JP2001521392A - 新規なヒト腫瘍抑制遺伝子 - Google Patents

新規なヒト腫瘍抑制遺伝子

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JP2001521392A JP54456098A JP54456098A JP2001521392A JP 2001521392 A JP2001521392 A JP 2001521392A JP 54456098 A JP54456098 A JP 54456098A JP 54456098 A JP54456098 A JP 54456098A JP 2001521392 A JP2001521392 A JP 2001521392A
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Abstract

(57)【要約】 キイロショウジョウバエ由来のHYDタンパク質(hyperplastic discs)およびラット由来の100kDa HECT(homologous to E6-AP carboxyl terminus:E6-APカルボキシ末端に相同性の)ドメインタンパク質に対して顕著なアミノ酸配列同一性を示す産物をコードするEDD(E3 isolated by Differential Display:ディファレンシャルディスプレーにより単離されたE3)と称する新規なヒトのプロゲスチン調節遺伝子を開示する。このEDD遺伝子は腫瘍抑制遺伝子に相当するようであり、被験者からの該遺伝子の多型または変異の検出は癌のような過増殖性疾患を診断し、また、過増殖性疾患に罹りやすい素質を判定するのに有用でありうる。被験者のプロゲスチン応答性を評価するアッセイ法も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 新規なヒト腫瘍抑制遺伝子 発明の利用分野 本発明は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来のHYDタン パク質(hyperplastic discs)およびラット由来の100kDaHECT(homologous to E6- AP carboxyl terminus:E6-APカルボキシ末端に相同性の)ドメインタンパク質に 対して顕著なアミノ酸配列同一性を示す産物をコードする、EDD(E3 isolated by Differential Display:ディファレンシャルディスプレーにより単離されたE3) と称する新規なヒトのプロゲスチン調節遺伝子(プロゲスチンにより調節される 遺伝子)に関する。発明の背景 正常乳房組織および乳癌組織における細胞の増殖と分化の制御には、ステロイ ドホルモン(特に、エストロゲンとプロゲステロン)、ペプチドホルモン、増殖 因子の複雑な働きおよび相互作用が関与している(1,2)。これらの作用物質が細 胞周期の重要な制御時点でどのように作用して、細胞周期のサイクルの進行に影 響を及ぼすのか、あるいは分化の経路に入るのか、については、ほんの一部しか 理解されていない(3,5)。 プロゲスチン(黄体ホルモン)は妊娠中の乳腺小葉胞の発達に関係しているが (6)、正常な閉経期前乳房における上皮細胞増殖の刺激の際には、プロゲスチン よりもエストロゲンの方が主要な役割を果たしているという証拠がある(7,8)。 プロゲスチンは乳癌上皮細胞の増殖をin vitroで刺激も抑制もするが、主な作用 は恐らく分化の誘導による増殖抑制である(3,4,7,9)。プロゲスチンの作用は 主としてプロゲステロン受容体(PR)により媒介され、該受容体は大きな未確定セ ットのプロゲスチン応答性遺伝子の転写トランスアクチベーターとして作用し、 続いてこれらのプロゲスチン応答性遺伝子が転写的にまたは転写後に更なる遺伝 子もしくは遺伝子産物に影響を及ぼすと考えられる。 細胞増殖に対するプロゲスチンの作用には、ほんの限られた数の遺伝子が関与 してきた。本発明者らによる以前の研究から、ヒト乳癌細胞におけるプロゲスチ ン刺激細胞周期進行の主要な下流標的としてc-mycとサイクリンD1が同定されて おり(3,10)、一方、プロゲスチンの遅延増殖抑制作用はサイクリンD1およびE遺 伝子発現の低下を必要とする(4,9)。c-myc遺伝子発現に対するプロゲスチン作 用は急速で数分以内に現れるが、サイクリン発現に対する作用は数時間後に開始 され、未確定の初期事象が存在することを示す。 プロゲスチンの作用は複雑で、多数の遺伝子(その多くが現在知られていない )が関与しているらしいので、ヒト乳癌細胞培養物において標的遺伝子を同定す るためにディファレンシャルディスプレーRT-PCR法(DD-PCR)(11)が採用された。 このアプローチの有効性は、6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース-2,6- ビスホスファターゼのイソフォームに対して顕著な相同性をもつ遺伝子であるPR G1のクローニングにより以前に実証されている(12)。同じ手法を使って、新規な プロゲスチン調節遺伝子EDD(本出願人のオーストラリア仮特許出願No.PO6334で はDD5という)が同定された。 アミノ酸配列の類似性に基づいて、EDDはショウジョウバエの腫瘍抑制遺伝子h yperplastic discs(hyd)のヒト相同体であるらしい(13)。HYDタンパク質の機能 は不明であるが、そのカルボキシル末端と、ヒトE6-APおよびデータベース検索 により同定された幾つかのタンパク質のカルボキシル末端と、の間に顕著な相同 性が存在する(14)。これらのHECTドメインファミリータンパク質はユビキチン− タンパク質リガーゼ(E3酵素)として機能し(14-16)、タンパク質分解のための特 異的基質タンパク質を標的とするユビキチン化カスケードにおいて、ある種の役 割を果たしている。特に注目すべき点として、EDDによりコードされるタンパク 質は、ユビキチンと共有結合しうるシステイン残基を含むカルボキシ末端のHECT ドメインをもっている。このアミノ酸は全ての既知のHECTドメイン含有E3酵素に おいて保存されており、ユビキチンの転移に関与している。したがって、EDD遺 伝子はユビキチン−タンパク質リガーゼをコードする新規なヒト腫瘍抑制遺伝子 に相当することが提起される。発明の開示 第1の態様において、本発明は、次のN-末端アミノ酸配列:を含むタンパク質または該タンパク質の生物学的に活性な部分をコードするヌク レオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。 好ましくは、コードされるタンパク質は次のN-末端アミノ酸配列: を含む。 より好ましくは、コードされるタンパク質はユビキチン−タンパク質リガーゼ であり、おおよその分子量が300kDaである。 最も好ましくは、単離されたポリヌクレオチド分子は、図3Bに示したヌクレオ チド34からヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列もしくはその部分と実質的 に一致する、または少なくとも90%以上(より好ましくは、95%以上)相同性であ るヌクレオチド配列を含む。 これに関連して、「その部分」という用語は、生物学的に活性なペプチドもし くはポリペプチド部分または抗原決定基をコードするヌクレオチド配列の部分を さすと理解すべきである。典型的には、「その部分」は50ヌクレオチド以上の長 さのヌクレオチド配列を含むだろう。しかし、ハイブリダイゼーションアッセイ に有用なプローブを作製するにあたっては、ヌクレオチド配列のより短い部分( 例えば、長さが8ヌクレオチド以上の部分)も使用することができる。 かくして、第2の態様において、本発明は、図3Bに示したヌクレオチド34から ヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列の8ヌクレオチド以上の部分と実質的 に一致するまたは相補的であるヌクレオチド配列を含んでなる、適切に検出可能 な標識(例えば、放射性同位体)で標識されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌ クレオチドプローブ分子を提供する。 このようなプローブ分子はDNAでもRNAでもよい。それらは、例えば、1以上の 組織から単離された全RNAまたはポリ(A)RNA中のEDD mRNAを定量的または定性的 に検出するために使用される。以下で述べるように、こうしたアッセイは診断 および/または予後判定に有用である。 