JP2002162198A - 模擬弾丸を有する空包 - Google Patents

模擬弾丸を有する空包

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Abstract

(57)【要約】 【課題】実包とほぼ同じの重量と形状とを有し、実包射
撃と同様な、射撃音と操作性とが得られるうえ、安全に
連続して射撃でき、さらに火砲内外にほとんど残渣を残
留させない、簡便な空包を提供する。 【解決手段】空包1は、薬室24の内壁が先細りの内錘
形を形成している火砲2に装填される空包であって、該
内錘と適合する先細りの外錘形を形成した焼尽性薬莢筒
体14が金属製莢底13により塞がれ、該薬莢筒体14
に充填されて火管11と接触している発射薬15が押え
蓋16で覆われ、流動性物質17の入ったボトル18か
らなる模擬砲弾19が該薬莢筒体14の先端を閉塞しつ
つ該押え蓋16を押えつけている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、実包射撃をするこ
となく、砲弾射撃演習や公開演習の射撃をするための空
包に関するものである。
【0002】
【従来の技術】空包は、火砲による砲弾射撃演習や公開
演習の射撃のデモンストレーションの際に、実包を用い
ることなく、実包射撃さながらの射撃音を発生させて臨
場感を得るために使用されるものである。
【0003】実包射撃には、図3に示すように、火砲2
の砲筒25へ繋がる薬室24の先細り内錘形の内錘斜面
に、実包40の薬莢38の外壁錘があたるように装填さ
れる。発射薬の充填された薬莢38の先端には、弾丸3
9が挿入されている。火砲2砲尾の閉鎖器22を閉じた
後、発射薬の燃焼により発生した燃焼ガスの圧力で弾丸
39が発射される。弾丸39の発射の強い反作用によ
り、薬莢38は外部へ排出される。すぐさま次弾の実包
を装填して、連続射撃を行う。
【0004】空包射撃には、実包射撃と同じ火砲2が使
用される。従来の空包30は、同図の実線で示すよう
に、実包の薬莢38の上半部を切除した短い薬莢33に
小量の発射薬35が充填されている。実包射撃に似た発
射音を発生させるため、密閉性と圧力とを保持する相当
量のフェルト36が発射薬35を覆っている。薬莢33
先端には、プラスチックやコルクや紙で形成された軽量
な空包栓37が挿入されている。射撃の際、薬室24内
に空包30を装填し、薬莢33のフランジ32を火砲2
に係合させ、砲尾を閉鎖器22で閉鎖する。薬莢33の
火管31により発射薬35が燃焼して燃焼ガスを発生す
る。そのとき射撃音が発生すると同時に、衝撃で破断し
たフェルト36や空包栓37の小片は、燃焼ガスの圧力
で砲筒25先端から吐出され飛散する。
【0005】この破断小片が思いもよらない距離や方向
に飛散し、その小片尖先は公開演習の観客等に当たる虞
があるので、空包射撃をする場所は広大な演習場に限定
されてしまう。そのうえ破断小片は、その回収が面倒で
あり、残留してしまうと環境保全の面から問題となる。
【0006】この破断小片が軽量でありまた空包30の
発射薬量が少量であるので、たとえ破断小片は火砲前方
の器物等に衝突しても損壊させるほどの威力がない。そ
の反面、軽量な空包栓37が破断して吐出されるだけで
は、実包の弾丸発射のような強い反作用を生じないの
で、薬莢33が薬室24内に残存してしまう。薬莢33
を取除く操作は、煩雑なうえ連続射撃の妨げとなってし
まう。
【0007】さらにこの空包30は実包40に比べ短く
て軽いため、長くて重い実包40の使用を想定した射撃
演習には不適当である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、実包とほぼ
同じの重量と形状とを有し、実包射撃と同様な、射撃音
と操作性とが得られるうえ、安全に連続して射撃でき、
さらに火砲内外にほとんど残渣を残留さない、簡便な空
包を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めになされた本発明の空包は、実施例に対応する図面を
参照して説明すると、以下のとおりである。
【0010】本発明の空包1は、図1に示すとおり、薬
室24の内壁が先細りの内錘形を形成している火砲2に
装填される空包であって、該内錘と適合する先細りの外
錘形を形成した焼尽性薬莢筒体14が金属製莢底13に
より塞がれ、該薬莢筒体14に充填されて火管11と接
触している発射薬15が押え蓋16で覆われ、流動性物
質17の入ったボトル18からなる模擬砲弾19が該薬
莢筒体14の先端を閉塞しつつ該押え蓋16を押えつけ
ている。
【0011】ボトル18は、内面側が樹脂でコーティン
グされた厚紙で成型されたものであることが好ましい。
この樹脂は例えば生分解性樹脂、耐水性樹脂が用いられ
る。
【0012】流動性物質17が、水および水溶液のいず
れかの液体、水と砂とからなるスラリー、澱粉および寒
天およびカルボキシメチルセルロースのいずれかと炭酸
