JP2002095664A - 心臓固定器具 - Google Patents

心臓固定器具

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JP2002095664A
JP2002095664A JP2000293089A JP2000293089A JP2002095664A JP 2002095664 A JP2002095664 A JP 2002095664A JP 2000293089 A JP2000293089 A JP 2000293089A JP 2000293089 A JP2000293089 A JP 2000293089A JP 2002095664 A JP2002095664 A JP 2002095664A
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Hiromichi Tanioka
弘通 谷岡
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Terumo Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】簡単な構成で心臓の拍動による血管吻合部周辺
の心臓表面の動きを効果的に抑制することができ、心機
能の低下や心臓に対する刺激・損傷が少ない心臓固定器
具を提供すること。 【解決手段】心臓固定器具1は、一対の長尺の腕部4
a、4bと、両腕部4a、4bの下端部に設置された一
対の接触部2a、2bとを有している。両接触部2a、
2bからは、それぞれ、心臓の表面組織を引っ掛ける複
数の爪3が外側に突出している。爪3は、ダイヤル82
を回転することにより揃って回転し、その突出状態を調
節することができる。間隔操作部5を操作すると、両接
触部2a、2bの間隔を調節することができ、間隔規制
手段7によりその状態が保持される。また、心臓固定器
具1は、多関節アームで構成された固定部6により、開
胸器10に対する位置を調節して固定することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、心臓手術におい
て、心臓の一部の動きを抑制し得る心臓固定器具に関す
る。
【0002】
【従来の技術】冠動脈の一部が狭窄し、心筋への血行不
良が生じると、狭心症、心筋梗塞症、不整脈症を引き起
こし、生命の危機に陥る。このような疾患の治療とし
て、狭窄した部位より末梢側の冠動脈に、例えば内胸動
脈や大伏在静脈等を縫合手段により吻合させる冠動脈バ
イパス手術(CABG;Coronary Artery Bypass Graf
t)が行われている。
【0003】元来、冠動脈バイパス手術は心拍動下で行
われていたが、心臓が拍動した状態で例えば直径1〜
2.5mm程度の血管を目的の場所へ正確に位置決めし
て吻合させるためには非常に高度な技術が必要であり、
不成功例も多かった。そこで、1960年代に人工心肺
回路が開発され、また1970年代には心筋保護液の導
入により、長時間血液を体外循環した状態で安全に冠動
脈バイパス手術を行うことが可能となった。これによ
り、近年までの冠動脈バイパス手術は、一般に、20c
m程の胸骨正中切開を行うことにより開胸し、人工心肺
回路を用いて血液を体外循環させた状態、すなわち、心
停止下で行われていた。
【0004】しかし、血液を体外循環させる人工心肺の
使用は術後の合併症を引き起こす可能性があり、特に高
齢、腎臓不全、肝臓不全、肺機能不全、脳梗塞既往症、
大動脈石灰化等の患者には人工心肺の使用は、できるだ
け避けた方がよいとされていた。また、医療費削減、患
者の早期社会復帰、美容面等を考えると、小切開で低侵
襲な冠動脈バイパス手術の方法が望まれていた。
【0005】このような状況の中で、1994年頃に、
人工心肺を使用せずに心拍動下で行う低侵襲の冠動脈バ
イパス手術が開発され、以来、日本の心臓外科にも導入
されるようになった。この、心拍動下での低侵襲の冠動
脈バイパス手術(以下、「心拍動下バイパス手術」と言
う。)によれば、早ければ術後1週間程度での退院が可
能であり、また、手術費用についても人工心肺を用いた
体外循環のCABGに比べて大幅に削減することができ
る。
【0006】このような近年の心拍動下バイパス手術に
おいては、心臓の拍動による吻合部周辺の動きを抑制
し、吻合部周辺の心臓表面をできるだけ静止状態に近く
するための専用器具が使用されている。これにより、拍
動を続ける心臓に対して前述したような血管吻合作業を
より正確に行うことが可能になっている。
【0007】このような専用器具としては、従来、吻合
部周囲の心臓表面を押さえつけるタイプや吸引するタイ
プの器具が用いられている。
【0008】しかしながら、前記押さえつけるタイプの
器具では、心筋が圧迫されるため心機能が低下したり、
圧迫した部位の心外膜下に血腫が残るという問題があっ
た。このため、押圧力を弱めざるを得ず、血管吻合する
際に正確な運針を行うための十分な静止野を得ることは
困難であった。
【0009】一方、前記吸引するタイプの器具では、専
用の吸引装置と吸引用のチューブとが必要であり、小切
開の手術スペースでは吸引用チューブが時に術視野を狭
め、施術を妨げるという問題がある。さらに、十分な静
止野を得るためには大きな負圧をかける必要があるた
め、当該器具の吸着口周辺に位置していた心外膜下に血
腫が残ることがあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡単
な構成で心臓の拍動による吻合部周辺の心臓表面の動き
を効果的に抑制することができ、心機能の低下や心臓に
対する刺激・損傷が少ない心臓固定器具を提供すること
にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(11)の本発明により達成される。
【0012】(1) 一対の細長い、心臓表面への接触
部と、前記各接触部からそれぞれ突出し、その突出状態
を調節可能な複数の爪と、前記接触部を支持する支持部
とを有し、前記爪を前記心臓の表面組織にくい込ませて
前記心臓の動きを抑制する心臓固定器具。
