JP2001328946A - 免疫不全ウイルスワクチン - Google Patents

免疫不全ウイルスワクチン

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JP2001328946A
JP2001328946A JP2000152794A JP2000152794A JP2001328946A JP 2001328946 A JP2001328946 A JP 2001328946A JP 2000152794 A JP2000152794 A JP 2000152794A JP 2000152794 A JP2000152794 A JP 2000152794A JP 2001328946 A JP2001328946 A JP 2001328946A
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Japan
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virus
shiv
monkeys
pathogenic
inoculated
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JP2000152794A
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Mitsuo Honda
三男 本多
Yasushi Ami
康至 網
Masanori Hayamizu
正憲 速水
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IYAKUHIN FUKUSAYOU HIGAI KYUUS
National Institute of Infectious Diseases
Iyakuhin Fukusayou Higai Kyuusai Kenkyu Shinko Chosa Kiko
Original Assignee
IYAKUHIN FUKUSAYOU HIGAI KYUUS
National Institute of Infectious Diseases
Iyakuhin Fukusayou Higai Kyuusai Kenkyu Shinko Chosa Kiko
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 持続的なワクチン効果を有し、接種したウイ
ルスの病原性の復帰もなく安全性の高い、ヒト免疫不全
ウイルスワクチンを提供することを課題とする。 【解決手段】弱毒生サル/ヒト免疫不全ウイルスである
SHIV-NM-3nが、接種された個体の免疫組識を破壊するこ
となく、異種病原性ウイルスに対する持続的な免疫防御
を誘導することができ、免疫不全ウイルスワクチンとし
て極めて有効かつ安全であることを見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト免疫不全ウイ
ルスとサル免疫不全ウイルスのキメラウイルスを有効成
分とするヒト免疫不全ウイルスワクチンに関する。
【0002】
【従来の技術】弱毒HIV株の開発を目的とする最近の研
究には、ウイルスの複数の付属遺伝子の除去による病原
性の低い弱毒HIV株の開発、薬剤マーカーを含むウイル
スなどの調製による安全性の高い株の開発などがあり、
これらは弱毒ワクチンの開発戦略に一定の貢献をもたら
すと考えられる。弱毒生ワクチンの有効性は、これまで
野生型病原体によって引き起こされる種々のウイルス性
疾患や細菌性疾患の予防に広く用いることによって示さ
れてきた。そのワクチンの方向性は、HIVの増幅に関す
る修飾遺伝子を分子生物学的に削除して、ウイルスを弱
毒化する方向性である。例えば、サルのnefを削除した
ウイルスが作製され、その免疫によってSIVのみなら
ず、SHIVにも応用されることが明らかとなった(Danie
l,M.D.et al.(1992) Science, 258: 1938)。その後、
生ワクチンに防御免疫効果が明らかにされ、生ワクチン
は、HIVのワクチンとして最も効果的なものであると考
えられるに至った。
【0003】しかし、生ワクチンには、安全性の面で問
題があり、その点を解決するために、削除する遺伝子を
広げnef、vprとNREを欠損させた遺伝子を用いてSIVのキ
メラウイルスSIV3が作製された(Wyand,M. S.et al.(19
96) J. Virol. 70: 3724-3733)。これらのウイルスはS
IVのウイルスチャレンジを完全に防御することができ
る。しかし、1997年のRuprechtらの論文(Baba,T.W.et
al.(1999) Nature Medicine, 5: 194-201)により、こ
のキメラウイルスがチャレンジによって、病原性が回復
してくることが明らかになった。しかも、ウイルスは遺
伝子の欠損が保たれた状態か進行した状態で回収されて
いることから、欠損した部分が元に戻り病原性が復帰し
たのでは無く、サルに適合して病原性を獲得したものと
思われる。これらの結果からキメラウイルスの生ワクチ
ンへの応用においては、病原性の復帰という安全性の観
点からみるだけでもヒトへの投与は難しいと判断され、
生ワクチンのヒトへの投与は遂に断念されてしまった。
【0004】一方、本発明者等は、これまでに、HIV-NL
432のenv遺伝子全体を有し、カニクイザルを全身感染さ
せるSIVmac239のvprおよび/またはnef遺伝子が欠失し
たヒト免疫不全ウイルス(SHIV)SHIV-NM-3(Shibata,
R.et al.(1991) J. Virol. 65: 3514-3520)、SHIV-NM-
3n(Igarashi,T.et al.(1994) AIDS Res. Hum. Retrovi
ruses, 10: 1021-1029)およびSHIV-NM3rN(Igarashi,
T.et al.(1997) J. Gen.Virol. 78: 985)を作製した。
SHIV-NM-3およびSHIV-NM-3nには複製能が極めて低いウ
イルスという特徴があり、SHIV-NM-3またはSHIV-NM-3n
の事前接種によってSHIV-NM-3rNの同種感染は阻害され
た(Igarashi,T.et al.(1997) J. Gen. Virol. 78: 98
5)。しかし、非病原性SHIVに以前に感染したマカクザ
ルは病原性SIVの膣内投与に対する防御を示すことをMil
lerらが報告した(Miller,C.J.et al.(1998) J. Virol.
72: 3248-3258)。その一方で、非病原性SHIVに事前感
染したマカク属サルでSIV感染に対する有効な防御が得
られなかったという報告をした(Letvin, N. L.et al.
