折格子部2b
が形成された光ファイバ2aと、光ファイバ2aの回折
格子部2b以外の部分を取り囲むように設けられた被覆
層2cと、少なくとも回折格子部2bを覆うように設け
られたリコート膜2d(被覆膜)とを有している。回折格
子部2bでは、光ファイバ2aの屈折率が光軸方向に所
定のピッチで周期的に変化している。このような屈折率
の変化は、例えば、ゲルマニウム元素が所定割合添加さ
れた石英ガラス製光ファイバに対して周期的な強度分布
を有する紫外域光を照射することにより形成される。リ
コート膜2dはUV硬化樹脂により形成される。このU
V硬化樹脂のヤング率は、光学装置1の使用温度範囲に
おいて7.85×108N/m2未満である。また、リコ
ート膜2dは、光ファイバ2aの回折格子部2bを覆っ
ているため、光ファイバ2aの機械的強度を向上させ
る、或いは光ファイバ2aを保護するといった効果を有
している。
【0013】基材3は、石英ガラスより大きい熱膨張係
数を有するAlからなる第1基材3aと、正の熱膨張係
数を有する石英ガラスからなる第2基材3bとにより構
成される。図1に示す通り、第2基材3bの両端部に第
1基材3aが固定されている。第1基材3aはほぼ直角
に屈曲されたL字型に形成されており、第1基材3aの
一端が第2基材3bの端部に接着剤3cにより接着固定
されている。第1基材3a,3aの他端は、第1基材3
aが第2基材3bに固定された状態において、互いに向
かい合っている。
【0014】このように構成された基材3に光ファイバ
回折格子2が固定される。すなわち、光ファイバ2aを
基材3a,3a上に接着剤4により接着することによ
り、光ファイバ回折格子2が基材3に固定される。ここ
で、回折格子部2bは基材3a,3aの間のほぼ中央に
位置している。また、接着剤4としては、たとえばエポ
キシ系接着剤等を使用することが可能である。なお、基
材3aには、光ファイバ2aを収容するよう溝を設けて
も良い。
【0015】次に、光学装置1の作製手順を説明する。
先ず、光ファイバ2aの周囲に設けられた被覆層2cが
光ファイバ2aの長手方向の所定長さだけ除去される。
これにより光ファイバ2aが露出される。この露出部の
ほぼ中央部に対して強度が周期的に変化した紫外域光が
照射される。光ファイバ2aには、紫外域光の照射によ
り屈折率変化を誘起する添加物GeO2が予め添加され
ており、この照射によって、光ファイバ2aに回折格子
部2bが形成される。回折格子部2bの形成終了後、回
折格子部2bを覆うように光ファイバ2aにリコート膜
2dが設けられる。このとき、被覆層2cとリコート膜
2dとの間に間隙部が設けられ、この間隙部には光ファ
イバ2aが露出している。そして、この光ファイバ2a
の露出している部分が接着剤4により基材3aに対して
接着される。また、この接着の際には、光ファイバ2a
には所定の張力が付与される。そのため、光ファイバ2
aは、所定の張力が付与された状態で基材3aに固定さ
れる。また、光ファイバ2aが基材3aに接着される際
には、接着剤4とリコート膜2dとの間には間隙が設け
られる。これにより、接着剤4とリコート膜2dとの接
触が防止される。以上の手順により、光ファイバ回折格
子を有する光学装置1が完成される。
【0016】続いて、光ファイバ回折格子2、及び光フ
ァイバ回折格子を有する光学装置1の作用について説明
する。また、以下では、本願発明者らが本願発明を到達
するに至った調査研究に用いた試作品における結果につ
いても併せて説明する。図2は、試作品の反射中心波長
の温度依存性を示すグラフである。同図において、縦軸
は各測定温度における反射中心波長と20℃における反
射中心波長との差(波長シフト量)を表している。
【0017】この試作品は、上記の光学装置1とほぼ同
一の構成を有している。相違点は、使用されているリコ
ート膜のヤング率が使用温度範囲(0℃〜65℃)におい
て上記の範囲(7.85×108N/m2未満)にないとい
う点である。具体的には、このリコート膜のヤング率
は、0℃において8.53×108N/m2である。以
下、試作品を上記の光学装置1と区別するため、試作品
のリコート膜をリコート膜20dとする。また、試作品
のリコート膜20dの作製に用いたUV硬化樹脂をリコ