カルシウムと水とからなるゲル、澱粉およびタルクのい
ずれかの粉体、穀類および固形肥料および生分解性樹脂
のいずれかの粒体から選ばれる一種類であることが好ま
しい。経済性の観点から流動性物質17が水であると一
層好ましい。
【0013】ボトル18や流動性物質17を形成するこ
れらの材質はいずれも無害である。空包射撃の際、砲筒
25の先端から砲外へ吐出する模擬弾丸19の破裂した
ボトルやその破断小片、および砲外へ出たボトルから流
出する流動性物質は、地上に落下する。それらのうち例
えば水はそのまま大地に吸収され、紙や澱粉や生分解性
樹脂等の有機物は微生物によって分解されて大地に吸収
される。そのため空包射撃後に模擬砲弾19やその破断
小片を回収したり清掃したりする必要がなく、環境保全
上も問題はない。
【0014】空包の発射薬15は実包の発射薬と、同種
の速燃性物質を同量用いることが好ましい。これの燃焼
により、実包射撃と同様な音響や振動の効果、および充
分な圧力の燃焼ガスが得られる。
【0015】この空包1の重量および形状は、実包40
(図3参照)とほぼ同じである。
【0016】空包1の模擬弾丸19が十分な重量を有し
ているため、模擬弾丸19発射の強い反作用が得られ
る。この反作用により莢底13が排出されるので、迅速
かつ簡便に次弾の空包の装填ができる。
【0017】一方、模擬弾丸19は砲筒25内で旋転さ
れながら砲外へ発射される。燃焼の衝撃により破裂した
ボトル18の裂け目から流動性物質17を振り撒きなが
ら、模擬砲弾19は至近距離に落下するので、安全であ
る。
【0018】薬莢筒体14や押え蓋16は、燃焼性が高
く残渣の残らない焼尽性の材質であるニトロセルロース
を主成分とした成型原材を圧搾成型したものを用いるこ
とが好ましい。空包射撃の際、発射薬15の燃焼熱によ
り、薬莢筒体14や押え蓋16は残渣を残すことなく完
全燃焼する。そのため火砲2内の清浄が維持される。
【0019】押え蓋16は、空包1の製造途中を示して
いる図2のとおり、焼尽性円板であって、円板の中心か
ら外周に向かって切り込み21が設けられていることが
好ましい。押え蓋16は、切り込み21を捲き込んで笠
状にして、先細りになっている薬莢筒体14の上端の開
口から挿入された後、自らの復元力により円板状に戻っ
て、発射薬15を覆う。捲き込み難い厚めの押え蓋1枚
を用いるよりも、捲き込み易い薄めの複数枚の押え蓋を
用いる方が好ましい。作業効率がよいうえ、発射薬着火
時の密閉性と発射薬燃焼開始直後の圧力保持性とを一層
高めることができるからである。これにより実包射撃時
と同音量の射撃音と、模擬弾丸19を発射するのに充分
な燃焼ガスの圧力とが得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を詳細に説
明する。図1は、本発明を適用する空包1の実施例を示
す正面部分断面図である。
【0021】この空包1は、薬室24の内壁が先細りの
内錘形を形成している火砲2に装填されて使用されるも
のである。
【0022】この空包1は、焼尽性薬莢筒体14と、こ
の薬莢筒体14に接続されその下端を塞いでいる金属製
莢底13と、この薬莢筒体14に挿入されその上端を塞
いでいる模擬弾丸19とからなっている。
【0023】焼尽性薬莢筒体14の外壁が、薬室24の
内錘斜面にあたる、先細りの外錘形を形成している。焼
尽性薬莢筒体14は、ニトロセルロースを主成分としパ
ルプ、粘結剤を含む成型原材を圧搾成型したものであ
る。この薬莢筒体14の下端は、わずかに絞られ、莢底
13に接続されている。薬莢筒体14と莢底13とが接
着剤で接着されることにより、薬莢筒体14の下端は塞
がれている。
【0024】莢底13の中央に螺子穴があけられてい
る。火管11が、この螺子穴に螺合して莢底13を貫通
している。莢底13の外周にはフランジ12が設けられ
ている。
【0025】焼尽性薬莢筒体14には多少の余裕をもっ
て発射薬15が充填されている。発射薬15は火管11
と接触している。発射薬15には、円板状の重なった3
枚の押え蓋16が覆っている。押え蓋16はニトロセル
ロースを主成分とする前記の成型原材を圧搾成型した円
板であって、その円板の中心から外周に向けて設けられ
た半径長の切り込み21を有している。押え蓋16の径
は、焼尽性薬莢筒体14の中ほどで均等になっている内
径とほぼ同じである。切り込み21を捲き込んで笠状に
した3枚目の押え蓋16が、焼尽性薬莢筒体14へ挿入
されている途中を示す図2のとおり、3枚の押え蓋16
は、各々切り込み21を少しずつずらして重なり合わさ
れている。
【0026】内面側を耐水性の樹脂でコーティングされ
た厚紙で成型されたボトル18に、流動性物質17であ
る水の充満された模擬弾丸19が、焼尽性薬莢筒体14
の上端に挿入されている。ボトル18の底面が押え蓋1
6を押えつけている。ボトル18と焼尽性薬莢筒体14
とが、接着剤で接着されている。ボトル18の頂端にあ
いた水の注入口は、生分解性樹脂や耐水性樹脂またはコ
