JP2001318093A - 血小板GPIbαの機能抑制物質を有効成分とする抗炎症剤 - Google Patents

血小板GPIbαの機能抑制物質を有効成分とする抗炎症剤

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JP2001318093A
JP2001318093A JP2000136496A JP2000136496A JP2001318093A JP 2001318093 A JP2001318093 A JP 2001318093A JP 2000136496 A JP2000136496 A JP 2000136496A JP 2000136496 A JP2000136496 A JP 2000136496A JP 2001318093 A JP2001318093 A JP 2001318093A
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gpibα
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Makoto Suematsu
誠 末松
Makoto Handa
誠 半田
Yasuo Ikeda
康夫 池田
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Keio University
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 白血球の血管への接着に起因する炎症性疾患
を抑制することができる抗炎症剤を、インビボでスクリ
ーニングする方法を提供すること。 【解決手段】 ラットに内毒素を投与して炎症反応を生
じせしめると同時又はその前後に被検物質を投与する
か、あるいは、炎症反応を常態で示す非ヒト哺乳動物に
被検物質を投与し、インビボにおける血小板を介しての
白血球と血管内皮細胞との接着状態を、白血球回転速度
(Vw)と赤血球速度(Vr)との比(Vw/Vr)で
求められる接着エネルギーを指標として評価し、血小板
上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する
抗炎症性物質をスクリーニングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血小板上に発現す
る糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症性物
質のスクリーニング方法や、該スクリーニング方法によ
り得られる前記糖タンパク質GPIbαの機能を抑制す
る新規物質や、前記スクリーニング方法により得られる
抗炎症性物質を有効成分として含有する医薬組成物に関
する。
【0002】
【従来の技術】血液中に存在する直径1〜2μmの無核
の細胞として知られている血小板は、正常な状態におい
ては、微小血管内皮細胞に非常に接近しながらも接着せ
ずに循環すると考えられており、コラーゲンのような血
小板活性化内皮物質に曝されなければ、負傷領域に接着
することも、活性化させられることもないと考えられて
きた(Lab Invest. 42, 366-374, 1980)。初期接着段
階において、血小板は、種々のメディエータを放出し、
他の血小板を活性化することが知られており(Thromb H
aemost. 78, 611-616, 1997)、初期に接着した血小板
層が、安定した血栓形成性表面を形成すると、メディエ
ータ誘導による血小板同士の相互作用により止血性血栓
が発達することも知られている(Thromb Haemost. 78,
611-616, 1997)。
【0003】血小板の凝集に必要な接着分子の一つであ
るグリコプロテイン(GP)Ibαは、未刺激の血小板
上に発現する糖タンパク質であり、この分子のレセプタ
ーの一つがフォンビルブラント因子(vWF)であるこ
とが知られている。本発明者らの一人である池田らは、
血小板が局所血流により生じるズリ応力を感知して一次
凝集を起こすことを見い出し、そのメカニズムとしてG
PIbαとvWFの結合が重要であることを明らかにし
ており(Ikeda, et al. J. Clin. Invest. 87,1234-124
0, 1991)、このことからGPIbαは生体における止
血機序や血栓形成に重要な役割を果たすことが広く認め
られている。
【0004】一方、本発明者らの一人である半田らは、
ヒトGPIbαを認識するモノクローナル抗体を作製
し、その中からvWFとの結合を阻害する抗体であるG
UR83/35を見い出している(Moriki, T., et a
l.; Blood 90, 698-705, 1997、Asazuma, N., et al.;
Blood 90, 4789-4798, 1997)。この抗体はリストセチ
ン(ristocetin)によるGPIbαのコンフォメーショ
ン変化を介して起こる血小板の凝集を特異的に制御し、
本分子のN末端から1〜302アミノ酸残基が形成する
コンフォメーション特異的なエピトープ(epitope)を
認識することが報告されている。また最近、Gombartら
は、白血球の接着分子の1つであるMac-1(CD11b/CD
18) がトランスフェクトされた293細胞が、固相化さ
れたGPIbαに結合能を有することを報告(Blood,Vo
l.94,supplement I, 369a,1999)している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】多くのヒト炎症性疾患
のうち、白血球の血管への接着反応は臓器障害の程度を
決定する重要な因子であり、この白血球接着反応が憎悪
すると考えられている疾患としては、動脈硬化、播種性
血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)な
どが挙げられる。また、自己免疫疾患では血小板を介し
たリンパ球の血管への接着が臓器障害の増悪因子となる
ことが実験的に示されている。従って血小板の活性化を
阻害する薬剤はこのような白血球を抑制する効果を持つ
場合があり、ホスフォジエステラーゼ(phosphodiester
ase)阻害剤や抗トロンビン(thrombin)剤などはその
典型例といえる。しかしこれらの薬剤は、白血球接着の
阻害活性を生体内で得るためには、通常、血小板凝集抑
制に必要な量よりも大量の用量が必要とされ、出血傾向
を助長させるリスクがあり、新しい治療ターゲットの創
出が待たれていた。本発明の課題は、白血球の血管への
接着に起因する炎症性疾患を抑制することができる抗炎
