JP2002262880A - リボザイム発現系 - Google Patents
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Abstract
って例えばヒト免疫不全ウイルス感染などの感染症を抑
制する手段を提供する。 【解決手段】 上流側から順にテトラサイクリンオペレ
ーター、1つまたは複数のプロモーター、およびリボザ
イムをコードするDNA配列を含むリボザイム発現カセッ
トであって、前記テトラサイクリンオペレーターが、プ
ロモーターの転写開始部位から5'側に2〜10ヌクレオチ
ドの位置に存在している、前記リボザイム発現カセッ
ト、このカセットを含むベクター、このベクターとテト
ラサイクリンリプレッサー発現用ベクターとを含むベク
ターセット、ならびにこのベクターセットを含む組成物
を提供する。
Description
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)増殖の抑制に関する。具体
的には、本発明は、上流側から順にテトラサイクリンオ
ペレーター、プロモーターおよびリボザイムをコードす
るDNA配列を含むこと、ならびに該オペレーターの存在
位置に特徴を有するリボザイム発現カセット、該発現カ
セットを含むベクターならびに該ベクターの使用に関す
る。
遺伝子の発現および機能を解析する上で極めて有用であ
る。この目的のために、RNAポリメラーゼII(pol II)に
より転写された遺伝子の発現を制御するための多くの調
節された系が開発されてきた([Mayo, 1982 #1]、[Hu, 1
987 #2]、[Schweinfest, 1988 #3]、[Israel, 1989 #
4]、[Gossen, 1992 #5])。一方、RNAポリメラーゼIII(p
ol III)に基づく発現系は、持続的な高レベルの発現能
力を有しているため、アンチセンスRNAもしくはリボザ
イム、または特異的な遺伝子発現の阻害に用いられる高
親和性RNAリガンドなどの短いRNA分子の効率的な発現に
適している([Koseki, 1999 #6])。しかし、この種の発
現系の発現は構成的で偏在的であるので、ハウスキーピ
ング遺伝子の発現の阻害を防止したり、細胞特異的な発
現を達成したりするには制限が課される。かかる理由の
ため、調節可能なpol III型発現系も開発された([Dinge
rmann,1992 #7]、[Syroid, 1992 #8]、[McBryant, 1995
#9]、[Ulmasov, 1997 #10]、[Luukkonen, 1998 #11]、
[Ohkawa, 2000 #12])が、その数はまだ少ない。
物のtRNAプロモーターの場合、5'フランキング領域が、
転写の開始にとって重要なTFIIIB、TFIIICおよびpol II
Iのアクセシビリティーに大きな影響を与えるようであ
る([Arnold, 1987 #13]、[McBryant, 1995 #9]。調節
可能な哺乳動物のtRNAプロモーターを確立するために、
tetオペレーターまたはlacオペレーターなどの原核生物
のオペレーター配列を5'フランキング領域中に配置し
た。しかし、最も効率の良い位置は、tRNAプロモーター
の各タイプに依存する。そして、使用したオペレーター
配列に適合した適当なリプレッサーを用いて、転写開始
を妨げることによってtRNAプロモーターを制御すること
ができる。現在までに、原核生物オペレーター−リプレ
ッサー系を用いる真核生物tRNAプロモーターの調節に関
するいくつかの例が報告されている([Dingermann, 1992
#14]、[Dingermann, 1992 #7]、[Syroid, 1992 #8]、
[McBryant, 1995 #9]、[Ulmasov, 1997 #10])。
胞に侵入し、融合するためには、CD4に加えてコファク
ター分子(ケモカイン受容体)を必要とする([D'Souza, 1
996 #15]、[Fauci, 1996 #16]、[Cairns, 1998 #17]、
[Berger, 1999 #18])。in vitro条件下でHIV-1コリセプ
ターとして作用する種々のケモカイン受容体が同定され
てきたが、2つのコリセプター、すなわちCCR5およびCX
CR-4が、ウイルスの広がりにおいて重要な生理学的役割
を担っている([Zhang, 1999 #19])。特に、CCR5が新し
い感染および伝播を確立する際に重要な役割を担う。7
回膜貫通型G共役タンパク質の2番目の細胞外ループに
対応するCCR5遺伝子の32塩基対のセグメントの同型接合
性欠失を有する個体は、通常HIV-1感染に対して抵抗性
を有するが、異型接合性の個体でさえ、部分的には防御
を示す([Liu, 1996 #20]、[Dean, 1996 #21]、[Huang,
1996 #22]、[Samson, 1996 #23]、[Michael, 1997 #2
4])。R5ウイルス、すなわちマクロファージ親和性ウイ
ルスは、主にCCR5を使用する。R5ウイルスは新しい感染
および伝播の確立に主に関与することが推測された。一
方、疾患の後期の段階では、他のコリセプター(特にCXC
R-4)を使用することができるウイルスが通常認められる
([Berger, 1999 #18])。それらはTリンパ球親和性ウイ
ルスであり、X4ウイルスと分類される。それらの出現
は、CD4+細胞の急速な減少と疾患の急速な進行に関連す
ることが多い。
リボザイムに関する多くの研究が報告されている([Sarv
er, 1990 #25)、[Weerasinghe, 1991 #26]、[Taylor, 1
991#27]、[Ojwang, 1992 #28]、[Yu, 1993 #29]、[Yama
da, 1994 #30]、[Koseki, 1999 #6])。しかし、そのよ
うな戦略は、高い突然変異率に起因する耐性変異体の出
現を許してしまう。一方、HIV-1の感染および増殖にと
って必須である侵入コリセプターなどの細胞因子のター
ゲッティングには、この問題を回避できるという利点が
ある。さらに、ハイリスクであるがHIV-1に感染してい
ない個体の研究により、CCR5受容体は、R5ウイルス感染
には必要であるが、正常なケモカインシグナリングには
必須ではないようであることが示された([Liu, 1996 #2
0]、[Paxton, 1998 #31])。これらの事実は、CCR5が、
リボザイムに媒介される抗HIV-1治療の良い候補である
ことを示している。
可能なプロモーターエレメントに基づく発現系および調
節系であるテトラサイクリン耐性オペロンのテトラサイ
クリンリプレッサー−オペレーター(Tet R-tet O)系(大
腸菌のトランスポゾン10(Tn 10)([Hillen, 1984#32])に
よりコードされる)を提供することである。また、本発
明の別の目的は、この発現系を用いてリボザイムの機能
的活性を制御し、これによって例えばヒト免疫不全ウイ
ルス感染などの感染症を抑制する手段を提供することで
ある。
めに、本発明者らは鋭意研究を行った結果、リボザイム
発現系において、オペレーターの存在位置によって転写
の正確なオン/オフ調節が大きく影響を受けることを見
出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は
以下の発明を包含する。
ら順にテトラサイクリンオペレーター、1つまたは複数
のプロモーターおよびリボザイムをコードするDNA配列
を含むリボザイム発現カセットであって、前記オペレー
ターエレメントが、プロモーターの転写開始部位から5'
側に2〜10ヌクレオチドの位置に存在している、リボザ
イム発現カセットを提供する。
にターミネーターを含んでもよく、該ターミネーターの
塩基配列は、TTTTTを含むのが好ましい。好ましい実施
形態において、テトラサイクリンオペレーターは、テト
ラサイクリンオペレーター1(tetO1)である。さらに好
ましい実施形態において、該プロモーターは、1つまた
は複数のpolIIIプロモーターである。該プロモーター
は、好ましくは哺乳動物由来のtRNAプロモーターであ
り、より好ましくはtRNAValプロモーターである。
リボザイムは、疾患に関与するRNAを切断する活性を有
する。該疾患は癌、感染症(例えば、AIDS)、炎症性疾
患を含み、本発明のリボザイム発現カセットにより発現
されたリボザイムは、これらの疾患に関連するRNAを切
断する。さらに、特定の実施形態において、本発明のリ
ボザイム発現カセットによりコードされるリボザイム
は、CCR5 mRNAを切断するのが好ましい。また、該リボ
ザイムは、配列番号2に記載のCCR5 mRNAの配列におい
て、CUC(37〜39)、GUC(69〜71)、GUC(74〜76)、AUC(62
〜64)およびAUA(98〜100)からなる群より選択される塩
基配列の直後で前記CCR5 mRNAを切断する活性を有する
が、これらの特定の切断位置に限定されない。
Aを切断する活性を有するRNA分子を提供する。具体的に
は、本発明は、配列番号3または4に示される塩基配列
を含み、CCR5 mRNAを切断する活性を有するRNA分子を提
供する。第3の態様において、本発明は、上流側から順
にテトラサイクリンオペレーター、1つまたは複数のプ
ロモーターおよびリボザイムをコードするDNA配列を含
むリボザイム発現カセットであって、前記オペレーター
エレメントが、プロモーターの転写開始部位から5'側に
2〜10ヌクレオチドの位置に存在している、リボザイム
発現カセットを含むベクターを提供する。ここで、オペ
