JP2001504551A - 修正溶体化熱処理を施されたaa7000系アルミニウム鍛造製品を製造する方法 - Google Patents
修正溶体化熱処理を施されたaa7000系アルミニウム鍛造製品を製造する方法Info
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Abstract
(57)【要約】
2段階の溶体化熱処理シーケンスを含むAA7000系アルミニウム合金の鍛造製品或いはプレートを製造する方法において、アルミニウムプレートは、第1の高温或いは第1の期間に関する温度で第1の溶体化熱処理され、続くより低温或いは第2の期間に関する温度で第2の溶体化熱処理される。2段階の溶体化熱処理シーケンスは、最終アルミニウム鍛造製品或いはプレート製品における剥脱腐食抵抗を改善する。T7751テンパーを有するアルミニウム合金製品を製造する改善されたプロセスも開示される。
Description
【発明の詳細な説明】
修正溶体化熱処理を施されたAA7000系アルミニウム鍛造製品を製造する方
法技術分野
本発明はAA7000系アルミニウムプレート製品のための改良された溶体化
熱処理方法に関し、特に、剥脱腐食抵抗を改良するための、より高い温度溶体化
熱処理第1段階とより低い温度溶体化熱処理第2段階を使用する2段階溶体化熱
処理方法に関する。背景技術
マグネシウム及び銅とともに比較的高い亜鉛を含むアルミニウム工業会(AA
)7000系アルミニウム合金は、商業及び軍事航空機への適用において広く使
用されている。これらの合金は、その高い強度/重量比により所望され、また、
上部翼外板及び隔壁等の臨界負荷構造要素においてしばしば使用されている。こ
れらの適用において、これらの合金は、例えば、剥脱或いは応力腐食割れ等の重
大な腐食を引き起こす環境下におかれる。これらの適用要件によって、これら7
000系アルミニウム合金が優れた腐食抵抗を持つことが望まれる。
この種の合金の腐食抵抗を改良するための従来方法の1つは、時効処理方法を
修正することを目的とする。一般に、890°F(477℃)以上の温度で溶体
化熱処理された後のこれらの合金は、Tテンパー人工時効処理に付されて、機械
的特性及び腐食抵抗特性を増加する。確立された手法が行われると、この材料は
使用不可能なテンパーになると考えられる。この種の時効処理手法の例は、米国
特許第4,828,631号及び4,954,188号、Ponchel他に開示されている。これら特許
において、アルミニウム合金材料が、約265°F(129℃)から290°
F(143℃)の範囲内で約6時間から60時間ピーク強度状態になるまで時効
処理される時効処理手法が開示されている。この時効処理は一般にT6151テ
ンパーとして示されている。
上記Ponchel他の特許は、このような時効処理手法が剥脱腐食抵抗を改良する
と主張しているが、腐食抵抗レベルは依然として、複数の航空機製造業者のより
高い要求を満足させるものではない。特に沿岸・海上環境において、より長い航
空機設計寿命にとっては、前記T6151テンパーが一般に提供する以上の剥脱
腐食抵抗が必要である。
また、AA7150合金とともに使用されるT7751テンパー時効処理方法
が公知である。このテンパーは、米国特許第4,477,292号「Al-Zn-Mg-Cu合金にお
いて高強度及び腐食抵抗を得るための3段階時効処理」1984年10月16日発行;米
国特許第4,832,758号「Al-Zn-Mg-Cu合金において組み合わされた高強度及び腐食
抵抗の製造」1989年5月23日発行;米国特許第4,863,528号「改良された強度及
び腐食特性の組み合わせを有するアルミニウム合金製品及びその製造方法」1989
年9月5日発行;米国特許第5,108,520号「析出硬化合金の熱処理」1992年4月2
8日発行;及び米国特許第5,221,377号「改良された組み合わせ特性を有するアル
ミニウム合金製品」1993年6月22日発行、のうち1つ以上に記載の種類の3段階
人工時効処理手法を使用して製造できる。これら米国特許の各内容は本明細書に
