JP2001194499A - リッジフィルタの設計方法 - Google Patents

リッジフィルタの設計方法

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JP2001194499A JP2000006562A JP2000006562A JP2001194499A JP 2001194499 A JP2001194499 A JP 2001194499A JP 2000006562 A JP2000006562 A JP 2000006562A JP 2000006562 A JP2000006562 A JP 2000006562A JP 2001194499 A JP2001194499 A JP 2001194499A
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sobp
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bragg
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一なSOBPを実現するリッジフィルタを
迅速に設計する方法を提供する。 【解決手段】 粒子線の進行距離と線量との関係を表す
ブラッグ曲線を用いて粒子線が透過する透過部の高さと
幅とを調整し、透過後の線量が進行距離の所定の範囲に
おいて所望の値で一様なSOBPを実現するリッジフィ
ルタの設計方法であって、モンテカルロ計算により、粒
子線の第1のブラッグ曲線を取得するステップと、第1
のブラッグ曲線をn回(n:自然数)平行移動すること
により、n本の第2のブラッグ曲線を取得するステップ
と、SOBPの所望の値と、第1のブラッグ曲線と、第
2のブラッグ曲線とに基づいて第1のブラッグ曲線と第
2のブラッグ曲線の各々とにかける重みを計算するステ
ップであって、重みをかけた第1のブラッグ曲線と第2
のブラッグ曲線の各々とを重ね合わせると、所望の値の
SOBPが得られるよう重みを計算するステップと、重
みに基づいて透過部の幅を決定するステップとからな
る、リッジフィルタ設計方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透過する粒子線の
線量を変化させてターゲット内に所定の線量分布を作る
リッジフィルタの設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】癌を治療する方法の1つに、粒子線を癌
の腫瘍に照射する治療方法がある。この治療方法は、癌
腫瘍へ粒子線を照射することにより癌細胞を死滅させる
ものである。図13は、粒子線10を照射される腫瘍1
30の例を示す。粒子線10は以下のように照射され
る。腫瘍130は粒子線10に垂直な平面上にある程度
の広がりを持つので、粒子線10は、コリメータ132
および補正用媒質134によりその広がりに応じて整形
される。腫瘍130以外の正常な組織へ粒子線10を照
射しないようにするためである。腫瘍130は深さ方向
にも厚みDを持つので、その厚みDの部分に線量が所望
の値で一様な粒子線10を照射する必要がある。
【0003】深さ方向の所定の範囲で線量が一様な粒子
線10は、複数の異なるエネルギーを持つ粒子線から得
られる。例えば、図2の(b)は、水ターゲットに入射
した粒子線の線量分布(ブラッグ曲線)を示すところ、
線量が一様な領域SOBP(Spread-Out Bragg Peak)
は、ブラッグ曲線22、24’’のそれぞれを重ね合わ
せることにより得られる。ブラッグ曲線22、24’’
のそれぞれは、図2の(a)におけるブラッグ曲線2
2、24に重みをかけたものである。
【0004】このようなSOBPを得るための複数の異
なるエネルギーを持つ粒子線は、リッジフィルタを用い
て生成される。リッジフィルタは、入射したあるエネル
ギーを持つ粒子線を、それぞれ重みをかけた複数の単色
エネルギーの粒子線に変換するフィルタである。すなわ
ちリッジフィルタは、ブラッグ曲線22で表されるエネ
ルギーの粒子線を受け、ブラッグ曲線24’’によって
表される複数の単色エネルギーの粒子線に変換する。こ
れらの粒子線が重ね合わされることにより、リッジフィ
ルタから出力された粒子線は、照射対象(ターゲット)
に対してブラッグ曲線26で表されるSOBPを持つ粒
子線を形成する。図3は、リッジフィルタの例を示す。
リッジフィルタの入射面30からの階段の高さhに応じ
て、粒子線は異なるエネルギーを持つ複数の粒子線に変
換される。すなわち、階段の高さhが小さいほどリッジ
フィルタ内で減衰する量が小さいので、深い位置まで到
達できるエネルギーを持つ粒子線が透過される。よっ
て、階段の高さhは図2のグラフにおける横軸方向のブ
ラッグ曲線の位置を規定する。さらに階段の幅wを調整
して通過する粒子数を制御することにより、線量レベル
を調整することができる。よって、階段の幅wは、図2
のグラフにおける縦軸方向のブラッグ曲線の重みに相当
する。換言すれば、この階段の幅wは粒子束に相当す
る。
【0005】粒子線の進行距離に関して所望の距離で、
かつ所望の線量値で一様なSOBPを得るために、適切
な階段の高さhおよび幅wを持つリッジフィルタを設計
する必要がある。従来のリッジフィルタの設計手順は、
例えば「MONTE CARLO SIMULATION OF A PROTONTHERAPY
SYSTEM FOR THE CALCULATION OF THE DOSE DISTRIBUTIO
