JP2001249125A - 組織または細胞における物質分析のための方法 - Google Patents

組織または細胞における物質分析のための方法

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JP2001249125A
JP2001249125A JP2000060754A JP2000060754A JP2001249125A JP 2001249125 A JP2001249125 A JP 2001249125A JP 2000060754 A JP2000060754 A JP 2000060754A JP 2000060754 A JP2000060754 A JP 2000060754A JP 2001249125 A JP2001249125 A JP 2001249125A
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明和 安田
Yoshimi Yasuda
好美 安田
Terumi Nakajima
暉躬 中嶋
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Suntory Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生物の組織または細胞に存在する物質の化
学構造を直接同定するための改善された方法が開示され
る。 【解決手段】 特に、多様な種類の生物の組織または
細胞に存在する物質の化学構造を直接同定するための該
方法は: (1)試料組織切片または細胞の特定の細胞内領域にレ
ーザーを照射し、そして生成するマスイオンを分析し、
該部位に存在する物質のマススペクトルを得る段階、
(2)該マススペクトルを分析し、試料組織切片または
細胞の細胞内領域に存在する物質のマスプロファイルを
得る段階、および(3)該マスプロファイル中に現れる
特定分子量に対応する物質の化学構造を決定する段階、
からなる。本発明の方法は、マトリックスアシスティド
レーザーデソープションイオン化飛行時間型質量分析計
(MALDI−TOF MS)、およびオンラインキャ
ピラリー逆相HPLC/四重極直交加速飛行時間型(Q
−Tof)−MSを組み合わせた技術、並びに分子クロ
ーニングを利用することにより、行われる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生物の組織または
細胞に存在する物質の化学構造を直接同定するための、
改善された方法に関する。特に、本発明は、多様な種類
の生物の組織または細胞に存在する物質の化学構造を直
接同定するための方法であって、(1)試料組織切片ま
たは細胞の特定の細胞内領域にレーザーを照射し、そし
て生成するマスイオンを分析し、該部位に存在する物質
のマススペクトルを得る段階、(2)該マススペクトル
を分析し、試料組織切片または細胞の細胞内領域に存在
する物質のマスプロファイルを得る段階、および(3)
該マスプロファイル中に現れる特定分子量に対応する物
質の化学構造を決定する段階、からなる方法に関する。
【0002】本発明の方法は、マトリックスアシスティ
ドレーザーデソープションイオン化飛行時間型質量分析
(MALDI−TOF MS)、およびオンラインキャ
ピラリー逆相HPLC/四重極直交加速飛行時間型(Q
−Tof)−MSを組み合わせた技術、並びに分子クロ
ーニングを利用することにより、行われる。
【0003】
【従来の技術】脳および神経系における神経ペプチド
は、複雑な生理学的過程および行動の統合に関与してい
る。したがって、神経ペプチドおよびそれらの活性の間
の関係を明確にすることは、甲殻類生理学の重要な目的
である。神経ペプチドを同定するため、精製法において
バイオアッセイが必須の手段であった。実際、甲殻類神
経ペプチド、例えば、赤色素濃縮ホルモン、色素拡散ホ
ルモン、血糖上昇ホルモン、脱皮阻害ホルモン、卵黄形
成阻害ホルモン、大顎器官(mandibularor
gan)阻害ホルモン、RFアミド関連ペプチド、心臓
作用性ペプチドおよびオルコキニン(orcokini
n)は、光順応性、血糖制御、脱皮阻害、心臓制御およ
び消化管収縮などの生理学的影響に基づくバイオアッセ
イを用い、単離されてきている(Fernlundおよ
びJosefsson, 1972;Fernlun
d, 1976;Mercierら, 1971;St
angierら, 1987;Stangierら,
1992;Wainwrightら, 1996;総説
は:Keller, 1992;YasudaおよびN
aya, 1997を参照されたい)。しかし、こうし
たバイオアッセイを用いた精製には、少なくとも2つの
問題が含まれる。第一に、各精製段階のバイオアッセイ
で成分が消費されるため、配列決定のため十分なペプチ
ドを残すのには、比較的大量の出発成分が必要とされ
る。第二に、利用可能な標準的バイオアッセイでは、多
くの新規神経ペプチドが未検出のままになる可能性があ
る。