【0013】(2) 前記両接触部は、略平行に並んだ
状態で前記支持部に支持される上記(1)に記載の心臓
固定器具。
【0014】(3) 前記爪は、前記両接触部の外側に
向かって突出している上記(1)または(2)に記載の
心臓固定器具。
【0015】(4) 前記複数の爪は、前記各接触部に
対し、それぞれ、その長手方向に沿って一列に配置され
ている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の心臓
固定器具。
【0016】(5) 前記接触部の内部に設置された回
転軸と、該回転軸の回転位置を位置決めする位置決め手
段とを有し、前記爪は、前記回転軸を中心として回転す
ることにより突出状態を調節可能である上記(1)ない
し(4)のいずれかに記載の心臓固定器具。
【0017】(6) 前記回転軸を回転させる回転操作
部を有する上記(5)に記載の心臓固定器具。
【0018】(7) 前記支持部は、一対の腕部を有
し、前記各接触部は、それぞれ、前記各腕部の下端部に
設置されており、前記両腕部は、互いに回動可能に連結
されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の
心臓固定器具。
【0019】(8) 前記両接触部の間隔が可変であ
り、前記両接触部の間隔を調節する間隔操作部を有する
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の心臓固定器
具。
【0020】(9) 開胸器に固定可能な固定部を有す
る上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の心臓固定
器具。
【0021】(10) 前記固定部は、前記接触部の前
記開胸器に対する位置を調節可能である上記(9)に記
載の心臓固定器具。
【0022】(11) 内視鏡の先端部を装着可能な内
視鏡装着部を有する上記(1)ないし(10)のいずれ
かに記載の心臓固定器具。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の心臓固定器具1を
添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明す
る。
【0024】図1は、本発明の心臓固定器具の実施形態
を示す斜視図、図2は、図1に示す心臓固定器具1を開
胸器10に固定した状態を示す斜視図である。なお、以
下の説明では、図1および図2中の上側を「上」、下側
を「下」と言う。
【0025】これらの図に示すように、心臓固定器具1
は、一対の長尺の腕部4a、4bと、両腕部4a、4b
の下端部にそれぞれ設置された一対の接触部2a、2b
と、両接触部2a、2bからそれぞれ突出する複数の爪
3と、両接触部2a、2bの間隔を調節する間隔操作部
5と、開胸器10に対する固定部6と、両接触部2a、
2bの間隔を規制する間隔規制手段7とを有している。
以下、各部の構成について説明する。
【0026】両腕部4a、4bは、それぞれ、後述する
両接触部2a、2bを支持する支持部である。両腕部4
a、4bは、それぞれ、中央部で屈曲しており、全体形
状として「く」字状をなしている。そして、両腕部4
a、4bは、その中央部同士がピン41により連結され
ており、互いに回動可能になっている。すなわち、両腕
部4a、4bは、組み合わされた状態で「X」字状をな
すように連結されている。そして、両腕部4a、4b
は、互いに交差していない。このような構成により、両
腕部4a、4bは、その上端側を開くとその下端側が閉
じ、逆に、その上端側を閉じるとその下端側が開く。
【0027】ここで、両腕部4a、4bは、言うまでも
なく図示のような構成に限らない。例えば、図示の構成
と異なり、両腕部4a、4bを全体形状が直線状のもの
とし、このような両腕部4a、4bを互いに交差するよ
うに連結し、両腕部4a、4bの上端側と下端側とが一
致して開閉するような構成としてもよい。
【0028】また、図示の構成と異なり、両腕部4a、
4bは、それらの上端部付近同士が互いに回動可能に連
結されたものであってもよい。この場合、両腕部4a、
4bの長手方向の途中に、手指を挿入あるいは接触する
ための間隔操作部が設けられていてもよい。これによ
り、両接触部2a、2bの間隔を調節する際の操作を容
易に行うことができる。
【0029】図示の構成に戻ると、両腕部4a、4bの
下端部には、それぞれ、心臓に接触する一対の細長い接
触部2a、2bが設けられている。両接触部2a、2b
は、それぞれ、両腕部4a、4bの下端部から、両腕部
4a、4bを含む面にほぼ垂直に同じ方向に突出してい
る。すなわち、両接触部2a、2bは、それぞれ、両腕
部4a、4bの下端側とほぼ直角をなしており、両接触
部2a、2b同士は、ほぼ平行になっている。また、両
接触部2a、2bは、互いに対称(面対称)な構成にな
っている。
【0030】なお、接触部2a、2bは、図示の構成に
限らず、例えば、腕部4a、4bに対して傾斜した角度
で設けられているようなものであってもよい。
【0031】両接触部2a、2bには、それぞれ、複数
(図示の構成では6本)の湾曲形状をなす爪3が設置さ
れている。これらの爪3は、両接触部2a、2bに対
し、それぞれ、その長手方向に沿って一列に配置されて
いる。また、爪3は、両接触部2a、2bからそれぞれ
外側(他方の接触部がある方向と反対側)に向かって突
出している。このような爪3は、心臓の表面組織を引っ
掛けるものである。接触部2aおよび爪3の構成につい
ては、後に詳述する。
【0032】間隔操作部5は、施術者が操作して両接触
部2a、2bの間隔を調節する部分である。間隔操作部
5は、両腕部4a、4bの上端部から両接触部2a、2
bと反対方向にそれぞれ突出する一対の直線部51a、
51bと、両直線部51a、51bの先端部にそれぞれ
設けられた一対の円環状の指挿入部52a、52bとで
構成されている。
【0033】図1に示すように、間隔操作部5は、両接
触部2a、2bとほぼ平行に形成されているが、両接触
部2a、2bと間隔操作部5とのなす角度は、良好な操
作性を考慮して適宜設定される。すなわち、間隔操作部
5は、両接触部2a、2bに対し傾斜した角度で設けら