引用して組み込まれている。
上記T7751方法は、少なくとも84ksiの長手方向(L)引張強度、少な
くとも78ksiの降伏強度、及び少なくとも8%の(L)伸長度を有する製品を
提供する。長横断(LT)特性は、少なくとも84ksiの最少引張強度、少なく
とも77ksiの最少降伏強度、8%の最少伸長度である。また、前記製品は、2
5ksiで20日間の乾湿交互浸せき(ASTM手法G44による)とともにAS
TM試験方法G47による応力腐食割れ試験に合格する必要がある。
このため、より厳密な設計基準にもとづいて、特に長期間の航空機操作に関し
て、航空機製造業者により要求される他の機械的及び又は物理的特性を満足させ
ると同時に、改良された剥脱腐食抵抗を奏するアルミニウムプレート材料を提供
することへの必要性が増大している。
本発明は、この必要性に応えるとともに、大きく改良された剥脱腐食抵抗のみ
ならず、要求された基準を満足させまたこの基準を超える機械的及び/又は物理
的特性を備えたAA7000系アルミニウム合金プレートを提供するものである
。発明の開示
従って、本発明の第1の目的は、AA7000系アルミニウム合金プレート製
品の剥脱腐食抵抗を向上する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、改善された剥脱腐食抵抗と所望の機械的及び物理的特性
との両方を有して航空機や類似タイプのアプリケーションにおけるプレート製品
に使用可能なAA7000系アルミニウム合金プレート製品を提供することであ
る。
本発明の更なる目的は、2段階の溶体化熱処理シーケンスを利用して最終プレ
ート製品において改善された剥脱腐食抵抗を提供する方法を提供することである
。
更に別の目的は、T7751テンパーを有するAA7150、AA705X(
“AA7X5X”)製品を生産するための改善された行程を提供することである
。
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明により明らかとなる。
上記目的及び利点の達成のため、本発明は、AA7000系アルミニウム合金
プレート製品の製造について従来技術による方法と比較した改善を提供する。従
来技術では、これらのプレート製品は、AA7000系アルミニウム合金マテリ
アルをプレート製品に鋳造及び成形し、続く溶体化熱処理、急冷却、及び人為的
な時効処理によって製造される。ここに説明する発明によれば、従来技術の溶体
化熱処理行程を、単一の高温による熱処理行程から、プレート或いは他の鍛造製
品がまず高温による溶体化熱処理を施された後続く第2のより低温による溶体化
熱処理を施される2つの或いは2段階の行程に変更される。より詳細には、溶体
化熱処理されるアルミニウムプレート製品は、およそ885°Fと910°Fと
の間(474−488℃)の第1の範囲にある温度にまず加熱されて第1の期間
維持され、前記プレートが825°Fと870°Fとの間(441−466℃)
の第2の範囲にある温度に当てられて第2の期間維持される第2の熱処理ステッ
プが続く。この2段階の熱処理行程は、最終プレート製品における改善された剥
脱腐食抵抗に結果する。冷却水による冷却のような急冷却ステップは、より低温
による熱処理ステップ後だけでなく、前記2つの溶体化熱処理ステップの間に挟
むことができる。
溶体化熱処理シーケンスのうち第2のステップは、前記第1のステップの直後
においても、或いは冷却及び再加熱後においても、プレートを、約825°F(
441℃)で少なくとも15時間加熱するか、約860°F(460℃)で少な
くとも6時問加熱するか、成いは約870°F(466℃)で少なくとも15時
間加熱するのがより好ましい。
2段階溶体化熱処理シーケンスは、同じマテリアルに2段階のシーケンスのう
ち第1のステップのみを行った場合に生成される結晶粒界の沈殿物より大規模な
沈殿物を生成する。より大規模な結晶粒界の沈殿物は、最終プレート製品の剥脱
抵抗に貢献する。
本方法は、AA7150アルミニウム合金、或いは最大0.12のSi,最大
