JP2002060649A - カーボンブラック製造用原料油噴射ノズル - Google Patents

カーボンブラック製造用原料油噴射ノズル

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ノズルを損傷することなく安定に操業でき、
カーボンブラック生成収率の低下を招くことなく、品質
変動が小さく、品質安定性に優れたカーボンブラック製
造用原料油噴射ノズルを提供する。 【解決手段】 炉頭部の燃焼域と、引き続く原料導入
域、反応域、反応停止域とからなり、燃焼域で燃料を燃
焼して高温燃焼ガス流を生成させ、原料導入域で高温燃
焼ガス流に直角方向から原料油を噴射導入し、引き続く
反応域で原料油を熱分解してカーボンブラックに転化さ
せ、次いで反応停止域で反応生成ガス流を急冷して反応
を終結させるカーボンブラック生成プロセスにおいて、
原料油噴射ノズルの最外層環状部を流れる冷却水が往路
と復路に2分割され、ノズル先端部で往路から復路へと
変換する冷却水流路を構成し、かつ、原料油噴射ノズル
の外径d(mm)を、装着するノズル数N(本、但し、N≧
2)との積Ndと原料油導入域の炉内径D(mm)との比N
d/Dの値が1.3未満の関係に設定されたことを特徴
とする、カーボンブラック製造用原料油噴射ノズル。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オイルファーネス
法によるカーボンブラック生成プロセスにおいて反応炉
に原料油を供給するための原料油噴射ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】オイルファーネスブラックの基本的な製
造技術は、耐火煉瓦で内張りした円筒状の燃焼域、反応
域および反応停止域を同軸的に連設した反応炉を用い、
燃焼域で燃料を燃焼させて高温の燃焼ガスを生成させ、
燃焼ガス流を引き続く反応域に導いて燃焼ガス流中に原
料炭化水素油を導入して原料炭化水素油の不完全燃焼お
よび熱分解反応により炭化水素をカーボンブラックに転
化させ、次いで反応停止域においてカーボンブラック含
有ガス流を急冷して反応を終結させ、最終的にカーボン
ブラックを捕集工程で回収するプロセスからなってい
る。
【0003】カーボンブラックはゴム補強用充填材や顔
料用着色材などとして広く使用されており、例えば高耐
摩耗性が要求される自動車タイヤトレッド用のカーボン
ブラックには粒子径の小さい高比表面積のカーボンブラ
ックが有用されており、この種のカーボンブラックは、
例えば図3に例示するような反応炉により製造されてい
る。
【0004】すなわち、図3はカーボンブラック製造用
の反応炉を例示した断面略図で、反応炉炉頭に燃焼域
1、引き続きその下流に原料導入域2、反応域3、反応
停止域4が同軸上に連設され、各部位は耐火煉瓦で内張
りされて円筒型構造に構築されている。
【0005】燃焼域1は上流に接線方向から空気などの
酸化剤導入ダクト5と軸方向に燃焼用バーナ6を装着し
た広径燃焼室として形成され、その下流には燃焼室の出
口テーパー部位により原料導入域2が連設されている。
円筒状の原料導入域2には原料油噴射ノズル7が炉軸に
対し直角方向に、すなわち流下する燃焼ガス流に対して
直角方向から原料が導入される方向に複数本(通常2〜
6本)が装着されている。原料導入域2の下流出口端に
は円筒状の反応域3が連設され、反応域3の下流側には
反応停止域4が形成されている。反応停止域4には急冷
用水導入ノズル8が装着され、生成したカーボンブラッ
クを含有する反応ガス流に冷却水を噴霧導入して急冷
し、反応を終結させる。なお、反応停止域4の下流側は
図示しない捕集系統に接続している。
【0006】この反応炉において、高温の燃焼ガス流中
に原料油を噴射する原料油噴射ノズル7は常時高温の燃
焼ガス雰囲気に曝されているので、通常、通水して冷却
しながら使用されている。すなわち、冷却することによ
り原料油の異常高温化によるコーキングの発生を防止す
るとともにノズルの材質劣化や焼損の防止を図ってい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、原料油
噴射ノズル7の過度の冷却は、予熱された原料油の温度
低下を招き、原料油を熱分解してカーボンブラックに転
化する際の熱エネルギーを増大させることとなり、カー
ボンブラックの生成収率を低下させる一因ともなる。更
に、原料油導入時にはノズル周辺の炉内温度が局所的に
低下することになるので、原料油噴射ノズル7の周辺部
を中心に温度分布が生じ、熱分解温度のバラツキによる
カーボンブラックの品質、例えば比表面積(粒子径)の
変動を増大させることになる。
【0008】すなわち、原料油噴射ノズル7を過度に冷
却したり、ノズルの数が多く、その外径が大きい程、カ
ーボンブラックの生成収率および品質変動に大きな影響
を与えることになり、ノズルが損傷しない限度において
過度の冷却を避け、またノズル数およびその外径を適切
