JP2001267099A - ベータトロン振動数測定装置及び測定方法 - Google Patents

ベータトロン振動数測定装置及び測定方法

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JP2001267099A
JP2001267099A JP2000083715A JP2000083715A JP2001267099A JP 2001267099 A JP2001267099 A JP 2001267099A JP 2000083715 A JP2000083715 A JP 2000083715A JP 2000083715 A JP2000083715 A JP 2000083715A JP 2001267099 A JP2001267099 A JP 2001267099A
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betatron
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Daizo Amano
大三 天野
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Sumitomo Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子軌道に悪影響を与えず、簡単な構成でベ
ータトロン振動数を測定し、電子蓄積リングの小型化の
要求を達成したベータトロン振動数測定装置及びベータ
トロン振動数測定方法を提供する。 【解決手段】 電子軌道を所望の偏向角で偏向する複数
の偏向電磁石を備え、電子ビームを周回軌道内に所望の
エネルギーで蓄積するようにした電子蓄積リングに用い
られるベータトロン振動数測定装置10において、短時
間励磁して電子軌道を偏向するパルスマグネット30
と、パルスマグネット30を短時間励磁するパルスマグ
ネット用電源20と、蓄積電子のベータトロン振動数測
定用のピックアップ電極240と、蓄積電子のベータト
ロン振動数測定用のリアルタイムスペクトラムアナライ
ザ50とを備えた構成とした。この場合、電子蓄積リン
グに取り付けられる入射用パルスマグネットを、ベータ
トロン振動数測定用10のパルスマグネット30として
用いるようにすると、製作コストを増大させず、電子蓄
積リングの小型化にも寄与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子蓄積リングの
蓄積電子のベータトロン振動の振動数を測定するベータ
トロン振動数測定装置、及び、ベータトロン振動数の測
定方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】高エネルギーで運動している電子(陽電
子を含む。)は、その軌道を強制的に変更されると、接
線方向に制動放射の形でシンクロトロン放射光(yn
chrotron adiation:以下、「S
R」という。)を放出するという性質を有している。こ
の性質を利用して、所望の波長及び強度のSRの光源と
して用いることを目的とした小型電子蓄積リングが実用
に供されている。
【0003】この小型電子蓄積リングの基本原理は、特
願平11−227051に比較的詳細に説明されてお
り、本願明細書では、図5を用いて、その基本構成を簡
単に説明するのにとどめる。また、本発明の特徴を把握
する便を図るために、ベータトロン振動、四重極電磁
石、電子蓄積リングの入射系、高周波加速空胴、ベータ
トロン振動による共鳴の問題、従来のベータトロン振動
数の測定方法、及び、放射減衰について順次説明する。
【0004】図5に小型電子蓄積リングの一例として、
レーストラック型の電子蓄積リング100の平面図を示
す。このタイプの電子蓄積リング100では、図5に示
すように180度偏向型の偏向電磁石110A、110
Bを対向配置し、高真空に保たれたビームダクト130
内の周回軌道に、入射器140からセプタム電磁石12
0を介して入射された電子(以下「電子ビーム」ともい
う。)を磁場の偏向作用により所望のエネルギーで、水
平面内の周回設計軌道(以下、「閉軌道」という場合も
ある。)内に蓄積する。
【0005】また、電子蓄積リング100の他の主要構
成としては、電子ビームを設計軌道内に収束する四重極
電磁石150A、150B、蓄積した電子ビームにエネ
ルギーを供給する高周波加速空胴160、電子を入射す
る際の入射軌道を形成する入射用パルスマグネット17
0、ビームダクト130内の周回設計軌道上に電子ビー
ムが設計通り蓄積されているかどうかをモニタリングす
るビームポジションモニタ180が挙げられる。なお、
四重極電磁石150A、150B、高周波加速空胴16
0については後述する。
【0006】図5に示す電子蓄積リング100は、主と
してSR用光源として開発された典型的な電子加速器で
ある。蓄積する電子ビームの電流が大きく、強磁場で偏
向電磁石の曲率半径を小さくして、SRの臨界波長を比
較的高エネルギーのX線領域まで短くし、特に、X線リ
ソグラフィー用の小型光源として使用されることを目的
としている。
【0007】次に、一般に、図5に示すような電子蓄積
リング100に蓄積される電子のベータトロン振動につ
いて説明する。蓄積電子は、電子蓄積リング100に入
射された際に、既にある一定の広がりを持つので、全電
子が設計された閉軌道上を周回するのではなく、その設
計軌道を中心に電子蓄積リング100の閉軌道を1周す
る間に、閉軌道を中心として、その閉軌道に垂直な平面
内において微小振動をする。
【0008】この微小振動のことをベータトロン振動と
いい、電子が閉軌道を1周する間に振動する回数のこと
をベータトロン振動数又はベータトロンチューン、或い
は単にチューンという。従って、以下の説明において、
ベータトロン振動数のことを単に「チューン」という場
