JP2001508430A - 免疫抑制因子のエンドサイトーシスによる提示のための化合物、組成物及び方法 - Google Patents

免疫抑制因子のエンドサイトーシスによる提示のための化合物、組成物及び方法

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Abstract

(57)【要約】 少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子とを含む免疫調節剤並びに該免疫調節剤の製造方法及び使用が提供される。上記免疫調節剤はポリペプチド又はキメラ抗体の形態であることができ、そして好ましくは、T細胞レセプターアンタゴニストを含む免疫抑制因子を含む。本発明の化合物及び組成物を使用して免疫系を選択的に抑制して、アレルギーのような免疫疾患、移植組織拒絶、並びに、狼瘡、リウマチ様関節炎及び多発性硬化症などの自己免疫疾患に関連した症状を治療することができる。

Description

【発明の詳細な説明】 免疫抑制因子のエンドサイトーシスによる提示のための化合物、組成物及び方法 発明の分野 本発明は、概して、免疫抑制因子をエンドサイトーシスによって効果的に提示 するための化合物、組成物及び方法に関する。更に詳細には、本発明は、自己免 疫疾患を含むが、これに限定されない種々の疾患の治療に有用な免疫抑制因子を を包含する化合物、方法及び組成物に関する。好ましい実施態様では、上記免疫 抑制因子はT細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストであり得る。本発明 の他の実施態様によって新生児又は乳児における寛容の誘導がもたらされる。 発明の背景 脊椎動物は、環境由来の病原体、及び、異常細胞、例えば内部的に発生する腫 瘍細胞に対する防御として免疫応答を生じさせる能力を有している。免疫応答は 多様な細胞と因子との間の複雑な相互作用の結果であるが、一般的には2つの主 要な面を含んでいる。1つは細胞性成分であって、この場合には特別の細胞が有 害作用物質(抗原を有する)を直接攻撃し、一方もう1つは体液性成分であって 、この場合には抗体分子が抗原に特異的に結合しそしてその排除を助長する。個 々の要素が協同して働くと、侵入病原体の初期攻撃を制限しそしてこれら病原体 を宿主から排除するのに非常に有効である。 免疫応答の提供に関与する主要な細胞はリンパ球であり、そしてこれらには一 般的に2つの主要なクラスが含まれる。B細胞又はBリンパ球と呼ばれるこれら クラスの第一のものは、典型的には骨髄で産生され、そしてなかんずく、抗体の 産生及び分泌に関与している。B細胞抗体産生物は外来抗原と直接反応して、こ れら抗原を中和するか又はこれら抗原を排除する免疫系の他の成分を活性化する 傾向がある。特に、オプソニン化抗体は細胞外の外来作用物質と結合し、そして それによってこれら外来作用物質をファゴサイトーシス及びそれに続く細胞内殺 傷に対して感受性にする。他方、T細胞又はTリンパ球は一般的には胸腺で発達 するか又は成熟し、細胞性免疫応答の媒介に関与している。これらの細胞は抗原 全体を認識するのではなくて、その代わりに、標的細胞の表面に見られる特定の タンパク質と結合した抗原の短いペプチドフラグメントに応答する。更に詳細に は、細胞内で産生されるか又は細胞によって細胞外環境から取り込まれたタンパ ク質は正常な代謝経路によってペプチドまで連続的に分解されると思われる。得 られた短いフラグメントは細胞内の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と 会合し、そしてこれらMHC-ペプチド複合体は細胞表面に輸送されてT細胞に よって認識される。かくして、細胞免疫系は細胞が産生するか又は摂取した全範 囲のタンパク質を常に監視しており、そして外来抗原又は腫瘍抗原を提示してい る全ての細胞、即ち、ウイルス感染細胞又は癌細胞を排除するために構えている 。 哺乳類抗体のうちで最も一般的な免疫グロブリンG(IgG)の全体構造は図1 に概略的に示される。図示されているように、IgGは2本の同一の重(H)鎖と 2本の同一の免疫グロブリン軽(L)鎖を含む四量体タンパク質複合体である。 これらの鎖はジスルフィド結合で一緒に結合されてY字状抗体複合体を形成する 。しかしながら、溶液中ではこの分子はより球状の形態をとりそして生物学的流 体中に存在する外来抗原と容易に結合する。 免疫グロブリンのアミノ酸配列分析によって、鎖内の種々の機能的活性を有す る特異的な領域が特定されている。各L鎖及び各H鎖は、最初の110個のアミノ 末端残基内に特定された可変領域(それぞれ、VL及びVH)を有している。VL 及びVH領域の三次元的対合は免疫グロブリン分子の抗原認識部分又は「抗原結 合部位」(「ACS」)を構成する。免疫グロブリンは四量体であるため、1分 子当たり2個の同一の抗原結合部位が存在している。これらの鎖の可変ドメイン は配列が高度に異種性であるので、極めて多様な抗原構造に対して高度に特異的 な抗原決定部位の多様性を提供する。可変ドメインの異種性は可変領域全体に均 等に分布しているのではなくて、3つの断片に配置されており、相補性決定領域 (「CDR」)と呼ばれ、CDR1、CDR2及びCDR3と称されている。こ れらの構造に関する更なる情報についてはワトソン(Watson)等、1987年、モレ キュラー バイオロジー オブ ザ ジーン(Molecular Biology of the Gene)、第 4版、ベンジャミン/カミングス パブリッシング コ.インク.(Benjamin/Cumm ings Publishing Co.,Inc.)、カリフォルニア州メンロパーク(これは本明細書 に参照により含める)参照。 各H鎖はまた、特別のイソタイプを特定する定常領域も有しているので、これ により免疫グロブリンは免疫グロブリンクラス及びサブクラスの1つに割り当て られる。定常領域は、単一クラスの抗体間で顕著には変動しないドメインと呼ば れる単位(即ち、CH1、CH2等)を含有している。定常領域は抗原結合に関与し ているのではなくて、「エフェクター機能」として知られる多数の生物学的活性 、例えば抗原提示細胞(APC)の細胞表面のFcレセプターとの結合並びに補体 タンパク質との結合に関係している可能性がある。樹状細胞やマクロファージの ような抗原提示細胞は、なかんずく、Fcレセプターの存在という特徴によって一 般に識別される。従って、抗体が病原体と結合する場合には、抗体は食細胞とFc 部分を介して結合することができる。これによって、食細胞は病原体を摂取しそ して破壊することかでき、この過程はオプソニン化として知られている。更に、 以下で詳細に考察するように、種々の病原性抗原はAPCによってプロセシング されそしてディスプレイされて免疫応答を更に刺激すると思われる。 H鎖とは異なって、L鎖は単一の定常ドメイン(C1)を有している。L鎖は 、H定常領域CH1をCLと結合するジスルフィド結合によってH鎖と対合する。 加えて、H鎖は定常領域CH1及びCH2を分子残部から分離するヒンジ領域を有し ている。四量体の柔軟性に大いに寄与しているのはこのヒンジ領域である。分子 の2本のH鎖はヒンジ領域とCH2間の結合部でジスルフィド結合によって対合す る。 このような広範なレパートリーを提供するために、免疫グロブリン遺伝子は有 限数の遺伝子から多数の異なる免疫グロブリンタンパク質の産生が可能になるよ うに進化している。即ち潜在的多型である。潜在的多型の故に、哺乳動物は一見 したところ無限数の多様な抗原に対して抗体を産生することができる。免疫グロ ブリン遺伝学及びタンパク質構造の総説については、レビン(Lewin)、「遺伝 子III(Genes III)」、ジョーン ウイリィ アンド サンズ(John Wiley and So ns)、ニューヨーク州(1987年)並びにベンジャミニ(Benjamini)及びレスコ ビッツ(Leskowitz)、1988年、イムノロジー(Immunology)、アラン アール. リス インク.(Alan R.Liss,Inc.)、ニューヨーク州(これは本明細書に参 照より含める)参照。 最近2、3年の間に、抗体は多様性で且つ特異的であるため、診断や治療の用 途において非常に重用になってきている。科学的用途における抗体の多様性や利 用可能性を拡張するために、分子生物学技術がますます使用されてきている。例 えば、単一の抗体産生B細胞を腫瘍細胞との融合によって不死化させて、「モノ クローナル抗体」(mAb)として知られる単一特異性のインビトロ抗体供給源 を提供するように拡張することができる。このような不死化B細胞系は「ハイブ リドーマ」と称される。 最近まで、大部分のmAbの供給源はインビトロで培養されたネズミ(マウス )ハイブリドーマであった。即ち、マウスには典型的には、選択された抗原又は 免疫原が注射された。その後、動物を屠殺しそして脾臓から取り出した細胞を不 死化ミエローマ細胞と融合させた。これらは診断方法で広範に使用されているが 、マウスmAbがヒトを含む大部分の哺乳動物での治療適用に良好に適合してい ることは証明されていない。これは、一部には、マウス抗体が他の哺乳類種によ って外来と認識され、そして疾病又は望ましくない副作用を生じさせる可能性の ある免疫応答を誘発するという事実によるものである。 外来mAbが生じさせる免疫応答や適当なヒトmAbが無いという問題のうち の少なくとも幾つかを克服するために、遺伝子工学を使用して、マウス抗体の抗 原結合相補性決定領域は含有しているが分子の残部は外来と認識されないヒト抗 体配列でできているヒト化キメラ免疫グロブリン分子が構築されてきた。このよ うな抗体は、マウス可変領域が腫瘍抗原を認識しそして分子のヒト化部分が身体 によって急速に排除されることなく免疫応答に介在できるので、腫瘍を治療する ために使用されている。例えば、ジョーンズ(Jones)等、Nature、321:522〜52 5(1986年)(これは本明細書に参照により含める)参照。 このような抗体の他の用途は同時係属中の米国特許出願第08/363,276号及びP CT公開第WO 94/14847号(これらも本明細書に参照より含める)に詳記されて いる。これらの場合には、ウイルス又は細菌エピトープのような外来抗原のエピ トープが免疫グロブリンの超可変領域に移植されて応答を誘導する。即ち、操作 された抗体はワクチンとして使用されて免疫応答を誘発し、そして免疫原記憶を 長期間与え、そしてそれによって対象はその後の感染を退けることができる。 これらのワクチンや一層伝統的なワクチンは、免疫系の両枝部分を刺激する点 で効果的である。免疫応答の体液性成分に関連した複雑さにも拘わらず、免疫応 答自体では、動物が毎日曝されている無数の病原体攻撃から動物を効果的に保護 することはできないであろう。むしろ、高等生物の生存及び増殖を可能にするの は高度に進展した細胞応答の存在だけである。 上記で示したように、骨髄内の前駆体から生じるTリンパ球又はT細胞は侵入 ウイルスや他の微生物に対する免疫応答における中心的な立役者である。前駆幹 細胞は胸腺に移動し、そしてそこで、所謂胸腺細胞として特異化される。特に、 これらはレセプター分子をディスプレイし始め、そしてこれら分子はその後成熟 T細胞による感染の検出を可能にする。有益であるためには、T細胞はそのレセ プターを介して微生物抗原(侵入物の存在をシグナル化しているタンパク質マー カー)に結合できなくてはならない。同時に、自己反応性T細胞は正常組織を破 壊する可能性があるので、身体が作る物質に盲目でなければならない。典型的に は、有用なレセプターを作る胸腺細胞だけが十分に成熟しそして血流に入って、 身体をパトロールする。効果的でないか又は身体自体の組織を攻撃する他の細胞 は、健常人では、胸腺を離れる前にアポトーシスによって排除される。 細胞溶解性Tリンパ球か又はTヘルパー細胞のどちらかとして最終的に循環に 入る成熟T細胞は、これら細胞のレセプターが認識し得る抗原に遭遇しない限り 、非活性のままである。上記リンパ球が親和性を有する特定の抗原に遭遇すると 、リンパ球は増殖しそしてエフェクター機能を果たし、そしてその結果外来抗原 は排除される。 T細胞は、これらが果たす種々の任務に基づいて幾つかのサブ集団に分類され ている。これらのサブ集団には、T及びB細胞応答の促進又は上昇に必要なヘル パーT細胞(Th)、細胞溶解によって標的細胞を直接殺傷する細胞毒性(又は細 胞溶解性)Tリンパ球(CTL)、及び免疫応答をダウンレギュレーションするサ プレッサーT細胞(Ts)が含まれる。各々の場合に、T細胞は、抗原提示細胞 表面に結合し特異化されたタンパク質複合体によって細胞表面に提示されたとき にだけ抗原を認識する。更に詳細には、T細胞はT細胞抗原レセプター(TCR )と称される特異的なレセプターを使用し、そしてこのレセプターは主要組織適 合遺伝子複合体(MHC)と集合的に称されるタンパク質群と会合した抗原を認 識し得る膜貫通タンパク質複合体である。各細胞上に数千もの同一のTCRが発 現される。TCRは、機能と構造の両方において、B細胞が抗原レセプターとし て使用する表面抗体(非分泌性)と関係がある。更に、T細胞の種々のサブ集 団も多様な細胞表面タンパク質を発現し、そしてこれらのうちの幾つかは特定の サブ集団に特徴的であるため、「マーカータンパク質」と称される。例えば、大 部分のTh細胞は細胞表面CD4タンパク質を発現し、一方大部分のCTL及び Ts細胞は細胞表面CD8タンパク質を発現する。これらの表面タンパク質は、 APC表面の特定のタンパク質又はタンパク質複合体の認識及びこれらタンパク 質間の相互作用に依存する免疫応答の開始及び維持において重要である。 かなり長い間、主要組織適合遺伝子複合体即ちMHCは実際に、明白な四次構 造からなる一連のグリコシル化タンパク質を含むことが知られている。一般的に 、これらの構造は2つのタイプのもの、細胞内部で作られるタンパク質(例えば ウイルス複製後に産生されるタンパク質)由来のペプチドをディスプレイしてい るクラスI MHC及び一般的に外部から細胞に入ったタンパク質(細菌トキシ ンのような可溶性抗原)由来のペプチドをディスプレイしているクラスII MH Cである。種々の抗原の認識は、生じると思われる任意の微生物ペプチドと結合 し得る多様なMHC分子プールを連続的に提供する潜在的多型によって保証され る。本質的に、有核細胞は全て、天然存在ペプチド、腫瘍関連ペプチド又はウイ ルス侵入物によって産生されたペプチドを提示することができるクラスI MH Cを産生しそして発現する。逆に、一般的に抗原提示細胞として知られている2 、3の特異化リンパ球しかクラスII MHCタンパク質を産生しそして発現しな い。細胞型に関係なく、MHCの両クラスはペプチドを細胞表面に運びそしてこ れらを非活性Tリンパ球に提示する。通常、Th細胞はクラスII MHC-抗原複 合体を認識し、一方CTLはクラスI MHC-抗原複合体を認識する傾向がある 。 適当なTCRを有する非活性T細胞が表面にペプチドをディスプレイしている APCに遭遇すると、TCRはペプチド-MHC複合体と結合する。更に詳細に は、数百ものTCRが多数のペプチド-MHC複合体と結合する。十分なTCR が接触すると、累積効果によってT細胞は活性化される。MHC-抗原複合体の 特異的認識及びこのような複合体に対する応答の原因となるT細胞上のレセプタ ーは幾つかの内在性血漿膜タンパク質の複合体で構成されている。先に考察した MHC複合体と同様に、多様なTCRプールは、体細胞改変に導く潜在的多型に よって保証される。TCRのプールは多様であるが、個々の各T細胞だけが単一 の特異的TCRを発現するということを強調すべきである。しかしながら、各T 細胞は典型的には、各細胞表面に僅か1個のペプチドだけに特異的な上記レセプ ターの数千ものコピーを提示する。加えて、他の幾つかのタイプの膜関連タンパ ク質がT細胞結合及び活性化に関与している。 T細胞の活性化は一連の化学的シグナル(主として、サイトカイン)の産生を 伴い、そしてその結果細胞は直接作用するか又は免疫系の他の細胞を刺激して作 用させる。クラスI MHC-抗原活性化の場合には、CTLは増殖しそして同一 の抗原を提示している感染細胞を破壊するように作用する。感染細胞の殺傷はウ イルスから生命維持を奪い、そしてウイルスが抗体に接近できるようにし、そし て抗体は最終的にウイルスを排除する。対照的に、クラスII MHC-抗原複合体 によるTh細胞の活性化は抗原提示細胞(これは宿主の防御系の一部である)を 破壊するのではなくて、むしろTh細胞を刺激して増殖させ、そして種々の細胞 に影響を与えるシグナル(これも、主としてサイトカイン)を産生させる。なか んずく、シグナル形成によってB細胞が刺激され、マクロファージが活性化され 、CTLが分化されそして炎症が促進される。この協同した応答は比較的特異的 であり、そしてクラスII MHC系によって提示されるペプチドを有する外来要 素に向けられる。 適切に機能するとき、免疫応答は、微細病原体、そして程度はより低いが新生 細胞の排除に驚くほど効果的である。一般的に、自己認識の複雑なメカニズムは 非常に効率的であり、そして強い応答を専ら外来抗原に向けることができる。残 念なことに、免疫系はときおり正しく働かずそして宿主の細胞に向かい、そして それによって自己免疫応答を誘発する。典型的には、自己免疫は、免疫細胞上の 抗原レセプターが健常細胞上の特定の抗原を認識すると自己免疫が生じ、そして このような特定の物質を有する細胞を死亡させると考えられる。多くの場合に、 自己免疫反応はこの反応を促す抗原がなくなると消失する点で、自己限定的であ る。しかしながら、場合によっては、自己反応性リンパ球は本来そうあるより長 く生存しそしてアポトーシスを誘導するか、又はそうでない場合正常細胞を排除 し続ける。動物やヒトでの証拠の中には、自己反応性細胞の生存延長が少なくと も2つの慢性自己免疫疾患、即ち、全身性エリテマトーデス及びリウマチ様関節 炎に関与していることを示しているものがある。 他の作用メカニズムも種々の自己免疫疾患発症の原因であると考えられる。例 えば、最近の2、3年の間に、T細胞-APC相互作用のアビディティーによっ て自己抗原に対する胸腺の学習や寛容が指令されることが明らかになってきた。 従って、アビディティー相互作用が高いとT細胞が排除され、一方アビディティ ー相互作用が低いと成熟及び胸腺からの退出が可能になる。このメカニズムは自 己反応性の免疫系を除去するのに有効であるが、自己抗原が孤立しそして有効な 胸腺提示値を達成しないか、胸腺のあいまい性の影響を受けるか、又は殆ど提示 されない場合、自己反応性を有するT細胞前駆体は依然として産生可能であって 末梢に移動するであろう。更に、特定のT細胞レセプターと反応し得る超抗原、 並びにペプチドのあいまい性で抗原模擬物、エピトープの拡張又は末梢解放を刺 激し得る事象は上記自己反応性T細胞の活性化を誘発しそして抗原暴露を生じさ せる可能性がある。いずれの場合にも、自己抗原の連続的供給及びT細胞レセプ ターリガンド(ペプチド-MHC複合体)の豊富な産生がT細胞攻撃性のありそ うなメカニズムである。自己寛容のこのような自然発生的崩壊の例には多発性硬 化症(MS)、リウマチ様関節炎(多分、1つより多くのメカニズム)及びI型 糖尿病が含まれ、そしてこれらは全てT細胞介在性自己免疫疾患であると考えら れる。 どのメカニズムが免疫系を駄目にする原因であるのかに関係なく、結果は個々 人にとって破滅的である可能性がある。例えば、多発性硬化症は米国で約250,00 0人に影響を与えている慢性の炎症性疾患である。この炎症過程は最初中枢神経 系の白質内で生じ、そして軸索の脱髄の原因となっているT細胞、B細胞及びマ クロファージによって媒介される。臨床的な進行は正に多様であるが、最も一般 的な形態は麻痺、感覚欠損及び視覚問題を含む神経欠損の再発で示される。 免疫細胞が中枢神経系の白質に広がると、免疫応答はミエリン上の幾つかの異 なる抗原に対して標的化される。例えば、骨髄液中に現れる膜攻撃複合体によっ て補体カスケードを活性化するミエリンに向けられる重大な抗体応答が存在する 。