な値に設定することが望ましいことになる。
【0009】そこで、本発明者は原料油噴射ノズル7の
水冷構造について検討を行い、簡略なノズル構造で的確
に冷却することにより、カーボンブラック生成収率の低
下を抑制するとともに品質の安定化を図ることができる
ことを見出した。
【0010】すなわち、本発明はこの知見に基づいて完
成したもので、その目的は原料油噴射ノズルを損傷する
ことなく安定に操業でき、かつカーボンブラック生成収
率の低下を招くことなく、品質変動が小さく品質安定性
に優れたカーボンブラック製造用の原料油噴射ノズルを
提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係るカーボンブラック製造用原料油噴射ノズ
ルは、炉頭部の燃焼域と、引き続く原料導入域、反応
域、反応停止域とからなり、燃焼域で燃料を燃焼して高
温燃焼ガス流を生成させ、原料導入域で高温燃焼ガス流
に直角方向から原料油を噴射導入し、引き続く反応域で
原料油を熱分解してカーボンブラックに転化させ、次い
で反応停止域で反応生成ガス流を急冷して反応を終結さ
せるカーボンブラック生成プロセスにおいて、原料油噴
射ノズルの最外層環状部を流れる冷却水が往路と復路に
2分割され、ノズル先端部で往路から復路へと変換する
冷却水流路を構成し、かつ、原料油噴射ノズルの外径d
(mm)を、装着するノズル数N(本、但し、N≧2)との
積Ndと原料油導入域の炉内径D(mm)との比Nd/Dの
値が1.3未満の関係に設定されたことを構成上の特徴
とする。
【0012】
【発明の実施の形態】図3に例示したカーボンブラック
製造用の反応炉において、原料導入域2に原料油を導入
する原料油噴射ノズル7の構造の一例を図1、図2に例
示した。すなわち、図1は原料油噴射ノズル7の正面
図、図2はノズル先端部の側断面図であり、図1は図2
のBB断面図、図2は図1のAA断面図である。
【0013】図1において、9は原料油の導管でその先
端孔から原料油が噴射され、高温燃焼ガス流中に直角方
向から霧化導入される。ノズルの最外層の環状部は冷却
水の流路10であり、冷却水流路10は仕切板11によ
って噴射ノズルの長さ方向に2分割され、冷却水の往路
12と復路13に分割されている。14は原料油導管9
の外壁と冷却水流路10の内壁により形成される空間で
あり、空気などの気体による断熱層として機能する。
【0014】図2は、図1に例示した原料油噴射ノズル
7のノズル先端部のAA断面図であり、図1と同じ部位
は同じ符号で示してある。図1、図2において、冷却水
流路10はノズル先端部のチップ部位において冷却水変
換流路15により冷却水が往路12から復路13へと変
換される。なお、図2は冷却水が往路から復路へと変換
されて流れている状態を示している。
【0015】このように冷却水の流路を、ノズルの長さ
方向に往路と復路に2分割した水冷構造とすることによ
りノズル構造を簡素化することができ、ノズルの外径d
(mm)を小さくすることができる。そして、ノズル外径d
を小さくすることにより、高温燃焼ガス流中に原料油を
噴射導入した時に生じる局所的温度低下、および、原料
油噴射ノズルの周辺部を中心に生じる温度分布を、より
小さくすることが可能となる。
【0016】しかしながら、単にノズル外径を小さくし
たのみでは充分でなく、外径の小さな原料油噴射ノズル
が多数装着された場合には、原料油導入時に生じる局所
的温度降下や温度分布の拡がりも増大することになる。
すなわち、ノズル外径とその数が局所的温度降下および
温度分布に大きく影響することになる。
【0017】したがって、原料油噴射ノズルの外径d(m
m)と装着するノズルの数N(本)との積Ndの値を、原
料油導入域の空間との関係において設定することが重要
であり、それにより原料油導入域の局所的温度降下およ
び温度分布の影響をより少なくすることができる。
【0018】すなわち、本発明は、原料油噴射ノズルの
外径d(mm)と装着するノズルの数N(本、但し、N≧
2)との積Ndの値を、原料油導入域の炉内径D(mm)と
の関係において、その比Nd/Dを定義し、その値(N
d/D)を1.3未満の関係に設定することにより、原
料油噴射導入時における局所的温度降下および温度分布
の拡がりに基づく、カーボンブラックの生成収率の低下
および品質変動の増大の抑制を図るものである。好まし
くは、Nd/D<1.0に設定される。なお、装着する
原料油噴射ノズルの本数が1本の場合には、原料導入
域、更に反応域における原料油密度の偏りが大きくなっ
て、品質変動が増大するため、原料油密度に著しい偏り
が生じないように、装着するノズルの数は2本以上、望
ましくは3〜5本程度を対象位置に装着する。
【0019】更に、本発明の原料油噴射ノズルは、原料
油導管9の外壁と冷却水流路10の内壁により形成され
る空間14が断熱層として機能し、例えば空気などの気
体を断熱層に循環させることにより、原料油の無用な冷
却や過度の冷却が抑制されるので、原料油の熱損失によ