0.15のFe,約1.9から2.5のCu,最大0.01Mn,約2.0から
2.7のMg,最大0.04のCr,約5.9から6.9のZn,最大0.06
のTi,最大0.005のBe,約0.08から0.15のZrを含む重量%組
成を有し、アルミニウムと偶発的な不純物とがバランスしたものを使用して実施
されるのが好ましい。図面の簡単な説明
ここで、本発明に関する図面について説明する。
図1は、本発明による行程を概略示すフローダイヤグラムである。
図2は、本発明による方法に係るランプ溶体化熱処理シーケンス例を示す時間
−温度プロファイルである。
図3は、図2に示すものに関する他の溶体化熱処理シーケンスを示す時間−温
度プロファイルである。好適な実施例の説明
本発明方法によると、2段階の溶体化熱処理シーケンスが、改善された剥脱腐
食抵抗を提供するためにAA7000系のアルミニウム合金プレートに施される
。非常に驚くべきことに、これらのタイプのアルミニウム合金プレートに、2段
階の溶体化熱処理シーケンスを施すと、該アルミニウムプレートは第1の温度に
加熱されて所定期間維持された後、引き続き第2のより低い温度に加熱されて別
の所定時間維持されることにより、剥脱腐食抵抗が大幅に改善される。溶体化熱
処理期間中に第2のより低い温度での維持を行わない1段階の熱処理行程をアル
ミニウム合金に施す従来技術では、最終製品において同等の剥脱腐食抵抗を達成
できなかった。
本発明方法によって証明された改善に加えて、アルミニウム合金は満足しうる
機械的かつ物理的特性と、耐破壊性を示す。
さて、図1において、概要図は、AA7000系のアルミニウム合金をプレー
ト製品とする全行程を概略示す。AA7000系のアルミニウム合金は、まず鋳
造され、次いで従来方法を使用してプレートに加工される。該プレートは、その
後部品に成形することができる。ここで「プレート」という用語は、巻回された
製品と、溶体化熱処理の前に前記巻回された製品から形成された部品との両方を
含む。本発明は、また、鍛造物、押し出し成形品等の別種の加工品の処理にも有
効である。アルミニウム合金は、プレート乃至他の加工品に形成された後、2段
階の溶体化熱処理が行われ、該プレート等が約885−910°F(474−4
88℃)間の第1の温度範囲にある温度に加熱されて所望の期間第1の温度範囲
以内に維持され、約825−870°F(441−466℃)間の第2の温度範
囲にある温度に冷却されて所望の期間第2の温度範囲以内に維持される。
前記溶体化熱処理されたプレートは、その後好ましくは大気乃至低温水によっ
て冷却され、引っ張られて時効処理された後、アルミニウムプレートで従来行わ
れてきたように、特定目的使用のための最終プレート製品の再生が行われる。例
えば、該製品はT7751テンパーを増大するための複数段階の時効処理を施さ
れる。2段階の溶体化熱処理行程の用途は、T7751特性を増大させるための
時効行程ウィンドウを延長できると共に、製品の特性を改善でき、それらのいず
れも、改善と考えられる。
プレート乃至他の加工品が第1の高温に維持され、即ち、溶体化熱処理行程の
第1の高温範囲以内にある時間は、約8時間にまで及ぶことができ、約6時間ま
でが好ましく、約3時間までがより好ましく、該維持時間は少なくとも部分的に
は、選択された前記温度に基づく。910°F(488℃)等の高温が選択され
る場合は、885°F(474℃)等の低温が選択される場合より、短い時間が
要求されることになる。
2段階の溶体化熱処理行程の第2段階については、低温即ち低温範囲以内に維
持される時間は、24時間ほどでよい。以下に詳述するように、好ましい時間範
囲は、約6時間から約15時間である。
プレート乃至他の加工品に適合したどのAA7000系のアルミニウム合金も
、本発明方法によって処理することができる。AA7000系のアルミニウム合
金のうちでは、AA7150合金がより好ましい。変形態様としては、該加工さ
れる合金は、後述する実験で使用される成分を有するようにすることができる。
該合金に対する引き続く時効処理は、周知技術のように変更可能である。AA