N IN A PATIENT」TERA, 95, No.4, pp25 (1995)に記載
されている。図14は、従来のリッジフィルタの設計フ
ローを示す。(1)まず目標とするSOBP幅を決定す
る。(2)異なるエネルギーの複数のブラッグ曲線(図
2のブラッグ曲線24)を、モンテカルロ計算により求
める(ステップS142)。(3)目標とするSOBP
上の評価点と、その位置での目標値に対して、全てのブ
ラッグ曲線の重みxを、式Ax=bから決定する(ステ
ップS144)。ここで、行列Aには各ブラッグ曲線2
4上のサンプル値を格納している。その1行目は最大エ
ネルギーの値、第2行は2番目のエネルギーの値等であ
り、bは目標値である。(4)求めた重みxに基づいて
リッジフィルタの階段の幅wを決定する(ステップS1
46)。このとき、階段の高さの差(階段の各ステップ
の高さ)は一定である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上の(2)で述べたよ
うに、従来は多数回モンテカルロ計算を行い、エネルギ
ーの異なる複数のブラッグ曲線24(図2(a))を得
なければならなかった。一般にモンテカルロ計算には時
間がかかるため、これでは設計を迅速に行うことができ
ない。
【0007】さらに、従来の方法では目標とするSOB
P上の評価点の位置によっては、平坦度のよいSOBP
が得られないという問題がある。例えば、評価点は飛び
飛びの位置を採用するため評価点間のSOBP値の挙動
が考慮されず、したがって評価点以外の点で目標値との
差が大きくなる場合がある。特に最大エネルギーのブラ
ッグ曲線のピークが評価点として採用されない場合には
重みの影響が大きく、SOBPグラフの右端に突起が出
ることがある(後述する図5の横軸285mm付近の
値)。
【0008】一旦作成したリッジフィルタを使って理論
上の値を計算したとき、理論値と実際に必要な値とが一
致しない場合は適当な補償方法がなく、再度設計を行わ
なければならなかった。または実測値に基づいた複数の
ブラッグ曲線を得て、それに基づいてリッジフィルタを
設計する必要があった。
【0009】本発明の目的は、均一なSOBPを実現す
るリッジフィルタを迅速に設計する方法を提供すること
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のリッジフィルタ
の設計方法は、粒子線の進行距離と線量との関係を表す
ブラッグ曲線を用いて前記粒子線が透過する透過部の高
さと幅とを調整し、透過後の前記線量が前記進行距離の
所定の範囲において所望の値で一様なSOBPを実現す
るリッジフィルタの設計方法であって、モンテカルロ計
算により、前記粒子線の第1のブラッグ曲線を取得する
ステップと、前記第1のブラッグ曲線をn回(n:自然
数)平行移動することにより、n本の第2のブラッグ曲
線を取得するステップと、前記SOBPの前記所望の値
と、前記第1のブラッグ曲線と、前記第2のブラッグ曲
線とに基づいて前記第1のブラッグ曲線と前記第2のブ
ラッグ曲線の各々とにかける重みを計算するステップで
あって、前記重みをかけた前記第1のブラッグ曲線と前
記第2のブラッグ曲線の各々とを重ね合わせると、前記
所望の値の前記SOBPが得られるよう重みを計算する
ステップと、前記重みに基づいて前記透過部の幅を決定
するステップと、からなる、リッジフィルタ設計方法で
あり、これにより上記目的が達成される。
【0011】前記リッジフィルタ設計方法は、前記重み
に基づいてモンテカルロ計算を行い、前記SOBPの理
論値を計算するステップと、前記理論値と、前記所望の
値との差を計算するステップと、前記差と、前記第1の
ブラッグ曲線と、前記第2のブラッグ曲線とに基づいて
前記差を補正するための前記第1のブラッグ曲線と前記
第2のブラッグ曲線の各々とにかける補正重みを計算す
るステップであって、前記補正重みをかけた前記第1の
ブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各々とを、さ
らに前記重みをかけた前記第1のブラッグ曲線と前記第
2のブラッグ曲線の各々とに重ね合わせると、前記差に
相当する前記線量が最も小さくなるよう前記補正重みを
計算するステップと、をさらに含み、前記決定するステ
ップは、さらに前記補正重みに基づいて前記透過部の幅
を決定してもよい。
【0012】前記リッジフィルタ設計方法は、前記重み
に基づいてモンテカルロ計算を行い、前記SOBPの理
論値を計算するステップと、前記所望の値と、前記理論
値との差を計算するステップと、前記所望の値に前記差
を加えた値と、前記第1のブラッグ曲線と、前記第2の
ブラッグ曲線とに基づいて、前記重みを修正した修正重
みを計算するステップであって、前記修正重みをかけた
前記第1のブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各
々とを重ね合わせると、前記所望の値の前記SOBPが
得られるよう重みを計算するステップと、をさらに含
み、前記決定するステップは、前記修正重みに基づいて
前記透過部の幅を修正してもよい。
【0013】前記リッジフィルタ設計方法は、前記重み
と前記補正重みとに基づいて得られるSOBPの値と、
前記SOBPの前記所望の値との誤差を計算するステッ
プと、前記誤差が所定の許容範囲を超えている位置を選
択するステップと、をさらに含み、選択された前記位置
の誤差を小さくするように、前記重みを計算するステッ
プと前記補正重みを計算するステップとを再度実行して
もよい。
【0014】前記リッジフィルタは、前記粒子線の入射
