JP2001356095A - 超高速時間分解蛍光分光方法 - Google Patents
超高速時間分解蛍光分光方法Info
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Abstract
を一度に、かつ高い時間分解能で取得することができる
超高速時間分解蛍光分光方法を提供する。 【解決手段】 超高速時間分解蛍光分光方法において、
電子応答に起因する光カー効果による光カーシャッター
を構成し、高繰り返しのフェムト秒パルスレーザー光を
ゲート光1としてシャッターを開閉し、別途レーザー光
あるいは波長変換された光を試料4に照射し、放出され
る蛍光5を前記シャッターで時間的に切り出した後、分
光しマルチチャンネル光検出器によりスペクトルを取得
する。
Description
間分解蛍光分光方法に関し、特に、広い波長域の蛍光ス
ペクトルを短時間で一括取得する方法に関するものであ
る。
例えば、以下に示されるような文献があった。
rmann/B.Wilhelmi著、小林孝嘉訳、共
立出版(1991),p.108. (2)“Ultrafast emission sp
ectroscopyin the ultravio
let by time−gated upconve
rsion M.A.Kahlow,W.Jarzeb
a,T.P.Dubruil,and P.F.Bar
bara”,Rev.Sci.Instrum.,59
(1988)1098−1109. 近年、フェムト秒チタンサファイアレーザーの登場によ
り、超高速レーザーを用いた測定が、広く一般的に行わ
れるようになった。100フェムト秒程度のパルス幅で
尖頭値出力が100kWを超えるレーザー発振器を基
に、増幅する等して、非線形光学効果を容易に利用する
ことが可能となった。先進的な手法がレーザーの専門家
の手を離れ、大いに利用される段階に入ったと言える。
レーザーの進歩は、測定技術の発展に繋がる。強化され
たレーザー性能を正しく評価し、適用法を吟味すること
により、過去の技術を、強力な手段として再生すること
ができる。本発明は、光カー効果を利用した時間分解蛍
光測定を改良し、品質の高い時間分解スペクトルを測定
することに成功した。
解蛍光測定法として標準的なものとして採用されてきた
のは、図6に示すように、和(差)周波光混合法による
ものであり、非線形光学結晶103を用いて、発光10
1の成分の内、特定の周波数成分(ν1 )とゲート光1
02の周波数成分ν2 を混合し、信号光104となるν
1 +ν2 成分を発生させる。
周波数を変換して信号光104を得る。ゲート光102
が非線形光学結晶103中に存在するときにのみ、この
変換は生じるため、ゲート光102としてパルス光を用
いることにより、時間分解発光測定を行うことができ
る。
は、各周波数、すなわち波長ごとに位相整合条件を満た
すよう、非線形光学結晶103と光線のなす角を調整し
なければならない。まず、測定したい波長に合わせて、
非線形光学結晶103の角度などを調整し、ゲート光1
02の光路長を変えることで遅延時間を変化させつつ、
各時刻において信号を検出し、時間プロファイルを取得
する。次に、測定波長を変えて調整し、同様の測定を行
い、これを、測定したい波長領域に渡って繰り返す。そ
の後、各波長における時間原点や変換効率に対する補正
を行って、間接的に時間分解スペクトルを得るという複
雑な作業が必要である。
にレーザーパルスを用いて超高速のシャッターが構成で
きれば、そのシャッターを通過した光を分光測定すれば
よい。分光測定自体に関しては、CCDを用いてスペク
トル全体を一挙に取得する方法が確立されているから、
これを組み合わせれば、効果的な手法になる。
して、光カー効果を用いたカーゲート法がある。光カー
効果とは、光電場に励起されて媒質の屈折率が変化する
現象のことで、パルスレーザーの出現後すぐに、時間分
解測定に利用されてきた。
の偏光子203,204の間に、カー媒質205を挟ん