7150合金を処理する場合は、T6151テンパーが好ましい。他のT6テン
パーは、T7751等のT7テンパーと同様T651等に利用することができる
。
次に図2及び図3を参照すると、好適な溶体化熱処理行程が示されている。図
2には、図1に示された行程に対応した熱処理行程が開示されている。この図は
また、溶体化熱処理行程が施されるプレートが、本発明の行程前にはF,T61
,W51のテンパーでありうることを明らかにしている。該プレートの本発明方
法を実行する前のテンパーは、本発明の有効性に影響を与えるものではない。し
たがって、本発明方法は、従来方法で処理された場合には不満足な剥脱腐食抵抗
を有した再使用プレートにも利用でき、満足しうる材料となる。この図はまた、
溶体化熱処理行程が施されるプレートが、890°F(477℃)まで急速に立
ち上がり、約3時間該第1の温度に維持された後、860°F(460℃)の第
2溶体化熱処理温度に減少即ち冷却され、該第2温度で約6時間維持され、冷却
水による冷却を行い、人為的な時効処理でT6のテンパーとすることを示してい
る。T7のテンパーとするようにしてもよい。
図1及び図2に示された2段階行程の変形態様として、冷却水による冷却を、
該2段階溶体化熱処理行程の第1段階の後に挟むようにしてもよい。次に図3を
参照すると、該2段階溶体化熱処理シーケンスが、後述する2段階溶体化熱処理
行程の各々に対して、冷却水による冷却を伴うことが示されている。この図に示
すように、T6151乃至Fのテンパーを持つプレートが前記第1の熱処理シー
ケンス用に使用され、次いで冷却水で冷却された後、第2の溶体化熱処理温度ま
で立ち上げられ、引き続き冷却水による冷却と時効処理とによってT6のテンパ
ーとする。後述するように、優れた剥脱腐食抵抗は、図2及び図3に示された溶
体化熱処理シーケンスの両方によって得られる。
前記本発明の熱処理シーケンスによって、予想しない結果が得られることを示
すため、AA7000系アルミニウム合金プレートに対する従来の溶体化熱処理
と本発明の溶体化熱処理シーケンスとを比較する一連の実験を行った。該実験は
、本発明をより詳細に説明するためにあるのであって、本発明の範囲や広さを制
限するものと考えるものではないことは、理解されたい。
実験目的の1つは、任意の初期テンパーを与えたものが本発明の溶体化熱処理
行程を行なったときに、最終的な剥脱腐食抵抗特性が得られるのに、何が影響し
ているかを決定することである。
実験の一部では、0.03Si,0.05Fe,2.34Cu,0.01Mn
,2.01Mg,0.01Cr,6.63Zn,0.03Ti,0.008Va
,0.01Zrからなる重量%組成を有し、アルミニウムニウムと偶発的な不純
物とがバランスしたプレートから、F,W51及びT6151のテンパーを施し
たサンプルが提供された。
上記のように設定された組成を持つサンプルが、890°F(477℃)で3
時間熱処理された後、860°F(460℃)の温度まで減少乃至立ち下げる。
各サンプルは、860°F(460℃)の温度で6,9,15及び24時間維持
される。
これらのサンプルは、その後冷却水で冷却され時効処理によりT5161のテ
ンパーとする。複数の標本が各サンプルに対して準備された。
本熱処理による剥脱腐食抵抗特性を、機械的特性と同時に調査するときに、前
記処理が施された直径0.505インチ(1.28cm)の張力標本が複数個形
成され、縦(L)方向について引張強度、降伏強度、伸張度を得るため試験され
た。
2インチ×4インチ(5.08cm×10.16cm)の複数の剥脱腐食(E
XCO)サンプルが、上記のように設定された各時間試験された。
表1は、上記実験条件下で各々の前記EXCO評価及び質量損失の詳細を示す
。
前記サンプルは、全て試験の前に時効処理によるT61のテンパーを施した。
表1にはまた、従来方法で処理された(標準)T6151のプレートについては
、ECのEXCO評価が示されている。表1ではっきりとわかるように、全ての
初期テンパー及び全ての処理時間を与えたものに対し、EAという優れた剥脱腐