合がある。
【0009】次に、四重極電磁石150A、150Bに
ついて簡単に説明する。四重極電磁石150A、150
Bは、中心の磁場強度をゼロとし、中心から距離に比例
して増加する磁場分布となるような四重極磁場を励磁
し、光学上の集光レンズが光を集光するのと同様に、電
子ビームを集束する役割を担うものである。これらの四
重極電磁石150A、150Bにより電子ビームはビー
ムダクト130内で高真空に保たれた閉軌道内から発散
することなく、安定な状態で電子蓄積リング100に蓄
積されることになる。また、主として、四重極電磁石1
50A、150Bの集束力を調整することにより、ベー
タトロン振動数等の電子蓄積リング100の様々なパラ
メータを制御する。
【0010】次に、電子蓄積リング100の入射系につ
いて補足説明をする。相対性理論によれば、粒子の運動
エネルギーが増大すると、それに伴って質量が増大する
ので、蓄積電子が磁場中において曲がりにくくなる現象
が見られる。そこで、一定の設計軌道に電子ビームを閉
じ込めるために、一般に、図5に示すものに限らず、電
子蓄積リングでは、電子ビームのエネルギーに連動して
偏向電磁石の磁場強度を調節している。
【0011】従って、逆に、図5に示す偏向電磁石11
0A、110Bの磁場強度を小さくすることにより、理
論的にはいかなる低エネルギーの電子も蓄積できるはず
である。しかし、電子のエネルギーが極端に小さいと、
ビーム軌道が不安定になり、長時間安定して電子ビーム
を蓄積できなくなるという問題がある。
【0012】そこで、図5に示す入射器140により電
子を一定のエネルギーにまで加速して、電子蓄積リング
100に入射させるようにしている。例えば、図5に示
すタイプのものでは、マイクロトロンと呼ばれる入射器
140により電子のパルスビームを150MeVまで加速
する。一方、入射器140から入射させられる電子は、
電子蓄積リング100の周回軌道に対して一定の角度を
有しているために、スムーズに電子を周回閉軌道にのせ
るために、電子ビームの方向を転換するセプタム電磁石
120を用い、このセプタム電磁石120を介して、電
子蓄積リング100に入射させる。
【0013】一方、上述したベータトロン振動のため
に、入射後、電子に何の工夫も施さなければ、電子ビー
ムは閉軌道を複数回周回した後に、入射されたセプタム
電磁石140の位置に戻り、セプタム電磁石140と衝
突して、安定な設計軌道で蓄積される前に消滅してしま
う。
【0014】そこで、入射用パルスマグネット170に
パルス電流を流し、瞬間的に励磁させて、パルスの立ち
下がりを使って電子ビームを偏向し、入射軌道といわれ
る入射時のみ変形された軌道を形成して電子ビームの入
射を行う。これにより、電子は入射後もセプタム電磁石
140と衝突することなく、設計軌道にのって、安定し
て周回するようになる。
【0015】次に、高周波加速空胴160について、図
5を参照して説明する。上述したように、電子蓄積リン
グ100に蓄積されている電子は、主として、偏向電磁
石110A、110Bで曲げられる際に、SRを放出し
て、そのエネルギーが減衰してしまう。
【0016】そこで、このエネルギーロスを常時補完し
てやらなければ、電子ビームを所望のエネルギーで、安
定して周回軌道内に蓄積できなくなくなる。また、蓄積
した電子ビームのエネルギーを増大させて、より高エネ
ルギーで電子を蓄積し、多様な利用用途に対応しなけれ
ばならない場合もある。
【0017】このように、蓄積した電子ビームにエネル
ギーを供給するのが、図5に示す高周波加速空胴160
である。高周波加速空胴160とは、簡単に説明する
と、高周波電力を投入し、電子が高周波加速空胴160
の加速ギャップに差し掛かった際に、丁度加速されるよ
うに高周波加速空胴160に発生する高周波電圧の位相
と電子の位置とをうまく同期させて、蓄積電子にエネル
ギーを供給するようにした装置である。
【0018】電子が電子蓄積リング100内の周回軌道
を1周する間に、高周波加速空胴160に供給される高
周波電圧が何回振動するか、その回数のことをハーモニ
ックナンバーという。このハーモニックナンバーが整数
となるように、周回軌道の長さと高周波加速空胴160
にかける高周波の周波数を調節することにより、電子が
高周波加速空胴160を通過する毎にエネルギーを供給
できるように工夫できる。これにより、電子のエネルギ
ーのロスを補完したり、電子を入射後、所望のエネルギ
ーにまで電子を加速することが可能となる。
【0019】次に、ベータトロン振動の共鳴の問題につ
いて、図5を参照して説明する。上述したベータトロン
振動のチューンが整数の場合は、電子蓄積リング100
内に余分な偏向磁場がある場合は、電子が一周するごと
に同じ方向に偏向され、ベータトロン振幅が徐々に増大
してしまい、電子軌道が発散し、電子ビームが消滅して
しまう。
【0020】また、ベータトロン振動数が半整数の場
合、四重極電磁石150A、150Bに誤差磁場があれ
ば、同様に、ベータトロン振幅が徐々に増大してしまう
一種の共鳴が起こり、電子軌道が発散して電子ビームが
消滅してしまう。従って、電子蓄積リング100を運転
する際には、電子を安定に蓄積するため、チューンがこ
のような数値となるのを避けなければならない。
【0021】ところで、蓄積電子に、例えば、図5に示
すような偏向電磁石110A、110Bでのダイポール
磁場や四重極電磁石150A、150Bの四重極磁場等
の線型磁場だけを作用させておくと、X方向、Y方向の
ベータトロン振動は夫々独立に振動する。しかし、電子
蓄積リング100では、スキュー4極磁場、6極磁場、
或いは、スキュー6極磁場等の非線型の誤差磁場が作用
すると、X方向、Y方向のベータトロン振動がカップリ
ングを起こし、水平方向のチューンνXと垂直方向のチ
ューンνYとが、ある関係を満たすとき、或いは、その
関係の近傍にある時に共鳴し、電子のビームサイズが拡
