JP2002037627A - モリブデンの化学分離法 - Google Patents
モリブデンの化学分離法Info
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- JP2002037627A JP2002037627A JP2000226790A JP2000226790A JP2002037627A JP 2002037627 A JP2002037627 A JP 2002037627A JP 2000226790 A JP2000226790 A JP 2000226790A JP 2000226790 A JP2000226790 A JP 2000226790A JP 2002037627 A JP2002037627 A JP 2002037627A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 イオン会合系試薬が水溶液中のMo2O7 2-と
定量的に反応し、分離できる条件を明らかにし、かつM
o2O7 2-量に対し反応当量より少量のTPACを加えて
Mo2O7 2-の一部のみをイオン対化合物に変え、有機溶
媒(に抽出するMoの不足当量分離条件を明らかにす
る。 【解決手段】 水溶液中のモリブデン酸イオンを定量的
に分離する化学分離法において、酸性又は強酸性に調整
されたモリブデン溶液にイオン会合系試薬を添加してイ
オン対化合物を生成させて、有機溶媒に抽出することを
特徴とする。 【効果】 TPACによるモリブデン酸イオンの不足当
量抽出条件を明らかにし、Mo2O7 2-と99mTcO4 2-を
同時に抽出して過渡平衡に至る時間を著しく短縮し、高
感度かつ正確なMoの不足当量分析を可能にした。
定量的に反応し、分離できる条件を明らかにし、かつM
o2O7 2-量に対し反応当量より少量のTPACを加えて
Mo2O7 2-の一部のみをイオン対化合物に変え、有機溶
媒(に抽出するMoの不足当量分離条件を明らかにす
る。 【解決手段】 水溶液中のモリブデン酸イオンを定量的
に分離する化学分離法において、酸性又は強酸性に調整
されたモリブデン溶液にイオン会合系試薬を添加してイ
オン対化合物を生成させて、有機溶媒に抽出することを
特徴とする。 【効果】 TPACによるモリブデン酸イオンの不足当
量抽出条件を明らかにし、Mo2O7 2-と99mTcO4 2-を
同時に抽出して過渡平衡に至る時間を著しく短縮し、高
感度かつ正確なMoの不足当量分析を可能にした。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はモリブデンの化学分
離法、さらに詳細には主として放射能利用分析によるモ
リブデン(Mo)の定量に有効な化学分離法に関するも
のである。すなわち、化学分離法として溶媒抽出を用
い、イオン会合系試薬の塩化テトラフェニルヒ素(以
下、TPACという)と水溶液中のモリブデン酸イオン
(MoO4 2-あるいはMo2O7 2-、ここではMo2O7 2-
と表す)と定量的に反応させ、かつ水溶液中のMo2O7
2-量に対して反応当量より少量のTPACを加えて一部
のMo2O7 2-のみをイオン対化合物として溶媒抽出する
Moの不足当量分離法(J.Ruzicka,J.St
ary;”Substoichiometry inR
adiochemical Analysis”,Pe
rgamon,Oxford,1968,p65)に関
する。
離法、さらに詳細には主として放射能利用分析によるモ
リブデン(Mo)の定量に有効な化学分離法に関するも
のである。すなわち、化学分離法として溶媒抽出を用
い、イオン会合系試薬の塩化テトラフェニルヒ素(以
下、TPACという)と水溶液中のモリブデン酸イオン
(MoO4 2-あるいはMo2O7 2-、ここではMo2O7 2-
と表す)と定量的に反応させ、かつ水溶液中のMo2O7
2-量に対して反応当量より少量のTPACを加えて一部
のMo2O7 2-のみをイオン対化合物として溶媒抽出する
Moの不足当量分離法(J.Ruzicka,J.St
ary;”Substoichiometry inR
adiochemical Analysis”,Pe