ート材Aと称する。具体的には、このリコート材Aは、
ウレタンアクリレートをベースとしたUV硬化樹脂であ
り、その屈折率が光ファイバのクラッド領域の屈折率と
ほぼ等しくなるようにフッ素置換を施してある。
【0018】図2より、試作品においては、温度を上昇
させながら測定したときと、降下させながら測定したと
きとでばらつきはあるが、反射中心波長の温度依存性は
概ね上に凸の形状となることがわかる。このような形状
となる原因を調べるため、本願発明者らは、以下の検討
を行なった。すなわち、光ファイバに回路格子部の形成
した後、回路格子部を覆うようにリコート膜20dを形
成した。そして、この光ファイバ回折格子を基材に固定
せずに反射中心波長の温度依存性を調べた。
【0019】図3は、光ファイバ回折格子を基材に固定
することなく測定した反射中心波長の温度依存性を示す
グラフである。同図には、リコート膜20dが形成され
ている光ファイバ回折格子の結果(黒丸)とともに、比較
のため、リコート膜20dが形成されていない光ファイ
バ回折格子の結果(白丸)が示されている。
【0020】図3において、基材に固定されていない光
ファイバ回折格子の反射中心波長は、リコート膜20d
の有無に依らず温度上昇とともに増大していく。また、
約20℃より低い温度範囲においては、リコート膜20
dの有無により波長変化率(傾き)が異なる。これは、リ
コート材Aを用いて形成したリコート膜20dのヤング
率が温度の低い範囲で上昇し、グレーティングに印加さ
れる応力がより大きくなるためと本願発明者らは考えて
いる。
【0021】図3の結果をより詳細に検討するために、
図3に示すそれぞれの結果を直線近似し、各測定データ
の近似直線からの偏差を温度に対してプロットして図4
を得た。図4において、近似直線からの偏差を示すグラ
フは、リコート膜20dのない光ファイバ回折格子では
下に凸の形状(白丸、破線)となり、リコート膜20dの
ある光ファイバ回折格子では上に凸の形状(黒丸、実線)
となる。すなわち、リコート膜20dの有無に拘わら
ず、反射中心波長の温度依存性は直線状とはなっていな
いことが分かる。
【0022】また、図4において、下に凸の形状となる
リコート膜20dのない光ファイバ回折格子に対してリ
コート膜20dを形成すると、温度依存性の形状が上に
凸へと変化することが分かる。さらに、図2と図4とを
比較すると、リコート膜20dのある光ファイバ回折格
子の反射中心波長の温度依存性と試作品の光学装置にお
ける反射中心波長の温度依存性とは、ほぼ同一の形状を
示している。このことからも、光学装置1の試作品にお
いて上に凸の形状となった温度依存性は、リコート膜2
0dに起因したものであることが推測される。
【0023】本願発明者らは、さらに、上記の2つの光
ファイバ回折格子を基材3に固定し、温度変化に伴う反
射中心波長の変化について調べた。図5は、光ファイバ
回折格子を基材に固定して測定した反射中心波長の温度
依存性を示すグラフである。同図において、リコート膜
20dのない光ファイバ回折格子の場合には、反射中心
波長は温度の上昇とともに単調に減少していく。一方、
リコート膜20dのある光ファイバ回折格子の場合は、
温度が0℃よりも低い温度範囲で温度を低下させていく
と、その反射中心波長はリコート膜20dのない光ファ
イバ回折格子の反射中心波長よりも短くなっていく。そ
のため、反射中心波長の温度依存性は上に凸の形状とな
る。この結果から、上に凸の形状を示す温度依存性はリ
コート膜20dにより決定されていることが再確認され
た。また、この結果から、本願発明者らは、このような
非直線性を低減するには、0℃以下の温度範囲において
リコート膜により光ファイバ回折格子の回折格子部に印
加される応力を低減することが不可欠であると考えるに
至った。
【0024】そこで、本願発明者らは、リコート膜のヤ
ング率に着目し、ヤング率の相違により反射中心波長の
温度依存性の形状がどのように変化するかについて検討
を行なった。この検討のため、リコート材Aによるリコ
ート膜20dよりもヤング率の低いリコート膜2dを形
成できるリコート材B,C,Dを用意した。そして、こ
れらを用いてリコート膜2dをそれぞれ形成することに
より、複数個の光ファイバ回折格子を作製した。リコー