更に、T細胞は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)及びプロテオリピドタ ンパク質(PLP)上に提示されているような種々のミエリン抗原の或る重要部分 に対して標的化される。順次、T細胞はサイトカインを産生し、次いでこのサイ トカインがマクロファージに作用してミエリンを攻撃しそしてミエリン鞘の大き な チャンクを食する。協同的な攻撃によって脱髄部分が生じ、これによって軸索に 沿った跳躍伝導が損傷されそして病態生理学的欠陥がもたらされる。多発性硬化 症におけるミエリン鞘又は原発性胆汁性肝硬変におけるピルビン酸デヒドロゲナ ーゼ複合体のような超分子構造の幾つかの成分に対する多数の免疫応答は別個の 器官に係わる自己免疫疾患患者に共通している。 自己免疫疾患の治療法は種々のレベルで成功している。例えば、代謝制御によ って器官特異的自己免疫疾患を治すことがしばしば可能である。機能が喪失しそ して回復し得ない場合、機械的代替物又は組織移植片が適当であると思われる。 しかしながら、MSを含む大部分の能力欠損障害の幾つかには有効な治療法が存 在していない。コルチコステロイドや修飾β-インターフェロンを含む多数の化 合物はMSの幾つかの症状を軽減させることができるが、これらは重篤な副作用 を有することが証明されているか、或いは、長期間の使用に決して望ましくない ことが示されている。他の治療法は有望であることが示されているが、今後有効 性を証明しなければならない。 この点に関して、MSに対する1つの有望な治療法はWO 96/16086(これは本 明細書に参照により含める)に記載されており、そしてこれはミエリン塩基性タ ンパク質(MBP)のペプチド類似体(analog)の使用を開示している。これらの 類似体を含む組成物は、報告によれば、過大な副作用なしにMSの症状を改善す ることができる。その上、ミエリン構築タンパク質のペプチド類似体を使用して も実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、即ちMSモデルとしてのマウスでし ばしば使用される器官特異的免疫疾患の症状の治療に有効であることが示されて いる。詳細には、EAEの逆転はプロテオリピド(PLP)ペプチド由来のペプチ ド類似体で達成された(Kuchroo等、J.Immunol.153:3326〜3336、1994年、こ れは本明細書に参照より含める)。天然存在PLPペプチド内の主要TCR接触残 基を変異させたとき、得られたペプチド類似体結合MHC並びに天然ペプチドは やはりPLP特異的T細胞を活性化しないことが示された。その代わり、PLP類似体 はT細胞のインビトロ活性化を阻害する。 ペプチド類似体は攻撃的なT細胞のエフェクター機能を調節しそして自己免疫 疾患を改善する魅力的な方法を代表するが、幾つかの問題によってこれらペプチ ド類似体の有効性は限定される。例えば、典型的なAPCの表面では2、3のM HC-ペプチド複合体しか利用可能でなく、これはT細胞を活性化するために単 一の複合体が約200個のTCRを連続的に誘発しなければならないことを意味し ている。自己抗原がMHC系による正常なプロセシング及び提示用に連続的に利 用できる場合、上記ペプチド類似体との結合には極く少数の表面MHC複合体し か利用できないように思われる。更に、遊離ペプチドは典型的に半減期が非常に 短く、これはMHC-抗原提示系によって容易に取り込まれたりプロセシングさ れたりしないので、天然ではAPC上に殆ど発現されない。提示が非効率的であ るため、各T細胞上の数千ものTCRの直接阻害には高い細胞内遊離ペプチド値 を法外に必要とするように思われる。細胞表面MHC分子の代謝回転も細胞外環 境で形成された複合体の短期滞在の一因である(即ち、MHCクラスII分子は細 胞外ペプチドと結合する前にかなり長い間細胞表面に存在している)が、一方エ ンドサイトーシス用コンパートメントで形成された複合体は細胞表面に場所を移 されたばかりなので、通常の期間残留する。そして、先に言及したように、上記 の合成エピトープ又は類似体の投与は哺乳類体内におけるペプチドの短い半減期 からみて、非常に問題が多い。MHC複合体と投与されたペプチドの短い半減期 の間では、有効な暴露が短かすぎて十分な免疫応答の誘導ができず、より高い投 与量が更に必要である。 従って、本発明の一般的な目的は、免疫疾患を治療するために脊椎動物の免疫 系を効果的に改変するための方法と関連組成物を提供することである。 本発明の別の目的は、細胞免疫応答の調節を必要としている対象の細胞免疫応 答を調節するために、T細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストを効果的 に提示するための方法と組成物を提供することである。 本発明の尚更なる目的は、種々の免疫疾患を治療しそして改善するための方法 と組成物を提供することである。 本発明のなお別の目的は、新生児又は乳児においてT細胞寛容を誘導するため の方法と組成物を提供することである。 本発明の更に別の目的は、多発性硬化症を含む自己免疫疾患に関連した病理学 的症状の軽減を提供することである。発明の概要 これらの目的や他の目的は、概してFcレセプター介在性エンドサイトーシス送 達系を提供している本発明の方法並びに関連化合物及び組成物によって達成され る。選択された実施態様では、本発明は免疫抑制因子の効果的な提示を提供し、 そして該因子は、好ましい実施態様では、T細胞レセプターアンタゴニスト又は アゴニストを含み得る。更に詳細には、本発明は、脊椎動物の免疫応答を選択的 に改変するために免疫抑制因子を提示する方法、化合物及び組成物を提供する。 特に好ましい実施態様では、本発明は、特異的抗原に対して生じる免疫応答を調 節するために、選択されたT細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストのFc レセプター介在性のエンドサイトーシスによる提示(endocytic presentation)を 提供する。本技術分野の熟練者によって認められるように、開示された方法や組 成物を使用して、脊椎動物の免疫応答に関連した任意の生理学的異常を治療する ことができる。例えは、免疫系の選択された成分を抑制するこの能力は、なかん ずく、自己免疫疾患の治療、組織又は器官移植片の助長及びアレルゲンによって 生じた症状の軽減を可能にすると思われる。また、本発明は更に、自己抗原に関 して新生児及び乳児での寛容の誘導を提供する。 本発明の好ましい面では、選択された免疫抑制因子のエンドサイトーシスによ る提示は、抗原提示細胞のFcレセプター(FcR)と結合し得る免疫調節剤の使用 によって促進される。典型的には、上記免疫調節剤はFcレセプターと結合し得る 少なくとも1つのリガンドと会合した少なくとも1つの免疫抑制因子を含んでい よう。免疫調節剤は抗原提示細胞(APC)と結合すると、APCの天然エンド サイトーシス経路によって細胞内に取り込まれそしてプロセシングされよう。好 ましくは、T細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストであることができ、 細胞内に取り込まれた免疫抑制因子はその後、新たに合成された内因性MHCク ラスII構造体と会合しそしてAPC表面に提示されよう。本技術分野の熟練者は 、免疫抑制因子は、MHCクラスII構造体と結合したときT細胞レセプターと複 合体を形成するが、T細胞の活性化は促進しないことを認めるであろう。更に、 細胞を活性化するためには各T細胞上の数百ものTCRが誘発されなければなら ないことが認められよう。従って、適当なTCRアンタゴニスト又はアゴニスト の効率的な提示は、天然存在自己抗原の競合的提示にも拘わらず、前以て感作さ れ たT細胞(即ち、特定の自己抗原に感受性にされた細胞)が活性化されそして免 疫応答を誘発するのを妨げることができる。 広義には、本発明の免疫調節剤は抗原提示細胞のFcレセプターと結合しそして 細胞内に取り込まれ得る任意のリガンド(FcRリガンド)を含むことができる。 即ち、FcRリガンドは、任意の抗原提示細胞の表面のFcレセプターと効果的に結 合する任意のタンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド又は分子であるこ とかできる。好ましくは、FcRリガンドは、免疫グロブリン分子の定常領域の少 なくとも或る部分を含むか又は模擬しており、そして対象内で抗原応答を誘発し ないであろう。本発明の選択された面では、FcRリガンドはIgG分子由来の定常領 域の一部又は全部を含んでいよう。特に好ましい実施態様では、治療すべき種由 来の選択された免疫グロブリン分子の全定常領域を含むFcRリガンドが使用され よう。勿論、Fcレセプターとの結合はまた、単一の定常領域ドメインの小フラグ メント又は非アミノ酸に基づく分子を含むリガンドによって行われ得ることも認 められよう。いずれにしても、FcRリガンドはディレクテドエボリューション、 コンビナトリアルケミストリー又はレイショナルドラッグデザインのような最新 の製薬技術を使用して誘導することができる。 先に言及したように、本発明の化合物は、FcRリガンドと会合した免疫抑制因 子を更に含み、免疫調節剤を提供する。本発明の目的では、免疫抑制因子はAP Cでプロセシングされそして細胞表面のクラスII MHC分子と会合して提示さ れ得る任意の分子であることができる。特に好ましい実施態様では、免疫抑制因 子はT細胞アンタゴニストの全部又は部分を含む。本発明の開示の目的では、「 アンタゴニスト」の用語は、その通常の意味に従って、別の物質のレセプターと 結合しそしてこれをブロックすることによって別の物質の生理学的作用に干渉す る任意の物質を含む。更に詳細には、TCRアンタゴニストは、クラスII MH C分子と一緒になって、T細胞レセプターと非反応的に会合し、そして該レセプ ターがその正常な活性化抗原リガンド(即ち、MHC-ペプチドアゴニスト)と 結合するのを妨げることができる分子である。好ましくはTCRアンタゴニスト は、正常な活性化抗原アゴニストの類似体であるペプチド又はタンパク質フラグ メントを含む。特に好ましい実施態様では、TCRアンタゴニストはT細胞エピ トープの類似体である。 他の好ましい実施態様では、上記免疫抑制因子は、結合しても感作TCRを活 性化しないMHC複合体を形成するT細胞アゴニストを含むことかできる。本発 明の開示の目的では、「アゴニスト」の用語は通常容認される生化学的意味に従 って使用される。この点に関して、T細胞アゴニストは所望の免疫原性結果を提 供する任意の分子であることができるが、選択されるアゴニストは好ましくはペ プチド又はタンパク質フラグメントを含むことが認められよう。更に、本技術分 野の熱練者は、1つ以上のT細胞レセプターアゴニストを含む免疫調節剤は、1 つ以上のT細胞レセプターアンタゴニストを含む免疫調節剤と組み合わされて、 患者の免疫応答を選択的に軽減するために使用できる医薬製剤を提供することが できることを認めるであろう。 開示された化合物及び関連方法では、FcRリガンドは免疫抑制因子と会合して 免疫調節剤を形成し、その結果これらは共に実質的に同時にAPCによって細胞 内に取り込まれる。この会合は、抗体−抗原複合体と同様に、互いに結合した2 つ又はそれより多くの分子の形態であることができるか、又は好ましい実施態様 では、免疫抑制因子(即ち、TCRアンタゴニスト又はアゴニスト)及びFcRリ ガンドの両方が組み入れられている単一のキメラ分子の形成を含むことができる 。例えば、選択されたTCRアンタゴニストはタンパク質分解技術によって産生 されるFcRリガンド領域(即ち、Fcフラグメント)と化学的に結合することがで きよう。他の実施態様は、アンタゴニスト又はアゴニストのペプチドと立体的に 結合したFcRリガンドを含む正常な免疫グロブリンを含むことができる。本発明 の特に好ましい実施態様は遺伝子工学技術で産生されるキメラ免疫グロブリンを 含む。これらの化合物においては、FcRリガンド(そして通常は該分子の大部分 )は1つ以上の免疫グロブリン定常領域を含んでおり、一方可変領域の1つ以上 は操作されて所望のペプチドTCRアンタゴニスト又はTCRアゴニストを発現 する。当技術分野の熟練者は、上記した免疫調節剤の任意の組合せを、種々の免 疫抑制因子を含む類似の免疫調節剤と同様に、会合させて本発明の組成物を形成 させることができることを認めるであろう。更に、先に言及したように、異なる 免疫調節剤の混合物又は「カクテル」は、本発明の範囲内に入るように特に意図 されている。 開示された組成物は慣用の製薬枝術及び担体を使用して製剤化することができ 、 そして通常の経路で投与することができる。しかしなから、免疫調節剤のFcR介 在性取り込みを使用することによって先行技術の組成物に関連した問題の多くが 回避される。更に詳細には、本発明の方法は先行技術で開示されているような遊 離ペプチドアンタゴニストの投与に関連した制限の多くを克服している。従って 、TCRアンタゴニストのような免疫抑制因子のエンドサイトーシスによる効率 的な提示によってかなりのレベルのMHC-アンタゴニストリガンドを産生して 、自己反応性抗原の連続的提示に係わる自然発生免疫疾患で産生される豊富なM HC-自己抗原複合体に対抗することができる。このため、本発明を使用して免 疫抑制因子の提示に応答する任意の免疫疾患を治療することができる。これは、 例えば、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、インスリン依存性糖 尿病及び潰瘍性大腸炎を含むT細胞介在性自己免疫疾患に特に当てはまる。同じ ようにして、本発明を使用してアレルゲンのような連続的に提示されるアゴニス トに関して免疫系を選択的にダウンレギュレーションすることができる。更に、 本発明の化合物や関連組成物を使用して免疫系の種々の成分を選択的に抑制して 、移植後の組織又は器官の拒絶の可能性を低下させることができる。 加えて、驚いたことに、本発明の化合物、組成物及び方法を使用して新生児及 び乳児において種々の自己抗原に対する寛容を誘導できることが見い出された。 更に詳細には、本発明は、成体期中の自己免疫疾患誘導に対して新生児又は乳児 哺乳動物において耐性を与える組成物や方法を更に提供する。本明細書の教示に よれば、この新生児寛容はリンパ節逸脱(deviation)や、適当な自己抗原のチャ レンジによる異常なガンマインターフェロン介在性脾性アネルギーを特徴として いる。更に、好ましい実施態様では、本発明は、アジュバント(例えば、不完全 フロイントアジュバント)を使用しないで所望の新生児寛容の誘導を提供するこ とができる。 本発明の他の目的、特徴及び利点は、本発明の以下に詳記した好ましい実施態 様の説明を、先ず簡単に記載されている図面と共に考慮することによって本技術 分野の熟練者には明白であろう。 図面の簡単な説明 図1A及び1Bは、一般的な特徴及びH鎖可変領域のCDR3ループ内におけ る外来ペプチドの包含を示すキメラ免疫グロブリンG(IgG)の概略図であり、 そして図1A(Ig-PLP1)はプロテオリピドタンパク質由来の天然存在ペプチドP LP1(アゴニスト)の挿入を示し、一方図1B(Ig-PLP-LR)はPLP-LRと称されるP LP1のペプチド類似体(アンタゴニスト)を包含している免疫調節剤を示してい る。 図2A及び2Bは、対応する遊離ペプチドに対する抗体を使用して、それぞれ 図1A及び1Bに示したキメラ抗体Ig-PLP1及びIg-PLP-LRに相当する抗体の捕獲 を示すグラフであり、そして図2AはPLP1に対する抗体による捕獲レベルを示し 、そして図2BはPLP-LRに対する抗体による捕獲レベルを示している。Ig-Wは陰 性対照としての野生型抗体である。 図3A及び3Bは、IL-2産生で測定されるキメラ免疫グロブリンの相対的なT 細胞活性化能力を決定するために、PLP1特異的T細胞ハイブリドーマ4E3(図3 A)及び5B6(図3B)に対するIg-PLP1及びIg-PLP-LR(並びに陽性及び陰性対 照)の提示を示すグラフである。 図4は、、脾臓SJL抗原提示細胞及びPLP1特異的4E3T細胞ハイブリドーマ と共にインキュベートした後のIL-2産生レベルで測定される、本発明のキメラ抗 体(Ig-PLP1)対遊離ペプチドPLP1又は天然のプロテオリピドタンパク質(PLP) の相対的なPLP提示有効性を示すグラフである。 図5A、5B及び5Cは、それぞれのアゴニスト及び種々のレベルのIg-PLP-L R又は対照と共に前以てインキュベートしたSJL脾臓APCの存在下、T細胞 ハイブリドーマ4E3によるIL-2産生で測定される、PLP1(5A)、Ig-PLP1(5B )及びPLP(5C)介在性T細胞活性化のIg-PLP-LR拮抗作用を示す比較グラフで ある。 図6は、上記した免疫グロブリンのうちの1つを組み合わせて天然プロテオリ ピドタンパク質と共に前以てインキュベートしたSJL脾臓APCの存在下で、 T細胞ハイブリドーマHT-2によるIL-2の産生で測定される、Ig-PLP2、Ig-PLP-LR 及びIg-Wの相対的拮抗作用を示すグラフである。 図7A及び7Bは、リンパ節(7A)又は脾臓(7B)由来の細胞による3H- チミジン取り込みで測定される、Ig-PLP1接種後のPLP1のインビボ提示を示すグ ラフであり、示された値は、アゴニストPLP1又は対照ペプチドPLP2に暴露した とき3H-チミジン取り込みで測定される、個々のマウスから採取された細胞がT 細胞応答を生じる能力を表している。 図8A及び8Bは、Ig-PLP-LRをIg-PLP1と同時投与したとき、リンパ節(8A )又は脾臓(8B)由来のマウス細胞で測定される、PLP1ペプチドに対する免疫 応答を軽減する能力を示すグラフであり、示された値はPLP1に暴露したとき3H- チミジン取り込みで測定される、個々のマウスから採取された細胞がT細胞応答 を生じる能力を表している。 図9A及び9Bは、Ig-PLP-LRとIg-PLP1との混合物を接種したマウスが、リン パ節(9A)又は脾臓(9B)由来の細胞で測定される免疫応答を、ペプチドPL P1に対してよりペプチド類似体PLP-LRに対して一層激しく発現することを示すグ ラフであり、示された値は、PLP1ペプチドか又はペプチド類似体PLP-LRに暴露し たとき3H-チミジン取り込みに反映される、個々の対象から採取された細胞がT 細胞応答を生じる能力を表している。 図10A〜10Dは、Ig-PLPキメラによる免疫化に対するリンパ節増殖応答を 示すグラフであり、マウスは各刺激剤について三重複ウエルで個々に試験されて おりそして示されたcpmはバックグランドcpmを差し引いた後の平均値±SDを表 す。 図11は、Ig-PLP1とIg-PLP-LRによる同時免疫化に対するリンパ節T細胞増殖 応答のグラフであり、刺激剤は5μg/mlのPPD;15μg/mlのPLP1、PLP-LR及びPLP2 を含む。 図12は、三重複ウエルでPLP1(斜め格子付き棒)及びPLP-LR(平行斜線付き 棒)で刺激したとき、Ig-W、Ig-PLP1、Ig-PLP-LR及びこれらの組合せで免疫化し たマウスの脾臓増殖T細胞応答のグラフである。 図13A〜13Cは、Ig-W、Ig-PLP1、Ig-PLP-LR及びこれらの組合せで免疫化 したマウスの脾臓細胞によるIL-2(13A)、INFγ(13B)及びIL-4(13 C)産生を示すグラフである。 図14A〜14Dは、PLP1ペプチド、PLP-LRペプチド及びこれらの混合物での インビトロ刺激による、CFA中のIg-PLP1(a及びb)又はIg-PLP-LR(c及び d)で免疫化したマウスから得られる、抗原経験T細胞の増殖をグラフで示して いる。 図15A及び15Bは、PLP1ペプチド、PLP-LRペプチド及びこれらの混合物で のインビトロ刺激による、Ig-PLP1(15A)及びIg-PLP-LR(15B)で免疫化 した抗原経験T細胞によるIL-2産生を示すグラフである。 図16A及び16Bは、Ig-PLP1及びIg-Wを注射した新生児マウスがEAEの 誘導に抵抗することをグラフで示しており、臨床的に得られた曲線は全マウス( 16A)と生存マウス(16B)について示されている。 図17A及び17Bは、誕生後24時間以内にIg-PLP1又はIg-Wを注射した後の 新生児の胸腺(17A)及び脾臓(17B)の抗原提示細胞によるIg-PLP1のイ ンビボ提示をグラフで示している。 