方向に平行な高さと前記粒子線の入射方向に垂直な幅と
を有する前記透過部を備えたリッジフィルタであっても
よい。
【0015】前記リッジフィルタは、前記入射方向と平
行な軸を中心として回転する、少なくとも1つの前記透
過部を備えた回転形リッジフィルタであり、前記透過部
の幅は、前記透過部の回転方向の幅を変化させることに
よって調整されてもよい。
【0016】前記回転形リッジフィルタは複数の前記透
過部を有し、前記複数の透過部の各々は、それぞれ異な
る高さを有していてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)以下では、本発
明により設計されるリッジフィルタを利用する装置の説
明をした後、そのリッジフィルタを設計するための手順
を説明する。本明細書において粒子線とは、例えば陽子
線である。また、粒子線を照射する対象は深さ方向に厚
みDを持つ腫瘍130(図13)とする。なお「深さ方
向」とは粒子線が照射され、進行する方向をいう。
【0018】図1は、リッジフィルタを用いたワブラー
法による粒子線照射装置1の模式図である(「Instrume
ntation for treatment of cancer using proton and l
ight-iron beams」Rev. Sci. Instrum. Vol. 64 No.8
pp.2055-2091 (1993))。粒子線照射装置1は、腫瘍
130(図13)の形状に応じて粒子線10を照射する
領域(深さ方向も含む)を調整し、必要な線量の粒子線
10を腫瘍130(図13)に照射する装置である。粒
子線照射装置1は、1対の水平方向揺動用電磁石11
と、1対の垂直方向揺動用電磁石12と、粒子のエネル
ギーを変えるためのレンジシフタ13と、リッジフィル
タ14と、照射ボリューム16とを含む。粒子線源(図
示せず)から放射された粒子線10は、1対の水平方向
揺動用電磁石11と、1対の垂直方向揺動用電磁石12
とを用いて揺動され、照射面積が広げられる。揺動され
た粒子線10はレンジシフタ13を通り、粒子線10の
エネルギーが適当な量だけ小さくされる。その後、粒子
線10はリッジフィルタ14に入射する。リッジフィル
タ14は、透過した媒質の長さに応じて粒子線のエネル
ギーが減衰することを利用して、入射した粒子線をそれ
ぞれ重みをかけた複数の単色エネルギーの粒子線に変換
するフィルタである。リッジフィルタ14から出力され
た粒子線は、照射対象(ターゲット)に対してSOBP
(Spread-Out Bragg Peak)を持つ粒子線を形成する。
SOBPとは粒子線進行距離の所定の範囲で線量が一様
な領域であり、例えば、ブラッグ曲線26(図2
(a))で表される。図3は、リッジフィルタの例を示
す。リッジフィルタ14は、入射面からの高さhが異な
る、複数の段差のある透過部を持つものが多く利用され
ている。リッジフィルタ14の入射面30からの階段の
高さhに応じて、粒子線は、異なるエネルギーを持つ複
数の粒子線に変換される。すなわち、階段の高さhが小
さいほどリッジフィルタでの減衰量が小さいので、深い
位置まで到達可能なエネルギーを持つ粒子線が透過され
る。さらに階段の幅wを調整して通過する粒子数を制御
することにより、線量レベルを調整することができる。
したがってこの階段の幅wは、各粒子線に対してかける
重みであるといえる。重みをかけることにより粒子線
(図2の(b)のブラッグ曲線24’’)を得ることが
できる。なお、リッジフィルタ14の透過部において、
各エネルギーの粒子線が出射する部分の形状は任意であ
るが、本実施の形態では長方形である。リッジフィルタ
14の階段は、最終的に得られたブラッグ曲線24’’
(図2)の間隔(例えば、ピークの間隔)が狭くなれ
ば、滑らかになる。間隔が狭いことは、すなわちエネル
ギーレベルが近接するブラッグ曲線24’’(図2)を
利用することを意味し、よって隣り合う階段の高さの差
dが小さくなるためである。リッジフィルタ14から出
力された粒子線10が、揺動され広がった粒子束15と
して示されている。なお、以下の説明では、揺動され広
がった粒子束15についても粒子線10として言及す
る。
【0019】粒子線10は、続いて照射ボリューム16
によって適切な範囲に絞られ、腫瘍130(図13)に
照射される。照射ボリューム16により調整されるの
は、図1に示す座標系ではXY平面内の照射領域であ
る。z軸方向、すなわち腫瘍130(図13)の深さ方
向に照射すべき量は、リッジフィルタ14によって既に
調整されている。すなわち腫瘍130(図13)の厚み
方向に一様かつ所望の線量のSOBPが形成されるよ
う、粒子線の照射量はリッジフィルタ14によって既に
調整されている。
【0020】先に述べたように、リッジフィルタ14
(図1)の入射面からの透過部の高さhと階段の幅wと
により透過する粒子線の線量が決定されるので、それら
を調整することにより、SOBPを形成することができ
る。以下、より具体的に説明する。まず、図2の(a)
は、水ターゲットに入射した粒子線10(図1)の水の
深さに対する線量分布を示す。粒子線の進行距離と線量
との関係(線量分布)を表す曲線は、一般に「ブラッグ
曲線」と呼ばれる。複数のブラッグ曲線に適当な重みを
かけて重ね合わせると、所定の範囲(図2の場合は約1
00mm〜300mm)で線量が一様な領域、すなわち
SOBPを持つブラッグ曲線26を得ることができる。
SOBPが腫瘍130(図13)の厚みDに一致するよ
う、ブラッグ曲線26により表される粒子線を照射する
