JP2001342891A - 燃料供給量制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】従来物理的な封印作業により行われていた、内
燃機関の最大燃料供給量の設定をコンピュータ上で合理
的に実行する。最大燃料供給量の設定操作に関する作業
工数を小さくするとともに、認定工場以外で最大燃料供
給量に係る制御定数を勝手に変更することができないよ
うにする。 【解決手段】内燃機関の燃料供給量を制御するプログラ
ム演算回路に設けたインターフェースに、内燃機関の製
造組み立ての最終工程で利用される試験調整装置を外部
装置として接続する。その外部装置から入力されたパス
ワードと、あらかじめそのプログラム演算回路に設定し
てあるパスワードとを照合し、この照合が成立するとき
にかぎり上記制御定数の変更設定を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の燃料供
給量を制御する装置の改良に関する。本発明は、アクセ
ル開度が最大に操作されたときの燃料供給量である最大
燃料供給量を燃料噴射量制御装置のプログラム演算回路
（コンピュータ）に書込むための改良に関する。本発明
は、ディーゼル機関について実施するために開発された
装置であるが、広く内燃機関に利用することができる。

【０００２】

【従来の技術】ディーゼル機関の燃料噴射量制御装置
は、アクセル開度および機関の負荷に応じて燃料噴射量
を制御するように構成されている。近年は燃料噴射量制
御装置はプログラム演算回路を含む構成が広く用いら
れ、アクセル開度や機関の負荷だけでなく、吸気温度そ
の他の条件にしたがって巧みに制御されるようになった
（特開平１１−１４１３７３号公報参照）。

【０００３】一般にディーゼル機関では、そのアクセル
開度が最大位置に操作されたときにも、異常な黒煙の発
生や異常な振動などが発生することがないように、最大
燃料噴射量が一定値に制限されるように構成されてい
る。工業製品としてのディーゼル機関が、環境汚染に対
する基準を満足するためにも、最大燃料噴射量を一定値
に制限することは重要である。一方、工業的にディーゼ
ル機関を製造すると、製造ばらつきが発生するから、こ
の最大燃料噴射量の設定を設計にしたがって一律に実行
することは適当でない。このため製造後の試験に際し
て、最大燃料噴射量を製品毎に個別に設定することがふ
るくから行われている。

【０００４】従来から、燃料噴射量の操作最大位置を機
械的に規制する制限ボルトを設け、製造後の試験でこの
ボルトの装着位置の調節を行い、調節後にはユーザの操
作によりこのボルト位置の変更が簡単にできないように
封印する方法がとられている（特開平１０−２７４０５
８号公報参照）。また、近年は上述のようにプログラム
演算回路が利用される装置では、最大燃料噴射量の設定
を可変に行うために、数種類の異なる抵抗器が接続され
たプラグを用意しておき、製造後の試験ではこのプラグ
を差し替えながら最適な一つを選択し装着し、その後は
これを簡単に交換することができないように封印する方
法も行われている。これはガソリンエンジンについても
同様である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このような封印などの
操作を行うことは、製造試験の工数を大きくする欠点が
ある。また、すでに出荷してユーザに渡った内燃機関に
ついて、大規模な修理を行うことになった場合などに、
この封印を破壊して再度最大燃料噴射量の調節設定を行
うことが必要になることがある。また、封印によりこの
調節設定点を保護する方法では、ユーザが封印を故意に
破壊して、標準仕様から外れた最大燃料噴射量の調節設
定を行い、設計された性能を越えて、あるいは許容され
ない黒煙を発生させるような機関の運転を行うことも考
えられる。

【０００６】本発明はこのような背景に行われたもので
あって、封印の設定や破壊などを配慮する必要がなく最
大燃料供給量の調節設定を行うことができる装置を提供
することを目的とする。本発明は、内燃機関の製造に際
して、あるいは内燃機関の大規模な修理に際して発生す
る、最大燃料供給量の調節設定の作業工数を小さくする
ことを目的とする。本発明は、ユーザが勝手に最大燃料
供給量の設定変更を行い、設計仕様を越える性能で内燃
機関を運転したり、多量の黒煙を排出するような運転を
することが不可能な装置を提供することを目的とする。
本発明は、本来的に内燃機関の製造業者が管理すべき最
大燃料供給量の設定および変更について、内燃機関の製
造業者がそのビジネスとして、内燃機関の修理保守のた
めの指定工場やユーザの末端まで適正に管理することが
できるシステムを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、アクセル開度
が機構的に制限される最大位置に操作されたときの最大
燃料供給量を外部入力にしたがってプログラムソフトウ
エアにより可変に設定できるように構成しておき、しか
も燃料供給量制御装置の制御回路となるプログラム演算
回路にあらかじめパスワードを設定しておき、外部から
正当なパスワードが入力されたときに、前記最大燃料供
給量の設定変更が可能なように構成することを最大の特
徴とする。