ト材B,C,Dはヤング率が異なる他は、リコート材A
と同様の材料によるUV硬化樹脂である。具体的には、
リコート材A,B,C,Dにおいては、UV硬化樹脂の
分子連鎖の長さがそれぞれ異なっており、この相違によ
りヤング率が異なることとなる。
【0025】図6に、各リコート膜のヤング率の温度依
存性を示す。同図において、曲線A 1はリコート材Aに
よるリコート膜20d、曲線B1はリコート材Bによる
リコート膜2d、曲線C1はリコート材Cによるリコー
ト膜2d、及び曲線D1はリコート材Dによるリコート
膜2dについてのヤング率の温度依存性を示している。
同図から分かるように、各リコート膜は温度の上昇とと
もにヤング率が低下していくという性質を有している。
また、リコート材A,B,C,Dの順にヤング率は高
い。
【0026】これら4種類のリコート材A,B,C,D
を用いてそれぞれ作製した光ファイバ回折格子の温度を
−40℃〜85℃と変化させて、反射中心波長の温度を
測定した。測定データ取得後、図2と同様のグラフを作
成し、同グラフ上で使用温度範囲の下限値である0℃と
上限値である65℃とにおける測定値を直線で結び、こ
の直線を上述の近似直線とすることとした。そして、2
0℃における測定値と同温度での直線上の値との差(絶
対値)を求め、その値を光ファイバ回折格子の非直線性
と定義した。
【0027】表1は、光ファイバ回折格子による反射中
心波長の温度依存性の非直線性がリコート材のヤング率
に対しどのように変化するかを示す。同表に示すヤング
率の値は、光ファイバ回折格子の使用温度範囲でのヤン
グ率が最大になる温度(0℃)での値である。
【0028】
【表1】 表1から、ヤング率が小さくなるとともに非直線性が低
下、言い換えると、直線性が向上することが分かる。こ
の結果から、反射中心波長の温度依存性の非直線性を低
下させるには、リコート膜による応力の低減が不可欠で
あるという本願発明者らの考えが正しいことが確認され
た。
【0029】そこで、本願発明者らは、ヤング率がどの
程度の値であれば実用上良好な反射中心波長の安定性が
図れるかについて検討した。そのため、基材に固定され
た光ファイバ回折格子に対し、これらのリコート材A,
B,C,Dを用いてリコート膜を形成した。そして、反
射中心波長の温度依存性を調べた。その結果、使用温度
範囲でのリコート膜のヤング率が7.85×108N/
2未満であれば、良好な波長安定性が実現され得るこ
とが分かった。つまり、リコート膜がない場合(非直線
性の絶対値が0.0239)よりも非直線性が改善され
るのは、ヤング率が7.85×108N/m2未満の場合
である。ヤング率が7.85×108N/m2以上となる
温度領域が使用温度範囲内にあると、その温度領域で
は、温度変化に伴ってリコート膜が伸縮することにより
光ファイバ回折格子に印加される応力が増大してしま
う。この応力の増大により、反射中心温度の温度依存性
の直線性が悪化してしまい、反射中心波長を安定化させ
るのが難しくなってしまう。このような理由から、本願
発明者らは、使用温度範囲でのリコート膜2dのヤング
率が7.85×108N/m2未満であると好適と考えて
いる。
【0030】また、本願発明者らは、更に調査研究を重
ね、使用温度範囲においてヤング率が取り得る値の幅が
7.83×108N/m2以下であると好ましいという結
論に達した。具体的には、リコート膜2dのヤング率が
使用温度範囲において0.02×108以上7.85×
108N/m2以下の範囲にあれば、反射中心波長の温度
依存性の直線性は優れる。さらに、上記の幅が7.75
×108N/m2以下、具体的には、使用温度範囲におけ
るヤング率が0.1×108以上7.85×108N/m
2以下の範囲であると更に好ましいという結果を得た。
図4を参照して説明した通り、リコート膜が形成されて
いない光ファイバ回折格子においては、その反射中心波
長の温度依存性は下に凸の形状となる。このような形状
を補償して直線性を更に改善する必要があるときには、
リコート膜2dのヤング率を低くしすぎてしまうと、保
護膜としてのリコート膜の強度が不十分となる、或い
は、タック性(リコート膜表面のべたつき性)による作業
性の低下が起こる虞がある。このような理由から、上記
の範囲がより好ましいという結論に達した。
