JP2001309783A - 遺伝子導入用mcp改変遺伝子 - Google Patents

遺伝子導入用mcp改変遺伝子

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JP2001309783A
JP2001309783A JP2000131862A JP2000131862A JP2001309783A JP 2001309783 A JP2001309783 A JP 2001309783A JP 2000131862 A JP2000131862 A JP 2000131862A JP 2000131862 A JP2000131862 A JP 2000131862A JP 2001309783 A JP2001309783 A JP 2001309783A
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transgenic mammal
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Tsukasa Seya
司 瀬谷
Hiroshi Murakami
博 村上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 遺伝子導入用のヒトMCP改変遺伝子、それを
有するトランスジェニック哺乳動物及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】 本発明のヒトMCP改変遺伝子は、SCR1領
域が欠失したヒトMCP又はその変異体からなる。本発明
のMCP改変遺伝子によれば、当該遺伝子を導入されたト
ランスジェニック哺乳動物及び細胞に、ヒト補体に対す
る抵抗性及び麻疹ウイルス感染に対する抵抗性を付与す
ることができる。従って、当該遺伝子を導入した、本発
明のトランスジェニック哺乳動物は、異種移植のドナ
ー、実験動物などとして有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトMCPの改変遺
伝子、それを有するトランスジェニック哺乳動物及びそ
の製造方法に関する。より詳細には、異種移植における
超急性拒絶に対する抵抗性を維持・増強し、且つ病原体
の侵入を抑制する性質をヒト以外のトランスジェニック
哺乳動物に持たせることのできるヒトMCP改変遺伝子、
当該遺伝子を有するヒト以外のトランスジェニック哺乳
動物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、動物臓器をヒトへの移植(異種移
植)に供するための研究が欧米を中心に盛んになってき
ている。臓器を提供する動物としては、ヒトに最も近い
点でサルが好ましいが、サルは希少で知性の高い野生動
物であることから、サルの利用は困難な状況にある。そ
こで、家畜、中でも臓器サイズ、形態がヒトに近く、繁
殖や増産技術の確立しているブタの臓器を利用するため
の研究が主に行われるようになってきた。しかし、ブタ
の臓器をヒトに移植した場合には急激に(数分のうち
に)強い拒絶反応(超急性拒絶)が起こり、移植した臓
器は機能を失ってしまうことが知られている。このよう
な現象は一連の反応の結果として生じると考えられてい
る。即ち、(1)ヒトの血液中にはもともとブタの細胞
上の抗原に反応する抗体(自然抗体と呼ぶ)が存在する
ので、ヒトの体内にブタの組織が移植されると、自然抗
体がブタの組織を認識し抗原抗体複合物が作られる。
(2)抗原抗体複合物はヒトの血清中に含まれる補体を
活性化して補体カスケード反応を惹起させる。(3)補
体カスケード反応の結果として膜侵襲複合体(Membrane
Attack Complex:MAC)が作られ(古典経路と称す
る)、MACが移植されたブタの臓器を侵襲すると共に血
栓も形成される。(4)また、古典経路と共に代替経路
と称する補体カスケード反応のあることも知られてい
る。代替経路の場合は、抗体を必要とせずに活性化さ
れ、反応の後半は上記と同様のカスケード反応が行わ
れ、最終的にはMACが形成される。
【0003】上記の超急性拒絶に関し、Miyagawa, S.