レーター、プロモーターおよびリボザイムは上記のとお
りである。好ましい実施形態において、該ベクターは、
ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターであ
る。該ベクターがレトロウイルスベクターである場合、
その3'LTR中のエンハンサー配列の全体または一部を欠
失させることにより、5'LTRプロモーターを不活性化す
るのが好ましい。
ら順にテトラサイクリンオペレーター、1つまたは複数
のプロモーターおよびリボザイムをコードするDNA配列
を含むリボザイム発現カセットであって、前記オペレー
ターエレメントが、プロモーターの転写開始部位から5'
側に2〜10ヌクレオチドの位置に存在している、リボザ
イム発現カセットを含むベクターと、テトラサイクリン
リプレッサー(Tet R)を発現させるためのベクターとを
含むベクターセットを提供する。ここで、オペレータ
ー、プロモーターおよびリボザイムは上記のとおりであ
る。好ましい実施形態において、該ベクターセットの少
なくとも一方はレトロウイルスベクターである。また、
該ベクターセットは、疾患を治療または予防するための
ものであるのが好ましい。該疾患としては、癌、感染症
(例えば、AIDS)、炎症性疾患などが挙げられるが、こ
れらに限定されない。
クターセットで形質転換またはトランスフェクションさ
れた宿主細胞を提供する。好ましい実施形態において、
該宿主細胞は、動物細胞である。第6の態様において、
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して感染性
を有さない細胞を調製する方法を提供する。この方法
は、(i) 上流側から順にテトラサイクリンオペレータ
ー、1つまたは複数のプロモーターおよびリボザイムを
コードするDNA配列を含むリボザイム発現カセットであ
って、前記オペレーターエレメントが、プロモーターの
転写開始部位から5'側に2〜10ヌクレオチドの位置に存
在しているリボザイム発現カセットを含むベクターと、
テトラサイクリンリプレッサー(Tet R)を発現させるた
めのベクターとを含むベクターセットを用いてCCR5を発
現する細胞を形質転換またはトランスフェクションする
工程、(ii) 前記形質転換またはトランスフェクション
された細胞を回収する工程、および(iii) 前記回収され
た細胞をテトラサイクリンの存在下で培養する工程、を
含む。この態様の好ましい実施形態において、該ベクタ
ーセットの少なくとも一方はレトロウイルスベクターで
ある。ここで、オペレーター、プロモーターおよびリボ
ザイムは上記のとおりである。
性を有する、前記ベクターセットで形質転換またはトラ
ンスフェクションされた宿主細胞を、テトラサイクリン
の存在下で培養してリボザイムを発現させ、該リボザイ
ムによって、該細胞内のAIDS関連RNAを切断することを
含む、ヒト免疫不全ウイルスの増殖を抑制する方法を提
供する。この態様の好ましい実施形態において、該AIDS
関連RNAは、CCR5 mRNAである。
ターセットを含む、疾患を治療または予防するための組
成物を提供する。この態様の好ましい実施形態におい
て、該疾患はAIDSである。第9の態様において、本発明
は、(i)前記ベクターセットを用いてCCR5を発現する細
胞を形質転換またはトランスフェクションする工程、(i
i) 前記形質転換またはトランスフェクションされた細
胞を回収する工程、および(iii) 前記回収された細胞を
テトラサイクリンの存在下で培養する工程、を含む、ヒ
ト免疫不全ウイルス(HIV)に対して感染性を有さない細
胞を調製する方法によって調製されたHIV非感染性細胞
を提供する。以下、本発明をより理解しやすくするため
に、本明細書において用いられるいくつかの用語につい
て定義する。
トラサイクリンまたはテトラサイクリンリプレッサーに
よって調節される遺伝子エレメントを意味する。通常、
オペレーターにリプレッサーが結合するとRNAポリメラ
ーゼがこのプロモーターからの転写を行うことができな
くなる。一方、リプレッサーに誘導因子が結合すると、
オペレーターにリプレッサーが結合できなくなり、転写
が開始される。例えば、テトラサイクリンオペレーター
の場合、テトラサイクリン分子がテトラサイクリンリプ
レッサー(Tet R)分子に結合すると、この複合体はテト
ラサイクリンオペレーターに結合できなくなり、従って
転写が開始される。
部位を決定し、また転写の頻度を直接的に調節するDNA
上の領域を意味する。本明細書で用いる「プロモーター
の転写開始部位から5'側に2〜10ヌクレオチドの位置に
存在している」とは、プロモーターの転写開始部位の塩
基番号を+1で表したときに、テトラサイクリンオペレ
ーターの塩基配列の3'末端の塩基が、−2〜−10で表さ
れる塩基番号の位置に挿入されていることを意味する。
DNA配列を意味する。「ベクター」は、異種DNAを運搬す
る能力を有するDNAを意味する。ベクターがウイルスDNA
である場合、それを「ウイルスベクター」と称する。ウ
イルスベクターは、ウイルスが本来細胞へ感染、維持さ
れる仕組みを利用している。
性を有するRNA分子を意味する。リボザイムには、ハン
マーヘッド型リボザイム(Haseloff, 1988#45)やヘアピ
ン型リボザイム(Hampel, 1990#46)が含まれる。これら
は共にアンチセンス活性およびエンドリボヌクレオチダ
ーゼ活性を有し、遺伝子治療などに応用されている(特
表平8‐510134号公報)。以下に本発明を詳細に説明す
る。
行われる。真核生物においては、3種類のRNAポリメラ
ーゼが存在するが、III型ポリメラーゼ(polIII)に基づ
く発現系は、持続的で高レベルの発現能力を有している
ため、アンチセンスRNAもしくはリボザイム、または特
異的な遺伝子発現の阻害に用いられる高親和性RNAリガ
ンドなどの短いRNA分子の効率的な発現に適している。
しかし、この種の発現系の発現は構成的で偏在的である
ので、ハウスキーピング遺伝子の発現の阻害を防止した
り、細胞特異的な発現を達成したりするには制限が課さ
れる。そこで、本発明者らは、テトラサイクリンによっ
て転写活性を調節することができるプロモーターを用い
て、新規なリボザイム発現系を開発した。
ー/テトラサイクリンリプレッサー(Tet R)系を利用し
て、プロモーターに支配される遺伝子の発現調節を可能
にする。この系では、テトラサイクリン分子がテトラサ
イクリンリプレッサー(Tet R)分子に結合すると、その
複合体はテトラサイクリンオペレーターに結合できなく
なり、プロモーターからの転写が開始される。逆に、テ
トラサイクリン分子の不在下では、テトラサイクリンリ
プレッサーがオペレーターに結合するため、転写が阻止
される。このようにして、調節可能で効率的な遺伝子発
現を達成することができる。本発明においては、テトラ
サイクリンオペレーターとプロモーターとの位置関係が
転写のオン/オフに大きく影響することが見出された。
サイクリンオペレーター、プロモーターおよびリボザイ
ムをコードするDNA配列含むリボザイム発現カセットで
あって、前記テトラサイクリンオペレーターが、プロモ
ーターの転写開始部位から5'側に2〜10ヌクレオチドの
位置に存在している、前記リボザイム発現カセットを提
供する。テトラサイクリンオペレーターの位置は、本発
明の重要な特徴であり、この位置によってプロモーター
からの転写活性は大きく変化する。本発明のリボザイム
発現カセットにおいて、テトラサイクリンオペレーター
は、プロモーターの転写開始部位から5'側に2〜10ヌク
レオチド、より好ましくは3〜9ヌクレオチド、さらに好
ましくは4〜8ヌクレオチド、さらにより好ましくは5〜7
ヌクレオチド、最も好ましくは6〜7ヌクレオチドの位置
に存在する。
レーターは、原核生物由来のオペレーターであり、好ま
しくは大腸菌由来のテトラサイクリンオペレーター1(t
etO1)である。本発明で使用可能なプロモーターは、本
発明によるtet O1/Tet R系によって、プロモーターの
転写誘導活性が妨害されないかぎり、どのようなタイプ
のプロモーターであってもよいが、好ましくはpolIIIプ
ロモーター、より好ましくはtRNAプロモーター(例えば
哺乳動物由来のtRNAプロモーター)、さらに好ましくはt
RNAValプロモーター[Georg, 1986 #41]である。また、
プロモーターは1個でもよく、あるいは複数個(例えば
2個)存在させてもよい。
3'末端にターミネーターが含まれていてもよい。好まし
いターミネーターは、TTTTTで示される塩基配列を含む
が、これらに限定されない。さらに、本発明で使用され
るリボザイムは、癌、感染症、炎症性疾患などの疾患に
関与するRNAを切断する活性を有するのが好ましい。こ
のような活性を有するリボザイムを発現させることによ
り、前記のような疾患に関与するRNAを切断し、該疾患
の治療または予防に利用阻害することができるであろ
う。特定のタンパク質に起因して疾患が直接的または間
接的に引き起こされる場合、本発明のリボザイム発現カ
セットを有利に使用することができる。例えば、ヒト免
疫不全ウイルス(HIV-1)が標的細胞に侵入し、融合する
ためには、CD4だけではなくコファクター分子(ケモカイ
ン受容体)CCR5を必要とするが、CCR5は正常なケモカイ
ンシグナリングには必須ではないため、本発明のリボザ
イム発現カセットを用いてCCR5の発現を阻害することに
より、HIV-1の感染および増殖を抑制することができ
る。
は、本発明のリボザイム発現カセットに含まれるリボザ
イムは、CCR5 mRNAを切断する活性を有するRNA分子をコ