大したり、極端な場合は電子ビームが飛び散って消滅し
たりする現象が起きる。
【0022】例えば、誤差磁場がスキュー4極磁場であ
る場合は、X、Y方向のチューン(νX,νY)がνX
νY=(整数)の関係を満たすとき、或いはこの近傍に
あるときに共鳴を起こすことが知られている。また、誤
差磁場がスキュー6極磁場である場合は、X、Y方向の
チューン(ν X,νY)が2νX−νY=(整数)の関係を
満たすとき、或いは、この近傍にあるときに共鳴を起こ
すことが知られている。更に、高次の多極の誤差磁場に
原因する様々な共鳴現象が存在する。
【0023】即ち、電子蓄積リング100を運転する際
には、電子を安定に蓄積するために、四重極電磁石15
0A、150Bの集束力を調整して、チューンがこのよ
うな共鳴を起こす数値となるのを避けなければならず、
電子蓄積リング100のチューンを測定することは、極
めて重要な事項である。従って、以下、RFノックアウ
ト(RFKO)法といわれる、従来のベータトロン振動
数測定方法について、図6を用い、図5を参照して説明
する。
【0024】図6は、RF(高周波)ノックアウト法に
用いる従来のベータトロン振動数測定装置200の概略
構成を示すブロック図である。図6に示すように、従来
のベータトロン振動数測定装置200は、高周波信号発
生器210、高周波増幅器220、電子蓄積リング10
0のビームダクト130内に取り付けられるRFノック
アウト用電極230、同じくビームダクト130内に取
り付けられるベータトロン振動数測定用のピックアップ
電極240、及び、ベータトロン振動数測定用のスペク
トラムアナライザ250を備えた構成である。
【0025】蓄積された電子のベータトロン振動数と同
じ振動数、或いは、ベータトロン振動数に電子の周回周
波数の整数倍を足した周波数の高周波を、高周波信号発
生器210で発生させ、この高周波を高周波増幅器22
0で増幅し、RFノックアウト用電極230に印加す
る。すると、蓄積電子は、このRFノックアウト用電極
230を通過する毎に偏向され、結果的に、電子は共鳴
的に振動させられ、ベータトロン振幅が大きくなり、こ
れがピックアップ電極240に信号として伝わる。
【0026】従って、電子のベータトロン振動数を測定
する場合は、RFノックアウト用電極230に印加する
高周波の振動数を徐々に変化させてゆき、ピックアップ
電極240からの信号をスペクトラムアナライザ250
で測定し、共鳴的に振動している高周波の周波数を測定
することにより、蓄積電子のベータトロン振動数が測定
できる。
【0027】以上が、RFノックアウト法の基本原理で
あるが、実際のベータトロン振動数測定装置300は、
より正確なベータトロン振動数の測定を行うために、図
7に示すような各装置で構成されている。
【0028】即ち、実際のベータトロン振動数測定装置
300は、上述した高周波信号発生器210、高周波増
幅器220A〜220D、RFノックアウト用電極23
0、ピックアップ電極240、スペクトラムアナライザ
250の他に以下のような装置を備えている。
【0029】高周波信号発生器210から発生した高周
波信号を電子蓄積リング100のRFシステム400
と、RFノックアウト用電極230方向に分けるスプリ
ッタ310、高周波信号発生器210から発生した高周
波信号とトラッキングジェネレータ350からの信号を
足し引きするダブルバランスドミキサー320、ダブル
バランスドミキサー320により合成された高周波のう
ち、低い周波数の高周波を選択的に通すローパスフィル
タ330、及び、ローパスフィルタ330を通過した高
周波を水平方向及び垂直方向に位相を調整して配分する
位相調整回路340である。このような構成のベータト
ロン振動数測定装置300を用いることにより、蓄積電
子のベータトロン振動数を、より正確に測定することが
できる。
【0030】次に、電子蓄積リング100の放射減衰に
ついて、図5を参照して説明する。放射減衰(radi
ation damping)とは、蓄積電子がSRを
放射して、徐々にベータトロン振動の振幅が減衰して行
くことをいう。ベータトロン振幅が小さくなれば、蓄積
電子群は、設計軌道上に集まってくるので、電子ビーム
のクオリティが向上する。即ち、電子蓄積リング100
は、入射時にビームクオリティが悪くても、蓄積してい
るうちに放射減衰により、ビームクオリティが向上する
という性質を有している。
【0031】これは、電子は接線方向にSRを放出して
運動エネルギーを失うが、図5に示す加速空胴160で
は、常に、電子の設計軌道方向にしか加速されないため
に、電子の運動方向が、徐々に設計軌道に収斂して行く
ためである。
【0032】蓄積電子は、主として、偏向電磁石110
A、110BにおいてSRを放射するが、1個の電子が
電子蓄積リング100を一周する間に失う平均エネルギ
ーUは、次式(1)で与えられる。 U(kev)=88.5・E4(GeV)/ρ(m) (1) ここで、Eは、電子蓄積リング100に蓄積される電子
のエネルギーで、単位は(GeV)としたもの、ρは偏向電
磁石110A、110Bの曲率半径で単位は(m)、ま
た、平均エネルギーUの単位は(kev)で表される。
【0033】また、放射減衰により電子のベータトロン
振動の振幅が、1/e(e=2.71828・・・)に
なる時間を減衰時間(damping time:以下
「ダンピングタイム」という。)というが、このダンピ
ングタイムτは、次式(2)、(3)で与えられる。 τx=2ET/UJx (2) τy=2ET/UJy (3) ここで、τxは、水平方向(X方向)のダンピングタイ
ム、τyは垂直方向(Y方向)のダンピングタイムであ
る。また、Tは電子の電子蓄積リングを周回する周回周
期、Jx、Jyは夫々水平、垂直方向の減衰分配率といわ
れ、通常はJx〜Jy=1である。
【0034】図5に示す電子蓄積リング100では、電
子をエネルギーE=700MeV(=0.7GeV)で蓄積し