【0004】最近、マトリックスアシスティドレーザー
デソープションイオン化飛行時間型質量分析(MALD
I−TOF MS)が、切断組織の小片からまたは単離
単一細胞からのペプチドプロファイルの直接分析に強力
な手段となってきている(Gardenら, 199
6;De Withら, 1997;Gardenら,
1998;Redekerら, 1998)。これらの
実験において、試料の非常に小さい点を分析することが
可能であり、そして生じたペプチドフィンガープリンテ
ィングは、生物活性を持つペプチドの生合成および発現
を示す。甲殻類において、ザリガニ(crayfis
h)、オルコネクテス・リモスス(Orconecte
s limosus)由来の単一細胞を用い、MALD
I−TOFMSアプローチにより、血糖上昇ホルモン前
駆体関連ペプチドの2つの分子型の性質決定に、成功し
てきている(Redekerら, 1998)。
【0005】一方、質量分析的検出を用いたオンライン
キャピラリー逆相高性能液体クロマトグラフィー(キャ
ピラリーHPLC/MSおよびキャピラリーHPLC/
MS/MS)が現代の生物分析に利用可能である。本手
段は、脳抽出物中の神経ペプチドの分子量に対し優れた
情報を提供し、そしてMS/MS様式は、ペプチドを断
片化し、産物イオンを生じ、そのアミノ酸配列を演繹す
るのを可能にする。本発明において、発明者は、ザリガ
ニ、プロキャンバルス・クラルキ(Procambar
us clarkii)の脳由来の新規神経ペプチド同
定のため、質量分析に基づくプロトコルを用い、MAL
DI−TOF MS、分子クローニングおよびオンライ
ンキャピラリーHPLC−MS/MSを組み合わせたア
プローチを使用した。
【0006】発明者は、まず、アメリカザリガニ(re
d swamp crayfish)、プロキャンバル
ス・クラルキ脳由来の多様な切片の、直接MALDI−
TOF MS分析を調べた。本研究の間、我々は、脳に
分子マス1517の特有なペプチドが存在することに注
目した。この分子量は、元来、ザリガニ、オルコネクテ
ス・リモススの腹神経索から単離された、オルコキニン
(NFDEIDRSGFGFN)(Stangier
ら, 1992)のものと同一であった。該ペプチドの
生物学的効果は、ザリガニの単離後腸に対する強力な収
縮活性である。さらに、3つのオルコキニン関連ペプチ
ド、すなわち[Ser9]、[Ala13]、および[Va
13]オルコキニンが、イソガニ(shore cra
b)、カルキヌス・マイナス(Carcinus ma
enus)から単離され、そして配列決定されてきてい
る(Bungartら, 1995a)。発明者はま
た、脳切片の単一の点から得られた直接MALDI−T
OF MSデータに、オルコキニンと共に、[Ala13]
および[Val13]オルコキニンに対応する分子量を有す
るペプチドも見出した。したがって、発明者はまず、ザ
リガニ脳におけるオルコキニンおよびその関連ペプチド
の同定に重点を置いた。
【0007】発明者は、本明細書に、オルコキニンおよ
びその関連ペプチドの性質決定およびアメリカザリガニ
脳の2つのオルコキニン前駆体タンパク質の分子クロー
ニングを開示する。さらに、バイオアッセイを使用しな
い、神経ペプチド同定のための新規戦略を提案する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】発明者は、多様な生物
の組織または細胞における未知の物質を精査するための
戦略を開発した。より詳細には、発明者は、多様な生物
の組織または細胞における未知のペプチドを精査し、そ
して該ペプチドの化学構造を同定するための新規戦略に
成功した。
【0009】
【課題を解決するための手段】特に、発明者は、マトリ
ックスアシスティドレーザーデソープションイオン化飛
行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)、分子
クローニングおよびオンラインキャピラリー逆相HPL
C/四重極直交加速飛行時間型(Q−Tof)−MSを
組み合わせた技術を利用し、アメリカザリガニ、プロキ
ャンバルス・クラルキの脳ペプチドの精査および/また
は同定を進展させた。発明者はまず、脳切片を用い、直
接MALDI−TOF MS分析を行った。嗅葉切片由
来のMSスペクトルは、本種でオルコキニン(NFDE
IDRSGFGFN)が出現していることを示した。続
いて、その出現を、オルコキニンの前駆体タンパク質を
コードするcDNAの分子クローニングにより確認し
た。演繹されるアミノ酸配列は、プレプロオルコキニン
の2つの異なる種類があることを示した。プレプロオル
コキニンA(長さ251残基)は、オルコキニン7コピ
ーだけでなく、NFDEIDRSGFGFVを2コピ
ー、およびNFDEIDRSGFGFA、NFDEID
RTGFGFHおよびFDAFTTGFGHSを各々1
コピー含む。前者の3つのペプチドは、以前、他のザリ
ガニ、オルコネクテス・リモススおよび/またはイソガ
ニ、カルキヌス・マイナスから単離され、そして後者の