本発明はさらに、前記配列用のオリゴヌクレオチドプライマー、アンチセンス 配列、該プライマーおよびアンチセンス配列の相同体、相補的リボザイム配列、 触媒抗体結合部位、該ポリヌクレオチド分子の優性ネガティブ突然変異体にも及 ぶ。 好ましくは、第1の態様のポリヌクレオチド分子はヒト由来のものである。よ り好ましくは、該ポリヌクレオチド分子はヒト癌細胞由来のものである。 第1の態様の単離されたポリヌクレオチド分子をプラスミドまたは発現ベクタ ーもしくはカセットに組み込み、その後適当な細菌、酵母、昆虫または哺乳動物 宿主細胞の中に導入することができる。かかる宿主細胞を用いて、単離されたポ リヌクレオチド分子によりコードされるタンパク質またはその生物学的に活性な 断片を発現させることができる。 上述したように、EDD産物(pEDD)のアミノ酸配列はショウジョウバエのHYDタン パク質のアミノ酸配列に対して顕著な配列類似性を示す。ショウジョウバエのhy d遺伝子は腫瘍抑制遺伝子であり、それゆえにEDD遺伝子も同様に腫瘍抑制遺伝子 であると予想される。さらに、pEDDタンパク質はHYDタンパク質と類似した活性 をもつことが期待される。とりわけ、EDDの不活性化または他の突然変異が起こ ると癌に罹りやすくなり、したがって、EDDは予防的または治療的戦略のための 可能性のある標的となろう。EDDの突然変異は癌への罹りやすさを診断するのに 役立ち、特に正常または前新生物疾患の早期診断に役立ち、あるいは腫瘍の進行 または治療に対する応答を予測するのに(すなわち、予後マーカーとして)有用 であろう。さらに、EDDはプロゲスチンや他のマイトジェンによる細胞周期の調 節に関与しているらしいので、EDDは抗増殖剤(すなわち、癌治療薬)の可能性 のある標的となる。その上、EDDはプロゲスチンにより調節されるほんの少数の 既知遺伝子の一つであるので、EDDはプロゲスチン作用の重要なメディエーター であり、かつプロゲスチンに対する臨床応答性のマーカーとなる。 腫瘍抑制遺伝子として、EDDは例えばp16(多発性腫瘍抑制遺伝子1:MTS1)また は家族性乳癌感受性遺伝子BRCA1のような家族性癌感受性遺伝子であるかもしれ ない。また、EDDは散発性の癌においてある役割を担っている可能性がある。 第3の態様において、本発明は、次のN-末端アミノ酸配列: を含むタンパク質(pEDDという)または該タンパク質の生物学的に活性な部分を 実質的に純粋な形で提供する。 好ましくは、第3の態様の前記タンパク質は次のN-末端アミノ酸配列: を含む。 より好ましくは、第3の態様の前記タンパク質はユビキチン−タンパク質リガ ーゼであり、おおよその分子量が300kDaである。 最も好ましくは、第3の態様の前記タンパク質は図3Cに示したアミノ酸配列と 実質的に一致するアミノ酸配列を含む。 生物学的に活性な部分は、該タンパク質の生物学的作用を抑制する、模倣する または増強するポリペプチドまたはペプチド配列からなり得る。加えて、生物学 的に活性な部分は、該タンパク質に特異的な抗体を生起させるのに有用な抗原決 定基を提示してもよい。 第3の態様に従う前記タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、天然源 (例えば、全脳、心臓、精巣、虫垂)もしくは適当な細胞系から精製するか、ま たは当技術分野で公知の方法(Sambrookら,1989)により組換え的に生産すること ができる。 第4の態様において、本発明は、本発明の第1の態様のポリヌクレオチド分子 で形質転換された非ヒト生物を提供する。 第1の態様のポリヌクレオチド分子で有益に形質転換され得る生物としては、 大腸菌や枯草菌のような細菌、CHOのような真核細胞系、真菌、植物などがある 。 第5の態様において、本発明は、pEDDと称するタンパク質またはその抗原性部 分に特異的な抗体を提供する。 抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよく、当技術分野 で公知の方法により生成することができる。 また、本発明は診断アッセイ用のキットにも関係していることを理解すべきで ある。前記キットは第2の態様に従うタンパク質もしくはその生物学的に活性な 部分および/または第5の態様に従う抗体を含む。これに加えて、あるいはこれ とは別に、前記キットはハイブリダイゼーションアッセイ用のオリゴヌクレオチ ドプローブまたはPCRに基づいたアッセイ用のオリゴヌクレオチドプライマーを 含んでいてもよい。 第6の態様において、本発明は、抗pEDD抗体と結合することができるタンパク 質またはその抗原性部分を提供する。 以下に示すように、いくつかの組織では、EDDがプロゲスチンにより調節され ているようである。したがって、EDDは被験者におけるプロゲスチン応答性の有 用なマーカーを提供しうる。例えば、乳癌、子宮内膜腫または髄膜腫のマーカー として、プロゲスチンまたはプロゲスチンアンタゴニスト(抗プロゲスチン)に 対する応答性、すなわち、その高レベルはその腫瘍がプロゲスチン/抗プロゲス チンに応答し、プロゲスチン/抗プロゲスチン療法に感受性であることを示すの かもしれない。EDDはまた有用な予後マーカーでもあり得る。なぜならば、ホル モン応答性の腫瘍はしばしば良好な予後を示す(すなわち、患者が疾病フリーの 状態でより長い期間または全期間生存する)からである。 あるいはまた、EDD遺伝子の突然変異、欠失または増幅は、プロゲスチン調節 遺伝子としてのその役割とは無関係に、腫瘍の進行および疾病の予後を予告する 可能性がある。こうして、分離された細胞または組織サンプル中に存在するEDDm RNAのレベルをハイブリダイゼーションアッセイまたはPCR分析でDNAもしくはRNA プローブまたはプライマーによりアッセイすることができる。あるいはまた、上 記の抗体を用いてpEDDタンパク質のレベルをアッセイしてもよい。 したがって、第7の態様において、本発明は、 (i)被験者から細胞または組織を分離し、 (ii)図3Cに示したアミノ酸配列と実質的に一致するアミノ酸配列を含むタンパ ク質の存在を検出する、 各ステップを含んでなる、被験者におけるプロゲスチン応答性を評価するための アッセイ法を提供する。 いくつかの状況においては、分離した細胞または組織を、プロゲスチンまたは そのアゴニストもしくはアンタゴニスト化合物にさらし、その後、プロゲスチン またはそのアゴニストもしくはアンタゴニスト化合物がpEDDタンパク質の生産を 誘導したかどうか調べることが好ましい。 第8の態様において、本発明は、被験者における過増殖性疾患、または過増殖 性疾患もしくは発達異常に罹りやすい素質を示すものであるEDD遺伝子の多型ま たは変異を検出することを含んでなる、過増殖性疾患(特に、癌)を診断する方 法、または過増殖性疾患に罹りやすい素質を判定する方法を提供する。 また、EDD活性のモジュレーションは、悪性または非悪性の過増殖性疾患(例 えば、乳癌や他の癌)のような増殖障害、および皮膚病学的疾患または発達異常 の治療に有効でありうる。さらに、EDDのモジュレーションは、プロゲスチン標 的器官におけるプロゲスチン作用を必要とするプロセス(例えば、受精のコント ロール、生殖組織の機能)において治療的価値を有するかもしれない。 EDD活性は、以下により調節することができる。すなわち、 −刺激性または抑制性のいずれかの合成化合物(すなわち、アゴニストまたは アンタゴニスト)、 −EDDに特異的なリボザイム(すなわち、内因性EDD活性をダウンレギュレート する)、 −EDDセンス(すなわち、内因性pEDDタンパク質のレベルおよび活性を増強す る)またはEDDアンチセンス(すなわち、内因性pEDDタンパク質のレベルおよび 活性をダウンレギュレートする)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベク ターまたはオリゴヌクレオチドまたは他の送達系(例えば、ウイルス)を用いる 遺伝子治療。センスベクターは、該タンパク質の個々の部分に別個の望ましい活 性があると分かった場合には、EDDコード配列の一部分のみを含むことができる 。このようなベクターは、例えば、内因性pEDDタンパク質の活性を低下または排 除することにより、表現型の変化を引き起こす遺伝子産物をコードするEDDの優 性ネガティブ突然変異体を含んでいてもよい。表現型の変化は、酵素複合体の形 成の妨害、基質の競合、または欠陥のある基質もしくは反応産物の形成により引 き起こされよう。