ことで、厚みDの部分の線量を所望の値で一様にでき
る。図3を参照してこのようなSOBPを形成するため
のリッジフィルタ14をさらに説明する。リッジフィル
タ14は、図の奥行き方向に同じ断面を有している。粒
子線のエネルギーは透過した媒質の長さに応じて減衰す
るので、リッジフィルタ14の入射面30からの透過部
の高さhによって、異なるエネルギーの粒子線10を複
数同時に得ることができる。線量レベルの差は、透過部
の各階段の幅wに差異があるために生じる。換言すれ
ば、リッジフィルタ14は、透過部の各階段の幅wを変
化させることにより粒子の透過面積を変化させ、透過す
る粒子数を制御する。これによりブラッグ曲線の線量レ
ベル(図2の縦軸方向のレベル)を調整できる。例え
ば、各階段の幅wを2倍にして透過部の面積を2倍にす
ると、透過する粒子数も2倍になり、ブラッグ曲線は図
2の縦軸の正方向に平行移動する。したがってリッジフ
ィルタ14の階段の幅wは、ブラッグ曲線22、24を
平行移動させる因子である。この因子は、以下、ブラッ
グ曲線にかける「重み」としても言及される。なお各階
段の高さの差dの大きさは特に限定されないが、より小
さい方が深さ方向(図2の横軸方向)に密接した複数の
ブラッグ曲線を得ることができ、より容易にかつ均一な
SOBPを得ることができる。
【0021】続いて、リッジフィルタの入射面30(図
3)からの階段の高さhと階段の幅wを決定するための
手順を説明する。本発明では、SOBPを持つブラッグ
曲線26(図2)(以下、「SOBPブラッグ曲線2
6」という)を得るために行っていた全てのブラッグ曲
線についてのモンテカルロ計算を、最大のエネルギーを
持つ粒子線について1回だけ行う。すなわち本発明で
は、モンテカルロ計算により求めるのはブラッグ曲線2
2(図2の(a))のみである。続いて、ブラッグ曲線
22(図2)を平行移動することによりブラッグ曲線2
4’が取得される。ブラッグ曲線24’が、SOBPブ
ラッグ曲線26(図2)を得るために必要な別のエネル
ギーのブラッグ曲線となる。平行移動は、図2の横軸方
向に行う。このように、すべてのブラッグ曲線の取得に
時間のかかるモンテカルロ計算を採用しないことで、リ
ッジフィルタの設計に要する計算時間を短縮することが
できる。
【0022】以下、その手順をより詳しく説明する。図
4は、本実施の形態によるリッジフィルタの設計フロー
を示す。まず初めに、最大エネルギーのブラッグ曲線2
2(図2)をモンテカルロ計算により求める(ステップ
S40)。モンテカルロ計算は周知の計算手法であるの
でその説明は省略する。次に、得られたブラッグ曲線2
2(図2)をn回(n:自然数)平行移動して、n本の
ブラッグ曲線24(図2)を得る(ステップS41)。
このステップではブラッグ曲線22(図2)の平行移動
をするのみであるから、n本のブラッグ曲線を得るため
にモンテカルロ計算を行うよりは短時間ですむ。
【0023】次に、各ブラッグ曲線22、24’(図
2)へかける重みを計算する(ステップS42)。ここ
で「重み」は、各ブラッグ曲線22、24’に(図2)
その重みをかけて重ね合わせると、SOBPの必要な線
量レベルと所望の位置での所望の長さが得られるよう求
められる。重みは以下のようにして求める。まず、各ブ
ラッグ曲線22、24’(図2)を複数個の点(例え
ば、各ブラッグ曲線についてm個ずつ)でサンプリング
する。次に所望のSOBPを有するSOBPブラッグ曲
線26(図2)も複数個(m個)の点でサンプリングす
る。この点は以下、「評価点」として言及される。評価
点の位置は任意であるが、各ブラッグ曲線22、24’
(図2)およびSOBPブラッグ曲線26(図2)のk
番目の評価点は、いずれも横軸方向の同じ位置pkにお
ける各ブラッグ曲線22、24’(図2)およびSOB
Pブラッグ曲線26(図2)上の点が採用される。SO
BPブラッグ曲線26(図2)のSOBPの位置以外の
位置では、線量レベルを低くする方が好ましい。その位
置は腫瘍130(図13)ではない正常な組織がある位
置であり、そのような組織に照射される粒子線レベルは
より低い方がよいからである。なお、所望のSOBPを
得ることだけを考える場合には、SOBPブラッグ曲線
26(図2)の所望のSOBP位置ですべてのサンプリ
ングを行えばよい。続いて得られたサンプル値を利用し
て、ブラッグ曲線22、24’(図2)のサンプル値を
成分に持つm×(n+1)行列Aと、重みを表す(n+
1)×1重みベクトルxと、SOBPブラッグ曲線26
(図2)上のm×1サンプル値列ベクトルbとを作る。
ブラッグ曲線22および24’は計(n+1)本である
ので、成分も(n+1)行、または列だけ必要となる。
これらの行列とベクトルの間には、 Ax=b・・・(1) の関係が成り立つ。重みベクトルxの各成分の値は、例
えば、逐次代入法または最適化手法を利用して求められ
る。なお、これらの手法は周知であるので詳細な説明は
省略する。ここで、行列Aの第1列はブラッグ曲線22
(図2)、第2列はブラッグ曲線22、24’(図2)
中で2番目のエネルギーを持つブラッグ曲線、・・・
(n+1)列目は(n+1)番目のエネルギーを持つブ
ラッグ曲線を表す。この結果、重みベクトルxの第k行
(k:1〜n+1の自然数)はブラッグ曲線22、2
4’(図2)のうちk番目のエネルギーを持つブラッグ
曲線の重みとなる。以上のようにして重みが計算され
る。
【0024】求めた重みとブラッグ曲線22、24’
(図2)とから、実際にSOBPを持つブラッグ曲線を
計算する。図5は、本発明の手法により得た重みから計