2つは新規であった。プレプロオルコキニンB(26
6)は、1つのさらなるオルコキニンを含む。該ペプチ
ドの配列にはすべて、プロセシングのコンセンサスシグ
ナルである、塩基性アミノ酸対が隣接している。さら
に、脳抽出物をSephadexG−25に、そして続
いて、オンラインキャピラリー逆相HPLC/Q−To
f MS分析に供した。LC−MS分析から、オルコキ
ニン、NFDEIDRSGFGFV、NFDEIDRS
GFGFA、NFDEIDRTGFGFH、およびFD
AFTTGFGHSの分子量は、それぞれm/z 75
9.37、751.92、737.86、778.9
0、および593.78の2価イオンとして同定され
た。さらに、該配列を、LC−MS/MS分析におい
て、2価イオンを用いた衝突誘導解離スペクトルによ
り、特定した。これらのデータは、オルコキニンおよび
その関連ペプチドは、ザリガニ脳において、特に嗅葉に
豊富であり、そして2種のプレプロオルコキニンから合
成され、そしてプロセシングされることを示唆した。
【0010】微生物、植物、動物およびヒトなどの多様
な生物の組織または細胞におけるペプチドの精査のため
の新規戦略。本発明の該側面にしたがい、開発された戦
略は、方法の以下の態様に適用してもよい: 1. 生物の組織または細胞に存在する物質の化学構造
を直接同定するための方法であって: (1)試料組織切片または細胞の特定の細胞内領域にレ
ーザーを照射し、そして生成するマスイオンを分析し、
該部位に存在する物質のマススペクトルを得る段階、
(2)該マススペクトルを分析し、試料組織切片または
細胞の細胞内領域に存在する物質のマスプロファイルを
得る段階、および(3)該マスプロファイル中に現れる
特定分子量に対応する物質の化学構造を決定する段階、
からなる方法。 2. 組織または細胞に存在する物質の化学構造を直接
同定するための、態様1の方法であって、段階(1)お
よび段階(2)がMALDI−TOF MSによって行
われ、そして段階(3)がLC−MS/MSおよび/ま
たはプロテイン・シークエンサーによって行われる方
法。 3. 組織または細胞に存在する物質の化学構造を直接
同定するための、態様1または2の方法であって、組織
切片または細胞の細胞内領域に存在する物質のマスプロ
ファイルを得る段階(2)の後でそして該マスプロファ
イル中に現れる特定分子量に対応する物質の化学構造を
決定する段階(3)の前に、組織または細胞の抽出物か
ら、該物質の分子量をマーカーとして使用することによ
り、該物質を単離しそして精製する段階が付加された方
法。 4. 組織または細胞に存在する物質の化学構造を直接
同定するための、態様1、2または3の方法であって、
該物質の化学構造が未知である場合に、該物質の化学構
造を決定する方法。 5. 組織または細胞に存在する物質の化学構造を直接
同定するための、態様4の方法であって、組織または細
胞に特定の生物学的活性を有する物質が存在すると推定
されていながら、該物質の化学構造が未知であった場合
に、態様1ないし3の方法により、該物質の化学構造を
推定し、そして該推定構造を有する物質を合成し、そし
て該合成物質の生物学的活性を調べることにより、該物
質の化学構造を確認する方法。 6. 生物の組織または細胞に存在する未知の物質の化
学構造を同定するための方法であって、態様1ないし3
の1つの方法を行うことによる方法。 7. 態様1ないし6いずれか1つの方法であって、物
質がタンパク質またはペプチドである場合、該物質のア
ミノ酸配列を決定する方法。 8. タンパク質、ペプチドまたはそれらの前駆体のア
ミノ酸配列を決定するための、態様7の方法であって: (1)物質の部分的アミノ酸配列に対応する塩基配列を
有するDNAを化学的に合成し、(2)該試料組織切片
または細胞からcDNAライブラリーを構築し、(3)
(1)で合成したDNAをプローブとして用い(2)で
構築したcDNAライブラリーをスクリーニングするこ
とにより、タンパク質、ペプチドまたはそれらの前駆体
をコードする遺伝子をクローニングし、そして(4)ク
ローニングしたcDNAの塩基配列を決定し、該塩基配
列からアミノ酸配列を演繹する段階からなる方法。 9. 態様7または8の方法であって、物質が修飾ペプ
チドまたは修飾タンパク質である場合、修飾ペプチドま
たは修飾タンパク質の修飾アミノ酸残基の部位または修
飾アミノ酸を決定する方法。 10. 態様1、2または3の方法であって、該方法が
細胞内の物質の存在部位を決定することに向けられる方
法。 11. 態様7、8または9の方法であって、ペプチ
ド、タンパク質、修飾ペプチド、修飾タンパク質または
それらの前駆体の細胞内の存在部位を決定する方法。 12. 態様1ないし11のいずれか1つの方法であっ
て、検出されるべき物質の存在部位が細胞内顆粒である
方法。 13. 態様12の方法であって、前記細胞内顆粒が分
泌顆粒である方法。
【0011】
【実施例】実施例および実験材料および方法 MALDI−TOF MS アメリカザリガニ、プロキャンバルス・クラルキは、日