症剤を、インビボでスクリーニングする方法を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】インビボにおける、傍内
皮空間に沿って流れる血小板の密度分布又は速度分布に
ついての詳細な知識は、トロンボゲン発生の初期段階の
メカニズム、及びその結果生じる白血球接着を伴う炎症
反応を理解する上で重要である。第一に、局所における
血小板の密度の測定により、局所血小板搬送速度を予測
することができる。第二に、傍内皮血小板の速度分布分
析により、病的状態における血小板及び内皮細胞間の接
着力変化を予測することが可能になり、従って、フロー
状態における接着性変化に関する重要な知見が得られ
る。第三に、白血球表面のリガンド分子と結合する血小
板における種々の接着分子の存在を考慮すると、傍内皮
空間における血小板の密度は、急性炎症プロセスにおい
て細静脈への白血球の動員数を決定する要因となる(La
b Invest. 71, 380-386, 1994、J. Exp. Med. 187, 197
-204, 1998)。しかし、生体内の血小板を信頼性の高い
方法で可視化することは技術的に困難であるため、傍内
皮空間を流れる血小板の詳細な挙動についての情報は限
られていた。
【0007】本発明者らは、傍内皮空間に沿って流れる
血小板の密度分布又は速度分布等、インビボにおける血
小板の挙動を明らかにするために、生体内で血小板を染
色できる蛍光色素であるカルボキシフルオレセイン ジ
アセテート スクシニミディルエステル(CFSE)に
よる超高速増感顕微鏡検査を生体内において行ったとこ
ろ、内毒素血症のような病的状態において、後毛細血管
細静脈の傍内皮空間における白血球が血小板を介して転
回及び接着していることを偶然に見い出した。そこで、
血小板上のGPIbαのN末端から1〜302アミノ酸
残基が形成するコンフォメーション特異的なエピトープ
(epitope)を認識する前記モノクローナル抗体GUR
83/35を投与したところ、炎症性刺激により生じる
白血球の血管内皮細胞への接着反応が、局所の血行動態
を低下させることなく抑制されることを確認し、本発明
を完成するに至った。
【0008】すなわち本発明は、非ヒト哺乳動物に炎症
反応を生じせしめると同時又はその前後に被検物質を投
与するか、あるいは、炎症反応を常態で示す非ヒト哺乳
動物に被検物質を投与し、インビボにおける血小板を介
しての白血球と血管内皮細胞との接着状態を検出・評価
することを特徴とする血小板上に発現する糖タンパク質
GPIbαの機能を抑制する抗炎症性物質のスクリーニ
ング方法(請求項1)や、エンドトキシンを投与して炎
症反応を生じせしめることを特徴とする請求項1記載の
血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑
制する抗炎症性物質のスクリーニング方法(請求項2)
や、血小板として、CFSEで標識化された血小板を用
いることを特徴とする請求項1又は2記載の血小板上に
発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎
症性物質のスクリーニング方法(請求項3)や、接着状
態の検出・評価が、血管内の白血球回転速度(Vw)と
赤血球速度(Vr)との比(Vw/Vr)で求められる
接着エネルギーを指標とした検出評価であることを特徴
とする請求項1〜3のいずれか記載の血小板上に発現す
る糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症性物
質のスクリーニング方法(請求項4)や、投与が静脈内
投与であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記
載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能
を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法(請求項
5)や、血管内皮細胞が後毛細血管細静脈であることを
特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の血小板上に発
現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症
性物質のスクリーニング方法(請求項6)や、非ヒト哺
乳動物がラットであることを特徴とする血小板上に発現
する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症性
物質のスクリーニング方法(請求項7)に関する。
【0009】また本発明は、請求項1〜7のいずれか記
載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能
を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法により得
られることを特徴とする血小板上に発現する糖タンパク
質GPIbαの機能を抑制する物質(請求項8)や、血
小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制
する物質が、GPIbα分子のN末端から1〜302ア
ミノ酸残基が形成するコンフォメーションの変化を生じ
させる物質であることを特徴とする請求項8記載の血小
板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制す
る物質(請求項9)や、GPIbαのコンフォメーショ
ンの変化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端
から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーシ
ョン特異的なエピトープを認識するモノクローナル抗体
であることを特徴とする請求項9記載の血小板上に発現
する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する物質(請
求項10)や、GPIbαのコンフォメーションの変化
を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端から1〜
302アミノ酸残基が形成するコンフォメーションと相
互作用するペプチドであることを特徴とする請求項9記
載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能
を抑制する物質(請求項11)に関する。
【0010】さらに本発明は、請求項1〜7のいずれか
記載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機