rgamon,Oxford,1968,p65)に関
する。
【0002】
【従来の技術および課題】Moは酵素活性に関係する微
量必須元素の一つとして知られている。濃度が1ppm
からサブppmと低く、高感度で正確な分析法の開発が
望まれているが、放射能利用分析法は最も有効な分析法
の一つになる。
量必須元素の一つとして知られている。濃度が1ppm
からサブppmと低く、高感度で正確な分析法の開発が
望まれているが、放射能利用分析法は最も有効な分析法
の一つになる。
【0003】放射能利用分析法によりMoを定量する場
合、放射性核種として99Mo(半減期:66.0時間)
が最適である。唯一の欠点は99Moのγ線放出率は最も
大きい739.5keVのγ線で12.2%に過ぎず、
ゲルマニウム半導体検出器でエネルギーを弁別してγ線
を検出し波高分析器で処理するγ線スペクトロメトリー
で測定する場合、99Moのβ-崩壊で生成する娘核種99m
Tc(半減期:6.0時間、放出率は140.5keV
で89.6%)を過渡平衡が成立した後に計測する必要
があった(日本アイソトープ協会編;アイソトープ便覧
改訂3版、丸善、1984、p663)。
合、放射性核種として99Mo(半減期:66.0時間)
が最適である。唯一の欠点は99Moのγ線放出率は最も
大きい739.5keVのγ線で12.2%に過ぎず、
ゲルマニウム半導体検出器でエネルギーを弁別してγ線
を検出し波高分析器で処理するγ線スペクトロメトリー
で測定する場合、99Moのβ-崩壊で生成する娘核種99m
Tc(半減期:6.0時間、放出率は140.5keV
で89.6%)を過渡平衡が成立した後に計測する必要
があった(日本アイソトープ協会編;アイソトープ便覧
改訂3版、丸善、1984、p663)。
【0004】この条件は化学分離を行った場合も同様で
ある。化学分離は過渡平衡が成り立った後行われるが、
Moを抽出する場合、8−ヒドロキシキノリン(オキシ
ン:C9H7NO)やN−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミン・アンモニウム塩(クッペロン:C6H9N3O2)
などキレート試薬を用いるMoの不足当量分離法が報告
されている。
ある。化学分離は過渡平衡が成り立った後行われるが、
Moを抽出する場合、8−ヒドロキシキノリン(オキシ
ン:C9H7NO)やN−ニトロソフェニルヒドロキシル
アミン・アンモニウム塩(クッペロン:C6H9N3O2)
などキレート試薬を用いるMoの不足当量分離法が報告
されている。
【0005】Moは水溶液中でMoO4 2-として安定で
あるが、これらキレート試薬はMoO2 2+と反応してキ
レート化合物(MoO2A2、Aはキレート試薬のアニオ
ン)を形成し、溶媒抽出される(J.Stary et
al.;Anal.Chem.Acta,29(19
63)103)。この場合、99mTcは水溶液中で化学
系として99mTcO4 2-で存在し、前記キレート試薬で抽
出されないため、99mTcの放射能を計測するために
は、溶媒抽出後、過渡平衡に達するまでさらに72時間
ほど測定を待つ必要があった。
あるが、これらキレート試薬はMoO2 2+と反応してキ
レート化合物(MoO2A2、Aはキレート試薬のアニオ
ン)を形成し、溶媒抽出される(J.Stary et
al.;Anal.Chem.Acta,29(19
63)103)。この場合、99mTcは水溶液中で化学
系として99mTcO4 2-で存在し、前記キレート試薬で抽
出されないため、99mTcの放射能を計測するために
は、溶媒抽出後、過渡平衡に達するまでさらに72時間
ほど測定を待つ必要があった。
【0006】一方、99mTcO4 2-はイオン会合系試薬と
反応することが知られている。
反応することが知られている。
【0007】たとえば医療診断用の放射性同位元素とし
てよく知られる99mTcの精製には過渡平衡後、イオン
会合試薬の一つであるTPACと99mTcO4 2-を硫酸酸
性溶液で反応させ、クロロホルム溶液に抽出し、親核種
の99Mo(化学系:99MoO 4 2-イオン)から分離され
る(S.Tribalat et al.;Anal.