た場合のダンピングタイムτは、τx=5.0(ms)、τy
=4.2(ms)である。また、式(1)〜(3)から分か
るように、ダンピングタイムτは、電子の蓄積エネルギ
ーEの3乗に反比例する。即ち、電子の蓄積エネルギー
Eが大きければ、速やかにダンピングするが、蓄積エネ
ルギーが小さければ、ダンピングには時間がかかるとい
う性質を表している。
【0035】電子蓄積リングでは、光源は電子そのもの
であるから、ビームクオリティが向上すると、SRの輝
度も増大するので、ダンピングという性質は高輝度の光
源として利用するには好適なものであり、電子蓄積リン
グ100が次世代のX線リソグラフィー用光源に目され
ている所以の一つである。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
ベータトロン振動数測定装置では、電子ビームの軌道を
偏向するために、ビームダクト内にRFノックアウト用
電極を挿入し、このRFノックアウト用電極に高周波を
印加していた。しかし、ビームダクト内にこのようなR
Fノックアウト用電極を挿入することは、ビームダクト
のインピーダンスが不連続になり、荷電粒子である電子
ビームの軌道に悪影響を与えるという問題を備えてい
る。また、RFノックアウト用電極を挿入した箇所から
リークし、ビームダクト内の真空が悪くなる虞れも否定
できない。
【0037】更に、電子蓄積リングにRFノックアウト
用電極を挿入するためには、挿入場所を確保しなければ
ならず、この結果、電子蓄積リングの直線部分を大きく
しなければならない。このように、電子蓄積リングの直
線部分が大きくなると、電子蓄積リングが大型化し、電
子蓄積リングの設備コストが増大すると共に、電子蓄積
リングを設置する建屋の建設コストが嵩むという問題が
ある。更に、電子蓄積リングによっては、RFノックア
ウト用電極を挿入する余地のないものも存在し、このよ
うな場合では、ベータトロン振動数を測定する有効な手
段が存在していなかった。
【0038】本発明は、上記課題(問題点)を解決し、
電子軌道に悪影響を与えず、簡単な構成でベータトロン
振動数を測定し、電子蓄積リングの小型化の要求を達成
したベータトロン振動数測定装置及びベータトロン振動
数測定方法を提供することを目的とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】本発明のベータトロン振
動数測定装置は、請求項1に記載のものでは、電子軌道
を所望の偏向角で偏向する複数の偏向電磁石を備え、電
子(陽電子を含む)ビームを周回軌道内に所望のエネル
ギーで蓄積するようにした電子蓄積リングに用いられる
ベータトロン振動数測定装置において、短時間励磁して
電子軌道を偏向するパルスマグネットと、前記パルスマ
グネットを短時間励磁するパルスマグネット用電源と、
蓄積電子のベータトロン振動数測定用のピックアップ電
極と、蓄積電子のベータトロン振動数測定用のリアルタ
イムスペクトラムアナライザとを備えた構成とした。
【0040】このように構成すると、パルスマグネット
により蓄積電子の軌道を偏向できるので、RFノックア
ウト用電極が不要になり、ビームダクトにインピーダン
スの不連続が生じるのを防止でき、電子ビームの軌道に
悪影響を与える心配が無くなると共に、RFノックアウ
ト用電極を挿入するスペースを確保する必要が無くなり
電子蓄積リングの小型化に寄与する。また、RFノック
アウト用電極を挿入した箇所からリークし、ビームダク
ト内の真空が悪くなる虞れもなくなる。更に、RFノッ
クアウト用電極を取り付ける余地が無く、ベータトロン
振動数を測定できなかった電子蓄積リングにおいても、
ベータトロン振動数を測定できるようになる。また、リ
アルタイムスペクトラムアナライザにより、ピックアッ
プ電極からの信号を受けて、電子のベータトロン振動数
を解析できるので、従来の測定法とは異なり、高周波の
共振周波数を探す必要が無くなり、測定が簡単になる。
更に、リアルタイムでベータトロン振動数が把握でき、
この結果、運転状況に対応した迅速な対応が可能で、電
子蓄積リングの信頼性を向上させることができる。
【0041】請求項2に記載のベータトロン振動数測定
装置では、上記電子蓄積リングに取り付けられる入射用
パルスマグネットを、上記ベータトロン振動数測定用の
パルスマグネットとして用いるように構成した。
【0042】このように構成すると、既存の入射用パル
スマグネットを利用できるので、新たなパルスマグネッ
トを電子蓄積リングに取り付ける必要が無く、電子蓄積
リングの製作コストを増大させることなくベータトロン
振動数が測定できる。また、パルスマグネットを別途設
ける必要がないので、電子蓄積リングの直線部を短くで
き、従って、電子蓄積リングの小型化が可能になり、電
子蓄積リングを設置する建屋の建設コストを削減するこ
とができる。
【0043】請求項3に記載のベータトロン振動数測定
装置では、上記パルスマグネットとして、励磁する時間
が蓄積電子のダンピングタイムよりも短いパルスマグネ
ットを用い、かつ、上記リアルタイムスペクトラムアナ
ライザとして、時間分解能が蓄積電子のダンピングタイ
ムよりも短いリアルタイムスペクトラムアナライザを用
いるように構成した。
【0044】このように構成すると、特に、ダンピング
タイムが短い、電子を高エネルギーで蓄積したときのベ
ータトロン振動数の測定精度が向上する。
【0045】請求項4に記載の電子蓄積リングのベータ
トロン振動数測定方法では、請求項1乃至3のいずれか
に記載のベータトロン振動数測定装置において、上記パ
ルスマグネットを短時間励磁して蓄積電子の軌道を瞬間
的に偏向し、上記ピックアップ電極からの信号を上記リ
アルタイムスペクトラムアナライザで解析することによ
り、上記電子蓄積リングのベータトロン振動数を測定す
るようにした。
【0046】このようにすると、正確にベータトロン振