で配置し、カー媒質205上で、ゲート光202と蛍光
201を重ねる。ゲート光202の偏光方向を蛍光に対
して角度を持たせ、ゲート光202により誘起されたカ
ー媒質205における過渡的な屈折率の異方性を利用し
て透過する蛍光の偏光状態を変化させる。誘起された偏
光の変化に応じて、蛍光201は後方の偏光子206を
通過することができる。蛍光201に対するゲート光2
02の相対的カー媒質到着時刻を変化させることによ
り、各時刻における蛍光スペクトル、すなわち、時間分
解スペクトルを取得する。すなわちゲートパルスを用い
たシャッターを構成するわけである。
た和(差)周波光混合法は、測定の調整が煩雑なこと
と、測定したい波長のみの時間変化で、広い波長領域に
亘ると繰り返し測定が必要で長時間を要する。
を用いた方法では、カー媒質は二硫化炭素などの液体で
あった。そのカー応答には分子配向による遅い応答が存
在する。しかし、以前はレーザー自体のパルス幅がピコ
秒台のものが主であり、システム全体の時間分解能の観
点からは問題にはならなかった。つまり、カー物質とし
て液体の二硫化炭素で分子応答のため時間分解能は高々
1psである。フェムト秒域のパルスを容易に発生する
レーザーの出現により、高い時間分解能の時間分解分光
への光カー効果への適用が可能になると、光学ガラスの
電子応答に起因するカー効果を利用した実験が行われ
た。この電子応答は原理的には、可視および赤外部の光
パルスに対して、即時的応答を示す。しかし、さらにこ
れを蛍光分光へ適用するためには、時間的に切り出され
た蛍光が微弱なものとなるため、高効率化を図るととも
に、ゲート光により発光することのないカー媒質を見出
すことが必要であった。
スレーザーをゲート光として用い、パルスの時間幅が狭
く、ピーク値を大きくし、一方、高効率のゲート光によ
る発光の少ないカー媒体を用いることで、従来の測定に
比較して一桁以上測定時間を短縮して信号対雑音比の高
いデータを取得するようにする。
で、広い波長域の微弱蛍光の時間分解スペクトルを一度
に、かつ高い時間分解能で取得することができる超高速
時間分解蛍光分光方法を提供することを目的とする。
成するために、 〔1〕超高速時間分解蛍光分光方法において、電子応答
起源の光カー効果による光カーシャッターを構成し、高
繰り返しのフェムト秒パルスレーザー光をゲート光とし
てシャッターを開閉し、別途レーザー光又は波長変換さ
れた光を試料に照射し、放出される蛍光を前記シャッタ
ーで時間的に切り出した後、分光しマルチチャンネル光
検出器によりスペクトルを取得することを特徴とする。
光分光方法において、前記シャッター部は偏光軸の直交
した2枚の偏光子の間にカー媒質を挟んで配置し、前記
カー媒質上でゲート光と蛍光を重ねることを特徴とす
る。
光分光方法において、前記カー媒質は高い3次の非線形
分極率を持ち、励起蛍光の少ないものを用いることを特
徴とする。
光分光方法において、前記カー媒質は特重フリントガラ
スを用いることを特徴とする。
時間分解蛍光分光方法において、前記試料はZnテトラ
フェニルポルフィリンのエタノール溶液であることを特
徴とする。
時間分解蛍光分光方法において、前記試料はβカロチン
のヘキサン溶液であることを特徴とする。
時間分解蛍光分光方法において、前記試料はマラカイト
グリーンのエタノール溶液であることを特徴とする。
の超高速時間分解蛍光分光方法において、前記試料を4
5分でデータの一括取得を行うことを特徴とする。
参照しながら説明する。
解蛍光分光の測定装置の構成図である。
アレーザー(Mira900;米国コヒーレント社製)
をシード光として、再生増幅器(RegA9000;米
国コヒーレント社)により増幅した光(パルス幅150
フェムト秒、繰り返し200kHz、波長830nm)
を光源として、その一部をゲート光として用い、残りを
第2高調波発生結晶(BBO結晶0.3mm厚)により
415nmに変換し、これを試料の励起光として用い
た。
mmのレンズ3により、試料4上に集光した。試料4と