(1995) J. Virol. 69: 4569)ため、SHIVによる防御の
有効性に関しては議論がある。
【0005】このように免疫不全ウイルスワクチンに関
しては、いまだ持続的効果や安全性の面で実用に耐えう
るワクチンの開発に成功していないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、持続的
なワクチン効果を有し、接種したウイルスの病原性の復
帰もなく安全性の高い、免疫不全ウイルスワクチンを提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく、弱毒生サル/ヒト免疫不全ウイルスであ
るSHIV-NM-3nに着目し、そのワクチン効果および安全性
につき鋭意研究を行なった。
【0008】SHIV-NM-3nに関しては、既にカニクイザル
への接種により、SHIV-NM-3rNの同種感染に対する防御
が生じることが報告されているが(F. Igarashiら、AID
S Res. Hum. Retro Viruses、10:1021〜1029、199
4)、これは何らSHIV-NM-3nのワクチン効果を示すもの
ではない。本発明者等は、同種感染させたカニクイザル
へ、大量の異種SHIV-NMウイルスをさらに投与した。こ
のカニクイザルには、全身感染に対する防御が認められ
た。さらに、HIV-89.6のエンベロープ遺伝子を含む1.2
×10 TCID50の病原性SHIVをサルに重感染させた。弱
毒ウイルスを接種したサルでは2頭とも、病原性SHIVを
注射した対照サルとは異なり、ウイルス投与後のPBMCお
よびリンパ組織におけるCD4陽性Tリンパ球の減少が完全
に阻害された。弱毒ウイルスをあらかじめ接種したサル
では、病原性ウイルス投与後のp27抗原量および血漿中
ウイルス量の完全阻害と細胞関連ウイルス量の抑制が認
められた。興味深いことに、サルの脾臓からはプロウイ
ルス1μg当たり1コピー未満の病原性SHIVが検出された
が、血漿中にウイルスは検出されず、ウイルス投与8カ
月後にも臓器構造は維持されており、SHIV-NM-3nの接種
によってサルで病原性ウイルスの複製抑制が誘導された
ことが示唆された。ワクチン処置を受けたサルは2頭と
もSHIV-MN、病原性SHIVならびにHIV-MNに対する高い中
和力価を示し、高力価のナチュラルキラー活性を示した
が、HIV Env特異的CTL活性は極めて低かった。
【0009】このように、弱毒SHIV-NM-3nは殺菌性免疫
を誘導することはできないが、組織破壊を引き起こさず
にウイルス血症およびCD4陽性細胞の減少を阻害した。
非病原性ウイルスをあらかじめ接種したサルにおける病
原性ウイルス投与後のCD4陽性細胞欠乏の阻害には、SIV
p27に対するヘルパーT細胞の増殖性応答の維持が関係
していた。さらに、非病原性ウイルスを接種したサルで
は、PBMCにおけるCD28陽性細胞の減少、CD95陽性細胞の
増加、in vitroアポトーシスの増強がいずれも阻害され
た。このように、本発明者等は、非病原性SHIV-NM-3n
が、接種された個体内において異種病原性ウイルスに対
する防御を誘導することができ、しかも、その接種によ
り該個体内の免疫組識の破壊も生じず安全性が高いこと
を示した。
【0010】即ち、本発明者等は、その危険性ゆえに実
用化が断念されていたキメラウイルスワクチンにおい
て、遂に効果の持続性および安全性の面の実用に耐えう
るキメラウイルスワクチンを開発することに成功し、本
発明を完成するに至った。
【0011】従って、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス
とサル免疫不全ウイルスのキメラウイルスを有効成分と
する免疫不全ウイルスワクチンに関し、より詳しくは、
(1) ヒト免疫不全ウイルスとサル免疫不全ウイルス
のキメラウイルスを有効成分とする、ヒトまたはサルの
免疫不全ウイルスに対するワクチン、(2) 接種した
個体に対し少なくとも5年以上の防御免疫能を付与す
る、(1)に記載のワクチン、(3) 接種した個体内
で少なくとも5年以上キメラウイルスの病原性が回復し
ない、(1)に記載のワクチン、(4) キメラウイル
スが下記(a)および(b)の要素を含むゲノムを有す
る、(1)に記載のワクチン、 (a)ヒト免疫不全ウイルスのenv、rev (b)サル免疫不全ウイルスのgag、pol (5) キメラウイルスがヒト免疫不全ウイルスのnef
を有する、あるいは有しない(4)に記載のワクチン、
および(6) キメラウイルスが LTRのU3領域およびサ
ル免疫不全ウイルスのLTRのRおよびU5領域を有する、あ
るいは有しない(5)に記載のワクチン、を提供するも
のである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、ヒト免疫不全ウイルス
とサル免疫不全ウイルスのキメラウイルスを有効成分と
する免疫不全ウイルスワクチンを提供する。ワクチンの
有効成分であるヒト免疫不全ウイルスとしては、好まし
くはHIV-1が、サル免疫不全ウイルスとしては、好まし
くはSIVmacが、それぞれ挙げられるが、キメラウイルス
の由来は、これらに制限されない。キメラウイルスとし
ては、サル免疫不全ウイルスを基礎にその一部の遺伝子
をヒト免疫不全ウイルスの遺伝子と入替えたものであっ
てもよく、また、ヒト免疫不全ウイルスを基礎にその一
部の遺伝子をサル免疫不全ウイルスの遺伝子と入替えた
ものであってもよい。好適なキメラウイルスとしては、
ヒト免疫不全ウイルスのenv、revとサル免疫不全ウイル
スのgag、polを有するキメラウイルス、例えば、ヒト免
疫不全ウイルスのenv、tat、rev、vpu、およびサル免疫
不全ウイルスのgag、pol、vif、vpxを有するキメラウイ
ルス(例えば、SHIV-NM3n、SHIV-NM3rNなど)が挙げら
れる。ヒトに接種する場合には、サル免疫不全ウイルス
のenv、revとヒト免疫不全ウイルスのgag、polを有する
キメラウイルス、例えば、サル免疫不全ウイルスのen
v、tat、rev、vpu、およびヒト免疫不全ウイルスのga
g、pol、vif、vpxを有するキメラウイルスも有効である
と考えられる。
【0013】キメラウイルスは、当業者に公知の遺伝子
組換え技術等を利用して構築することができる。例え
ば、SHIV-NM3の構築については、文献(Igarashi.t.et
al,(1994) AIDS RESARCH AND HUMAN RETROVIRUSES,Volu
me10,Number8,1021-1029)を参照のこと。調製したキメ
ラウイルスは低温(例えば、-130度)にて保存すること
ができる。
【0014】本発明のワクチンは、好ましくは、接種し
た個体に対し少なくとも5年以上の防御免疫能を付与す
るワクチンである。また、本発明のワクチンは、好まし
くは、接種した個体内で少なくとも5年以上キメラウイ
ルスの病原性が回復しないワクチンである。