優性ネガティブ突然変異体の特定の例は、タンパク質−タンパ ク 質相互作用または基質認識に関与するpEDD配列を保持しているが、pEDDタンパク 質のどこか他の部分にある酵素活性や他の活性を欠失している末端切断型のタン パク質をコードする突然変異体でありうる。このような突然変異体の発現は正し い基質の修飾またはプロセシングを阻害するだろう。こうして、推定上のユビキ チン−タンパク質リガーゼとして、タンパク質基質の結合を可能にするが、後続 のユビキチン化とこれらの配列の分解に必要な配列を欠失している末端切断型pE DDタンパク質が発現され得るだろう。 pEDDタンパク質は細胞増殖、分化、細胞死を含めた細胞周期(成長)の調節に 関与しているように思われるので、pEDDタンパク質またはそのアゴニストもしく はアンタゴニストは癌の化学療法による治療において化学保護剤として使用でき る可能性がある。すなわち、標準的な抗癌剤(例えば、メトトレキセート、ビン ブラスチン、シスプラチン)で治療する前に、正常細胞における細胞増殖、分化 、細胞死を含めた細胞周期を停止させるために患者にpEDDタンパク質またはアゴ ニスト/アンタゴニストを投与しうる。これにより停止した細胞は化学療法剤の 毒性による損傷をそれほど受けないだろう。 ヌクレオチド配列に関して本明細書中で用いる「実質的に一致する」という用 語は、DNAコードの縮重のためにコード化タンパク質を変化させないヌクレオチ ド配列の小さな変化を含むことを意味する。さらに、この用語は、特定の系での 発現を増大させるのに必要とされる該配列の他の小さな変化(しかし、この変化 は結果的にコード化タンパク質の生物学的活性を低下させるものではない)を含 むことを意味する。 アミノ酸配列に関して本明細書中で用いる「実質的に一致する」という用語は 、コード化タンパク質の生物学的活性を低下させないアミノ酸配列の小さな変化 を含むことを意味する。これらの変化は同類アミノ酸置換を含む。考えられる置 換は、G,A,V,I,L,M;D,E;N,Q;S,T;K,R,H;F,Y,W,H;およびP,Nα-ア ルキルアミノ酸;である。 本明細書全体を通して用いられる「含む」および「含んでなる」という用語は 、記載した1つのステップ、成分もしくは特性、または1グループのステップ、 成分もしくは特性を、更なる1つのまたはグループのステップ、成分もしくは特 性 を含めてまたは含めないで、含むことを意味するものである。 以下の非限定的な実施例および添付の図面を用いて本発明をさらに説明するこ とにする。添付図面の簡単な説明 図1.合成プロゲスチンORG 2058で処理したT-47D細胞において示差的に発現さ れたcDNAの同定。 A) ディファレンシャルディスプレーによるEDDの同定。ORG 2058またはビヒ クル対照(エタノール)で3時間処理したT-47D細胞から得られた全RNAを、ディ ファレンシャルディスプレーPCR反応用の鋳型として用いた。PCR産物を4.5%ポリ アクリルアミド変性ゲル上で分離し、オートラジオグラフィーで可視化した。矢 印は対照レーンと比べて高レベルでプロゲスチン処理レーン(ORG 2058)に存在す るEDD DD-PCR産物(DD5-1;図3A参照)を示す。 B) ノーザンブロット分析によるEDDのプロゲスチン誘導の確認。5%チャーコ ール処理FCSを補充した培地中で増殖しているT-47D細胞を、アクチノマイシンD( ACT)の存在下または非存在下に10nM ORG 2058またはエタノールビヒクル(対照 )で処理し、3時間後ノーザン分析のために全RNAを回収した。ノーザンブロッ トはEDDクローンP19を用いてプローブした。 C) EDD mRNAのプロゲスチン誘導に及ぼすシクロヘキシミドの影響。5%チャー コール処理FCSを補充した培地中で増殖しているT-47D細胞を、ORG 2058(10nM)、 シクロヘキシミド(CHX,20μg/ml)、同時にORG 2058とCHX、またはエタノールビ ヒクルで処理し、1時間で全RNAを回収した。ノーザンブロットはEDD DD-PCR断 片であるDD5-1でプローブした。 図2.ヒト組織におけるEDD mRNAの発現。 A) ヒト組織由来のポリA+RNAのノーザンブロット分析。ブロットをEDDのP19 cDNAクローンとハイブリダイズさせた。マーカーの分子サイズを示してある。PB L、末梢血白血球。 B) ヒト組織由来のポリA+RNAのドットブロット分析。ブロットをEDDのP19 cD NAクローンとハイブリダイズさせた。A列:1,全脳;2,扁桃;3,尾 状核;4,小脳;5,大脳皮質;6,前頭葉;7,海馬;8,延髄;B列:1,後頭葉 ;2,被殻;3,黒質;4,側頭葉;5,視床;6,視床下核;7,脊髄;C列:1,心 臓;2,大動脈;3,骨格筋;4,結腸;5,膀胱;6,子宮;7,前立腺;8,胃;D 列:1,精巣;2,卵巣;3,膵臓;4,下垂体;5,副腎;6,甲状腺;7,唾液腺 :8,乳腺;E列:1,腎臓;2,肝臓;3,小腸;4,脾臓;5,胸腺;6,末梢血白 血球;7,リンパ節;8,骨髄;F列:1,虫垂;2,肺;3,気管;4,胎盤;G列: 1,胎児脳;2,胎児心臓;3,胎児腎臓;4,胎児肝臓;5,胎児脾臓;6,胎児胸 腺;7,胎児肺。 図3.EDDのクローニングおよび推定アミノ酸配列。 A) 全長EDD構築物のクローニングに用いた部位を示すEDD cDNAの制限地図を 伴うEDD構造体、および下記のEDD配列を導き出すのに用いたcDNAクローンの模式 図。ディファレンシャルディスプレーで同定されたDD-PCR cDNA断片をDD5-1と命 名し、5'RACE産物と元のDD-PCR産物から誘導されたcDNAクローンをDD5-2と命名 した。全てのcDNAクローンはヒト胎盤cDNAライブラリーから分離されたものであ るが、Hlはヒト心臓cDNAライブラリーから分離された。 B) EDDのヌクレオチド配列。開始コドンと停止コドンには下線が引いてある 。 C) pEDDの推定アミノ酸配列。HYDに対して高い相同性(約60%)を示す2つの 領域(中心の配列およびHECTドメインを含むカルボキシル末端配列)が存在し、 これらの配列と他の高度に保存された配列を太字で示し、2つの推定核局在化シ グナルを四角で囲ってある。HECTドメインは太字と下線で示され、残基2768に保 存されたシステインを含む。ポリA結合タンパク質に相同性を示す領域はイタリ ック体で示し、抗血清AbPEP1が誘導されたペプチド配列には下線が引いてある。 数字はアミノ酸の位置を示す。 図4.EDD遺伝子の染色体位置確認。 Hlプローブを用いたFISHを示す中期染色体。正常な男性染色体をDAPIで染色し た。第8染色体上のハイブリダイゼーション部位を矢印で示す。 図5.EDDタンパク質の特徴づけ。 A) AbPEP1による組換えEDDタンパク質の検出。末端切断型のEDD構築物(EDD10 0kDa)を含むバキュロウイルスを感染させたSf9細胞をSDS-サンプル緩衝液中 で煮沸し、その後6%ゲルでSDS-PAGEにかけ、ニトロセルロースに移行させてAbPE P1またはペプチドブロックしたAbPEP1でブロットした。 B) EDDタンパク質のサイズの決定。AbPEP1を用いてT-47D溶解物からEDDを免 疫沈降させた。免疫沈降物(IP)を、in vitro翻訳した全長EDDの産物(IVT)および 免疫沈降したin vitro翻訳EDD(IVT−IP)と共に、6%ゲルのSDS-PAGEにかけて分離 した。T-47D免疫沈降物をニトロセルロースに移行させ、AbPEP1でEDDについてブ ロットし、ゲルの残部は乾燥させてオートラジオグラフィーに供した。マーカー タンパク質の分子量を示してある。 C) T-47D溶解物中のEDDの検出。免疫沈降したEDDをT-47D溶解物からの40μg 全タンパク質と共に電気泳動にかけた。全タンパク質をAbPEP1またはペプチドブ ロックしたAbPEP1のいずれかでブロットし、免疫沈降物をAbPEP1でブロットした 。 図6.ヒト組織および細胞系におけるEDDタンパク質の発現。 正常乳房細胞系および乳癌細胞系におけるEDDの発現。いくつかの細胞系から の全細胞溶解物を6%ゲルのSDS-PAGEにかけて分離し、ニトロセルロースに移行さ せてAbPEP1でブロットした。184は正常乳房細胞系であり、l84B5は不死化誘導体 であり、残りは乳癌細胞系である。MCF-7MはMCF-7のサブラインである。 図7.ラット100kDaタンパク質cDNAの配列。 1つのクローンをEDD特異的FC2プライマーを用いて配列決定したときに得られ たシークエンシングゲルのオートラジオグラフ。