算したSOBPブラッグ曲線のグラフを示す。図2で
は、横軸は粒子線の進行距離(mm)、縦軸はSOBP
が得られているか否かの観点から、線量の最大レベルで
正規化している。図5によれば、SOBPが約140m
m〜290mmの長さ得られていることがわかる。粒子
線のエネルギーは230MeV、ブラッグ曲線のサンプ
リング間隔は2.5mmである。なお「粒子線の進行距
離」とは、先に「水の深さ」として言及した、粒子線照
射装置1(図1)から照射された粒子線が進んだ距離で
ある。
【0025】重みが求められると、リッジフィルタの階
段の幅wを決定することができる(ステップS43)。
例えば、あるエネルギーのブラッグ曲線に対する重みが
0.2である場合を考える。平行移動して得られたブラ
ッグ曲線が、リッジフィルタの幅w1のときに実現され
るとすると、重みをかけた後のブラッグ曲線は、リッジ
フィルタの幅0.2×w1のときに実現される。これ
は、幅を0.2倍にして面積を0.2倍にすることによ
り、リッジフィルタを通過する粒子線10(図3)の粒
子数を0.2倍したことを意味する。このようにしてリ
ッジフィルタの階段の幅wを決定できる。リッジフィル
タの入射面30(図3)からの階段の高さhは、ブラッ
グ曲線22、24(図2)の位置に基づいて決定すれば
よいが、例えば、図2の横軸方向への平行移動の移動量
により決定してもよい。この場合は、最大エネルギーの
ブラッグ曲線22(図2)を与える入射面30(図3)
からの階段の高さh1が得られれば、他のブラッグ曲線
24(図2)を与える入射面30(図3)からの階段の
高さhkも容易に得ることができる。なお、幅w1と階段
の高さh1は、粒子数および減衰量を考慮して周知の手
法により容易に得ることができるので、その説明は省略
する。
【0026】このようにして得られた階段の幅wおよび
入射面30(図3)からの高さhを用いることによっ
て、リッジフィルタ14(図3)を設計することができ
る。この結果、全てのブラッグ曲線についてモンテカル
ロ計算をしなくとも、SOBPを得るためのリッジフィ
ルタを得ることができる。
【0027】続いて、以上のようにして求めたSOBP
計算結果の評価を行い、より一層精度の高いSOBPを
求めるための方法を説明する。本方法では、求めた重み
に基づいて設計されたリッジフィルタを、ある粒子線が
透過するとしたときのSOBPの理論値b’を計算する
(ステップS44の「はい」に分岐)。すなわち、得ら
れた幅wおよび高さhをもつリッジフィルタにある粒子
線を通過させたときの、SOBPの理論上の値b’をモ
ンテカルロ計算により計算する(ステップS45)。こ
のモンテカルロ計算は、得られたリッジフィルタと透過
させる粒子線のエネルギーとに基づいて行われる計算で
ある。図6は、SOBPブラッグ曲線の理論値のグラフ
を示す。縦軸および横軸等の説明は図5と同じである。
この理論値のグラフは、ブラッグ曲線の平行移動により
求めたグラフ(図5)と比較して、一様なレベルのSO
BPが得られていないことがわかる。その理由は、エネ
ルギーの低い粒子線はエネルギーの高い粒子線よりも比
較的散乱が大きいことが知られているが、ブラッグ曲線
の平行移動によって取得された低エネルギー粒子線のブ
ラッグ曲線では粒子線の散乱が考慮されていないからで
ある。これは、実際のブラッグ曲線は、平行移動して得
られたブラッグ曲線よりも線量が小さいことを意味す
る。したがって、より一層精度よく一様なSOBPを得
るためには、エネルギーが低い粒子線の散乱をも考慮し
て重みを計算し、リッジフィルタを設計しなければなら
ない。よって、上で得られた重みを用いてモンテカルロ
計算を行い、SOBPの理論値b’と所望のSOBP値
bとの差を補償する必要がある。
【0028】再び図4を参照して、得られたSOBPの
理論値b’と、SOBPの所望の値bとの差を計算し
(ステップS46)、その差を最も小さくする(補償す
る)ための補正重みを計算する(ステップS47)。す
なわち「補正重み」は、その補正重みをかけた各ブラッ
グ曲線22、24’(図2)を、前に得られた、重みを
かけた各ブラッグ曲線22、24’(図2)にさらに重
ね合わせて、その差に相当する線量を最も小さくするよ
う求められる。具体的には、補正重みは以下のようにし
て求める。前に述べた行列Aと、補正重みを表す(n+
1)×1補正重みベクトルΔxと、SOBPの理論値
b’とSOBPの所望の値bとの差を表す、m×1差分
サンプル値列ベクトルΔbとを用ると、 AΔx=Δb・・・(2) が成り立ち、式(1)と同様の周知の計算手法により補
正重みベクトルΔxを求められる。評価点の位置に関し
ては先の説明と同様に、k番目の評価点は、いずれも同
じ位置pkにおける各ブラッグ曲線およびSOBPブラ
ッグ曲線上の点が採用される。
【0029】式(2)から得られた補正重みΔxをブラ
ッグ曲線22、24’(図2)に加重し、モンテカルロ
計算により既に得ている、重みxをかけたブラッグ曲線
にさらに重ね合わせると、その差を補正したSOBPブ
ラッグ曲線を得ることができる。図7は、先に求めた重
みと補正重みとに基づいてモンテカルロ計算で求めたS
OBPブラッグ曲線を示す。補正重みを加える前のSO
BPブラッグ曲線(図6)と比較して、より平坦かつ十
分均一なSOBPブラッグ曲線を得ることができる。し
たがって、この重みおよび補正重みとをかけたブラッグ
曲線22、24’それぞれの形状は、ブラッグ曲線2
4’’ (図2の(b))の形状にほぼ一致する。この
ようにして各ブラッグ曲線に対する重みと補正重みとが
求められたので、補正重みをさらに考慮してリッジフィ