能を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法により
得られる抗炎症性物質を有効成分として含有することを
特徴とする医薬組成物(請求項12)や、抗炎症性物質
が、血小板上に発現する糖タンパク質GPIbα分子の
N末端から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォ
メーションの変化を生じさせる物質であることを特徴と
する請求項12記載の医薬組成物(請求項13)や、G
PIbαのコンフォメーションの変化を生じさせる物質
が、GPIbα分子のN末端から1〜302アミノ酸残
基が形成するコンフォメーション特異的なエピトープを
認識するモノクローナル抗体であることを特徴とする請
求項13記載の医薬組成物(請求項14)や、モノクロ
ーナル抗体が、抗GPIbαモノクローナル抗体GUR
83/35であることを特徴とする請求項14記載の医
薬組成物(請求項15)や、GPIbαのコンフォメー
ションの変化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN
末端から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメ
ーションと相互作用するペプチドであることを特徴とす
る請求項13記載の医薬組成物(請求項16)や、抗炎
症性物質が、動脈硬化、播種性血管内凝固症候群、多臓
器不全、又は自己免疫疾患に対する抗炎症作用を有する
物質であることを特徴とする請求項12〜16のいずれ
か記載の医薬組成物(請求項17)に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の血小板上に発現する糖タ
ンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症性物質のス
クリーニング方法としては、非ヒト哺乳動物に炎症反応
を生じせしめると同時又はその前後に被検物質を投与す
るか、あるいは、炎症反応を常態で示す非ヒト哺乳動物
に被検物質を投与し、インビボにおける血小板を介して
の白血球と血管内皮細胞との接着状態を検出・評価する
スクリーニング方法であれば特に制限されるものではな
く、ここで、炎症反応とは、微小循環系が分布している
組織の有害刺激に対応する局所性反応をいい、有害刺激
としては、外来性の異物、物理エネルギー、傷害された
組織自体等を例示することができる。また、上記外来性
の異物としては、炎症を確実に惹起しうる炎症起因物
質、例えばエンドトキシンが好ましい。かかるエンドト
キシン等の炎症起因物質を用いる場合、炎症起因物質と
被検物質は、同時又はいずれか一方を先に他方を後に非
ヒト哺乳動物の静脈等に投与することになる。
【0012】本発明のスクリーニング方法はインビボ系
で行われることを大きな特徴とし、インビトロ系スクリ
ーニングと異なり、目的とする抗炎症剤をより正確に効
率よく選択することができる。かかるインビボにおける
血小板を介しての白血球と血管内皮細胞との接着状態の
検出・評価方法としては、インビボにおける血小板を介
しての白血球と血管内皮細胞との接着状態を検出(測
定)・評価しうる方法であれば特に制限されるものでは
ないが、後毛細血管細静脈等における傍内皮空間(内皮
に近接した空間)における血小板の挙動を正確に把握す
るために、血小板を標識化することが好ましく、生体内
で血小板を染色できる蛍光色素であるカルボキシフルオ
レセイン ジアセテート スクシニミディル エステル
(CFSE)による標識化を行い、血小板を可視化する
ことが特に好ましく、かかる標識化により超高速増感顕
微鏡を用いての血小板の画像化が可能となる。
【0013】上記インビボにおける血小板を介しての白
血球と血管内皮細胞との接着状態の検出・評価方法とし
ては、血小板を介しての白血球と血管内皮細胞との接着
エネルギー及び/又は血小板を介しての血管内皮細胞へ
の接着白血球数を指標とする検出評価方法を具体的に例
示することができる。上記接着エネルギーは、血管内の
白血球回転速度(Vw)と赤血球速度(Vr)との比
(Vw/Vr)として求められ、Vw/Vrが高い値の
場合は接着エネルギーの低下を、低い値の場合は接着エ
ネルギーの上昇を示す。また、白血球回転速度(Vw)
及び赤血球速度(Vr)は、単位時間当たりの白血球及
び赤血球のそれぞれの中心の移動距離で求められる。ま
た、上記接着白血球数は、観察画面上で30秒以上同一
領域に接着している細胞数として計測することができ
る。
【0014】本発明における非ヒト哺乳動物としては特
に制限されるものではないが、ヒトGPIbαと交差反
応性を有するvWFやP−セレクチンを有する非ヒト哺
乳動物が好ましく、かかる非ヒト哺乳動物としてラット
を具体的に例示することができる。
【0015】本発明の血小板上に発現する糖タンパク質
GPIbαの機能を抑制する物質としては、上記の血小
板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制す
る抗炎症性物質のスクリーニング方法により得ることが
できる新規な物質であれば特に制限されるものではない
が、GPIbα分子のN末端から1〜302アミノ酸残
基が形成するコンフォメーションの変化を生じさせる物
質、例えば、GPIbα分子のN末端から1〜302ア
ミノ酸残基が形成するコンフォメーション特異的なエピ
トープを認識するモノクローナル抗体や、GPIbα分
子のN末端から1〜302アミノ酸残基が形成するコン
フォメーションと相互作用するペプチドを具体的に例示
することができる。前記のように、GPIbα分子のN
末端から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメ
ーション特異的なエピトープを認識するモノクローナル
抗体として、モノクローナル抗体GUR83/35が知
られているが、これらGPIbα分子のN末端から1〜
302アミノ酸残基が形成するコンフォメーション特異
的なエピトープを認識するモノクローナル抗体は、GU
R83/35をも含め、前記論文(Moriki, T., et a
l.; Blood 90, 698-705, 1997、Asazuma, N., et al.;
Blood 90, 4789-4798, 1997)記載の方法により調製す
ることができる。
【0016】本発明の医薬組成物は、上記の血小板上に
発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎
症性物質のスクリーニング方法により得られる抗炎症性
物質を有効成分として含有するものであれば特に制限さ