ルクでできたボトル栓20により、封鎖されている。
【0027】ボトル18に流動性物質17が充満されて
いると、空包1の模擬弾丸19の重量と実包40の弾丸
39の重量とは近似する。焼尽性薬莢筒体14と金属製
莢底13とで、実包用の薬莢38とほぼ同じ形状を形成
している。また空包1の重量および形状は、実包40と
ほぼ同じである(図3参照)。
【0028】この空包1は以下のようにして使用され
る。先ず、空包1を薬室24へ装填する。火砲2の砲尾
に設けられた溝にフランジ12を係合させ、閉鎖器22
により砲尾を閉鎖する。焼尽性薬莢筒体14の先細りと
なっている外壁錘が、薬室24の先細りの内錘形の内錘
斜面と適合してあたる。電気発火式の火管11に接触す
る電極(不図示)から電流を流す。すると火管11が発
火し、発射薬15の燃焼を誘起する。
【0029】この燃焼により発生した燃焼ガスが、薬莢
筒体14内部の圧力を上昇させ、遂には押え蓋16を破
断するとともに、模擬弾丸19を発射させる。その衝撃
でボトル18の一部が破裂した模擬弾丸19は、燃焼ガ
スの圧力により砲筒25内を旋転しながら突き進み、砲
外へ出る。模擬砲弾19の旋転により、ボトル18の裂
け目から水が振り撒かれる。すると、模擬弾丸19の運
動エネルギーは急速に失われる結果、模擬弾丸19は急
激に減速し至近距離に落下する。振り撒かれた水や、破
裂したボトルあるいはその破断小片は、軽くて運動エネ
ルギーも小さいので器物等に衝突しても損壊させること
がなく、遠くまで飛散しない。
【0030】焼尽性薬莢筒体14や破断した押え蓋16
は、完全燃焼する。その結果、残渣が残留しないので火
砲2内の清浄が維持される。さらに薬莢筒体14や押え
蓋16は、発射薬に比較し燃焼温度が低いため、火砲2
内の過剰な温度上昇を抑制している。
【0031】空包1の模擬弾丸19が、十分な重量を有
しているため、実包射撃の場合と同程度の模擬弾丸19
発射の強い反作用を生じる。この反作用により莢底13
が排出される。すぐさま次弾の空包1を薬室24へ装填
し、安全かつ迅速に同様の操作が繰返され、連続射撃が
行なわれる。
【0032】なお、ボトル18には予め水17を充満さ
せておいてもよいが、使用直前に現場近傍で充満させて
もよい。
【0033】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
空包は、実包とほぼ同じの重量と形状とを有しているの
で、実包の使用を想定した演習に使用することができ
る。この空包は、実包射撃の場合と同様な操作により、
実包さながらの射撃音が得られる。また、安全に連続し
て射撃することができる。さらに、火砲内外に残渣のほ
とんど残留しないため、回収や清掃の必要がない。この
空包は簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する空包の実施例を示す正面部分
断面図である。
【図2】本発明を適用する空包を製造している途中を示
す図である。
【図3】本発明を適用外の空包の正面部分断面図であ
る。
【符号の説明】
1は空包、2は火砲、11は火管、12はフランジ、1
3は莢底、14は焼尽性薬莢筒体、15は発射薬、16
は押え蓋、17は流動性物質、18はボトル、19は模
擬弾丸、20はボトル栓、21は切り込み、22は閉鎖
器、24は薬室、25は砲筒、30は空包、31は火
管、32はフランジ、33は薬莢、35は発射薬、36
はフェルト、37は空包栓、38は薬莢、39は弾丸、
40は実包である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薬室の内壁が先細りの内錘形を形成して
    いる火砲に装填される空包であって、該内錘と適合する
    先細りの外錘形を形成した焼尽性薬莢筒体が金属製莢底
    により塞がれ、該薬莢筒体に充填されて火管と接触して
    いる発射薬が押え蓋で覆われ、流動性物質の入ったボト
    ルからなる模擬砲弾が該薬莢筒体の先端を閉塞しつつ該
    押え蓋を押えつけていることを特徴とする空包。
  2. 【請求項2】 該ボトルは、内面側が樹脂でコーティ
    ングされた厚紙で成型されたものであることを特徴とす
    る請求項1に記載の空包。
  3. 【請求項3】 該流動性物質が、水および水溶液のい
    ずれかの液体、水と砂とからなるスラリー、澱粉および
    寒天およびカルボキシメチルセルロースのいずれかと炭
    酸カルシウムと水とからなるゲル、澱粉およびタルクの
    いずれかの粉体、穀類および固形肥料および生分解性樹
    脂のいずれかの粒体から選ばれる一種類であることを特
    徴とする請求項1に記載の空包。
  4. 【請求項4】 該押え蓋は、焼尽性円板であって、該
    円板の中心から外周に向かって切り込みが設けられてい
    ることを特徴とする請求項1に記載の空包。
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