図18A及び18Bは、誕生後すぐにIg-PLP1又はIg-Wを注射したマウスにお いて、遊離PLP1、PLP2又はPLPの脳炎誘発配列178〜191に相当する陰性対照ペプ チドでの刺激によるリンパ節(18A)及び脾臓(18B)の増殖T細胞応答を グラフで示している。 図19A〜19Cは、誕生後すぐにIg-PLP1で処置しそして遊離PLP1又はPLP2 で刺激したマウスにおけるIL-2(19A)、IL-4(19B)及びINFγ(19C )の産生で測定されるリンパ節T細胞逸脱をグラフで表している。 図20A〜20Cは、誕生後すぐにIg-PLP1で処置しそして遊離PLP1又はPLP2 で刺激したマウスにおけるIL-2(20A)、IL-4(20B)及びINFγ(20C )の産生で測定される脾臓T細胞逸脱をグラフで表している。 図21は、誕生後すぐにIg-PLP1を注射し、7週目に遊離PLP1で免疫化しそし て遊離PLP1で刺激したマウスにおける脾臓T細胞増殖のサイトカイン介在性回復 をグラフで示しており、細胞は対照培地(NIL)、IL-12を有する培地及びI NFγを有する培地中で増殖させられ、そして各マウスについて示したcpmは三重 複ウエルの平均値±SDを表している。 好ましい実施態様の詳細な説明 本発明は多数の異なる形態で実施することができるが、本明細書では本発明の 原理を例示する具体的な実施例を開示する。本発明は例示した特定の実施態様に 限定されないことを強調すべきである。 先に言及したように、本発明はFcレセプター介在性エンドサイトーシス送達系 を使用して脊椎動物の免疫応答を選択的に改変する化合物、組成物及び方法を提 供する。本質的に、免疫系をダウンレギュレーションするためにこの細胞取り込 み形態を利用できる免疫調節剤は全て本発明の一部を構成すると考えられる。な かんずく、本発明の免疫調節剤は単一のポリペプチド、抗原-抗体複合体、キメ ラ抗体又は非ペプチドに基づく免疫反応性化合物を含むことができる。好ましい 実施態様では、本明細書に開示した免疫調節化合物は少なくとも1つのFcRリガ ンドと、エンドサイトーシスによる提示によって免疫応答をダウンレギュレーシ ョンし得る少なくとも1つの免疫抑制因子を含む。本発明の特に好ましい実施態 様は、免疫抑制因子が、感作T細胞表面のレセプターとは結合し得るが免疫原性 応答を生じさせ得ないT細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストである免 疫調節剤を含む。このような実施態様では、提示された免疫抑制因子は、選択さ れた天然存在自己抗原と効果的に競合し、そしてそれによって対応する感作T細 胞の活性化が妨げられそして生じる応答が低下させられる。この免疫系の選択的 抑制は、なかんずく、T細胞介在性自己免疫疾患を含む免疫疾患、アレルギー及 び移植手術における組織拒絶に関連した症状を治療するために使用することがで きる。 従って、1つの実施態様では、本発明は脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免疫 抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための免疫調節剤を含んでおり 、そしてこれは少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫 抑制因子を含む。好ましい実施態様では、免疫グロブリン定常領域ドメインの少 なくとも一部分に相当するFcレセプターリガンドが含まれており、一方免疫抑制 因子は少なくとも1つのT細胞レセプターアンタゴニストに相当する。他の好ま しい実施態様ではT細胞レセプターアゴニストを含む免疫抑制因子が組み入れら れている。特に好ましい実施態様では、上記免疫調節剤は組換えポリペプチド又 はキメラ抗体を含む。 選択した免疫調節剤のFcR介在性取り込みを利用することによって、本発明は 有害な免疫応答をダウンレギュレーションするために身体自体の代謝経路を非常 に巧妙に使用している。更に詳細には、本発明は、T細胞は、外来抗原が他の細 胞の表面に結合したときにだけこれら外来抗原を認識しそして応答するのみであ るという事実を使用している。本明細書の教示に従って適当な免疫調節剤を選択 すると、投与された化合物の効率的な取り込みが提供される。FcR介在性取り込 み後に、抗原提示細胞の天然エンドサイトーシス経路によって、選択された免疫 抑制因子はMHCクラスII分子と複合体を形成し効果的に提示される。 上記したように、或る細胞をクラスII MHC拘束ヘルパーT細胞用の抗原提 示細胞として機能させることができる2つの必須の特性は、エンドサイトーシス を受けた抗原をプロセシングできること及びクラスII MHC遺伝子産生物の発 現である。大部分の細胞はタンパク質抗原をエンドサイトーシスを行いそしてプ ロセシングできると思われる。従って、決定因子はクラスII MHC分子の発現 であると思われる。この点に関して、ヘルパーTリンパ球用の最も良く特定され た抗原提示細胞には単核食細胞、Bリンパ球、樹状細胞、皮膚のランゲルハンス 細胞が含まれ、そして或る哺乳動物においては、内皮細胞が含まれる。勿論、種 々の細胞を種々の領域で濃縮することができ、そしてT細胞介在性免疫応答の種 々の段階に関与させ得ることが認められよう。いずれにしても、本明細書で使用 されるとき、「抗原提示細胞」又は「APC」の用語は、プロセシング及びMH CクラスII-抗原複合体の表面提示によってT細胞介在性免疫応答を誘導し得る 任意の細胞を意味すると考えるべきである。このため、選択されたFcRリガンド は、多様な細胞型に見られる多数の異なるFcレセプターのいずれとも相互に作用 して、免疫調節剤のエンドサイトーシスを促進することができる。単なる例とし て、選択される利用可能なヒトFcレセプターにはFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、 FcγRIIIA又はFcγRIIIBサブファミリーが含まれる。 更に一般的には、本発明に従って、本技術分野の熟練者には、FcR複合体と結 合しそしてエンドサイトーシスを開始し得る任意のリガンドが本発明に適合可能 でありそして開示された免疫調節剤に取り入れられ得ることが認められよう。従 って、FcRリガンドはペプチド、タンパク質、タンパク質誘導体、又はアミノ酸 を取り入れることができるか若しくはできない小分子体を含むことができるが、 これらに限定されない。例えば、コンビナトリアルケミストリー又はレイショナ ルドラッグデザインのような最新の生化学技術を使用して誘導される小分子は、 これら小分子が必須のAPC取り込みを提供する限り、使用することができる。 任意のタイプの適合可能な分子を使用できることを強調しなけれはならないが 、本発明のFcRリガンドは好ましくは1つ以上のペプチドを含んでいよう。更に 好 ましくは、FcRリガンドは免疫グロブリンの定常領域のドメインの少なくとも一 部分を含んでいよう。特に好ましい実施態様では、FcRリガンドは、免疫グロブ リン分子の定常領域から誘導される1つ以上のドメインを含んでいよう。本技術 分野の熟練者は、所望の場合、種々の免疫グロブリンのイソタイプ及びアロタイ プを使用できることを認めるであろう。例えば、適合可能なFcRリガンドはIgG、 IgE、IgA又はIgMの定常領域に見られるアミノ酸配列に相当するものから選択す ることができる。なかんずく、FcRリガンドとして使用される特定のイソタイプ の選択は、結合係数のような生化学的特性又は治療すべき種における低い免疫反 応性に基づいて予測することができる。同様に、単一ドメイン、そのフラグメン ト又は多数ドメインの選択は生化学的因子又は、最終的に、提示効率に基づいて 決定することができる。 更に、特定の抗体に関する免疫応答を選択的にダウンレギュレーションするに はエンドサイトーシス経路による効率的な提示では典型的には十分ではない。従 って、本発明の免疫調節剤は更に免疫抑制因子を含む。本発明の範囲によれば、 免疫抑制因子は、エンドサイトーシスによってプロセシングされそしてMHCク ラスII複合体と一緒になってAPC表面に提示されるとき、免疫系をダウンレギ ュレーションする任意の化合物であることができる。このため、免疫抑制因子は 小分子、ペプチド、タンパク質フラグメント又はタンパク質誘導体を含むことが できる。好ましい実施態様では、免疫抑制因子は、APC表面に提示されるとき 、同様に提示されたアゴニストと選択されたレセプターとの結合に干渉するとい う点で、アンタゴニストとして作用する。特に好ましい実施態様では、免疫抑制 因子は、免疫応答を活性化しないでT細胞レセプターと会合するT細胞レセプタ ーアンタゴニストを含む。更に、本発明の他の実施態様では、対象の自己抗原に 対する免疫応答を低下させるT細胞レセプターアゴニストを組み入れている免疫 調節剤が含まれる。 本発明による免疫抑制因子として任意の機能的に適合可能な分子を使用できる が、本技術分野の熟練者は、開示された化合物及び方法においてはタンパク質フ ラグメント又はペプチドが特に好ましいことを認めるであろう。このような分子 は正常なエンドサイトーシス経路で容易にプロセシングされそしてMHCクラス II分子と協同して容易に抗原提示細胞表面に提示される。更に、望ましくない免 疫応答を誘発するアゴニスト化合物の大部分は典型的にはタンパク質フラグメン トであるので、T細胞レセプターは通常、類似するフラグメントに対して、これ らがアゴニストであれアンタゴニストであれ、最も応答性である。特に好ましい 実施態様では、免疫抑制因子は、選択されたT細胞レセプターと免疫反応性の選 択されたペプチド又はタンパク質フラグメントの類似体であろう。 本明細書で使用される、「ペプチド類似体」又は「類似体」は、該類似体と天 然タンパク質フラグメント又はペプチドとの間でそれぞれの対応する配列に少な くとも1つの異なるアミノ酸を含む。他に示されない限り、名称を挙げられたア ミノ酸はL型を言う。天然ペプチドから得られるL−アミノ酸はタンパク質中に 通常見られる20種のLアミノ酸のうちの任意の他のもの、対応するD−アミノ酸 のうちの任意のもの、希少アミノ酸、例えば4-ヒドロキシプロフィン及びヒドロ キシリジン、又は非タンパク質アミノ酸、例えばβ-アラニン及びホモセリンに 変えることができる。メチル化(例えば、a-メチルバリン)、エチルアミン、 エタノールアミン及びエチレンジアミンのようなアルキルアミンによるC末端ア ミノ酸のアミド化、並びにアミノ酸側鎖官能基のアシル化又はメチル化(例えば 、リジンのイプシロンアミノ基のアシル化)のような化学的手段で改変されたア ミノ酸も本発明の範囲内に含まれる。 多発性硬化症(MS)の治療に有効なペプチドアンタゴニストを選択する方法 は、本出願で先に参照したPCT公開第WO 96/16086号に開示されている。開示 された方法を本発明と一緒に使用して、開示された免疫調節剤に組み入れる有効 な免疫抑制因子を提供することができる。例えば、以下で詳記するアッセイを使 用し、MHCとの競合的結合を測定するアッセイ、T細胞増殖アッセイ又は実験 的脳脊髄炎(EAE)の誘導を評価するアッセイによって、候補ペプチド類似体 のMS治療能力をスクリーニングすることができる。天然自己反応性ペプチドの 結合を阻止し、天然ペプチド反応性細胞系の増殖を刺激せず、そして既知の自己 抗原によるEAE(MSの実験的モデル)の発現を阻止する類似体は治療法に有 用である。本技術分野の熟練者は、類似するタイプのアッセイを使用して、他の 天然ペプチド(即ち、連続的に提示される自己免疫)や他の免疫疾患用の免疫抑 制因子をスクリーニングできることを認めるであろう。特に好ましい実施態様で は、選択された免疫抑制因子はT細胞エピトープの類似体を含む。 更に一般的には、多様な免疫反応剤を有する多数の疾病について、不当な実験 を行うことなく免疫抑制因子を誘導することができる。例えば、多発性硬化症を 治療するために、ペプチド類似体アンタゴニスト又はアゴニストをプロテオリピ ドタンパタ質又はミエリン塩基性タンパク質上のT細胞エピトープについて産生 させることができる。同様に、原発性胆汁性肝硬変を治療するために、T細胞レ セプターアンタゴニスト又はアゴニストをピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の T細胞エピトープから誘導することができる。両例とも、誘導された免疫抑制因 子は本明細書に記載したようにして免疫調節剤に取り入れられ、そしてこれを必 要としている患者に投与されよう。免疫抑制因子が効果的に提示されると、天然 ペプチドによる自己反応性T細胞の刺激が選択的に軽減され、そしてそれによっ て対象の免疫疾患の症状が緩和されるであろう。 共に免疫調節剤を構成している選択された免疫抑制因子とFcRリガンドは、多 数の形態のうちの任意の1つで効果的に投与することができる。更に詳細には、 上記したように、本発明の免疫調節剤は、免疫応答を選択的に抑制するのに機能 的に有効である任意の形態のそれぞれの要素を組み合わせることができる。例え ば、免疫調節剤は、最新の分子生物学技術を使用して産生された組換えポリペプ チド又はタンパク質を含むことができる。このような場合には、FcRリガンドは 単一の免疫グロブリン定常領域ドメインの1つのフラグメント又は、好ましくは 、全定常領域を含むことができる。他の実施態様では、免疫調節剤は、抗原がT 細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストを含んでいる、立体的に結合した 抗体-抗原複合体を含むことかできる。他の好ましい実施態様は、免疫抑制因子 がFabフラグメント上に発現されているキメラ抗体を含む免疫調節剤を特徴とし ている。更に他の実施態様では、免疫調節剤は、それぞれ有効なFcRリガンドと 免疫抑制因子を含む2つの共有結合された分子を含むことができる。 本発明の特に好ましい実施態様では、単一の融合ポリペプチドを含む免疫調節 剤をコードする組換えヌクレオチド構築物が使用されよう。本技術分野の熟練者 は、標準的な遺伝子工学技術によって少なくとも1つのFcRリガンドと少なくと も1つの免疫抑制因子を含む融合タンパタ質又はキメラが提供され得ることを認 めるであろう。本明細書で使用するとき、「キメラ」又は「キメラの」の用語は 、 1つより多くの供給源から得られる配列フラグメントを含む任意のポリヌクレオ チド又はポリペプチドを包含するように最も広範な意味で使用されよう。例えば 、ペプチドTCRアンタゴニストとIgG分子由来の単一のFcドメインを組み入れ ている遺伝子操作ポリペプチドはキメラ又は融合タンパク質と適切に称すること ができよう。同様に、キメラ抗体は異種ペプチド免疫抑制因子を組み入れるよう に操作された組換えH鎖及び野生型L鎖を含むことができる。本発明の目的では 、上記の異種領域が異なる種から誘導される必要はない。即ち、キメラ抗体はヒ トL及びH鎖並びにCDRで発現された操作ヒトTCRアンタゴニストを含むこ とができる。逆に、キメラ免疫調節剤はヒトとマウスのような異なる種に由来す るFcRリガンド及び免疫抑制因子を含むことができる。このため、本発明の1つ の態様ではポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド分子が含まれ、こ のポリヌクレオチド分子はFcレセプターリガンドに相当する少なくとも1つのヌ クレオチド配列と免疫抑制因子に相当する少なくとも1つのヌクレオチド配列と を含む。好ましくは、上記免疫抑制因子はT細胞レセプターアンタゴニスト又は アゴニストに相当し、そして上記Fcレセプターリガンドは免疫グロブリンの少な くとも1つの定常領域ドメインに相当する。特に好ましい実施態様では、上記ポ リヌクレオチド分子は免疫グロブリンH鎖に相当するヌクレオチド配列をコード しており、相補性決定領域が少なくとも一部欠失しておりそしてT細胞レセプタ ーアンタゴニスト又はアゴニストに相当するヌクレオチド配列で置換されている ものである。免疫抑制因子の混合物を含む組成物も本明細書の教示に従って効果 的に使用することもできる。 いずれにしても、本技術分野で周知の技術を使用して、所望の免疫調節剤を含 むDNA構築物を原核又は真核細胞内で発現させることができる。例えば、マニ アチス(Maniatis)等、モレキュラークローニング(Molecular Cloning):ラボ ラトリーマニュアル(Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボ ラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州、1982年(これ は本明細書に参照により含める)参照。好ましい実施態様では操作されたプラス ミドは所望の産生物を分泌する不死化細胞系内にトランスフェクションされよう 。本技術分野で知られているように、このように操作された生物は比較的高いレ ベルの選択された免疫調節剤を産生するように改変することができる。或いは、 操作された分子 は大腸菌のような原核細胞内で発現させることができる。どのような産生供給源 を使用しようと、分画、クロマトグラフィー又は他の精製方法のような通常の生 化学方法及び慣用の製剤化技術を使用して、産生物を分離し次いで送達用組成物 に製剤化することができる。 従って、本発明のもう1つの態様には、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免疫 抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための免疫調節剤を製造する方 法が含まれており、この方法は、 a.適当な宿主細胞を、少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも 1つの免疫抑制因子を含むホリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組 換えポリヌクレオチド分子で形質転換するか又はトランスフェクションし、 b.形質転換されるか又はトランスフェクションされた宿主細胞を、これら細 胞が組換えポリヌクレオチド分子を発現して、免疫調節剤の少なくとも一部分を 含む上記ポリペプチドを産生させる条件下で培養し、 c.上記免疫調節剤を回収する、 段階を含む。 同様に、本発明のもう1つの態様では、少なくとも1つのFcレセプターリガン ドと少なくとも1つの免疫抑制因子を含むポリペプチドをコードする組換えポリ ヌクレオチド分子を含むトランスフェクションされるか又は形質転換された細胞 が含まれる。 上記の態様では共に、免疫抑制因子は好ましくはT細胞レセプターアンタゴニ スト又はアゴニストであり、そしてFcレセプターリガンドは好ましくは免疫グロ ブリン定常領域ドメインの少なくとも一部分を含む。更に好ましくは、上記免疫 調節剤はポリペプチド又はキメラ抗体を含んでおり、少なくとも1つの相補性決 定領域(CDR)はT細胞レセプターアンタゴニスト又はアゴニストで置換され ているものである。 本発明のキメラ抗体、ポリペプチド及び他の構築物は単独で又は医薬組成物と して投与できることが更に認められよう。簡単に言えば、本発明の医薬組成物は 本明細書で記載した1つ以上の免疫調節剤を1つ以上の医薬的に又は生理学的に 許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含むことができる。このよう な組成物は、中性の緩衝生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液等のような緩衝液、 グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストランのような炭水化物、 マンニトール、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンのようなアミノ酸、抗酸 化剤、EDTAのようなキレート剤又はグルタチオン、アジュバント(例えば、 水酸化アルミニウム)及び保存剤を含むことができる。加えて、本発明の医薬組 成物は、例えばサイトカイン様B-インターフェロンのような1つ以上の追加的 な活性成分を含有することもできる。 