食抵抗評価が得られた。表1は、前記プレートに対し、本発明の2段階の溶体化
熱処理シーケンスを従来の熱処理の代わりに、890°(477℃)以上の温度
で設定された時間行うことに伴って、予想しない結果を示している。この例は、
従来方法で処理されたときに不満足な剥脱腐食抵抗を有するプレートの再使用に
対する本発明の有効性を説明するため提供される。本発明方法は、これ以外では
剥脱腐食抵抗が満たされないのでスクラップされることになるプレートを再生す
ることができ、これにより、明らかな経済的利益を得るものである。
表1
EXCO評価及び算出された質量損失 *ASTM 剥脱基準
表2は、上述した本発明の溶体化熱処理シーケンスを施し、T61のテンパー
に時効処理したサンプルの機械的特性を、標準のT6151のテンパーを持つプ
レートと比較して示す。表2は、本発明方法で製造されたプレートの機械的特性
が、標準のT6151のテンパーを施したプレートにおける機械的特性に対して
わずかに下回ったことを示す。前記Fの初期テンパーを施したものと、前記T6
及びW51の初期テンパーを施したものとの相違は、Fのテンパーを施したプレ
ートは2%伸張度が不足しているのに対し、T6及びW51の初期テンパーを施
したプレートは、各々該伸張度が満たされているからであると、認められる。
表2において、示された時間860°F(460℃)とする第2段階の溶体化
熱処理が、3時間890°F(477℃)とする第1段階の溶体化熱処理に続く
。
表2
機械的特性
第1段階のSHTは、3時間890°F(477℃)とする
上図3に示された溶体化熱処理実験に続いて実験が行われた。これらの試験に
おいて、AA7150アルミニウム合金プレートが、890°F(477℃)で
の6時間2段階溶体化熱処理シーケンスに付された後冷却水により急冷却され、
825°F、860°F及び870°F(441℃、460℃及び466℃)の
それぞれの温度で、また、0、2、3、6、9、15及び24時間の時間増分で
次の溶体化熱処理シーケンスに付された。2段階溶体化熱処理に続いて、冷却水
による急冷却及び270°F(132℃)での16時間の基準T61時効処理実
験更に大気冷却が行われた。この試験作業において、EA剥脱腐食抵抗結果に明
らかなパターンが見られる。例えば、825°F(441℃)で15時間、86
0°F(460℃)で6時間或いは870°F(466℃)で15時間時効処理
された全てのサンプルが、剥脱腐食抵抗に関してEAレーティングを示した。
2つの冷却水冷却段階を使用する改善された剥脱腐食抵抗では、引張強度、降
伏強度及び伸長度に関する機械的特性が商業的に受け入れ可能である。
2つの段階の間に冷却水による急冷却を使用した2段階溶体化熱処理シーケン
スの研究により、より低い温度の第2段階溶体化熱処理を含んだ場合の剥脱腐食
抵抗の予期しない改善が提供されただけではなく、2つの溶体化熱処理間の冷却
水による急冷却が任意であることが立証された。即ち、冷却水による急冷却をせ
ずに単に第2段階溶体化熱処理に立ち下げた時に、EAレーティングが達成され
た。
顕微鏡試験がAA7150プレートについて行われ、2段階溶体化熱処理シー
ケンスが行われたプレートサンプルに見られる優れた剥脱腐食抵抗に寄与する現
象を調べた。
これらの試験の間に、第1のより高い温度の溶体化熱処理及び第2の860°
F(468℃)溶体化熱処理を受けたサンプルが結晶粒界において大きな銅含有
沈殿物(S相)を有することがわかった。890−910°F(477−488
℃)範囲で熱処理されただけのサンプルは、寸法が1から2オーダーだけ小さい
規模の亜鉛含有結晶粒界沈殿物を有していた。これらの結晶粒界沈殿物の寸法及
び作用は、材料の剥脱腐食抵抗に相関するものと考えられた。即ち、より大きな
寸法と高い銅沈殿物を有する溶体化熱処理されたプレートは、亜鉛含有のより小
さい寸法の沈殿物を有する材料と比較した場合、優れた剥脱腐食抵抗を持つ。
より低い温度、例えば、860°F(468℃)の溶体化熱処理の第2段階に
よって、結品晶界におけるS相沈殿物の核形成及び成長が引き起こされる。少な