ら(Transplantation, Vol.46(6), 825-830, 1988)は
つぎのことを報告した;(1)異種移植された臓器や器
官の超急性拒絶は古典経路及び/又は代替経路による補
体カスケード反応の惹起により生じる;(2)CVF(cobr
avenom factor)の事前投与により、補体カスケード反
応のC3を欠損させておけば超急性拒絶を生じない。これ
らのことから、異種移植において、C3ステップで補体カ
スケード反応を阻止する膜結合型の補体制御因子である
MCP、特にレシピエント種と同種のMCPを発現する動物の
作成が望まれていた。
【0004】ブタの臓器に、C3転換酵素を分解する作用
を有する補体制御因子であるヒトDAFを発現させたトラ
ンスジェニックブタの開発が試みられている(A. M. Ro
sengardら、Transpalantaion, Vol.59(9), 1325-1333,
1995:G. Byrneら, Transplantation Proceedings, Vo
l.28(2), 759, 1996)。補体制御因子DAFを発現させた異
種移植用トランスジェニックブタに関しては、特許出願
がされている(特表平5‐503074号公報参照)。
しかし、ヒトMCP(以下、単にMCPという)を発現させた
トランスジェニックブタの開発に関しては、MCPでは、
上記の特許出願で示されているいるようなcDNAを用いた
トランスジェニックマウスの作出が困難で、この作出は
MCPのYACクローンを用いることで1999年にはじめて可能
となる(Oldstone M.B.ら、Cell, 98(5),629-40, 1999)
など、遅れていたため、現在まで作出されていない。な
お、MCPのcDNA自体及び4つのSCR(ショートコンセン
サスリピート)ドメインを有することは既に公知である
(Liszewski M.K.ら、Annual Review of Immunology, 9,
431, 1991)。また、膜貫通領域を欠落させた、可溶化
型のMCPの作製に関する特許が知られている(米国特許
第5,552,381号)が、他の部分の欠失やグリコシルフォ
スファチジルイノシトール(GPI)アンカー型への置換
という改変方法は示されていない。
【0005】一方、これらの文献には記載されていない
が、MCPがヒトの麻疹ウイルスの感染の際にレセプター
として働くことが明らかとなり(Dorig R.E.ら、Cell,
75(2), 295, 1993)、MCPを発現させた上記のトランス
ジェニックマウスではヒトの麻疹ウイルスによる感染が
可能であった。このことより、MCP遺伝子を導入したト
ランスジェニック哺乳動物(例えば、トランスジェニッ
クブタ)を作出した場合、MCP遺伝子の導入によりヒト
補体に対する抵抗性が向上するが、それとともに本来感
染しないヒトの麻疹ウイルスに対する感染性も導入する
可能性が高く、この問題の対策が必要とされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、異種移
植における超急性拒絶を防止するためには、MCPを導入
したトランスジェニック哺乳動物を作出することが望ま
しいが、上記のようにMCPがヒト麻疹ウイルスの感染の
際にレセプターとして働くことから、上記のトランスジ
ェニック哺乳動物(例えば、トランスジェニックブタ)
を作出した場合、ヒト補体に対する抵抗性は増強される
が、本来感染しないヒト麻疹ウイルスに対する感染性も
導入する可能性が高くなるという問題がある。本発明者
らは、係る問題を解消するため種々検討した結果、MCP
中のヒト麻疹ウイルスレセプターとなる領域を見出し、
当該領域を欠失させたMCPをコードする遺伝子を導入し
たトランスジェニック哺乳動物を作出することにより、
超急性拒絶に対する抵抗性を維持したまま、ヒト麻疹ウ
イルスに対する感染性を著しく低減させ得ることを見出
して本発明を完成した。本発明は係る知見に基づいてな
されたもので、超急性拒絶に対する抵抗性を維持又は増
強し、且つヒト麻疹ウイルスに対する感染性を抑制する
性質をヒト以外のトランスジェニック哺乳動物に持たせ
ることのできるMCP改変遺伝子を提供するものであり、
更に当該改変遺伝子を有するヒト以外のトランスジェニ
ック哺乳動物及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明においては、MCP