ードするのが好ましい。具体的には、そのようなリボザ
イムは、配列番号2に記載のCCR5 mRNAの配列におい
て、CUC(37〜39)、GUC(69〜71)、GUC(74〜76)、AUC(62
〜64)およびAUA(98〜100)からなる群より選択される塩
基配列の直後でCCR5 mRNAを切断する活性を有するが、
これらの特定の切断位置に限定されない。
主にその安定性、切断活性に適した三次構造および標的
部位に依存し、また、安定で優れた三次構造を有するリ
ボザイムは、RNAの部分的切断に対するin vitro切断ア
ッセイにおいても高い活性を示すので、効率的にRNAを
切断する活性を有するリボザイムを推定することができ
る[Koseki, 1999 #6]。本発明者らの実験(後述の実施
例)により、配列番号3または4に示される塩基配列を
含むリボザイムが、本発明のリボザイム発現カセットに
特に好適であることが示された。従って、本発明の特に
好ましい実施形態においては、本発明のリボザイム発現
カセットに含まれるリボザイムは、配列番号3または4
に示される塩基配列を含み、CCR5 mRNAを切断する活性
を有する。
のDNA合成技術(例えば、DNA組換え技術、化学合成法、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)を使用することによっ
て作製することができる(例えば、Sambrookら、Molecul
ar Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press (1989))。具体的には、本
発明のリボザイム発現カセットを、化学合成法あるいは
PCR法で合成し、DNA組み換え技術を用いてベクターに組
み込むことにより作製することができる。化学合成法で
は、リボザイム配列および標的認識部位を含む合成オリ
ゴヌクレオチド(両ストランド)を合成し(この際両末
端部分は適当な制限酵素部位にしておく)、アニーリン
グした後、制限酵素処理したベクターに組み込む[Ohkaw
a, 1993#43]。また、PCR法では、リボザイム配列および
標的認識部位を含むプライマーを化学合成し、これと適
当なプライマーを用いて、例えばベクターを鋳型として
PCRを行い、適当な制限酵素で処理したあと、ベクター
に組み込む[Koseki, 1999#6]。
例として、tetO1オペレーター、tRNAvalプロモーター、
CCR5 mRNAを切断する活性を有するリボザイムをコード
するDNAおよびターミネーターを含むものを挙げること
ができる。具体的には、配列番号5および配列番号6に
示されるDNA配列である。
に形質導入するためにベクター中に組込むことができ
る。従って、本発明は、上記リボザイム発現カセットを
含むベクターを包含する。ベクター中に異種遺伝子を導
入する方法は、当業者に公知の方法によって行うことが
できる(例えば、Sambrookら、前掲)。
含むベクターと、リボザイム発現カセットの発現を調節
するためのテトラサイクリンリプレッサーを発現させる
ためのベクターとを用いて細胞を形質転換またはトラン
スフェクションすると、該細胞はテトラサイクリンリプ
レッサーを構成的に発現するようになり、さらにテトラ
サイクリンによって本発明のリボザイム発現カセットの
発現を調節することができる。すなわち、この細胞は、
テトラサイクリンの存在下では、リボザイムは高レベル
で発現するが、テトラサイクリンの非存在下では、リボ
ザイムの発現は抑制される。従って、本発明は、本発明
のリボザイム発現カセットを含むベクターと、テトラサ
イクリンリプレッサーを発現させるためのベクターとを
含むベクターセット、および該ベクターセットで形質転
換またはトランスフェクションされた細胞を包含する。
本発明で用いることができるベクターセットを細胞に導
入する方法としては、リン酸カルシウム沈降法、マイク
ロインジェクション、エレクトロポレーション、リポフ
ェクション、およびリポソームによる導入などが挙げら
れるが、これらに限定されない。
は、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミド
ベクター、およびウイルスベクターが含まれる。これら
のベクターに、本発明のリボザイム発現カセットを連結
することができる。ベクターに応じて適当な宿主細胞を
選択することにより、リボザイムの発現を、テトラサイ
クリンオペレーター/テトラサイクリンリプレッサー系
によって調節することができる。適当な宿主細胞の例と
しては、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母な
どが挙げられるが、これらに限定されない。
発明のベクターセットを、ウイルスベクターに挿入す
る。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクタ
ー、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベク
ター、およびヘルペスウイルスベクターなどが挙げられ
るが、これらに限定されない。該ベクターセットが組込
まれたウイルスベクターを用いて、本発明のリボザイム
の発現調節を行うことができる。
明のベクターセットを、レトロウイルスベクターに挿入
する。レトロウイルスベクターは、多くの種類の細胞に
高い効率で遺伝子を導入することができ、また、導入遺
伝子が染色体に組込まれるので、長期間安定的に遺伝子
を発現させることができ、さらに、パッケージング細胞
を用いて容易に大量のウイルスベクターを作製すること
ができるため、本発明のリボザイム発現カセットを挿入
するのに好適である。本発明のリボザイム発現カセット
を含むレトロウイルスベクターの3'LTR中のエンハンサ
ー配列の全部または一部を欠失させると、5'LTRプロモ
ーターの不活性化をもたらすことができる。これによ
り、レトロウイルスベクターのプロモーター活性と、本
発明のリボザイム発現カセットのプロモーター活性との
干渉を回避することができ、本発明のリボザイム発現カ
セットのプロモーター活性を厳密に制御することができ
るようになる。従って、本発明の特定の実施形態におい
ては、本発明は、本発明のリボザイム発現カセットを含
むレトロウイルスベクターにおいて、その3'LTR中のエ
ンハンサー配列の全部または一部に欠失を有する、前記
レトロウイルスベクターを包含する。
疫不全ウイルス(HIV)感染に関与するRNA(以下、AIDS関
連RNAと呼ぶ)を切断する活性を有するリボザイムをコー
ドする塩基配列を含むリボザイム発現カセットを含むベ
クターと、テトラサイクリンリプレッサー発現用ベクタ
ーとを含むベクターセット、およびテトラサイクリンを
用いて、細胞中の該RNAの発現を阻害することにより、
ヒト免疫不全ウイルスに感染性を有さない細胞を取得す
ることができる。従って、本発明は、ヒト免疫不全ウイ
ルスに対して感染性を有さない細胞を調製する方法、お
よび該方法によって調製された細胞を包含する。該方法
は、(i) 本発明のベクターセットを用いてAIDS関連RNA
を発現する細胞を形質転換またはトランスフェクション
する工程、(ii) 前記形質転換またはトランスフェクシ
ョンされた細胞を回収する工程、および(iii) 前記回収
された細胞をテトラサイクリンの存在下で培養する工
程、を含む。
クション細胞においては、本発明のリボザイム発現カセ
ットのプロモーター活性をテトラサイクリンにより誘導
することにより、リボザイムが発現され、このリボザイ
ムによって該細胞内のAIDS関連RNAが切断される。この
細胞は、HIV感染に関与するタンパク質を産生できなく
なるため、HIV感染に対する抵抗性を獲得することにな
る。従って、特定の実施形態においては、本発明は、本
発明のベクターセットでトランスフェクションされた宿
主細胞をテトラサイクリンの存在下で培養してリボザイ
ムを発現させ、該リボザイムによって、該細胞内のAIDS
関連RNAを切断することを含む、ヒト免疫不全ウイルス
の増殖を抑制する方法を包含する。
連RNAは、HIVの感染および増殖に関与するRNAである
が、該RNAの発現の阻害によって、正常な細胞機能を変
化させないものが好ましい。CCR5は、HIV-1の感染には
必要であるが、正常なケモカインシグナリングには必須
ではないため、該AIDS関連RNAとしてCCR5 mRNAを用いる
ことができる。
む、AIDSを治療または予防するための組成物を提供す
る。例えば、疾患と関連のある細胞または組織を被験体
から取り出し、これを本発明のベクターセットで処理し
た後、該被験体の体内に戻す、いわゆるex vivo法など
の遺伝子治療に使用することができる。
をさらに詳細に説明する。まず、テトラサイクリン誘導
性ヒトtRNAValプロモーターを作製するために、本発明
者らは、テトラサイクリンオペレーター配列(tet O1;[H
illen, 1984 #32])の挿入にとって最良な位置を精査し
た。以前の研究では、このオペレーター配列の挿入のた
めの提唱された位置は、tRNAプロモーターの5'‐フラン
キング領域の付近に存在することが示された([Dingerma
nn, 1992 #7]、[Dingermann, 1992#14]、[Syroid, 1992
#8]、[McBryant, 1995 #9]、[Ulmasov, 1997 #10])。
1個のオペレーター配列をヒトtRNAValプロモーターの5'
‐フランキング領域のいくつかの位置に挿入した(図1
A)。次いで、本発明者らは、テトラサイクリンリプレッ
サー(Tet R)が、Tet Rタンパク質(HeLa TR1;[Ohkawa, 2