【0015】本発明のワクチンの成分は、キメラウイル
ス以外に、例えば、生理食塩水や安定剤(例えば、ゼラ
チンなど)が含まれていてもよい。ワクチンの個体への
投与は、例えば、皮下投与(例えば、大腿内側への皮下
投与)や静脈投与(例えば、経静脈への投与)で行なう
ことができる。投与量は、患者の年齢、体重、症状など
の諸要因により変動し得るが、一般的には、205TCID50
から103.5TCID50程度であると考えられる。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではな
い。
【0017】なお、本実施例において用いたカニクイザ
ル(Macaca fascicularis)は、国立感染症研究所(NII
D、日本)の施設内動物管理・使用指針に準拠して、国
立感染症研究所の筑波霊長類センター(筑波、茨城県、
日本)で飼育されたものである。本研究は、動物BL3実
験に関する施設内委員会の承認を得た上で、世界保健機
構のサル用BL3施設に関するバイオセーフティー実験手
順に明記された規定に従って、NIID村山分所(武蔵村
山、東京都、日本)で実施した。本研究に用いたサルは
いずれも病原体をもたず、CD4陽性細胞の減少をもたら
す既知のサル・レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよ
び細菌感染が存在しないことも確認した。
【0018】また、弱毒生SHIV-NM3nは、京都大学ウイ
ルス研究所(京都府、日本)のM. Hayami氏に寄贈して
いただいた(Igarashi, T. et al.(1994) AIDS Res.Hu
m.Retroviruses 10, 1021-1029)。貯蔵液は50%培養細
胞感染量(TCID50)にして1ml当たり1×103.5単位を
含んでおり、このウイルスをカニクイザル2頭に接種し
た。病原性SHIV-89.6および非病原性SHIV-MNの接種用ウ
イルス貯蔵液はいずれも1ml当たり2.4×10TCID50
含んでおり(Lu, Y. et al.(1996) J. Acquired Immune
Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 12:
99-106)、これをそのまま感染実験に用いた。SHIVに感
染したサルのPBMCにおけるウイルス量は、PBMCを106
から始めて徐々に希釈し、これを24穴プレート中で1ウ
ェル当たり1×10個のM8166細胞とともに共培養するこ
とによって測定した。各ウェルを細胞変性効果に関して
検査し、上清中のウイルス産生をSIV Gag p27抗原ELISA
(Beckman Coulter Co., Hialeah、FL)によって測定し
た。分離したウイルスは、正常サル由来のCon A活性化P
BMC中またはM8166細胞株の細胞中で増殖させた。ウイル
スの量はp27 ELISAにより測定した。無細胞ウイルス貯
蔵液を-130℃で保存した。
【0019】実施例に用いたマウスmAbの種類は、以下
の各因子に対するmAbにFITCまたはフィコエルトリン(P
E)を結合させたものである:サル/ヒトCD4(Nu-TH/
I;ニチレイ、東京都、日本)、CD8(Nu-TS/C;ニ
チレイ)、CD28(KOLT-2, ニチレイ)およびCD95(DX
2;Pharmingen San Diego、CA)。
【0020】本実施例のフローサイトメトリーによる細
胞表現抗原の分析におけるFITCおよびPEの発光波長はそ
れぞれ520nmおよび565nmであった。CD4、CD8、CD28およ
びCD95の各抗原をそれぞれのmAbsで染色した。細胞を洗
った上で、これらのmAbsとともにインキュベートした。
染色用緩衝液で3回洗った後に、各標識試料の細胞5×10
個を、488nmに設定したアルゴンレーザーを装着したF
ACS Calibur(flectonDickinson San Joys、CA)によ
り、Cell Questソフトウエア(Becton Dickinson)を用
いて分析した(Yoshino,N.et al.(2000) Biochem. Biop
hys. Res. Commun. 263: 868-874)。
【0021】本実施例の統計分析は、Studentのt検定を
用いて幾何平均±SDを算出した。有意水準はp<0.05と
定義した。
【0022】[実施例1] 弱毒ワクチンSHIV-NM-3n 本研究に用いたウイルス接種の履歴およびSHIVのゲノム
構造の概要をそれぞれ図1および図2に示す。SHIV-NM3n
の防御能を明確にするため、本発明者らはまず、ウイル
ス投与時点でのウイルス特異的免疫応答を検討した。そ
の結果、SHIV-NM-3nの免疫処置を受けたサル2頭は、ウ
イルス接種から183週後にも、抗gp160抗体、抗gp120抗
体、抗gp41抗体および抗p24抗体に関して高い抗体産生
応答を維持していた(図3A)。血清中の抗HIV-1抗体価
は1:8,000から1:18,000の範囲であった(図3B)。
【0023】次に、SHIVの大量投与の前後に、サルPBMC
に基づくウイルス中和アッセイを行い、HlV-1BRU、HIV-
1MN、SHIV-NM-3rN、SHIV-MN、病原性SHIVおよびSIVmac2
39に関する中和力価を測定した(図4)。ウイルス中和
アッセイは、文献(Honda,M.et al. Proc. Natl. Acad.
Sci. USA. 92: 10693-10697、Gorny, M. K.et al.(199
4) J. Virol. 68: 8312-8320)の記載の通りに行った。
具体的には、100 TCID 50の貯蔵ウイルスを用いて精製
サルIgGのSHIV-MNまたは病原性SHIVに対するinvitro中
和活性を測定し、M8166細胞の培養上清中のp27抗原産生
を、免疫前血清IgGを添加した培養物における値と比較
した阻害率として表した。アッセイの対照として正常サ
ルの精製IgGも用いた。
【0024】その結果、PBMCに基づくウイルス中和アッ
セイで検討したSHIV-NM-3nのSHIV-MNまたは病原性SHIV
を標的ウイルスとして使用すると、SHIV-NM-3n免疫処置
を受けたサルから採取した免疫血清の中和力価は、有意
に上昇しており、さらに同種ウイルスSHIV-NM-3nだけで
なくHIV-1BRUに対する中和力価も示した。また、このウ
イルスは、異種ウイルスSHIV-MN、HIV-1MNおよび病原性
SHIVにも交差中和性を示した(図4)。中和力価はウイ
ルス投与後に採取した血清の方が投与前のサルから採取
した血清よりも有意に高かった。しかし、サル血清にお
いてSIVmac239に対する中和活性は検出されなかった。
【0025】次に、細胞傷害性アッセイを行なった。各
サルのPBMCから樹立したヒヒ・ヘルペスウイルス形質転
換Bリンパ芽球腫細胞株(BLCL)を、HIV-MN特異的PNDペ
プチドHIV-1 IIIB(Honda,M.et al.(1995) Proc. Natl.