の補体制御因子活性を保持したまま、ヒト麻疹ウイルス
(以下、MVという)の感染性を抑制し得るMCP改変遺
伝子を提供する。より具体的には、本発明者らは、MCP
の4つのSCR(ショートコンセンサスリピート)ドメイ
ンの内、第1のSCRがMVのレセプターの中心部位である
ことを見出し、本発明の改変遺伝子はMCP遺伝子から当
該第1のSCR (SCR1)を除去したことを要旨とするもので
ある。このように改変することによりMCPとは異なる活
性形態を持つことが可能となる。つまり、補体の活性に
重要なSCRの2〜4までのドメインを残し、MVのレセプ
ターとなる中心部分であることが明らかになったSCR1ド
メインを除去することによりMVに対する感染性を防止す
ることができる。また、このような手段をとることによ
り、MCPの補体活性はより活性化し、更にGPIアンカー型
にすることにより一層活性を増強できることが判明し
た。本発明のトランスジェニック哺乳動物は、上記の特
性を有する改変遺伝子を有し、当該遺伝子に基づく補体
制御因子を臓器・組織に発現しているヒト以外の哺乳動
物であり、また本発明のトランスジェニック哺乳動物の
製造方法は、上記の特性を有する改変遺伝子をヒト以外
の哺乳動物に導入することからなる。
【0008】
【発明の実施の形態】上述のように、本発明に係る改変
遺伝子は、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物又は
細胞にヒト補体に対する抵抗性と共にMV感染に対する抵
抗性をもたらすことのできるMCP改変遺伝子である。本
発明におけるトランスジェニック哺乳動物は、ヒト以外
の哺乳動物であれば特に限定されず、例えば、ブタ、マ
ウス、ラット、ハムスター、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサ
ギ、イヌ、ネコなどが例示され、特に前述のように異種
移植を考慮すると、ドナーとして好適なブタが好まし
い。
【0009】本発明の改変遺伝子及びそれを導入された
トランスジェニック哺乳動物は、以下の方法により作製
することができるが、この方法に限定されるものではな
い。まず、ベクターとして、哺乳動物用発現ベクターで
あるpME18Sを使用した。MCPにGPIがアンカー結合した変
異型遺伝子(MCP-PI)が導入されたpME18Sを作製したが、
この際、グリコシルフォスファチジルイノシトールアン
カー(GPIアンカー)型のMCPをコードするcDNAは既報の
如く準備した(Biochem. J., 322, 135, 1997)。簡単に
述べれば、MCPのSCRSTドメイン(1−293残基)は、
DAFのPIアンカー領域(308−347残基)に、連続
したPCR反応により結合され、最終的に目的の断片はpME
18SのEcoRIとPstIのサイトにクローニングした。MCPcDN
Aの変異導入にはT7-GEN In Vitro Mutagenesis Kit(U.
S.B) を用いた。特別なプライマーの配列(5’-TGGACAT
GTTTCTCTGGCATCGGAGAAGGA-3’)は、MCPの1番目のSCR
(SCR1)ドメイン(アミノ酸1−61)を欠損させるよう
に設計されている。SCR1欠損MCP(ΔSCR1)断片はpME1
8SのEcoRI/PstIサイトにサブクローニングした。
【0010】SCR1欠損MCPのGPI型(Δ1MCP-PI)を作るた
めに、上記の2つのコンストラクトが使われた。制限酵
素サイトであるScaIは両方のコンストラクトに共通の領
域(SCR4領域)から選ばれた。Δ1MCP-PIを得るため
に、MCP-PIのEcoRI-ScaI断片とΔ1MCPのScaI-PstI断片
はEcoRI/PstIで切断されたpME18Sに結合された。
【0011】作製されたcDNAのヌクレオチド配列はシー
ケンスによって完全に確認された。天然もしくは変異型
のMCPcDNAは全て哺乳動物の発現ベクターであるpME18S
のEcoRI/PstIサイトにサブクローニングされた。なお、
上記の工程における個々の手法は当業者に知られてお
り、各工程は常法に準じて行うことができる。
【0012】ブタ血管内皮細胞であるSEC-E細胞とPAE細
胞へのMCPの種々のコンストラクトの遺伝子導入は導入