動数を測定できると共に、高周波の共振周波数を探す必
要が無くなり、測定が簡単になる。また、リアルタイム
で運転状況が把握できる結果、運転状況に対応した迅速
な対応が可能で、電子蓄積リングの信頼性を向上させる
ことができる。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明のベータトロン振動
数測定装置及びベータトロン振動数測定方法について説
明するが、先ず、本発明の一実施の形態について、図1
を用い、図5を参照して説明することにより本発明の概
要を示す。次に、それを踏まえ、ベータトロン振動数測
定装置に用いるリアルタイムスペクトラムアナライザを
用いて、電子蓄積リングに蓄積された電子のベータトロ
ン振動数を測定する方法について、図1乃至図4を用
い、図5を参照して詳細な説明を行う。
【0048】先ず、本発明のベータトロン振動数測定装
置10の概要について説明する。図1は、本発明のベー
タトロン振動数測定装置10の一実施の形態の基本構成
を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の
形態のベータトロン振動数測定装置10は、短時間励磁
して電子軌道を偏向するパルスマグネット30と、この
パルスマグネット30を短時間励磁するパルスマグネッ
ト用電源20と、蓄積電子のベータトロン振動数測定用
のピックアップ電極240と、蓄積電子のベータトロン
振動数測定用のリアルタイムスペクトラムアナライザ5
0とを備えた構成である。
【0049】ここで、本実施の形態のベータトロン振動
数測定装置10では、パルスマグネット30としては、
図5に示す入射用パルスマグネット170をそのまま用
いるものとする。元来、入射用パルスマグネット170
は、上述したように、電子入射時に瞬間的に励磁して、
入射時のみ変形した入射軌道を作るために設計されてい
るものである。後述するように、パルスマグネット30
の励磁時間は短い方がベータトロン振動数の測定は正確
に行える。従って、入射用パルスマグネット170を本
実施の形態のベータトロン振動数測定装置10のパルス
マグネット30として用いれば、パルスマグネット30
の励磁時間をダンピングタイムよりも十分に短くでき、
ベータトロン振動数の測定を正確に行うことができる。
なお、パルスマグネット30の励磁時間とダンピングタ
イムとの関係については後述する。
【0050】また、既存の装置をそのまま転用すること
により、新たな装置を付加する必要が無くなり、ベータ
トロン振動数測定装置10の製造コストを削減できる。
更に、別途パルスマグネット30を取り付ける場所を確
保する必要がないので、電子蓄積リング100の小型
化、設置建屋の建設コストの削減に寄与する。
【0051】同様に、パルスマグネット30を瞬間的に
励磁する電源としては、入射用パルスマグネット170
の励磁用電源に用いていたものをそのまま転用するもの
とする。この電源20は、上述したように、入射用パル
スマグネット170を瞬間的に励磁するために設計され
ており、本実施の形態におけるベータトロン振動数測定
装置10のパルスマグネット30の励磁用電源20とし
ては好適である。また、既存の装置をそのまま転用する
ことにより、ベータトロン振動数測定装置10の製造コ
ストを削減できる。
【0052】同じように、ベータトロン振動数測定用の
ピックアップ電極240には、図6及び図7に示した従
来のベータトロン振動数測定装置200、300に用い
ていたピックアップ電極240をそのまま用いることに
する。一方、ベータトロン振動数を解析するアナライザ
には、リアルタイムスペクトラムアナライザ50を用い
るものとする。なお、リアルタイムスペクトラムアナラ
イザ50を用いて、ベータトロン振動数を解析する方法
については後述する。
【0053】以上の構成で、本実施の形態のベータトロ
ン振動数測定装置10の基本動作を図1を用いて説明す
る。電子蓄積リング100の運転中にチューンを測定す
る場合は、パルスマグネット励磁用電源20で、パルス
マグネット30を瞬間的に励磁して、設計軌道を周回し
ている電子の軌道を瞬間的に偏向する。
【0054】このとき、後に詳細に説明する通り、蓄積
電子は、設計軌道を大きな振幅でベータトロン振動をし
ながら徐々に放射減衰して設計軌道に収斂して行く。電
子がダンピングするまで、電子がピックアップ電極24
0の近傍を通過する毎に、ベータトロン振動による信号
を発生するので、その信号をリアルタイムスペクトラム
アナライザ50で解析することにより、電子蓄積リング
100のベータトロン振動数を測定することができる。
【0055】即ち、本実施の形態のベータトロン振動数
測定装置10によれば、パルスマグネット30により蓄
積電子の軌道を偏向できるので、図6及び図7に示す従
来のベータトロン振動数測定装置200とは異なり、R
Fノックアウト用電極230が不要になる。この結果、
ビームダクトにインピーダンスの不連続が生じるのを防
止でき、電子ビームの軌道に悪影響を与える心配が無く
なる。また、RFノックアウト用電極230を挿入した
箇所からリークし、ビームダクト内の真空が悪くなる虞
もなくなるというメリットがある。更に、RFノックア
ウト用電極230を挿入するスペースを確保する必要が
無くなり電子蓄積リング100の小型化に寄与する。
【0056】次に、本実施の形態のベータトロン振動数
測定装置10により、ベータトロン振動数を測定する方
法について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。図
2は、通常の運転時において、電子ビームが設計軌道内
に蓄積されている状態を示す模式図である図3は、蓄積
電子をパルスマグネット30を瞬間的に励磁することに
より、その軌道を偏向した直後の蓄積電子のバンプ軌道
を示す模式図である。また、図4は、蓄積電子が放射減
衰する過程において、集団振動をしている状態を示す模