Acad. Sci. USA. 92: 10693-10697)によってコーティ
ングし、ワクシニア組換えHIV-envを発現するBLCLを標
的細胞として用いた。対照標的としては、HIV-1 gp41
(Honda,M.et al.(1995)Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
92: 10693-10697)の融合17量体ペプチドでコーティン
グしたBLCL、またはBLCLのみを用いた。エフェクター細
胞に関しては、弱毒ウイルスを接種したサルからPBMCを
分離し、上記の通りにV3 PNDペプチドでコーティングし
た自家PBMCによりin vitroで2回再刺激を加えた。10〜1
2日後に、U字型マイクロタイタープレート中での標準的
51Cr放出アッセイにより、これらのエフェクター細
胞のキラー活性を測定した。NK細胞アッセイに関しては
自家B細胞系の代わりにK562細胞を標的として用いた。
これらの標的およびエフェクター細胞を種々の比率で混
合し、標的細胞の破壊を上清中への51Cr放出によって
評価した。
【0026】SHIV-MN投与時点では、2頭ともHIV-1エン
ベロープ蛋白質、SIV全gag蛋白質およびpol蛋白質に対
する特異的CTLは認められなかったが、この2頭ではサル
PBMCにおけるナチュラルキラー活性は検出された(図
5)。以上のデータは、本研究に用いたサルではウイル
ス特異的CTL活性は明らかではなかったものの、弱毒SHI
V-NM3nがMN型および病原型ウイルスなどの異種ウイルス
を中和しうる広範な中和活性に加えてナチュラルキラー
細胞活性を誘導することを示す。この弱毒性ウイルス
(SHIV-NM-3n)接種サル(M1, M2)は同種ウイルスであ
るSHIV-NM-3rNの感染を防御した(図6)。
【0027】[実施例2] 非病原性SHIV-MNによる異種
感染 ウイルス投与の前に、弱毒SHIV接種サルからのウイルス
の復帰を検討したが、サルPBMCはウイルス分離に関して
陰性であった。さらに、本発明者らは100 TCID 50のSH
IV-MNを各サルから採取したCon A刺激PBMCと共培養する
ことによって標的サルの感染性を評価した。分離された
ウイルスがSHIV-MNであることをPCR増幅ならびにHIV-1
C2-V3およびSIVgag領域のウイルスRNAの配列分析によっ
て確認した。そこで、弱毒SHIVワクチンを接種したサル
に1.2×10TCID50のSHIV-MNを投与し、血漿中ウイル
ス量および細胞関連ウイルス量を定量化した。細胞関連
ウイルス量は、Hondaら(Honda,M.et al.(1995) Proc.
Natl. Acad. Sci. USA. 92: 10693-10697)およびLehne
rら(Lehner,T. et al.(1996) Nature Medicine 2:767-
775)による記載の通り、PBMCを10個から1個に限界希
釈することによって定量化した。共培養にはM8166細胞
を用い、培養上清中のウイルス産生をp27抗原ELISA(Co
ulter)によって測定した。陽性培養物が生じるのに必
要な最小血漿容積をウイルス感染の終点とみなし、感染
性ウイルスの力価をPBMC 10個当たりの培養細胞感染
量として表した。
【0028】その結果、図7に示す通り、血漿中ウイル
ス抗原(図7C)の検出に用いた抗原capture ELISAによ
るウイルス投与後の未処置サルとの50週にわたる比較で
は、弱毒生ワクチンを接種したサルでは、細胞関連ウイ
ルス量(図7B)およびいずれの群のサルでも末梢血CD4
陽性Tリンパ球数は変化なかった(図7A)。さらに、p2
7抗原量が完全に抑制された。弱毒ウイルスを接種した
サルにおいて、細胞関連ウイルス量のピークと一致する
ウイルス投与2週後の時点では、プロウイルスDNAのPCR
増幅の結果はHIV-1 C2-V3およびSIVgag領域に関して陰
性であった。このように、SHIV-NM3nを接種したサルはS
HIV-MNの大量投与に対して防御された。
【0029】なお、ウイルスRNAのPCR増幅および配列分
析は次ぎのように行なった。Micro-Fast Track Kitを製
造者(Invitrogen, San Diego, CA)の指示に従って用
いることにより、感染したカニクイザルの血漿からpoly
A-RNAを分離した。RT-PCRはACCESS RT-PCR System(Pr
omega, Madison, WI)によって行った。逆転写はAMV逆
転写酵素とともに48℃で60分間行った。env V3領域に関
してはOA3およびSD(RTおよび1回目のPCR)ならびにSB
およびSC(2回目のPCR)のnested primer対を用い、env
gp41-nef接合領域に関してはGBK-1005(陽性)およびP
16777(RTおよび1回目のPCR)ならびにGBK-1012(陽
性)およびP16775(2回目のPCR)のnested primer対を
用い、nef遺伝子に関しては8632Fおよび9980R(RTおよ
び1回目のPCR)ならびに8690Pおよび9927R(2回目のPC
R)のnested primer対を用いた。用いたプライマーは、
OA3(nt 7086〜7110)、SD(nt 7467〜7487)、SB(nt
7113〜7133)、SC(nt 7432〜7454)、GBK-1005(陽
性)(nt 8517〜8541)、P16777(nt9006〜9033)、G8K
-1012(陽性)(nt 8543〜8563)、P16775(nt 8964〜8
989)、8632F(nt 8632〜8648)、9980R(nt 9807〜982
5)、8690F(nt 8690〜8707)、9927R(nt 9753〜977
1)である(Shinohara,K.et al.(1999) J. Gen. Virol.