【0031】また、使用温度範囲におけるヤング率が
6.57×108N/m2以下であると好ましく、ヤング
率の幅が6.47×108N/m2以下であれば、反射中
心波長の安定性は一層効果的に向上され得る。さらに、
使用温度範囲におけるヤング率が4.90×108N/
2以下であると更に好ましく、その幅が4.81×1
8N/m2以下であれば、反射中心波長はより一層効果
的に安定化され得る。
【0032】次に、ヤング率が上記の範囲にある場合と
ない場合とを比較し、上記の効果を再確認した結果につ
いて説明する。比較に用いたリコート材は、リコート材
A,Dである。これらを用いて形成したリコート膜の温
度範囲0℃〜65℃におけるヤング率は、リコート材A
を用いて形成したリコート膜20dは8.53×10 8
N/m2以下、リコート材Dを用いて形成したリコート
膜2dは4.90×10 8N/m2以下である。リコート
膜20dを有する光ファイバ回折格子と、リコート膜2
dを有する光ファイバ回折格子とをそれぞれ個別の基材
に固定することにより光学装置を2つ作製した。なお、
ここで使用した基材は、図1を参照して説明した基材3
と同一である。
【0033】図7(a)は、リコート材Aを用いてリコー
ト膜20dを形成した光ファイバ回折格子を有する光学
装置における反射中心波長の温度依存性を示すグラフで
ある。図7(b)は、リコート材Dを用いてリコート膜2
dを形成した光ファイバ回折格子を有する光学装置にお
ける反射中心波長の温度依存性を示すグラフである。図
7(a)から、リコート材Aを用いて作製した光ファイバ
回折格子では、0℃〜65℃の範囲内に傾きが正の領域
と負の領域とがあることが分かる。これに対し、リコー
ト材Dを用いて作製した光ファイバ回折格子では、図7
(b)に示す通り、傾きはあるものの0℃〜65℃の範囲
内においてほぼ直線となっている。
【0034】リコート材Aによりリコート膜20dが形
成された光ファイバ回折格子の場合には、基材の形状及
び熱膨張係数の調整によって正の傾きを0(水平)に近づ
けようとすると、傾きが負の領域において傾き(の絶対
値)を大きくしてしまう結果となる。逆に、負の傾きを
0に近づけようとすれば、正の傾きが大きくなってしま
う。よって、基材の調整を行なっても、反射中心波長を
更に安定化させることはできない。一方、リコート材D
によりリコート膜2dを形成した光ファイバ回折格子で
は、反射中心波長の温度依存性は直線性に優れているの
で、その直線の傾きを相殺するよう基材の熱膨張係数
(<0)及び基材の形状を調整すれば、反射中心波長の安
定化が効果的に図り得る。以上の結果から、本実施形態
の光ファイバ回折格子、及び光ファイバ回折格子を有す
る光学装置の優れた効果が理解される。
【0035】以上、実施形態を用いて本発明の光ファイ
バ回折格子、及び光ファイバ回折格子を有する光学装置
について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られ
ることなく、様々な変形が可能である。
【0036】上記の実施形態においては、光ファイバ回
折格子及び光学装置の使用温度範囲を0℃〜65℃とし
て説明したが、使用温度範囲は都度決定されてよい。ま
た、光ファイバ回折格子及び光学装置が温度調整された
環境下で使用される場合においても、温度調整器の不具
合等により環境温度が変化してしまう事態を想定し、そ
の際に到達し得ると思われる温度範囲を使用温度範囲と
考えるべきことは当業者にとって明らかである。そし
て、決定された範囲内でのヤング率が7.85×108
N/m2未満となるリコート膜2dを選択すればよい。
上記のリコート材A,B,C,Dを例にとって説明する
と、例えば、使用温度範囲が−5℃〜70℃の場合に
は、リコート材Aのヤング率は0℃以下の温度で7.8
5×108N/m2を超えてしまうので、リコート材C,
Dを用いて形成したリコート膜2dを用いるとよい。
【0037】本発明による光ファイバ回折格子は、上述
のような基材にではなく、例えば、温度調整器を備えた
部材に固定するようにしても良い。このようにしても、
本発明による光ファイバ回折格子は、光ファイバ回折格
子の使用温度範囲において反射中心波長の温度依存性が