このオートラジオグラフに沿っ て配列(a)を示す。発表された配列(b)も一緒に示してあり、欠失している塩基を 星印で表す。 図8.EDDによるユビキチンチオールエステル形成。35S-メチオニンの存在下での末端切断型(A)または全長(B)のEDD野生型または 変異型(C2768A)タンパク質のin vitro翻訳に続いて、精製したGST-ユビキチン( またはパートAではGST)融合タンパク質の存在下または非存在下に25℃で10分イ ンキュベートした。4M尿素を含む非還元サンプル緩衝液中25℃で20分インキュベ ートするか、または100mM DTTを含むサンプル緩衝液中で煮沸した後にサンプル をSDS-PAGE(A,7%ゲル;B,6%ゲル)で分離した。ユビキチン-およびGST- ユビキチン-結合体を矢印で示す。実施例 材料および方法 試薬 ステロイド類および増殖因子は次のソースから入手した。ORG2058(16α-エチ ル-21-ヒドロキシ-19-ノルプレグナ-4-エン-3,20−ジオン)、Amersham Australi a Pty Ltd(Sydney,Australia);ヒト・トランスフェリン、Sigma Chemical Co. (St.Louis,Mo.);およびヒト・インスリン、Actrapid(CSL-Novo,North Rocks ,Australia)。ステロイドは無水エタノール中の1000倍濃縮ストック溶液として -20℃で保存した。シクロヘキシミド(Calbiochem-Behring Corp.,LaJolla,CA) は水に20mg/mlの濃度で溶解し、濾過滅菌した。アクチノマイシンD(Cosmegen,M erck Sharp and Dohme Research Pharmaceuticals,Rahway,NJ)は滅菌水に0.5m g/mlの濃度で溶解した後すぐに使用した。組織培養用の試薬類は一般的なソース から購入した。 細胞培養 用いたヒト乳癌細胞系および正常細胞系のソースおよび維持は以前に記載され たとおりにおこない(12,22)、組織培養実験も同様におこなった(12)。簡単に説 明すると、プロゲスチン(ORG 2058,10nM)および/またはシクロヘキシミド(20 μg/ml)またはアクチノマイシンD(5μg/ml)を培地に添加し、対照フラスコには 同容量のビヒクルのみを添加した。ディファレンシャルディスプレー用のRNAを 得るために、細胞をインスリン補充無血清培地で増殖させ、ORG 2058またはエタ ノールビヒクルで3時間処理した。後続のプロゲスチン刺激実験は5%チャーコー ルでストリップしたウシ胎児血清を含みインスリンを含まない培地で実施した。 RNA分離およびノーザン分析 2つの150cm2フラスコから回収した細胞をプールし、グアニジンイソチオシア ネート-塩化セシウム法によりRNAを抽出し、以前に記載されたとおりにレーン当 たり20μgの全RNAを用いてノーザン分析をおこなった(3,23)。膜は、Prime-a-G eneラベリングキット(Promega Corp.,Sydney,Australia)を使って[ α-32P]dCTP(Amersham Australia Pty Ltd)で標識したプローブと一夜(50℃)ハ イブリダイズさせた。0.2X SSC(30mM NaCl,3mMクエン酸ナトリウム[pH7.0])/1% ドデシル硫酸ナトリウム中65℃の最も高度のストリンジェンシーで膜を洗浄し、 Kodak X-OMATまたはBIOMAXフィルムに-70℃で露光した。ヒト多組織ノーザンブ ロットまたはRNA Masterブロット(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA )を製造業者が推奨する条件下でハイブリダイズさせた。mRNAの量はMolecular D ynamicsデンシトメーターおよびソフトウェア(Molecular Dynamics,Sunnyvale ,CA)を使ってオートラジオグラフのデンシトメトリック分析により定量した。 ローディング(loading)の精度は、膜を18S rRNAに相補的な[γ-32P]ATP末端標識 オリゴヌクレオチドと再ハイブリダイズすることで評価した(24,25)。 ディファレンシャル(示差)ディスプレー ディファレンシャルディスプレーは、Heiroglyph mRNA Profile Kit No.1(Gen omyx Corporation,Foster City,CA)および推奨されたプロトコールを用いて以 前に記載されたとおりにおこなった(11)。96ウェルフォーマットの0.2ml薄壁チ ューブ内で第1鎖cDNA合成を実施した。典型的には、合成プロゲスチンORG 2058 で3時間処理したT-47D細胞または対照T-47D細胞に由来する200ngの全RNAを、4p molのアンカープライマー(5'ACGACTCACTATAGGGCT12AC)とアニーリングしたあと でExpand Reverse Transcriptase酵素(Boehringer Mannheim Pty Ltd,Castle H ill,Australia)により逆転写した。後続のPCR増幅は、アンカープライマー(0.2 μM)、任意のプライマー(5'ACAATTTCACACAGGAGCTAGCAGAC,0.2μM)およびExpand Long Template Taq DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)と共に[α-33P]dAT Pを含む2通りの反応液中で、得られたcDNAの10分の1を用いておこなった。PCR 産物を変性し、Genomyx Long Read Sequencing System試薬および装置を用いて4 .5%変性ポリアクリルアミドゲル上で800vにて16時間分離した。ゲルをガラス板 の上で乾燥し、X線フィルムに16〜72時間露光した。関心のあるDD-PCR産物をゲ ルから切り出し、キット製造業者の推奨する条件下でM13フォワードプライマー( 5'AGCGGATAACAATTTCACACAGGA)およびT7プロモータープライマー(5'TAATACGACTCA CTATAGGG)を用いてPCR増幅した。再増幅PCR産物は QIAEX試薬(Qiagen Pty Ltd,Clifton Hill,Australia)を用いて0.8%アガロース ゲルから精製した。 cDNAのクローニングおよび配列決定 二本鎖DNA鋳型は[33P]-標識プライマーを用いてfmol DNA Cycle Sequencing S ystem(Promega Corp.)により配列決定した。DD-PCR産物の直接配列決定のために M13プライマーを使用し、pGEM-Tベクター(Promega Corp.)にクローニングしたPC R産物の配列決定にはT7およびSP6(5'GATTTAGGTGACACTATAG)プロモータープライ マーを使用した。BlastまたはFastaネットワークサービスを用いてNCBIで配列デ ータベース検索をおこなった。Prositeデータベースに対してペプチドモチーフ 検索を実施した。報告されたラット100kDa開始コドンを含む領域(26)に隣接する 2つのプライマー(FC2:5'GACGAAGGGCCCTGACTGCGCGAGAAGAAGCおよびR2:5'AAAGAAT TCTGTCATGGAGTCTGAACGTCG)を用いて、ラット視床下部ライブラリー(CLONTECH)か ら抽出されたcDNAを増幅した。得られたPCR産物をpGEM-T(Promega Corp.)にクロ ーニングし、4つのクローンの配列を決定した。 cDNA 5'末端の迅速増幅(5'RACE) 5'RACEキット(Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD)を製造業者の指示 に従って用いて追加の配列を得た。簡単に述べると、第1鎖cDNA合成を開始させ るために遺伝子特異的プライマー(GSP1:5'CACGCTCCAATGCAAGCTGG)を使用した。R NA鎖の除去後、cDNAの5'末端にポリdCを付加し、PCRで増幅した。標的cDNAはア ンカープライマー(UAP:5'GGCCACGCGTCGACTAGTACGGGIIGGGIIGGGIIG,ここでIはデ オキシイノシンを表す)を第2の遺伝子特異的プライマー(GSP2:5'CGATCTTCCCTGA TTCGAGGTGGC)と共に用いて増幅した。種々のゲル精製PCR産物を、UAPおよび第3 の遺伝子特異的ネステッド(nested)プライマー(GSP3:5'CTGTATTGACAATGCTCCACC) によりさらにPCR増幅し、プライミングした。 