この点に関して、本発明の更なる態様では、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に 免疫抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための医薬組成物が含まれ 、そしてこれは少なくとも1つの免疫調節剤と医薬的に許容可能な担体とを含ん でおり、上記の少なくとも1つの免疫調節剤は少なくとも1つのFcレセプターリ ガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子とを含む。同様に、本発明は免疫疾患を 治療する医薬組成物の製造方法を含んでおり、そしてこの方法は少なくとも1つ のFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子とを含む少なくとも1 つの免疫調節剤を生理学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせることを含 む。これらの両方の態様で、免疫抑制因子はT細胞レセプターアンタゴニスト又 はアゴニストを含むことができ、そしてFcレセプターリガンドは免疫グロブリン 定常領域ドメインの少なくとも一部分を含むことができる。好ましくは、上記免 疫調節剤は組換えポリペプチド又はキメラ抗体の形態であろう。 上記で示したように、キメラ抗体を含む免疫調節剤は本発明の特に好ましいも ものである。このような抗体は、1つ以上の相補性決定領域(CDR)の少なく とも一部分の代わりに免疫抑制因子、典型的にはペプチドTCRアンタゴニスト を使用することによって形成することができる。以下の実施例で更に十分に記載 されるように、H鎖をコードするヌクレオチド配列を操作して少なくとも1つの CDRの全部又は一部を自己抗原の全部又は部分のペプチド類似体で置換するこ とができる。適当な細胞系で発現されると、組換えH鎖は野生型L鎖と複合体を 形成して、2つの免疫抑制因子をディスプレイしている免疫反応性四量体を形成 することができる。本技術分野の熟練者は、有害な免疫応答(即ち、ヒトの抗マ ウス応答)の発生を最小限度にするように、免疫グロブリン分子は治療すべき種 から選択できることを認めるであろう。選択した免疫グロブリンの定常領域は本 質的に改変されないので、この形態の免疫調節剤は容易にエンドサイトーシスを 受けて、関連免疫抑制因子の効果的な提示が可能になる。 他の形態では、本発明の免疫調節剤は、抗原が免疫抑制因子である抗原-抗体 複合体を含むことができる。最新の免疫学的技術を使用して、好ましくはモノク ローナル抗体である所望の抗体を産生させそして精製できることが認められよう 。単なる例として、選択されたペプチドアンタゴニスト又はアゴニスト(即ち、 ペプチド自己抗原の類似体)をマウスに注射して免疫反応性細胞を提供すること ができ、そして該細胞はその後標準的な方法を使用して採取しそして不死化する ことができる。所望の場合、マウスモノクローナルは慣用の組換え方法を使用し て「ヒト化」して、患者に有害な免疫応答を誘発しないヒト免疫グロブリン上に 小さなマウス可変領域を発現させることができる。いずれにしても、上記モノク ローナル抗体は免疫抑制因子と複合体を形成して所望の免疫調節剤を形成し、そ してこの免疫調節剤はその後上記したようにして製剤化しそして投与することが できる。FcRリガンドを形成する無傷の定常領域を用いると、ファゴサイトーシ ス生起は比較的急速でありそして結合した免疫抑制因子の提示は効率的であろう 。 実施態様は定常領域全体に相当するFcレセプターリガンドを含むことができる が、本発明は、投与された免疫調節剤が無傷の免疫グロブリン定常領域を含むこ とを必要としていないことを強調しなければならない。むしろ、FcRと結合しそ してエンドサイトーシスを受け得る任意のFcRリガンドを、選択した免疫抑制因 子と一緒に使用することができる。詳細には、定常領域の単一ドメイン又はそれ らのフラグメントをペプチドアンタゴニストと組み合わせて、本明細書の教示に 従って免疫系を抑制し得る単量体ポリペプチド(単一のアミノ酸鎖を有する)を 形成することができる。有効な最小FcRリガンド及び/又は免疫抑制因子を有し ており、はるかにより安定であると思われるような融合タンパク質を構築して、 送達を促進させそしておそらく生物利用効率を高めることができる。更に、これ らの操作したタンパク質は、異種の全抗体を投与するときに見られるような免疫 応答を誘発することなく、長期間投与することができると思われる。このため、 比較的小さなキメラポリペプチドが有効な免疫調節剤であることが証明されよう 。 同様に、非ペプチドに基づく分子は効率的なFcRリガンド、免疫抑制因子、又 は組み合わせで免疫調節剤であることが証明されよう。本技術分野の熟練者は、 選択された役割(即ち、FcRリガンド)で有効に機能する分子(ペプチドに基づ くか又は非ペプチドに基づく)が、コンビナトリアルケミストリー、ディレクテ ドエボリューション又はレイショナルドラッグデザインのような現行の方法を使 用して提供できることを認めるであろう。例えば、レイショナルドラッグデザイ ンを使用して、先に説明したFcレセプターと有効に結合する小さな非ペプチド分 子を作ることができよう。次いで、誘導されたFcRリガンドをペプチドアンタゴ ニストのような免疫抑制因子と共有結合させ(又はそうでない場合、可逆的に会 合させ)て、特別な安定性又は他の望ましい形質を示す免疫調節剤を提供するこ とができる。 どのような形態の免疫調節剤を選択したとしても、本発明の組成物を製剤化し て所望の安定性を提供しそして選択された投与形態を容易にすることができる。 例えば、本発明の組成物は、経口、経膣、経耳、経鼻、経肺、静脈内、頭蓋内、 腹腔内、皮下又は筋肉内投与を含むがこれらに限定されない慣用の全ての経路を 使用して投与することができる。本発明の他の実施態様の範囲内で、本明細書に 記載した組成物は持続性放出移植片の一部として投与することができる。更に他 の実施態様の範囲内で、本発明の組成物は、凍結乾燥物としてそして再水和化後 に安定性を提供する適当な賦形剤を使用して、凍結乾燥物又はスプレー乾燥製剤 として製剤化することができる。 本発明は、ダウンレギュレーションを必要としている免疫系を有する任意の脊 椎動物の治療に有用である。本発明は、細胞免疫応答を有する哺乳類のような脊 椎動物で特に有用である。好ましい実施態様では、治療すべき脊椎動物は新生児 又は乳児の状態であろう。 この点に関して、本発明の更なる態様では、免疫調節剤を生理学的に許容可能 な担体又は希釈剤と組み合わせて含む治療的に有効量の医薬組成物を患者に投与 することを含む免疫疾患の治療方法が含まれ、上記免疫調節剤は少なくとも1つ のFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子とを含むものである。 この態様では、免疫抑制因子はT細胞レセプターアンタゴニストを含むことがで き、そしてFcレセプターリガンドは免疫グロブリン定常領域ドメインの少なくと も一部分を含むことができる。先に言及したように、免疫調節剤は好ましくは組 換えポリペプチド又はキメラ抗体の形態であろう。上記方法は、自己免疫疾患、 アレルギー応答及び移植片拒絶を含む免疫疾患を治療するために使用することが でき、そして多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、インスリン依存 性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患の治療に特に 有用である。 上記で考察したように、本発明の組成物、化合物及び方法は、新生児又は乳児 の哺乳動物において寛容を誘導し、そしてそれによって将来の自己免疫を予防す るか又は低下させるのに特に有用である。本明細書で使用するとき「乳児」の用 語は、免疫系が末だ十分には成熟していない誕生後の生活期間中のヒト又は非ヒ ト哺乳動物を言う。ヒトでは、この期間は誕生から約9カ月齢までであり、一方 マウスでは、この期間は誕生から約4週齢までである。「新生」及び「新生児」 の用語は、本質的に正に生まれたばかりの乳児哺乳動物のサブセットを言う。本 発明による「乳児」に関連した他の特徴には、(i)大量域寛容になりやすい( T細胞前駆体の欠失/アネルギー、アポトーシス傾向の増大)、(ii)Th2バイア スヘルパー応答(新生児T細胞の表現型特徴、新生児T細胞でのCD40L発現の低下 )、(iii)細胞応答の大きさの低下(機能的T細胞数の減少、抗原提示細胞機能 の低下)。及び(iv)体液応答の大きさの低下及び型の限定(IgMhIgh、IgDlow、 B細胞の優勢、ThとB細胞間の協力の低下)を有する免疫応答が含まれる。本発 明の具体的な非限定的実施態様では、開示された免疫調節剤は、母親の抗体が検 出可能な量で未だ存在している乳児哺乳動物に投与することができる。関連実施 態様では、所望のT細胞寛容を胎児に生じさせるように、開示された組成物を妊 娠母親に接種することができる。いずれにしても、誘導されたT細胞寛容は、投 与された免疫調節剤に関連する自己免疫疾患の以後の発症に抵抗性を付与するこ とができる。 対象が乳児であるかそれとも完全に成長しているかに関係なく、本発明の医薬 組成物を、治療(又は予防)すべき疾病に適する方法で投与することができる。 投与量及び回数は、患者の状態並びに患者の疾病の型及び重篤度のような要素に よって決定されよう。本発明の特に好ましい実施態様の範囲内で、本明細書に記 載した医薬組成物は、適当な投与量を臨床試験で決定することができるが、1μ g〜50mg/kgまでの範囲の投与量で投与してもよい。本技術分野の熟練者は、患者 は治療有効性についてMRI又は臨床悪化の徴候によってモニターできることを 認めるであろう。 投与後に、免疫調節剤は抗原提示細胞の少なくとも1つの型の表面に存在する 1つ以上のFcレセプターと結合すると考えられる。本技術分野の熱練者は、FcR リガンドを選択することによって、免疫調節剤を細胞内に取り込むためにどのク ラスのFcレセプターを使用するのかが、少なくとも或る程度まで、決定されるこ とを認めるであろう。即ち、IgG定常領域に相当するFcRリガンドはIgE定常領域 に相当するFcRリガンドとは異なるクラスのFcレセプターによって結合されるで あろう。更に、異なるクラスのFcレセプターが異なる型の抗原提示細胞上に発現 されるので、選択されたAPC上に上記免疫抑制因子を提示することが可能であ る。例えば、IgG定常領域に相当するFcRリガンドはマクロファージ又は好中球に よってエンドサイトーシスを受け、そしてそれに応じて提示されると思われる。 これは、或る種のAPCは種々のタイプの抗原を提示するのに一層効果的であり 、そしてこれらの抗原は、次に、どのT細胞を活性化するのかに影響を与え得る という点で、重要である。 いずれにしても、免疫調節剤全体がAPCによるレセプター介在性エンドサイ トーシスに付され、そして通常はクラスリン被覆小胞内に局在化する。インター ナリゼーション(細胞内取り込み)後、免疫調節剤は最終的にAPC表面に提示 されるようにプロセシングされる。プロセシングは一般的に、免疫調節剤のリソ ソーム、即ち、プロテアーゼを含む酸性pHの選択された酵素を含む細胞小器官 への小胞輸送を伴う。ここで免疫調節剤は消化されて、本発明の目的ではペプチ ドの形態であることができる遊離の免疫抑制因子が提供される。このような場合 には、平均的なペプチド長は、例えば、5から30個のアミノ酸のオーダーである ことができる。消化後、免疫抑制因子フラグメントを含む免疫調節剤フラグメン トのうち少なくとも一部はエキソサイトーシス用小胞内でMHCクラスII分子と 会合する。次いで、MHCクラスII-免疫抑制因子複合体はAPC表面に輸送さ れ、そしてヘルパーT細胞に提示される。 上記で指摘したように、本発明の好ましい実施態様では、クラスII MHC分 子と協同して提示される免疫抑制因子としてTCRアンタゴニストが使用される 。従って、以下の考察の目的では、このようなアンタゴニスト(これはペプチド 類似体であることができる)が使用される。しかしながら、本発明は、免疫応答 をダウンレギュレーションする任意の免疫抑制因子をレセプター介在性エンドサ イ トーシスで提示するために使用できることを強調しなければならない。このため 、免疫原性応答で所望の低下を提供するT細胞レセプターアゴニストを免疫抑制 因子として使用することができ、そしてこのようなアゴニストは本発明の範囲内 である。 従って、単なる例として、T細胞をミエリン塩基性タンパク質のフラグメント に相当する自己由来ペプチドアゴニストに前以て感作させることができる。多発 性硬化症では、この自己アゴニストが連続的に提示され、そしてそれによってミ エリン鞘の構成成分に向けた免疫応答が活性化される。更に詳細には、感作され た個々のT細胞は、提示された自己アゴニストと選択的に結合しそして細胞にシ グナルを送る数千ものレセプターを発現する。十分なレセプターが結合されると 、感作T細胞は応答を生じさせるように働く、即ち、インターロイキンを分泌す る。TCRアンタゴニストがMHCクラスII分子と協同して提示される場合、T 細胞は提示された複合体を認識するが活性化はされないであろう。 かくして、本発明によれば、免疫抑制因子(即ち、アンタゴニスト)をエンド サイトーシスによって効率的に提示すると、レセプターに対する競合によってア ゴニスト-TCR結合が阻害される。即ち、提示されたTCRアンタゴニストは 感作T細胞のTCRと効果的に結合し、そしてそれによって提示された自己抗原 又はそのフラグメントの結合が妨げられる。しかし、免疫抑制因子-TCR複合 体は、自己抗原-TCR複合体とは異なって、応答を生じさせるようにはT細胞 にシグナルを送らない。かくして、免疫抑制因子(非反応性アゴニスト又はアン タゴニスト)の結合は、T細胞が十分な自己抗原と結合して、細胞が作用するよ うに誘導する閾活性化レベルに達するのを妨げることができる。それ故、連続的 に提示され、天然のアゴニストを含む自己抗原に対する有害な免疫応答は回避さ れる。 以下の非限定的実施例の提供は、本発明の原理を更に説明するのに役立つであ ろう。この点に関して、以下の考察及び実施例を通して使用する略号と対応する 定義の表を示す。 MBP:ミエリン塩基性タンパク質、多発性硬化症の病因論に関係している。 PLP:プロテオリピドタンパク質、多発性硬化症の病因論に関係している。 PLP1:アミノ酸残基139〜151を含むPLPのペプチドフラグメント。 PLP-LR:PLP1のペプチド類似体、PLP1パルス細胞を活性化しない。 PLP2:アミノ酸残基178〜191を含むPLPのペプチドフラグメント。 Ig-W:Balb/cγ2b定常領域と結合した抗アルソネート抗体91A3のH鎖可変領域及 び親の91A3カッパL鎖を含むIg構築物(本明細書では対照として使用されている )。 Ig-PLP1:H鎖CDR3がPLPのアミノ酸残基139〜151で置換されたことを除いてI g-Wと同一の構築物。 Ig-PLP-LR:H鎖CDR3がPLPのアミノ酸残基139〜151のペプチド類似体で置換 されたことを除いてIg-Wと同一の構築物。 Ig-HA:(本明細書では対照として使用されている)H鎖CDR3がインフルエン ザウイルスHAのアミノ酸残基110〜120で置換されたことを除いてIg-Wと同一の 構築物。 PPD:精製タンパク質誘導体、対照アクチベーターとして使用される全結核菌(Myc obacterium tubercuolosis)抽出物。 明白な実施上及び道徳上の理由により、多数の疾病に関する実験的組成物又は 方法の有効性を決定するヒトでの初期研究は実行できない。それ故、医薬品の初 期開発中には、安全性及び費用の理由により適当な動物モデルを使用することが 標準的な方法である。実験室動物モデルの実行で成功するという根拠は、免疫主 要(immunodominant)エピトープが異なる宿主種でしばしば活性であるという理 解に基づいている。かくして、1つの種、例えば、齧歯類又はブタの免疫原決定 基は一般的に、ヒトのような異なる種で免疫反応性であろう。適当な動物モデル が十分に開発された後にしか、ヒトにおけるワクチンの安全性及び有効性を更に 証明するヒトでの臨床試験は実施されないであろう。従って、説明の目的でのみ そして限定の目的ではなく、本発明は主として、哺乳類宿主としてのマウスに関 する例で証明されよう。本技術分野の熟練者は、本発明は、ヒト及び家畜動物を 含む他の哺乳類宿主で実施できることを認めるであろう。 この点に関して、MSの動物モデルとして使用される実験的脳脊髄炎(EAE )は、PLPやミエリン塩基性タンパク質(MBP)のようなミエリン自己抗原を 使用してマウスの感受性系で誘導することができる。これらタンパク質の脳炎誘 発活性は、インビボでクラスII拘束脳炎誘発性T細胞を誘導し、そしてその結果 EAEを誘導するペプチドの存在と相関している。PLPのアミノ酸残基139〜151 に 相当するペプチド(PLP1)はH-2s SJLマウスで脳炎誘発性であり、そして PLP1に特異的なT細胞系はEAEをナイーブ(naive)動物にトランスファーする 。ヒトMSでの標的抗原は未だ議論の余地があるが、ミエリンタンパク質に特異 的なT細胞の数は正常な対象よりMS患者の方が多い。ミエリン反応性T細胞を 沈静させることがMSを元に戻す論理的な方法であると思われる。このため、こ のモデルを使用して本発明の利点が証明されよう。 実施例I ペプチドの調製 本出願においては、アミノ酸は標準的な3文字又は1文字コードで呼称される 。他に特定しない限り、アミノ酸はL型が意図されている。1文字コードを使用 するとき、大文字はL型を示し、そして小文字はD型を示す。1文字コードは次 の通りである。A、アラニン;C、システイン;D、アスパラギン酸;E、グル タミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;H、ヒスチジン;I、イソロ イシン;K、リジン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラギン;P、 プロリン;Q、グルタミン;R、アルギニン;S、セリン;T、スレオニン;V 、バリン;W、トリプトファン;及びY、チロシン。 以下の実施例で使用するペプチドは全て、リサーチ ジェネティック インク. (Research Genetic,Inc.)(アラバマ州ハンツビル)で固相法を使用して製造 され、そして慣用の方法を使用してHPLCカラムで>90%の純度まで精製され た。PLP1ペプチド(HSLGKWLGHPNKF:配列番号1)は、天然存在プ ロテオリピドタンパク質のアミノ酸残基139〜151に相当する脳炎誘発配列を包含 している。PLP-LR(HSLGKLGPNKF:配列番号2)はPLP1の類似体 であり、Trp 144とHis 147がそれぞれLeuとArg(下線を引いてある)で置換さ れていた。PLP1とPLP-LRはI-ASクラスII分子(即ち、マウスの特定の系で産生 されるMHCクラスII構造)と良好に結合する。PLP2ペプチド(NTWTTCQ SIAFPSK:配列番号3)はPLPのアミノ酸残基178〜191に相当する脳炎誘発 配列を包含している。このペプチドもI-ASクラスII分子と結合し、そしてSJ LマウスでEAEを誘導する。HAペプチド(配列は示されていない)はインフ ルエンザウイルスのヘマグルチニンのアミノ酸残基110〜120に相当する。HAは I- EDクラスII分子と結合し、そしてここでは対照ペプチドとして使用される。 実施例II 外因性ペプチドを含むマウスキメラ免疫グロブリンの産生 Ig-PLP1及びIg-PLP-LRと称されそして図1に概略的に示されている2つの免疫 グロブリン-ペプチドキメラを実施例Iに記載したようにして構築して、ペプチ ドPLP1及びPLP-LRを発現させた。両方とも、H鎖CDR3ループが欠失させられ そして選択したペプチドをコードするヌクレオチド配列で置換された。慣用のD NA配列決定分析によって、ペプチドヌクレオチド配列が正しい読取り枠に挿入 されていることが示された。 