ルタの階段の幅wを決定することができる(図4のステ
ップS43)。
【0030】以上、実施の形態1を説明した。本実施の
形態によれば、迅速に均一なSOBPを与えるリッジフ
ィルタを設計することができる。また本実施の形態によ
れば、理論値と実測値が違う場合であっても、補正重み
を用いて実測値と理論値を十分等しくできるので、精度
のよいリッジフィルタを設計できる。この場合でも、モ
ンテカルロ計算を2回行うだけで十分な精度のSOBP
を得ることができる。
【0031】(実施の形態2)本実施の形態では、所望
のSOBPレベルbを得るための他の方法を説明する。
実施の形態1では、SOBPの理論値b’と所望のSO
BP値bとの差をΔbとして、A△x=△bから補正重
みを決定した。本実施の形態では、所望のSOBP値b
からのSOBPの理論値b’の差を所望のSOBP値b
に加え、その値を得られるような重みを求める。これ
は、所望のSOBP値bを求めようとして生じた差を、
あらかじめ所望のSOBP値bに加えておいて重みを求
めることを意味する。このようにして求めた重みによれ
ば、当初から誤差のない所望のSOBP値を実現でき
る。
【0032】図8は、本実施の形態によるリッジフィル
タの設計フローを示す。ステップS80〜S86のそれ
ぞれは、図4のステップS40〜S46のそれぞれに対
応するので、その説明は省略する。なおステップS86
では、所望のSOBP値bからのSOBPの理論値b’
の差Δbが計算されている。ステップS87では、この
差Δbを本来の所望のSOBP値bに加算し、その値を
用いて、既に求めた重みxを修正した修正重みx’を求
める。すなわち、修正重みx’は Ax’=b+Δb・・・(3) を満たすベクトルとして与えられる。これは、所望のS
OBP値bを求めようとして重みxを求めても、モンテ
カルロ計算を行って得られた理論値b’は所望のSOB
P値bからΔbだけ差が生じていたことに基づく。すな
わち、所望のSOBP値bにあらかじめΔbを加えた値
を実現するような修正重みx’を求めると、その修正重
みx’に基づいて計算した理論値は、b+ΔbよりもΔ
bだけ小さい、もとの所望のSOBP値bになる。な
お、x’を求める手法は、実施の形態1で簡単に述べた
ような逐次代入法または最適化手法を用いればよい。こ
のようにして得られた修正重みx’を新たな重みとする
と、この重みは、すでに求めた重みxに代わるものであ
る。よって、この重みx’を各ブラッグ曲線22、2
4’(図2の(a))に加重すると、各ブラッグ曲線2
2、24’’(図2の(b))を得ることができ、それ
らを重ね合わせることによりSOBPブラッグ曲線(図
2(b))を得ることができる。
【0033】このようにして各ブラッグ曲線に対する新
たな重みが求められたので、その重みに基づいて、既に
求めていたリッジフィルタの階段の幅wを修正すること
ができる(図8のステップS83)。その手順は実施の
形態1で既に説明したので、説明は省略する。
【0034】以上、実施の形態2を説明した。本実施の
形態によれば、迅速に均一なSOBPを与えるリッジフ
ィルタを設計することができる。
【0035】(実施の形態3)本実施の形態は、より均
一な所望のSOBPを得るための方法を説明する。すな
わち、所望のSOBPを得る過程で、SOBPの右端に
ピークが生じる場合がある(図5の285mm付近にお
けるSOBPブラッグ曲線を参照)。これは、サンプリ
ングした評価位置が連続的でなく離散的であることに起
因する。図2の(b)を参照してより具体的に説明す
る。ブラッグ曲線22は、評価点として通常採用される
ピーク以外の位置、例えば、ピークから少しずれた水の
深さ300mmの位置でもある線量値を持つ。この位置
では、他のブラッグ曲線24’’も何らかの線量値を持
つ。このような位置では各ブラッグ曲線にかけられた重
みの影響が大きく出ているので、重ね合わされたブラッ
グ曲線のその位置の線量値の和が所望のSOBPのレベ
ルよりも大きくなる場合がある。この最大値が突出した
形でSOBPの右端に出現する(シフトする)。これが
SOBPの右端に生じるピークである。これはすなわち
複数のブラッグカーブを重ね合わせた結果、ピーク位置
が評価点の位置と一致していないことを意味する。計算
の都合上、評価点が離散的になることは避けられない
が、このような最大値を与える位置が評価点として採用
されない場合には、SOBPの均一度が悪化する。
【0036】そこで、このようなピークが生じたと判断
する場合には、新しく生じた突起の位置をSOBPブラ
ッグ曲線26上の評価点の1つとして採用し、重みの計
算を再度行う。SOBPの突起部分だけでなく、別の評
価点間の誤差を計算してその誤差が大きい点をさらに探
してもよい。この誤差を定量的に判断する方法として、
本実施の形態では、ある一定の許容誤差範囲を設け、そ
の範囲を超える場合にはその位置の誤差が大きいと判断
する。許容誤差範囲は、例えば所望のSOBPレベルb
の±0.2%などのように設定できる。したがって一般
的には、得られたSOBPと、所望のSOBPレベルb
との誤差を計算し、その誤差が許容誤差範囲を超えてい
る位置を選択して新たな評価位置とし、その位置で再び
重みを計算すればよい。それにより、選択された新たな
評価位置における誤差を小さくできる。図9は、再度計
算した重みに基づいて得られたSOBPブラッグ曲線を
示す。突起が生じていた位置(図5の285mm付近)
にはピークはなく、より均一なSOBPブラッグ曲線が
得られていることがわかる。これは、設計したリッジフ
ィルタが高精度であることを意味する。