cDNAライブラリーのスクリーニング オリゴ(dT)およびランダムプライマー(Stratagene,LaJolla,CA)でプライミ ングしたLambda ZAPIIベクター中のヒト心臓cDNAライブラリーからの106個のプ ラークをナイロン膜(Hybond N,Amersham Australia Pty Ltd)に移行させ、もと のDD-PCR断片とRACE産物の両方を[32P]-標識プローブとして用いてスクリーニン グした。これによりクローンHl(2.55kb)が分離された。このクローンとRACE産物 を使って、オリゴ(dT)およびランダムプライマー(CLONTECH Laboratories,Inc. )でプライミングしたlgt10中のヒト胎盤5'-STRETCHPLUScDNAライブラリーからの 106個の組換え体をスクリーニングした。pBluescriptまたはlgt10中のcDNAクロ ーンの配列決定はベクター特異的または遺伝子特異的プライマーを用いて上記の ように実施した。数回の陽性クローンの分離とそのライブラリーの更なるスクリ ーニングにより、全EDDオープンリーディングフレームをカバーする次のオーバ ーラップするクローンが分離された:P61(1.95kb)、P43(2.1kb)、Pl(1.5kb)、P1 9(3kb)およびP47(2.1kb)。 蛍光in situハイブリダイゼーション クローンH1に対応するプローブをビオチン-14-dATPでニックトランスレーショ ンし、二人の正常男性からの中期染色体に最終濃度20ng/mlでin situハイブリダ イズさせた。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法では、以前に記載さ れた方法(27)を改良して、染色体を分析前にヨウ化プロピジウム(対比染色とし て)とDAPI(染色体同定のため)の両方で染色した。中期調製物の画像は、Cyto Vision Ultraイメージコレクションおよび増強システム(Applied Imaging Int L td)を用いてCCDカメラにより捕らえた。FISHシグナルとDAPIバンドパターンは図 の準備のために結合させた。 in vitro翻訳およびタンパク質発現のための組換えcDNAクローンの構築 全長EDD配列は、オープンリーディングフレームにわたる3つのPCR産物をpBlu escriptに連結することによりクローン化した。これらの断片を連結するために 使用した既存のSalIおよびEcoRI制限部位は図3Aに示してある。推定されるラッ ト100kDaタンパク質に対応する890アミノ酸からなる末端切断型タンパク質(ア ミノ酸1910〜2799)が翻訳されるように、cDNAのカルボキシル側3分の1をpBlues criptにクローン化した。Spodoptera frugiperda(Sf9)細胞中でBAC-TO-BACバキ ュロウイルス発現系を用いてタンパク質を発現させるために、同一の末端切断型 cDNA断片をpFASTBAC1発現ベクター(Life Technologies Inc.)にクローン化し、H EK-293細胞への一過性トランスフェクションのために全長EDD cDNAをpRcCMV発現 ベクター(Invitrogen,Leek,The Netherlands)にクローン化した。 システイン2768のアラニンへの突然変異誘発は、Quick-Change部位特異的突然変 異誘発キット(Stratagene)を使って、pBluescript中の全長および末端切断型構 築物に対して実施した。in vitro転写および翻訳は、TNT T7 Quick coupledウサ ギ網状赤血球溶解液系(Promega Corp.)および[35S]-メチオニン(1000Ci/mmole, ICN Biomedicals Australasia Pty Ltd,Seven Hills,Australia)を用いておこ なった。 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびイムノブロッティング 50mM 4-(2−ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES;pH7.5) 、150mM NaCl、10%グリセロール、1.5mM MgCl2、1mM EGTA、10mMピロリン酸ナト リウム、20mMフッ化ナトリウム、1mMジチオトレイトール(DTT)、10μg/mlずつの アプロトニンおよびロイペプチン、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF) および200μMオルトバナジン酸ナトリウムを含む1% Triton X100緩衝液中で中期 対数期で増殖している細胞を溶解した。この溶解物を遠心により清澄化し、改良 したBradford法(Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA)に従って定量し、一般的 には、5% β−メルカプトエタノールを含むSDS-サンプル緩衝液(50mM Tris-HCl ,pH6.8,2% SDS,10%グリセロール,0.2%ブロモフェノールブルー)中の40μgの 全タンパク質を6% SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分離した。電気泳動後、タ ンパク質をニトロセルロース(TransBlot,Bio-Rad Laboratories)に移し、免疫 検出にかけた。EDD特異的ペプチド(SSEKVQQENRKRHGSS)を合成し、グルタルアル デヒドを介してジフテリア毒素に結合させ、これを用いてウサギ抗EDD抗体(AbPE P1という)を生成させた。 免疫沈降 清澄化した細胞溶解物(典型的には1mgの全タンパク質)またはin vitro翻訳 反応物を、10倍過剰の競合用ペプチドの存在下または非存在下に4℃で1〜2時間 、対照ウサギ血清またはAbPEP1のいずれかとインキュベートした。プロテインA セファロース4B(Zymed,San Francisco,CA)とのインキュベーション後、免疫沈 降物を上記の1% Triton X100溶解緩衝液中で3回洗浄し、SDS-PAGEで分離し、ニ トロセルロースに移してAbPEP1でイムノブロットし、適宜にワットマン3MM紙上 で乾燥後、オートラジオグラフィーにかけた。 ユビキチン結合アッセイ in vitro翻訳し、[35S]-標識した末端切断型(約100kDa)または全長タンパク 質のユビキチン結合能は、5μlの翻訳反応物を、5μgの精製GSTタンパク質ま たはGST-ユビキチン融合タンパク質の存在下または非存在下に25℃で10分インキ ュベートして試験した(28)。反応混合物を100mM DTT含有SDS-サンプル緩衝液中9 5℃で5分インキュベートするか、またはDTTの代わりに4M尿素を含むSDS-サンプ ル緩衝液中25℃で20分インキュベートすることにより反応を終了させた。サンプ ルを6%または7%ゲルのSDS-PAGEで分離し、乾燥後オートラジオグラフィーにかけ た。結果 プロゲスチン調節cDNAの単離およびノーザンブロット分析 合成プロゲスチンORG 2058による3時間の処理に応答して発現レベルが変化し ているT-47Dヒト乳癌細胞中のmRNAを同定するために、ディファレンシャルディ スプレー法を採用した。アンカープライマー5'ACGACTCACTATAGGGCT12ACを任意の プライマー5'ACAATTTCACACAGGAGCTAGCAGACと共に用いた場合に、対照サンプルよ りも処理サンプル中に豊富に存在していた約850bpのcDNA断片が同定され、これ をEDDと命名した(図1A)。T-47D細胞由来の全細胞RNAのノーザン分析から、EDD mRNAレベルの観察されたORG 2058誘導には転写が必要であることが示された。 というのは、誘導がアクチノマイシンDの存在下でブロックされたからである( 図1B)。誘導はシクロヘキシミドによっても妨害され、このことはEDDがプロゲ ステロン受容体(PR)を介して作用するプロゲスチンにより直接転写的に調節され るものでないことを示唆している(図1C)。 EDD遺伝子発現の組織特異性は、ヒト組織から分離したポリA+RNAのノーザンブ ロットをEDD cDNA断片にハイブリダイズさせることで調べた。9.5kbの単一の転 写産物が種々の組織において検出され(図2A)、最高の発現が精巣、心臓、胎盤 および骨格筋に見られた。