Chem.Acta,8(1953)22)。
てよく知られる99mTcの精製には過渡平衡後、イオン
会合試薬の一つであるTPACと99mTcO4 2-を硫酸酸
性溶液で反応させ、クロロホルム溶液に抽出し、親核種
の99Mo(化学系:99MoO 4 2-イオン)から分離され
る(S.Tribalat et al.;Anal.
Chem.Acta,8(1953)22)。
【0008】また、W.Zmijewskaは不足当量
分離/中性子放射化分析によりMoを定量するため過渡
平衡に達した娘核99mTcの保持担体としてレニウム
(Re、化学系:ReO4 2-)を加えて分離している。
この方法によれば、異なる元素を保持担体として利用す
るため、正確さに欠けるという欠点がある。
分離/中性子放射化分析によりMoを定量するため過渡
平衡に達した娘核99mTcの保持担体としてレニウム
(Re、化学系:ReO4 2-)を加えて分離している。
この方法によれば、異なる元素を保持担体として利用す
るため、正確さに欠けるという欠点がある。
【0009】以上示したように、従来モリブデン酸イオ
ンはTPACと反応せず、同試薬によるMoの不足当量
抽出は困難と考えられており、Tcを抽出して放射能を
計測し、Mo量を定量するか、キレート試薬で99Moを
抽出した後、過度平衡後99mTcの放射能を測定してM
o量を定量していた。そのため、前述のように前者の方
法においては、正確な定量が困難であるという欠点があ
り、一方後者の方法では、過渡平衡に達するまで時間が
かかるという欠点がある。
ンはTPACと反応せず、同試薬によるMoの不足当量
抽出は困難と考えられており、Tcを抽出して放射能を
計測し、Mo量を定量するか、キレート試薬で99Moを
抽出した後、過度平衡後99mTcの放射能を測定してM
o量を定量していた。そのため、前述のように前者の方
法においては、正確な定量が困難であるという欠点があ
り、一方後者の方法では、過渡平衡に達するまで時間が
かかるという欠点がある。
【0010】
【発明の目的】不足当量分析法は放射能利用分析法のう
ち最も正確さと簡便さに優れた分析法の一つであり、不
足当量分離の条件の決定が極めて重要になる(例えば、
T.Shigematsu et al.;J.Rad
ioanal.Chem.,67(1981)25−3
6,307−319)。
ち最も正確さと簡便さに優れた分析法の一つであり、不
足当量分離の条件の決定が極めて重要になる(例えば、
T.Shigematsu et al.;J.Rad
ioanal.Chem.,67(1981)25−3
6,307−319)。
【0011】本発明の目的は、イオン会合系試薬のTP
ACが水溶液中のMo2O7 2-と定量的に反応し、分離で
きる条件を明らかにし、かつ水溶液中のMo2O7 2-量に
対し反応当量より少量のTPACを加えてMo2O7 2-の
一部のみをイオン対化合物に変え、有機溶媒(たとえば
1,2−ジクロロエタン)に抽出するMoの不足当量分
離条件を明らかにすることにある。
ACが水溶液中のMo2O7 2-と定量的に反応し、分離で
きる条件を明らかにし、かつ水溶液中のMo2O7 2-量に
対し反応当量より少量のTPACを加えてMo2O7 2-の
一部のみをイオン対化合物に変え、有機溶媒(たとえば
1,2−ジクロロエタン)に抽出するMoの不足当量分
離条件を明らかにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明によるモリブデンの化学分離法は、水溶液中
のモリブデン酸イオンを定量的に分離する化学分離法に
おいて、酸性又は強酸性に調整されたモリブデン溶液に
イオン会合系試薬を添加してイオン対化合物を生成させ
て、有機溶媒に抽出することを特徴とする。
め、本発明によるモリブデンの化学分離法は、水溶液中
のモリブデン酸イオンを定量的に分離する化学分離法に
おいて、酸性又は強酸性に調整されたモリブデン溶液に
イオン会合系試薬を添加してイオン対化合物を生成させ
て、有機溶媒に抽出することを特徴とする。
【0013】本発明は、これまで反応しないとされてい