【０００８】すなわち本発明は、プログラム演算回路
（１）を備え、アクセル情報（２）を入力として内燃機
関（３）の燃料供給量制御信号（４）を発生する燃料供
給量制御装置において、前記プログラム演算回路（１）
は、外部装置（５）を接続するためのインターフェース
（６）と、アクセル開度が最大に操作されたときの燃料
供給量である最大燃料供給量に係る制御定数を保持する
メモリ（７）と、このメモリ（７）に保持された前記制
御定数を前記インターフェース（６）を介して入力する
信号にしたがって書替える手段とを備え、さらにこのプ
ログラム演算回路（１）は、前記インターフェース
（６）を介して入力されるパスワードがあらかじめ前記
メモリ（７）に保持されたパスワードと一致するときに
前記書替える手段を有効にする手段を備えたことを特徴
とする。

【０００９】上記括弧内の数字はあとから説明する実施
例図面の参照数字である。これは、本発明の構成を理解
しやすいように付記するものであって、本発明の構成を
実施例の構成に限定して理解するためのものではない。

【００１０】ここで、パスワードとは、キーパッドから
操作によりその都度入力される一連の数字や文字に限ら
ず、プログラム演算回路のメモリにあらかじめ設定され
たディジタル符号と、このプログラム演算回路に外部か
らインターフェースを介して与えられるディジタル符号
との論理的な照合を伴うさまざまな形態のものを含むも
のである。

【００１１】この構成により、パスワードの設定された
特定の外部装置がインターフェースに接続された場合、
あるいはそのインターフェースへのパスワードの入力方
法およびそのパスワードを知っている者のみが、この燃
料供給量制御装置の最大燃料供給量の書替えを行うこと
ができることになる。

【００１２】内燃機関の製造工程では、部品としての燃
料供給量制御装置にあらかじめこのパスワードを設定す
るとともに、最大燃料供給量に係る制御定数として、任
意の初期値（「０」も初期値）を書き込んでおくことに
より、組み立て製造後の最初の運転試験に際して、上記
インターフェースに接続される試験調整装置から、パス
ワードとともに与えられる最大燃料供給量に係る制御定
数を書替え設定することができる。これは従来例工程
で、複数のプラグのうちの最適の一つを選びこれを装置
に差し込み封印する操作に相当する。

【００１３】いったん出荷した後の内燃機関の修理また
は試験の工程で、最大燃料噴射量に係る制御定数を変更
する必要がある場合には、正当なパスワードが設定され
た特定の外部装置を利用する、あるいは正当なパスワー
ドを知っている者が操作によりインターフェースからパ
スワードを入力する、などの方法により、正当にオーソ
ライズされた者のみが前記制御定数を書替えることがで
きることになる。

【００１４】このパスワードは、燃料供給量制御装置の
修理調整のときに、インターフェースに接続される試験
調整装置に設定されたその装置を有効にするための一般
的なパスワードを設ける場合には、このパスワードと共
通にすることもできるが、この一般的なパスワードとは
別に設けた最大燃料供給量の書替えを行うための特定の
あるいは専用のパスワードとすることが望ましい。すな
わち最大燃料供給量の書替を行うときには、すでに入力
した一般的なパスワードとは別のパスワードを入力する
ことが必要であるように構成する。これにより、最大燃
料供給量の書替えを行うための特定のパスワードは、試
験調整装置を使用するためのパスワードとは別に管理す
ることが可能になり、製造業者（エンジンメーカ）が最
大燃料供給量の設定および書替えをユーザ末端まで適正
に管理することができるようになる。

【００１５】この特定のパスワードは、特定の試験調整
装置のみに、あるいは試験調整装置に装着して使用する
特定のメモリ装置のみに入力設定しておき、この特定の
試験調整装置あるいは特性のメモリ装置は、限られた者
のみが使用し、勝手に悪用されないように管理する取扱
いとすることができる。この場合には、この特定のパス
ワードは製品の機種または仕様ごとに異なる値とするこ
とができる。

