JP2002039945A - 酸素センサー - Google Patents

酸素センサー

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JP2002039945A
JP2002039945A JP2000219768A JP2000219768A JP2002039945A JP 2002039945 A JP2002039945 A JP 2002039945A JP 2000219768 A JP2000219768 A JP 2000219768A JP 2000219768 A JP2000219768 A JP 2000219768A JP 2002039945 A JP2002039945 A JP 2002039945A
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JP
Japan
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oxygen
group
polymer
sensor
fluorine
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Pending
Application number
JP2000219768A
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English (en)
Inventor
Yutaka Amao
豊 天尾
Yoshihiko Yamashita
祐彦 山下
Kunio Kimura
邦生 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 膜中で酸素が迅速かつ均一に分散できる酸素
透過性ポリマーを用いた酸素センサーの提供。 【解決手段】 酸素透過性ポリマー及び色素化合物から
なる光学的酸素センサー。該酸素透過性ポリマーは例え
ば、フッ素を含有するポリエーテルケトン及びフッ素を
含有するポリエーテルニトリルからなる群より選ばれる
少なくとも一種である。該フッ素を含有するポリエーテ
ルケトンは、下記式(I)で示される含フッ素アリール
エーテルケトン重合体である。 但し、Xはハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アル
コキシ基を表わし、qは0〜4の整数であり、nは重合
度を表し、mは0又は1の整数であり、及びRは下記
式(II)である。 該フッ素を含有するポリエーテルニトリルは、下記式
(III)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な光学的酸素
センサーに関するものである。より詳しくは、本発明
は、膜中で酸素が迅速かつ均一に分散できる高分子を用
いた光学的酸素センサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、酸素センサーは、様々な分野にお
いて使用されている。例えば、環境科学分野では、大気
中や水中の酸素濃度の測定が恒常的に行なわれている。
また、医学分野においては、呼気や血液中の酸素濃度
は、患者の健康診断の鍵となる生理学的パラメーターで
あるが、特に高齢者や乳児などでは採血が困難である場
合が多いため、皮膚上に酸素センサーを設置して皮膚を
通して酸素を測定する方法の開発がなされている。さら
に、生化学分野では、酸素消費を伴う酵素反応、光合成
による酸素発生反応のみならず、微生物による抗生物質
や抗がん剤の生産などバイオテクノロジー産業において
も酸素濃度測定が重要である。さらに最近では、上記分
野に加えて、航空宇宙技術の分野においても、固体表面
上の局所的な酸素圧を測定することにより、風速の測定
が可能となりつつある。このように酸素センサーは様々
な分野においてその重要性が高まってきている。
【0003】現在、実用化されている酸素センサーとし
ては、半導体表面への酸素分子の吸着による電気抵抗の
変化を測定する半導体酸素センサー;ジルコニアの酸素
イオン導電性を利用したジルコニア酸素センサー;分子
状酸素の電気化学的還元の電流値を測定するクラーク型
酸素センサーなどがある。しかしながら、上記酸素セン
サーのうち、ジルコニア酸素センサーは高温においてし
か使用できないという欠点があり、また、半導体酸素セ
ンサーは酸素以外のフリーラジカルによって干渉を受け
易いという問題がある。さらに、クラーク型酸素センサ
ーは装置の小型化などが困難であり、電気的干渉を受け
やすい上、酸素を消費するなどの欠点がある。
【0004】このような欠点や問題を克服するために、
近年、色素の発光強度から気体中の酸素分圧を測定する
光学的酸素圧センサーが注目されている。この酸素圧セ
ンサーは、気体が空気の場合には空気中の酸素比が一定
なので、酸素分圧から空気圧を測定したり、さらには空
気の流れをも容易に測定することができる。この光学的
酸素圧センサーは、基本信号が光であるため電気的な影
響を受けにくいこと、光ファイバーなどを用いることに
よって小型化することが可能であることなどの利点があ
り、簡便かつ高感度な手法として期待される。このよう
な光学的酸素センサーとしては、色素の発光強度変化を
利用する光学的酸素センサーやレーザーフラッシュ法を
用いた光励起三重項状態の寿命変化による光学的酸素セ
ンサーなどが考案されてきてはいるものの、これらはい
ずれも開発途上であり実用にはいまだ至っていない。
【0005】これらの酸素センサーうち、前者の酸素セ
ンサーは、光励起状態の色素と酸素との反応(消失反
応)を利用したものであり、色素を高分子などの膜中に
固定化した後、光照射を行なって反射光の発光強度や発
光寿命を測定し、これから酸素圧(酸素濃度)を求める
というものである。このようなタイプの光学的酸素セン
サーの多くは、酸素透過性ポリマーを用いて色素を基板
上に固定化した酸素センシング膜を用いるものである
が、ポリマーと色素との相互作用があるため、酸素セン
サー特性は用いたポリマーの性質によってかなり左右さ
れる。このため、ポリマーの選択が酸素センサーの性能
に大きな影響を与える。例えば、酸素に対して高感度で
かつ安定な光学的酸素センサーを構築するためには、ポ
リマーは、(1)ポリマー膜の酸素透過性が大きい;
(2)光照射に対するポリマー膜の安定性が優れてい
る;(3)ポリマー膜内の酸素の拡散速度が速い;及び
(4)温度による酸素の拡散速度の変化が小さいなどの
条件を満たすことが要求される。現在、酸素センサーに
おいて色素を固定化するために主に使用される高分子と
しては、ポリスチレン(天尾 豊ら、現代化学、338
巻、5号、43〜50頁、1999年5月)、塩化ポリ
ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリ(イソブチルメ
タクリレート−トリフルオロエチルメタクリレート)、
ポリ(スチレン−トリフルオロエチルメタクリレート)
及びポリ(スチレン−co−ペンタフルオロスチレン)
(Y. Amao et al., Anal. Commun., 36, pp.367-369, 19
99)などの高分子が使用されいる。しかしながら、ポリ
スチレンをはじめとする上記高分子を用いて色素を固定
化してなる酸素センサーは、上記要件のうち、特に
(3)の条件を十分満たしておらず、言い換えると、酸
素が当該高分子膜中で迅速にかつ均一に分散できず、酸
素が基板側の色素にまで迅速に到達できず、ゆえに基板
内に異なる酸素感受性部位が存在してしまう。このた
め、酸素濃度に対する発光強度の変化は、低濃度領域で
は良好な直線性を示すものの、例えば、30%を超える
高酸素濃度領域では発光強度が一定値に近づいてしま
い、高感度で酸素濃度を測定できないという問題が生じ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、膜中で酸素が迅速かつ均一に分散できる酸素透
過性ポリマーを用いた酸素センサーを提供することであ
る。
【0007】本発明の他の目的は、膜内での酸素透過性
が大きく、光照射に対する膜の優れた安定性を示し、膜
内の酸素の拡散速度が速く、かつ温度による酸素の拡散
速度の変化が小さいなどの条件を満たす酸素透過性ポリ
マーを用いた酸素センサーを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、色素化合物を固定化する膜に使用さ
れる高分子について鋭意検討を行なった結果、特定のポ
リマー中に色素化合物を固定化した膜は酸素を迅速かつ
均一に分散することができ、酸素が基板側の色素化合物
にまで迅速に到達でき、ゆえに基板内に酸素感受性部位
がほぼ同等に存在するため、酸素濃度に対する発光強度
の変化が低濃度から高濃度までの広い領域で良好な直線
性を示し、高酸素濃度領域でも酸素圧(酸素濃度)を高
感度で測定できることを知得した。この知見に基づい
て、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、上記目的は、下記(1)〜
(6)によって達成される。
【0010】(1) 酸素透過性ポリマーおよび色素化
合物からなる光学的酸素センサー。
【0011】(2) 前記酸素透過性ポリマーは、ポリ
エーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エポキシ
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネ
ート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスルフィド、
ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ
エーテルスルホン及びポリアミドイミド、ならびにこれ
らのフッ素含有ポリマーからなる群より選ばれる少なく
とも一種である、前記(1)に記載の酸素センサー。
【0012】(3) 前記酸素透過性ポリマーはフッ素
を含有するポリエーテルケトン及びフッ素を含有するポ
リエーテルニトリルからなる群より選ばれる少なくとも
一種である、前記(2)に記載の酸素センサー。
【0013】(4) 前記フッ素を含有するポリエーテ
ルケトンは、下記式(I):
【0014】
【化4】
【0015】ただし、Xはハロゲン原子、低級アルキル
基または低級アルコキシ基を表わし、qは0〜4の整数
であり、nは重合度を表し、mは0または1の整数であ
り、およびR1は下記式(II):
【0016】
【化5】
【0017】この際、X’はハロゲン原子、低級アルキ
ル基または低級アルコキシ基を表わし、q’は0〜4の
整数であり、pは0または1の整数であり、およびR2
は2価の有機基を表わす、で示される含フッ素アリール
エーテルケトン重合体である、前記(3)に記載の酸素
センサー。
【0018】(5) 前記含フッ素アリールエーテルケ
トン重合体は、下記式(VIII):
【0019】
【化6】
【0020】ただし、nは重合度を表し、およびR2
下記6種:
【0021】
【化7】
【0022】のいずれかである、で示されるものであ
る、前記(4)に記載の酸素センサー。
【0023】(6) 前記フッ素を含有するポリエーテ
ルニトリルは、下記式(III):
【0024】
【化8】
【0025】ただし、Y1は、置換基を有してもよい炭
素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい
炭素原子数1〜12のアルコキシ基、置換基を有しても
よい炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を
有してもよい炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、置
換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリール基、
置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリールオ
キシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のア
リールアミノ基または置換基を有してもよい炭素原子数
6〜20のアリールチオ基を表わし;Y2は、2価の有
機基を表わし;ならびにzは重合度を表わす、で示され
るポリシアノアリールエーテルである、前記(3)に記
載の酸素センサー。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】本発明は、酸素透過性ポリマーおよび色素
化合物からなる光学的酸素センサーを提供するものであ
る。
【0028】本発明の光学的酸素センサーは、光励起状
態の色素化合物と酸素との消光反応を利用したものであ
り、その原理は色素化合物を酸素透過性ポリマーの膜中
に固定化した後、光照射を行なって、反射光の発光強度
や発光寿命を測定し、これから酸素圧(酸素濃度)を求