000 #12])を構成的に産生するHeLa細胞の細胞系におい
てtet O1-tRNAValプロモーターの転写活性を阻害できる
か否かを試験した。テトラサイクリンの存在下または非
存在下で細胞を24時間培養した後、全RNAを単離し、リ
ボザイム配列の配列に特異的なプローブを用いて、ノー
ザンブロッティングにより分析した。その結果を図1Bお
よび図1Cに示す。
は、テトラサイクリンの存在または非存在に影響されな
かった(図1B;レーン1および2)。一方、tRNAValプロモ
ーターの転写開始部位から位置‐1(タイプI)または‐17
(タイプIV)でのtetO1エレメントの挿入は、野生型の転
写活性と比較してこれらの構築物の転写活性を減少させ
た(約60〜70%)(図1BおよびC;レーン4および10)。さら
に、Tet Rによる抑制は漏れやすかった(図1BおよびC;
レーン3および9)。特に、タイプIII構築物においては、
テトラサイクリンの存在の有無に関係無く、検出された
転写レベルは低かった(図1B;レーン7および8)。このこ
とは、位置‐11でのtetO1エレメントの挿入によりヒトt
RNAValプロモーターの転写活性が破壊されたことを証明
している。対照的に、タイプII構築物の場合、Tet Rに
よる抑制はほぼ完全であり、テトラサイクリンの存在下
での転写活性は、野生型のものの90%以上であった(図1
BおよびC;レーン5および6)。これらの結果から、本発
明者らは、テトラサイクリン誘導性ヒトtRNAValプロモ
ーター誘導体として、タイプII構築物を用いた。
に、本発明者らは、CCR5mRNAのATG開始コドンの付近の
潜在的な標的部位を選択した。何故なら、以前の研究
で、本発明者らは、リボザイムの効率的な部位はこの領
域の付近に認められることが多い([Kawasaki, 1996 #3
7])ことを経験してきたからである。5つの選択した標的
部位を図2Aに示し、対応するリボザイムに、上流から下
流に向かって1〜5の番号を付した。リボザイム配列の各
々を、コンピュータ解析を援用してtet O1-tRNAValプロ
モーター(タイプII)に連結したところ、293細胞におい
て一過性に発現した。リボザイムRNAを含有するこれら
の細胞から単離した全RNAの各々を用いることにより、C
CR5 mRNAの部分的断片に対するin vitro切断アッセイを
行った。in vivoにおいては、リボザイム作用は主にそ
の安定性、切断活性に適した三次構造および標的部位に
依存する([Koseki, 1999 #6])。安定で優れた三次構造
を有するリボザイム構築物はこの実験において高い活性
を示すので、効率的なリボザイム構築物を推定すること
ができる。その結果を図3に示す。CCR5-Rz2、-Rz3、-Rz
4がこの基質RNAに対して切断活性を示し(図3;レーン
2、3および4)、特にCCR5-Rz2および‐Rz3(図2B)が高い
活性を示した。本発明者らは、in vivo実験にこれら2つ
のリボザイムを用いることを決定した。
ーターに対する影響の分析 テトラサイクリンのtet O1-tRNAValプロモーターに対す
る応答を分析するために、本発明者らは、Tet Rタンパ
ク質を構成的に産生するPM1の細胞系を確立した。この
目的のために、本発明者らは、Tet R発現レトロウイル
スベクターを構築した(このレトロウイルスベクターをp
MX-Tet R-IPと呼ぶ;図4A)。PM1細胞へレトロウイルス
を介して遺伝子を導入した後、ピューロマイシンに耐性
を有するいくつかのクローンを取得した。ウェスタンブ
ロッティング分析により、それらのクローンの全てがTe
t Rタンパク質を効率的に産生することを確認した(デー
タは示していない)。それらのクローンのうちの1個をP
M1:TR35と命名した。次いで、CCR5‐Rz2またはCCR5-Rz3
に連結したtet O1-tRNAValプロモーターをコードする遺
伝子を、レトロウイルスを介する遺伝子導入法によりPM
1:TR35に形質導入した。この目的のために、本発明者ら
は、3'LTR除去エンハンサー配列中に176bpの欠失を含む
レトロウイルスベクターを新たに構築した(pJO2;図4
B)。逆転写の後、3'LTRはコピーされ、5'LTRを置換
し、5'LTRプロモーターの不活性化をもたらす。このベ
クターのこの特性は、各プロモーターの干渉を回避する
ことにより、pol III型プロモーターの高い転写活性を
最適に使用するのに重要である([Ilves, 1996 #38])。
さらに、それは5'LTRプロモーターからのリボザイムの
転写を減少させる。
遺伝子導入した後、ブラストサイジンSに耐性を有する
細胞を選別した。これらの細胞においてテトラサイクリ
ンによるtet O1-tRNAValプロモーターからの転写の誘導
をRT-PCRにより確認した(データは示していない)。Tet
Rによるプロモーター活性の抑制は、極めて強力であっ
た。テトラサイクリンなしで培養したtet O1-tRNAValプ
ロモーターPM1:TR35細胞から得たCCR5-Rz2は、全RNAのR
T-PCRの間に増幅されなかった。対照的に、テトラサイ
クリンの存在下では、CCR5-Rz2は明瞭に検出可能であっ
た。これらの結果は、tet O1-tRNAValプロモーターカセ
ットは、ゲノムDNA中に組み込まれても、その特性は変
わらないということを示した。
セットを誘導したPM1:TR35細胞を用いて、本発明者らは
テトラサイクリンについて用量応答曲線を調べた(図5
A)。tet O1-tRNAValプロモーター‐CCR5-Rz2カセットを
誘導したPM1:TR35細胞を、種々の濃度の薬物と共に12時
間培養し、転写レベルを上記の如く定量的RT-PCRにより
分析した。tet O1-tRNAValプロモーターの活性の誘導
は、培地中のテトラサイクリンが5 ng/mlのときに検出
された。テトラサイクリン濃度が増加するにつれて、転
写率の急速な増加が観察され、100 ng/mlで完全に活性
化された。テトラサイクリンのこの濃度では、細胞増殖
における変化も細胞形態の変化も観察されなかった。し
かし、10μg/mlを超える濃度では、細胞増殖が阻害され
た。
導作用の時間経過を分析した。時間0で、本発明者らは
テトラサイクリンを含有しない培地にテトラサイクリン
を添加した(最終濃度5μg/ml)。次いで、種々の時間
で、細胞を回収し、定量的RT-PCRによりtet O1-tRNAVal
プロモーターからの転写レベルについて分析した。図5B
に示したように、テトラサイクリンの添加により、tet
O1-tRNAValプロモーターからの転写が迅速に誘導され
た。テトラサイクリンの添加後1時間以内に転写が検出
され、そのレベルは4時間後には最大に達した。さら
に、この誘導は、培地からテトラサイクリンを除去する
ことにより迅速に抑制された。テトラサイクリンを除去
してから24時間以内に、転写レベルは、テトラサイクリ
ンを含有しない培地中で培養した細胞の転写レベルにま
で急速に低下した(データは示していない)。
決定するため、tet O1-tRNAValプロモーター‐抗CCR5 R
z2またはRZ3カセットを形質導入したPM1:TR35細胞のCCR
5発現をFACSにより分析した。その結果、抗CCR5-Rz2構
築物を形質導入した細胞が、抗CCR5-Rz3構築物を形質導
入した細胞のものと比較して、テトラサイクリンに対す
る良い応答を示した(CCR5発現の約50%の阻害)。しか
し、本発明者らは、この阻害率は十分に高いものではな
いと考え、テトラサイクリンに対する良い応答を示した
群をFACSにより分類した。この群は、テトラサイクリン
に対して良い応答を示した(90%を超える阻害)。従っ
て、本発明者らは、抗CCR5-Rz2構築物を形質導入した細
胞(PM1:TR35‐Rz2と呼ぶ)のこの群をさらなる調査のた
めに用いた。
PM1:TR35‐Rz2細胞におけるCCR5 mRNA量の時間経過を分
析した(図6A、B)。培地にテトラサイクリンを添加して
から48時間以内に、約85%のCCR5 mRNAの低下がPM1:TR3
5‐Rz2細胞において観察された(図6A)。さらに、5日以
内に最大90%の低下が観察された(図6B)。対照的に、テ
トラサイクリンの存在の有無にかかわらず、ベクター‐
対照細胞においてはCCR5 mRNAの顕著な低下は検出され
なかった。しかし、3日後には、いくらかの低下が観察
された(最大20%、図6B)。これはテトラサイクリンの細
胞傷害作用によるものであろう。一方、テトラサイクリ
ンを除去して24時間以内に、テトラサイクリンと共に培
養したPM1:TR35‐Rz2細胞のCCR5 mRNAレベルは、テトラ
サイクリンを含有しない培地中で培養した細胞のCCR5 m
RNAレベルにまで迅速に回復した(データは示していな
い)。
壊の時間経過をFACSにより分析した。同時に、CXCR4の
それについても対照として分析した。図7に示したよう
に、テトラサイクリンの添加後1日目にいくらかのCCR5
の低下が観察された。さらに、この低下は日を追うごと
に進行した。最終的に、CCR5は3日目にはバックグラウ
ンドレベルにまで低下した。ここで、CCR5の低下がその
mRNAの低下に比べて遅い理由は、リボザイムがCCR5に直
接作用しないこと、ならびにその低下の速度がその半減
期および細胞増殖速度に依存することである。対照的
に、CXCR4は、テトラサイクリンの添加に影響されなか
った。この場合、CCR5 mRNAの分析と同様、ベクター‐
対照細胞においてはCCR5の低下もCXCR4の低下も検出さ