これらのキメラを構築するために使用した遺伝子には、ギリアン(Gillian) 等、Cell.33:717、1983年によって記載されたBALBK IgG2b定常領域をコ ードする遺伝子、ルスバン(Ruthban)等、J.Mol.Bio.、202:383〜398、1988 年によって記載された91A3 H鎖可変領域をコードする遺伝子及びガリィ(Gary )等、Proc.Natl.Acad.Sci.、84:1085〜1089、1987年によって記載された全9 1A3カッパL鎖をコードする遺伝子が含まれる(上記文献は全て本明細書に参照 により含める)。H鎖CDR3領域を欠失させそしてPLP1及びPLP-LRをコードす るヌクレオチド配列で置換する方法は、PR8インフルエンザAウイルスの核タ ンパク質アミノ酸残基147〜161に相当するCTLエピトープを有するキメラであ るIg-NPの産生についてザゴウアニ(Zaghouani)等、J.Immunol.148:3604〜36 09、1992年(これは本明細書に参照により含める)によって記載された方法と同 様である。この同じ参照文献は、91A3 IgGのCDR3がペプチド発現に適合して おり、そしてクラスI及びクラスII拘束エピトープが共に、天然存在断片の代わ りに接がれたとき効率的にプロセシングされそしてT細胞に提示されるたことを 報告している。 簡単に述べると、91A3VH遺伝子をpUC19プラスミドのEcoRI部位にサブクロ ーン化しそしてPCR突然変異形成反応で鋳型DNAとして使用して、CDR3 の代わりにPLP1(91A3VH-PLP1)及びPLP-LR(91A3VH-PLP-LR)配列を有する91 A3VHフラグメントを生成させた。ヌクレオチド配列決定分析によって、完全なP LP1及びPLP-LR配列が正しい読取り枠に挿入されている(図示されていない) ことが示された。次いで、91A3VH-PLP1及び91A3VH-PLP-LRフラグメントを、そ れぞれpSv2-gpt-91A3VH-PLP1-Cγ2b及びpSv2-gpt-91A3VH-PLP1-LR-Cγ2bプ ラスミドを発生させる、Balb/cγ2bの定常領域をコードするエキソンの前にあ るpSV2-gp1-Cγ2bのEcoRI部位にサブクローン化させた。次いで、これらのプラ スミドは、親の91A3 L鎖、pSV2-neo-91A3Lを有する発現ベクターと共に非Ig産 生SP2/0 Bミエローマ細胞内に別々にコトランスフェクションさせた。Igキメ ラを産生するトランスフェクション体はジェネチシン及びミコフェノール酸の存 在下で選択した。トランスフェクション体は限界希釈によりクローン化し、そし て最終クローンは1〜4μg/mLのIg-PLP1又はIg-PLP-LR(集合的に、Ig-PLPキメ ラ)を分泌した。Ig-PLP1-9B11及びIg-PLP-LR-21A10と名付けた選択した細胞系 は本発明者の実験室で永久保存して維持している。 キメラ及び野生型抗体も対照として使用した。例えばIg-HA、即ち、CDR3 内部に挿入されたペプチドだけがIg-PLP1及びIg-PLP-LRと異なっている、インフ ルエンザウイルスのHA由来のHA110-120 TヘルパーエピトープをDセグメント の代わりに有しているIgG分子である。Ig-Wは、修飾されていない(野生型)91A 3VH遺伝子の産生物、即ち、Balb/cγ2b定常領域及び91A3カッパL鎖である。そ れ故、これは、親のDセグメントを含むCDR3領域がIg-PLP1やIg-PLP-LRと異 なっている。そして、Ig-PLP2は、H鎖CDR3ループ内にPLPのアミノ酸残基17 8〜191を有するキメラ抗体である。慣用のクローニング、配列決定及び精製方法 を使用して適当な細胞系を作成した。これらの方法はザゴウアニ等(先に引用し た)によって記載された方法及びIg-HAを産生させるために先に使用した方法( ザゴウアニ等、Science.259:224〜227、1993年(これも本明細書に参照により 含める))と同様である。 トランスフェクション体の大規模培養は10%の鉄富化ウシ血清(Intergen)ニ ューヨーク州)を含有するDMEM中で実施した。Ig-PLPキメラは、ラット抗マ ウス カッパ鎖mAbをCNBr活性化セファロース4B(Pharmacia)に結合さ せたカラムで培養上清液から精製した。ラット抗マウス カッパ鎖mAb(RAM18 7.1又はATCC名称、HB-58)及びマウス抗ラット カッパL鎖mAb(MAR18.5 又はATCC名称、TIB 216)はATCCから得た。これらのハイブリドーマは 大規模にまで増殖させ、そして互いに培養上清液から精製した。ラット抗マ ウス カッパmAbを使用してカラムを調製し、そしてこのカラムでIg-PLPキメ ラを培養上清液から精製した。交差汚染を避けるために、別々のカラムを使用し て個々のキメラを精製した。 実施例III プロテオリピドタンパク質の精製 天然のプロテオリピドタンパク質又はPLPは、リース(Lees)等、プロテオリ ビドの調製(Preparation of Proteolipids)、神経化学における研究方法(Resea rch Methods in Neurochemistry)、エヌ.マークス(N.Marks)及びアール. ロドナイト(R.Rodnight)編、プルネマム プレス(Plunemum Press)、ニュー ヨーク州、1978年(これは本明細書に参照により含める)の、以前に記載された 方法に従ってラット脳から精製した。 簡単に言えば、脳組織は2/1(v/v)のクロロホルム/メタノール中でホモジ ナイズし、そして焼結ガラス漏斗でろ過して可溶性の粗脂質抽出物を分離した。 次いで、PLPをアセトンで沈殿させ、そしてペレットをクロロホルム/メタノール /酢酸の混合物中に再度溶解し、そしてLH-20-100セファデックスカラム(Sigma )を通過させて残存脂質を除去した。溶出物からのクロロホルムの除去とPLPか らアポタンパク質体への変換は、穏やかな窒素流下で水を徐々に添加して同時に 実施した。その後、水に対する十分な透析を実施して、残留酢酸及びメタノール を除去した。 実施例IV ウサギ抗ペプチド抗体の産生 実施例Iで調製したPLP1及びPLP-LRペプチドを、ザゴウアニ等、Proc.Natl. Acad.Sci USA 88:5645〜5649、1991年(これは本明細書に参照による含める) に記載されたようにしてKLH及びBSAと結合させた。ニュージーランドシロ ウサギはミルトルズ ラビトリィ(Myrtle's Rabbitry)(テネシー州トンプソン ステーション)から購入した。これらのウサギは、完全フロイントアジュバント (CFA)中1mgのペプチド-KLH複合体で免疫化し、そして不完全フロイ ントアジュバント(IFA)中1mgの複合体を使用して、高い抗体力価に達する まで 毎月チャレンジした。ペプチド-BSA複合体はセファロースと結合させ、そし て抗ペプチド抗体をウサギ抗血清から精製するために使用した。 実施例V ウサギ抗ペプチド抗体の特性評価 捕獲(capture)ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用し、実施例IIに記載し たようにして製造したIg-PLP1及びIg-PLP-LRを使用してIgG分子上のPLP1及びPLP -LRペプチドの発現を評価した。 マイクロタイター96ウエルプレートは、実施例IVで製造したウサギ抗ペプチド 抗体(5μg/mL)を使用して4℃で一夜コートし、そしてPBS中2%のBSA を使用して室温で1時間ブロックした。次いで、これらのプレートをPBSで3 回洗浄し、そして選別した量のIg-PLP1及びIg-PLP-LRを添加し、そして室温で2 時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、捕獲されたIg-PLP1及びIg- PLP-LRは、フルートを100×103cpmの125I標識ラット抗マウス カッパmAbと 共に37℃で2時間インキュベートして検出した。次いで、フルートをPBSで5 回洗浄し、そしてLKBガンマカウンターを使用して計数した。27μg/mLのキメ ラで得られた三重測定の平均値±SDが示される。 図2に示されているように、合成PLP1及びPLP-LRペプチドに対するウサギ抗体 は、実施例IIで製造されたキメラ抗体Ig-PLP1及びIg-PLP-LRを認識した。更に詳 細には、Ig-PLP1及びIg-PLP-LRを、ウサギ抗PLP1でコートしたプレート上でイン キュベートしたとき、これらは有意の量で捕獲され、そして標識したラット抗マ ウスカッパ鎖mAbと結合した(図2A)。同様に、Ig-PLP1及びIg-PLP-LRは共 にウサギ抗PLP-LRによって捕獲された(図2B)。逆に、Ig-W、即ち、外因性ペ プチドを有していない野生型91A3マウス抗体及びIgM対照抗体(図示されていな い)はウサギ抗体との有意な結合を示さなかった。Ig-PLP1は、Ig-PLP-LRより良 好に抗PLP1及び抗PLP-LRの両方と結合し、構造の差異がウサギ抗体に対するペプ チドの接近可能性に影響を与えることを示した。更に、図2に示された結果は、 キメラでペプチドが発現しても、ウサギ抗体はH鎖上のPLPペプチドと結合しそ して標識したラット抗マウスカッパはL鎖で結合するので、H鎖とL鎖の対合を 改変しなかったことを示している。 実施例VI 抗原特異的T細胞系増殖アッセイ PLP1特異的T細胞ハイブリドーマ5B6及び4E3並びにIL-2依存性HT-2 Tヘルパ ー細胞はユーナイス ケネディ シュライバー センター(Eunice Kennedy Shrive r Center)、マサチューセッツ州ウォルサムから得た。5B6及び4E3 T細胞は、 クックルー(Kuchroo)等、J.Immunol.153:3326〜3336、1994年(これは本明 細書に参照により含める)によって報告されているように、I-ASクラスII M HCと会合したペプチドPLP1を認識し、そしてこれと共にインキュベートしたと き、IL-2を産生する。逆に、クックルー等は、PLP1で刺激しそしてその後PLP-LR で刺激したとき、5B6及び4E3細胞は共にもはやIL-2を産生しないことを報告して いる。同様に、PLP-LRの存在下でT細胞ハイブリドーマをPLP1で刺激すると明ら かにIL-2産生を阻害する。 クックルー等と実質的に同一の技術を使用して、種々のアゴニストに対するT 細胞ハイブリドーマの活性化を次のようにして実施した。SJLマウスから得ら れ照射した(3,000ラド)脾細胞をこの実施例用の抗原提示細胞(APC)とし て使用した。照射した脾細胞は、96ウエルの丸底フルート(5×105細胞/ウエ ル/50μl)中、選別した濃度の抗原(100μl/ウエル)と共にインキュベートし た。1時間後、T細胞ハイブリドーマ、即ち、5B6又は4E3(5×104細胞/ウエ ル/50μl)を添加し、そして培養を一夜継続した。T細胞の活性化(又は増殖) は培養上清液中のIL-2の産生を測定して評価した。これはIL-2依存性HT-2細胞を 使用した3H-チミジン取り込みによって実施した。即ち、IL-2が存在する(即ち 、活性化したT細胞によって分泌される)とき、HT-2細胞は増殖し、周囲培地か ら標識チミジンを取り込む。 これらのアッセイを実施するために使用した培養培地は10%FBS、0.05mM2 -メルカプトエタノール、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム及び50μg /ml硫酸ゲンタマイシンを補充したDMEMであった。簡単に言えば、培養上清 液(100μl/ウエル)は96ウエルの平底フルート中でHT-2細胞(1×104細胞/ウ エル/100μl)と共に24時間インキュベートした。その後1ウエル当たり1μCi の3H-チミジンを添加し、そして更に12〜14時間培養を続けた。次いで、細胞を グラスファイバーフィルター上に回収し、そして取り込まれなかった3H-チミジ ンを洗い流した。次に、トレース96プログラム及びイノテック(Inotech)βカ ウンターを使用して取り込まれたチミジンを測定した。より高いIL-2値(活性化 されたT細胞ハイブリドーマ系によって分泌された)を含有するウエルはより高 いレベルのHT-2細胞増殖を誘導しそして3H-チミジン取り込み値の増加を記録す ることが認められよう。 2種のT細胞系を使用した上記アッセイの結果を図3に示す。詳細には、T細 胞ハイブリドーマ4E3(図3A)及び5B6(図3B)はIg-PLP1、PLP1及び天然PLP と共に前もってインキュベートしたAPCによって刺激した後、かなりの値のIL -2を産生した。陰性対照Ig-W、Ig-HA及びPLP2ペプチドはT細胞によるIL-2の産 生を誘導しなかった。同様に、Ig-PLP-LRとPLP-LRペプチドは共に5B6及び4E3を 刺激せず、有意なレベルのIL-2を産生しなかった。PLP-LRペプチドはIL-2産生を 刺激するというよりはむしろ無効にすることが知られているので、上記の最後の 結果は予期されないことでない。抗原の濃度はIg-PLP1、Ig-PLP-LR、Ig-HA及びI g-Wについては0.1μM;PLP1及びPLP2ペプチドについては1μM;そしてPLPにつ いては1.7μMであった。各値は三重複ウエルの平均値±SDを表す。 これらの結果は、Ig-PLP1が活性化を助ける態様でT細胞ハイブリドーマに提 示されたことを示している。立体障害は抗体全体とMHC構造及びTCRとの同 時直接結合を妨げるように思われる。T細胞は可溶性タンパクとは反応しないの で、PLP1ペプチドはエンドサイトーシスプロセシングによってIgから遊離されそ してMHCクラスII I-AS分子と結合したように思われる。従って、PLP1ペプ チドの両側の領域はIg-PLP1のエンドサイトーシスプロセシング又はPLP1ペプチ ドとMHCクラスII構造との結合に干渉しないように思われる。 実施例VII Ig-PLP1 を介したT細胞へのPLP1ペプチドの提示 自然発生免疫疾患においては、自己抗原の暴露及び連続的なエンドサイトーシ スによる提示によってかなりのレベルのMHC-自己抗原複合体が生じると思わ れる。現在、多数の免疫疾患にはこの連続的な提示を再現する有効なインビトロ モデルが存在せず、有効な治療法の開発に重大な障害となっている。比較的非効 率的なインターナリゼーションメカニズム又は先に考察した遊離ペプチドに関す る制限のため、所望の刺激を提供するためには比較的高いレベルの天然抗原が必 要である。従って、本発明の1つの態様は、アゴニストリガンドをエンドサイト ーシスによって連続的に提示するインビトロモデルを提供することである。 更に詳細には、本発明は、 a.Fcレセプターを発現する多数の抗原提示細胞を含む培地を提供し、 b.上記培地を、少なくとも1つのFcレセプターリガンド及び少なくとも1つ の免疫抑制因子を有している免疫調節剤並びに適合(compatible)担体を含む免疫 調節剤含有組成物と組み合わせる ことを含む、T細胞アンタゴニストをインビトロエンドサイトーシスによって効 果的に提示する方法を提供する。 好ましくは、上記免疫抑制因子は少なくとも1つのT細胞レセプターアンタゴ ニストであり、そしてFcレセプターリガンドは免疫グロブリン定常領域ドメイン の少なくとも一部分であろう。更に、本発明の好ましい面では、上記免疫調節剤 は組換えポリペプチド又はキメラ抗体を含んでいよう。 この点に関して、Ig-PLP1(又は任意の免疫グロブリン会合アゴニスト)は、 免疫系を研究するためのインビトロ系となるような、エンドサイトーシス経路で 効率的に機能しそして高いアゴニストリガンドレベルを生じさせ得るペプチド送 達系を確立する目的で使用することができる。特に、開示した系は、自己抗原の インビボ提示と同様の状況下の拮抗作用を研究するために使用することができる 。 エンドサイトーシスによる抗原の連続的な提示を模擬するために免疫グロブリ ン会合アゴニストが使用できることを証明するために、T細胞活性化アッセイを 遊離PLP1ペプチド、天然PLP及びIg-PLP1を使用して実施した。これらのアッセイ の結果を図4に示す。 詳細には、種々の濃度の3つの抗原(即ち、アゴニスト)を、照射されたSJ L/J脾細胞と一緒にインキュベートし、そしてその後これらの脾細胞を4E3 T 細胞ハイブリドーマと会合させた。IL-2産生は、実施例VIに記載したようにして IL-2依存性HT-2細胞を使用して3H-チミジン取り込みで測定した。各点は三重測 定の平均値を表す。標準偏差は平均値の10%を超えなかった。 図4は、最大活性値は3種のアゴニスト間で様々であったが、T細胞を刺激す るのに必要な値は遊離PLP1又は天然PLPのいずれよりもIg-PLP1の方がはるかに低 かったことを示している。即ち、上記細胞系を刺激するためには天然PLP又は遊 離ペプチドのどちらよりもIg-PLP1の方が実質的に少ししか必要でなかった(1/ 100のオーダー)。詳細には、最大値の半分まで刺激するためには、Ig-PLP1(0. 005μM)はPLP(0.5μM)又はPLP1ペプチド(0.6μM)より少ししか必要でな かった。これらの結果は、PLP1 T細胞エプトープが天然PLP又は合成PLP1ペプチ ドよりIg-PLP1によって一層良好に提示されることを示している。IL-2産生のプ ラトーは、T細胞アクチベーターが遊離PLP1合成ペプチドであるときの方がより 高かったが、これにはインビボで長期間に亘って得ることは困難と思われる実質 的により高いアゴニストレベルが必要である。 いずれにしろ本発明を限定するものではないが、ペプチド送達におけるIg-PLP 1の有効性はFcR介在性インターナリゼーションや新たに合成されたMHC分子へ の接近に関係しているように思われる。更に詳細には、天然PLPは単純な流体相 ピノサイトーシスではあまり効果的には細胞内に取り込まれないように思われ、 一方遊離PLP1ペプチドは細胞表面のエンプティMHCクラスII分子と単純に結合 するだけであるように思われる。これらの形態の自己抗原の無効な提示は図4に 明らかに示されており、そしてこの図は、MHCクラスII分子と組み合わせてPL P1ペプチドを提示するには、Ig-PLP1の方が遊離ペプチド又は天然タンパク質の どちらよりも効率的であることを明白に示している。 実施例VIII インビトロT細胞活性化の阻害 Ig-PLP-LRによるPLP1、PLP及びIg-PLP1 T細胞活性化の拮抗作用はプレパルス 増殖アッセイを使用して検出した。 照射した(3,000ラド)SJL脾細胞(APCとして使用した)は、選択した アゴニスト(1μM PLP1ペプチド、0.05μM Ig-PLP1又は7μM PLP)及び種 々の濃度のアンタゴニスト(100μl/ウエル)と共に96ウエルの丸底プレート( 5×105細胞/ウエル/50μl)中で1時間インキュベートした。続いて、4E3 T 細胞ハイブリドーマ(5×104細胞/ウエル/50μl)を添加し、そして培養を一 夜継続した。HT-2細胞を使用して実施例VIと同じようにして測定した上清液中 のIL-2産生をT細胞活性化の尺度として使用した。このアッセイの結果を図5に 示す。 更に詳細には、図5A、5B及び5Cはそれぞれ、遊離PLP1ペプチド(5A) 、Ig-PLP1キメラ免疫グロブリン(5B)及び天然PLP(5C)の拮抗作用を示す 。アンタゴニストはIg-PLP-LR(四角)及びPLP-LR(丸)であり、対照はIg-W( ひし形)及びPLP2(三角)であった。 アゴニストは使用したがアンタゴニストは使用しないでAPCをインキュベー トしたときに得られたcpm値は対照チミジン取り込みとして使用した。この値はI g-PLP1では7,503±1,302、PLP1ペプチドでは31,089±3,860、そしてPLPでは8,26 8±915であった。APCをアゴニストもアンタゴニストもなしでインキュベート したときに得られたcpm値はバックグランド(BG)として使用した。この値はI g-PLP1では1,560±323、PLP1ペプチドでは2,574±290、そしてPLPでは2,127±17 7であった。対照に対するチミジン取り込みパーセントは次のようにして計算し た。[(試験アンタゴニストの存在下で得られたcpm)−(BG)]/[(cpm対照 チミジン取り込み値)−(BG)]。