めるものである。より具体的には、図1に示されるよう
に、一般に光励起された色素分子は励起波長よりも長波
長の光(蛍光またはりん光)を放出して基底状態へ戻る
が、この時に酸素分子が存在すると、酸素分子へのエネ
ルギー移動により消光現象が起こり、蛍光あるいはりん
光強度が減少する。この際、蛍光は励起一重項状態から
基底状態への遷移であり(図1における過程1)、発光
寿命は数ナノ秒から数百ナノ秒と非常に短いため、一般
には励起一重項状態の色素分子は酸素分子と反応せずに
消光されない場合が多い。一方、りん光は電子スピンの
反転と励起三重項状態から基底一重項状態への遷移を含
むため(図1における過程2)、寿命は蛍光に比べて長
く数十マイクロ秒から10秒である。また、励起三重項
状態から酸素分子へはエネルギー移動が起こりやすいた
め、りん光は酸素分子により容易に消光される。上記消
光過程は、拡散律速であり、発光寿命あるいは発光強度
は下記Stern-Volmerの式(1)に従う。
【0029】
【数1】
【0030】上記式(1)において、I0及びIは、そ
れぞれ、酸素非存在時及び存在時の発光強度を表わし、
τ0及びτは、それぞれ、酸素非存在時及び存在時の発
光寿命を表わし、Po2は酸素圧を表わし、ならびにK
SVはStern-Volmer定数であり、消光速度定数kQと酸素
非存在時の発光寿命τ0の積で表わされる。したがっ
て、発光強度または発光寿命を測定することによって、
上記式(1)から酸素圧を求めることが可能である。
【0031】本発明の光学的酸素センサーは、公知の方
法と同様にして製造でき、例えば、色素化合物(酸素測
定用プローブ)を酸素透過性ポリマー中に均一に溶解
(または分散)させたものを基板上に塗付した後、固定
化してセンサー膜として調製することによって製造でき
る。
【0032】本発明の光学的酸素センサーに使用される
色素化合物は、特に制限されることなく、公知の色素化
合物を使用できる。具体的にては、ポルフィリン、フタ
ロシアニン及びフラビン等の複素環式化合物;ピレン、
ピレンブタン酸、キノリン及びフェナンスレン等の多環
式芳香族炭化水素;ならびにルテニウム錯体、オスミウ
ム錯体、イリジウム錯体及び白金錯体等の有機金属錯体
などが挙げられる。これらのうち、上記したように、り
ん光は蛍光に比して寿命が長く、酸素による消光効率が
高い上、りん光の発光波長が蛍光に比べて長波長であ
り、光学的に応用しやすいため、りん光を発する化合物
を色素化合物として使用することが好ましい。ゆえに、
複素環式化合物、より好ましくは白金(II)ポルフィ
リン、パラジウム(II)ポルフィリン及びルテニウム
(III)ポルフィリン等のポルフィリン、特に好まし
くは白金(II)ポルフィリン及びパラジウム(II)
ポルフィリンが本発明において色素化合物として好まし
く使用される。
【0033】本発明の光学的酸素センサーに使用される
酸素透過性ポリマーは、酸素を効率良く透過できるもの
であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、
膜にした際の酸素透過性が大きい;膜にした際の光照射
に対する安定性が優れている;膜にした際の膜内の酸素
の拡散速度が速い;及び温度による酸素の拡散速度の変
化が小さいなどの条件を満たすものである。このような
酸素透過性ポリマーとしては、ポリエーテルケトン、ポ
リエーテルニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテ
ル、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポ
リイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン
及びポリアミドイミド;ならびにこれらのフッ素含有ポ
リマーなどが挙げられる。上記した酸素透過性ポリマー
は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形
態で使用されてもよい。これらのポリマーのうち、フッ
素を含有するポリエーテルケトン及びフッ素を含有する
ポリエーテルニトリルが好ましい。
【0034】本発明において、フッ素を含有するポリエ
ーテルケトンを酸素透過性ポリマーとして使用する場合
のフッ素含有ポリエーテルケトンとしては、特に制限さ
れないが、酸素透過性、光照射に対する安定性、膜内の
酸素の拡散速度及び温度による酸素の拡散速度を考慮す
ると、下記式(I):
【0035】
【化9】
【0036】で示される重合体(以下、単に「含フッ素
アリールエーテルケトン重合体」ともいう)であること
が好ましく、下記で詳細に述べるが、下記式(VI)で
示される重合体が特に好ましい。
【0037】上記式(I)で示される含フッ素アリール
エーテルケトン重合体の各繰り返し単位は、下記式:
【0038】
【化10】
【0039】で示されるp−テトラフルオロベンゾイレ
ン基(本明細書では、単に「p−テトラフルオロベンゾ
イレン基」ともいう)及び下記式:
【0040】
【化11】
【0041】で示されるオキシアルキレン基(本明細書
では、単に「オキシアルキレン基」ともいう)がベンゼ
ン環の任意の位置に(オルト位、メタ位またはパラ位
に、特に好ましくはパラ位に)それぞれ結合し、ベンゼ
ン環の任意の残位がXで置換されるまたは置換されない
構造を有するものである。
【0042】上記式(I)において、Xは、ハロゲン原
子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ
素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、例え
ば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチ
ル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4
の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメチル
及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれらの
ハロゲン化アルキル基;低級アルコキシ基、例えば、メ
トキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブ
トキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1
〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、好ましくは
メトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメトキシ
等のこれらのハロゲン化アルコキシ基などを表わす。こ
れらのうち、フッ素原子が特にXとして好ましく使用さ
れる。上述したように、Xは、p−テトラフルオロベン
ゾイレン基及びオキシアルキレン基が結合しない残位の
水素原子の代わりに置換される基であるが、ベンゼン環
へのXの結合数、即ち、式(I)におけるqの値は、0
〜4の整数である。
【0043】また、上記式(I)において、mは0また
は1の整数であり、R1は、下記式(II):
【0044】
【化12】
【0045】で表される基である。
【0046】上記式(II)において、X’は、ハロゲ
ン原子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及び
ヨウ素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、
例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及び
ブチル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1
〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメ
チル及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれ
らのハロゲン化アルキル基;低級アルコキシ基、例え
ば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ
及びブトキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原
子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、好ま
しくはメトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメ
トキシ等のこれらのハロゲン化アルコキシ基などを表わ
す。これらのうち、フッ素原子が特にX’として好まし
く使用される。また、X’のベンゼン環への結合数、即
ち、式(II)におけるq’の値は、0〜4の整数であ
る。これらのうち、R1は、下記式(V):
【0047】
【化13】
【0048】で表される基であることが好ましい。
【0049】また、上記式(II)及び(V)におい
て、pは0または1の整数である。また、R2は、2価
の有機基を表わすが、具体的には、メチレン(−CH2
−)、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン(−C
2CH(CH3)−)、トリメチレン(−CH2CH2
2−)、テトラメチレン(−CH2(CH22CH
2−)、ペンタメチレン(−CH2(CH23CH
2−)、ヘキサメチレン(−CH2(CH24CH
2−)、プロペニレン(−CH2CH=CH−)、ビニレ
ン(−CH=CH−)、1,2,3−プロパントリイル
(−CH2CHCH2−)、2,2,3,3,4,4,
5,5−オクタフルオロヘキサメチレン(−CH2(C
24CH2−)、及び2,2,3,3,4,4,5,
5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタメチレン
(−CH2(CF26CH2−)等の、炭素原子数が、通
常、1〜12、好ましくは1〜6の直鎖若しくは分岐鎖
の、飽和若しくは不飽和アルキレン基;式:−CH2
CH2−O−CH2−CH2−で表わされる基;ならびに
o−、m−またはp−ベンゼンジメチレン、o−、m−
またはp−ベンゼンテトラフルオロジメチレン、o−、
m−またはp−フェニレン、2価のナフタレン、ビフェ
ニル、アントラセン、o−、m−またはp−テルフェニ
ル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエー
テル、ビフェニルスルホン、および下記5式:
【0050】
【化14】
【0051】で表わされる芳香族基などの2価の芳香族
基が挙げられる。なお、本発明による2価の有機基にお
いて、炭素原子に直接結合する水素がハロゲン原子、低
級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されていて
もよい。これらのうち、2価の芳香族基がR2として好
ましく、より好ましくは、下記7種:
【0052】
【化15】
【0053】で示される芳香族基がR2として使用され
る。
【0054】さらに、上記式(I)において、nは、重
合度を表わし、具体的には、2〜5000、好ましくは
5〜500である。さらに、本発明において、含フッ素
アリールエーテルケトン重合体は、同一の繰り返し単位
からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位から
なるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返
し単位はブロック状であったもまたはランダム状であっ
てもよい。
【0055】本発明において好ましく使用される含フッ
素アリールエーテルケトン重合体は、下記式(IV):
【0056】
【化16】
【0057】で示されるものである。なお、上記式(I
V)において、R1及びmは、上記式(I)における定義
と同様である。
【0058】なお、本発明による含フッ素アリールエー
テルケトン重合体の製造方法については以下に詳述する
が、この記載から、式(I)で示される含フッ素アリー
ルエーテルケトン重合体の末端は、p−テトラフルオロ
ベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基
側が水素原子であると、即ち、式(I)で示される含フ
ッ素アリールエーテルケトン重合体は、下記式(I
X):
【0059】
【化17】
【0060】で示される重合体、好ましくは下記式
(X):
【0061】
【化18】
【0062】で示される重合体であると考えられる。ま
た、本発明で使用される式(I)の含フッ素アリールエ
ーテルケトン重合体は架橋構造を有するものであっても
よい。
【0063】以下、本発明において特に好ましく使用さ
れる上記式(IV)で示される含フッ素アリールエーテ