たイオン会合系試薬のTPACとMo2O7 2-の不足当量
分離の条件を明らかにし、TPACを用いたMo2O7 2-
の不足当量分析を可能にするとともに、Mo2O7 2-と
99mTcO4 2-を同時に抽出して過渡平衡に至る時間を著
しく短縮して99mTcの計数率を高くすることにより迅
速かつ高感度の定量を可能であるという利点がある。
たイオン会合系試薬のTPACとMo2O7 2-の不足当量
分離の条件を明らかにし、TPACを用いたMo2O7 2-
の不足当量分析を可能にするとともに、Mo2O7 2-と
99mTcO4 2-を同時に抽出して過渡平衡に至る時間を著
しく短縮して99mTcの計数率を高くすることにより迅
速かつ高感度の定量を可能であるという利点がある。
【0014】
【実施例】化学実験の手順は以下の通りである。モリブ
デン酸アンモニウム((NH)6Mo7O24)を日本原子
力研究所原子炉(熱中性子束:(3〜8)×1013n/
sec)で10〜20分照射した後、3日以上冷却して
蒸留水に溶解、99Moのトレーサ溶液とした。
デン酸アンモニウム((NH)6Mo7O24)を日本原子
力研究所原子炉(熱中性子束:(3〜8)×1013n/
sec)で10〜20分照射した後、3日以上冷却して
蒸留水に溶解、99Moのトレーサ溶液とした。
【0015】この一定量を分取してビーカーに取り、塩
酸(HCl)または塩化アンモニウム(NH4Cl)−
HCl溶液を加えてpHを調整した。続いて溶液をスキ
ーブ型分液ロートに移し、さらにTPAC水溶液、有機
溶媒を加えて振とう器で振り混ぜた。液−液分離した有
機層(必要に応じて水層も)をポリエチレン製ボウビン
に移してγ線スペクトロメトリーにより放射能を計測し
た。なお有機層及び水層は何れも10.0mlとした。
また水層のpHは堀場製F−5型pHメータで測定し
た。
酸(HCl)または塩化アンモニウム(NH4Cl)−
HCl溶液を加えてpHを調整した。続いて溶液をスキ
ーブ型分液ロートに移し、さらにTPAC水溶液、有機
溶媒を加えて振とう器で振り混ぜた。液−液分離した有
機層(必要に応じて水層も)をポリエチレン製ボウビン
に移してγ線スペクトロメトリーにより放射能を計測し
た。なお有機層及び水層は何れも10.0mlとした。
また水層のpHは堀場製F−5型pHメータで測定し
た。
【0016】1.過剰のTPACによるMo2O7 2-の抽
出 23.3μmolのMo、138μmolのTPACを
含む0.2N HCl溶液にシクロヘキサン、べンゼ
ン、トルエン、o−ジクロルべンゼン、クロロホルム、
四塩化炭素、メチルイソブチルケトン(MIBK)、
1,2−ジクロルエタンなどの有機溶媒を加えてイオン
対化合物を抽出した。
出 23.3μmolのMo、138μmolのTPACを
含む0.2N HCl溶液にシクロヘキサン、べンゼ
ン、トルエン、o−ジクロルべンゼン、クロロホルム、
四塩化炭素、メチルイソブチルケトン(MIBK)、
1,2−ジクロルエタンなどの有機溶媒を加えてイオン
対化合物を抽出した。
【0017】殆どの有機溶媒では、イオン対化合物が溶
解せず液−液界面に存在しており、イオン対化合物を抽
出できる有機溶媒は1,2−ジクロルエタンのみであっ
た。そこで1,2−ジクロルエタンを用いイオン対化合
物が抽出される酸性範囲を調べ、図1の結果を得た。こ
の図より明らかなように、pH2.3〜4.3でMo 2
O7 2-は有機層に良好に抽出されることがわかった。さ
らに、HCl換算でHClが5N以上でもイオン対化合
物が抽出されることがわかった。なお、pH1(塩酸換
算値では0.1Nである)を超える強酸性の場合、pH
値で表すのは困難であるため、塩酸に換算した塩酸濃度
(規定N)で酸性の程度を示している。
解せず液−液界面に存在しており、イオン対化合物を抽
出できる有機溶媒は1,2−ジクロルエタンのみであっ
た。そこで1,2−ジクロルエタンを用いイオン対化合
物が抽出される酸性範囲を調べ、図1の結果を得た。こ
の図より明らかなように、pH2.3〜4.3でMo 2
O7 2-は有機層に良好に抽出されることがわかった。さ