本で商業的に得た。脳を切除し、そして直ちに凍結させ
た後、かみそりで切った。その後、小片をMALDI試
料プレート上に置いた。α−シアノ4−ヒドロキシケイ
皮酸(α−CHCA)マトリックスを0.1%トリフル
オロ酢酸(TFA)を含む、アセトニトリル/水50:
50(v/v)の溶液に飽和させた。試料に存在する過
剰な塩を除去するため、マトリックスのリンスを3回繰
り返した(Gardenら, 1996)。新鮮なマト
リックス溶液を試料に添加し、そして乾燥させた。MA
LDI−TOFマススペクトルは、遅延型抽出源および
337 nmパルス化窒素レーザーを備えたVoyag
er Elite MALDI−TOF質量分析計(P
erceptive Biosystems、米国マサ
チューセッツ州フラミンガム)を用い、得た。直線様式
の加速電圧は、20 kVであり、グリッド電圧は91
%でセットされた。遅延時間は50 nsであった。イ
ンスリンB鎖およびプロトン付加マトリックス二量体イ
オンを用い、外部較正を行った。RNA調製およびcDNAライブラリー構築 脳および食道下神経節(20動物)から、TRIzol
試薬(総RNA単離試薬、GIBCO BRL)を用
い、総RNAを調製した。バッチ溶出法により、Oli
gotexTM−dT30(Roche、日本)からポリ
(A)+RNAを精製した。λZAP発現cDNA合成
キット(Stratagene、カリフォルニア州)を
用い、cDNAを調製した。cDNAをλZAP発現腕
内に連結し、パッケージング混合物(Gigapack
III Gold Packaging Extra
ct、Stratagene)でパッケージングした。cDNAライブラリーのスクリーニング 192倍に縮重した20量体オリゴヌクレオチド、 [5’−AA(C/T)TT(C/T)GA(C/T)
GA(A/G)AT(A/C/T)GA(C/T)(A
/C)G−3’] を用いcDNAライブラリーをスクリーニングした。こ
れらはオルコキニンのN末端アミノ酸配列(Asn−P
he−Asp−Glu−Ile−Asp−Arg)にし
たがい合成した。標識化、ハイブリダイゼーションおよ
び検出は、洗浄溶液の組成を除き、ECL 3’オリゴ
標識および検出系(Amersham、英国)のプロト
コルにしたがい、行った。簡潔には、トランスファーさ
れたHybond−N+膜(Amersham、英国)
を42℃で1時間プレハイブリダイズさせ、そしてその
後、ハイブリダイゼーション溶液中で標識プローブに4
2℃で一晩ハイブリダイズさせた。洗浄は、Jacob
sら(1998)に記載されるように、テトラメチルア
ンモニウムクロリドを含む洗浄溶液で、49℃で30分
間、3回行った。in vivo切除により、陽性プラ
ークからプラスミドを回収した。得られたクローンは続
いてDNA配列決定(ABI Prism 310、P
erkin−Elmer、カリフォルニア州)により分
析した。キャピラリー逆相HPLC/Q−Tof MS 0.1N塩酸100μl中で脳を80℃で3分間加熱
し、迅速に4℃に冷却し、そしてホモジェナイズした。
遠心分離後、上清を凍結乾燥した。抽出物を、0.05
M酢酸で平衡化したSephadex G−25カラム
(スーパーファイン、400 mm x 1 mm
i.d.)上のゲル濾過に供した。中間分画を、0.0
5% TFAを含むアセトニトリルの直線勾配で、He
wlett−Packard HP1100液体クロマ
トグラフィー系において、自家製TSKゲル ODS
120T(Tosoh、5μm粒子サイズ)を充填した
PEEKチューブ(100 mm x 0.25 mm
i.d.)を用いたキャピラリー逆相高性能液体クロ
マトグラフィー(HPLC)に供した。ポンプからの流
れ(100μl/分)をTコネクターで分割し、そして
HPLCカラムに向かう流れを2μl/分に調整した。
試料(1μl、脳1つと同等)を、Tコネクターおよび
キャピラリーカラムの間に置かれたValco注入バル
ブを介し、系に導入した。U型セルを備えたUV検出装
置(LC Packings、モデルUZ−HP11−
CAP)を用い、220 nmで溶出液をモニターし
た。UV検出装置のアウトレットを、質量分析計のエレ
クトロスプレーインターフェースに連結した。Q−To
f質量分析計(Micromass、英国マンチェスタ
ー)を用い、溶出液のマススペクトルを検出した。典型
的には、スプレーキャピラリーに2800 V、そして
試料円錐に50 Vを適用した。供給源温度は50℃に
維持した。総イオン電流の範囲は、m/z 100から
2000だった。LC/MS/MS実験には、前駆体イ
オンの強度が20カウント/sを超えるほど増加した場
合、質量分析計が自動的にデータに依存してMSからM
S/MSにスイッチングするようにセットした。衝突エ
ネルギーは、2価前駆体イオンに関し、30 Vだっ
た。結果 MALDI−TOF MS ザリガニ脳切片に対するMALDI−TOF−MSの直
接適用により、マスm/z 1518のペプチドがいく