80: 1231-1240)。オリゴヌクレオチドの位置はSHIV-
89.6分離株(GenBank寄託番号AF038398)からみた相対
的な数字として表した。
【0030】env V3およびnef領域の配列決定は、Dye T
erminator Cycle Sequencing FS KitおよびABI PRISM 3
10 Genetic Analyzer(PE Applied Biosystems, Foster
City, KA)を、文献(Hondaら 1995、Karlssonら 199
7、Liら 1995)の記載の通りに用いて行った。配列決定
に用いたその他のプライマーは以下の通りである:9307
F(nt 9152〜9175)、9620F(nt 9465〜9485)、9305R
(nt 9158〜9178)および9635R(nt 9458〜9480)(Shi
nohara,K.et al.(1999)J. Gen. Virol. 80: 1231-124
0)。
【0031】[実施例3] 病原性SHIVの異種感染におけ
る弱毒SHIV-NM3n のCD4陽性細胞の減少阻害効果 本発明者らはさらに、弱毒ウイルスを接種したこれらの
サルが、大量の病原性SHIV感染から防御されるか否かを
検討した。同様に、弱毒ウイルスを接種したサルのPBM
C、およびサルからのCon A刺激PBMCのそれぞれに感染さ
せた100 TCID の病原性SHIVから何らかのウイルスが
分離されることも確認した。分離されたウイルスはHIV-
1 C2-V3およびSIVgag領域のウイルスRNAの配列決定によ
れば病原性SHIVであったため、本発明者らは弱毒ワクチ
ンを接種したサルのそれぞれ、ならびに未処置サル3頭
に対して1.2×10 TCID50の病原性ウイルスを投与し
た。
【0032】対照動物として用いる未処置カニクイザル
3頭に同量の病原性SHIVを接種した。対照サルでは接種
から31週にわたって毎週末梢血を採取し、免疫学的パラ
メーターを分析した。その結果、サルT細胞におけるCD4
陽性Tリンパ球の比率は1週間以内にウイルス接種時の値
の20%未満に低下した。さらに、23週後には5.0%未満
に低下し、接種31週後にはCD4陽性細胞数は1.0個/mm
未満となった(図8A)。これに対して、SHIV-NM-3nの
ワクチン接種を受けたカニクイザル2頭ではリンパ球に
占めるCD4陽性Tリンパ球の比率が30〜60%の範囲に維持
され、病原性SHIVの接種によって誘発されるCD4陽性T細
胞の減少が完全に阻害された(図8B)。リンパ球に占
めるCD4陽性Tリンパ球の比率は42.0±11.9%(n=24)
であった。SHIVを投与した未処置サル、重感染サルとも
にCD8陽性Tリンパ球の比率に有意な変化は認められなか
った(非提示データ)。
【0033】病原性SHIVの接種から0〜20週後までの血
漿試料に関する終点希釈培養とSIV p27 ELISAにより、
病原性ウイルス接種後の血漿中ウイルス量と抗原量を定
量化した(図9)。血液試料の処理は静脈穿刺後120分以
内に行った。血漿中ウイルス量は文献(Shinohara, K.
et al.(1999) J.Gen.Virol., 80, 1231-1240)の記載の
通り、血漿を1000μlから0.02μlに限界希釈することに
よって定量化した。共培養にはM8166細胞を用い、培養
上清中のウイルス産生をp27抗原ELISAにより測定した。
陽性培養物が生じるのに必要な最小血漿容積をウイルス
感染の終点とみなし、感染性ウイルスの力価をサル血漿
1ml当たりの培養細胞感染量(TCID)として表した。血
漿試料についても、上記の通りにELISAを用いてSIV p27
コア抗原に関してアッセイした。
【0034】その結果、病原性ウイルスを投与した未処
置対照サル3頭では、投与2週後の時点で血漿中HIV-1価
(図9A)またはSIV p27抗原量(図9B)に明瞭なピーク
が認められた。これらの試料における血漿1ml当たりのT
CIDはほぼ250であり、p27蛋白質の量はほぼ4.5mgであっ
た。SHIV-NM-3nによる免疫処置を受けたサル2頭では、
血漿中ウイルス力価およびp27抗原量はいずれも病原性
ウイルス投与時には検出レベル以下であり、このレベル
が病原性ウイルス投与後も維持された(図9Aおよび9
B)。以上の結果は、SHIV NM-3nを接種したこの2頭のサ
ルが病原性ウイルスの感染から防御されたことを示す明
らかな証拠となる。
【0035】剖検の時点で、SHIVを接種したすべてのサ
ルの胸腺、脾臓、顎下リンパ節、腋窩リンパ節、腸間膜
リンパ節および鼠径部リンパ節などの他のリンパ組織に
おけるCD4陽性およびCD8陽性細胞の比率をフローサイト
メトリーにより分析した。病原性SHIVを投与した対照サ
ルでは、末梢血だけでなく、上記のすべてのリンパ組織
でもCD4陽性T細胞が選択的に消失した(図10)。しか
し、弱毒SHIVをあらかじめ接種した後に病原性SHIVを投
与したサル2頭では、リンパ組織におけるCD4陽性T細胞
の減少が阻止され(図10)、組織中のCD4陽性T細胞数の
範囲は正常なカニクイザルでの値とほぼ等しかった。
【0036】[実施例4] 弱毒SHIV-NM3nを接種したサ
ルの剖検時の特徴 剖検の時点で、SHIV-NM3n免疫処置を受けたサルは弱毒S
HIVの初回接種から262週を経過しており、病原性ウイル
ス投与からは29週を経過していた(図1)。弱毒ウイル
スによる免疫処置を受けたサルの脾臓の組織検査を行な
った。まず、病原性SHIVの投与から30週後にサルを屠殺
し、組織を摘出した。通常の光顕検査用に組織切片をヘ
マトキシリンおよびエオシンで染色した。摘出組織は4
℃の緩衝ホルマリンで数日固定した後にエタノールで脱
水し、パラフィン中に包埋した。一部の切片は、以前の
記載の通り(Yoshino,N. et al.(2000) Biochem. Bioph
ys. Res. Commun. 263: 868-874、Sasaki,Y. et al.(20
00) Clin & Exp. Immunol.In press.)、HIV gp120に対