用薬剤であるLipofectamine Plusの使用マニュアルに従
った。各トランスフェクションは各cDNA10μgに対しpGK
hygroのプラスミド1μgで使用された。遺伝子導入され
て48時間後に培養皿の植え替えの為に集められ、ハイ
グロマイシンBによる選別がSEC-E細胞とPAE細胞のため
に0.7mg/10mlと1.2mg/10mlの濃度で始められた。選別開
始3週間でいくつかの抵抗性コロニーが分離され、フロ
ーサイトメトリーによりMCPやMCP変異体が陽性であるコ
ロニーを得るために更に増やされた。
【0013】フローサイトメトリーは常法の通り行っ
た。簡単に述べれば、106の細胞塊は45分間、1次モ
ノクローナル抗体(5μg)でインキュベートされた。3
回洗浄の後、フロロセインイオチオシアネイト(FITC)で
標識した2次抗体を加え、45分間放置した。2回洗浄
の後、細胞は0.5%のパラフォルムアルデヒドで固定さ
れた。サンプルは3日以内にEpics profile IIで解析し
た。
【0014】MV感染試験は以下のように行った。即ち、
MCP又はその変異型が存在又は非存在の細胞は、24 穴プ
レートで70%の密集率の状態で15時間培養され、0.01-
7.5x103(p.f.u)/ウェルのMVに感染させられた。いくつ
かの実験では同時にプラーク形成検定が行われた。CHO
細胞の多核体形成とプラーク形成の相関を確認した(J.B
iol. Chem., 270, 15148, 1995)。形成された多核体は
計測され、遺伝子導入ブタ細胞の細胞病理学的効果は、
感染後2-8日で見られた。細胞はオリンパス顕微鏡下(I
X-60)で撮影された。
【0015】C3断片付着検定及び補体による細胞傷害性
試験におけるC3の付着は既述のようにフローサイトメト
リーで検定された(J. Immunol. 145, 238, 1990)。細胞
障害性試験はラクテート・デヒドロゲナーゼ(LDH)キッ
ト(Kyokuto)を用いて行われた。簡単に述べれば、遺
伝子導入された細胞は検定一日前に96穴プレートに2x
104/ウェルでまかれた。15時間後、プレートは20%も
しくは40%のプールしたヒト正常血清(NHS、DMEMで希釈
して使用)で37℃2時間反応させられ、放出されたLD
Hが検定された。標的細胞から自然に放出されるLDH活性
は、1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で求められた最
大に放出されるLDH活性の5%以下であった。
【0016】本発明のMCP改変遺伝子を導入したトラン
スジェニック哺乳動物は、以下の方法により作製するこ
とができる。まず、プロモーターと本発明のMCP改変遺
伝子を結合した導入用遺伝子を調製する。この方法とし
ては、適当なベクター(例えば、pGL-3ベーシックベクタ
ー、pBluescript等)の一部を制限酵素で抜き取り、その
ベクター側の末端を常法に準じて平滑化しておく。一
方、MCP改変遺伝子の開始コドンの直前から終始コドン
直後の領域を制限酵素で切り取り、その末端を常法に準
じて平滑化した後、上記のベクターの平滑化した部分に
挿入し、更に適当なプロモーターをMCP改変遺伝子挿入
部位の上流側に挿入する。上記のプロモーターとして
は、MCP改変遺伝子を哺乳動物の体内で発現し得るプロ
モーターであれば特に限定されず、例えば、エンドセリ
ンのプロモーター、ブタ補体制御因子(pMCP)プロモータ
ーなどが例示できる。かくして得られたベクター(環状
遺伝子)より、プロモーターとMCP改変遺伝子を含む領
域を適当な制限酵素で切り出すことにより、導入用遺伝
子が調製される。なお、上記の工程における個々の手法
は当業者に知られており、各工程は常法に準じて行うこ
とができる。
【0017】トランスジェニック哺乳動物は、上記で調
製された導入用遺伝子を哺乳動物の受精卵(前核期卵)
の前核にマイクロインジェクション法などの慣用の方法
で導入し、当該受精卵を必要に応じて培養し、又は培養
せず直に疑妊娠状態に同期化させておいた雌性哺乳動物
(レシピエント哺乳動物)の卵管又は子宮に移植し、産
仔を得ることにより作製される。なお、前核にマイクロ
インジェクションを行う際に、受精卵内の多量の脂肪粒
の存在等により前核の確認が困難な場合には、常法に従
って予め遠心処理を行う。作製された産仔がトランスジ