れるものではないが、上記抗炎症性物質としては、動脈
硬化、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全
(MOF)、又は自己免疫疾患に対する抗炎症作用を有
する物質が好ましく、具体的には、血小板上に発現する
糖タンパク質GPIbα分子のN末端から1〜302ア
ミノ酸残基が形成するコンフォメーションの変化を生じ
させる物質、例えば抗GPIbαモノクローナル抗体G
UR83/35などのGPIbα分子のN末端から1〜
302アミノ酸残基が形成するコンフォメーション特異
的なエピトープを認識するモノクローナル抗体や、GP
Ibα分子のN末端から1〜302アミノ酸残基が形成
するコンフォメーションと相互作用するペプチドを挙げ
ることができる。
【0017】本発明の医薬組成物の投与方法としては、
経口投与、静脈注射等の非経口投与のいずれでもよく、
投与量は、投与方法、患者の症状・年齢、抗炎症性物質
の物性等を考慮して適宜設定することができる。また、
剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロ
ップ剤、懸濁剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼
付剤、吸入剤、注射剤等を具体的に例示することがで
き、これらの製剤は製剤用担体と混合して調製した製剤
の形で通常投与される。
【0018】
【実施例】以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体
的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施
例に限定されるものではない。 実施例1[ラット血小板のインビボ標識化] (実験動物の調製)ウイスター系雄性ラット(300−
350g)にペントバルビタールナトリウム(ネンブタ
ール;pentobarbital sodium)50mg/kgを大腿筋
に筋肉内注射することにより麻酔した後、この麻酔した
ラットの大腿静脈にPE−50ポリエチレン製カテーテ
ルを挿入して薬物投与経路とし、カルボキシフルオレセ
インジアセテート スクシニミディル エステル(CFD
ASE、Molecular Probes,Inc.製、オレゴン州ユージ
ン)を注入してラット体内の血小板を標識した(Suemat
su M., et al.; Lab Invest. 70, 684-695, 1994)。上
記注入されたCFDASEは、細胞内に拡散し、主に血
小板及び白血球で起こるエステラーゼによる反応後、安
定した蛍光色素CFSEを形成する非蛍光前駆物質であ
る。このCFDASE注入から5〜10分後、上記標識
したラットの腹部正中切開により、回盲部腸間膜を露出
させ、管径25〜40μmの後毛細血管細静脈を観察し
た。腸間膜は、窒素95%及び二酸化炭素5%からなる
混合ガスで飽和された、37℃に保温されたKrebs
緩衝液(pH7.4)で上記腸間膜表面を1ml/分の
速度で潅流した。40-x対物レンズの顕微鏡観察によ
ると、CFSE標識化血小板は針先大の蛍光活性を示
し、他方、CFSE標識化白血球はより大きい球形細胞
として血小板と容易に識別しえた。
【0019】(血小板CFSE標識化による影響)上記
インビボで標識化したラットから採血し、培養皿上に分
取したCFSE標識化血小板画分の透過光線像を図1
(参考写真1参照)に示す。また、インビボでの血小板
CFSE標識化による影響を、血小板のリストセチン及
びADPに対する凝集形成挙動について調べた。図2に
示されるように、リストセチン処理又はADP処理によ
り、CFSE標識化血小板とCFSE非標識化血小板と
は、同程度の微小凝集形成性を示した。すなわち、リス
トセチンやADPにより誘発された小凝集塊形成(s)
及び大凝集塊形成(l)並びに最大凝集反応強度及びそ
の反応を示すまでの時間(%T)は、グループ間で統計
学的に異ならなかった。さらに、これらのピーク値が観
察された時間も顕著には異ならなかった。また、インビ
ボにCFDASEを投与した群と投与しない群とでは循
環血流中の血小板数に差異が認められなかった。これら
のことから、本法による血小板CFSE標識化は、刺激
による血小板凝集能に影響を与えないことがわかった。
【0020】実施例2[赤血球の流速の測定] 微小血管を流れる個々の赤血球を、前報(Am J Physio
l. 264, G828-834, 1993、Am J Physiol. 253, G596-60
0, 1987)のように、生体内超高速増幅ビデオ顕微鏡(E
ktapro-2000/TMD-2、コダック社製、カリフォルニア
州)で可視化した。枝分かれのない直線状の前毛細血管
細動脈及び後毛細血管細静脈を選択し、焦点を細静脈内
皮層に調整して、透過光線下40-x水浸式対物レンズ
で赤血球を可視化し、1000フレーム/秒で1秒間ビ
デオ録画したところ、図3A(参考写真2参照)に示さ
れているように、赤血球を粒状パターン像として認識す
ることができた(図中、a:細動脈、v:細静脈、バ
ー:30μm)。次に、撮像のため選択した微小血管の
横断面を同心円状にほぼ5分割した場合における各領域
について、5msecに相当する5フレーム間の移動距離
を測定することにより、赤血球細胞の流速を算出した。
また、測定は各領域における少なくとも5つの異なる赤
血球について行った。結果を図4に示す。図4には、最
も流速が大きい中心線領域の流速を100%とした赤血
球の相対速度(z軸)が、測定時間(x軸)及び測定領
域(y軸)の関数として表されている。なお、y軸にお
けるPcは中心線領域、Peは傍内皮領域、P1/4、P2
/4、P3/4はそれらの間の領域を示している。図4に示
されているように、細静脈中心線領域で測定された速度
は、大きくは変動することなく、また細静脈内を流れる
赤血球の速度は、中心領域から傍内皮領域の方にいくに
したがって低下することがわかる。
【0021】実施例3[微小血管における血小板の挙
動] (血小板相対速度の測定)赤血球撮像用透過光線光源か
ら落射蛍光用水銀ランプ(HB−100、ニコン、東
京)に換えて、細静脈内を流れるCFSE標識化血小板
を、470nmの落射蛍光による蛍光像として可視化し
た。すなわち、標識化血小板からの蛍光放射を、510
nm以上の波長域透過フィルター、及び増幅器へ導かれ
た背景光を弱める近赤外線遮断フィルターを透過させ
た。CFSE標識化血漿部分により確認された血管内と
血管外との間の中間面の画質確認による焦点調整後、超
高速撮像を1000フレーム/秒で2秒間行った。傍内
皮領域及び中心線領域に沿って流れる血小板の速度を、
高速ビデオ画像の再生によりフレーム毎に分析して測定