【００１６】販売後の製品管理に必要がある場合には、
この特定のパスワードを製品の機種や仕様により異なる
ものとするだけでなく、製造番号に対応させて個々の製
品に対応して異なるパスワードとすることができる。そ
の場合には、そのパスワードを製造業者が管理すること
により、製品の販売後も製造業者が個々の製品について
適正に追跡管理するようなビジネス・システムを構築す
ることができる。

【００１７】

【発明の実施の形態】（第一実施例）図１は本発明実施
例のシステム全体の構成を説明する図である。この実施
例はディーゼル機関について実施したものである。アク
セルペダル８の踏みしろを示すアクセル情報２は、プロ
グラム演算回路１に取込まれる。プログラム演算回路１
はこのアクセル情報２にしたがって、ディーゼル機関３
に燃料供給量制御情報４を送出する。ディーゼル機関３
ではこの燃料供給量制御情報４にしたがって、燃料噴射
ポンプ９に供給される燃料流量が加減される。プログラ
ム演算回路１には、外部装置５を接続するためのインタ
ーフェース６が設けられている。このインターフェース
６は、ディーゼル機関の製造組み立て完了時およびディ
ーゼル機関の保守調整時その他に、試験調節装置などを
接続するためのものであり、このインターフェース６は
通常のディーゼル機関運転時には開放状態として、別に
用意されたメクラ蓋をかぶせておき使用することができ
ないようになっている。

【００１８】ここで本発明の特徴とするところは、この
外部装置５を利用して、プログラム演算回路１に制御定
数を設定するための構成にある。すなわちこの設定すべ
き制御定数の一つとして、アクセルペダル８が最大踏込
状態に操作されたときの最大燃料供給量がある。この最
大燃料供給量は、個々のディーゼル機関の製造ばらつき
に対応して、組み立て製造の完了時に、あるいは大規模
な修理調整が行われた後に、ディーゼル機関の動作状態
を監視しながら個別に最適値が設定される。この最大燃
料供給量は、いったん設定が行われた後はユーザが自分
の好みなどに応じて変更することを禁止しなければなら
ない。これにより、設計仕様を越える条件でディーゼル
機関が運転され、異常な振動を発生させたり、排気に異
常な黒煙を生じさせたりすることがないように管理する
ことになる。これが適正に管理されることがディーゼル
機関メーカの製品保証の条件にもなる。このため、プロ
グラム演算回路１の内部メモリ７には、このプログラム
演算回路１が部品として供給されるときに、適用される
ディーゼル機関の設計仕様にしたがって特定のパスワー
ドが書き込み設定されている。

【００１９】図２は前記外部装置５の実施例外観図であ
る。この装置は、ディーゼル機関の製造組み立ての最終
工程で使用される試験調整装置である。これは手のひら
で握り使用することができる大きさに構成され、試験調
整の作業者は左手でこの装置を持ち、その画面を見なが
ら、試験調整の対象であるディーゼル機関のプログラム
演算装置を順次必要なモードに転換しながら試験調整を
実行する。この外部装置５にはカードスロットが形成さ
れていて、ここにメモリカード１０を挿入装着すること
ができる。このメモリカード１０には、試験調整の対象
となるディーゼル機関の仕様に合わせて、試験調整に必
要なパラメタが記録されている。

【００２０】ここで本発明の特徴である最大燃料供給量
の最適値設定のための操作を説明すると、インターフェ
ース６に外部装置５を接続し、この外部装置５を操作し
て最大燃料供給量書替えモードを選択する。このとき、
外部装置５からインターフェース６を介して特定のパス
ワードを入力し、この特定のパスワードがあらかじめプ
ログラム演算回路１の内部メモリ７に記録されているパ
スワードと照合される。これが一致した状態にあること
を条件に、この書替えモードが有効になる。

【００２１】このパスワードは、数バイトのディジタル
文字列で構成され、ディーゼル機関の設計仕様、ディー
ゼル機関が自動車用であるときには車種別の仕様、その
他にしたがって区別できるように異なる構成のものが選
定されている。さらに具体的にパスワードの入力操作を
説明すると、外部装置５を操作して最大燃料供給量設定
のモードを選択すると、この外部装置５の画面にパスワ
ードの入力を促す画面が表示される。この画面にはアル
ファベット２６文字が表示され、カーソルを移動させな
がら、順次５文字ないし８文字のパスワードに相当する
文字を選択しエンターキーを操作することにより入力す
る。そして入力されたパスワードが、あらかじめプログ
ラム演算回路１のメモリ７に記録されているパスワード
と一致するときに、はじめてこの最大燃料供給量設定モ
ードが有効になる。図３は、プログラム演算回路１が、
最大燃料供給量に係る制御定数を書き替えるためのモー
ドに移行するときの動作を説明するフローチャートであ
る。