れなかった。また、CD4の低下は、いかなる場合も検出
されなかった(データは示していない)。一方、テトラ
サイクリンの除去後36時間以内に、テトラサイクリンと
共に培養したPM1:TR35‐Rz2細胞のCCR5レベルは、テト
ラサイクリンを含有しない培地中で培養した細胞のCCR5
レベルにまで迅速に回復した(データは示していない)。
これらの結果は、抗CCR5リボザイムの機能的活性を、テ
トラサイクリンの存在に依存するこの発現系によって制
御することができることを示している。
特異的制御 PM1細胞は、HIV-1のマクロファージ親和性(R5ウイルス)
株およびT細胞親和性(X4ウイルス)株の双方に対して許
容性であるので、CCR5の発現を特異的に阻害した場合、
R5ウイルスの増殖のみが阻害されるであろう。テトラサ
イクリンリプレッサーを産生する、レトロウイルスベク
ター「pJO2」によって誘導性抗CCR5リボザイム発現カセ
ットを安定的に形質導入されたPM1:TR35細胞のプール
を、テトラサイクリン有りまたはなしの条件で、R5株(A
D8)またはX4株(LAI)でチャレンジした(図8)。感染後6日
間は、テトラサイクリンと共に培養した細胞プールにお
いて、ウイルスから誘導された逆転写(RT)活性を検出す
ることができなかった。感染後13日目に、弱いRT活性が
検出された。しかし、テトラサイクリンなしで培養した
細胞プールにおいては、そのようなRT活性の有意な低下
は観察されなかった。対照的に、テトラサイクリンの有
無にかかわらず、X4株(LAI)でチャレンジした時にはRT
活性の低下は観察されなかった。これらの結果は、R5株
に特異的な増殖の阻害が、細胞表面上のCCR5量の減少に
よるものであることを示している。さらに、抗CCR5リボ
ザイムの機能的活性を制御することにより、ウイルスの
増殖が制御されたことが証明された。
2([Koseki, 1999 #6])を鋳型とするPCRにより構築し
た。アンチセンスプライマーは、5'‐AGCGGATAACAATTTC
ACACAGGAAAC-3'(配列番号7)であり、センスプライマー
は以下のものであった。すなわち、タイプIは、5'‐GAA
TTCAGGACTAGTCTTTTAGGTCAAAAAGAAGAAGCTTTGTAAAGTACTCT
ATCATTGATAGAGTTAACCGTTGGTTTCCGTAGTGTAGTGGTAA-3'(配
列番号8)、タイプIIは、5'‐GAATTCAGGACTAGTCTTTTAGG
TCAAAAAGTACTCTATCATTGATAGAGTTATTTAAGAAGAAGCTTTGTAA
CCGTTG-3'(配列番号9)であり、タイプIIIは、5'‐GAAT
TCAGGACTAGTCTTTTAGGTCAAAAAGAAGTACTCTATCATTGATAGAGT
TATTTAAGCTTGTAACCGTTGGTTTCCGTAGTGTAGT-3'(配列番号
10)であり、タイプIVは、5'‐GAATTCAGGACTAGTCTTTTA
GGTCAAAAAGAAGAAGTACTCTATCATTGATAGAGTTATTTGTAACCGTT
GGTTTCCGTAGTGTAGT-3'(配列番号11)であった。このPC
Rは、96℃で1分間、60℃で30秒間、および72℃で1分間
のインキュベーションを25サイクル含んでいた。Eco RI
およびSal Iで消化した後、各カセットをpUC19のEco RI
−Sal I部位にクローニングした。
AValプロモーター部分の配列をコードするDNA断片を、p
UCdt-Rz2(タイプII)を鋳型として、上流プライマー(5'
‐CGCCAGGGTTTCCCAGTCACGAC-3'(配列番号12))ならび
にリボザイムおよびターミネーターの双方の配列を含む
下流プライマー(CCR5-Rz1、5'-AAAATAAGTCGACGCGATAGAA
AAAAACCCGTTTCCGGGAGAAACTCTTTCGGACCTTTCGGTCCTCATCAG
CCCGGGTGGGTTGGTTTTTGTAGTGCCCGGTTTCGAACCGGGGACCTT-
3'(配列番号13); CCR5-Rz2、5'-AAAATAAGTCGACGCGATA
GAAAAAAACCGTTTCCGGAATCAAGTGTTTCGGACCTTTCGGTCCTCATC
AGAAGTCCAATCGTTGGTTTTTGTAGTGCCCGGTTTCGAACCGGGGACCT
T-3'(配列番号14); CCR5-Rz3、5'-AAAATAAGTCGACGCGA
TAGAAAAAAACCGTTTCCGGAGTGTCAAGTTTCGGACCTTTCGGTCCTCA
TCAGCAATCTATGCGTTGGTTTTTTGTAGTGCCCGGTTTCGAACCGGGGA
CCTT-3'(配列番号15); CCR5-Rz4、5'-AAAATAAGTCGACG
CGATAGAAAAAAACCGTTTCCGGAATGGATTATTTCGGACCTTTCGGTCC
TCATCAGAAGTGTCAACGTTGGTTTTTGTAGTGCCCGGTTTCGAACCGGG
GACCTT-3'(配列番号16); CCR5-Rz5、5'-AAAATAAGTCGA
CGCGATAGAAAAAAACCGTTTCCGGAAATTATTATTTCGGACCTTTCGGT
CCTCATCAGCATCGGAGCCGTTGGTTTTTGTTAGTGCCCGGTTTCGAACC
GGGGACCTT-3'(配列番号17))を用いるPCRによって増幅
した。このPCRは、96℃で1分間、60℃で30秒間、および
72℃で1分間のインキュベーションを25サイクル含んで
いた。Eco RIおよびSal IでPCR産物を消化した後、各断
片をpUC19のEco RI/Sal I部位にクローニングした。こ
れらの一連のCCR5‐リボザイム発現プラスミドを、pUC-
dt(tet O1-2)CCR5-Rzと命名した。全ての構築物を、配
列決定により確認した。
めのレトロウイルスベクタープラスミドを、以下のよう
に構築した。SV40の初期プロモーターおよびブラストサ
イジン耐性遺伝子をコードするpUCSV-BSD([Kimura, 199
4 #33])の0.9kbpのEco RI-Pst I断片を、pSL1180(Amers
ham Pharmacia Biotech UK Ltd., Buckinghmshire, UK)
のEco RI/Pst I部位にクローニングした。Nru Iにより
消化した後、3'MoMuLV LTRを除去したエンハンサー配列
をコードするpSIR(Clontech, Palo Alto, CA)の3.0kbp
のNae I-Sca I断片を、この部位に挿入した。次いで、
このプラスミドのEco RI-Xho I断片を、pUC19のEco RI/
Sal I部位にクローニングした。さらに、5'MoMuLV LTR
および伸長したウイルスのパッケージングシグナルを含
有するpMX([Onishi, 1996 #34])の2.3kbpのSca I-Eco R
I断片も、このプラスミドのEco RI/Sca I部位に挿入し
た。Eco RI消化およびクレノー断片処理の後、クローニ
ング部位を含有するDNA断片を連結した。このDNA断片と
は、以下のように構築したものである。すなわち、pHSG
396(Takara Shuzo Inc., Kyoto, Japan)のクローニング
部位の領域を、上流プライマー(5'‐AAAAAAGATATCCAGCT
GGCGAAAGGGGGATGTGCT-3'(配列番号18))および下流プ
ライマー(5'‐AAAAAAGATATCCAGCTGGCACGACAGGTTTCCCGA-
3'(配列番号19))を用いてPCRにより増幅し、次いでEc
o RVにより消化した。得られたレトロウイルスベクター
プラスミドを、pJO 2(図4B)と命名した。
ベクターを、tRNAValプロモーター‐リボザイムカセッ
トを含むpUC-dt(tet O1-2)CCR5-Rzの各Eco RI-Sal I断
片をpJO 2のEco RI/Xho I部位に挿入することによって
構築した。Tet R-発現のためのレトロウイルスベクター
を、以下のように構築した。すなわち、pRL-CMV-Tet R-
IP([Ohkawa, 2000 #12])のNhe I-Not I断片を、pHG396
のNhe I/Not I部位にクローニングした後、このプラス
ミドのBgl II-Not I断片を、pMXのBam HI/Not I部位に
クローニングした。得られたプラスミドを、pMX-Tet R-
IP(図4A)と命名した。
細胞(スタンフォード大学医学部、微生物・免疫学科、分
子薬理学科のGarry P. Nolan 博士から供与された。)
を、10%Tet系推奨ウシ胎児血清(Clontech, Palo Alto,
CA)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco'
s modified Eagle's medium; DMEM, LifeTechnologies
Inc., Gaithersburg, MD)中で維持した。PM1細胞([Luss
o, 1995 #35])を、25 mM HEPESおよび10%Tet系推奨ウ
シ胎児血清を補足したRPMI 1640培地(Life Technologie
s Inc.)中で維持した。テトラサイクリン応答性tRNAVal
プロモーターの活性を誘導するために、塩酸テトラサイ
クリン(Sigma Inc., St.Louis, MO)を培地に(通常5μg/
mlで)添加した。Lipofectine(Life Technologies Inc.)