ェニック哺乳動物であることの確認は、ドットブロッテ
ング法、PCR法、免疫組織学的方法、補体抵抗性試験な
どにより行うことができる。
【0018】かくして得られたトランスジェニック哺乳
動物は、常法に準じて交配し、産仔を得ることにより繁
殖させることができる。また、当該トランスジェニック
哺乳動物の細胞を初期化培養し、又はせずに、予め除核
しておいた未受精卵と細胞融合させ、レシピエント哺乳
動物の卵管又は子宮に移植し、クローン産仔を得ること
によっても繁殖させることもできる。本発明で得られた
トランスジェニック哺乳動物及び細胞は、本発明の改変
遺伝子を有し、ヒト補体に対する抵抗性を有すると共に
MV感染に対する抵抗性を有する。かくして得られたトラ
ンスジェニック哺乳動物は、異種移植用家畜又は実験動
物として有用である。
【0019】
【発明の効果】本発明のMCP改変遺伝子によれば、当該
遺伝子を導入されたトランスジェニック哺乳動物及び細
胞に、ヒト補体に対する抵抗性及びMV感染に対する抵抗
性を付与することができ、より具体的には下記のような
効果が得られ、医学、薬学などの分野で有用である。 (1)本発明の改変遺伝子が導入されたトランスジェニ
ック哺乳動物の臓器、例えば心臓、肺、肝臓、腎臓など
とヒトの血液を接触させるか、又はこれらの臓器を霊長
類の動物に移植すれば、MCPが異種移植に伴う超急性拒
絶の回避に有用であること、ヒト麻疹ウイルスの感染を
抑制できることを確認することができ、従来法よりより
強い活性を示すMCP変異体を提供できる。 (2)本発明の改変遺伝子が導入されたトランスジェニ
ック哺乳動物の臓器、例えば心臓、肺、肝臓、腎臓など
とヒトの血液を接触させるか、又はこれらの臓器を霊長
類の動物に移植して異種移植モデルを作製すれば、異種
移植時の超急性拒絶の回避を補完する薬剤・処置器材等
及び/又は超急性拒絶の後に発生すると危惧されている
急性又は慢性拒絶を回避するための薬剤・処置器材等の
開発に資することができる。 (3)MCPの発現だけでは解決できない超急性拒絶に関す
る問題点を顕在化させるための研究開発を行うことが可
能となる。即ち、超急性拒絶の回避のためには、糖転移
酵素の導入と共に補体制御因子及び/又は血管内皮の恒
常性を維持する因子(例えば、トロンボモジュリンな
ど)の導入が必要か否かの議論に解答を与えることがで
きる。 (4)本発明の改変遺伝子が導入されたトランスジェニ
ック哺乳動物に他の補体制御因子を発現するトランスジ
ェニック哺乳動物を交配させるなどすれば、それぞれの
補体制御因子の相乗効果を検討することも可能である。 (5)本発明の改変遺伝子が導入されたトランスジェニ
ック哺乳動物の臓器(例えば、心臓、肺、肝臓、腎臓、
膵臓等)、臓器に付属する組織(例えば、冠状動脈、脳
硬膜等)や細胞(例えば、インスリンを産生するランゲ
ルハンス島、ドーパミンを産生する脳黒質線条体細胞
等)等をヒト患者に移植すれば既にダメージを受け機能
を失調させた患者臓器等の補完、あるいはその代用とす
ることを、麻疹ウイルスの感染のおそれが無く行うこと
ができる。 (6)本発明の改変遺伝子が導入されたトランスジェニ
ック哺乳動物の臓器の細胞(例えば、肝臓、腎臓などの
臓器から採取した細胞、インスリンを産生するランゲル
ハンス島、ドーパミンを産生する脳黒質線条体細胞)を
培養し、培養細胞を適宜器材装置等に組み入れ、対応す
る臓器の機能が失調しているヒト患者と体外循環系を介
して接続すれば、失調している臓器の代替や治療として
活用することが麻疹ウイルスの感染のおそれが無く可能
となる。
【0020】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものでは
ない。 実施例cDNAコンストラクトとブタの血管内皮細胞での発現 本研究では、MCPのSTC/CYT2型が使われた。まず、MCPの
cDNAコンストラクトを作製した。一つは、膜貫通領域を
持つMCP(MCP)、2つ目はGPIアンカー型のMCP(MCP-PI)、
3つ目はSCR1を欠いた膜貫通領域を持つMCP(Δ1MCP)、
4つ目はSCR1を欠いたGPIアンカー型のMCP(Δ1MCP-PI)
である。これらの配列はシーケンサーで確認された。こ
れらの略図とシグナルペプチド(SP)とSCR2間及びSTcとG
PIアンカー間のつなぎ目周辺のアミノ酸配列を図1に示
した。これらの配列は哺乳動物の発現ベクターであるpM