【００２２】パスワードは、ディーゼル機関のメーカが
設定することになるが、その管理はきわめて重要であ
る。特定のオーソライズされた修理工場などで利用する
ことが可能なように管理されなければならないが、この
パスワードの利用については、プログラム演算装置１の
内部に利用された都度その履歴を記録するように構成す
ることができる。

【００２３】（第二実施例）図４はパスワード入力につ
いて第二の実施例を説明するためのフローチャートであ
る。この第二の実施例は、上で説明したパスワードを外
部装置５に装着するメモリカード１０にあらかじめ設定
しておくものである。すなわち、この第二の実施例で
は、外部装置にパスワード入力を促す表示が現れると、
「メモリカードにあらかじめ記録されたパスワードを利
用する」旨の選択を入力することにより、メモリカード
１０に記録されたパスワードがプログラム演算回路１に
入力される。これが正しいパスワードであればただちに
最大燃料供給量に係る制御定数の設定に移ることができ
る。

【００２４】これは、ディーゼル機関の製造ラインの最
終工程で、大量の試験調整を行う場合に、試験調整の作
業者がそのつどパスワードを入力するための作業工数を
小さくするためのものである。また、このように構成す
ることにより、ディーゼル機関の仕様に合わせて選択す
るメモリカードを取り違える危険を回避することができ
る。このようにメモリカードにパスワードを記録する場
合には、メモリカードの管理を厳重に行うことが必要で
ある。

【００２５】

【発明の効果】以上説明したように、従来例装置のよう
に、封印の設定や破壊などを配慮する必要がなく最大燃
料供給量の調節設定を行うことができる。また、本発明
により内燃機関製造に際して、あるいは内燃機関の大規
模な修理に際して発生する、最大燃料供給量の調節設定
の作業工数を小さくすることができる。さらに本発明に
より、ユーザが勝手に最大燃料供給量の設定変更を行
い、設計仕様を越える性能で機関を運転したり、多量の
黒煙を排出するような運転をすることを防止することが
できる。本発明により、内燃機関の製造業者がそのビジ
ネスとして、個別の製品に係る最大燃料供給量の設定お
よび変更について、内燃機関の修理保守のための指定工
場やユーザの末端までにわたり、適正に管理することが
できるシステムを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例装置の全体構成図。

【図２】外部装置の実施例外観図。

【図３】本発明実施例装置のプログラム演算回路の要部
フローチャート。

【図４】第二の実施例装置のプログラム演算回路の要部
フローチャート。

【符号の説明】

１ プログラム演算回路 ２ アクセル情報 ３ ディーゼル機関 ４ 燃料供給量制御情報 ５ 外部装置 ６ インターフェース ７ メモリ ８ アクセルペダル ９ 燃料噴射ポンプ １０ メモリカード

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 3G084 AA01 BA13 DA10 DA14 DA21 DA22 EA08 EB02 EB06 FA10 3G301 HA02 JA15 JA17 JA24 MA15 NB04 NB20 NC01 NC02 PF03Z

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】プログラム演算回路を備え、アクセル情報
   を入力として内燃機関の燃料供給量制御信号を発生する
   燃料供給量制御装置において、 前記プログラム演算回路は、外部装置を接続するための
   インターフェースと、アクセル開度が最大に操作された
   ときの燃料供給量である最大燃料供給量に係る制御定数
   を保持するメモリと、このメモリに保持された前記制御
   定数を前記インターフェースを介して入力する信号にし
   たがって書替える手段と、前記インターフェースを介し
   て入力されるパスワードがあらかじめ前記メモリに保持
   されたパスワードと一致するときに前記書替える手段を
   有効にする手段とを備えたことを特徴とする燃料供給量
   制御装置。
2. 【請求項２】前記外部装置は、内燃機関の試験およびま
   たは調整時に前記インターフェースに一時的に接続され
   る試験調整装置である請求項１記載の燃料供給量制御装
   置。
3. 【請求項３】前記パスワードは前記外部装置から操作に
   より入力される請求項２記載の燃料供給量制御装置。
4. 【請求項４】前記パスワードは前記試験調整装置に装着
   されたメモリにあらかじめ書込まれ、前記プログラム演
   算回路は前記書替える手段を設定するモードが指示され
   たときに前記インターフェースを介してそのメモリに書
   込まれたパスワードを読込む手段を含む請求項２記載の
   燃料供給量御装置。