またはFuGENE 6(Roche Molecular Biochemicals, India
napolis, IN)を用いて、製造者の指示に従ってトランス
フェクションを実施した。
照を、6ウェルプレート中で2x105細胞/ウェルで培養し
た。それらを2日間培養した。3日目に、細胞密度を3x10
5細胞/ウェルに調整し、培地中に適当な濃度のテトラ
サイクリンを添加した。培地交換および細胞密度の調整
(3x105細胞/ウェル)を、2日ごとに行った。RNA分析ま
たはFACS分析のための細胞を、適当な時点でサンプリン
グした。
フェクションの前に、6ウェルの培養プレートで2 mlのD
MEM中で約20時間培養した。2μgのDNAを、100mlのOptiM
EM培地(Life Technologies Inc., Gaithersburg, MD)中
に希釈した3 mlのFuGENE 6と混合し、室温にて25分間イ
ンキュベートし、培地に添加した。37℃にて48時間後、
レトロウイルスを含有する培地を0.45 mmフィルターで
濾過した。6x105個のPM1細胞を、35 mmのRetroNectinプ
レート(Takara Shuzo Inc., Kyoto, Japan)上の3 mlの
ウイルス上清(1.5 ml)およびRPMI 1640培地(1.5 ml)中
で培養した。32℃にて24時間インキュベートした後、培
地を新鮮なRPMI 1640培地に交換し、プレートを37℃に
てインキュベートした。24時間後、適当な抗生物質(1μ
g/mlのピューロマイシンまたは15μg/mlのブラストサイ
ジンS)を培地に添加し、ウイルス感染細胞を選別した。
ロロホルム法([Chomczynski, 1987 #36])により調製し
た。ノーザンブロッティング分析を、リボザイムに特異
的なプローブ(5'‐CTCATCAGTGTTGTGT‐3'(配列番号2
0))またはU6 snRNAに特異的なプローブ(5'‐TGCGCAGGG
GCCATGCTAATCTTCTCTGTA-3'(配列番号21))を用いて、
以前に記載された([Kawasaki, 1996 #37])ように行っ
た。メンブラン上の放射活性の可視化および定量化を、
Bio-Image Analyzer(BAS2000; Fuji Film, Inc., Toky
o, Japan)を用いて行った。
‐フランキング領域の2次構造を推測し、コンピュータ
プログラム(Mulfold Biocomputing Office, Biology De
partment, Indiana University, Bloomington)により描
画した。
れた([Koseki, 1999 #6])ように行った。全RNAを、各リ
ボザイム発現プラスミドでトランスフェクトした293細
胞から単離した。CCR5 mRNAの5'領域をコードする基質R
NAを、以前に記載された([Koseki, 1999 #6])ように、T
7 RNAポリメラーゼin vitro転写法によって調製した。
リボザイムの標的配列をコードする、転写のための鋳型
DNAを、pc.CCR5(NIH AIDS Research and Reference Rea
gent Program, カタログ番号3325)を鋳型として、上流
プライマー(5'‐AATTCTAATACGACTCACTATAAAGAAACTCTCCC
CGGGTGGAACAAGA-3'(配列番号22))および下流プライマ
ー(5'‐GTGAGTAGAGCGGAGGCAGGAGGC-3'(配列番号23))
を用いてPCRにより増幅した。
た。すなわち、CCR5については、細胞(1x106個)を30μl
のPBS/5%ウシ胎児血清中に懸濁し、マウス抗ヒトCCR5モ
ノクローナル抗体(mAb)(2D7)(Pharmingen Mississauga,
Ontario)と共に4℃にて30分間インキュベートした。同
じバッファーで2回洗浄した後、同じ条件でラット抗マ
ウスIgG2a‐ビオチンmAb(R19-15)(Pharmingen)と共にイ
ンキュベートした。次いで、2回洗浄した後、ストレプ
トアビジンPE(Pharmingen)と共にインキュベートした。
CXCR4については、細胞を、上記の抗ヒトCCR5 mAbの代
わりにマウス抗ヒトCXCR4 mAb(12G5)(Pharmingen)と共
にインキュベートした。CD4については、細胞をマウス
抗ヒトCD4-PE mAb(RPA-T4)(Pharmingen)と共にインキュ
ベートした。FACScan(Becton Dickinson)を用いてフロ
ーサイトメトリーを行った。
化 抗CCR5リボザイムおよびCCR5 mRNAを、PE TaqMan One s
tep RT-PCR法[TaqManEZ RT-PCR Kit(PE Applied Biosys
tems, Foster City, CA)およびPrism 7700 Sequence De
tection System(PE Applied Bio-systems)]を用いて定
量化した。以下のようなオリゴヌクレオチドプライマー
およびプローブを、Primer Express Softwareを用いて
各配列から選択した。すなわち、CCR5のための順方向プ
ライマー(CCR5-F)(5'‐GCTGGTCATCCTCATCCTGATAA-3'(配
列番号24))、CCR5のための逆方向プライマー(CCR5‐
R)(5'‐AGGAAAAACAGGTCAGAGATGGC-3'(配列番号25))、
CCR5のための蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブ(CCR
5Tp)(5'‐Fam‐TGCAAAAGGCTGAAGAGCATGACTGACTGACTGACA
-Tamra-3'(配列番号26))、抗CCR5 Rz 2のための順方
向プライマー(CCR5-Rz 2-F)(5'-TCGAAACCGGGCACTACAA-
3'(配列番号27))、抗CCR5 Rz 2のための逆方向プライ
マー(CCR5-Rz 2-R)(5'-GGAATCAAGTGTTTCGGACCTT-3'(配
列番号28))、抗CCR5 Rz 2のための蛍光標識オリゴヌ
クレオチドプローブ(CCR5‐Rz 2-Tp)(5'-Fam-AACCAACGA
TTGGACTTCTGATGA-Tamra-3'(配列番号29))である。ヒ
トグリセルアルデヒド3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(hGAP
DH)のmRNAを内部対照として測定した。
胞を、感染の前にテトラサイクリン(5μg/ml)と共に5日
間培養した。HIV-1マクロファージ親和性AD8ウイルス(T
heodore, 1996#47)保存液(10 virons/mlの力価)を用い
て、適する感染多重度(MOI)で細胞に感染させた。T細胞
親和性LAIウイルス(Peden, 1991#48)保存液(10 virons/
mlの力価)を用いて、適当な感染多重度(MOI)で細胞に感
染させた。ウイルスおよび細胞を一晩インキュベートし
た後、培地を交換した(0日目)。ウイルス感染後の適当
な日に上清を回収した。各上清中のウイルスの逆転写酵
素活性を以前に記載された[Kato, 1999 #44]ように測定
した(RTアッセイ)。
ム、アンチセンスRNAまたは囮などの機能的RNA分子の発
現に好適であることを示した。何故なら、この型のプロ
モーターは、小さいRNAの転写に適しているだけでな
く、その使用により、in vivoにおける機能的RNA分子の
設計に役立つコンピュータを用いた折り畳みによって二
次構造の推定も容易になるからである([Koseki, 1999 #
6])。また、他の研究者らは、機能的RNA分子の発現系の
ためのpol III系を用いて成功した研究を報告した([Yam
ada, 1994 #30]、[Thompson, 1995 #39]、[Du, 1998 #4
0])。しかし、ほとんど全てのpol III系は、構成的な発
現をもたらすので、細胞における阻害作用が本当に機能
的RNAによるものであるかどうかを判定するのは難し
い。そのような理由から、本発明者らは、テトラサイク
リンにより転写活性を調節することができるヒトtRNA
Valプロモーターを用いて、新規なリボザイム発現系を
開発した。さらに、レトロウイルスベクターを用いる
と、この系を単球細胞系に効率的に送達することができ
る。例えば、これらの系を用いて、本発明者らはT細胞
系において抗CCR5リボザイムの機能的活性を制御するこ
とができた。
の利点を有する。すなわち、(1)テトラサイクリンに対
する迅速な応答。テトラサイクリンを添加して1時間以
内に、転写の効率の増大が観察され、4時間以内に最大
レベルに到達する(図5B)。さらに、テトラサイクリンを
除去すると、転写の効率は24時間以内に基底レベルにま
で迅速に低下する(データは示していない)。(2)タンパ
ク質産生に用いられる調節可能なRNAポリメラーゼII型
プロモーターに比べてより高い転写活性。本発明者らの
発現系の転写能力は、野生型tRNAValとほぼ同じであっ
た(図1BおよびC)。(3)新規なレトロウイルスベクターを
用いる送達系。リボザイムの効率的な使用には、レトロ
ウイルスを介する送達系が最も有用な方法であると考え