より定量的にローディングしたRNAドットブロットへ のハイブリダイゼーション(図2B)から、EDDは試験したあらゆる組織において 様々なレベルで発現されており、そのmRNAは精巣に最も多く、脳、下垂体、 腎臓で高レベルに発現されることが確認された。有意な発現レベルは胎盤、子宮 、前立腺、胃、胎児肺および種々の脳組織でも認められた。EDD mRNAはまた、い くつかの乳癌細胞系(そのうちの全部がプロゲスチン応答性というわけではない )においても発現された(データは示してない)。 全長EDD cDNAのクローニング DD-PCRにより単離された元のDD5-1断片は長さが850bpであり、図3Aに模式的に 示してある。この断片のDNA配列は既知のいずれのヒト遺伝子配列に対しても相 同性を示さない。EDDが誘導された完全なコード配列を得るために、5'RACEとヒ ト心臓および胎盤cDNAライブラリーのスクリーニングとを組み合わせて用いた。 これにより、8.5kbの配列をカバーする一連のオーバーラップするクローンが得 られた(図3A;Genbank受託番号AF006010)。ヌクレオチド配列の解析(図3B)は 2799個のアミノ酸からなるオープンリーディングフレームを明らかにした(図3C )。オーバーラップする1800bpのセグメントにEDD配列を分割し、GenBankデータ ベースのBlastx検索に用いた。機能が知られたヒト配列に対する唯一の相同性は 50アミノ酸に沿ったポリA結合タンパク質に対してであるが(50%,図3C)、この 領域での哺乳動物ポリA結合タンパク質間の類似性は通常ほぼ100%である。 EDDのDNA配列はデータベース中の2つの配列に対して有意な類似性を示した。 これらの遺伝子は両方ともユビキチン−タンパク質リガーゼのHECTファミリーに 属するタンパク質をコードしているが、それらの特異性は不明である。HECTタン パク質はチオエステル結合を介してユビキチンと結合し得るシステイン残基を含 む約300アミノ酸の保存されたドメインを含む。EDDのヌクレオチド5667〜8502は ラット100kDaタンパク質のcDNA配列(26)と88%同一であり、ヌクレオチド572〜74 0および3498〜3867はキイロショウジョウバエのhyperplastic discs遺伝子(hyd) の2領域と69%同一であり、ヌクレオチド7560〜8430はhydの3分の1の領域と60% 同一であった。推定上の開始コドンは強力な翻訳開始のためのコンセンサス配列 (ACCATGA,(29))で囲まれており、ショウジョウバエのhyd遺伝子の可能性のある 開始コドンに一致する(13)。停止コドンはラット100kDaタンパク質およびhyd遺 伝子が共有するものに一致する。EDDと同様に、hyd遺伝子もラット100kDaタンパ ク質の遺伝子もmRNA転写産物のサイズは9.5kbであると概算され ている(14,26)。予想されるEDDタンパク質はHYDに対してアミノ酸残基の40%で 同一であり、アミノ酸残基の64%で類似している。一方、EDDのカルボキシル側3 分の1はラット100kDaタンパク質に対して96%の同一性および98.5%の類似性を示 す。HYDとEDDとの間で最も高度に保存された領域は図3Cに太字で表してある。こ れらの領域の2つには、HYDと、EDDと、2つのオーバーラップするコスミド(Gen bank受託番号G1729554およびG1729549)内に含まれるHYDの可能性のあるC.elega ns相同体と、の間で高度に保存されている40〜80アミノ酸の広がりが存在する。 EDDとHYDの間の最長の保存領域は、約400アミノ酸の中心ドメイン(58%の同一性 、72%の類似性)、およびHECTドメインと保存システイン残基を含むカルボキシル 側の300アミノ酸(64%の同一性、80%の類似性)である。この後の方の領域はまた 、酵母RSP5またはPUB-1およびRAD26(14,30,31)を含む他のHECTタンパク質、並 びに哺乳動物タンパク質UreB1(19)、Nedd-4(15,20,32,33)およびE6-AP(15,1 7,18)に対しても約30%の同一性および50%の類似性を示した。2つの推定上の核 局在化シグナル(34)を除いて、他のコンセンサス機能性ドメインはEDD配列内に 確認されなかった。 EDD遺伝子の染色体位置決定 EDD遺伝子の位置確認のためにHISHを採用した。正常な男性からの18の中期染 色体を蛍光シグナルについて調べた。これらの中期染色体のうち17が第8染色体 の一方または両方の染色分体(クロマチド)において領域q22にシグナルを示し た。8つの中期染色体の高分解能研究により、q22.3にシグナルが見られた(図4 )。これら18の中期染色体には合計4個の非特異的バックグラウンドドットが観 察された。同様の結果が第2組の正常男性由来の11の中期染色体に対するプロー ブのハイブリダイゼーションからも得られた(データは示してない)。この染色 体位置は、放射線ハイブリッドパネルGenebridge 4を用いた、EDDに対応するEST (EST116344)の独立した評価結果と一致した。 EDDタンパク質の特徴づけ EDDタンパク質のカルボキシ末端に向かう配列にマッチするEDD特異的ペプチド に対するウサギ抗血清(AbPEP1)は、ウェスタンブロットで、バキュロウイルス系 を用いてSf9細胞において発現された末端切断型(100kDa)組換えEDDタンパク 質と強く反応した(図5A)。2番目に強く反応する約200kDaのバンドも見られた が、これは抗体の結合がEDDペプチドによって競合しなかったので非特異的であ るように見えた。全長EDD cDNAをpBluescriptにクローン化し、ウサギ網状赤血 球溶解液系でin vitro翻訳させた。主要産物のサイズはアミノ酸配列から予測さ れた該タンパク質の分子量(約300kDa、図5B)と一致した。翻訳されたタンパク 質の正体は、翻訳反応物またはT-47D全細胞溶解物からAbPEP1で免疫沈降させて 確認した(図5B)。T-47D細胞からの全細胞溶解物のAbPEP1によるウェスタンブ ロッティングは2つの主要なバンドを検出し、両方(約230kDaのメジャー種とそ れより高分子量のマイナー種)とも競合性ペプチドの存在下で消失した(図5C) 。この後者のバンドはサイズがin vitro翻訳タンパク質と一致し、AbPEP1(図5C )および2つの他のEDD特異的ペプチド抗体(示してない)により免疫沈降する 。しかし、230kDaタンパク質は細胞溶解物からこれらの抗体によって免疫沈降し ない。ノーザンブロットでは単一のEDD mRNA転写産物が検出されたので、EDDタ ンパク質は230kDa形態にプロセシングされ、この230kDa形態は天然状態では免疫 沈降を受けにくいように折りたたまれていると仮定された。しかし、HEK-293細 胞における全長EDDの一過性発現と、その後の全細胞溶解物のウェスタンブロッ ティングからは、300kDa種のみの発現の増加が明らかになった(示してない)。 正常な乳房および乳癌のいくつかの上皮細胞系からの全細胞溶解物のウェスタン ブロッティングは、全ての不死化細胞系と癌細胞系においてEDDタンパク質が発 現されるが、正常な乳房細胞系184では発現されないことを示した(図6)。 ラット遺伝子産物の正体 EDD遺伝子に対して高度に相同である、以前に記載されたラットcDNAは、報告 によれば、cDNA配列データから推定された100kDaタンパク質をもたらす。このcD NA配列データはEDDのアミノ酸残基1910に対応する推定上の開始コドン(26)の上 流にいくつかのインフレーム(in-frame)停止コドンを示した。これらの停止コド ンはEDD cDNAには存在しなかった。さらに、我々は、抗HYD抗体がラット筋溶解 物中の約100kDaタンパク質を検出することを確認できたが、たとえヒトおよびラ ットタンパク質の推定配列がAbPEP1抗体の誘導に使用されたペプチドのあらゆる 残基レベルで同一であっても、この種はAbPEP1によって検出されなかった。こ れは、100kDaタンパク質が実際のラット遺伝子産物であるのか、という疑問を本 発明者らに投げかけた。 提案された開始コドンの上流の配列の広がりを含み、かつリーディングフレー ムを変えることによって上流の停止コドンを除く追加の塩基を含むラットcDNAの セグメントがクローン化された(図7)。この明らかな誤りを修正すると、ヒト cDNAによくマッチし、配列全体を通して一つの連続したオープンリーディングフ レームが存在するラットcDNA配列が得られる。