ルケトン重合体について以下に詳述するが、上記式
(I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合
体は、例えば、置換した化合物を代わりに出発原料とし
て使用する、または下記合成方法において各工程間若し
くは全工程終了後の生成物の相当するベンゼン環に所望
の置換基を公知の方法を用いて導入するなどによって、
当業者により同様にして調製できる。
【0064】上記式(IV)において、mが0の場合に
は、下記式(VI):
【0065】
【化19】
【0066】ただし、nは重合度を表す、で示される含
フッ素アリールエーテルケトン重合体となる。
【0067】また、上記式(IV)において、mが1で
ありかつpが0である場合には、下記式(VII):
【0068】
【化20】
【0069】ただし、nは重合度を表す、で示される含
フッ素アリールエーテルケトン重合体となる。
【0070】さらに、上記式(IV)において、mが1
でありかつpが1である場合には、下記式(VII
I):
【0071】
【化21】
【0072】ただし、nは重合度を表し、およびR2
前記のとおりである、で示される含フッ素アリールエー
テルケトン重合体となる。なお、上記式(VIII)で
は、nは、重合度を表わすが、好ましくは、2〜200
0、より好ましくは5〜200である。
【0073】本発明による含フッ素アリールエーテルケ
トン重合体の製造方法は、特に制限されるものではな
く、公知の方法、例えば、K. Kimura et al., Polymer
Preprints, Vol. 39, No. 2, 1998に記載される方法が
使用できる。
【0074】より詳細に述べると、本発明による含フッ
素アリールエーテルケトン重合体が上記式(VI)また
は上記式(VII)で示される際の、含フッ素アリール
エーテルケトン重合体の製造方法を以下に説明する。
【0075】まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオ
ロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルク
ラフツ触媒の存在下で、例えば、メトキシベンゼンやエ
トキシベンゼン等のアルコキシベンゼンまたは4−メト
キシジフェニルエーテルや4−エトキシジフェニルエー
テル等の4−アルコキシジフェニルエーテルとフリーデ
ルクラフツ反応させることにより、p−(2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼ
ンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6
−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルをそ
れぞれ得、この反応産物を脱アルキル化反応することよ
って、下記式:
【0076】
【化22】
【0077】ただし、qは0または1の整数である、で
示される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイ
ル化合物(以下、単に「2,3,4,5,6−ペンタフ
ルオロベンゾイル化合物」と称する)を得る。
【0078】上記フリーデルクラフツ反応において、ア
ルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエー
テルの使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ
ベンゾイルクロライド1モル当たり、0.8〜1.2モ
ル、好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、ア
ルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエー
テルの使用量が0.8モル未満では、アルコキシベンゼ
ンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルに過剰に
2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導
入されてしまい好ましくない。これに対して、アルコキ
シベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの
使用量が1.2モルを越えると、未反応のアルコキシベ
ンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルが多量
に残り、生産性の面で好ましくない。
【0079】上記フリーデルクラフツ反応において効果
的に使用されるフリーデルクラフツ触媒としては、塩化
アルミニウム、塩化アンチモン、塩化第二鉄、塩化第一
鉄、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、四塩化錫、塩化ビ
スマス、塩化亜鉛、塩化水銀及び硫酸等が挙げられる。
また、フリーデルクラフツ触媒の使用量は、2,3,
4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モ
ルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル
である。
【0080】上記フリーデルクラフツ反応において使用
される有機溶剤は、酸クロライドと反応しないものでな
ければならない。このような有機溶剤としては、例え
ば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、二
硫化炭素及びニトロベンゼン等が挙げられる。この有機
溶剤における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベン
ゾイルクロライドの濃度は、1〜50質量%、好ましく
は5〜30質量%である。反応は、反応系を撹拌状態に
保ちながら、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の
温度で行なわれる。
【0081】このような反応によって得られる生成物
は、反応混合物に水を注加し、ジクロロメタン、ジクロ
ロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有
機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより
得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタ
ノールまたはエタノールで再結晶化することによって、
白色結晶として得てもよい。
【0082】次に、脱アルキル化処理について、以下に
説明する。すなわち、脱アルキル化反応は、酸、アルカ
リまたは有機金属試薬などを用いて行うことができる。
試薬としては、例えば、臭化水素、ヨウ化水素、トリフ
ルオロ酢酸、ピリジンの塩酸塩、濃塩酸、ヨウ化マグネ
シウムエーテラート(magnesium iodide etherate)、塩
化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三
ヨウ化ホウ素、水酸化カリウム及びグリニヤール試薬な
どが挙げられる。試薬の使用量は、p−(2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼ
ンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6
−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モ
ルに対して、0.1モル以上、好ましくは0.1〜30
モルである。
【0083】本発明において、脱アルキル化反応は、無
溶媒下で行われてもあるいは溶媒中で行われてもよい
が、反応効率や反応制御などを考慮すると、溶媒中で行
われることが好ましい。
【0084】本発明において、溶媒中で脱アルキル化反
応を行う際に効果的に使用される溶媒としては、例え
ば、水、酢酸、無水酢酸、ベンゼン及びテトラヒドロフ
ランなどが挙げられる。また、この溶媒中でのp−
(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ア
ルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,
3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニ
ルエーテルの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜
30質量%である。反応は、0〜250℃、好ましくは
50〜200℃の温度で行なわれる。
【0085】さらに、このようにして得られた2,3,
4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物を、塩基
性化合物の存在下で有機溶媒中で、30〜250℃、好
ましくは50〜200℃の反応温度で加熱することによ
って、上記式(VI)および(VII)で示される含フ
ッ素アリールエーテルケトン重合体が得られる。
【0086】上記重合反応で使用される有機溶媒として
は、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−
ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やト
ルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で
または2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0087】また、有機溶媒における2,3,4,5,
6−ペンタフルオロベンゾイル化合物の濃度は、5〜5
0質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
【0088】トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段
階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する
水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除
去できる。
【0089】本発明において使用される塩基性化合物
は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集する
ことにより重縮合反応を促進するよう作用する。このよ
うな塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭
酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げられる。
【0090】また、上記重合反応において、塩基性化合
物の使用量は、使用される2,3,4,5,6−ペンタ
フルオロベンゾイル化合物1モルに対して、0.5〜1
0モル、好ましくは0.5〜5モルである。
【0091】重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等に
より溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄する
ことによって、所望の重合体が得られる。または、反応
溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることによ
り、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により
分離することによって、重合体を得てもよい。
【0092】次に、本発明による含フッ素アリールエー
テルケトン重合体が上記式(VIII)で示される際
の、含フッ素アリールエーテルケトン重合体の製造方法
を以下に説明する。
【0093】まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオ
ロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルク
ラフツ触媒の存在下で、ジフェニルエーテルとフリーデ
ルクラフツ反応させることよって、下記式:
【0094】
【化23】
【0095】で示される4,4’−ビス(2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテ
ル(以下、単に「4,4’−ビス(2,3,4,5,6
−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル」ま
たは「BPDE」と称する)を得る。
【0096】上記フリーデルクラフツ反応において、ジ
フェニルエーテルの使用量は、2,3,4,5,6−ペ
ンタフルオロベンゾイルクロライド1モル当たり、0.