れたものであってもよい。
【0034】このような間隔操作部5は、両指挿入部5
2a、52bにそれぞれ指を挿入し、両指挿入部52
a、52b同士の間隔を広げたり狭めたりして、鋏のよ
うに操作する。そして、両指挿入部52a、52b同士
の間隔を広げると、両接触部2a、2b同士の間隔が狭
まり、逆に、両指挿入部52a、52b同士の間隔を狭
めると、両接触部2a、2b同士の間隔が広がる。
【0035】間隔規制手段7は、一方の腕部4bの上端
側に設置されたラック71と、他方の腕部4aに設置さ
れ、該ラック71に接触し得る図示しない突起とで構成
されている。ラック71は、全体形状として、両腕部4
a、4bの連結部(ピン41)を中心とする円弧形状を
なし、他方の腕部4aに向かって突出している。ラック
71の前記突起と接触する方の面には、その長手方向に
沿って小さい凹凸が繰り返し形成されている。前記突起
は、両腕部4a、4bの弾性によりラック71に圧接さ
れている。
【0036】このような間隔規制手段7により、両腕部
4a、4bの開閉状態は、任意の角度において、ラック
71の凹凸に前記突起が係合する力により固定される。
これにより、間隔操作部5を操作して調節した両接触部
2a、2b同士の間隔をそのまま維持することができ
る。
【0037】ここで、間隔操作部5の操作は、ラック7
1の凹凸と前記突起とが係合する力以上の操作力を加え
て行う。または、前記突起がラック71から離れる方向
に両指挿入部52a、52bを捩じるように操作するこ
とにより、前記突起とラック71との係合が簡単に解除
され、両腕部4a、4bを抵抗なく開閉することもでき
る。
【0038】本発明では、間隔規制手段7は、両接触部
2a、2b同士の間隔の増大のみを規制するものであっ
てもよい。また、このような間隔規制手段7を有しない
ものであってもよい。
【0039】図2に示すように、固定部6は、両腕部4
a、4bを開胸器10に対して固定する部分である。固
定部6の先端部61は、腕部4bの中央部に接続されて
いる。また、固定部6の基端部62は、円柱形状をなし
ている。
【0040】一方、開胸器10には、固定部6の基端部
62が挿入可能な円筒形状をなす接続部101が突出形
成されている。接続部101の側壁には、固定ネジ10
2が設置されており、固定ネジ102のネジ部は、接続
部101の側壁を貫通して螺合している。そして、固定
部6の基端部62を接続部101に挿入して固定ネジ1
02を締め付けることにより、心臓固定器具1を開胸器
10に対し固定することができる。
【0041】このような固定部6は、複数の関節を有す
る多関節アームで構成されている。すなわち、固定部6
の先端部61と基端部62との間には、3つの関節6
3、64、65と、ハンドル66とがそれぞれ設置され
ている。これら3つの関節63〜65の回動により、両
接触部2a、2bの開胸器10に対する位置を所定範囲
で3次元的に自由に移動することができる。そして、ハ
ンドル66を締め付けることにより、各関節63〜65
の回動位置がそれぞれ固定され、その位置関係が維持さ
れる。このような構成により、固定部6は、両接触部2
a、2bの開胸器10に対する位置を3次元的に調節し
て位置決めすることができる。
【0042】次に、接触部2aおよび爪3の構成につい
て詳述する。図3は、接触部2aの分解斜視図、図4
は、接触部2aの縦断面図、図5は、先端軸受け25お
よびダイヤル82の側面図、図6および図7は、それぞ
れ、接触部2aの横断面図、図8および図9は、それぞ
れ、接触部2aの斜視図である。以下の説明では、図4
中の左側を「先端」、右側を「基端」と言う。
【0043】両接触部2a、2bの構成は、前述したよ
うに、互いに対称(面対称)になっているため、以下、
両接触部2a、2bのうち、接触部2aについて代表的
に説明する。
【0044】図4に示すように、接触部2aは、細長い
ケース21と、ケース21の内部に長手方向に沿って設
置された回転軸26と、ラチェット機構8と、レバー2
7(回転操作部)とを有している。
【0045】ケース21は、トレー状の下ケース23
と、該下ケース23の上部を覆う上ケース22と、固定
具24と、先端軸受け25とで構成されている。また、
ケース21には、後述する爪3が挿通する複数の長孔2
13が長手方向に沿って等間隔に形成されている。ま
た、ケース21の上面211は、丸みを帯びており、ケ
ース21の下面212は、平坦になっている。心臓固定
器具1の使用時には、ケース21の下面212が心臓の
表面に接触する。
【0046】上ケース22と下ケース23とは、上ケー
ス22の4角の下部にそれぞれ設けられた鉤部221
と、下ケース23の4角の上部にそれぞれ設けられた凹
部231とが係合して接合される。
【0047】上ケース22および下ケース23は、固定
具24を介して、腕部4aの下端部に固定されている。
固定具24は、ケース21の基端部に位置しており、そ
の外周部には、溝241が形成されている。そして、該
溝241内に上ケース22および下ケース23の基端部
の一部が嵌入している。これにより、上ケース22およ
び下ケース23と固定具24とが固定されている。そし
て、固定具24は、腕部4aの下端部に対しネジ42に
より固定されている。これにより、接触部2aが腕部4
aに支持されている。
【0048】固定具24の先端面には、円筒状の基端軸
受け261の基端部が固着されている。基端軸受け26
1の先端側には、回転軸26の基端部が挿入されてい
る。また、基端軸受け261の内部において、回転軸2
6の基端部と固定具24とがバネ262を介して連結さ
れている。このバネ262により、回転軸26は、基端
方向に付勢されている。
【0049】先端軸受け25は、全体形状として円柱状
をなし、ケース21の先端部に位置している。先端軸受
け25の外周部には、溝251が形成されており、該溝
251内に上ケース22および下ケース23の先端部の
一部が嵌入している。これにより、先端軸受け25は、
上ケース22および下ケース23に対し、固定されてい
る。そして、先端軸受け25の中央部には、回転軸26
が挿通する孔252が形成されている。
【0050】ケース21の内部には、回転軸26が設置