られる。Ilvesらは、pol III型プロモーターにより駆動
される発現カセットを、レトロウイルスのいくつかの領
域中に挿入し、それらの転写効率を比較した([Ilves, 1
996 #38])。その結果、彼らは、3'LTRのU3領域中への該
発現系の挿入が最も効率的な方法であると結論付けた。
ウイルス構築物のゲノムDNA中への組込みステップの
間、発現カセットは5'LTRのU3領域中にコピーされる。
5'LTRのU3領域中にコピーされた発現カセットは、5'LTR
プロモーターによる妨害を回避されるので、このコピー
された発現カセットは細胞中で効率的に機能する。本発
明者らは、同じ領域中に本発明者らの発現カセットを挿
入したが、感染性ビリオンの産生は観察されなかった。
かかる戦略の代わりに、本発明者らは、3'LTRのエンハ
ンサー配列をコードするR領域の一部を欠失させること
により、5'LTRプロモーターを不活性化し、レトロウイ
ルスベクターpJO2を得た。pJO2により送達された発現カ
セットは、低いバックグラウンド、テトラサイクリンに
対する良い応答、および良い転写効率を示した。
よび送達系を、CCR5 mRNAのためのリボザイムの機能的
活性の制御に用いた。その結果、マクロファージ親和性
HIV-1の侵入のコリセプターとして作用するCCR5の発現
を、ダウンレギュレートすることができた(図7)。さら
に、本発明者らは、CCR5の発現を制御することにより、
マクロファージ親和性ウイルスの増殖を制御することに
成功した。これらの結果は、この戦略を用いることによ
り、T細胞親和性ウイルスまたはそれらの両方の増殖を
同時に制御することも可能であり、本発明者らの系はウ
イルスの型と疾患の進行との間の相関を研究するための
有用なツールであることを示している。
の発現は、HIV感染を制御するための潜在的な遺伝子治
療の戦略を提供する。疾患の早期および中期において、
マクロファージ親和性ウイルス(R5ウイルス)は、疾患の
進行に重要な役割を果たす(Liu, 1996#20; Samson, 199
6#23)。従って、この型のウイルスの拡大を妨げること
は、治療にとって重要な意味を持つ。この点から、受容
体のダウンレギュレーションまたはリガンド‐受容体の
遮断は、潜在的な治療のアプローチである([Berger, 19
99 #18])。ウイルス感染実験において、CCR5のダウンレ
ギュレーションは、AD8ウイルスの感染性の完全な遮断
を引き起こさなかった(図8)。しかし、異型接合体CCR5
Δ32/CCR5遺伝子型(西欧コーカサス人種の集団の約20
%)においては、疾患の進行はより遅く起こる([Dean, 1
996 #21][Huang, 1996 #22]、[Michael, 1997 #24]、[S
amson, 1996 #23])ので、このアプローチが、他の抗レ
トロウイルス戦略と組合わせて疾患の開始を遅らせるの
に効率的な方法であることが期待される。
ムの発現は、細胞の増殖挙動または形態に変化を引き起
こさなかった。また、最近、Bai Jらにより、造血幹細
胞における抗CCR5リボザイムの発現は、後続の系列特異
的な分化および成熟に有害な作用を引き起こさないこと
が報告された([Bai, 2000 #41])。さらに、遺伝子治療
のためには、リボザイム発現カセットを、末梢細胞また
は造血幹細胞中に形質導入しなければならない。tRNAプ
ロモーターは偏在的に機能するので、様々な細胞型にお
いて有用であり得る。さらに、本発明者らのレトロウイ
ルスベクターpJO2は、tRNAプロモーターの高い転写能力
を阻害しない。そのような理由から、本発明者らの発現
系および送達系は好適であるだろう。
性は、それが遺伝子治療に用いるのに有用である可能性
があることを示している。さらに、調節可能なヒトtRNA
Valプロモーターは、発達もしくは分化のプロセス、お
よび発癌メカニズムの解明における各遺伝子の役割の研
究のために他のリボザイム構築物の発現を制御するため
の有用なツールになり得る。本明細書中で引用した参考
文献は以下のとおりである。
オチド配列 配列番号2−CCR5 mRNAの部分配列 配列番号3−人工配列の説明:CCR5 mRNAのためのリボ
ザイムのヌクレオチド配列 配列番号4−人工配列の説明:CCR5 mRNAのためのリボ
ザイムのヌクレオチド配列 配列番号5−人工配列の説明:本発明のリボザイム発現
カセットのヌクレオチド配列 配列番号6−人工配列の説明:本発明のリボザイム発現
カセットのヌクレオチド配列 配列番号7−人工配列の説明:アンチセンスプライマー 配列番号8−人工配列の説明:センスプライマー 配列番号9−人工配列の説明:センスプライマー 配列番号10−人工配列の説明:センスプライマー 配列番号11−人工配列の説明:センスプライマー 配列番号12−人工配列の説明:上流プライマー 配列番号13−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号14−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号15−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号16−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号17−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号18−人工配列の説明:上流プライマー 配列番号19−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号20−人工配列の説明:リボザイム特異的プロ
ーブ 配列番号21−人工配列の説明:U6 snRNA特異的プロー
ブ 配列番号22−人工配列の説明:上流プライマー 配列番号23−人工配列の説明:下流プライマー 配列番号24−人工配列の説明:CCR5-Fのヌクレオチド
配列 配列番号25−人工配列の説明:CCR5-Rのヌクレオチド
配列 配列番号26−人工配列の説明:CCR5Tpのヌクレオチド
配列 配列番号27−人工配列の説明:CCR5-Rz 2-Fのヌクレ
オチド配列 配列番号28−人工配列の説明:CCR5-Rz 2-Rのヌクレ
オチド配列 配列番号29−人工配列の説明:CCR5-Rz 2-Tpのヌクレ
オチド配列
HeLa TR1細胞における転写のTetリプレッサー(Tet R)に
よる阻害を示す。(A)上段:tet O1-tRNAValプロモータ
ー構築物の模式図。「+1」は、転写の主要な開始部位を
示す。「Aボックス」および「Bボックス」は、共通tRNA
プロモーター配列であり、「ターミネーター」は、TTTT
Tからなる終止シグナル配列である。「リボザイム」
は、リボザイム配列を示す。下段:第1行目は、野生型
ヒトtRNAValプロモーターの5'フランキング配列を示
す。他の行は、テトラサイクリンオペレーター配列(tet
O1)を挿入した構築物(タイプI〜タイプIV)の5'フラン
キング配列を示す。「*」は、開始配列の主要な部位を
示す。(B)HeLa TR1細胞におけるtet O1-ヒトtRNAValプ
ロモーターからの転写物のノーザンブロット分析。各タ
イプのtRNAValプロモーターで一過性にトランスフェク
トされたHeLa TR1細胞を、テトラサイクリンと共に(+)
またはテトラサイクリンなし(-)に培養した。次いで、
各培養物から全RNAを調製した。各タイプのプロモータ
ーからの転写物を、該転写物に特異的なオリゴヌクレオ
チドプローブを用いて検出した。内部対照として、ヒト
U6 snRNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用い
て同一のメンブラン上で、U6 snRNAの存在も試験した。
(C)種々のヒトtRNAValプロモーターからの転写速度の比
較。各値は、下記のように測定されたものである。すな
わち、ノーザンブロット後のメンブラン上の各バンドの
放射活性を、蛍光イメージによりBに示されたオートラ
ジオグラムから定量した。その後、内部対照として用い
たU6 snRNAのバンドを参照して値を正規化した。
R5リボザイムの標的部位を示す。(B)tRNAVal抗CCR5リボ
ザイム-2(Rz-2)および-3(Rz-3)のコンピュータを用いた
折り畳みにより推定された二次構造を示す。これはin v
itroにおいて高い切断活性を示した(図3)。
により媒介されたCCR5 mRNAの部分的断片のin vitroに
おける切断を示す。CCR5 mRNAのヌクレオチド1〜141に
対応する基質RNAを、T7 RNAポリメラーゼ転写により調
製した。抗CCR5リボザイムの各々を293細胞からの全RNA
として調製した。293細胞は、抗CCR5リボザイム発現カ
セットをコードするプラスミドDNAの各々でトランスフ
ェクトしたものである。レーン:Mr、マーカー;S、基
質RNA;V、ベクター対照;1、抗CCR5 Rz-1;2、抗CCR5
Rz-2;3、抗CCR5 Rz-3;4、抗CCR5 Rz-4;5、抗CCR5 Rz
-5。
t R-IP」の構造を示す。(B)抗CCR5リボザイム発現レト
ロウイルスベクター「pJO2」を示す。ゲノムDNA中に組
み込まれた後のLTRプロモーターとtRNAValプロモーター