らに、HCl換算でHClが5N以上でもイオン対化合
物が抽出されることがわかった。なお、pH1(塩酸換
算値では0.1Nである)を超える強酸性の場合、pH
値で表すのは困難であるため、塩酸に換算した塩酸濃度
(規定N)で酸性の程度を示している。
【0018】また不足当量分離では化学反応を明らかに
することが重要になる。イオン対生成反応は次式で示さ
れる。
することが重要になる。イオン対生成反応は次式で示さ
れる。
【0019】
【式1】
【0020】ここで抽出定数をKとすると、(1)式は
(2)式で表される。
(2)式で表される。
【0021】
【式2】
【0022】両辺を対数にとると(3)式となる。
【0023】
【式3】
【0024】ここでMoの分配比をDとすると、
【0025】
【式4】
【0026】であり、(3)式はさらに(5)式で表さ
れる。
れる。
【0027】
【式5】
【0028】Kは定数であり、そこで有機層と水層の放
射能を計測してlogDを求め、log[TPA+]aq
に対してプロットし、直線の勾配からn/m=1を得
た。この結果より、下記の式(6)に示すような反応が
生じていることが明らかになった。
射能を計測してlogDを求め、log[TPA+]aq
に対してプロットし、直線の勾配からn/m=1を得
た。この結果より、下記の式(6)に示すような反応が
生じていることが明らかになった。
【0029】(4)式のイオン対化合物はイオン的に中
性でn=lであり、また酸素原子数(6m+l)/2=
3m+l/2は整数で、したがってlは偶数(この場合
はl=2)になる。これらの結果からn=m=lであ
り、0.2N HCl溶液ではイオン対反応が(6)式
で進み、
性でn=lであり、また酸素原子数(6m+l)/2=
3m+l/2は整数で、したがってlは偶数(この場合
はl=2)になる。これらの結果からn=m=lであ
り、0.2N HCl溶液ではイオン対反応が(6)式
で進み、
【0030】
【式6】
【0031】TPACはMo2O7 2-と反応することを明
らかになった。すなわちMo溶液にイオン会合系試薬を
添加して、イオン対化合物が生成されることが明らかに
なった。
らかになった。すなわちMo溶液にイオン会合系試薬を
添加して、イオン対化合物が生成されることが明らかに
なった。
【0032】2.TPACによるMoの不足当量抽出 47〜49μmolのMo、24〜26μmolのTP
ACを含み、pHの異なる溶液から有機溶媒(1,2−
ジクロルエタン)にMoを抽出し(図2)、有機層の放
射能を測定してMo量を算出した。この結果、塩酸換算
で8.4N HCl〜6.0N HClの領域及びpH
2.3〜4.3でMoが安定して抽出され放射不足当量
抽出が可能な領域として明らかになった。すなわち、二
つの酸性域で不足当量抽出が可能であった。
ACを含み、pHの異なる溶液から有機溶媒(1,2−
ジクロルエタン)にMoを抽出し(図2)、有機層の放
射能を測定してMo量を算出した。この結果、塩酸換算
で8.4N HCl〜6.0N HClの領域及びpH
2.3〜4.3でMoが安定して抽出され放射不足当量
抽出が可能な領域として明らかになった。すなわち、二
つの酸性域で不足当量抽出が可能であった。
【0033】また、不足当量抽出の再現性を6N HC
l(TPAC;26μmol,Mo;4.8〜240μ
mol)及びpH3.0(TPAC;24μmol,M
o;4.7〜142μmol)で進めた(図3)。図3
において、横軸はMo溶液のMo量(モリブデン担体
量)を示し、縦軸は放射能のカウント数を示す。(a)
はpH3.0の場合、(b)は6N HClの場合を示
す。
l(TPAC;26μmol,Mo;4.8〜240μ
mol)及びpH3.0(TPAC;24μmol,M
o;4.7〜142μmol)で進めた(図3)。図3
において、横軸はMo溶液のMo量(モリブデン担体
量)を示し、縦軸は放射能のカウント数を示す。(a)
はpH3.0の場合、(b)は6N HClの場合を示
す。
【0034】使用したTPAC量に対して、Mo量が当