されている。回転軸26の先端部は、先端軸受け25の
孔252を挿通し、ケース21の先端部から外側に所定
長さ突出している。そして、回転軸26は、ケース21
に対し回動可能になっている。また、回転軸26は、ケ
ース21に対し長手方向に移動可能になっている。
【0051】また、図6および図7に示すように、回転
軸26は、先端軸受け25および基端軸受け261に支
持されている部分以外の部分において、その横断面形状
が略「D」字状をなすように円形の一部を平坦に切り欠
いた形状(以下、「切り欠き形状」と言う。)をなして
いる。これにより、後述する爪3およびダイヤル82の
回転軸26に対する回り止めがなされる。
【0052】ケース21の内部には、回転軸26および
基端軸受け261を覆う円筒状のカバー部材28が設置
されている。カバー部材28の先端部および基端部は、
それぞれ、先端軸受け25および固定具24に固着され
ている。すなわち、カバー部材28は、ケース21に対
し固定されており、ケース21に対し回転しない。ま
た、カバー部材28には、後述する爪3が挿通する複数
の長孔281が長手方向に沿って等間隔に形成されてい
る。
【0053】6本の爪3は、回転軸26に対し、その長
手方向に沿って好ましくは等間隔に設置されている。そ
して、爪3は、カバー部材28の長孔281およびケー
ス21の長孔213をそれぞれ挿通してケース21の外
部に突出している。
【0054】長孔281および長孔213の幅寸法は、
それらを挿通する部分の爪3の外径とほぼ同じになって
いる。後述するように、爪3は、回転軸26に対して
は、長手方向の位置決めがなされておらず、長孔281
および長孔213によって、ケース21に対する長手方
向の位置決めがなされている。このように、爪3が長孔
281および長孔213の2箇所で長手方向の位置決め
がなされることにより、爪3の回転軸26およびケース
21に対する直角な姿勢がより確実に維持される。
【0055】また、爪3の突出方向は、他方の接触部2
bがある方向と反対の方向(外側)になっている。ま
た、6本の爪3は、すべて同じ向きに突出している。
【0056】6本の爪3は、その構成が同一であるた
め、以下、そのうちの1つについて代表的に説明する。
【0057】図6および図7に示すように、爪3は、全
体形状として、長尺であり、下側を湾曲内側とする湾曲
形状をなしている。その湾曲の曲率半径は、根元部31
から末端部32に向かって比較的緩やかに漸減してい
る。また、爪3は、横断面形状として円形をなし、その
外径は、根元部31から末端部32に向かって漸減して
いる。そして、爪3の末端部32は、鋭利になってい
る。
【0058】爪3の根元部31は、リング状をなしてお
り、孔33が形成されている。そして、この孔33を回
転軸26が貫通している。孔33は、回転軸26の切り
欠き形状(「D」字形状)に対応した形状になってお
り、これにより、爪3は、回転軸26に対して回り止め
がなされる。すなわち、爪3は、回転軸26とともに回
転する。また、孔33と回転軸26との間には、僅かな
遊びが設けられており、爪3と回転軸26とは、回転軸
26に沿った方向には、相対的に移動可能になってい
る。
【0059】心臓固定器具1は、心拍動下バイパス手術
において、このような爪3を血管吻合部周辺の心臓の表
面組織(好ましくは心外膜)40にくい込ませて(引っ
掛けて)吊り上げることにより、心臓の一部を吊り上げ
る(持ち上げる)ことができる。この吊り上げられた部
分は、心臓の拍動による動きが抑制され、静止状態に近
づく。これにより、心拍動下バイパス手術において、血
管吻合術を比較的容易に行うことができる。
【0060】さらに、爪3を心臓の表面組織40に引っ
掛けるため、心筋への影響が少なく、心外膜下に血腫を
生じるようなことがない。また、心筋を圧迫することが
ないため、手術中における心機能の低下も少ない。
【0061】また、爪3は、回転軸26を中心として、
所定角度範囲で回転可能になっている。図6は、回転軸
26の回転位置が図6中最も反時計方向にある状態を示
している。この状態では、爪3の末端部32は、最も上
方にあり、ケース21の下面212より上側に位置して
いる。また、爪3は、ケース21の長孔213およびカ
バー部材28の長孔281のそれぞれの上端部に位置し
ている。
【0062】図7は、図6に示す状態から爪3が図6お
よび図7中の時計方向に回転し、回転軸26の回転位置
が図6および図7中最も時計方向にある状態を示してい
る。この状態では、爪3の末端部32は、最も下方にあ
り、ケース21の下面212より下側に位置している。
また、爪3は、ケース21の長孔213およびカバー部
材28の長孔281のそれぞれの下端部に位置してい
る。
【0063】また、図8は、図6と同じ状態を示してお
り、図9は、図6と図7の中間の状態を示している。図
8および図9に示すように、6本の爪3は、すべてが揃
って回転する。
【0064】このように、爪3は、回転軸26を中心と
して回転することにより、図6に示す状態と図7に示す
状態との間で、その突出状態を調節可能になっている。
そして、爪3は、その突出状態(姿勢)が図7に示す状
態に近いほど、心臓の表面組織40に対して深く引っ掛
かる。これにより、心臓固定器具1は、爪3の突出状態
を適宜調節することにより、心筋に対する刺激・損傷を
避けて、爪3で心臓の心外膜のみを引っ掛けることが容
易である。したがって、心臓固定器具1は、心臓に対す
る刺激・損傷をより少なくすることができる。
【0065】なお、ケース21内への水分の侵入を防止
するために、ケース21の長孔213にシール部材(図
示せず)を設置してもよい。このようなシール部材の形
態としては、例えば、爪3を挿通する切れ目(スリッ
ト)を有する膜状体等が挙げられる。
【0066】回転軸26の回転に対しては、その回転位
置を段階的に位置決めする機能と、爪3の末端部32が
引っ込む方向への回転を禁止する機能とを有するラチェ
ット機構8が設けられている。
【0067】図3および図5に示すように、ラチェット
機構8は、先端軸受け25の先端面に形成されたラチェ
ット歯81と、回転軸26の先端部に設置されたダイヤ