4〜0.6モル、好ましくは0.45〜0.55モルで
ある。すなわち、ジフェニルエーテルの使用量が0.4
モル未満では、ジフェニルエーテルに過剰に2,3,
4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導入されて
しまい好ましくない。これに対して、ジフェニルエーテ
ルの使用量が0.6モルを越えると、未反応のジフェニ
ルエーテルが多量に残り、生産性の面で好ましくない。
【0097】上記フリーデルクラフツ反応において効果
的に使用されるフリーデルクラフツ触媒としては、塩化
アルミニウム、塩化アンチモン、塩化第二鉄、塩化第一
鉄、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、四塩化錫、塩化ビ
スマス、塩化亜鉛、塩化水銀及び硫酸等が挙げられる。
また、フリーデルクラフツ触媒の使用量は、2,3,
4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モ
ルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル
である。
【0098】上記フリーデルクラフツ反応において使用
される有機溶剤としては、酸クロライドと反応しない溶
剤が使用できる。このような有機溶剤としては、例え
ば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、二
硫化炭素及びニトロベンゼン等が挙げられる。この有機
溶剤における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベン
ゾイルクロライドの濃度は、1〜50質量%、好ましく
は5〜30質量%である。また、反応は、反応系を撹拌
状態に保ちながら、0〜150℃、好ましくは0〜10
0℃の温度で行なわれる。
【0099】このような反応によって得られる生成物
は、反応混合物に水を注加し、ジクロロメタン、ジクロ
ロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有
機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより
得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタ
ノールまたはエタノールで再結晶化することによって、
白色結晶として得てもよい。
【0100】さらに、このようにして得られた4,4’
−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイ
ル)ジフェニルエーテル(BPDE)を、塩基性化合物
の存在下で有機溶媒中で、下記式(XIV):
【0101】
【化24】
【0102】ただし、R2は上記式(II)及び(V)
における定義と同様である、で示される2価のフェノー
ル化合物と共に加熱することよって、上記式(VII
I)で示される含フッ素アリールエーテルケトン重合体
が得られる。
【0103】上記反応において、反応温度は、20〜1
50℃、好ましくは50〜120℃である。この際、こ
のように低温度で反応することで副反応を抑制し、重合
体のゲル化を防止することができる。
【0104】上記重合反応で使用される有機溶媒として
は、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−
ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やト
ルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で
または2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0105】また、有機溶媒における4,4’−ビス
(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジ
フェニルエーテルの濃度は、5〜50質量%、好ましく
は、10〜30質量%である。
【0106】トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段
階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する
水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除
去できる。
【0107】本発明において使用される塩基性化合物
は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集する
ことにより重縮合反応を促進するよう作用し、さらにフ
ェノール化合物をより反応性の高いアニオンに変える作
用がある。このような塩基性化合物としては、例えば、
炭酸カリウム、炭酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げ
られる。
【0108】また、上記重合反応において、塩基性化合
物の使用量は、使用される4,4’−ビス(2,3,
4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエ
ーテル1モルに対して、1〜20モル、好ましくは1〜
10モルである。
【0109】上記重合反応において使用される2価のフ
ェノール化合物としては、上記式(XIV)で示される
ものであれば特に制限されないが、例えば、2,2−ビ
ス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,
3−へキサフルオロプロパン(以下、「6FBA」とい
う)、ビスフェノールA(以下、「BA」という)、
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン
(以下、「HF」という)、ビスフェノールF(以下、
「BF」という)、ハイドロキノン(以下、「HQ」と
いう)、レゾルシノール(以下、「RS」という)およ
び2−(3−オキシフェニル)−2−(4’−オキシフ
ェニル)プロパン(以下、「3,4’−BA」という)
などが挙げられる。また、2価のフェノール化合物の使
用量は、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタ
フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対し
て、0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モ
ルである。
【0110】重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等に
より溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄する
ことによって、所望の重合体が得られる。または、反応
溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることによ
り、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により
分離することによって、重合体を得てもよい。
【0111】このようにして製造された含フッ素アリー
ルエーテルケトン重合体は、(1)ポリマー膜の酸素透
過性が大きい;(2)光照射に対するポリマー膜の安定
性が優れている;(3)ポリマー膜内の酸素の拡散速度
が速い;及び(4)温度による酸素の拡散速度の変化が
小さいなどの条件を満たすものであり、この含フッ素ア
リールエーテルケトン重合体を酸素透過性ポリマーとし
て用いて作製された酸素センサーは、0〜100%のす
べての酸素濃度領域で適用が可能であり、かつ高酸素濃
度領域でも容易に酸素圧(酸素濃度)測定できる。
【0112】本発明において、フッ素を含有するポリエ
ーテルニトリルを酸素透過性ポリマーとして使用する場
合のフッ素を含有するポリエーテルニトリルとしては、
特に制限されないが、酸素透過性、光照射に対する安定
性、膜内の酸素の拡散速度及び温度による酸素の拡散速
度を考慮すると、下記式(III):
【0113】
【化25】
【0114】で示される重合体(以下、単に「ポリシア
ノアリールエーテル」ともいう)であることが特に好ま
しい。
【0115】上記式(III)において、Y1は、置換
基を有してもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、例
えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、
ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘ
プチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデ
シル及び2−エチルヘキシル、好ましくはメチル、エチ
ル、プロピル及びブチル;置換基を有してもよい炭素原
子数1〜12のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エト
キシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチ
ルオキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキ
シ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウ
ンデシルオキシ、ドデシルオキシ、フルフリルオキシ及
びアリルオキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロ
ポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ;置換基を有して
もよい炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基、例え
ば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジ
エチルアミノ、プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、s
ec−ブチルアミノ及びtert−ブチルアミノ、好ま
しくはメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ及
びジエチルアミノ;置換基を有してもよい炭素原子数1
〜12のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチル
チオ、プロピルチオ及びn−ブチルチオ、sec−ブチ
ルチオ、tert−ブチルチオ及びiso−プロピルチ
オ、好ましくは、メチルチオ、エチルチオ及びプロピル
チオ;置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリ
ール基、例えば、フェニル、ベンジル、フェネチル、o
−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4
−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナ
ントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及
びピレニル、好ましくはフェニルならびにo−,m−及
びp−トリル;置換基を有してもよい炭素原子数6〜2
0のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、ベンジル
オキシ、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例え
ば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチル
エステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステ
ル及びフェニルエステルなど;以下、同様)、ナフトキ
シ、o−,m−若しくはp−メチルフェノキシ、o−,
m−若しくはp−フェニルフェノキシ、フェニルエチニ
ルフェノキシ、ならびにクレソチン酸及びそのエステル
類、好ましくはフェノキシ及びナフトキシ;置換基を有
してもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ基、例
えば、アニリノ、o−,m−若しくはp−トルイジノ、
1,2−若しくは1,3−キシリジノ、o−,m−若し
くはp−メトキシアニリノならびにアントラニル酸及び
そのエステル類、好ましくはアニリノ及びo−,m−若
しくはp−トルイジノ;または置換基を有してもよい炭
素原子数6〜20のアリールチオ基、例えば、フェニル
チオ、フェニルメタンチオ、o−,m−若しくはp−ト
リルチオならびにチオサリチル酸及びそのエステル類、
好ましくはフェニルチオを表わす。これらのうち、置換
基を有してもよいアリールオキシ基、アリールチオ基お
よびアリールアミノ基が好ましく、さらに、フェノキ
シ、フェニルチオ及びアニリノがY1として最も好まし
い。
【0116】また、上記式(III)において、Y1
置換基を有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルア
ミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ
基、アリールアミノ基またはアリールチオ基を表わす際
に使用できる置換基としては、目的物の所望の特性に応
じて適宜選択でき、特に制限されるものではないが、例
えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、例えば、メチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブ
チル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、
イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オ
クチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル;ハ
ロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素;
シアノ基、ニトロ基ならびにカルボキシエステル基など
が挙げられる。これらのうち、好ましくはメチル及びカ
ルボキシエステル基である。
【0117】さらに、上記式(III)において、Y2
は、2価の有機基を表わし、例えば、下記式:
【0118】
【化26】
【0119】これらのうち、下記式:
【0120】
【化27】
【0121】で示される2価の有機基がY2として好ま
しく、特に下記式:
【0122】
【化28】
【0123】で示される2価の有機基がY2として好ま
しい。
【0124】さらに、上記式(III)において、zは
重合度を表わし、具体的には、5〜1000、好ましく
は10〜500である。なお、本発明のポリシアノアリ
ールエーテルは、上記式(III)の構成単位の同一の
繰り返し単位からなるものであったもまたは異なる繰り
返し単位からなるものであってもよく、後者の場合に
は、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはラ
ンダム状であってもよい。
【0125】また、本発明のポリシアノアリールエーテ
ルの製造方法については以下に詳述するが、この記載か
ら、式(III)で示されるポリシアノアリールエーテ
ルの末端は、フッ素原子を含むベンゼン環側がフッ素で
あり、酸素原子(Y2)側が水素原子であると、即ち、
式(III)で示されるポリシアノアリールエーテルは
下記式(XI):
【0126】
【化29】
【0127】で示されるポリマーであると考えられる。
また、本発明で使用される式(III)のポリシアノア
リールエーテルは架橋構造を有するものであってもよ
い。
【0128】本発明のポリシアノアリールエーテルは、
上記含フッ素アリールエーテルケトンに関して述べたの
と同様にして製造できるが、具体的には、下記式(XI
I):
【0129】
【化30】
【0130】で示されるテトラフルオロベンゾニトリル
誘導体を、下記式(XIII):
【0131】
【化31】
【0132】で示されるジヒドロキシ化合物と塩基性触
媒の存在下で重合することによって、製造される。この
際、上記式(XII)におけるY1及び上記式(XII
I)におけるY2の定義は、上記式(III)における
1及びY2の定義と同様である。
【0133】本発明において、式(XII)のテトラフ
ルオロベンゾニトリル誘導体は、公知の方法によって製
造できるが、例えば、式:Y1H[式中、Y1は上記式
(III)における定義と同様である]で示される化合
物を有機溶媒中で塩基性化合物の存在下で2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾニトリル(本明細書中、
「PFBN」とも称する)と反応させることによって得
られる。
【0134】上記反応において、式:Y1Hで示される
化合物およびPFBNは、それぞれ、単一の化合物とし
て使用されてもあるいは2種以上の式:Y1Hで示され
る化合物および/またはPFBNの混合物の形態で使用
されてもよいが、精製工程やポリマーの物性などを考慮
すると、単一の化合物として使用されることが好まし
い。なお、後者の場合には、使用される複数または単一
のPFBNのモル数の合計が、複数または単一の式:Y
1Hで示される化合物のモル数の合計に等しいまたはほ
ぼ等しいことが好ましいが、具体的には、式:Y1Hで
示される化合物の使用量が、PFBN 1モルに対し
て、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.5
〜2モルである。
【0135】上記反応において使用できる有機溶媒とし
ては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N
−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニト
リル、ニトロベンゼン、ニトロメタン及びメタノール等
の極性溶媒;ならびにこれらの極性溶媒とトルエンやキ
シレン等の非極性溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の
形態で使用されてもよい。また、有機溶媒におけるPF
BNの濃度は、1〜40質量%、好ましくは、5〜30
質量%である。この際、トルエンや他の同様の溶媒を反
応の初期段階に使用する際には、反応中に副生する水
を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去
できる。
【0136】また、上記反応において使用される塩基性
化合物は、反応を促進させるために生成するフッ化水素
を捕集するよう作用するものであることが望ましい。こ
のような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウ
ム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウ
ム及びフッ化カリウムなどが挙げられる。この際、塩基
性化合物の使用量は、使用されるPFBN 1モルに対
して、0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルであ
る。
【0137】さらに、上記反応における反応条件は、Y
1Hで示される化合物とPFBNとの反応が効率よく進
行するものであれば特に制限されるものではないが、例
えば、反応は、好ましくは反応系を撹拌状態に保ちなが
ら、通常、20〜180℃、好ましくは40〜160℃
の温度で行なわれる。また、反応時間は、他の反応条件
や使用する原料などにより異なるが、通常、1〜48時
間、好ましくは2〜24時間である。さらに、反応は、
常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面か
ら、常圧下で行うことが望ましい。このような反応によ
って得られる生成物は、反応混合物に蒸留水を注加し、
ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素等の
抽出剤で抽出した後、有機層を抽出物から分離し、抽出
剤を留去することにより得られる。さらに、この生成物
を、必要であれば、メタノールまたはエタノール等で再
結晶化することによって、結晶として得てもよい。
【0138】このようにして合成された式(XII)の
テトラフルオロベンゾニトリル誘導体は、上述したよう
に、さらに式(XIII)のジヒドロキシ化合物と塩基
性触媒の存在下で重合に供されることによって、目的の
式(III)のポリシアノアリールエーテルが製造され
る。この際、式(XII)のテトラフルオロベンゾニト
リル誘導体は、上記したような抽出、再結晶化、クロマ
トグラフィー及び蒸留等の精製工程をへた後使用されて
もまたは精製工程を行なわずにそのまま使用してもよい
が、次工程の収率などを考慮すると精製された後使用す
ることが好ましい。
【0139】上記反応において使用される式(XII
I)のジヒドロキシ化合物は、目的産物である式(II
I)のポリシアノアリールエーテルの構造に従って選択
される。本発明において好ましく使用される式(XII
I)のジヒドロキシ化合物としては、以下にしめされる
ように、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−
1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(以
下、「6FBA」という)、4,4’−ジヒドロキシジ
フェニルエーテル(以下、「DPE」という)、ビスフ
ェノールF(以下、「BF」という)、ハイドロキノン
(以下、「HQ」という)、ビスフェノールA(以下、
「BA」という)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)フルオレン(以下、「HF」という)、フェノー
ルフタレイン(以下、「PP」という)、1,4−ビス
(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、「CH
B」という)、および4,4’−ジヒドロキシビフェニ
ル(以下、「BP」という)が挙げられる。
【0140】
【化32】
【0141】上記反応において、式(XII)のテトラ
フルオロベンゾニトリル誘導体および式(XIII)の
ジヒドロキシ化合物は、それぞれ、単一の化合物として
使用されてもあるいは2種以上の式(XII)のテトラ
フルオロベンゾニトリル誘導体および/または式(XI
II)のジヒドロキシ化合物の混合物の形態で使用され
てもよいが、精製工程やポリマーの物性などを考慮する
と、単一の化合物として使用されることが好ましい。な
お、後者の場合には、使用される複数または単一の式
(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体のモ
ル数の合計が、複数または単一の式(XIII)のジヒ
ドロキシ化合物のモル数の合計に等しいまたはほぼ等し
いことが好ましいが、具体的には、式(XIII)のジ
ヒドロキシ化合物の使用量は、式(XII)のテトラフ
ルオロベンゾニトリル誘導体1モルに対して、0.1〜
5モル、好ましくは1〜2モルである。
【0142】上記反応は、有機溶剤中で行なわれてまた
は無溶剤下で行なわれてもよいが、有機溶剤中に行われ
ることが好ましい。前者の場合、使用できる有機溶剤と
しては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,
N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニ
トリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン及びメタノール