【0037】以上、本発明によるリッジフィルタの設計
手順を説明した。続いて、実施の形態1〜3において設
計されるリッジフィルタの具体的な例を説明する。以下
では、長方形でない、扇形の回転型リッジフィルタを用
いても、上述の実施の形態がそのまま適用できることを
説明する。
【0038】図10は、回転型リッジフィルタ100を
示す。回転型リッジフィルタ100は、粒子線の入射方
向と平行な軸を中心に回転して、粒子線が回転する透過
部102を透過する際にエネルギーを変化させ、複数の
異なるエネルギーを持つ粒子線に変換するフィルタであ
る。回転型リッジフィルタ100は、複数の扇形の透過
部102がねじ等の固定具104で固定されている。複
数の扇形の透過部102は積み重ねられ、階段状の透過
部を形成している。この構成は、これまでの説明のリッ
ジフィルタ透過部と同様である。回転型リッジフィルタ
100では、透過部102の交換により弧の幅w(階段
の幅w)を変えることができる。上で述べたように階段
の幅wを変化させると粒子の透過面積が変化するので、
階段の幅wを変化させることは、所定のエネルギーを持
つブラッグ曲線にかける重みを自由に変化させられるこ
とをあらわす。すなわち、回転型リッジフィルタも実施
の形態1〜3で求めた重みを反映して設計できる。例え
ば、あるエネルギーのブラッグ曲線に対する重みが0.
2である場合を考える。透過する粒子数を0.2倍にす
るためには、扇形の弧の幅wを0.2倍にすればよい。
【0039】なお、階段の幅wは、透過部102の交換
のみならず回転方向にずらしてもよい。例えば回転方向
に透過部102の幅を狭くするようずらすと、回転方向
と逆側の透過部102は幅が広くなる。したがってこの
場合には、粒子線は、リッジフィルタ100の回転方向
に幅を狭く調整した領域にのみ粒子線が透過するよう照
射する必要がある。
【0040】続いて、回転型リッジフィルタ100(図
10)とは別の回転型リッジフィルタについて説明す
る。上で説明したように、この回転型リッジフィルタも
上述の実施の形態はそのまま適用できる。
【0041】図11の(a)は、回転型リッジフィルタ
110を示す。回転型リッジフィルタ110は、回転型
リッジフィルタ100(図10)とは異なるのは、4つ
の透過部112、114、116、118から構成され
ている点である。各透過部内の階段の高さは一定である
が、4種類の階段の高さは異なる。プロペラが回転する
ことによって、4枚の透過部112、114、116、
118を持つリッジフィルタ、すなわち4種類の高さを
持つリッジフィルタを等価的に実現できる。リッジフィ
ルタは切削で製作するので、各透過部の製作段階では階
段を切削する工程を減らすことができ、階段の高さが高
いとより容易に製作できる。図12は、4つの透過部を
もつ回転型リッジフィルタ120のより具体的な外観を
示す。直線の矢印が指す方向が粒子線が入射する方向で
ある。回転型リッジフィルタ120は、粒子線の入射方
向に垂直な平面内で回転する。
【0042】図11の(b)は、透過部112および1
14の断面図を示す。粒子線の入射面からの高さhは、
透過部112と透過部114とでは異なることがわか
る。より一般的には、回転型リッジフィルタがそれぞれ
高さが異なるn種類の透過部を備えていれば、等価的に
n段の階段を持つリッジフィルタとして扱うことができ
るので、上述した効果を得ることができる。なお各階段
の高さの差dはどの透過部で同じであってもよいし、必
要に応じて異ならせてもよい。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、迅速にSOBPを与え
るリッジフィルタを設計することができる。さらに本発
明によれば、理論値と実測値が違う場合であっても、補
正重みを用いて、またはあらかじめその差を考慮して実
測値を理論値に近づけることができるので、精度のよい
リッジフィルタを設計できる。
【0044】さらに本発明によれば、均一なSOBPを
得ることができるので、精度のよいリッジフィルタを設
計することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リッジフィルタを用いたワブラー法による粒
子線照射装置1の模式図である。
【図2】 水ターゲットに入射した粒子線10(図1)
の水の深さに対する線量分布を示す図である。(a)は
モンテカルロ計算によるブラッグ曲線22および24
と、本発明による平行移動したブラッグ曲線24’と、
SOBPブラッグ曲線26とを示すグラフである。
(b)は重みをかけたブラッグ曲線22および24’’
と、SOBPブラッグ曲線26とを示すグラフである。
【図3】 リッジフィルタの例を示す図である。
【図4】 実施の形態1によるリッジフィルタの設計フ
ローを示す。
【図5】 本発明の手法により得た重みから計算したS
OBPブラッグ曲線のグラフである。
【図6】 SOBPブラッグ曲線の理論値のグラフであ
る。
【図7】 重みと補正重みとに基づいてモンテカルロ計
算したSOBPブラッグ曲線を示す図である。
【図8】 実施の形態2によるリッジフィルタの設計フ
ローを示す図である。
【図9】 再度計算した重みに基づいて得られたSOB
Pブラッグ曲線を示す図である。
【図10】 回転型リッジフィルタを示す図である。
【図11】 (a)は、回転型リッジフィルタ110を
示す図である。(b)は、透過部112および114の
断面図を示す図である。
【図12】 4つの透過部をもつ回転型リッジフィルタ
のより具体的な外観を示す。
【図13】 粒子線を照射される腫瘍の例を示す図であ