ル82の基端面に形成された突起821とで構成されて
いる。
【0068】ラチェット歯81は、周方向に沿って、所
定角度範囲に等角度間隔で形成された鋸歯状の複数(図
示の構成では5個)の歯部811を有している。各歯部
811の一端には、後述する突起821の係止面822
と係止する係止面812が形成されている。
【0069】また、係止面812の基端部から、図5中
下方向に隣接する係止面812の先端部までの間には、
傾斜面813が形成されている。そして、係止面812
と傾斜面813とにより、切り欠き814が形成されて
いる。
【0070】ダイヤル82は、円盤状をなし、その外径
は、先端軸受け25の外径とほぼ同じになっている。そ
して、ダイヤル82の中央部には、孔823が形成され
ており、該孔823を回転軸26が貫通している。孔8
23は、回転軸26の切り欠き形状(「D」字形状)に
対応した形状になっており、これにより、ダイヤル82
は、回転軸26に対して回り止めがなされる。すなわ
ち、ダイヤル82は、回転軸26とともに回転する。
【0071】回転軸26の先端には、キャップ83が固
着され、これにより、ダイヤル82の回転軸26に対す
る先端方向への抜け止めがなされている。このキャップ
83は、回転軸26の切り欠き形状と係合する孔部を有
し、該孔部に回転軸26の先端部を挿入して取り付けら
れている。
【0072】突起821は、ダイヤル82の基端面に1
個設置されている。突起821は、ラチェット歯81の
切り欠き814に対応した形状になっており、ダイヤル
82の基端面からほぼ直角に起立する係止面822と、
ダイヤル82の基端面からの高さが図5中下方向に向か
って漸減する傾斜面824とを有している。
【0073】前述したように、回転軸26がバネ262
により基端方向に付勢されていることから、ダイヤル8
2は、先端軸受け25側に付勢されている。これによ
り、突起821の傾斜面824および係止面822は、
それぞれ、ラチェット歯81の傾斜面813および係止
面812に圧接されている。
【0074】このようなラチェット機構8においては、
ラチェット歯81の切り欠き814内に突起821が挿
入、収納される。これにより、突起821が収納される
切り欠き814を選択することによって、回転軸26の
回転位置を、図6に示す状態と図7に示す状態との間
で、等角度間隔に段階的(図示の構成では、5段階)に
位置決めすることができる。すなわち、ラチェット機構
8は、回転軸26の回転位置を位置決めする位置決め手
段を構成する。
【0075】回転軸26の回転位置が5段階に位置決め
されることにより、爪3の突出状態も5段階に位置決め
することができる。これにより、爪3の突出状態を調節
する際の操作性が向上し、適度な突出状態に容易に調節
することができる。
【0076】また、切り欠き814内に突起821が挿
入した状態では、ダイヤル82の係止面822とラチェ
ット歯81の係止面812とが係止し、ダイヤル82が
図6および図7中の反時計方向に回転することが禁止さ
れる。すなわち、ラチェット機構8は、回転軸26の回
転を一方向(図6および図7中の時計方向)に規制する
反転規制手段を構成する。このような構成により、心臓
の表面組織40を引っ掛けるのに十分な状態まで爪3を
図6および図7中の時計方向に回転させた後に、心臓の
表面組織40を引っ掛けた爪3の末端部32が引っ込む
ことなく、その突出状態をより確実に維持することがで
きる。
【0077】また、次のような操作をすることにより、
前記反転規制手段の規制を解除することができる。すな
わち、回転軸26を基端方向に付勢するバネ262の付
勢力に抗して、ダイヤル82を先端方向に引っ張り、突
起821がラチェット歯81の切り欠き814内から脱
出した状態とする。この状態では、突起821の係止面
822とラチェット歯81の係止面812との係止が外
れ、ダイヤル82を図6および図7中の反時計方向に回
転させることができる。
【0078】図3および図5に示すように、ダイヤル8
2には、その外周面に開口するレバー取り付け穴825
が形成されている。このレバー取り付け穴825は、ダ
イヤル82の径方向に沿って孔823の手前まで形成さ
れている。このレバー取り付け穴825に、レバー27
の根元部を挿入することにより、ダイヤル82にレバー
27を着脱自在に設置することができる。レバー27の
根元部は、レバー取り付け穴825に対し、単に嵌入し
ているだけでもよいし、螺合により固定されていてもよ
い。
【0079】図8および図9に示すように、このレバー
27を回動させると、その操作力がダイヤル82を介し
て回転軸26に伝わり、回転軸26が回転する。そし
て、爪3の突出状態を変えることができる。このよう
に、レバー27の操作により、爪3の突出状態を容易か
つ正確に調節することができる。また、レバー27を使
用せず、指でダイヤル82を直接操作して爪3を図6お
よび図7中の時計方向に回転させてもよい。
【0080】回転軸26を図6および図7中の時計方向
に回転する場合には、ダイヤル82の突起821がラチ
ェット歯81の傾斜面813を乗り越えて隣の切り欠き
814内に移る際に、回転軸26は、ケース21および
爪3に対して、係止面812の高さ分、先端方向に移動
する。また、前記反転規制手段の規制を解除する場合に
も、回転軸26は、ケース21および爪3に対して、先
端方向に移動する。このとき、前述したように爪3がケ
ース21の長孔213とカバー部材28の長孔281と
の2箇所でケース21の長手方向に沿った位置決めがな
されていることにより、爪3と回転軸26とのなす角度
が直角に確実に維持される。これにより、回転軸26
は、爪3に対し、円滑に移動することができる。
【0081】図10および図11は、それぞれ、爪の他
の構成例を示す図である。以下、爪の他の構成例につい
て、前述した爪3との相違点のみを説明する。
【0082】図10に示す爪3' は、その横断面の外径
が、長手方向に沿って、ほぼ一定になっている。そし
て、爪3' の末端部32には、爪3' の軸線に対し所定
角度傾斜した刃面を有する針先が形成されている。
【0083】爪3' は、爪3と比較すると、心臓に対す
る刺激・損傷をより少なくすることができる。さらに、