つかの点で観察されることが明らかになった。これらの
中で、嗅葉由来切片のスペクトルは、図1に示されるよ
うに、m/z1518.17のピーク強度が明確に目立
っていた。さらにマスm/z 1371.55、138
2.67、1475.17、1503.28、および1
555.58で観察される5つのピークが、嗅葉に共に
検出された。既知の甲殻類ペプチドの分子量を用いたペ
プチド検索により、表1に要約されるように、平均マス
計算値1517.6のオルコキニン、マス1502.6
の[Val13]オルコキニンおよびマス1474.5の
[Ala13]オルコキニンが明らかになった。したがっ
て、本情報は、オルコキニンファミリーペプチドがアメ
リカザリガニ脳に出現することを暗示した。以下に記載
されるプレプロオルコキニンのクローニングおよびキャ
ピラリーHPLC/MS/MS分析の後、マスm/z
1371.55および1555.58のピークは、それ
ぞれペプチドVYVPRYIANLYおよび[Thr8
Val13]オルコキニンと同定された。マスm/z 1
382.67のピークは、他の未知の神経ペプチド由来
であるようだった。オルコキニン前駆体タンパク質をコードするcDNAの
クローニング 分子生物学的研究により、アメリカザリガニにオルコキ
ニンが存在することをさらに確認した。ザリガニの脳お
よび食道下神経節由来のλZAP発現cDNAライブラ
リーを構築し、そして配列NFDEIDRにしたがった
192倍縮重オリゴヌクレオチドから合成されたプロー
ブで、およそ5 x 105組換えファージをスクリー
ニングした。14の陽性クローンを単離し、そして約
1.1から1.8 kbの範囲の挿入物を含むことを見
出した。これらはすべて、3’−UTRに1つまたは2
つのmRNAポリアデニル化のためのAATAAAコン
センサス配列を含み、そしてまた、3’末端に20〜1
00ヌクレオチドのポリAテールを含む。配列分析によ
り、これらは2つの異なる種類のオルコキニン前駆体タ
ンパク質をコードすることが示された。該クローンの2
つの代表的なヌクレオチド配列は、寄託番号AB029
168(1602 bp)およびAB029169(1
240 bp)でGenBank/EMBL/DDBJ
データバンクに提出されている。AB029168およ
びAB029169は、それぞれ、753 bpおよび
798 bpの最長読み枠と共に、41 bpおよび7
4 bpの5’−UTR、および808 bpおよび3
68 bpのポリ(A)テールを除く3’−UTRを有
した。AB029168(長さ251残基)およびAB
029169(長さ266残基)に対応する演繹される
アミノ酸配列は、それぞれ、プレプロオルコキニンAお
よびBと名付けられた。図2は、AB029168のヌ
クレオチド配列およびプレプロオルコキニンAの演繹さ
れるアミノ酸配列を示す。第一のMetに、最も疎水性
である領域(データは示されていない)でありそしてシ
グナル配列であると同定された、約20の非荷電アミノ
酸が続く。プレプロオルコキニンAはオルコキニン7コ
ピーだけでなく、他の4種類のオルコキニン様ペプチド
も含む。すなわち、NFDEIDRSGFGFV([V
al13]オルコキニン)を2コピー、およびNFDEI
DRSGFGFA([Ala13]オルコキニン)、NFD
EIDRTGFGFH([Thr8、His13]オルコキ
ニン)およびFDAFTTGFGHSを各々1コピー含
む。後者の2つは、新規オルコキニン様ペプチドであ
る。一方、プレプロオルコキニンBは、1つのさらなる
オルコキニン配列を含む以外はプレプロオルコキニンA
のものと同一である(図3)。プレプロオルコキニン中
のオルコキニンおよびオルコキニン様ペプチドの配列に
はすべて、前駆体タンパク質中のNおよびC末端にK
R、KKまたはRRの塩基性アミノ酸対が隣接してい
た。キャピラリー逆相HPLC/Q−Tof MS 図4は、Sephadex G−25カラム上のザリガ
ニ脳(2動物)のHCl抽出物のキャピラリーゲル濾過
を示す。第二の分画はm/z 1518のペプチドを含
み、そしてさらにオンラインキャピラリー逆相HPLC
/Q−TofMSに供した。図5は、キャピラリーTS
KゲルODS 120Tカラム上の第二の分画の1動物
同等物に関する溶出プロファイルを示す。オルコキニン
およびその関連ペプチドの同定のため計算された分子量
を表1に要約する。得られたLC−MSデータを、図5
に示されるように、ペプチドの2価イオンにより選択的
にモニターした。2価イオンは、クロマトグラムのm/
z 759.37、751.92、737.86、77
7.90、および593.78に観察され、そしてその
後、それぞれ、オルコキニン、[Val13]オルコキニ
ン、[Ala13]オルコキニン、[Thr8、His13]オ
ルコキニンおよびFDAFTTGFGHSの単荷電マス
に対応する、1516.74、1501.84、147
3.72、1553.80、および1185.56のマ
スに転換した。さらに、クロマトグラムに存在するm/
z 685.91の2価イオンは、転換マス1369.