E18Sに繋げられ、蛋白の発現は最初にCHO細胞に対し、
前述のようにリポフェクタミンを用いて行われた。予想
通りの結果がCHO細胞で得られたので、同様の実験が次
は2種のブタ血管内皮細胞であるSEC-E又はPAEで行われ
た。これらの細胞株は特異的なモノクローナル抗体での
み認識されるブタのMCPを発現していた。4種のMCP変
異体を発現した多くのクローンを発現することができ
た。これらのMCP発現レベルはヒトの血管内皮細胞であ
るHUVECと同様なレベルであった。
【0021】MV感染試験において、マクロファージに対
して厳しい細胞変性効果(Cytopathic effect, CPE)を生
じる野生型MV株であるナガハタがこれら試験に使われ
た。最初にMCPを発現しているSEC-E(SEC-MCP)とMCPを発
現しているPAE(PAE-MCP)に対してのMVの増殖性を調べ
た。MV(1.5x102 p.f.u.)は常法に従い細胞に接種され、
洗浄後、5日間放置された。その結果、MVはこれら2つ
のブタ血管細胞株に異なるCPEを誘導した。SEC-MCPは散
乱したような形態をとるが、PAE-MCPはMV感染による典
型的な多核体を示す。H蛋白のmRNAをRT-PCR増幅するこ
とによりMVの複製を確認したところ、PAE-MCPではMVの
複製が確認されたが、他の細胞では確認されなかった。
それ故、MVはブタ細胞に感染し、いろいろな形でCPEを
生じる。次に観察されたCPEが直接MCPの発現に関係する
のかを調べた。MV感染実験はヒトのMCPを発現していな
いコントロール細胞と一緒に行われた。PAE細胞はMCPの
発現がないときはMVに抵抗性を示す。MV感染性はMFS(me
an fluorescence shift)の区分で中間の発現を示す(6.
6-12.2)、4つのクローンで行われた。種々のドーズの
MV(0.01-7.5x103 p.f.u.)がこの試験に用いられた。PAE
-MCP細胞はSCR1を持つMCP (MCP又はMCP-PI)が発現され
た場合のみ3日以内にMVの働きで多核体を形成した。MC
Pの発現の結果として形成される多核体で有ることは、M
Vの侵入を阻害する抗MCPモノクローナル抗体であるM177
で確認された。クローンが異なる発現レベルのMCPを持
つにもかかわらず、多核体の形成はM177の投与により完
全に抑制された(図2参照)。CHO細胞に比べ、Δ1MCP
又はΔ1MCP-PIを持つPAEクローンはMVに抵抗性であ
る。MVのドーズをふって確認(1.5x102-7.5x103 p.f.
u.)した結果、中程度の発現のMCPであっても低めのMV
ドーズ でブタ細胞に多核体形成を誘導するのに十分で
あった。これらの結果から、SCR1の欠損はブタ細胞をMV
より防御するのに効果的であることが判明した。
【0022】MCPの発現のヒト補体の細胞障害性に対
する効果 MCPはPAE-MCPにおいてMVの増殖や補体の細胞障害性に対
しての防御に際し重要な役割を持つので、この細胞株が
補体防御のモデル研究に使われた。最初に、MCP変異体
を持つPAEのクローン細胞が正常ヒト血清を反応させら
れ、C3断片の付着がフローサイトメトリーによって確か
められた。驚くべきことに、GPIアンカー型やΔ1MCPの
方が正常型のMCPよりC3の付着を抑制した。統計学的解
析により、この傾向は著しいものではないが、確かなも
のであることが確認された。これらの組み合わせである
Δ1MCP-GPIはこれらのブタ細胞においてヒトの補体に
対し最も強い防御性を示した。MCPのI因子とのコファク
ター活性は同種の補体から宿主の細胞の防御に働くと信
じられている(J. Exp. Med., 172, 1673, 1990)。同量
のMCP変異体を含む溶解細胞抽出物が作られ、蛍光性の
基質であるDACM-C3maによってコファクター活性が検定
された(j.Biochem., 97, 373, 1985)。全ての変異体が
同等のコファクター活性を示した。PAE 細胞障害性の抑
制率が、一連のMCP遺伝子導入細胞を用いてNHS(補体
原)で行われた。前記と同様に、PIアンカー型とΔ1MC
P 型が正常型に比べ効果があり、Δ1MCP-GPIが最大の
効果を示した(図3参照)。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験に用いたMCPとMCPの変異体の略図である。