量点に達する以前はイオン対化合物(有機層に抽出され
ている)はMo量に比例して生成し、当量点に達した後
はMoの増加にもかかわらず一定量のMoが分離され
る。この領域でMoの不足当量分離が可能である。図3
においては、(a)の場合、ほぼ当量点より放射能のカ
ウント数が一定となり、ほぼ当量点以上で不足当量分離
が可能であり、一方(b)の場合は、Mo量が約70μ
mol以上(当量点の約70/26=2.7倍以上)で
不足当量分離が可能であった。
量点に達する以前はイオン対化合物(有機層に抽出され
ている)はMo量に比例して生成し、当量点に達した後
はMoの増加にもかかわらず一定量のMoが分離され
る。この領域でMoの不足当量分離が可能である。図3
においては、(a)の場合、ほぼ当量点より放射能のカ
ウント数が一定となり、ほぼ当量点以上で不足当量分離
が可能であり、一方(b)の場合は、Mo量が約70μ
mol以上(当量点の約70/26=2.7倍以上)で
不足当量分離が可能であった。
【0035】3.TPACによるMoの不足当量抽出に
おける99mTcO4 2-の抽出挙動 TPAC量を変えて水溶液中のMo量の(1)80%、
(2)50%、(3)30%を有機溶媒で不足当量分離
し、抽出層(有機層)の放射能を計測して得られた14
0.5keVのγ線の壊変曲線を図4に示す。
おける99mTcO4 2-の抽出挙動 TPAC量を変えて水溶液中のMo量の(1)80%、
(2)50%、(3)30%を有機溶媒で不足当量分離
し、抽出層(有機層)の放射能を計測して得られた14
0.5keVのγ線の壊変曲線を図4に示す。
【0036】図から明らかなように、TPACによる抽
出ではMo2O7 2-に比べてTcO4 2 -の抽出定数ははる
かに大きく、まずTcO4 2-が抽出され、続いてMo2O
7 2-が抽出される。
出ではMo2O7 2-に比べてTcO4 2 -の抽出定数ははる
かに大きく、まずTcO4 2-が抽出され、続いてMo2O
7 2-が抽出される。
【0037】したがって99Mo/99mTcが過渡平衡に
達したMo2O7 2-水溶液から不足当量抽出すると、
(3)の30%抽出の条件では放射平衡に達するまでに
約24時間、50%抽出では約16時間、80%抽出で
は約8時間であり、さらに100%に近い抽出ではほぼ
放射平衡が保たれており、キレート試薬による不足当量
抽出72時間を要するのに比べて時間が大幅に短縮され
た。
達したMo2O7 2-水溶液から不足当量抽出すると、
(3)の30%抽出の条件では放射平衡に達するまでに
約24時間、50%抽出では約16時間、80%抽出で
は約8時間であり、さらに100%に近い抽出ではほぼ
放射平衡が保たれており、キレート試薬による不足当量
抽出72時間を要するのに比べて時間が大幅に短縮され
た。
【0038】
【実施例1】4.米国国立標準局(NBS)標準試料S
RM−1571である果樹の葉(Orchard Le
aves)及びSRM−1577である牛の肝臓(Bo
vine Liver)中の不足当量分析によるMoの
定量 0.3〜0.5gの試料をポリエチレンシームに封入、
秤量した比較標準試料の(NH)6Mo7O24とともに日
本原子力研究所原子炉で気送管照射した。3日間冷却し
て99Mo/99mTcが過渡平衡に達した後、1.5μg
の比較標準試料と分析試料にそれぞれ安定同位体Moの
担体40μmolを加えた。
RM−1571である果樹の葉(Orchard Le
aves)及びSRM−1577である牛の肝臓(Bo
vine Liver)中の不足当量分析によるMoの
定量 0.3〜0.5gの試料をポリエチレンシームに封入、
秤量した比較標準試料の(NH)6Mo7O24とともに日
本原子力研究所原子炉で気送管照射した。3日間冷却し
て99Mo/99mTcが過渡平衡に達した後、1.5μg
の比較標準試料と分析試料にそれぞれ安定同位体Moの
担体40μmolを加えた。
【0039】分析試料を白金ルツボに移して(1:4)
過塩素酸/硝酸に溶解し、硝酸を蒸発させた。塩酸、蒸
留水を加えて有機溶媒のMIBKで振り混ぜてMoを抽