するラットポリクローン抗体(Advanced Biotechnologi
es, Columbia, MD)に続いてフルオロセイン標識ヤギ抗
ラットIgG Ab(Organon Teknika Corp., Durham, NC)
を用いる免疫蛍光法により、HIV-1に関して染色した。
一次抗体に曝露させなかった切片を陰性対照として用い
た。
【0037】その結果、弱毒ウイルスによる免疫処置を
受けたサルでは、対照サルの組織と比較して、濾胞およ
び傍皮質領域の構造の点で組織が維持されており、濾胞
の数にも有意な変化は認められなかった(図11)。これ
に対して、病原性SHIVを投与した未処置サルの脾臓組織
では傍皮質領域に萎縮性変化が認められ、濾胞構造も著
明に減少していた(図11)。ウイルス接種から2週後に
生検を行った頸部リンパ節標本の免疫蛍光検査では、ウ
イルス投与後の未処置サルの濾胞樹状細胞および傍皮質
Tリンパ球領域の内部にウイルスが検出された(図1
1)。しかし、弱毒SHIVの免疫処置を受けたサルの剖検
脾臓組織では、投与2週後にはPBMCから病原性ウイルス
が分離されたにもかかわらず(図12)、どの組織からもウ
イルスは全く検出されなかった。さらに、剖検組織中の
プロウイルスのHIV-1 C2-V3領域およびSIV gagのnested
PCR分析により、弱毒SHIVの免疫処置を受けたサルでは
病原性ウイルス投与後にPBMC、顎下リンパ節、腋窩リン
パ節、鼠径部リンパ節、腸間膜リンパ節、胸腺、脾臓お
よび骨髄においてプロウイルスの増幅は全くみられなか
った(非提示データ)。以上の結果は、弱毒SHIVに対す
る免疫が5年にわたり持続することを明らかに示してい
るが、ウイルスのコピーは、サルの剖検時点では末梢血
を含むさまざまなリンパ系器官のいずれからも検出され
なかった。
【0038】[実施例5] サルで病原性SHIVにより誘発
されるT細胞の機能異常は、弱毒生SHIV-NM3n株の事前接
種によって抑止される 弱毒生ウイルスを接種したサルの種々の組織におけるCD
4陽性細胞の減少阻害効果を評価するために、病原性ウ
イルスを投与したSHIV-NM-3n接種サルから採取したPBMC
をp27 SIV Gag蛋白質またはCon Aとともに培養し、T細
胞増殖の結果を、病原性ウイルスを接種したサルのPBMC
培養物での結果と比較した(図13)。細胞培養中のサル
PBMCの増殖活性は、培養PBMCの抗原特異的増殖により測
定した。PBMC(1×10個/ウェル)を96穴マイクロタ
イタープレート(Costar Corp., Cambridge, MA)に播
き、続いて5.0μg/mlの組換えSHIV p27 Gag蛋白質また
は10μg/mlのCon A(Pharmacia Biotech AB, Uppsala,
Sweden)の存在下または非存在下で刺激した。培養物
を72時間インキュベートし、最後の4時間には0.5 μCi
の[H]-チミジンによるパルス刺激を加えた。刺激指数
は、組換え蛋白質を加えたウェルと対照蛋白質ウェルと
の平均CPMの比と定義した。
【0039】その結果、病原性SHIVを投与した対照サル
のPBMCは、p27特異的細胞増殖においてp27 Gag蛋白質に
対する反応能を失っていた。SHIV-NM-3nを接種したサル
から採取したPBMCをアッセイに用いた場合には、剖検時
(図13)にも病原性ウイルス投与時(非提示データ)に
もGag特異的T細胞増殖の低下に対する阻害作用が認めら
れ、増殖レベルは非病原性SHIV-MNを接種したサル3頭で
の値とほぼ同一であった。しかし、Con A刺激による増
殖は、SHIV接種サルとSHIVに対して血清陰性である健常
対照3頭のいずれにおいても同程度に高度であることが
明らかになった。
【0040】[実施例6] 病原性SHIV投与後のCD28お
よびCD95の発現レベルに対する弱毒SHIVの事前接種の効
HIV-1感染の進行は、Tリンパ球上のCD28発現のダウンレ
ギュレーションと相関することが報告されている(Ving
erhoets, J.H. (1995) Clin.Exp.Immunol., 100, 425-4
33)。弱毒生ウイルスをあらかじめ接種したサルでは病
原性SHIVの投与によって誘発されるT細胞の機能異常が
阻害されたため、感染刺激を加えたサルにおけるCD28レ
ベルのダウンレギュレーションの変化を弱毒生ウイルス
の事前接種の有無別に評価した。対照サルでは病原性ウ
イルス投与後にCD8陽性Tリンパ球上のCD28+が徐々に減
少し、特にCD4陽性細胞の減少の程度と相関してCD28陽
性発現レベルは有意に低下した(図14A)。これに対し
て、SHIV-NM3n接種サルでは病原性ウイルス投与後もCD2
8+の発現が高レベルに維持されており、健常サルにおけ
る所見と同程度であった(図14B)。サルではCD4陽性細
胞上のCD28の発現に病原性SHIV感染による影響はみられ
なかった(非提示データ)。
【0041】腫瘍壊死因子(TNF)/神経成長因子(NG
F)受容体ファミリーに属するCD95は、多くの種類の細
胞の表面上に存在し、アポトーシス性シグナルを伝達す
る受容体分子として働くことが報告されており、そのリ
ガンドはアゴニストとして作用してCD95陽性細胞のアポ
トーシスの引き金となる(Schnittman, S.M. and Fauc
i, A.S.(1994) an update.Adv.Intern.Med., 39, 305-3
55; Takahashi, T. et al.(1994) Cell, 76, 969-97
6; Yoshino, N. et al.(2000) Exp.Animals, 49, in p
ress.)。病原性SHIVの投与から25週後の時点で、病原
性SHIVを接種した対照サル(図15の黒いカラム)ではCD
4陽性細胞、CD8陽性細胞ともにCD95発現の陽性率は95%
を上回り、正常対照サルでの比率よりも有意に高かった
(図15の白いカラム)。しかし、弱毒生SHIVをあらかじ