全てのコンストラクトは実施例に示したとおりで、哺乳
動物の高発現ベクターであるpME18Sに組み込まれ、ブタ
由来の樹立株である2つの異なった血管内皮細胞に遺伝
子導入された。MCPのSTc/CYT2型は野生型のMCP(WT)と
して用いられた。MCP-PI変異体に関して言えば、GPIア
ンカーを付着させるためにMCPの4つのSCRとST領域は
DAFの配列(308-347aa)に結合された。Δ1MCPとΔ1M
CP-PI変異体は簡略に示されている。各修飾されたつな
ぎ目のアミノ酸配列は図示されている。SPはシグナルペ
プチドである。
【図2】MCPを発現しているPAEで誘導されるMV関与の多
核化形成はM177(抗MCPモノクローナル抗体)の前処理
によって阻害されることを示す図である。モノクローナ
ル抗体M177の存在下、非存在下で形成されるウイルスに
よる多核化形成数は、横軸にMV濃度(5units=40p.f.
u.)を取って示した。
【図3】MCPの発現によるPAE細胞におけるC3断片付着の
阻害率及びMCPの機能によるPAE細胞の補体の細胞障害性
の阻害率を示す図である。 (a):種々のMCP変異体を発現しているPAE細胞及びコン
トロールの正常PAE細胞は、抗ヒトC3及びFITC標識され
た2次抗体を用いて、生きている細胞がフローサイトメ
トリーで測定された。各クローンにおけるC3断片付着阻
害率(%)は正常のPAE細胞へのC3の付着を元に評価さ
れた。 (b): PAEとΔ1MCP-PIを発現しているPAEは20%又は40%
のNHS(ヒト正常血清)と反応させられ、細胞の傷害率
を測定した。傷害率(%)は上清のLDH活性によって計
測された。Δ1MCP-PI以外のMCP変異体を発現している
他のPAEクローンはPAEに比べ補体の細胞障害性に対し抵
抗性を示す。しかしながら、MCP-PIはこれら変異体で最
強の抵抗性を示した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村上 博 茨城県つくば市緑ヶ原3丁目3番 日本ハ ム株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA10 AA20 BA63 BA80 CA04 CA06 DA02 EA04 GA13 GA18 HA01 4B065 AA90X AA93Y AB01 AC20 BA05 CA26 CA60

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SCR1領域が欠失したヒトMCP(Membra
    ne cofactor protein, CD46)又はその変異体からなるこ
    とを特徴とする遺伝子導入用MCP改変遺伝子。
  2. 【請求項2】 改変遺伝子が、SCR1領域が欠失した
    MCPにグリコシルフォスファチジルイノシトールがアン
    カー結合した変異体である請求項1記載の遺伝子導入用
    MCP改変遺伝子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の改変遺伝子
    を有し、当該遺伝子に基づく補体制御因子を臓器・組織
    に発現しているヒト以外のトランスジェニック哺乳動
    物。
  4. 【請求項4】 トランスジェニック哺乳動物が、家
    畜又は実験動物である請求項3記載のトランスジェニッ
    ク哺乳動物。
  5. 【請求項5】 トランスジェニック哺乳動物が、ブ
    タ、マウス、ラット、ハムスター、ウシ、ウマ、ヒツ
    ジ、ウサギ、イヌ又はネコである請求項4記載のトラン
    スジェニック哺乳動物。
  6. 【請求項6】 請求項3〜5の何れかに記載のトラ
    ンスジェニック哺乳動物より得られる臓器、組織又は細
    胞。
  7. 【請求項7】 ヒト以外の哺乳動物に、請求項1又
    は2記載の改変遺伝子を導入することからなるトランス
    ジェニック哺乳動物の製造方法。
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Non-Patent Citations (9)

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