式図である。
【0057】ところで、蓄積電子は、水平、垂直方向に
一定の広がりを持つ電子群で構成されると同時に、軌道
方向にも広がりを持つ。蓄積電子は、高周波加速空胴1
60と同期して蓄積される関係上、軌道方向のRFバケ
ットといわれる安定領域内に蓄積される。
【0058】この安定領域(RFバケット)は、段落番
号[0018]で説明したハーモニクスナンバーと同数
存在し、夫々の安定領域に存在する電子群をバンチとよ
ぶ。蓄積される電子ビームはこのバンチの集まりであ
り、その数は、1からハーモニクスナンバーまで選択で
きる。なお、図2乃至図4では、電子のバンチ数が4の
場合で示されている。
【0059】通常の運転時では、電子蓄積リング100
内の電子ビームは、図5に示す入射器140により入射
され、その後、高周波加速空胴160により加速されて
十分に放射減衰しており、ほぼ設計軌道上に、図2に示
すように周回して蓄積されている。このとき、各バンチ
の電子数が同じで、総ての安定領域にバンチがあれば、
各バンチを検出するピックアップ電極240の信号の周
波数成分は、高周波加速空胴160に印加している高周
波の周波数の整数倍である。この状況におけるリアルタ
イムスペクトラムアナライザ50に現れる周波数スペク
トラムは、図2中に模式的に示されている。
【0060】ところで、電子ビームは、設計軌道を中心
に、水平方向及び垂直方向でベータトロン振動をしてい
るのと同様に、高周波加速空胴160の加速の原理によ
り、高周波加速空胴160と丁度同期している電子を中
心に、位置及びエネルギーが軌道方向で振動している。
この軌道方向の振動をシンクロトロン振動という。ベー
タトロン振動で放射減衰が起きるのと同様に、シンクロ
トロン振動でも、エネルギーの高い電子ほどシンクロト
ロン放射によって失うエネルギーは大きいので、シンク
ロトロン振動にも放射減衰は生じる。
【0061】従って、図2に示すように、通常運転時に
おける電子ビームは、設計軌道上に収斂していると共
に、各電子のバンチ長も十分に短く高周波加速空胴16
0に同期していると見なされ、バンチは時間的に分布を
持たないデルタ関数δであると考えて差し支えない。
【0062】即ち、電子蓄積リング100に設置したモ
ニタにより観測した信号S(t)は、電子が電子蓄積リ
ング100を周回する周波数をω0とすると、式(4)
で表すことができる。
【数4】 ここで、Nは1バンチ中の電子の数、eは素電荷であ
る。
【0063】一方、式(4)のフーリエ展開S(θ,
t)は、式(5)で表される。
【数5】 なお、jは虚数単位、nは整数である。従って、式
(5)のフーリエスペクトルは、基本周波数f0=ω/
2πの整数倍となる。
【0064】次に、パルスマグネット30をパルスマグ
ネット励磁用電源20で瞬間的に励磁し、ローレンツ力
で蓄積電子の軌道を偏向すると、電子は図3に示すよう
に、設計軌道とは異なるバンプ軌道といわれる変形した
軌道を周回するようになる。このとき、パルスマグネッ
ト30の励磁量は、電子が偏向され過ぎてビームダクト
130に衝突して消滅してしまわない量であることは勿
論のことであるが、ピックアップ電極40で測定した電
子のベータトロン振動数が、リアルタイムスペクトラム
アナライザ50で測定できる強度以上の信号を発生する
ように、電子ビームを偏向させることができる量である
必要がある。
【0065】パルスマグネット30の励磁が終了する
と、電子バンチは設計軌道をベータトロン周波数で振動
するようになる。ベータトロン周波数とは、電子バンチ
が1秒当たりにベータトロン振動をする回数であるの
で、ベータトロン振動数に電子バンチの電子蓄積リング
100を周回する周波数を乗じたものに該当する。この
電子のベータトロン振動は、パルスマグネット30から
偏向されることがなくなるので、徐々に放射減衰して行
く。
【0066】このときの電子バンチの軌道は、図4に示
すように、集団的振動となり、ピックアップ電極240
からの信号の周波数成分は、高周波加速空胴160の周
波数とベータトロン振動の周波数成分を合わせたものに
なる。このときベータトロン振動及びシンクロトロン振
動をしている電子のピックアップ電極240からの観測
信号S(θ,t)は、式(6)で与えられる。
【数6】
【0067】ここで、式(6)に示されている各パラメ
ータは、以下の通りである。 ν0:ベータトロン振動数 x0:ベータトロン振動の振幅 φs=φ0cos(ωst) ωs:シンクロトロン振動角周波数 ωξ=ξν0ω0 ξ:クロマティシティ η:モーメンタムコンパクション Jm:ベッセル関数
【0068】上記各パラメータについて必要分だけを補
足説明をすると、クロマティシティξは、光学レンズの
収束が光の波長に依存することにより生じる色収差に相
当するもので、電子バンチ内に運動量のずれがあると、
四重極電磁石150A、150Bの集束力に違いが現れ
るが、この四重極電磁石150A、150Bの色収差に
該当するものである。また、モーメンタムコンパクショ
ンηも、電子バンチ内に運動量のずれがあると、磁場で
の電子の曲がり具合が変化し、結果として電子の軌道長
が変化するので、その変化の割合を示すパラメータであ
る。
【0069】図4の模式的な周波数スペクトラムに示す
ように、電子蓄積リング100内の電子バンチが集団振
動している状況では、式(6)によるフーリエスペクト
ラムは、本実施の形態のベータトロン振動数測定装置1
0に用いるリアルタイムスペクトラムアナライザ50に
は、ベータトロン振動数ν0を整数部pと小数点以下の
端数部qに分けると、基本周波数f0の整数倍nf0とn
0±q、更にnf0±q±mωs/2πに現れる。
【0070】本実施の形態でのベータトロン振動数の測
定方法では、シンクロトロン振動については、十分に放
射減衰し、また、パルスマグネット30による偏向は軌
道方向に対して横方向であり、軌道方向で振動するシン
クロトロン振動には影響がほとんどないと考えられるの