その太さ(外径)が末端部までほぼ一定に太くなってい
ることから、心臓の表面組織40を吊り上げた(心臓の
表面組織40にくい込ませた)ときの爪3の変形をより
小さくすることができ、より確実に心臓表面の動きを抑
制することができる。
【0084】図11に示す爪3'' は、その横断面の外
径が、長手方向に沿って、ほぼ一定になっている。そし
て、爪3'' の末端部32は、半球状に丸みを帯びてい
る。爪3'' は、爪3' と比較して、心臓に対する刺激
・損傷をさらに少なくすることができる。
【0085】これに対し、前述した実施形態の爪3は、
爪3' および爪3'' と比較して、心臓の表面組織40
に対する引っ掛かり易さがより優れている。
【0086】図12〜図15は、心臓固定器具1によっ
て心臓の一部を吊り上げる操作を順を追って説明するた
めの斜視図である。
【0087】以下、これらの図を参照して、心臓固定器
具1の使用方法の一例について詳細に説明する。
【0088】[1] まず、図12〜図15中には示さ
れていないが、心臓固定器具1を、図2に示すように固
定部6によって開胸器10と接続した状態とする。爪3
は、その末端部32が最も上方にある位置(図6に示す
状態)としておく。また、両接触部2a、2b同士の間
隔は、やや広めにしておく。この間隔の調節は、前述し
たように、間隔操作部5を操作して、両腕部4a、4b
の下端側を所望に開いて行う。
【0089】次に、ハンドル66を緩めて、両接触部2
a、2bが開胸器10に対して移動可能な状態とする。
そして、図12に示すように、両接触部2a、2bを心
臓の表面組織40に接触させる。このとき、両接触部2
a、2bの間に吻合を行う冠動脈50が位置するように
する。両接触部2a、2bの位置は、固定部6の多関節
アームにより開胸器10に対して3次元的に調節するこ
とができるため、容易に目的部位に合わせることができ
る。
【0090】[2] 次に、図13に示すように、レバ
ー27を回動操作して、爪3の突出状態を調節し、爪3
で心臓の表面組織40を引っ掛ける。このとき、心臓固
定器具1では、爪3の突出状態を調節することにより、
容易に爪3で心外膜のみを引っ掛けることができる。こ
のため、心筋に対する影響が少なく、心外膜下に血腫を
生じるようなことをより確実に防止することができる。
爪3の突出状態の調節を終えたら、レバー27を取り外
す。
【0091】[3] 次に、図14に示すように、間隔
操作部5を操作して、両接触部2a、2b同士の間隔を
適宜狭める。この後、両接触部2a、2b同士の間隔
は、間隔規制手段7によってその増大が規制される。こ
れにより、両接触部2a、2b同士の間にある心臓の表
面組織40が、爪3によって把持された状態が維持され
る。
【0092】[4] 次に、図15に示すように、両腕
部4a、4bを上方向に移動させることにより、心臓の
少なくとも一部を吊り上げる。そして、固定部6のハン
ドル66を締め付けて、両接触部2a、2bの開胸器1
0に対する位置を固定する。これにより、両接触部2
a、2bが接触している部分およびその周辺の部分は、
心臓の拍動による動きが効果的に抑制され、静止状態に
近くなる。このため、この後に行う血管の吻合術を比較
的容易に行うことができる。
【0093】図16は、内視鏡装着部11を有する心臓
固定器具1の下側を示す斜視図、図17は、内視鏡装着
部11を拡大して示す斜視図、図18は、内視鏡装着部
11の断面図である。
【0094】これらの図に示すように、心臓固定器具1
は、内視鏡先端部30を固定する内視鏡装着部11をさ
らに有するものであってもよい。以下、この内視鏡装着
部11について説明する。
【0095】内視鏡装着部11は、ガイドレール(ガイ
ド部材)12と、該ガイドレール12の長手方向に沿っ
て移動可能に設置された保持部材13とで構成されてい
る。
【0096】ガイドレール12は、全体形状として、欠
損部121を有する「C」字状の湾曲形状をなし、その
長手方向中央部において、一方の腕部4aの下側に固定
されている。また、ガイドレール12は、接触部2aと
ほぼ平行になっており、両接触部2a、2bと同じ側に
突出している。また、ガイドレール12は、腕部4aに
対し、例えばネジ止め、嵌合、螺合等の方法により、着
脱自在に固定されているのが好ましい。
【0097】ガイドレール12の横断面形状は、中空の
略長方形状をなし、その内側の辺には、ガイド溝122
が長手方向に沿って形成されている。
【0098】保持部材13は、内視鏡先端部30を挿通
し、保持する円環状の保持部131と、ガイドレール1
2の内部に遊嵌するスライド片132とで構成されてい
る。スライド片132の一部は、ガイドレール12のガ
イド溝122から内側に突出しており、保持部131に
接続されている。
【0099】保持部131の内径は、内視鏡先端部30
の外径より若干小さく設定され、内視鏡先端部30を締
め付けて固定することができるようになっている。
【0100】内視鏡先端部30は、その投光・受光面3
1が心臓の表面組織40に対面するように、保持部13
1に上方から挿入して固定する。この場合、投光・受光
面31と心臓の表面組織40との距離は、調節可能にな
っている。
【0101】このように、内視鏡装着部11を設置した
場合には、内視鏡先端部30を装着することができる。
これにより、施術者が内視鏡で血管吻合部位を拡大して
観察することができる。このような内視鏡としては、先
端部が湾曲可能な軟性内視鏡や、側方部を観察可能な斜
視内視鏡等であることが好ましい。
【0102】また、保持部材13をガイドレール12に
沿って移動することにより、両接触部2a、2bに対す
る内視鏡先端部30の位置を調節することができる。こ
れにより、内視鏡の視野を血管吻合部位に容易に合わせ
ることができる。
【0103】なお、冠動脈50に吻合する血管は、ガイ
ドレール12の欠損部121からガイドレール12の内
側に挿入して、吻合目的部位に導くことができる。
【0104】図19は、接触部の他の構成例を示す斜視
図、図20は、図19に示す接触部2a' の縦断面図で
ある。以下、これらの図を参照して、接触部の他の構成
例について説明するが、前述した実施形態における接触