る。
【図14】 従来のリッジフィルタの設計フローを示す
図である。
【符号の説明】
1 粒子線照射装置、10 粒子線、11 1対の水平
方向揺動用電磁石、12 1対の垂直方向揺動用電磁
石、13 レンジシフタ、14 リッジフィルタ、16
照射ボリューム

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子線の進行距離と線量との関係を表す
    ブラッグ曲線を用いて前記粒子線が透過する透過部の高
    さと幅とを調整し、透過後の前記線量が前記進行距離の
    所定の範囲において所望の値で一様なSOBPを実現す
    るリッジフィルタの設計方法であって、 モンテカルロ計算により、前記粒子線の第1のブラッグ
    曲線を取得するステップと、 前記第1のブラッグ曲線をn回(n:自然数)平行移動
    することにより、n本の第2のブラッグ曲線を取得する
    ステップと、 前記SOBPの前記所望の値と、前記第1のブラッグ曲
    線と、前記第2のブラッグ曲線とに基づいて前記第1の
    ブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各々とにかけ
    る重みを計算するステップであって、前記重みをかけた
    前記第1のブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各
    々とを重ね合わせると、前記所望の値の前記SOBPが
    得られるよう重みを計算するステップと、 前記重みに基づいて前記透過部の幅を決定するステップ
    と、 からなる、リッジフィルタ設計方法。
  2. 【請求項2】 前記重みに基づいてモンテカルロ計算を
    行い、前記SOBPの理論値を計算するステップと、 前記理論値と、前記所望の値との差を計算するステップ
    と、 前記差と、前記第1のブラッグ曲線と、前記第2のブラ
    ッグ曲線とに基づいて前記差を補正するための前記第1
    のブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各々とにか
    ける補正重みを計算するステップであって、前記補正重
    みをかけた前記第1のブラッグ曲線と前記第2のブラッ
    グ曲線の各々とを、さらに前記重みをかけた前記第1の
    ブラッグ曲線と前記第2のブラッグ曲線の各々とに重ね
    合わせると、前記差に相当する前記線量が最も小さくな
    るよう前記補正重みを計算するステップと、をさらに含
    み、 前記決定するステップは、さらに前記補正重みに基づい
    て前記透過部の幅を決定する、請求項1に記載のリッジ
    フィルタ設計方法。
  3. 【請求項3】 前記重みに基づいてモンテカルロ計算を
    行い、前記SOBPの理論値を計算するステップと、 前記所望の値と、前記理論値との差を計算するステップ
    と、 前記所望の値に前記差を加えた値と、前記第1のブラッ
    グ曲線と、前記第2のブラッグ曲線とに基づいて、前記
    重みを修正した修正重みを計算するステップであって、
    前記修正重みをかけた前記第1のブラッグ曲線と前記第
    2のブラッグ曲線の各々とを重ね合わせると、前記所望
    の値の前記SOBPが得られるよう重みを計算するステ
    ップと、をさらに含み、 前記決定するステップは、前記修正重みに基づいて前記
    透過部の幅を修正する、請求項1に記載のリッジフィル
    タ設計方法。
  4. 【請求項4】 前記重みと前記補正重みとに基づいて得
    られるSOBPの値と、前記SOBPの前記所望の値と
    の誤差を計算するステップと、 前記誤差が所定の許容範囲を超えている位置を選択する
    ステップと、をさらに含み、 選択された前記位置の誤差を小さくするように、前記重
    みを計算するステップと前記補正重みを計算するステッ
    プとを再度実行する、請求項2に記載のリッジフィルタ
    設計方法。
  5. 【請求項5】 前記リッジフィルタは、前記粒子線の入
    射方向に平行な高さと前記粒子線の入射方向に垂直な幅
    とを有する前記透過部を備えたリッジフィルタである、
    請求項1〜4のいずれかに記載のリッジフィルタ設計方
    法。
  6. 【請求項6】 前記リッジフィルタは、前記入射方向と
    平行な軸を中心として回転する、少なくとも1つの前記
    透過部を備えた回転形リッジフィルタであり、前記透過
    部の幅は、前記透過部の回転方向の幅を変化させること
    によって調整される、請求項5に記載のリッジフィルタ
    設計方法。
  7. 【請求項7】 前記回転形リッジフィルタは複数の前記
    透過部を有し、前記複数の透過部の各々は、それぞれ異
    なる高さを有する、請求項6に記載のリッジフィルタ設
    計方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7355189B2 (en) 2003-09-10 2008-04-08 Hitachi, Ltd. Charged particle therapy system, range modulation wheel device, and method of installing range modulation wheel device
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