で、シンクロトロン振動のスペクトラムは含まれないと
考えてよい。
【0071】従って、ピックアップ電極240からの信
号を受けたリアルタイムスペクトラムアナライザ50の
nf0±qの周波数に現れるスペクトラムを測定するこ
とにより、ベータトロン振動数ν0の端数部qを求める
ことができる。但し、リアルタイムスペクトラムアナラ
イザ50に現れるスペクトラムで求められる端数部は、
q又は1−qの形で求められる。
【0072】従って、スペクトラムから求められる端数
部がq又は1−qのどちらかであるかを決定しなければ
ならない。ところで、ベータトロン振動数は、偏向電磁
石部110A、110Bでの偏向角や四重極電磁石15
0A、150Bの集束力等の各パラメータからある程度
の精度で計算できるものである。
【0073】従って、実際に電子蓄積リング100を運
転している状況での実際のベータトロン振動数と、計算
によって得られたベータトロン振動数の計算値との間に
大きな差はないとすれば、この計算値を基礎にして、リ
アルタイムスペクトラムアナライザ50に現れたスペク
トラムを解析することにより、実際のベータトロン振動
数ν0の整数部pと端数部qを決定することができる。
或いは、電子蓄積リング100の四重極電磁石150
A、150Bの集束力等の各パラメータを変えたときの
ベータトロン振動数の変化を理論的に求めておき、リア
ルタイムスペクトラムアナライザ50からの測定値と比
較して、スペクトラムが端数部のqであるか1−qであ
るかを判断することも可能である。
【0074】即ち、以上説明した通り、本実施の形態の
ベータトロン振動数の測定方法では、リアルタイムスペ
クトラムアナライザ50のスペクトラムを計測すること
により即座にベータトロン振動数を測定することができ
る。従って、従来の測定方法とは異なり、外部から作用
させる高周波の周波数と電子のベータトロン振動数との
共鳴点を探す必要が無くなり、測定の労力が軽減でき
る。また、ベータトロン振動数をリアルタイムで測定で
きるので、電子蓄積リング100の運転状況を即座に把
握でき、その運転状況に合わせた早期の対応も可能で、
電子蓄積リング100の信頼性を向上させることができ
る。
【0075】ところで、本実施の形態のベータトロン振
動数測定装置10では、ベータトロン振動数を正確に測
定するためには、パルスマグネット30の励磁時間が、
ダンピングタイムτよりも短く、また、リアルタイムス
ペクトラムアナライザ50の時間分解能もダンピングタ
イムτよりも短い必要がある。ダンピングタイムτは、
上述したように、電子をエネルギーE=700MeVで蓄
積した場合は、τx=5.0(ms)、τy=4.2(ms)であ
る。従って、この電子エネルギーで蓄積した場合には、
パルスマグネット30の励磁時間とリアルタイムスペク
トラムアナライザ50の時間分解能はこのダンピングタ
イムτよりも短い必要がある。
【0076】しかし、ダンピングタイムは、電子の蓄積
エネルギーEの3乗に反比例するという性質を有してい
る。従って、エネルギーE=150MeVで蓄積した場合
は、ダンピングタイムτは、コンマ秒のオーダーにな
り、上記700MeVで蓄積したときの条件を満たさない
としても、十分に測定可能である。従って、パルスマグ
ネット30の励磁時間及びリアルタイムスペクトラムア
ナライザ50の時間分解能がダンピングタイムτよりも
短いという条件は、実用上好ましい条件ではあるが、必
ずしも本発明のベータトロン振動数測定装置10の構成
要件として厳格に適用しなくても良い。
【0077】本発明のベータトロン振動数測定装置は、
上記実施の形態に限定されず種々の変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、電子蓄積リングの入射用
パルスマグネットを本発明のベータトロン振動数測定装
置のパルスマグネットに用いる例で説明した。これは、
ベータトロン振動数測定装置の製造コストの削減、設置
場所の確保の回避、電子蓄積リングの小型化という観点
から採用したものである。従って、この構成とは異な
り、別途、ベータトロン振動数測定装置用のパルスマグ
ネットを電子蓄積リングのいずれかの箇所に取り付ける
ように構成したベータトロン振動数測定装置も本発明の
範囲に含まれるのは勿論のことである。
【0078】
【発明の効果】本発明のベータトロン振動数測定装置及
びベータトロン振動数の測定方法は、上記のように構成
したために、以下のような優れた効果を有する。 (1)本発明のベータトロン振動数測定装置は、請求項
1に記載したように、短時間励磁して電子軌道を偏向す
るパルスマグネットと、パルスマグネットを短時間励磁
するパルスマグネット用電源と、蓄積電子のベータトロ
ン振動数測定用のピックアップ電極と、蓄積電子のベー
タトロン振動数測定用のリアルタイムスペクトラムアナ
ライザとを備えた構成とすると、パルスマグネットによ
り蓄積電子の軌道を偏向できるので、RFノックアウト
用電極が不要になり、ビームダクトにインピーダンスの
不連続が生じるのを防止でき、電子ビームの軌道に悪影
響を与える心配が無くなると共に、RFノックアウト用
電極を挿入するスペースを確保する必要が無くなり電子
蓄積リングの小型化に寄与する。 (2)また、RFノックアウト用電極を挿入した箇所か
らリークし、ビームダクト内の真空が悪くなる虞れもな
くなる。 (3)更に、RFノックアウト用電極を取り付ける余地
が無く、ベータトロン振動数を測定できなかった電子蓄
積リングにおいても、ベータトロン振動数を測定できる
ようになる。 (4)また、リアルタイムスペクトラムアナライザによ
り、ピックアップ電極からの信号を受けて、電子のベー
タトロン振動数を解析できるので、従来の測定法とは異
なり、高周波の共振周波数を探す必要が無くなり、測定
が簡単になる。 (5)更に、リアルタイムでベータトロン振動数が把握