部2aとの相違点を中心に説明し、同様の事項について
はその説明を省略する。
【0105】本実施形態における接触部2a' は、ケー
ス21と、回転軸26' と、クリック機構9とを有して
いる。
【0106】固定具24の先端面には、円筒状の基端軸
受け261' の基端部が固着されている。基端軸受け2
61' の先端側には、回転軸26' の基端部が挿入され
ている。また、基端軸受け261' の先端部に形成され
た縮径部263と、回転軸26の基端部に形成されたフ
ランジ264との係合により、回転軸26' は、先端方
向への移動が禁止されている。また、接触部2aにおけ
るバネ262は、設置されていない。
【0107】クリック機構9は、先端軸受け25' の先
端面に複数個形成された球面状の凹部91と、クリック
ボール92と、クリックボールを付勢するバネ93とで
構成されている。
【0108】凹部91は、図示の構成では5個形成され
ており、周方向に沿って、所定角度範囲に等角度間隔で
配置されている。
【0109】クリックボール92は、回転軸26の先端
部に設置されたダイヤル82' の基端面に開口するよう
に形成された穴94内に設置されている。
【0110】穴94は、回転軸26' からの距離を凹部
91と等しくして形成されている。クリックボール92
と穴94の底部との間には、バネ93が設置されてお
り、このバネ93によりクリックボール92は、基端方
向(先端軸受け25' 側)に付勢されている。
【0111】このような構成により、ダイヤル82' が
回転して、凹部91と穴94との位置が一致したときに
は、クリックボール92が凹部91内に入り込む。これ
により、ダイヤル82' が先端軸受け25' に対して係
止され、回転軸26' の位置決め、すなわち、爪3の位
置決めがなされる。このように、クリック機構9は、回
転軸26' の回転位置を位置決めする位置決め手段を構
成する。
【0112】また、クリック機構9においては、クリッ
クボール92が挿入する凹部91を選択することによっ
て、回転軸26' の回転位置、すなわち爪3の突出状態
を、図6に示す状態と図7に示す状態との間で、等角度
間隔に5段階に位置決めすることができる。これによ
り、前述した実施形態と同様に、爪3の突出状態の調節
を容易に行うことができる。
【0113】本実施形態では、回転軸26' は、ケース
21の長手方向に沿って移動しない。これにより、爪3
と回転軸26' とが相対的に移動しないため、爪3がよ
りスムーズに回転する。なお、爪3と回転軸26' とが
相対的に移動しないため、爪3は、その根元部31が回
転軸26' に対して固着されていてもよい。この場合、
カバー部材28は、省略することもできる。
【0114】さらに、本実施形態では、バネ262が不
要となること等により、構造の簡素化を図ることができ
る。
【0115】図21は、爪3のさらに他の構成例を示す
ための接触部の斜視図である。同図に示す実施形態は、
爪3の形状が異なること以外、前述した実施形態と同様
である。
【0116】本実施形態の爪3は、途中で二又に分岐し
ており、2つの末端部32(針先)を有している。この
ように、爪3は、1つの根元部31に対して、複数の末
端部32が形成されているようなものであってもよい。
【0117】このような構成とした場合には、回転軸2
6に対する爪3の設置本数(ケース21の長孔213の
個数)を少なくして構造の簡素化を図ることができる。
または、爪3の設置本数を同じくしたままで、爪3の末
端部32(針先)の数を多くすることができ、心臓の表
面組織40をより確実に引っ掛けることができる。
【0118】以上、本発明の心臓固定器具を図示の実施
形態について説明したが、本発明は、これに限定される
ものではなく、心臓固定器具を構成する各部は、同様の
機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することがで
きる。
【0119】例えば、爪の突出状態は、図示の構成のよ
うに調節されるものに限らず、例えば、接触部のケース
から爪が出入りして、その突出長さを調節することがで
きるようなものであってもよい。
【0120】また、間隔操作部、固定部、回転操作部、
位置決め手段、反転規制手段、内視鏡装着部は、それぞ
れ、省略されていてもよい。
【0121】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、従
来のように大掛かりな吸引機構等を用いることなく、簡
単な構成で、心臓の拍動による血管吻合部周辺の心臓表
面の動きを効果的に抑制することができる。これによ
り、心拍動下バイパス手術において、血管吻合術の難易
度を低減し、比較的容易に行うことができる。
【0122】また、心筋を圧迫したり、吸着したりしな
いため、心機能の低下を招いたり、心外膜下に血腫を生
じるようなことを防止することができる。
【0123】さらに、爪の突出状態を調節することによ
り、爪の心臓の表面組織に対する引っ掛かり(くい込
み)具合を調節可能であり、心臓に対する刺激・損傷を
より少なくすることができる。
【0124】また、開胸器に対する固定部を設けた場合
には、至近な位置により確実に固定できることにより、
血管吻合部周辺をより安定した状態に保つことができる
とともに、開胸器と別途に専用の設置部を設ける必要が
なく、全体の構成を簡素化することができる。
【0125】また、内視鏡装着部を設けた場合には、内
視鏡先端部を装着して血管吻合部を拡大して観察するこ
とができ、血管吻合術をさらに容易に行うことができ
る。
【0126】また、接触部の内部に設置した回転軸を中
心として爪を回転することにより突出状態を調節するこ
ととした場合には、より簡単な構造で上記効果が得られ
る。
【0127】また、回転軸の回転位置を位置決めする位
置決め手段を設けた場合には、爪の突出状態の調節を容
易に行うことができる。
【0128】また、両接触部の間隔を調節する間隔操作
部や、回転軸を回転させる回転操作部を設けた場合に
は、心臓を吊り上げる操作をより容易かつ正確に行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の心臓固定器具の実施形態を示す斜視図