した(Am J Physiol. 264, G828-834, 1993)。
【0022】CFSEで標識化された血小板を可視化す
ることができたが、血管内における厳密な局在位置は、
その移動速度が速いため通常のビデオレートでは図3B
(参考写真2参照)に示したようにほとんど確認するこ
とができなかったが、数フレーム/秒で再生し、針先大
の蛍光を示す焦点の合った血小板のみを分析のために選
択することにより、血小板の血管壁に沿った動きを追跡
することができた。図3C〜H(参考写真2参照)に
は、20msec又は40msec間隔での連続蛍光像が示さ
れている。特に、細静脈壁との相互作用が、“星印”と
“矢印”を付した2つの血小板により示されている。図
3C〜Hに示すように、“星印”を付した血小板の流速
は遅く、“矢印”を付した血小板は速いことを示してい
る。すなわち、細静脈の傍内皮領域で移動する個々の血
小板の速度にはバラツキがあることがわかった。
【0023】血小板の流速は、赤血球の追突など赤血球
速度により影響されることから、同一血管部位における
血小板速度(Vp)と赤血球速度(Vr)との比(Vp
/Vr)で表される血小板相対速度を、中心線領域と傍
内皮領域について調べてみた。個々の血小板速度(V
p)は、赤血球の場合と同様に、5msecに相当する5
フレーム間の移動距離を測定することにより算出した。
またこれとは別に、血管内皮細胞と相互作用する個々の
血小板の瞬間的な速度変化を調べるために、血管内皮細
胞に沿った10μm又は20μmの移動にかかる時間を
血小板と赤血球とについて測定することによりVp/V
rを求めた。中心線領域と傍内皮領域において測定され
た少なくとも60個の血小板の測定から求めた血小板相
対速度の分布を図5に示す。図5からわかるように、中
心線領域におけるVp/Vr値はほぼ一定で約100%
であるのに対し、傍内皮領域におけるVp/Vr値は変
動し、50%まで低下することもあった。このことは、
傍内皮領域の血小板と微小血管内皮細胞との接着相互作
用の存在を示しており、傍内皮領域におけるVp/Vr
値は、血小板と内皮細胞との接着エネルギーの指標とし
うることがわかる。
【0024】(血小板密度の測定)次に、微小血管の傍
内皮領域及び中心線領域における血小板密度の差異を調
べた。前記のように、赤血球速度は中心線領域が傍内皮
領域よりも速く、傍内皮領域に比べてより多くの循環血
小板が中心線領域に供給されると考え、中心線領域にお
けるCFSE標識化血小板の密度(Dpc)と傍内皮領
域の密度(Dpe)とを次式のようにそれぞれ定義し
た。
【数1】 (式中、Npc及びNpe、Apc及びApe、Vpc
及びVpeは、それぞれ中心線領域及び傍内皮領域にお
ける、単位時間に観察された血小板数、血小板を含む局
所血管領域範囲、血小板速度を表す。したがって、Ap
c・Vpc及びApe・Vpeは単位時間当たりの流量
を表すことになる。)また、Dpe/Dpcを傍内皮空
間における血小板の相対密度とすることができる。
【0025】実施例4[LPS投与による血小板への影
響] (血小板相対速度)炎症反応が生じている場合の血小板
の挙動を調べるために、エンドトキシンで誘発される播
種性血管内凝固症候群実験モデルに関する文献(Am J P
athol. 65,51-58, 1971)の記載に準じて、ラットに内
毒素(LPS;O111B4、Sigma製、ミズーリ州セ
ントルイス)を1.0mg/kg/hrで静脈内注射し
た。なお、対照として、担体としての生理食塩水を同様
に静脈内注射した。LPS投与区、対照区とも6匹以上
のラットを用い、両区とも約100個の異なる血小板に
ついて傍内皮領域における血小板相対速度(Vp/V
r)を測定した。結果を図6に示す。対照区における平
均Vp値は、平均Vr値の約92%であったが、図6か
らわかるように、LPSでラットを処理することによ
り、血小板と血管内皮細胞との相互作用が高まり、血小
板相対速度(Vp/Vr)が全体的に低下した。
【0026】(細静脈壁ズリ速度)赤血球の壁ズリ速度
γ(sec-1)は次式により求めることができる(J Clin
Invest. 96, 2009-2016, 1995)。
【数2】 (式中、Vmは前記赤血球の中心線領域流速の平均値/
1.6で求められる平均赤血球速度を、Dvは血管内径
をそれぞれ表す。)かかる赤血球の細静脈壁ズリ速度γ
(sec-1)を上記LPS投与区、対照区について測定し
たところ、投与開始後30分では、それぞれ486±3
9sec-1及び476±52sec-1(7実験の平均値±S
D)であり、統計学的差異を示さなかった。この細静脈
壁ズリ速度の結果と前記血小板相対速度の結果とを考慮
すると、LPSがインビボで傍内皮血小板と細静脈内皮
との接着エネルギーを増加させることがわかる。
【0027】実施例5[抗ヒトGPIbαモノクローナ
ル抗体GUR83/35のインビボ投与におけるLPS
誘発接着エネルギーの抑制] (血小板の転回反応の抑制)実施例4におけるLPS投
与の5分前に、抗ヒトGPIbαモノクローナル抗体G
UR83/35を生体内注射(1.5mg/kg)によ
り投与した。また比較のために、抗ヒトGPIbαモノ
クローナル抗体WGA3を同様に投与した。前記のよう
に、抗体GUR83/35は、ヒトGPIbαのN末端
から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーシ
ョン特異的なエピトープを認識し、リストセチン存在下
におけるvWFのヒト血小板への結合を阻止するが、抗
体WGA3は、ヒトGPIbαの同領域に結合するが、
この反応を阻止しない(Blood.90, 4789-4798, 199
7)。対照区、LPS投与区、GUR83/35・LP
S投与区及びWGA3・LPS投与区について、各区6
匹のラットを用いて、循環血小板数、前記傍内皮領域に
おける血小板の相対密度(Dpe/Dpc)及び傍内皮
空間における血小板相対速度(Vp/Vr)を、生理食
塩水又はLPS投与20分後に測定した。結果を図7に
示す。
【0028】図7からわかるように、LPS投与によ
り、血液中の血小板量は著しく低下したが、相対密度
(Dpe/Dpc)は約20%上昇した。LPS誘発に
よる傍内皮領域における血小板の相対密度の上昇は、傍
内皮空間における血小板相対速度(Vp/Vr)の低下
が示したと同様に、血小板と内皮細胞との接着相互作用
の増加を表している。また、抗体GUR83/35をL
PS投与に先だって予めインビボ投与した場合、対照区
と同じ程度まで上記LPSにより誘発される血小板と血
管内皮細胞との相互作用を抑制しうることがわかった
が、他方、抗体WGA3を予めインビボ投与した場合、
LPSにより誘発される血小板と血管内皮細胞との相互