ほぼ直線となり得るので、温度調整器による反射中心波
長の安定化がより容易になされる。
【0038】さらに、本発明による光ファイバ回折格子
は、光ファイバ回折格子の温度を変えて反射中心波長を
変化させる用途にも好適に応用できる。すなわち、反射
中心波長は温度に対して直線状に変化するため、所望の
反射中心波長を容易に設定し得る。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかる光
ファイバ回折格子によれば、光ファイバ回折格子の回折
格子部を覆うよう設けられる被覆膜のヤング率が7.8
5×108N/m2未満であるため、被覆膜のない場合よ
りも反射中心波長の温度依存性の直線性が向上される。
そのため、光ファイバ回折格子の温度が変化する場合
に、温度変化に伴う反射中心波長の変化を効果的、且つ
容易に制御し得る。さらに、光ファイバ回折格子が被覆
膜で覆われているため、光ファイバ回折格子の強度が増
加するという効果も得られる。
【0040】また、本発明に係る光ファイバ回折格子を
有する光学装置によれば、光ファイバ回折格子が温度変
化に伴って伸縮するのを防ぐことができるため、反射中
心波長の安定化が図れる。しかも、この光学装置に備え
られる光ファイバ回折格子は反射中心波長の温度依存性
の直線性に優れているため、光ファイバ回折格子の温度
が変化することにより生じる反射中心波長の変化がより
効果的に補償され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本実施形態による光ファイバ回折格子
を有する光学装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、光学装置の試作品における反射中心波
長の温度依存性を示すグラフである。
【図3】図3は、光ファイバ回折格子を基材に固定する
ことなく測定した反射中心波長の温度依存性を示すグラ
フである。
【図4】図4は、図3の結果を直線近似し、近似直線か
らの偏差を温度に対してプロットしたグラフである。
【図5】図5は、光ファイバ回折格子を基材に固定して
測定した反射中心波長の温度依存性を示すグラフであ
る。
【図6】図6は、各種リコート材を用いて形成した各リ
コート膜のヤング率の温度依存性を示すグラフである。
【図7】図7(a), (b)は、異なる2つのリコート材
を用いてリコート膜を形成した光ファイバ回折格子をそ
れぞれ有する光学装置における反射中心波長の温度依存
性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…光学装置、2d…リコート膜、2b…回折格子部、
2a…光ファイバ、2c…被覆層、3…基材、3a…第
1基材、3b…第2基材、3c,4…接着剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H038 AA08 BA23 BA24 CA52 2H049 AA45 AA59 AA62 AA68 2H050 AC82 AC84 BB14 BB33 BD03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光ファイバの光軸方向の所定長さにわた
    って回折格子が形成され、前記回折格子を覆うように被
    覆膜が設けられた光ファイバ回折格子であって、 前記光ファイバ回折格子の使用温度範囲における前記被
    覆膜のヤング率が7.85×108N/m2未満であるこ
    とを特徴とする光ファイバ回折格子。
  2. 【請求項2】 前記光ファイバ回折格子の使用温度範囲
    における前記被覆膜のヤング率の最大値と最小値との差
    が7.75×108N/m2以下であることを特徴とする
    請求項1記載の光ファイバ回折格子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の光ファイバ回折
    格子が基材に固定され、温度変化に伴う伸縮によって前
    記基材に生じる前記光ファイバの光軸方向の変位を前記
    光ファイバ回折格子に印加することを特徴とする光学装
    置。
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