くとも2つのメカニズムがこの改善を生じさせると思われる。第1に、S相沈殿
物は結晶粒界及び溶質の周囲マトリックスを減少するとともに、合金の腐食抵抗
特性を強めることができる。S相沈殿物は、マトリックスに対する結晶粒界のポ
テンシャルを変化させるとともに、結晶粒界からマトリックスへの腐食モードを
シフトできる。これらの試験中に、同様の組成物が冷却水による急冷却を伴う2
段階溶体化熱処理のテストをされた。
破壊靱性が2段階溶体化熱処理によって悪影響を受けるかどうかを決定する実
験もまた行われた。
これらの試験結果は、L−T方向における22ksi(インチ)1/2の最小破壊靱性
がT−L方向における20ksi(インチ)1/2の最小破壊靱性と一致することを示し
た。具体的には、実質的に上記最少要件であるL−T方向における32ksi(イン
チ)1/2とT−L方向における36ksi(インチ)1/2との平均値K1cが達成された
。試験された合金組成物は、顕微鏡検査に関して上記に記載されたものである。
本発明による他の例において、前記例において使用されたサンプルの組成と同
等の組成を有するAA7150合金は、まず、本発明による2段階溶体化熱処理
を受けたのち、T7751テンパーまたは米国特許第3,305,410号「アルミニウ
ムの熱処理」1967年2月21日発行に記載された種類の多段階時効処理を受ける。
この米国特許の内容は本明細書において引用により組み込まれている。具体的に
は、W51テンパーの合金のサンプルが890°F(477℃)まで制御された
速度で加熱され、3時間保持され、860°F(468℃)のより低い温度まで
冷却され、前記温度で6時間保持された後、冷却水により急冷却された。急冷却
されたサンプルは、その後、多段階人工時効処理を受ける。具体的には、サンプ
ルは、例えば、340°Fから360°F(171−182℃)の間、より好ま
しくは約345°Fと約355°F(174−179℃)の範囲内で、約360
°F(182℃)より下の温度に制御された速度で加熱される。サンプルは約7
0分と200分の間の期間、第1の温度内で保持された。その後、サンプルは大
気冷却された後、約300°F(149℃)より低い第2の時効処理温度に制御
された速度で加熱された。或いは、サンプルは、第1の温度範囲から250°F
(121℃)の第2の温度範囲内の温度に直接冷却してもよい。製品は、10時
間以上の適宜な時間第2の温度範囲内に保持された後、大気冷却される。製品が
150分より短い期間第1段階で時効処理される場合、T7751鍛造製品の規
格と一致するか又は規格を超える。本発明の2段階溶体化熱処理により、時効処
理試験トレンランスが厳密ではなく、より高い最大引張強度及び降伏強度が可能
な、T7751テンパー製品を製造する方法が改良される。
このように、本発明は、ここに記載の本発明の各々全ての目的を実行する好ま
しい実施例に関して述べるとともに、改良された剥脱腐食抵抗を有するAA70
00系合金を製造するための新規な改良された方法および本方法により製造され
る製品を提供するものである。
本発明の開示から種々の変化、修正及び変更が、本発明の精神及び範囲から逸
脱しない限り、当業者により予測できる。従って、本発明は添付の請求の範囲に
より限定されるものではない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C22F 1/00 682 C22F 1/00 682
691 691B
691C
(72)発明者 アーチバルド,キム,ハーバート
アメリカ合衆国、バージニア 23832、チ
ェスターフィールド、サラタ コート
5406