各点は三重測定の平均値を表す。 上記で考察したように、MHCクラスII分子へのペプチド負荷(loading)にお けるIg-PLP1キメラの能力は、抗原の連続的な供給によってしばしば、T細胞を 攻撃的に誘発できる自己ペプチドの豊富な産生か可能になるインビボ自己免疫環 境に似ていると思われる。図5A(PLP1アゴニスト)は、T細胞をPLP1とIg-PLP -LRの両方の存在下でAPCと共にインキュベートしたとき、Ig-PLP-LRの濃度が 上昇するに従いIL-2産生がかなり減少したことを示している。PLP1ペプチドによ るT細胞活性化中に合成PLP-LRペプチドを使用したとき、IL-2産生の同様な減少 が明白であった。逆に、対照Ig-W免疫グロブリン及びPLP2ペプチドでは拮抗効果 は観察されなかった。IL-2産生の最大値の50%阻害(対照に対して60%のチミジ ン取り込み)には、9μMのPLP-LRペプチドに対して0.4μMのIg-PLP-LRしか必 要でなく、Ig-PLP-LRがはるかにより効率的な提示及びT細胞拮抗作用を示して いる。 T細胞拮抗作用においてキメラ免疫グロブリンが遊離ペプチドより効率的であ るという更なる証拠は図5B及び5Cに示されている。詳細には、図5Bは、Ig -PLP-LRはIg-PLP1によって介在されるT細胞活性化を阻害したが、遊離PLP-LR は、陰性対照PLP2ペプチドと同様に、有意な拮抗作用を全く示さなかったことを 示している。意義深いことに、図5Bはまた、Ig-W、即ち外因性ペプチドを有し ていない野生型91A3免疫グロブリンがIg-PLP1介在性T細胞活性化で部分的な阻 害活性を示すことも示している。これは、Ig-PLP1とIg-Wが共に同一のIgG2b定 常領域を有しているので、APC上でのFcRとの結合についての競合の結果であ ると考えられる。IL-2産生の50%阻害の最大値は、Ig-PLP1によるT細胞の活性 化をIg-Wの存在下で実施したときに見られた。かくして、Ig-WはFcR結合及びイ ンターナリゼーションについてIg-PLP1と競合し、それによってT細胞の活性化 が低下するものと思われる。即ち、Ig-Wの濃度が土昇するに従い、FcRと結合し そしてAPCによって細胞内に取り込まれるIg-PLP1はより少なくなり、その結 果、提示及びこれに対応するIL-2産生が減少するのであろう。応答におけるこの Ig-W介在性低下は拮抗効果の結果ではなくて、むしろ単にFcR結合に対する競合 の結果にすぎないことに注目することが重要である。即ち、提示されたIg-Wエピ トープはPLP1に対するTCRアンタゴニストではなく、PLP1特異的TCRと相互 作用しない。 図5Bとは対照的に、図5CはIg-WではなくてIg-PLP-LRが天然PLPによるT細 胞の活性化を有意に低下させることを示している。Ig-Wは天然PLPと異なる態様 で細胞内に取り込まれるように思われるので(Fcレセプターに対して、単純な流 体相ピノサイトーシス)、取り込み及びプロセシングについて直接的な競合は全 くないので阻害もないのであろう。 便宜上の目的で、図5に示した結果をすぐ下の表1にまとめる。APCをIg-P LP-LRの存在下でPLP1ペプチドと共にインキュベートしたとき、PLP1特異的T細 胞ハイブリドーマは活性化されなかった(図5a)。更に、天然PLP及びIg-PLP1 によるT細胞の活性化を種々の濃度のIg-PLP-LRの存在下で実施したとき、IL-2 産生(即ち、T細胞活性化)はIg-PLP-LRの増加につれて減少した。しかしなか ら、遊離PLP-LRペプチドは、天然PLP又はIg-PLP1によって介在されるT細胞活性 化を阻害しなかった。これらの2つの系列の証拠によって、T細胞のIg-PLP-LR 介在性不活性化の主要なメカニズムは、細胞表面土でのMHCクラスII分子の直 接的な遮断というよりはむしろエンドサイトーシスによる提示とTCR拮抗作用 であろうということが示唆される。 下記表で、プラスの記号はIL-2産生の阻害する、そしてそれ故拮抗作用がある ことを示し、一方マイナスの記号はIL-2産生を殆ど又は全く阻害しない、そして それ故拮抗作用が殆ど又は全くないことを示す。 表1 Ig-PLP-LR及びPLP-LR介在性T細胞拮抗作用 上記実施例の結果は、ペプチドアンタゴニストのFcR介在性取り込み及びそれ に続くプロセシングが抗原提示細胞による効率的な提示と両立し得ることを示し ている。これは、遊離ペプチド類似体が送達されると、MHC又はTCR結合部 位についての直接的な競合によって効率的な拮抗作用が提供されると考えられた 先行技術からみて全く予期されていなかったことである。 実施例IX Ig-PLP-LR による拮抗作用のメカニズムの特徴決定 実施例VIIIで実施したアッセイと同様のアッセイを使用することによって、Fc レセプターとの直接的な結合についての競合は、それ自体、Ig-PLP-LR介在性拮 抗作用のありそうなメカニズムではないことが証明された。 SJL脾臓APCを、2μMのIg-PLP2、Ig-PLP-LR又はIg-Wの存在下で天然PL P(6.8μM)と共にインキュベートし、そして上記実施例に記載したようにHT-2 細胞を使用し3H-チミジン取り込みによってIL-2産生をアッセイした。Ig-PLP2 は実施例Iに詳記した配列を使用して実施例IIのようにして調製した。対照に対 するチミジン取り込み%は実施例VIIIと同じようにして計算した。アッセイの結 果を図6に示す。図6の各欄は三重測定の平均値±SDを表す。 図5Bに示した結果と同様に、本実施例はMHCクラスII構造上での効率的な 提示及び有効なペプチド類似体によって最も顕著な結果がもたらされるという見 解を支持している。即ち、たとえIg-PLP2キメラ抗体が取り込まれそしてプロセ シングされたとしても、I-ASによるPLP2ペプチドの効率的な提示は、このペプ チドは天然PLPアゴニストの類似体ではないので、T細胞の活性化を妨げない。 従って、抗原提示細胞上でのMHCクラスII分子との単純な競合結合では所望の 拮抗作用を生じさせないと思われる。 実施例X PLP1 に対するT細胞応答のインビボ誘導 この実施例によって、本発明のキメラ抗体は、インビトロでのT細胞応答を生 じさせる(実施例VII)ことに加えて、インビボで細胞応答を生じさせるために 使用できることが証明された。具体的には、次の実施例はIg-PLP1によるPLP1特 異的T細胞のインビボ感作を示している。 6〜8週齢のSJLマウス(H-2S)をハーラン スプラーグ ドウリィ(Harl an Sprague Dawley)(メリーランド州フレデリック)から購入し、そして実験 期間中動物施設で維持した。 マウスは、1:1(v/v)のPBS/CFA混合物200μl中で乳化した50μgのIg -PLP1を使用して足蹠並びに四肢基部及び尾部に皮下的に免疫化した。10日後、 頸部脱臼によってマウスを屠殺し、脾臓及びリンパ節(腋窩、鼠蹊部、膝窩及び 仙骨)を取り出し、単一細胞懸濁物を調製し、そしてT細胞応答を分析した。図 7に示した結果は、4×105リンパ節細胞/ウエル(7A)及び10×105脾細胞/ウ エル(7B)で得られたものである。アクチベーターPLP1及びPLP2は15μg/mlで 使用し、そしてPPDは5μg/mlで使用した。 上記実施例と同様に、T細胞活性化は3H-チミジン取り込みを含む増殖アッセ イを使用してモニターした。ここでは、リンパ節及び脾細胞は、それぞれ4及び 10×105個の細胞/100μl/ウエルで96ウエル丸底プレート中で単一の選択したア クチベーター100μl一緒に3日間インキュベートした。続いて、1ウエル当たり 1μCiの3H-チミジンを添加し、そして培養を更に12〜14時間継続した。次いで 、細胞をグラスファイバーフィルター上に回収し、そして取り込まれた3H-チミ ジンはトレース96プログラム及びイノテックβカウンターを使用して計数した。 各 マウスについて刺激剤を有していない対照培地を含め、そしてバックグランドと して使用した。 図7に示した各値は実施例VIIIに記載したようにして計算され、そしてアクチ ベーターなしの培地で得られたバックグランドcpmを差し引いた後の三重測定の 平均値±SDを表す。マウス当たり150μgのIg-PLPでマウスを免疫化した後に同様 の結果が得られた(図示されていない)。 図7A及び7Bは、Ig-PLP1を足蹠並びに四肢基部及び尾部の皮下に注射した とき、PLP1に対する強く特異的なT細胞応答が誘導されたことを明らかに示して いる。反応の強さに関しては個々のマウス間で幾らか変動があったが、各々のリ ンパ節及び脾細胞はPLP1ペプチドによるチャレンジによって顕著な応答が生じた 。興味深いことに、脾臓、即ち、主として全身性抗原をろ過しそして該抗原に応 答する器官に顕著なPLP1特異的応答が検出されている。これらの結果を説明する ために言える1つの可能性は、Ig-PLPは半減期が長いので、循環してリンパ及び 血液循環の両方に到達し、そしてその結果全身及びリンパの両部位で提示される 可能性があったということである。これは、自己免疫疾患の治療方式を実施する とき、潜在的に非常に有益である。マウスのなかには、細胞をPLP2ペプチドを使 用してインビトロで刺激すると増殖を示すものがあることも興味があった。多分 、このペプチドがI-AS様PLP1によって提示されるという事実によって、親和性 の低い細胞が結合して応答を生じさせることができるのであろう。いずれにして も、結果は、Ig-PLP1はT細胞への該ペプチドのインビトロ提示が効率的である ことを示す上記実施例で提供された結果と一致していた。 実施例XI PLP1 に対するT細胞応答のインビボ阻害 上記実施例に見られるように、Ig-PLP1はインビボでT細胞を感作することが でき、そしてアゴニストPLP1ペプチドに暴露されたとき強力な免疫応答を生じさ せる。本実施例では、ペプチドアンタゴニストをキメラ抗体免疫調節剤の形態で 投与するとアゴニストリガンドのエンドサイトーシスによる提示によって生じる 免疫応答を実質的に低下させ得ることが証明される。具体的には、この実施例は Ig-PLP-LRとIg-PLP1の同時投与によってPLP1ペプチドに対する免疫応答が低下 することを証明する。 マウスは、50μgのIg-PLP1と150μgのIg-PLP-LRか又は150μgのIg-Wと組み合 わせた50μgのIg-PLP1のどちらかの混合物で同時免疫化した。特に、3つの群( 1群当たり4匹のマウス)の個々のマウスに、50μg Ig-PLP1と150μg Ig-PLP-L Rの混合物、50μg Ig-PLP1と150μg Ig-Wの混合物又はIg-PLP1と100μg PLP-LR ペプチドの混合物のうちの1つを含有する200μlの混合物(PBS/CFA、1:1 v/v)を使用して実施例Xと同じようにして皮下注射した。脾臓及びリンパ節 T細胞応答は、実施例Xに記載したプロトコールを使用して免疫化後10日目に分 析した。リンパ節細胞は4×105細胞/ウエルで、そして脾細胞は10×105細胞/ウ エルでアッセイした。アゴニストリガンドは15μg/mlのPLP1であった。それぞれ 図8A及び8Bに示されそして下記表2にまとめたリンパ節及び脾細胞に関する 結果は、アゴニストなしの培地で得られたバックグランドcpmを差し引いた後の 三重測定の平均値±SDを表す。 図8A及び8Bは、Ig-PLP1は効率的に提示されそして強いインビボT細胞応 答を誘導した(実施例X)が、マウスに投与した混合物中にIg-PLP-LRを含める ことによって上記応答に拮抗し得たことを示している。実際、マウスにIg-PLP1 をIg-PLP-LRと同時投与したとき、その後の遊離PLP1に対する免疫応答は図8A 及び8Bの右半分に示したように顕著に低下した。Ig-PLP1と野生型抗体であるI g-Wの同時投与がT細胞応答をあまり低下させなかったので、脾臓及びリンパ節 の両組織の低いPLP1応答はPLP-LR拮抗作用の結果であったように思われる。これ らの結果は、細胞応答低下の原因は、Ig-PLP-LRのFcR結合とエンドサイトーシス プロセシングによるPLP-LRの効率的なインビボ提示であることを強く示している 。 更に、すぐ下の表2に示されるように、遊離PLP-LRペプチドをIg-PLP1と同時 投与したとき、PLP1応答が低下した徴候はなかった。この表に示した数字はPPD 特異的増殖に対するPLP1特異的増殖のパーセント値を表しており、そしてこれは 次のようにして得られた。(PLP1刺激で得られた三重測定の平均cpm−三重測定B Gの平均cpm)/(PPDで得られた三重測定の平均cpm−三重測定BGの平均cpm)×10 0。 表2 Ig-PLP-LRはインビトロでT細胞拮抗作用に介在するが遊離PLP-LRペプチドはこ れに介在しない。 上記結果は明らかに、遊離アンタゴニストペプチド、又はアンタゴニストペプ チドを欠いている対照Ig-Wの同時投与は、生じる免疫応答に影響を殆ど有してい ないことを示している。遊離PLP-LRペプチドによる拮抗作用効果がないのは、マ ウスには遊離ペプチド形態のPLP-LRをIg-PLP-LR形態のものより約34倍多く投与 した(150,000Dの分子量に基づくと、マウスに投与された150μgのIg-PLP-LRは 2nmoleのPLP-LRペプチドを含有する1nmoleのIgに相当し、一方100μgの遊離PL P-LRペプチドは、分子量が1,468ダルトンであるので、68nmoleのペプチドに相当 する)ので、注射ペプチドの正味量がより少ないためではなかった。Ig-PLP1T 細胞刺激に拮抗するIg-PLP-LRの潜在能力と合わせても、PLP-LRペプチドがIg-PL PI介在性T細胞活性化を阻害しなかったことは、Ig-PLP-LR介在性インビボ拮抗 作用が効率的な提示に関係しているであろうという考えを支持している。 実施例XII エンドサイトーシスによって提示された アンタゴニストに対するT細胞応答の誘導 上記実施例は、アゴニストリガンドを含むキメラ抗体を投与してインビボで免 疫細胞を感作できることを示している。アンタゴニストを含むキメラ抗体の投与 か、その後のアゴニストリガンドによるチャレンジに対する応答を低下させ得る ことも示された。この実施例では、アンタゴニストの効率的な提示は免疫細胞を インビボで感作し、そしてアゴニストペプチドに対するT細胞の反応に影響を与 え得る強い応答を生じさせ得ることを証明する。具体的には、Ig-PLP1とIg-PLP- LRを同時に注射したマウスはPLP-LRに対して比較的高い増殖応答を発現し、そし てPLP1ペプチドに対しては実際上全く応答を発現しない。 リンパ節及び脾細胞は、Ig-PLP1とIg-PLP-LRの同時投与後に実施例Xに記載し た方法と同じようにして得た。個々のマウスの増殖応答も、15μg/mLの遊離PLP1 ペプチド又はPLP-LRペプチドのどちらかによるインビトロ刺激後に上記実施例に 記載した方法を使用して測定した。リンパ節及び牌細胞を使用したアッセイの結 果をそれぞれ図9A及び9Bに示す。 図9から分かるように、脾臓とリンパ節は共にアンタゴニストPLP-LRに対して 応答を発現したが、PLPアゴニストPLP1には応答を発現しなかった。Ig-PLP-LRを Ig-PLP1と同時投与したとき、Ig-PLP-LRがPLP-LR特異的T細胞を誘導したことが 分かると、これらのPLP-LR特異的T細胞はPLP1特異的T細胞をダウンレギュレー ションすると推量することができる。逆に、遊離PLP-LRペプチドはIg-PLP1と共 に投与したとき、PLP-LR特異的応答を誘導した(図示されていない)が、PLP1に 対する増殖応答の明白な低下はなかった。従って、本実施例に記載したデータは 、遊離ペプチドアンタゴニストよりも、アンタゴニストを含むキメラ抗体を使用 する方が、抗原アゴニストに対する免疫応答を調節するのにはるかに有効である ことを証明している。 更に詳細には、上記の実施例からみて、APC表面でTCRがPLP-LR-I-AS 複合体(即ち、MHC-PLP-LR複合体)に利用されると、T細胞を刺激するとい うよりはむしろこれらに拮抗するように思われる。従って、エンドサイトーシス 液胞内でのIg-PLP-LRの効率的な提示によってかなりのレベルのPLP-LR-I-AS複 合体(アンタゴニスト複合体)の産生が確実になるので、Ig-PLP-LRによる拮抗 作用が生じると思われる。細胞表面の複合体の量はAPCに提供されるIg-PLP-L Rの量に比例する。PLP1刺激をIg-PLP-LRの存在下で実施すると、PLP-LR-I-AS とPLP1-I-ASが共に所定APCの表面に提示され、該表面でIg-PLP-LRの濃度が 上昇することによってより多くのPLP-LR-I-AS複合体が得られる。T細胞が活 性化されるためには概ね3500個のTCRが利用されなければならず、そしてMH CクラスII-ペプチド複合体のうちの所定の複合体が概ね200個のTCRを連続的 に利用することが認められよう。このため、T細胞は、PLP-LR-I-AS複 合体によるTCRの利用がアゴニストPLPI-I-ASによる利用に優先するときに 拮抗されると思われる。全体として、Ig-PLP-LRによってPLP-LRが効率的に負荷 されるため、T細胞拮抗作用はPLP-LR-I-AS複合体によるTCRのより頻繁な 連続的誘発によって達成される。即ち、Ig-PLP-LRの効率的な取り込み及びプロ セシングは単に、余りにも多くの表面MHC複合体がPLP-LRアンタゴニストを提 示するので、PLP1アゴニストリガンドを提示する残存表面複合体がT細胞を活性 化するTCR数を利用できないことを意味しているにすぎない。それ故、T細胞 は、上記アンタゴニストが、MHCクラスII-アゴニスト複合体の活性化濃度が 確実にAPCに到達しない速度で提示されない限り、活性化されないであろう。 実施例XIII Ig-PLP キメラによる免疫化に対するリンパ節増殖応答 増殖応答は、個々のIg-PLPキメラ又はIg-PLP1とIg-PLP-LRの種々の混合物で免 疫化したマウスで測定した。マウスに単独で投与したIg-PLP-LRがT細胞を誘導 したことが観察され、そしてこれらのT細胞は、Ig-PLP1によって誘導されたT 細胞と同様に、PLP1とPLP-LRペプチドの両方と交差反応した。しかしながら、驚 いたことに、上記応答の交差反応性にも拘わらず、上記キメラを一緒に投与した とき、これらは互いに投与量依存的拮抗作用を示し、その結果両者共T細胞応答 のダウンレギュレーションを生じさせた。さらに、Ig-PLP1か又はIg-PLP-LRのど ちらかによって誘導された抗原特異的T細胞はペプチド混合物によるダウンレギ ュレーションに抵抗し、そしてこれら細胞をPLP1とPLP-LRの両方で同時にインビ トロ刺激したとき、有意に増殖した。これらの所見は、アゴニストとアンタゴニ ストのペプチドが共に互いに逆の反応を示し、そして逆平行拮抗作用及びナイー ブT細胞のレベルでの厳格なTCR誘発制御があることを示している。 上記のようにして材料を取得しそしてマウスを免疫化した。増殖応答は上記実 施例VIに記載したようにしてチミジン取り込みで測定した。リンパ節と脾細胞は 、Ig-PLP1とIg-PLP-LRの同時投与後に実施例Xに記載した方法と同じようにして 得た。マウスには、CFA中50μgのIg-PLP1(10A)、50μgのIg-PLP-LR(1 0B)、100μgのPLP1(10C)又は100μgのPLP-LR(10D)を注射し、そし て10日後、リンパ節細胞を、示された遊離ペプチドでインビトロ刺激した。刺激 剤PLP1、PLP-LR及びPLP2は15μg/mlの特定された最適濃度で使用した。 図10A〜10Dに示したデータは、PLP1ペプチドと同様に、Ig-PLP1がPLP1 ペプチドに対する特異的T細胞応答を誘導することを示した。同様に、PLP-LRペ プチドと同様に、Ig-PLP-LRはPLP-LRペプチドに対する特異的T細胞応答を誘導 した。Igキメラ又は遊離ペプチドのどちらも、陰性対照PLP2(これもI-ASクラ スII分子によって提示されるペプチド)と有意に反応するT細胞を誘導しなかっ た。しかしながら、驚いたことに、Ig-PLP1によって誘導される応答はPLP-LRペ プチドと交差反応し、一方Ig-PLP-LRによって誘導される応答はPLP1と交差反応 した。