め接種した後に病原性ウイルスを投与したサルでは、CD
4陽性細胞、CD8陽性細胞ともに、病原性ウイルスの投与
によって誘発されるCD95陽性細胞は高レベルから正常対
照レベルに低下した(図15の蔭を施したカラム)。病原
性ウイルスを投与した未処置サルでは、血漿ウイルス血
症の発症時にはPBMCの95%以上でCD95の発現がアップレ
ギュレートされて陽性化しており、剖検時にもこの高い
レベルが維持されていたが、SHIV-NM3nをあらかじめ接
種したサルから採取したPBMCでは病原性ウイルス投与後
にこのアップレギュレーションは検出されなかった(非
提示データ)。正常カニクイザル24頭におけるCD4陽性
/CD95陽性およびCD8陽性/CD95陽性細胞の比の平均±S
Dはそれぞれ51.2±20.3%および69.1±15.8%であっ
た。
【0042】[実施例7] 未処置サルおよび弱毒ウイル
スの事前接種を受けたサルにおける病原性ウイルス投与
後のin vitroアポトーシスの動態 文献(Nicoletti, I. et al.(1991) J.Immun.Meth., 13
9, 271-279)に記載した方法の変法により、アポトーシ
スの増強を定量化した(Yoshino, N. et al.(1997) Re
s. Comm.Biochem.Cell.Mol.Biol. 1, 218-228)。要点
を述べると、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色した細胞
を、488nmに設定したアルゴンレーザーを装着したFACS
Caliburにより、Cell Questを用いて分析した。FL-2A対
FL2-Wパルス領域プロットおよび幅測定を用いてsinglet
集団のみを通過させることにより、DNA分析からdoublet
およびより高次の凝集物を除外した。流速は1秒当たり2
00nuclei未満に設定し、各試料とも10個以上の細胞を
分析した。測定はすべて装置の設定を同一にして行っ
た。アポトーシスの比率は以下の通りに算出した:アポ
トーシス核の比率(%)={アポトーシス核の数/(ア
ポトーシス核の数+生細胞の核数)}×100。
【0043】その結果、病原性ウイルス投与後の未処置
サルでは全例、ウイルス投与から8週後にサルPBMCにお
けるin vitroアポトーシスの増強が認められ、アポトー
シス核の比率は30〜70%の範囲に広く分布した(図16
A)。正常カニクイザルにおけるin vitroアポトーシス
の頻度はアポトーシス核の比率にして18.6±11.1%であ
った(n=24)。弱毒ウイルスをあらかじめサルに接種
するとウイルス接種後の試験期間全体を通じてin vitro
アポトーシス増強は強く阻害され、アポトーシス誘導の
頻度はアポトーシス核の比率にして27%未満であった
(図16B)。
【0044】[実施例8] 高感受性のサルにおける非発
症の確認 弱毒生ワクチン作成の親株であるNM-3rNを病原性感受性
が高いといわれているブタオザルおよびアカゲザル新生
仔に接種し、その病原性について検討した。その結果、
2頭のブタオザルにNM-3rNを接種したところ、アカゲザ
ル、カニクイザルと同様に、接種後12週まではウイル
スが分離されたが、その後は殆ど分離されなくなった。
2年間の経過観察および剖検でも発病の兆候はなかっ
た。生後13日のアカゲザル新生仔1頭にNM-3rNを接種
したところ、2週目から特異抗体の上昇が認められた。
現在、接種後14週目でもウイルス分離されている。
【0045】
【発明の効果】キメラウイルスワクチンにおける従来の
試みでは、その投与による免疫組識の破壊が1年程度で
生じ、脾臓が腫れ、リンパ節が腫れるという所見が得ら
れている。また、病原性のSIVmac251投与でのサルの生
存率(期間)が43週であるのに対して、キメラウイルス
のSIV3のデータで166週(3年強)であると報告されて
いる(Baba,T.W.et al.(1999) Nature Medicine, 5: 19
4-201)。従って、キメラウイルスの利用により生存率
は延びるが、該ウイルスの病原性は確実に復帰して死に
至り、ワクチンとしての開発に成功したとは到底いえな
かった。一方、本発明のワクチンは、接種後、5年以上
(262週)経過した場合でも病理学的所見で示すように
免疫組識の変化は全く無く、ワクチン投与されたサルの
解剖時のウイルス血症も検出されない。さらに、病理学
的解析においてリンパ節の破壊は認められないことか
ら、本発明のワクチンは、接種後5年以上キメラウイル
スの病原性の回復は生じない。即ち、本発明により、極
めて持続性と安全性が高い免疫不全ウイルスワクチンが
提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】非病原性および病原性SHIV投与後の弱毒生SHIV
-NM-3nワクチンの試験デザインの概要。
【図2】本研究に用いたSHIVのゲノム構成。SHIV-NM-3
n、SHIV-NM-3rNおよび病原性SHIVのゲノム構成を整列化
した上で示し、親構成物であるHIV-NL432およびSIVmac2
39と比較した。(■)HIV-NL432由来の無傷遺伝子、
(□)HIV-NL432由来の欠損遺伝子、(□)SIVmac239由
来の無傷遺伝子、(□)SIVmac239由来の欠損遺伝子。S
HIVの作製に用いた制限部位も示している。
【図3】弱毒生SHIV-NM-3nワクチンを接種したサルの血
清学的試験。A.ウエスタンブロット分析。B.SIVmac23
9 gag ELISA。
【図4】SHIV-NM3nワクチンを接種したサルの免疫血清
によるSHIV-MNおよび病原性SHIVの中和。A.Cy-A。B.C
y-B。
【図5】弱毒生SHIV-NM3nの接種によって誘導されたサ
ルにおける細胞性免疫の検討。A.弱毒SHIV-NM-3nを接
種したサルにおけるEnv特異的キラー細胞活性。B.サル
におけるナチュラルキラー活性の誘導。
【図6】弱毒生SHIV-NM-3nの接種によって誘導されたサ
ルにおける同種ウイルスSHIV-NM-3rN感染防御。接種サ