等の極性溶媒;ならびにこれらの極性溶媒とトルエンや
キシレン等の非極性溶媒との混合溶媒などが挙げられ
る。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上の混合
物の形態で使用されてもよい。また、有機溶剤における
式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体の
濃度は、1〜50質量%、好ましくは、5〜20質量%
である。この際、トルエンや他の同様の溶剤を反応の初
期段階に使用する際には、反応中に副生する水を、重合
溶剤に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0143】また、本発明において、式(XII)のテ
トラフルオロベンゾニトリル誘導体および式(XII
I)のジヒドロキシ化合物の反応は、塩基性触媒の存在
下で行なうことを必須とする。塩基性触媒は、式(XI
II)のジヒドロキシ化合物による重縮合反応を促進す
るよう、式(XIII)のジヒドロキシ化合物をより反
応性の高いアニオンに変える作用を有するものが好まし
く、具体的には、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸
化カリウム、水酸化カルシウムまたはフッ化カリウムな
どが挙げられる。また、塩基性触媒の使用量は、式(X
II)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体と式(X
III)のジヒドロキシ化合物との反応が良好に進行で
きる量であれば特に制限されるものではないが、式(X
II)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導体 1モル
に対して、通常、0.1〜5モル、好ましくは0.5〜
2モルである。
【0144】さらに、上記重合反応における反応条件
は、式(XII)のテトラフルオロベンゾニトリル誘導
体と式(XIII)のジヒドロキシ化合物との反応が効
率よく進行するものであれば特に制限されるものではな
いが、例えば、重合温度は、好ましくは200℃以下、
より好ましくは20〜150℃、最も好ましくは40〜
100℃である。このように低温度で反応することで、
特別の設備を必要とすることなく、副反応を抑制し、ポ
リマーのゲル化を防止することができる。また、重合時
間は、他の反応条件や使用する原料などにより異なる
が、好ましくは、1〜48時間、より好ましくは2〜2
4時間である。さらに、重合反応は、常圧下または減圧
下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行う
ことが望ましい。
【0145】上記重合反応終了後は、反応溶液より蒸発
等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄
することによって、所望のポリマーが得られる。また
は、反応溶液をポリマーの溶解度が低い溶媒中に加える
ことにより、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物を
濾過により分離することによって、ポリマーを得てもよ
い。
【0146】このようにして製造されたポリシアノアリ
ールエーテルもまた、上記含フッ素アリールエーテルケ
トン重合体と同様、(1)ポリマー膜の酸素透過性が大
きい;(2)光照射に対するポリマー膜の安定性が優れ
ている;(3)ポリマー膜内の酸素の拡散速度が速い;
及び(4)温度による酸素の拡散速度の変化が小さいな
どの条件を満たすものであり、このポリシアノアリール
エーテルを酸素透過性ポリマーとして用いて作製された
酸素センサーは、0〜100%のすべての酸素濃度領域
で適用が可能であり、かつ高酸素濃度領域でも容易に酸
素圧(酸素濃度)測定できる。
【0147】本発明の光学的酸素センサーは、上記した
ように、例えば、色素化合物(酸素測定用プローブ)を
酸素透過性ポリマー中に均一に溶解(または分散)させ
たものを基板上に塗付した後、固定化してセンサー膜と
して調製することによって製造できる。この際のセンサ
ー膜作製方法は、特に制限されるものではなく、公知の
膜の作製方法が同様にして使用できるが、センサー膜の
作製方法の一実施態様を以下に記載する。
【0148】所定量の色素化合物、酸素透過性ポリマー
及び溶媒を均一になるように、混合して、溶解(または
分散)して、色素化合物含有酸素透過性ポリマー溶液
(または分散液)を得た後、この色素化合物含有酸素透
過性ポリマー溶液(または分散液)を所望の基板上に所
定の厚さになるように塗布した後、固定化することによ
って、センサー膜が作製される。
【0149】上記態様において使用される溶媒は、色素
化合物及び酸素透過性ポリマーを均一に溶解(または分
散)できるものであれば特に制限されるものではなく、
使用される色素化合物及び酸素透過性ポリマーの種類に
よって適宜選択できるが、例えば、トルエン、クロロホ
ルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジ
イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒ
ドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、
N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド及びジメ
チルホルムアミドなどが挙げられ、これらのうち、トル
エン、アセトン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセ
トアミド及びジメチルホルムアミドが好ましく使用され
る。
【0150】上記態様において、色素化合物、酸素透過
性ポリマー及び溶媒の使用量は、酸素透過性、光照射に
対する安定性、膜内の酸素の拡散速度、及び温度による
酸素の拡散速度変化等の所望の特性が得られるようにセ
ンサー膜を基板上に形成できるものであれば特に制限さ
れないが、色素化合物の使用量は、溶媒中の濃度として
表わした際に、通常、0.001〜1(w/w)%、好
ましくは0.01〜0.1(w/w)%である。また、
酸素透過性ポリマーの使用量は、溶媒中の濃度として表
わした際に、通常、0.005〜5(w/w)%、好ま
しくは0.01〜1(w/w)%である。この際、色素
化合物の使用量が上記範囲の上限を超えかつ酸素透過性
ポリマーの使用量が下限を割ると、酸素感受性に関与し
ない余分な色素化合物を使用することになり、経済的な
面で好ましくない。これに対して、色素化合物使用量が
上記範囲の下限を下回りかつ酸素透過性ポリマーの使用
量が上限を超えると、センサー膜中の色素化合物の濃度
が低すぎて、十分な酸素感受性を有しなくなるため、や
はり好ましくない。
【0151】上記態様において、基板上への色素化合物
含有酸素透過性ポリマー溶液(または分散液)の塗付方
法は、特に限定されるものではなく、基板の種類や形状
ならびに色素化合物、酸素透過性ポリマー及び溶媒の種
類によって、従来公知の方法の中から適宜選択される。
【0152】また、上記態様において、基板上での色素
化合物含有酸素透過性ポリマー溶液(または分散液)の
固定化方法もまた、特に限定されるものではなく、基板
の種類や形状ならびに色素化合物、酸素透過性ポリマー
及び溶媒の種類によって、従来公知の方法の中から適宜
選択される。固定化方法は、例えば、溶媒を蒸発させ、
乾固することによって行なわれる。
【0153】このようにして作製されたセンサー膜の厚
みは、酸素の透過性や感受性、使用目的ならびに基板の
種類などを考慮して適宜選択され、特に制限されるもの
ではないが、通常、1〜1000μm、好ましくは10
〜500μm、より好ましくは50〜100μmであ
る。
【0154】このようにして製造された本発明の酸素セ
ンサーは、例えば、図2に示されるように、このセンサ
ー膜に励起光を照射し、酸素濃度の変化による発光強度
を反射により測定し、これにより酸素濃度が測定できる
が、この際、本発明に係るポリマーは優れた酸素透過性
を有するので、膜内で酸素感受性が表面付近と基板付近
とで差が少ない、言い換えると、膜の厚み方向での消光
速度定数の変動が少ない。したがって、本発明の酸素セ
ンサーは、高感度で発光強度や発光寿命を測定すること
ができ、ゆえに高精度かつ広範囲の酸素圧の測定が可能
な光学的酸素圧センサーである。
【0155】本発明の酸素センサーを用いた光学的酸素
センサーシステムの例を、図3を参照しながら、下記に
記載する。簡単に述べると、本発明の酸素センサーをサ
ンプルチャンバー内に固定し、これに励起用光源から励
起光[例えば、キセノンランプやNd−YAG(ytrium-
aluminium-garnet)レーザー]を照射して、センサー膜
内の色素化合物を励起させて、得られた反射光を分光器
及び光電子増倍管を介してオシロスコープで観測し、こ
のときの反射光の経時変化を測定し、発光寿命や発光強
度を求め、これから酸素濃度を測定する。この際、酸素
濃度をアルゴン及び酸素の流速を変化させることによっ
て適宜調節し、酸素感度の指標となるI 0/Iを求め、
これからStern-Volmerプロット[各酸素濃度(%)に対
するI0/I−1]を作成する。
【0156】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明す
る。
【0157】なお、センサー膜の特性は、以下のように
して評価した。
【0158】<分光分析>センサー膜の発光スペクトル
は、分光光度計(島津製作所製、U−2400PC)を
用いて記録した。また、センサー膜の安定状態のりん光
スペクトル及び励起スペクトルは、150Wのキセノン
ランプを励起用可視光線源として用いて蛍光分光光度計
(島津製作所製、RF5300−PC)を用いて測定し
た。
【0159】<酸素センサーシステム>クライオスタッ
ト(オックスフォード製、Optistat−DN)で
庫内温度を25〜105℃に調節されたサンプルチャン
バー中に、センサー膜を固定し、これに励起用可視光線
源として150Wのキセノンランプを照射して、センサ
ー膜内の色素化合物を励起させた。なお、励起光は、散
乱光を可能な限り抑制するために、センサー膜に対して
45°の角度で照射した。次に、センサー膜から反射し
た反射光を、上記分光分析の項に記載されるのと同様に
して、分光器及び光電子増倍管を介してオシロスコープ
で観測し、これから酸素濃度を測定した。この際、酸素
濃度(0〜100%)をアルゴン及び酸素の流速を変化
させることによって適宜調節し、Stern-Volmerプロット
[酸素濃度(%)に対するI0/I−1]を作成した。
【0160】合成例1:2,3,4,5,6−ペンタフ
ルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(HPBP)
の合成 2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−4’−メトキシ
ベンゾフェノン6.0g、氷酢酸40mlおよび48%
臭化水素水溶液30mlを、コンデンサーを備えた丸底
フラスコに供給した。この混合物を一晩還流に供した
後、室温にまで冷却した。生成物をジエチルエーテルで
抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、さらに留
去した。留出物をトルエンから再結晶して、3.7g
(収率78.8%)の下記式の2,3,4,5,6−ペ
ンタフルオロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(以
下、「HPBP」という)を白色結晶として得た。この
生成物の融点は、142〜143℃であった。
【0161】
【化33】
【0162】合成例2:4,4’−ビス(2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾイル)(BPDE)ジフ
ェニルエーテルの合成 ジフェニルエーテル6.8g、塩化アルミニウム26.