遊離PLP1又は遊離PLP-LRで誘導される応答は交差反応性でなかった。 実施例XIV Ig-PLP1 とIg-PLP-LRによる同時免疫化に対する リンパ節T細胞増殖応答 マウスには示されたキメラを注射し、そして10日後にリンパ節細胞を遊離ペプ チドでインビトロ刺激し、そして上記で詳記した[3H]チミジン取り込みによ って増殖をアッセイした。結果を図11に示す。 Igキメラ標示の前の数字はマウス当たりの注射量μgを示す。刺激剤は5μg/m lのPPD、15μg/mlのPLP1、PLP-LR及びPLP2であった。刺激剤なしでインキュベー トした細胞はバックグランド(BG)として使用した。マウスは個々に試験し、 そして各刺激剤について三重複ウエルをアッセイした。結果を標準化しそして個 々の固有の変動性を排除するために、本発明者は結果を、(試験ペプチドの平均c pm−BGの平均cpm)/(PPDの平均cpm−BGの平均cpm)のようにして評価した相対 的増殖として表した。示された相対的増殖は個々に試験した5匹のマウスの平均 値±SDを表す。種々のマウス群についてPPD刺激で得られた平均cpm±SDは次 のとおりであった。50μg Ig-PLP1:16,413±1330;50μg Ig-PLP-LR:11,224±348 1;50μg Ig-W:11,513±1,572;50μg Ig-PLP1+50μg Ig-PLP-LR:16,817±2,869 ;50μg Ig-PLP1+150μg Ig-PLP-LR:16,156±2006;50μg Ig-PLP1+150μgIg- W:11,699±1,142;50μg Ig-PLP-LR+150μg Ig-W:13,435±1,650;50μg Ig-PLP1 +50μg IgPLP2:10,056±1,407;及び50μg Ig-PLP-LR+50μg Ig-PLP2:10,877± 563。斜め格子付き棒及び平行斜線付き棒はそれぞれPLP1及びPLP-LRに対する増 殖を 示す。PLP2ペプチドに対する増殖は、免疫化混合物中でIg-PLP2を使用した場合 を除いてバックグランドのレベルであった。 図11に見られるように、Ig-PLP1で免疫化した群のマウスから得られたリン パ節T細胞はPLP1及びPLP-LRに対して同等に良好に増殖し、一方Ig-W対照は殆ど 反応しなかった。驚いたことに、PLP-LR応答はバックグランドのレベルであった 。従って、Igキメラに対する応答はPLPL及びPLP-LRペプチド間で交差反応性を共 有しているが、この混合物は追加的応答ではなくてダウンレギュレーションを生 じさせた。事実、これらのデータはIg-PLP1(アゴニスト)とIg-PLP-LR(アンタ ゴニスト)間の逆平行ダウンレギュレーションを示唆している。このダウンレギ ュレーションは、50μg Ig-PLP1と150μg Ig-PLP-LRの混合物を注射したマウス がPLP1に対して応答せず、そしてPLP-LRに対してはIg-PLP1だけを注射したマウ スで観察された値にまで低下した応答を生じさせたので、投与量依存性であるよ うに思われた。 Ig-PLP1とIg-PLP-LR間で観察された反対のダウンレギュレーションに対する1 つの考えられる説明は、クローンの増大には同種ペプチドによる最適の連続的誘 発が必要である(即ち、増大するためには単一のナイーブT細胞上のレセプター の全て又は大部分が1つの型のペプチドを利用しなければならない)ということ である。TCR接触残基に僅かな差異を有するペプチドでナイーブT細胞を同時 刺激して(これはIg-PLP1とIg-PLP-LRの混合物に関わる免疫化中に生じる可能性 がある)もT細胞の増大及びインビトロ増殖を生じさせない。 実施例XV Ig-PLP1 とIg-PLP-LRで同時免疫化したマウスの脾臓増殖T細胞応答 図12に示したように、実施例XIVに記載したマウスから得られた脾細胞を、 三重複ウエルでPLP1(斜め格子付き棒)及びPLP-LR(平行斜線付き棒)を使用し て刺激し、そして上記したようにして増殖を測定した。結果は、PPD刺激による 脾細胞の増殖が最小であったので、リンパ節T細胞で得られたPPDのcpmを使用し て上記したようにして標準化した。示された相対的増殖は個々に試験した5匹の マウスの平均値±SDを表す。 これらのマウスから得られた脾臓T細胞はPLP-LR刺激に応答しなかった。し かしながら、別の群のマウスをIg-PLP-LRで免疫化したとき、リンパ節と脾細胞 は共にPLP1及びPLP-LRペプチドに対して増殖した。脾臓では、リンパ節より増殖 応答ははるかに低かったが、追加的応答はなお観察されなかった。むしろ、Ig-P LP1とIg-PLP-LR間での反対のダウンレギュレーション効果が観察された。 Ig-WとIg-PLP1又はIg-PLP-LRのどちらかとの同時注射はどちらの応答にも影響を 与えなかったが、Ig-PLP2とIg-PLP1との同時注射はIg-PLP1で誘導されたT細胞 のなかでPLP-LRに対する反応性を増加させた。 実施例XVI Ig-PLP1 とIg-PLP-LRで同時免疫化したマウスの脾細胞によるIL-2産生 Ig-PLP1とIg-PLP-LRとの間での反対のダウンレギュレーションを更に研究する ために、脾臓抗原誘導サイトカイン応答を、単一Ig-キメラ又は両Ig-キメラのど ちらかで免疫化した動物で測定した。図13に示されるように、実施例XIVに記 載したマウスから得た牌細胞(1ウエル当たり1×106個)をPLP1(斜め格子付 き棒)及びPLP-LR(平行斜線付き棒)で24時間刺激した。IL-2(13A)、INFγ (13B)及びIL-4(13C)の産生は以下に記載するようにして測定した。 細胞は、96ウエルの丸底フルート中10×105細胞/100μl/ウエルで100μlの刺 激剤を使用して上記したようにして24時間インキュベートした。サイトカイン産 生は、100μlの培養上清液を使用してファーミンゲン(Pharmingen)の指示書に 従ってエリザ法で測定した。捕獲抗体はラット抗マウスIL-2、JES6-IAI2;ラット 抗マウスIL-4、11B11;ラット抗マウスINFγ、R4-6A2;及びラット抗マウスIL-10 、JES5-2A5であった。ビオチン結合抗サイトカイン抗体はラット抗マウスIL-2、 JES6-5H4;ラット抗マウスIL-4、BVD6-24G2;ラット抗マウスINFγ、XMG 12;及び ラット抗マウスIL-10、JES5-16E3であった。OD405は、SOH MAX PRO バージョン1.2.0ソフトウエアを使用してスペック(Spec)340カウンター(Mole cular Devices)で測定した。標準曲線を作成するために、選別した量の組換え マウスIL-2、IL-4、INFγ及びIL-10を全ての実験に含めた。培養上清液中のサイ トカインの濃度は標準曲線の直線部分から外挿して評価した。刺激剤なしでイン キュベートした細胞はバックグランド(BG)として使用した。各マウスは各刺 激剤について三重複ウエルで個々に試験し、そして示されたcpmはBGのcpmを差 し引い た後の平均値±SDを表す。IL-10の産生も測定したが、結果はバックグランド のレベルであった(図示されていない)。 PLP1ペプチドによるインビトロ刺激によって、Ig-PLP1で免疫化したマウスか ら得られるT細胞はIL-2、INFγ及び少量のIL-4を産生した。しかしながら、同 じ細胞をPLP-LRで刺激すると最小限のIL-2が産生されINFγ又はIL-4は検出可能 でなかった。Ig-PLP-LRで免疫化したマウスから得られる脾細胞はPLP1ペプチド での刺激によってIL-2を産生したが、INFγ又はIL-4は全く産生しなかった。更 に、PLP-LRペプチド刺激では最小限のIL-2応答しか生じなかった。等量のIg-PLP I及びIg-PLP-LRで免疫化したマウスでは、サイトカイン産生は全てどちらのペプ チドによる刺激によっても最小限又はバックグランドのレベルにまで減少した。 Ig-Wとどちらかのキメラによる同時免疫化はサイトカイン産生パターンに対して 測定可能な効果を有していなかった。動物に3:1の比率のIg-PLP-LR:Ig-PLP1を 投与したとき、脾臓増殖応答及びIL-2産生はバックグランドのレベルであったが 、PLP-LRペプチドでの刺激によってかなりの量のIL-4及びINFγが明白であった 。従って、過剰のIg-PLP-LRによって、混合されているがPLP-LRが支配的なTC R誘発が導かれ、そしてこの誘発はサイトカインを産生できる細胞は誘導するが 増殖応答は示さない。これらのデータは、Ig-PLP1とIg-PLP-LRは互いに逆の反応 を示し、両T細胞応答のダウンレギュレーションをもたらすことを示した。 実施例XVII PLP1 とPLP-LRペプチドの混合物での インビトロ刺激による抗原経験T細胞の増殖 Ig-PLP1とIg-PLP-LRが、抗原を経験した交差反応性T細胞のレベルで互いに逆 の反応を示し得るかどうかを研究するために、マウスをIg-PLP1又はIg-PLP-LR単 独で免疫化し、そして遊離PLP1とPLP-LRペプチドの種々の混合物でのインビトロ 刺激による増殖T細胞応答を評価した。 更に詳細には、マウス(1群当たり4匹)は、CFA中50μgのIg-PLP1(14 A及び14B)又は50μgのIg-PLP-LR(14C及び14D)で免疫化し、そして 10日後にリンパ節(14A及び14C)及び脾臓(14B及び14D)の細胞を 示されたペプチドで刺激し、そして上記したようにして[3H]チミジン取り込 みをアッセイした。ペプチド標示の前の数字は、インビトロ刺激に使用した量μ g/mlを示す。特異的増殖は、試験試料のcpmからBG(刺激剤なしで細胞をイン キュベートして得られる)の平均cpmを差し引いて評価した。示されたcpmは個々 に試験した4匹のマウスの平均値±SDを表す。NDは測定しなかったことを示 す。 図14A〜14Dに見られるように、Ig-PLP1又はIg-PLP-LRで免疫化したマウ スから得られるリンパ節と脾の細胞は共に、PLPLとPLP-LRの混合物に対して、 単一のペプチドによる刺激に対して同様に、同等に増殖した。上記混合物に対す る増殖応答は、殆どの場合、単一ペプチドの刺激に対する応答より更に高かった 。 実施例XVIII PLP1/PLP-LR ペプチド混合物による インビトロ刺激における抗原経験T細胞によるIL-2産生 Ig-PLP1とIg-PLP-LRが抗原を経験した交差反応性T細胞のレベルで互いに逆の 反応を示し得るかどうかを更に研究するために、マウスをIg-PLP1又はIg-PLP-LR 単独で免疫化し、そして遊離PLP1とPLP-LRペプチドの種々の混合物でのインビト ロ刺激によるサイトカイン応答を評価した。結果を図15A及び15Bに示す。 Ig-PLP1(15A)及びIg-PLP-LR(15B)で免疫化したマウスから得られる 脾細胞を示されたペプチドで刺激し、そして実施例XVIのようにしてエリザ法でI L-2産生を試験した。これらの実験で使用した牌細胞は実施例XVIIに記載したマ ウスから得たものであった。ペプチドの名称の前の数字は刺激に使用した量μg/ mlを表す。示されたμg/mlのIL-2値は個々に試験した4匹のマウスの平均値d: SDを表す。 実施例XVIIで示されたように、IL-2産生はPLP1とPLP-LRの種々の混合物による 脾細胞の刺激では減少しなかった。反対に、ペプチド混合物による刺激の殆どの 場合には、IL-2産生は単一ペプチドによる刺激より多かった。再び、これらの所 見はアゴニストとアンタゴニストのペプチドは共に互いに逆の反応を示し、そし て逆平行拮抗作用及びナイーブT細胞のレベルでの厳格なTCR誘発制御がある ことを示している。 成体の免疫応答を弱めるためにT細胞レセプターアンタゴニスト及びアゴニス トを含む免疫調節剤を使用することに加えて、以下の実施例で証明されるように 、上記と同じ組成物を新生児及び乳児で寛容を誘導するために有利に使用するこ とができる。 実施例XIX 出生時にIg-PLP1を注射したISJL/Jマウス は成体期でのEAEの誘導に抵抗する 本発明の組成物を新生児又は乳児に接種することの利点を証明するために、本 明細書に記載したようにして新生児マウスに免疫調節剤を投与し、そして自己免 疫状態誘導剤に暴露した。 更に詳細には、新生児マウス(1群当たり10匹のマウス)に、誕生後24時間以 内に100μgのアフィニティクロマトグラフィー精製Ig-PLP1又はIg-Wを注射し、 そして7週齢で遊離PLP1ペプチドを使用してEAEを誘導した。マウスは臨床徴 候を次のとおり毎日得点付けした。0、臨床徴候なし;1、尾部緊張の喪失;2、 後肢弱化;3、後肢麻痺;4、前肢麻痺;及び5、瀕死又は死亡。パネルAは全マ ウスの平均臨床スコアを示し、そしてパネルBは生存動物だけの平均得点を示す 。EAEは足跡並びに四肢及び尾部基部に、100μgの遊離PLP1ペプチド及び200 μgの結核菌(M.tubeeculosis)H37Raを含有する200μlのIFA/PBS(1容量 /1容量)溶液を皮下注射して誘導した。6時間後、5×109個の不活性化百日 咳菌(B.pertussis)を静脈内に投与した。48時間後、更に5×109個の不活性化 百日咳菌をマウスに投与した。 図16A及び16Bに見られるように、出生時に生理食塩液中Ig-PLP1を投与 された成体マウスは遊離PLP1ペプチドによるEAE誘導に抵抗した。実際、臨床 スコアは、上記マウスにおいては、PLPペプチドを有さない親の野生型IgであるI g-Wを投与された動物よりはるかに低かった。加えて、Ig-Wを投与されたマウス とは反対に、Ig-PLP1を注射されたマウスは再発を示さなかった(図16B)。 実施例XX 新生児胸腺及び脾臓抗原提示細胞による Ig-PLP1 のインビボ提示 実施例XXで観察された臨床結果を確認するために、サイトカイン応答を新生児 マウスで測定した。得られたデータを図17に示す。 詳細には、新生児(1群当たり5匹のマウス)に、誕生後24時間以内に100μg のIg-PLP1又はIg-Wを注射した。2日後マウスを屠殺し、そして集めた胸腺(1 7A)及び脾臓(17B)の細胞を照射し、そして上記したようにしてPLP1特異 的T細胞ハイブリドーマ4E3の刺激用APCとして使用した。T細胞活性化の尺 度として使用した上清液中のIL-2産生はIL-2依存性HT-2細胞系を使用しヴィ.ケ イ.クックルー等、J.Immunol.153:3326(1994年)(これは本明細書に参照に より含める)によって記載されたようにして測定した。示されたcpmは三重測定の 平均値±SDを表す。 投与されたIg-PLP1は新生児APCによって効率的に提示された。Ig-PLP1を投 与された新生児から得られる胸腺(17A)及び脾臓(17B)のAPCは共に 、外因性抗原を追加しなくてもPLP1ペプチドに特異的なT細胞ハイブリドーマを 活性化した。Ig-Wを投与された新生児から得られるAPCはT細胞ハイブリドー マを活性化できなかった。 実施例XXI 出生時にIg-PLP1を投与された マウスにおける脾臓増殖T細胞応答の低下 上記の2つの実施例で観察された結果を更に確認するために、増殖応答を出生 時に免疫調節剤を接種されたマウスで測定した。結果を図18A及び18Bに示 す。 新生児には、生理食塩液中100μgのIg-PLP1又はIg-Wを誕生後24時間以内に腹 腔内(i.p.)に注射した。マウスが7週齢に達したとき、マウスは、足跡並びに 四肢及び尾部基部の皮下(s.c.)に200μlのCFA/PBS(1容量/1容量)中 100μgの遊離PLP1ペプチドで免疫化した。10日後マウスを屠殺し、そして15μg /mlの遊離PLP1又はPLP2を使用して、(18A)リンパ節(0.4×106細胞/ウエル )及び(18B)脾臓(1×106細胞/ウエル)の細胞をインビトロで4日間刺激 し、陰性対照ペプチドはPLPの脳炎誘発配列178〜191(13)に相当するものであ った。1μCi/ウエルの[3H]チミジンを刺激の最後の14.5時間中に添加し、 そして増殖はイノテックβ-カウンター及びトレース96イノテックプログラムを 使用して測定した。示されたcpmは個々に試験したマウスの三重複ウエルの平均 値±SDを表す。Ig-PLP1及びIg-Wを投与された全てのマウスのリンパ節増殖応 答の平均値cpm±SDはそれぞれ、34,812±7,508及び37,026±10,133であった。 平均脾臓増殖応答はIg-PLP1投与群で3,300±3,400であり、そしてIg-W投与群で1 4,892±4,769であった。 出生日にIg-PLP1を投与されたマウスは、Ig-Wを注射されたマウスと同様に、 これらマウスをCFA中の遊離PLP1ペプチド(18A)で免疫化したとき、PLP1 に対して同等な成体リンパ節T細胞増殖応答を発現した。しかしながら、脾臓増 殖応答はIg-PLP1を投与されたマウス(18B)において顕著に低下したので、 寛容の誘導が示された。どの群のマウスも、PLP1と同様に、I-ASクラスII分子 によって提示される陰性対照ペプチドであるPLP2に対して有意な増殖応答を示さ なかった。 実施例XXII 出生時にIg-PLP1で処理したマウスにおけるリンパ節T細胞逸脱 乳児又は新生児における寛容の誘導を更に証明するために、出生時に免疫調節 剤で免疫化したマウスでサイトカイン応答を測定した。結果を図19A〜19C に示す。 特に、実施例XXIに記載したマウスから得られるリンパ節細胞(4×105細胞/ ウエル)を、遊離PLP1又はPLP2(15μg/ml)を使用してインビトロで24時間刺激 し、そしてIL-2(19A)、IL-4(19B)及びINFγ(19C)の産生を、フ ァーミンゲンの抗サイトカイン抗体対を使用し実施例XVIに記載したようにして ELISPOTで測定した。示された値(スポット形成単位)は個々に試験した 8匹のマウスの平均値±SDを表す。 これらの結果は、サイトカイン産生パターンが新生児マウスの接種によって影 響されたことを示している。出生時にIg-Wを投与されたマウスから得られるリン パ節細胞は、PLP1刺激すると、IL-2を産生したがINFγ又はIL-4は産生しなかっ た。対照的に、Ig-PLP1を投与されたマウスから得られる細胞は逸脱し、そして 代わりにIL-4を産生した。PLP2ペプチドで刺激してもサイトカイン産生は観察さ れなかった。 実施例XXIII 出生日に-Ig-PLP1を注射したマウスから得られる 脾臓T細胞によるINFγ産生の減少 実施例XXIIで得られた結果を確認するために、上記と同じマウスから得られる 脾細胞をサイトカイン応答についてアッセイした。結果を図20A及び20Bに 示す。 更に詳細には、上記マウスから得られる脾細胞(1×106細胞/ウエル)を、遊 離PLP1又はPLP2(15μg/ml)を使用してインビトロで24時間刺激し、そして上清 液中のIL-2(20A)、IL-4(20B)及びINFγ(20C)の産生を、ファー ミンゲンから得られる抗サイトカイン抗体対を使用し製造者の指示に従ってエリ ザ法で測定した(実施例XVI)。示されたサイトカインの量は個々に試験した8 匹のマウスの平均値±SDを表す。 脾臓では、Ig-Wを接種したマウスから得られる細胞はIL-2及びINFγを産生し た。逆に、Ig-PLP1を注射したマウスから得られる細胞はIL-2を産生したが検出 可能なレベルのINFγは産生しなかった。陰性対照、PLP2ペプチドはサイトカイ ン産生を誘導しなかった。 実施例XXIV 出生時にIg-PLP1を注射したマウスにおける 脾臓T細胞増殖のサイトカイン介在性回復 増殖応答が回復可能であることを証明するために、接種された新生児マウスか ら得られた細胞を外因性INFγに暴露した。結果を図21に示す。 特に、出生時に100μgのIg-PLP1を腹腔内注射された新生児群は、実施例XXIの ようにしてCFA中100μgのPLP1ペプチドで免疫化し、そして遊離PLP1ペプチド (15μg/ml)による脾細胞(1×106細胞/ウエル)のインビトロ刺激を、100単 位のINFγ又はIL-12の存在下であることを除いて、実施例XXIに記載したよう にして実施した。各マウスで示されたcpmは三重複ウエルの平均値±SDを表す 。 