ル(M1, M2)正常サル(M3, M4, M5, M6)にSHIV-NM-3rN
接種後の感染性ウイルス量の動態。
【図7】非病原性SHIV-MN投与後のサルにおける血中CD4
リンパ球数および細胞関連ウイルス量の動態。A.血中
リンパ球数。B.細胞関連ウイルス量。SHIV-MN投与後の
未処置サル(M7, M8);弱毒生SHIV-NM-3nを接種したサ
ル(M1, M2)。
【図8】病原性SHIV投与後のサルPBMCにおけるCD4陽性T
リンパ球の比率および血漿抗原血量の動態。A. 正常サ
ルのCD4陽性細胞Tリンパ球の比率の変化(M10, M11, M1
2)、B. NM-3rN接種サルのCD4陽性細胞Tリンパ球の比率
の変化(M1, M2)
【図9】病原性ウイルス投与後のサルにおけるウイルス
量の動態。A.血漿中の感染性ウイルス価(TCID/ml)。
B.血漿中のp27抗原量(pg/ml)。
【図10】弱毒SHIV-NM-3nを接種したサルでは病原性SHI
V投与後の病原性SHIV注射サルの組織におけるCD4陽性T
リンパ球の減少が抑止された。病原性SHIVを注射したカ
ニクイザル(A)およびSHIV-NM-3nを事前接種した病原
性ウイルス投与サル(B)から採取した種々のリンパ組
織におけるTリンパ球サブセットのフローサイトメトリ
ー分析の結果を示す。サルのデータは各群を代表する。
Thy、胸腺細胞;Spl、脾細胞;SLN、顎下リンパ節細
胞;ILN、鼠径部リンパ節細胞。正常サル(n=6)にお
けるCD4陽性細胞の比率の平均±SDはそれぞれ13±8、21
±5、45±12、47±13、46±12および49±6であった。
【図11】病原性ウイルス投与後のサルにおける病理所
見。A.弱毒ウイルスの事前接種を受けたサルの脾臓(M
1, M2)。H&E、10倍。B.未処置サルの脾臓(M10, M11,
M12)。H&E、10倍。スケールは50μm。
【図12】病原性ウイルス投与後のサルに由来する推定
アミノ酸配列の整列化。第1の配列はV3領域のコンセン
サス配列であり、M1, Mは剖検時のサル脾臓から得たプ
ロウイルス配列である。
【図13】Gag抗原に対するSHIV特異的CD4陽性増殖応
答.それぞれ組換えGag蛋白質、ConAおよび培地のみの
存在下でPBMCの刺激指数を算出することにより、in vit
roでのリンパ球増殖応答を測定した。健常対照3頭、SHI
V-NMを注射したサル3頭、弱毒生SHIV-NM-3n接種後に病
原性ウイルスを投与したサル2頭、および病原性ウイル
スを注射した対照サルから採取したサルPBMCをパーコー
ル密度勾配遠心分離法によって分離した。刺激指数が3.
0を上回るものを陽性とみなした。結果は3回のアッセイ
の平均を示す。
【図14】病原性ウイルス投与後のサルにおけるCD8陽
性Tリンパ球上のCD28抗原の発現動態.未処置サル3頭
(A)および弱毒ウイルスをあらかじめ接種したサル2頭
(B)に対する感染刺激後に、サルから採取したCD8陽性
Tリンパ球上のCD28抗原の発現率をフローサイトメトリ
ーによって測定した。結果は3回のアッセイの平均であ
る。
【図15】サルPBMCにおけるT細胞サブセット上でのCD9
5抗原の発現.ウイルス投与から25週後にCD4陽性および
CD8陽性T細胞サブセット上のCD95抗原の発現率をフロー
サイトメトリー分析によって測定した。正常、正常サル
から採取したPBMC;弱毒SHIV、弱毒ウイルスをあらかじ
め接種して、病原性SHIVを投与したサルのPBMC;病原性
SHIV、病原性SHIV投与後の対照サルのPBMC。結果は3回
のアッセイの平均である。
【図16】病原性ウイルス投与後のサルにおけるPBMCの
アポトーシス動態の比較.細胞をPIで染色することによ
り、アポトーシス性PBMCの比率を測定した。A.病原性
ウイルスを投与したサルから得たPBMCのアポトーシス特
性。B.ウイルス投与後のSHIV-NM3n接種サル。結果は3
回のアッセイの平均である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12N 7/04 C12R 1:93) C12R 1:93) C12N 15/00 A (72)発明者 速水 正憲 京都府京都市下京区河原町通正面下る万屋 町342 アパ・ガーデンコート河原町1103 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA35 CA04 DA02 EA04 GA11 HA20 4B065 AA97X AA97Y AB08 BA01 CA24 CA45 4C085 AA03 BA69 BA99 CC08 DD62 4H045 AA11 AA30 BA10 CA05 DA86 EA31 FA74

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト免疫不全ウイルスとサル免疫不全ウ
    イルスのキメラウイルスを有効成分とする、ヒトまたは
    サルの免疫不全ウイルスに対するワクチン。
  2. 【請求項2】 接種した個体に対し少なくとも5年以上
    の防御免疫能を付与する、請求項1に記載のワクチン。
  3. 【請求項3】 接種した個体内で少なくとも5年以上キ
    メラウイルスの病原性が回復しない、請求項1に記載の
    ワクチン。
  4. 【請求項4】 キメラウイルスが下記(a)および
    (b)の要素を含むゲノムを有する、請求項1に記載の
    ワクチン。 (a)ヒト免疫不全ウイルスのenv、rev (b)サル免疫不全ウイルスのgag、pol
  5. 【請求項5】 キメラウイルスがヒト免疫不全ウイルス
    のnefを有する、あるいは有しない請求項4に記載のワ
    クチン。
  6. 【請求項6】 キメラウイルスが LTRのU3領域およびサ
    ル免疫不全ウイルスのLTRのRおよびU5領域を有する、あ
    るいは有しない請求項5に記載のワクチン。
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