でき、この結果、運転状況に対応した迅速な対応が可能
で、電子蓄積リングの信頼性を向上させることができ
る。
【0079】(6)請求項2に記載したように、電子蓄
積リングに取り付けられる入射用パルスマグネットを、
ベータトロン振動数測定用のパルスマグネットとして用
いるように構成すると、既存の入射用パルスマグネット
を利用できるので、新たなパルスマグネットを電子蓄積
リングに取り付ける必要が無く、電子蓄積リングの製作
コストを増大させることなくベータトロン振動数が測定
できる。 (7)また、パルスマグネットを別途設ける必要がない
ので、電子蓄積リングの直線部を短くでき、従って、電
子蓄積リングの小型化が可能になり、電子蓄積リングを
設置する建屋の建設コストを削減することができる。
【0080】(8)請求項3に記載したように、パルス
マグネットとして、励磁する時間が蓄積電子のダンピン
グタイムよりも短いパルスマグネットを用い、かつ、リ
アルタイムスペクトラムアナライザとして、時間分解能
が蓄積電子のダンピングタイムよりも短いリアルタイム
スペクトラムアナライザを用いるように構成すると、特
に、ダンピングタイムが短い、電子を高エネルギーで蓄
積したときのベータトロン振動数の測定精度が向上す
る。
【0081】(9)本発明の電子蓄積リングのベータト
ロン振動数測定方法では、請求項4に記載したように、
本発明のベータトロン振動数測定装置において、パルス
マグネットを短時間励磁して蓄積電子の軌道を瞬間的に
偏向し、ピックアップ電極からの信号をリアルタイムス
ペクトラムアナライザで解析することにより、電子蓄積
リングのベータトロン振動数を測定するようにすると、
正確にベータトロン振動数を測定できると共に、高周波
の共振周波数を探す必要が無くなり、測定が簡単にな
る。 (10)また、リアルタイムで運転状況が把握できる結
果、運転状況に対応した迅速な対応が可能で、電子蓄積
リングの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベータトロン振動数測定装置の一実施
の形態を示すブロック図である。
【図2】通常の運転時において、電子ビームが設計軌道
内に蓄積されている状態を示す模式図である
【図3】蓄積電子をパルスマグネットを瞬間的に励磁す
ることにより、その軌道を偏向した直後の蓄積電子のバ
ンプ軌道を示す模式図である。
【図4】蓄積電子が放射減衰する過程において、集団振
動をしている状態を示す模式図である。
【図5】電子蓄積リングの基本構成を示す平面図であ
る。
【図6】従来のベータトロン振動数測定装置の基本構成
を示すブロック図である。
【図7】従来のベータトロン振動数測定装置のより実際
的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10:ベータトロン振動数測定装置 20:パルスマグネット用電源 30:パルスマグネット 50:リアルタイムスペクトラムアナライザ 100:電子蓄積リング 170:入射用パルスマグネット 240:ピックアップ電極

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子軌道を所望の偏向角で偏向する複数
    の偏向電磁石を備え、電子(陽電子を含む)ビームを周
    回軌道内に所望のエネルギーで蓄積するようにした電子
    蓄積リングに用いられるベータトロン振動数測定装置に
    おいて、 短時間励磁して電子軌道を偏向するパルスマグネット
    と、 前記パルスマグネットを短時間励磁するパルスマグネッ
    ト用電源と、 蓄積電子のベータトロン振動数測定用のピックアップ電
    極と、 蓄積電子のベータトロン振動数測定用のリアルタイムス
    ペクトラムアナライザとを備えたことを特徴とするベー
    タトロン振動数測定装置。
  2. 【請求項2】 上記電子蓄積リングに取り付けられる入
    射用パルスマグネットを、上記ベータトロン振動数測定
    用のパルスマグネットとして用いるようにしたことを特
    徴とする請求項1に記載のベータトロン振動数測定装
    置。
  3. 【請求項3】 上記パルスマグネットとして、励磁する
    時間が蓄積電子のダンピングタイムよりも短いパルスマ
    グネットを用い、かつ、上記リアルタイムスペクトラム
    アナライザとして、時間分解能が蓄積電子のダンピング
    タイムよりも短いリアルタイムスペクトラムアナライザ
    を用いるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に
    記載のベータトロン振動数測定装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載のベー
    タトロン振動数測定装置において、 上記パルスマグネットを短時間励磁して蓄積電子の軌道
    を瞬間的に偏向し、 上記ピックアップ電極からの信号を上記リアルタイムス
    ペクトラムアナライザで解析することにより、上記電子
    蓄積リングのベータトロン振動数を測定するようにした
    ことを特徴とする電子蓄積リングのベータトロン振動数
    測定方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006008838A1 (ja) * 2004-07-21 2006-01-26 National Institute Of Radiological Sciences 周回軌道型荷電粒子加速器及びその加速方法
WO2006008839A1 (ja) * 2004-07-21 2006-01-26 National Institute Of Radiological Sciences 螺旋軌道型荷電粒子加速器及びその加速方法

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