出し、分析試料中に多量に含まれるリン(リンはMoと
別の化合物を生成してMoの不足当量分離を妨害する)
から分離した。さらにMIBKに蒸留水を加えて振り混
ぜMoを水層に戻した。
過塩素酸/硝酸に溶解し、硝酸を蒸発させた。塩酸、蒸
留水を加えて有機溶媒のMIBKで振り混ぜてMoを抽
出し、分析試料中に多量に含まれるリン(リンはMoと
別の化合物を生成してMoの不足当量分離を妨害する)
から分離した。さらにMIBKに蒸留水を加えて振り混
ぜMoを水層に戻した。
【0040】この分析試料の溶液と比較標準試料の溶液
にNH4Cl−HCl溶液、35μmolのTPACを
加えてpH3.2に調整し、1,2−ジクロルエタン1
0.0mlを加えて振り混ぜた。液−液分離した有機層
をポリエチレン製ボウビンに移し、一晩放置してγ線ス
ペクトロメトリーで測定した。計測された放射能を
a x,asの値から分析試料中のMoの量Mxは(7)式
より算出した。
にNH4Cl−HCl溶液、35μmolのTPACを
加えてpH3.2に調整し、1,2−ジクロルエタン1
0.0mlを加えて振り混ぜた。液−液分離した有機層
をポリエチレン製ボウビンに移し、一晩放置してγ線ス
ペクトロメトリーで測定した。計測された放射能を
a x,asの値から分析試料中のMoの量Mxは(7)式
より算出した。
【0041】Mx=(ax/as)Ms (7)
【0042】ただし、Msは比較標準試料のMo量、a
xは分析資料の放射線強度、asは比較標準試料の放射線
強度である。
xは分析資料の放射線強度、asは比較標準試料の放射線
強度である。
【0043】定量の結果得られたSRM−1571,S
RM−1577中のMoの濃度及びNBSの保証値を表
1に示す。
RM−1577中のMoの濃度及びNBSの保証値を表
1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、TPACによるモ
リブデン酸イオンの不足当量抽出条件を明らかにし、M
o2O7 2-と99mTcO4 2-を同時に抽出して過渡平衡に至
る時間を著しく短縮し、高感度かつ正確なMoの不足当
量分析を可能にしたことにより、生体試料や材料科学に
おけるMoの化学挙動を明らかにするとともに材料特性
とMoの関係を議論できる情報を提供できる利点があ
る。
リブデン酸イオンの不足当量抽出条件を明らかにし、M
o2O7 2-と99mTcO4 2-を同時に抽出して過渡平衡に至
る時間を著しく短縮し、高感度かつ正確なMoの不足当
量分析を可能にしたことにより、生体試料や材料科学に
おけるMoの化学挙動を明らかにするとともに材料特性
とMoの関係を議論できる情報を提供できる利点があ
る。
【図1】過剰のTPACによるMo抽出のpH範囲。
【図2】Moの不足当量抽出のpH範囲。
【図3】Moの不足当量描出の再現性。
【図4】Moの不足当量抽出における99mTcO4 2-の抽
出挙動である。
出挙動である。
Claims (4)
- 【請求項1】 水溶液中のモリブデン酸イオンを定量的
に分離する化学分離法において、酸性あるいは強酸性に
調整されたモリブデン溶液にイオン会合系試薬を添加し
てイオン対化合物を生成させて、有機溶媒に抽出するこ
とを特徴とするモリブデンの化学分離法。 - 【請求項2】 前記イオン会合系試薬として塩化テトラ
フェニルヒ素を、前記有機溶媒として1,2−ジクロロ
エタンを用い、前記定量的に化学分離する方法として不
足当量分離を用いることを特徴とする請求項1記載のモ
リブデンの化学分離法。 - 【請求項3】 前記イオン会合系試薬を添加したモリブ
デン溶液 は、pH2.3〜4.3であるか、HCl濃
度に換算して6.0〜8.4Nの酸性溶液であることを
特徴とする請求項1又は2記載のモリブデンの化学分離
法。 - 【請求項4】 前記モリブデン溶液に塩酸(HCl)ま
たは塩化アンモニウム(NH4Cl)−HCl溶液を添
加して酸性度を調整することを特徴とする請求項1から