82であり、プロオルコキニンの配列VYVPRYIA
NLYに対応した。図6は、Q−Tof MS上のオル
コキニン遺伝子関連ペプチドのLC−MS/MSスペク
トルを示す。m/z 759、752、738、77
8、593および686の2価イオンから生成されるこ
れらの衝突誘導解離スペクトルは、図6に例示されるよ
うに、オルコキニン、[Val13]オルコキニン、[Al
13]オルコキニン、[Thr8、His13]オルコキニ
ン、FDAFTTGFGHS、およびVYVPRYIA
NLYの配列に関する断片化パターンを示した。考察 本研究は、甲殻類神経ペプチド研究において、MALD
I−TOF MS、分子クローニングおよびオンライン
キャピラリー逆相HPLC/Q−Tof MSを組み合
わせたアプローチを適用した最初の報告である。本戦略
の1つの利点は、既定のバイオアッセイに関係なく神経
ペプチドが同定されることである。したがって、本方法
は、神経ペプチドを単離するのに必要とされる試料数の
数および実験時間を減少させることが可能である。第一
に、脳における嗅葉のペプチドプロファイルの直接MA
LDI−TOF分析により、m/z 1371.55、
1382.67、1475.17、1503.28、1
518.17、および1555.58の[M+H]+に特
異的に含まれる一組のペプチドが明らかになった。この
場合、以前イソガニ(Bungartら, 1995
a)および/または他のザリガニ(Burdzikら,
1993;Stangierら, 1992)から単
離されたオルコキニン、[Val13]、および[Ala13]
オルコキニンの分子量が、該マスプロファイルに一致し
た。したがって、発明者は、オルコキニン前駆体のクロ
ーニングを検討した。クローンされたプロオルコキニン
構造に基づき、推定上の成熟ペプチドの分子量および配
列を要約した。最後に、キャピラリー逆相HPLC/M
S/MSを用い、プロオルコキニンから生成される成熟
ペプチドの出現を明確にし、そしてこれらのペプチドの
構造を決定した。
【0012】クローニング後、直接MALDI−TOF
MS分析から得られたペプチドプロファイルを再考す
ると、オルコキニン、[Ala13]および[Val13]オル
コキニンに加え、マスm/z 1371.55のピーク
が関連するペプチドの1つであるVYVPRYIANL
Yと同定され,そしてm/z 1555.58は[Th
8、His13]オルコキニンと同定された。MALDI
−TOF MSにおけるペプチドイオンの強度は、必ず
しも試料混合物中のペプチド含量に対し定量的でないた
め、FDAFTTGFGHSの短いペプチドは、MS分
析では検出されなかった(図1)。しかし、直接MAL
DI−TOF MS分析を脳切片に適用することで、単
点から得られるスペクトルにより前駆体タンパク質の特
定のプロセシングが確認されるため、神経ペプチド研究
において多くの細胞の予備的でそして迅速なスクリーニ
ングが可能になる。
【0013】キャピラリー逆相HPLC/Q−Tof
MSは、ペプチドおよびタンパク質性質決定のための強
力な手段である。ペプチド検出感度亢進に関してのキャ
ピラリーカラムの利点は、図5に示されるように、LC
−MSを用い、フェントモルレベルで内因性神経ペプチ
ドを同定することが可能であることであり、そしてコン
ピューター技術が、より高いレベルの検出特異性を提供
する。したがって、1動物に同等である脳抽出物が、神
経ペプチドの同定および配列決定に完全に適当である。
その結果、我々の研究プログラムに基づき、発明者は、
甲殻類の脳ペプチド性質決定のための新規標準的方法と
して以下を提案する。第一の段階は、直接MALDI−
TOF MS分析による神経分泌顆粒の部位特異的分子
マスプロファイリングである。第二の段階は、既定の分
泌物質の分子量をモニターし、そしてその後、該物質の
配列を決定することによる、該物質の精製である。構造
決定に、LC−MS/MSおよび/またはプロテイン・
シークエンサーを両方用いてもよい。第三の段階は、ペ
プチドのアミノ酸配列に基づく、既定のペプチドの前駆
体の分子クローニングである。最終段階は、脳抽出物の
キャピラリー逆相HPLC/Q−Tof分析である。抽
出物は分泌物質を含み、該物質をHPLCにより個々の
構成要素に分画し、そしてその後MS様式により検出す
る。コンピュータープロセシングにより元来のLC−M
Sデータから各1つのマスを選択してもよく、そしてそ
れらの配列をMS/MS様式により決定する。これらの
方法は、神経ペプチド発現部位、前駆体構造およびプロ
セシングの経路を含む、ザリガニ脳における新規神経ペ
プチドの微量性質決定のための優れた手段を提供するで
あろう。
【0014】本研究はまた,オルコキニン関連ペプチド
の前駆体タンパク質クローニングに対する最初の報告で
もある。前駆体タンパク質において、オルコキニン関連
ペプチドは、直列で出現し、そして塩基性アミノ酸対が
隣接していた。その特徴は、アカチン(achati
n)−I(Satakeら, 1999)、フリシン
(fulicin)(Yasuda−Kamatani
ら, 1995)、ミオモジュリン(Lopezら,
1993)およびFMRFアミド(例えばLinacr
eら, 1990;Nambuら, 1988;Ros
offら, 1992)などの、軟体動物(mollu
sc)、昆虫および/または線虫(nematode)
由来の小神経ペプチドの前駆体タンパク質のものと同様
である。甲殻類では、血糖上昇ホルモンおよび脱皮阻害
ホルモンなどの、より長い神経ペプチドの前駆体タンパ
ク質cDNAがいくつかの種から明らかになってきてい
る(例えばWeidemannら, 1989;Ten
senら, 1991;Kleinら, 1993)
が、これらのタンパク質は、1コピーの神経ペプチドし
か含まない。我々の知る限り、アメリカザリガニ由来の
オルコキニン前駆体タンパク質は、多数の神経ペプチド
コピーをコードする、甲殻類での最初の例である。さら