るカーボンブラックの生成収率の低下も抑制することが
できる。空間14を断熱層として充分に機能させるため
には1mm以上の厚さがあることが好ましい。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して詳
細に説明する。
【0021】実施例1〜5、比較例1〜4 内径500mm、長さ1500mmの燃焼域1、周辺から半
径方向(燃焼ガス流に直角方向)にN本の原料油噴射ノ
ズル7を対象位置に装着した、内径Dmm、長さ500mm
の原料導入域2、原料油を熱分解してカーボンブラック
に転化し、次いで急冷して反応を終結させる内径600
mm、長さ3000mmの反応域3および反応停止域4を同
軸上に連設した、図3に示した反応炉によりカーボンブ
ラックを製造した。なお、原料油噴射ノズル7は原料導
入域2の上流端から100mmの位置に装着した。
【0022】上記の反応炉を用いて、外径dmmの異なる
原料油噴射ノズル7を装着し、また断熱層の厚さLmmを
変えてカーボンブラックを製造した。なお、原料油には
比重(15/4 ℃) 1.103のクレオソート油を使用し
た。
【0023】このようにして製造したカーボンブラック
の生成収率を求め、また窒素吸着比表面積(N2SA)を測定
して20個の測定値から標準偏差を求めて、品質の変動
を比較した。得られた結果を表1(実施例)、表2(比
較例)に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】表1、2より、実施例では、比較例に比べ
て、いずれもカーボンブラックの生成収率が高位にあ
り、また窒素吸着比表面積(N2SA)の変動(標準偏差)も
小さいことが認められる。なお、断熱層がない実施例5
は原料油の熱損失により、若干生成収率が低下傾向にあ
るが、品質の変動には大きな影響は認められない。これ
に対し、本発明の要件を外れる比較例1〜3は、生成収
率が低位にあり、窒素吸着比表面積(N2SA)の変動(標準
偏差)も大きいことが判る。また、原料油噴射ノズルを
1本装着した比較例4ではカーボンブラック生成収率
は、実施例と同等のレベルにあるが、品質変動が大きい
ことが認められる。
【0027】
【発明の効果】以上のとおり、本発明のカーボンブラッ
ク製造用原料油噴射ノズルによれば、冷却水の流路を、
ノズルの長さ方向に往路と復路に2分割した水冷構造と
することによりノズル構造を簡素化し、ノズル外径d(m
m)を小さくすることができる。そして、原料油噴射ノズ
ルの外径d(mm)と装着するノズルの数N(本、但し、N
≧2)との積Ndの値を、原料油導入域の炉内径D(mm)
との関係において、Nd/Dの値を1.3未満の関係に
設定することにより、高温燃焼ガス流中に原料油を噴射
導入した時に生じる局所的温度降下、および、原料油噴
射ノズルの周辺部を中心に生じる温度分布の拡がりを抑
制することにより、カーボンブラックの生成収率の低下
および品質変動の増大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原料油噴射ノズルの正面図である。
【図2】本発明の原料油噴射ノズル先端部の側断面図で
ある。
【図3】本発明の原料油噴射ノズルが適用される反応炉
を例示した略断面図である。
【符号の説明】
1 燃焼域 2 原料導入域 3 反応域 4 反応停止域 5 酸化剤導入ダクト 6 燃焼用バーナ 7 原料油噴射ノズル 8 急冷用水導入ノズル 9 原料油導管 10 冷却水の流路 11 仕切板 12 冷却水往路 13 冷却水復路 14 空間 15 冷却水変換流路

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炉頭部の燃焼域と、引き続く原料導入
    域、反応域、反応停止域とからなり、燃焼域で燃料を燃
    焼して高温燃焼ガス流を生成させ、原料導入域で高温燃
    焼ガス流に直角方向から原料油を噴射導入し、引き続く
    反応域で原料油を熱分解してカーボンブラックに転化さ
    せ、次いで反応停止域で反応生成ガス流を急冷して反応
    を終結させるカーボンブラック生成プロセスにおいて、
    原料油噴射ノズルの最外層環状部を流れる冷却水が往路
    と復路に2分割され、ノズル先端部で往路から復路へと
    変換する冷却水流路を構成し、かつ、原料油噴射ノズル
    の外径d(mm)を、装着するノズル数N(本、但し、N≧
    2)との積Ndと原料油導入域の炉内径D(mm)との比N
    d/Dの値が1.3未満の関係に設定されたことを特徴
    とする、カーボンブラック製造用原料油噴射ノズル。
  2. 【請求項2】 原料油導管と冷却水流路の間に、厚さ1
    mm以上の断熱層を形成した、請求項1記載のカーボンブ
    ラック製造用原料油噴射ノズル。
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