しては、Znテトラフェニルポルフィリンのエタノール
溶液、βカロチンのヘキサン溶液、マラカイトグリーン
のエタノール溶液等をガラスセル中に流して、これを用
いた。
の放物面鏡6により受けてコリメートし、もう一つの放
物面鏡7でカー媒質である特重フリントガラス(SFS
1)9上に、偏光子(45°)8を介して試料4上の蛍
光スポットを結像させ、それをさらに、光ファイバー1
4に入射させるように、検光子(−45°)11、レン
ズ12、フィルタ13からなるリレー光学系10を配置
した。光ファイバー14は27.5cmの分光器(Ac
ton社製)15に取り付けられており、分光された光
は、出射面のCCD(Prnceton Instru
ments LN/CCD−1024/EEV)16上
に結像される。まず、偏光軸を直交させた偏光子8と検
光子11をSFS1ガラス9の前後に配置し、検光子1
1より先には蛍光を通過させないようにしておく。
し、焦点距離150mmのレンズ18により集光して、
偏光子(0°)19を介してSFS1ガラス9上の蛍光
スポットに重ねた。ゲート光1の偏光は、蛍光に対し4
5°傾けておいた。ゲートパルスが通過している間はカ
ー媒質であるSFS1ガラス9の屈折率に異方性が生
じ、通過する蛍光の偏光状態が変化し、これにより検光
子11を通過する偏光成分が生じる。すなわち、ゲート
パルスに時間的に一致する蛍光成分が切り出される。遅
延ステージ17を移動させ、ゲート時刻を変化させて、
時間分解蛍光スペクトルを取得した。なお、遅延ステー
ジ17は、制御装置(PC)21からの制御信号による
微小駆動装置22(ステップモータ、PZT装置など)
の駆動により遅延ステージ17を移動させることができ
る。
フィリンのエタノール溶液に対して得られた結果を図2
に示す。
で移動させながら、時間分解スペクトルを測定した。バ
ックグラウンドとして、SFS1ガラス9のゲート光二
光子励起による発光と偏光子8と検光子11対からの漏
れ光が存在するが、信号光が現れる前の時間領域で測定
を行って、これを同定し、各時刻のデータから差し引い
たものを図2に示した。それぞれの時刻におけるスペク
トルは30秒間のデータ積算を行っている。すべてのス
ペクトル取得に要した時間は、わずか45分であった。
ピークは、Znテトラフェニルポルフィリンの第2励起
状態(S2 )からの発光で、2ps程度で減衰している
のが見て取れる。一方、480nm近傍に見られるピー
クは主に溶媒のエタノールの分子内振動モードに起因す
ると考えられるラマン散乱で、その時間プロファイルは
励起パルス2に追従している。時間分解能は約300f
sであった。
化を通じてダイナミクスを直接測定することが挙げられ
る。その達成のためには、蛍光スペクトルの波長成分ご
とに、試料4からカー媒質9までの光路差が異なること
が問題になる。結像における色収差の問題が除かれて
も、光路上にある素子固有の屈折率の色分散を反映し、
光路差の波長依存性が残り、これが、時間原点が波長に
依存する結果をもたらす。そこで、分散を与える光学素
子を極力除いたり、薄くしたりした。最後に残ったの
が、試料4、試料セル、フィルム偏光子とカー媒質であ
る。その効果を、さらに広い波長領域で検討するため
に、β−カロチンのヘキサン溶液を用いた測定例(発光
について等高線表示したもの)を図3に示す。測定デー
タを波長−時間平面上に等高線として示したものであ
る。β−カロチンの蛍光寿命は200fs以下であるこ
とが知られており、固有のダイナミクスをここでは考え
ないことにすると稜線が、各波長における時間原点を示
していると考えられる。この稜線を眺めると、短波長側
で遅れが見られるが、波長差100nmに対し、およそ
300fsで、時間分解能と同程度にまで抑制されてい
ることがわかる。この短波長での遅れは、いずれの素子
材料の短波長になるほど屈折率が高くなることを反映し
ていると考えられる。
液に対する実験結果を図4に示す。この図において、強