に、cDNAの分子クローニングにより、アメリカザリ
ガニには少なくとも2種類のオルコキニン前駆体タンパ
ク質があることが明らかになった。これらは、さらに1
つのオルコキニンコピーがあること以外、同一である。
なぜこうした類似のタンパク質がプロセシングされなく
てはならないのかは不明である。しかし、逆転写酵素P
CRから得られた予備的結果により、脳に2種類の転写
物が存在することが示された(データは示していな
い)。該転写物が単一の遺伝子から選択的スプライシン
グにより生成されるのか、または2つまたはそれ以上の
異なる遺伝子から由来するのかを明確にするためには、
ゲノムクローンのサザンブロットおよびクローニングを
行わなければならない。さらに、Bungartら(1
995a)は、オルコキニン関連ペプチドは、甲殻類お
よびあるいは節足動物においてオルコキニンの新規神経
ペプチドファミリーを確立する可能性があることを示唆
した。ザリガニ脳におけるオルコキニン類似体出現は、
この考えを支持し、そして該前駆体タンパク質のヌクレ
オチド配列に関する情報は、節足動物、軟体動物および
他の無脊椎動物の間のオルコキニンファミリー分布に対
する研究のための有用な手段であることが証明されるで
あろう。
【0015】生物学的活性に関し、短い類似体が最も興
味深い。ペプチドFDAFTTGFGHS以外の、3つ
の種から同定された5つのペプチドは互いに構造的に非
常に類似であり、そして相違は8、9、および13位に
限定されている(表1)。
【0016】
【表1】
【0017】Bungartら(1995b)は、C末
端でのオルコキニンの変化は、N末端修飾より、後腸に
対する活性への干渉がより少ないことを報告した。した
がって、新規ペプチドの1つ、[Thr8、His13]オ
ルコキニンが、他のオルコキニン類似体のように、ザリ
ガニ後腸に対するこうした活性を持つことを推測するこ
とが可能である。逆に、他の新規ペプチド、FDAFT
TGFGHSの構造は、オルコキニンおよびその関連ペ
プチドのものとまったく異なっている。したがって、そ
の生物学的活性は、後腸に対してと共にいくつかの可能
性がある標的、例えば心臓または神経に対し、調べなけ
ればならない。一方、小触覚突起上の嗅覚受容体ニュー
ロンからの軸索は、すべてザリガニ脳中の嗅葉のニュー
ロパイル(neurophile)中の嗅葉糸球体に入
るため、嗅葉はその総入力を第一触覚上の化学受容器か
ら受けると見なされる(Sandemanら, 199
2)。しかし、オルコキニンおよびその遺伝子関連ペプ
チドの脳における生理学的役割は、現時点でまだ明らか
にされていない。オルコキニンは言うまでもなく、脳ペ
プチドの発見および役割の解明は、甲殻類生理学におい
てさらに興味深い研究課題となるであろう。
【0018】結論として、ザリガニ脳由来のオルコキニ
ンおよびその遺伝子関連ペプチドを、バイオアッセイの
代替物として、物理化学的規準でモニターすることによ
り、性質決定した。実施において、脳ペプチドの同定の
ため、MALDI−TOFMS、キャピラリー逆相HP
LC/MS、および分子クローニングを使用するのが好
都合である。本研究はまた、脳において、特定のプロセ
シングにより産生されるオルコキニン前駆体およびその
遺伝子関連ペプチドの構造的構成に関する最初の証拠も
提供する。参考文献 Biemann, K.(1992). Mass s
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hem. 64, 2248−2255. 上に引用される特許、特許出願および刊行物はすべて、
完全に本明細書に援用される。
【0019】本発明は、本発明の個々の側面の単一の例
示として意図される、記載される特定の態様により、範
囲を限定されない。実際、本明細書に示されそして記載
されたものに加え、当業者には、前述の説明から、本発
明の多様な修飾が明らかになるであろう。こうした修飾
は、付随する請求項の範囲内に属するものと意図され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アメリカザリガニ脳の嗅葉由来切片の直接M
ALDI−TOFMSスペクトル。x軸はm/z、マス
対荷電比を示し;y軸は分子イオン強度を示す。
【図2】 アメリカザリガニ由来の対応するプレプロオ
ルコキニンAのヌクレオチド(AB029168)およ
び演繹されるアミノ酸配列。オルコキニンおよびその関
連ペプチド配列を太字で示している。対形成した塩基性
アミノ酸残基を囲みで示している。ポリアデニル化シグ
ナルを下線で表示している。
【図3】 プレプロオルコキニンAおよびBの図式的表
示。各前駆体中の推定上の疎水性シグナル配列を、
「S」と示している。両前駆体に存在するオルコキニン
およびその関連神経ペプチド配列を、同一のパターンお
よび数で標識している:1、FDAFTTGFGHS;
2、NFDEIDRSGFGFA([Ala13]オルコキ
ニン);3、NFDEIDRSGFGFN(オルコキニ
ン);4、NFDEIDRSGFGFV([Val13]オ
ルコキニン);5、NFDEIDRTGFGFH([T
hr8、His13]オルコキニン)。
【図4】 0.05N酢酸で平衡化したSephade
x G−25カラム(スーパーファイン、1 x 40
0 mm)上のアメリカザリガニ脳の酸抽出物の溶出プ
ロファイル。流速は20μl/分だった。影で示してい
る分画2中のオルコキニンおよびその関連ペプチドを濃
縮した。
【図5】 TSKゲルODS 120Tカラム(0.2
5 x 100 mm、5μm)上のSephadex
G−25分画2のキャピラリー逆相高性能液体クロマ
トグラフィー。溶出は、0.05% TFA中の60分
間で10%から70%のアセトニトリル直線勾配を用
い、行った。詳細な実験は本文中に記載される。オルコ
キニン遺伝子関連ペプチドの選択イオンクロマトグラム