8gおよび乾燥ジクロロエタン60mlを、滴下ロート
および塩化カルシウム(CaCl2)乾燥管を備えた2
50ml容の三つ口フラスコに仕込んだ。2,3,4,
5,6−ペンタフルオロベンゾクロライド18.5gお
よび乾燥ジクロロエタン15mlよりなる溶液を、攪拌
しながらゆっくりフラスコ中に滴下した。滴下終了後、
反応混合物を室温で一晩攪拌した。少量の水を、反応混
合物に非常にゆっくり加え、15分間攪拌し続けた。つ
いで、反応混合物を250mlの水中に注加し、ジクロ
ロメタンで抽出した。有機層を集めて、水洗し、硫酸ナ
トリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。活性炭処理し
メタノールからの再結晶により、4,4’−ビス(2,
3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニ
ルエーテル(以下、「BPDE」という)を白色結晶と
して得た(収率61.2%)。BPDEの融点は、12
5〜127℃であった。
【0163】
【化34】
【0164】合成例3:PEK(6FBA)の合成 トルエンから再結晶により精製された2,2−ビス(4
−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へ
キサフルオロプロパン(6FBA)1.2g、重質炭酸
カリウム1.48g、ジメチルアセトアミド(DMA
c)13mlおよびトルエン10mlを、ディーンスタ
ークトラップ、コンデンサー、マグネティック撹拌機お
よび窒素供給管を備えた100ml容の三つ口丸底フラ
スコに仕込んだ。この混合物を160℃に加熱し、2時
間還流に供し、ついでトルエンを留去した。合成例2で
合成されたBPDE 2.0gをこの混合物に添加し、
80℃で20時間、重合を行なった。冷却後、この溶液
を急速撹拌下に1%酢酸を含有する水中に注加した。析
出した重合体を濾過により捕集し、水洗した後、乾燥す
ることによって、目的とする下記式の含フッ素アリール
エーテルケトン重合体(以下、「PEK(6FBA)」
という)を合成した。得られたPEK(6FBA)の収
率は91%であった。
【0165】
【化35】
【0166】実施例1 色素化合物としての白金オクタエチルホルフィリン(P
tOEP)5mg、酸素透過性ポリマーとしての合成例
3で製造されたPEK(6FBA) 15mg、溶媒と
してのトルエン20mlを混合・溶解した。次に、この
トルエン溶液1mlを蛍光顕微鏡用無蛍光スライドガラ
ス(5cm×1.4cm)上にパスツールピペットを用
いて乾燥後の厚さがおよそ65μmになるように塗付
し、24時間室温で暗所にて自然乾燥することによっ
て、センサー膜1を作製した。
【0167】比較例1 実施例1において、酸素透過性ポリマーとして一般的に
良く使用されているポリスチレンを使用する以外は、実
施例1と同様の操作を行ない、比較用センサー膜1を作
製した。
【0168】実施例2 実施例1で作製されたセンサー膜1について、発光スペ
クトルを測定した。なお、励起波長はPtOEPの極大
吸収である535nmであり、発光スペクトルは極大波
長の644nmであった。結果を図4及び図5に示す。
図4において、(1)はアルゴン飽和雰囲気(酸素濃
度:0%)、(2)は空気飽和雰囲気(酸素濃度:約2
0%)、および(3)は酸素飽和雰囲気(酸素濃度:1
00%)でそれぞれ測定されたスペクトルを示す。
【0169】図4及び図5から示されるように、酸素濃
度の増加に伴い、センサー膜1の発光強度が減少してい
ることが分かる。また、図4から酸素感度の指標となる
値I 0/I100(I0は、アルゴン雰囲気下での発光強度
であり、I100は、酸素飽和雰囲気下での発光強度であ
る)を求めたところ、32.4であり、この値は、一般
的に使用されている光学的酸素センサーの3.0や比較
用センサー膜1の4.5に比して、有意に高い値を示し
ていることから、本発明のセンサー膜1を用いた光学的
酸素センサーは非常に高い酸素感受性を有することが示
唆される。
【0170】実施例3 実施例1及び比較例1で作製されたセンサー膜1及び比
較用センサー膜1について、酸素センサーシステムを用
いてセンサー特性を評価し、Stern-Volmerプロットを図
6に示す。図6において、黒丸はセンサー膜1を用いた
場合のStern-Volmerプロットであり、黒四角は比較用セ
ンサー膜1を用いた場合のStern-Volmerプロットであ
る。
【0171】図6から示されるように、本発明のセンサ
ー膜1によるプロットは、酸素濃度0〜100%の間で
良好な直線性を示し、プロットの傾きであるStern-Volm
er定数は0.3%-1であるが、これに対して、コントロ
ールとしての比較用センサー膜1によるプロットは、酸
素濃度が0〜20%の間では良好な直線性を示すもの
の、それ以上の高い酸素濃度領域ではStern-Volmerの式
に従わない。この結果から、従来の光学的酸素センサー
は0〜20%という低酸素濃度の範囲で直線性を示すの
みであったが、本発明のセンサー膜を用いた光学的酸素
センサーでは、適用範囲が酸素濃度0〜100%であ
り、かつ酸素感受性も従来の光学的酸素センサーに比べ
て有意に優れていることが示される。
【0172】実施例4 実施例3において、実施例1及び比較例1で作製された
センサー膜1及び比較用センサー膜1について、それぞ
れ、酸素センサーシステム内の温度をクライオスタット
(オックスフォード製、Optistat−DN)で図
7に示されるように298K〜378Kの範囲で変える
以外は、実施例3で記載したのと同様の操作を繰り返し
て、Stern-Volmerプロットに対する温度の影響を調べ
た。結果を図7及び図8に示す。
【0173】図7から示されるように、本発明のセンサ
ー膜1を用いた光学的酸素センサーでは、すべての温度
において良好な直線性を示しており、温度が高くなるに
つれてプロットの傾きが大きくなっている。温度の上昇
によるプロットの傾きの増加度は、338Kにおけるプ
ロットの傾きは、298Kにおける場合に比べて約1.
2倍である。これに対して、図8から示されるように、
コントロールとしての比較用センサー膜1を用いた光学
的酸素センサーの場合でも、同様にしてすべての温度に
おいて良好な直線性を示しており、温度が高くなるにつ
れてプロットの傾きが大きくなっているものの、温度の
上昇によるプロットの傾きの増加度は、338Kにおけ
るプロットの傾きは、298Kにおける場合に比べて約
1.5倍であり、また、他の従来市販の酸素センサーで
も40Kの温度上昇時のプロットの傾きの増加が約1.
5〜2倍であり、本発明に係るセンサー膜1の場合の約
1.2倍に比べて、大きな値となり、これらの結果か
ら、本発明の光学的酸素センサーは、従来のものに比べ
て温度の影響を受けにくいことが示唆される。
【0174】合成例4:PEK(BA)の合成 トルエンから再結晶により精製されたビスフェノールA
(BA)0.82g、重質炭酸カリウム1.48g、ジ
メチルアセトアミド(DMAc)13mlおよびトルエ
ン10mlを、ディーンスタークトラップ、コンデンサ
ー、マグネティック撹拌機および窒素供給管を備えた1
00ml容の三つ口丸底フラスコに仕込んだ。この混合
物を160℃に加熱し、2時間還流に供し、ついでトル
エンを留去した。合成例2で合成されたBPDE 2.
0gをこの混合物に添加し、80℃で20時間、重合を
行なった。冷却後、この溶液を急速撹拌下に1%酢酸を
含有する水中に注加した。析出した重合体を濾過により
捕集し、水洗した後、乾燥することによって、目的とす
る下記式の含フッ素アリールエーテルケトン重合体(以
下、「PEK(BA)」という)を合成した。得られた
PEK(BA)の収率は90%であった。
【0175】
【化36】
【0176】実施例5 色素化合物としての白金オクタエチルホルフィリン(P
tOEP)5mg、酸素透過性ポリマーとしての合成例
4で製造されたPEK(BA) 15mg、溶媒として
のトルエン20mlを混合・溶解した。次に、このトル
エン溶液()mlを蛍光顕微鏡用無蛍光スライドガラス
(5cm×1.4cm)上にパスツールピペットを用い
て乾燥後の厚さがおよそ65μmになるように塗付し、
24時間室温で暗所にて自然乾燥することによって、セ
ンサー膜2を作製した。
【0177】このセンサー膜2について、実施例2と同
様にして発光スペクトルを測定し、その結果を図9に示
す。
【0178】図9から示されるように、酸素濃度の増加
に伴い、センサー膜2の発光強度が減少していることが
分かる。また、酸素感度の指標となる値I0/I100を求
めたところ、20.9であり、この値は、一般的に使用
されている光学的酸素センサーの3.0や比較用センサ
ー膜1の4.5に比して、有意に高い値を示しているこ
とから、本発明のセンサー膜2を用いた光学的酸素セン
サーは非常に高い酸素感受性を有することが示唆され
る。
【0179】実施例6 実施例5で作製されたセンサー膜2について、実施例3
と同様にしてセンサー特性を評価し、Stern-Volmerプロ
ットを図10に示す。
【0180】図10から示されるように、本発明のセン
サー膜2によるプロットは、酸素濃度0〜100%の間
で良好な直線性を示し、プロットの傾きであるStern-Vo
lmer定数は0.20%-1である。この結果から、本発明
のセンサー膜を用いた光学的酸素センサーでは、適用範
囲が酸素濃度0〜100%であり、かつ酸素感受性も従
来の光学的酸素センサーに比べて有意に優れていること
が示される。
【0181】合成例5:PEK(HF)の合成 トルエンから再結晶により精製された9,9−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)フルオレン(HF)1.25
g、重質炭酸カリウム1.48g、ジメチルアセトアミ
ド(DMAc)13mlおよびトルエン10mlを、デ
ィーンスタークトラップ、コンデンサー、マグネティッ
ク撹拌機および窒素供給管を備えた100ml容の三つ
口丸底フラスコに仕込んだ。この混合物を160℃に加
熱し、2時間還流に供し、ついでトルエンを留去した。
合成例2で合成されたBPDE 2.0gをこの混合物
に添加し、80℃で20時間、重合を行なった。冷却
後、この溶液を急速撹拌下に1%酢酸を含有する水中に
注加した。析出した重合体を濾過により捕集し、水洗し
た後、乾燥することによって、目的とする下記式の含フ
ッ素アリールエーテルケトン重合体(以下、「PEK
(HF)」という)を合成した。得られたPEK(H
F)の収率は99%であった。
【0182】
【化37】
【0183】実施例7 色素化合物としての白金オクタエチルホルフィリン(P
tOEP)5mg、酸素透過性ポリマーとしての合成例
5で製造されたPEK(HF) 15mg、溶媒として
のトルエン20mlを混合・溶解した。次に、このトル
エン溶液1mlを蛍光顕微鏡用無蛍光スライドガラス
(5cm×1.4cm)上にパスツールピペットを用い
て乾燥後の厚さがおよそ65μmになるように塗付し、
24時間室温で暗所にて自然乾燥することによって、セ
ンサー膜3を作製した。
【0184】このセンサー膜3について、実施例2と同
様にして発光スペクトルを測定し、その結果を図11に
示す。
【0185】図11から示されるように、酸素濃度の増
加に伴い、センサー膜3の発光強度が減少していること
が分かる。また、酸素感度の指標となる値I0/I100
求めたところ、23.6であり、この値は、一般的に使
用されている光学的酸素センサーの3.0や比較用セン
サー膜1の4.5に比して、有意に高い値を示している
ことから、本発明のセンサー膜3を用いた光学的酸素セ
ンサーは非常に高い酸素感受性を有することが示唆され
る。
【0186】実施例8 実施例7で作製されたセンサー膜3について、実施例3
と同様にしてセンサー特性を評価し、Stern-Volmerプロ
ットを図12に示す。
【0187】図12から示されるように、本発明のセン
サー膜3によるプロットは、酸素濃度0〜100%の間
で良好な直線性を示し、プロットの傾きであるStern-Vo
lmer定数は0.23%-1である。この結果から、本発明
のセンサー膜を用いた光学的酸素センサーでは、適用範
囲が酸素濃度0〜100%であり、かつ酸素感受性も従
来の光学的酸素センサーに比べて有意に優れていること
が示される。
【0188】合成例6:PEK(3,4’−BA)の合
成 トルエンから再結晶により精製された2−(3−オキシ
フェニル)−2−(4’−オキシフェニル)プロパン
(3,4’−BA)0.82g、重質炭酸カリウム1.