との間の干渉を回避するため、3'LTR領域のエンハンサ
ー配列に対応する配列を欠失させた。得られたベクター
を「pJO2」と命名した。Ψ、パッケージングシグナル;
IRES、内部リボソーム侵入部位;NLS、核局在化シグナ
ル;del、エンハンサー配列の欠失;BSDr、ブラストサ
イジン耐性遺伝子;puror、ピューロマイシン耐性遺伝
子;P SV40e、SV40初期プロモーター。
示す。レトロウイルスベクター「pJO2」により誘導性抗
CCR5リボザイム発現カセットを安定的に形質導入したPM
1:TR35細胞のプールを、種々の濃度のテトラサイクリン
と共に24時間培養した。これらの細胞から調製した全RN
Aにおけるtet O1-tRNAValプロモーター(タイプII)から
転写された抗CCR5リボザイムを、実験方法に記載したと
おりの定量的RT-PCRにより分析した。(B)Aと同じ細胞プ
ールにおけるテトラサイクリンによる誘導の時間経過。
種々の時間、テトラサイクリンと共に(●)またはテトラ
サイクリンなし(○)で細胞を培養した。転写された抗CC
R5リボザイムを、Aと同様に分析した。
入したPM1:TR35細胞におけるCCR5 mRNA量の時間経過。
各細胞をテトラサイクリンと共に(●および■)またはテ
トラサイクリンなし(○および□)で培養し、所与の時間
に回収した(短期間、A;長期間、B)。各細胞から調製し
た全RNAにおけるCCR5 mRNA量を、定量的RT-PCRにより分
析した。□および■は、リボザイム(pJO2-CCR5 Rz)の結
果を示す。○および●は、ベクター対照(pJO2)の結果を
示す。時間0におけるPM1:TR35(pJO2-CCR5Rz)の値を100
%に調整した。
入したPM1:TR35細胞の表面上でのCCR5およびCXCR4発現
のFACS分析を示す。pJO2またはpJO2-CCR5 Rzレトロウイ
ルスベクターを形質導入したPM1:TR35細胞を、テトラサ
イクリンの存在下または非存在下で培養した。各細胞を
所与の時点で回収し、FACS分析した。ライン:0日目、
緑;1日目、赤;2日目、青;3日目、黄;陰性対照(第1
抗体なし)、紫。
質導入したPM1細胞におけるHIV-1 R5およびX4タイプ
ウイルスの感染実験結果を示す。pJO2-CCR5Rzレトロウ
イルスベクターを形質導入したPM1:TR35細胞を、R5株
AD8またはX4株LAIに感染させた。ウイルス感染の前に、
細胞をテトラサイクリンの非存在下または存在下(5mg
/ml)で5日間培養した。0日目に、各細胞を各ウイル
スに感染させ、テトラサイクリンと共に(▲)またはテ
トラサイクリンなし(○)に培養した。xはモック対照
を示す。ウイルス感染後、図に示してある日に上清を回
収し、RTアッセイに供した。
Claims (31)
- 【請求項1】 上流側から順にテトラサイクリンオペレ
ーター、1つまたは複数のプロモーター、およびリボザ
イムをコードするDNA配列を含むリボザイム発現カセッ
トであって、前記テトラサイクリンオペレーターが、プ
ロモーターの転写開始部位から5'側に2〜10ヌクレオチ
ドの位置に存在している、前記リボザイム発現カセッ
ト。 - 【請求項2】 前記テトラサイクリンオペレーターがテ
トラサイクリンオペレーター1(tetO1)である、請求項
1に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項3】 前記プロモーターがpolIIIプロモーター
である、請求項1に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項4】 前記polIIIプロモーターがtRNAプロモー
ターである、請求項3に記載のリボザイム発現カセッ
ト。 - 【請求項5】 前記tRNAプロモーターがtRNAValプロモ
ーターである、請求項4に記載のリボザイム発現カセッ
ト。 - 【請求項6】 前記テトラサイクリンオペレーターと前
記プロモーターからなる配列が、配列番号1の塩基配列
を有する、請求項1に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項7】 前記リボザイムが、疾患に関与するRNA
を切断する活性を有する、請求項1に記載のリボザイム
発現カセット。 - 【請求項8】 前記疾患が、癌、感染症、炎症性疾患を
含む、請求項7に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項9】 前記疾患が、後天性免疫不全症候群(AID
S)である、請求項7に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項10】 前記疾患に関与するRNAがCCR5 mRNAで
ある、請求項7に記載のリボザイム発現カセット。 - 【請求項11】 前記リボザイムが、配列番号2に記載
のCCR5 mRNAの部分配列において、CUC(37〜39)、GUC(69
〜71)、GUC(74〜76)、AUC(62〜64)およびAUA(98〜100)
からなる群より選択される塩基配列の直後でCCR5 mRNA
を切断する活性を有する、請求項7に記載のリボザイム
発現カセット。 - 【請求項12】 前記リボザイム発現カセットの3'末端
にターミネーターを含む、請求項1に記載のリボザイム
発現カセット。 - 【請求項13】 前記ターミネーターがTTTTTで示され
る塩基配列を含む、請求項12に記載のリボザイム発現
カセット。 - 【請求項14】 配列番号3に示される塩基配列を含
み、前記CCR5 mRNAを切断する活性を有するRNA分子。 - 【請求項15】 配列番号4に示される塩基配列を含
み、前記CCR5 mRNAを切断する活性を有するRNA分子。 - 【請求項16】 請求項1〜13のいずれか1項に記載
のリボザイム発現カセットを含むベクター。 - 【請求項17】 前記ベクターがウイルスベクターであ
る、請求項16に記載のベクター。 - 【請求項18】 前記ウイルスベクターが、レトロウイ
ルスベクターである、請求項17に記載のベクター。 - 【請求項19】 前記レトロウイルスベクターにおい
て、その3'LTR中のエンハンサー配列の全体または一部
に欠失を含む、請求項18に記載のベクター。 - 【請求項20】 請求項16〜19のいずれか1項に記
載のベクターと、テトラサイクリンリプレッサー(Tet
R)発現用ベクターとを含むベクターセット。 - 【請求項21】 前記ベクターのいずれかがレトロウイ
ルスベクターである、請求項20に記載のベクターセッ
ト。 - 【請求項22】 前記ベクターがいずれもレトロウイル
スベクターである、請求項20に記載のベクターセッ
ト。 - 【請求項23】 前記ベクターセットが疾患を治療また
は予防するためのものである、請求項20〜22のいず
れか1項に記載のベクターセット。 - 【請求項24】 前記疾患が後天性免疫不全症候群(AID
S)である、請求項23に記載のベクターセット。 - 【請求項25】 請求項20〜24のいずれか1項に記
載のベクターセットで形質転換またはトランスフェクシ
ョンされた宿主細胞。 - 【請求項26】 前記宿主細胞が動物細胞である、請求
項25に記載の宿主細胞。 - 【請求項27】 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して
感染性を有さない細胞を調製する方法であって、(i) 請
求項20〜24のいずれか1項に記載のベクターセット
を用いてCCR5を発現する細胞を形質転換またはトランス
フェクションする工程、(ii) 前記形質転換またはトラ
ンスフェクションされた細胞を回収する工程、および(i
ii) 前記回収された細胞をテトラサイクリンの存在下で
培養する工程、を含む、前記方法。 - 【請求項28】 HIV感染性の請求項25または26に
記載の宿主細胞をテトラサイクリンの存在下で培養して
リボザイムを発現させ、該リボザイムによって、該細胞
内のAIDS関連RNAを切断することを含む、ヒト免疫不全
ウイルスの増殖を抑制する方法。 - 【請求項29】 前記AIDS関連RNAがCCR5 mRNAである、
請求項28に記載の方法。 - 【請求項30】 請求項20〜24のいずれか1項に記
載のベクターセットを含む、AIDSを治療または予防する
ための組成物。 - 【請求項31】 請求項27に記載の方法により調製さ
れたHIV非感染性細胞。
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---|---|---|---|
JP2001067253A JP4663142B2 (ja) | 2001-03-09 | 2001-03-09 | リボザイム発現系 |
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JPN6010054621, 武部豊, "HIV−1エントリー・コレセプターを標的とした新規リボザイムの設計とその発現調節システムの開発", 平成9年度健康保持増進のための健康管理・免疫低下防止研究事業研究報告書, 19980714, p. 9−12, 財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 * |
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