作用を何ら抑制しないことがわかった(図7中、“*”
は対照区と比べて、また“*#”はGUR83/35・
LPS投与区と比べて、統計学的に有意差があることを
示す。)。また、図7には示されていないが、抗体GU
R83/35又は抗体WGA3をLPS未処理ラットへ
投与した場合における各種測定値は対照区の値と変わら
なかった。
【0029】(白血球の転回抑制)上記の実験におい
て、抗体GUR83/35のインビボ投与における白血
球の挙動に与える影響について調べた。また、参考のた
め、LPS未処理ラットへ抗体GUR83/35を投与
した。対照区、GUR83/35投与区(参考区)、L
PS投与区、GUR83/35・LPS投与区につい
て、傍内皮領域における赤血球速度(Vr)、傍内皮空
間における白血球相対速度(Vw/Vr)及び接着白血
球数を測定した。傍内皮領域における白血球速度(V
w)は、赤血球速度や血小板速度と同様にして測定し
た。白血球相対速度(Vw/Vr)は、血小板相対速度
(Vp/Vr)と同様に、白血球と血管内皮細胞との接
着相互作用を示し、この値が大きいと接着エネルギーが
低下したことを、小さいと接着エネルギーが増加したこ
とを示す。また、上記接着白血球数は、観察画面上で3
0秒以上同一部位に接着している細胞数として計測し
た。したがって、接着白血球数が多くなると、白血球と
血管内皮細胞との接着相互作用が増大していることを意
味する。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】表1からわかるように、LPS未処理の場
合(対照区及び参考区)、抗体GUR83/35の有無
にかかわらず、白血球相対速度(Vw/Vr)や接着白
血球数において有意な差は認められなかった。これに対
して、LPS投与区では、赤血球速度(Vr)において
は対照区と変わりがないが、白血球相対速度(Vw/V
r)は50%程度の低下を示し、また、接着白血球数も
顕著に増加し、白血球と血管内皮細胞との接着エネルギ
ーが増大したことが示された。他方、インビボで抗体G
UR83/35を投与し、5分後にLPSを投与したG
UR83/35・LPS投与区では、LPSにより誘発
される接着エネルギーの増加を、白血球相対速度、接着
白血球数ともに統計学上有意な差をもって、顕著に抑制
した。これらの結果は、GPIbαの機能を抑制するこ
とにより、刺激に伴う白血球の接着反応が抑制されるこ
とを示しており、また、参考区の結果からして、GPI
bαの機能を抑制することにより生じる、白血球接着に
対する抑制効果は、血管が刺激を受けた状況下において
のみ発現することがわかった。
【0032】実施例6[抗ヒトGPIbαモノクローナ
ル抗体GUR83/35による血小板のインビトロ処理
におけるLPS誘発接着エネルギーの抑制] (ヒト及びラット血小板のインビトロCFSE標識化)
上記LPS処理ラットにおける抗ヒトGPIbαモノク
ローナル抗体GUR83/35によるラット血小板やラ
ット白血球の血管内皮細胞との接着抑制効果がヒト血小
板においても同様に発現するかどうかを、LPS投与ラ
ットにヒト血小板を注射して、ラット後毛細血管細静脈
におけるヒト血小板のインビボにおける挙動を、前記生
体内顕微鏡を用いて調べた。ヒト血小板のCFSE標識
化は、当然のことながらインビトロで行われることか
ら、インビトロ標識化も含めてこの実験のコントロール
としてラット血小板のインビトロCFSE標識化も併せ
て行った。
【0033】健康なボランティアから採取したヒト血液
サンプルを用いてヒト血小板を調製した(J Clin Inves
t. 101, 479-486, 1998)。通常この調製には、α−ト
ロンビン抑制剤が凝集阻害剤として使用されるが、この
実験系では内毒素血症ラットで内因性トロンビン活性に
より誘発される細胞の接着反応を阻害する可能性を除外
するために、3.8%クエン酸ナトリウムを抗凝血剤と
して用いた。次に、ヒト血小板が豊富に含まれる血漿
(PRP)サンプルを、90μMのCFDASEで10
分間室温でインキュベートし、その後一回洗浄すること
により、CFSE標識化ヒト血小板を調製した。また、
蛍光標識化ヒト血小板を最終濃度20μg/mlの抗ヒ
トGPIbαモノクローナル抗体GUR83/35又は
WGA3の存在下で浮遊させ、5.0×105細胞/m
lで含む抗体処理ヒト血小板懸濁液を調製し、125μ
l/分で4分間かけてラットに静脈注射した。かかる静
脈注射により、ヒト血小板はラットの腸間膜微小血管系
において鮮明なスポットとして認識できるようになっ
た。
【0034】同様に、ex vivoでCFSE標識した濃度
5.0×105細胞/mlのラット血小板を調製した。
この標識化ラット血小板を豊富に含む血漿を用いて、イ
ンビトロにおいて細胞が刺激依存性凝集を適切に示すか
どうかを、ADP及びリストセチンを刺激剤として用い
るレーザー微小凝集測定法により試験した。この試験に
より、単離過程におけるテクニカルエラーにより起こる
ことがある凝集能が低下した血小板サンプルを排除する
ことができた。また、ヒト血小板におけると同様に、抗
体GUR83/35でインビトロにおいて前処理した
後、ラットに静脈注射した。
【0035】(ラットの標識化血小板及び白血球の挙
動)前記超高速撮像条件では録画時間に制限(1〜2
分)があったため、蛍光標識した血小板を外から投与す
るこの実験では、標識化血小板の挙動をより長期間撮像
することができるように、超高感度シリコン増幅ターゲ
ットカメラ(SIT、C2400−08、Hamamatsu Ph
otonics製、浜松市)を用いた。このカメラで30フレ
ーム/秒で撮像し、数分間蛍光像を得ることができたの
で、再生ビデオ画像を用いて比較的転回速度の遅い血小
板のフレーム毎の解析を行った。図8(参考写真3参
照)には、LPS処理したラット細静脈におけるモノク
ローナル抗体処理又は未処理ラット血小板を、上記SI
Tカメラを用いて撮像した結果が示されている。図8か
ら、注入された血小板は一過性接着及び転回を示した
が、いくつかの細胞は細静脈内皮への固定接着を示すこ
とがわかった。また、傍内皮空間を流れている血小板の
ある集団は、しばしば転回白血球に付着し、白血球−血
小板複合体を形成して、白血球の転回速度をさらに減速
させた。なお、図8における左上の数値は標識化ラット
血小板注射後の経過時間を表し、白抜き及び黒の“星
印”はそれぞれ転回血小板、捕捉血小板を示し、白抜き
の“矢印”は転回白血球の表面に接着した血小板を、黒
の“矢印”は流動状態の血小板が衝突して複合体を形成
し血管細胞壁にゆっくりと接着していく白血球を示して
いる(バーは40μm)。
【0036】次に、標識化ラット血小板を抗体GUR8