48g、ジメチルアセトアミド(DMAc)13mlお
よびトルエン10mlを、ディーンスタークトラップ、
コンデンサー、マグネティック撹拌機および窒素供給管
を備えた100ml容の三つ口丸底フラスコに仕込ん
だ。この混合物を160℃に加熱し、2時間還流に供
し、ついでトルエンを留去した。合成例2で合成された
BPDE 2.0gをこの混合物に添加し、80℃で2
0時間、重合を行なった。冷却後、この溶液を急速撹拌
下に1%酢酸を含有する水中に注加した。析出した重合
体を濾過により捕集し、水洗した後、乾燥することによ
って、目的とする下記式の含フッ素アリールエーテルケ
トン重合体(以下、「PEK(3,4’−BA)」とい
う)を合成した。得られたPEK(3,4’−BA)の
収率は90%であった。
【0189】
【化38】
【0190】実施例9 色素化合物としての白金オクタエチルホルフィリン(P
tOEP)5mg、酸素透過性ポリマーとしての合成例
6で製造されたPEK(3,4’−BA) 15mg、
溶媒としてのトルエン20mlを混合・溶解した。次
に、このトルエン溶液1mlを蛍光顕微鏡用無蛍光スラ
イドガラス(5cm×1.4cm)上にパスツールピペ
ットを用いて乾燥後の厚さがおよそ65μmになるよう
に塗付し、24時間室温で暗所にて自然乾燥することに
よって、センサー膜4を作製した。
【0191】このセンサー膜4について、実施例2と同
様にして発光スペクトルを測定し、その結果を図13に
示す。
【0192】図13から示されるように、酸素濃度の増
加に伴い、センサー膜3の発光強度が減少していること
が分かる。また、酸素感度の指標となる値I0/I100
求めたところ、20.3であり、この値は、一般的に使
用されている光学的酸素センサーの3.0や比較用セン
サー膜1の4.5に比して、有意に高い値を示している
ことから、本発明のセンサー膜4を用いた光学的酸素セ
ンサーは非常に高い酸素感受性を有することが示唆され
る。
【0193】実施例10 実施例9で作製されたセンサー膜4について、実施例3
と同様にしてセンサー特性を評価し、Stern-Volmerプロ
ットを図14に示す。
【0194】図14から示されるように、本発明のセン
サー膜4によるプロットは、酸素濃度0〜100%の間
で良好な直線性を示し、プロットの傾きであるStern-Vo
lmer定数は0.19%-1である。この結果から、本発明
のセンサー膜を用いた光学的酸素センサーでは、適用範
囲が酸素濃度0〜100%であり、かつ酸素感受性も従
来の光学的酸素センサーに比べて有意に優れていること
が示される。
【0195】
【発明の効果】上述したように、本発明の光学的酸素セ
ンサーは、酸素透過性ポリマーおよび色素化合物からな
ることを特徴とするものである。したがって、本発明の
光学的酸素センサーは、低濃度領域のみならず高濃度領
域であっても酸素濃度に対する発光強度の変化が良好な
直線性を示す。
【0196】また、酸素透過性ポリマーとしてフッ素を
含有するポリエーテルケトン(特に式(I)の含フッ素
アリールエーテルケトン重合体)および/またはフッ素
を含有するポリエーテルニトリル(特に式(III)の
ポリシアノアリールエーテル)を使用して得られる光学
的酸素センサーは、従来要求されている特性である、
(1)ポリマー膜の酸素透過性が大きい;(2)光照射
に対するポリマー膜の安定性が優れている;(3)ポリ
マー膜内の酸素の拡散速度が速い;及び(4)温度によ
る酸素の拡散速度の変化が小さいのすべての条件を満た
すものであり、例えば、ロケット、スペースシャトル、
ミサイル、航空機、新幹線、リニアモーターカー、及び
自動車などの設計・開発に利用されることが期待され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の光学的酸素センサーの原理を説明
するための色素化合物の励起エネルギー準位を示す図で
ある。
【図2】は、本発明の光学的酸素センサーの原理を示す
図である。
【図3】は、本発明の酸素センサーを用いた光学的酸素
センサーシステムの一実施態様を示す概略図である。
【図4】は、実施例2において、センサー膜1の発光ス
ペクトル変化を示すグラフである。なお、図4におい
て、(1)はアルゴン飽和雰囲気(酸素濃度:0%)、
(2)は空気飽和雰囲気(酸素濃度:約20%)、およ
び(3)は酸素飽和雰囲気(酸素濃度:100%)でそ
れぞれ測定されたスペクトルを示す。
【図5】は、実施例2において、センサー膜1の酸素に
対する発光強度の変化を示すグラフである。
【図6】は、実施例3において、センサー膜1及び比較
用センサー膜1のStern-Volmerプロットを示すグラフで
ある。なお、図6において、黒丸はセンサー膜1を用い
た場合のStern-Volmerプロットであり、黒四角は比較用
センサー膜1を用いた場合のStern-Volmerプロットであ
る。
【図7】は、実施例4において、センサー膜1のStern-
Volmerプロットに対する温度の影響を示すグラフであ
る。
【図8】は、実施例4において、比較用センサー膜1の
Stern-Volmerプロットに対する温度の影響を示すグラフ
である。
【図9】は、実施例5において、センサー膜2の酸素に
対する発光強度の変化を示すグラフである。
【図10】は、実施例6において、センサー膜2のSter
n-Volmerプロットを示すグラフである。
【図11】は、実施例7において、センサー膜3の酸素
に対する発光強度の変化を示すグラフである。
【図12】は、実施例8において、センサー膜3のSter
n-Volmerプロットを示すグラフである。
【図13】は、実施例9において、センサー膜4の酸素
に対する発光強度の変化を示すグラフである。
【図14】は、実施例10において、センサー膜4のSt
ern-Volmerプロットを示すグラフである。
【手続補正書】
【提出日】平成12年7月25日(2000.7.2
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 101/00 C08L 101/00 C09K 3/00 C09K 3/00 Y G01N 21/64 G01N 21/64 C B Fターム(参考) 2G043 AA01 BA09 CA01 CA03 DA02 EA01 EA02 FA03 GA07 GB21 KA03 LA01 NA11 NA13 2G054 AA01 AB07 CA08 CB10 CD01 CE01 EA03 FA12 FA19 FA27 FA28 FA44 GA02 GB01 JA06 JA08 4J002 AA001 BB031 BB121 BE021 CB001 CD001 CF001 CG001 CH001 CH061 CH081 CH091 CL001 CM041 CN021 CN031 FD096 GP00 GR00 4J005 AA26 BA00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素透過性ポリマーおよび色素化合物か
    らなる光学的酸素センサー。
  2. 【請求項2】 該酸素透過性ポリマーは、ポリエーテル
    ケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエチレン、ポリプ
    ロピレン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリ
    アミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ
    エーテル、ポリエステル、ポリスルフィド、ポリスルホ
    ン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルス
    ルホン及びポリアミドイミド、ならびにこれらのフッ素
    含有ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種で
    ある、請求項1に記載の酸素センサー。
  3. 【請求項3】 該酸素透過性ポリマーはフッ素を含有す
    るポリエーテルケトン及びフッ素を含有するポリエーテ
    ルニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種であ
    る、請求項2に記載の酸素センサー。
  4. 【請求項4】 該フッ素を含有するポリエーテルケトン
    は、下記式(I): 【化1】 ただし、Xはハロゲン原子、低級アルキル基または低級
    アルコキシ基を表わし、qは0〜4の整数であり、nは
    重合度を表し、mは0または1の整数であり、およびR
    1は下記式(II): 【化2】 この際、X’はハロゲン原子、低級アルキル基または低
    級アルコキシ基を表わし、q’は0〜4の整数であり、
    pは0または1の整数であり、およびR2は2価の有機
    基を表わす、で示される含フッ素アリールエーテルケト
    ン重合体である、請求項3に記載の酸素センサー。
  5. 【請求項5】 該フッ素を含有するポリエーテルニトリ
    ルは、下記式(III): 【化3】 ただし、Y1は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜
    12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1
    〜12のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子
    数1〜12のアルキルアミノ基、置換基を有してもよい
    炭素原子数1〜12のアルキルチオ基、置換基を有して
    もよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有し
    てもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、置換
    基を有してもよい炭素原子数6〜20のアリールアミノ
    基または置換基を有してもよい炭素原子数6〜20のア
    リールチオ基を表わし;Y2は、2価の有機基を表わ
    し;ならびにzは重合度を表わす、で示されるポリシア
    ノアリールエーテルである、請求項3に記載の酸素セン
    サー。
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