である。
【図2】図1に示す心臓固定器具を開胸器に固定した状
態を示す斜視図である。
【図3】接触部の分解斜視図である。
【図4】接触部の縦断面図である。
【図5】先端軸受けおよびダイヤルの側面図である。
【図6】接触部の横断面図(爪の末端部が最も上方に位
置する状態)である。
【図7】接触部の横断面図(爪の末端部が最も下方に位
置する状態)である。
【図8】接触部の斜視図(爪の末端部が最も上方に位置
する状態)である。
【図9】接触部の斜視図(爪が下方に回転した状態)で
ある。
【図10】爪の他の構成例を示す図である。
【図11】爪の他の構成例を示す図である。
【図12】心臓固定器具によって心臓の一部を吊り上げ
る操作を示す斜視図である。
【図13】心臓固定器具によって心臓の一部を吊り上げ
る操作を示す斜視図である。
【図14】心臓固定器具によって心臓の一部を吊り上げ
る操作を示す斜視図である。
【図15】心臓固定器具によって心臓の一部を吊り上げ
る操作を示す斜視図である。
【図16】内視鏡装着部を有する心臓固定器具の下側を
示す斜視図である。
【図17】内視鏡装着部を拡大して示す斜視図である。
【図18】内視鏡装着部の断面図である。
【図19】接触部の他の構成例を示す分解斜視図であ
る。
【図20】図19に示す接触部の縦断面図である。
【図21】爪の他の構成例を示すための接触部の斜視図
である。
【符号の説明】
1 心臓固定器具 2a、2b、2a' 接触部 21 ケース 211 上面 212 下面 213 長孔 22 上ケース 221 鉤部 23 下ケース 231 凹部 24 固定具 241 溝 25、25' 先端軸受け 251 溝 252 孔 26、26' 回転軸 261、261' 基端軸受け 262 バネ 263 縮径部 264 フランジ 27 レバー 28 カバー部材 281 長孔 3、3'、3'' 爪 31 根元部 32 末端部 33 孔 4a、4b 腕部 41 ピン 42 ネジ 5 間隔操作部 51a、51b 直線部 52a、52b 指挿入部 6 固定部 61 先端部 62 基端部 63〜65 関節 66 ハンドル 7 間隔規制手段 71 ラック 8 ラチェット機構 81 ラチェット歯 811 歯部 812 係止面 813 傾斜面 814 切り欠き 82 ダイヤル 821 突起 822 係止面 823 孔 824 傾斜面 825 レバー取り付け穴 83 キャップ 9 クリック機構 91 凹部 92 クリックボール 93 バネ 94 穴 10 開胸器 101 接続部 102 固定ネジ 11 内視鏡装着部 12 ガイドレール 121 欠損部 122 ガイド溝 13 保持部材 131 保持部 132 スライド片 30 内視鏡先端部 40 表面組織 50 冠動脈

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の細長い、心臓表面への接触部と、 前記各接触部からそれぞれ突出し、その突出状態を調節
    可能な複数の爪と、 前記接触部を支持する支持部とを有し、 前記爪を前記心臓の表面組織にくい込ませて前記心臓の
    動きを抑制する心臓固定器具。
  2. 【請求項2】 前記両接触部は、略平行に並んだ状態で
    前記支持部に支持される請求項1に記載の心臓固定器
    具。
  3. 【請求項3】 前記爪は、前記両接触部の外側に向かっ
    て突出している請求項1または2に記載の心臓固定器
    具。
  4. 【請求項4】 前記複数の爪は、前記各接触部に対し、
    それぞれ、その長手方向に沿って一列に配置されている
    請求項1ないし3のいずれかに記載の心臓固定器具。
  5. 【請求項5】 前記接触部の内部に設置された回転軸
    と、該回転軸の回転位置を位置決めする位置決め手段と
    を有し、 前記爪は、前記回転軸を中心として回転することにより
    突出状態を調節可能である請求項1ないし4のいずれか
    に記載の心臓固定器具。
  6. 【請求項6】 前記回転軸を回転させる回転操作部を有
    する請求項5に記載の心臓固定器具。
  7. 【請求項7】 前記支持部は、一対の腕部を有し、 前記各接触部は、それぞれ、前記各腕部の下端部に設置
    されており、 前記両腕部は、互いに回動可能に連結されている請求項
    1ないし6のいずれかに記載の心臓固定器具。
  8. 【請求項8】 前記両接触部の間隔が可変であり、前記
    両接触部の間隔を調節する間隔操作部を有する請求項1
    ないし7のいずれかに記載の心臓固定器具。
  9. 【請求項9】 開胸器に固定可能な固定部を有する請求
    項1ないし8のいずれかに記載の心臓固定器具。
  10. 【請求項10】 前記固定部は、前記接触部の前記開胸
    器に対する位置を調節可能である請求項9に記載の心臓
    固定器具。
  11. 【請求項11】 内視鏡の先端部を装着可能な内視鏡装
    着部を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の心
    臓固定器具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7722639B2 (en) * 2004-09-09 2010-05-25 Dowling Brian T Surgical retraction device for removal of small organs
KR101020110B1 (ko) 2007-08-21 2011-03-09 재단법인 아산사회복지재단 심방중격결손증 수술용 격리기구
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KR101817723B1 (ko) 2016-09-01 2018-01-11 연세대학교 산학협력단 수술용 운드 리트렉터
WO2022222063A1 (zh) * 2021-04-21 2022-10-27 深圳市中医院 一种伤口肉芽修剪撑开器

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