驚いたことに、出生時にIg-PLP1を投与されたマウスから得られる脾細胞に外 因性INFγを濡加すると増殖応答が回復した。IL-2、即ちINFγの誘導物質(14) も脾臓細胞増殖応答を回復させた。 全体的に、出生時にIg-PLP1を注射されたマウスはリンパ節T細胞逸脱及び異 常なINFγ介在性脾臓アネルギーを発現した。興味深いことに、遊離PLP1ペプチ ドを使用してこれらのマウスにEAEを誘導したとき、これらマウスは軽度の単 相性疾病を発症し、再発はなかった。Igは長い半減期を有しているので、Igに基 づく免疫調節剤は長期間永続すると思われ、その結果免疫抑制因子の連続的且つ 緩慢な放出が生じ、そしてこれは慣用の抗原を有する不完全フロイントアジュバ ントを用いた通常の新生児寛容化方法で生じるものと同じと思われる。従って、 Igで送達すると新生児寛容の誘導においてアジュバントの使用が回避できると思 われる。更に、FcRによる免疫抑制因子のインターナリゼーションとそれに続く エンドサイトーシス経路におけるプロセシングによって、新たに合成されたMH CクラスII分子に接近でき、かなりの量のMHC-免疫抑制因子複合体を産生す ることができる。これらの好ましいパラメーター(即ち、FcR介在性APC活性 化、緩慢なペプチド放出及び効率的なペプチド提示)はリンパ節逸脱及び脾臓ア ネルギーの誘導に寄与すると思われる。成体への本発明開示組成物の投与と同じ ように、アジュバントを使用しない寛容化方法を使用して自己反応性T細胞を沈 静化しそして自己免疫を予防することができる。 本技術分野の熟練者は更に、本発明が、本発明の精神又は主要な特質から離れ ることなく他の特定の形態で実施可能であることを認めるであろう。本発明の上 記の説明は本発明の例示的な実施態様を開示したにすぎないという点で、他の変 形が本発明の範囲内であることが意図されていると理解すべきである。従って、 本発明は、本明細書に詳細に記載されている具体的な実施態様に限定されない。 むしろ、本発明の範囲及び内容を示すものとしては下記請求の範囲を参照すべき である。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】平成10年12月22日(1998.12.22) 【補正内容】 請求の範囲 1.少なくとも1つのFcレセプターリガンドと、T細胞レセプターアンタゴニ スト、T細胞レセプターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択され る少なくとも1つの免疫抑制因子とを含む、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免 疫抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための免疫調節剤。 2.前記免疫抑制因子がペプチドアンタゴニストを含む請求項1に記載の免疫 調節剤。 3.前記ペプチドアンタゴニストが、プロテオリビドタンパク質に対するT細 胞応答を活性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項2に記載の免疫 調節剤。 4.前記の少なくとも1つのFcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定 常領域のドメインの少なくとも一部分を含む請求項1に記載の免疫調節剤。 5.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項1に記載の免疫調節剤。 6.前記免疫調節剤が抗体-抗原複合体を含む請求項1に記載の免疫調節剤。 7.前記免疫調節剤がキメラ抗体である請求項1に記載の免疫調節剤。 8.前記キメラ抗体がT細胞レセプターアンタゴニストを含む請求項7に記載 の免疫調節剤。 9.前記T細胞レセプターアンタゴニストが少なくとも1つの相補性決定領域 内で発現される請求項7に記載の免疫調節剤。 10.請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を含む、脊椎動物の抗原提 示細胞の表面に免疫抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための医薬 組成物。 11.免疫疾患の治療を必要としている患者において該疾患の治療用医薬組成 物を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫調節剤の使用。 12.前記免疫疾患が、自己免疫疾患、アレルギー応答及び移植片拒絶からな る群から選択される疾患を含む請求項11に記載の方法。 13.前記免疫疾患が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、イ ンスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患 を含む請求項12に記載の方法。 14.前記患者が乳児又は新生児である請求項13に記載の方法。 15.T細胞寛容の誘導を必要としている患者においてこの寛容の誘導用医薬 組成物を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の免疫調節剤の使 用。 16.前記T細胞寛容が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、 インスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾 患に関係している請求項15に記載の方法。 17.前記患者が乳児又は新生児である請求項16に記載の方法。 18.患者に、生理学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせて免疫調節 剤を含む治療的に有効な量の医薬組成物を投与することを含み、前記免疫調節剤 は少なくとも1つのFcレセプターリガンドと、T細胞レセプターアンタゴニスト 、T細胞レセプターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択される少 なくとも1つの免疫抑制因子とを含む、免疫疾患の治療方法。 19.前記免疫抑制因子がプロテオリピドタンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項18に記載の方法。 20.前記免疫抑制因子がミエリン塩基性タンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項18に記載の方法。 21.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項18に記載の方法。 22.前記免疫グロブリン分子がヒトIgG分子である請求項21に記載の方法 。 23.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項18に記載の方法。 24.前記免疫調節剤がキメラ抗体を含む請求項23に記載の方法。 25.前記免疫疾患が、自己免疫疾患、アレルギー応答及び移植片拒絶からな る群から選択される疾患を含む請求項18に記載の方法。 26.前記免疫疾患が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、イ ンスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患 を含む請求項25に記載の方法。 27.少なくとも1つのFcレセプターリガンドと、T細胞レセプターアンタゴ ニスト、T細胞レセプターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択さ れる少なくとも1つの免疫抑制因子とを含むポリペプチドをコードするヌタレオ チド配列を含む組換えポリヌクレオチド分子で適当な宿主細胞を形質転換するか 又はトランスフェクションし、 前記細胞が組換えポリヌクレオチド分子を発現する条件下で前記の形質転換又 はトランスフェクションした宿主細胞を培養して、免疫調節剤の少なくとも一部 分を含む前記ポリペプチドを産生させ、 前記免疫調節剤を回収する ことを含む、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免疫抑制因子をエンドサイトーシ スによって提示するための免疫調節剤を製造する方法。 28.前記免疫抑制因子がミエリン塩基性タンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項27に記載の方法。 29.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項27に記載の方法。 30.前記免疫調節剤がキメラ抗体を含む請求項27に記載の方法。 31.前記キメラ抗体が、少なくとも1つの相補性決定領域がT細胞レセプタ ーアンタゴニストで置換されているH鎖を含む請求項30に記載の方法。 32.Fcレセプターリガンドに相当する少なくとも1つのヌクレオチド配列と 、T細胞レセプターアンタゴニスト、T細胞レセプターアゴニスト及びこれらの 組合せからなる群から選択される免疫抑制因子に相当する少なくとも1つのヌク レオチド配列とを含む、ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチド分子 。 33.前記ポリヌクレオチド分子が、免疫グロブリン分子の定常領域の1つの ドメインの少なくとも一部分に相当する配列を含む請求項32に記載のポリヌク レオチド分子。 34.前記免疫グロブリン分子がヒトIgG分子である請求項33に記載のポリ ヌクレオチド分子。 35.前記ポリヌクレオチド分子が、相補性決定領域が少なくとも部分的に欠 失しておりそしてT細胞レセプターアンタゴニストに相当するヌクレオチド配列 で置換されている免疫グロブリンH鎖に相当するヌクレオチド配列をコードする 請求項32に記載のポリヌタレオチド分子。 36.請求項32〜35のいずれか1項に記載の組換えポリヌクレオチド分子 を含む、トランスフェクションされるか又は形質転換された細胞。 37.Fcレセプターを発現する複数の抗原提示細胞を含む培地を提供し、 前記培地を、少なくとも1つのFcレセプターリガンドと、T細胞レセプターア ンタゴニスト、T細胞レセプターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から 選択される少なくとも1つの免疫抑制因子とを有する免疫調節剤並びに適合担体 を含む免疫調節剤含有組成物と組み合わせる ことを含む、免疫抑制因子をインビトロでエンドサイトーシスによって効果的に 提示する方法。 38.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項37に記載の方法。 39.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項37に記載の方法。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 3/10 A61P 17/00 17/00 19/02 19/02 25/28 25/28 37/02 37/02 C12N 1/15 C12N 1/15 1/19 1/19 1/21 1/21 A61K 37/02 5/10 C12N 15/00 A 15/09 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z W

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子 とを含む、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免疫抑制因子をエンドサイトーシス によって提示するための免疫調節剤。 2.前記免疫抑制因子がT細胞レセプターアンタゴニスト、T細胞レセプター アゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の免疫 調節剤。 3.前記免疫抑制因子がペプチドアンタゴニストを含む請求項2に記載の免疫 調節剤。 4.前記ペプチドアンタゴニストが、プロテオリピドタンパク質に対するT細 胞応答を活性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項3に記載の免疫 調節剤。 5.前記の少なくとも1つのFcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定 常領域のドメインの少なくとも一部分を含む請求項1に記載の免疫調節剤。 6.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項1に記載の免疫調節剤。 7.前記免疫調節剤が抗体-抗原複合体を含む請求項1に記載の免疫調節剤。 8.前記免疫調節剤がキメラ抗体である請求項1に記載の免疫調節剤。 9.前記キメラ抗体がT細胞レセプターアンタゴニストを含む請求項8に記載 の免疫調節剤。 10.前記T細胞レセプターアンタゴニストが少なくとも1つの相補性決定領 域内で発現される請求項9に記載の免疫調節剤。 11.請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物を含む、脊椎動物の抗原 提示細胞の表面に免疫抑制因子をエンドサイトーシスによって提示するための医 薬組成物。 12.免疫疾患の治療を必要としている患者において該疾患の治療用医薬組成 物を製造するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の免疫調節剤の使用 。 13.前記免疫疾患が、自己免疫疾患、アレルギー応答及び移植片拒絶からな る群から選択される疾患を含む請求項12に記載の方法。 14.前記免疫疾患が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、イ ンスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大陽炎からなる群から選択される自己免疫疾患 を含む請求項13に記載の方法。 15.前記患者が乳児又は新生児である請求項12に記載の方法。 16.T細胞寛容の誘導を必要としている患者においてこの寛容の誘導用医薬 組成物を製造するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の免疫調節剤の 使用。 17.前記T細胞寛容が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、 インスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾 患に関係している請求項16に記載の方法。 18.前記患者が乳児又は新生児である請求項16に記載の方法。 19.患者に、生理学的に許容可能な担体又は希釈剤と組み合わせて免疫調節 剤を含む治療的に有効な量の医薬組成物を投与することを含み、前記免疫調節剤 は少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因子とを 含む免疫疾患の治療方法。 20.前記免疫抑制因子が、T細胞レセプターアンタゴニスト、T細胞レセプ ターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項19に記載 の方法。 21.前記免疫抑制因子がプロテオリピドタンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項19に記載の方法。 22.前記免疫抑制因子がミエリン塩基性タンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項19に記載の方法。 23.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項19に記載の方法。 24.前記免疫グロブリン分子がヒトIgG分子である請求項23に記載の方法 。 25.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項19に記載の方法。 26.前記免疫調節剤がキメラ抗体を含む請求項25に記載の方法。 27.前記免疫疾患が、自己免疫疾患、アレルギー応答及び移植片拒絶からな る群から選択される疾患を含む請求項19に記載の方法。 28.前記免疫疾患が、多発性硬化症、狼瘡、リウマチ様関節炎、強皮症、イ ンスリン依存性糖尿病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される自己免疫疾患 を含む請求項27に記載の方法。 29.少なくとも1つのFcレセプターリガンドと少なくとも1つの免疫抑制因 子とを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレ オチド分子で適当な宿主細胞を形質転換するか又はトランスフェクションし、 前記細胞が組換えポリヌクレオチド分子を発現する条件下で前記の形質転換又 はトランスフェクションした宿主細胞を培養して、免疫調節剤の少なくとも一部 分を含む前記ポリペプチドを産生させ、 前記免疫調節剤を回収する ことを含む、脊椎動物の抗原提示細胞の表面に免疫抑制因子をエンドサイトーシ スによって提示するための免疫調節剤を製造する方法。 30.前記免疫抑制因子が、T細胞レセプターアンタゴニスト、T細胞レセプ ターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項29に記載 の方法。 31.前記免疫抑制因子がミエリン塩基性タンパク質に対するT細胞応答を活 性化し得るペプチドアゴニストの類似体である請求項29に記載の方法。 32.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項29に記載の方法。 33.前記免疫調節剤がキメラ抗体を含む請求項29に記載の方法。 34.前記キメラ抗体が、少なくとも1つの相補性決定領域がT細胞レセプタ ーアンタゴニストで置換されているH鎖を含む請求項33に記載の方法。 35.Fcレセプターリガンドに相当する少なくとも1つのヌクレオチド配列と 免疫抑制因子に相当する少なくとも1つのヌクレオチド配列とを含む、ポリペプ チドをコードする組換えポリヌクレオチド分子。 36.前記免疫抑制因子が、T細胞レセプターアンタゴニスト、T細胞レセプ ターアゴニスト及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項35に記載 のポリヌクレオチド分子。 37.前記ポリヌクレオチド分子が、免疫グロブリン分子の定常領域の1つの ドメインの少なくとも一部分に相当する配列を含む請求項35に記載のポリヌク レオチド分子。 38.前記免疫グロブリン分子がヒトIgG分子である請求項37に記載のポリ ヌクレオチド分子。 39.前記ポリヌクレオチド分子が、相補性決定領域が少なくとも部分的に欠 失しておりそしてT細胞レセプターアンタゴニストに相当するヌクレオチド配列 で置換されている免疫グロブリンH鎖に相当するヌクレオチド配列をコードする 請求項35に記載のポリヌクレオチド分子。 40.請求項35〜39のいずれか1項に記載の組換えポリヌクレオチド分子 を含む、トランスフェクションされるか又は形質転換された細胞。 41.Fcレセプターを発現する複数の抗原提示細胞を含む培地を提供し、 前記培地を、少なくとも1つのFcレセプターリガンド及び少なくとも1つの免 疫抑制因子を有する免疫調節剤並びに適合担体を含む免疫調節剤含有組成物と組 み合わせる ことを含む、免疫抑制因子をインビトロでエンドサイトーシスによって効果的に 提示する方法。 42.前記Fcレセプターリガンドが免疫グロブリン分子の定常領域の1つのド メインの少なくとも一部分を含む請求項41に記載の方法。 43.前記免疫調節剤がポリペプチドを含む請求項41に記載の方法。
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