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.AA7000系合金を提供し、前記合金を鍛造製品に加工し、前記鍛造製品 を溶体化熱処理し、前記鍛造製品を急冷却及び時効処理するAA7000系アル ミニウム合金の鍛造製品の製造方法において、 前記方法は2段階で溶体化熱処理するステップを含んで構成され、 第1の段階は、前記鍛造製品を約885°から910°F(474−488℃ )の第1の温度範囲にある温度まで加熱し、前記鍛造製品を前記第1の温度範囲 内に少なくとも約3時間維持することを含んで構成され、 第2の段階は、前記鍛造製品を約825°から870°F(441−466℃ )の第2の温度範囲にある温度まで加熱し、前記鍛造製品を前記第2の温度範囲 内に少なくとも約6時間維持することを含んで構成され、 前記2段階の溶体化熱処理の使用が前記鍛造製品の剥脱腐食抵抗を改善するこ とを特徴とする方法。 2.AA7000系合金を提供し、前記合金をプレートに加工し、前記プレート を溶体化熱処理し、前記プレートを急冷却及び時効処理するAA7000系アル ミニウム合金のプレートの製造方法において、 前記方法は2段階で溶体化熱処理するステップを含んで構成され、 第1の段階は、前記プレートを約885°から910°F(477−488℃ )の第1の温度範囲にある温度まで加熱し、前記プレートを前記第1の温度範囲 内に少なくとも約3時間維持することを含んで構成され、 第2の段階は、前記プレートを約825°から870°F(441−466℃ )の第2の温度範囲にある温度まで加熱し、前記プレートを前記第2の温度範囲 内に少なくとも約6時間維持することを含んで構成され、 前記2段階の溶体化熱処理の使用が前記プレートの剥脱腐食抵抗を改善するこ とを特徴とする方法。 3.AA7000系アルミニウム合金は、AA7150アルミニウム合金である ことを特徴とする請求項1記載の方法。 4.前記第2の段階は、前記鍛造製品を、約825°F(441℃)、約860 °F(460℃)、或いは約870°F(466℃)のいずれかに加熱すること を含んで構成されることを特徴とする請求項1記載の方法。 5.前記プレートは、前記第1の温度範囲内に少なくとも8時間維持されること を特徴とする請求項2記載の方法。 6.前記2段階の溶体化熱処理は、単一のステップでプレートを溶体化熱処理す る間に生成される結晶粒界沈殿物より大規模な結晶粒界沈殿物を有するプレート を提供することを特徴とする請求項2記載の方法。 7.前記プレートは、前記第2の温度範囲内に約15時間以内の間維持されるこ とを特徴とする請求項2記載の方法。 8.前記プレートは、前記第2の温度範囲内の維持後に冷却水による急冷却をさ れることを特徴とする請求項2記載の方法。 9.前記プレートは、前記第2の段階前に冷却水による急冷却をされることを特 徴とする請求項8記載の方法。 10.前記大規模な結晶粒界沈殿物は、主として銅を含有することを特徴とする 請求項6記載の方法。 11.前記鍛造製品は、前記第1の温度範囲内に約3時間から約8時間維持され 、前記第2の温度範囲内に約6時間から約24時間維持されることを特徴とする 請求項1記載の方法。 12.請求項1記載の行程によって製造されるプレート。 13.前記アルミニウム合金は、AA7150アルミニウム合金であることを特 徴とする請求項12記載の方法。 14.AA7000系合金を提供し、前記合金を鍛造製品に加工し、前記鍛造製 品を溶体化熱処理し、前記鍛造製品を急冷却し、前記鍛造製品を時効処理する複 数のステップでT7751テンパーを有する製品を製造するAA7000系アル ミニウム合金の鍛造製品をT7751テンパーを有して製造する方法において、 前記方法は2段階で前記鍛造製品を溶体化熱処理するステップを含んで構成さ れ、 第1の段階は、前記鍛造製品を約885°から910°F(474−488℃ )の第1の温度範囲にある温度まで加熱し、前記鍛造製品を前記第1の温度範囲 内に少なくとも約3時間維持することを含んで構成され、 第2の段階は、前記鍛造製品を約825°から870°F(441−466℃ )の第2の温度範囲にある温度まで加熱し、前記鍛造製品を前記第2の温度範囲 内に少なくとも約6時間維持することを含んで構成され、 前記2段階の熱処理が、T7751テンパーを有する製品の製造に関して改善 された行程を提供することを特徴とする方法。
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