EDDのアミノ末端側3分の2に対応 するラットcDNA配列はクローン化しなかったが、この領域の部分をカバーするマ ウス発現配列のいくつかがGenBankデータベース(受入れ番号AA183561、AA17726 0、AA183970、AA231351、AA087561)に記録されており、これらは発表されたラ ット配列の場合に見られるものと同様のレベルのEDD DNA配列類似性を示す。そ れゆえ、ラット遺伝子の真の産物は100kDaタンパク質ではなく、もっと大きな種 として存在しうるように思える。しかし、ラット溶解物において、AbPEP1はヒト (EDD)およびショウジョウバエ(HYD)遺伝子産物と一致する分子量のタンパク質を 検出しない。 EDDによるユビキチン結合 HECTファミリーのE3酵素の重要な特性は、HECTドメイン内に保存されたシステ イン残基においてユビキチンとチオエステルを可逆的に形成できる点である。こ の性質はHECTタンパク質であるヒトE6-AP、ラット100kDaタンパク質および酵母R SP5について実証されており、これらの場合にチオエステル結合は還元剤の非存 在下ではそのまま残存しているが、100mM DTTの存在下では分解される(14)。保 存されたシステイン残基を置換すると、ユビキチンとのチオエステル結合の形成 が妨げられる。しかし、この性質はHYDタンパク質の場合には見られない。E3と して機能するEDDの能力を評価するために、EDDが保存システインC2768を介して ユビキチンと可逆的な結合を形成できるか否かを試験した。35S-標識、in vitro 翻訳した末端切断型タンパク質(約100kDaのカルボキシ末端配列)を、DTTの存 在下または非存在下で精製GST-ユビキチン融合タンパク質とインキュベートし、 その後SDS-PAGEにかけた(図8A)。 DTTの非存在下では、より高分子量の追加のタンパク質バンドが観察されたが 、 これはEDD-GST-ユビキチン結合体(約130kDa、図8Aの上の矢印)の予測されたサ イズに一致する。この種は100mM DTTの存在下で消失した。このことはその種の 形成へのチオエステル結合の関与を示唆している。これはC2768A突然変異を含む in vitro翻訳タンパク質を用いた実験により確認された。すなわち、これらの条 件下ではGST-ユビキチンの結合が見られなかった(図8A)。EDDよりわずかに高 分子量の種も観察され(図8Aの下の矢印)、これはユビキチン-EDD結合体の形成 と一致する(ユビキチンはウサギ網状赤血球溶解液の一成分として存在する)。 再度、この種は突然変異型タンパク質を使用したり100mM DTTを存在させると観 察されなかった。in vitro翻訳により得られた全長EDDタンパク質に関しても同 様の結果が達成された(図8B)。考察 培養したヒト乳癌細胞モデル(プロゲスチンに対する明確に規定された増殖性 応答が観察される)にディファレンシャルディスプレーPCR法を適用することで 、キイロショウジョウバエの腫瘍抑制遺伝子hyperplastic discs(13)のおそらく ヒト相同体である新規遺伝子EDDが同定された。EDDはラット100kDaタンパク質(2 6)をコードするcDNAの発表された部分配列に対しても高度に相同性である。3つ の遺伝子はすべてが大きな(約9.5kb)mRNAを生成し、2799個のアミノ酸からな る推定全EDDオープンリーディングフレームは、ショウジョウバエhydのそれと40 %の同一性を共有し、他方、EDDのカルボキシル末端側の889アミノ酸はラットタ ンパク質と96%の同一性を共有する。ウェスタン分析から、EDD遺伝子産物は約30 0kDaのタンパク質であることが示された。このタンパク質はまた、3種の異なる ペプチド特異的EDD抗体により免疫沈降され、in vitro翻訳された主要な遺伝子 産物のサイズにも一致する。ヒトとラットのタンパク質の推定サイズの大きな相 違は、発表された翻訳開始部位に一つの誤りを開示したラットcDNA配列の再試験 により明白に解決され、より大きな遺伝子産物が存在する可能性を示した。 EDD、そのラット相同体およびHYDはすべて、カルボキシル末端に高度に相同性 のHECTドメインを含み、ユビキチン−タンパク質リガーゼ(E3)として機能する タンパク質のより大きなファミリーのメンバーであることを示す。標的タンパク 質のユビキチン化は複数の相互作用性タンパク質、すなわち、ユビキチン活性化 酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)およびユビキチン−タンパク質リガーゼ(E3) 、の働きで起こる。基質特異性は主としてE3により決定され、E3はユビキチンと 結合して、特異的E2との相互作用後の標的タンパク質にユビキチンを移す。HECT クラスのE3の重要な特性は、そのHECTドメインに位置する保存システイン残基を 介してユビキチンと共有結合するその能力である(14)。EDDのこの性質は、保存 システイン(C2768)が置換されると、そのユビキチン結合能を失うin vitro翻訳 タンパク質を用いて実証された。したがって、EDDはE3であると結論された。 E3遺伝子は少数(ヒト由来は2つのみ)しかクローン化されていないが、ユビ キチン依存性タンパク質分解は多くの細胞プロセスに関与しており、多くの既知 タンパク質を標的としているので、他にも存在しそうである。ユビキチンにより 媒介されるタンパク質分解は、細胞周期の進行を制御するうえで極めて重要であ り、サイクリン(35-37)やサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(38,39)を含む重要 な細胞周期調節物質の周期的分解に関与し、また、転写因子(40-43)、腫瘍抑制 タンパク質p53(18)および細胞−細胞シグナル伝達成分、例えばβカテニン(44) を標的としている。E3をコードするマウスItch遺伝子座の破壊はリンパ系と胃腸 上皮組織の過形成および異常な炎症反応(21)を引き起こし、一方、ヒトE6-APの 突然変異は神経系の異常をもたらす。これらは、E3タンパク質の非常に重要な、 おそらく組織特異的な、役割を示唆するものである(45)。 EDDとそのラットおよびショウジョウバエ相同体の基質は今後確定されねばな らないが、EDDとHYDの中心ドメイン間の保存は、この領域がおそらく基質認識の 点で重要な機能を担っていることを示唆する。酵母E3 Rsp5の場合は、基質特異 性がアミノ末端ドメインにより決定され、HECTドメインを必要としない(16)。あ るいはまた、この領域は、EDDと特異的に相互作用する、今のところはまだ知ら れていないE2タンパク質の結合に係わっている可能性がある。マウスE3 Nedd4は 少なくとも2つの明確に異なるE2結合ドメインをもっており、そのうちの1つだ けがHECTドメイン内にある(15)。他方、ヒトE6-APはE2認識のためにHECTドメイ ンのみを必要とする(46)。末端切断型EDDから生産されたタンパク質は依然と してユビキチンと可逆的に結合するので、少なくとも一部のE2認識機能がこのカ ルボキシル末端ドメインに存在している。保存された中心ドメインのその他の可 能な機能としては、細胞局在化または細胞質と核間の移行(トランスロケーショ ン)、補因子結合、リン酸化などが含まれる。 ユビキチン化は明らかに細胞周期の進行を調節するといったステロイド応答プ ロセスに関与しているが、ステロイドホルモンによるユビキチン経路の特異的調 節が以前に報告されたことはない。プロゲスチン作用におけるEDDの正確な役割 は不明であり、特にEDDが、このホルモンに応答して起こり、最終的に細胞の増 殖・分化へのその影響に関与している重要な初期事象に参加しているのかどうか 、はっきりしない。de novoタンパク質合成を必要とするEDD mRNAのプロゲスチ ン調節は一過性で、対照より3〜4倍多い最大レベルが6時間で観察された。した がって、このEDD発現レベルの増加は、同一条件下でORG 2058処理した後のT-47D 細胞のS期フラクションの増加(典型的には、12〜14時間で起こる(3))に先行し、 それゆえに、細胞周期の進行を制御するうえで考えられる役割と合致する。同様 のレベルのEDD誘導が17β-エストラジオールで処理した抗エストロゲン停止MCF- 7乳癌細胞において観察され(示してない)、これがマイトジェンに対する普遍 化応答でありうることを示唆する。 しかしながら、EDDが非プロゲスチン標的組織においても発現されることを考 えると、プロゲスチン作用を特異的に媒介することよりも広範囲に及ぶ役割が期 待される。