3/35で前処理した場合の転回血小板数を調べた。画
像領域において血管に沿った一過性的に転回を示す血小
板は、血管の特定部位で捕捉されたものと同様に、転回
細胞とした。このような転回血小板数を、標識化ラット
血小板(PLT)のみ投与の対照区、PLT・LSP投
与区及びPLT・GUR83/35・LSP投与区につ
き、各5匹の異なるラットの血管内で1分間測定した。
結果を図9に示す。図9から、抗体GUR83/35で
前処理した場合、LPSにより誘発された血小板と血管
内皮細胞との接着作用が、LPS未処理の対照区とほぼ
同程度まで抑制されることがわかった。このことは、血
小板上に構成的に発現するGPIbαの機能阻害が、前
記インビボで標識化した血小板の場合と同様な結果を与
えることを示している。
【0037】(ヒト標識化血小板の挙動)上記標識化ラ
ット血小板を外から注入した場合における結果を踏まえ
て、標識化ヒト血小板を外から注入した場合における、
インビボでのヒト血小板とラット血管内皮細胞との接着
相互作用、特にGPIbαの機能阻害による接着相互作
用ついて調べた。図10には、生理食塩水注射後にヒト
血小板を注射した対照区と、LPS注射後にヒト血小板
を注射したLPS投与区との、傍内皮領域におけるヒト
血小板の転回速度(Vp)のヒストグラムがそれぞれ示
されている。ヒト血小板の転回速度は、標識化ラット血
小板を外から注射開始後4〜8分間の血管壁上の転回血
小板数を再生ビデオテープにより測定した。図10に示
されるように、LPS処理ラットに投与されたヒト血小
板は、対照区と比べ、転回速度の全範囲において、より
高頻度で現出し、0.2mm/秒より低速度のスロー転
回を示すヒト血小板数は、LPS処理グループにおいて
著しく上昇した。このことは、ラットにおけるインビボ
の実験系がヒトの抗炎症剤のスクリーニングに適してい
ることを示している。
【0038】また、図11には、生理食塩水注射後にヒ
ト血小板を注射した対照区と、LPS注射後にヒト血小
板を注射したLPS投与区と、LPS注射後にヒト血小
板を注射したLPS投与区と、LPS注射後に抗体GU
R83/35処理ヒト血小板を注射したGUR83/3
5・LPS処理区及びLPS注射後に抗体WGA3処理
ヒト血小板を注射したWGA3・LPS処理区における
転回ヒト血小板数について、各5匹の異なるラットの血
管内で1分間測定した結果が示されている。図11に示
されるように、LPS誘発による転回ヒト血小板数の増
加は、モノクローナル抗体GUR83/35によりイン
ビトロで前処理した場合、有意に減少したが、抗体WG
A3による前処理では減少しなかった。このことは、ヒ
トGPIbαの機能を阻害する抗ヒトGPIbαモノク
ローナル抗体GUR83/35が、ヒト白血球のヒト血
管内皮細胞への接着に起因する炎症性疾患を抑制するこ
とができることを示している。
【0039】
【発明の効果】本発明によると、白血球の血管への接着
に起因する炎症性疾患を抑制することができる抗炎症剤
をラット等の動物を用いてインビボでスクリーニングす
ることができることから、インビトロでのスクリーニン
グに比べて、精確かつ効率よく抗炎症剤を見い出すこと
ができる。例えば、インビボにおける本スクリーニング
方法により見い出された抗ヒトGPIbαモノクローナ
ル抗体GUR83/35は、動脈硬化、播種性血管内凝
固症候群、多臓器不全、自己免疫疾患等に対する抗炎症
剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インビボCFSE標識化ラット血小板の透過光
源像を示す図である。
【図2】インビボCFSE標識化血小板とCFSE非標
識化血小板における、リストセチン及びADPに対する
凝集形成挙動を示す図である。
【図3】時間的経過にしたがって撮像した微小血管を流
れるインビボCFSE標識化血小板と赤血球を示す図で
ある。
【図4】微小血管の各領域において測定された赤血球の
相対速度、測定時間、測定領域を3次元的に示す図であ
る。
【図5】中心線領域と傍内皮領域におけるインビボCF
SE標識化血小板相対速度の分布を示す図である。
【図6】LPS投与によるインビボCFSE標識化血小
板相対速度(Vp/Vr)における影響を示す図であ
る。
【図7】抗体GUR83/35投与による循環インビボ
CFSE標識化血小板数、血小板の相対密度及び血小板
相対速度における影響を示す図である。
【図8】LPS処理したラット細静脈におけるインビト
ロCFSE標識化ラット血小板を示す図である。
【図9】抗体GUR83/35投与によるインビトロC
FSE標識化ラット血小板の転回血小板数における影響
を示す図である。
【図10】抗体GUR83/35投与によるCFSE標
識化ヒト血小板の転回速度における影響を示す図であ
る。
【図11】抗体GUR83/35投与によるCFSE標
識化転回ヒト血小板数における影響を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 37/02 A61P 37/02 4H045 C07K 16/28 C07K 16/28 C12P 21/08 C12P 21/08 C12Q 1/02 C12Q 1/02 G01N 33/15 G01N 33/15 Z 33/53 33/53 V Fターム(参考) 2G045 AA40 CA24 CA25 DA36 FB03 FB07 FB12 GC15 4B063 QA01 QA18 QQ02 QR72 QX10 4B064 AG27 DA08 4C084 AA17 NA14 ZA451 ZA541 ZB071 ZB112 ZC511 4C085 AA14 BA42 BB12 DD61 4H045 AA11 AA30 CA42 DA76 EA22

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非ヒト哺乳動物に炎症反応を生じせしめ
    ると同時又はその前後に被検物質を投与するか、あるい
    は、炎症反応を常態で示す非ヒト哺乳動物に被検物質を
    投与し、インビボにおける血小板を介しての白血球と血
    管内皮細胞との接着状態を検出・評価することを特徴と
    する血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能
    を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法。
  2. 【請求項2】 エンドトキシンを投与して炎症反応を生
    じせしめることを特徴とする請求項1記載の血小板上に
    発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎
    症性物質のスクリーニング方法。
  3. 【請求項3】 血小板として、CFSEで標識化された
    血小板を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の
    血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑
    制する抗炎症性物質のスクリーニング方法。
  4. 【請求項4】 接着状態の検出・評価が、血管内の白血
    球回転速度(Vw)と赤血球速度(Vr)との比(Vw
    /Vr)で求められる接着エネルギーを指標とした検出
    評価であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記
    載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能
    を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法。
  5. 【請求項5】 投与が静脈内投与であることを特徴とす
    る請求項1〜4のいずれか記載の血小板上に発現する糖
    タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗炎症性物質の
    スクリーニング方法。
  6. 【請求項6】 血管内皮細胞が後毛細血管細静脈である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の血小板
    上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する
    抗炎症性物質のスクリーニング方法。
  7. 【請求項7】 非ヒト哺乳動物がラットであることを特
    徴とする血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの
    機能を抑制する抗炎症性物質のスクリーニング方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか記載の血小板上
    に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する抗
    炎症性物質のスクリーニング方法により得られることを
    特徴とする血小板上に発現する糖タンパク質GPIbα
    の機能を抑制する物質。
  9. 【請求項9】 血小板上に発現する糖タンパク質GPI
    bαの機能を抑制する物質が、GPIbα分子のN末端
    から1〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーシ
    ョンの変化を生じさせる物質であることを特徴とする請
    求項8記載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIb
    αの機能を抑制する物質。
  10. 【請求項10】 GPIbαのコンフォメーションの変
    化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端から1
    〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーション特
    異的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である
    ことを特徴とする請求項9記載の血小板上に発現する糖
    タンパク質GPIbαの機能を抑制する物質。
  11. 【請求項11】 GPIbαのコンフォメーションの変
    化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端から1
    〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーションと
    相互作用するペプチドであることを特徴とする請求項9
    記載の血小板上に発現する糖タンパク質GPIbαの機
    能を抑制する物質。
  12. 【請求項12】 請求項1〜7のいずれか記載の血小板
    上に発現する糖タンパク質GPIbαの機能を抑制する
    抗炎症性物質のスクリーニング方法により得られる抗炎
    症性物質を有効成分として含有することを特徴とする医
    薬組成物。
  13. 【請求項13】 抗炎症性物質が、血小板上に発現する
    糖タンパク質GPIbα分子のN末端から1〜302ア
    ミノ酸残基が形成するコンフォメーションの変化を生じ
    させる物質であることを特徴とする請求項12記載の医
    薬組成物。
  14. 【請求項14】 GPIbαのコンフォメーションの変
    化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端から1
    〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーション特
    異的なエピトープを認識するモノクローナル抗体である
    ことを特徴とする請求項13記載の医薬組成物。
  15. 【請求項15】 モノクローナル抗体が、抗GPIbα
    モノクローナル抗体GUR83/35であることを特徴
    とする請求項14記載の医薬組成物。
  16. 【請求項16】 GPIbαのコンフォメーションの変
    化を生じさせる物質が、GPIbα分子のN末端から1
    〜302アミノ酸残基が形成するコンフォメーションと
    相互作用するペプチドであることを特徴とする請求項1
    3記載の医薬組成物。
  17. 【請求項17】 抗炎症性物質が、動脈硬化、播種性血
    管内凝固症候群、多臓器不全、又は自己免疫疾患に対す
    る抗炎症作用を有する物質であることを特徴とする請求
    項12〜16のいずれか記載の医薬組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006517789A (ja) * 2003-01-10 2006-08-03 アブリンクス エン.ヴェー. 治療用ポリペプチド、その相同物、その断片、および血小板媒介凝集の調節での使用
CN109107535A (zh) * 2018-08-23 2019-01-01 苏州科技大学 一种离子液体磁性类沸石咪唑酯纳米材料及其制备方法与应用

Cited By (2)

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