3記載のいずれかのモリブデンの化学分離法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000226790A JP2002037627A (ja) | 2000-07-27 | 2000-07-27 | モリブデンの化学分離法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000226790A JP2002037627A (ja) | 2000-07-27 | 2000-07-27 | モリブデンの化学分離法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002037627A true JP2002037627A (ja) | 2002-02-06 |
Family
ID=18720341
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000226790A Pending JP2002037627A (ja) | 2000-07-27 | 2000-07-27 | モリブデンの化学分離法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002037627A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
RU2475549C1 (ru) * | 2011-10-26 | 2013-02-20 | Закрытое акционерное общество Научно-производственное предприятие "Промтех" (ЗАО НПП "Промтех") | Способ извлечения триоксида молибдена из огарков |
US8834656B2 (en) * | 2012-05-11 | 2014-09-16 | Entire Technology Co., Ltd. | Manufacturing method of porous composite film |
RU2529142C1 (ru) * | 2013-02-20 | 2014-09-27 | Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего профессионального образования "Забайкальский государственный университет" (ФГБОУ ВПО "ЗабГУ") | Способ извлечения молибдена из техногенных минеральных образований |
RU2536615C1 (ru) * | 2013-08-19 | 2014-12-27 | Федеральное государственное бюджетное учреждение науки Институт металлургии Уральского отделения Российской академии наук (ИМЕТ УрО РАН) | Способ переработки сульфидных и смешанных молибденсодержащих концентратов |
RU2703757C1 (ru) * | 2019-04-10 | 2019-10-22 | Федеральное государственное бюджетное учреждение науки Институт металлургии Уральского отделения Российской академии наук (ИМЕТ УрО РАН) | Способ переработки сульфидных и смешанных молибденсодержащих концентратов |
-
2000
- 2000-07-27 JP JP2000226790A patent/JP2002037627A/ja active Pending
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