ショウジョウバエでの突然変異誘発研究からもたらされるHYDの生物 学的役割に関する情報が、最終的にEDDの機能についての手がかりを与えるかも しれない。ヌルhyd表現型は致命的であり、踊または幼虫期における重大な突然 変異も同様である。それほど重大でない突然変異は、幼虫の成虫芽(羽、足、触 角などの成虫構造体を生じさせる細胞増殖の幼虫中心)の過増殖(過形成)をも たらす。こうした過増殖(過形成)は明らかに、成虫芽がその特徴的なサイズに 達したときに細胞増殖を停止させることに失敗した結果として起こり、そのため にhydは腫瘍抑制遺伝子であると規定された。生存している成虫は生殖細胞の欠 陥のため生殖不能であり、また、興味深いことに、ヒトおよびラットの精巣では EDDとラット100kDaタンパク質のmRNAの発現レベルが高いことが認められ、これ らはこの器官での重要な機能を示唆する。 ショウジョウバエの腫瘍抑制遺伝子のいくつかのヒト相同体の研究は、これら の遺伝子が細胞増殖を制御するうえで両生物種において類似した役割を担ってお り、このような遺伝子がヒト遺伝性および散発性癌において重要でありうること を強く示唆している。例えば、patched(47)は、その突然変異が基底細胞癌と関 連しており、discs large(45,48)は、散発性結腸直腸癌および家族性腺腫様結 腸ポリープ症において突然変異を起こしているAPC遺伝子の標的である。したが って、EDDがヒト腫瘍形成および腫瘍進行に関係しているらしいことには特に興 味がもてる。染色体8q22のEDD遺伝子座はしばしば種々の癌において破壊されて おり、卵巣および肺の腺癌(49,50)、肝細胞癌(51)および頭と首の偏平上皮細胞 癌(52)では欠失されており、胃腸癌および原発性乳癌(53,54)を含めた多くの腫 瘍型では増幅されており、そして急性骨髄性白血病(55)では転座に関係している 。また、染色体8q22はヒトの発達障害であるKlippel-Feil症候群で冒されている 領域でもある(56)。 本明細書中で用いた略号は次のとおりである。DD-PCR,ディファレンシャルデ ィスプレー・ポリメラーゼ連鎖反応;DTT,ジチオトレイトール;EDD,ディファレ ンシャルディスプレーにより単離されたE3;FISH,蛍光in situハイブリダイゼー ション;GST,グルタチオンS-トランスフェラーゼ;HECT,E6-APカルボキシル末端 に相同性の;PAGE,ポリアクリルアミドゲル電気泳動;PMSF,フッ化フェニルメチ ルスルホニル;PR,プロゲステロン受容体;RACE,cDNA末端の迅速増幅。 特定の実施形態として示した本発明に対して、広範囲に記載された本発明の精 神もしくは範囲から逸脱することなく、多くの変更および/または修飾をなし得 ることが、当業者であれば理解されよう。したがって、ここに記載した実施形態 は、すべての点に関して、例示するもので制限するものではないと見なされるべ きである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/02 C12Q 1/68 A 1/68 G01N 33/68 G01N 33/68 C12N 15/00 ZNAA (72)発明者 サザランド,ロバート,エル. オーストラリア国 2070 ニューサウスウ ェールズ州,リンドフィールド,ノースコ ート ロード 20 (72)発明者 ワッツ,コリン,ケイ.,ダブリュ. オーストラリア国 2107 ニューサウスウ ェールズ州,アヴァロン,アヴァロン パ レード 167

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.次のN-末端アミノ酸配列: を含むタンパク質または該タンパク質の生物学的に活性な部分をコードするヌ クレオチド配列を含んでなる、単離されたポリヌクレオチド分子。 2.コードされたタンパク質が次のN-末端アミノ酸配列: を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド分子。 3.コードされたタンパク質がユビキチン−タンパク質リガーゼであり、約300k Daの分子量を有する、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド分子。 4.図3Bに示したヌクレオチド34からヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列 またはその部分に対して90%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含む、請 求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子。 5.図3Bに示したヌクレオチド34からヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列 またはその部分に対して95%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含む、請 求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子。 6.図3Bに示したヌクレオチド34からヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列 またはその部分に実質的に一致するヌクレオチド配列を含む、請求項1〜3の いずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子。 7.図3Bに示したヌクレオチド34からヌクレオチド8424までのヌクレオチド配列 の8ヌクレオチド以上の部分に実質的に一致するかまたは相補的であるヌクレ オチド配列を含んでなる、適切に検出可能な標識で標識されたオリゴヌクレオ チドまたはポリヌクレオチドプローブ。 8.プロモーター配列に機能しうる形で連結された請求項1〜6のいずれか1項 に記載のポリヌクレオチド分子を含有する発現ベクターまたはカセット。 9.請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子で安定に形質転 換された非ヒト生物。 10.請求項8に記載の発現ベクターまたはカセットで安定に形質転換された非ヒ ト生物。 11.実質的に純粋な形の、次のN-末端アミノ酸配列: を含むタンパク質または該タンパク質の生物学的に活性な部分。 12.前記タンパク質が次のN-末端アミノ酸配列: を含む、請求項11に記載のタンパク質。 13.前記タンパク質がユビキチンータンパク質リガーゼであり、約300kDaの分子 量を有する、請求項11または12に記載のタンパク質。 14.前記タンパク質が図3Cに示したアミノ酸配列に実質的に一致するアミノ酸配 列を含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタンパク質。 15.請求項11〜14のいずれか1項に記載のタンパク質またはその抗原性部分と特 異的に結合する抗体またはそのフラグメント。 16.抗pEDD抗体と結合することができるタンパク質またはその抗原性部分。 17.被験者におけるプロゲスチン応答性を評価するためのアッセイ法であって、 (i)被験者から細胞または組織を分離し、そして (ii)図3Cに示したアミノ酸配列に実質的に一致するアミノ酸配列を含むタン パク質の存在を検出する、 ことを含んでなるアッセイ法。 18.ステップ(ii)の前に、分離した細胞または組織をプロゲスチンまたはプロゲ スチンのアゴニストもしくはアンタゴニストにさらす、請求項17に記載のアッ セイ法。 19.請求項15に記載の抗体またはそのフラグメントを用いてステップ(ii)をおこ なう、請求項16または17に記載のアッセイ法。 20.過増殖性疾患を診断する、または過増殖性疾患に罹りやすい素質を判定する 方法であって、被験者において、図3Bに示したヌクレオチド34からヌクレオチ ド8424までのヌクレオチド配列に実質的に一致するヌクレオチド配列を含む遺 伝子の多型または変異を検出することを含んでなり、前記多型または変異が過 増殖性疾患もしくは過増殖性疾患に罹りやすい素質を示すものである、上記方 法。 21.過増殖性疾患が癌である、請求項20に記載の方法。 22.前記癌が乳癌である、請求項21に記載の方法。
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