度は対数表示で描いた。マラカイトグリーンの蛍光は、
第1励起状態からの(S1 →S0 )遷移に相当する成分
に関して、粘性に依存して寿命が変化し、低粘度液体中
では短寿命蛍光を発することが良く知られている。ここ
では、第2励起状態へ光励起した。500nm付近に見
られる非常に速い減衰を示す、第2励起状態からの(S
2 →S0 )発光と、650nmあたりに見られる遅い減
衰を伴う第1励起状態からの成分の両方が観測されてい
る。
高線表示したものを図5に示す。
において得られた時間原点を示す線(等高線図における
稜線)を重ねて示す。マラカイトグリーンの稜線を時間
原点と比較して眺めると長波長に行くほど時間的に遅く
なっていることが判る。詳しい検討が必要ではあるが、
励起状態における超高速の緩和過程を反映した蛍光のダ
イナミックストークスシフトを、直接捉えた初めての例
であると考えている。
ることが可能であり、ダイナミックスを全体像として補
捉する上で大いに威力を発揮すると考えられる。現在、
色素蛋白や半導体材料などへ適用することも試みてい
る。
のではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能
であり、それらを本発明の範囲から排除するものではな
い。
よれば、以下のような効果を奏することができる。
ペクトルを一度に、かつ高い時間分解能で取得すること
ができる。
期過程の解明には、分子・電子の高速時間変化を追跡す
る必要があり、それに応えることができる。
おいてダイナミックスを全体像として補足する上で大き
な威力を発揮できる。
の測定装置の構成図である。
のエタノール溶液に対して得られた実験結果を示す図で
ある。
た測定例を示す図である。
溶液に対する実験結果を示す図である。
溶液に対する500nm付近の発光について等高線表示
した図である。
レーザーを用いた時間分解蛍光測定法を示す模式図であ
る。
を用いた時間分解蛍光測定法を示す模式図である。
Claims (8)
- 【請求項1】(a)電子応答起源の光カー効果による光
カーシャッターを構成し、(b)高繰り返しのフェムト
秒パルスレーザー光をゲート光としてシャッターを開閉
し、別途レーザー光又は波長変換された光を試料に照射
し、放出される蛍光を前記シャッターで時間的に切り出
した後、分光しマルチチャンネル光検出器によりスペク
トルを取得することを特徴とする超高速時間分解蛍光分
光方法。 - 【請求項2】 請求項1記載の超高速時間分解蛍光分光
方法において、前記シャッター部は偏光軸の直交した2
枚の偏光子の間にカー媒質を挟んで配置し、前記カー媒
質上でゲート光と蛍光を重ねることを特徴とする超高速
時間分解蛍光分光方法。 - 【請求項3】 請求項2記載の超高速時間分解蛍光分光
方法において、前記カー媒質は高い3次の非線形分極率
を持ち、励起蛍光の少ないものを用いることを特徴とす
る超高速時間分解蛍光分光方法。 - 【請求項4】 請求項3記載の超高速時間分解蛍光分光
方法において、前記カー媒質は特重フリントガラスを用
いることを特徴とする超高速時間分解蛍光分光方法。 - 【請求項5】 請求項1又は2記載の超高速時間分解蛍
光分光方法において、前記試料はZnテトラフェニルポ
ルフィリンのエタノール溶液であることを特徴とする超
高速時間分解蛍光分光方法。 - 【請求項6】 請求項1又は2記載の超高速時間分解蛍
光分光方法において、前記試料はβカロチンのヘキサン
溶液であることを特徴とする超高速時間分解蛍光分光方
法。 - 【請求項7】 請求項1又は2記載の超高速時間分解蛍
光分光方法において、前記試料はマラカイトグリーンの
エタノール溶液であることを特徴とする超高速時間分解
蛍光分光方法。 - 【請求項8】 請求項5、6又は7記載の超高速時間分
解蛍光分光方法において、前記試料を45分でデータの
一括取得を行うことを特徴とする超高速時間分解蛍光分
光方法。
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