は、オルコキニンに関しm/z 791、[Val13]オ
ルコキニンに関しm/z 752、[Ala13]オルコキ
ニンに関しm/z 738、[Thr8、His13]オル
コキニンに関しm/z 778、FDAFTTGFGH
Sに関しm/z 594、およびVYVPRYIANL
Yに関しm/z 686の2価イオンをモニターするこ
とにより、得た。
【図6】 図5に対応する脳抽出物由来のキャピラリー
HPLC調製における、m/z 759、752、73
8、778、594、および686の2価イオンの衝突
誘導解離MS/MSスペクトル。該ペプチドのアミノ酸
配列は、一連のynイオンから特定した(Bieman
n, 1992)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 27/62 C12N 15/00 A Fターム(参考) 2G045 AA34 AA35 CB26 DA12 DA13 DA36 FA11 FA12 FA27 FA40 GC10 4B024 AA20 HA19 4B063 QA13 QQ02 QQ42 QQ53 QR08 QR55 QS34 QX01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生物の組織または細胞に存在する物質
    の化学構造を直接同定するための方法であって: (1)試料組織切片または細胞の特定の細胞内領域にレ
    ーザーを照射し、そして生成するマスイオンを分析し、
    該部位に存在する物質のマススペクトルを得る段階、
    (2)該マススペクトルを分析し、試料組織切片または
    細胞の細胞内領域に存在する物質のマスプロファイルを
    得る段階、および(3)該マスプロファイル中に現れる
    特定分子量に対応する物質の化学構造を決定する段階、
    からなる方法。
  2. 【請求項2】 組織または細胞に存在する物質の化学
    構造を直接同定するための、請求項1の方法であって、
    段階(1)および段階(2)がMALDI−TOF M
    Sによって行われ、そして段階(3)がLC−MS/M
    Sおよび/またはプロテイン・シークエンサーによって
    行われる方法。
  3. 【請求項3】 組織または細胞に存在する物質の化学
    構造を直接同定するための、請求項1または2の方法で
    あって、組織切片または細胞の細胞内領域に存在する物
    質のマスプロファイルを得る段階(2)の後でそして該
    マスプロファイル中に現れる特定分子量に対応する物質
    の化学構造を決定する段階(3)の前に、組織または細
    胞の抽出物から、該物質の分子量をマーカーとして使用
    することにより、該物質を単離しそして精製する段階が
    付加された方法。
  4. 【請求項4】 組織または細胞に存在する物質の化学
    構造を直接同定するための、請求項1、2または3の方
    法であって、該物質の化学構造が未知である場合に、該
    物質の化学構造を決定する方法。
  5. 【請求項5】 組織または細胞に存在する物質の化学
    構造を直接同定するための、請求項4の方法であって、
    組織または細胞に特定の生物学的活性を有する物質が存
    在すると推定されていながら、該物質の化学構造が未知
    であった場合に、請求項1ないし3の方法により、該物
    質の化学構造を推定し、そして該推定構造を有する物質
    を合成し、そして該合成物質の生物学的活性を調べるこ
    とにより、該物質の化学構造を確認する方法。
  6. 【請求項6】 生物の組織または細胞に存在する未知
    の物質の化学構造を同定するための方法であって、請求
    項1ないし3の1つの方法を行うことによる方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6いずれか1つの方法
    であって、物質がタンパク質またはペプチドである場
    合、該物質のアミノ酸配列を決定する方法。
  8. 【請求項8】 タンパク質、ペプチドまたはそれらの
    前駆体のアミノ酸配列を決定するための、請求項7の方
    法であって: (1)物質の部分的アミノ酸配列に対応する塩基配列を
    有するDNAを化学的に合成し、(2)該試料組織切片
    または細胞からcDNAライブラリーを構築し、(3)
    (1)で合成したDNAをプローブとして用い(2)で
    構築したcDNAライブラリーをスクリーニングするこ
    とにより、タンパク質、ペプチドまたはそれらの前駆体
    をコードする遺伝子をクローニングし、そして(4)ク
    ローニングしたcDNAの塩基配列を決定し、該塩基配
    列からアミノ酸配列を演繹する段階からなる方法。
  9. 【請求項9】 請求項7または8の方法であって、物
    質が修飾ペプチドまたは修飾タンパク質である場合、修
    飾ペプチドまたは修飾タンパク質の修飾アミノ酸残基の
    部位または修飾アミノ酸を決定する方法。
  10. 【請求項10】 請求項1、2または3の方法であっ
    て、該方法が細胞内の物質の存在部位を決定することに
    向けられる方法。
  11. 【請求項11】 請求項7、8または9の方法であっ
    て、ペプチド、タンパク質、修飾ペプチド、修飾タンパ
    ク質またはそれらの前駆体の細胞内の存在部位を決定す
    る方法。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11のいずれか1つ
    の方法であって、検出されるべき物質の存在部位が細胞
    内顆粒である方法。
  13. 【請求項13】 請求項12の方法であって、前記細
    胞内顆粒が分泌顆粒である方法。
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